JPWO2015098574A1 - 熱電変換素子および熱電変換素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
熱電変換素子は、熱エネルギーを直接電力に変換することができ、可動部を必要としない等の利点を有する。そのため、複数の熱電変換素子を接続してなる熱電変換モジュール(発電装置)は、例えば、焼却炉や工場の各種の設備など、排熱される部位に設けることで、動作コストを掛ける必要なく、簡易に電力を得ることができる。
すなわち、通常の熱電変換素子は、電極で熱電変換層を厚さ方向に挟持し、熱電変換層の厚さ方向に温度差を生じさせて、熱エネルギーを電気エネルギーに変換させている。
具体的には、特許文献1には、P型材料およびN型材料で形成された熱電変換層の両面に、熱伝導率が異なる2種類の材料で構成された柔軟性を有するフィルム基板を設け、熱伝導率が異なる材料を、基板の外面で、かつ、通電方向の逆位置に位置するように構成した熱電変換素子が記載されている。
具体的には、特許文献3には、水平方向に温度差を生じさせる温度差形成層と、温度差形成層の上に形成された熱電変換層と、熱電変換層間を接続する配線とを備え、温度差形成層は、熱電変換層側の主面が他方の主面よりも面積が小さい高熱伝導体と、この隙間に充填された低熱伝導体とが水平方向に交互に形成され、さらに、熱電変換層は、高熱伝導体の少なくとも一部を覆って、高熱伝導体に隣接する低熱伝導体まで延在するように形成される熱電変換素子が記載されている。
しかも、熱電変換素子の熱電変換層に有機材料を用いることにより、よりフレキシブル性が高い熱電変換素子を得ることができる。
第1基板の上に形成される、有機材料からなり、かつ、厚さ方向より面方向の方が導電率が高い熱電変換層と、
熱電変換層の上に形成される、面方向の少なくとも一部に他の領域よりも熱伝導率が高い高熱伝導部を有し、かつ、面方向において自身の高熱伝導部が第1基板の高熱伝導部と完全に重複しない第2基板と、
面方向に熱電変換層を挟むように、熱電変換層に接続される一対の電極とを有することを特徴とする熱電変換素子を提供する。
また、熱電変換層の面方向と厚さ方向との導電率の比が、面方向:厚さ方向>100:1であるのが好ましい。
また、熱電変換層が、カーボンナノチューブを含むのが好ましい。
また、熱電変換層が、樹脂材料にカーボンナノチューブを分散してなるものであるのが好ましい。
また、熱電変換層が、カーボンナノチューブと界面活性剤とを含有するのが好ましい。
また、カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブであり、長さが1μm以上であるのが好ましい。
また、熱電変換層が、導電性高分子を含むのが好ましい。
また、導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であるのが好ましい。
また、第1基板の高熱伝導部と第2基板の高熱伝導部とが、面方向において、電極の離間方向に異なる位置に設けられるのが好ましい。
また、第1基板の高熱伝導部および第2基板の高熱伝導部が、積層方向に対して外面に位置するのが好ましい。
また、第1基板と電極対との間に、密着層を有するのが好ましい。
また、熱電変換層および電極対を覆って、ガスバリア層を有するのが好ましい。
また、熱電変換層の面方向の端面がテーパ状であるのが好ましい。
また、電極対の各電極が、熱電変換層の面方向の端面から上面に到るように形成されるのが好ましい。
さらに、電極対の形成材料が金であり、電極対の少なくとも一方の電極と熱電変換層との間に、バッファ層を有するのが好ましい。
面方向の少なくとも一部に他の領域よりも熱伝導率が高い高熱伝導部を有する第1基板に、CNT塗布液を塗布、乾燥して、熱電変換層を形成する工程、
面方向に挟むようにして、熱電変換層に電極対を接続する工程、
および、熱電変換層の上に、面方向の少なくとも一部に、他の領域よりも熱伝導率が高い高熱伝導部を有し、かつ、面方向おいて自身の高熱伝導部が第1基板の高熱伝導部と完全に重複しないように第2基板を積層する工程、とを有することを特徴とする熱電変換素子の製造方法を提供する。
また、CNT塗布液に含まれる分散媒が水であり、かつ、CNT塗布液が、界面活性剤を含有するのが好ましい。
さらに、熱電変換層を形成する工程において、第1基板へのCNT塗布液を塗布を印刷によって行うのが好ましい。
具体的には、第1基板12の上に熱電変換層14を有し、熱電変換層14の上に第2基板16を有し、第1基板12と第2基板16との間において、熱電変換層14を面方向に挟むようにして、熱電変換層14に電極20および電極24(電極対)が接続される。
なお、両基板は、配置位置、および、表裏や面方向の向きが異なるのみで、構成は同じであるので、第1基板12と第2基板16とを区別する必要が有る場合を除いて、説明は第1基板12を代表例として行う。面方向とは、基板面の方向である。
従って、第1基板12の一面は、面方向の半分の領域が低熱伝導部12aで、残りの半分の領域は高熱伝導部12bとなる。
好ましくは、低熱伝導部12aには、プラスチックフィルムが利用される。低熱伝導部12aにプラスチックフィルムを用いることにより、軽量化やコストの低下を計ると共に、可撓性を有する熱電変換素子10が形成可能となり、好ましい。
中でも、熱伝導率、耐熱性、耐溶剤性、入手の容易性や経済性等の点で、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等からなるフィルムは、好適に利用される。
具体的には、熱伝導率等の点で、金、銀、銅、アルミニウム等の各種の金属が例示される。中でも、熱伝導率、経済性等の点で、銅およびアルミニウムは好適に利用される。
第1基板12の面方向(基板面と直交する方向から見た際)の大きさ、基板12における高熱伝導部12bの面方向の面積率等も、低熱伝導部12aおよび高熱伝導部12bの形成材料、熱電変換素子10の大きさ等に応じて、適宜、設定すればよい。
例えば、第1基板12において、高熱伝導部12bは、面方向において低熱伝導部12aに内包されてもよく、面方向において一部を端部に位置してそれ以外の領域を内包(面方向で外周の一部が低熱伝導部12aと接触)されてもよい。さらに、第1基板12が面方向に複数の高熱伝導部12bを有してもよい。
しかしながら、本発明は、これ以外にも、第1基板12および第2基板16が、共に、高熱伝導部12bおよび高熱伝導部16bを積層方向の内側に位置する構成でもよい。あるいは、第1基板12が高熱伝導部12bを積層方向の外側に位置し、第2基板16が高熱伝導部16bを積層方向の内側に位置するような構成でも良い。
なお、高熱伝導部が金属等の導電性を有する材料で形成され、かつ、積層方向の内側に配置される場合には、熱電変換層14、電極20および電極24との絶縁性を確保できるように、間に絶縁層等を形成する必要が有る。
図示例において、熱電変換層は、面方向の中心を、両基板の低熱伝導部と高熱伝導部との境界に一致して設けられる。
熱電変換層14には、面方向に挟むように、電極20および電極24とからなる電極対が接続される。
熱電変換材料としては、具体的には、導電性高分子や導電性ナノ炭素材料等の有機材料用いることができる。
本発明で用いる導電性高分子は、必ずしも高分子量化合物である必要はなく、オリゴマー化合物であってもよい。
中でも、熱電特性がより良好となる理由から、CNTが好ましく利用される。
単層CNTは、半導体性のものであっても、金属性のものであってもよく、両者を併せて用いてもよい。半導体性CNTと金属性CNTとを両方を用いる場合、組成物中の両者の含有比率は、組成物の用途に応じて適宜調整することができる。また、CNTには金属などが内包されていてもよく、フラーレン等の分子が内包されたものを用いてもよい。
特に、単層CNTを用いる場合には、0.5〜2.2nmが好ましく、は1.0〜2.2nmがより好ましく、1.5〜2.0nmが特に好ましい。
CNTを利用する場合には、単層CNTや多層CNTの他に、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンナノビーズ、グラファイト、グラフェン、アモルファスカーボン等のナノカーボンが含まれてもよい。
ドーパントも公知の各種のものが利用可能である。具体的には、アルカリ金属、ヒドラジン誘導体、金属水素化物(水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラブチルアンモニウム、水素化リチウムアルミニウム等)、ポリエチレンイミン、ハロゲン(ヨウ素、臭素等)、ルイス酸(PF5、AsF5等)、プロトン酸(塩酸、硫酸等)、遷移金属ハロゲン化物(FeCl3、SnCl4等)、有機の電子受容性物質(テトラシアノキノジメタン(TCNQ)誘導体、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)誘導体等)等が好適に例示される。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、材料の安定性、CNTとの相溶性等の点で、ポリエチレンイミン、TCNQ誘導体やDDQ誘導体などの有機の電子受容性物質は好適に例示される。
中でも、樹脂材料に導電性ナノ炭素材料を分散してなる熱電変換層14は、より好適に例示される。その中でも、高い導電性が得られる等の点で、樹脂材料にCNTを分散してなる熱電変換層14は、特に好適に例示される。
具体的には、ビニル化合物、(メタ)アクリレート化合物、カーボネート化合物、エステル化合物、エポキシ化合物、シロキサン化合物、ゼラチン等の公知の各種の樹脂材料が利用可能である。
より具体的には、ビニル化合物としては、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルフェノール、ポリビニルブチラール等が例示される。(メタ)アクリレート化合物としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリフェノキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリベンジル(メタ)アクリレート等が例示される。カーボネート化合物としては、ビスフェノールZ型ポリカーボネート、ビスフェノールC型ポリカーボネート等が例示される。エステル化合物としては、非晶性ポリエステルが例示される。
好ましくは、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、(メタ)アクリレート化合物、カーボネート化合物、エステル化合物が例示され、より好ましくは、ポリビニルブチラール、ポリフェノキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリベンジル(メタ)アクリレート、非晶性ポリエステルが例示される。
熱電変換層14がCNTと界面活性剤とで構成されることにより、熱電変換層14の形成を、界面活性剤を添加した塗布組成物を用いて行うことができる。そのため、熱電変換層14の形成を、CNTを無理なく分散した塗布組成物で行うことができる。その結果、長くて欠陥が少ないCNTを多く含む熱電変換層14によって、良好な熱電変換性能が得られる。
従って、界面活性剤は、イオン性でも非イオン性でもよい。イオン性の界面活性剤は、カチオン性、アニオン性および両性のいずれでもよい。
一例として、アニオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸系界面活性剤、モノソープ系アニオン性界面活性剤、エーテルサルフェート系界面活性剤、フォスフェート系界面活性剤およびでデオキシコール酸ナトリウムやコール酸ナトリウム等のカルボン酸系界面活性剤、カルボキシメチルセルロースおよびその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩等の水溶性ポリマーなどが例示される。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などが例示される。両性界面活性剤としては、アルキルベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤などが例示される。
非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステルなどの糖エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレン樹脂酸エステルどの脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのエーテル系界面活性剤などが例示される。
中でも、イオン性の界面活性剤は好適に利用され、その中でも、コール酸塩やデオキシコール酸塩は好適に利用される。
界面活性剤/CNTの質量比を5以下とすることにより、より高い熱電変換性能が得られる等の点で好ましい。
なお、熱電変換層14が、CNTおよび界面活性剤以外のものを含有する場合には、その含有量は20質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。
具体的には、銅、銀、金、白金、ニッケル、クロム、銅合金などの金属材料、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化亜鉛(ZnO)等の各種のデバイスで透明電極として利用されている材料等が例示される。中でも、銅、金、白金、ニッケル、銅合金等は好ましく例示され、金、白金、ニッケルは、より好ましく例示される。
このようなバッファ層を有することにより、電極界面での抵抗が小さくなり、良好な熱電変換性能が得られる等の点で好ましい。
具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポルフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体等が例示される。
また、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体が例示される。
具体的には、特開2008−72090号公報の[0083]〜[0089]、特開2011−176259号公報の[0043]〜[0063]、特開2011−228614号公報の[0121]〜[0148]、特開2011−228615号公報の[0108]〜[0156]に記載される化合物等が例示される。
電子供与性の無機材料としては、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化クロム銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ガリウム銅、酸化ストロンチウム銅、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化インジウム銅、酸化インジウム銀、酸化イリジウム等が例示される。
電子受容性材料としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物等が例示される。
また、電子受容性有機材料でなくとも、十分な電子輸送性を有する材料ならば使用することは可能である。ポルフィリン系化合物や、DCM(4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(4−(ジメチルアミノスチリル))−4Hピラン)等のスチリル系化合物、4Hピラン系化合物を用いることができる。具体的には特開2008−72090号公報の[0073]〜[0078]に記載される化合物等が例示される。
また、本発明の熱電変換素子10において、第1基板12の高熱伝導部12bと、第2基板16が高熱伝導部16bとは、面方向において完全に重複しない(基板面と直交する方向から見た際に、完全に重複しない)。
前述のように、第1基板12および第2基板16は、共に、一方の面の半分が低熱伝導部で、残りの半分が高熱伝導部となる構成を有する。図示例においては、面方向に、電極20と電極24とによる通電方向(両電極の離間方向)に対面して端部を当接するように、第1基板12の高熱伝導部12bと第2基板16が高熱伝導部16bとが位置される。
本発明の熱電変換素子10は、熱電変換層14が熱伝導率が低い有機材料で形成されるため、面方向(面内)の長い距離の温度差によって、効率の良い発電が可能である。
すなわち、熱電変換層14の面方向に温度差を生じさせる熱電変換素子10においては、熱電変換層14の導電率を、厚さ方向より面方向を大きくすることにより、熱電変換層14において温度差が生じる方向と、導電率が高い方向すなわち発生した電気の通電方向とを、一致でき、発電効率を向上できる。
従って、本発明の熱電変換素子10によれば、有機材料からなる熱伝導率の低い熱電変換層14、面方向の長い距離の温度差、および、熱電変換層14における温度差の方向と通電方向との一致の相乗効果によって、非常に効率がよい熱電変換による発電が可能である。
具体的には、導電率の比が、面方向:厚さ方向(σ//:σ⊥)>10:1であるのが好ましく、さらに、面方向:厚さ方向>100:1であるのがより好ましく、特に、面方向:厚さ方向>1000:1であるのが好ましい。
熱電変換層14の導電率の異方性を上記範囲とすることにより、前述の温度差の方向と通電方向とを一致させることによる発電効率の向上効果を、より好適に得られる。
本発明の熱電変換素子は、これ以外にも、第1基板の高熱伝導部と、第2基板の高熱伝導部とが、面方向において完全に重複しなければ(基板面と直交する方向から見た際に、完全に重複しなければ)、各種の構成が利用可能である。
あるいは、高熱伝導部が離間する構成において、高熱伝導部12bおよび/または高熱伝導部16bに、他方に向かう凸部を設け、面方向において、両基板の高熱伝導部一部重複するようにしてもよい。
例えば、第1基板に円形の高熱伝導部を形成し、第2基板に直径と一辺の長さとが前記円形と一致する正方形の高熱伝導部を形成して、両高熱伝導部の中心を面方向で一致させるように、両基板を配置してもよい。この構成でも、距離は短いが、両高熱伝導部は、端部(周辺)の位置が面方向で異なるので、熱電変換層には面方向の温度差が生じ、厚さ方向に温度差を生じさせる熱電変換素子に比して、効率の良い発電が可能である。
なお、前述の図1(A)〜図1(C)と同様、図2(A)は上面図、図1(B)は正面図、図1(C)は底面図である。
具体的には、第1基板32の上に密着層34を有し、密着層34の上に熱電変換層36、電極46および電極48を有し、熱電変換層36、電極46および電極48を覆ってガスバリア層38を有し、ガスバリア層38の上に粘着層40を有し、粘着層40の上に第2基板42を有する。電極46および電極48(電極対)は、先の例と同様、面方向に熱電変換層36を挟むように設けられる。
これに対し、熱電変換素子30の第1基板32(第2基板42)は、矩形の板状(シート状)の低熱伝導部32aの半面を覆うように、低熱伝導部32aの表面に高熱伝導部32bを積層してなる構成を有する。第1基板32は、この形状の違い以外は、基本的に、前述の第1基板12と同様のものである。
密着層34は、主に、第1基板32と、電極46および電極48との密着性を得るために設けられる。
一例として、電極46および電極48が金、銀、銅等である場合には、密着層34としては、酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、クロム、チタン等からなる層が例示される。
密着層34を酸化珪素等で形成した場合には、第1基板32を通過した水分から熱電変換層36を保護する、ガスバリア層としての作用も得ることができる。
具体的には、10〜1000nmが好ましく、50〜200nmがより好ましい。
密着層34の厚さを10nm以上、特に50nm以上とすることにより、良好な電極46および電極48と第1基板32との密着性を得られる等の点で好ましい。
密着層34の厚さを1000nm以下、特に200nm以下とすることにより、熱電変換素子30(熱電変換モジュール)の薄膜化を計れる、可撓性の良好な熱電変換素子30を得ることができる、熱電変換層36への熱流が増加し、熱電変換素子30の熱電変換性能を高めることができる等の点で好ましい。
熱電変換層36は、前述の熱電変換層14と同様のものである。電極46および電極48は、形状が異なる以外には、基本的に、前述の電極20および電極24と同様のものである。
ここで、熱電変換素子30においては、電極46および電極48は、熱電変換層36の面方向の端面に当接するのみならず、端面から連続して、熱電変換層36の上面に至って、上面の端部近傍を覆うように形成される。すなわち、電極46および電極48は、密着層34の表面から立ち上がって、熱電変換層36の端面から、熱電変換層36の上面に至って、熱電変換層36の上面の端部近傍を覆うまで連続するように、形成される。
これに対して、図2(B)に示すように、電極46および電極48を、熱電変換層36の端面から熱電変換層36の上面の端部近傍に到るように形成することにより、熱電変換層36の端面の厚さ方向の全域を覆うようにして、端面に電流を入り易くし、かつ、端面から取り出し易くして、熱電変換性能を向上できる。また、熱電変換層36と電極46および電極48との接触面積も増やせるので、界面での抵抗を減らして、この点でも、熱電変換性能を向上できる。なお、電極同士による短絡が無ければ、熱電変換層36の上面を被覆するように電極を形成してもよい。
このガスバリア層38を有することにより、第2基板42を通過した水分等によって、熱電変換層36や電極46および電極48が劣化することを防止できる。また、このガスバリア層38を有することにより、熱電変換層36、電極46および電極48を上から押さえ付けて確実な密着を図れると共に、熱電変換素子30(熱電変換モジュール)を折り曲げた際の熱電変換層36、電極46および電極48の損傷も防止できる。
一例として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化インジウムスズ(ITO)などの金属酸化物; 窒化アルミニウムなどの金属窒化物; 炭化アルミニウムなどの金属炭化物; 酸化珪素、酸化窒化珪素、酸炭化珪素、酸化窒化炭化珪素などの珪素酸化物; 窒化珪素、窒化炭化珪素などの珪素窒化物; 炭化珪素等の珪素炭化物; これらの水素化物; これら2種以上の混合物; および、これらの水素含有物等の、無機化合物からなる膜が、好適に例示される。
特に、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化アルミニウムは、優れたガスバリア性を発現できる点で、好適に利用される。
具体的には、10〜1000nmが好ましく、50〜200nmがより好ましい。
ガスバリア層38の厚さを10nm以上、特に50nm以上とすることにより、良好なガスバリア性を得られる等の点で好ましい。
ガスバリア層38の厚さを1000nm以下、特に200nm以下とすることにより、熱電変換素子30(熱電変換モジュール)の薄膜化を計れる、可撓性の良好な熱電変換素子30を得ることができる等の点で好ましい。
粘着層18の形成材料は、ガスバリア層38(ガスバリア層38が無い場合には、電極および熱電変換層36)および第2基板42(低熱伝導部20a)の形成材料に応じて、両者を貼着可能なものが、各種、利用可能である。
具体的には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、EVA、α-オレフィンポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デンプン等が例示される。また、粘着層40は、市販の両面テープや粘着フィルムを利用して形成してもよい。
具体的には、5〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
粘着層40の厚さを5μm以上とすることにより、熱電変換層36に起因する段差を十分に埋めることができる、良好な密着性が得られる等の点で好ましい。
また、粘着層40の厚さを100μm以下、特に50μm以下とすることにより、熱電変換素子30(熱電変換モジュール)の薄膜化を計れる、可撓性の良好な熱電変換素子30を得ることができる、粘着層40の熱抵抗を小さくでき、より良好な熱電変換性能が得られる等の点で好ましい。
例えば、図3(A)に熱電変換素子10を例にして概念的に示すように、四角錐台状の熱電変換層14aであってもよい。あるいは、熱電変換層は、円柱状、四角以外の角柱状、円錐台、角錐台、不定形状等であってもよい。
これに対して、図3(A)に示す熱電変換層14aのように、面方向の端面をテーパ状にすることにより、熱電変換層14aと電極20および24との接触面積を多くできる。その結果、界面での抵抗を減らして、端面に電流を入り易くし、かつ、端面から取り出し易くして、熱電変換性能を向上できる。
なお、このような面方向の端面がテーパ状の熱電変換層14aであっても、電極は、図2(B)に示される例と同様に、熱電変換層14aの上面の一部を覆う構成を有するのが好ましい。
なお、図2(A)〜図2(C)に示す熱電変換素子30でも、同様にして、熱電変換モジュールを作製できる。
本例において、第1基板12Aおよび第2基板16Aは、矩形板状の低熱伝導材料に、長手方向に延在する溝を、延在方向と直交する方向に溝の幅と等間隔で形成して、この溝に高熱伝導を組み込んでなる構成を有する。すなわち、両基板は、一方の面に、一方向に延在する低熱伝導部12aと高熱伝導部12bとが、延在方向と直交する方向に等間隔で交互に形成された構成を有する(図4(A)、図4(C)および図4(D)参照)。
また、各熱電変換層14は、電極20(電極24)および接続配線26よって、直列に接続される。具体的には、図4(B)に示すように、図中横方向の熱電変換層14の配列において、電極20が、各熱電変換層14を横方向に挟むように設けられる。これにより、各熱電変換層14は、電極20によって横方向に接続される。加えて、図中横方向の熱電変換層14の配列において、最上段の列の左端の電極20と上から2列目の右端の電極とが接続配線26で接続され、上から2列目の左端の電極20と上から3列目の右端の電極20とが接続配線26で接続され、さらに、上から3列目の左端の電極20と上から4列目の右端の電極20とが接続配線26で接続される。
これにより、4×4で配列された16個の熱電変換素子が、図中横方向に一方向に向かう順番で、直列に接続される。
従って、第1基板12Aの低熱伝導部12aと第2基板16Aの高熱伝導部16bとが面方向に一致して対面し、第1基板12Aの高熱伝導部12bと第2基板16Aの低熱伝導部16aとが面方向に一致して対面する。
これにより、本発明の熱電変換素子10を16個、直列に接続してなる、熱電変換モジュールが構成される。
この分散および塗布組成物の調製は、高速旋回薄膜分散法を利用して行うのが好ましい。
高速旋回薄膜分散法とは、分散対象物を含む組成物を遠心力により装置内面に薄膜円筒状に押し付けた状態で高速回転させて、遠心力および装置内面との速度差により発生する摺接の応力を分散対象物を含有する組成物に作用させることにより、薄膜円筒状の組成物内で分散対象物を分散させる分散方法である。
この予備混合物には、必要に応じて、分散剤、非共役高分子、ドーパント、熱励起アシスト剤等の各種の成分を添加してもよい。
予備混合は、通常の混合装置を用いて行えばよい。
高速旋回薄膜分散法は、一例として、断面が円形の管状外套と、管状外套内に管状外套と同心に回転可能に配置された管状の撹拌羽根と、撹拌羽根の下方に開口する注入管とを備え、撹拌羽根が、管状外套の内周面にわずかな間隔を開けて面する外周面と、撹拌羽根の管状壁に厚さ方向に貫通する多数の貫通孔を有する装置を用いて、実施できる。このような装置としては、例えば、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス」(登録商標)シリーズ(プライミクス社製)が好適に例示される。
このような高速旋回薄膜分散法によれば、CNTを切断することなく、樹脂材料に分散できる。そのため、高速旋回薄膜分散法によって調製した塗布組成物を用いて、熱電変換層14を形成することにより、長さが1μm以上のCNTが分散された熱電変換層14を形成できる。これにより、導電率の比が、面方向:厚さ方向>10:1、好ましくは面方向:厚さ方向>100:1、より好ましくは面方向:厚さ方向>1000:1の熱電変換層14を形成できる。
第1基板12および第2基板16は、市販品を利用すればよい。あるいは、フォトリソグラフィー、エッチング、成膜技術等を利用して、公知の方法で第1基板12および第2基板16を作製してもよい。
なお、図2(A)〜図2(C)に示されるような第1基板32(第2基板42)は、一例として、低熱伝導部32aとなるシート状物に、シート状(もしくは帯状)の高熱伝導部32bを貼着することで、低熱伝導部32aに高熱伝導部32bを積層してなる第1基板32を作製すればよい。あるいは、低熱伝導部32aとなるシート状物の全面に高熱伝導部32bとなる層を形成してなるシート状物を用意し、この高熱伝導部32bとなる層をエッチングして不要な部分を除去することにより、低熱伝導部32aに高熱伝導部32bを積層してなる第1基板32を作製してもよい。
塗布組成物を塗布したら、樹脂材料に応じた方法で塗布組成物を乾燥、硬化して、熱電変換層14を形成する。なお、必要に応じて、塗布組成物を乾燥した後に、紫外線照射等による塗布組成物(樹脂材料)の硬化を行ってもよい。
あるいは、第1基板12の高熱伝導部12bが形成されていない側の表面全面に、調製した熱電変換層14となる塗布組成物を塗布し、乾燥した後、エッチング等によって、熱電変換層14をパターン形成してもよい。
印刷によって熱電変換層をパターン形成することにより、図3(A)に示すような、面方向の端面がテーパ状の熱電変換層14aを簡易かつ好適に形成できる。
印刷方法は、スクリーン印刷、メタルマスク印刷、ステンシル印刷等、公知の各種の印刷法が利用可能である。
電極20および電極24の形成は、電極20および電極24の形成材料等に応じて、公知の方法で行えばよい。
なお、熱電変換層14となる塗布組成物を第1基板12に塗布した後、半硬化した状態で、電極20および電極24を形成し、さらに第2基板16を積層した後、塗布組成物を完全に硬化して、熱電変換素子10を作製してもよい。
この場合には、図3(B)に概念的に示す熱電変換層14bのように、熱電変換層の端部が、電極20および電極24の端部を覆うような構成でもよい。
密着層34の形成は、密着層34の形成材料に応じて、公知の方法で行えばよい。例えば、密着層34が酸化珪素からなるものである場合には、EB(Electron Beam)蒸着法やスパッタリングによって、密着層34を形成すればよい。
次いで、ガスバリア層38の上に、粘着層40を形成する。粘着層40も、粘着層の形成材料に応じて、塗布法等の公知の方法で形成すればよい。あるいは、両面粘着テープを用いて、粘着層40を形成してもよい。
最後に、全面が低熱伝導部42a側の面を粘着層40に向けて、第2基板42を粘着層40に貼着して、熱電変換素子30(熱電変換モジュール)とする。
モジュールの加熱側もしくは冷却側に貼付して用いられる熱伝導接着シートとしては特に限定はないが、市販されている放熱シートを用いることができる。一例として、信越化学工業社製のTC−50TX2、住友スリーエム社製のハイパーソフト放熱材5580H、電気化学工業社製のBFG20A、日東電工社製のTR5912F等が例示される。なお、耐熱性の観点から、シリコーン系粘着剤からなる熱伝導接着シートが好ましい。
熱伝導接着シートを用いることで、(1)熱源との密着性が向上し、モジュールの加熱側の表面温度が高くなる、(2)冷却効率が向上し、モジュールの冷却側の表面温度を低くできるなどの効果により、発電量を高くすることができる。
また、熱電変換素子30(熱電変換モジュール)の冷却側の表面には、ステンレス、銅、アルミ等の公知の材料からなる放熱フィンやヒートシンクを設けてもよい。
放熱フィンを用いることで、熱電変換素子の低温側をより好適に冷却することができ、温度差が大きくなり、熱電効率がより向上する点で好ましい。
一例として、温泉熱発電機、太陽熱発電機、廃熱発電機などの発電機や、腕時計用電源、半導体駆動電源、小型センサ用電源などの各種装置(デバイス)の電源等、様々な発電用途が例示される。また、本発明の熱電変換素子の用途としては、発電用途以外にも、感熱センサや熱電対などのセンサー素子用途も例示される。
<熱電変換層となる塗布組成物の調製>
<<樹脂の合成>>
250mL容の3つ口フラスコに、メチルメタクリレートを100g、チオプロピオン酸を0.35g投入して、80℃に加熱した。加熱後にAIBN(アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬社製)を17mg投入して、40分反応させ、その後、繰り返して2回、AIBNを17mg投入して、40分反応させた。その後、テトラヒドロフランを10g投入して、反応を終了させた。反応液を再沈殿させ、中間体Aを60g得た。
250mL容の3つ口フラスコに、得られた中間体Aを15g、キシレンを30g、グリシジルメタクリレートを0.28g、ハイドロキノンを0.01g、ジメチルラウリルアミンを0.01g投入して、リフラックス条件下で5時間反応させた。その後、反応液を再沈殿させ、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のマクロモノマーを10g得た。
300mL容の3つ口フラスコ中に、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを0.27g、上記で合成したPMMAのマクロモノマーを4g、ジメチルアセトアミドを8g投入して、80℃に加熱した。その後、重合開始剤(和光純薬社製、V−601)を0.0127g投入して、2時間反応させた。さらに、同じ重合開始剤を0.0127g投入して2時間反応させる工程を、2度繰り返した。
得られた反応液を再沈殿させて、下記式で示される樹脂を3g得た。
単層CNT(KH Chemical社製、HP、CNTの平均長さ5μm以上)と、合成した樹脂とを、質量比がCNT/樹脂成分の比で25/75となるように、20mlのo−ジクロロベンゼンに加えて調整した。
この溶液を、メカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH-FLEX HOMOGENIZER HF93)を用いて、20℃で15分間、混合して、予備混合物を得た。
得られた予備混合物を、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」(プライミクス社製)を用いて、10℃の恒温層中、周速40m/secで5分間、高速旋回薄膜分散法で分散処理して、熱電変換層14となる塗布組成物を調製した。
この塗布組成物を、厚さ25μmのプラスチックフィルムに塗布して、乾燥することで、厚さ100μmの熱電変換層を形成した。
走査型電子顕微鏡(SEM)によって確認したところ、熱電変換層に含まれる単層CNTは、長さが1μmを十分に超えていた。
形成した熱電変換層の面方向の導電率(σ//)、厚さ方向の導電率(σ/⊥)、および、ゼーベック係数S(温度差ΔT=10K)を測定した。
その結果、面方向の導電率は123[S/cm]、厚さ方向の導電率は11[S/cm]、ゼーベック係数は35[μV/K]であった。
図4(A)、図4(C)および図4(D)に概念的に示すような、ポリイミドからなる低熱伝導部(12a、16a)および銅からなる高熱伝導部(12b、16b)を有する、2枚の基板(12A、16A)を用意した。
基板の厚さは50μm、高熱伝導部の厚さは40μm、高熱伝導部の露出面における単手方向の低熱伝導部および高熱伝導部の幅は5mmであった。
さらに、もう1枚の基板を第2基板16Aとして、高熱伝導部16bの非露出面を熱電変換層14に向けて、図4(A)に概念的に示すように積層した。第2基板16Aは、熱電変換層14の面方向の中心が低熱伝導部16aと高熱伝導部16bとの境界と一致するように積層した。
これにより、16個の熱電変換素子からなる、図4(A)〜図4(D)に概念的に示すような熱電変換モジュールを作製した。
同じ熱電変換層となる塗布組成物を用いて、図3に示す、従来の一般的な熱電変換素子(uni leg型の熱電変換素子)を16個、接続配線60によって直列に接続した熱電変換モジュール50を作製した。
基板52は、厚さ25μmのポリイミドフィルムを用いた。電極54および58、接続配線60は、銅を用いた。
熱電変換層56は、厚さが100μmで、5×5mmの直方体とした。
このようにして得られた実施例1および比較例1の熱電変換モジュールを、サンプルの上下に温度差を10℃付けた状態で出力を測定した。
その結果、比較例1の熱電変換モジュールの出力を1に規格化した際における実施例1の相対出力は、11であった。
単層CNTを変更(名城ナノカーボン社製CNT、CNTの平均長さ1μm以上)した以外は、実施例1と同様にして、熱電変換層となる塗布組成物を調製した。
この塗布組成物について、実施例1と同様にして厚さ100μmの熱電変換層を作製した。実施例1と同様に確認したところ、熱電変換層に含まれる単層CNTは、長さが1μmを十分に超えていた。
作製した熱電変換層について、実施例1と同様に、面方向の導電率、厚さ方向の導電率、および、ゼーベック係数Sを測定した。
その結果、面方向の導電率は1990[S/cm]、厚さ方向の導電率は2[S/cm]、ゼーベック係数は56[μV/K]であった。
その結果、比較例2の熱電変換モジュールの出力を1に規格化した際における実施例2の相対出力は、995であった。
PEDOTをポリスチレンスルフォネート(Poly(styrenesulfonate) PSS)に分散してなるPEDOT・PSS溶液(製品名:Clevios PH1000、ヘレウス社製)に、エチレングリコールを3質量%添加して、熱電変換層となる塗布組成物を調製した。
この塗布組成物を厚さ25μmのプラスチックフィルムに塗布して、乾燥することで、厚さ50nmの熱電変換層を作製した。
作製した熱電変換層について、実施例1と同様にして面方向の導電率、厚さ方向の導電率、および、ゼーベック係数Sを測定した。
その結果、面方向の導電率は900[S/cm]、厚さ方向の導電率は2[S/cm]、ゼーベック係数は28[μV/K]であった。
その結果、比較例3の熱電変換モジュールの出力を1に規格化した際における実施例3の相対出力は、450であった。
接着剤フリーの銅張ポリイミド基板(FELIOS R-F775、パナソニック電工社製)を用意した。この銅張ポリイミド基板は、サイズが80×80mmで、ポリイミド層の厚さが20μm、銅層の厚さが70μmのものである。
この銅張ポリイミド基板の銅層をエッチングして、1mm幅で、1mm間隔の銅ストライプパターンを形成した。これにより、厚さ20μmのシート状の低熱伝導部の表面に、厚さ70μmで幅1mmの帯状の高熱伝導部が、帯の延在方向と直交する方向に1mm間隔で配列された第1基板および第2基板を作製した。
なお、1×1mmのパターンは、中心が帯状の高熱伝導部と低熱伝導部との境目に位置するように作製した。
次いで、ガスバリア層の上に、粘着層として、厚さ25μmの両面テープ(日東電工社製、両面テープNo.5603)を貼着した。
さらに、粘着層の上に、全面が低熱伝導部である面を粘着層に向けて、第2基板を貼着した。なお、第2基板は、高熱伝導部の延在方向を第1基板と一致して、高熱伝導部と低熱伝導部との端辺を一致して、高熱伝導部と低熱伝導部とが第1基板と互い違いになるように、粘着層に貼着した(図4(A)〜図4(C)参照)。
これにより、図2(A)〜図2(C)に示される熱電変換素子と同様の層構成を有する885個の熱電変換素子を直列に接続してなる熱電変換モジュールを作製した。
実施例4と同様の第1基板および第2基板を用意した。
この第1基板の全面が低熱伝導部である面に、メタルマスクを用いた真空蒸着法によって、密着層として厚さ100nmのクロム(Cr)層を形成した。
クロム層の上に、メタルマスクを用いた真空蒸着法によって、実施例4と同じ885個の熱電変換層に対応して、厚さ1000nmの金(Au)からなる電極および接続配線を形成した。
次いで、実施例4と同様にして、885個の熱電変換層を作製した。
次いで、第1基板の熱電変換層および電極を形成した面を全面的に覆うように、粘着層として実施例4と同じ両面テープを貼着し、さらに、実施例4と同様に第2基板を貼着した。
これにより、ガスバリア層38を有さない以外は、図2(A)〜図2(C)に示される熱電変換素子と同様の層構成を有する885個の熱電変換素子を直列に接続してなる熱電変換モジュールを作製した。
単層CNT(名城ナノカーボン社製CNT、CNTの平均長さ1μm以上)50mgと、界面活性剤(和光純薬社製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)150mgとを、イオン交換水20mlに添加した溶液を調製した。
この溶液を、メカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH-FLEX HOMOGENIZER HF93)を用いて、20℃で5分間(18000rpm)、混合して予備混合物を得た。
得られた予備混合物を、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」(プライミクス社製)を用いて、10℃に冷却しながら、周速30m/secで5分間、高速旋回薄膜分散法で分散処理して、熱電変換層となる塗布組成物を調製した。
作製した熱電変換層について、実施例1と同様に、面方向の導電率、厚さ方向の導電率、および、ゼーベック係数Sを測定した。
その結果、面方向の導電率は450[S/cm]、厚さ方向の導電率は15[S/cm]、ゼーベック係数は52[μV/K]であった。
これにより、ガスバリア層38を有さない以外は、図2(A)〜図2(C)に示される熱電変換素子と同様の層構成を有する885個の熱電変換素子を直列に接続してなる熱電変換モジュールを作製した。
第1基板および第2基板において、帯状の高熱伝導部の幅(銅ストライプの幅)を0.975mmとし、帯状の高熱伝導部の形成間隔(銅ストライプの形成間隔)を1.025mmとし、かつ、実施例4と同様にガスバリア層を形成した以外は、実施例6と同様にして、熱電変換モジュールを作製した。
なお、この熱電変換モジュールにおいて、第2基板の貼着は、第1基板および第2基板の帯状の高熱伝導部の端辺を一致させずに、短辺が高熱伝導部の配列方向(すなわち通電方向)に0.25μmの間隔が開くように行った。
これにより、図2(A)〜図2(C)に示される熱電変換素子と同様の層構成を有する885個の熱電変換素子を直列に接続してなる熱電変換モジュールを作製した。
熱電変換層を形成した後、熱電変換層の電極接続部に、メタルマスクを用いる真空蒸着法によって厚さ10nmのバッファ層(関東化学製、F4:TCNQ)を形成し、かつ、密着層およびガスバリア層を形成しない以外は、実施例1と同様にして、熱電変換モジュールを作製した。
これにより、密着層およびガスバリア層を有さない以外は、図2(A)〜図2(C)に示される熱電変換素子と同様の層構成を有する885個の熱電変換素子を直列に接続してなる熱電変換モジュールを作製した。
このようにして作製した実施例4〜8の熱電変換モジュールについて、発電量、屈曲試験および耐熱性試験を行った。
<発電量>
作製した熱電変換モジュールを、加熱した銅プレートと、冷水循環装置を接続した銅プレートとで挟持して、両銅プレートの温度差が10℃になるように、加熱した銅プレートの温度を調節した。
さらに、直列に接続した最上流の熱電変換層の電極および最下流の熱電変換層の電極とを、ソースメーター(ケースレー社製、ソースメーター2450)とを接続し、開放電圧と短絡電流を計測し、下記式から発電量を求めた。
(発電量)=0.25×(開放電圧)×(短絡電流)
発電量を測定した後、JIS K 5600に準じて熱電変換モジュールの屈曲試験を行った。円筒形マンドレルは直径32mmのものを用い、180°折り曲げとした。
屈曲試験を行った後、先と同様に熱電変換モジュールの発電量を測定し、発電量の比較を行い、発電量の変化率を求め、変化率を下記の評価基準にて、判定した。
A: 変化率5%以内
B: 変化率5%超20%以内
作製した熱電変換モジュールを、温度150℃の恒温槽内に1000時間、放置した後、上記と同様にして、発電量を測定し、加熱試験前の発電量との変化率を求め、変化率を下記評価基準にて、判定した。
A: 変化率5%以内
B: 変化率5%超20%以内
結果を下記の表に示す。
上記表に示されるように、密着層を有する実施例4〜7は、屈曲試験において優れた結果が得られている。密着層およびバリア層を両方とも有する実施例4および7は、屈曲試験および耐熱性試験共に、優れた結果が得られている。
CNTと界面活性剤とからなる熱電変換層を有する実施例6および7は、良好な発電量を有し、特に第1基板と第2基板とで高熱伝導部が通電方向に離間する実施例7は、良好な発電量が得られている。
熱電変換層と電極との間にバッファ層を有する実施例8は、同じ熱電変換層を用いる実施例4等に比して、良好な発電量が得られている。
なお、屈曲試験および耐熱性試験は、共に、評価が『B』であっても、熱電変換モジュールとしては十分に使用可能である。
表面温度が80℃で、直径が120mmの曲面状の加熱源に、熱伝導接着シート(日東電工社製、TR5912F)を用いて、実施例7と同様の方法で作製した熱電変換モジュールを接着した。
さらに、熱電変換モジュールの表面に、先と同じ熱伝導接着シートを用いて、サイズ80×80mmのコルゲートフィン(最上インクス社製、OA-5B2D75B)を接着した。
直列に接続した最上流の熱電変換層の電極および最下流の熱電変換層の電極と、ソースメーター(ケースレー社製、ソースメーター2450)とを接続し、開放電圧と短絡電流を計測し、発電量を求めたところ、0.82μWの出力が得られた。
この結果から、本発明の熱電変換素子(本発明の熱電変換素子を用いる熱電変換モジュール)は、空冷でも発電することが分かった。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
12,12A,32 第1基板
12a,16a,30a,42a 低熱伝導部
12b,16b,30b,42b 高熱伝導部
14,36,56 熱電変換層
16,16A,42 第2基板
20,24,46,48,54,58 電極
26,60 接続配線
34 密着層
38 ガスバリア層
40 粘着層
50 熱電変換モジュール
52 基板
熱電変換材料としては、具体的には、導電性高分子や導電性ナノ炭素材料等の有機材料を用いることができる。
また、本発明の熱電変換素子10において、第1基板12の高熱伝導部12bと、第2基板16の高熱伝導部16bとは、面方向において完全に重複しない(基板面と直交する方向から見た際に、完全に重複しない)。
前述のように、第1基板12および第2基板16は、共に、一方の面の半分が低熱伝導部で、残りの半分が高熱伝導部となる構成を有する。図示例においては、面方向に、電極20と電極24とによる通電方向(両電極の離間方向)に対面して端部を当接するように、第1基板12の高熱伝導部12bと第2基板16の高熱伝導部16bとが位置される。
本発明の熱電変換素子は、これ以外にも、第1基板の高熱伝導部と、第2基板の高熱伝導部とが、面方向において完全に重複しなければ(基板面と直交する方向から見た際に、完全に重複しなければ)、各種の構成が利用可能である。
あるいは、高熱伝導部が離間する構成において、高熱伝導部12bおよび/または高熱伝導部16bに、他方に向かう凸部を設け、面方向において、両基板の高熱伝導部が一部重複するようにしてもよい。
なお、図2(A)〜図2(C)に示す熱電変換素子30でも、同様にして、熱電変換モジュールを作製できる。
本例において、第1基板12Aおよび第2基板16Aは、矩形板状の低熱伝導材料に、長手方向に延在する溝を、延在方向と直交する方向に溝の幅と等間隔で形成して、この溝に高熱伝導材料を組み込んでなる構成を有する。すなわち、両基板は、一方の面に、一方向に延在する低熱伝導部12aと高熱伝導部12bとが、延在方向と直交する方向に等間隔で交互に形成された構成を有する(図4(A)、図4(C)および図4(D)参照)。
同じ熱電変換層となる塗布組成物を用いて、図5に示す、従来の一般的な熱電変換素子(uni leg型の熱電変換素子)を16個、接続配線60によって直列に接続した熱電変換モジュール50を作製した。
基板52は、厚さ25μmのポリイミドフィルムを用いた。電極54および58、接続配線60は、銅を用いた。
熱電変換層56は、厚さが100μmで、5×5mmの直方体とした。
Claims (20)
- 面方向の少なくとも一部に他の領域よりも熱伝導率が高い高熱伝導部を有する第1基板と、
前記第1基板の上に形成される、有機材料からなり、かつ、厚さ方向より面方向の方が導電率が高い熱電変換層と、
前記熱電変換層の上に形成される、面方向の少なくとも一部に他の領域よりも熱伝導率が高い高熱伝導部を有し、かつ、面方向において自身の前記高熱伝導部が前記第1基板の高熱伝導部と完全に重複しない第2基板と、
面方向に前記熱電変換層を挟むように、前記熱電変換層に接続される一対の電極とを有することを特徴とする熱電変換素子。 - 前記熱電変換層の面方向と厚さ方向との導電率の比が、面方向:厚さ方向>10:1である請求項1に記載の熱電変換素子。
- 前記熱電変換層の面方向と厚さ方向との導電率の比が、面方向:厚さ方向>100:1である請求項2に記載の熱電変換素子。
- 前記熱電変換層が、カーボンナノチューブを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
- 前記熱電変換層が、樹脂材料にカーボンナノチューブを分散してなるものである請求項4に記載の熱電変換素子。
- 前記熱電変換層が、カーボンナノチューブと界面活性剤とを含有する請求項4に記載の熱電変換素子。
- 前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブであり、長さが1μm以上である請求項4〜6のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
- 前記熱電変換層が、導電性高分子を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
- 前記導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である請求項8に記載の熱電変換素子。
- 前記第1基板の高熱伝導部と前記第2基板の高熱伝導部とが、面方向において、前記電極の離間方向に異なる位置に設けられる請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
- 前記第1基板の高熱伝導部および前記第2基板の高熱伝導部が、積層方向に対して外面に位置する請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
- 前記第1基板と前記電極対との間に、密着層を有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
- 前記熱電変換層および電極対を覆って、ガスバリア層を有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
- 前記熱電変換層の面方向の端面がテーパ状である請求項1〜13のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
- 前記電極対の各電極が、前記熱電変換層の面方向の端面から上面に到るように形成される請求項1〜14のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
- 前記電極対の形成材料が金であり、前記電極対の少なくとも一方の電極と熱電変換層との間に、バッファ層を有する請求項1〜15のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
- 少なくともカーボンナノチューブと分散媒とを含む溶液を、高速旋回薄膜分散法によって処理して、前記分散媒中にカーボンナノチューブを分散してなるCNT塗布液を調製する工程、
面方向の少なくとも一部に他の領域よりも熱伝導率が高い高熱伝導部を有する第1基板に、前記CNT塗布液を塗布、乾燥して、熱電変換層を形成する工程、
面方向に挟むようにして、前記熱電変換層に電極対を接続する工程、
および、前記熱電変換層の上に、面方向の少なくとも一部に、他の領域よりも熱伝導率が高い高熱伝導部を有し、かつ、面方向おいて自身の前記高熱伝導部が前記第1基板の高熱伝導部と完全に重複しないように第2基板を積層する工程、とを有することを特徴とする熱電変換素子の製造方法。 - 前記CNT塗布液に含まれる分散媒が、樹脂材料である請求項17に記載の熱電変換素子の製造方法。
- 前記CNT塗布液に含まれる分散媒が水であり、かつ、前記CNT塗布液が、界面活性剤を含有する請求項17に記載の熱電変換素子の製造方法。
- 前記熱電変換層を形成する工程において、前記第1基板へのCNT塗布液を塗布を印刷によって行う請求項17〜19のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
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