JPWO2015093536A1 - 位置決め装置、これを備えている回転機械、及び位置決め方法 - Google Patents

位置決め装置、これを備えている回転機械、及び位置決め方法 Download PDF

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Abstract

外側部材(11)には、外周側から内周側に貫通したピン挿通孔(12)が形成されている。内側部材(6)には、外周側から内周側に向かって凹んだピン溝(7)が形成されている。位置決め装置(20)は、外側部材(11)のピン挿通孔(12)と内側部材(6)のピン溝(7)とに入り込むピン21と、ピン溝(7)の溝側面(8)に接するライナ押え(31)と、ライナ押え(31)とピン溝(7)内のピン(21)との間に配置されるライナ(41)と、を備える。

Description

本発明は、軸線を中心として周方向に延びる外側部材に対して、外側部材の内周側に配置され軸線を中心として周方向に延びる内側部材を位置決めする位置決め装置、これを備えている回転機械、及び位置決め方法に関する。本願は、2013年12月19日に、日本国に出願された特願2013−262891号に基づき優先権を主張し、この内容をここに援用する。
蒸気タービン、ガスタービンあるいは圧縮機等の回転機械は、ロータ軸と、このロータ軸を中心として周方向に延びるケーシング等の外側部材と、この外側部材の内周側に配置されロータ軸を中心として周方向に延びる内側部材とを備えている。このような回転機械では、外側部材に対する相対位置が定まっているロータ軸に対して、内側部材の相対位置を合わせるために位置決め装置が用いられることがある。
このような位置決め装置としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。この位置決め装置は、外側部材である車室のピン挿通孔と内側部材である翼環の溝とに入り込むラジアルピンと、ラジアルピンの先端部と溝の溝側面との間に配置されているライナと、ライナをラジアルピンの先端部に固定するボルトと、を備えている。ライナには、溝側面に接する溝接触面と、ラジアルピンの先端部に接触するピン接触面とが形成されている。さらに、このライナには、溝接触面からピン接触面に向かって貫通してボルトのネジ部が挿通されるネジ挿通孔と、ネジ挿通孔と連通しボルトのボルト頭部が収まるボルト頭収納凹部とが形成されている。
実開昭61−017104号公報
上記特許文献1に記載の技術では、外側部材に対する相対位置が定まっているロータ軸に対して、内側部材の相対位置を合わせるために、溝接触面とピン接触面との間隔寸法が調整された固有のライナを別途製造するか、又は、溝接触面とピン接触面との間隔寸法が互いに異なる複数のライナを予め準備しておく必要がある。ところで、上記特許文献1のライナには、ネジ挿通孔及びボルト頭収納凹部を形成する必要がある。このため、特許文献1に記載の技術では、上記のように、固有のライナを別途製造する場合でも、複数のライナを予め準備しておく場合でも、位置決め装置の製造コストがかさむという問題点がある。
そこで、本発明は、従来技術の問題点に着目し、位置決め装置の製造コストを抑えることができる技術を提供することを目的とする。
上記問題点を解決するための発明の一態様としての位置決め装置は、
軸線を中心として周方向に延びる外側部材に対して、前記外側部材の内周側に配置され軸線を中心として周方向に延びる内側部材を位置決めする位置決め装置において、前記外側部材の外周側から内周側に貫通したピン挿通孔と前記内側部材の外周側から内周側に向かって凹んだ溝とに入り込むピンと、前記溝の溝側面に接するライナ押えと、前記ライナ押えと前記溝内の前記ピンとの間に配置されるライナと、を備える。
当該位置決め装置では、ライナ押えを有するので、ライナには、これをピンに固定するボルト(又はネジ)の頭部を収納するボルト頭収納凹部(又はネジ頭収納凹部)を形成する必要がない。このため、厚さの異なる複数のライナを予め準備しておいても、位置決め装置の製造コストを抑えることができる。
ここで、前記位置決め装置において、前記ピンは、前記外側部材の前記ピン挿通孔に挿通される挿通部と、前記内側部材の前記溝に入り込む溝挿入部と、を有し、前記ライナ押えは、前記溝の互いに対向する一対の前記溝側面のうちの第一溝側面と前記ピンの前記溝挿入部との間に配置される第一ライナ押えと、一対の前記溝側面のうちの第二溝側面と前記ピンの前記溝挿入部との間に配置される第二ライナ押えと、を有し、前記ライナは、前記溝挿入部と前記第一ライナ押えとの間と、前記溝挿入部と前記第二ライナ押えとの間とのうち、少なくとも一方の間に配置されていてもよい。
前記溝挿入部を有する前記ピンを備える前記位置決め装置において、前記ライナ押えと前記ライナとを前記ピンの前記溝挿入部に固定するライナ固定具を備えてもよい。
また、前記ライナ固定具を備える前記位置決め装置において、前記ライナ固定具は、円柱状のネジ部と、前記ネジ部の端部に設けられているネジ頭部と、を有する固定ネジであり、前記ピンの前記溝挿入部には、前記固定ネジの前記ネジ部が捻じ込まれるネジ穴が形成され、前記ライナには、前記固定ネジの前記ネジ部が挿通されるネジ挿通部が形成され、前記ライナ押えには、前記固定ネジの前記ネジ部が挿通されるネジ挿通部と、前記ネジ挿通部に連通し前記固定ネジの前記ネジ頭部が収まるネジ頭収納凹部と、が形成されていてもよい。
また、前記溝挿入部を有する前記ピンを備える、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記ピンの前記溝挿入部には、互いに相反する方向に向いている一対のライナ接触面と、一対の前記ライナ接触面に対して凹状又は凸状を成す係合部とが形成され、前記ライナ押えには、前記溝側面に接する溝接触面と、前記溝接触面が向く方向に対して反対側を向くライナ接触面と、前記ライナ接触面に対して凸状又は凹状を成し前記係合部に係合する被係合部とが形成されていてもよい。
当該位置決め装置では、ピン中の所定の位置にライナ押えを容易かつ正確に取り付けることができる。
前記ピンに前記係合部が形成されている前記位置決め装置において、前記ピンの前記係合部は、前記ピンの前記ライナ接触面に対して凹み又は突出し、前記ライナ接触面に沿って前記ピンの前記ピン挿通孔に対する挿通方向に長く、前記挿通方向に対して垂直な方向に互いの間隔をあけて形成されている一対の第一係合部を有し、前記ライナ押えの前記被係合部は、前記ライナ押えの前記ライナ接触面に対して突出し又は凹み、前記挿通方向に長く、前記挿通方向に対して垂直な方向に互いの間隔をあけて形成され、前記一対の第一係合部がそれぞれ係合する第一被係合部を有し、前記ライナは、一対の前記第一係合部の間に配置されていてもよい。
当該位置決め装置では、内部に流体が流れる回転機械でも、ライナに対する流体の接触を抑制することできる。このため、例えば、ライナが流体により腐食するような場合でも、この腐食を抑制することができる。
前記ピンに前記係合部が形成されている、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記ピンの前記係合部は、前記ピンの前記ライナ接触面に対して凹み又は突出し、前記ライナ接触面に沿って前記ピンの前記ピン挿通孔に対する挿通方向に垂直な方向に長い第二係合部を有し、前記ライナ押えの前記被係合部は、前記ライナ押えの前記ライナ接触面に対して突出し又は凹み、前記挿通方向に垂直な方向に長く、前記第二係合部に係合する第二被係合部を有してもよい。
当該位置決め装置では、ピンに対するライナ押えの挿通方向の移動を規制することができる。このため、当該位置決め装置では、ピンをピン溝及びピン挿通孔から外す際、ライナ押えのピン溝内残留を抑制することができる。
前記ピンの前記溝挿入部に係合部が形成されている、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記ライナは、前記ピンの前記溝挿入部と前記ライナ押えとの間であって、前記溝挿入部の前記係合部及び前記ライナ押えの前記被係合部を避けた位置に配置されてもよい。
当該位置決め装置では、ライナがピンの溝挿入部に対して固着しにくく、位置決め装置の取外しの際、ピンからライナを容易に取り外すことができる。
また、前記溝挿入部を有する前記ピンを備える、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記外側部材の外周側には、前記ピン挿通孔に連通し、前記ピン挿通孔よりも径が大きく外周側から内周側に向かって凹む凹部が形成されており、前記外側部材と前記ピンとの間をシールするシール材を備え、前記ピンは、前記ピン挿通孔に対する挿通方向であって、前記挿通部における前記溝挿入部と反対側に形成され、前記挿通部の径よりも大きな径で前記凹部に収納可能な頭部フランジを有し、前記シール材は、前記ピンの前記頭部フランジと前記凹部の底面との間に配置されていてもよい。
当該位置決め装置では、内部に流体が流れる回転機械でも、外側部材のピン挿通孔から流体の外部への流出を抑えることができる。
また、前記溝挿入部を有する前記ピンを備える、以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記外側部材の前記ピン挿通孔は、円柱状の孔であり、前記ピンの前記挿通部は、円柱状を成し、前記溝挿入部は、円柱状の前記挿通部の外周面の一部が延長された周面である側周面と、前記挿通部の外周面を延長した仮想外周面よりも内側に位置して前記ライナ押えが固定される面と、を有し、前記溝挿入部に前記ライナ押えが固定された際、前記ライナ押えは、前記仮想外周面よりも前記内側に位置してもよい。
当該位置決め装置では、円柱形状のピン挿入孔に対して、溝挿通部にライナ押えが固定されているピンを容易に挿入することができる。
以上のいずれかの前記位置決め装置において、前記外側部材の外周側には、前記ピン挿通孔に連通し、外周側から内周側に向かって凹む凹部が形成されており、前記凹部の側周面には雌ネジが形成され、前記雌ネジに螺合し前記ピンの頭部に接するピン押えネジを備えてもよい。
当該位置決め装置では、ピン挿通孔からのピンの脱落を防止することができる。さらに、当該位置決め装置では、ピン挿通孔に挿通されているピンを取り外す際、ピン押えネジを緩めて、このピン押えネジを外すことで、ピンを簡単に取り外すことができる。
前記ピン押えネジを有する前記位置決め装置において、前記ピン押えネジの一部に係合すると共に、前記外側部材の一部に係合して、前記ピン押えネジの前記雌ネジに対する緩み方向の回転を規制する緩み止め具を備えてもよい。
当該位置決め装置では、ピン押えネジの緩みを規制することができる。このため、ピン押えネジの脱落に伴うピンの脱落を抑えることができる。
上記問題点を解決するための発明の一態様としての回転機械は、
以上のいずれかの前記位置決め装置と、前記外側部材と、前記内側部材と、前記内側部材の内周側に配置され、前記軸線を中心として回転するロータと、を備える。
この場合、前記ロータは、蒸気タービンロータであってもよい。すなわち、前記回転機械は、蒸気タービンであってもよい。
上記問題点を解決するための発明の一態様としての位置決め方法は、
以上のいずれかの前記位置決め装置を用いて、前記外側部材に対する前記内側部材の位置を決める位置決め方法において、前記外側部材の前記ピン挿通孔及び前記内側部材の前記溝に入り込む仮ピンを有する仮位置決め装置を用いて、前記外側部材に対して前記内側部材を仮位置決めする仮位置決め工程と、前記仮位置決めされた前記内側部材の前記外側部材に対する位置ズレ量を計測するズレ計測工程と、前記位置決め装置における前記ピンと前記ライナ押えとの間に、前記位置ズレ量に応じた厚さ寸法の前記ライナを配置して調整された調整済みピンを組み立てる調整済みピン組立工程と、前記内側部材を前記外側部材に対して相対移動可能に仮保持する仮保持工程と、前記外側部材及び仮保持されている前記内側部材から前記仮位置決め装置を取り外す仮位置決め解除工程と、前記外側部材の前記ピン挿通孔及び前記内側部材の前記溝に、前記調整済みピンを入れる位置決め装置取付工程と、前記位置決め装置取付工程後に、前記内側部材の仮保持を解除する仮保持解除工程と、を実行する。
上記問題点を解決するための発明の他の態様としての位置決め方法は、
軸線を中心として周方向に延びる外側部材に対して、前記外側部材の内周側に配置され軸線を中心として周方向に延びる内側部材を位置決めする位置決め方法において、前記外側部材の外周側から内周側に貫通したピン挿通孔と前記内側部材の外周側から内周側に向かって凹んだ溝とに入り込むピンと、前記溝の溝側面に接するライナ押えと、前記ライナ押えと前記溝内の前記ピンとの間に配置されるライナと、を有する位置決め装置を準備する準備工程と、前記外側部材の前記ピン挿通孔及び前記内側部材の前記溝に入り込む仮ピンを有する仮位置決め装置を用いて、前記外側部材に対して前記内側部材を仮位置決めする仮位置決め工程と、前記仮位置決めされた前記内側部材の前記外側部材に対する位置ズレ量を計測するズレ計測工程と、前記位置決め装置における前記ピンと前記ライナ押えとの間に、前記位置ズレ量に応じた厚さ寸法の前記ライナを配置して調整された調整済みピンを組み立てる調整済みピン組立工程と、前記内側部材を前記外側部材に対して相対移動可能に仮保持する仮保持工程と、前記外側部材及び仮保持されている前記内側部材から前記仮位置決め装置を取り外す仮位置決め解除工程と、前記外側部材の前記ピン挿通孔及び前記内側部材の前記溝に、前記調整済みピンを入れる位置決め装置取付工程と、前記位置決め装置取付工程後に、前記内側部材の仮保持を解除する仮保持解除工程と、を実行する。
ここで、前記準備工程を実行する前記位置決め方法において、前記準備工程では、前記ライナとして、互いの厚さが異なる複数のライナを準備し、前記調整済みピン組立工程では、複数の前記ライナのうちから前記ズレ計測工程で計測した前記位置ズレ量に応じた厚さ寸法のライナを選定し、選定した前記ライナを前記ピンと前記ライナ押えとの間に配置してもよい。
また、前記準備工程を実行する、以上のいずれかの前記位置決め方法において、前記準備工程では、前記外側部材と前記ピンとの間をシールするシール材と、前記外側部材の外周側から前記外側部材の前記ピン挿通孔が形成されている位置に捩じ込まれるピン押えネジと、を準備し、前記位置決め装置取付工程では、前記外側部材と前記ピンとの間を前記シール材でシールし、前記外側部材の前記ピン挿通孔及び前記内側部材の前記溝に、前記調整済みピンを入れた後、前記ピン押えネジを前記外側部材の前記ピン挿通孔が形成されている位置に捩じ込み、前記ピン押えネジを前記調節済みピンに接触させてもよい。
本発明の一態様によれば、位置決め装置の製造コストを抑えることができる。
本発明に係る一実施形態における回転機械の断面図である。 本発明に係る一実施形態における位置決め装置の側面図である。 図2におけるIII−III線断面図である。 本発明に係る一実施形態における位置決め装置の要部分解斜視図である。 本発明に係る一実施形態におけるピンの斜視図である。 本発明に係る一実施形態におけるライナ押えの斜視図である。 本発明に係る一実施形態における位置決め装置の要部切欠き側面図である。 図7におけるVIII矢視図である。 図7におけるIX−IX線断面図である。 本発明に係る一実施形態におけるライナ押えを省略した位置決め装置の要部側面図である。 本発明に係る一実施形態における位置決め方法の手順を示すフローチャートである。 本発明に係る一実施形態における位置決め方法を示す説明図(その1)である。 本発明に係る一実施形態における位置決め方法を示す説明図(その2)である。 本発明に係る一実施形態における位置決め方法を示す説明図(その3)である。 本発明に係る一実施形態における仮位置決め装置の要部側面図である。 本発明に係る一実施形態における調整済み位置決め装置の要部側面図である。 本発明に係る一実施形態の第一変形例におけるライナの正面図である。 本発明に係る一実施形態の第二変形例におけるライナの正面図である。
以下、本発明に係る位置決め装置及びこれを備えている回転機械の一実施形態、及び位置決め装置の変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
「実施形態」
まず、本発明に係る位置決め装置及びこれを備えている回転機械の一実施形態について、図1〜図16を用いて説明する。
本実施形態の回転機械は、蒸気タービンである。この蒸気タービンは、図1に示すように、軸線Arを中心として回転するロータ(蒸気タービンロータ)1と、ロータ1の外周側に配置され、軸線Arを中心として環状を成す翼環5と、この翼環5の外周側に配置され、軸線Arを中心として環状を成す車室10と、車室10に対する翼環5の相対位置を定める位置決め装置20と、を備えている。なお、以下では、軸線Arが延びている方向を軸方向Daとし、軸線Arを基準とした径方向を単に径方向Drとし、軸線Arに対する周方向を単に周方向Dcとする。また、軸線Arに対して垂直で且つ水平な方向を左右方向Dhとし、軸線Arに対して垂直で且つ鉛直な方向を上下方向Dvとする。
ロータ1は、軸線Arを中心として軸方向Daに延びているロータ軸2と、周方向Dcに並んでロータ軸2に固定されている複数の動翼3とを有している。環状の翼環5には、翼環5の内周側であってロータ1の動翼3よりも上流側の位置に、周方向Dcに並ぶ複数の静翼9が設けられている。蒸気タービンでは、ロータ軸2の外周側と環状の翼環5の内周側との間の筒状の空間、言い換えると、動翼3及び静翼9が配置されている空間が蒸気流路となる。環状の翼環5は、軸線Arを基準に上側の上半翼環6xと、下側の下半翼環6yとを有している。上半翼環6x及び下半翼環6yは、軸線Arを基準にして半円弧状を成し、周方向Dcの端部でボルト等により互いに接続されている。また、環状の車室10も、軸線Arを基準に上側の上半車室11xと、下側の下半車室11yとを有している。上半車室11x及び下半車室11yも、軸線Arを基準にして半円弧状を成し、周方向Dcの端部でボルト等により互いに接続されている。
下半車室11yの周方向Dcの端部には、内周側から外周側に向かって凹む溝18が形成されている。また、下半翼環6yの周方向Dcの端部には、外周側に向かって突出する突起19が設けられ、この突起19が溝18に嵌合している。突起19と溝18との嵌合によって、下半翼環6yは、下半車室11yに対して、上下方向Dv及び軸方向Daに相対移動不能に拘束される。さらに、下半車室11yの内周面には、周方向Dcの全周に亘って内周側に向かって突出する突起(不図示)が形成されており、下半翼環6yの外周面には、周方向Dcの全周に亘って内周側に向かって凹む溝部(不図示)が形成され、前記突起と前記溝部が全周に亘って嵌合するようになっている。これにより、下半翼環6yは、下半車室11yに対して、軸方向Daに相対移動不能に拘束される。また、周方向の嵌合部は上半車室11xと上半翼環6xにおいても同様に形成されている。なお、位置決め装置20がセットされていない時点で、下半翼環6yは下半車室11yに対して左右方向Dhには移動可能になっている。また、位置決め装置20がセットされていない時点で、上半翼環6xも上半車室11xに対して左右方向Dhには移動可能になっている。
本実施形態では、上半翼環6x及び下半翼環6yのそれぞれが内側部材を成し、上半車室11x及び下半車室11yのそれぞれが外側部材を成す。なお、以下では、上半翼環6x及び下半翼環6yを単に半翼環6という場合があり、上半車室11x及び下半車室11yを単に半車室11という場合がある。
位置決め装置20としては、下半車室11yに対する下半翼環6yの相対位置を定める下側の位置決め装置20と、上半車室11xに対する上半翼環6xの相対位置を定める上側の位置決め装置20とがある。上側の位置決め装置20と下側の位置決め装置20とは、同一構造である。このため、以下では、下側の位置決め装置20について、主として説明する。
図2〜図4に示すように、半車室11には、外周側からの内周側に貫通した円柱状のピン挿通孔12と、外周側から内周側に向かって凹みピン挿通孔12と連通しているフランジ収納凹部13とが形成されている。フランジ収納凹部13の内径寸法は、ピン挿通孔12の内径寸法よりも大きい。このフランジ収納凹部13の内周面には、雌ネジ14が形成されている。ピン挿通孔12は、このフランジ収納凹部13の底面から半車室11の内周側に貫通している。
半翼環6には、半車室11のピン挿通孔12と径方向Drで対向する位置に、外周側から内周側に凹むピン溝7が形成されている。このピン溝7は、図2及び図4に示すように、半翼環6に形成されている溝底面8c、及び半翼環6に形成され左右方向Dhで互いに対向する一対の溝側面8で画定されている。
半車室11のピン挿通孔12及びフランジ収納凹部13、半翼環6のピン溝7は、図1に示すように、いずれも、軸線Arと交わり、鉛直方向に延びる鉛直線Lv上に形成されている。
位置決め装置20は、図2〜図4に示すように、半車室11のピン挿通孔12及び半翼環6のピン溝7に入り込むピン21と、ピン溝7の溝側面8に接するライナ押え31と、ライナ押え31とピン溝7内のピン21との間に配置されるライナ41と、ライナ41及びライナ押え31をピン21に固定する固定ネジ(ライナ固定具)51と、ピン21と半車室11との間をシールするシール材55と、ピン21の頭に接するピン押えネジ61と、ピン押えネジ61の緩みを規制する緩み止め具65と、を備えている。ライナ押え31は、ピン溝7の一対の溝側面8のうち、第一溝側面8aに接する第一ライナ押え31aと、第二溝側面8bに接する第二ライナ押え31bとを有する。
ピン21は、図2、図4及び図5に示すように、半車室11のピン挿通孔12に挿通される円柱状の挿通部22と、挿通部22の両端のうちの一方の端に形成されている溝挿入部23と、挿通部22の他方の端部に形成されている頭部フランジ28と、有する。
円柱状の挿通部22の直径寸法は、半車室11のピン挿通孔12の内径寸法と実質的に同じである。
溝挿入部23には、円柱状の挿通部22の外周面の一部が延長された側周面23cと、挿通部22の外周面を延長した仮想外周面よりも内側に位置する一対のライナ接触面24と、が形成されている。仮想外周面は、円柱状の挿通部22の中心軸であるピン軸線Ap(図4、図5参照)が延びている挿通方向Dpに、挿通部22の外周面を延長した仮想の面である。一対のライナ接触面24は、いずれも、仮想外周面よりも内側に位置し、ピン軸線Apに対して垂直な方向で、互いに相反する方向を向いている。一対のライナ接触面24の相互間隔寸法である溝挿入部厚さ寸法Wdの寸法は、円柱状の挿通部22の直径寸法よりも小さい。一対のライナ接触面24には、それぞれ、他方のライナ接触面24側に向かって凹む一対の第一係合凹部(係合部、第一係合部)25及び第二係合凹部(係合部、第二係合部)26が形成されている。第一係合凹部25は、ピン軸線Apが延びる挿通方向Dpに長く形成されている。一対の第一係合凹部25は、挿通方向Dpに垂直で且つライナ接触面24に沿った方向で、互いの間隔をあけて、ライナ接触面24に形成されている。第二係合凹部26は、挿通方向Dpに垂直で且つライナ接触面24に沿った方向に長く形成されている。この第二係合凹部26は、ライナ接触面24の挿通部22寄りの位置に形成されている。溝挿入部23の一対の第一係合凹部25の間には、固定ネジ51が捻じ込まれるネジ穴27が形成されている。
頭部フランジ28は、ピン軸線Apを中心として円板状を成している。頭部フランジ28の直径寸法は、円柱状の挿通部22の直径寸法及び半車室11のピン挿通孔12の内径寸法よりも大きく、半車室11のフランジ収納凹部13の内径寸法よりも小さい。頭部フランジ28で、挿通部22が設けられている側の面には、ピン軸線Apを中心として環状のシール溝29が形成されている。前述のシール材55は環状を成し、このシール材55の一部がシール溝29に入り込む。
ピン押えネジ61は、図2に示すように、半車室11のフランジ収納凹部13に形成されている雌ネジ14に螺合可能な雄ネジが形成されているネジ部62と、ネジ部62の端に形成されているネジ頭部63と、を有する。ネジ頭部63は、レンチ等の工具が係合可能に六角柱状を成している。
緩み止め具65は、半車室11のピン挿通孔12に隣接している緩み止めネジ穴15に螺合可能な緩み止めネジ66と、ピン押えネジ61のネジ頭部63と緩み止めネジ66のネジ頭部67とを連結するワイヤ68と、を有する。ワイヤ68は、ピン押えネジ61のネジ頭部63と、緩み止めネジ66のネジ頭部67とのそれぞれに直接連結されてもよいが、各ネジ61,66のネジ頭部63,67に嵌め込まれているピンを介してネジ頭部63,67に連結されてもよい。
第一ライナ押え31a及び第二ライナ押え31bは、互いに同一形状である。そこで、以下では、第一ライナ押え31aについてのみ説明する。第一ライナ押え31aには、図4及び図6〜図9に示すように、ピン溝7の第一溝側面8aに接する溝接触面32と、溝接触面32が向く方向に対して反対側を向くライナ接触面33と、溝接触面32に連なる第一テーパ面34aと、溝接触面32に連なる一対の第二テーパ面34bと、が形成されている。第一テーパ面34aは、第一ライナ押え31aをピン21の溝挿入部23に固定した状態で、溝接触面32からピン挿入側に向かうに連れて次第にライナ接触面33に近づくよう、溝接触面32に対して傾斜している。なお、ピン挿入側とは、ピン軸線Ap(図4、図5参照)が延びている挿通方向Dpの一方側であって、ピン21の溝挿入部23を基準にしてピン21の挿通部22と反対側である。一対の第二テーパ面34bは、それぞれ、第一ライナ押え31a中、第一ライナ押え31aをピン21の溝挿入部23に固定した状態で、挿通方向Dpに垂直で且つ溝接触面32に沿った方向であるライナ押え幅方向で互いに相反する側に設けられている。一対の第二テーパ面34bは、溝接触面32からライナ接触面33に近づくに連れて次第に相手側の第二テーパ面34bから遠ざかるよう、溝接触面32に対して傾斜している。ライナ接触面33には、ピン21の第一係合凹部25に嵌り込む第一被係合凸部35と、ピン21の第二係合凹部26に嵌り込む第二被係合凸部36とが形成されている。第一被係合凸部35は、ピン21の一対の第一係合凹部25と同様に、互いの間隔をあけて一対形成されている。第一ライナ押え31aの一対の第一被係合凸部35の間には、溝接触面32側からライナ接触面33側に貫通し、固定ネジ51のネジ部52が挿通されるネジ挿通部37と、このネジ挿通部37と連通し固定ネジ51のネジ頭部53が収まるネジ頭収納凹部38が形成されている。このネジ頭収納凹部38は、溝接触面32からライナ接触面33側に凹んでいる。なお、第二ライナ押え31bの溝接触面32は、ピン溝7の第二溝側面8bに接する。
ライナ41は、図4及び図10に示すように、矩形の板状又はシート状を成している。このライナ41には、固定ネジ51のネジ部52が挿通されるネジ挿通部42が形成されている。このライナ41の挿通方向Dpで互いに対向する一対の辺の長さ寸法L1(図10参照)は、ピン21の一対の第一係合凹部25の相互間隔寸法、及び第一ライナ押え31aの一対の第一被係合凸部35の相互間隔寸法よりも僅かに小さい。また、ライナ41の互いに対向する他の一対の辺の長さ寸法L2は、挿通方向Dpにおける、ピン21の第二係合凹部26における縁から溝挿入部23の先端23aまでの寸法よりも若干小さい。このため、ピン21のライナ接触面24にライナ41を接触させ、且つライナ41のネジ挿通部42とピン21のネジ穴27との位置を一致させると、ライナ41は、ピン21の一対の第一係合凹部25間に収まると共に、ピン21の第二係合凹部26における縁から溝挿入部23の先端23aまでの間に収まる。
すなわち、このライナ41をピン21の溝挿入部23とライナ押え31との間に配置した際、溝挿入部23の係合部25,26及びライナ押え31の被係合部35,36を避けた位置にこのライナ41を配置することができる。このため、本実施形態では、ライナ41がピン21に対して固着しにくく、位置決め装置20の取外しの際、ピン21からライナ41を容易に取り外すことができる。
図15及び図16に示すように、ピン溝7の第一溝側面8aと第二溝側面8bとの間隔寸法である溝幅寸法Wcは、第一ライナ押え31aの溝接触面32とライナ接触面33との間隔寸法であるライナ押え厚さ寸法Wpと、第二ライナ押え31bの溝接触面32とライナ接触面33との間隔寸法であるライナ押え厚さ寸法Wpと、溝挿入部23の溝挿入部厚さ寸法Wdとを合計した寸法よりも大きい。ライナ41には、その厚さ寸法が互いに異なる複数種のライナ41がある。例えば、厚さが0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mmのライナ41が、それぞれ、複数枚ある。
次に、以上で説明した位置決め装置20を用いた半翼環6の位置決め方法について、図11に示すフローチャートを用いて説明する。なお、この位置決めは、新規に蒸気タービンを設置する場合や蒸気タービンの構成部品である翼環5の換装工事の場合等に行われる。また、以下では、位置決め装置20を用いて、下半車室11yに対する下半翼環6yの位置決め方法について説明する。
まず、以上で説明した位置決め装置20を準備する(S0:準備工程)。すなわち、位置決め装置20を構成するピン21、ライナ41、ライナ押え31、固定ネジ(ライナ固定具)51、シール材55、ピン押えネジ61、緩み止め具65を準備する。この際、互いに厚さの異なる複数のライナ41を準備する。
実質的な位置決め作業の開始前、下半翼環6yは下半車室11yから外されている。また、ロータ1は、下半車室11yに設けられている軸受部(図示されていない)に支持されていない。
実質的な位置決め作業の開始にあたって、まず、下半翼環6yをクレーン等で吊るして、この下半翼環6yを下半車室11y内に収める。この過程で、図12に示すように、仮ピン21aを有する仮位置決め装置20aを用いて、左右方向Dhにおける下半翼環6yの下半車室11yに対する仮位置決めを行う(S1:仮位置決め工程)。
仮位置決め装置20aの仮ピン21aは、図15に示すように、本実施形態の位置決め装置20におけるピン21と、一対のライナ押え31と、一対の規定厚さの規定ライナ41aと、を有する。この場合、一対の規定ライナ41aの規定厚さは、この一対の規定ライナ41aの厚さ寸法Woと、一対のライナ押え31のライナ押え厚さ寸法Wpと、ピン21の溝挿入部23の溝挿入部厚さ寸法Wdとを合計した寸法が、ピン溝7の溝幅寸法Wcと実質的に一致する寸法である。なお、仮ピン21aは、半車室11のピン挿通孔12に挿通される円柱状の挿通部22と、挿通部22の端に形成されている溝挿入部とを有し、この溝挿入部の厚さ寸法が、ピン溝7の溝幅寸法Wcと実質的に一致しているものであってもよい。すなわち、ここで用いる仮ピン21aは、ピン溝7に入る部分の厚さ寸法がピン溝7の溝幅寸法Wcと実質的に同じであれば、如何なるものであってもよい。なお、この仮位置決め装置20aも、準備工程(S0)で準備しておくことが好ましい。
次に、図13に示すように、クレーン等を用いて、ロータ1を下半車室11yに配置する(S2:ロータ配置工程)。この過程で、ロータ1は、下半車室11yに設けられている軸受部(図示されていない)に支持され、下半車室11yに対するロータ1の左右方向Dhの相対位置が定まる。
次に、ロータ1又は下半車室11yに対する下半翼環6yの左右方向Dhのズレ量を計測する(S3:ズレ計測工程)。なお、既に、下半車室11yに対するロータ1の左右方向Dhの相対位置が定まっている関係上、ロータ1に対する下半翼環6yの左右方向Dhのズレ量と、下半車室11yに対する下半翼環6yの左右方向Dhのズレ量とは同じである。
次に、ズレ計測工程(S3)で計測したズレ量に応じた厚さのライナ41を選定し、このライナ41をピン21に取り付ける(S4:調整済みピン組立工程)。具体的に、例えば、図15に示すように、仮ピン21aで仮位置決めされた下半翼環6yが下半車室11yに対する、左右方向Dhでのズレ量がaであるとする。この際、仮ピン21aの構成要素である一対の規定ライナ41aの厚さ寸法は、いずれもWoであるとする。このズレ量aを修正するためには、図16に示すように、一対のライナ41のうち、一方のライナ41の厚さ寸法W1が(Wo−a)であり、他方のライナ41の厚さ寸法W2が(Wo+a)であればよい。そこで、準備工程(S0)で準備しておいた複数のライナ41のうちから、厚さ寸法W1が(Wo−a)のライナ41と、厚さ寸法W2が(Wo+a)のライナ41とを選定する。そして、これらのライナ41をライナ押え31及び固定ネジ51を用いてピン21の溝挿入部23に取り付ける。このように選定されたライナ41が取り付けられたピン21が調整済みピン21bを成す。なお、厚さ寸法W1が(Wo−a)のライナ41、厚さ寸法W2が(Wo+a)のライナ41は、いずれも、一枚のライナ41である必要はなく、複数枚のライナ41で構成させるものであってもよい。
ピン21の溝挿入部23に、ライナ41及びライナ押え31が固定された状態では、このライナ押え31は、円柱状の挿通部22の外周面を延長した前述の仮想外周面よりも内側に位置する。
次に、仮位置決めされている下半翼環6yを左右方向Dhに移動可能にクレーン等で仮保持する(S5:仮保持工程)。
次に、図14に示すように、下半翼環6yを仮位置決めしている仮位置決め装置20aをこの下半翼環6y及び下半車室11yから取外す(S6:仮位置決め解除工程)。なお、前述の仮保持工程(S5)は、この仮位置決め解除工程(S6)の実行後に行ってもよい。
続いて、図14に示すように、仮位置決め装置20aの替りに調整済み位置決め装置20bを下半翼環6y及び下半車室11yに取り付ける(S7:位置決め装置取付工程)。この調整済み位置決め装置20bは、前述の調整済みピン21bを含む位置決め装置20である。この調整済み位置決め装置20bの取付では、まず、調整済みピン21bを、下半車室11yのピン挿通孔12、下半翼環6yのピン溝7に入れる。この際、ピン21のシール溝29にシール材55を予め入れておく。
前述したように、ピン21の溝挿入部23には、円柱状の挿通部22の外周面の一部が延長された側周面23cが形成されている。また、ピン21の溝挿入部23にライナ41及びライナ押え31が固定された状態では、このライナ押え31が円柱状の挿通部22の外周面を延長した前述の仮想外周面よりも内側に位置している。さらに、ライナ41には、そのピン挿入側にテーパ面34が形成されている。このため、調整済みピン21bを、下半車室11yのピン挿通孔12及び下半翼環6yのピン溝7に容易に入れることができる。
次に、下半車室11yのピン挿通孔12と連通しているフランジ収納凹部13にピン押えネジ61を捻じ込む。このピン押えネジ61が捻じ込まれると、ピン押えネジ61の先端と調整済みピン21bの頭部フランジ28とが接する。すなわち、調整済みピン21bは、ピン押えネジ61によりピン挿通孔12から抜け止めされる。次に、図2に示すように、ピン押えネジ61に緩み止め具65を取り付ける。この緩み止め具65の取付では、半車室11の緩み止めネジ穴15に緩み止めネジ66を捻じ込む。この緩み止めネジ66のネジ頭部67とピン押えネジ61のネジ頭部63とをワイヤ68で連結し、ピン押えネジ61の緩み方向の回転を規制する。
そして、下半車室11yのクレーン等による仮保持を解除する(S8:仮保持解除工程)。
以上で、下半車室11yに対する下半翼環6yの左右方向Dhの位置決めが完了する。
なお、以上では、ズレ計測工程(S3)後であって下半翼環6yの仮保持工程(S5)の前に、調整済みピン組立工程(S6)を実行している。しかしながら、ズレ計測工程(S3)後であって位置決め装置取付工程(S7)の前であれば、この調整済みピン組立工程(S6)をいつ実行してもよい。また、以上では、調整済みピン21b及びピン押えネジ61の取付後に、直ちに、緩み止め具65の取付を実行するように記載している。しかしながら、この緩み止め具65の取付は、蒸気タービンの基本的な組立が完了した後に行ってもよい。
以上は、下半車室11yに対する下半翼環6yの位置決め方法の説明であるが、上半車室11xに対する上半翼環6xの位置決めも、以上の位置決め方法の手順と基本的に同じである。但し、この場合、前述のロータ配置工程(S2)は実行されない。具体的には、まず、上半車室11xの内面が上方を向くように仮固定し、この上半車室11xに対して、仮位置決め装置20aを用いて上半翼環6xを仮位置決めする(S1:仮位置決め工程)。次に、上半車室11xに対する上半翼環6xの左右方向Dhのズレ量を計測する(S3:ズレ計測工程)。以下、下半車室11yに対する下半翼環6yの位置決め方法と同様に、調整済みピン組立工程(S4)等を実行する。その後、調整済み位置決め装置20bを取り外すと共に、上半車室11xから上半翼環6xを取り外す。そして、上半翼環6x、上半車室11x、調整済み位置決め装置20bを下半翼環6y及び下半車室11yに対して組み付ける。
以上のように、本実施形態の位置決め装置20は、ライナ押え31を有するので、ライナ41には、上記特許文献1のライナのようにボルト収納凹部を形成する必要がない。このため、ライナ41の製造が容易で、複数のライナ41を予め準備しておいても、位置決め装置20の製造コストを抑えることができる。また、ライナ41をライナ押え31とピン21の溝挿入部23との間で挟み込むため、ライナ41と蒸気との接触が抑えられ、ライナ41の腐食を抑制することができる。
本実施形態では、ピン21の溝挿入部23に第一係合凹部25及び第二係合凹部26が形成され、ライナ押え31に第一被係合凸部35及び第二被係合凸部36が形成されているため、ピン21中の所定の位置にライナ押え31を容易かつ正確に取り付けることができる。しかも、本実施形態では、一対の第一係合凹部25が、ピン軸線Apが延びる挿通方向Dpに長く且つ互いに間隔をあけてピン21の溝挿入部23に形成され、これに入り込む一対の第一被係合凸部35が、挿通方向Dpに長く互いに間隔をあけて、ライナ押え31に形成されている。ライナ41は、一対の第一係合凹部25及び一対の第一被係合凸部35の間に配置される。このため、本実施形態では、ライナ41の幅方向の両側からの蒸気の接触を抑えることができる。
ピン溝7の壁面とライナ押え31とが固着してしまった状態で、ピン21をピン溝7から引き抜こうとすると、ライナ押え31をピン21に固定しておく固定ネジ51に過大な負荷がかかり、固定ネジ51が破損して、ライナ押え31がピン溝7内に残ってしまう可能性がある。本実施形態では、第二係合凹部26及び第二被係合凸部36がいずれも挿通方向Dpに対して垂直な方向に長く形成されているため、ピン21を挿通方向Dpに移動させた際、ピン21と共にライナ押え31が挿通方向Dpに移動する。よって、本実施形態では、ピン21をピン溝7及びピン挿通孔12から外す際、ライナ押え31のピン溝7内の残留可能性を少なくすることができる。
本実施形態では、ピン21の頭部フランジ28と半車室11のフランジ収納凹部13の底面との間にシール材55が配置されるので、車室10内の蒸気が車室10のピン挿通孔12を介して外部に流出するのを抑えることができる。
本実施形態では、ピン挿通孔12に連通しているフランジ収納凹部13にピン押えネジ61を捻じ込むので、ピン挿通孔12からのピン21の脱落を防止することができる。さらに、本実施形態では、ピン挿通孔12に挿通されているピン21を取り外す際、ピン押えネジ61を緩めて、このピン押えネジ61を外すことで、ピン21を簡単に取り外すことができる。しかも、本実施形態では、このピン押えネジ61の緩みを緩み止め具65により規制できるため、ピン押えネジ61の脱落に伴うピン21の脱落を抑えることができる。また、ピン21の頭やピン押えネジ61のネジ部62を半車室11にポンチ等を用いてコーキングしてもよい。
「変形例」
次に、以上で説明した位置決め装置20の各種変形例について説明する。
本実施形態におけるライナ41のネジ挿通部42は、ライナ41に形成された孔である。しかしながら、このネジ挿通部は、固定ネジ51のネジ部52を挿通させることができれば、孔である必要はない。例えば、図17及び図18に示すように、ネジ挿通部42aは、ライナ41x,41yに形成した切欠きであってもよい。なお、これらライナ41x,41yも、本実施形態のライナ41と同様、ピン21の溝挿入部23とライナ押え31との間に配置した際、溝挿入部23の係合部25,26及びライナ押え31の被係合部35,36を避けた位置にこれらライナ41x,41yを配置できるよう、各寸法が定められていることが好ましい。
本実施形態では、ピン21の係合部(第一係合凹部25、第二係合凹部26)が凹部で、ライナ押え31の被係合部(第一被係合凸部35、第二被係合凸部36)が凸部である。しかしながら、逆に、ピン21の係合部が凸部で、ライナ押え31の被係合部が凹部であってもよい。
本実施形態では、第一ライナ押え31aとピン21の溝挿入部23との間、第二ライナ押え31bとピン21の溝挿入部23との間に、それぞれライナ41を配置している。しかしながら、前述のズレ計測工程(S3)で計測された左右方向Dhのズレ量によっては、第一ライナ押え31aとピン21の溝挿入部23との間と、第二ライナ押え31bとピン21の溝挿入部23との間とのうち、一方の間のみにライナ41を配置してもよい。
本実施形態では、ピン挿通孔12からのピン21の脱落防止のためピン押えネジ61を用いている。しかしながら、このピン押えネジ61を用いず、ピン21の頭を半車室11に溶接してもよい。
本実施形態の位置決め装置20は、外側部材としての半車室11に対する内側部材としての半翼環6の相対位置を定めている。しかしながら、本発明は、これに限定されず、軸線Arを中心として周方向Dcに延びる外側部材であれば、この外側部材が半車室11である必要はなく、また、同様に、外側部材の内周側に配置されて軸線Arを中心として周方向Dcに延びる内側部材であれば、この内側部材が半翼環6である必要はない。また、本発明は、蒸気タービン以外のガスタービンや圧縮機等、他の回転機械に適用してもよい。
本発明の一態様によれば、位置決め装置の製造コストを抑えることができる。
1:ロータ(蒸気タービンロータ)、2:動翼、5:翼環、6:半翼環(内側部材)、6x:上半翼環(内側部材)、6y:下半翼環(内側部材)、7:ピン溝、8:溝側面、8a:第一溝側面、8b:第二溝側面、9:静翼、10:車室、11:半車室(外側部材)、11x:上半車室(外側部材)、11y:下半車室(外側部材)、12:ピン挿通孔、13:フランジ収納凹部、14:雌ネジ、20:位置決め装置、20a:仮位置決め装置、20b:調整済み位置決め装置、21:ピン、21a:仮ピン、21b:調整済みピン、22:挿通部、23:溝挿入部、23c:側周面、24:ライナ接触面、25:第一係合凹部(係合部、第一係合部)、26:第二係合凹部(係合部、第二係合部)、27:ネジ穴、28:頭部フランジ、29:シール溝、31:ライナ押え、31a:第一ライナ押え、31b:第二ライナ押え、32:溝接触面、33:ライナ接触面、34a:第一テーパ面、34b:第二テーパ面、35:第一被係合凸部(被係合部、第一被係合部)、36:第二被係合凸部(被係合部、第二被係合部)、37:ネジ挿通部、38:ネジ頭収納凹部、41,41x,41y:ライナ、41a:規定ライナ、42,42a:ネジ挿通部、51:固定ネジ(ライナ固定具)、52:ネジ部、53:ネジ頭部、55:シール材、61:ピン押えネジ、62:ネジ部、63:ネジ頭部、65:緩み止め具

Claims (17)

  1. 軸線を中心として周方向に延びる外側部材に対して、前記外側部材の内周側に配置され軸線を中心として周方向に延びる内側部材を位置決めする位置決め装置において、
    前記外側部材の外周側から内周側に貫通したピン挿通孔と前記内側部材の外周側から内周側に向かって凹んだ溝とに入り込むピンと、
    前記溝の溝側面に接するライナ押えと、
    前記ライナ押えと前記溝内の前記ピンとの間に配置されるライナと、
    を備える位置決め装置。
  2. 前記ピンは、前記外側部材の前記ピン挿通孔に挿通される挿通部と、前記内側部材の前記溝に入り込む溝挿入部と、を有し、
    前記ライナ押えは、前記溝の互いに対向する一対の前記溝側面のうちの第一溝側面と前記ピンの前記溝挿入部との間に配置される第一ライナ押えと、一対の前記溝側面のうちの第二溝側面と前記ピンの前記溝挿入部との間に配置される第二ライナ押えと、を有し、
    前記ライナは、前記溝挿入部と前記第一ライナ押えとの間と、前記溝挿入部と前記第二ライナ押えとの間とのうち、少なくとも一方の間に配置されている、
    請求項1に記載の位置決め装置。
  3. 前記ライナ押えと前記ライナとを前記ピンの前記溝挿入部に固定するライナ固定具を備える、
    請求項2に記載の位置決め装置。
  4. 前記ライナ固定具は、円柱状のネジ部と、前記ネジ部の端部に設けられているネジ頭部と、を有する固定ネジであり、
    前記ピンの前記溝挿入部には、前記固定ネジの前記ネジ部が捻じ込まれるネジ穴が形成され、
    前記ライナには、前記固定ネジの前記ネジ部が挿通されるネジ挿通部が形成され、
    前記ライナ押えには、前記固定ネジの前記ネジ部が挿通されるネジ挿通部と、前記ネジ挿通部に連通し前記固定ネジの前記ネジ頭部が収まるネジ頭収納凹部と、が形成されている、
    請求項3に記載の位置決め装置。
  5. 前記ピンの前記溝挿入部には、互いに相反する方向に向いている一対のライナ接触面と、一対の前記ライナ接触面に対して凹状又は凸状を成す係合部とが形成され、
    前記ライナ押えには、前記溝側面に接する溝接触面と、前記溝接触面が向く方向に対して反対側を向くライナ接触面と、前記ライナ接触面に対して凸状又は凹状を成し前記係合部に係合する被係合部とが形成されている、
    請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の位置決め装置。
  6. 前記ピンの前記係合部は、前記ピンの前記ライナ接触面に対して凹み又は突出し、前記ライナ接触面に沿って前記ピンの前記ピン挿通孔に対する挿通方向に長く、前記挿通方向に対して垂直な方向に互いの間隔をあけて形成されている一対の第一係合部を有し、
    前記ライナ押えの前記被係合部は、前記ライナ押えの前記ライナ接触面に対して突出し又は凹み、前記挿通方向に長く、前記挿通方向に対して垂直な方向に互いの間隔をあけて形成され、前記一対の第一係合部がそれぞれ係合する第一被係合部を有し、
    前記ライナは、一対の前記第一係合部の間に配置されている、
    請求項5に記載の位置決め装置。
  7. 前記ピンの前記係合部は、前記ピンの前記ライナ接触面に対して凹み又は突出し、前記ライナ接触面に沿って前記ピンの前記ピン挿通孔に対する挿通方向に垂直な方向に長い第二係合部を有し、
    前記ライナ押えの前記被係合部は、前記ライナ押えの前記ライナ接触面に対して突出し又は凹み、前記挿通方向に垂直な方向に長く、前記第二係合部に係合する第二被係合部を有する、
    請求項5又は請求項6に記載の位置決め装置。
  8. 前記ライナは、前記ピンの前記溝挿入部と前記ライナ押えとの間であって、前記溝挿入部の前記係合部及び前記ライナ押えの前記被係合部を避けた位置に配置されている、
    請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の位置決め装置。
  9. 前記外側部材の外周側には、前記ピン挿通孔に連通し、前記ピン挿通孔よりも径が大きく外周側から内周側に向かって凹む凹部が形成されており、
    前記外側部材と前記ピンとの間をシールするシール材を備え、
    前記ピンは、前記ピン挿通孔に対する挿通方向であって、前記挿通部における前記溝挿入部と反対側に形成され、前記挿通部の径よりも大きな径で前記凹部に収納可能な頭部フランジを有し、
    前記シール材は、前記ピンの前記頭部フランジと前記凹部の底面との間に配置されている、
    請求項2から請求項8のいずれか一項に記載の位置決め装置。
  10. 前記外側部材の前記ピン挿通孔は、円柱状の孔であり、
    前記ピンの前記挿通部は、前記ピン挿通孔に挿通可能な円柱状を成し、
    前記溝挿入部は、円柱状の前記挿通部の外周面の一部が延長された周面である側周面と、前記挿通部の外周面を延長した仮想外周面よりも内側に位置して前記ライナ押えが固定される面と、を有し、
    前記溝挿入部に前記ライナ押えが固定された際、前記ライナ押えは、前記仮想外周面よりも前記内側に位置する、
    請求項2から請求項9のいずれか一項に記載の位置決め装置。
  11. 前記外側部材の外周側には、前記ピン挿通孔に連通し、外周側から内周側に向かって凹む凹部が形成されており、前記凹部の側周面には雌ネジが形成され、
    前記雌ネジに螺合し前記ピンの頭部に接するピン押えネジを備える、
    請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の位置決め装置。
  12. 前記ピン押えネジの一部に係合すると共に、前記外側部材の一部に係合して、前記ピン押えネジの前記雌ネジに対する緩み方向の回転を規制する緩み止め具を備える、
    請求項11に記載の位置決め装置。
  13. 請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の位置決め装置と、
    前記外側部材と、
    前記内側部材と、
    前記内側部材の内周側に配置され、前記軸線を中心として回転するロータと、
    を備える回転機械。
  14. 前記ロータは、蒸気タービンロータである、
    請求項13に記載の回転機械。
  15. 軸線を中心として周方向に延びる外側部材に対して、前記外側部材の内周側に配置され軸線を中心として周方向に延びる内側部材を位置決めする位置決め方法において、
    前記外側部材の外周側から内周側に貫通したピン挿通孔と前記内側部材の外周側から内周側に向かって凹んだ溝とに入り込むピンと、前記溝の溝側面に接するライナ押えと、前記ライナ押えと前記溝内の前記ピンとの間に配置されるライナと、を有する位置決め装置を準備する準備工程と、
    前記外側部材の前記ピン挿通孔及び前記内側部材の前記溝に入り込む仮ピンを有する仮位置決め装置を用いて、前記外側部材に対して前記内側部材を仮位置決めする仮位置決め工程と、
    前記仮位置決めされた前記内側部材の前記外側部材に対する位置ズレ量を計測するズレ計測工程と、
    前記位置決め装置における前記ピンと前記ライナ押えとの間に、前記位置ズレ量に応じた厚さ寸法の前記ライナを配置して調整された調整済みピンを組み立てる調整済みピン組立工程と、
    前記内側部材を前記外側部材に対して相対移動可能に仮保持する仮保持工程と、
    前記外側部材及び仮保持されている前記内側部材から前記仮位置決め装置を取り外す仮位置決め解除工程と、
    前記外側部材の前記ピン挿通孔及び前記内側部材の前記溝に、前記調整済みピンを入れる位置決め装置取付工程と、
    前記位置決め装置取付工程後に、前記内側部材の仮保持を解除する仮保持解除工程と、
    を実行する位置決め方法。
  16. 前記準備工程では、前記ライナとして、互いの厚さが異なる複数のライナを準備し、
    前記調整済みピン組立工程では、複数の前記ライナのうちから前記ズレ計測工程で計測した前記位置ズレ量に応じた厚さ寸法のライナを選定し、選定した前記ライナを前記ピンと前記ライナ押えとの間に配置する、
    請求項15に記載の位置決め方法。
  17. 前記準備工程では、前記外側部材と前記ピンとの間をシールするシール材と、前記外側部材の外周側から前記外側部材の前記ピン挿通孔が形成されている位置に捩じ込まれるピン押えネジと、を準備し、
    前記位置決め装置取付工程では、前記外側部材と前記ピンとの間を前記シール材でシールし、前記外側部材の前記ピン挿通孔及び前記内側部材の前記溝に、前記調整済みピンを入れた後、前記ピン押えネジを前記外側部材の前記ピン挿通孔が形成されている位置に捩じ込み、前記ピン押えネジを前記調節済みピンに接触させる、
    請求項15又は請求項16に記載の位置決め方法。
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