JPWO2014192874A1 - 希土類元素の回収方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から効率的に希土類元素を回収することができるとともに、処理容器をその消耗や損傷を抑制して長期に亘って繰り返し用いることができる方法を提供することである。その解決手段としての本発明の方法は、酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下で熱処理するにあたり、酸化処理を行った処理対象物を処理容器に収容する際、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に炭素物質を介在させること、そして不活性ガス雰囲気中または真空中において1300℃以上の温度で熱処理することを特徴とする。

Description

本発明は、例えばR−Fe−B系永久磁石(Rは希土類元素)などの、少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する方法に関する。
R−Fe−B系永久磁石は、高い磁気特性を有していることから、今日様々な分野で使用されていることは周知の通りである。このような背景のもと、R−Fe−B系永久磁石の生産工場では、日々、大量の磁石が生産されているが、磁石の生産量の増大に伴い、製造工程中に加工不良物などとして排出される磁石スクラップや、切削屑や研削屑などとして排出される磁石加工屑などの量も増加している。とりわけ情報機器の軽量化や小型化によってそこで使用される磁石も小型化していることから、加工代比率が大きくなることで、製造歩留まりが年々低下する傾向にある。従って、製造工程中に排出される磁石スクラップや磁石加工屑などを廃棄せず、そこに含まれる金属元素、特に希土類元素をいかに回収して再利用するかが今後の重要な技術課題となっている。また、R−Fe−B系永久磁石を使用した電化製品などから循環資源として希土類元素をいかに回収して再利用するかについても同様である。
少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する方法については、これまでにもいくつかの方法が提案されており、例えば特許文献1では、処理対象物を酸化性雰囲気中で加熱して含有金属元素を酸化物とした後、水と混合してスラリーとし、加熱しながら塩酸を加えて希土類元素を溶液に溶解させ、得られた溶液に加熱しながらアルカリ(水酸化ナトリウムやアンモニアや水酸化カリウムなど)を加えることで、希土類元素とともに溶液に浸出した鉄族元素を沈殿させた後、溶液を未溶解物と沈殿物から分離し、溶液に沈殿剤として例えばシュウ酸を加えて希土類元素をシュウ酸塩として回収する方法が提案されている。この方法は、希土類元素を鉄族元素と効果的に分離して回収することができる方法として注目に値する。しかしながら、工程の一部に酸やアルカリを用いることから、工程管理が容易ではなく、また、回収コストが高くつくといった問題がある。従って、特許文献1に記載の方法は、低コストと簡易さが要求されるリサイクルシステムとして実用化するには困難な側面を有するといわざるを得ない。
また、特許文献2では、処理対象物に含まれる鉄族元素を酸化することなく希土類元素のみを酸化することによって両者を分離する方法として、処理対象物を炭素るつぼの中で加熱する方法が提案されている。この方法は、特許文献1に記載の方法のように酸やアルカリを必要とせず、また、炭素るつぼの中で処理対象物を加熱することで理論的にるつぼ内の雰囲気が鉄族元素が酸化されることなく希土類元素のみが酸化される酸素分圧に自律的に制御されることから、特許文献1に記載の方法に比較して工程が簡易であるという点において優れていると考えられる。しかしながら、単に処理対象物を炭素るつぼの中で加熱すればるつぼ内の雰囲気が所定の酸素分圧に自律的に制御されて希土類元素と鉄族元素を分離できるのかといえば、現実的には必ずしもそうではない。特許文献2では、るつぼ内の雰囲気の望ましい酸素含有濃度は1ppm〜1%であるとされているが、本質的には雰囲気を制御するための外的操作は必要とされないとある。しかしながら、本発明者らの検討によれば、少なくとも酸素含有濃度が1ppm未満の場合には希土類元素と鉄族元素は分離できない。従って、炭素るつぼの中で処理対象物を加熱すれば、理論的にはるつぼ内の雰囲気が鉄族元素が酸化されることなく希土類元素のみが酸化される酸素分圧に自律的に制御されるとしても、現実的にはるつぼ内を酸素含有濃度が1ppm以上の雰囲気に人為的に制御する必要がある。こうした制御は、特許文献2にも記載されているように酸素含有濃度が1ppm以上の不活性ガスをるつぼ内に導入することで行うことができるが、工業用不活性ガスとして汎用されているアルゴンガスの場合、その酸素含有濃度は通常0.5ppm以下である。従って、酸素含有濃度が1ppm以上のアルゴンガスをるつぼ内に導入するためには、汎用されているアルゴンガスをそのまま用いることはできず、その酸素含有濃度をわざわざ高めた上で用いる必要がある。結果として、特許文献2に記載の方法は、一見工程が簡易に思えるものの実はそうではなく、特許文献1に記載の方法と同様、低コストと簡易さが要求されるリサイクルシステムとして実用化するには困難な側面を有するといわざるを得ない。
そこで本発明者らは、低コストで簡易なリサイクルシステムとして実用化が可能な、少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する方法として、処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移して熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離して回収する方法を特許文献3において提案している。
特開2009−249674号公報 国際公開第2010/098381号 国際公開第2013/018710号
特許文献3において本発明者らが提案した方法によれば、処理容器として炭素るつぼを用いて熱処理することで、炭素るつぼが酸化処理を行った処理対象物に対してその表面からの炭素供給源としての役割も果たし、効率的に希土類元素を回収することができる。しかしながら、炭素るつぼに酸化処理を行った処理対象物に対する炭素供給源としての役割を担わせると、炭素るつぼは消費されて次第に消耗する。また、非炭素製の処理容器、例えばアルミナや酸化マグネシウムや酸化カルシウムなどの金属酸化物や酸化ケイ素でできたセラミックスるつぼに酸化処理を行った処理対象物と炭素供給源を収容して熱処理すると、酸化処理を行った処理対象物に含まれる鉄族元素が処理容器成分と固溶して熱処理物が容器内面にこびりつき、これを除去しようとすると処理容器に損傷を与えてしまうといったことが起こることが本発明者らのその後の検討によって明らかになった。
そこで本発明は、少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移して熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離して回収する方法において、効率的に希土類元素を回収することができるとともに、処理容器をその消耗や損傷を抑制して長期に亘って繰り返し用いることができる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の点に鑑みて鋭意検討を行った結果、酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下で熱処理するにあたり、酸化処理を行った処理対象物を処理容器に収容する際、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に炭素物質を介在させること、そして不活性ガス雰囲気中または真空中において1300℃以上の温度で熱処理することで、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させた炭素物質が、酸化処理を行った処理対象物に対する炭素供給源としての役割と、酸化処理を行った処理対象物が容器底面に接触することを防止する役割を担い、効率的に希土類元素を回収することができるとともに、処理容器をその消耗や損傷を抑制して長期に亘って繰り返し用いることができることを見出した。
上記の知見に基づいてなされた本発明の少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移して熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離して回収する方法は、請求項1記載の通り、酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下で熱処理するにあたり、酸化処理を行った処理対象物を処理容器に収容する際、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に炭素物質を介在させること、そして不活性ガス雰囲気中または真空中において1300℃以上の温度で熱処理することを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、処理対象物の少なくとも一部が500μm以下の粒径を有する粒状ないし粉末状であることを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項1記載の方法において、処理対象物の鉄族元素含量が30mass%以上であることを特徴とする。
また、請求項4記載の方法は、請求項1記載の方法において、処理対象物がR−Fe−B系永久磁石であることを特徴とする。
また、請求項5記載の方法は、請求項1記載の方法において、紙、木、合成樹脂、炭素のいずれかからなる収納部材に収納した酸化処理を行った処理対象物を、処理容器に収容することを特徴とする。
また、請求項6記載の方法は、請求項1記載の方法において、紙、木、合成樹脂、炭素のいずれかからなる収納部材に収納した炭素物質を、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させることを特徴とする。
また、請求項7記載の方法は、請求項1記載の方法において、酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間にもさらに炭素物質を介在させることを特徴とする。
また、請求項8記載の方法は、請求項7記載の方法において、酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に介在させた炭素物質を、紙、木、合成樹脂、炭素のいずれかからなる仕切り部材で酸化処理を行った処理対象物と仕切ることを特徴とする。
また、請求項9記載の方法は、請求項7記載の方法において、紙、木、合成樹脂、炭素のいずれかからなる収納部材に収納した炭素物質を、酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に介在させることを特徴とする。
また、請求項10記載の方法は、請求項1記載の方法において、処理容器にさらに炭素物質を収容することを特徴とする。
本発明の方法によれば、少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から効率的に希土類元素を回収することができるとともに、処理容器をその消耗や損傷を抑制して長期に亘って繰り返し用いることができる。
本発明の少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移して熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離して回収する方法は、酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下で熱処理するにあたり、酸化処理を行った処理対象物を処理容器に収容する際、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に炭素物質を介在させること、そして不活性ガス雰囲気中または真空中において1300℃以上の温度で熱処理することを特徴とするものである。
本発明の方法の適用対象となる少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物は、Nd,Pr,Dy,Tb,Smなどの希土類元素とFe,Co,Niなどの鉄族元素を含むものであれば特段の制限はなく、希土類元素と鉄族元素に加えてその他の元素として例えばホウ素などを含んでいてもよい。具体的には、例えばR−Fe−B系永久磁石などが挙げられるが、とりわけ本発明の方法は鉄族元素含量が30mass%以上である処理対象物に好適に適用することができる(例えばR−Fe−B系永久磁石の場合、その鉄族元素含量は、通常、60mass%〜82mass%である)。処理対象物の大きさや形状は特段制限されるものではなく、処理対象物がR−Fe−B系永久磁石の場合には製造工程中に排出される磁石スクラップや磁石加工屑などであってよい。処理対象物に対して十分な酸化処理を行うためには、処理対象物は500μm以下の粒径を有する粒状ないし粉末状であることが望ましい(例えば調製の容易性に鑑みれば粒径の下限は1μmが望ましい)。しかしながら、処理対象物の全てがこのような粒状ないし粉末状である必要は必ずしもなく、粒状ないし粉末状であるのは処理対象物の一部であってよい。
まず、本発明の方法における処理対象物に対する酸化処理は、処理対象物に含まれる希土類元素を酸化物に変換することを目的とするものである。特許文献2に記載の方法と異なり、処理対象物に対する酸化処理によって処理対象物に含まれる鉄族元素が希土類元素とともに酸化物に変換されてもよい。処理対象物に対する酸化処理は、酸素含有雰囲気中で処理対象物を熱処理したり燃焼処理したりすることによって行うことが簡便である。酸素含有雰囲気は大気雰囲気であってよい。処理対象物を熱処理する場合、例えば350℃〜1000℃で1時間〜12時間行えばよい。処理対象物を燃焼処理する場合、例えば自然発火や人為的点火により行えばよい。また、処理対象物に対する酸化処理は、アルカリ水溶液中で処理対象物の酸化を進行させるアルカリ処理によって行うこともできる。アルカリ処理に用いることができるアルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニアなどが挙げられる。また、アルカリ水溶液の濃度としては0.1mol/L〜10mol/Lが挙げられる。処理温度としては60℃〜150℃が挙げられるが、より効果的な酸化処理を行うためには100℃以上が望ましく、より安全性を高めるためには130℃以下が望ましい。処理時間としては30分間〜10時間が挙げられる。処理対象物に対する酸化処理は、単一の方法で行ってもよいし、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。処理対象物に対してこうした酸化処理を行うと、処理対象物に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の1.5倍以上となり、希土類元素の酸化物への変換をより確実なものにすることができる。酸化処理によって処理対象物に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の2.0倍以上になることが望ましい。また、処理対象物に対する酸化処理は、炭素の非存在下で行うことが望ましい。炭素の存在下で処理対象物に対する酸化処理を行うと、処理対象物に含まれる希土類元素が炭素と望まざる化学反応を起こして所望する酸化物への変換が阻害される恐れがあるからである(従ってここでは「炭素の非存在下」は処理対象物に含まれる希土類元素の酸化物への変換が阻害されるに足る化学反応の起因となる炭素が存在しないことを意味する)。
次に、酸化処理を行った処理対象物を処理容器に収容する。この際、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に炭素物質を介在させる。そして不活性ガス雰囲気中または真空中において1300℃以上の温度で熱処理する。こうすることで、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させた炭素物質が、酸化処理を行った処理対象物に対する炭素供給源としての役割と、酸化処理を行った処理対象物が容器底面に接触することを防止する役割を果たす。酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させた炭素物質が、酸化処理を行った処理対象物に対する炭素供給源としての役割を果たすことで、効率的に希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離することができる。これは、酸化処理を行った処理対象物に対して炭素物質を炭素供給源として供給しながら1300℃以上の温度で熱処理すると、酸化処理を行った処理対象物に含まれる希土類元素の酸化物は高温で酸化物のままで溶融するのに対し、鉄族元素は炭素物質に由来する炭素を固溶して合金化して溶融し、また、鉄族元素の酸化物は炭素によって還元された後に炭素を固溶して合金化して溶融し、結果として、希土類元素の酸化物の溶融物と鉄族元素の炭素との合金の溶融物が相溶することなく互いに独立して存在するという本発明者らによって見出された現象に基づくものであり、処理対象物に含まれる鉄族元素を酸化することなく希土類元素のみを酸化するために炭素が利用される特許文献2に記載の方法とは炭素の役割が全く異なる。熱処理温度を1300℃以上に規定するのは、1300℃未満であると、希土類元素の酸化物や鉄族元素の炭素との合金が溶融しにくくなることで、両者の分離が困難になるからである。熱処理温度は1350℃以上が望ましく、1400℃以上がより望ましく、1450℃以上がさらに望ましい。なお、熱処理温度の上限は例えばエネルギーコストの点に鑑みれば1700℃が望ましく、1650℃がより望ましく、1600℃がさらに望ましい。炭素物質の存在下における酸化処理を行った処理対象物に対する熱処理を不活性ガス雰囲気中または真空中で行うのは、大気雰囲気などの酸素含有雰囲気中で熱処理すると、雰囲気中の酸素が炭素物質と反応することで二酸化炭素を生成し、炭素物質が酸化処理を行った処理対象物に対する炭素供給源としての役割を効率的に果さない恐れがあるからである。また、炭素物質が炭素供給源として消費されずに熱処理後に処理容器内に残る場合、処理容器内に残った炭素物質を回収して再利用しやすくするためである。酸素含有雰囲気中で熱処理すると、炭素物質の種類や形状によっては、処理容器内の炭素供給源として消費されない炭素物質は雰囲気中の酸素と反応することによって二酸化炭素となって処理容器から排出されてしまい、熱処理後にもはや回収することができない場合がある。不活性ガス雰囲気はアルゴンガスやヘリウムガスや窒素ガスなどを用いて形成することができる。その酸素含有濃度は1ppm未満が望ましい。また、真空の程度は1000Pa未満が望ましい。なお、熱処理時間は例えば1分間〜3時間が適当である。
また、本発明の方法においては、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させた炭素物質が、酸化処理を行った処理対象物が容器底面に接触することを防止する役割を果たすことで、処理容器をその消耗や損傷を抑制して長期に亘って繰り返し用いることができる。
本発明の方法において用いる炭素物質は、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させることで、酸化処理を行った処理対象物に対する炭素供給源としての役割と、酸化処理を行った処理対象物が容器底面に接触することを防止する役割を果たすものであれば、その種類や形状に特段の制限はない。炭素物質の具体例としては、カーボンブラック、石油コークス、グラファイト(黒鉛や石墨)、木炭、石炭、ダイヤモンドなどが挙げられる。中でも、熱処理後に炭素供給源として消費されずに処理容器内に残った分を回収して再利用しやすいカーボンブラックや、低価格で入手が可能であって取扱い性に優れる石油コークスなどが炭素物質として好適である。カーボンブラックは、平均粒径が1nm〜500nmの炭素の微粒子であり、通常、個々の微粒子どうしが融着して連鎖状ないしは不規則かつ複雑な鎖状に枝分かれした大きさが1μm〜1mmほどの凝集形態を有した粒子からなる粉末形状である。カーボンブラックの具体例としては、ファーネス法によって製造されるファーネスブラック、チャンネル法によって製造されるチャンネルブラック、アセチレン法によって製造されるアセチレンブラック、サーマル法によって製造されるサーマルブラックなどが挙げられる。これらは市販のものであってよく、単一のものを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。また、発塵防止やハンドリング性の向上などを目的として大きさが300μm〜3mmほどのビード形状に造粒された粒子などであってもよい。石油コークスは、石油から作られるコークスを意味し、具体的には、例えば、常圧蒸留残油や減圧蒸留残油などの重質油を、コーキングという熱分解処理を行うことで得られる炭素を主成分とする物質である。石油コークスには、一般に石油コークスと呼ばれるディレード・コークス(delayed coke)の他、コーキング装置から採取されたそのままの生コークス(raw coke)や、生コークスを焼いて揮発分を除去したか焼コークス(calcined coke)などがあり、また、コーキングの方法によっては、フルード・コークス(fluid coke)と呼ばれる粉状で燃料に用いられるものがあるが、本発明の方法においては、こうしたいずれの石油コークスも用いることができる。石油コークスの形状としては、10mm以下の粒径を有する粒状ないし粉末状が挙げられる。
酸化処理を行った処理対象物を収容する処理容器の材質は特段限定されるものではなく、特許文献2に記載の方法において用いられている炭素るつぼの他、非炭素製の処理容器、例えばアルミナや酸化マグネシウムや酸化カルシウムなどの金属酸化物や酸化ケイ素でできたセラミックスるつぼ(単一の素材からなるものであってもよいし複数の素材からなるものであってもよい)などを用いることもできる。中でも、本発明の方法によれば、処理容器として炭素るつぼに比較して安価なアルミナるつぼなどのセラミックスるつぼを用いて、少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から効率的に希土類元素を回収することができるとともに、処理容器をその消耗や損傷を抑制して長期に亘って繰り返し用いることができることは、本発明の方法を低コストと簡易さが要求されるリサイクルシステムとして実用化する上において有利である。
酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に炭素物質を介在させる態様は、炭素物質が、酸化処理を行った処理対象物に対する炭素供給源としての役割と、酸化処理を行った処理対象物が容器底面に接触することを防止する役割を果たす態様であれば、特段の制限はなく、炭素物質の種類や形状に応じて適宜選択すればよい。例えば、炭素物質の形状が粉末状や粒状や塊状の場合、炭素物質を容器底面に敷き詰め、その上に酸化処理を行った処理対象物を収容すればよい。また、炭素物質の形状がシート状や板状の場合、炭素物質を容器底面に布設し、その上に酸化処理を行った処理対象物を収容すればよい。こうすることで、処理容器として炭素るつぼを用いる場合でも、炭素るつぼが炭素供給源としての役割を果たして消費されて消耗することを抑制することができる。また、非炭素製の処理容器を用いる場合でも、酸化処理を行った処理対象物に含まれる鉄族元素が処理容器成分と固溶して熱処理物が容器内面にこびりつき、これを除去しようとすると処理容器に損傷を与えてしまうといったことを抑制することができる。炭素物質の使用量は、先に行った酸化処理による処理対象物に含まれる鉄族元素の酸化の程度にも依存するが、処理対象物に含まれる鉄族元素に対してモル比で0.5倍以上であることが望ましく、1.0倍以上であることがより望ましく、1.5倍以上であることがさらに望ましい。炭素物質の使用量が処理対象物に含まれる鉄族元素に対してモル比で0.5倍未満であると、処理対象物に含まれる鉄族元素が酸化処理によって酸化物に変換された場合にその還元を確実なものとして炭素との合金化を進行させることが困難になる恐れがあることに加え、熱処理中に炭素物質が炭素供給源として消費し尽くされてしまうことで、酸化処理を行った処理対象物が容器底面に接触することを防止する役割を炭素物質が果たすことができなくなる恐れがある。炭素物質の使用量を処理対象物に含まれる鉄族元素に対してモル比で1.5倍以上に調整することで、処理対象物に含まれる鉄族元素の全てが酸化処理によって酸化物に変換されてもその還元を確実なものとして炭素との合金化を進行させることができることに加え、熱処理中に炭素物質が炭素供給源として消費し尽くされてしまうことで、酸化処理を行った処理対象物が容器底面に接触することを防止する役割を炭素物質が果たすことができなくなることを回避することができる。なお、炭素物質の使用量の上限は特段限定されるものではなく、存在量が過剰であっても希土類元素と鉄族元素の分離に対して悪影響を及ぼすことはない。
酸化処理を行った処理対象物は、収納部材(袋部材など)に収納してから処理容器に収容してもよい。収納部材としては、熱処理によって炭化水素や二酸化炭素などとなって処理容器から排出される材質からなるものや、希土類元素と鉄族元素の分離に対して悪影響を及ぼすことがない炭となる材質からなるもの、例えば、紙(一般紙や段ボールなど)、木、合成樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなど)、炭素などからなるものが挙げられる。また、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させる炭素物質の形状が粉末状や粒状や塊状の場合、炭素物質をこうした材質からなる収納部材に収納してから容器底面に設置してもよい。こうした態様を採用することで、炭素物質の存在下における酸化処理を行った処理対象物に対する熱処理を行うための準備作業の効率化を図ることができる。
なお、処理容器内に収容した酸化処理を行った処理対象物が、容器側面に接触するないしその恐れがある場合、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に加え、酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間にもさらに炭素物質を介在させてもよい。酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に炭素物質を介在させる態様としては、例えば、炭素物質の形状が粉末状や粒状や塊状の場合、処理容器の内部に円筒形や多角筒形の仕切り部材を立設し、容器側面と仕切り部材との間に炭素物質を充填するとともに、仕切り部材で囲まれた内側に酸化処理を行った処理対象物を収容し、酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に介在させた炭素物質を、仕切り部材で酸化処理を行った処理対象物と仕切る態様が挙げられる。こうした態様を採用することで、酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に介在させる炭素物質が崩れ落ちてしまうことで、酸化処理を行った処理対象物が容器側面に接触することを防止する役割を果たすことができなくなることを回避することができる。仕切り部材としては、前出の、例えば、紙、木、合成樹脂、炭素などからなるものを用いることができる。なお、酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に介在させる炭素物質の形状が粉末状や粒状や塊状の場合、炭素物質をこうした材質からなる収納部材に収納してもよい。また、酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に炭素物質を介在させる態様は、炭素物質の形状がシート状の場合、シート状の炭素物質を円筒形にして処理容器の内部に立設し、その内側に酸化処理を行った処理対象物を収容する態様や、炭素物質の形状が板状の場合、複数枚の板状の炭素物質を処理容器の内部に多角筒形に立設し、その内側に酸化処理を行った処理対象物を収容する態様などであってもよい。酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に介在させる炭素物質の種類を、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させる炭素物質の種類と同じにすれば、熱処理後における処理容器内の炭素物質をひとまとめに回収して再利用することができる点において都合がよい。
また、本発明の方法においては、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させる炭素物質や、酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に介在させる炭素物質に加え、酸化処理を行った処理対象物に対する炭素供給源としての役割を果たす炭素物質(この段落において以下「炭素供給用炭素物質」)をさらに処理容器に収容してもよい。炭素供給用炭素物質の具体例としては、前出の、例えば、カーボンブラック、石油コークス、グラファイト、木炭、石炭、ダイヤモンドなどが挙げられる。その形状は粉末状や粒状や塊状やシート状や板状であってよい。炭素供給用炭素物質をさらに処理容器に収容する場合、その収容方法はその役割を果たす方法であれば特段の制限はない。しかしながら、炭素供給用炭素物質は、その形状が粉末状や粒状や塊状であって、処理容器内において酸化処理を行った処理対象物と混合状態で存在するように収容することが、その役割を効果的に果たすことができる点において望ましい。処理容器内において酸化処理を行った処理対象物と炭素供給用炭素物質を混合状態にする方法については特段の制限はなく、例えば、酸化処理を行った処理対象物と炭素供給用炭素物質を予め混合してから処理容器に収容する方法が挙げられる。この場合、酸化処理を行った処理対象物と炭素供給用炭素物質の混合物は、単に混合しただけのものであってもよいし、プレスしてブリケット状に成形したものなどであってもよい。なお、酸化処理を行った処理対象物と炭素供給用炭素物質は、両者の混合物を、前出の、例えば、紙、木、合成樹脂、炭素などからなる収納部材に収納してから処理容器に収容してもよいし、両者を収納部材に収納してからその中で混合した後、処理容器に収容してもよい。また、炭素供給用炭素物質の個々の大きさが酸化処理を行った処理対象物の個々の大きさよりも小さい場合、酸化処理を行った処理対象物を処理容器に収容した後、その上から炭素供給用炭素物質を供給すれば、炭素供給用炭素物質の個々が酸化処理を行った処理対象物の個々に間に入り込むことで、酸化処理を行った処理対象物と炭素供給用炭素物質を混合状態にすることができる。処理容器内において酸化処理を行った処理対象物と炭素供給用炭素物質を混合状態にする場合、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させた炭素物質は、専ら酸化処理を行った処理対象物が容器底面に接触することを防止する役割を果たす。従って、その使用量を炭素供給源としての消費量を考慮して決定する必要はない。一方で、炭素供給用炭素物質の使用量は、処理対象物に含まれる鉄族元素の全てが酸化処理によって酸化物に変換されてもその還元を確実なものとして炭素との合金化を進行させるためには、処理対象物に含まれる鉄族元素に対してモル比で0.5倍以上であることが望ましく、1.0倍以上であることがより望ましく、1.5倍以上であることがさらに望ましい。炭素供給用炭素物質をさらに処理容器に収容する場合のその収容方法は、炭素供給用炭素物質を処理容器に収容された酸化処理を行った処理対象物の上に堆積させる方法などであってもよい。例えば炭素供給用炭素物質の形状が粉末状や粒状や塊状であってその個々の大きさが酸化処理を行った処理対象物の個々の大きさよりも大きい場合、炭素供給用炭素物質を酸化処理を行った処理対象物の上に堆積させることができる。また、炭素供給用炭素物質をさらに処理容器に収容する場合のその収容方法は、粉末状や粒状や塊状の炭素供給用炭素物質を、前出の、例えば、紙、木、合成樹脂、炭素などからなる収納部材に収納してから酸化処理を行った処理対象物の上に載置する方法や、シート状や板状の炭素供給用炭素物質を酸化処理を行った処理対象物の上に載置する方法などであってもよい。炭素供給用炭素物質の種類を、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させる炭素物質の種類や、酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に介在させる炭素物質の種類と同じにすれば、熱処理後における処理容器内の炭素物質をひとまとめに回収して再利用することができる点において都合がよい。
こうして炭素物質の存在下で酸化処理を行った処理対象物に対して熱処理を行ってから冷却すると、熱処理温度や熱処理時間の違い、炭素物質の種類やその使用量の違いなどにも依存するが、概ね、炭素物質の使用量が少ない場合、処理容器内には熱処理物として2種類の塊状物が互いに密接して存在し、使用量が多くなると、球状物の表面に物理的な衝撃を与えることで容易に剥離する付着物が付着した単独形状の塊状物が次第に存在するようになる。また、熱処理物として微視的に2相構造を有する塊状物が得られる場合もある。希土類元素の酸化物は、互いに密接して存在する2種類の塊状物の一方としてや、単独形状の塊状物を構成する球状物の表面に付着した付着物として、回収することができる。なお、互いに密接して存在する2種類の塊状物の他方と、単独形状の塊状物を構成する球状物は、鉄族元素の炭素との合金である。また、微視的に2相構造を有する塊状物が得られる場合、2相構造の一方は希土類元素の酸化物であって他方は鉄族元素の炭素との合金であるので、例えばこの塊状物を粉砕して得られる粉末を磁気的に分離することで、希土類元素の酸化物を粉末として回収することができる。回収された希土類元素の酸化物は、例えば溶融塩電解法などによって還元することで希土類金属に変換することができる。熱処理後に処理容器内に余剰の炭素物質が存在する場合、処理容器内に存在する塊状物と炭素物質は、磁気的方法や篩を用いて容易に分離することができる。分離された炭素物質は回収して再利用すればよいことは前述のとおりである。
本発明の方法の適用対象となる少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物が例えばR−Fe−B系永久磁石などのようにその他の元素としてホウ素を含む場合、本発明の方法によって鉄族元素の炭素との合金から分離することで回収された希土類元素の酸化物にはホウ素が多少なりとも含まれる。ホウ素を含む希土類元素の酸化物をフッ素を含む溶融塩成分を用いた溶融塩電解法によって還元すると、希土類元素の酸化物に含まれるホウ素がフッ素と反応することで有毒なフッ化ホウ素が発生する恐れがある。従って、こうした場合には予め希土類元素の酸化物のホウ素含量を低減しておくことが望ましい。ホウ素を含む希土類元素の酸化物のホウ素含量の低減は、例えばホウ素を含む希土類元素の酸化物をアルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)や酸化物とともに例えば炭素の存在下で熱処理することで行うことができる。炭素の存在下での熱処理は、例えば、前出の炭素物質を炭素供給源として用いて1300℃〜1600℃で行えばよい。熱処理時間は例えば30分間〜5時間が適当である。アルカリ金属の炭酸塩や酸化物は、例えばホウ素を含む希土類元素の酸化物1重量部に対して0.1重量部〜2重量部用いればよい。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
実施例1:
R−Fe−B系永久磁石の製造工程中に発生した約10μmの粒径を有する磁石加工屑(自然発火防止のため水中で7日間保管したもの)に対し、吸引ろ過することで脱水してからロータリーキルンを用いて燃焼処理することで酸化処理を行った(酸化処理を行った磁石加工屑に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の8.5倍)。寸法が70mmφ×70mmの炭素るつぼ(黒鉛製)の底面にカーボンブラック(東海カーボン社製のファーネスブラック、以下同じ)を敷き詰めた後、一般紙を円筒形に丸めたものを仕切り部材として容器の内部に立設し、容器側面と仕切り部材との間にカーボンブラックを充填した。次に、仕切り部材で囲まれた内側に酸化処理を行った磁石加工屑40gとカーボンブラック8g(磁石加工屑に含まれる鉄に対するモル比率:1.86)の混合物を収容し、工業用アルゴンガス雰囲気(酸素含有濃度:0.2ppm、流量:5L/分。以下同じ)中で1450℃で1時間熱処理した。その後、炭素るつぼを室温まで炉冷した。その結果、るつぼ内には2種類の塊状物が互いに密接したものとカーボンブラックが残留物として存在した。この2種類の塊状物に対して行ったICP分析(使用装置:島津製作所社製のICPV−1017、以下同じ)とガス分析(使用装置:堀場製作所社製のEMGA−550W、以下同じ)の結果を表1に示す。表1から明らかなように、塊状物の一方(塊状物A)の主成分は鉄である一方、他方(塊状物B)の主成分は希土類元素であり、希土類元素を酸化物として鉄から分離することができたことがわかった(希土類元素が酸化物であることは別途に行った標準試料を用いたX線回折分析において念のため確認した)。るつぼ内の残留物を取り除いた後、容器底面と容器側面を観察したところ、この熱処理による目立った損傷は認められなかった。また、この熱処理による炭素るつぼの重量減少は0.061%であり、炭素るつぼのみを熱処理した場合の重量減少の程度とほぼ同じであったことから、この熱処理による炭素るつぼの消耗はほとんどないことがわかった。また、炭素るつぼの底面に敷き詰める炭素物質と、容器側面と仕切り部材との間に充填する炭素物質を黒鉛末(東海カーボン製で粒径が125μm以下になるまで粉砕したもの、以下同じ)とすること以外は上記と同様の実験を行ったところ、炭素るつぼの底面に敷き詰める炭素物質と、容器側面と仕切り部材との間に充填する炭素物質としてカーボンブラックを用いた場合と同様、容器の目立った損傷を引き起こすことなく希土類元素を酸化物として鉄から分離することができた。炭素るつぼの重量減少はカーボンブラックを用いた場合よりも多い0.142%であったが、実用上許容できる範囲であった。また、炭素るつぼの底面に敷き詰める炭素物質と、容器側面と仕切り部材との間に充填する炭素物質を石油コークス(ダイネン社製:Rコークス、粒径<5mm、以下同じ)とすること以外は上記と同様の実験を行った場合も、炭素るつぼの底面に敷き詰める炭素物質と、容器側面と仕切り部材との間に充填する炭素物質としてカーボンブラックを用いた場合と同様、容器の目立った損傷を引き起こすことなく希土類元素を酸化物として鉄から分離することができた。炭素るつぼの重量減少はカーボンブラックを用いた場合よりも多い0.216%であったが、実用上許容できる範囲であった。以上の結果から、炭素るつぼの底面に敷き詰める炭素物質と、容器側面と仕切り部材との間に充填する炭素物質として、カーボンブラック、黒鉛末、石油コークスのいずれを用いた場合でも、容器の目立った損傷と実用上問題となる重量減少を引き起こすことなく希土類元素を酸化物として鉄から分離することができたが、カーボンブラックは、黒鉛末と石油コークスに比較して、熱処理による炭素るつぼの消耗に対する抑制効果が優れることがわかった。この理由は必ずしも明確ではないが、カーボンブラックは、通常、個々の微粒子どうしが融着して連鎖状ないしは不規則かつ複雑な鎖状に枝分かれした凝集形態を有することで空気を多く含んで低密度であるため、熱処理による酸化処理を行った磁石加工屑との反応性が黒鉛末と石油コークスに比較して緩やかであることが理由ではないかと考察された。
Figure 2014192874
実施例2:
一般紙を円筒形に丸めたものを仕切り部材として炭素るつぼの内部に立設する代わりに、断ボールを円筒形に丸めたものを立設すること以外は実施例1と同様の実験を行うことで、実施例1と同様の結果を得ることができた。
実施例3:
一般紙を円筒形に丸めたものを仕切り部材として炭素るつぼの内部に立設する代わりに、複数枚の木板で構成した多角筒形の仕切り部材を立設すること以外は実施例1と同様の実験を行うことで、実施例1と同様の結果を得ることができた。
実施例4:
一般紙を円筒形に丸めたものを仕切り部材として炭素るつぼの内部に立設する代わりに、市販のカーボンシートを円筒形に丸めたものを立設すること以外は実施例1と同様の実験を行うことで、実施例1と同様の結果を得ることができた。
実施例5:
実施例1に記載の酸化処理を行った磁石加工屑100gとカーボンブラック20g(磁石加工屑に含まれる鉄に対するモル比率:1.86)を市販のポリエチレン製の袋に収納して袋内で混合したものを、寸法が110mmφ×150mmの炭素るつぼ(黒鉛製)に収容した。なお、その前に、るつぼの底面には、カーボンブラックを市販のポリエチレン製の袋に収納したものを設置した。また、酸化処理を行った磁石加工屑とカーボンブラックの混合物を袋に収納したものと容器側面との間にも、カーボンブラックを市販のポリエチレン製の袋に収納したものを設置した。工業用アルゴンガス雰囲気中で1450℃で1時間熱処理した後、炭素るつぼを室温まで炉冷した。その結果、るつぼ内には2種類の塊状物が互いに密接したものとカーボンブラックが残留物として存在した。この2種類の塊状物に対して行ったICP分析とガス分析の結果、塊状物の一方の主成分は鉄である一方、他方の主成分は希土類元素であり、希土類元素を酸化物として鉄から分離することができたことがわかった(希土類元素が酸化物であることは別途に行った標準試料を用いたX線回折分析において念のため確認した)。るつぼ内の残留物を取り除いた後、容器底面と容器側面を観察したところ、この熱処理による目立った損傷は認められなかった。また、この熱処理による炭素るつぼの重量減少は0.042%であり、炭素るつぼのみを熱処理した場合の重量減少の程度とほぼ同じであったことから、この熱処理による炭素るつぼの消耗はほとんどないことがわかった。
実施例6:
炭素るつぼの代わりにアルミナるつぼを用いること以外は実施例5と同様の実験を行うことで、実施例5と同様の結果を得ることができた。
実施例7:
熱処理温度を1300℃とすること以外は実施例5と同様の実験を行うことで、実施例5と同様の結果を得ることができた。
実施例8:
熱処理温度を1600℃とすること以外は実施例5と同様の実験を行うことで、実施例5と同様の結果を得ることができた。
実施例9:
実施例1に記載の酸化処理を行った磁石加工屑30gと石油コークス2.4g(磁石加工屑に含まれる鉄に対するモル比率:0.75)を市販のポリエチレン製の袋に収納して袋内で混合したものを、寸法が70mmφ×70mmの炭素るつぼ(黒鉛製)に収容した。なお、その前に、るつぼの底面には、カーボンブラックを敷き詰めた。また、酸化処理を行った磁石加工屑と石油コークスの混合物を袋に収納したものと容器側面との間にも、カーボンブラックを充填した。工業用アルゴンガス雰囲気中で1450℃で1時間熱処理した後、炭素るつぼを室温まで炉冷した。その結果、るつぼ内には2種類の塊状物が互いに密接したものとカーボンブラックが残留物として存在した。この2種類の塊状物に対して行ったICP分析とガス分析の結果、塊状物の一方の主成分は鉄である一方、他方の主成分は希土類元素であり、希土類元素を酸化物として鉄から分離することができたことが分かった(希土類元素が酸化物であることは別途に行った標準試料を用いたX線回折分析において念のため観察した)。るつぼ内の残留物を取り除いた後、容器底面と容器側面を観察したところ、この熱処理による目立った損傷は認められなかった。また、この熱処理による炭素るつぼの重量減少は0.33%であった。
実施例10:
熱処理温度を1300℃とすること以外は実施例9と同様の実験を行うことで、実施例9と同様の結果を得ることができた。
実施例11:
実施例1に記載の酸化処理を行った磁石加工屑30gと石油コークス2.4g(磁石加工屑に含まれる鉄に対するモル比率:0.75)を市販のポリエチレン製の袋に収納して袋内で混合したものを、寸法が70mmφ×70mmの炭素るつぼ(黒鉛製)に収容した。なお、その前に、るつぼの底面には、石油コークスを敷き詰めた。また、酸化処理を行った磁石加工屑と石油コークスの混合物を袋に収納したものと容器側面との間にも、石油コークスを充填した。工業用アルゴンガス雰囲気中で1450℃で1時間熱処理した後、炭素るつぼを室温まで炉冷した。その結果、るつぼ内には2種類の塊状物が互いに密接したものと石油コークスが残留物として存在した。この2種類の塊状物に対して行ったICP分析とガス分析の結果、塊状物の一方の主成分は鉄である一方、他方の主成分は希土類元素であり、希土類元素を酸化物として鉄から分離することができたことが分かった(希土類元素が酸化物であることは別途に行った標準試料を用いたX線回折分析において念のため観察した)。るつぼ内の残留物を取り除いた後、容器底面と容器側面を観察したところ、この熱処理による目立った損傷は認められなかった。また、この熱処理による炭素るつぼの重量減少は0.47%であった。
実施例12:
熱処理温度を1600℃とすること以外は実施例11と同様の実験を行うことで、実施例11と同様の結果を得ることができた。
実施例13:
実施例1に記載の酸化処理を行った磁石加工屑50gを、寸法が70mmφ×70mmの炭素るつぼ(黒鉛製)に収容した。なお、その前に、るつぼの底面には、石油コークス20g(磁石加工屑に含まれる鉄に対するモル比率:3.75)を敷き詰めた。工業用アルゴンガス雰囲気中で1450℃で1時間熱処理した後、炭素るつぼを室温まで炉冷した。その結果、るつぼ内には2種類の塊状物が互いに密接したものと石油コークスが残留物として存在した。この2種類の塊状物に対して行ったICP分析とガス分析の結果、塊状物の一方の主成分は鉄である一方、他方の主成分は希土類元素であり、希土類元素を酸化物として鉄から分離することができたことが分かった(希土類元素が酸化物であることは別途に行った標準試料を用いたX線回折分析において念のため観察した)。るつぼ内の残留物を取り除いた後、容器底面と容器側面を観察したところ、この熱処理による目立った損傷は認められなかった。
実施例14:
熱処理温度を1300℃とすること以外は実施例13と同様の実験を行うことで、実施例13と同様の結果を得ることができた。
実施例15:
熱処理温度を1600℃とすること以外は実施例13と同様の実験を行うことで、実施例13と同様の結果を得ることができた。
実施例16:
炭素るつぼの底面に黒鉛末20g(磁石加工屑に含まれる鉄に対するモル比率:3.75)を敷き詰めること以外は実施例13と同様の実験を行うことで、実施例13と同様の結果を得ることができた。
実施例17:
実施例1に記載の酸化処理を行った磁石加工屑50gを、寸法が70mmφ×70mmの炭素るつぼ(黒鉛製)に収容した。なお、その前に、るつぼの底面には、カーボンブラック10g(磁石加工屑に含まれる鉄に対するモル比率:1.88)を敷き詰めた。工業用アルゴンガス雰囲気中で1450℃で1時間熱処理した後、炭素るつぼを室温まで炉冷した。その結果、るつぼ内には単独の塊状物とカーボンブラックが残留物として存在した。この塊状物は、微視的に鉄を主成分とする相と希土類元素と酸素を主成分とする相の2相構造を有するものであり(SEM・EDX分析(使用装置:日立ハイテクノロジーズ社製S4500)を用いた分析による)、市販の擂潰機を用いて粉砕した後、磁気的方法によって5μm程度の大きさの鉄を主成分とする相の粉末を分離することで、1μm程度の大きさの希土類元素と酸素を主成分とする相の粉末を回収することができた。なお、るつぼ内の残留物を取り除いた後、容器底面と容器側面を観察したところ、この熱処理による目立った損傷は認められなかった。
本発明は、少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から効率的に希土類元素を回収することができるとともに、処理容器をその消耗や損傷を抑制して長期に亘って繰り返し用いることができる方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
また、本発明の方法においては、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させる炭素物質や、酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に介在させる炭素物質に加え、酸化処理を行った処理対象物に対する炭素供給源としての役割を果たす炭素物質(この段落において以下「炭素供給用炭素物質」)をさらに処理容器に収容してもよい。炭素供給用炭素物質の具体例としては、前出の、例えば、カーボンブラック、石油コークス、グラファイト、木炭、石炭、ダイヤモンドなどが挙げられる。その形状は粉末状や粒状や塊状やシート状や板状であってよい。炭素供給用炭素物質をさらに処理容器に収容する場合、その収容方法はその役割を果たす方法であれば特段の制限はない。しかしながら、炭素供給用炭素物質は、その形状が粉末状や粒状や塊状であって、処理容器内において酸化処理を行った処理対象物と混合状態で存在するように収容することが、その役割を効果的に果たすことができる点において望ましい。処理容器内において酸化処理を行った処理対象物と炭素供給用炭素物質を混合状態にする方法については特段の制限はなく、例えば、酸化処理を行った処理対象物と炭素供給用炭素物質を予め混合してから処理容器に収容する方法が挙げられる。この場合、酸化処理を行った処理対象物と炭素供給用炭素物質の混合物は、単に混合しただけのものであってもよいし、プレスしてブリケット状に成形したものなどであってもよい。なお、酸化処理を行った処理対象物と炭素供給用炭素物質は、両者の混合物を、前出の、例えば、紙、木、合成樹脂、炭素などからなる収納部材に収納してから処理容器に収容してもよいし、両者を収納部材に収納してからその中で混合した後、処理容器に収容してもよい。また、炭素供給用炭素物質の個々の大きさが酸化処理を行った処理対象物の個々の大きさよりも小さい場合、酸化処理を行った処理対象物を処理容器に収容した後、その上から炭素供給用炭素物質を供給すれば、炭素供給用炭素物質の個々が酸化処理を行った処理対象物の個々間に入り込むことで、酸化処理を行った処理対象物と炭素供給用炭素物質を混合状態にすることができる。処理容器内において酸化処理を行った処理対象物と炭素供給用炭素物質を混合状態にする場合、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させた炭素物質は、専ら酸化処理を行った処理対象物が容器底面に接触することを防止する役割を果たす。従って、その使用量を炭素供給源としての消費量を考慮して決定する必要はない。一方で、炭素供給用炭素物質の使用量は、処理対象物に含まれる鉄族元素の全てが酸化処理によって酸化物に変換されてもその還元を確実なものとして炭素との合金化を進行させるためには、処理対象物に含まれる鉄族元素に対してモル比で0.5倍以上であることが望ましく、1.0倍以上であることがより望ましく、1.5倍以上であることがさらに望ましい。炭素供給用炭素物質をさらに処理容器に収容する場合のその収容方法は、炭素供給用炭素物質を処理容器に収容された酸化処理を行った処理対象物の上に堆積させる方法などであってもよい。例えば炭素供給用炭素物質の形状が粉末状や粒状や塊状であってその個々の大きさが酸化処理を行った処理対象物の個々の大きさよりも大きい場合、炭素供給用炭素物質を酸化処理を行った処理対象物の上に堆積させることができる。また、炭素供給用炭素物質をさらに処理容器に収容する場合のその収容方法は、粉末状や粒状や塊状の炭素供給用炭素物質を、前出の、例えば、紙、木、合成樹脂、炭素などからなる収納部材に収納してから酸化処理を行った処理対象物の上に載置する方法や、シート状や板状の炭素供給用炭素物質を酸化処理を行った処理対象物の上に載置する方法などであってもよい。炭素供給用炭素物質の種類を、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させる炭素物質の種類や、酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に介在させる炭素物質の種類と同じにすれば、熱処理後における処理容器内の炭素物質をひとまとめに回収して再利用することができる点において都合がよい。
実施例1:
R−Fe−B系永久磁石の製造工程中に発生した約10μmの粒径を有する磁石加工屑(自然発火防止のため水中で7日間保管したもの)に対し、吸引ろ過することで脱水してからロータリーキルンを用いて燃焼処理することで酸化処理を行った(酸化処理を行った磁石加工屑に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の8.5倍)。寸法が70mmφ×70mmの炭素るつぼ(黒鉛製)の底面にカーボンブラック(東海カーボン社製のファーネスブラック、以下同じ)を敷き詰めた後、一般紙を円筒形に丸めたものを仕切り部材として容器の内部に立設し、容器側面と仕切り部材との間にカーボンブラックを充填した。次に、仕切り部材で囲まれた内側に酸化処理を行った磁石加工屑40gとカーボンブラック8g(磁石加工屑に含まれる鉄に対するモル比率:1.86)の混合物を収容し、工業用アルゴンガス雰囲気(酸素含有濃度:0.2ppm、流量:5L/分。以下同じ)中で1450℃で1時間熱処理した。その後、炭素るつぼを室温まで炉冷した。その結果、るつぼ内には2種類の塊状物が互いに密接したものとカーボンブラックが残留物として存在した。この2種類の塊状物に対して行ったICP分析(使用装置:島津製作所社製のICPV−1017、以下同じ)とガス分析(使用装置:堀場製作所社製のEMGA−550W、以下同じ)の結果を表1に示す。表1から明らかなように、塊状物の一方(塊状物A)の主成分は鉄である一方、他方(塊状物B)の主成分は希土類元素であり、希土類元素を酸化物として鉄から分離することができたことがわかった(希土類元素が酸化物であることは別途に行った標準試料を用いたX線回折分析において念のため確認した)。るつぼ内の残留物を取り除いた後、容器底面と容器側面を観察したところ、この熱処理による目立った損傷は認められなかった。また、この熱処理による炭素るつぼの重量減少は0.061%であり、炭素るつぼのみを熱処理した場合の重量減少の程度とほぼ同じであったことから、この熱処理による炭素るつぼの消耗はほとんどないことがわかった。また、炭素るつぼの底面に敷き詰める炭素物質と、容器側面と仕切り部材との間に充填する炭素物質を黒鉛末(東海カーボン製で粒径が125μm以下になるまで粉砕したもの、以下同じ)とすること以外は上記と同様の実験を行ったところ、炭素るつぼの底面に敷き詰める炭素物質と、容器側面と仕切り部材との間に充填する炭素物質としてカーボンブラックを用いた場合と同様、容器の目立った損傷を引き起こすことなく希土類元素を酸化物として鉄から分離することができた。炭素るつぼの重量減少はカーボンブラックを用いた場合よりも多い0.142%であったが、実用上許容できる範囲であった。また、炭素るつぼの底面に敷き詰める炭素物質と、容器側面と仕切り部材との間に充填する炭素物質を石油コークス(ダイネン社製:Rコークス、粒径<5mm、以下同じ)とすること以外は上記と同様の実験を行った場合も、炭素るつぼの底面に敷き詰める炭素物質と、容器側面と仕切り部材との間に充填する炭素物質としてカーボンブラックを用いた場合と同様、容器の目立った損傷を引き起こすことなく希土類元素を酸化物として鉄から分離することができた。炭素るつぼの重量減少はカーボンブラックを用いた場合よりも多い0.216%であったが、実用上許容できる範囲であった。以上の結果から、炭素るつぼの底面に敷き詰める炭素物質と、容器側面と仕切り部材との間に充填する炭素物質として、カーボンブラック、黒鉛末、石油コークスのいずれを用いた場合でも、容器の目立った損傷と実用上問題となる重量減少を引き起こすことなく希土類元素を酸化物として鉄から分離することができたが、カーボンブラックは、黒鉛末と石油コークスに比較して、熱処理による炭素るつぼの消耗に対する抑制効果が優れることがわかった。この理由は必ずしも明確ではないが、カーボンブラックは、通常、個々の微粒子どうしが融着して連鎖状ないしは不規則かつ複雑な鎖状に枝分かれした凝集形態を有することで空気を多く含んで低密度であるため、熱処理による酸化処理を行った磁石加工屑との反応性が黒鉛末と石油コークスに比較して緩やかであることが理由ではないかと考察された。
実施例9:
実施例1に記載の酸化処理を行った磁石加工屑30gと石油コークス2.4g(磁石加工屑に含まれる鉄に対するモル比率:0.75)を市販のポリエチレン製の袋に収納して袋内で混合したものを、寸法が70mmφ×70mmの炭素るつぼ(黒鉛製)に収容した。なお、その前に、るつぼの底面には、カーボンブラックを敷き詰めた。また、酸化処理を行った磁石加工屑と石油コークスの混合物を袋に収納したものと容器側面との間にも、カーボンブラックを充填した。工業用アルゴンガス雰囲気中で1450℃で1時間熱処理した後、炭素るつぼを室温まで炉冷した。その結果、るつぼ内には2種類の塊状物が互いに密接したものとカーボンブラックが残留物として存在した。この2種類の塊状物に対して行ったICP分析とガス分析の結果、塊状物の一方の主成分は鉄である一方、他方の主成分は希土類元素であり、希土類元素を酸化物として鉄から分離することができたことが分かった(希土類元素が酸化物であることは別途に行った標準試料を用いたX線回折分析において念のため確認した)。るつぼ内の残留物を取り除いた後、容器底面と容器側面を観察したところ、この熱処理による目立った損傷は認められなかった。また、この熱処理による炭素るつぼの重量減少は0.33%であった。
実施例11:
実施例1に記載の酸化処理を行った磁石加工屑30gと石油コークス2.4g(磁石加工屑に含まれる鉄に対するモル比率:0.75)を市販のポリエチレン製の袋に収納して袋内で混合したものを、寸法が70mmφ×70mmの炭素るつぼ(黒鉛製)に収容した。なお、その前に、るつぼの底面には、石油コークスを敷き詰めた。また、酸化処理を行った磁石加工屑と石油コークスの混合物を袋に収納したものと容器側面との間にも、石油コークスを充填した。工業用アルゴンガス雰囲気中で1450℃で1時間熱処理した後、炭素るつぼを室温まで炉冷した。その結果、るつぼ内には2種類の塊状物が互いに密接したものと石油コークスが残留物として存在した。この2種類の塊状物に対して行ったICP分析とガス分析の結果、塊状物の一方の主成分は鉄である一方、他方の主成分は希土類元素であり、希土類元素を酸化物として鉄から分離することができたことが分かった(希土類元素が酸化物であることは別途に行った標準試料を用いたX線回折分析において念のため確認した)。るつぼ内の残留物を取り除いた後、容器底面と容器側面を観察したところ、この熱処理による目立った損傷は認められなかった。また、この熱処理による炭素るつぼの重量減少は0.47%であった。
実施例13:
実施例1に記載の酸化処理を行った磁石加工屑50gを、寸法が70mmφ×70mmの炭素るつぼ(黒鉛製)に収容した。なお、その前に、るつぼの底面には、石油コークス20g(磁石加工屑に含まれる鉄に対するモル比率:3.75)を敷き詰めた。工業用アルゴンガス雰囲気中で1450℃で1時間熱処理した後、炭素るつぼを室温まで炉冷した。その結果、るつぼ内には2種類の塊状物が互いに密接したものと石油コークスが残留物として存在した。この2種類の塊状物に対して行ったICP分析とガス分析の結果、塊状物の一方の主成分は鉄である一方、他方の主成分は希土類元素であり、希土類元素を酸化物として鉄から分離することができたことが分かった(希土類元素が酸化物であることは別途に行った標準試料を用いたX線回折分析において念のため確認した)。るつぼ内の残留物を取り除いた後、容器底面と容器側面を観察したところ、この熱処理による目立った損傷は認められなかった。

Claims (10)

  1. 少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移して熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離して回収する方法において、酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下で熱処理するにあたり、酸化処理を行った処理対象物を処理容器に収容する際、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に炭素物質を介在させること、そして不活性ガス雰囲気中または真空中において1300℃以上の温度で熱処理することを特徴とする方法。
  2. 処理対象物の少なくとも一部が500μm以下の粒径を有する粒状ないし粉末状であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 処理対象物の鉄族元素含量が30mass%以上であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 処理対象物がR−Fe−B系永久磁石であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 紙、木、合成樹脂、炭素のいずれかからなる収納部材に収納した酸化処理を行った処理対象物を、処理容器に収容することを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 紙、木、合成樹脂、炭素のいずれかからなる収納部材に収納した炭素物質を、酸化処理を行った処理対象物と容器底面との間に介在させることを特徴とする請求項1記載の方法。
  7. 酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間にもさらに炭素物質を介在させることを特徴とする請求項1記載の方法。
  8. 酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に介在させた炭素物質を、紙、木、合成樹脂、炭素のいずれかからなる仕切り部材で酸化処理を行った処理対象物と仕切ることを特徴とする請求項7記載の方法。
  9. 紙、木、合成樹脂、炭素のいずれかからなる収納部材に収納した炭素物質を、酸化処理を行った処理対象物と容器側面との間に介在させることを特徴とする請求項7記載の方法。
  10. 処理容器にさらに炭素物質を収容することを特徴とする請求項1記載の方法。
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