JPWO2014188843A1 - テトラヒドロフランの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の目的は、バイオマスであるエリスリトール又はこれより容易に誘導可能な3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを原料として、テトラヒドロフランを高い反応収率で製造する方法を提供することにある。本発明のテトラヒドロフランの製造方法は、酸化セリウムと、該酸化セリウムに担持されたレニウムとを含む触媒の存在下、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させてテトラヒドロフランを生成させる工程を含むことを特徴とする方法である。

Description

本発明は、バイオマスであるエリスリトール又はこれより容易に誘導可能な3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを原料として、テトラヒドロフランを製造する方法に関する。本願は、2013年5月21日に日本に出願した特願2013−107062号及び2013年9月18日に日本に出願した特願2013−193340号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
テトラヒドロフランは、溶媒、高分子材料、γ−ブチロラクトンの原料などとして広く使用されており、工業的に重要な化合物である。現在、テトラヒドロフランは主に、石油の精製から得られるn−ブタンやベンゼンを酸化して無水マレイン酸とし、これを水素化する方法により製造されている。
しかしながら、上述のテトラヒドロフランの製造方法は、石油を基本原料とする方法であるため、テトラヒドロフランから製造される製品が廃棄される際に燃焼されれば、石油由来の二酸化炭素が大気中に排出されることとなり、地球温暖化に繋がる。また、近年、近い将来に石油が枯渇するとも言われており、テトラヒドロフランの原料を、環境にやさしく、かつ持続的に供給可能な原料に転換することが望まれている。もしテトラヒドロフランの原料のバイオマス原料への転換が実現されれば、テトラヒドロフランより製造された製品が廃棄の際に燃焼され二酸化炭素を排出したとしても、このような二酸化炭素は光合成により再度バイオマスに取り込まれ、再びテトラヒドロフランの原料となる。このような形で炭素が循環するので、持続的な供給も可能となる。
テトラヒドロフランの原料として使用可能性があるバイオマスとして、エリスリトールやスレイトールなどのテトラヒドロキシブタンが注目を集めている。このうち、エリスリトールは、低カロリーの甘味料として現在も多くの食品に添加されており、コーンスターチなどを原料とした発酵法により比較的大きな規模で工業的に生産されている。一方、スレイトールは、その過冷却特性を利用した蓄熱剤としての用途が注目されており、その製法としてはエリスリトールの微生物による異性化などが知られているが、現状ではその生産規模は小さい。
エリスリトールは、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなどと同じ天然ポリオール類の一種である。天然ポリオールから化成品を製造する方法はいくつか示されており、大きく分けて二種類がある。第一の方法は、ポリオールの二つの水酸基を脱水エーテル縮合反応させて、環状エーテル化合物を製造する方法である。特許文献1には、エリスリトールを硫酸の存在下、加熱することによって3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを生成させる方法が開示されている。しかしながら、上記方法によりテトラヒドロフランが生成することは示されていない。また、特許文献2には、エリスリトールを強酸性のイオン交換樹脂の存在下で反応させることによって、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを製造する方法が開示されている。しかしながら、上記方法によりテトラヒドロフランが生成することは示されていない。さらに、非特許文献1には、ルテニウム又は白金と銅の複合金属触媒を使用し、水素存在下で、エリスリトールを反応させる方法が開示されている。このような方法により、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランが生成することは記載されているが、テトラヒドロフランが生成することは記載されていない。さらに、非特許文献2にも酸触媒の存在下でのエリスリトールの脱水環化反応が示されているが、テトラヒドロフランが生成することは記載されていない。
天然ポリオールから化成品を製造する第二の方法は、ポリオールを水素化分解触媒を用いて水素と反応させる方法である。非特許文献3では、ルテニウムを含む均一触媒を使用した各種ポリオールの水素化分解反応が検討されており、エリスリトールを反応させた例が示されている。この例では、テトラヒドロフランの生成が認められているが、その収率は4%程度である。また、特許文献3にも、エリスリトールを炭素担持したレニウムからなる固体触媒の存在下で反応させた例が示されている。この方法では、ナフィオン(登録商標)などの強酸を共存させることが必要とされ、最高49.8%の収率でテトラヒドロフランが生成することが示されている。さらに、特許文献4及び5には、水素存在下でポリオール類の脱水環化反応と水素化分解反応が同時に起きる例が示されている。しかしながら、前者には、エリスリトールを反応させたことについては記載されてはいるものの、テトラヒドロフランが生成することは記載されていない。また、後者には、エリスリトールを反応させた例は示されていない。
米国特許第4939277号明細書 特開平6−116256号公報 特表2005−514354号公報 米国特許第4313884号明細書 米国特許第6013812号明細書
J. Mol. Catal(1991), 70(1), p65 J. Org. Chem(1991), 417(1〜2), p41 J. Organometal. Chem(1991), 417(1-2), p41
以上のように、従来技術の中には、バイオマスであるエリスリトールを原料として化成品を製造する例はいくつか存在するが、化成品としてテトラヒドロフランを製造しようとする例は少なく、また、十分な反応収率でテトラヒドロフランが得られるものは存在しなかった。最も高い収率を示すものとして特許文献3の収率49.8%が挙げられるが、商業的にテトラヒドロフランの製造を実施するためには、さらに高い収率で製造することが必要とされる。
従って、本発明の目的は、バイオマスであるエリスリトール又はこれより容易に誘導可能な3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを原料として、テトラヒドロフランを高い反応収率で製造する方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、バイオマスであるエリスリトール又はこれより容易に誘導可能な3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを原料とし、これを特定の触媒の存在下で水素と反応させることにより、テトラヒドロフランを高い反応収率で製造できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、酸化セリウムと、該酸化セリウムに担持されたレニウムとを含む触媒の存在下、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させてテトラヒドロフランを生成させる工程を含むことを特徴とするテトラヒドロフランの製造方法を提供する。
また、本発明は、炭素担体と、該炭素担体に担持されたレニウムとを含む触媒の存在下、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを酸の非存在下で反応させてテトラヒドロフランを生成させる工程を含むことを特徴とするテトラヒドロフランの製造方法を提供する。
さらに、前記3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランが、エリスリトールを脱水環化させて製造された3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランである前記のテトラヒドロフランの製造方法を提供する。
さらに、前記触媒が、さらに、金属助触媒としてレニウム以外の金属を含む前記のテトラヒドロフランの製造方法を提供する。
さらに、前記工程の前に、さらに、エリスリトールを脱水環化させて3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを製造する工程を含む前記のテトラヒドロフランの製造方法を提供する。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]酸化セリウムと、該酸化セリウムに担持されたレニウムとを含む触媒の存在下、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させてテトラヒドロフランを生成させる工程を含むことを特徴とするテトラヒドロフランの製造方法。
[2]酸化セリウムの比表面積が50〜1500m2/gである[1]に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[3]酸化セリウムの平均粒径が100〜10000μmである[1]又は[2]に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[4]炭素担体と、該炭素担体に担持されたレニウムとを含む触媒の存在下、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを酸の非存在下で反応させてテトラヒドロフランを生成させる工程を含むことを特徴とするテトラヒドロフランの製造方法。
[5]炭素担体の比表面積が50〜1500m2/gである[4]に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[6]炭素担体の平均粒径が100〜10000μmである[4]又は[5]に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[7]炭素担体が活性炭である[4]〜[6]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[8]レニウムがレニウム酸化物である[1]〜[7]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[9]レニウムの担体(炭素担体又は酸化セリウム)への担持量(レニウム原子換算)が、レニウムと上記担体の総量(100重量%)に対して、0.01〜50重量%である[1]〜[8]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[10]前記3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランが、エリスリトールを脱水環化させて製造された3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランである[1]〜[9]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[11]前記触媒が、さらに、金属助触媒としてレニウム以外の金属を含む[1]〜[10]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[12]その他の金属が、Pd、Pt、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群より選択された少なくとも一種の金属である[11]に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[13]前記触媒におけるレニウムとその他の金属(二種以上を含有する場合にはこれらの総量)との割合(モル比、金属換算)[その他の金属/レニウム]が、50/1〜1/500である[11]又は[12]に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[14]前記触媒の平均粒径が100〜10000μmである[1]〜[13]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[15]3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応が、触媒の存在下、液状の3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させる気液固三相系の反応である[1]〜[14]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[16]3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを必須成分として含む原料液と水素とを反応器中に封入して、前記触媒の存在下で加熱することによって進行させる[1]〜[15]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[17]前記原料液における3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの濃度(原料液100重量%に対する3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの含有量)が、5〜100重量%である[16]に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[18]前記反応(3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応)に付す水素と3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランのモル比[水素(mol)/3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン(mol)]が、1〜100である[1]〜[17]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[19]前記反応における3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応温度が、50〜250℃である[1]〜[18]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[20]前記反応における3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応時間が、0.1〜100時間である[1]〜[19]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[21]前記反応における3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応圧力(3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応における水素圧)が、1〜50MPaである[1]〜[20]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[22]前記反応に付す3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと前記触媒の割合[=3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン/前記触媒](重量比)が、1を超え、20以下である[1]〜[21]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[23]前記工程の前に、さらに、エリスリトールを脱水環化させて3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを製造する工程を含む[1]〜[22]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[24]エリスリトールを脱水環化させて3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランとする反応(分子内脱水反応)を溶媒の存在下で進行させ、前記溶媒として水を少なくとも使用する[23]に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[25]前記反応(分子内脱水反応)の反応温度(加熱温度)が、40〜240℃である[23]又は[24]に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[26]前記反応(分子内脱水反応)の時間(反応時間)が、1〜100時間である[23]〜[25]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[27]前記反応(分子内脱水反応)を不活性ガス雰囲気下で実施する[23]〜[26]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[28]前記反応(分子内脱水反応)を加圧下で実施する[23]〜[27]のいずれか1つに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
本発明のテトラヒドロフランの製造方法は、バイオマスであるエリスリトール又はこれより容易に誘導可能な3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを原料としてテトラヒドロフランを製造する方法であるため、環境に与える負荷が小さく、持続可能な社会の構築に大きく寄与するものである。また、上記製造方法によると、テトラヒドロフランを高い反応収率で製造することができるため、コスト面でも極めて有利である。
図1は、トリクルベッド反応器を使用した場合の、本発明のテトラヒドロフランの製造方法における水素化工程の一例を示すフロー図である。
<テトラヒドロフランの製造方法>
本発明のテトラヒドロフランの製造方法は、炭素担体と、該炭素担体に担持されたレニウムとを含む触媒の存在下、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを酸の非存在下(不存在下)で反応させてテトラヒドロフランを生成させる工程(「水素化工程(1)」と称する場合がある)、又は、酸化セリウムと、該酸化セリウムに担持されたレニウムとを含む触媒の存在下、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させてテトラヒドロフランを生成させる工程(「水素化工程(2)」と称する場合がある)を必須の工程として含む方法である。なお、本明細書において、水素化工程(1)と水素化工程(2)とを総称して「水素化工程」と称する場合がある。
[3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン]
上記水素化工程において原料として使用する3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン(1,4−アンヒドロエリスリトール)は、下記式(1)で表される化合物である。3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランは、式(1)に示されるように、エリスリトールの1位の水酸基(1位の炭素原子に結合した水酸基)と4位の水酸基(4位の炭素原子に結合した水酸基)とが脱水縮合して形成された構造を有する化合物である。なお、上記3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランには、下記式(1)で表される化合物における全ての立体異性体が包含される。
Figure 2014188843
3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランは、例えば、化学合成により製造された3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランであってもよいし、グルコース等の糖類から発酵技術で誘導される3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランであってもよく、特に限定されない。上記発酵技術で誘導される3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランとしては、例えば、グルコース等の糖類から発酵技術で誘導されたエリスリトールを原料として使用し、該エリスリトールの分子内脱水反応(分子内脱水環化反応)により生成される3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン(エリスリトールを脱水環化させて製造された3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン)などが挙げられる。上記分子内脱水反応は、公知乃至慣用の方法により実施でき、特に限定されないが、例えば、以下の脱水環化工程における方法に従って実施できる。なお、上記3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランとしては、上記水素化工程により得られた反応混合物から回収した3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン(未反応の3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン)を再利用することもできる。
本発明のテトラヒドロフランの製造方法は、例えば、上記水素化工程の前に、さらに、該工程における原料の3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを製造する工程を含んでいてもよい。上記工程としては、特に、エリスリトールを脱水環化させて3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを製造する工程(「脱水環化工程」と称する場合がある)が好ましい。
(脱水環化工程)
上記脱水環化工程におけるエリスリトールの分子内脱水反応は、周知の方法により実施することができ、特に限定されないが、例えば、酸触媒の存在下でエリスリトールを加熱することにより進行させることができる。なお、上記脱水環化工程は、上記水素化工程とは別ラインで実施することもできるし、上記水素化工程と一連の工程として(インラインで)実施することもできる。
上記脱水環化工程において原料として使用されるエリスリトールは、特に限定されず、化学合成により製造されたエリスリトールであってもよいし、グルコース等の糖類から発酵技術で誘導されるエリスリトールであってもよい。中でも、環境への負荷を低減する観点からは、グルコース等の糖類から発酵技術で誘導されるエリスリトール(バイオマスであるエリスリトール)を使用することが好ましい。また、当該脱水環化工程により得られた反応混合物から回収したエリスリトール(未反応のエリスリトール)を再利用することもできる。
上記脱水環化工程において使用される酸触媒としては、公知乃至慣用の酸を使用することができ、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、メタリン酸、縮合リン酸、臭化水素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸などの無機酸;p−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸;陽イオン交換樹脂、ゼオライト、シリカアルミナ、ヘテロポリ酸(例えば、リンモリブデン酸など)などの固体酸などが挙げられる。中でも、生成物等からの分離及び再生処理が容易である点で、固体酸が好ましい。なお、上記酸触媒としては市販品を使用することもでき、例えば、固体酸の市販品として商品名「Amberlyst」(ダウ・ケミカル社製)、商品名「ナフィオン」(デュポン社製)などが例示される。なお、酸(酸触媒)は一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記反応(分子内脱水反応)は、溶媒の非存在下で進行させることもできるし、溶媒の存在下で進行させることもできる。上記溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール;ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などの高極性の有機溶媒などが挙げられる。中でも、反応性に優れる点、及び取り扱いや廃棄が容易である点で、溶媒として水を少なくとも含有することが好ましい。なお、溶媒は一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記反応(分子内脱水反応)の反応温度(加熱温度)は、特に限定されないが、40〜240℃が好ましく、より好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃である。反応温度を上記範囲に制御することによって、エリスリトールの分子内脱水反応をより効率的に進行させることができる。なお、反応温度は、反応において一定(実質的に一定)となるように制御されていてもよいし、段階的又は連続的に変化するように制御されていてもよい。
上記反応(分子内脱水反応)の時間(反応時間)は、特に限定されないが、1〜100時間が好ましく、より好ましくは2〜50時間、さらに好ましくは3〜30時間である。反応時間が1時間未満であると、エリスリトールの反応率(転化率)が十分に上がらない場合がある。一方、反応時間が100時間を超えると、コスト面で不利となる場合がある。
上記反応(分子内脱水反応)は、空気雰囲気下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下などのいずれの雰囲気下においても実施することができる。特に、1,4−アンヒドロエリスリトールの選択率向上の観点からは、不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。また、上記反応(分子内脱水反応)は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれにおいても実施することができる。特に、エリスリトールの転化率向上の観点からは、加圧下で実施することが好ましい。例えば、水を溶媒として使用する場合には、加圧下で反応を実施することにより反応温度を100℃以上に高くできるため、エリスリトールの転化率を効率的に高めることができる。
上記反応(分子内脱水反応)は、回分形式、半回分形式、連続流通形式等の任意の形式により実施することができる。
上記脱水環化工程により、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランが生成する。このようにして得られた3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランは、その後、上記水素化工程における原料として使用されるが、脱水環化工程により得られた反応混合物から公知乃至慣用の方法(例えば、蒸留、吸着、イオン交換、晶析、抽出等)により単離した上で使用することもできるし、上記反応混合物から単離することなく使用することもできる。但し、本発明のテトラヒドロフランの製造方法の水素化工程(1)においては、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応を酸の非存在下で実施する必要があるため、上記反応混合物から酸触媒を少なくとも除去することが重要である。
[水素]
上記水素化工程において使用される水素(水素ガス)は、実質的に水素のみの状態で使用することもできるし、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス等により希釈した状態で使用することもできる。また、上記水素化工程を経た結果得られる反応混合物から回収した水素(未反応の水素)を再利用することもできる。
[触媒]
上記水素化工程における3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応は、触媒の存在下で進行させる。即ち、上記触媒は、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応によりテトラヒドロフランを生成させる反応に用いられる、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの水素化反応用触媒である。上記触媒を使用することにより上記反応が促進され、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率が向上し、テトラヒドロフランの選択率が向上する。
上記水素化工程(1)において使用される触媒は、炭素担体と、該炭素担体に担持されたレニウムとを少なくとも含む触媒(「本発明の触媒(1)」と称する場合がある)である。また、上記水素化工程(2)において使用される触媒は、酸化セリウム(CeO2)と、該酸化セリウムに担持されたレニウムとを少なくとも含む触媒(「本発明の触媒(2)」と称する場合がある)である。本発明の触媒(1)と本発明の触媒(2)とは、レニウムが担持された担体が異なること以外は同様の触媒である。本明細書において本発明の触媒(1)と本発明の触媒(2)とを総称して「本発明の触媒」と称する場合がある。
本発明の触媒において担体(本発明の触媒(1)の場合は炭素担体;本発明の触媒(2)の場合は酸化セリウム)に担持されたレニウムの形態は、特に限定されず、例えば、レニウム単体、レニウム塩、レニウム酸化物、レニウム水酸化物、レニウム錯体などであってもよい。中でも、触媒の安定性と触媒活性の観点で、レニウム酸化物(ReOX)が好ましい。即ち、本発明の触媒は、炭素担体と、該炭素担体に担持されたレニウム酸化物とを少なくとも含む触媒(本発明の触媒(1))、又は、酸化セリウムと、該酸化セリウムに担持されたレニウム酸化物とを少なくとも含む触媒(本発明の触媒(2))であることが好ましい。
本発明の触媒(1)における炭素担体としては、触媒に使用される公知乃至慣用の炭素系の担体(炭素材料により構成された担体)を使用することができ、特に限定されないが、例えば、活性炭、不定形炭素、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノワイヤー、ダイヤモンドなどが挙げられる。中でも、触媒の反応活性の点で、活性炭が好ましい。
上記活性炭としては、公知乃至慣用の活性炭を使用することができ、特に限定されず、植物系、鉱物系、樹脂系などの何れの原料から得られる活性炭も使用することができる。上記活性炭としては、例えば、商品名「Vulcan XC72」(CABOT社製)、商品名「BP2000」(CABOT社製)、商品名「Shirasagi FAC−10」(日本エンバイロケミカルズ(株)製)、商品名「Shirasagi M」(日本エンバイロケミカルズ(株)製)、商品名「Shirasagi C」(日本エンバイロケミカルズ(株)製)、商品名「Carboraffin」(日本エンバイロケミカルズ(株)製)などの市販品を使用することもできる。
上記炭素担体の比表面積は、特に限定されないが、レニウムやその他の金属が良好に分散され、これらの凝集を抑制することができ、単位重量当たりの触媒活性を向上することができる点で、50m2/g以上(例えば、50〜1500m2/g、好ましくは100〜1000m2/g)が好ましい。上記炭素担体の比表面積が上記範囲を下回ると、単位重量当たりの触媒活性が低下する傾向がある。
上記炭素担体の平均粒径は、特に限定されないが、反応性の点や、連続流通形式で反応を実施する場合の過剰な圧力損失を伴わない点で、100〜10000μmが好ましく、より好ましくは1000〜10000μmである。また、上記炭素担体の形状は、粉末状、粒状、成型(成型体状)などのいずれであってもよく、特に限定されない。
本発明の触媒(2)における酸化セリウム(CeO2)(酸化セリウム担体)としては、公知乃至慣用の酸化セリウムを使用することができ、市販品を使用することもできる。
上記酸化セリウムの比表面積は、特に限定されないが、レニウムやその他の金属が良好に分散され、これらの凝集を抑制することができ、単位重量当たりの触媒活性を向上することができる点で、50m2/g以上(例えば、50〜1500m2/g、好ましくは100〜1000m2/g)が好ましい。酸化セリウムの比表面積が上記範囲を下回ると、単位重量当たりの触媒活性が低下する傾向がある。
上記酸化セリウムの平均粒径は、特に限定されないが、反応性の点や、連続流通形式で反応を実施する場合の過剰な圧力損失を伴わない点で、100〜10000μmが好ましく、より好ましくは1000〜10000μmである。また、上記酸化セリウムの形状は、粉末状、粒状、成型(成型体状)などのいずれであってもよく、特に限定されない。
レニウムの担体(本発明の触媒(1)の場合は炭素担体;本発明の触媒(2)の場合は酸化セリウム)への担持量(レニウム原子換算)は、特に限定されないが、レニウムと上記担体の総量(100重量%)に対して、0.01〜50重量%が好ましく、より好ましくは0.01〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%、特に好ましくは1.0〜10重量%である。レニウムの担持量が0.01重量%未満であると、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率が低下する場合がある。一方、レニウムの担持量が50重量%を超えると、単位金属あたりの収率が低くなるなど不経済となる場合がある。
レニウムの上記担体への担持方法は、特に限定されず、公知乃至慣用の担持方法により上記担体に担持させることができる。具体的には、例えば、レニウムを含有する溶液(例えば、過レニウム酸アンモニウム水溶液)を上記担体に含浸させた後、乾燥させ、さらに必要に応じて還元することにより担持させることができる。なお、上述のレニウムを含有する溶液の濃度や、上記担体への含浸、及び乾燥処理の施用回数を調整することにより、レニウムの担持量を制御することができる。また、レニウムを含有する溶液を含浸させる際の温度、該溶液を含浸させた上記担体を乾燥させる際の温度は、特に限定されない。
レニウムを含有する溶液を含浸させ、乾燥させた後、さらに還元する際の温度(焼成温度)は、特に限定されないが、例えば、水素雰囲気において400〜700℃が好ましく、より好ましくは450〜550℃である。なお、上記還元処理は、特に、後述のその他の金属としてパラジウム及び白金以外の金属が上記担体に担持されている場合や、当該その他の金属が上記担体に担持されていない場合などには、実施することが好ましい。
上記還元処理の後、必要に応じて、パッシベーションを行ってもよい。パッシベーションを行うことにより、本発明の触媒の取り扱いが容易となる傾向がある。なお、パッシベーションは公知乃至慣用の方法で実施することができ、特に限定されないが、例えば、室温付近の温度で酸素雰囲気に曝露することによって実施することができる。
本発明の触媒は、さらに、上記担体に担持された、レニウム以外の金属(金属元素:「その他の金属」と称する場合がある)を金属助触媒として含むことが好ましい。即ち、本発明の触媒は、上記担体(本発明の触媒(1)の場合は炭素担体;本発明の触媒(2)の場合は酸化セリウム)と、該担体に担持されたレニウムと、上記担体に担持されたその他の金属(金属助触媒)とを含む触媒(従って、上記担体(同一の担体)にレニウムと上記その他の金属とが担持されている触媒)であることが好ましい。上記その他の金属としては、レニウム以外の金属であればよく、特に限定されないが、テトラヒドロフランの収率の観点で、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、プラセオジム(Pr)などの第6族元素;マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、ネオジム(Nd)などの第7族元素;パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)などの第6族元素及び第7族元素以外の金属元素などが挙げられる。中でも、その他の金属としては、Pd、Pt、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群より選択された少なくとも一種の金属が好ましい。本発明の触媒がその他の金属(金属助触媒)を含む場合には、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率及びテトラヒドロフランの選択率がいっそう向上する傾向がある。
本発明の触媒に含まれる上記その他の金属の態様は、特に限定されないが、例えば、金属単体、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属錯体として上記担体に担持された状態で含まれる態様などが挙げられる。
上記その他の金属を上記担体に担持させる方法は特に限定されず、公知乃至慣用の担持方法を利用することができる。具体的には、例えば、上記担体にレニウムを担持させる方法と同様に担持させることができ、上記その他の金属を含有する溶液を上記担体に含浸し、乾燥させた後、さらに必要に応じて還元する(その他の金属を還元する)ことなどが挙げられる。より具体的には、例えば、レニウムを含有する溶液を含浸させ、次いで、乾燥させた後の上記担体に対して、さらに上記その他の金属を含有する溶液を含浸させ、乾燥させた後、さらに必要に応じて還元する方法等が挙げられる。なお、上記その他の金属を含有する溶液を含浸させる際の温度、該溶液を含浸させた担体を乾燥させる際の温度、及び上記その他の金属を還元する際の温度は特に限定されない。また、上述のレニウムを含浸させた後の還元処理と、その他の金属を含有する溶液を含浸させた後の還元処理とは、例えば、両溶液の含浸後、水素雰囲気において加熱(例えば、加熱温度は400〜700℃が好ましく、より好ましくは450〜550℃)することにより、同時に実施することもできる。
本発明の触媒が上記担体に担持されたその他の金属を含む場合、レニウムとその他の金属(二種以上を含有する場合にはこれらの総量)との割合(モル比、金属換算)[その他の金属/レニウム]は、特に限定されないが、50/1〜1/500が好ましく、より好ましくは50/1〜1/6が好ましく、さらに好ましくは4/1〜1/4である。上記その他の金属の使用量は、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させる温度や時間などによって、上記範囲内で適宜調整することができる。
本発明の触媒の平均粒径は、特に限定されないが、反応性の点や、連続流通形式で反応を実施する場合の過剰な圧力損失を伴わない点で、100〜10000μmが好ましく、より好ましくは1000〜10000μmである。また、本発明の触媒の形状は、特に限定されないが、例えば、粉末状、粒状、成型(成型体状)などが挙げられる。
中でも、本発明の触媒としては、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率及びテトラヒドロフランの選択率が非常に高い点で、本発明の触媒(2)が好ましい。
[水素化工程]
本発明のテトラヒドロフランの製造方法における水素化工程のうち水素化工程(1)は、本発明の触媒(1)の存在下、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを酸の非存在下で反応させることによってテトラヒドロフランを生成させる工程である。また、本発明のテトラヒドロフランの製造方法における水素化工程のうち水素化工程(2)は、本発明の触媒(2)の存在下、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させることによってテトラヒドロフランを生成させる工程である。上記水素化工程における3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応は、本発明の触媒(固体)の存在下、気体状の(気化させた)3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させる気固二相系の反応であってもよいし、本発明の触媒(固体)の存在下、液状の3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させる気液固三相系の反応であってもよい。特に、炭素−炭素結合の開裂による炭素数が3以下の化合物の生成を抑制する観点からは、上記反応を気液固三相系で進行させることが好ましい。
本発明のテトラヒドロフランの製造方法の水素化工程(1)においては、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応は、上述のように、酸の非存在下(不存在下)で実施することが重要である。上記酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フルオロスルホン酸、ヘテロポリ酸(リンタングステン酸、リンモリブデン酸など)などの無機酸;有機スルホン酸(p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホン酸、p−トルイルスルホン酸など)、酢酸、トリフルオロ酢酸、スルホン酸基を有するポリマー(テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオライド)の共重合体、商品名「ナフィオン」(デュポン社製)など)などの有機酸;金属スルホネート(例えば、スルホン酸基を有するポリマーのスルホン酸基がパラジウムやロジウムなどの金属塩の形態となったポリマーなど)、金属トリフルオロアセテート、金属トリフラートなどの酸の金属塩;酸性ゼオライトなどが挙げられる。また、上記酸には、酸が固体の担体(例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ゼオライト、炭素、クレー、これらの混合物など)上に担持されたものも含まれる。上記水素化工程(1)においては、これら酸の非存在下で3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を行うことにより、高い反応収率でテトラヒドロフランを生成させることが可能である。特に、酸を使用しないことにより、原料、中間体、生成物の重合反応や分解反応等の酸により促進される副反応が生じにくいためと推測されるが、高い選択率でテトラヒドロフランを生成させることができる。しかも、酸を反応系中に含有させないため、酸を使用する場合と比較して作業安全性が高く、また、反応器等の選択の幅が広くコスト面でも有利である。また、酸として固体酸を使用する場合(例えば、特表2005−514354号公報に開示の方法)と比較して、より体積の小さい反応器(高圧反応器)の使用が可能である点でも経済的である。従来の酸を必須成分として使用する方法では、十分に高い反応収率でテトラヒドロフランを生成させることができず、また、上述のメリットを享受できなかった。
一方、本発明のテトラヒドロフランの製造方法の水素化工程(2)における3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応は、酸の存在下で実施することもできるし、酸の非存在下で実施することもできる。酸の存在下で上記反応を実施する場合、酸の使用量は特に限定されず、周知の範囲から適宜選択することができる。中でも、作業安全性、副反応抑制、コスト等の観点で、水素化工程(2)における上記反応も、酸の非存在下で実施することが好ましい。
上記水素化工程における3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応は、例えば、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを必須成分として含む原料液と水素とを反応器中に封入して、本発明の触媒の存在下で加熱することによって進行させることができる。なお、上記水素化工程において本発明の触媒は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記原料液は、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン以外にも、例えば、水や有機溶媒等の溶媒を含有していてもよいし、溶媒を実質的に含有しなくてもよい。上記有機溶媒としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。上記溶媒としては、中でも、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応性に優れる点で、1,4−ジオキサンが好ましい。また、例えば、水素化工程(1)における原料液としては、上述の脱水環化工程におけるエリスリトールの分子内脱水反応により得られた反応混合物から酸を除去した溶液等を使用することができる。なお、上記溶媒は一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記原料液における3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの濃度(原料液100重量%に対する3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの含有量)は、特に限定されないが、5〜100重量%が好ましく、より好ましくは8〜90重量%、さらに好ましくは10〜90重量%、特に好ましくは15〜80重量%である。3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの濃度が5重量%を下回ると、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの反応率(転化率)が低下する場合がある。
上記水素化工程の3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応においては、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の成分を共存させてもよい。即ち、上記原料液は、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の成分(例えば、アルコール類等)を含有していてもよい。また、上記原料液には、例えば、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの原料(エリスリトールや該エリスリトールの原料など)に由来する不純物(例えば、長鎖脂肪酸、金属塩、チオールやチオエーテル等の含硫黄化合物、アミン等の含窒素化合物等)が含まれる場合があるが、このような不純物は触媒を劣化させるおそれがあるため、公知乃至慣用の方法(例えば、蒸留、吸着、イオン交換、晶析、抽出等)により、原料液から除去することが好ましい。
上記原料液は、特に限定されないが、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと、必要に応じて溶媒、その他の成分を混合することにより得られる。混合には、公知乃至慣用の撹拌機等を使用することができる。
上記反応(3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応)に付す水素と3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランのモル比[水素(mol)/3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン(mol)]は、特に限定されないが、1〜100が好ましく、より好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜30である。上記モル比が1未満であると、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの反応率(転化率)が低下する場合がある。一方、上記モル比が100を超えると、未反応の水素を回収するための用役コストが増加する傾向がある。
上記反応における3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応温度は、特に限定されないが、50〜250℃が好ましく、より好ましくは60〜220℃、さらに好ましくは70〜200℃、特に好ましくは160〜190℃である。反応温度が50℃未満であると、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの反応率(転化率)が低下する場合がある。一方、反応温度が250℃を超えると、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの分解(例えば、炭素−炭素結合の開裂等)が生じやすく、テトラヒドロフランの収率が低下する場合がある。なお、反応温度は、上記反応において一定(実質的に一定)となるように制御されていてもよいし、段階的又は連続的に変化するように制御されていてもよい。
上記反応における3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応時間は、特に限定されないが、0.1〜100時間が好ましく、より好ましくは0.2〜80時間、さらに好ましくは0.5〜75時間である。反応時間の下限は、特に限定されないが、5時間(より好ましくは20時間、さらに好ましくは40時間、特に好ましくは60時間)であってもよい。反応時間が0.1時間未満であると、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの反応率(転化率)が十分に上がらない場合がある。一方、反応時間が100時間を超えると、テトラヒドロフランの選択率が低下する場合がある。
上記反応における3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応圧力(3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応における水素圧)は、特に限定されないが、1〜50MPaが好ましく、より好ましくは3〜30MPa、さらに好ましくは5〜15MPa、特に好ましくは7〜9MPaである。反応圧力が1MPa未満であると、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの反応率(転化率)が低下する場合がある。一方、反応圧力が50MPaを超えると、反応器が高度な耐圧性を備える必要があるため、製造コストが高くなる傾向がある。
上記反応は、回分形式、半回分形式、連続流通形式等の任意の形式により実施することができる。また、所定量の3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランから得られるテトラヒドロフランの量を増加させたい場合には、反応終了後の未反応の3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを分離回収してリサイクルするプロセスを採用してもよい。このリサイクルプロセスを採用すれば、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを所定量使用したときのテトラヒドロフランの生成量を高めることができる。
上記反応に付す3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと本発明の触媒の割合(比率)は、反応を実施する形式等に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、割合[=3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン/本発明の触媒](重量比)は、1を超える(例えば、1を超え、20以下)ことが好ましく、より好ましくは1.5〜18、さらに好ましくは2〜15である。上記割合が1以下であると、生産性が非常に悪くなる場合がある。
上記水素化工程においては、反応器として公知乃至慣用の反応器を使用することができ、例えば、回分式反応器、流動床反応器、固定床反応器などが使用できる。上記固定床反応器としては、例えば、トリクルベッド反応器を使用できる。トリクルベッド反応器とは、固体触媒が充填された触媒充填層を内部に有し、該触媒充填層に対して液体(水素化工程では、例えば、上記原料液)と気体(水素化工程では、水素)とを共に、反応器の上方から下向流(気液下向並流)で流通する形式の反応器(固定床連続反応装置)である。
図1は、トリクルベッド反応器を使用した場合のテトラヒドロフランの製造方法における水素化工程の一例を示すフロー図である。図1において、1は反応器(トリクルベッド反応器)、2は原料液の供給ライン、3は水素の供給ラインを示す。また、4は反応混合物取り出しライン、5は高圧気液分離器、6は水素リサイクルラインを示す。以下、図1を参照しながら、トリクルベッド反応器を使用したテトラヒドロフランの製造方法を簡単に説明する。
まず、トリクルベッド反応器1の上方から原料液と水素とを連続的に供給し、その後、反応器の内部で原料液中の3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを、触媒充填層における触媒(本発明の触媒)の存在下(水素化工程(1)の場合には、さらに、酸の非存在下)で反応させ、テトラヒドロフラン(反応生成物)を生成させる。そして、生成させたテトラヒドロフランを含む反応混合物をトリクルベッド反応器1の下方の反応混合物取り出しライン4から連続的に取り出し、その後、必要に応じて、高圧気液分離器5により該反応混合物から水素を分離した後、精製工程にてテトラヒドロフランを精製・単離する。また、高圧気液分離器5により分離した水素は、水素リサイクルライン6を通じて、再度トリクルベッド反応器1に供給して反応に再利用することもできる。
反応器としてトリクルベッド反応器を採用すると、原料である3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを気化することなく、気液固三相系で反応を進行させることができるため、コスト面で有利である。また、トリクルベッド反応器中では、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを含む原料液が触媒表面に薄膜を形成しながら下方に流通するため、原料液と水素の界面(気液界面)から触媒表面までの距離が短く、原料液に溶解した水素の触媒表面への拡散が容易となり、テトラヒドロフランを効率的に生成することができる。また、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応生成物からの触媒の分離プロセスも不要で、触媒の再生処置も容易であるため、製造プロセスが簡便でありコスト面で優れる。
なお、上記トリクルベッド反応器の材質や形状、サイズ(例えば、塔径や塔長等)等は、特に限定されず、公知乃至慣用のトリクルベッド反応器の中から、反応の規模等に応じて適宜選択することができる。また、上記トリクルベッド反応器は、単一の反応管により構成されるものであってもよいし、複数の反応管により構成された多段反応器であってもよい。上記トリクルベッド反応器が多段反応器である場合の反応管の数は、適宜選択でき、特に限定されない。また、上記トリクルベッド反応器が多段反応器である場合には、当該反応器は、複数の反応管が直列に設置されたものであってもよいし、複数の反応管が並列に配置されたものであってもよい。
更に、トリクルベッド反応器の内部における触媒充填層は、必要に応じて、例えば、反応熱による過熱を抑制するために2以上の位置に分割(分離)して配置してもよい。
上記水素化工程により、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応の反応生成物として、テトラヒドロフランが生成する。
本発明のテトラヒドロフランの製造方法は、上記脱水環化工程及び水素化工程以外にも、必要に応じてその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、原料液と水素を反応器に供給する前に、原料液を調製・精製する工程、反応器から排出(流出)された反応混合物(例えば、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン、水素、及びテトラヒドロフランなどの生成物の混合物)を分離・精製する工程等が挙げられる。なお、これらの工程は、上記水素化工程とは別ラインで実施してもよく、上記水素化工程と一連の工程として(インラインで)実施してもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
製造例1
[触媒(10wt%ReOX/C)の製造]
過レニウム酸アンモニウム(アルドリッチ社製)0.1278gを、70〜90℃の蒸留水15mLに溶解させ、水溶液を作製した。次いで、カーボンブラック(商品名「Vulcan XC72」、CABOT社製)0.8870gに、液だまりができないように上記過レニウム酸アンモニウム水溶液を5回に分けて全量加え、70〜90℃で加熱及び攪拌して、含浸させた。これを乾燥機内にて110℃で一晩乾燥させて、触媒(10wt%ReOX/C)を得た。
製造例2
[触媒(10wt%ReOX−Pd/C)の製造]
過レニウム酸アンモニウム(アルドリッチ社製)0.1278gを、70〜90℃の蒸留水15mLに溶解させ、水溶液を調製した。また、硝酸パラジウム(II)水溶液(Pd:5.07%、エヌ・イーケムキャット社製)0.2818gを、蒸留水5mLで希釈した水溶液を作製した。次いで、カーボンブラック(商品名「Vulcan BP2000」、CABOT社製)0.8870gに、液だまりができないように上記過レニウム酸アンモニウム水溶液を5回に分けて全量加え、70〜90℃で加熱及び攪拌して、含浸させた。これを乾燥機内にて110℃で一晩乾燥させた後、液だまりができないように上記硝酸パラジウム(II)の希釈水溶液を2回に分けて全量加え、70〜90℃で加熱及び攪拌して、含浸させた。含浸させた後、乾燥機内にて110℃で一晩乾燥させ、その後、空気雰囲気下で、500℃、3時間焼成して、触媒(10wt%ReOX−Pd/C)を得た。
実施例1
[3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの製造(脱水環化工程)]
オートクレーブ中に、エリスリトール1g、水4g、及び触媒として商品名「Amberlyst70」0.15gを加え、アルゴン圧5MPa、160℃、24時間の条件で反応させたところ、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン(1,4−アンヒドロエリスリトール)が生成した。エリスリトールの転化率は98.6%であり、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの選択率は97.2%、収率は95.8%であった。
実施例2
[テトラヒドロフランの製造(水素化工程)]
ガラス製のオートクレーブ用内筒にスターラーチップと、秤量した製造例1で得られた触媒(10wt%ReOX/C)300mgと、1,4−ジオキサン4gと、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン1gとを入れた。上記オートクレーブ用内筒を190mLオートクレーブに入れ、蓋をした。次いで、オートクレーブの内部に1MPaの水素を張り込んだ後に排気する操作を3回繰り返し、内部の空気をオートクレーブから追い出した。このオートクレーブに対し、反応温度である180℃で8MPaを示すよう、室温で5MPaを示すように水素を充填した。
続いて、上記オートクレーブをマグネットスターラー付加熱装置にセットし、反応器内部(オートクレーブ内部)の温度が180℃になるように加熱しながら、72時間加熱を続けた。その後、室温まで冷却し、オートクレーブ内部の水素を解放し、放圧した。
反応後の溶液は、ガスクロマトグラフィー(ガスクロマトグラフ装置:「GC−2014」((株)島津製作所製)、GCカラム:TC−WAX、DB−FFAP、検出器:FID)を用いて分析した。これより、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率、生成物の選択率を算出した。分析結果を表1に示す。
実施例3
[テトラヒドロフランの製造(水素化工程)]
触媒として製造例2で得られた触媒(10wt%ReOX−Pd/C)を使用したこと以外は実施例2と同様にして、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を行った。3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率及び生成物の選択率の分析結果を表1に示す。
Figure 2014188843
なお、エリスリトールを原料とした場合のテトラヒドロフランの収率(一貫収率)を、エリスリトールから3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを生成させた場合の収率[95.8%(実施例1)]と、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランからテトラヒドロフランを生成させた場合の収率[61.7%(実施例2)、85.3%(実施例3)]とを掛け合わせることによって算出し、それぞれ表1に示した。
表1中の略号は、以下の化合物を示す。
3,4−DHTHF : 3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン
THF : テトラヒドロフラン
3−HTHF : 3−ヒドロキシテトラヒドロフラン
1,4−BuD : 1,4−ブタンジオール
1,2−BuD : 1,2−ブタンジオール
1−BuOH : 1−ブタノール
2−BuOH : 2−ブタノール
ERY : エリスリトール
製造例3
[触媒(10wt%ReOX−Pd/CeO2)の製造]
過レニウム酸アンモニウム(添川理化学(株)製)0.1441gを、70〜90℃の蒸留水10mLに溶解させ、水溶液を作製した。また、硝酸パラジウム(II)水溶液(Pd:5.07%、エヌ・イーケムキャット社製)0.1409gを、蒸留水5mLで希釈した水溶液を作製した。次いで、酸化セリウム(CeO2)(第一希元素化学工業(株)製)0.8929gに、液だまりができないように上記過レニウム酸アンモニウム水溶液を10回に分けて全量加え、70〜90℃で加熱及び攪拌して、含浸させた。これを乾燥機内にて110℃で一晩乾燥させた後、液だまりができないように上記硝酸パラジウム(II)の希釈水溶液を5回に分けて全量加え、70〜90℃で加熱及び攪拌して、含浸させた。含浸させた後、乾燥機内にて110℃で一晩乾燥させ、その後、空気雰囲気下で、500℃、3時間焼成して、触媒(10wt%ReOX−Pd/CeO2)を得た。
実施例4
[テトラヒドロフランの製造(水素化工程)]
触媒として製造例3で得られた触媒(10wt%ReOX−Pd/CeO2)150mgを使用し、反応時間を16時間に変更したこと以外は実施例2と同様にして、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を行った。
その結果、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率は94.5%であり、生成物であるテトラヒドロフランの選択率は94.3%であった。その他の生成物の選択率は、3−ヒドロキシテトラヒドロフランが0.7%、1,4−ブタンジオールが0.1%、1,2−ブタンジオールが0.2%、1−ブタノールが0.2%、2−ブタノールが0.3%であった。上記反応におけるテトラヒドロフランの収率は89.1%であり、エリスリトールからの一貫収率は85.3%であった。
実施例5
[テトラヒドロフランの製造(水素化工程)]
触媒として製造例3で得られた触媒(10wt%ReOX−Pd/CeO2)150mgを使用し、反応時間を36時間に変更し、溶媒(1,4−ジオキサン)を使用しなかったこと以外は実施例2と同様にして、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を行った。
その結果、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率は100%であり、生成物であるテトラヒドロフランの選択率は94.7%であった。その他の生成物の選択率は、3−ヒドロキシテトラヒドロフランが0.7%、1,4−ブタンジオールが0.8%、1−ブタノールが0.4%であった。上記反応におけるテトラヒドロフランの収率は94.7%であり、エリスリトールからの一貫収率は90.7%であった。
実施例4及び5で示されるように、担体として酸化セリウムを有する触媒を使用した場合には、担体としてカーボンブラックを有する触媒を使用した場合(実施例2、3)と比較して、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率及びテトラヒドロフランの選択率が著しく向上することが確認された。また、実施例5に示されるように、溶媒を使用しない系(無溶媒系)であっても、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応によりテトラヒドロフランを高収率かつ高選択率で生成させることができることが確認された。
1:トリクルベッド反応器
2:原料液供給ライン
3:水素供給ライン
4:反応混合物取り出しライン
5:高圧気液分離器
6:水素リサイクルライン
本発明のテトラヒドロフランの製造方法は、バイオマスであるエリスリトール又はこれより容易に誘導可能な3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを原料としてテトラヒドロフランを製造する方法であって、産業上有用な方法である。

Claims (5)

  1. 酸化セリウムと、該酸化セリウムに担持されたレニウムとを含む触媒の存在下、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させてテトラヒドロフランを生成させる工程を含むことを特徴とするテトラヒドロフランの製造方法。
  2. 炭素担体と、該炭素担体に担持されたレニウムとを含む触媒の存在下、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを酸の非存在下で反応させてテトラヒドロフランを生成させる工程を含むことを特徴とするテトラヒドロフランの製造方法。
  3. 前記3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランが、エリスリトールを脱水環化させて製造された3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランである請求項1又は2に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
  4. 前記触媒が、さらに、金属助触媒としてレニウム以外の金属を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
  5. 前記工程の前に、さらに、エリスリトールを脱水環化させて3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフランを製造する工程を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
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