樹脂フィルムは、広幅化や長尺化だけではなく、薄膜化も求められている。例えば、液晶表示装置等に用いられる樹脂フィルムの場合、液晶表示装置等の薄型化の要求に対応するために、樹脂フィルムの薄膜化も求められている。
このような薄膜化された樹脂フィルムを、巻芯に巻き取って、フィルムロールにする際、その巻芯に巻き取る前に、樹脂フィルムの幅手方向両端部にエンボス部を形成したとしても、巻きずれや巻き変形等の発生を充分に抑制できない場合があった。具体的には、エンボス部を形成した後に巻芯に巻き取って得られたフィルムロールにおいて、エンボス部が形成された両端部での盛り上がりが顕著になり、巻きずれや巻き変形等の変形が発生しやすくなってしまう場合があった。
本発明者の検討によれば、このことは、まず、樹脂フィルムが薄いほど、エンボス部の高さに対する、樹脂フィルムの厚みの比率が低くなることによるものであると推察した。また、樹脂フィルムが薄いほど、樹脂フィルムの腰が弱くなり、樹脂フィルムの自重を支えにくくなることによるものと推察した。すなわち、フィルムロールにおける樹脂フィルムの中央部が、直下に存在する樹脂フィルムに密着するように、垂れ下がってしまうことによるものと推察した。
一方、特許文献1に記載の巻取方法のように、オシレート巻きをすれば、樹脂フィルムの幅手方向における同一位置でのエンボス部の重なり合いを低減させることができ、上記問題の発生を低減させることができると考えられる。
しかしながら、特許文献1に記載の巻取方法であっても、上記問題の発生を充分に抑制できない場合があった。
本発明者は、特許文献1に記載の巻取方法のような、オシレート巻きをした場合であっても、上記問題の発生を充分に抑制できない理由を、以下のように推察した。特許文献1に記載の巻取方法のような、オシレート巻きをした場合であっても、オシレート巻きの振動が、単に正弦波振動であれば、フィルムロールの幅手方向におけるエンボス部が存在する領域の中央部に、エンボス部が多く重なることになり、このことが原因で、変形等の問題の発生を充分に抑制できないと推察した。そこで、本発明者は、フィルムを巻き取る際の、樹脂フィルムと巻芯との相対位置を変動させる振動について、詳細に検討することにより、以下のような本発明に想到するに到った。
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る光学フィルムロールの製造方法は、幅手方向両端部に長手方向に沿ってエンボス部を有する長尺状の樹脂フィルムを製造する樹脂フィルム製造工程と、前記樹脂フィルムを巻芯にロール状に巻き取る巻取工程とを備える。前記巻取工程は、前記巻芯に巻き取られ始める樹脂フィルムの位置における、巻き取られている樹脂フィルムの積算の厚みをx軸とし、前記樹脂フィルムの幅手方向の中心位置と、前記巻芯の幅手方向の中心位置との距離をy軸とした関数f(x)と前記x軸とで囲まれる面積が、前記f(x)と振幅及び周期が同一の正弦波振動の関数a(x)と前記x軸とで囲まれる面積より大きく、前記f(x)と振幅及び周期が同一の矩形波振動の関数b(x)と前記x軸とで囲まれる面積より小さくなるように、前記樹脂フィルム及び前記巻芯の少なくとも一方を、前記樹脂フィルムの幅手方向に周期的に振動させながら、前記樹脂フィルムを前記巻芯に巻き取る振動巻取工程を備える。
上記のような振動巻取工程を備える巻取工程で、前記樹脂フィルム製造工程で製造された樹脂フィルムを、巻芯にロール状に巻き取ると、長期間保存しても、変形の発生が充分に抑制された光学フィルムロールを製造することができる。このことは、前記振動巻取工程における、樹脂フィルムと巻芯との相対的な位置を変化させる振動が、後述するように、樹脂フィルムを巻芯に巻き取ったフィルムロールの状態での、エンボス部の重なり合いを効果的に低減させる振動であることによると考えられる。
また、得られた光学フィルムロールの側面形状が、前記振動によって波状になる。この側面形状が、正弦波振動の場合より、上記f(x)での振動による場合のほうが、波形状の凸部頂部の尖りが緩やかになる。よって、光学フィルムロールの側面形状の損傷の発生も抑制できる。
前記樹脂フィルム製造工程は、幅手方向両端部に長手方向に沿ってエンボス部を有する長尺状の樹脂フィルムを製造する工程であれば、特に限定されない。具体的には、後述する。
次に、前記巻取工程は、前記樹脂フィルムを巻芯にロール状に巻き取る工程であって、上記のような振動をさせる振動巻取工程を備えるものであればよい。また、巻取工程は、例えば、図1に示すような巻取装置10によって行われる。なお、図1は、本実施形態に係る光学フィルムロールの製造方法に用いられる巻取装置10を示す概略図である。また、図1(a)は、巻取装置10の巻芯1の軸方向から見た側面図であり、図1(b)は、樹脂フィルム2の上方から見た平面図である。
前記巻取装置10は、巻芯1、不図示の回転装置、案内ローラ3、振動制御装置4、及びタッチローラ6等を備えている。前記巻芯1は、樹脂フィルム2をその表面上に巻き取り、フィルムロールの軸材となるものである。前記回転装置は、巻芯1を回転させるための装置である。前記案内ローラ3は、走行してきた樹脂フィルム2に接する位置に配置され、樹脂フィルム2の走行によって従動回転する部材である。前記案内ローラ3によって、樹脂フィルム2の走行位置のぶれを低減させ、樹脂フィルム2を巻芯1へ円滑に供給できる。また、巻芯1に対する樹脂フィルム2の巻き取りは、図1に示すように、巻芯1の表面まで走行してきた樹脂フィルム2を、回転装置によって巻芯1を回転させることによって、巻芯1の表面上に順次巻き取っていくことによって行う。その巻き取りの際、前記振動巻取工程では、上記のような樹脂フィルムと巻芯との相対的な位置を変化させる振動を付与する。また、振動制御装置4は、後述するが、前記振動を制御する。また、前記タッチローラ6は、巻芯1の表面や巻芯1に巻き取られた樹脂フィルム2を押圧し、巻芯1の回転によって、従動回転する部材である。前記タッチローラ6によって、巻芯1に巻き取られた樹脂フィルム2が巻芯1から離間することを抑制できる。
また、振動制御装置4は、前記巻芯1を振動させ、その振動が、前記振動になるように制御する。振動については、以下、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る光学フィルムロールの製造方法における振動巻取工程での振動を説明するためのグラフである。なお、本実施形態では、巻芯を振動しているが、樹脂フィルムと巻芯との相対的な位置が、上記のようになる振動であればよく、樹脂フィルムを振動させてもよく、また、樹脂フィルムと巻芯との両方を振動させてもよい。
まず、図2に示すグラフにおけるx軸は、巻芯に巻き取られ始める樹脂フィルムの位置における、巻き取られている樹脂フィルムの積算の厚み[mm]を示す。すなわち、巻芯に巻き取られ始める樹脂フィルムの位置における、巻き取られている樹脂フィルムの最外面と、巻芯表面との距離を示し、図1に示す樹脂フィルムの積算の厚みxに相当する。
また、図2に示すグラフにおけるy軸は、樹脂フィルムの幅手方向の中心位置と、巻芯の幅手方向の中心位置との距離(樹脂フィルムと巻芯との中心間距離)[mm]を示す。すなわち、巻芯に向かって走行する樹脂フィルムの幅手方向の中心位置と、巻芯の幅手方向の中心位置との距離を示し、図1に示す中心間距離yに相当する。
そして、本実施形態における振動は、このようなx軸及びy軸とした関数に表すと、図2に示す曲線51で表される関数となるような振動である。具体的には、振動巻取工程における振動を表す関数f(x)を、図2を用いて説明する。まず、前記f(x)と振幅A及び周期Tが同一の正弦波振動は、前記x軸及び前記y軸とした関数に表すと、図2に示す曲線52で表される関数a(x)となるような振動である。次に、前記f(x)と振幅A及び周期Tが同一の矩形波振動は、前記x軸及び前記y軸とした関数に表すと、図2に示す曲線53で表される関数b(x)となるような振動である。そこで、振動巻取工程における振動は、前記関数f(x)とx軸とで囲まれる面積が、前記関数a(x)とx軸とで囲まれる面積より大きく、前記関数b(x)とx軸とで囲まれる面積より小さくなるような振動である。すなわち、振動巻取工程における振動は、前記f(x)が、前記a(x)と、前記b(x)との間に存在するような振動である。なお、振動しない場合は、図2において、その関数は、直線54で表される、x軸上に存在する関数である。
また、上記のようなf(x)及びa(x)となるような振動をさせた場合や振動させない場合における、それぞれのエンボス部の高さについて検討する。それぞれの場合における、エンボス部の積算の高さ(積算エンボス高さ)を、シミュレーションにより求める。その結果を、図3に示す。なお、図3は、光学フィルムロールの幅手方向における、積算エンボス高さを示す概略図である。なお、x軸には、光学フィルムロールの幅手方向における位置を示し、y軸には、積算エンボス高さを示す。振動させない場合、線57に示すグラフとなる。振動させない場合、線57に示すようにグラフとなる。このことから、エンボス部が同一の位置で巻き取られ、その積算エンボス高さが、エンボス部の高さに巻き取る回数を積算した値となる。また、前記a(x)となるように振動させ、その際の振幅Aが、エンボス部の幅程度以下である場合、線56に示すグラフとなる。このような場合、振動の振幅Aの中心位置付近で、エンボス部の重なりが高くなることがわかる。これらに対して、前記f(x)となるように振動させた場合、線55に示すグラフとなる。前記f(x)となるように振動させた場合、振動のy変位の絶対値が大きいときの滞在時間が比較的長くなるため、樹脂フィルムを巻芯に巻き取ったフィルムロールの状態での、エンボス部の重なり合いを効果的に低減させる振動であることがわかる。このことから、本実施形態に係る光学フィルムロールの製造方法であれば、前記樹脂フィルム製造工程で製造された樹脂フィルムを、巻芯にロール状に巻き取ると、長期間保存しても、変形の発生が充分に抑制された光学フィルムロールを製造することができる。
また、前記f(x)は、振動の周期Tや振幅Aが周期的に変動する関数であればよい。具体的には、前記f(x)は、f(x)=f(x+T)が成り立つ周期関数であってもよいし、振動巻取工程における周期振動の周期Tが、前記樹脂フィルムの積算の厚みxが大きくなるに従って、徐々に小さくなるような関係であってもよい。また、振動巻取工程における振動の振幅Aが、前記樹脂フィルムの積算の厚みxが大きくなるに従って、徐々に大きくなるような関数であってもよい。
また、振動巻取工程における振動の振幅Aが、前記樹脂フィルムの積算の厚みが大きくなるに従って、徐々に大きくなることが好ましい。そうすることによって、変形の発生がより抑制された光学フィルムロールを製造することができる。
まず、振動の振幅が大きいと、エンボス部の重なり合いをより抑制でき、変形の発生をより抑制できると考えられる。しかしながら、光学フィルムロールから繰り出されて用いられる樹脂フィルムの、実際に用いることができる幅が短くなる。すなわち、エンボス部及びエンボス部と接触する部分が増え、製品として用いることができる幅が短くなる。
一方で、樹脂フィルムが巻芯に巻き取られていくにつれて、巻き取られている樹脂フィルムの積算の厚みが大きくなり、変形が発生しやすくなると考えられる。
このような変形が発生しやすくなる、樹脂フィルムの積算の厚みが大きい場合に、変形の発生をより抑制できる、振幅の大きい振動を適用することによって、変形の発生をより抑制できると考えられる。一方、変形が発生しにくい、巻き始めは、振幅の小さい振動を適用しても、変形の発生を充分に抑制できると考えられる。これらのことから、上記のような構成によれば、巻き取られている樹脂フィルムの積算の厚みに応じて、変形の発生を効率的に抑制できると考えられる。よって、変形の発生がより抑制された光学フィルムロールを製造することができると考えられる。
また、振動巻取工程における振動の周期Tが、前記樹脂フィルムの積算の厚みが大きくなるに従って、徐々に小さくなることが好ましい。そうすることによって、変形の発生をより抑制できる。
まず、振動の周期が小さいと、巻きずれが発生しやすくなるが、樹脂フィルムへの負荷は低減できると考えられる。そして、樹脂フィルムが巻芯に巻き取られていくにつれて、巻き取られている樹脂フィルムの積算の厚みが大きくなり、変形が発生しやすくなると考えられる。このような変形が発生しやすくなる、樹脂フィルムの積算の厚みが大きい場合に、樹脂フィルムへの負荷を低減できる周期の小さい振動を適用することによって、変形の発生をより抑制できると考えられる。これらのことから、上記の構成によれば、巻き取られている樹脂フィルムの積算の厚みに応じて、変形の発生を効率的に抑制できると考えられる。
また、前記巻取工程は、前記振動巻取工程を備えていればよく、全て振動巻取工程であってもよいし、他の巻取工程を備えていてもよい。他の巻取工程としては、例えば、前記中心間距離yを変動させずに巻き取る工程(非振動巻取工程)等が挙げられる。また、前記非振動巻取工程は、前記振動巻取工程の後に行うことが好ましい。すなわち、前記巻取工程が、前記振動巻取工程の後に、前記非振動巻取工程を備えることが好ましい。光学フィルムロールを製造する際、樹脂フィルムを最後まで、前記振動巻取工程で巻き取ると、得られた光学フィルムロールから、樹脂フィルムを繰り出し始めた際に、樹脂フィルムの蛇行等により円滑に繰り出せない場合があった。上記のように、前記振動巻取工程の後に、前記非振動巻取工程を備えれば、繰り出し開始直後から、樹脂フィルムを円滑に繰り出すことができる光学フィルムロールを得ることができる。すなわち、振動巻取工程の後に、上記のような振動させない巻取を行うので、樹脂フィルムの繰り出し開始直後に発生しうる繰り出しの不具合を抑制することができ、さらに、振動巻取工程で樹脂フィルムを巻き取った部分で、光学フィルムロールの変形を抑制することができる。
また、前記樹脂フィルム製造工程は、図4(a)に示すように、幅手方向両端部に長手方向に沿ってエンボス部5を有する長尺状の樹脂フィルム2を製造することができる工程であれば、特に限定されない。すなわち、樹脂フィルムに対して、所定のエンボス部5を形成する方法であればよい。具体的には、樹脂フィルムに対して、エンボスリング等のローラを押し付けて、エンボス部を形成する方法等が挙げられる。このような接触方式でエンボス部を形成する方法以外に、非接触方式でエンボス部を形成する方法が挙げられる。この非接触方式でエンボス部を形成する方法としては、樹脂フィルムに対して、レーザ光を照射することによって、エンボス部を形成する方法や、エンボス部を形成させるための液状の材料をインクジェット方式で塗布することで、エンボス部を形成する方法等が挙げられる。
なお、図4は、エンボス部を有する長尺状の樹脂フィルム、及び前記樹脂フィルムを巻芯にロール状に巻き取ったフィルムロールを示す概略図である。また、図4(a)は、樹脂フィルムの一例を示し、図4(b)は、フィルムロールの一例を示す。樹脂フィルム2は、図4(a)に示すように、幅手方向両端部に長手方向に沿ってエンボス部5を有する長尺状の樹脂フィルム2である。また、フィルムロール7は、図4(b)に示すように、樹脂フィルム2を巻芯1にロール状に巻き取ったフィルムロール7である。そして、樹脂フィルム2のエンボス部5が重なり合う領域は、エンボス部5以外が重なり合う領域より厚くなる。この厚みの差Lは、前記積算エンボス高さに依存する。すなわち、この厚みの差Lは、本実施形態に係る振動巻取工程を施すことによって、前記振動巻取工程を施さない場合より、小さくなる。
また、前記樹脂フィルム製造工程によって形成されるエンボス部5は、樹脂フィルム2の幅手方向両端部に長手方向に沿って形成されていればよい。樹脂フィルム2の幅手方向両端部とは、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムの外縁から、0.5〜30mm程度である領域等が挙げられる。また、樹脂フィルム2の幅手方向両端部とは、例えば、樹脂フィルムの外縁から、樹脂フィルムの幅に対して0.2〜6%程度占める領域等が挙げられる。エンボス部の幅が狭すぎると、樹脂フィルムの搬送性が充分に向上しない傾向がある。また、エンボス部の幅が広すぎると、エンボス部が形成されていない領域、つまり光学フィルム等として利用する部分の面積が狭くなってしまう。
また、エンボス部の高さは、特に限定されないが、1〜20mm程度であることが好ましい。エンボス部が低すぎると、フィルムロールの状態での巻きずれを抑制する等のエンボス部の効果を充分に発揮できない傾向がある。また、エンボス部が高すぎると、樹脂フィルムのエンボス部が重なり合う領域が、エンボス部以外が重なり合う領域より厚くなりすぎて、本実施形態に係る振動巻取工程を施しても、得られたフィルムロールの変形を抑制する効果を充分に発揮できない傾向がある。
また、前記樹脂フィルム製造工程によって形成されるエンボス部5の形状は、特に限定されない。具体的には、図5に示すような形状が挙げられる。図5は、エンボス部の形状を説明するための図面である。エンボス部5の形状としては、以下のような形状が挙げられる。具体的には、エンボス部5の断面形状が、図5(a)に示すような、矩形状のものが挙げられる。また、図5(b)に示すように、エンボス部5の幅手方向両端部が、エンボス部5の幅手方向中央部に低くなるような凹部5aが形成された形状のものが挙げられる。また、エンボス部5は、図5(c)に示すような、複数の凸部5b、5cを有するものが挙げられる。このような場合、複数の凸部5b、5cのうち、エンボス部5の幅手方向中央部に存在する凸部5bが、エンボス部5の幅手方向中央部に存在する凸部5cより低くなるように形成されたエンボス部が好ましい。このようなエンボス部であれば、変形の発生をより抑制できるフィルムロールが得られる。このことは、以下のことによると考えられる。樹脂フィルムを巻き取る際、前記振動巻取工程を適用しても、エンボス部の幅手方向中央部の重なりが、エンボス部の端部に比べて多くなってしまう。上記のような、エンボス部5の幅手方向中央部に存在する凸部5bが低いエンボス部であれば、エンボス部の幅手方向中央部の重なりを少なくすることができると考えられる。このことにより、フィルムロールにおけるエンボス部の厚みの減少に寄与でき、変形をより抑制したフィルムロールが得られる。また、エンボス部における両端部や中央部は、特に限定されないが、エンボス部における両端部は、例えば、エンボス部の外縁から、エンボス部の幅に対して40〜80%程度占める領域等が挙げられる。
また、前記エンボス部は、光学フィルム等として利用する前に、切断すればよく、実際に、切断されることが多い。よって、前記エンボス部の材質は、フィルムロールの状態での巻きずれを抑制する等のエンボス部の効果を充分に発揮することができれば、特に限定されない。
また、樹脂フィルムの厚みは、特に限定されないが、樹脂フィルムの薄膜化が求められている。この要求を満たすためにも、樹脂フィルムの厚みは、10〜35μmであることが好ましい。また、このような厚みの樹脂フィルムであれば、従来の樹脂フィルムより薄いので、光学フィルムロールの巻長を長くすることもできる。一方、このような薄膜化された樹脂フィルムは、ロール状に巻き取って得られたフィルムロールの変形が発生しやすいものであるが、上述したような振動巻取工程を施すことによって、変形の発生が充分に抑制された光学フィルムロールが得られる。これらのことから、樹脂フィルムの厚みは、上記の範囲である10〜35μmであることが好ましい。ここで厚みとは、厚みの平均値のことであり、株式会社ミツトヨ製の接触式膜厚計により、フィルムの幅方向に20〜200箇所、厚みを測定し、その測定値の平均値を厚みとして示す。また、樹脂フィルムの幅は、特に限定されず、例えば、1000〜4000mmであることが好ましい。
また、前記樹脂フィルム製造工程において、エンボス部を形成させる樹脂フィルムは、特に限定されない。前記樹脂フィルムとしては、例えば、透明性樹脂からなる樹脂フィルムに対して、何ら処理を施していない樹脂フィルムであってもよく、それ以外の樹脂フィルムであってもよい。具体的には、前記樹脂フィルムとしては、以下のような、光学分野で用いられる樹脂フィルムが好ましく用いることができる。
また、前記樹脂フィルムとしては、偏光板保護フィルムとして用いられる光学フィルムであることが好ましい。このような偏光板保護フィルムとして用いられる光学フィルムを、樹脂フィルムとして、本実施形態に係る光学フィルムロールの製造方法で光学フィルムロールを製造すると、光学フィルムロールの変形に基づく不具合の発生が充分に抑制された光学フィルムを順次繰り出して提供することができる光学フィルムロールが得られる。
また、前記樹脂フィルムとしては、液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いられる位相差フィルムであることが好ましい。このような液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いられる位相差フィルムを、樹脂フィルムとして、本実施形態に係る光学フィルムロールの製造方法で光学フィルムロールを製造すると、光学フィルムロールの変形に基づく不具合の発生が充分に抑制された位相差フィルムを順次繰り出して提供することができる光学フィルムロールが得られる。
また、前記樹脂フィルムとしては、基材フィルムと、前記基材フィルム上に存在する機能性層とを備える光学フィルムであることが好ましい。この基材フィルムは、特に限定されず、例えば、透明性樹脂からなる樹脂フィルムに対して、何ら処理を施していない樹脂フィルム等が挙げられる。また、機能性層も、光学フィルムの機能性層として用いられるものであれば、特に限定されない。このような光学フィルムを、樹脂フィルムとして、本実施形態に係る光学フィルムロールの製造方法で光学フィルムロールを製造すると、光学フィルムロールの変形に基づく不具合の発生が充分に抑制された光学フィルムを順次繰り出して提供することができる光学フィルムロールが得られる。また、前記光学フィルムは、基材フィルムと機能性層とを少なくとも備えるので、自重による変形が起こりやすい。このような光学フィルムを樹脂フィルムとして用いても、本実施形態に係る光学フィルムロールの製造方法で、光学フィルムロールを製造することによって、変形の発生が充分に抑制された光学フィルムロールが得られる。
(溶液流延製膜法)
また、前記樹脂フィルム製造工程の具体例としては、例えば、以下のような、溶液流延製膜法によって、樹脂フィルムを製造する方法等が挙げられる。
溶液流延製膜法による樹脂フィルムの製造方法は、透明性樹脂を含有する樹脂溶液(ドープ)を、走行する支持体上に流延してフィルムを形成する流延工程と、前記フィルムを前記支持体から剥離する剥離工程と、剥離したフィルムを複数の搬送ローラで搬送させることによって、前記フィルムを乾燥させる乾燥工程とを備える方法等が挙げられる。さらに、この樹脂フィルムの製造方法は、前記剥離工程と前記乾燥工程との間や、前記乾燥工程の後等に、前記フィルムにエンボス部を形成するエンボス部形成工程を備える。例えば、図6に示すような樹脂フィルムの製造装置によって行われる。なお、樹脂フィルムの製造装置としては、前記各工程を行うものであれば、図6に示すものに特に限定されず、他の構成のものであってもよい。また、ここでフィルムとは、支持体上に流延されたドープからなる流延膜(ウェブ)が支持体上で乾燥され、支持体から剥離しうる状態となった以後のものを言う。
図6は、溶液流延製膜法による樹脂フィルムの製造装置の基本的な構成を示す概略図である。樹脂フィルムの製造装置11は、無端ベルト支持体12、流延ダイ13、剥離ローラ14、延伸装置15、乾燥装置17、エンボス部形成装置18、及び巻取装置10等を備える。前記流延ダイ13は、透明性樹脂を溶解した樹脂溶液(ドープ)19を無端ベルト支持体12の表面上に流延する。前記無端ベルト支持体12は、前記流延ダイ13から流延されたドープ19からなるウェブを形成し、搬送させながら乾燥させることによってフィルムとする。前記剥離ローラ14は、フィルムを無端ベルト支持体12から剥離する。前記延伸装置15は、剥離されたフィルムを延伸する。前記乾燥装置17は、延伸したフィルムを搬送ローラで搬送させながら、乾燥させる。前記エンボス部形成装置18は、乾燥されたフィルムの端部にエンボス部を形成する。前記巻取装置10は、エンボス部を形成したフィルムを巻き取って、フィルムロールとする。
前記流延ダイ13は、図6に示すように、前記流延ダイ13の上端部に接続されたドープ供給管からドープ19が供給される。そして、その供給されたドープが前記流延ダイ13から前記無端ベルト支持体12に吐出され、前記無端ベルト支持体12上にウェブが形成される。
前記無端ベルト支持体12は、図6に示すように、表面が鏡面の、無限に走行する金属製の無端ベルトである。前記ベルトとしては、フィルムの剥離性の点から、例えば、ステンレス鋼等からなるベルトが好ましく用いられる。前記流延ダイ13によって流延する流延膜の幅は、無端ベルト支持体12の幅を有効活用する観点から、無端ベルト支持体12の幅に対して、80〜99%とすることが好ましい。そして、最終的に1000〜4000mmの幅の樹脂フィルムを得るためには、無端ベルト支持体12の幅は、1800〜5000mmであることが好ましい。また、無端ベルト支持体の代わりに、表面が鏡面の、回転する金属製のドラム(無端ドラム支持体)を用いてもよい。
そして、前記無端ベルト支持体12は、その表面上に形成された流延膜(ウェブ)を搬送しながら、ドープ中の溶媒を乾燥させる。前記乾燥は、例えば、無端ベルト支持体12を加熱したり、加熱風をウェブに吹き付けることによって行う。その際、ウェブの温度が、ドープの溶液によっても異なるが、溶媒の蒸発時間に伴う搬送速度や生産性等を考慮して、−5〜70℃の範囲が好ましく、0〜60℃の範囲がより好ましい。ウェブの温度は、高いほど溶媒の乾燥速度を早くできるので好ましいが、高すぎると、発泡したり、平面性が劣化する傾向がある。
無端ベルト支持体12を加熱する場合、例えば、無端ベルト支持体12上のウェブを赤外線ヒータで加熱する方法、無端ベルト支持体12の裏面を赤外線ヒータで加熱する方法、無端ベルト支持体12の裏面に加熱風を吹き付けて加熱する方法等が挙げられ、必要に応じて適宜選択することが可能である。
また、加熱風を吹き付ける場合、その加熱風の風圧は、溶媒蒸発の均一性等を考慮し、50〜5000Paであることが好ましい。加熱風の温度は、一定の温度で乾燥してもよいし、無端ベルト支持体12の走行方向で数段階の温度に分けて供給してもよい。
無端ベルト支持体12の上にドープを流延した後、無端ベルト支持体12からウェブを剥離するまでの間での時間は、作製する光学フィルムの厚み、使用する溶媒によっても異なるが、無端ベルト支持体12からの剥離性を考慮し、0.5〜5分間の範囲であることが好ましい。
前記無端ベルト支持体12による流延膜の搬送速度は、例えば、50〜200m/分程度であることが好ましい。また、前記無端ベルト支持体12の走行速度に対する、流延膜の搬送速度の比(ドラフト比)は、0.8〜1.2程度であることが好ましい。前記ドラフト比がこの範囲内であると、安定して流延膜を形成させることができる。例えば、ドラフト比が大きすぎると、流延膜が幅方向に縮小されるネックインという現象を発生させる傾向があり、そうなると、広幅のフィルムを形成できなくなる。
前記剥離ローラ14は、無端ベルト支持体12のドープ19が流延される側の表面に接しており、無端ベルト支持体12側に加圧することによって、乾燥されたウェブ(フィルム)が剥離される。無端ベルト支持体12からフィルムを剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によってフィルムは、フィルムの搬送方向(Machine Direction:MD方向)に延伸する。このため、無端ベルト支持体12からフィルムを剥離する際の剥離張力及び搬送張力は、30〜400N/mにすることが好ましい。
また、フィルムを無端ベルト支持体12から剥離する時のフィルムの全残留溶媒量は、無端ベルト支持体12からの剥離性、剥離時の残留溶媒量、剥離後の搬送性、搬送・乾燥後にできあがる光学フィルムの物理特性等を考慮し、10〜200質量%であることが好ましい。
前記延伸装置15は、無端ベルト支持体12から剥離されたフィルムを、ウェブの搬送方向と直交する方向(Transverse Direction:TD方向)に延伸させる。具体的には、フィルムの搬送方向に垂直な方向の両端部をクリップ等で把持して、対向するクリップ間の距離を大きくすることによって、TD方向に延伸する。そして、前記延伸装置15は、クリップを把持していた領域を切断する装置を備えていてもよい。また、ここでは、延伸装置15を備えていたが、備えていなくてもよい。
前記乾燥装置17は、複数の搬送ローラを備え、そのローラ間をフィルムを搬送させる間にフィルムを乾燥させる。その際、加熱空気、赤外線等を単独で用いて乾燥してもよいし、加熱空気と赤外線とを併用して乾燥してもよい。簡便さの点から加熱空気を用いることが好ましい。乾燥温度としては、フィルムの残留溶媒量により、好適温度が異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、30〜180℃の範囲で残留溶媒量により適宜選択して決めればよい。また、一定の温度で乾燥してもよいし、2〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。また、乾燥装置17内を搬送される間に、フィルムを、MD方向に延伸させることもできる。前記乾燥装置17での乾燥処理後のフィルムの残留溶媒量は、乾燥工程の負荷、保存時の寸法安定性伸縮率等を考慮し、0.001〜5質量%が好ましい。
前記エンボス部形成装置18は、前記フィルムの搬送中に、フィルムの搬送方向に垂直な方向(幅手方向)両端部にエンボス部を形成させる。エンボス部の形状や幅は、上述した形状や幅であればよい。また、エンボス部を形成する方法も、上述したように、接触方式で形成する方法であってもよいし、非接触方式で形成する方法であってもよい。
前記巻取装置10は、上述した巻取装置であればよい。具体的には、前記振動巻取工程を行うことができる巻取装置等が挙げられる。
以下、溶液流延製膜法で使用する樹脂溶液の組成について説明する。
溶液流延製膜法で使用される透明性樹脂は、フィルム状に成形したときに透明性を有する樹脂であればよく、特に制限されないが、溶液流延製膜法等による製造が容易であること、ハードコート層等との接着性に優れていること、光学的に等方性であること等が好ましい。なお、ここで透明性とは、可視光の透過率が60%以上であることであり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
前記透明性樹脂としては、具体的には、例えば、セルローストリアセテート樹脂等のセルロースエステル系樹脂等を挙げることができる。また、ここで使用されるドープには、微粒子を含有させてもよい。前記微粒子としては、酸化珪素等の無機微粒子であってもよいし、アクリル系樹脂等の有機微粒子であってもよい。ここで使用される溶媒は、前記透明性樹脂に対する良溶媒を含有する溶媒を用いることができ、透明性樹脂が析出してこない範囲で、貧溶媒を含有させてもよい。セルロースエステル系樹脂に対する良溶媒としては、例えば、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。また、セルロースエステル系樹脂に対する貧溶媒としては、例えば、メタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール等が挙げられる。ここで使用される樹脂溶液は、本発明の効果を阻害しない範囲で、透明性樹脂、微粒子及び溶媒以外の他の成分(添加剤)を含有してもよい。前記添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤、導電性物質、難燃剤、滑剤、及びマット剤等が挙げられる。
また、上記各組成を混合させることによってセルロースエステル系樹脂の溶液が得られる。また、得られたセルロースエステル系樹脂の溶液は、濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過することが好ましい。
また、樹脂フィルムが、上記のような、液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いられる位相差フィルムである場合、溶液流延製膜法で使用する樹脂溶液は、延伸等によって、前記位相差フィルムが得られるような樹脂溶液であれば、特に限定されない。
(溶融流延製膜法)
また、前記樹脂フィルム製造工程の他の具体例としては、例えば、以下のような、溶融流延製膜法によって、樹脂フィルムを製造する方法等が挙げられる。
溶融流延製膜法による樹脂フィルムの製造方法は、透明性樹脂を溶融させた樹脂溶融液を、走行する支持体上に流延して流延膜を形成する流延工程と、前記流延膜を冷却させてフィルムを形成する冷却工程と、前記フィルムを前記支持体から剥離する剥離工程と、剥離したフィルムを複数の搬送ローラで搬送させることによって、前記フィルムを延伸させる延伸工程とを備える方法等が挙げられる。さらに、この樹脂フィルムの製造方法は、前記剥離工程と前記延伸工程との間や、前記延伸工程の後等に、前記フィルムにエンボス部を形成するエンボス部形成工程を備える。例えば、図7に示すような樹脂フィルムの製造装置によって行われる。なお、樹脂フィルムの製造装置としては、前記各工程を行うものであれば、図7に示すものに特に限定されず、他の構成のものであってもよい。また、ここでフィルムとは、支持体上に流延されたドープからなる流延膜(ウェブ)が支持体上で冷却され、支持体から剥離しうる状態となった以後のものを言う。
図7は、溶融流延製膜法による樹脂フィルムの製造装置の基本的な構成を示す概略図である。樹脂フィルムの製造装置21は、第1冷却ローラ22、流延ダイ23、面矯正タッチローラ24、第2冷却ローラ25、第3冷却ローラ26、剥離ローラ27、搬送ローラ29、延伸装置30、エンボス部形成装置31、及び巻取装置10等を備える。前記流延ダイ23は、透明性樹脂を溶融させた樹脂溶融液(ドープ)を第1冷却ローラ22の表面上に流延する。前記第1冷却ローラ22は、前記流延ダイ23から流延されたドープからなる流延膜を形成し、搬送させながら冷却させ、前記流延膜を第2冷却ローラ25に搬送する。その際、第1冷却ローラ22に外接されて設けられる面矯正タッチローラ24によって、流延膜の厚さの調整や表面の平滑化がなされる。そして、第2冷却ローラ25は、前記流延膜を搬送させながら冷却させ、前記流延膜を第3冷却ローラ26に搬送する。そうすうことによって、前記流延膜をフィルムとする。前記剥離ローラ27は、フィルムを第3冷却ローラ26から剥離する。前記搬送ローラ29は、剥離されたフィルムを搬送しながら、MD方向に延伸する。前記延伸装置30は、フィルムをTD方向に延伸する。前記エンボス部形成装置31は、延伸されたフィルムの端部にエンボス部を形成する。前記巻取装置10は、冷却固化されたフィルムを巻き取って、フィルムロールとする。
前記流延ダイ23は、ドープとして、樹脂溶液の代わりに、樹脂溶融液を吐出する以外、前記流延ダイ13と同様の構成である。
前記第1冷却ローラ22、第2冷却ローラ25及び第3冷却ローラ26は、表面が鏡面の金属製のローラである。前記各ローラとしては、流延膜やフィルムの剥離性の点から、例えば、ステンレス鋼等からなるローラが好ましく用いられる。前記流延ダイ23によって流延する流延膜の幅や前記第1冷却ローラ22、第2冷却ローラ25及び第3冷却ローラ26による流延膜の搬送速度等は、上記流延製膜法の場合と同様である。
前記面矯正タッチローラ24は、表面が弾性を有し、前記第1冷却ローラ22への押圧力によって、前記第1冷却ローラ22の表面に沿って変形し、前記第1冷却ローラ22との間に、ニップを形成する。前記面矯正タッチローラ24としては、溶融流延製膜法で従来から用いられているタッチローラであれば、特に限定なく使用できる。具体的には、例えば、ステンレス鋼製のものが挙げられる。
前記剥離ローラ27は、第3冷却ローラ26に接しており、加圧することによって、フィルムが剥離される。
前記搬送ローラ29は、複数の搬送ローラからなっており、搬送ローラ毎に異なる回転速度にすることによって、フィルムのMD方向に延伸することができる。
また、前記延伸装置30及び前記エンボス部形成装置31は、上記延伸装置15及びエンボス部形成装置18と同様のものを用いることができる。
また、前記巻取装置10は、溶液流延製膜法の場合と同様、前記振動巻取工程を行うことができる巻取装置等が挙げられる。
以下、溶融流延製膜法で使用する樹脂溶融液の組成について説明する。
溶融流延製膜法で使用される透明性樹脂は、加熱して溶融することができれば、上記溶液流延製膜法における透明樹脂と同様のものを用いることができる。また、その他の組成も、上記溶液流延製膜法の場合と同様のものを用いることができる。
(機能性層形成)
また、樹脂フィルムとしては、上述したように、基材フィルムと、前記基材フィルム上に存在する機能性層とを備える光学フィルムであることが好ましい。このような光学フィルムを得るためには、以下のような方法が挙げられる。基材フィルムとしては、例えば、上記のような、溶液流延製膜法や溶融流延製膜法で、エンボス部を形成せずに得られた樹脂フィルム等が挙げられる。また、機能性層は、光学フィルムの機能性層として用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、後述する。
このような機能性層を備える光学フィルムの製造方法としては、例えば、基材フィルムの少なくとも一方の表面に液状の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、前記樹脂組成物を硬化又は乾燥させて機能層を形成する層形成工程とを備える方法等が挙げられる。さらに、この光学フィルムの製造方法は、前記層形成工程の後等に、前記フィルムにエンボス部を形成するエンボス部形成工程を備える。例えば、図8に示すような光学フィルムの製造装置によって行われる。なお、光学フィルムの製造装置としては、図8に示すものに限定されず、他の構成のものであってもよい。
図8は、光学フィルムの製造装置の基本的な構成を示す概略図である。光学フィルムの製造装置41は、巻出装置42、塗布装置43、乾燥装置44、硬化装置45、エンボス部形成装置46、及び巻取装置10等を備える。
前記巻出装置42は、基材フィルムを前記塗布装置43等に供給する。前記巻出装置42は、例えば、基材フィルムを繰出可能に巻回された巻出ローラを備え、前記巻出ローラを回転させることによって、基材フィルムを前記塗布装置43等に供給する装置である。
前記塗布装置43は、前記巻出装置42から供給された基材フィルムの表面上に液状の樹脂組成物を塗布する。前記塗布装置43は、一般的な塗布装置を限定なく使用でき、例えば、エクストルージョン法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラコート法、ロッドコート法、グラビアコート法、インクジェット法等を採用した塗布装置が挙げられる。また、基材フィルム上に複数の層を塗布形成する場合には、マルチマニホールドを有するエクストルージョンダイのように一台の塗布装置で多層同時塗布してもよく、また、1層を塗布する塗布装置を複数並べて逐次塗布するようにしてもよい。なお、本実施形態では、この塗布装置43による液状の樹脂組成物を塗布する工程が、塗布工程に相当する。
前記乾燥装置44は、基材フィルム上に塗布された液状の樹脂組成物を乾燥させる。前記乾燥装置44は、例えば、熱風による対流乾燥方式、赤外線等の輻射熱による輻射乾燥方式等を採用してもよい。なお、乾燥装置44においては、完全に乾燥させなくてもよい。
前記硬化装置45は、基材フィルム上に塗布された液状の樹脂組成物を硬化させる。前記硬化装置45としては、液状の樹脂組成物が、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の活性線硬化性樹脂を含むものであるか、熱硬化性樹脂を含むものであるかによって異なる。具体的には、例えば、液状の樹脂組成物が活性線硬化性樹脂を含むものである場合には、紫外線照射装置等の活性線照射装置が挙げられる。また、液状の樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含むものである場合には、熱処理装置が挙げられる。
前記エンボス部形成装置46は、上記エンボス部形成装置18と同様のものを用いることができる。ここで、エンボス部を形成する表面は、樹脂組成物を塗布した側であってもよいし、塗布させていない側であってもよい。また、両面であってもよい。
また、前記巻取装置10は、溶液流延製膜法や溶融流延製膜法の場合と同様、前記振動巻取工程を行うことができる巻取装置等が挙げられる。また、前記巻取装置10は、タッチローラを備えていなくてもよく、ここでは、タッチローラを備えていない巻取装置を用いている。
また、機能性層は、上述したように、光学フィルムの機能性層として用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、まず、以下のようなハードコート層等が挙げられる。
(ハードコート層)
前記ハードコート層としては、耐擦傷性及び鉛筆硬度等の機械的膜強度に優れる点で、活性線硬化樹脂を含有するものが好ましく用いられる。すなわち、前記ハードコート層は、紫外線及び電子線等の活性線(活性エネルギー線ともいう。)の照射により、架橋反応を経て硬化した活性線硬化樹脂を主たる成分とする層等が挙げられる。
前記活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分を用いて得られた樹脂であることが好ましい。すなわち、前記ハードコート層が、前記活性線硬化樹脂を主たる成分とする層である場合、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分を、前記活性線の照射により、重合させ硬化させて得られた活性線硬化樹脂層であることが好ましい。
前記活性線硬化樹脂としては、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化性化合物及び電子線照射によって硬化する電子線硬化性化合物等の活性線硬化性化合物を、重合させ硬化させて得られた活性線硬化樹脂が代表的なものとして挙げられる。この中でも、紫外線照射によって硬化して得られた活性線硬化樹脂が、特に機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。
前記紫外線硬化性化合物としては、紫外線照射によって重合し硬化した活性線硬化樹脂が得られるものであれば、特に限定されない。具体的には、前記紫外線硬化性化合物としては、紫外線硬化型アクリレート系化合物、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系化合物、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系化合物、紫外線硬化型エポキシアクリレート系化合物、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系化合物、又は紫外線硬化型エポキシ化合物等が好ましく用いられる。この中でも、紫外線硬化型アクリレート系化合物又は紫外線硬化型ウレタンアクリレート系化合物が好ましい。
また、紫外線硬化型アクリレート系化合物としては、多官能アクリレートが好ましい。この多官能アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基を有する化合物である。より具体的には、多官能アクリレートとしては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体等が好ましく挙げられる。この中でも、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体が好ましく用いられる。
活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体としては、イソシアヌル酸骨格に1個以上のエチレン性不飽和基が結合した構造を有する化合物であればよく、特に限定されないが、同一分子内に3個以上のエチレン性不飽和基及び1個以上のイソシアヌレート環を有する化合物が好ましい。具体的には、下記一般式(1)で表される化合物が好ましく用いられる。また、エチレン性不飽和基としては、特に限定されないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。この中でも、メタクリロイル基又はアクリロイル基が好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
上記式(1)中、L2は、2価の連結基である。具体的には、L2は、イソシアヌレート環に炭素原子が結合している置換又は無置換の炭素原子数4以下のアルキレンオキシ基又はポリアルキレンオキシ基等が挙げられる。この中でも、前記アルキレンオキシ基が好ましい。また、L2は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、R2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す。
上記一般式(1)で表される化合物の具体例を、以下に示すが、上記一般式(1)で表される化合物は、これらに限定されない。
活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体の他の化合物としては、イソシアヌル酸ジアクリレート化合物が挙げられ、イソシアヌル酸エトキシ変性ジアクリレートが好ましく用いられる。具体的には、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
また、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体の他の化合物としては、ε−カプロラクトン変性の活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体を挙げることもできる。具体的には、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
上記式(3)中、R1〜R3は、それぞれ独立して、下記a,b,cで示される官能基のいずれかを示す。また、R1〜R3の少なくとも1つは、下記bで示される官能基を示す。
aは、−H、又は−(CH2)n−OH(n=1〜10、好ましくはn=2〜6)である。
bは、−(CH2)n−O−(COC5H10)m−COCH=CH2(n=1〜10、好ましくはn=2〜6、m=2〜8)である。
cは、−(CH2)n−O−R(Rは(メタ)アクリロイル基、n=1〜10、好ましくはn=2〜6)である。
上記一般式(3)で表される化合物の具体例を、以下に示すが、上記一般式(3)で表される化合物は、これらに限定されない。
イソシアヌル酸トリアクリレート化合物の市販品としては、例えば、新中村化学工業株式会社製のA−9300等が挙げられる。イソシアヌル酸ジアクリレート化合物の市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のアロニックスM−215等が挙げられる。イソシアヌル酸トリアクリレート化合物及びイソシアヌル酸ジアクリレート化合物の混合物の市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製の、アロニックスM−315、アロニックスM−313等が挙げられる。ε−カプロラクトン変性の活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体としては、ε−カプロラクトン変性トリス−(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。この市販品としては、新中村化学工業株式会社製のA−9300−1CL、東亞合成株式会社製のアロニックスM−327等を挙げることができる。活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体の市販品としては、上記のものが挙げられるが、これらに限定されない。
また、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体の市販品としては、アデカオプトマーNシリーズ、サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060、アロニックスM−215、アロニックスM−315、アロニックスM−313、アロニックスM−327(東亞合成(株)製)、NK−エステルA−TMM−3L、NK−エステルAD−TMP、NK−エステルATM−35E、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E、A−9300、A−9300−1CL(新中村化学工業(株))、PE−3A(共栄社化学)等も挙げられる。
また、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系化合物としては、例えば、アルコール、ポリオール、及び/又はヒドロキシ基含有アクリレート等のヒドロキシ基含有化合物類とイソシアネート類とを反応させて得られたポリウレタン化合物である紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂等が挙げられる。また、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂は、必要に応じて、前記ポリウレタン化合物を(メタ)アクリル酸でエステル化して得られた紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂であってもよい。より具体的には、ポリイソシアネートと、1分子中に1つのヒドロキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有するアクリレートとの付加反応物等が挙げられる。
ポリイソシアネートの例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート等が挙げられる。また、ポリイソシアネートの他の例としては、例えば、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式炭化水素に結合されたイソシアネート基を2個有する化合物(以下、脂環族ジイソシアネートと略す。)、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族炭化水素に結合されたイソシアネート基を2個有する化合物(以下、脂肪族ジイソシアネートと略す。)、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。これらポリイソシアネートは、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。また、ポリイソシアネートは、上記例示した化合物の中でも、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートが好ましく、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
1分子中に1つのヒドロキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートの例としては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多価ヒドロキシ基含有化合物のポリアクリレート類等が挙げられる。前記アクリレートの他の例としては、前記ポリアクリレート類とε−カプロラクトンとの付加物、前記ポリアクリレート類とアルキレンオキサイドとの付加物等も挙げられる。また、前記アクリレートの他の例としては、エポキシアクリレート類等も挙げられる。1分子中に1つのヒドロキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートは、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
また、1分子中に1つのヒドロキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートとしては、1分子中に1つのヒドロキシ基及び3〜5つの(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートが好ましい。このようなアクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
また、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂の具体的商品としては、日本合成化学工業株式会社製の、紫光UV−1700B、同UV−6300B、同UV−7600B、同UV−7630B、同UV−7640B、共栄社化学株式会社製の、UA−306H、UA−306T、UA−306I、UA−510H、新中村化学工業式会社製の、NKオリゴ UA−1100H、NKオリゴ UA−53H、NKオリゴ UA−33H、NKオリゴ UA−15HA等が挙げられる。
活性線硬化型樹脂の粘度は、樹脂をディスパーにて撹拌混合し25℃の条件にてB型粘度計を用いて粘度測定を行うことができる。
また、前記活性線硬化樹脂を得る際、上記多官能アクリレート等に加えて、単官能アクリレートを用いてもよい。
単官能アクリレートとしては、例えば、イソボロニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等が挙げられる。このような単官能アクリレートは、日本化成工業株式会社、新中村化学工業株式会社、大阪有機化学工業株式会社等から入手できる。
単官能アクリレートを用いる場合には、多官能アクリレートと単官能アクリレートの含有質量比で、多官能アクリレート:単官能アクリレート=80:20〜98:2の範囲で含有することが好ましい。
(光重合開始剤)
また、ハードコート層を製造する際、ハードコート層の主たる成分になりうる活性線硬化樹脂の原料である上記多官能アクリレート等以外に、この原料の硬化促進のため、光重合開始剤を含有する樹脂組成物を用いることが好ましい。光重合開始剤の含有量としては、質量比で、光重合開始剤:活性線硬化性化合物=20:100〜0.01:100の範囲で含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、特に限定されない。光重合開始剤は、具体的には、アルキルフェノン系、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等、及び、これらの誘導体等が挙げられる。
このような光重合開始剤は、市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア651等が好ましい例示として挙げられる。
(導電剤)
ハードコート層には、帯電防止性を付与するために導電剤が含まれていてもよい。すなわち、ハードコート層を形成するために用いる樹脂組成物(ハードコート層形成用樹脂組成物)は、導電材を含有するものであってもよい。好ましい導電剤としては、金属酸化物粒子又はπ共役系導電性ポリマーが挙げられる。また、イオン液体も導電性化合物として好ましく用いられる。
(添加剤)
ハードコート層には、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びフッ素−シロキサングラフト化合物、フッ素系化合物、アクリル共重合物等の添加剤を含有させてもよい。すなわち、ハードコート層を形成するために用いる樹脂組成物は、前記添加剤を含有するものであってもよい。また、添加剤として、HLB値が3〜18の範囲内の化合物を含有しても良い。これら添加剤の種類や添加量を調整することで、撥水性を制御できる。
HLB値とは、親水性−親油性−バランス(Hydrophile−Lipophile−Balance)のことである。つまり、HLB値は、化合物の親水性又は親油性の大きさを示す値である。HLB値が小さいほど親油性が高く、値が大きいほど親水性が高くなる。また、HLB値は、以下のような計算式によって求めることができる。
HLB=7+11.7Log(Mw/Mo)
式中、Mwは親水基の分子量、Moは親油基の分子量を表し、Mw+Mo=M(化合物の分子量)である。HLB値が3〜18の範囲内の化合物の具体的化合物としては、下記の化合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものでない。なお、( )内は、HLB値を示す。
HLB値が3〜18の範囲内の化合物としては、花王株式会社製:エマルゲン102KG(6.3)、エマルゲン103(8.1)、エマルゲン104P(9.6)、エマルゲン105(9.7)、エマルゲン106(10.5)、エマルゲン108(12.1)、エマルゲン109P(13.6)、エマルゲン120(15.3)、エマルゲン123P(16.9)、エマルゲン147(16.3)、エマルゲン210P(10.7)、エマルゲン220(14.2)、エマルゲン306P(9.4)、エマルゲン320P(13.9)、エマルゲン404(8.8)、エマルゲン408(10.0)、エマルゲン409PV(12.0)、エマルゲン420(13.6)、エマルゲン430(16.2)、エマルゲン705(10.5)、エマルゲン707(12.1)、エマルゲン709(13.3)、エマルゲン1108(13.5)、エマルゲン1118S−70(16.4)、エマルゲン1135S−70(17.9)、エマルゲン2020G−HA(13.0)、エマルゲン2025G(15.7)、エマルゲンLS−106(12.5)、エマルゲンLS−110(13.4)、エマルゲンLS−114(14.0)、日信化学工業株式会社製:サーフィノール104E(4)、サーフィノール104H(4)、サーフィノール104A(4)、サーフィノール104BC(4)、サーフィノール104DPM(4)、サーフィノール104PA(4)、サーフィノール104PG−50(4)、サーフィノール104S(4)、サーフィノール420(4)、サーフィノール440(8)、サーフィノール465(13)、サーフィノール485(17)、サーフィノールSE(6)、信越化学工業株式会社製:X−22−4272(7)、X−22−6266(8)、KF−351(12)、KF−352(7)、KF−353(10)、KF−354L(16)、KF−355A(12)、KF−615A(10)、KF−945(4)、KF−618(11)、KF−6011(12)、KF−6015(4)、及びKF−6004(5)等が挙げられる。
また、シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーン等を挙げることができ、より具体的には、上記信越化学工業社製のKFシリーズ等を挙げることができる。アクリル共重合物としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のBYK−350、BYK−352などの市販品化合物等を挙げることができる。フッ素系界面活性剤としては、例えば、DIC株式会社製のメガファック RSシリーズ、メガファックF−444メガファックF−556等を挙げることができる。フッ素−シロキサングラフト化合物としては、フッ素系樹脂に、シロキサン及び/又はオルガノシロキサン単体を含むポリシロキサン及び/又はオルガノポリシロキサンをグラフト化させて得られる共重合体の化合物等が挙げられる。この市販品としては、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等が挙げられる。また、フッ素系化合物としては、ダイキン工業株式会社製のオプツールDSX、オプツールDAC等を挙げることができる。これら成分は、ハードコート組成物中の固形分成分に対し、0.005質量部以上5質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
(紫外線吸収剤)
ハードコート層には、紫外線吸収剤を含有させてもよい。すなわち、ハードコート層を形成するために用いる樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有するものであってもよい。紫外線吸収剤を含有する場合のフィルムの構成が2層以上で構成され、基材フィルムがセルロースエステルフィルムである場合、そのセルロースエステルフィルムと接するハードコート層に紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
紫外線吸収剤の含有量としては、質量比で、紫外線吸収剤:ハードコート層を構成する樹脂=0.01:100〜10:100の範囲で含有することが好ましい。2層以上設ける場合、セルロースエステルフィルムと接するハードコート層の厚みは、0.05〜2μmの範囲であることが好ましい。2層以上の積層は同時重層で形成しても良い。同時重層とは、乾燥工程を経ずに基材上に2層以上のハードコート層をwet on wetで塗布して、ハードコート層を形成することである。第1ハードコート層の上に乾燥工程を経ずに、第2ハードコート層をwet on wetで積層するには、押し出しコーターにより逐次重層するか、若しくは複数のスリットを有するスロットダイにて同時重層を行えばよい。
(溶剤)
ハードコート層は、上記したハードコート層を形成する成分を、基材フィルムであるセルロースエステルフィルムを膨潤又は一部溶解をする溶剤で希釈して、ハードコート層形成用樹脂組成物とすることが好ましい。すなわち、ハードコート層形成用樹脂組成物には、基材フィルムであるセルロースエステルフィルムに対する良溶媒を含むことが好ましい。そして、このような溶媒を含むハードコート層形成用樹脂組成物を、以下のような方法で、基材フィルム上に塗布、乾燥、硬化してハードコート層を設けることが好ましい。
溶剤としては、ケトン(メチルエチルケトン、アセトンなど)及び/又は酢酸エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アルコール(エタノール、メタノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどが好ましい。ハードコート層形成用樹脂組成物の塗布量は、ウェット膜厚として0.1〜40μmの範囲が適当で、好ましくは0.5〜30μmの範囲である。また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.01〜20μmの範囲、好ましくは0.5〜10μmの範囲である。より好ましくは、0.5〜5μmの範囲である。
ハードコート層形成用樹脂組成物の塗布方法は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、及びインクジェット法等の公知の方法を用いることができる。
(ハードコート層形成方法)
ハードコート層の形成方法は、前記のようなハードコート層形成用樹脂組成物を基材フィルム上で硬化させることによって、得られる。具体的には、基材フィルム上に、ハードコート層形成用樹脂組成物を塗布した後、その塗布層を乾燥させ、活性線を照射して硬化させることによって、ハードコート層が形成される。より具体的には、図8に示すような光学フィルムの製造装置を用いて形成する方法等が挙げられる。また、活性線を照射して硬化する方法としては、例えば、UV硬化処理等が挙げられる。また、UV硬化処理等の、活性線を照射した硬化処理の後に、必要に応じて、加熱処理を施してもよい。UV硬化処理等の後の加熱処理温度としては、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。このような高温でUV硬化処理等の後の加熱処理を行うことで、膜強度に優れたハードコート層を得ることができる。
前記乾燥は、減率乾燥区間の温度を90℃以上の高温処理で行うことが好ましい。更に好ましくは、減率乾燥区間の温度は90℃以上、125℃以下である。減率乾燥区間の温度を高温処理とすることで、ハードコート層の形成時に塗膜樹脂中で対流が生じ、その結果、ハードコート層表面に不規則な表面粗れが発現しやすく、算術平均粗さRaに制御しやすい。
一般に乾燥プロセスは、乾燥が始まると、乾燥速度が一定の状態から徐々に減少する状態へと変化していくことが知られており、乾燥速度が一定の区間を恒率乾燥区間、乾燥速度が減少していく区間を減率乾燥区間と呼ぶ。恒率乾燥区間においては流入する熱量は全て塗膜表面の溶媒蒸発に費やされており、塗膜表面の溶媒が少なくなると蒸発面が表面から内部に移動して減率乾燥区間に入る。これ以降は塗膜表面の温度が上昇し熱風温度に近づいていくため、活性線硬化型樹脂組成物の温度が上昇し、樹脂粘度が低下して流動性が増すと考えられる。
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
照射条件は、それぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常50〜1000mJ/cm2の範囲、好ましくは50〜300mJ/cm2の範囲である。また、UV硬化処理では酸素による反応阻害を防止するため、酸素除去(例えば、窒素パージなどの不活性ガスによる置換)を行うこともできる。酸素濃度の除去量を調整することで、表面の硬化状態を制御できる。活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックローラー上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、又は2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性の優れたフィルムを得ることができる。
(ヘイズ)
ハードコートフィルムのヘイズは、画像表示装置に用いた場合の視認性から0.2〜10%の範囲内であることが好ましい。ヘイズは、JIS−K7105及びJIS K7136に準じて測定できる。
(硬度)
ハードコートフィルムは、硬度の指標である鉛筆硬度がHB以上、より好ましくはH以上である。HB以上であれば、このハードコートフィルムを用いて偏光板を製造する工程で、傷が付きにくい。鉛筆硬度は、作製した光学性フィルムを温度23℃、相対湿度55%の条件で2時間以上調湿した後、加重500g条件でJIS S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、ハードコート層及び又は機能性層をJIS K5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。
また、機能性層としては、上記ハードコート層以外の他の層であってもよい。また、ハードコート層上に他の層を備えるものであってもよい。具体的には、以下のような層を備えてもよい。
<他の層>
他の層としては、光学フィルムに備える層であれば特に限定されない。具体的には、反射防止層や導電性層等が挙げられる。また、ハードコート層上に他の層を備える場合、ハードコートフィルムには、そのフィルム上や、ハードコート層と基材フィルムとの間等に、反射防止層や導電性層等の、他の層を設けることができる。
ハードコートフィルムは、ハードコート層上に反射防止層を塗設して、外光反射防止機能を有する反射防止フィルムとして用いることができる。
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましい。反射防止層は、支持体である保護フィルムよりも屈折率の低い低屈折率層、若しくは支持体である保護フィルムよりも屈折率の高い高屈折率層と低屈折率層を組み合わせて構成されていることが好ましい。特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましく用いられる。又は、2層以上の高屈折率層と2層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。層構成としては下記のような構成が考えられるが、これに限定されるものではない。
セルロースエステルフィルム(基材フィルム)/ハードコート層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
ハードコート層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/低屈折率層
ハードコート層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
ハードコート層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
低屈折率層/ハードコート層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/低屈折率層
(低屈折率層)
低屈折率層は、シリカ系微粒子を含有することが好ましく、その屈折率は、23℃、波長550nm測定で、1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmの範囲内であることが好ましく、10nm〜0.3μmの範囲内であることが更に好ましく、30nm〜0.2μmの範囲内であることが最も好ましい。
低屈折率層形成用組成物については、シリカ系微粒子として、特に外殻層を有し内部が多孔質又は空洞の粒子を少なくとも1種類以上含むことが好ましい。特に該外殻層を有し内部が多孔質又は空洞である粒子が、中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
なお、低屈折率層形成用組成物には、下記一般式(OSi−1)で表される有機珪素化合物若しくはその加水分解物、あるいは、その重縮合物を併せて含有させても良い。
一般式(OSi−1):Si(OR)4
一般式で表される有機珪素化合物は、式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
他に溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。またフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含み、且つ架橋性若しくは重合性の官能基を含む含フッ素化合物を主としてなる熱硬化性及び/又は光硬化性を有する化合物を含有しても良い。具体的には含フッ素ポリマー、あるいは含フッ素ゾルゲル化合物などである。含フッ素ポリマーとしては、例えばパーフルオロアルキル基含有シラン化合物〔例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン〕の加水分解物や脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性単位とを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。その他、溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。
(高屈折率層)
高屈折率層の屈折率は、23℃、波長550nm測定で、屈折率を1.4〜2.2の範囲に調整することが好ましい。また、高屈折率層の厚さは5nm〜1μmが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子等を添加することで達成できる。
また用いる金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であるものが好ましく、1.85〜2.50であるものが更に好ましい。
金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができる。
(導電性層)
ハードコートフィルムには、ハードコート層上に導電性層を形成しても良い。設けられる導電性層としては、一般的に広く知られた導電性材料を用いることができる。例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫、金、銀、パラジウム等の金属酸化物を用いることができる。これらは、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、溶液塗布法等により、ハードコートフィルム上に薄膜として形成することができる。また、前記したπ共役系導電性ポリマーである有機導電性材料を用いて、導電性層を形成することも可能である。
特に、透明性、導電性に優れ、比較的低コストに得られる酸化インジウム、酸化錫又は酸化インジウム錫のいずれかを主成分とした導電性材料を好適に使用することができる。導電性層の厚さは、適用する材料によっても異なるため一概には言えないが、表面抵抗率で1000Ω以下、好ましくは500Ω以下になるような厚さであって、経済性をも考慮すると、10nm以上、好ましくは20nm以上、80nm以下、好ましくは70nm以下の範囲が好適である。このような薄膜においては導電性層の厚さムラに起因する可視光の干渉縞は発生しにくい。
本明細書は、上述したように、様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
本発明の一局面は、幅手方向両端部に長手方向に沿ってエンボス部を有する長尺状の樹脂フィルムを製造する工程と、前記樹脂フィルムを巻芯にロール状に巻き取る巻取工程とを備え、前記巻取工程は、前記巻芯に巻き取られ始める樹脂フィルムの位置における、巻き取られている樹脂フィルムの積算の厚みをx軸とし、前記樹脂フィルムの幅手方向の中心位置と、前記巻芯の幅手方向の中心位置との距離をy軸とした関数f(x)と前記x軸とで囲まれる面積が、前記f(x)と振幅及び周期が同一の正弦波振動の関数a(x)と前記x軸とで囲まれる面積より大きく、前記f(x)と振幅及び周期が同一の矩形波振動の関数b(x)と前記x軸とで囲まれる面積より小さくなるように、前記樹脂フィルム及び前記巻芯の少なくとも一方を、前記樹脂フィルムの幅手方向に周期的に振動させながら、前記樹脂フィルムを前記巻芯に巻き取る振動巻取工程を備える光学フィルムロールの製造方法である。
このような構成によれば、長期間保存しても、変形の発生が充分に抑制された光学フィルムロールの製造方法を提供することができる。
このことは、前記振動巻取工程における、樹脂フィルムと巻芯との相対的な位置を変化させる振動が、樹脂フィルムを巻芯に巻き取ったフィルムロールの状態での、エンボス部の重なり合いを効果的に低減させる振動であることによると考えられる。
また、得られた光学フィルムロールの側面形状が、前記振動によって波状になる。この側面形状が、正弦波振動の場合より、上記f(x)での振動による場合のほうが、波形状の凸部頂部の尖りが緩やかになる。よって、光学フィルムロールの側面形状の損傷の発生も抑制できる。
また、前記光学フィルムロールの製造方法において、前記振動巻取工程における前記振動の振幅が、前記巻芯に巻き取られ始める樹脂フィルムの位置における、巻き取られている樹脂フィルムの積算の厚みが大きくなるに従って、徐々に大きくなることが好ましい。
このような構成によれば、変形の発生がより抑制された光学フィルムロールを製造することができる。このことは、以下のことによると考えられる。まず、振動の振幅が大きいと、光学フィルムロールから繰り出されて用いられる樹脂フィルムの、実際に用いることができる幅が短くなるものの、エンボス部の重なり合いをより抑制でき、変形の発生をより抑制できると考えられる。そして、樹脂フィルムが巻芯に巻き取られていくにつれて、巻き取られている樹脂フィルムの積算の厚みが大きくなり、変形が発生しやすくなると考えられる。このような変形が発生しやすくなる、樹脂フィルムの積算の厚みが大きい場合に、変形の発生をより抑制できる、振幅の大きい振動を適用することによって、変形の発生をより抑制できると考えられる。一方、変形が発生しにくい、巻き始めは、振幅の小さい振動を適用しても、変形の発生を充分に抑制できると考えられる。これらのことから、上記の構成によれば、巻き取られている樹脂フィルムの積算の厚みに応じて、変形の発生を効率的に抑制できると考えられる。
また、前記光学フィルムロールの製造方法において、前記振動巻取工程における前記振動の周期が、前記巻芯に巻き取られ始める樹脂フィルムの位置における、巻き取られている樹脂フィルムの積算の厚みが大きくなるに従って、徐々に小さくなることが好ましい。
このような構成によれば、変形の発生をより抑制できる。このことは、以下のことによると考えられる。まず、振動の周期が小さいと、巻きずれが発生しやすくなるが、樹脂フィルムへの負荷は低減できると考えられる。そして、樹脂フィルムが巻芯に巻き取られていくにつれて、巻き取られている樹脂フィルムの積算の厚みが大きくなり、変形が発生しやすくなると考えられる。このような変形が発生しやすくなる、樹脂フィルムの積算の厚みが大きい場合に、樹脂フィルムへの負荷を低減できる周期の小さい振動を適用することによって、変形の発生をより抑制できると考えられる。これらのことから、上記の構成によれば、巻き取られている樹脂フィルムの積算の厚みに応じて、変形の発生を効率的に抑制できると考えられる。
また、前記光学フィルムロールの製造方法において、前記巻取工程が、前記振動巻取工程の後に、前記樹脂フィルムの幅手方向の中心位置と、前記巻芯の幅手方向の中心位置との距離を変動させずに、前記樹脂フィルムを前記巻芯に巻き取る工程を備えることが好ましい。
光学フィルムロールを製造する際、樹脂フィルムを最後まで、前記振動巻取工程で巻き取ると、得られた光学フィルムロールから、樹脂フィルムを繰り出し始めた際に、樹脂フィルムの蛇行等により円滑に繰り出せない場合があったが、上記構成によれば、得られた光学フィルムロールから、樹脂フィルムを円滑に繰り出すことができる。すなわち、振動巻取工程の後に、上記のような振動させない巻取を行うので、樹脂フィルムの繰り出し開始直後に発生しうる繰り出しの不具合を抑制することができ、さらに、振動巻取工程で樹脂フィルムを巻き取った部分で、光学フィルムロールの変形を抑制することができる。
また、前記光学フィルムロールの製造方法において、前記樹脂フィルムの厚みが、10〜35μmであることが好ましい。
このような構成によれば、樹脂フィルムが従来の樹脂フィルムより薄いので、光学フィルムロールの巻長を長くすることができる。また、このような薄膜化された樹脂フィルムの場合、上述したように、光学フィルムロールの変形が発生しやすいが、本発明の一態様に係る光学フィルムロールの製造方法で、光学フィルムロールを製造することによって、変形の発生が充分に抑制された光学フィルムロールが得られる。
また、前記光学フィルムロールの製造方法において、前記エンボス部は、複数の凸部を有し、前記複数の凸部のうち、前記エンボス部の幅手方向中央部に存在する凸部が、前記エンボス部の幅手方向両端部に存在する凸部より低いことが好ましい。
このような構成によれば、変形の発生をより抑制できる。このことは、樹脂フィルムを巻き取る際、前記振動巻取工程を適用しても、エンボス部の幅手方向中央部に存在する凸部による重なり合いが厚くなってしまうことを、上記構成によれば、抑制することができることによると考えられる。
また、前記光学フィルムロールの製造方法において、前記樹脂フィルムが、偏光板保護フィルムとして用いられる光学フィルムであることが好ましい。
このような構成によれば、偏光板保護フィルムとして用いられる光学フィルムを、樹脂フィルムとして、本発明の一態様に係る光学フィルムロールの製造方法で光学フィルムロールを製造すると、光学フィルムロールの変形に基づく不具合の発生が充分に抑制された光学フィルムを順次繰り出して提供することができる光学フィルムロールが得られる。
また、前記光学フィルムロールの製造方法において、前記樹脂フィルムが、液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いられる位相差フィルムであることが好ましい。
このような構成によれば、液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いられる位相差フィルムを、樹脂フィルムとして、本発明の一態様に係る光学フィルムロールの製造方法で光学フィルムロールを製造すると、光学フィルムロールの変形に基づく不具合の発生が充分に抑制された位相差フィルムを順次繰り出して提供することができる光学フィルムロールが得られる。
また、前記光学フィルムロールの製造方法において、前記樹脂フィルムが、基材フィルムと、前記基材フィルム上に存在する機能性層とを備える光学フィルムであることが好ましい。
このような構成によれば、前記光学フィルムを、樹脂フィルムとして、本発明の一態様に係る光学フィルムロールの製造方法で光学フィルムロールを製造すると、光学フィルムロールの変形に基づく不具合の発生が充分に抑制された光学フィルムを順次繰り出して提供することができる光学フィルムロールが得られる。また、前記光学フィルムは、基材フィルムと機能性層とを少なくとも備えるので、自重による変形が起こりやすい。このような光学フィルムを樹脂フィルムとして用いても、本発明の一態様に係る光学フィルムロールの製造方法で、光学フィルムロールを製造することによって、変形の発生が充分に抑制された光学フィルムロールが得られる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、実施例における「部」または「%」の表示は、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表すものとする。
[実施例1]
実施例1は、樹脂フィルムとして、偏光板保護フィルムとして用いることが可能な光学フィルムを用いた。具体的には、以下のようなセルローストリアセテートフィルムを用いた。
(二酸化ケイ素分散液の調製)
ドープに添加する二酸化ケイ素分散液の調製について説明する。
まず、二酸化ケイ素(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製、1次粒子の平均径7nm)10質量部及びエタノール90質量部を、ディゾルバーで30分間攪拌混合した後、マントンゴーリン分散機を用いて分散を行い、分散液を調製した。
そして、溶解タンクにメチレンクロライドを88質量部入れ、メチレンクロライドを充分に攪拌しながら上記調製した分散液をゆっくりと添加し、ディゾルバーで30分間攪拌混合した。得られた分散液を、微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋株式会社製:ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過して、二酸化ケイ素分散液を調製した。
(ドープの調製)
次に、ドープの調製について説明する。
まず、メチレンクロライド432質量部及びエタノール38質量部を入れた溶解タンクに、透明性樹脂としてセルローストリアセテート樹脂(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、アセチル基の置換度2.88、Mn=140000)90質量部を添加し、下記式(X−1)で表されるエステル化合物5質量部、下記式(X−12)で表されるエステル化合物4質量部、チヌビン928(BASFジャパン株式会社製)3質量部、及び上記二酸化ケイ素分散液4質量部を添加した。そして、加熱条件下で攪拌することによって、樹脂成分を溶解させた。そうすることによって得られた樹脂溶液を、安積濾紙株式会社製の安積濾紙No.24を使用して濾過した。このようにして得られた樹脂溶液を、ドープとして使用して、以下のように、樹脂フィルムを製造した。
(光学フィルムロールの製造)
図6に示すような、溶液流延製膜法による樹脂フィルムの製造装置を用いて、光学フィルムロールを製造した。まず、ステンレス鋼製の無端ベルト支持体に流延ダイ(コートハンガーダイ)から、上記ドープを流延した。そして、無端ベルト支持体に流延されたウェブの残留溶媒量が100質量になるまで、ウェブを乾燥(ウェブ中の溶媒を蒸発)させた後、ウェブを無端ベルト支持体からフィルムとして剥離した。
剥離したフィルムを、35℃でさらに乾燥させ、1.15m幅にスリットした。その後、スリットしたフィルムを、延伸装置(テンター)を用いて、幅手方向(TD方向)に1.15倍に延伸し、140℃でさらに乾燥させた。その後、装置内を120℃になるように設定した乾燥装置内を、多数のローラでフィルムを搬送させながら、フィルムを15分間乾燥させた後、1.3m幅にスリットした。その後、エンボス形成装置で、フィルムの両端部に、図5(a)に示すような形状であって、幅10mm高さ5μmのエンボス部を形成するナーリング加工を施した。なお、フィルムの厚みが、25μmとなるように、樹脂フィルムを製造した。また、無端ベルト支持体の回転速度とテンターの運転速度とから算出されるMD方向の延伸倍率は、1.01倍であった。また、ここで得られた樹脂フィルムを、TAC1とも称する。
次に、得られた樹脂フィルムを、巻取装置を用いて巻芯にロール状に巻き取ることによって、光学フィルムロールを製造した。具体的には、以下のように製造した。ナーリング加工を施したフィルムを、巻芯に、速度80m/分、巻き取り初期張力140N、巻き終わり張力90N、タッチローラのニップ力は20Nで一定として、4000m巻き取り、光学フィルムロールを作製した。また、樹脂フィルムを巻芯に巻き取る際、巻芯を振動させながら巻き取る振動巻取(オシレート巻き)を施した。また、その振動が、図9に示す曲線61で表される関数f(x)となるような振動となるように振動させた。そうすることによって、実施例1に係る光学フィルムロールが得られた。なお、図9は、実施例及び比較例における振動巻取工程での振動を説明するためのグラフである。
[実施例2]
実施例1で用いたTAC1の代わりに、TAC1と同組成で、厚みが、40μmとなるように製造したフィルム(TAC3)を用いたこと以外、実施例1と同様である。
[実施例3]
実施例1で用いたTAC1の代わりに、TAC1と同組成で、厚みが、30μmとなるように製造したフィルム(TAC2)を用いたこと以外、実施例1と同様である。
[実施例4]
実施例4は、樹脂フィルムとして、液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いることが可能な位相差フィルムを用いた。具体的には、以下のようなセルロースアセテートプロピオネートフィルムを用いた。
(微粒子添加液の調製)
ドープに添加する微粒子添加液について説明する。
まず、微粒子(日本アエロジル(株)製のアエロジルR972V、一次粒径の平均径16nm、みかけ比重90g/L)11質量部及びエタノール89質量部をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリン分散機を用いて分散を行い、微粒子分散液を調製した。
そして、溶解タンクにメチレンクロライドを99質量部入れ、メチレンクロライドを充分に攪拌した後に、安積濾紙株式会社製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過により得られた濾液を充分に攪拌しながら、上記調製した微粒子分散液11質量部をゆっくりと添加した。さらに、二次粒子の粒径が、所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線株式会社製のファインメットNFで濾過して、微粒子添加液を調製した。
(ドープの調製)
次に、ドープの調製について説明する。
まず、メチレンクロライド390質量部及びエタノール80質量部を入れた加圧溶解タンクに、透明性樹脂としてセルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度1.5、プロピオニル基の置換度1、アシル基の総置換度2.5)100質量部を添加し、下記の製法により得られる芳香族末端エステル化合物5質量部、及びトリメチロールプロパントリベンゾエート5.5質量部を添加した。そして、加熱条件下で攪拌することによって、樹脂成分を溶解させた。そうすることによって得られた樹脂溶液を、安積濾紙株式会社製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。次に、このようにして得られた樹脂溶液100質量部と、上記微粒子添加液5質量部とを、インラインミキサ(東レ株式会社製の静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)で充分に攪拌して得られた液体を、ドープとして使用して、以下のように、樹脂フィルムを製造した。
(芳香族末端エステル化合物の製造)
反応容器に、フタル酸410質量部、安息香酸610質量部、1,3−プロパンジオール418質量部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35質量部を一括して仕込んだ。その後、窒素気流中で攪拌下、還流凝縮器を付して過剰の1価アルコールを還流させながら、酸価が2以下になるまで130〜250℃で加熱を続け生成する水を連続的に除去した。次いで、200〜230℃で400Pa以下の減圧下、留出分を除去し、この後、濾過した。そうすることによって、次の性状を有する芳香族末端エステルが得られた。
粘度(25℃、mPa・s);37000
酸価 ;0.05
(光学フィルムロールの製造)
図6に示すような、溶液流延製膜法による樹脂フィルムの製造装置を用いて、光学フィルムロールを製造した。まず、温度を35℃に調整した上記ドープを、流延幅が1650mmとなるように、流延ダイ(コートハンガーダイ)から長さ100mの無端ベルト支持体に流延した。無端ベルト支持体としては、表面を鏡面に研磨した幅1800mmのステンレス鋼製のエンドレスベルトからなる無端ベルト支持体を用いた。
そして、無端ベルト支持体に流延されたウェブを、無端ベルト支持体の回転により、1.5分間移動させた後、剥離ローラを用いて、剥離張力100N/mで、無端ベルト支持体からフィルムとして剥離した。なお、剥離時には、10℃の冷風をウェブに吹きつけた。また、一軸延伸装置までの搬送張力は、200N/mとした。
剥離したフィルムを、クリップテンターを使用した一軸延伸装置を用いて、幅手方向(TD方向)に30%延伸した。なお、延伸後のフィルムの残留溶媒量が7質量%となるように、延伸時に、フィルムに加熱風を吹きつけ、加熱風の温度を調整した。
乾燥装置内を、多数のローラでフィルムを搬送させながら、フィルムを乾燥させた。なお、乾燥後のフィルムの残留溶媒量が0.01質量%となるように、乾燥装置内の加熱風の温度を調整した。その後、エンボス形成装置で、フィルムの両端部に、図5(a)に示すような形状であって、幅10mm高さ5μmのエンボス部を形成するナーリング加工を施した。なお、フィルムの厚みが、30μmとなるように、樹脂フィルムを製造した。また、ここで得られた樹脂フィルムは、位相差フィルムであり、ここでは、CAPと称する。
次に、得られた樹脂フィルムを、巻取装置を用いて巻芯にロール状に巻き取ることによって、光学フィルムロールを製造した。具体的には、以下のように製造した。ナーリング加工を施したフィルムを、巻芯に、速度80m/分、巻き取り初期張力165N、巻き終わり張力105N、タッチローラのニップ力は24Nで一定として、4000m巻き取り、光学フィルムロールを作製した。また、樹脂フィルムを巻芯に巻き取る際、巻芯を振動させながら巻き取る振動巻取(オシレート巻き)を施した。また、その振動が、図9に示す曲線61で表される関数f(x)となるような振動となるように振動させた。そうすることによって、実施例4に係る光学フィルムロールが得られた。
[実施例5]
実施例5は、樹脂フィルムとして、基材フィルムと、前記基材フィルム上に存在する機能性層とを備える光学フィルムを用いた。具体的には、以下のような、機能性層として、ハードコート層を備えたハードコートフィルムを用いた。
(基材フィルム)
基材フィルムとしては、実施例1におけるセルローストリアセテートフィルムを用いた。すなわち、実施例1における、ナーリング加工を施す前の樹脂フィルムを用いた。
(ハードコート層形成用樹脂組成物)
活性線硬化性化合物としてのペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(新中村化学工業(株)製のNKエステルA−TMM−3L)70質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業(株)製のA−TMPT)30質量部、イルガキュア184(BASFジャパン(株)製)6質量部、添加剤としてのポリエーテル変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製のKF−354L)2質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル20質量部と酢酸メチル30質量部とメチルエチルケトン70質量部との混合溶媒に投入し、攪拌して、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物を、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、ハードコート層形成用樹脂組成物を調製した。
(ハードコート層の形成)
まず、上記基材フィルムの、製造時に無端ベルト支持体に接触していない面(A面)上に、前記ハードコート層形成用樹脂組成物を、押し出しコーターを用いて塗布した。表面上にハードコート層形成用樹脂組成物が塗布されたフィルムを、装置内温度50℃の乾燥装置内に搬送することにより、乾燥させた。その後、酸素濃度が1体積%以下の雰囲気下となるように窒素パージしながら、乾燥させたフィルムの塗布側に、紫外線ランプを用いて、紫外線を照射した。その際、照度が100mW/cm2で、照射量を0.2J/cm2となるように紫外線を照射した。そうすることによって、ハードコート層が形成された。なお、ハードコート層の厚みが2.5μmになるように、ハードコート層を形成した。その後、エンボス形成装置で、フィルムの両端部に、図5(a)に示すような形状であって、幅10mm高さ5μmのエンボス部を形成するナーリング加工を施した。このようにして得られた、ハードコート層を形成したフィルムは、ハードコートフィルムであり、ここでは、HC−TACと称する。
次に、得られたフィルムを、巻取装置を用いて巻芯にロール状に巻き取ることによって、光学フィルムロールを製造した。具体的には、以下のように製造した。ナーリング加工を施したフィルムを、巻芯に、速度30m/分、巻き取り初期張力250N、巻き終わり張力150Nで一定として、4000m巻き取り、光学フィルムロールを作製した。なお、ここでは、タッチローラを用いなかった。また、樹脂フィルムを巻芯に巻き取る際、巻芯を振動させながら巻き取る振動巻取(オシレート巻き)を施した。また、その振動が、図9に示す曲線61で表される関数f(x)となるような振動となるように振動させた。そうすることによって、実施例5に係る光学フィルムロールが得られた。
[実施例6]
樹脂フィルムを巻芯に巻き取る際、オシレート巻きにおける振動の振幅が、巻芯に巻き取られた樹脂フィルムの積算の厚みが大きくなるに従って、徐々に大きくなるようにしたこと以外、実施例1と同様である。具体的には、巻き始めのときは、振動の振幅が5mmで、徐々に大きくなり、巻き終わりの時には、振動の振幅が7mmとなるようにした。
[実施例7]
樹脂フィルムを巻芯に巻き取る際、オシレート巻きにおける振動の周期が、巻芯に巻き取られた樹脂フィルムの積算の厚みが大きくなるに従って、徐々に小さくなるようにしたこと以外、実施例1と同様である。具体的には、巻き始めのときは、振動の周期が160mmで、徐々に小さくなり、巻き終わりの時には、振動の周期が100mmとなるようにした。
[実施例8]
実施例1で用いたTAC1の代わりに、ナーリング加工の際に、図5(b)に示すような形状のエンボス部を形成させたフィルム(TAC4)を用いたこと以外、実施例1と同様である。
[比較例1]
樹脂フィルムを巻芯に巻き取る際、樹脂フィルムと巻芯との中心間距離が変化しないように巻き取ること以外、実施例1と同様である。すなわち、樹脂フィルムの幅手方向の中心位置と、巻芯の幅手方向の中心位置との距離を変動させずに、樹脂フィルムを巻芯に巻き取ること以外、実施例1と同様である。
[比較例2]
オシレート巻きの際の振動が、図9に示す曲線62で表される関数a(x)となるような振動となるように振動させたこと以外、実施例1と同様である。すなわち、オシレート巻きの際の振動が、前記f(x)と振幅及び周期が同一の正弦波振動の関数a(x)となるような振動となるように振動させたこと以外、実施例1と同様である。
[比較例3]
TAC1の代わりに、TAC3を用いたこと以外、比較例1と同様である。
[比較例4]
TAC1の代わりに、TAC3を用いたこと以外、比較例2と同様である。
[比較例5]
TAC1の代わりに、TAC2を用いたこと以外、比較例2と同様である。
[比較例6]
樹脂フィルムを巻芯に巻き取る際、樹脂フィルムと巻芯との中心間距離が変化しないように巻き取ること以外、実施例1と同様である。すなわち、樹脂フィルムの幅手方向の中心位置と、巻芯の幅手方向の中心位置との距離を変動させずに、樹脂フィルムを巻芯に巻き取ること以外、実施例4と同様である。
[比較例7]
オシレート巻きの際の振動が、図9に示す曲線62で表される関数a(x)となるような振動となるように振動させたこと以外、実施例1と同様である。すなわち、オシレート巻きの際の振動が、前記f(x)と振幅及び周期が同一の正弦波振動の関数a(x)となるような振動となるように振動させたこと以外、実施例4と同様である。
[比較例8]
樹脂フィルムを巻芯に巻き取る際、樹脂フィルムと巻芯との中心間距離が変化しないように巻き取ること以外、実施例1と同様である。すなわち、樹脂フィルムの幅手方向の中心位置と、巻芯の幅手方向の中心位置との距離を変動させずに、樹脂フィルムを巻芯に巻き取ること以外、実施例5と同様である。
[比較例9]
オシレート巻きの際の振動が、図9に示す曲線62で表される関数a(x)となるような振動となるように振動させたこと以外、実施例1と同様である。すなわち、オシレート巻きの際の振動が、前記f(x)と振幅及び周期が同一の正弦波振動の関数a(x)となるような振動となるように振動させたこと以外、実施例5と同様である。
実施例1〜8及び比較例1〜9における各条件を、下記表1にまとめて示す。
上記のようにして得られた各光学フィルムロールに対して、以下の評価を行い、その結果を、表2に示す。
[フィルムロールの耐久試験評価]
上記のようにして得られた各光学フィルムロールに対して、それぞれ長期保管を想定した耐久試験を行った。具体的には、上記のようにして得られた各光学フィルムロールを、それぞれアルミ防湿シートに包んだ状態で、50℃相対湿度80%の恒温槽で10日保存した。10日間保存後、アルミ防湿シートを外した。そして、光学フィルムロールの外観を評価した。その結果、光学フィルムロールの幅手方向中央部が下方に凹む等の凹変形の面積が、その結果、光学フィルムロールの幅手方向中央部が、下方に凹む等の凹変形が発生している面積が、フィルムロールの表面の全面に対して、5%以下であれば、「◎」と評価し、5%を超え20%以下であれば、「○」と評価し、20%を超え50%未満であれば、「△」と評価し、50%以上であれば、「×」と評価した。
[液晶表示装置における評価(表示特性)]
次に、上記のようにして得られた各光学フィルムロールから繰り出されたフィルムを適用した液晶表示装置の表示特性を評価した。
まず、以下のように、図10に示すような偏光板を備える液晶表示装置を製造した。なお、図10は、実施例及び比較例での評価に用いる液晶表示装置に備えられる偏光板の構成の概略を示す模式図である。
ここでの偏光板101としては、視認側から順に、ハードコートフィルム102と、偏光膜105と、位相差フィルム106と、液晶層と貼り合せるための粘着層107とを備えた偏光板が挙げられる。ハードコートフィルム102は、ハードコート層103と基材フィルム104とを積層したフィルムである。ハードコートフィルム102は、基材フィルム104側を偏光膜105に貼りあわせる。また、偏光板101としては、ハードコートフィルム102の代わりに、ハードコート層103を備えていない光学フィルム(偏光板保護フィルム)であってもよい。
本評価において、各光学フィルムロールから繰り出されたフィルムが、偏光板保護フィルムやハードコートフィルムである場合は、視認側に配置した。また、各光学フィルムロールから繰り出されたフィルムが、位相差フィルムである場合は、液晶層側に配置した。具体的には、実施例1〜3、実施例5〜8、比較例1〜5、及び比較例8,9に係る光学フィルムロールから繰り出されたフィルムは、図10におけるハードコートフィルム102の代わりに適用した。また、実施例4、及び比較例6,7に係る光学フィルムロールから繰り出されたフィルムは、図10における位相差フィルム106の代わりに適用した。また、本実施例及び比較例を適用しない場合、図10におけるハードコートフィルム102の箇所には、偏光板保護フィルム(コニカミノルタ社製のKC4UY)を用い、位相差フィルム106としては、厚さ40μmの位相差フィルム(コニカミノルタ社製のKC4DR−1)を用いた。なお、フィルムは、前記フィルムロールの耐久試験を行った後のフィルムロールから繰り出されたフィルムを用いた。
より具体的には、以下のように製造した。
(a)偏光膜の作製
鹸化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)100質量部に、グリセリン10質量部、及び水170質量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ローラー上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理して、PVAフィルムを得た。
得られたPVAフィルムは、平均厚さが25μm、水分率が4.4%、フィルム幅が3mであった。次に、得られたPVAフィルムを、予備膨潤、染色、湿式法による一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で、連続的に処理して、偏光膜を作製した。すなわち、PVAフィルムを温度30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの温度35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中でフィルムにかかる張力が700N/mの条件下で、6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの温度30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、温度40℃で熱風乾燥し、更に温度100℃で5分間熱処理を行った。そうすることによって、偏光膜が得られた。得られた偏光膜は、平均厚さが13μm、偏光性能については透過率が43.0%、偏光度が99.5%、2色性比が40.1であった。
(b)偏光板の作製
下記工程1〜4に従って、偏光板保護フィルム又はハードコートフィルム102と、偏光膜105と、位相差フィルム106とを貼り合わせて偏光板を作製した。
工程1:前述の偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤溶液の貯留槽中に1〜2秒間浸漬した。
工程2:偏光板保護フィルム又はハードコートフィルムと位相差フィルムを下記条件で、アルカリ処理を実施した。次いで、工程1でポリビニルアルコール接着剤溶液に偏光膜を浸漬した。浸漬した偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、この偏光膜に偏光板保護フィルム又はハードコートフィルムと、厚さ40μmの位相差フィルムとを、図10に示したとおりに挟み込んで、積層配置した。
(アルカリ処理)
鹸化工程 2.5mol/L−KOH 50℃ 120秒間
水洗工程 水 30℃ 60秒間
中和工程 10質量部HCl 30℃ 45秒間
水洗工程 水 30℃ 60秒間
鹸化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで100℃で乾燥した。
工程3:積層物を、2つの回転するローラにて20〜30N/cm2の圧力で約2m/分の速度で貼り合わせた。このとき、気泡が入らないように注意した。
工程4:工程3で作製した試料を、温度100℃の乾燥機中にて5分間乾燥処理した。
その後、得られた積層物に、以下のようにして、粘着層107を設けた。
(粘着層)
偏光板の位相差フィルム106に、市販のアクリル系粘着剤を乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、110℃のオーブンで5分間乾燥して、粘着層107を形成した。その後、粘着層107に剥離性の保護フィルムを貼り付けた。
<液晶表示装置の作製>
(耐久試験評価)
上記作製した偏光板から、保護フィルムをはがし、その偏光板を、液晶表示装置の液晶層に貼り付けることによって、液晶表示装置を作製した。具体的には、以下のようにした。
(液晶表示装置)
VAモード型液晶表示装置(SONY製BRAVIA KDL−52W5)に液晶層を挟んで設置されている2対の偏光板のうち、観察者側の片面の偏光板を剥がし、上記作製した偏光板101をハードコート層が視認側となるようにして、粘着層107と液晶層(液晶セルガラス)とを貼合した。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸とが直交するように配置して、液晶表示装置を作製した。
得られた液晶表示装置を用いて、以下のような評価を行った。
(むら評価)
得られた液晶表示装置に黒画像を表示した。次いで、表示した黒画像を、正面から目視で観察した。その結果、変形に起因すると思われるむらが全く確認できない場合は、「◎」と評価した。また、変形に起因すると思われるむらがわずかに確認できる場合は、「○」と評価した。また、細かな、変形に起因すると思われるむらが確認できる場合は、「△」と評価した。また、変形に起因すると思われるむらがはっきりと確認できる場合は、「×」と評価した。
(平面性)
得られた液晶表示装置を、床から80cmの高さの机上に配置した。床から3mの天井部に、昼色光直管蛍光灯(FLR40S・D/M−X パナソニック(株)製、40W)2本を1セットとして、1.5m間隔で10セット配置した。その際、評価者が液晶表示装置の画像表示部の正面にいるときに、評価者の頭上より後方に向けて天井部に蛍光灯がくるように、液晶表示装置及び蛍光灯を配置した。そして、液晶表示装置の画像形成部に映りこむ蛍光灯の形状により、以下の基準で評価した。その結果、蛍光灯が真っ直ぐに見える場合は、「◎」と評価し、蛍光灯が若干曲がったように見える箇所が確認できる場合は、「○」と評価し、蛍光灯が全体にわたって少し曲がっているように見える場合は、「△」と評価し、蛍光灯が全体にわたって大きくうねって見える場合は、「×」と評価した。
以上の評価結果を表2に示した。
表1及び表2からわかるように、樹脂フィルムを巻き取る際、上記f(x)を満たすに巻芯を振動させた場合(実施例1〜8)は、このような振動を行わない場合(比較例1〜9)と比較して、得られたフィルムロールの変形が少ないことがわかる。また、実施例1〜8に係るフィルムを液晶表示装置に用いた場合も、フィルムロールの変形による問題の発生が抑制されていることがわかる。