JPWO2014119333A1 - 方向性結合器及びそれを備えるマイクロ波加熱装置 - Google Patents
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Abstract
本発明に係る方向性結合器は、導波管(10)の壁面(10a)に設けられた開口部(11)と、導波管の外側に設けられた結合線路(13)とを備える。開口部は、平面視において導波管の管軸(L1)と交差しない位置に設けられるとともに、円偏波を放射するように形成されている。結合線路は、平面視において開口部をそれぞれ管軸に対して交差する方向に横切るとともに開口部の中央部を挟んで対向するように配置された第1及び第2伝送線路(13a,13b)と、両端部に設けられた出力部(131,132)とを備えている。第1及び第2伝送線路は、開口部の鉛直上方の領域から外れた位置で互いに接続されている。
Description
本発明は、導波管内を伝送されるマイクロ波の電力レベルを検出する方向性結合器及びそれを備えるマイクロ波加熱装置に関する。
導波管内を伝送されるマイクロ波の電力レベルを検出する装置として、方向性結合器が知られている。方向性結合器は、導波管内を双方向に伝送される進行波と反射波とを分離して検出するものである。方向性結合器の検出方式としては、従来から様々なものが提案されている。例えば、方向性結合器の検出方式として、検出した信号を、別の導波管に伝送させる方式、同軸線路に伝送させる方式、マイクロストリップ線路に伝送させる方式が提案され、実用化されている。
検出した信号を別の導波管に伝送する方式の方向性結合器としては、例えば、非特許文献1に記載の十字型方向性結合器が知られている。この十字型方向性結合器においては、2つの導波管の幅広面を十字型に重ね合わせ、当該2つの導波管の接続面に所定間隔で2つのX形状の開口部を設けた構造を有する。
また、検出した信号を同軸線路に伝送する方式の方向性結合器としては、例えば、特許文献1に記載の方向性結合器が知られている。この方向性結合器は、導波管の幅広面の管軸に対応する位置に開口部を設け、当該開口部に対向する位置にマイクロ波検出部である容量板を設け、当該容量板の周囲に検出座と2つの中心導体と2つのコネクタとを設けた構造を有する。
また、検出した信号をマイクロストリップ線路に伝送する方式の方向性結合器としては、例えば、特許文献2に記載の方向性結合器が知られている。この方向性結合器は、導波管の幅広面の管軸に対応する位置に開口部を設け、当該開口部に対向する位置にプリント基板を設け、当該プリント基板にマイクロ波検出部であるマイクロストリップ線路と検波回路とを設けた構造を有する。
また、検出した信号をマイクロストリップ線路に伝送する方式の方向性結合器として、例えば、特許文献3に記載の方向性結合器も知られている。この方向性結合器は、導波管の幅広面の管軸に対応する位置に所定間隔で2つの開口部を設け、当該2つの開口部に対向する位置にプリント基板を設け、当該プリント基板にマイクロ波検出部であるマイクロストリップ線路と2つの探針とを設けた構造を有する。
なお、前記では、導波管に取り付けられる方向性結合器について説明したが、マイクロ波加熱装置に取り付けられる方向性結合器も存在する(例えば、特許文献4参照)。
蓮沼博、高木勝義著、「マイクロ波基礎回路の設計」オーム社、1964年12月25日発行、ページ258−260
しかしながら、検出した信号を別の導波管に伝送する方式の方向性結合器においては、2つの導波管が必要であるため、装置の厚みが大きいという課題がある。また、検出した信号を同軸線路に伝送する方式の方向性結合器においても、容量板の周囲に検出座と2つの中心導体と2つのコネクタとを設ける構造であるため、装置の厚みが大きいという課題がある。
これに対して、検出した信号をマイクロストリップ線路に伝送する方式の方向性結合器においては、マイクロストリップ線路及び検波回路の厚みは極僅かであり、2つの深針も開口部とプリント基板との間の空間に設けるものであるため、装置の厚みを薄くすることが可能である。
しかしながら、前記方式の方向性結合器では、導波管の管軸に対応する位置(平面視において導波管の管軸と重なる位置)に開口部を設けているので、開口部からマイクロストリップ線路までの長さ寸法や深針の長さ寸法を高精度に管理する必要がある。すなわち、前記方式の方向性結合器の構造では、導波管の管軸方向に導波管内を伝送されるマイクロ波の波長に相当するくらい長い開口部を設けた場合であっても、当該開口部から導波管の外にマイクロ波は自由放射しない。このため、開口部の周辺に広がる電磁界をマイクロストリップ線路に結合させる構成が必要になる。電磁界をマイクロストリップ線路に結合させること自体は、例えば、導波管の管軸方向に対して垂直な方向における開口部の幅をマイクロストリップ線路の線路幅より大きくすることで実現することができる。しかしながら、この場合、その結合のレベルは、開口部からマイクロストリップ線路までの長さ寸法や深針の長さ寸法に大きく依存することになる。
従って、本発明の目的は、前記従来の課題を解決することにあって、装置の大型化を抑えつつ、高精度な寸法管理を不要とすることができる新規な方向性結合器及びそれを備えるマイクロ波加熱装置を提供することにある。
前記従来の課題を解決するために、本発明に係る方向性結合器は、
導波管の壁面に設けられた開口部と、前記導波管の外側に設けられた結合線路と、を備える方向性結合器であって、
前記開口部は、平面視において前記導波管の管軸と交差しない位置に設けられるとともに、円偏波を放射するように形成され、
前記結合線路は、平面視において前記開口部をそれぞれ横切るとともに前記開口部の中央部を挟んで対向するように配置された第1及び第2伝送線路と、両端部に設けられた出力部とを備え、
前記第1伝送線路と前記第2伝送線路とは、前記開口部の鉛直上方の領域から外れた位置で互いに接続されるように構成されている。
導波管の壁面に設けられた開口部と、前記導波管の外側に設けられた結合線路と、を備える方向性結合器であって、
前記開口部は、平面視において前記導波管の管軸と交差しない位置に設けられるとともに、円偏波を放射するように形成され、
前記結合線路は、平面視において前記開口部をそれぞれ横切るとともに前記開口部の中央部を挟んで対向するように配置された第1及び第2伝送線路と、両端部に設けられた出力部とを備え、
前記第1伝送線路と前記第2伝送線路とは、前記開口部の鉛直上方の領域から外れた位置で互いに接続されるように構成されている。
本発明に係る方向性結合器によれば、装置の大型化を抑えつつ、高精度な寸法管理を不要とすることができる新規な方向性結合器を提供することができる。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
図1は、本発明の第1実施形態に係る方向性結合器の斜視図であり、
図2は、図1の方向性結合器が備えるプリント基板を透過して示す斜視図であり、
図3は、図1の方向性結合器が備える導波管の平面図であり、
図4は、図1の方向性結合器が備えるプリント基板の回路構成図であり、
図5は、クロス開口から円偏波が放射される原理を説明する説明図であり、
図6は、時間経過とともに変化するマイクロストリップ線路を伝送されるマイクロ波の向き及び量を説明する説明図であり、
図7は、第1伝送線路と第2伝送線路との間隔を4mmとした方向性結合器における反射波電力検出ポートの特性を示す図であり、
図8は、第1伝送線路と第2伝送線路との間隔を2mmとした方向性結合器における反射波電力検出ポートの特性を示す図であり、
図9は、第1伝送線路と第2伝送線路との間隔を4mmとした方向性結合器における進行波電力検出ポートの特性を示す図であり、
図10は、図1の方向性結合器が備えるクロス開口を円形の開口部に置き換えたときの開口部とマイクロストリップ線路との関係を示す平面図であり、
図11は、本発明の第2実施形態に係るマイクロ波加熱装置の概略構成図である。
本発明に係る方向性結合器は、導波管の壁面に設けられた開口部と、前記導波管の外側に設けられた結合線路と、を備える方向性結合器であって、
前記開口部は、平面視において前記導波管の管軸と交差しない位置に設けられるとともに、円偏波を放射するように形成され、
前記結合線路は、平面視において前記開口部をそれぞれ横切るとともに前記開口部の中央部を挟んで対向するように配置された第1及び第2伝送線路と、両端部に設けられた出力部とを備え、
前記第1伝送線路と前記第2伝送線路とは、前記開口部の鉛直上方の領域から外れた位置で互いに接続されるように構成されている。
前記開口部は、平面視において前記導波管の管軸と交差しない位置に設けられるとともに、円偏波を放射するように形成され、
前記結合線路は、平面視において前記開口部をそれぞれ横切るとともに前記開口部の中央部を挟んで対向するように配置された第1及び第2伝送線路と、両端部に設けられた出力部とを備え、
前記第1伝送線路と前記第2伝送線路とは、前記開口部の鉛直上方の領域から外れた位置で互いに接続されるように構成されている。
この構成によれば、開口部は、平面視において導波管の管軸と交差しない位置に設けられているので、導波管内を伝送されるマイクロ波を容易に導波管の外側に放射させることができる。当該導波管の外側に放射されたマイクロ波は、結合線路で結合する。
また、前記構成において、開口部は、円偏波を放射するように形成されている。この構成によれば、導波管内を伝送されるマイクロ波の向きが互いに逆向きの場合、開口部から放射される円偏波の回転方向も互いに逆向きとなる。また、前記構成において、結合線路は、平面視において開口部をそれぞれ横切るとともに開口部の中央部を挟んで対向するように配置された第1及び第2伝送線路を備えている。この構成によれば、導波管内を一方向にマイクロ波が伝送されるときに開口部から(例えば、反時計回りに)放射される円偏波は、大部分が第1伝送線路又は第2伝送線路の一方を通じて一方の出力部に出力されることになる。一方、導波管内を前記一方向とは逆方向にマイクロ波が伝送されるときに開口部から(例えば、時計回りに)放射される円偏波は、大部分が第1伝送線路又は第2伝送線路の他方を通じて他方の出力部に出力されることになる。これにより、導波管内を双方向に伝送されるマイクロ波(進行波と反射波)をそれぞれ分離して検出することができる。すなわち、前記構成によれば、円偏波の回転方向の違いを利用して進行波と反射波とを分離して検出するようにしているので、装置の大型化を抑えつつ、高精度な寸法管理を不要とすることができる新規な方向性結合器を提供することができる。
なお、前記結合線路は、例えば、プリント基板の前記開口部と対向する面に形成すればよい。プリント基板の厚みは、通常、極僅かであるので、装置の大型化を抑えることができる。
また、前記開口部は、2つの長孔が交差するX形状に形成されることが好ましい。これにより、開口部は、ほぼ真円状の円偏波を放射することができ、当該円偏波の回転方向がより明確になる。その結果、進行波と反射波とを精度よく分離して検出することができる。
また、平面視において、前記開口部と前記第1伝送線路とが交差する結合領域の略中心に位置する第1結合点と、前記開口部と前記第2伝送線路とが交差する結合領域の略中心に位置する第2結合点との間の前記結合線路は、前記第1結合点で生じるマイクロ波と前記第2結合点で生じるマイクロ波とが、前記円偏波の回転方向に対応して、前記第1結合点又は前記第2結合点で同位相になるように構成されることが好ましい。これにより、反射波が存在する環境下(すなわち、導波管内に定在波が発生する環境下)であっても方向性結合器の設置位置を自由に設計でき、実用価値を高めることができる。
また、前記プリント基板を前記導波管の外面上で支持するとともに、平面視において前記開口部を包囲するように配置された導電性を有する支持部を更に備え、前記プリント基板の前記開口部に対向しない面には、マイクロ波反射部材が形成されることが好ましい。この構成によれば、開口部から放射されるマイクロ波が支持部及びプリント基板の外側に漏洩することを防ぐことができる。これにより、支持部及びプリント基板の周辺に配置される電気部品や制御信号ラインなどへのマイクロ波の不要輻射を抑制し、誤動作が起こることを回避することができる。
また、前記支持部には、前記結合線路の両端部が貫通する貫通穴が設けられ、前記出力部は、前記支持部の外側に配置されることが好ましい。この構成によれば、開口部から放射されたマイクロ波が支持部及びプリント基板の外側に漏洩することを支持部により防ぐ一方で、結合線路が検出した信号のみを支持部の外側に取り出すことができる。
また、前記出力部は、前記支持部の外側で検波回路又は終端回路に接続されることが好ましい。この構成によれば、検波回路又は終端回路が、開口部から放射されたマイクロ波の輻射により誤動作することを抑制することができる。
なお、前記検波回路又は前記終端回路は、前記プリント基板に設けられることが好ましい。この構成によれば、結合線路と検波回路又は終端回路とを設けるプリント基板の構成を単純化して信頼性を高く維持することができる。
また、前記第1及び第2伝送線路は、平面視において前記管軸と略垂直な方向に延在していることが好ましい。この構成によれば、導波管内を双方向に伝送されるマイクロ波の分離精度において、導波管に接続された負荷のインピーダンスの影響を緩和し、マイクロ波の分離度を高く維持することができる。
また、前記第1伝送線路の一端部と第2伝送線路の一端部とは、平面視において前記管軸に対して略平行な第3伝送線路に接続されることが好ましい。この構成によれば、導波管内を双方向に伝送されるマイクロ波の分離度を高めることができるとともに、結合線路の構造を定性化でき、実用構造の設計を容易にすることができる。
以下、本発明の実施形態に係る方向性結合器及びそれを備えるマイクロ波加熱装置について、図面を参照しながら説明する。尚、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る方向性結合器の斜視図である。図2は、図1の方向性結合器が備えるプリント基板を透過して示す斜視図である。図3は、図1の方向性結合器が備える導波管の平面図である。図4は、図1の方向性結合器が備えるプリント基板の回路構成図である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る方向性結合器の斜視図である。図2は、図1の方向性結合器が備えるプリント基板を透過して示す斜視図である。図3は、図1の方向性結合器が備える導波管の平面図である。図4は、図1の方向性結合器が備えるプリント基板の回路構成図である。
本第1実施形態に係る方向性結合器は、図1及び図2に示すように、マイクロ波を伝送する導波管10の壁面に設けられている。本第1実施形態において、導波管10は、方形導波管である。導波管10の管軸L1と直交する断面は、長方形に形成されている。
本第1実施形態に係る方向性結合器は、導波管10の幅広面10aに設けられたX形状の開口部(以下、クロス開口という)11と、導波管10の外側でクロス開口11と対向するように設けられたプリント基板12と、導波管10の外面上でプリント基板12を支持する支持部14とを備えている。
クロス開口11は、図3に示すように、平面視(プリント基板12側からクロス開口11を鳥瞰したとき)において、導波管10の管軸L1と交差しない位置に設けられている。クロス開口11の開口中央部11cは、平面視において導波管10の管軸L1から寸法D1だけ離れた位置に位置する。寸法D1は、例えば、導波管10の幅寸法の1/4の寸法である。また、クロス開口11は、導波管10内を伝送されるマイクロ波を円偏波としてプリント基板12側へ放射するように形成されている。
クロス開口11の開口形状は、導波管10の幅寸法と高さ寸法、導波管10を伝送されるマイクロ波の電力レベルや周波数帯域、クロス開口11から放射させる円偏波の電力レベルなどの条件に基づいて決定すればよい。例えば、導波管10の幅寸法が100mm、高さ寸法が30mm、導波管10の壁面の厚さが0.6mm、導波管10を伝送されるマイクロ波の最大電力レベルが1000W、周波数帯域が2450MHz、クロス開口11から放射させる円偏波の最大電力レベルが約10mWである場合、クロス開口11の長さ11wは20mm、クロス開口11の幅11dは2mm程度に決定すればよい。なお、本第1実施形態において、クロス開口11は、2つの長孔11e,11fをX形状に交差させることにより構成され、当該2つの長孔11e,11fの交差角度は、90度としている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、当該交差角度を60度や120度にしてもよい。
なお、クロス開口11の開口中央部11cを導波管10の管軸L1と対応する位置(平面視において管軸L1と重なる位置)に配置した場合、電界は回転せずに伝送方向に往復することになる。この場合、クロス開口11から直線偏波が放射されることになる。一方、開口中央部11cが管軸L1から少しでもずれていれば電界は回転する。但し、開口中央部11cが管軸L1に近ければ近いほど(寸法D1が0mmに近づくにつれて)、電界の回転はいびつになる。この場合、クロス開口11から楕円状の円偏波(楕円偏波ともいう)が放射されることになる。本第1実施形態のように、寸法D1を導波管10の幅寸法の1/4程度に設定した場合には、電界の回転はほぼ真円状になる。この場合、クロス開口11からほぼ真円状の円偏波が放射されることになるので、回転方向がより明確になり、進行波と反射波とを精度よく分離して検出することができる。
プリント基板12のクロス開口11に対向しない面(以下、プリント基板A面という)12aには、マイクロ波反射部材の一例として銅箔(図示せず)が形成されている。銅箔は、例えば、プリント基板A面全体を覆うように形成されている。これにより、クロス開口11から放射された円偏波がプリント基板12を透過しないようになっている。
また、プリント基板12のクロス開口11に対向する面(以下、プリント基板B面という)12bには、図4に示ように、結合線路の一例であるマイクロストリップ線路13が設けられている。マイクロストリップ線路13は、例えば、特性インピーダンスが略50オームである伝送線路で構成されている。マイクロストリップ線路13は、平面視において、クロス開口11の開口中央部11cを取り囲むように配置されている。
より具体的には、マイクロストリップ線路13は、第1伝送線路13aと、第2伝送線路13bとを備えている。第1及び第2伝送線路13a,13bは、平面視においてクロス開口11をそれぞれ横切るとともにクロス開口11の開口中央部11cを挟んで対向するように配置されている。本第1実施形態において、第1及び第2伝送線路13a,13bは、クロス開口11を包含する矩形のクロス開口領域11aの鉛直上方に位置し、導波管10の管軸L1に対して略垂直な方向に形成されている。
第1伝送線路13aの一端部と第2伝送線路13bの一端部とは、クロス開口11の鉛直上方の領域から外れた位置で、平面視において管軸L1に対して略平行な第3伝送線路13cに接続されている。第1伝送線路13aの他端部は、管軸L1に対して略平行な伝送線路13dに接続され、平面視においてクロス開口領域11aの外側まで延設されている。伝送線路13dは、伝送線路13fを介して出力部131に接続されている。第2伝送線路13bの他端部は、管軸L1に対して略平行な伝送線路13eに接続され、平面視においてクロス開口領域11aの外側まで延設されている。伝送線路13eは、伝送線路13gを介して出力部132に接続されている。
出力部131,132は、平面視において支持部14の外側に配置されている。出力部131,132には、検出したマイクロ波信号のレベルを制御信号として取り扱うための処理回路である検波回路15が接続されている。
図4には、検波回路15の一例が示されている。本第1実施形態において、検波回路15は、チップ抵抗16と、ショトキーダイオード17とを備えている。出力部131から出力されるマイクロ波信号は、チップ抵抗16及びショトキーダイオード17を経て整流され、チップ抵抗及びチップコンデンサにより構成される平滑回路を経て直流電圧に変換され、検波出力部18に出力される。同様に、出力部132から出力されるマイクロ波信号は、チップ抵抗16及びショトキーダイオード17を経て整流され、チップ抵抗及びチップコンデンサにより構成される平滑回路を経て直流電圧に変換され、検波出力部19に出力される。
また、プリント基板12には、例えば、4つのプリント基板取付用穴20a,20b,20c,20dと、2つのピンフォール21a,21bとが厚み方向に貫通するように設けられている。クロス開口11に対向するプリント基板B面12bにおいて、プリント基板取付用穴20a,20b,20c,20dの周辺部及びピンフォール21a,21bの周辺部には、グランド面となる銅箔が形成されている。この銅箔が形成された部分(以下、銅張部という)は、クロス開口11に対向しないプリント基板A面12aと同電位(グランド電位)とされている。
プリント基板12は、プリント基板取付用穴20a,20b,20c,20dを通じて支持部14にネジ201a,201b,201c,201dをねじ込むことによって組立固定される。支持部14には、図2に示すように、ネジ201a,201b,201c,201dをねじ込むためのネジ部202a,202b,202c,202dが設けられている。ネジ部202a,202b,202c,202dは、支持部14が有するフランジ部に形成されている。
支持部14は、導電性を有し、平面視においてクロス開口11を包囲するように配置されている。すなわち、支持部14は、クロス開口11から放射された円偏波が支持部14の外側に漏洩するのを防ぐシールドとして機能する。
支持部14には、図2に示すように、マイクロストリップ線路13の両端部が貫通する貫通穴141,142が形成されている。これにより、マイクロストリップ線路13の両端部の出力部131,132を支持部14の外側に位置させることができる。すなわち、貫通穴141,142は、マイクロストリップ線路13を伝送されるマイクロ波信号を支持部14の外側に取り出す取出し部として機能する。貫通穴141、142は、例えば、図2に示すように、支持部14のフランジ部をプリント基板12から離れる側に凹ませることにより形成することができる。
なお、図1及び図2には、図4に示す検波出力部18,19に実装させるためのコネクタ18a,19aが図示されている。
なお、前記では、導波管10内を双方向に伝送されるマイクロ波を検出する方向性結合器について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明に係る方向性結合器は、導波管10内を一方向に伝送されるマイクロ波を検出するように構成されてもよい。当該構成は、例えば、図4に示す検波回路15を終端回路(図示せず)に置換することで実現することができる。なお、この場合、終端回路は、例えば、抵抗値50オームのチップ抵抗で構成すればよい。
次に、本第1実施形態に係る方向性結合器の動作及び作用について説明する。
まず、図5を用いて、クロス開口11から円偏波が放射される原理について説明する。なお、図5においては、導波管10内に生じる磁界分布を同心の楕円状からなる点線10dで示している。また、磁界分布10dの磁界の向きを矢印で示している。磁界分布10dは、導波管10内をマイクロ波の伝送方向A1に時間とともに移動する。
時刻t=t0の時、図5の(a)に示すように、磁界分布10dが形成される。このとき、クロス開口11の一方の長孔11eが破線矢印B1で示す磁界で励起される。その後、t1時間経過した時刻t=t0+t1の時、クロス開口11の他方の長孔11fが破線矢印B2で示す磁界で励起される。その後、図5の(a)に示す状態からT/2時間(Tはマイクロ波の周期)が経過した時刻t=t0+T/2(Tは周期)のとき、クロス開口11の一方の長孔11eが破線矢印B3で示す磁界で励起される。その後、t1時間経過した時刻t=t0+T/2+t1のとき、クロス開口11の他方の長孔11fが破線矢印B4で示す磁界で励起される。図5の(a)に示す状態からT時間が経過した時刻t=t0+Tのとき、時刻t=t0のときと同様に、クロス開口11の一方の長孔11eが破線矢印B1で示す磁界で励起される。これら一連の励起状態が順次繰り返されることで、クロス開口11から放射されるマイクロ波は、反時計回りの方向32に回転する円偏波となって導波管10の外側に放射される。
ここで、図3に示す矢印30に伝送されるマイクロ波を進行波とし、矢印31に伝送されるマイクロ波を反射波とする。この場合、進行波は図5に示す伝送方向A1と同じ向きに伝送されるので、上述したように、クロス開口11から放射されるマイクロ波は反時計回りの方向32に回転する円偏波となって導波管10の外側に放射される。一方、反射波は図5に示す伝送方向A1と逆向きに伝送されるので、クロス開口11から放射されるマイクロ波は時計回りの方向に回転する円偏波となって導波管10の外側に放射される。
導波管10の外側に放射された円偏波は、クロス開口11に対向するマイクロストリップ線路13で結合する。このとき、マイクロストリップ線路13の第1〜第3伝送線路13a〜13cを上述したように形成した場合、矢印30の方向に伝送される進行波によりクロス開口11から放射されるマイクロ波は、大部分がマイクロストリップ線路13の出力部131に出力される。一方、矢印31の方向に伝送される反射波によりクロス開口11から放射されるマイクロ波は、大部分がマイクロストリップ線路13の出力部132に出力される。このことにつき、図6を用いて、以下に詳しく説明する。
図6は、時間経過とともに変化するマイクロストリップ線路13を伝送されるマイクロ波の向き及び量を説明する説明図である。なお、マイクロストリップ線路13とクロス開口11との間には隙間があるため、当該隙間をマイクロ波が伝送される時間分、マイクロ波がマイクロストリップ線路13に到達する時間は遅くなるが、説明の便宜上、ここでは当該時間遅れは無いものとして取り扱う。また、ここでは、平面視においてクロス開口11とマイクロストリップ線路13とが交差する領域を結合領域という。また、クロス開口11と第1伝送線路13aとが交差する結合領域の略中心を結合点(第1結合点)P1といい、クロス開口11と第2伝送線路13bとが交差する結合領域の略中心を結合点(第2結合点)P2という。また、図6では、マイクロストリップ線路13を伝送されるマイクロ波の量を線の太さで表現している。すなわち、マイクロストリップ線路13を伝送されるマイクロ波の量が多い場合には線を太くする一方、マイクロストリップ線路13を伝送されるマイクロ波の量が少ない場合には線を細くしている。
図6の(a)に示す時刻t=t0のとき、破線矢印B1で示す磁界がクロス開口11の一方の長孔11eを励起し、マイクロストリップ線路13上の結合点P1には太い実線矢印M1で示すマイクロ波が生じる。この太い実線矢印M1で示すマイクロ波は、結合点P2に向かってマイクロストリップ線路13上を伝送される。
図6の(b)に示す時刻t=t0+t1のとき、破線矢印B2で示す磁界がクロス開口11の他方の長孔11fを励起し、マイクロストリップ線路13上の結合点P2には太い実線矢印M2で示すマイクロ波が生じる。ここで、結合点P1と結合点P2との間のマイクロストリップ線路13によるマイクロ波の実効伝搬時間を時間t1に設計すると、時刻t=t0の時に結合点P1に生じたマイクロ波は時刻t=t0+t1の時に結合点P2に伝送される。当該マイクロ波は、時刻t=t0+t1の時に結合点P2に生じたマイクロ波と同位相になる。このため、2つのマイクロ波が加算されてマイクロストリップ線路13上を出力部131に向けて伝送され、所定時間経過後、出力部131に出力される。
図6の(c)に示す時刻t=t0+T/2のとき、破線矢印B3で示す磁界がクロス開口11の一方の長孔11eを励起し、マイクロストリップ線路13上の結合点P1には細い実線矢印M3で示すマイクロ波が生じる。この細い実線矢印M3で示すマイクロ波は、マイクロストリップ線路13上を出力部132に向けて伝送され、所定時間経過後、出力部132に出力される。
なお、実線矢印M3の太さを実線矢印M1の太さに比べて細くした理由は、以下の通りである。すなわち、クロス開口11からは、上述したように反時計回りの方向32に回転するマイクロ波(円偏波)が放射される。図6の(a)に示す時刻t=t0のとき、マイクロストリップ線路13の結合点P1に生じる実線矢印M1で示すマイクロ波の伝送方向は、クロス開口11から放射されるマイクロ波の回転方向と略同じ方向である。このため、実線矢印M1で示すマイクロ波のエネルギは縮減されない。一方、図6の(c)に示す時刻t=t0+T/2のとき、マイクロストリップ線路13の結合点P1に生じる実線矢印M3で示すマイクロ波の伝送方向は、クロス開口11から放射されるマイクロ波の回転方向に対して逆方向である。このため、結合したマイクロ波のエネルギは縮減される。したがって、実線矢印M3で示すマイクロ波の量は、実線矢印M1で示すマイクロ波の量よりも少なくなる。
図6の(d)に示す時刻t=t0+T/2+t1のとき、破線矢印B4で示す磁界がクロス開口11の他方の長孔11fを励起し、マイクロストリップ線路13上の結合点P2には細い実線矢印M4で示すマイクロ波が生じる。この細い実線矢印M4で示すマイクロ波は結合点P1に向かって伝送される。なお、実線矢印M4の太さを細くした理由は、上述した実線矢印M3の太さを細くした理由と同様である。
時刻t=t0+Tのとき、図6の(a)に示す時刻t=t0のときと同様に、クロス開口11の一方の長孔11eが破線矢印B1で示す磁界で励起される。このとき、図6の(a)に示す時刻t=t0のときには説明しなかった細い実線矢印M4で示すマイクロ波がマイクロストリップ線路13上に存在する。この細い実線矢印M4で示すマイクロ波は、時刻t=t0+T(すなわちt=t0)のとき、結合点P1に伝送される。この実線矢印M4で示すマイクロ波は、実線矢印M1で示すマイクロ波に対して伝送方向が逆向きであるので、打ち消されて消滅する。このため、細い実線矢印M4で示すマイクロ波は、出力部132に出力されない。
なお、厳密には、時刻t=t0のときに結合点Aから伝送されるマイクロ波の量は、実線矢印M1で示すマイクロ波の量から実線矢印M4で示すマイクロ波の量を差分した量(M1−M4)となる。従って、出力部131に出力されるマイクロ波の量は、結合点Aから伝送されるマイクロ波の量に実線矢印M2で示すマイクロ波の量を加算した量(M1+M2−M4)となる。このことを考慮しても、出力部131に出力されるマイクロ波の量(M1+M2−M4)は、出力部132に出力されるマイクロ波の量(M3)に比べて、はるかに多い量(M1+M2−M4>M3)となる。従って、マイクロストリップ線路13の第1〜第3伝送線路13a〜13cを上述したように形成した場合には、矢印30の方向に伝送される進行波によりクロス開口11から反時計回りに放射されるマイクロ波は、大部分がマイクロストリップ線路13の出力部131に出力されることになる。一方、矢印31の方向に伝送される反射波によりクロス開口11から時計回りに放射されるマイクロ波は、大部分がマイクロストリップ線路13の出力部132に出力されることになる。
なお、第1伝送線路13aと第2伝送線路13bとは、平面視において、クロス開口11の開口中央部11cを通り且つ管軸L1に対して垂直な直線に対して線対称に設けられることが好ましい。これにより、進行波と反射波の検出分離度を向上させることができる。
なお、導波管10内において進行波と反射波が互いに逆方向に伝送される場合、導波管10内に定在波が発生し、当該定在波が進行波と反射波の検出分離度に悪影響を与えることがある。この課題を改善するには、第1伝送線路13aと第2伝送線路13bとの間隔13g(図4参照)を以下のように設定すればよい。図7は、間隔13gを4mmとした方向性結合器における反射波電力検出ポートの特性を示す極座標図である。図8は、間隔13gを2mmとした方向性結合器における反射波電力出力ポートの特性を示す極座標図である。
なお、図7及び図8に示すデータは、以下のようにして得られたものである。まず、幅寸法が100mm、高さ寸法が30mm、壁面の厚さが0.6mm、クロス開口11の長さ11wが20mm、クロス開口11の幅11dが2mmの導波管10を用意する。この導波管10の一端部にマイクロ波の入力端子を接続するとともに、導波管10の他端部に反射波のレベル及び位相を変化させることができる負荷を接続する。その後、マイクロ波の入力端子からマイクロ波信号を入力するとともに、負荷により反射波のレベル及び位相を変化させ、マイクロストリップ線路13の出力部131,132が検出するマイクロ波の量を、ネットワークアナライザを用いて測定する。ここでは、出力部131が検出するマイクロ波(進行波)の量をS21とし、出力部132が検出するマイクロ波(反射波)の量をS31とする。次いで、S31−S21を計算し、スミスチャートの極座標表示上に展開する。
なお、図7及び図8において、基準面(進行波のすべてが完全反射し、位相が180度変化する面)50は、負荷の入力端子を基準として示している。また、極座標表示の中心は、反射波の量S31が「0(zero)」であることを示す。一方、極座標表示の最外郭である円周は、進行波のすべてが反射波になることを示す。すなわち、極座標表示の最外郭である円周に近づくほど、反射波の量S31が増すことになる。従って、反射波の量から進行波の量を差分した値(S31−S21)は、小さくなる(図7,図8はdB表記しているので、マイナス数値は小さくなる)。
また、極座標表示の円周方向は、位相に関連するものであり、方向性結合器を配置した位置における反射波の位相を示している(但し、図7及び図8では負荷の入力面を基準面としているので、位相は相対表示である)。すなわち、極座標表示における同一円周上では、反射波の位相は異なるが、反射波の量(電力レベル)は同じである。従って、反射波の量から進行波の量を差分した値(S31−S21)を極座標上に展開した場合、その等高線は、同心円状になるのが理想的である。
図7に示すように、間隔13gを4mmとした場合には、等高線(太線)がほぼ同心円状になっている。このことから、間隔13gを4mmとすることで、反射波が存在する環境下(すなわち、導波管10内に定在波が発生する環境下)であっても方向性結合器の設置位置を自由に設計でき、実用価値を高めることができることが分かる。一方、図8に示すように、間隔13gを2mmとした場合には、等高線(太線)が極座標表示の中心から偏心している。このことから、間隔13gを2mmとした場合には、反射波が存在する環境下では方向性結合器の設置位置により検出特性が変化することになり、実用価値が乏しくなることが分かる。なお、図示していないが、間隔13gを8mmとした場合には、間隔13gを2mmと場合とほぼ同様の特性を示すことを確認している。
以上のことから、導波管10の寸法やクロス開口11の寸法に応じて間隔13gを適切に設定することで、定在波に関する課題を改善できることが分かる。
次に、間隙13gの好ましい設定方法について説明する。
上述したように、図6は、マイクロストリップ線路13とクロス開口11との隙間による時間遅れはないものとして各時刻におけるマイクロストリップ線路13を伝送されるマイクロ波の向き及び量を示している。また、実線矢印M1で示すマイクロ波が結合点Aから結合点Bに到達するまでの伝送時間は、t1としている。しかしながら、実際には、マイクロストリップ線路13とクロス開口11との間には隙間が存在する。この隙間が大きくなるにつれて、結合点Aで結合するマイクロ波(実線矢印M1)と結合点Bで結合するマイクロ波(実線矢印M2)との時間差は時間t1に比べてより短くなる。
間隙13gを4mm、導波管10の幅広面10aとプリント基板B面12bとの隙間を6mmとし、導波管10の幅広面10aから5mm離れた平面(すなわち、マイクロストリップ線路13より1mm離れた平面)における、結合点A,B間の位相差をコンピュータ解析で求めた場合、約55度であった。また、間隙13gを2mmとした以外は同様の条件でコンピュータ解析したときの結合点A,B間の位相差は約38度であった。さらに、間隙13gを8mmとした以外は同様の条件でコンピュータ解析したときの結合点A,B間の位相差は約9度であった。
一方、マイクロストリップ線路13上の結合点A,B間の位相差をマイクロ波の実効伝搬波長から計算すると、当該位相差は約55度であった。なお、間隙13gを2mm、4mm、8mmと変更した場合でも、結合点Aから結合点Bまでのマイクロストリップ線路13の長さは同じものとする。
すなわち、間隙13gを4mmとした場合には、コンピュータ解析により求めた結合点A,B間の位相差が、マイクロ波の実効伝搬波長から計算した結合点A,B間の位相差と一致することになる。この場合、図6を用いて説明したように、実線矢印M1で示すマイクロ波と実線矢印M2で示すマイクロ波とが結合点Bで同位相になる。これにより、2つのマイクロ波が加算されてマイクロストリップ線路13上を出力部131に向けて伝送され、出力部131に出力されることになる。また、図7に示すように、等高線がほぼ同心円状となるような特性を実現することができる。従って、反射波が存在する環境下であっても方向性結合器の設置位置を自由に設計でき、実用価値を高めることができる。
一方、間隙13gを2mm及び8mmとした場合には、コンピュータ解析により求めた結合点A,B間の位相差が、マイクロ波の実効伝搬波長から計算した結合点A,B間の位相差と異なることになる。この場合、図8に示すように、等高線が極座標表示の中心から偏心した特性を示すことになる。従って、反射波が存在する環境下では方向性結合器の設置位置により検出特性が変化することになり、実用価値が乏しくなる。
以上のことから、導波管10の幅広面10aとプリント基板B面12bとの隙間に応じて間隔13gを適切に設定することで、結合点A,B間の位相差を最適化できることが分かる。
なお、マイクロ波の周波数帯域を2450MHz、導波管10の幅寸法を100mm、導波管10の高さ寸法を30mm、管軸L1からクロス開口11の開口中央部11cまでの寸法D1を25mm、クロス開口11の幅11dの寸法を2mm、クロス開口11の長さ寸法11wを20mm、クロス開口11とプリント基板B面12bまでの隙間を6mm、間隔13gを4mmとした場合、方向性結合器として適切に機能することを確認している。
なお、導波管10内を伝送されるマイクロ波の量に対して、クロス開口11から放射されるマイクロ波の量は、導波管10及びクロス開口11の形状及び寸法によって決まる。例えば、上述した形状及び寸法に設定した場合、導波管10内を伝送されるマイクロ波の量に対するクロス開口11から放射されるマイクロ波の量は、約1/10000(約−50dB)である。
図9は、上述した形状及び寸法に設定した方向性結合器における進行波電力検出ポートの特性を示す極座標図である。すなわち、図9は、出力部131が検出するマイクロ波(進行波)の量(S21)を極座標表示したものである。図9に示すように、極座標全領域に対して、負荷変動を考慮したマイクロ波(進行波)の検出量のばらつきは、約−50.5dBから−53.0dB程度であり、最大でも約3dB程度である。このばらつきは、小さいほど検波回路15による信号処理が容易となる。約3dB程度のばらつきであれば、検波回路15が備える検波ダイオードとして安価な部品を用いたとしても、検波回路15は信号処理を容易に行うことができる。従って、実用価値が高い。
以上、本第1実施形態に係る方向性結合器によれば、平面視において導波管10の管軸L1と交差しない位置にクロス開口11が設けられているので、導波管10内を伝送されるマイクロ波を容易に導波管10の外側に放射させることができる。導波管10の外側に放射されたマイクロ波は、マイクロストリップ線路13で結合する。
また、本第1実施形態に係る方向性結合器によれば、クロス開口11から放射される円偏波の回転方向の違いを利用して進行波と反射波とを分離して検出するように構成されているので、装置の大型化を抑えつつ、高精度な寸法管理を不要とすることができる。
また、本第1実施形態に係る方向性結合器によれば、マイクロストリップ線路13は、プリント基板12のクロス開口11と対向する面に形成されているので、装置の大型化を抑えることができる。
また、本第1実施形態に係る方向性結合器によれば、クロス開口11は、2つの長孔11e,11fが交差するX形状に形成されているので、ほぼ真円状の円偏波を放射することができ、当該円偏波の回転方向がより明確になる。その結果、進行波と反射波とを精度よく分離して検出することができる。
また、本第1実施形態に係る方向性結合器においては、平面視においてクロス開口11を包囲するように導電性を有する支持部14が設けられ、プリント基板12のクロス開口11に対向しない面に銅箔が形成されている。この構成によれば、クロス開口11から放射されるマイクロ波が支持部14及びプリント基板12の外側に漏洩することを防ぐことができる。その結果、支持部14及びプリント基板12の周辺に配置される電気部品や制御信号ラインなどへのマイクロ波の不要輻射を抑制し、誤動作が起こることを回避することができる。
また、本第1実施形態に係る方向性結合器においては、支持部14にマイクロストリップ線路13の両端部が貫通する貫通穴141,142が設けられ、出力部131,132は、支持部14の外側に配置されている。この構成によれば、支持部14によりクロス開口11から放射されたマイクロ波が支持部14及びプリント基板12の外側に漏洩することを防ぐ一方で、マイクロストリップ線路13が検出した信号のみを支持部14の外側に取り出すことができる。
また、本第1実施形態に係る方向性結合器において、出力部131,132は、支持部14の外側で検波回路15又は終端回路(図示せず)が接続されている。この構成によれば、検波回路15又は終端回路が、開口部から放射されたマイクロ波の輻射により誤動作することを抑制することができる。
また、本第1実施形態に係る方向性結合器において、検波回路15又は終端回路(図示せず)は、マイクロストリップ線路13と同じプリント基板12に設けられている。この構成によれば、プリント基板12の構成を単純化して信頼性を高く維持することができる。
また、本第1実施形態に係る方向性結合器において、第1及び第2伝送線路13a,13bは、平面視において管軸L1と略垂直な方向に延在するように設けられている。この構成によれば、導波管10内を双方向に伝送するマイクロ波の分離精度において、導波管10に接続される負荷のインピーダンスの影響を緩和し、マイクロ波の分離度を高く維持することができる。
また、本第1実施形態に係る方向性結合器において、第1伝送線路13aの一端部と第2伝送線路13bの一端部とは、平面視において管軸L1に対して略平行な第3伝送線路13cに接続されている。この構成によれば、導波管10内を双方向に伝送されるマイクロ波の分離度を高めることができるとともに、マイクロストリップ線路13の構造を定性化でき、実用構造の設計を容易にすることができる。
なお、第1〜第3伝送線路13a,13b,13cで囲まれる領域は、クロス開口領域11aより小さいことが好ましい。特に、図4に示すように、第1及び第2伝送線路13a,13bを開口中央部11cとクロス開口領域11aの端部(図4の左右の端部)の中ほどに配置し、第3伝送線路13cを開口中央部11cとクロス開口領域11aの端部(図4の上の端部)の中ほどに配置することが好ましい。この構成によれば、進行波と反射波とを精度よく分離して検出することができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、導波管11の壁面に設けられる開口部の形状を、2つの長孔11e,11fが交差するX形状としたが、本発明はこれに限定されない。導波管11の壁面に設けられる開口部の形状は、円偏波を放射できる形状であればよい。円偏波を放射できる形状である限り、導波管11の壁面に設けられる開口部は、平面視において導波管11の管軸L1に対して異なる角度で傾斜する2つ以上の長孔で構成されるものであってもよい。また、2つ以上の長孔の交差位置は、長孔の中心からずれていてもよい。例えば、前記開口部はL形状やT形状であってもよい。また、前記開口部は長孔を3つ以上組み合わせて構成されてもよい。なお、前記開口部の形状を2つの長孔が交差するX形状とする場合、当該2つの長孔の交差角度を30度にしても、円偏波を放射できることを確認している。但し、この場合、当該開口部から放射されるマイクロ波は、楕円状の円偏波となる。これに対して、2つの長孔をそれぞれの中央部で直交するように配置した場合には、ほぼ真円状の円偏波を放射することができる。この場合、電界の回転方向がより明確になり、進行波と反射波とを精度よく分離して検出することができる。
また、前記開口部は、図10に示すような円形状の開口部11Aであっても、多角形の開口部(図示せず)であってもよい。この場合、マイクロストリップ線路13は、平面視において円形状の開口部11Aをそれぞれ管軸L1に対して交差する方向に横切るとともに開口部11Aの開口中央部11Acを挟んで対向するように配置された第1及び第2伝送線路13Aa,13Abを備えるように構成されればよい。また、第1伝送線路13Aaと第2伝送線路13Abとは、開口部11Aの鉛直上方の領域から外れた位置で互いに接続されればよい。なお、結合点A及び結合点Bは、図11に示す位置に生じることになる。図11において、破線矢印は、それぞれの結合点A,Bを通って励起する磁界B5,B6を示している。
なお、上述したように、前記開口部は、円偏波を放射できる形状であればよい。円偏波を放射できる形状である限り、前記開口部は、平面視において導波管10の管軸L1に対して異なる角度に傾斜する2つ以上の長孔で構成されるものであってもよい。また、前記開口部は、複数の長孔を少しずつ角度を変えて重ねて構成される略円形状であってもよく、X形状の長孔11e,11fの4つの頂点(端部)を結んだ正方形であってもよい。また、前記開口部は、楕円形、長方形、台形、ハート型、星形などの種々の形状であってもよい。なお、前記開口部の形状を円形や四角形とした場合、X形状などの入りくんだ形状と比べて、前記開口部が変形しにくいという効果がある。
(第2実施形態)
次に、図11を用いて、本発明の第2実施形態に係るマイクロ波加熱装置について説明する。図11は、本発明の第2実施形態に係るマイクロ波加熱装置の構成図である。
次に、図11を用いて、本発明の第2実施形態に係るマイクロ波加熱装置について説明する。図11は、本発明の第2実施形態に係るマイクロ波加熱装置の構成図である。
図11において、本第2実施形態に係るマイクロ波加熱装置は、被加熱物を収納する加熱室100と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部101と、マイクロ波発生装置101が発生させるマイクロ波を伝送する導波管102と、導波管102内を伝送されるマイクロ波を加熱室100に放射させるマイクロ波放射部103とを備えている。マイクロ波発生部101とマイクロ波放射部103との間の導波管102の壁面(幅広面)には、前記第1実施形態に係る方向性結合器104が設けられている。
方向性結合器104は、マイクロ波発生部101からマイクロ波放射部103に向けて導波管102内を伝送される進行波に対応する検知信号104aと、マイクロ波放射部103からマイクロ波発生部101に向けて導波管102内を伝送される反射波に対応する検知信号104bとをそれぞれ検出し、制御部105に送る。
また、制御部105には、使用者がマイクロ波加熱装置の入力部(図示せず)に入力した加熱条件や、被加熱物の重量や蒸気量などを検知するセンサ(図示せず)の検知信号などの信号107が送られる。制御部105は、検知信号104a,104bと、信号107とに基づいて、駆動電源106と、モータ108とを制御し、加熱室100内に収納された被加熱物を加熱する。駆動電源106は、制御部105の制御により、マイクロ波発生部101にマイクロ波を発生させるための電力を供給する。また、モータ108は、制御部105の制御により、マイクロ波放射部103を回転駆動させるための動力を発生させる。
本第2実施形態に係るマイクロ波加熱装置によれば、方向性結合器104が、被加熱物の加熱に伴う被加熱物自身の物理的変化による反射波の量の時間的変化を検知することで、被加熱物の加熱進行状況を把握することができる。また、被加熱物内部の状態変化、被加熱物の種類及び量を把握することもできる。従って、本第2実施形態に係るマイクロ波加熱装置によれば、利便性の高いマイクロ波加熱装置を提供することができる。
本発明に係る方向性結合器は、装置の大型化を抑えつつ、高精度な寸法管理を不要とすることができるので、装置の大きさの制約がある民生用のマイクロ波利用機器(例えば、電子レンジ、オーブンレンジ)や、産業用のマイクロ波利用機器に用いられる方向性結合器に有用である。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
2013年1月31日に出願された日本国特許出願No.2013−016522号及び2013年8月6日に出願された日本国特許出願No.2013−163009号の明細書、図面、および特許請求の範囲の開示内容は、全体として参照されて本明細書の中に取り入れられるものである。
10,102 導波管
10a 幅広面
10d 磁界分布
11 クロス開口
11a クロス開口領域
11c 開口中央部
11d クロス開口の幅
11e,11f 長孔
11w クロス開口の長さ
12 プリント基板
12a プリント基板A面
12b プリント基板B面
13 マイクロストリップ線路
13a 第1伝送線路
13b 第2伝送線路
13c 第3伝送線路
13d,13e,13f 伝送線路
131,132 出力部
14 支持部
141,142 貫通穴
15 検波回路
18,19 検波出力部
100 加熱室
101 マイクロ波発生部
103 マイクロ波放射部
104 方向性結合器
L1 管軸
P1,P2 結合点
10a 幅広面
10d 磁界分布
11 クロス開口
11a クロス開口領域
11c 開口中央部
11d クロス開口の幅
11e,11f 長孔
11w クロス開口の長さ
12 プリント基板
12a プリント基板A面
12b プリント基板B面
13 マイクロストリップ線路
13a 第1伝送線路
13b 第2伝送線路
13c 第3伝送線路
13d,13e,13f 伝送線路
131,132 出力部
14 支持部
141,142 貫通穴
15 検波回路
18,19 検波出力部
100 加熱室
101 マイクロ波発生部
103 マイクロ波放射部
104 方向性結合器
L1 管軸
P1,P2 結合点
Claims (11)
- 導波管の壁面に設けられた開口部と、前記導波管の外側に設けられた結合線路と、を備える方向性結合器であって、
前記開口部は、平面視において前記導波管の管軸と交差しない位置に設けられるとともに、円偏波を放射するように形成され、
前記結合線路は、平面視において前記開口部をそれぞれ横切るとともに前記開口部の中央部を挟んで対向するように配置された第1及び第2伝送線路と、両端部に設けられた出力部と、を備え、
前記第1伝送線路と前記第2伝送線路とは、前記開口部の鉛直上方の領域から外れた位置で互いに接続されている、方向性結合器。 - プリント基板を更に備え、
前記結合線路は、前記プリント基板の前記開口部と対向する面に形成されている、請求項1に記載の方向性結合器。 - 前記開口部は、2つの長孔が交差するX形状に形成されている、請求項1又は2に記載の方向性結合器。
- 平面視において、前記開口部と前記第1伝送線路とが交差する結合領域の略中心に位置する第1結合点と、前記開口部と前記第2伝送線路とが交差する結合領域の略中心に位置する第2結合点との間の前記結合線路は、前記第1結合点で生じるマイクロ波と前記第2結合点で生じるマイクロ波とが、前記円偏波の回転方向に対応して、前記第1結合点又は前記第2結合点で同位相になるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性結合器。
- 前記プリント基板を前記導波管の外面上で支持するとともに、平面視において前記開口部を包囲するように配置された導電性を有する支持部を更に備え、
前記プリント基板の前記開口部に対向しない面には、マイクロ波反射部材が形成されている、請求項2に記載の方向性結合器。 - 前記支持部には、前記結合線路の両端部が貫通する貫通穴が設けられ、
前記出力部は、前記支持部の外側に配置される、請求項5に記載の方向性結合器。 - 前記出力部は、前記支持部の外側で検波回路又は終端回路に接続されている、請求項6に記載の方向性結合器。
- 前記検波回路又は前記終端回路は、前記プリント基板に設けられている、請求項7に記載の方向性結合器。
- 前記第1及び第2伝送線路は、平面視において前記管軸と略垂直な方向に延在している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方向性結合器。
- 前記第1伝送線路の一端部と第2伝送線路の一端部とは、平面視において前記管軸に対して略平行な第3伝送線路に接続されている、請求項9に記載の方向性結合器。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方向性結合器を備えるマイクロ波加熱装置。
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-
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