以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるマイクロ波加熱装置の一例である電子レンジの概略構成を示す断面図である。具体的には、図1は、電子レンジ1を正面側から見た断面図である。
以下の説明において、電子レンジ1の左右方向とは、図1における左右方向を意味する。また、電子レンジ1の前後方向とは、図1における紙面に垂直な方向で、装置の前面側と背面側を結ぶ方向を意味する。
図1に示すように、本実施の形態の電子レンジ1は、外郭で構成される加熱室空間2と、マグネトロン3と、導波管4と、放射アンテナ5と、載置台6などを備える。加熱室空間2は、載置台6の上側の空間を構成する加熱室2aと、載置台6の下側の空間を構成する給電室2bとで構成される。なお、マグネトロン3は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部の一例である。導波管4は、マグネトロン3で発生したマイクロ波を加熱室空間2に伝送する伝送部の一例である。また、放射アンテナ5は、導波管構造アンテナの一例である。
放射アンテナ5は、導波管4内のマイクロ波を加熱室空間2内に放射するように構成され、載置台6の下側の給電室2bの空間内部に設けられる。
載置台6は、加熱室空間2内に配置され、被加熱物21である食品を載置する、フラットな面を有する。載置台6は、放射アンテナ5が設けられる給電室2bの上方全体を覆うように配置される。これにより、載置台6は、放射アンテナ5が加熱室2a内に露出しないように給電室2bを塞ぐとともに、加熱室2aの底面を構成する。また、フラットな載置台6の上面(載置面)構成により、ユーザによる食品の出し入れや、載置台6に付着した汚れなどの拭き取りが、容易になる。
なお、載置台6は、マイクロ波が透過し易い、例えばガラスやセラミックスなどの材料が用いられる。これにより、載置台6の下側に載置される給電室2bの放射アンテナ5から放射されるマイクロ波を、載置台6の上側の加熱室2a内の空間に、確実に伝搬できる。
放射アンテナ5は、結合部7と、結合部7に接合される導波構造部8を有する。結合部7は、マグネトロン3から導波管4内に放射されるマイクロ波を、導波構造部8に引き出す。導波構造部8は、例えば箱形の導波管構造で構成され、結合部7により引き出されたマイクロ波を加熱室2a内に導く。
また、結合部7は、結合軸7aとフランジ7bとにより構成される。結合軸7aは、回転駆動部であるモータ15に接続される。導波構造部8は、後述する制御部17からの制御信号により、モータ15に接続された結合部7の結合軸7aを介して、回転制御される。すなわち、放射アンテナ5は、モータ15により、結合部7の結合軸7aを中心に回転駆動され、停止位置、回転期間、回転速度などが制御される。なお、結合部7は、例えばアルミメッキ鋼板などの金属で形成される。結合部7に接続されるモータ15の接続部分は、例えばフッ素樹脂などで形成される。
さらに、図1に示すように、結合部7の結合軸7aは、導波管4と給電室2bとを連通する開口2bbを貫通して配設される。このとき、結合軸7aは、貫通する開口2bbとの間でのスパークなどの危険を回避するために、貫通する開口2bbとの間に所定の間隔、例えば5mm以上の隙間を有する。これにより、結合軸7aは、導波管4からのマイクロ波を、放射アンテナ5の導波構造部8に、高い効率で導くことができる。つまり、十分な隙間が無い場合、もしスパークが発生すれば、放電のエネルギーに膨大な電力が費やされる。そのため、庫内に放射される電力が極端に低下し、被加熱物を加熱する効率が低下する。また、隙間が狭い場合、スパークが発生しないまでも、導体部分の損失が増えて発熱し、発熱のエネルギーに電力が費やされる。そのため、庫内に放射される電力が低下し、被加熱物を加熱する効率が低下する。そこで、本実施の形態では、5mmの隙間を設け、被加熱物を加熱する効率を高めている。なお、5mmの隙間は、例えば最大出力が1000W程度の、一般的なマイクロ波加熱装置である電子レンジの場合を想定して設定される。そのため、出力レベルが変われば、隙間の大きさが変化することはいうまでも無い。
また、放射アンテナ5の導波構造部8は、主として、マイクロ波を放射する、先端開放部13および複数の開口14a、14bを備える。先端開放部13は、所定の向きにマイクロ波を放射する。
つまり、本実施の形態の電子レンジ1は、モータ15に連結された放射アンテナ5の結合部7の回転により、放射アンテナ5から放射されるマイクロ波の放射方向(向き)が変更される。
また、図1に示すように、電子レンジ1は、加熱室2aの側面上方に赤外線センサ16を備える。赤外線センサ16は、加熱室2aを複数の領域に区分して、それぞれの領域の庫内温度を検出する。赤外線センサ16は、検出した検出信号(検出結果)を制御部17に送信する。
方向性結合器30は、導波管4に取り付けられ、本実施の形態では反射波検出部を構成する。方向性結合器30は、導波管4内を伝送するマイクロ波の入射波検出量および反射波検出量を検出し、検出した検知信号を制御部17に送信する。なお、入射波検出量は、マグネトロン3側から放射アンテナ5側に向けて伝送するマイクロ波の入射波(または、進行波)に対応する検知信号で検出される。一方、反射波検出量は、放射アンテナ5側からマグネトロン3側に戻るマイクロ波の反射波に対応する検知信号で検出される。
分量判定部31は、例えば制御部17内に配置され、方向性結合器30からの検出信号に基づいて、被加熱物21の分量を判定する。
制御部17は、上述した赤外線センサ16や方向性結合器30からの検知信号に基づいて、マグネトロン3の発振制御およびモータ15の回転制御などを行う。
ここで、本実施の形態では、制御部17は、分量判定部31の検知信号に基づいて、被加熱物21の加熱時間を制御する。具体的には、分量判定部31が被加熱物21の分量が少量と判断した時、制御部17は加熱時間を短くする。一方、分量判定部31が被加熱物21の分量が大量と判断した時、制御部17は加熱時間を長くする。これにより、分量判定部31で検知した被加熱物21の分量に基づいて、制御部17は最適な加熱時間で被加熱物21を加熱する。そして、加熱が完了すると、制御部17は、被加熱物21の加熱を自動で終了させる。つまり、被加熱物21の加熱処理の自動化を実現している。なお、制御部17は、分量判定部31の検知結果に基づいて、特に負荷(被加熱物21)が無いと判断した時は、即座に加熱を終了させるように制御する。これにより、無駄な加熱を防止している。
なお、図1には、載置台6の上方に載置皿としてグリル皿20を配置し、グリル皿20上に被加熱物21を載置した状態を示している。
この場合、グリル皿20は、加熱室2aの側壁2dで載置される。具体的には、加熱室2aの左右の側壁2dに形成された、前後方向に延びるレール(図示せず)上に、グリル皿20が載置される。これにより、グリル皿20は、加熱室2a内で、加熱室2aの底面を構成する載置台6よりも上方の位置に配置される。このとき、レールは、加熱室2aの左右の側壁2dにおいて、上下方向に複数段(例えば、上段、中段、下段)設けてもよい。これにより、グリル皿20を配置する高さの設定が、複数段で調整可能になる。
以上のように、本実施の形態のマイクロ波加熱装置の一例である電子レンジ1は構成される。
以下に、マイクロ波加熱装置の給電室2bの構成について、図2Aおよび図2Bを用いて、説明する。
図2Aは、放射アンテナ5が設けられた加熱室空間2の給電室2bを示す斜視図である。図2Bは、図2Aの給電室2bを示す平面図である。なお、図2Aは、載置台6を取り除いた加熱室空間2の底面部分を示している。
図2Aおよび図2Bに示す給電室2bは、上述したように加熱室2aの直下に配置され、載置台6(図1参照)により加熱室2aと区分けされる。
給電室2bには、放射アンテナ5が設けられる。放射アンテナ5は、結合軸7aの回転中心Gが、給電室2bの前後方向および左右方向のほぼ中心(中心を含む)の位置に配置される。すなわち、回転中心Gは、加熱室2aの底面となる載置台6の前後方向および左右方向の中心のほぼ直下(直下を含む)の位置に配置される。
給電空間は、給電室2bの底壁11と載置台6の下面により構成される。給電空間は、結合部7の回転中心Gを含む給電室2bの前後方向に延びる中心線J(図2B参照)に対して、対称な形状で形成される。
給電室2bは、底壁11から給電空間に向かって突出する突出部18a、18bを有する。具体的には、突出部18aは、底壁11から突出して左側の側壁2cに形成される。突出部18bは、底壁11から突出して右側の側壁2cに形成される。突出部18bの下方には、マグネトロン3が配設される。つまり、突出部18bは、マグネトロン3の配置スペースを確保する目的で設けられる。
これにより、マグネトロン3の出力端3a(図1参照)から放射されるマイクロ波は、給電室2bの直下に配設された導波管4内を伝送する。伝送されたマイクロ波は、放射アンテナ5の結合部7を介して、導波構造部8に導かれる。そして、マイクロ波は、放射アンテナ5の導波構造部8に形成される先端開放部13や開口14a、14bなどを介して、給電室2b内に放射される。
このとき、給電室2bの給電空間の側面を形成する側壁2cは、傾斜面で形成される。傾斜面は、斜め上方を向く斜面、すなわち加熱室2aに向かって外側に広がるように傾斜して形成される。側壁2cの傾斜面により、例えば放射アンテナ5の先端開放部13から水平方向に放射されるマイクロ波は、上方の加熱室2aに向けて反射される。
なお、給電室2bは、平面視において、概ね矩形形状で形成され、矩形形状の短辺側(図2Bでは左右側)に底壁11から突出した突出部18a、18bを備える側壁2cが形成される。給電室2bの4つの角は、給電室2bの隅部22a、22b、22c、22dに対応する。つまり、突出部18aは隅部22aと隅部22dの間に、突出部18bは給電室2bの隅部22bと隅部22cの間に形成される。
以上のように、電子レンジ1の給電室2bは構成される。
以下に、図3Aから図3Cを参照して、電子レンジ1のグリル皿20の構成について、説明する。
図3Aは、グリル皿20を上から見た平面図である。図3Bは、グリル皿20を横から見た側面図である。図3Cは、図3Aにおける3C−3C線断面図である。
図3Aから図3Cに示すように、グリル皿20は、例えば額縁状の周囲部20aと、プレート20cと、絶縁部20dなどで構成される。プレート20cは、周囲部20aの内側に形成され、複数の並行に形成された所定の深さの溝20b(なお、図3Cでは図示せず)を有する。絶縁部20dは、周囲部20aの下側に設けられる。
そして、後述するグリルモードにおいて、グリル皿20のプレート20c上に被加熱物21が載置されて、加熱室2a内に配置されて、被加熱物21が加熱される。具体的には、グリル皿20は、加熱室2aの左右の側壁2dに設けたレールと、絶縁部20dとを接触させて、加熱室2a内に配置される。
プレート20cは、裏面側(載置台6側)に、マイクロ波吸収発熱体20e(例えば、フェライト)を備える。なお、プレート20cの裏面は、グリル皿20の底面20fを構成する。
以上のように、グリル皿20は構成される。
つぎに、グリル皿20に載置される被加熱物21を加熱する、グリルモードにおけるマイクロ波の作用・効果について説明する。
まず、グリル皿20の周囲部20aとプレート20cは、マイクロ波を透過させない材料(例えば、鉄やアルミニウムなど)により形成される。一方、絶縁部20dは、マイクロ波を透過させる絶縁性の材料(例えば、PPS樹脂)により形成される。これにより、絶縁部20dは、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとを絶縁する。
そして、グリルモードでの加熱が開始されると、上記構成のグリル皿20の底面20fに、図1に矢印Eで示すように、放射アンテナ5から放射されたマイクロ波が到達する。到達したマイクロ波は、底面20fに設けられたマイクロ波吸収発熱体20eに吸収され、マイクロ波吸収発熱体20eが発熱する。発生した熱は、伝熱によりグリル皿20の底面20fを加熱する。これにより、グリル皿20のプレート20c上の被加熱物21は、マイクロ波によって、間接的に加熱される。
一方、上述したように、グリル皿20の周囲部20aやプレート20cは、マイクロ波を透過させない材料で構成している。そのため、被加熱物21は、グリル皿20の周囲部20aやプレート20cを介して、マイクロ波の透過によっては加熱されない。
しかし、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの間には、マイクロ波が透過可能な隙間が形成される。具体的には、加熱室2aの側壁2dに設けられたレールは、グリル皿20の絶縁部20dと接触して配置される。絶縁部20dは、マイクロ波を透過させるPPS樹脂などで形成されている。そのため、絶縁部20dを介して、グリル皿20と加熱室2aの左右の側壁2dの間から、マイクロ波の透過が可能となる。
また、グリル皿20の前方向には、加熱室2aの前面開口部に開閉自在な、例えばガラス板などからなる扉(図示せず)が設けられる。扉は、外側に電波遮蔽用のパンチングメタルなどからなる導体部と、内側には庫内の熱を逃がさず、かつ、汚れをふき取りやすくするためのガラス板などから構成される。そのため、放射アンテナ5から放射されたマイクロ波の一部は、グリル皿20の前方向のガラス板を透過してパンチングメタルで反射され、グリル皿20上方の加熱室2a内に放射される。
また、グリル皿20の後方向の加熱室2aの側壁2dには、例えば凹凸などが形成されている場合がある。この場合、凹凸の隙間からマイクロ波が、グリル皿20上方の加熱室2a内に放射される。
さらに、グリル皿20の周囲部20aの外周コーナー部20gは、図3Aに示すように、例えば円弧状に形成される。そのため、外周コーナー部20gと、四角形などで形成される加熱室2aの角部との間に、隙間が形成される。この隙間により、マイクロ波が、グリル皿20上方の加熱室2a内に放射される。
つまり、上記構成により、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの隙間などを介して、被加熱物21が配置されるグリル皿20の上方の加熱室2aの空間に、図1の矢印Fで示すマイクロ波が通過する流れが生じる。このマイクロ波の流れにより、被加熱物21が、直接的に、加熱される。
上述したように、図1に示す配置で被加熱物21を加熱するグリルモードにおいては、被加熱物21を間接的に加熱する矢印Eで示すマイクロ波の流れと、被加熱物21を直接的に加熱する矢印Fで示すマイクロ波の流れの、2つの流れが形成される。そのため、グリルモードでは、上記2つのマイクロ波の流れにより、被加熱物21全体が各方向から放射されるマイクロ波で加熱される。
以上のように、グリルモードにおいて、被加熱物21は、直接および間接的にマイクロ波により加熱される。
つぎに、上記のように構成される電子レンジ1を用いて、方向性結合器30からの検出信号に基づいて行う、被加熱物21の分量判定について、説明する。
なお、本実施の形態では、被加熱物21の分量判定は、本願発明者らが見出した方向性結合器30からの検出信号、特に反射波検出量に基づいて実行される。
つまり、本願発明者らは、被加熱物21の状態に応じて、より適切な加熱制御を行うために、鋭意検討を行った。特に、載置台6よりも上方に、被加熱物21を載置したグリル皿20を配置した状態で、グリル加熱を行うグリルモードの制御について、鋭意検討を行った。その結果、マイクロ波を放射する放射アンテナ5の向き(回転角度)で検知される方向性結合器30の反射波検出量で、被加熱物21の分量判定ができることを見出した。
図4は、図1から図3Cで説明した電子レンジ1の構成において、回転する放射アンテナ5の向き(回転角度)によって、方向性結合器30が検出する反射波検出量の特性を示す図である。
なお、図4の横軸は、放射アンテナ5の向き、すなわち先端開放部13の向き(回転角度)で表している。具体的には、電子レンジ1の扉と正対した時に、放射アンテナ5の先端開放部13が後ろ(扉側と反対側)に向く向き(角度)を、基準の0°として図示している。そのため、90°は右向き、180°は前向き、270°は左向きに相当する。
また、図4は、グリル皿20上に「負荷無し」状態における反射波検出量と、「負荷有り」状態における反射波検出量の二種類の特性を示している。なお、負荷は、被加熱物21などが相当する。
具体的には、「負荷有り」状態は、現在、被加熱物21が加熱中における反射波検出量の特性を示し、被加熱物21の分量によって特性が決まる。一方、「負荷無し」状態は、例えば電子レンジ1の開発段階、または出荷時において、予め被加熱物の無い状態で電子レンジ1を動作させた時の反射波検出量の特性を示している。なお、「負荷無し」状態の反射波検出量の特性は、制御部17の記憶部(図示せず)などに、予め記憶されている。
そして、記憶している「負荷無し」状態の特性と、加熱中の「負荷有り」状態の特性とを比較して、被加熱物21の分量を判定している。つまり、グリル皿20上に被加熱物21がある場合、被加熱物21は、放射されたマイクロ波を吸収する。そのため、反射波が減少し、方向性結合器30が検出する反射波検出量が低下する。
つまり、「負荷有り」状態の反射波検出量が、「負荷無し」状態より、どの程度少ないかによって、被加熱物21の分量を推定できる。
このとき、図4に示すように、特に注目すべきは、放射アンテナ5の向き(回転角度)が50°および310°のように、「負荷無し」状態と「負荷有り」状態の反射波検出量の差が大きい向きが生じることである。
反射波検出量の差が大きい向きにおいては、被加熱物21の分量が少ない場合でも、「負荷無し」状態と、「負荷有り」状態との反射波検出量の差を、容易に判別できる。
一方、反射波検出量の差が小さい向きにおいては、「負荷無し」状態と、「負荷有り」状態との反射波検出量の差が小さいため、判別し難い。そのため、反射波検出量の差が小さい向きでは、被加熱物21の分量を、細かく判別することが困難となる。
以下に、放射アンテナ5の向き50°、310°において、「負荷無し」状態と、「負荷有り」状態との反射波検出量の差が大きくなる要因について、図5を参照しながら考察する。
図5は、マイクロ波加熱装置を上から見たグリル皿20と加熱室2aとの隙間の関係を説明する図である。具体的には、図5は、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの位置関係を示す図である。
図5に示すように、加熱室2aは、後方に、凸部2hを備える。凸部2hは、加熱室2a内の後方へ押し込まれるグリル皿20と当接する。そのため、凸部2hは、グリル皿20のそれ以上の後方への押し込みを規制する。
また、加熱室2aの内壁コーナー部2gは、通常、ほぼ直角(直角を含む)の角形状で形成される。一方、グリル皿20の外周コーナー部20gは、通常、円弧状のR形状で形成される。そのため、加熱室2aの内壁コーナー部2gとグリル皿20の外周コーナー部20gにより、加熱室2aの後方側に隙間32が形成される。
また、加熱室2aの前方(扉側)には、加熱室2aの後方側と同様に、加熱室2aの内壁コーナー部2gとグリル皿20の外周コーナー部20gにより、隙間33が形成される。しかし、加熱室2aの前方側には、後方に設けた凸部2hなどの出っ張りを設けていない。そのため、前方の隙間33は、後方の隙間32よりも小さい。
なお、後方側に設けた凸部2hは、加熱室2aの後方にコンベクションファン(図示せず)を配置するために設けられる。
また、加熱室2aとグリル皿20は、通常、左右方向に、横長の形状で形成される。そのため、本実施の形態のマイクロ波加熱装置の場合、上記形状などにより、図5に示すように、後方の隙間32が最も広くなる位置は、放射アンテナ5の向き(回転角度)の、50°と310°(45°や315°よりも外側)に対応する。一方、前方の隙間33が最も広くなる位置は、放射アンテナ5の向き(回転角度)の130°と230°(50°や310°とは異なる向き)に対応する。
放射アンテナ5の向き50°、310°は、図4に示すように、「負荷無し」状態と「負荷有り」状態と反射波検出量との差が最も大きい場合に相当する。また、放射アンテナ5の向き130°と230°は、放射アンテナ5の向き50°、310°における反射波検出量との差に、次ぐ大きさの差がある。
上記結果から、放射アンテナ5の向きが、加熱室2aとグリル皿20の間の隙間32、33が広い方向に向くと、「負荷無し」状態と「負荷有り」状態との反射波検出量の差が大きくなると推察できる。この理由は、まず、放射アンテナ5の向きが隙間方向に向くと、隙間を介して、隙間の大きさに応じた量のマイクロ波が、グリル皿20の上側に回りこむ。そして、グリル皿20の上側に回りこんだマイクロ波は、被加熱物21に放射され、被加熱物21に吸収される。そのため、方向性結合器30の反射波検出部に入射し、検出される反射波が減る。つまり、放射アンテナ5が向く方向の隙間の大きさによって、「負荷無し」状態と「負荷有り」状態との反射波検出量の差が増減する。
以上で説明したように、放射アンテナ5の向き50°、310°において、「負荷無し」状態と「負荷有り」状態との反射波検出量の差が大きくなる要因を考察すれば、図4で得られた結果と、整合する。つまり、図4で得られた、「負荷無し」状態と「負荷有り」状態との反射波検出量の差が大きくなる要因は、図5に示した放射アンテナ5が向く方向の隙間の大きさと関連付けることができる。
つぎに、上記結果を踏まえて、反射波検出量から食品などの被加熱物21の分量を推定する一例について、図6を参照しながら、説明する。
図6は、同実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の食品の分量による反射波検出量の特性を示す図である。
図6から、反射波検出量が大きいほど食品の分量が小さく、反射波検出量が小さいほど食品(被加熱物21)の分量が大きい傾向があることが判る。
そこで、制御部17は、以下のように食品などの被加熱物21を加熱制御する。
まず、制御部17の分量判定部31は、方向性結合器30の反射波検出部で検出した反射波検出量から被加熱物21の分量を判定する。このとき、被加熱物21の分量が大きければ、制御部17は、被加熱物21を長時間加熱するように制御する。一方、被加熱物21の分量が小さければ、制御部17は、被加熱物の加熱時間を短くするように制御する。
また、被加熱物21が無いと判定したら、制御部17は、即座に加熱終了させるように制御する。これにより、電子レンジ1の省エネ性や安全性を確保できる。
以上、本実施の形態によれば、電子レンジ1は、被加熱物21を収納する加熱室2aと、加熱室2aに供給するマイクロ波を発生させるマイクロ波発生部3と、マイクロ波発生部であるマグネトロン3が発生させたマイクロ波を加熱室空間2に伝送する導波管4を備える。さらに、電子レンジ1は、導波管4内の反射波の少なくとも一部を検出する反射波検出部30と、反射波検出部30が検出した反射波検出量により、被加熱物21の分量を判定する分量判定部31と、分量判定部31で判定した分量に基づいてマグネトロン3を制御する制御部17を備える構成としている。
この構成によれば、電子レンジ1は、導波管4内の反射波の少なくとも一部を検出する反射波検出部30を有する。このとき、マイクロ波を吸収する被加熱物21が無い場合、反射波は大きくなる。一方、被加熱物21が有る場合、被加熱物21がマイクロ波を吸収するため、反射波は小さくなる。さらに、被加熱物21の分量が増えれば増えるほど、ますますマイクロ波は被加熱物21に吸収されるので、反射波が小さくなる。つまり、反射波検出部30が検出する反射波検出量に基づいて、分量判定部31で、被加熱物21の荷重を検出できる。これにより、荷重を検出する検出部を用いずに、被加熱物21の分量を判定できる。その結果、判定した分量に基づいて、被加熱物21を効率よく加熱できる。
また、本実施の形態によれば、電子レンジ1の分量判定部31は、加熱中に反射波検出部30が検出した反射波検出量と、被加熱物が無い時に反射波検出部30が検出した反射波検出量とを比較して、被加熱物21の分量を判定してもよい。これにより、分量判定部31は、被加熱物21が無い時の反射波検出量を基準として、加熱中の反射波検出量との差に基づいて、精度よく被加熱物21の分量を判定できる。
また、本実施の形態によれば、電子レンジ1は、導波管4を伝送するマイクロ波を加熱室空間2に放射させる放射アンテナ5と、放射アンテナ5を回転させるモータ15を備える。制御部17は、分量判定部31で判定した分量に基づいてマグネトロン3の出力、およびモータ15の駆動の制御により放射アンテナ5の向きを制御する構成を有する。このとき、分量判定部31は、加熱中に反射波検出部30が検出した反射波検出量と、被加熱物21が無い時に反射波検出部30が検出する反射波検出量とを比較し、比較した反射波検出量の差が最も大きくなる放射アンテナ5の向きで被加熱物21の分量を判定してもよい。これにより、被加熱物21の分量判定の分解能が向上する。その結果、精度よく被加熱物21の分量を判定して、被加熱物21を適切に加熱できる。
また、本実施の形態によれば、電子レンジ1の分量判定部31は、加熱中に反射波検出部30が検出した反射波検出量と、被加熱物21が無い時に反射波検出部30が検出した反射波検出量とを比較する。そして、分量判定部31は、比較した反射波検出量の差が最も大きくなる放射アンテナ5の向きと、異なる向きでの反射波検出量の差に基づいて、被加熱物21の分量を判定してもよい。
一般的に、電子レンジ1を大量生産する場合、例えば放射アンテナ5の結合軸7aの偏心、加熱室2aやグリル皿20の形状のばらつきによる隙間の変化などにより、個体差が生じる。そのため、個々の電子レンジ1において、放射アンテナ5の向きに対する反射波検出量に多少のばらつきが発生する。そこで、差が最も大きくなる放射アンテナ5の向きの反射波検出量と、異なる向きの反射波検出量との平均値で、被加熱物21の分量を判定する。これにより、個体差による反射波検出量のばらつきを吸収して、より精度よく被加熱物21の分量を判定できる。具体的には、図4および図5で説明したように、反射波検出量が少ない50°310°と、異なる向き130°230°の反射波検出量との平均値などにより、求めることができる。
また、本実施の形態によれば、加熱室空間2を上下に分割するように加熱室2a内に係止され、被加熱物21を載置するとともに、裏面にマイクロ波を吸収するマイクロ波吸収発熱体20eを有するグリル皿20を、さらに備える。グリル皿20の外周コーナー部20gは、対応する加熱室2aの内壁コーナー部2gとの間に隙間32、33を形成するように、内壁コーナー部2gよりも大きいR形状で形成される。そして、制御部17は、放射アンテナ5の向きを隙間32、33に向くように制御し、分量判定部31は、放射アンテナ5の向きで反射波検出量に基づいて、被加熱物21の分量を判定してもよい。
この構成によれば、放射アンテナ5が隙間32、33を向く向きにおいては、それ以外の向きに向く場合と比べて、放射アンテナ5から放射されたマイクロ波が隙間32、33を介してグリル皿20の上面側に回り込み易くなる。そのため、被加熱物21に当たるマイクロ波の割合が多くなる。これにより、被加熱物21の分量の違い(差)による反射波検出量の変化量も大きくなる。その結果、分量判定部31は、精度よく被加熱物21の分量を判定できる。
(実施の形態2)
以下に、本発明の実施の形態2におけるマイクロ波加熱装置について、図7を用いて、説明する。
図7は、本発明の実施の形態2におけるマイクロ波加熱装置である電子レンジ1の放射アンテナ5の向きによる反射波検出量の特性を示す図である。
図7に示すように、本実施の形態の電子レンジ1は、被加熱物21の「最大負荷」の特性、つまり所定の最大分量時における反射波検出量をさらに考慮して、加熱制御する点で実施の形態1と異なる。なお、電子レンジ1の基本的な構成は、実施の形態1の電子レンジと同じである。そのため、実施の形態1と同じ構成要素については同じ符号を付与し、詳細な説明を省略する。
つまり、本実施の形態の電子レンジ1は、開発段階、または出荷時において、予め被加熱物21が所定の最大分量で電子レンジ1を動作させた時の「最大負荷」状態の反射波検出量の特性を計測する。そして、「最大負荷」状態の反射波検出量の特性を、制御部17の記憶部(図示せず)に記憶させる。
このとき、実施の形態1で説明したように、制御部17の記憶部には、被加熱物21の無い状態で電子レンジ1を動作させた時の反射波検出量の特性が、予め記憶されている。
具体的には、本実施の形態の電子レンジ1は、まず、被加熱物21の加熱中における「負荷有り」状態の反射波検出量の特性を方向性結合器30の反射波検知部で検出する。
つぎに、制御部17の分量判定部31は、検出された「負荷有り」状態の反射波検出量と、予め記憶させている「負荷無し」状態および「最大負荷」状態の反射波検出量の特性とを比較する。
つぎに、比較した結果、加熱中の「負荷有り」状態の特性が、「負荷無し」状態および「最大負荷」状態の特性のどの位置の反射波検出量に相当するかを、分量判定部31で判定する。これにより、判定された、現在、加熱中の被加熱物21の分量に基づいて、制御部17は、被加熱物21の加熱を制御する。
以上、本実施の形態によれば、分量判定部31は、被加熱物21の加熱中に反射波検出部30が検出する反射波検出量と、被加熱物21が無い時に反射波検出部30が検出する反射波検出量と、被加熱物21が所定の最大分量の時に反射波検出部30が検出する反射波検出量と、を比較する。そして、分量判定部31は、比較した結果に基づいて、被加熱物21の分量を判定する。
これにより、被加熱物21の加熱中における反射波検出量が、被加熱物21が無い時の反射波検出量と最大分量の時の反射波検出量との間のどちらの値に近いかを判断できる、その結果、被加熱物21の加熱中における反射波検出量と、被加熱物21が無い時の反射波検出量と、を比較する場合と比べて、被加熱物21の分量の判定精度をさらに向上できる。
(実施の形態3)
以下に、本発明の実施の形態3におけるマイクロ波加熱装置について、図8を用いて、説明する。
図8は、本発明の実施の形態3のマイクロ波加熱装置である電子レンジ1の概略構成を示す図である。なお、図8は、電子レンジ1を正面側から見た斜視図である。
図8に示すように、本実施の形態の電子レンジ1は、グリル皿を用いずに、載置台6に、直接、被加熱物21を載置して、例えば「あたためモード」で加熱する点で、実施の形態1および実施の形態2とは異なる。なお、電子レンジ1の基本的な構成は、実施の形態1の電子レンジと同じである。そのため、実施の形態1と同じ構成要素については同じ符号を付与し、詳細な説明を省略する。
つまり、本実施の形態の電子レンジ1は、例えば直径150mm程度の容器に入った食品などの大き目の被加熱物21を載置台6に、直接、置いて、マグネトロン3から放射されるマイクロ波であたためる「あたためモード」で加熱する構成である。
一般的に、「あたためモード」の場合、上述の「グリルモード」と比較して、被加熱物21が無いときの反射波検出量が格段に大きくなる。
なぜならば、まず、「グリルモード」における被加熱物21が無い状態は、被加熱物21は無くても、グリル皿20が有る状態を意味する。この場合、上述したようにグリル皿20の裏面には、マイクロ波吸収発熱体20eが設けられている。そのため、被加熱物21が無い状態でも、マイクロ波吸収発熱体20eがマイクロ波を一定程度、吸収する。その結果、「グリルモード」の場合、マイクロ波の反射が少ない状態となる。
一方、本実施の形態の「あたためモード」の場合、マイクロ波吸収発熱体20eを有するグリル皿20が無いため、被加熱物21が無い時の反射波検出量が格段に大きくなる。
つまり、被加熱物21が有る時と無い時の反射波検出量の差も大きくなる。その結果、「あたためモード」のほうが、分量判定部31は、反射波検出量を用いて被加熱物21の分量を、より判定しやすくなる。
なお、上記各実施の形態では、放射アンテナ5を回転させながら、被加熱物21の分量を判定する構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、分量を判定する向きで放射アンテナ5を、所定時間停止させる構成としてもよい。この場合、放射アンテナ5を一定の速度で回転させる場合と比べて、放射アンテナ5が所望の向きに向く時間を長くする。これにより、被加熱物21の分量の判定精度が、さらに向上する。また、放射アンテナ5を完全に停止させずに、回転中において、所定の向きにおける放射アンテナ5の回転速度を減速させて時間を長くしてもよい。さらに、所定の向きを基準として、狭い角度範囲で、放射アンテナ5を正転・反転駆動して、時間を長くする構成としてよい。
また、上記各実施の形態では、放射アンテナ5の停止角度が、例えば50°のように、丁度の角度である場合を例で説明したが、これに限られない。例えば、放射アンテナ5の停止角度が、回転の移動平均などの平均化処理により、50から±10°くらいずれて、放射アンテナ5を停止してもよい。この理由は、通常、モータ15と放射アンテナ5の嵌合状態には、ガタ(遊び)がある。特に、モータ15がステッピングモータの場合、右回転も左回転も可能である。そのため、制御部17が、放射アンテナ5を所定の角度で停止させるように制御しても、回転方向とガタの大きさにより、10°くらいは簡単にずれる可能性があるためである。
また、上記各実施の形態では、方向性結合器30を反射波検出部として用いる構成を例に説明したが、これに限られない。方向性結合器30は、反射波だけでなく、入射波の検出も可能である。そこで、方向性結合器30で検出する入射波と反射波の差から被加熱物21の吸収エネルギーを算出して、算出した値から被加熱物21の分量を判定する構成としてもよい。
また、上記各実施の形態では、赤外線センサ16の制御などについては、特に言及しなかったが、反射波検出部に加えて、赤外線センサ16で検知した情報(被加熱物21の温度)に基づいて、被加熱物21の分量を判定してもよい。つまり、被加熱物21の温度は、冷凍の場合と常温の場合で誘電率が異なる。そのため、被加熱物21の状態により、マイクロ波の吸収のし易さが変わる虞がある。そこで、まず、赤外線センサ16で被加熱物21の温度を検出する。そして、検出した温度に基づいて、被加熱物21の分量を判定してもよい。この場合、分量判定部31は、赤外線センサ16と反射波検出部の両方を含む分量判定のシーケンスに切り替えて、判定するように構成すればよい。
具体的には、分量判定部31は、被加熱物21が冷凍の場合の分量判定のシーケンスAと、被加熱物21が常温の場合の分量判定のシーケンスBを有する。そして、赤外線センサ16で検出した被加熱物21の温度に基づいて、シーケンスAまたはシーケンスBのどちらで判定するかを切り替えて、被加熱物21の分量を判定する。この場合、一般に、冷凍の被加熱物21は、マイクロ波を吸収しにくいので反射波検出量が多くなる。一方、常温の被加熱物21は、マイクロ波を吸収しやすいので反射波検出量が少なくなる。例えば、図6の特性を常温の被加熱物21の特性Cとした場合、冷凍の被加熱物21の特性Dは図6のカーブよりも反射波検出量が多い特性となる。そこで、赤外線センサ16で検出した被加熱物21の温度に基づいて、特性Cに対応するように設計されたシーケンスAと、特性D(図示せず)に対応するように設計されたシーケンスBのどちらかを選択して、被加熱物21の分量を判定すればよい。これにより、被加熱物21の分量判定の精度を、さらに向上させることができる。
また、上記各実施の形態では、被加熱物21が無い時の反射波検出量を、予め測定し、記憶させる構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、製品購入直後に、使用者が被加熱物21の無い状態または無負荷に近い状態で、低出力で電子レンジ1を動作させて、反射波検出量を記憶させる構成としてもよい。具体的には、例えば、最大出力1000Wの機種の場合であれば、300W動作で反射波検出量を確認し、その結果を1000/300倍するなどして反射波検出量を記憶させてもよい。また、例えば水10cc程度の無負荷に近い微小な負荷を基準に、反射波検出量を記憶させる構成としてもよい。
[方向性結合器の詳細説明]
以下に、上記各実施の形態に関わる方向性結合器の構成および動作について、図9から図12を用いて、詳細に説明する。
上述したように、方向性結合器は、導波管4内を伝播するマイクロ波の反射波の少なくとも一部を検出する反射波検出部と、導波管4内の入射波(または進行波とも言う)の少なくとも一部を検出する入射波検出部とを有する。
図9は、方向性結合器の斜視図である。図10は、図9に示す方向性結合器のプリント基板を透視して示す斜視図である。図11は、図9の方向性結合器の導波管に設けたクロス開口の構成図である。図12は、図9の方向性結合器のプリント基板の回路構成図である。
図9から図12に示すように、方向性結合器30は、導波管40の幅広面40aに設けられたX形状のクロス開口41と、プリント基板42上に形成されるマイクロストリップ線路43と、支持部44などで構成される。プリント基板42は、クロス開口41に対向し、導波管40の外側に設けられる。マイクロストリップ線路43は、クロス開口領域41a(図11参照)に対面する領域のプリント基板42上に、後述する所定の線路形状で構成される。なお、クロス開口領域41aは、プリント基板42のクロス開口41に対面する面において、プリント基板42からクロス開口41を鳥瞰したときに、クロス開口41の開口が存在する領域である。
支持部44は、導波管40の幅広面40a側の外面上に、プリント基板42を支持固定する。支持部44は、導電材料で構成され、導波管40のクロス開口41から放射されるマイクロ波を内部に閉じ込め、外部への放射を遮蔽する。
クロス開口41は、開口中央部41cを基点に、例えばX字形状の開口で構成される。クロス開口41は、図11に示すように、導波管40の幅広面40aにおいて、導波管40の管軸L1と交差しない位置に設けられる。クロス開口41の開口中央部41cは、導波管40の管軸L1から寸法D1だけ外れた位置に設けられる。寸法D1は、例えば導波管40の幅寸法の1/4の寸法である。
クロス開口41の開口形状は、導波管40の幅寸法と高さ寸法、導波管40を伝送させるマイクロ波の電力レベルや周波数帯域、クロス開口41から放射させる電力レベルなどの条件に基づいて決定される。例えば、導波管40の幅寸法が100mm、高さ寸法が30mm、導波管40の壁面の厚さが0.6mm、導波管40を伝送させるマイクロ波の最大電力レベルが1000W、周波数帯域が2450MHz、クロス開口41から放射させる最大電力レベルが約10mWの場合、クロス開口41の長さ41wと幅41dは、長さが20mm、幅が2mm程度で構成すればよい。
図11では、X字形状のクロス開口41の交差角度が約90度の構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、交差角度は、60度や120度としてもよい。
なお、クロス開口41の開口中央部41cを導波管40の管軸L1上に一致させて配置すると、電界は回転せずに伝送方向に往復する。そのため、クロス開口41から直線偏波が放射される。
一方、開口中央部41cが管軸L1からずらして配置すれば、電界は回転する。ただし、開口中央部41cが管軸L1に近ければ近いほど(D1が0mmに近づくにつれて)、電界の回転が、いびつになる。この場合、クロス開口41から楕円状の円偏波(楕円偏波という)が放射されることとなる。
そこで、本実施の形態では、寸法D1を導波管40の幅寸法の1/4程度に設定している。これにより、電界の回転は、ほぼ真円状(真円状を含む)になる。そのため、クロス開口41からほぼ真円状に回転する円偏波が放射される。これにより、電界の回転方向がより明確になるため、導波管40を伝送する進行波と反射波とを精度よく分離できる。その結果、方向性結合器30は、進行波と反射波とを精度よく検出できる。
プリント基板42は、クロス開口41と対面しないプリント基板A面42aの全面に、例えば銅箔などを貼り合わせてマイクロ波反射部材が形成される。これにより、クロス開口41から放射される円偏波のプリント基板42への透過を防止している。
一方、プリント基板42は、クロス開口41に対面するプリント基板B面42bに、図12に示すようなマイクロストリップ線路43を設けている。マイクロストリップ線路43は、例えば特性インピーダンスが略50オーム(50オームを含む)の伝送線路で構成される。マイクロストリップ線路43は、プリント基板42からクロス開口41側を鳥瞰した平面視において、クロス開口41の開口中央部41cを取り囲むように配置される。これにより、クロス開口41の開口中央部41cは、鳥瞰的に、マイクロストリップ線路43の線路内部に包含される。
具体的には、マイクロストリップ線路43は、少なくとも導波管40の管軸L1に略垂直(垂直を含む)に配置される第1線路43aと第2線路43bを備える。第1線路43aと第2線路43bは、平面視において、クロス開口41が存在するクロス開口領域41aに対向し、クロス開口41の開口中央部41cの両側に配置されている。
第1線路43aおよび第2線路43bの一端は、導波管40の管軸L1に略平行(並行を含む)に配置される第3線路43cに接続される。第1線路43aおよび第2線路43bと、第3線路43cは、クロス開口41の開口中央部41cを取り囲むように配置される。第1線路43aおよび第2線路43bのそれぞれの他端は、管軸L1に略平行(平行を含む)に配置される線路43dおよび線路43eの一端に接続され、クロス開口領域41aの外側まで延設される。
さらに、線路43dおよび線路43eの他端からマイクロストリップ線路43の出力部131、132に至る線路は、出力部の配設位置に応じて、適切なマイクロストリップ線路43を介して配置される。このとき、出力部131、132は、支持部44の外側に配置される。
マイクロストリップ線路43の両端の出力部131、132は、検波回路45と接続される。検波回路45は、検出したマイクロ波レベルを制御信号として取り扱うための処理回路を構成する。
検波回路45は、図12に示すように、チップ抵抗46、ショットキーダイオード47などで構成される。出力部131のマイクロ波信号は、検波回路45を経て整流される。整流されたマイクロ波信号は、例えばチップ抵抗、チップコンデンサなどで構成される平滑回路を経て直流電圧に変換される。変換された直流電圧は、検波出力部48に出力される。出力部132のマイクロ波信号も、上記と同様の回路を経て、変換された直流電圧が検波出力部49に出力される。
また、クロス開口41に対面するプリント基板B面42bにおいて、プリント基板取付用穴50a、50b、50c、50dの周辺部およびピンフォール51a、51bの周辺部には、グランド面となる銅箔が形成される。銅箔が形成される領域は、プリント基板42のクロス開口41に対面しないプリント基板A面42aと同電位となる。
プリント基板42は、プリント基板取付用穴50a、50b、50c、50dを通じて、支持部44にネジ201a、201b、201c、201dにより組立固定される。支持部44のフランジ面44aには、図10に示すように、ネジ201a、201b、201c、201dを組立固定する、突出しネジ部202a、202b、202c、202dが設けられている。
さらに、支持部44は、図10に示すように、取出し部141、142を備える。取出し部141、142は、マイクロストリップ線路43を伝送するマイクロ波を、支持部44の外部に配置させた出力部131、132に、マイクロ波信号を伝送させて取り出す。なお、取出し部141、142は、プリント基板42を支持部44にネジ組立する支持部44のフランジ面44aを、例えばプリント基板42と反対側に凸絞りして形成される。これにより、マイクロストリップ線路43を伝送するマイクロ波が、支持部44で阻害されない構成としている。
また、図9および図10には、図12に示した検波出力部48、49に実装されるコネクタ部48a、49aを図示している。
なお、上記では、図9から図12で説明した方向性結合器で、導波管40内を双方向に伝送するマイクロ波を検出する構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、導波管40内を伝送するマイクロ波の、いずれか1つの方向のみを検出するように方向性結合器を構成してもよい。この構成の場合、図12に示す検波回路45を終端回路(図示せず)に置換することで実現できる。なお、終端回路は、抵抗値50オームのチップ抵抗で構成すればよい。
つぎに、上記のように構成される方向性結合器の動作および作用について、説明する。
まず、導波管40内を伝送するマイクロ波の電力量に対する、X字形状のクロス開口41から放射されるマイクロ波の電力量の比は、導波管形状とクロス開口の形状寸法によって決定される。具体的には、上述した寸法形状の場合、電力量の比は、約1/100000(約−50dB)である。
ここで、図9から図12に示す矢印Hは、伝送されるマイクロ波の入射波(または、進行波、以下、進行波60と称する)を示す。矢印Iは、反射波(以下、反射波61と称する)を示す。この場合、進行波60は、上述したように、導波管40内の伝送する際、クロス開口41を形成する長さ41w方向の2つの開口で順次励起される。そして、クロス開口41から放射されるマイクロ波は、反時計回りに回転放射62(図11参照)する円偏波となって、導波管40の外側に放射される。一方、反射波61は、時計回りに回転放射する円偏波となって、導波管40の外側に放射される。
回転放射された円偏波のマイクロ波は、クロス開口41と対面するマイクロストリップ線路43に結合する。このとき、矢印Hの方向に伝送される進行波60によりクロス開口41から放射されるマイクロ波は、マイクロストリップ線路43の出力部131、132に出力される。しかし、進行波60によるマイクロ波の大部分は、出力部131に出力させる必要がある。一方、矢印Iの方向に伝送される反射波61によりクロス開口41から放射されるマイクロ波は、マイクロストリップ線路43の出力部131、132に出力される。しかし、反射波61によるマイクロ波の大部分は、出力部132に出力させる必要がある。
そのため、マイクロ波の伝送方向に対して、所定の出力部に出力させるには、クロス開口41と対面させるマイクロストリップ線路43の構造が重要となる。
本願発明者らは、クロス開口41と対面させるマイクロストリップ線路43の相対位置を鋭意検討した。その結果、プリント基板42からクロス開口41側を鳥瞰した時に、クロス開口41の開口中央部41cを取り囲むようにマイクロストリップ線路43を配置する構成で実現可能なことを見出した。
そこで、本実施の形態では、開口中央部41cを取り囲むマイクロストリップ線路43で構成した。具体的には、マイクロストリップ線路43は、導波管40の管軸L1に略垂直(垂直を含む)な第1線路43a、第2線路43bと、第1線路43a、第2線路43bのそれぞれの一端を接続する導波管40の管軸L1に略平行(平行を含む)な第3線路43cで構成した。また、第1線路43a、第2線路43bは、図12に示すように、クロス開口41を形成する長さ41w方向の2つの開口のそれぞれに対面する(横切る)長さとした。さらに、第3線路43cは、クロス開口41の開口と対面しないように構成した。
上記マイクロストリップ線路43の構成により、進行波60によりクロス開口41から放射されるマイクロ波の大部分は、マイクロストリップ線路43の出力部131に出力された。一方、反射波61によりクロス開口41から放射されるマイクロ波の大部分は、マイクロストリップ線路43の出力部132に出力された。
また、導波管40を使用し、マイクロ波の進行波60と反射波61とが反対方向に伝送される環境下においても、所定の出力部に大部分を出力させる上記方法を通用させる必要がある。そのため、クロス開口41の開口中央部41cを取り囲む、マイクロストリップ線路43の配置に、対称性を持たせる必要がある。そこで、本実施の形態では、マイクロストリップ線路43の第1線路43a、第2線路43bを、開口中央部41cから略等距離(等距離を含む)に配置している。
以上の構成により、方向性結合器で検出する進行波60と反射波61との検出分離度を向上させることができる。
さらに、導波管40内において進行波60と反射波61とが互いに反対方向に伝送される場合、導波管40内に定在波が発生する。定在波は、進行波60と反射波61との検出分離度を低下させる場合がある。
そこで、本願発明者らは、定在波の影響を抑制するために、マイクロストリップ線路43の第1線路43aと第2線路43bとの間隔43gについて検討した。その結果について、図13から図15を用いて説明する。
このとき、上述したクロス開口41、マイクロストリップ線路43、導波管40などの形状寸法、マイクロ波の周波数帯域および方向性結合器の検出電力比の条件において、検討した。
図13は、第1線路43aと第2線路43bとの間隔43gを4mmとした場合の方向性結合器30における反射波検出部の出力特性を示す極座標図である。図14は、第1線路43aと第2線路43bとの間隔43gを2mmとした場合の方向性結合器30における反射波検出部の出力特性を示す極座標図である。図15は、図13の条件における方向性結合器30の進行波検出部の出力特性を示す極座標図である。
なお、図13およぶ図14の極座標図は、以下の構成および条件で得られた。
具体的には、上述したように、導波管40の幅100mm、高さ30mm、壁面の厚さ0.6mm、クロス開口41の長さ41w 20mm、幅41d 2mmの形状を用いて、特性を評価した。
まず、上記構成の導波管40の一端にマイクロ波入力端、導波管40の他端に反射波61のレベルおよび位相を変化できる負荷を接続する。そして、導波管40の一端のマイクロ波入力端からマイクロ波信号を入力する。
つぎに、導波管40の他端に接続した負荷を調整しながら、反射波61のレベルおよび位相を変化させて、マイクロストリップ線路43の出力部131(進行波検知)、132(反射波検知)が検出するマイクロ波の電力量を、ネットワークアナライザを用いて測定する。このとき、出力部131が検出するマイクロ波(進行波)の電力量をS21とする。一方、出力部132が検出するマイクロ波(反射波)の電力量をS31とする。
つぎに、(S31−S21)を計算して、スミスチャートの極座標表示上に展開する。これにより、図13および図14に示す極座標図が得られる。
なお、図13および図14に示す基準面80は、負荷の入力端を基準として示し、進行波60のすべてが完全反射し、位相が180度変化する面である。
また、極座標表示の中心は、反射波61の電力量S31が零(ゼロ)であることを示す。一方、極座標表示の最外郭である円周は、進行波60のすべてが反射波61になることを示す。すなわち、極座標表示の中心から最外郭である円周に近づくほど、反射波61の電力量S31が増すことになる。したがって、反射波61の電力量S31から進行波60の電力量S21を差分した値(S31−S21)は、小さくなる。なお、図13および図14はdBで表記しているので、マイナス数値は小さくなる。
また、極座標表示の円周方向は、位相と関連し、方向性結合器30を配置した位置における反射波61の位相を示している。但し、図13および図14は、負荷の入力面を基準面としているので、位相は相対表示となる。つまり、極座標表示における同一円周上では、反射波61の位相は異なるが、反射波61の電力量(電力レベル)は同じである。したがって、反射波61の電力量S31から進行波60の電力量S21を差分した値(S31−S21)を極座標上に展開した場合、その等高線は、同心状になるのが理想特性である。
そこで、上記観点から、図13および図14の特性を分析した。
その結果、図13に示すように、第1線路43aおよび第2線路43bとの間隔43gが4mmの場合、等高線(太線)がほぼ同心状の特性が得られた。
一方、図14に示すように、間隔43gが2mmの場合、等高線(太線)が極座標表示の中心から偏心した特性が得られた。
なお、図示していないが、間隔43gを8mmにした場合、間隔43gが2mmの場合と、ほぼ同様の特性になることを確認している。
上述した関係から、導波管40の寸法や、クロス開口41の寸法などに応じて、間隔43gを適切に設定することにより、定在波の発生を抑制できることが判った。
以下、上記現象(間隔43gを適切に設定することにより、定在波の発生を抑制できること)について、推察する。
一般的に、クロス開口41から回転放射するマイクロ波の伝搬方向は、導波管40内の伝送方向に対して、クロス開口41から上向きに略50度であることが知られている。そのため、第1線路43aおよび第2線路43bを、略50度で回転放射する位置に配置することにより、定在波の発生を抑制できると推察される。
つまり、上述の第1線路43aおよび第2線路43bとの間隔43g、および導波管40の幅広面40aとマイクロストリップ線路43を配するプリント基板B面42bとの距離との最適化により、定在波の発生を抑制できると推察される。
そこで、本願発明者らは、第1線路43aおよび第2線路43bを、クロス開口41の開口に対面させて配置した。このとき、導波管40の幅広面40aとマイクロストリップ線路43を配するプリント基板B面42bとの距離を、例えば5〜7mmの適当な寸法を選択して、定在波の抑制を検討した。これにより、定在波の発生が抑制できることを確認した。
以上の検討により、導波管40に実装可能な小型の方向性結合器30を実現できる。
つぎに、上述した形状および寸法に設定した方向性結合器30の進行波に対する出力特性について、図15を用いて説明する。
図15は、図9の方向性結合器における進行波検出部の出力特性を示す極座標図である。つまり、図15は、方向性結合器30の出力部131が検出するマイクロ波(進行波に相当)の電力量S21を極座標で表示した図である。
図15に示すように、極座標全領域に対して、負荷変動を考慮した進行波の検出量のばらつきは、−50.5dBから−53.0dB程度であった。
つまり、ばらつきが小さいほど、検波回路45による信号処理が容易となる。そのため、上記のばらつき程度であれば、検波回路45を構成するショットキーダイオード47に安価な部品を用いることが可能になる。また、安価な部品で検波回路45を構成しても容易に信号処理できる。
なお、上記では、第1線路43a、第2線路43bおよび第3線路43cで囲まれる領域については、特に言及しなかったが、クロス開口領域41aより小さくするのが好ましい。このとき、図12に示すように、第1線路43aおよび第2線路43bを開口中央部41cとクロス開口領域41aの端部(図12の左右の端部)の中ほどに配置する。さらに、第3線路43cを、開口中央部41cとクロス開口領域41aの端部(図12の一点鎖線で示す上の端部)の中ほどに配置すれば、さらに好ましい。これにより、方向性結合器に入射する進行波と反射波を精度よく分離して検出できる。
なお、上記では、クロス開口41の開口形状として、2つの長孔が交差するX字形状を例に説明したが、これに限られない。クロス開口41の開口形状は、例えば導波管40の管軸L1に対して異なる角度に傾斜した2つ以上の長孔を内包する形状であればよい。また、クロス開口41の開口形状は、2つ以上の長孔の交差位置が長孔の中心からずれていてもよい。さらに、クロス開口41の開口形状は、例えばL字形状やT字形状であってもよい。また、クロス開口41の開口形状は、長孔を2つ以上組み合わせて構成してもよい。なお、X字形状のクロス開口41において、交差角度を直交からずらして、30度程度傾けても、電界が回転して円偏波で放射できることは、確認している。但し、本実施の形態のように、X字形状で2つの長孔をそれぞれの中央部で直交させるように配置した場合、ほぼ真円状の円偏波を放射できるので、より好ましい。
さらに、クロス開口41の開口形状は、円や多角形でもよい。つまり、上述したように、開口形状は、導波管40の管軸L1に対して異なる角度に傾斜した2つ以上の長孔を内包する形状であればよいと考えられる。そのため、多くの長孔を、少しずつ角度を変えて重ねて構成される円でもよく、X字形状の長孔の4つの頂点を結んだ正方形でもよい。さらに、円や正方形などの形状を押しつぶした、楕円や長方形や台形でもよい。また、四角形以外の多角形や、入りくんだ形状の、例えばハート型や星形などの形状でもよい。特に円や四角形などの場合、X字形状などのように、入りくんだ形状と比べると、変形しにくい効果が得られる。
以上で説明したように、本発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を収納する加熱室と、加熱室に供給するマイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、マイクロ波発生部が発生させたマイクロ波を加熱室に伝送する導波管を備える。さらに、マイクロ波加熱装置は、導波管内の反射波の少なくとも一部を検出する反射波検出部と、反射波検出部が検出した反射波検出量により、被加熱物の分量を判定する分量判定部と、分量判定部で判定した分量に基づいてマイクロ波発生部を制御する制御部を有する構成を備える。
この構成によれば、マイクロ波加熱装置は、導波管内の反射波の少なくとも一部を検出する反射波検出部を有する。このとき、被加熱物が無い場合、マイクロ波を吸収するものが無いので反射波は大きくなる。一方、被加熱物が有る場合、被加熱物がマイクロ波を吸収するので反射波は小さくなる。さらに、被加熱物の分量が増えれば増えるほど、ますますマイクロ波は被加熱物に吸収されるので、反射波が小さくなる。つまり、反射波検出部が検出する反射波検出量に基づいて、荷重を検出できる。これにより、検出部を用いずに、被加熱物の分量を判定できる。その結果、判定した分量に基づいて、被加熱物を効率よく加熱できる。
また、本発明のマイクロ波加熱装置の分量判定部は、加熱中に反射波検出部が検出した反射波検出量と、被加熱物が無い時に反射波検出部が検出した反射波検出量とを比較して、被加熱物の分量を判定してもよい。これにより、被加熱物が無い時の反射波検出量を基準として、加熱中の反射波検出量の差に基づいて、精度よく被加熱物の分量を判定できる。
また、本発明のマイクロ波加熱装置は、導波管を伝送するマイクロ波を加熱室に放射させる放射アンテナと、放射アンテナを回転させる回転駆動部を備える。制御部は、分量判定部で判定した分量に基づいてマイクロ波発生部の出力、および回転駆動部の駆動の制御により、放射アンテナの向きを制御する。そして、分量判定部は、加熱中に反射波検出部が検出した反射波検出量と、被加熱物が無い時に反射波検出部が検出する反射波検出量とを比較し、比較した反射波検出量の差が最も大きくなる放射アンテナの向きで被加熱物の分量を判定してもよい。これにより、反射波検出量の差を最大にできるので、被加熱物の分量判定の分解能が向上する。その結果、精度よく被加熱物の分量を判定して、適切に加熱できる。
また、本発明のマイクロ波加熱装置の分量判定部は、加熱中に反射波検出部が検出した反射波検出量と、被加熱物が無い時に反射波検出部が検出した反射波検出量とを比較する。そして、分量判定部は、比較した反射波検出量の差が最も大きくなる放射アンテナの向きと、異なる向きでの反射波検出量の差に基づいて、被加熱物分量を判定してもよい。これにより、マイクロ波加熱装置の個体差による反射波検出量のばらつきを吸収して、より精度よく被加熱物の分量を判定できる。
また、本発明のマイクロ波加熱装置は、加熱室を上下に分割するように加熱室内に係止され、被加熱物を載置するとともに、裏面にマイクロ波を吸収するマイクロ波吸収発熱体を有する載置皿を、さらに備える。載置皿の外周コーナー部は、対応する加熱室の内壁コーナー部との間に隙間を形成するように、内壁コーナー部よりも大きいR形状で形成される。そして、制御部は、放射アンテナの向きを隙間に向くように制御し、分量判定部は、放射アンテナの向きでの反射波検出量に基づいて、被加熱物の分量を判定してもよい。
この構成によれば、放射アンテナの向きが隙間を向く向きにおいて、それ以外の向きに向く場合と比べて、放射アンテナから放射されたマイクロ波が隙間を介して載置皿の上面側に回り込み易くなる。そのため、被加熱物に当たるマイクロ波の割合が多くなる、これにより、被加熱物の分量の違いによる反射波検出量の変化量も大きくなる。その結果、精度よく被加熱物の分量を判定できる。
また、本発明のマイクロ波加熱装置の分量判定部は、被加熱物の加熱中に反射波検出部が検出する反射波検出量と、被加熱物が無い時に反射波検出部が検出する反射波検出量と、被加熱物が所定の最大分量の時に反射波検出部が検出する反射波検出量とを比較する。そして、分量判定部は、比較した結果に基づいて、被加熱物の分量を判定してもよい。
これにより、被加熱物21の加熱中における反射波検出量が、被加熱物が無い時の反射波検出量と最大分量の時の反射波検出量との間のどちらの値に近いかを判断できる。その結果、被加熱物が無い時の反射波検出量と比較する場合と比べて、被加熱物の分量の判定精度を、さらに向上できる。