本開示に係る第1の観点のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を載置するための載置台の上側の空間を構成する加熱室、および前記載置台の下側の空間を構成する給電室を有して、前記被加熱物を前記加熱室内に収納する加熱部と、
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、
前記マイクロ波発生部が発生させたマイクロ波を伝送する伝送部と、
マイクロ波が伝送する空間を有する導波管構造を有し、前記伝送部のマイクロ波を前記加熱部に放射するように前記給電室内に配置された導波管構造アンテナと、
前記導波管構造アンテナを回転させる回転駆動部と、
前記回転駆動部の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記導波管構造アンテナは、前記伝送部のマイクロ波を前記導波管構造の空間に導き、前記回転駆動部により回転可能な結合部と、前記結合部に接合され、前記導波管構造の空間を規定する導波構造部と、を有し、
前記導波構造部は、前記結合部から前記導波管構造の空間を伝送したマイクロ波を前記給電室の側壁に向けて放射する先端開放部と、前記導波管構造の空間内のマイクロ波を円偏波に形成して前記加熱室に向けて放射するマイクロ波吸出し開口と、を有し、
前記給電室の底壁には、前記給電室に向けて突出した突出部が形成され、
前記制御部は、前記被加熱物を前記載置台よりも上方に配置されるグリル皿に載置して加熱を行うグリルモードを有し、
該グリルモードには、前記先端開放部が前記給電室の前記突出部を向く時間を長くした第1のグリルモードが含まれる。
第1のグリルモードを実施して、導波管構造アンテナの先端開放部からマイクロ波が放射されると、マイクロ波は給電室の突出部にて、加熱室に向かう方向へ反射されて、加熱室内のグリル皿の底面に到達する。これにより、グリル皿の底面を介して被加熱物がマイクロ波により間接的に加熱される。第1のグリルモードでは、このようなマイクロ波加熱の時間を長く設定しているため、被加熱物に対してグリル皿の底面を介した間接的なマイクロ波による加熱を重点的に行うことができる。これにより、特に冷凍食品以外の被加熱物を加熱する際により効率的な加熱を行うことができるため、被加熱物の状態に応じてより適切な加熱制御を行うことができる。
本開示に係る第2の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記の第1の観点における前記第1のグリルモードにおいて、前記制御部は、前記回転駆動部が前記導波管構造アンテナを回転させる際に、前記先端開放部が前記給電室の前記突出部を向いた状態にて停止する時間を含むように制御する。このように、導波管構造アンテナを回転させる時間と回転させずに停止させる時間を設けて先端開放部が給電室の突出部を向く時間を長く設定することで、より簡易な方法で当該時間を設定することができる。
本開示に係る第3の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記の第1の観点又は第2の観点における前記第1のグリルモードにおいて、前記制御部は、前記回転駆動部が前記導波管構造アンテナを回転させる際に、前記先端開放部が前記給電室の前記突出部を向いているときの回転速度が、前記給電室の前記突出部を向かないときの回転速度よりも相対的に遅くなるように制御する。このように、導波管構造アンテナの回転速度を調整して先端開放部が給電室の突出部を向く時間を長く設定することで、より柔軟な加熱制御を行うことができる。
本開示に係る第4の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記の第1の観点から第3の観点のいずれかの観点における前記制御部は、冷凍食品以外の食品を前記被加熱物とするグリルモードが選択された際に、少なくとも前記第1のグリルモードを含んだ制御を実施する。これにより、冷凍食品以外の被加熱物を加熱する際により効率的な加熱を行うことができるため、被加熱物の状態に応じてより適切な加熱制御を行うことができる。
本開示に係る第5の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記の第1の観点から第4の観点のいずれかの観点におけるグリルモードには、前記先端開放部が前記給電室の前記突出部を向かない時間を長くした第2のグリルモードが含まれる。第2のグリルモードを実施して、導波管構造アンテナの先端開放部からマイクロ波が放射されると、マイクロ波は給電室の側壁における突出部とは異なる箇所にて、加熱室に向かう方向へ反射されることで、グリル皿と加熱室の側壁との隙間に到達する。これにより、マイクロ波は、被加熱物が配置されるグリル皿の上方の空間に到達して、被加熱物を直接的に加熱する。第2のグリルモードでは、このようなマイクロ波加熱の時間を長く設定しているため、被加熱物に対して、マイクロ波による直接的な加熱を重点的に行うことができる。これにより、特に冷凍食品の被加熱物を加熱する際により効率的な加熱を行うことができるため、被加熱物の状態に応じてより適切な加熱制御を行うことができる。
本開示に係る第6の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記の第5の観点における前記第2のグリルモードにおいて、前記制御部は、前記回転駆動部が前記導波管構造アンテナを回転させる際に、前記先端開放部が前記給電室の前記突出部を向かない状態にて停止する時間を含むように制御する。このように、導波管構造アンテナを回転させる時間と、回転させずに停止させる時間を設けて先端開放部が給電室の突出部を向かない時間を長く設定することで、より簡易な方法で当該時間を設定することができる。
本開示に係る第7の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記の第5の観点又は第6の観点における前記第2のグリルモードにおいて、前記制御部は、前記回転駆動部が前記導波管構造アンテナを回転させる際に、前記先端開放部が前記給電室の前記突出部を向かないときの回転速度が、前記給電室の前記突出部を向いているときの回転速度よりも相対的に遅くなるように制御する。このように、導波管構造アンテナの回転速度を調整して先端開放部が給電室の突出部を向かない時間を長く設定することで、より柔軟な加熱制御を行うことができる。
本開示に係る第8の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記の第5の観点から第7の観点のいずれかの観点における前記制御部は、冷凍食品を前記被加熱物とするグリルモードが選択された際に、少なくとも前記第2のグリルモードを含んだ制御を実施する。これにより、冷凍食品の被加熱物を加熱する際により効率的な加熱を行うことができるため、被加熱物の状態に応じてより適切な加熱制御を行うことができる。
本開示に係る第9の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記の第1の観点から第8の観点のいずれかの観点における前記給電室の前記側壁は、前記加熱室に向かって外側へ広がるように傾斜した。このように給電室の側壁を傾斜させることにより、導波管構造アンテナの先端開放部から放射されたマイクロ波をより確実に加熱室に向けることができる。
本開示に係る第10の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記の第1の観点から第9の観点のいずれかの観点における前記給電室は、平面視における断面が概ね矩形状に形成されるとともに、当該矩形における短辺側の底壁に前記突出部を有する。このように突出部を設けることで、導波管構造アンテナの先端開放部からの距離を所望の距離に調節することができる。
本開示に係る第11の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記の第1の観点から第10の観点のいずれかの観点における前記結合部は、前記回転駆動部に接続されて回転し、前記導波管構造における伝送方向に交差する回転軸を有する結合軸を有し、前記結合軸の回転中心は、前記加熱室および前記給電室における前後方向及び左右方向の中心に位置される。このような配置により、被加熱物を導波管構造アンテナから放射されるマイクロ波によって、より均一に加熱することができる。
本開示に係る第12の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記の第1の観点から第11の観点のいずれかの観点における前記マイクロ波吸出し開口は、少なくとも2つの長孔が交差する開口を含む形状を有し、前記導波管構造における伝送方向に延びる管軸に対して一方に偏った位置に形成された。これにより、加熱室に対してマイクロ波吸出し開口から確実に円偏波を放射することができる。
本開示に係る第13の観点のマイクロ波加熱装置においては、前記の第1の観点から第12の観点のいずれかの観点における前記導波構造部は、前記マイクロ波吸出し開口を複数有し、複数の前記マイクロ波吸出し開口が前記導波管構造における伝送方向に延びる管軸に対して軸対称に配置された。これにより、加熱室の中央領域における加熱温度の低下を抑制することができる。
以下、本開示に係るマイクロ波加熱装置の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態のマイクロ波加熱装置においては電子レンジについて説明するが、電子レンジは例示であり、本開示のマイクロ波加熱装置は電子レンジに限定されるものではなく、誘電加熱を利用した加熱装置、生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置などのマイクロ波加熱装置を含むものである。また、本開示は、以下の実施の形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が本開示に含まれる。
(実施の形態1)
図1は、本開示に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジの概略構成を示す図であり、電子レンジを正面側から見た断面図である。なお、以下の説明において、電子レンジの左右方向とは図1における左右方向を意味し、前後方向とは図1における紙面に垂直な方向であり装置の前面側と背面側を結ぶ方向を意味する。
図1に示すように、実施の形態1の電子レンジ1は、加熱部2と、マグネトロン3と、導波管4と、導波管構造アンテナ5と、載置台6とを備える。加熱部2は、代表的な被加熱物である食品(図示せず)を載置するための載置台6の上側の空間を構成する加熱室2aと、載置台6の下側の空間を構成する給電室2bとを有する。マグネトロン3は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部の一例である。導波管4は、マグネトロン3において発生したマイクロ波を加熱部2に伝送する伝送部の一例である。導波管構造アンテナ5は、伝送部である導波管4内のマイクロ波を加熱部2内に放射するよう構成され、載置台6の下側の給電室2bの空間内部に設けられている。
加熱部2における載置台6は、被加熱物である食品を載置するフラットな面を有する。載置台6は、導波管構造アンテナ5が設けられた給電室2bの全体を覆うことにより、導波管構造アンテナ5が加熱室2a内に露出しないように給電室2bを塞ぐと共に、加熱室2aの底面を構成している。載置台6の上面(載置面)がフラットに形成されているため、ユーザによる食品の出し入れを容易なものとしており、載置台6に付着した汚れなどをふき取りやすく構成されている。載置台6の材料としては、ガラスやセラミックなどのマイクロ波が透過しやすい材料が用いられている。このように載置台6の材料としてマイクロ波が透過しやすい材料を用いることにより、載置台6の下側にある給電室2bの導波管構造アンテナ5から放射されたマイクロ波が載置台6の上側の加熱室2a内の空間に確実に伝搬する構成である。
導波管構造アンテナ5は、導波管4内からマイクロ波を引き出す結合部7と、結合部7により引き出されたマイクロ波が導かれる箱形の導波管構造を有する導波構造部8とを有する。結合部7は、結合軸7aとフランジ7bにより構成されている。結合軸7aは回転駆動部であるモータ15に接続されており、後述する制御部17からの制御信号により、結合部7に接合された導波構造部8は回転制御される構成である。即ち、導波管構造アンテナ5は結合部7の結合軸7aを中心に回転駆動され、停止位置、回転期間、回転速度などが制御される。結合部7は金属、例えば、アルミメッキ鋼板で形成され、結合部7に接続されているモータ15の接続部分は、例えば、フッ素樹脂で形成されている。
図1に示すように、結合部7の結合軸7aは、伝送部である導波管4と給電室2bとを連通する開口を貫通しており、結合軸7aは貫通する開口との間に所定の間隔の隙間、例えば、5mm以上の隙間を有している。結合軸7aが上記の開口を貫通することにより導波管4からのマイクロ波を導波管構造アンテナ5の導波構造部8に効率高く導くように構成されている。
実施の形態1の電子レンジ1は、回転駆動部であるモータ15が導波管構造アンテナ5の結合部7に接合されており、結合部7の回転により導波管構造アンテナ5からのマイクロ波の放射方向が変更される。また、実施の形態1の電子レンジ1には、加熱室2aの側面上方に赤外線センサ16が設けられている。赤外線センサ16は、加熱室2aを複数の領域に区分してそれぞれの領域の庫内温度状態を検出して、その検出信号(検出結果)を制御部17に送信する構成である。制御部17は、赤外線センサ16からの検出信号に基づいて、マイクロ波発生部であるマグネトロン3及び回転駆動部であるモータ15を駆動制御する。赤外線センサ16は、加熱室2aの庫内温度状態、特に、食品の状態を検出する状態検出部の一例であって、食品の状態として食品の表面温度を検出している。上記のように、実施の形態1の電子レンジ1においては、制御部17が赤外線センサ16からの検出信号に基づきマグネトロン3の発振制御及びモータ15の回転制御を行っている。
なお、実施の形態1では、状態検出部の一例として、食品の温度を検出する赤外線センサ16を用いた場合について説明するが、本開示はこの構成に限定されるものではない。例えば、食品の重量(重心)を検出する重量センサや、食品の画像を取得する画像センサなどを状態検出部として用いた構成も本開示に含まれる。或いは、このような状態検出部を用いない構成であって、予め設定された動作に基づいた駆動制御であっても本開示に含まれる。例えば、ユーザによって選択可能な複数のプログラムを電子レンジ1に記憶させておき、ユーザが選択したプログラムに基づき、制御部17がモータ15を駆動制御して導波管構造アンテナ5の回転位置の制御を行ってもよい。
図2Aは、導波管構造アンテナ5が設けられた加熱部2の給電室2bを示す斜視図であり、載置台6を取り除いた加熱部2の底面部分が示されている。図2Bは図2Aの給電室2bを示す平面図である。図2A及び図2Bに示すように、加熱室2aの直下に配置され、載置台6により加熱室2aと区分される給電室2bには、導波管構造アンテナ5が設けられている。導波管構造アンテナ5における結合軸7aの回転中心Gは、給電室2bの前後方向及び左右方向の中心の位置にあり、即ち、加熱室2aの底面となる載置台6の前後方向及び左右方向の中心の直下の位置である。
図2A及び図2Bに示すように、給電室2bの底面11と載置台6の下面により構成される給電空間は、結合部7の回転中心Gを含む給電室2bの前後方向に延びる中心線J(図2B参照)に対して対称な形状を有している。給電室2bの底壁11からは給電室2bに向かって突出した突出部18(突出部18a、18b)がそれぞれ形成されている。突出部18aは、左側の側壁2cを形成するようにして底壁11から突出して設けられており、突出部18bは、右側の側壁2cを形成するようにして底壁11から突出して設けられている。右側の突出部18bの下方にはマグネトロン3が設けられている。突出部18bを設ける目的は、マグネトロン3の配置スペースを確保するためでもある。マグネトロン3の出力端3aからのマイクロ波は、給電室2bの直下に形成された伝送部である導波管4を伝送し、結合部7を介して導波管構造の導波構造部8に導かれ、給電室2b内に放射される。
給電室2bの給電空間の側面を形成する側壁2cは、斜め上方を向く斜面、すなわち加熱室2aに向かって外側に広がるように傾斜した傾斜面で形成されている。このように形成された側壁2cは、導波管構造アンテナ5から水平方向に放射されたマイクロ波を反射して、上方の加熱室2aに反射する構成である。
なお、給電室2bは、平面視における断面が概ね矩形状に形成されるとともに、当該矩形における短辺側(実施の形態1では左右側)の側壁2cを形成するように底壁11から突出した突出部18を有している。当該矩形における4つの角は、給電室2bの隅部22a、22b、22c、22dに対応する。隅部22aと隅部22dの間に突出部18aが形成され、給電室2bの隅部22bと隅部22cの間に突出部18bが形成される。
図3は、導波管構造アンテナ5の具体例を示す分解斜視図である。導波管構造アンテナ5における平面視が略四角形である導波構造部8は、図3に示すように、四辺における三辺が直線状であり、残りの一辺が円弧状に形成された導波管構造を有する。導波構造部8における円弧状の一辺は開口しており、導波構造部8内を伝送したマイクロ波を放射する先端開放部13となっている。また、導波構造部8は、載置台6の下面に対向する上壁面9と、上壁面9に繋がる三方の側壁面10a、10b、10cと、三方の側壁面10a、10b、10cのそれぞれから給電室2bの底面に対向して水平外側に延設された低インピーダンス部12とを備える。導波構造部8の上壁面9の下面には、結合部7が接合される接合部分が形成されている。
導波構造部8における側壁面10a、10b、10cは、箱形の導波管構造の導波構造部8の周囲三方を塞ぐように形成されており、導波構造部8からのマイクロ波の漏洩を抑制している。導波構造部8においては、残りの一方となる結合部7から最も離れた位置に先端開放部13が形成されている。先端開放部13の開口からは結合部7から導波構造部8を伝送したマイクロ波が水平方向に放射される。三方の側壁面10a、10b、10cのそれぞれの下端から水平外側に延びる低インピーダンス部12は、給電室2bの底面11とわずかな隙間を有して対向するように平行に形成されている。なお、実施の形態1における導波構造部8においては、給電室2bの底面11との間の隙間を確保するために、低インピーダンス部12の一部に絶縁樹脂スペーサ(図示せず)を装着するための保持部19が形成されている。
図3に示すように、各低インピーダンス部12には複数のスリット12aが形成されている。各スリット12aは、それぞれのスリット12aが形成された低インピーダンス部12に繋がる側壁面10a、10b、10cに直交する方向に延びて形成されている。このように、各側壁面10a、10b、10cの下端から延びる低インピーダンス部12が形成されているため、側壁面10a、10b、10cと給電室2bの底面11との隙間から、側壁面10a、10b、10cに直交する方向のマイクロ波の漏洩が大幅に抑制されている。一方、低インピーダンス部12に形成されている複数のスリット12aは所定間隔で配置することで周期構造を成し、側壁面10a、10b、10cに平行な方向のマイクロ波の漏洩を抑制している。この所定間隔は、導波構造部8を伝送する波長に応じて適宜決定される。
上記のように、導波管構造アンテナ5の導波構造部8においては、略四角形の上壁面9における一辺のみが円弧状に形成されており、この円弧状の縁部分の下方が広く開放された先端開放部13となっている。なお、実施の形態1の電子レンジにおいては、先端開放部13が円弧状に形成された例で説明したが、本開示はこの形状に限定されるものではなく、直線状、曲線状であってもよい。
実施の形態1の電子レンジにおいては、図3に示すように、上壁面9には後述するように特殊な機能を有する複数の開口であるマイクロ波吸出し開口14が形成されている。このように構成された導波管構造アンテナ5においては、導波構造部8の内部のマイクロ波が、先端開放部13と複数のマイクロ波吸出し開口14から制御されて放射される構成である。
図3の分解斜視図に示すように、導波管構造アンテナ5は、箱形の導波管構造の導波構造部8に対して回転中心となる結合部7が固着されている。実施の形態1の構成においては、結合部7に形成されたフランジ7bが接合部分として導波構造部8の上壁面9aに対して接合(カシメ、スポット溶接、ビス締め)されている。なお、結合部7と導波構造部8との接合としては、溶接などの接合手段を用いて結合軸7aを上壁面9aに直接接合することも可能である。
本開示のマイクロ波加熱装置は、発明者の各種実験に基づき、上記のように構成された導波管構造アンテナ5が後述するように特殊な導波管構造を有するため、加熱室内における被加熱物に対する局所加熱が可能となるとともに、加熱室内の加熱分布の均一化を図ることが可能となる。本開示に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおいては、特に、導波管構造アンテナにおける回転中心の直上の加熱室の中央領域において、効率高く加熱することができるとともに、この中央領域の加熱温度の不均一を抑制することができる構成を有する。以下に、実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおける特殊な導波管構造について説明する。
[導波管構造]
まず、導波管構造の理解のために、図4を用いて、一般的な導波管300について説明する。最も単純で一般的な導波管300は、図4に示すように、一定の長方形の断面(幅a、高さb)を伝送方向Zに伸ばした直方体からなる方形導波管である。マイクロ波の自由空間での波長をλ0としたときに、導波管300の幅a及び高さbを、λ0>a>λ0/2、及びb<λ0/2の範囲内から選ぶことにより、当該導波管300内をTE10モードでマイクロ波を伝送することが知られている。
TE10モードとは、導波管300内においてマイクロ波の伝送方向Zには磁界成分のみが存在して電界成分は存在しない、H波(TE波;電気的横波伝送(Transverse Electric Wave))における伝送モードのことを指す。
ここで、導波管300内の管内波長λgの説明に先立って、自由空間の波長λ0について説明する。自由空間の波長λ0は、λ0=c/fの式により求められる。この式において、cは光の速度であり、略2.998×108[m/s]で一定である。一方、fは発振周波数であり、電子レンジの場合には2.4〜2.5[GHz](ISMバンド)の幅を有する。発振周波数fはマグネトロンのばらつきや負荷条件によって変化するため、自由空間の波長λ0も変化する。これにり、自由空間の波長λ0は、最小120[mm](2.5GHz時)から最大125[mm](2.4GHz時)まで変化する。
電子レンジに用いる導波管300の場合には、自由空間の波長λ0の範囲等を考慮して、一般的には、導波管300の幅aを80〜100mm、高さbを15〜40mm程度の範囲内から選ぶことが多い。このとき、図4に示した導波管300において、その上下面である幅広面301を、磁界が平行に渦巻く面という意味でH面と呼び、左右面である幅狭面302を、電界に平行な面という意味でE面と呼ぶ。
なお、マイクロ波発生部であるマグネトロンからのマイクロ波をλ0とし、導波管内を伝送するときのマイクロ波の波長を管内波長λgとすると、λg=λ0/√(1−(λ0/(2×a))2)で求められる。従って、管内波長λgは、導波管300の幅aの寸法によって変化するが、高さbの寸法には無関係である。TE10モードにおいては、導波管300の幅方向Wの両端(E面)302で電界が0、幅方向Wの中央で電界が最大となる。
図1及び図3で示した実施の形態1における導波管構造アンテナ5に関しても、図4に示した導波管300と同様の考えを適用することができる。導波管構造アンテナ5の上壁面9と給電室2bの底面11がH面である。導波管構造アンテナ5における対向する側壁面10aと10cがE面である。先端開放部13に対向する側壁面10bは、導波管構造アンテナ5内のマイクロ波を先端開放部13の方向へ全て反射させるための反射端である。実施の形態1における導波管構造アンテナ5は、具体的には、導波管幅(a)が106.5mmである。
導波管構造アンテナ5におけるH面である上壁面9には、前述のように、複数のマイクロ波吸出し開口14が形成されている。マイクロ波吸出し開口14においては、導波管構造アンテナ5の導波管構造における伝送方向に延びる中心線Vである管軸(導波管のH面の幅方向の中心線を一般に管軸と呼ぶ)に対して線対称に2つの第1開口14aが配置されており、同様に2つの第2開口14bが線対称に配置されている。第1開口14a及び第2開口14bの開口部分が管軸(中心線V)を横切らないように形成されている。このように、第1開口14a及び第2開口14bの開口部分が、導波管構造アンテナ5におけるH面の管軸(V)をまたがないように片側に偏って配置することにより、第1開口14a及び第2開口14bから確実に円偏波を放射することができる構成となる。第1開口14a及び第2開口14bの開口部分をH面における管軸(V)のどちらの領域に形成するかにより電界の回転方向が異なり、それによって、円偏波は右旋偏波(CW:clockwise)あるいは左旋偏波(CCW:counter clockwise)となる。第1開口14a及び第2開口14bから円偏波が放射されることにより、それぞれの開口部分から渦状の電界が放射されるため、均等な電界分布を形成することが可能となる。
なお、実施の形態1においては、第1開口14a及び第2開口14bの開口部分が、管軸(V)をまたがないように配置した例で説明したが、それぞれの開口部分の一部が管軸(V)をまたぐ構成としても、円偏波を放出することが可能なマイクロ波吸出し開口となる。ただし、この場合の円偏波は歪んだ円となって放射されるが、加熱室内の温度分布の均一化を図ることは可能である。
[円偏波放射構造]
次に、円偏波について説明する。円偏波は、移動通信及び衛星通信の分野で広く用いられている技術である。身近な使用例としては、ETC(Electronic Toll Collection System)「ノンストップ自動料金収受システム」などが挙げられる。円偏波は、電界の偏波面が進行方向に対して時間に応じて回転するマイクロ波である。円偏波を形成すると、電界の方向が時間に応じて変化し続けて、電界強度の大きさは変化しないという特徴を有している。この円偏波をマイクロ波加熱装置に適用すれば、従来の直線偏波によるマイクロ波加熱と比較して、被加熱物を特に円偏波の周方向に対して均一に加熱することが期待される。なお、円偏波は、前述のように、回転方向から右旋偏波と左旋偏波の2種類に分類されるが、マイクロ波加熱装置の分野においてはどちらの種類の円偏波であっても、均一な加熱分布を形成することが可能である。
円偏波はもともと通信の分野での利用が主であるため、開放空間への放射を対象としていることから、反射波が戻ってこないいわゆる進行波で論じられるのが一般的である。一方、実施の形態1の電子レンジ1において、加熱部2は、外部とは遮蔽された閉空間であるため、反射波が発生して進行波と合成されて定在波となる可能性がある。しかし、食品がマイクロ波を吸収するため、反射波が小さくなるのに加えて、マイクロ波吸出し開口14からマイクロ波が放射される瞬間には定在波のバランスがくずれ、再び安定した定在波に戻るまでの間は進行波が発生していると考えられる。したがって、マイクロ波吸出し開口14を円偏波が放射できる形状とすることにより、前述の円偏波の特長を利用することが可能となり、加熱室2a内の加熱分布をより均一化することができる。
ここで、開放空間の通信分野と閉空間の加熱の分野では、いくつか異なる点があるので説明を加える。通信分野では、他のマイクロ波との混在を避けて必要な情報のみを送受信したいため、送信側は右旋偏波か左旋偏波のどちらかに限定して送信し、受信側もそれに合わせた最適な受信アンテナを選ぶことになる。
一方、加熱の分野では、指向性を有する受信アンテナの代わりに、特に指向性のない食品などの被加熱物がマイクロ波を受けるため、マイクロ波が被加熱物全体に対して照射されることのみが重要となる。したがって、加熱の分野においては、右旋偏波でも左旋偏波でも関係はなく、開口を複数形成して右旋偏波と左旋偏波が混在する状態でも問題はない。
[導波管構造アンテナによる局所加熱]
以下、実施の形態1における導波管構造アンテナのマイクロ波吸出し開口14に関して、食品などの被加熱物が近くにある時ほど導波管構造内のマイクロ波が吸出されて、被加熱物に対して局所加熱を行う吸出し効果について説明する。
まず、吸出し効果について説明する。マイクロ波吸出し開口14と食品との間の距離が、マイクロ波の放射量にどれだけ関係するかについて、CAEを使って、直線偏波と円偏波とを比較した。図5Aは直線偏波を放射するI字形状の開口を有する導波管400のH面を示す平面図であり、図5Bは円偏波を放射するX字形状の開口を有する導波管500のH面を示す平面図である。図5Cは導波管400又は500と被加熱物である食品Fとの位置関係を示す正面図である。
図5Aに示すように、直線偏波を発生する開口401は、導波管400において伝送方向に延びる管軸(幅方向の中心線V)を交差してその両側にわたる直線状(I形状)の開口である。図5Bに示すように、円偏波を発生する2つの開口501は、X字状の開口であり、導波管500の管軸(V)に対して線対称に配置されている。従って、いずれの開口401、501も、それぞれの導波管400又は500の幅方向の中心線Vに対して対称な開口形状である。なお、いずれの開口401又は501もスリット幅を10mm、スリット長さをLmmとした。この構成において、食品Fが配置されていない場合(「食品無し」)と、図5Cに示すように、食品Fが配置された場合(「食品有り」)とについて解析した。なお、図5Cに示したように食品Fが配置された場合、食品Fの高さは30mmで一定とし、食品Fの底面の面積を2種類(100mm角、200mm角)、食品Fの材質を3種類(冷凍牛肉、冷蔵牛肉、水)、導波管400又は500の開口面から食品Fまでの距離Dをパラメータとして測定した。
まず、「食品無し」の場合の開口からのマイクロ波の放射量を基準とするために、「食品無し」のときの開口のスリット長さLによる放射量の変化を図6A及び図6Bにグラフ化して示した。図6Aは、図5Aの直線偏波の開口401による特性を表し、図6Bは、図5Bの円偏波の開口501による特性を表す。図6A及び図6Bにおいて、横軸が、開口のスリット長さL[mm]であり、縦軸が、導波管内を伝送する電力を1.0としたときの開口401又は501から放射される放射量[W]である。
「食品有り」の場合と比較するために、図6Aのグラフにおいてスリット長さLが45.5mmを選択し、図6Bのグラフにおいてスリット長さLが46.5mmを選択した。スリット長さLの選択については、「食品無し」の場合に同じ量(導波管内を伝送する電力の1/10)を放射するスリット長さL(グラフの縦軸が0.1となるL)を選んだ。
次に、スリット長さLを選択した長さに固定して、「食品有り」の条件で解析を行って特性をまとめた結果を図7に示す。食品の種類としては、冷凍牛肉、冷蔵牛肉、水の3種類とし、食品の底面の面積は100mm角と200mm角の2種類で解析した。図7に示したそれぞれのグラフにおいて、横軸は、食品Fから開口面までの距離D[mm]であり、縦軸は、無負荷時の放射量を1.0としたときの相対的な放射量である。即ち、「食品無し」の場合と比較して、「食品有り」の場合には放射量が何倍となるかを示すものであり、食品Fがどれだけマイクロ波を導波管400又は500から吸出すかを示すものである。図7において示したそれぞれのグラフは、破線が直線偏波(I字形状の開口401)、実線が円偏波(2つのX字形状の開口501)を示している。開口401、501のいずれの場合でも、直線偏波より円偏波のほうが放射量が多く、特に、距離Dが20mm以下の実用的な距離において、2倍程度の差があると理解できる。従って、食品Fの種類や食品Fの面積に関わらず、円偏波のほうが直線偏波よりもマイクロ波の吸出し効果が高いことが明らかである。
詳細に見ていくと、食品Fの種類については、特に、距離Dが10mm以下では、誘電率や誘電損失が小さい冷凍牛肉の方が吸出し効果が大きく、誘電率や誘電損失が大きい水の方が吸出し効果は小さくなっている。また、冷蔵牛肉や水の場合、距離Dが大きい時に、特に、直線偏波では放射量が1以下にまで落ち込んでいる。これは、食品Fで反射されたマイクロ波が戻ってきて、相殺されることが原因と考えられる。
なお、食品Fの底面の面積については、100mm角と200mm角でマイクロ波の放射量がほとんど変わらないため、マイクロ波の吸出し効果への影響は少ないと考えられる。
円偏波を発生する開口形状としてはX字形状だけではない。発明者は、開口形状をいろいろと変更して、円偏波を放射できる開口の条件について検討した。その結果、円偏波を発生する好ましい条件としては、開口が導波管の幅方向の中央(中心線V)からずらして配置されること、そして開口形状が交差する長孔(スリット)の開口を含むこと、である。また、発明者の実験によれば、円偏波のマイクロ波を効率よく放射することができるのは、X字形状を有する開口であり、このX字形状の開口が吸出し効果も高いことがわかった。
図8A及び図8Bは、実施の形態1の電子レンジの構成における吸出し効果の例を示す模式図である。図8Aは食品Fが結合部7の直上近傍に配置された場合であり、図8Bは食品Fが加熱室2aの中心から外れ、導波管構造アンテナ5が回動して先端開放部13が食品Fの方向に配置された場合である。したがって、図8A及び図8Bに示す状態においては、結合部7から食品Fまでの距離が異なっている。
図8Aに示す状態においては、食品Fがマイクロ波吸出し開口14の第1開口14aに近いため、第1開口14aにおいて吸出し効果が生じている。すなわち、結合部7から先端開放部13へ向かうマイクロ波のうちの大部分が、食品Fに対して直接照射するマイクロ波として第1開口14aから放射され、中央領域に配置された食品Fに対しても均一に加熱している。
一方、図8Bに示す状態においては、食品Fがマイクロ波吸出し開口14から離れているため、マイクロ波吸出し開口14において吸出し効果は生じない。すなわち、結合部7から先端開放部13へ向かうマイクロ波のうちの大部分が、導波管構造アンテナ5が回動して適切な位置に配置された先端開放部13から食品Fに向かうマイクロ波が放射され、直線偏波により局所的に配置された食品Fに対して直接的に効率高く加熱している。
上記のように、実施の形態1におけるマイクロ波吸出し開口14は、マイクロ波吸出し開口14の近くに食品が配置された時のみマイクロ波の放射量が多くなり、マイクロ波吸出し開口14から離れた位置に配置された時にはマイクロ波の放射量が少なくなるという特殊な制御機能を有する。
[導波管構造アンテナによる均一加熱]
以下、本開示に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおいて、導波管構造アンテナが加熱室内の加熱分布の均一化、特に、導波管構造アンテナにおける回転中心の直上の加熱室の中央領域に被加熱物が載置されたときに生じる、中央領域の加熱温度の低下を抑制して加熱分布の均一化を図るための効率的な構成について説明する。発明者は、各種形状の導波管構造を有する導波管構造アンテナを用いて加熱分布の実験を行い、最適な導波管構造を見出したので、その計測実験に用いた導波管構造について説明する。
図9は、発明者が実験で用いた導波管構造アンテナの導波構造部の平面形状を示す図である。図9の(a)〜(c)において、それぞれの導波構造部には伝送方向に平行な中心線V(管軸)に対して線対称に配置された複数のマイクロ波吸出し開口が設けられている。それぞれのマイクロ波吸出し開口は、中心線に対称な2つの第1開口、及び2つの第2開口を有している。なお、図9の(a)〜(c)に示す導波構造部において、第1開口の形状のみを変更しており、第2開口は同じ形状に形成した。図9において、符号7は結合部を示し、符号Gは結合部7の中心軸(回転中心)を示す。
図9の(a)に示す導波構造部600は、マイクロ波吸出し開口の第1開口614a及び第2開口614bのそれぞれが、二本の同じ長さの長孔(スリット)をそれぞれの中心で直交させたX字形状を有している。また、それぞれの長孔の長軸が伝送方向に平行な中心線Vに対して45度斜行している。
図9の(b)に示す導波構造部700において、図9の(a)に示した導波構造部600との違いは、第1開口714aが1つのみ形成されている。
図9の(c)に示す導波構造部800において、図9の(a)に示した導波構造部600との違いは、第1開口814aを構成する長孔において交差部分から結合部7の方向に延びる開口部分が閉鎖されており、それぞれの第1開口814aがT字形状に形成されている点である。即ち、図9の(c)に示す導波構造部800においては、結合部7に近接してマイクロ波吸出し開口が形成されていない構成である。
図9に示す導波管構造を有する導波管構造アンテナの電子レンジにより被加熱物としての冷凍お好み焼きを載置台6の中心(加熱室2aの中心)に配置して同じ加熱条件で加熱実験を行い、CAEにより検証を行った。
その結果、図9の(a)に示した導波管構造600のように、結合部7の近くに大きなマイクロ波吸出し開口である第1開口614aが近接し、対向して形成されている場合には、互いの開口から出力される円偏波が干渉して、結合部近傍の中央領域の加熱温度が異常に低くなることが分かった。図9の(b)に示した導波管構造700のように、結合部7の近くにおいては大きな開口である第1開口714aを1つのみ形成して、マイクロ波吸出し開口を中心線V(管軸)に対して非対称に形成することにより、結合部7の直上の加熱室の中央領域における加熱温度の低下を抑制することができた。また、図9の(c)に示した導波管構造800のように、結合部7の近傍においては、対向する第1開口814aにおける交差部分から結合部7の方向に延びる開口部分を無くすことにより、加熱室の中央領域における加熱温度の低下を抑制することができた。
以上のように、導波管構造アンテナにおいて、結合部近傍には大きな開口が対向しないように形成することにより、加熱室の中央領域における加熱温度の低下を抑制して、加熱室の加熱分布の均一化を図ることが可能な構成となることが理解できた。
更に、発明者は、導波管構造アンテナの導波管構造に形成すべきマイクロ波吸出し開口の形状について各種実験を行い、更なる加熱分布の均一化を図ることができる構成を見出した。
図9の(c)に示した導波管構造800の第1開口814aは、交差部分から結合部7の方向に延びる開口部分のないT字形状を有しているため、X字形状の開口により形成される綺麗な円形状の円偏波とは異なる歪な形状の円偏波を放射する。このため、加熱室の中央領域における加熱温度の低下を抑制することは可能であるが、加熱室における加熱分布の均一化を図る点においては好ましい円偏波形状ではなかった。そこで、対向する開口部分から出力される円偏波が干渉することを抑制すると共に、可能な限り円に近い形状の円偏波とするために、後述する図10の(a),(b)に示すように、第1開口を構成する長孔において、交差部分から結合部7の方向に延びる開口部分を短い長さを有する構成について検討した。即ち、第1開口において、二本の長孔(スリット)における一方の長孔を短く形成して、交差部分から結合部7の方向に延びる開口のみを短くした略X字形状とした構成に対して各種実験を行った。その結果、加熱分布の均一に関して、略X字形状の開口を有する構成が、T字形状を有する開口に比べて好ましい結果が得られた。このように形成された第1開口においては、対向する開口部分から出力される円偏波の干渉を抑制することができると共に、前述の吸出し効果が高くなり、加熱室の中央領域における加熱温度の低下を抑制して、加熱分布の均一化を図ることができた。
なお、第1開口において、交差部分から結合部7の方向への延びる長さについては、対向する開口部分から放射されるマイクロ波により出力が干渉しない程度に設定され、電子レンジの仕様(出力)に応じて適宜設定される。以下、第1開口を略X字形状に形成した導波構造部について詳細に説明する。
図10は、発明者が実験で用いた導波管構造アンテナの導波構造部の平面形状を示す図であり、導波構造部が略X字形状の第1開口を有する。
図10の(a),(b)に示す導波構造部900A,900Bは、第1開口914aを構成する長孔において交差部分から結合部7の方向に延びる開口部分が短く形成されている。即ち、第1開口914aにおける結合部7の方向に延びる長孔において、交差部分から結合部7の方向に延びる開口部分の長さは、交差部分から反対方向に延びる開口部分の長さより短く形成されている。そのため、図10の(a)に示す導波構造部900Aにおいては、その上壁面における結合部近傍が平坦に形成されている。一方、図10の(b)に示す導波構造部900Bにおいては、結合部7の接合部分(フランジ7bの固着部分)に凹部の接合領域が形成されている。そのため、導波構造部900Bの上壁面における結合部7との接合領域の面と載置台の下面との距離は、上壁面における他の部位に比べて長くなっている。
図10に示した導波管構造を有する導波管構造アンテナの電子レンジを用いて、同様に被加熱物として冷凍お好み焼きを加熱室2aの中心に配置して同じ加熱条件で加熱実験を行い、CAEにより検証を行った。なお、図10の(a),(b)に示す導波構造部において、上壁面における結合部7の接合部分の形状のみを変更しており、第1開口914a及び第2開口914bは同じ形状に形成した。図10において、符号7は結合部を示し、符号Gは結合部7の回転中心を示す。
その結果、図10の(a)に示した導波管構造においては、前述の図9の(c)に示したように、対向する第1開口814aが交差部分から結合部7の方向に延びる開口部分を無くした場合に比べて、第1開口814aが略X字形状を有しているため、対向する開口部分から出力される円偏波の干渉を抑制すると共に、円形状に近い円偏波を発生することができる構成となる。このように形成された第1開口814aにおいては、吸出し効果が高くなり、加熱室の中央領域に配置された食品に対しても多くのマイクロ波を放射できる構成となり、加熱室の中央領域における加熱温度の低下を抑制することができた。さらに、図10の(b)に示したように、導波構造部900Bの上壁面においては、結合部7の接合部分に対応する接合領域に凹部が形成されていることにより、加熱室2aの中央領域における加熱温度の低下をより抑制することができることが分かった。
本開示においては、発明者による上記のような各種実験からの知見に基づいて、マイクロ波加熱装置である電子レンジにおける導波管構造アンテナを構成した。以下に説明する実施の形態1の電子レンジは本開示のマイクロ波加熱装置の具体的構成を示す例示であり、本開示においてはマイクロ波加熱装置の仕様などに応じて上記の知見に基づき各種の変形例が可能である。
図11は、実施の形態1の電子レンジにおける導波管構造アンテナの導波構造部8を示す平面図である。
実施の形態1の電子レンジにおける導波管構造アンテナの導波構造部8は、前述の図3に示したように、実施の形態1における導波管構造の導波構造部8の上壁面9には、複数のマイクロ波吸出し開口14が形成されている。上壁面9に形成された複数のマイクロ波吸出し開口14は、二種類の形状を有しており、大きな開口を有する第1開口14aと、小さな開口を有する第2開口14bにより構成されている。第1開口14a及び第2開口14bのそれぞれの開口形状は、長孔(スリットあるいはスロット)を直交するように交差させた略X字状の形状を有する。
図11に示すように、第1開口14a及び第2開口14bのそれぞれの中心点P1、P2を、上壁面9の幅方向Wの中心線V(導波構造部8において伝送方向Zに平行な中心線(管軸))からずれた位置に配置することにより、それぞれのマイクロ波吸出し開口14は円偏波を放射することができる円偏波放射構造となる。ここで、第1開口14aの中心点P1、及び第2開口14bの中心点P2とは、それぞれの開口形状を形成する2つの長孔における長軸の交点である。なお、実施の形態1の構成においては、マイクロ波吸出し開口14の全ての開口部分が上壁面9の幅方向Wの前記中心線V(管軸)からずれた位置に配置されている。マイクロ波吸出し開口14における各長孔の長軸方向は、上壁面9の幅方向Wの中心線Vに対して略45℃傾斜している。
図11に示すように、第1開口14aは、導波構造部8において結合部7の接合部分に対応する上面壁9における接合領域である凹部9aに近接して形成されている。凹部9aの凹みは第1開口14aから放射されるマイクロ波の放射方向の面(上面)が凹み形状を有している。2つの第1開口14aは、前記中心線Vを間にして対称的に配置されている。第1開口14aより小さい開口形状を有する第2開口14bは、上面壁9の先端開放部13の近傍に形成されている。2つの第2開口14bは前記中心線Vを間にして対称的に配置されている。
第1開口14aの開口形状は、前述のように、長孔(スリットあるいはスロット)を直交するように交差させた略X字状の形状であるが、長孔における中心点P1は、長孔の長軸方向の長さの中央位置ではない。即ち、各長孔における中心点P1から上壁面9の幅方向Wの中心線Vに向かう方向に延びる開口形状は、中心点P1から側壁面側に延びる開口形状より短く形成されている。
前述の図3に示したように、結合部7には導波構造部8の上壁面9に接合するためのフランジ7bが設けられている。フランジ7bは、導波構造部8における伝送方向に延びる管軸(V)の方向(伝送方向)の長さが短く、幅方向Wの長さが長いフランジ形状を有している。即ち、結合部7は、導波管構造における伝送方向の長さが、伝送方向に直交する方向の長さより短く形成されている。このため、第1開口14aにおける結合部7の方向に延びる開口形状の先端を結合部7に近接して形成することが可能となる。
実施の形態1における導波構造部8においては、上壁面9に形成された凹部9aの裏面側に結合部7のフランジ7bが接合される構成である。このため、凹部9aの深さは、フランジ7bを上壁面9の凹部9aに接合したときに生じる突起、例えば、TOXカシメの突き出し、溶接痕、固定用のビスやナットの頭等の高さより深くなるように設計されている。このように凹部9aの深さを設定することにより、突起が上方に配置されている載置台6の裏面に接触する等の問題を回避することができる。
更に、実施の形態1における導波構造部8の上壁面9における結合部7の直上部分に凹部9a(加熱室2aの中央領域に対応)が形成されているため、前述の図10の(b)に示した構成となり、加熱室2aの中央領域における加熱温度の低下をさらに抑制できる構成となる。
以下、実施の形態1における第1開口14aの具体的な開口形状について図11を用いて説明する。なお、説明を容易なものとするため、図11において、中心線Vに対称的に上下に配置された第1開口14aにおいて、上側に図示した第1開口14aの開口形状について説明する。
まず、第1開口14aにおいて、中心点P1から幅方向Wの内側(中心線V側)に向かい上面壁9の凹部9aの方向に延びる開口の第1長さをA(図11において、中心点P1から右下側に延びる開口の長さ)、中心点P1から幅方向Wの内側に向かい先端開放部13の方向に延びる開口の第2長さをB(図11において、中心点P1から左下側に延びる開口の長さ)、中心点P1から幅方向Wの外側に向かい上面壁9の先端開放部側に延びる開口の第3長さをC(図11において、中心点P1から左上側に延びる開口の長さ)、中心点P1から幅方向Wの外側に向かい上面壁9の後方側に延びる開口の第4長さをD(図11において、中心点P1から右上側に延びる開口の長さ)とする。
図11に示すように、第3長さC及び第4長さDは同じ長さを有している。第1長さAは第2長さBより短く、第2長さBは第3長さC及び第4長さDより短く形成されている。即ち、第1長さAが最も短く形成されており、第1長さAを有する開口の先端部分が、結合部7が接合される上面壁9の凹部9aに近接した位置となっている。従って、第1長さAを有する開口の先端部分と、上壁面9の幅方向Wの中心線Vとの間の距離Xは、第2長さBを有する開口の先端部分と、上壁面9の幅方向Wの中心線Vとの間の距離Yより長くなっている。即ち、中心線Vを挟んで対向する第1開口14aにおいて、結合部7が接合される上面壁9の凹部9a(結合部7の接合部分)に近い開口間の領域が、上面壁9の凹部9a(結合部7)から離れた開口間の領域に比べて、広く平板な形状に形成されている。
導波管構造の管軸(中心線V)を挟んで対向する開口において、開口間の領域が平坦でなく凸凹を有する形状である場合には、導波管構造内の電磁界が乱れて、開口から放射される円偏波のマイクロ波が乱れるという問題を有する。このため、管軸を挟んで対向する開口間の領域においては、少しでも多くの平坦な領域を確保することが好ましい。このように、開口間の領域を平坦な領域とすることにより、開口から放射されるマイクロ波が乱れの少ない綺麗な円偏波となり、前述の吸い出し効果も高くなる。従って、図11に示した導波構造部8の中心線Vを挟んで対向する第1開口14aにおいては、結合部7の接合部分に近い開口間の領域が、広く平板な形状に形成されているため、それぞれの第1開口14aから好ましい円偏波が放射されると共に、吸い出し効果も高くなり、加熱室の中央領域に食品が配置された場合でも、第1開口14aからの放射を増やすことが可能な構成となる。
上記のように、実施の形態1における導波管構造アンテナの導波構造部8においては、管軸(V)を間にして対向する2つの第1開口14a,14aの開口形状において、結合部7に近い対向する開口間の距離(X+X)が、結合軸7から遠い、即ち先端開放部13に近い対向する開口間の距離(Y+Y)より長く形成されている。実施の形態1における導波構造部8においては、2つの長孔が交差する第1開口14aにおいて、交差する位置から結合部7に近づく方向に延びる開口の長さ(A)が、交差する位置から結合部7に近づく方向以外の方向に延びる開口の長さ(B,C,D)に比べて短く形成されている。
なお、管軸(中心線V)を間にして対向する第1開口14aの開口形状において、対向する開口間の距離が導波管構造の導波構造部8内の空間内を伝送するマイクロ波の1/8波長以上に設定されている。発明者の実験によれば、対向する開口間の距離を導波管構造の空間内を伝送するマイクロ波の1/8波長より短くした場合には、対向する開口からのマイクロ波放射による干渉が生じて、不均一な加熱分布が生じていた。発明者の実験によれば、対向する開口間の距離は、結合軸7aの軸径(18mm)に略一致した長さのとき、好ましい加熱分布の結果を得られた。
なお、第2開口14bに関しては、二本の同じ長さを有する長孔をそれぞれの中心で直交させたX字形状を有しており、それぞれの長孔の長軸が伝送方向の中心線Vに対して45度斜行している。実施の形態1においては、第2開口14bを構成するそれぞれの長孔の長軸の長さは、第3長さC及び第4長さDとほぼ同じ長さに設定されており、導波構造部8を伝送するマイクロ波の略1/4波長に設定されている。
また、実施の形態1における導波管構造アンテナのマイクロ波吸出し開口14においては、電界の集中を緩和し、異常な放電の発生を防止するために、曲面構造を有している。
実施の形態1の電子レンジにおける導波管構造アンテナにおいては、結合部7と導波構造部8との接合を管軸方向(伝送方向)が短く、幅方向が長いフランジ7bを用いた例で説明したが、本開示はこの構成に限定されるものではなく、マイクロ波加熱装置の仕様などに応じて変更可能である。例えば、結合部7のフランジ部分における伝送方向の長さを極端に短くし、幅方向のフランジ部分のみで導波構造部に接合(カシメ、スポット溶接)する構成とすれば、接合箇所を少なくすることが可能であり、マイクロ波吸出し開口14の開口形状を結合部7に対してより近接して形成することが可能となる。
また、結合部7のフランジ部分とマイクロ波吸出し開口14とのオーバーラップを避けるため、フランジ部分に開口回避部分(スリット)を形成して、フランジ部分を特殊な形状とすることも可能である。このような特殊な形状のフランジ部分を用いて導波構造部に接合することにより、フランジ部分の接合面積を小さくすることなく、結合部7と導波構造部8との接合状態をより強固なものとすることが可能となり、製品のばらつきを抑えることができる。
なお、結合部7の結合軸7aを円柱形状でなく、その断面をD形状、楕円形状、I形状、または丸棒形状に形成して、フランジ部分の形状を変更してマイクロ波吸出し開口14の開口形状を結合軸7aに対してより近接して形成することも可能である。また、各種断面形状を有する結合軸7aを直接的に導波構造部8に接合してもよい。このように構成することにより、フランジ部分を設けない構成とすることが可能となり、マイクロ波吸出し開口14の形成スペースをさらに確保することができる構成となる。
上記のように構成された本開示に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおいては、加熱室内における被加熱物に対する局所的な加熱が可能な構成であるとともに、加熱室内の加熱分布の均一化を図ることが可能な構成となる。本開示に係る実施の形態1の電子レンジにおいては、特に、導波管構造アンテナにおける回転中心の直上の加熱室の中央領域においても効率高く加熱することができるとともに、この中央領域の加熱温度の不均一を抑制することができる構成となる。
なお、実施の形態1においては、マイクロ波吸出し開口が、主として2つの長孔が交差する略X字状を有しており、被加熱物が円偏波のマイクロ波を吸い出す場合について説明したが、本開示のマイクロ波加熱装置としては、このような場合に限定されるものではない。マイクロ波吸出し開口の形状としては、略X字状以外であってもよく、円偏波を発生させることができる形状であればよい。また、マイクロ波吸出し開口を構成する長孔(あるいはスリット)としては、長方形に限定されるものではない。例えば、開口形状のコーナー部分を湾曲させるとか、楕円形状にするなどの場合であっても、円偏波を発生することが可能である。基本的な円偏波開口の考え方としては、管軸の一方に偏って配置された概ね細長い形状のものを2つ組み合わせればよいと推察される。
また、円偏波開口形状としては、電界の集中を抑制するために、曲線で構成することが好ましく、実施の形態1の電子レンジにおける第1開口14a及び第2開口14bにおいては全てのコーナー部分を曲線で構成している。
次に、実施の形態1の電子レンジ1を用いて行う導波管構造アンテナ5の回転制御について説明する。
本発明者らは、被加熱物の状態に応じてより適切な加熱制御を行うべく、鋭意検討を行った。特に、載置台6よりも上方にグリル皿を配置し、当該グリル皿上に被加熱物を載置した状態にて被加熱物のグリル加熱を行うグリルモードの制御について、鋭意検討を行った。
図12に、載置台6の上方にグリル皿20を配置し、グリル皿20上に被加熱物21を載置した状態を示す。図12に示すように、グリル皿20は、加熱室2aの側壁2dに固定されている。具体的には、加熱室2aの左右側の側壁2dには、前後方向に延びたレール(図示せず)が形成されており、グリル皿20は該レール上に配置されている。これにより、グリル皿20は、加熱室2a内において、底面(載置台6)よりも上方の位置にて配置される。実施の形態1では、加熱室2aの左右側の側壁2dに上下方向に複数段のレールが設けられており、グリル皿20の高さが複数段で調整可能に構成されている(例えば、上段、中段、下段)。
図13A−13Cを参照して、実施の形態1におけるグリル皿20について説明する。図13Aは、グリル皿20を上から見た平面図を示す。図13Bは、グリル皿20を横から見た側面図を示す。図13Cは、図13Aにおける9C−9C断面図を示す。グリル皿20は、額縁状の周囲部20aと、その内側に形成され、所定の深さの溝20b(図13Cでは図示せず)が複数並行に形成されたプレート20cと、周囲部20aの下側に設けられた絶縁部20dとを備える。このプレート20c上に被加熱物21が載せられて、加熱室2a内に載置される。グリル皿20は、加熱室2aの側壁2dに設けられたレールと、絶縁部20dにて接触するようにして加熱室2a内に配置される。プレート20cの裏面側(載置台6側)には、マイクロ波吸収体20e(例えば、フェライト)が設けられている。プレート20cの裏面は、グリル皿20の底面20fを構成している。周囲部20aとプレート20cは、マイクロ波を透過させない材料(例えば、鉄やアルミニウム等)により形成されている。絶縁部20dは、加熱室2aの側壁2dからグリル皿20を絶縁するように、絶縁性の材料(例えばPPS樹脂)により形成される一方で、マイクロ波を透過させるように構成されている。
このような構成において、図12に示すように、導波管構造アンテナ5から放射されたマイクロ波がグリル皿20の底面20fに到達すると(矢印E)、底面20fに設けられたマイクロ波吸収体20eの作用により、グリル皿20の底面20fが加熱される。これにより、グリル皿20上の被加熱物21がマイクロ波によって間接的に加熱されることとなる。一方、実施の形態1におけるグリル皿20の周囲部20aやプレート20cは、マイクロ波を透過させない材料により構成されているが、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの間には、マイクロ波が透過可能な隙間も形成されている。具体的には、グリル皿20において、加熱室2aの側壁2dに設けられたレールと接触する箇所には絶縁部20dが設けられており、絶縁部20dを形成するPPS樹脂は、マイクロ波を透過させる材料である。よって、この絶縁部20dを通じて、グリル皿20と加熱室2aの左右側の側壁2dの間からマイクロ波が透過可能となっている。また、グリル皿20の前方向では、ドアを構成するガラスがマイクロ波を透過する材料であり、マイクロ波が透過可能となっている。また、グリル皿20の後方向では、加熱室2aの側壁2dに凹凸等が形成される場合には、その隙間からマイクロ波が透過可能となっている。さらに、グリル皿20のコーナー部は、円弧状に形成されるため、当該グリル皿20のコーナー部と加熱室2aとの間に隙間が生じてマイクロ波が透過可能となっている。このような構成により、グリル皿20の底面20fに吸収されるマイクロ波とは別に、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの隙間を通じて、被加熱物21が配置されるグリル皿20上の空間にマイクロ波が到達する流れが生じる(矢印F)。このようなマイクロ波の流れによって、被加熱物21が直接的に加熱されることとなる。
上述したように、図12に示した配置による被加熱物21の加熱時(グリルモード)においては、グリル皿20の底面20fを介して被加熱物21を間接的に加熱するマイクロ波の流れ(矢印E)と、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの隙間を通じて被加熱物21を直接的に加熱するマイクロ波の流れ(矢印F)と、2つの流れが存在する。この2つの流れが合わさることで、被加熱物21が各方向から加熱されることとなる。
次に、本発明者らは、グリルモード時の導波管構造アンテナ5によるマイクロ波加熱性能について、図2A、2Bに示した給電室2b内における導波管構造アンテナ5の向きとの関係を考察した。この考察について、図14A、14B、15A、15Bを用いて説明する。
図14A、14Bはそれぞれ、グリルモードにおける導波管構造アンテナ5の第1の回転状態を示す平面図と斜視図である。図15A、15Bはそれぞれ、グリルモードにおける導波管構造アンテナ5の第2の回転状態を示す平面図と斜視図である。図14A、14Bに示す第1の回転状態は、導波管構造アンテナ5の先端開放部13が給電室2bの突出部18を向いた状態を表す。図14A、14Bは特に、導波管構造アンテナ5が左向きの状態を示す。図15A、15Bに示す第2の回転状態は、導波管構造アンテナ5の先端開放部13が給電室2bの突出部18を向かない状態を表す。図15A、15Bは特に、導波管構造アンテナ5が左後ろ向きである状態(先端開放部13が給電室2bの隅部22aを向いた状態)を示す。
図14A、14B、15A、15Bの配置によるグリルモードにおいては、加熱室2a内の底面である載置台6上には、被加熱物21が載置されない。よって、前述した円偏波開口の第1開口14aおよび第2開口14bによるマイクロ波の吸出し効果はそれほど得られない。よって、導波管構造アンテナ5からのマイクロ波は、第1開口14aおよび第2開口14bからよりも、先端開放部13から多く放射されようとする。
図14A、14Bに示される第1の回転状態では、先端開放部13は給電室2bの突出部18aを向いている。よって、先端開放部13から放射されたマイクロ波は、突出部18aにて上向きに反射される(矢印H)。突出部18aは、給電室2bの内側に突出した部分であるため、突出部18aにて反射されたマイクロ波は、給電室2b内の左右方向および前後方向における中央側の領域を上昇することとなる。このように上昇したマイクロ波は、加熱室2a内に配置されたグリル皿20の底面20fに到達する。第1開口14aおよび第2開口14bから上方に放射されたマイクロ波(矢印I)も同様に、グリル皿20の底面20fに到達する。このように、導波管構造アンテナ5から放射されたマイクロ波の多くは、グリル皿20の底面20fに到達することとなる。これにより、グリル皿20の底面20fを介した間接的な加熱が促進される。すなわち、第1の回転状態では、先端開放部13が給電室2bの突出部18を向いた状態にてマイクロ波放射を行うことで、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの隙間を通じた直接的なマイクロ波加熱(あたため、図12の矢印Fに対応)よりも、グリル皿20の底面20fを介した間接的なマイクロ波加熱(マイクロ波吸収体が高温となって被加熱物を下から熱で焼く、図12の矢印Eに対応)を重点的に行うことができる。
なお、「先端開放部13が突出部18を向く」とは、先端開放部13が向いている方向(マイクロ波の伝送方向Zに一致)が、突出部18の少なくとも一部に重なる場合を意味する。
一方、図15A、15Bに示される第2の回転状態では、先端開放部13は、給電室2bの突出部18以外の領域である給電室2bの隅部(図15A、15Bの例では隅部22a)を向いている。これにより、先端開放部13から放射されたマイクロ波は、給電室2bの隅部22aにて上向きに反射される(矢印K)。反射されたマイクロ波は、給電室2b内の隅部22a近傍の領域を上昇し、加熱室2aでも同様に隅部の領域を上昇することとなる。このように上昇したマイクロ波は、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの隙間(特にコーナー部の隙間)に到達する。当該隙間に到達したマイクロ波は、被加熱物21が配置されるグリル皿20の上方の空間に回り込み、被加熱物21の直接的な加熱を行う。一方で、第1開口14aおよび第2開口14bから上方に放射された少量のマイクロ波(矢印L)は、加熱室2a内に配置されたグリル皿20の底面20fに到達し、グリル皿20の底面20fを介した間接的な加熱を行う。このように、導波管構造アンテナ5から放射されたマイクロ波の多くは、グリル皿20の底面20fよりも、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの隙間に到達することとなるため、マイクロ波による直接的な加熱が促進される。すなわち、第2の回転状態では、先端開放部13が給電室2bの突出部18を向かない状態にてマイクロ波放射を行うことにより、グリル皿20の底面20fを介した間接的な加熱よりも、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの隙間を通じた直接的なマイクロ波加熱を重点的に行うことができる。
なお、図15A、15Bでは、先端開放部13が給電室2bの隅部(隅部22a)に向く場合について説明したが、給電室2bの隅部だけでなく、例えば給電室2bの前方向および後方向を向く場合であっても、先端開放部13から放射されたマイクロ波は同様に、給電室2bの側壁2cにて上方向に反射される。これにより、反射されたマイクロ波は、給電室2bおよび加熱室2aの隅部の領域を上昇して、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの隙間に到達する。当該隙間に到達したマイクロ波はその後、グリル皿20の上方の空間に回り込み、被加熱物21を直接的に加熱する。このような場合を含めて、先端開放部13が給電室2bの突出部18を向かない場合であれば、多くのマイクロ波をグリル皿20の上方の空間に回り込ませることができる。
上述した考察により、本発明者らは、導波管構造アンテナ5の先端開放部13を給電室2bの突出部18に向ける制御(第1の回転状態)と、給電室2bの突出部18に向けない制御(第2の回転状態)を使い分けることで、被加熱物21の加熱形態を異ならせることができることを見出した。本知見に基づいて、本発明者らが発明した制御フローについて、図16―19を用いて説明する。当該制御フローは、被加熱物21をグリル皿20上に載置してグリル加熱するグリルモードにおいて、被加熱物21の状態に応じた制御、特に被加熱物21が冷凍食品であるか否かに応じてより適切な制御を行うように工夫されたものである。
(第1のグリルモード)
図16は、制御部17による第1のグリルモードに対応した制御フローを示す図である。第1のグリルモードは、被加熱物21に対して、グリル皿20の底面20fを介した間接的な加熱を重点的に行うモードである。当該フローは特に、被加熱物21が冷凍食品以外の食品の場合に有効となる加熱制御である。図17(a)−17(e)は、図16に示す制御フローの各ステップに対応した導波管構造アンテナ5の回転位置を示す図である。
図16に示すように、当該モードが開始されるとまず、回転移動を行う(ステップS1)。具体的には、回転駆動部であるモータ15が導波管構造アンテナ5の結合部7を回転させることにより、図17(a)に示すように、導波管構造アンテナ5が結合部7の結合軸7aの回転中心Gを中心に回転する。本実施の形態1では、導波管構造アンテナ5を上方視における時計回りに一定速度で回転させるように制御する(例えば、10.2秒/1回転の速度)。当該ステップS1においては、導波管構造アンテナ5の先端開放部13が給電室2bにおける後方を向いた状態から開始する。以降では、導波管構造アンテナ5(先端開放部13)の向きについて、後方を0°と設定し、後方を基準として時計回りに0°―360°の角度を設定するものとする。
次に、右向き停止を行う(ステップS2)。具体的には、図17(b)に示すように、導波管構造アンテナ5が概ね右方向を向いたときに停止させるように制御する。より具体的には、導波管構造アンテナ5の先端開放部13が給電室2bにおける右側の突起18bを向いた状態にて停止させる(例えば、95°の向き)。
その後、所定時間停止させた後(例えば4.9秒)、再度、回転移動を行う(ステップS3)。具体的には、右向きにて停止していた導波管構造アンテナ5を、図17(c)に示すように、時計回りにて一定速度で回転させるように制御する(例えば、ステップS1と同じ10.2秒/1回転の速度)。
次に、左向き停止を行う(ステップS4)。具体的には、図17(d)に示すように、導波管構造アンテナ5が概ね左方向を向いたときに停止させるように制御する。より具体的には、導波管構造アンテナ5が給電室2bにおける左側の突起18aを向いた状態にて停止させる(例えば、275°の向き)。本実施の形態1では、ステップS2における所定時間と同じ時間(例えば、4.9秒)、停止を行う。
ステップS4による停止が終了すると、最後に、回転移動を行う(ステップS5)。具体的には、左向きにて停止していた導波管構造アンテナ5を、図17(e)に示すように、時計回りにて一定速度で回転させるように制御する(例えば、ステップS1、S3と同じ10.2秒/1回転の速度)。
ステップS1−S5を繰り返すことにより、図17(a)―17(e)に示すように、導波管構造アンテナ5を同じ方向に一定速度で回転させながら、給電室2bの突出部18a、18bを向いたときに停止させるように制御することができる。これにより、導波管構造アンテナ5を回転させる際に、導波管構造アンテナ5の先端開放部13が給電室2bの突出部18a、18bを向く時間を長くすることができる。このような制御により、結合軸7aの回転中心Gを中心として放射状に回転しながら被加熱物21を加熱するとともに、グリル皿20の底面20fを介した間接的な加熱を重点的に行うことができる(図14A、14Bの説明を参照)。このような加熱は主に、冷凍食品以外の通常の食品に対してグリル加熱を行う際に、食品を効率的かつより均一に加熱する(即ち焼く)ことができる。これを受けて、本実施の形態1における制御部17は、冷凍食品以外の食品を被加熱物21とするグリルモードが選択された際に、少なくとも第1のグリルモードを含む制御を実施するようにしている。これにより、食品の状態(常温又は冷蔵の状態)に応じてより適切な加熱制御を行うことができる。つまり、早くおいしく焼くことができる。
(第2のグリルモード)
図18は、制御部17による第2のグリルモードに対応した制御フローを示す図である。第2のグリルモードは、被加熱物21に対して、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの隙間を通じた直接的な加熱を重点的に行うモードである。当該フローは特に、被加熱物21が冷凍食品である場合に有効となる加熱制御である。図19(a)−19(e)は、図18に示す制御フローの各ステップに対応した導波管構造アンテナ5の回転位置を示す図である。
図18に示すように、当該モードが開始されるとまず、回転移動を行う(ステップS6)。具体的には、回転駆動部であるモータ15が導波管構造アンテナ5の結合部7を回転させることにより、図19(a)に示すように、導波管構造アンテナ5が結合部7の結合軸7aの回転中心Gを中心に回転する。本実施の形態1では、導波管構造アンテナ5を上方視における時計回りに一定速度で回転させるように制御する(例えば、6.12秒/1回転の速度)。また、当該ステップS6においても、前述したステップS1と同様に、導波管構造アンテナ5の先端開放部13が給電室2bにおける後方を向いた状態から開始する。
次に、右後ろ向き停止を行う(ステップS7)。具体的には、図19(b)に示すように、導波管構造アンテナ5が概ね右後ろ向きになったときに停止させるように制御する。より具体的には、導波管構造アンテナ5の先端開放部13が給電室2bの隅部22b近傍の領域を向いた状態にて停止させる(例えば、65°の向き)。
その後、所定時間停止させた後(例えば、3.92秒)、再度、回転移動を行う(ステップS8)。具体的には、右後ろ向きにて停止していた導波管構造アンテナ5を、図19(c)に示すように、時計回りにて一定速度で回転させるように制御する(例えば、ステップS6と同じ6.12秒/1回転の速度)。
次に、左後ろ向き停止を行う(ステップS9)。具体的には、図19(d)に示すように、導波管構造アンテナ5が概ね左後ろ向きになったときに停止させるように制御する。より具体的には、導波管構造アンテナ5の先端開放部13が給電室2bの隅部22a近傍を向いた状態にて停止させる(例えば、305°の向き)。本実施の形態1では、ステップS7における所定時間と同じ時間、停止を行う(例えば、3.92秒)。
ステップS9による停止が終了すると、最後に、回転移動を行う(ステップS10)。具体的には、左後ろ向きにて停止していた導波管構造アンテナ5を、図19(e)に示すように、時計回りに一定速度で回転させるように制御する(例えば、ステップS6、S8と同じ6.12秒/1回転の速度)。
ステップS6−S10を繰り返すことにより、図19(a)―19(e)に示すように、導波管構造アンテナ5を同じ方向に一定速度で回転させながら、給電室2bの突出部18a、18bを向かない状態(実施の形態1では、給電室2bの隅部22a、22b近傍の領域を向いた状態)にて停止させるように制御することができる。これにより、導波管構造アンテナ5を回転させる際に、導波管構造アンテナ5の先端開放部13が給電室2bの突出部18を向かない時間を長くすることができる。このような制御により、結合軸7aの回転中心Gを中心として放射状に回転しながらマイクロ波を放射して、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの隙間を通じた直接的な加熱を重点的に行うことができる(図15A、15Bの説明を参照)。このような加熱は主に、冷凍食品に対してグリル加熱を行う際に有効である。一般的に冷凍食品を、ヒータやグリル皿などの熱だけで焼くと、表面は焦げて中は冷たいまま終わってしまうことが知られている。冷凍食品はまず解凍してから焼くほうが良い。解凍には直接的なマイクロ波による加熱が有効である(食品の内部まで到達して解かすことができる)。よって、グリル皿20と加熱室2aの側壁2dとの隙間を通じた直接的なマイクロ波加熱を重点的に行うことで、冷凍食品を焦がすことなく効率的かつより均一に解凍することができる。これを受けて、本実施の形態1における制御部17は、冷凍食品を被加熱物21とするグリルモードが選択された際に、少なくとも第2のグリルモードを含む制御を実施するようにしている。これにより、食品の状態(冷凍状態)に応じてより適切な加熱制御を行うことができる。
上述したように、実施の形態1における電子レンジ1の制御部17は、被加熱物21の状態に応じて、第1のグリルモード又は第2のグリルモードを選択的に使用することで、より適切な制御を行うことができる。
なお、実施の形態1では、第1および第2のグリルモードにおいて、導波管構造アンテナ5を停止させる時間を設けることにより、先端開放部13が突出部18を向く時間および向かない時間をそれぞれ長くするようにしたが、このような場合に限らない。例えば、導波管構造アンテナ5の停止時間を設けることなく、先端開放部13が向く方向に応じて導波管構造アンテナ5の回転速度を可変に設定することで、それぞれの時間を長くするようにしてもよい。具体的には、図16、17を用いて説明した第1のグリルモードのように、グリル皿20の底面20fを介した被加熱物21の間接的な加熱を重点的に行うことは、図20に示すような導波管構造アンテナ5に関する回転速度の制御により、同様に達成することができる。図20に示す例では、導波管構造アンテナ5の先端開放部13が右向きおよび左向きとなる場合およびその前後において導波管構造アンテナ5の回転速度をそれ以外の向きとなる場合よりも相対的に遅くするようにしている。このような設定であっても、導波管構造アンテナ5の先端開放部13が給電室2bの突出部18を向く時間を長くすることができるため、特に冷凍食品以外の食品に適した加熱を行うことができる。同様に、図17、18を用いて説明した第2のグリルモードのように、グリル皿20と加熱室2aの隙間を通じた被加熱物21の直接的な加熱を重点的に行うことは、図21に示すような導波管構造アンテナ5に関する回転速度の制御により、同様に達成することができる。図21に示す例では、導波管構造アンテナ5の先端開放部13が右後ろ向きおよび左後ろ向きとなる場合およびその前後において、導波管構造アンテナ5の回転速度をそれ以外の向きとなる場合よりも相対的に遅くするようにしている。このような設定であっても、導波管構造アンテナ5の先端開放部13が給電室2bの突出部18を向かない時間を長くすることができ、特に冷凍食品に適した加熱を行うことができる。
また、実施の形態1では、第1のグリルモードにおいて、導波管構造アンテナ5を右向きと左向きにて同じ時間停止させる場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、右向きと左向きで異なる時間停止させてもよい。あるいは、右向き又は左向きのいずれかで停止させるようにしてもよい。同様に、第2のグリルモードにおいて、導波管構造アンテナ5を右後ろ向きと左後ろ向きにて同じ時間停止させる場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、右後ろ向きと左後ろ向きで異なる時間停止させてもよい。あるいは、右後ろ向きか又は後ろ向きのいずれかで停止させるようにしてもよい。さらには、右後ろ向きおよび左後ろ向きでは停止させずに、右前向きや左前向きにて停止させるようにしてもよい。
また、実施の形態1では、第1および第2のグリルモードにおいて、導波管構造アンテナ5を回転させる際に、同じ方向に一定速度で回転させる場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、導波管構造アンテナ5の回転の途中において、その回転方向を反転させるようにしてもよい。
また、実施の形態1では、第1および第2のグリルモードを単独で実施する場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、第1および第2のグリルモードを互いに組み合わせてもよく、あるいは第1および第2のそれぞれのモードに他のモードを組み合わせてもよい(例えば、導波管構造アンテナ5を常に同じ方向に一定速度で回転させるモードなど)。言い換えれば、少なくとも第1のグリルモードを含んだ加熱制御を行うことで、冷凍食品以外の食品に適した効率的な加熱を行うことができる。同様に、少なくとも第2のグリルモードを含んだ加熱制御を行うことで、冷凍食品に適した効率的な加熱を行うことができる。冷凍食品に適した効率的な加熱を行うことができる。一例として、冷凍食品を焼きたい場合がある。このときは、前半を第2のグリルモードとして冷凍食品を解凍した上で、後半に第1のグリルモードに切り替えて表面を焼いて焦げ目をつけることができる。出来栄えとして、内部にちゃんと火を通し、表面を適度に焼き上げることが可能となる。なお、グリルモードの切替にはセンサを使うことが有効である。例えば、第2のグリルモードで加熱しながら温度センサで食品の温度を検出し、解凍終了と判断できる温度(例えば、0度)に到達したら第1のグリルモードに切り替えればよい。当然のことながら、センサは温度センサに限らず、CMOSカメラ等により外観で判断しても良いし、食品からの蒸気発生を湿度センサで検出しても良い。臭いや重量変化等を検出する方法であっても実現できる可能性が有る。
また、実施の形態1では、制御部17が第1および第2のグリルモードの両方を含む場合について説明したが、このような場合に限らず、少なくとも第1のグリルモードを有していればよい。少なくとも第1のグリルモードを有することにより、被加熱物21の状態に応じてより適切な制御を行うことができる。
また、実施の形態1では、突出部18a、18bが左右側の側壁2cを形成するように設けられる場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、給電室2bの平面視における断面形状等に応じて、突出部18の配置位置を適宜決定してもよい。また、突出部18は、側壁2cを形成するものに限らず、底壁11の中央側において側壁2cを形成せずに、側壁2cとは独立して設けられてもよい。すなわち、突出部18は、給電室2bの「底壁11」から給電室2bに向けて突出するものであればよい。
以上のように、本開示のマイクロ波加熱装置においては被加熱物の状態に応じてより適切な加熱制御を行うことができる。このため、本開示は、被加熱物に対する加熱加工及び殺菌処理などを行うマイクロ波加熱装置として用いる場合においても有効に利用することができる。
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。