JPWO2014057937A1 - エマルジョン凝固剤及びこれを用いるタイヤパンク修理キット - Google Patents
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Abstract
Description
本願出願人はこれまでに凝固剤として、天然ゴムラテックスを含有するエマルジョンを凝固させる液状凝固剤であって、pHが2.0〜4.0であり、カチオン性官能基を有するウレタン樹脂および/またはアクリル樹脂を含有する液状凝固剤(特許文献1)、エマルジョン粒子を含有するタイヤパンクシール材を凝固させるためのエマルジョン凝固剤であって、前記エマルジョン粒子の表面電荷を弱めることおよび前記エマルジョン粒子と水素結合することのうちのいずれか一方または両方によって、前記エマルジョン粒子の凝集を引き起こす鉱物と、ゲル化剤とを含有するエマルジョン凝固剤(特許文献2)を提案している。
また、タイヤパンクシール剤に凍結防止剤が入っているか否かにかかわらず、従来の凝固剤とは異なるメカニズムでタイヤパンクシール剤を効果的に凝固させることができるエマルジョン凝固剤が必要であると本願発明者は考えた。
本発明は、タイヤパンクシール剤に対して使用する新規で凝固性に優れるエマルジョン凝固剤及びこれを用いるタイヤパンク修理キットを提供することを目的とする。
また、本願発明はこれまでの凝固剤とは異なる組合わせの材料を使用するので、そのメカニズムも従来とは異なる。つまり、当該組合わせにおいては、酸化マグネシウムとセルロース又は水酸化マグネシウムがシランカップリング剤を介してネットワーク(架橋構造)を形成して、タイヤパンクシール剤(修理液)をゲル化させていると考えられる。
また、本願発明はタイヤパンクシール剤が凍結防止剤を含むか否かにかかわらず効果的にタイヤパンクシール剤を凝固させることができる。
1. 酸化マグネシウムとシランカップリング剤とセルロース及び/又は水酸化マグネシウムとを含有し、前記酸化マグネシウムと前記シランカップリング剤の質量比が100:0.5〜100:15である、エマルジョン凝固剤。
2. 前記シランカップリング剤が、ジ‐メトキシシリル基、トリ‐メトキシシリル基、ジ‐エトキシシリル基及びトリ‐エトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種とメタクリロキシ基とを持つ化合物、テトラメトキシシラン、並びに、テトラエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1に記載のエマルジョン凝固剤。
3. 前記酸化マグネシウムと前記セルロース及び/又は前記水酸化マグネシウムの質量比が100:40〜100:400である、上記1又は2に記載のエマルジョン凝固剤。
4. 前記酸化マグネシウムと前記シランカップリング剤と前記セルロース及び/又は前記水酸化マグネシウムとを一括梱包した、上記1〜3のいずれかに記載のエマルジョン凝固剤。
5. 上記1〜4のいずれかに記載のエマルジョン凝固剤とタイヤパンクシール剤とを有する、タイヤパンク修理キット。
本発明のエマルジョン凝固剤は、酸化マグネシウムとシランカップリング剤とセルロース及び/又は水酸化マグネシウムとを含有し、前記酸化マグネシウムと前記シランカップリング剤の質量比が100:0.5〜100:15である、エマルジョン凝固剤である。
本発明のエマルジョン凝固剤に含有されるシランカップリング剤としては、例えば、加水分解性シリル基と加水分解性シリル基以外の官能基とを有する化合物、4官能の加水分解性シランが挙げられる。
シランカップリング剤が有するケイ素原子1個に結合した、例えば、アルコキシ基、芳香族炭化水素基と酸素原子とが結合した基の数は1〜3個であり、凝固性により優れるという観点から、2又は3個であるのが好ましい。シランカップリング剤が有するケイ素原子1個に結合した、例えば、アルコキシ基、芳香族炭化水素基と酸素原子とが結合した基の数が1又は2個である場合、ケイ素原子に結合できる他の基は特に制限されない。例えば、炭化水素基とすることができる。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基のような脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。炭化水素基は例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい。炭化水素基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、不飽和結合を有してもよい。
シランカップリング剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。シランカップリング剤はその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
本発明のエマルジョン凝固剤に含有されうる水酸化マグネシウムは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
本発明のエマルジョン凝固剤に含有されうるセルロースはグルコース分子がグリコシド結合によって直鎖状に重合した化合物であれば特に制限されない。
またセルロースはセルロースが有する少なくとも一部のヒドロキシ基が例えば、−O−R−COOX(Rは炭化水素基であり、Xは水素原子;ナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属;アンモニウムイオンのいずれかである。炭化水素基は上記と同義である。)、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルで変性されていてもよい。
なかでも、凝固性により優れ、貯蔵安定性に優れるという観点から、変性されていないセルロース;セルロースが有する少なくとも一部のヒドロキシ基が例えば、−O−R−COOXで変性されているものが好ましい。式中、Rとしての炭化水素基は特に制限されない。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。炭化水素基としては例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよく、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、不飽和結合を有してもよい。具体的には例えば、アルキレン基、フェニレン基が挙げられる。
また、セルロースとしては、凝固性により優れ、貯蔵安定性、コスト性に優れるという観点から、古紙セルロース、古紙リサイクル品、セルロースファイバーを使用することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
セルロースの重量平均分子量は、凝固性により優れ、貯蔵安定性、コスト性に優れるという観点から、3万〜100万であるのが好ましく、10万〜60万であるのがより好ましい。セルロースの重量平均分子量はジメチルフォルムアミドを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリエチレンオキサイド換算で求められた。
セルロース、水酸化マグネシウムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらはその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
また、例えば、酸化マグネシウムとシランカップリング剤とを予め混合して反応させ、これにセルロース及び/又は水酸化マグネシウムを加えてもよい。酸化マグネシウムとシランカップリング剤とを予め混合する際加熱してもよい。添加剤を使用する場合はどの段階においてこれを添加するかは制限されない。
また、例えば、セルロース及び/又は水酸化マグネシウムとシランカップリング剤とを予め混合して反応させ、これに酸化マグネシウムを加えてもよい。セルロース及び/又は水酸化マグネシウムとシランカップリング剤とを予め混合する際加熱してもよい。添加剤を使用する場合はどの段階においてこれを添加するかは制限されない。
本発明のエマルジョン凝固剤はその形態について特に制限されない。例えば、本発明のエマルジョン凝固剤を一括梱包した態様とすることができる。ここで一括梱包とは酸化マグネシウムとシランカップリング剤とセルロース及び/又は水酸化マグネシウムと必要に応じて使用することができる添加剤とが1つにまとまっていることをいう。
具体的な態様としては、例えば、全ての成分が混合されて1つのパッケージに入っている1液型タイプ;成分が2つ以上のパッケージに別々に入れられており、2つ以上のパッケージが1つのセットとなっている2液以上型タイプが挙げられる。
2液以上型タイプとしては、酸化マグネシウムとシランカップリング剤とを含む第1液とセルロース及び/又は水酸化マグネシウムを含む第2液とを有する2液型タイプ;セルロース及び/又は水酸化マグネシウムとシランカップリング剤とを含む第1液と酸化マグネシウムを含む第2液とを有する2液型タイプ;酸化マグネシウムを含む第1液とシランカップリング剤を含む第2液とセルロース及び/又は水酸化マグネシウムを含む第3液とを有する3液型タイプが挙げられる。添加剤を使用する場合は、添加剤をいずれのパッケージに添加してもよい。
しかし、エマルジョン凝固剤が凍結防止剤を含有する場合、ゲル化剤によってタイヤパンクシール剤を凝固させることには改善の余地があった。
これに対して、本発明のエマルジョン凝固剤は酸化マグネシウムとシランカップリング剤とセルロース及び/又は水酸化マグネシウムとの組合わせによるものである。本発明のエマルジョン凝固剤はタイヤパンクシール剤を効果的に凝固させることができる。本発明のエマルジョン凝固剤において、酸化マグネシウムとセルロース及び/又は水酸化マグネシウムがシランカップリング剤を介してネットワーク(架橋構造)を形成して、タイヤパンクシール剤をゲル化させると考えられる。なお、上記のメカニズムは本願発明者の推測であり、別のメカニズムであっても本願発明に含まれる。
本発明によればタイヤパンクシール剤の回収の際(例えば、タイヤ内部に残ったタイヤパンクシール剤をタイヤから抜き切った後本発明のエマルジョン凝固剤を使用する場合や、タイヤパンクシール剤を使用したタイヤ内に本発明のエマルジョン凝固剤を使用する場合。)、速やかにタイヤパンクシール剤を凝固させることができる。凝固後、タイヤパンクシール剤はほぼ固体となるので取扱いが容易である。またこれによってタイヤパンクシール剤を簡便に廃棄することができる。
エマルジョン凝固剤の使用量は、タイヤパンクシール剤の凝固性により優れるという観点から、タイヤパンクシール剤100質量部に対して、5〜50質量部であるのが好ましく、10〜40質量部であるのがより好ましい。
本発明のタイヤパンク修理キットは、本発明のエマルジョン凝固剤とタイヤパンクシール剤とを有する、タイヤパンク修理キットである。
タイヤパンクシール剤に含有されるエマルジョンとしては、例えば、天然ゴム系ラテックス、合成ゴム系ラテックスのようなゴム系ラテックス;合成樹脂系エマルジョンが挙げられる。
タイヤパンクシール剤に用いられる天然ゴム系ラテックスは特に制限されない。
合成ゴム系ラテックスは特に制限されず、例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)のような合成ゴムのラテックスが挙げられる。
タイヤパンクシール剤に用いられる合成樹脂系エマルジョンは、特に限定されず、例えば従来公知のものが挙げられる。合成樹脂エマルジョンとしては、例えば、ウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル系共重合体(エチレン酢酸ビニル系共重合体は、エチレン酢酸ビニル共重合体のほか、例えば、エチレン酢酸ビニルバーサチック酸ビニル共重合体を含む。)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルのような合成樹脂のエマルジョン挙げられる。
タイヤパンクシール剤に含有されるエマルジョン粒子としては、例えば、ゴム系ラテックス粒子、合成樹脂系エマルジョン粒子が挙げられる。
タイヤパンクシール剤に用いられるエマルジョン粒子としてのゴム系ラテックス粒子は特に制限されず、例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には例えば、天然ゴムラテックス粒子;スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)のような合成ゴム系ラテックスの粒子(合成ゴム系ラテックス粒子)が挙げられる。ゴム系ラテックス粒子はその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
エマルジョン粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、入手が容易で安価であるという観点から、エチレン酢酸ビニル系エマルジョン粒子、天然ゴムラテックス粒子、SBRラテックス粒子が好ましい。天然ゴムラテックス粒子は特に制限されない。SBRラテックス粒子は特に制限されない。いずれも例えば従来公知のものが挙げられる。
エマルジョン固形分(エマルジョン粒子を含む。)の量は特に制限されない。例えば、タイヤパンクシール剤中の5〜50質量%とすることができる。
また、これらの樹脂を乳化して得られるエマルジョンが、タイヤパンクシール剤に含有されるエマルジョンとの相溶性に優れる点から好ましい態様の1つである。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において、タイヤパンクシール剤中の水の量は、タイヤパンクシール剤全体の20〜50質量%とすることができる。
本発明のタイヤパンク修理キットはタイヤパンク応急修理キットとして使用することができる。
<評価>
以下とおり製造したエマルジョン凝固剤を用いて以下の評価を行った。結果を各表に示す。なお表中の評価結果における矢印は、そのサンプルのゲル化時間の評価結果が、サンプル24の結果と同じであったことを意味する。
・ゲル化時間
パンク修理材(タイヤパンクシール剤、表中ではパンク修理液)100gに以下のとおり製造したエマルジョン凝固剤10gを加えて混合した後、混合液がゲル化するまでの時間(単位:分)を測定した。
・貯蔵安定性
以下とおり製造したエマルジョン凝固剤を容器に入れて窒素ガス置換しこれを密封して80℃の条件下で6ヵ月保管した後の貯蔵安定性を評価した。エマルジョン凝固剤が粉末状態であり、パンク修理材に容易に分散できるである場合を「優良」、エマルジョン凝固剤が部分的にでも固化しており、パンク修理材に分散しないである場合を「不可」とした。
下記表に示す成分を同表に示す量(質量部)で用いてこれらを撹拌して均一に混合しエマルジョン凝固剤を製造した。なお表中の成分における矢印は、そのサンプルにおいて、その欄の成分を矢印の指す量で使用したことを意味する。
・酸化マグネシウム:試薬
・メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:商品名KBM−503、信越化学社製
・メタクリロキシプロピルジメトキシシラン:商品名KBM−502、信越化学社製
・メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン:商品名KBE−503、信越化学社製
・メタクリロキシプロピルジエトキシシラン:商品名KBE−502、信越化学社製
・メタクリロキシプロピルジプロポキシシラン:試薬、和光純薬社製
・テトラメトキシシラン:試薬、和光純薬社製
・テトラエトキシシラン:試薬、和光純薬社製
・CMセルロースNa:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、試薬、重量平均分子量50万
・CMセルロースNH4:カルボキシメチルセルロースアンモニウム塩、試薬、重量平均分子量50万
・セルロースファイバー:商品名スーパージェットファイバー、日本製紙木材社製
・古紙セルロース:商品名RNP2 三共製粉社製
・アルミナ:酸化アルミニウム、試薬
・水酸化マグネシウム:試薬
・パンク修理液:パンク修理液は、エマルジョンとして合成樹脂系エマルジョンと凍結防止剤(プロピレングリコール)とを含む。エマルジョンの固形分はパンク修理液中の25質量%であった。凍結防止剤の量はエマルジョン固形分の200質量%で調製された。
これに対して、サンプル2−8、11−16、18−23、31−45は凝固性に優れる。またこれらのサンプルは凍結防止剤を含むパンク修理液に対して使用されても凝固性に優れる。したがって凍結防止剤を含まないパンク修理液に対しても優れた凝固性を発揮すると考えられる。
なかでも、酸化マグネシウムとシランカップリング剤の質量比が100:1〜100:4であるサンプル3−5、11、13−16はサンプル2、6−8、12よりも凝固性により優れる。
また、シランカップリング剤が、ジ‐メトキシシリル基、トリ‐メトキシシリル基、ジ‐エトキシシリル基、トリ‐エトキシシリル基と、メタクリロキシ基とを持つ化合物、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種であるサンプル4、18−20、22、23はサンプル21よりも凝固性により優れる。サンプル35に対するサンプル31−34、36、37の結果も同様である。
酸化マグネシウムとセルロース又は水酸化マグネシウムの質量比が100:40〜100:400であるサンプル2−8、11−15はサンプル16よりも凝固性により優れる。
エマルジョン凝固性がセルロースを含有し、酸化マグネシウムとシランカップリング剤の質量比が酸化マグネシウム100に対してシランカップリング剤1以上である場合(サンプル3−8、11−16、18−23、38−45)は、水酸化マグネシウムを含有する場合(サンプル31−37)、酸化マグネシウムとシランカップリング剤の質量比が酸化マグネシウム100に対してシランカップリング剤が1未満である場合(サンプル2)よりも貯蔵安定性に優れる。
Claims (5)
- 酸化マグネシウムとシランカップリング剤とセルロース及び/又は水酸化マグネシウムとを含有し、
前記酸化マグネシウムと前記シランカップリング剤の質量比が100:0.5〜100:15である、エマルジョン凝固剤。 - 前記シランカップリング剤が、
ジ‐メトキシシリル基、トリ‐メトキシシリル基、ジ‐エトキシシリル基及びトリ‐エトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種とメタクリロキシ基とを持つ化合物、
テトラメトキシシラン、並びに、
テトラエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のエマルジョン凝固剤。 - 前記酸化マグネシウムと前記セルロース及び/又は前記水酸化マグネシウムの質量比が100:40〜100:400である、請求項1又は2に記載のエマルジョン凝固剤。
- 前記酸化マグネシウムと前記シランカップリング剤と前記セルロース及び/又は前記水酸化マグネシウムとを一括梱包した、請求項1〜3のいずれかに記載のエマルジョン凝固剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のエマルジョン凝固剤とタイヤパンクシール剤とを有する、タイヤパンク修理キット。
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