JPWO2014054093A1 - 圧粉磁心およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、Fe−Si−B系アモルファス金属が有する優れた磁気特性を維持しながら、金属ガラスや結晶質合金が有する成形加工性を兼ね備えた圧粉磁心およびその製造方法を提供することを目的とする。本発明に係る圧粉磁心は、Fe−Si−B系アモルファス金属の粉末を主体とする圧粉磁心であって、前記Fe−Si−B系アモルファス金属の各粒子の表面には、該Fe−Si−B系アモルファス金属の粒子と元素Mとの拡散反応により生成した合金の層が形成されており、前記圧粉磁心の相対密度が80%以上である。

Description

本発明は、圧粉磁心に関し、特に、アモルファス合金粉末を用いた圧粉磁心およびその製造方法に関するものである。
環境保護や省エネルギーへの意識の高まりにより、エコ製品(例えば、太陽光発電、ハイブリッド自動車、電気自動車など)が広く普及し始めている。それらエコ製品では、高効率化のためにDC-DCコンバータやインバータが使用されており、該コンバータやインバータ内には、電圧変換や電流変動(交流成分やノイズ成分)阻止のためのインダクタンス素子(例えば、リアクトル、チョークコイル)が搭載されている。
エコ製品にとって、あらゆる部品の小型化は至上命題の一つである。インダクタンス素子への小型化要求に応えるため、使われる磁心に関して、形状自由度の高い圧粉磁心の重要性が高まっている。また、コンバータやインバータの高効率化のため、インダクタンス素子に使われる圧粉磁心には、高い磁気特性と高い機械的強度とが求められている。
ここで、圧粉磁心とは、表面に電気的絶縁処理を施した軟磁性金属粉末をプレス成形した磁心である。軟磁性金属としては、従来から、Fe(純鉄)、Fe-Si(鉄−ケイ素)系合金、Fe-Si-Al(鉄−ケイ素−アルミニウム)系合金、Fe-Ni(鉄−ニッケル)系合金などの金属材料が用いられてきた。強磁性元素(Fe、Ni、Co(コバルト)など)を主成分とするアモルファス金属(アモルファス相になっている合金)は、優れた磁気特性(高い飽和磁束密度、高い透磁率、非常に低い鉄損)を示すことから磁心材料として期待されており、なかでもFe-Si-B(鉄−ケイ素−ホウ素)系アモルファス金属は、近年注目を集めている。
アモルファス金属は、一般的に、溶融した合金を超急冷することにより作製される(例えば、単ロール液体急冷法、超急冷水アトマイズ法)。アモルファス金属は、強靱性や高耐食性や軟磁性などの利点を有する一方、非常に硬く塑性変形しづらいため成形加工性に劣るという欠点も有する。このことから、アモルファス金属粉末を圧粉磁心に適用するために、成形加工性を向上させる技術が種々検討されてきた。
例えば、特許文献1(特開2010-141183)には、平均粒径が異なる2種類以上の非晶質軟磁性合金粉末と軟化点が前記非晶質軟磁性合金粉末の結晶化温度より低い低融点ガラス粉末(ビスマス系ガラスまたはリン酸系ガラス)とを混合し、その後結着性絶縁樹脂で被覆し、さらに潤滑性樹脂を混合した後、加圧成形して成形体を作製し、その成形体に対して前記非晶質軟磁性合金粉末の結晶化温度より低い温度の焼鈍処理を大気中で行うことを特徴とする圧粉磁心が開示されている。特許文献1によると、前記焼鈍処理により非晶質軟磁性合金粉末の表面が酸化して、低融点ガラスと軟磁性合金粉末の結着強度が増加するので、常温で低圧成形を行っても機械的強度に優れた圧粉磁心を提供することができるとされている。
一方、インダクタンス素子(例えば、リアクトル、チョークコイル)への高性能化・小型化要求により、圧粉磁心に対しても高密度化・高強度化が求められている。そのような要求に応じるため、アモルファス金属を用いた圧粉磁心においてアモルファス金属自体の成形加工性の改善を目指して、広い温度領域で過冷却液体状態を示すアモルファス金属(ガラス転移が明確に観察されるアモルファス金属。いわゆる、金属ガラス)を利用した技術も種々開発されている。
例えば、特許文献2(特開2002-184646)には、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20 K以上であって、Al、Gaのいずれか一方または両方の元素Xと、P、C、Si、Bのうちの1種以上の元素Qと、Feとを含む非晶質相を主相とする組織からなる金属ガラス合金の粉末に、シリコーンエラストマーからなる結着剤とステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤とが添加され、固化成形されてなることを特徴とする圧粉磁心が開示されている。特許文献2によると、圧縮成形の際に金属ガラス合金粉末同士が相互に滑りやすく、圧粉磁心内部の応力・歪みを緩和しながら圧粉磁心の相対密度を向上させることができ、かつ結晶質相を析出させることがなく、高透磁率で低鉄損の圧粉磁心を構成することができるとされている。
また、特許文献3(特開2009-120927)には、不可避不純物を除いた組成が、組成式:(Fe1-aMa)100-w-x-y-zSiwBxCyLzで表され、前記組成式の構成元素のうち、MはCo、Niの中から選択される1種類以上の元素であり、LはAl、Cr、Moの中から選択される1種類以上の元素であり、0≦a≦0.3、4原子%≦w≦10原子%、10原子%≦x≦18原子%、1原子%≦y≦7原子%、0.3原子%≦z≦5原子%の組成比率の軟磁性非晶質合金であって、結晶化開始温度Txとガラス遷移温度Tgの温度差ΔTx(ΔTx=Tx−Tg)が20℃以上であり、かつ飽和磁束密度が1.2T以上であることを特徴とする軟磁性非晶質合金が開示されている。また、前記軟磁性非晶質合金の粉末と結合材とを含む混合物を成形してなる圧粉磁芯が開示されている。特許文献3によると、前記軟磁性非晶質合金は、非晶質形成能に優れていることから、冷却速度がさほど大きくない(103℃/秒程度)場合でも非晶質相を形成することが可能であり、また、その非晶質構造の均一性が高いことから磁気異方性を持たず、優れた軟磁気特性を有するとされている。さらに、当該軟磁性非晶質合金粉末を用いた圧粉磁芯は、小型化に適しているとされている。
特開2010−141183号公報 特開2002−184646号公報 特開2009−120927号公報
前述したように、アモルファス金属は非常に硬く室温でほとんど塑性変形しないため、圧粉成形体の密度を高めるには非常に高い成形圧力(例えば、1500〜2000 MPa)が必要であった。しかしながら、高い成形圧力は、それに要するプレス成形装置と金型とのコストを増大させ、圧粉磁心の製造コストを増大させるという問題がある。
特許文献1に記載の圧粉磁心は、常温で低圧成形を行っても機械的強度に優れた圧粉磁心を提供することができるとされているが、1300 MPaの成形圧力を要しており、絶対的には十分高い圧力と言える。また、高い圧力で成形した割には圧粉磁心の密度が高まっておらず、その結果、圧粉磁心の機械的強度も十分高いとは言えない。圧粉磁心の機械的強度が不十分であると、インダクタンス素子製造時の巻線工程で、圧粉磁心が破損する要因となる。
一方、特許文献2や特許文献3に記載の圧粉磁心では、金属ガラスを用いているため、成形加工性が良く比較的容易に密度を高めることができる。しかしながら、軟磁性材料として重要な磁気特性(高透磁率、低保持力、高磁束密度など)は、Fe-Si-B系アモルファス金属よりも金属ガラスの方が劣る傾向にある。これは、金属ガラスでは広い過冷却液体領域を得るために、強磁性元素以外の添加元素が多量に添加されるためである。
近年、エコ製品に対する高効率化・高出力化・小型化の要求はますます高まっており、エコ製品に使われる各部品に対する要求も強まる一方である。そのため、従来の圧粉磁心では、その要求に応じられなくなってきた。したがって、本発明の目的は、Fe-Si-B系アモルファス金属が有する優れた磁気特性を維持しながら、金属ガラスや結晶質合金が有する成形加工性を兼ね備えた圧粉磁心およびその製造方法を提供することにある。
(I)本発明の一態様によると、Fe-Si-B系アモルファス金属の粉末を主体とする圧粉磁心であって、前記Fe-Si-B系アモルファス金属の各粒子の表面には、該Fe-Si-B系アモルファス金属の粒子と元素Mとの拡散反応により生成した合金の層が形成されており、前記圧粉磁心の相対密度が80%以上であることを特徴とする圧粉磁心を提供する。なお、本発明において、相対密度とは、使用したFe-Si-B系アモルファス金属の密度を100%とした場合の比率と定義する。
本発明は、上記の本発明に係る圧粉磁心(I)において、次のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記元素Mは、P(リン)、Ga(ガリウム)、C(炭素)、Al、およびGe(ゲルマニウム)から選択される少なくとも2種以上であり、前記合金は、金属ガラスである。
(ii)前記金属ガラスの層の平均厚さは、前記Fe-Si-B系アモルファス金属粒子の平均粒径に対する比率で0.5%以上4%以下である。
(iii)前記Fe-Si-B系アモルファス金属の結晶化温度Txと前記金属ガラスのガラス転移点Tgとの関係が、「Tx−Tg≧40℃」である。
(iv)前記元素Mは、Zn(亜鉛)、Mg(マグネシウム)、Cu(銅)、Al、およびNiから選択される少なくとも2種以上であり、前記合金は、結晶質合金であり、前記圧粉磁心の相対密度が85%以上である。
(v)前記結晶質合金の層の平均厚さは、前記Fe-Si-B系アモルファス金属粒子の平均粒径に対する比率で0.5%以上4%以下である。
(vi)前記Fe-Si-B系アモルファス金属の結晶化温度Txと前記結晶質合金の融点Tmとの関係が、「Tx−Tm≧40℃」である。
なお、本発明での金属ガラス層および結晶質合金層は、拡散反応により生成されることから、その厚さ方向には構成元素の濃度分布(濃度勾配)が存在する。また、層の厚さとは、元素Mの濃度が粒子表面から1/e(1/自然対数の底)になるまでと定義する。
(II)本発明の他の一態様によると、圧粉磁心を用いたインダクタンス素子であって、前記圧粉磁心が、上記の本発明に係る圧粉磁心であることを特徴とするインダクタンス素子を提供する。
本発明は、上記の本発明に係るインダクタンス素子(II)において、次のような改良や変更を加えることができる。
(vii)前記インダクタンス素子は、リアクトルまたはチョークコイルである。
(III)本発明の更に他の一態様によると、Fe-Si-B系アモルファス金属の粉末を主体とする圧粉磁心の製造方法であって、前記Fe-Si-B系アモルファス金属の粉末の粒子表面上に、元素Mからなる被覆層を所定の平均厚さで形成する工程と、前記被覆層の外層に無機絶縁層を形成する工程と、前記被覆層と前記無機絶縁層とが形成された前記Fe-Si-B系アモルファス金属粉末を200 MPa以上800 MPa以下の圧力で圧粉成形する工程と、前記圧粉成形の前記圧力を掛けたまま所定の温度まで昇温・加熱する工程とを有し、前記昇温・加熱する工程によって、前記Fe-Si-B系アモルファス金属粉末の粒子表面で該Fe-Si-B系アモルファス金属と前記元素Mとの拡散反応による合金の層が形成されることを特徴とする圧粉磁心の製造方法を提供する。
本発明は、上記の本発明に係る圧粉磁心の製造方法(III)において、次のような改良や変更を加えることができる。
(viii)前記被覆層を形成する工程は、前記Fe-Si-B系アモルファス金属の粉末と前記元素Mからなる粉末とを機械的混合法により混合・被覆する工程である。
(ix)前記元素Mは、P、Ga、C、Al、およびGeから選択される少なくとも2種以上であり、前記被覆層の所定の平均厚さは、前記Fe-Si-B系アモルファス金属粒子の平均粒径に対する比率で0.5%以上4%以下であり、前記合金は、金属ガラスであり、前記所定の温度は、前記金属ガラスのガラス転移点Tg以上かつ前記Fe-Si-B系アモルファス金属の結晶化温度Tx未満である。
(x)前記元素Mは、Zn、Mg、Cu、Al、およびNiから選択される少なくとも2種以上であり、前記被覆層の所定の平均厚さは、前記Fe-Si-B系アモルファス金属粒子の平均粒径に対する比率で0.5%以上4%以下であり、前記合金は、結晶質合金であり、前記所定の温度は、前記結晶質合金の融点Tm以上かつ前記Fe-Si-B系アモルファス金属の結晶化温度Tx未満である。
本発明によれば、Fe-Si-B系アモルファス金属が有する優れた磁気特性を維持しながら、金属ガラスや結晶質合金が有する成形加工性を兼ね備えた圧粉磁心、その製造方法および該圧粉磁心を用いたインダクタンス素子を提供することができる。
本発明の圧粉磁心の製造方法における温間プレスの中途段階を示す断面模式図である。 本発明に係るインダクタンス素子の一例(チョークコイル)を示す斜視模式図である。 本発明に係るインダクタンス素子の他の一例(リアクトル)を示す斜視模式図である。 温間プレスの加熱温度と圧粉磁心の相対密度との関係を示すグラフである。 Fe-Si-B-Cr-Cアモルファス金属粉末の表面にGa-P被覆層を形成し480℃の温間プレスで作製した圧粉磁心の断面SEM像、P元素マップおよびGa元素マップである。
(本発明の基本概念)
従来の圧粉磁心では、前述したように、アモルファス金属粉末に対して外層として低融点ガラス層や樹脂バインダ層や潤滑層を形成して、圧粉成形時にアモルファス金属粉末同士を滑らせながら緻密化を図っていた。しかしながら、圧粉磁心の密度向上が不十分であったり、外層が磁性材料でないために圧粉磁心全体の磁気特性に対してマイナスの要素となったりするというデメリットがあった。
そこで、本発明者は、圧粉磁心において優れた磁気特性を確保すべく、まず軟磁性材料としてFe-Si-B系アモルファス金属粉末を選定し、その上で、該Fe-Si-B系アモルファス金属粉末を用いて如何にして緻密に圧粉成形するかを研究した。その研究の中で、アモルファス金属粉末の外層として軟磁性金属ガラス層を形成することに解の可能性を見出した。
しかしながら、アモルファス金属粉末は硬く塑性変形しないため、通常の機械的混合法によってアモルファス金属粉末の外周にアモルファス金属である金属ガラス層をめっきすることは、実質的に不可能である。気相めっき法での金属ガラス層の形成はコストの観点から困難である。また、液相めっき法では金属ガラス層の形成自体が困難である。
鋭意検討の結果、本発明者は、アモルファス金属粉末の外周に金属ガラスを構成する元素の被覆層をめっきし、該めっきしたアモルファス金属粉末を温間プレスすることにより、当該被覆層成分とアモルファス金属粉末とを拡散反応させて、アモルファス金属粉末の表面層領域に金属ガラス層を生成させるという新規な製造方法を見出した。これにより、アモルファス金属が有する優れた磁気特性を維持しながら、金属ガラスが有する成形加工性を兼ね備えた圧粉磁心を得ることができる。本発明は、当該知見に基づいて完成されたものである。
以下、図面等を参照しながら、本発明に係る実施形態を製造手順に沿って説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されるものではなく、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
[本発明の第1の実施形態]
まず、Fe-Si-B系アモルファス金属(例えば、Fe-Si-B-Cr-Cアモルファス金属、Fe-Si-B-Coアモルファス金属、Fe-Si-B-Cu-Nbアモルファス金属)の粉末を用意する。粉末粒径に特段の限定はないが、圧粉磁心用としては、平均粒径で10μm以上200μm以下が好ましい。
(被覆層形成工程)
Fe-Si-B系アモルファス金属粉末の表面に元素Mからなる被覆層を所定の厚さで形成する。元素Mとしては、Fe-Si-B系アモルファス金属と拡散反応させることにより金属ガラスを生成する元素で構成され、P、Ga、C、Al、およびGeから選択される少なくとも2種以上が好ましい。
ここで、ベースとなるFe-Si-B系アモルファス金属の結晶化温度Txと、拡散反応によって生成する金属ガラスのガラス転移点Tgとの関係が重要になる。本発明では、後工程の温間プレス工程において、Fe-Si-B系アモルファス金属粉末を結晶化させずに、生成した金属ガラス層を軟化させることが好ましい。そのため、少なくとも「Tx>Tg」であることが必要である。「Tx−Tg≧40℃」であることが好ましく、「Tx−Tg≧60℃」であることがより好ましい。
例えば、Fe-Si-B-Cr-Cアモルファス金属粉末を用い、その結晶化温度が「Tx=540℃」である場合、ガラス転移点が「Tg≦500℃」である金属ガラス層を生成させることが好ましい。そのような金属ガラスとしては、Fe-Al-Ga-Si-P-C-B-Si金属ガラスやFe-Ga-P-C-B-Si金属ガラスなどがある。言い換えると、用いたアモルファス金属粉末をベースにして、望ましい金属ガラス層が生成されるように元素Mを選定して、アモルファス金属粉末の表面に被覆(めっき)する。
Fe-Si-B系アモルファス金属粉末(粒子)の表面に製膜する被覆層の平均厚さは、アモルファス合金の平均粒径に対する比率で0.5%以上4%以下が好ましく、実厚さで0.5μm以上4μm以下が好ましい。実厚さは、1μm以上3μm以下がより好ましい。製膜する被覆層が薄過ぎると、後工程で生成する金属ガラスの量が少なく、圧粉磁心の密度向上の効果が不十分となる。一方、製膜する被覆層が厚過ぎると、圧粉磁心全体の磁気特性が低下する要因となる。
Fe-Si-B系アモルファス金属粉末の表面に元素Mからなる被覆層をめっきする方法に特段の限定はなく、結果として所望のめっき粉末が得られればよい。ただし、製造コスト(例えば、処理量、処理時間、処理装置)の観点から、機械的混合法(例えば、メカニカルミリング)が好ましい。気相めっき法は、大量の粉末を処理しようとすると製造コストが急激に増大する。液相めっき法は、めっき前処理やめっき後処理が必要となり、コスト増大の要因となる。
メカニカルミリングにより被覆層を形成する場合、Fe-Si-B系アモルファス金属粉末と、被覆層の成分粉末とを容器に投入してミリング処理を行う。被覆層の成分はアモルファス金属に比してはるかに柔らかいため、アモルファス金属粒子の周りに元素Mからなる被覆層を形成することができる。
ミリング条件としては、Fe-Si-B系アモルファス金属粉末が粉砕されないようにすることが望ましい。ミリング処理のエネルギーが高過ぎてFe-Si-B系アモルファス金属粉末が破砕されるようになると(例えば、アモルファス金属粉末の平均粒径が10μm未満になると)、元素Mからなる被覆層(すなわち、その後の金属ガラス層)を設けることの効果が失われ、アモルファス金属粉末の成形加工性が著しく損なわれる。また、アモルファス金属粉末が微粉砕されるほどのエネルギーでミリングを続けると、被覆層の成分とFe-Si-B系アモルファス金属との合金化(メカニカルアロイング)が進行してしまうため、アモルファス金属粉末表面への被覆層の形成ではなくなる。
(絶縁層形成工程)
元素Mからなる被覆層を形成したFe-Si-B系アモルファス金属粉末の更に外周に無機絶縁層を被覆する。絶縁層の形成は、圧粉磁心の渦電流損の低減のために、通常必要とされる。無機絶縁層として特段の限定はなく、従前の無機絶縁層(例えば、シリカ(SiO2)層、リン酸層)を用いることができる。また、無機絶縁層の形成方法にも特段の限定はなく、従前の方法(例えば、ゾルゲル法)を利用できる。無機絶縁層の平均厚さとしては、アモルファス合金の平均粒径に対する比率で0.5%以上3%以下が好ましく、実厚さで0.5μm以上3μm以下が好ましい。また、元素Mからなる被覆層と無機絶縁層との合計厚さは、1μm以上6μm以下が好ましい。
(温間プレス工程)
被覆層と無機絶縁層とを順次被覆したFe-Si-B系アモルファス金属粉末を金型に充填し、200 MPa以上800 MPa以下の圧力で圧粉成形した後、該圧力を掛けたままで昇温・加熱する温間プレスを行う。成形圧力が200 MPa未満では、圧粉磁石を十分に緻密化できない。一方、成形圧力が800 MPa超では、プレス成形装置と金型とのコストが増大する。また、温間プレスで昇温・加熱する温度Tpは、生成する金属ガラスのガラス転移点Tg以上かつFe-Si-B系アモルファス金属の結晶化温度Tx未満の温度「Tg≦Tp<Tx」とする。
図1は、本発明の圧粉磁心の製造方法における温間プレスの中途段階を示す断面模式図である。なお、図1では、図面簡素化のために無機絶縁層の図示を省略してある。図1に示したように、温間プレスにより、元素Mからなる被覆層とFe-Si-B系アモルファス金属とが拡散反応してFe-Si-B系アモルファス金属粉末の粒子表面で金属ガラスの層が形成される。
このとき、本発明では、成形圧力を掛けた後、その状態で(被覆層とアモルファス金属粒子とに応力が掛かった状態で)昇温・加熱することにより、アモルファス金属の軟化点において成形体全体に確実に圧力を伝達することができる。また、金属ガラス層の生成により成形加工性が向上するため、従来技術よりも低い成形圧力(200 MPa以上800 MPa以下)で、Fe-Si-B系アモルファス金属の圧粉磁心を高密度化することができる。
[本発明の第2の実施形態]
圧粉磁心の用途(インダクタンス素子の用途)によっては、使用環境における振動や応力に耐えるため、圧粉磁心の損失(例えば、鉄損)の抑制よりも機械的強度の向上が優先される場合がある。第2の実施形態は、そのような場合に好適な圧粉磁心を提供するものである。
本実施形態では、第1の実施形態における金属ガラスの代わりに、拡散反応によって低融点の結晶質合金を生成させる。該結晶質合金の融点Tmは、「Tx−Tm≧40℃」であることが好ましく、「Tx−Tm≧60℃」であることがより好ましい。
そのような結晶質合金を生成させるため、Fe-Si-B系アモルファス金属粉末の表面に形成する被覆層の元素Mは、Zn、Mg、Cu、Al、およびNiから選択される少なくとも2種以上とする。それらの元素とFe-Si-B系アモルファス金属とが拡散反応することにより、融点Tmが400〜500℃の結晶質合金を生成させることができる。
Fe-Si-B系アモルファス金属粉末の表面に製膜する被覆層の平均厚さは、アモルファス合金の平均粒径に対する比率で0.5%以上4%以下が好ましく、実厚さで0.5μm以上4μm以下が好ましい。実厚さは、1μm以上3μm以下がより好ましい。製膜する被覆層が薄過ぎると、後工程で生成する結晶質合金の量が少なく、圧粉磁心の密度向上の効果が不十分となる。一方、製膜する被覆層が厚過ぎると、圧粉磁心全体の磁気特性が低下する要因となる。
第1の実施形態と同様に、製膜した被覆層の更に外周に無機絶縁層を被覆する。第2の実施形態では、温間プレス時に、生成した結晶質合金が溶融する。この金属融液によって隣接するFe-Si-B系アモルファス金属粒子同士が結合してしまうのを防止するため、第1の実施形態の場合よりも無機絶縁層を少し厚めに被覆することが好ましい。具体的には、無機絶縁層の平均厚さとしては、アモルファス合金の平均粒径に対する比率で2%以上4%以下が好ましく、実厚さで2μm以上4μm以下が好ましい。ただし、元素Mからなる被覆層と無機絶縁層との合計厚さは、1μm以上6μm以下が好ましい。
第1の実施形態と同様に、被覆層と無機絶縁層とを順次被覆したFe-Si-B系アモルファス金属粉末を金型に充填し、200 MPa以上800 MPa以下の圧力で圧粉成形した後、該圧力を掛けたままで昇温・加熱する温間プレスを行う。温間プレスで昇温・加熱する温度Tpは、生成する結晶質合金の融点Tm以上かつFe-Si-B系アモルファス金属の結晶化温度Tx未満の温度「Tm≦Tp<Tx」とする。生成した結晶質合金が溶融するため、第1の実施形態の場合よりもさらにFe-Si-B系アモルファス金属粉末の緻密化に寄与する。
その他の構成および製造手順は、第1の実施形態と同様である。
[本発明の第3の実施形態]
(インダクタンス素子)
前述した本発明に係る圧粉磁心を利用することによって、従来よりも小型化・高効率化が可能なインダクタンス素子を提供することができる。図2は、本発明に係るインダクタンス素子の一例(チョークコイル)を示す斜視模式図である。図3は、本発明に係るインダクタンス素子の他の一例(リアクトル)を示す斜視模式図である。
図2に示したように、本発明に係るチョークコイル10は、本発明の圧粉磁心11に導体線12を巻き付けたものであり、導体線12の両端には、端子13が形成されている。圧粉磁心11は、環状(いわゆるレーストラック状)の連続体になっており、その断面形状は角形でもよいし円形でもよい。チョークコイル10は、例えば、家電機器などの昇圧回路として用いられる。
図3に示したように、本発明に係るリアクトル20は、本発明の圧粉磁心21に導体線12を巻き付けたものであり、導体線12の両端には、端子13が形成されている。圧粉磁心21も環形状を有しているが、2個のストレート部材22と2個のU字部材23とが連結された構造となっている。部材の連結・固定は、接着剤(例えば、樹脂系接着剤)で行ってもよいし、機械的治具(例えば、バンド)で行ってもよい。また、圧粉磁心21は、全体の透磁率を調整するために、ストレート部材22に本発明の圧粉磁心を用い、U字部材23に従来の圧粉磁心(例えば、Fe-Si系圧粉磁心、Fe-Al-Si系圧粉磁心)を用いることができる。リアクトル20は、例えば、ハイブリッド自動車や太陽光発電の昇圧回路として用いられる。
以下に具体的な実施例を示して、本発明の内容を更に詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
[実験1]
(圧粉磁心の作製)
軟磁性金属粉末として、水アトマイズで作製したFe-Si-B-Cr-Cアモルファス金属粉末(名目組成Fe-6.9 mass% Si-2.5 mass% B-2.0 mass% Cr-0.8 mass% C、平均粒径100μm、結晶化温度540℃)を用意した。アモルファス金属粉末に形成する被覆層としては、拡散反応によって460〜480℃のガラス転移温度Tgを有する金属ガラス生成するように、Ga-P被覆およびP-Ga-C-Al-Ge被覆を選択した。また、参照試料として、被覆層を形成しないアモルファス金属粉末も用意した。
Ga-P被覆では、アモルファス金属粉末に対して0.10質量%Ga、0.10質量%Pとなるように粉末を混合した。P-Ga-C-Al-Ge被覆では、アモルファス金属粉末に対して0.10質量%P、0.10質量%Ga、0.015質量%C、0.03質量%Al、0.1質量%Geとなるように粉末を混合した。各混合粉末をボール(SUS304製、直径10 mm)と共にボールミルポッドに投入し、遊星型ボールミル(フリッチュ・ジャパン株式会社製)を用いて種々の条件でメカニカルミリングを行った。検討したメカニカルミリング条件を後述する表1に示す。
次に、メカニカルミリングした粉末および参照試料に対し、電気的絶縁のためにゾルゲル法により無機絶縁層としてSiO2膜(平均厚さ1μm)を被覆した。
次に、無機絶縁層を被覆したアモルファス金属粉末(1.5 g)を金型(外径13 mm、内径8 mm)に投入し、温間プレスを行った。温間プレスは、次のような手順で行った。まず、室温環境で500 MPaの圧力でプレスした。その後、該圧力を維持したまま所定の温度まで昇温・加熱した。昇温速度は20℃/minとし、加熱温度は440〜480℃とした。成形荷重は、所定の温度に到達後、直ちに除荷した。なお、参照試料に対しては、成形圧力を2000 MPaとした。
最後に、圧粉成形した円環ペレットに対し、大気中400℃で1時間保持の熱処理を施して、円環ペレット形状の圧粉磁心を得た。なお、当該熱処理は、後述する良好な成形加工性を有する試料に対してのみ行った。
(被覆層形成条件の検討)
(1)アモルファス金属粉末と被覆層の状態観察(粉末の評価)
メカニカルミリングを行ったアモルファス金属粉末に対し、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光装置(SEM-EDX)および粉末X線回折装置(XRD)を用いて、アモルファス金属粉末の粉砕状態および被覆層の付着状態を調査した。
アモルファス金属粒子が粉砕されておらず、該粒子の表面全体に被覆層が形成されており、かつXRD測定の結果で被覆元素の回折ピークが観察されなかったものを「合格」と評価し、それ以外を「不合格」と評価した。結果を表1に併記する。なお、Ga-P被覆とP-Ga-C-Al-Ge被覆とで評価結果に差はなかった。
Figure 2014054093

(2)成形加工性の評価
ミリングのエネルギーが高過ぎる条件では、表1に示したように、ベースとなるアモルファス金属粒子が1/100以下の粒径まで微粉砕されるのに加えて、メカニカルアロイングが進行したため、被覆層自体が観察されなかった。その結果、圧粉成形した円環ペレットには目視でもクラックが観察され、ピンセットで軽く叩いたところ円環ペレットは砕けるように割れた。すなわち、良好な成形加工性は得られなかった。
また、アモルファス金属粒子の平均粒径が1/10弱程度になるミリング条件では、アモルファス金属粒子の全面に被覆層が形成されており、圧粉成形した円環ペレットにクラックは観察されなかった。しかしながら、成形加工性の評価においてピンセットで軽く叩いたところ、割れてしまった。すなわち、良好な成形加工性は得られなかった。
一方、ミリングのエネルギーが低過ぎる条件では、被覆層の形成が不十分であり、XRD測定において、被覆元素の回折ピークが明確に観察された。これは、被覆材料の粉砕・混合が進行しておらず、粒径の大きな被覆材粒子が残存していたことを意味する。その結果、温間プレスを行っても金属ガラス層の生成が不十分となり、良好な成形加工性は得られなかった。
これらに対し、ベースとなるアモルファス金属粒子は粉砕されないが、被覆材料は粉砕・混合が進行するミリング条件では、SEM観察で被覆層の全面形成が観察され、XRD測定においても被覆元素の回折ピークは観察されなかった。その結果、良好な成形加工性を有し、健全な円環ペレットが得られた。
(圧粉磁心の相対密度測定および微細組織観察)
作製した圧粉磁心の寸法および質量から算出される密度を、使用したFe-Si-B-Cr-Cアモルファス金属の密度(7.2 g/cm3)で除して、圧粉磁心の相対密度を算出した。結果を図4に示す。
図4は、温間プレスの加熱温度と圧粉磁心の相対密度との関係を示すグラフである。図4に示したように、アモルファス金属粉末に被覆層を形成した圧粉磁心(Ga-P被覆、P-Ga-C-Al-Ge被覆)は、460℃以上の加熱温度において、被覆層を形成していない圧粉磁心(参照試料)よりも相対密度が向上する傾向が認められた。これらの加熱温度は、アモルファス金属粉末と被覆層との拡散反応により生成する金属ガラス層のガラス転移温度Tgに相当する。
SEM-EDXを用いて作製した圧粉磁心の微細組織を観察した。図5は、Fe-Si-B-Cr-Cアモルファス金属粉末の表面にGa-P被覆層を形成し480℃の温間プレスで作製した圧粉磁心の断面SEM像、P元素マップおよびGa元素マップである。図5に示したように、Fe-Si-B-Cr-Cアモルファス金属の粒子が高密度に圧粉成形され、P濃度とGa濃度の高い領域が、アモルファス金属粒子の表面に沿って網目状に分布していることが判る。P濃度とGa濃度の高い領域(金属ガラス層)の平均厚さは、約2μmであった。
以上の結果から、本発明の圧粉磁心は、温間プレスによってアモルファス金属粉末と被覆層とが拡散反応して金属ガラス層を生成するため、成形加工性が向上し、従来技術より低い成形圧力でも高密度化できることが実証された。
(圧粉磁心の機械的強度の評価)
480℃の温間プレスで作製した圧粉磁心の機械的強度を評価した。本発明では、機械的強度の指標として圧環強さを測定した。圧環強度の測定は、焼結軸受−圧環強さ試験法(JIS Z 2507)に準じて行った。圧環強さは「K=F(D-e)/(L・e2)」で与えられる。Kは圧環強さ(単位:MPa)、Fは破壊した時の最大荷重(単位:N)、Lは円環ペレットの厚さ(単位:mm)、Dは円環ペレットの外径(単位:mm)、eは円環ペレットの外径/内径差(単位:mm)である。結果を後述する表2に示す。
(圧粉磁心の磁気特性の評価)
480℃の温間プレスで作製した圧粉磁心の磁気特性を評価した。本発明では、磁気特性の指標として、鉄損と、一定の外部磁場を印加したときの磁束密度とを測定した。鉄損の測定は、B-Hアナライザ(岩通計測株式会社製)を用いて行い、0.1 T中、100 kHzにおける鉄損を「W1/100k」(単位:kW/m3)と表した。磁束密度の測定は、試料振動型磁力計(VSM)を用いて行い、印加磁界10000 Oeにおける磁束密度を「B100」(単位:T)と表した。結果を表2に併記する。
Figure 2014054093

表2に示したように、本発明に係る圧粉磁石は、参照試料に比して、2倍以上の圧環強さを達成し、鉄損W1/100kが10%強(10〜13%)減少し、磁束密度B100が約20%(18〜21%)向上していることが確認された。この結果から、本発明の第1実施形態に係る圧粉磁心は、優れた磁気特性と高い機械的強度とを兼ね備えていることが実証された。
[実験2]
(高強度圧粉磁心の作製)
軟磁性金属粉末として、水アトマイズで作製したFe-Si-B-Cr-Cアモルファス金属粉末(名目組成Fe-6.9 mass% Si-2.5 mass% B-2.0 mass% Cr-0.8 mass% C、平均粒径150μm、結晶化温度540℃)を用意した。アモルファス金属粉末に形成する被覆層としては、拡散反応によって低融点の結晶質合金を生成するように、Zn-Cu被覆、Mg-Al被覆およびZn-Ni被覆を選択した。
Zn-Cu被覆では、アモルファス金属粉末に対してZn-3mass%Cu合金粉末(平均粒径10μm)を0.5質量%混合した。Mg-Al被覆では、アモルファス金属粉末に対してMg-30mass%Al合金粉末(平均粒径10μm)を0.5質量%混合した。Zn-Ni被覆では、アモルファス金属粉末に対してZn-3mass%Ni合金粉末(平均粒径10μm)を0.5質量%混合した。メカニカルミリング条件は、前述の実験1で得られた好適な条件を採用した。
次に、実験1と同様にして、メカニカルミリングした粉末に無機絶縁層(SiO2膜)を被覆した。ただし、実験2の無機絶縁層の平均厚さは3μmとし、実験1の場合よりも厚くなるように形成した。
次に、無機絶縁層を被覆したアモルファス金属粉末に対して、実験1と同様にして、温間プレスとその後の大気中熱処理とを施し、円環ペレット形状の圧粉磁心を作製した。
(高強度圧粉磁心の評価)
実験1と同様にして、圧粉磁心の相対密度測定、圧環強さ測定、および鉄損測定を行った。結果を表3に示す。
Figure 2014054093

表3に示したように、いずれの試料においても、実験1の参照試料より高い圧環強さを示しているが、特に480℃で温間プレスした試料では、圧環強さが急激に増大し、実験1の参照試料の3倍以上の圧環強さを達成している。それに対し、鉄損の増大は2倍未満に留まっている。480℃の加熱により圧環強さが急激に増大したことから、拡散反応により生成した結晶質合金層の融点Tmは、460℃と480℃との間にあると思われる。
以上の結果から、本発明の第2実施形態に係る圧粉磁心は、温間プレスによってアモルファス金属粉末と被覆層とが拡散反応して低融点の結晶質合金層を生成すると共に、該結晶質合金層が溶融して液相を生成するため成形加工性がより向上し、鉄損の増大よりも高い比率で機械的強度を向上させられることが実証された。
なお、上記した実施例は、本発明の理解を助けるために具体的に説明したものであり、本発明は、説明した全ての構成を備えることに限定されるものではない。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。さらに、各実施例の構成の一部について、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
10…チョークコイル、11…圧粉磁心、12…導体線、13…端子、
20…リアクトル、21…圧粉磁心、22…ストレート部材、23…U字部材。

Claims (13)

  1. Fe-Si-B系アモルファス金属の粉末を主体とする圧粉磁心であって、
    前記Fe-Si-B系アモルファス金属の各粒子の表面には、該Fe-Si-B系アモルファス金属の粒子と元素Mとの拡散反応により生成した合金の層が形成されており、
    前記圧粉磁心の相対密度が80%以上であることを特徴とする圧粉磁心。
  2. 請求項1に記載の圧粉磁心において、
    前記元素Mは、P、Ga、C、Al、およびGeから選択される少なくとも2種以上であり、
    前記合金は、金属ガラスであることを特徴とする圧粉磁心。
  3. 請求項2に記載の圧粉磁心において、
    前記金属ガラスの層の平均厚さは、前記Fe-Si-B系アモルファス金属粒子の平均粒径に対する比率で0.5%以上4%以下であることを特徴とする圧粉磁心。
  4. 請求項2または請求項3に記載の圧粉磁心において、
    前記Fe-Si-B系アモルファス金属の結晶化温度Txと前記金属ガラスのガラス転移点Tgとの関係が、「Tx−Tg≧40℃」であることを特徴とする圧粉磁心。
  5. 請求項1に記載の圧粉磁心において、
    前記元素Mは、Zn、Mg、Cu、Al、およびNiから選択される少なくとも2種以上であり、前記合金は、結晶質合金であり、
    前記圧粉磁心の相対密度が85%以上であることを特徴とする圧粉磁心。
  6. 請求項5に記載の圧粉磁心において、
    前記結晶質合金の層の平均厚さは、前記Fe-Si-B系アモルファス金属粒子の平均粒径に対する比率で0.5%以上4%以下であることを特徴とする圧粉磁心。
  7. 請求項5または請求項6に記載の圧粉磁心において、
    前記Fe-Si-B系アモルファス金属の結晶化温度Txと前記結晶質合金の融点Tmとの関係が、「Tx−Tm≧40℃」であることを特徴とする圧粉磁心。
  8. 圧粉磁心を用いたインダクタンス素子であって、
    前記圧粉磁心が、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の圧粉磁心であることを特徴とするインダクタンス素子。
  9. 請求項8に記載のインダクタンス素子において、
    前記インダクタンス素子は、リアクトルまたはチョークコイルであることを特徴とするインダクタンス素子。
  10. Fe-Si-B系アモルファス金属の粉末を主体とする圧粉磁心の製造方法であって、
    前記Fe-Si-B系アモルファス金属の粉末の粒子表面上に、元素Mからなる被覆層を所定の平均厚さで形成する工程と、
    前記被覆層の外層に無機絶縁層を形成する工程と、
    前記被覆層と前記無機絶縁層とが形成された前記Fe-Si-B系アモルファス金属粉末を200 MPa以上800 MPa以下の圧力で圧粉成形する工程と、
    前記圧粉成形の前記圧力を掛けたまま所定の温度まで昇温・加熱する工程とを有し、
    前記昇温・加熱する工程によって、前記Fe-Si-B系アモルファス金属粉末の粒子表面で該Fe-Si-B系アモルファス金属と前記元素Mとの拡散反応による合金の層が形成されることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  11. 請求項9に記載の圧粉磁心の製造方法において、
    前記被覆層を形成する工程は、前記Fe-Si-B系アモルファス金属の粉末と前記元素Mからなる粉末とを機械的混合法により混合・被覆する工程であることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  12. 請求項9または請求項10に記載の圧粉磁心の製造方法において、
    前記元素Mは、P、Ga、C、Al、およびGeから選択される少なくとも2種以上であり、
    前記被覆層の所定の平均厚さは、前記Fe-Si-B系アモルファス金属粒子の平均粒径に対する比率で0.5%以上4%以下であり、
    前記合金は、金属ガラスであり、
    前記所定の温度は、前記金属ガラスのガラス転移点Tg以上かつ前記Fe-Si-B系アモルファス金属の結晶化温度Tx未満であることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  13. 請求項9または請求項10に記載の圧粉磁心の製造方法において、
    前記元素Mは、Zn、Mg、Cu、Al、およびNiから選択される少なくとも2種以上であり、前記被覆層の所定の平均厚さは、前記Fe-Si-B系アモルファス金属粒子の平均粒径に対する比率で0.5%以上4%以下であり、
    前記合金は、結晶質合金であり、
    前記所定の温度は、前記結晶質合金の融点Tm以上かつ前記Fe-Si-B系アモルファス金属の結晶化温度Tx未満であることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
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