JPWO2014045970A1 - インク組成物、インクセット、及び画像形成方法 - Google Patents

インク組成物、インクセット、及び画像形成方法 Download PDF

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Abstract

水と、顔料と、(メタ)アクリルアミド化合物と、メタクリル酸に由来する構造単位及びSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマーで構成されたポリマー粒子と、を含有するインクジェット記録用インク組成物を開示する。

Description

本発明は、インク組成物、インクセット、及び画像形成方法に関する。
インクジェット法による画像形成方法は、種々の被記録媒体に所望の画像形成が可能であることから、オフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野及び商業分野において広く用いられている画像形成方法である。
インクジェット法による画像形成方法として、記録媒体上に付与された重合性化合物を含むインクを、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって硬化させて画像を形成する方法が知られている。
また、インクジェット法による画像形成方法としては、インク組成物と、インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含む処理液と、を用い、記録媒体上でインク組成物中の成分を凝集させることにより画像を形成する技術も知られている。
更には、上記の2つの方法を組み合わせた画像形成技術も検討されている。
例えば、耐擦過性等に優れた画像を形成できるインクセットとして、水、顔料、ポリマー粒子、及び水溶性の重合性化合物を含むインク組成物と、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含む処理液と、を含むインクセットが知られている(例えば、特開2010−70693号公報、特開2010−69805号公報、特開2011−46872号公報、特開2011−46871号公報、特開2011−174013号公報、特開2011−195822号公報参照)。
一方、インク固着物の洗浄性に優れたメンテナンス液及びインクセットとして、全質量に対して50質量%以上75質量%以下の水と、アルキレングリコールモノアルキルエーテルと、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートと、を含有するメンテナンス液、並びに、このメンテナンス液と、顔料、ポリマー粒子、及び水を含有するインク組成物と、を含むインクセットが知られている(例えば、特開2012−158084号公報参照)。
また、経時安定性に優れ印画物の光沢度を向上させることができるインク組成物として、特定のジスアゾ顔料並びに疎水性構造単位及び親水性構造単位を含むビニルポリマーを含有する着色剤と、特定のノニオン性ユニット及びポリシロキサン構造を有するユニットを含むグラフトポリマーと、を含有するインク組成物が知られている(例えば、特開2012−25867号公報参照)。
ところで、水、顔料、及びポリマー粒子を含有するインク組成物は、バインダーとしてのポリマー粒子を含有することにより強度(耐擦過性等)が高い画像を形成できる利点を有するものの、インクジェット記録用ヘッドの吐出面(ノズル面)に付着し乾燥したときに固着し易く、吐出面から除去し難いという問題がある。
一方、上記成分に加えて更に水溶性の重合性化合物を含有するインク組成物は、記録媒体に付与された後、紫外線等の活性エネルギー線の照射によりこの重合性化合物の重合が行なわれ、重合によって生じたポリマーによって画像の強度が確保されるように構成されている。このため、このような水溶性の重合性化合物を含有するインク組成物は、水溶性の重合性化合物を含有せずポリマー粒子を含有するインク組成物と比較して、インクジェット記録用ヘッドの吐出面に付着して乾燥してもそのままでは固着し難く、比較的容易に除去できるという利点を有している。
しかしながら、水、顔料、ポリマー粒子、及び水溶性の重合性化合物を含有するインク組成物に関し、インクジェット記録用ヘッドの吐出面からの除去性を更に向上させることが求められる場合がある。吐出面からのインク組成物の除去性が更に向上すれば、例えば特開2012−158084号公報に記載されているような特殊なメンテナンス液に限らず、例えば水によっても、吐出面に付着したインク組成物を容易に除去できると考えられる。
また、水、顔料、ポリマー粒子、及び水溶性の重合性化合物を含有するインク組成物は、記録媒体への付与後であって活性エネルギー線の照射前においては比較的流動性が高い状態となっているため、記録媒体上に付与されたインク組成物(画像)を乾燥させたときに、画像が変形することや、画像表面が粗くなって光沢ムラが生じることがある。
本発明は上記に鑑みなされたものであり、インクジェット記録用ヘッドの吐出面からの除去性に優れ、画像変形及び光沢ムラが抑制された画像を形成できるインクジェット記録用インク組成物、インクセット、及び画像形成方法を提供することを課題とする。
本発明者は、特定の重合性化合物と、特定のポリマー粒子と、の組み合わせにより上記課題を解決できるとの知見を得、この知見に基づき本発明を完成させた。
即ち、前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
<1> 水と、顔料と、(メタ)アクリルアミド化合物と、メタクリル酸に由来する構造単位及びSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマーで構成されたポリマー粒子と、を含有するインクジェット記録用インク組成物である。
<2> 前記(メタ)アクリルアミド化合物の少なくとも1種が、多官能(メタ)アクリルアミド化合物である<1>に記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<3> 前記メタクリル酸エステルのSP値が、19.4MPa1/2〜22.0MPa1/2である<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<4> 前記メタクリル酸エステルに由来する構造単位が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、及びフェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種である<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<5> 前記ポリマー粒子が、自己分散性ポリマー粒子である<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<6> 前記ポリマー粒子のガラス転移温度が、80℃以上である<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<7> 前記(メタ)アクリルアミド化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。

一般式(1)中、Qは、n価の連結基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。nは、1以上の整数を表す。
<8> <1>〜<7>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物をインクジェット記録用ヘッドから吐出することで、該インクジェット記録用インク組成物を記録媒体に付与して画像を形成するインク付与工程と、前記インク付与工程後の画像を乾燥させる乾燥工程と、を有する画像形成方法である。
<9> 前記乾燥工程の後に、乾燥後の画像に活性エネルギー線を照射して画像を硬化させる硬化工程をさらに有する<8>に記載の画像形成方法である。
<10> 前記記録媒体が、セルロースパルプを主成分とした支持体上の少なくとも一方の面に、一層もしくは多層の顔料層を有する<8>または<9>に記載の画像形成方法である。
<11> 前記インク付与工程の前に、更に、前記インクジェット記録用インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含有する処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有する<8>〜<10>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
<12> 前記凝集成分が、酸である<11>に記載の画像形成方法である。
<13> <1>〜<7>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物と、前記インクジェット記録用インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含有する処理液と、を有するインクジェット記録用インクセットである。
本発明によれば、インクジェット記録用ヘッドの吐出面からの除去性に優れ、画像変形及び光沢ムラが抑制された画像を形成できるインクジェット記録用インク組成物、インクセット、及び画像形成方法を提供することができる。
本発明の画像形成方法の実施に用いるインクジェット記録装置の構成例を示す概略構成図である。
以下、本発明のインクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録用インクセット、及び画像形成方法について詳細に説明する。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
≪インクジェット記録用インク組成物≫
本発明のインクジェット記録用インク組成物(以下、単に「インク組成物」や「インク」ともいう)は、水と、顔料と、(メタ)アクリルアミド化合物と、メタクリル酸に由来する構造単位及びSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマーで構成されたポリマー粒子と、を含有する。
本発明のインク組成物は、溶媒として水を含む水性インクである。
水、顔料、ポリマー粒子、及び水溶性の重合性化合物を含有するインク組成物に関し、インクジェット記録用ヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう)の吐出面からの除去性を更に向上させることが求められる場合がある。吐出面からのインク組成物の除去性が向上すれば、特殊なメンテナンス液に限らず、例えば水によっても吐出面に付着したインク組成物を容易に除去できる。
また、水、顔料、ポリマー粒子、及び水溶性の重合性化合物を含有するインク組成物は、記録媒体上に付与されて活性エネルギー線が照射されるまでの間、ある程度の流動性を有しているため、記録媒体上に付与されたインク組成物による画像を乾燥させたとき(特に、急速に乾燥させたとき)に、画像変形(例えば画像割れ)が生じることや、画像表面が粗くなって光沢ムラが生じることがある。
これらの問題に関し、本発明のインク組成物は、ヘッドの吐出面からの除去性に優れており、更に、画像変形及び光沢ムラが抑制された画像を形成できる。
本発明のインク組成物がヘッドの吐出面からの除去性に優れる理由としては、以下の理由が考えられる。
一般に、水性インクに含まれるポリマー粒子は(詳細には、このポリマー粒子を構成するポリマーは)、極性モノマーに由来する構造単位と非極性モノマーに由来する構造単位とから構成される。ここで、非極性モノマーに由来する構造単位は、水性インク中におけるポリマー粒子の核となる部位を構成する。また、極性モノマーに由来する構造単位は、水性インク中におけるポリマー粒子の分散安定性に寄与する。
また、水性インクを吐出するためのヘッドの吐出面の性状は、水性インクの付着を抑制する観点から、疎水性となっている。
これらの状況の下、上記非極性モノマーの疎水性が高くなるにつれ、吐出面からの除去性が低下する傾向がある。この理由は、ポリマー粒子中の非極性モノマーに由来する構造単位の部位が、疎水性である吐出面に対し、疎水性−疎水性相互作用によって強く吸着するためと考えられる。
これに対し、本発明におけるポリマー粒子では、非極性モノマーとして、ある程度疎水性が低く親水性が高い(具体的にはSP値19.0MPa1/2以上である)メタクリル酸エステルが用いられるため、吐出面へのポリマー粒子の吸着が抑制され、その結果、吐出面からのインク組成物の除去性が向上すると考えられる。
一方、非極性モノマーの親水性が高すぎると(SP値が高すぎると)、ポリマー粒子が水性インク中に溶解してしまい、そもそもポリマー粒子の形態で存在し難くなる。
この問題に関し、本発明におけるポリマー粒子では、非極性モノマーとして、ある程度親水性が低い(具体的にはSP値が25.0MPa1/2以下である)メタクリル酸エステルが用いられるため、ポリマー粒子が水性インク中に安定的に存在することができる。ポリマー粒子が水性インク中に安定的に存在することは、画像の耐擦過性を向上させる観点だけでなく、後述の画像変形を抑制する観点や、後述の光沢ムラを抑制する観点からみても重要な要素である。
また、本発明のインク組成物により画像変形が抑制される理由としては、以下の理由が考えられる。
画像変形は、記録媒体上に付与されたインク組成物(即ち、画像)を活性エネルギー線による硬化前に乾燥させる際(特に、急激に乾燥させる際)、この乾燥時の熱により画像が変形する現象と考えられる。
この点に関し、本発明のインク組成物は、ポリマー粒子がメタクリル酸に由来する構造単位及びメタクリル酸エステルに由来する構造単位のみからなるポリマーから構成されているため、乾燥時においても高い強度を有している。この理由は、インク組成物に含まれるポリマー粒子がメタクリル酸に由来する構造単位及びメタクリル酸エステルに由来する構造単位のみからなるポリマーから構成されていることにより、ポリマー粒子がアクリル酸又はその誘導体に由来する構造単位を含む構成である場合と比較して、ポリマー粒子のガラス転移温度が高いためと考えられる。
更に、本発明のインク組成物は(メタ)アクリルアミド化合物を含有することにより、(メタ)アクリルアミド化合物を含有しない場合と比較して、記録媒体に付与されて乾燥途中の状態にあるインク組成物の粘度が上昇する。この粘度上昇は、インク組成物が処理液とともに記録媒体に付与される場合において特に顕著である。ここでいう処理液は、インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含有する液である(詳細は後述する)。
以上のように、本発明のインク組成物は乾燥時においても高い強度及び高い粘度を有しているため、本発明のインク組成物を用いることで画像変形が抑制されると考えられる。
また、本発明のインク組成物により光沢ムラが抑制される理由としては、以下の理由が考えられる。
光沢ムラの原因としては、記録媒体上にインク組成物を付与し、インク組成物に含まれる顔料等の成分を凝集させて画像を形成するときに、位置により、顔料等の凝集の度合いのバラツキ(ムラ)が生じ、これにより画像の表面が荒れることが考えられる。
この原因に関し、本発明のインク組成物は、(メタ)アクリルアミド化合物を含有することにより、(メタ)アクリルアミド化合物を含有しない場合と比較して、記録媒体に(好ましくは上記処理液とともに)付与されて乾燥途中の状態にあるインク組成物の粘度が上昇するため、顔料等の移動がある程度制限される。更に、本発明のインク組成物は、安定的に存在するポリマー粒子を含むことによっても、記録媒体上に付与されたときの顔料等の移動がある程度制限される。
以上のように、本発明のインク組成物は、乾燥時において顔料等の移動がある程度制限されることにより、顔料等の凝集の度合いのムラが抑制されるので、形成された画像における光沢ムラが抑制されると考えられる。
以下、本発明のインク組成物中の各成分について説明する。
<ポリマー粒子>
本発明のインク組成物は、メタクリル酸に由来する構造単位及びSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマー(以下、「特定ポリマー」ともいう)で構成されたポリマー粒子(以下、「特定ポリマー粒子」ともいう)を少なくとも1種含有する。
特定ポリマー粒子は、後述のポリマー分散剤(顔料の少なくとも一部を被覆するポリマー分散剤)とは異なり、顔料とは別に存在している粒子であり、より詳細には上記の特定ポリマーからなる粒子である。
一般に、インク組成物にポリマー粒子を含有させることにより、画像の記録媒体への密着性及び画像の耐傷性が向上する。
例えば、インク組成物を後述する処理液とともに記録媒体上に付与して画像を形成する場合には、ポリマー粒子は、処理液又はこれを乾燥させた領域と接触した際に、インク組成物中において分散不安定化して凝集し、インク組成物を増粘することによりインク組成物を固定化する機能を有する。これにより、インク組成物の記録媒体への密着性及び画像の耐傷性をより向上させることができる。
特定ポリマーは、メタクリル酸に由来する構造単位及びSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマーである。
この特定ポリマーは、メタクリル酸に由来する構造単位及びメタクリル酸エステルに由来する構造単位のみから構成されている。これにより、前述のとおり、アクリル酸又はその誘導体に由来する構造単位を含む場合と比較してポリマー粒子のガラス転移温度が高くなり、その結果、画像変形が抑制される。
特定ポリマーのガラス転移温度は、画像変形をより抑制する観点から、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることがさらに好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。
特定ポリマーのガラス転移温度の上限には特に制限はないが、特定ポリマーのガラス転移温度は、例えば150℃未満とすることができる。
特定ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、通常用いられる方法によって適宜制御することができる。例えば、特定ポリマーを構成するモノマー(重合性化合物)の種類やその構成比率、特定ポリマーを構成するポリマーの分子量等を適宜選択することで、特定ポリマーのガラス転移温度(Tg)を所望の範囲に制御することができる。
本発明において、ポリマーのガラス転移温度(Tg)としては、実測によって得られる測定Tgを適用する。
具体的には、測定Tgとしては、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220を用いて通常の測定条件で測定された値を意味する。但し、ポリマーの分解等により測定が困難な場合には、下記の計算式で算出される計算Tgを適用する。計算Tgは下記の式(1)で計算されるものである。
1/Tg=Σ(X/Tg) ・・・(1)
ここで、計算対象となるポリマーはi=1からnまでのn種のモノマー成分が共重合しているとする。Xはi番目のモノマーの重量分率(ΣX=1)、Tgはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。但し、Σはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tg)は、Polymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup,E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用する。
前記特定ポリマー粒子としては、転相乳化法により得られたポリマー粒子であることが好ましく、下記の自己分散性ポリマーの粒子(自己分散性ポリマー粒子)がより好ましい。
ここで、自己分散性ポリマーとは、界面活性剤の不存在下、転相乳化法により分散状態としたとき、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーをいう。
ここで、分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
また、「水不溶性」とは、水100質量部(25℃)に対する溶解量が5.0質量部以下であることを指す。
前記転相乳化法としては、例えば、ポリマーを溶媒(例えば、水溶性有機溶剤等)中に溶解又は分散させた後、界面活性剤を添加せずにそのまま水中に投入し、ポリマーが有する塩生成基(例えば、酸性基)を中和した状態で、攪拌、混合し、前記溶媒を除去した後、乳化又は分散状態となった水性分散物を得る方法が挙げられる。
前記自己分散性ポリマー粒子としては、例えば、特開2010−64480号公報の段落0090〜0121、および特開2011−068085号公報の段落0130〜0167に記載されている自己分散性ポリマー粒子の中から、メタクリル酸に由来する構造単位及びSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマーで構成されたポリマー粒子を選択して用いることができる。
(メタクリル酸に由来する構造単位)
メタクリル酸に由来する構造単位は、既述のとおり、特定ポリマーにおいて極性モノマーに由来する構造単位としての機能を有し、インク組成物中における特定ポリマー粒子の分散安定性に寄与する構造単位である。
特定ポリマーにおいて、極性モノマーに由来する構造単位としてのメタクリル酸に由来する構造単位をアクリル酸に由来する構造単位に変更した場合には、アクリル酸のSP値(25.5MPa1/2)がメタクリル酸のSP値(24.0MPa1/2)と比較して高いことから、極性モノマーに由来する構造単位(親水的な構造単位)と非極性モノマーに由来する構造単位(疎水的な構造単位)とのSP値の差が大きくなり、その結果、疎水性である吐出面(ヘッドの吐出面)からのインク組成物の除去性が低下することがある。
特定ポリマーにメタクリル酸に由来する構造単位を導入する方法には特に制限はなく、例えば、モノマーとしてのメタクリル酸を重合させる方法等の公知の方法が挙げられる。
特定ポリマー中におけるメタクリル酸に由来する構造単位の含有量(共重合比率)には特に制限はないが、前記特定ポリマーの全量に対し、2質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましく、5質量%〜15質量%が特に好ましい。
メタクリル酸に由来する構造単位の含有量が2質量%以上であると、特定ポリマー粒子の分散安定性がより向上し、本発明の効果がより効果的に奏される。
メタクリル酸に由来する構造単位の含有量が30質量%以下であると、インク組成物中における特定ポリマー粒子の溶解をより抑制でき、本発明の効果がより効果的に奏される。
(SP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位)
特定ポリマーは、SP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステル(以下、「特定メタクリル酸エステル」ともいう)に由来する構造単位を少なくとも1種含む。
特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位は、特定ポリマーにおいて非極性モノマーに由来する構造単位として機能し、既述のとおり、特定ポリマー粒子の核となる部位を構成する。
メタクリル酸エステルのSP値が19.0MPa1/2未満であると、非極性モノマーに由来する構造単位の疎水性が高くなりすぎるので、疎水性である吐出面(ヘッドの吐出面)からのインク組成物の除去性が低下する。
メタクリル酸エステルのSP値が25.0MPa1/2を超えると、非極性モノマーに由来する構造単位の親水性、ひいてはポリマー粒子全体の親水性が高くなりすぎるので、ポリマー粒子が、水性インクである本発明のインク組成物中に安定的に存在し難くなる(即ち、ポリマー粒子がインク組成物中に溶解されてしまい、粒子として存在できない場合がある)。
特定メタクリル酸エステルのSP値は、本発明の効果をより効果的に奏する観点より、19.4MPa1/2〜22.0MPa1/2が好ましい。
本発明におけるSP値(溶解度パラメーター、単位:MPa1/2)は、沖津法により計算されたSP値を指す。
ここで、沖津法とは、日本接着学会誌Vol.29,No.6(1993)249〜259項に記載された理論式(沖津俊直により提案されている溶解性パラメータ(SP値)の理論式)を用いたSP値の計算方法である。
特定ポリマーに特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位を導入する方法には特に制限はなく、例えば、モノマーとしての特定メタクリル酸エステルの1種又は2種以上を重合させる方法等の公知の方法が挙げられる。
特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位としては、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、グリシジルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、t−ブチルアミノエチルメタクリレートに由来する構造単位、ジメチルアミノエチルメタクリレートに由来する構造単位、及びテトラヒドロフランメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位、グリシジルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、及びフェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、及びフェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種が特に好ましい。
特定ポリマー中における特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量(共重合比率)には特に制限はないが、分散安定性の観点から、前記特定ポリマーの全量に対し、70質量%〜98質量%が好ましく、80質量%〜95質量%がより好ましく、85質量%〜95質量%が特に好ましい。
特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が70質量%以上であると、インク組成物中における特定ポリマー粒子の溶解をより抑制でき、本発明の効果がより効果的に奏される。
特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が98質量%以下であると、特定ポリマー粒子の分散安定性がより向上し、本発明の効果がより効果的に奏される。
ここで、特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、特定ポリマーに特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位が2種以上含まれる場合は、総含有量を指す。
本発明における特定ポリマーの特に好ましい形態は、本発明の効果をより効果的に奏する観点から、メタクリル酸に由来する構造単位2質量%〜30質量%(より好ましくは5質量%〜20質量%、特に好ましくは5質量%〜15質量%)と、特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位70質量%〜98質量%(より好ましくは80質量%〜95質量%、特に好ましくは85質量%〜95質量%)と、からなる形態である(但し、メタクリル酸に由来する構造単位と特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位との合計を100質量%とする)。
前記特定ポリマー粒子を構成する特定ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、特定ポリマー粒子の自己分散安定性を高めることができる。
なお、特定ポリマー粒子を構成する特定ポリマーの重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行なう。また、検量線は、東ソー(株)製の標準試料TSK standard,polystyrene F−40、F−20、F−4、F−1、A−5000、A−2500、およびA−1000、ならびにn−プロピルベンゼンの8サンプルから作製する。
本発明における特定ポリマー粒子(特に自己分散性ポリマー粒子)の平均粒子径は、体積平均粒子径で10〜400nmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、10〜100nmの範囲が更に好ましく、特に好ましくは10〜50nmの範囲である。体積平均粒子径が10nm以上であると製造適性が向上する。また、体積平均粒子径が400nm以下であると保存安定性が向上する。また、前記ポリマー粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。また、粒径分布の異なる前記ポリマー粒子を2種以上混合して使用してもよい。
なお、ポリマー粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
本発明におけるインク組成物は、特定ポリマー粒子(好ましくは自己分散性ポリマー粒子)を1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
特定ポリマー粒子(好ましくは自己分散性ポリマー粒子)のインク組成物中における含有量(総含有量)としては、インク組成物全量に対して、0.5〜5.0質量%が好ましく、0.5〜3.0質量%が更に好ましく、0.5〜2.0質量%が特に好ましい。
特定ポリマー粒子の含有量が5.0質量%以下であることにより、吐出面からのインク組成物の除去性がより向上する。
また、一般的には、ポリマー粒子の含有量が5.0質量%以下であるインク組成物では、画像変形および光沢ムラが発生し易い傾向がある。
このため、本発明のインク組成物中における特定ポリマー粒子の(インク組成物全量に対する)含有量が5.0質量%以下である場合において、特定ポリマー粒子および(メタ)アクリルアミド化合物による、画像変形抑制及び光沢ムラ抑制の効果がより顕著に奏される。
<(メタ)アクリルアミド化合物>
本発明のインク組成物は、(メタ)アクリルアミド化合物を少なくとも1種含有する。
この(メタ)アクリルアミド化合物は、一分子内に(メタ)アクリルアミド構造を1つ以上有する化合物である。
また、この(メタ)アクリルアミド化合物は、活性エネルギー線が照射されることで重合する重合性化合物(重合性モノマー)であり、画像を硬化させる際の重合性、重合効率が高い重合性化合物である。これにより、形成された画像の耐擦過性や耐傷性が高められる。
本発明のインク組成物は、この(メタ)アクリルアミド化合物を、前述の特定ポリマー粒子とともに含むことにより、画像変形及び光沢ムラを顕著に抑制できる。
即ち、本発明のインク組成物において、(メタ)アクリルアミド化合物を他の重合性化合物(例えば(メタ)アクリレート化合物)に置き換えた場合には、画像変形及び光沢ムラが悪化する傾向となる。
本発明における(メタ)アクリルアミド化合物は、水溶性であることが好ましい。
ここで、「水溶性」とは、水に一定濃度以上溶解できることをいい、水性のインク又は場合により処理液中に溶解し得る性質を有していればよい。具体的には、水に対する溶解度が10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。
本発明における(メタ)アクリルアミド化合物は、単官能(メタ)アクリルアミド化合物であってもよいし、多官能(メタ)アクリルアミド化合物であってもよい。
ここで、単官能(メタ)アクリルアミド化合物は、一分子内に(メタ)アクリルアミド構造を1つ有する化合物を指し、多官能(メタ)アクリルアミド化合物は、一分子内に(メタ)アクリルアミド構造を2つ以上有する化合物を指す。
本発明においては、画像変形及び光沢ムラをより抑制する観点から、(メタ)アクリルアミド化合物の少なくとも1種が、多官能(メタ)アクリルアミド化合物であることが好ましい。(メタ)アクリルアミド化合物の少なくとも1種が多官能(メタ)アクリルアミド化合物であることは、紫外線照射により画像を硬化させる際の重合性、重合効率を高め、ひいては画像の耐擦過性や耐傷性を高める点でも好ましい。
この場合、多官能(メタ)アクリルアミド化合物の含有量は、インク組成物の全量に対し、5質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましく、5質量%〜15質量%が特に好ましい。
多官能(メタ)アクリルアミド化合物としては、後述の一般式(1)におけるnが2以上の整数である化合物が好ましく、後述の一般式(2)で表される化合物がより好ましい。
一方、本発明においては、記録媒体として塗工紙を用いた場合における、塗工紙の顔料層への浸透性の点で有利である観点から、(メタ)アクリルアミド化合物の少なくとも1種が、単官能(メタ)アクリルアミド化合物であることも好ましい。これにより、画像のみならず、顔料層も硬化されるので、記録媒体に対する画像の密着性がより向上する。
この場合、単官能(メタ)アクリルアミド化合物の含有量は、インク組成物の全量に対し、10質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜25質量%がより好ましく、10質量%〜20質量%が特に好ましい。
単官能(メタ)アクリルアミド化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、などが挙げられ、特に好ましくはヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドであり、最も好ましくはヒドロキシエチルアクリルアミドである。
また、本発明においては、記録媒体として塗工紙を用いた場合における塗工紙のコート層への浸透性、並びに、画像変形及び光沢ムラの抑制の観点からみると、本発明のインク組成物は、(メタ)アクリルアミド化合物として、単官能(メタ)アクリルアミド化合物と多官能(メタ)アクリルアミド化合物(より好ましくは後述の一般式(2)で表される化合物)とを含むことが好ましい。
この場合、単官能(メタ)アクリルアミド化合物の含有量の好ましい範囲、及び、多官能(メタ)アクリルアミド化合物の含有量の好ましい範囲は、それぞれ前述のとおりである。また、総含有量の好ましい範囲は以下のとおりである。
本発明のインク組成物中における(メタ)アクリルアミド化合物の含有量(2種以上の場合には総含有量)は、インク組成物の全量に対し、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下が好ましく、15質量%以上35質量%以下がより好ましい。
(メタ)アクリルアミド化合物の合計量が前記範囲内であることで、硬化反応性が良好で画像全体における硬化の均一化が図れる。
本発明における(メタ)アクリルアミド化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。

一般式(1)において、Qは、n価の基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。また、nは、1以上の整数を表す。
一般式(1)で表される化合物は、不飽和ビニル単量体がアミド結合により基Qに結合したものである。
一般式(1)中のnが1である化合物が単官能(メタ)アクリルアミド化合物であり、一般式(1)中のnが2以上の整数である化合物が多官能(メタ)アクリルアミド化合物である。
一般式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基を表し、好ましくは水素原子である。
前記基Qの価数nは、浸透性、重合効率、吐出安定性を向上させる観点から、1以上であり、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましい。
また、価数nが2以上の整数である場合においては、溶解性と硬化性との両立の観点から、nは、2以上6以下が好ましく、2以上4以下がより好ましい。
前記一般式(1)において、nが1である場合の基Qは、(メタ)アクリルアミド構造と連結可能な1価の基であれば、特に制限はない。nが1である場合の基Qとしては、水溶性を有する基から選択されることが好ましい。具体的には、以下の化合物群Xから選ばれる化合物から1以上の水素原子又はヒドロキシル基を除いた1価の残基を挙げることができる。
(化合物群X)
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール,1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、チオグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらの縮合体、低分子ポリビニルアルコール、又は糖類などのポリオール化合物、並びに、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンジアミンなどのポリアミン化合物。
また、nが2以上の整数である場合の基Qとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基等の炭素数4以下の置換又は無置換のアルキレン基、飽和又は不飽和のヘテロ環(ピリジン環、イミダゾール環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環など)を有する2価以上の連結基、並びに、オキシアルキレン基(好ましくはオキシエチレン基)を含むポリオール化合物の2価以上の残基、オキシアルキレン基(好ましくはオキシエチレン基)を3以上含むポリオール化合物の2価以上の残基を例示することができる。
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、特開2010−69805号公報、特開2011−46872号公報、特開2011−178896号公報、特開2011−174013号公報、特開2011−195822号公報に記載されている水溶性の重合性化合物の中から適宜選択して用いることができる。
本発明における(メタ)アクリルアミド化合物としては、高い重合能及び硬化能を備える点で、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
この化合物は、一分子内に重合性基として4つの(メタ)アクリルアミド構造を有する4官能の(メタ)アクリルアミド化合物である。以下では、(メタ)アクリルアミド構造を「(メタ)アクリルアミド基」ともいう。
また、この化合物は、例えば、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外光線、電子線等の活性エネルギー線や熱等のエネルギーの付与による重合反応に基づく優れた硬化性を示す。下記一般式(2)で表される化合物は、水溶性を示し、水やアルコール等の水溶性有機溶剤に良好に溶解するものである。

一般式(2)において、Rは、水素原子又はメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。複数のRは、互いに同じでも異なっていてもよい。
は、炭素数2〜4の直鎖又は分岐のアルキレン基を表す。複数のRは、互いに同じでも異なっていてもよい。Rは、炭素数3〜4のアルキレン基であることが好ましく、炭素数3のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数3の直鎖のアルキレン基であることが特に好ましい。Rのアルキレン基は、さらに置換基を有していてもよく、該置換基としてはアリール基、アルコキシ基等が挙げられる。
但し、Rにおいて、Rの両端に結合する酸素原子と窒素原子とがRの同一の炭素原子に結合した構造をとることはない。Rは、酸素原子と(メタ)アクリルアミド基の窒素原子とを連結する直鎖又は分岐のアルキレン基である。ここで、アルキレン基が分岐構造をとる場合、両端の酸素原子と(メタ)アクリルアミド基の窒素原子とがアルキレン基中の同一の炭素原子に結合した−O−C−N−構造(ヘミアミナール構造)をとることが考えられるが、一般式(2)で表される化合物はこのような構造の化合物を含まない。分子内に−O−C−N−構造を有する化合物は、炭素原子の位置で分解が起こりやすいため、保存中に分解されやすく、インク組成物に含有した場合に保存安定性が低下する要因となる点で好ましくない。
は、2価の連結基を表し、複数のRは、互いに同じでも異なっていてもよい。Rで表される2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、複素環基、又はこれらの組み合わせからなる基等が挙げられ、アルキレン基が好ましい。なお、2価の連結基がアルキレン基を含む場合、該アルキレン基中にはさらに−O−、−S−、及び−NR−から選ばれる少なくとも1種の基が含まれていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
がアルキレン基を含む場合、アルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基等が挙げられる。Rのアルキレン基の炭素数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることがさらに好ましく、1であることが特に好ましい。Rのアルキレン基には、さらに−O−、−S−、及び−NR−から選ばれる少なくとも1種が含まれていてもよい。−O−が含まれるアルキレン基の例としては、−C−O−C−、−C−O−C−等が挙げられる。Rのアルキレン基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例としてはアリール基、アルコキシ基等が挙げられる。
がアリーレン基を含む場合、アリーレン基の例としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる、Rのアリーレン基の炭素数は、6〜14であることが好ましく、6〜10であることがさらに好ましく、6であることが特に好ましい。Rのアリーレン基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例としてはアルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
が複素環基を含む場合、複素環基としては、5員または6員環のものが好ましく、それらは更に縮環していてもよい。また、複素環は、芳香族複素環であっても非芳香族複素環であってもよい。複素環基としては、例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。中でも、芳香族複素環基が好ましく、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾールが好ましい。なお、上記で示した複素環基は、置換位置を省略した形で例示しているが、置換位置は限定されるものではなく、例えばピリジンであれば、2位、3位、4位で置換することが可能で、これらの置換体を全て含み得るものである。
複素環基は、さらに置換基を有してもよく、置換基の例としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。
前記一般式(2)中のkは、2又は3を表す。複数のkは、互いに同じでも異なっていてもよい。また、C2kは、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。但し、1つのC2kO単位内において、kは同一である。
また、x、y、及びzは、各々独立に0〜6の整数を表し、0〜5の整数であることが好ましく、0〜3の整数であることがより好ましい。x+y+zは、0〜18を満たし、0〜15を満たすことが好ましく、0〜9を満たすことがより好ましい。
上記のうち、複数のRが各々独立に水素原子又はメチル基を表し、複数のRが各々独立に炭素数2〜4のアルキレン基を表し、複数のRが各々独立に炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基を表し、複数のkが各々独立に2又は3を表し、x、y、及びzは、各々独立に0〜6の整数を表し、x+y+zが0〜15を満たす場合が好ましい。
前記一般式(2)で表される化合物の具体例を以下に示す。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。

前記一般式(2)で表される化合物は、例えば下記スキーム1又はスキーム2にしたがって製造することができる。

前記スキーム1において、第一工程は、アクリロニトリルとトリスヒドロキシメチルアミノメタンとの反応によりポリシアノ化合物を得る工程である。この工程での反応は、3〜60℃で2〜8時間行なわれることが好ましい。
第二工程は、ポリシアノ化合物を触媒存在下で水素と反応させ、還元反応によりポリアミン化合物を得る工程である。この工程での反応は、20〜60℃で5〜16時間行なわれることが好ましい。
第三工程は、ポリアミン化合物とアクリル酸クロリド又はメタクリル酸クロリドとのアシル化反応により多官能アクリルアミド化合物を得る工程である。この工程での反応は、3〜25℃で1〜5時間行なわれることが好ましい。なお、アシル化剤は、酸クロリドに換えてジアクリル酸無水物又はジメタクリル酸無水物を用いてもよい。なお、アシル化工程で、アクリル酸クロリドとメタクリル酸クロリドの両方を用いることで、最終生成物として同一分子内にアクリルアミド構造とメタクリルアミド構造とを有する化合物を得ることができる。

前記スキーム2において、第一工程は、アミノアルコールの窒素原子に、ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基等による保護基導入反応により窒素保護アミノアルコール化合物を得る工程である。この工程での反応は、3〜25℃で3〜5時間行なわれることが好ましい。
第二工程は、窒素保護アミノアルコール化合物のOH基に、メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等の脱離基を導入し、スルホニル化合物を得る工程である。この工程での反応は、3〜25℃で2〜5時間行なわれることが好ましい。
第三工程は、スルホニル化合物とトリスヒドロキシメチルニトロメタンとのSN2反応により、アミノアルコール付加化合物を得る工程である。この工程での反応は、3〜70℃で5〜10時間行なわれることが好ましい。
第四工程は、アミノアルコール付加化合物を触媒存在下で水素と反応させ、水素添加反応によりポリアミン化合物を得る工程である。この工程での反応は、20〜60℃で5〜16時間行なわれることが好ましい。
第五工程は、ポリアミン化合物とアクリル酸クロリド又はメタクリル酸クロリドとのアシル化反応により多官能アクリルアミド化合物を得る工程である。この工程での反応は、3〜25℃で1〜5時間行なわれることが好ましい。なお、アシル化剤は、酸クロリドに換えてジアクリル酸無水物又はジメタクリル酸無水物を用いてもよい。なお、アシル化工程で、アクリル酸クロリドとメタクリル酸クロリドの両方を用いることで、最終生成物として同一分子内にアクリルアミド構造とメタクリルアミド構造とを有する化合物を得ることができる。
上記工程を経て得られた化合物は、反応生成液から常法により精製することで得られる。例えば、有機溶媒を用いた分液抽出、貧溶媒を用いた晶析、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーなどによって精製できる。
以上、本発明における(メタ)アクリルアミド化合物について説明したが、本発明のインク組成物は(メタ)アクリルアミド化合物とともに、(メタ)アクリルアミド化合物以外のその他の水溶性の重合性化合物を含んでいてもよい。
その他の水溶性の重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物や、カチオン性の重合性化合物が挙げられる。カチオン性の重合性化合物は、カチオン基と不飽和二重結合等の重合性基とを有する化合物であり、例えば、エポキシモノマー類、オキタセンモノマー類などを好適に用いることができる。
<顔料>
本発明のインク組成物は、顔料を少なくとも1種含む。
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。
顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。
顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機顔料又は無機顔料を用いることができる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
また無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
本発明に用いることができる顔料として具体的には、例えば、特開2007−100071号公報の段落番号[0142]〜[0145]に記載の顔料などが挙げられる。
上記の顔料は、1種単独で使用してもよく、また、上記した各群内もしくは各群間より複数種を選択して組み合わせて使用してもよい。
顔料のインク組成物中における含有量としては、色濃度、粒状性、インク安定性、吐出信頼性の観点から、インク組成物の全質量に対して、1〜25質量%となる量が好ましく、2〜20質量%となる量がより好ましい。
(分散剤)
本発明のインク組成物において、前記顔料は、分散剤によって分散されていることが好ましい。即ち、本発明のインク組成物は、分散剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記顔料の分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
前記低分子の界面活性剤型分散剤については、例えば、特開2011−178029号公報の段落0047〜0052に記載された公知の低分子の界面活性剤型分散剤を用いることができる。
前記ポリマー分散剤のうち、水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物が挙げられる。例えば、親水性高分子化合物としては、アラビアガム、トラガンガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子等の天然の親水性高分子化合物が挙げられる。
また、前記親水性高分子化合物の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子等の天然物を原料に修飾した親水性高分子化合物が挙げられる。
更に、前記親水性高分子化合物の例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラック等の天然高分子化合物等の合成系の親水性高分子化合物が挙げられる。
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、またはスチレンアクリル酸の、ホモポリマーおよび他の親水基を有するモノマーとの共重合体などのように、カルボキシル基が導入された水溶性分散剤が親水性高分子化合物として好ましい。
前記ポリマー分散剤のうち、非水溶性分散剤としては、疎水性部と親水性部の両方を有するポリマーを用いることができる。例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
ポリマー分散剤の重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは5,000〜50,000であり、更に好ましくは5,000〜40,000であり、特に好ましくは10,000〜40,000である。
なお、ポリマー分散剤の重量平均分子量は、前述の特定ポリマー粒子を構成する特定ポリマーの重量平均分子量と同様にして測定される。
ポリマー分散剤は、自己分散性、及び処理液が接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が100mgKOH/g以下のポリマーであることが好ましく、酸価は25mgKOH/g〜100mgKOH/gのポリマーがより好ましい。特に、本発明のインク組成物を、インク組成物中の成分を凝集させる処理液と共に用いる場合には、カルボキシル基を有し、かつ酸価が25mgKOH/g〜100mgKOH/gのポリマー分散剤が有効である。処理液については、後述する。
前記顔料(p)と前記分散剤(s)との混合質量比(p:s)としては、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:2の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125〜1:1.5の範囲である。
本発明においては、顔料に加えて染料を用いてもよい。染料を用いる場合には、染料を水不溶性の担体に保持したものを用いることができる。染料としては、公知の染料を制限なく用いることができ、例えば、特開2001−115066号公報、特開2001−335714号公報、特開2002−249677号公報等に記載の染料が好適に用いられる。担体としては、水に不溶又は難溶であれば、特に制限はなく、無機材料、有機材料、及びこれらの複合材料から選択して用いることができる。具体的には、特開2001−181549号公報、特開2007−169418号公報等に記載の担体が好適に用いられる。
染料を保持した担体(水不溶性着色粒子)は、分散剤を用いて水系分散物として用いることができる。分散剤としては上述した分散剤を好適に用いることができる。
本発明においては、画像の耐光性や品質などの観点から、インク組成物は、顔料と分散剤と含むことが好ましく、有機顔料とポリマー分散剤とを含み、顔料表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料として含有されることがより好ましい。更には、インク組成物は、有機顔料とカルボキシル基を含むポリマー分散剤とを含み、顔料表面の少なくとも一部がカルボキシル基を有するポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料を含むことが特に好ましく、凝集性の観点から、顔料はカルボキシル基を含むポリマー分散剤に被覆されて水不溶性であることが好ましい。
分散状態での顔料の平均粒子径としては、10nm〜200nmが好ましく、10nm〜150nmがより好ましく、10nm〜100nmがさらに好ましい。平均粒子径が200nm以下であると、色再現性が良好になり、インクジェット法で打滴する際の打滴特性が良好になる。平均粒子径が10nm以上であると、耐光性が良好になる。また、色材の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ色材を2種以上混合して使用してもよい。
ここで、分散状態での顔料の平均粒子径は、インク化した状態での平均粒子径を示すが、インク化する前段階のいわゆる濃縮インク分散物についても同様である。
なお、分散状態での顔料の平均粒子径及び粒径分布は、前述の特定ポリマー粒子の平均粒子径及び粒径分布と同様にして求められるものである。
<水>
本発明のインク組成物は水を含む。
即ち、本発明のインク組成物は、水性のインク組成物である。
本発明における水としては、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。
また、インク組成物における水の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、インク組成物の全質量に対し、好ましくは10質量%〜99質量%であり、より好ましくは30質量%〜90質量%であり、更に好ましくは30質量%〜80質量%であり、特に好ましくは50質量%〜70質量%である。
<水溶性有機溶剤>
本発明におけるインク組成物は、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含有していてもよい。
前記水溶性有機溶剤の例としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール(多価アルコール類);糖アルコール類;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、特開2011−074150号公報の段落0124〜0135や、特開2011−079901号公報の段落0104〜0119等に記載の公知の水溶性有機溶剤を用いることもできる。
本発明におけるインク組成物が水溶性有機溶剤を含有する場合、その含有量は、インク組成物の全量に対し、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
<重合開始剤>
本発明のインク組成物は重合開始剤を少なくとも1種含有することが好ましい。
これにより、活性エネルギー線により(メタ)アクリルアミド化合物の重合を開始させることができる。
前記重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、前記重合開始剤は、増感剤と併用してもよい。
重合開始剤は、活性エネルギー線により重合性化合物の重合反応を開始し得る化合物を適宜選択して含有することができる。重合開始剤の例として、放射線もしくは光、又は電子線により活性種(ラジカル、酸、塩基など)を発生する重合開始剤(例えば光重合開始剤等)が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメートが挙げられる。更に、例えばトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等の、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。
本発明のインク組成物が重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリルアミド化合物に対して、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。重合開始剤の含有量は、1質量%以上であると画像の耐傷性がより向上し、高速記録に有利であり、40質量%以下であると吐出安定性の点で有利である。
前記増感剤としては、アミン系(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジンなど)、尿素(アリル系、o−トリルチオ尿素など)、イオウ化合物(ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩など)、ニトリル系化合物(N,N,ジ置換p−アミノベンゾニトリルなど)、リン化合物(トリn−ブチルホスフィン、ネトリウムジエチルジチオホスフィードなど)、窒素化合物(ミヒラーケトン、N−ニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ1,3オキサジン化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドとジアミンの縮合物など)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなど)、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物の高分子化アミン、トリエタノールアミントリアクリレート、等が挙げられる。
増感剤は、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
<界面活性剤>
本発明におけるインク組成物は、必要に応じて、界面活性剤の少なくとも1種を含むことができる。界面活性剤は、例えば表面張力調整剤として用いることができる。
前記界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等を有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。更に、上記の水溶性ポリマー(高分子分散剤)を界面活性剤としても用いてもよい。
本発明においては、インクの打滴干渉抑制の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、中でもアセチレングリコール誘導体(アセチレングリコール系界面活性剤)がより好ましい。
前記アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物等を挙げることができ、これから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの化合物の市販品としては例えば、日信化学工業社のオルフィンE1010などのEシリーズを挙げることができる。
前記界面活性剤(表面張力調整剤)をインク組成物に含有する場合、インクジェット方式によりインク組成物の吐出を良好に行う観点から、界面活性剤は、インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整できる範囲の量で含有されることが好ましく、表面張力の点からはより好ましくは20〜45mN/mであり、更に好ましくは25〜40mN/mである。
本発明のインク組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の具体的な量には特に限定はないが、インク組成物の全量に対し、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%であり、更に好ましくは0.2〜3質量%である。
<他の成分>
本発明におけるインク組成物は、上記成分以外にその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、重合禁止剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物の場合はインクに直接添加し、また、油性染料を分散物として用いる場合は染料分散物の調製後に分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
<インク組成物の好ましい物性>
本発明におけるインク組成物の表面張力(25℃)には特に限定はないが、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN/m以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。インク組成物の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、25℃の条件下で測定される。
また、本発明におけるインク組成物の粘度には特に限定はないが、25℃での粘度が、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満であり、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。インク組成物の粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、25℃の条件下で測定される。
また、本発明におけるインク組成物のpHには特に制限はないが、インク安定性と凝集速度の観点から、pH7.5〜10であることが好ましく、pH8〜9であることがより好ましい。尚、インク組成物のpHは25℃で、通常用いられるpH測定装置(例えば、東亜ディーケーケー(株)製、マルチ水質計MM−60R)によって測定される。
またインク組成物のpHは、酸性化合物または塩基性化合物を用いて適宜調整することができる。酸性化合物または塩基性化合物としては、通常用いられる化合物を特に制限なく用いることができる。
≪画像形成方法≫
本発明の画像形成方法は、既述の本発明のインク組成物をインクジェット記録用ヘッドから吐出することで、インク組成物を記録媒体に付与して画像を形成するインク付与工程と、前記インク付与工程後の画像を乾燥させる乾燥工程と、を有する。本発明の画像形成方法は、必要に応じその他の工程を有していてもよい。
<記録媒体>
本発明の画像形成方法に用いられる記録媒体には特に限定はなく、インクジェット法において通常用いられる記録媒体を用いることができる。
本発明においては、前記記録媒体として、比較的液体の浸透が緩やかな記録媒体が好適である。
比較的液体の浸透が緩やかな記録媒体に画像を形成する場合には、乾燥時のインク組成物が流動性高い傾向があり、また、インク組成物中の顔料等の成分の凝集ムラが発生し易い傾向があるため、かかる記録媒体を用いたときに、本発明による画像変形抑制の効果及び光沢ムラ抑制の効果がより顕著に得られる。
比較的液体の浸透が緩やかな記録媒体として、具体的には、セルロースパルプを主成分とした支持体上の少なくとも一方の面に、一層もしくは多層の顔料層を有する記録媒体が好適である。
(支持体)
セルロースパルプを主成分とした支持体としては、化学パルプ、機械パルプ及び古紙回収パルプ等を任意の比率で混合して用いられ、必要に応じて内添サイズ剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤等を添加した原料を長網フォーマやギャップタイプのツインワイヤーフォーマ、長網部の後半部をツインワイヤーで構成するハイブリッドフォーマ等で抄紙されたものが使用される。
ここで、「主成分」とは、支持体の質量に対して、50質量%以上含まれる成分をいう。
支持体に使用するパルプの詳細については、特開2011−42150号公報の段落0024の記載を参照することができる。また、支持体には、填料や内添サイズ剤などを用いることができる。填料や内添サイズ剤等の詳細については、特開2011−42150号公報の段落0025〜0027の記載を参照することができる。
(顔料層)
顔料層に用いられる顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機顔料及び無機顔料を用いることができる。顔料の具体例については、特開2011−42150号公報の段落0029の記載を参照することができ、記録媒体の透明性を保持して画像濃度を高める点で、白色無機顔料が好ましい。
顔料層は、更に水性バインダー、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤、抑泡剤、pH調節剤、硬化剤、着色剤、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤などの添加剤を含有することができる。
水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
顔料層を支持体上に形成する方法は、特に制限なく目的に応じて適宜選定できる。例えば、顔料を水に分散した分散液を原紙に塗布し、乾燥させることで、顔料層を形成できる。
顔料層中の顔料の量は0.1g/m〜20g/mが好ましく、0.5g/m〜10g/mの範囲がより好ましい。顔料の量が0.1g/m以上であると、耐ブロッキング性が良好であり、また顔料の量が20g/m以下であると、脆性の点で有利である。顔料層に含まれる顔料は、当該層の全固形分に対して10質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは14質量%以上であり、更に18質量%以上含有することが好ましい。
比較的液体の浸透が緩やかな記録媒体としては、動的走査吸液計で測定した純水の該記録媒体への転移量が、接触時間100msにおいて1ml/m以上15ml/m以下、かつ、接触時間400msにおいて2ml/m以上20ml/m以下である記録媒体が好ましい。
かかる物性を示す記録媒体については、例えば、特開2011−063001号公報や特開2011−042150号公報の記載を適宜参照できる。
上述した顔料層は、顔料と樹脂バインダーとを主成分とする。樹脂配合量をリッチにすることで前記転移量が減少するように調整可能であり、顔料配合量をリッチにすることで前記転移量が増加するように調整可能である。また、顔料層に含まれる顔料粒子の比表面積を大きくすること、例えば粒径を小さくしたり、比表面積の大きな種類の顔料を使用することでも、前記転移量を大きくすることが可能である。
セルロースパルプを主成分とした支持体上の少なくとも一方の面に、一層もしくは多層の顔料層を有する記録媒体としては、例えば、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる塗工紙を用いることができる。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層(顔料層)を設けたものである。
前記塗工紙としては、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙を好適に用いることができ、これらの記録媒体上に高品位の画像を効果的に形成することができる。
前記塗工紙は、一般に上市されているものを入手して使用できる。例えば、一般印刷用塗工紙を用いることができ、具体的には、A2グロス紙では「OKトップコート+」(王子製紙製)、「オーロラコート」(日本製紙製)、「パールコート」(三菱製紙製)、「Sユトリロコート」(大王製紙)、「ミューコートネオス」(北越製紙)、「雷鳥コート」(中越パルプ製)、A2マット紙では「ニューエイジ」(王子製紙製)、「OKトップコートマット」(王子製紙製)、「ユーライト」(日本製紙製)、「ニューVマット」(三菱製紙製)、「雷鳥マットコートN」(中越パルプ製)、A1グロスアート紙では「OK金藤+」(王子製紙製)、「特菱アート」(三菱製紙製)、「雷鳥特アート」(中越パルプ製)、A1ダルアート紙では、「サテン金藤+」(王子製紙製)、「スーパーマットアート」(三菱製紙製)、「雷鳥ダルアート」(中越パルプ製)、A0アート紙では「SA金藤+」(王子製紙製)、「高級アート」(三菱製紙製)、「雷鳥スーパーアートN」(中越パルプ製)、「ウルトラサテン金藤+」(王子製紙製)、「ダイヤプレミアダルアート」(三菱製紙製)などを挙げることができる。
<インク付与工程>
本発明におけるインク付与工程は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用ヘッドから吐出することで、インク組成物を記録媒体に付与して画像を形成する工程である。
本工程では、記録媒体上に選択的にインク組成物を付与でき、所望の可視画像を形成できる。
インク組成物をインクジェット記録用ヘッドから吐出する画像の記録(画像形成)は、具体的には、エネルギーを供与することにより、所望の被記録媒体、すなわち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載のインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に液体組成物を吐出することにより行なえる。なお、本発明に好ましいインクジェット記録方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
インクジェット記録用ヘッドからの吐出の方式には特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。インクジェット法としては、特に、特開昭54−59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
インクジェット記録用ヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、1〜10pl(ピコリットル)が好ましく、1.5〜6plがより好ましい。また、画像のムラ、連続諧調のつながりを改良する観点で、異なる液適量を組み合わせて吐出することも有効であり、このような場合でも本発明は好適に使用できる。
(インクジェット記録用ヘッド)
本工程におけるインクジェット記録用ヘッドとしては特に制限はなく、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。
また、インクジェット記録用ヘッドからのインクの吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、インクジェット記録用ヘッドに設けられる吐出孔(ノズル)等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
インクジェット記録用ヘッドとしては、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式に用いられる短尺ヘッド、ライン方式に用いられる記録媒体の1辺の全域に対応してノズルが配列されているラインヘッド等が挙げられる。ライン方式では、ノズルの配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なう。このライン方式では、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
本発明の画像形成方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合(即ち、インクジェット記録用ヘッドがラインヘッドである場合)に、吐出性向上の効果が大きい。
本工程におけるインクジェット記録用ヘッドの吐出面の性状は、既述のとおり撥水性となっている。
ここで、撥水性とは、水の接触角が90°以上(好ましくは120°以上、より好ましくは150°以上)である性質を指す。
本発明におけるインクジェット記録用ヘッドとしては、複数の吐出孔が二次元に配列され該吐出孔形成面にフッ素化合物を含む撥液膜が設けられたノズルプレートを備えたインクジェット記録用ヘッドが好適に用いられる。
このようなインクジェット記録用ヘッドとしては、例えば、特開2011−111527号公報や特開2011−063777号公報に記載された公知のインクジェット記録用ヘッドを用いることができる。
−フッ素化合物を含む撥液膜−
上記撥液膜に含まれるフッ素化合物としては、例えば、フッ化アルキル基を有する化合物を好適に用いることができる。
本発明における撥液膜は、例えば、フッ化アルキルシラン化合物を用いて作製された撥液膜であることが好ましい。
前記フッ化アルキルシラン化合物としては、下記一般式(F)で表されるフッ化アルキルシラン化合物を好適に用いることができる。下記一般式(F)で表されるフッ化アルキルシラン化合物は、シランカップリング化合物である。
2n+1−C2m−Si−X … 一般式(F)
前記一般式(F)において、nは1以上の整数を表し、mは0又は1以上の整数を表す。Xは、アルコキシ基、アミノ基、又はハロゲン原子を表す。なお、Xの一部がアルキル基で置換されていてもよい。
前記フッ化アルキルシラン化合物の例としては、C17SiCl(「1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシラン」や「FDTS」とも呼ばれている)、CF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシラン、CF(CFSi(OCHや、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシランなどのフルオロアルキルアルコキシシラン、等を挙げることができる。
前記一般式(F)の中では、撥液性および撥液膜の耐久性の点で、nが1〜14の整数であって、mが0又は1〜5の整数であって、Xがアルコキシ基又はハロゲン原子である場合が好ましく、更には、nが1〜12の整数であって、mが0〜3の整数であって、Xがアルコキシ基又はハロゲン原子である場合が好ましい。
中でも、C17SiClが最も好ましい。
前記フッ素化合物を含む撥液膜の厚みとしては、特に制限はないが、0.2〜30nmの範囲が好ましく、0.4〜20nmの範囲がより好ましい。撥液膜の厚みは、30nmを超える範囲でも特に問題はないが、30nm以下であると膜の均一性の点で有利であり、0.2nm以上であるとインクへの撥水性が良好である。
前記フッ素化合物を含む撥液膜としては、例えば、フッ化アルキルシラン化合物の単分子膜(SAM膜)や、フッ化アルキルシラン化合物の積層膜を用いることができる。ここで、フッ化アルキルシラン化合物の積層膜には、フッ化アルキルシラン化合物が重合せずに積まれている膜のほか、フッ化アルキルシラン化合物の重合膜も含まれる。
中でも、フッ化アルキルシラン化合物の単分子膜(SAM膜)が好ましい。
前記フッ素化合物を含む撥液膜は、例えば、特開2011−111527号公報や特開2011−063777号公報に記載された方法によって形成することができる。
上記のフッ素化合物を含む撥液膜のSP値としては特に限定はないが、インク組成物の除去性をより向上させる観点から、沖津法によって計算されたSP値が、16.00MPa1/2以下が好ましく、15.00MPa1/2以下がより好ましく、13.00MPa1/2以下が特に好ましい。
−ノズルプレート−
インクジェット記録用ヘッドに用いられることがある上記のノズルプレートは、複数の吐出孔が二次元に配列された構成を有するものである。複数の吐出孔の数には特に限定はなく、画像形成の高速化等を考慮し、適宜選択できる。
ノズルプレートとしては、シリコンを含むノズルプレート(以下、「シリコンノズルプレート」ともいう)が好適である。
シリコンとしては、単結晶シリコン又はポリシリコンを用いることができる。
また、前記シリコンノズルプレートとしては、例えば、シリコン基板上に、金属酸化物(酸化シリコン、酸化チタン、酸化クロム、酸化タンタル(好ましくはTa)等)、金属窒化物(窒化チタン、窒化シリコン等)、金属(ジルコニウム、クロム、チタン等)などの膜が設けられたものを用いることもできる。
ここで、酸化シリコンは、シリコン基板の表面の全部又は一部が酸化されて形成されたSiO膜(例えば、熱酸化膜)であってもよい。
また、前記シリコンノズルプレートは、シリコンの一部をガラス(例:硼珪酸ガラス、感光性ガラス、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス)に置き換えたものであってもよい。
<乾燥工程>
本発明における乾燥工程は、インク付与工程後の画像を乾燥させる工程である。
一般には、かかる乾燥工程を有する画像形成方法では、画像変形や画像の光沢ムラが生じやすい。しかし、本発明の画像形成方法では、既述の本発明のインク組成物が用いられるため、乾燥工程を有する画像形成方法において生じ易い、画像変形や画像の光沢ムラが抑制される。
乾燥工程では、記録媒体に形成された画像(インク組成物)中の水の少なくとも一部を乾燥除去する。乾燥工程を後述の硬化工程の前に設け、インク組成物中の水の含有量を減らすことで、硬化工程での重合性化合物の硬化反応がより良好に進行する。特に、主走査方向にインクを吐出して1回の走査で1ラインを形成するシングルパス方式により画像形成する方法など、高速で画像形成する場合に、画像形成性が成り立つ感度を確保することができる。
例えば記録媒体の搬送速度を100〜3000mm/sとして画像形成する場合に本発明の効果がより奏され、更には搬送速度が、150〜2700mm/s、より好ましくは250〜2500mm/sとした場合に、乾燥工程を設けたことによる密着性及び耐傷性の向上効果に優れる。
本発明における乾燥工程においては、必ずしも水を完全に乾燥させる必要はなく、水が画像中及び顔料層中に残存してもよい。乾燥工程では、むしろUV硬化反応を損なわない範囲で残存する程度に乾燥させることが好ましい。
乾燥工程では、最大付与量で付与されたインク組成物(画像)に含まれる水のうち、60〜80質量%が除去される乾燥条件(以下、「乾燥量」ということがある。)で、前記インク付与工程で記録媒体上に付与されたインク組成物中に含まれる水の少なくとも一部が除去されることが好ましい。除去される水の量が60質量%以上であると、カックリングが抑制され、画像の密着性を良好に維持できる。また、除去される水の量が80質量%以下であると、画像の密着性が良好である。
乾燥条件は、必要に応じて適宜設定されるインク付与工程におけるインク組成物の最大付与量に基づいて設定されてもよい。かかる乾燥条件下で顔料を含むインク組成物中の水を除去することで、カックリングの発生が抑制され、密着性に優れた画像が得られる。
乾燥工程における乾燥量は、以下のようにして算出することができる。すなわち、
乾燥工程を設けずにインクの最大付与量で形成した画像に含まれる水分量Wと、所定の乾燥条件による乾燥工程を設けてインクの最大付与量で形成した画像に含まれる水分量Wとをそれぞれ測定する。次いで、WとWとの差の、Wに対する比率((W−W)/W×100[質量%])を求めることで、乾燥工程によって除去される水分量としての乾燥量(質量%)が算出される。
なお、画像に含まれる水分量は、カールフィッシャー法により測定される。本発明における水分量としては、カールフィッシャー水分計MKA−520(京都電子工業(株)製)を用い、通常の測定条件で測定した水分量を適用する。
乾燥工程で除去されるインク組成物中の水量(乾燥量)は、乾燥後の硬化効率が良好に保たれる点から、最大付与量を15ml/m以下として付与されたインク組成物の全水分量に対して、60〜80質量%が好ましく、65〜80質量%がより好ましく、70〜80質量%が更に好ましい。
また、乾燥は、前記インク付与工程において記録媒体へのインク組成物の液滴の着弾が完了した時点から5秒以内に開始されることが好ましい。ここで、「着弾が完了した時点から5秒以内」とは、インク滴の着弾が完了した時点から5秒以内に、該インク滴による画像に対して送風されるか又は該インク滴による画像に対して熱が与えられることを意味する。例えば、インク滴の着弾が完了した時点から5秒以内に乾燥領域内に記録媒体を搬送することで、着弾が完了した時点から5秒以内に乾燥が開始される。
インク滴の着弾が完了した時点から乾燥開始までの時間は、3秒以内がより好ましい。
乾燥は、ニクロム線ヒータ等の発熱体で加熱する加熱手段、ドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。
加熱方法としては、例えば、記録媒体の画像形成面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の画像形成面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられる。加熱は、これらを複数組み合わせて行なってもよい。
<処理液付与工程>
本発明の画像形成方法は、本発明のインク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含有する処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有することが好ましい。
本工程を有する場合、記録媒体上で、本発明のインク組成物と上記の処理液とが接触し、インク組成物中の顔料等の成分が凝集されてなる凝集体が形成され、記録媒体上に画像が固定化される。処理液をインク組成物と共に用いて画像を形成することで、インクジェット記録を高速化することができ、また高速記録しても、濃度、解像度の高い描画性(例えば細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。
処理液の詳細については後述する。
処理液付与工程は、既述のインク付与工程の前又は後のいずれに設けてもよいが、本発明においては、既述のインク付与工程の前に設けられることが好ましい。
具体的には、記録媒体上に、インク組成物を付与する前に、予め前記処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、既述の通りである。
処理液付与工程における処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集成分の付与量が0.1g/m以上となる量とすることができる。中でも、凝集成分の付与量が0.2〜0.7g/mとなる量が好ましい。凝集成分は、付与量が0.1g/m以上であるとインク組成物の種々の使用形態に応じ良好な高速凝集性が保てる。また、凝集成分の付与量が0.7g/m以下であることは、付与した記録媒体の表面性に悪影響(光沢の変化等)を与えない点で好ましい。
また、本発明においては、処理液付与工程後にインク付与工程を設け、処理液を記録媒体上に付与した後、インク組成物が付与されるまでの間に、記録媒体上の処理液を加熱乾燥する加熱乾燥工程を更に設けることが好ましい。インク付与工程前に予め処理液を加熱乾燥させることにより、滲み防止などのインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
(処理液)
本工程における処理液は、本発明のインク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を少なくとも1種含有する。
前記凝集成分としては、インク組成物のpHを変化させることができる化合物であっても、多価金属塩であっても、カチオン性ポリマーであってもよい。本発明においては、インク組成物の凝集性の観点から、インク組成物のpHを変化させることができる化合物が好ましく、インク組成物のpHを低下させ得る化合物がより好ましい。
インク組成物のpHを低下させ得る化合物としては、酸(酸性物質)を挙げることができる。
酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。
酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
処理液が酸を含む場合、処理液のpH(25℃)は、6以下が好ましく、より好ましくはpHは4以下であり、更に好ましくは1〜4の範囲であり、特に好ましいpHは1〜3である。このとき、前記インク組成物のpH(25℃)は、7.5以上(より好ましくは8.0以上)であることが好ましい。
中でも、画像濃度、解像度、及びインクジェット記録の高速化の観点から、インク組成物のpH(25℃)が8.0以上であって、処理液のpH(25℃)が0.5〜4である場合が好ましい。
中でも、本発明における凝集成分としては、水溶性の高い酸が好ましく、凝集性を高め、インク全体を固定化させる点で、有機酸が好ましく、2価以上の有機酸がより好ましく、2価以上3価以下の酸性物質が特に好ましい。前記2価以上の有機酸としては、その第1pKaが3.5以下の有機酸が好ましく、より好ましくは3.0以下の有機酸である。具体的には、例えば、リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸などが好適に挙げられる。
凝集成分として使用することができる多価金属塩やカチオン性ポリマーについては、例えば、特開2011−042150号公報の段落0155〜0156に記載されている多価金属塩やカチオン性ポリマーを用いることができる。
前記凝集成分は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記凝集成分の処理液中における含有量としては、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは3〜45質量%であり、更に好ましくは5〜40質量%の範囲である。
また、処理液及び既述の本発明におけるインク組成物の少なくとも一方は、重合開始剤の少なくとも1種を含有することができる。重合開始剤の好ましい範囲については前述のとおりである。
また、処理液には、本発明の効果を損なわない範囲内で、更にその他の成分として他の添加剤が含有されてもよい。他の添加剤の例として、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
<硬化工程>
本発明の画像形成方法は、上述した乾燥工程(インク付与工程後の画像を乾燥させる工程)の後に、乾燥後の画像に活性エネルギー線を照射して画像を硬化させる硬化工程を有することが好ましい。
ここで使用される活性エネルギー線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光、赤外光などが挙げられる。中でも、紫外線が好ましい。
硬化工程により、画像中のモノマー成分(重合性化合物)を確実に重合硬化させることができる。このとき、活性エネルギー線を照射する光源を記録媒体の記録面に対向配置し、記録面の全体を照射すれば、画像全体の硬化を行うことができる。なお、活性エネルギー線を照射する光源は、紫外線照射ランプ、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー、LED、電子線照射装置などを採用することもできる。
活性エネルギー線の照射条件としては、(メタ)アクリルアミド化合物を含む重合性化合物が重合硬化可能であれば特に制限されない。例えば活性エネルギー線の波長としては、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
活性エネルギー線の出力としては、5000mJ/cm以下であることが好ましく、10〜4000mJ/cmであることがより好ましく、20〜3000mJ/cmであることがさらに好ましい。
<インクジェット記録装置>
次に、本発明の画像形成方法の実施に好適なインクジェット記録装置の一例を図1を参照して具体的に説明する。図1は、インクジェット記録装置全体の構成例を示す概略構成図である。
図1に示すように、インクジェット記録装置には、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、処理液を吐出する処理液吐出用ヘッド12Sを備えた処理液付与部12と、付与された処理液を乾燥させる加熱手段(不図示)を備えた処理液乾燥ゾーン13と、各種インク組成物を吐出するインク吐出部14と、吐出されたインク組成物を乾燥させるインク乾燥ゾーン15とが配設されている。また、記録媒体の搬送方向におけるインク乾燥ゾーン15の下流側には、紫外線照射ランプ16Sを備えた紫外線照射部16が配設されている。
このインクジェット記録装置に供給された記録媒体は、記録媒体が装填されたケースから記録媒体を給紙する給紙部から、搬送ローラによって、処理液付与部12、処理液乾燥ゾーン13、インク吐出部14、インク乾燥ゾーン15、紫外線照射部16と順に送られて集積部に集積される。搬送は、搬送ローラによる方法のほか、ドラム状部材を用いたドラム搬送方式やベルト搬送方式、ステージを用いたステージ搬送方式などを採用してもよい。
複数配置された搬送ローラのうち、少なくとも1つのローラはモータ(不図示)の動力が伝達された駆動ローラとすることができる。モータで回転する駆動ローラを定速回転することにより、記録媒体は所定の方向に所定の搬送量で搬送されるようになっている。
処理液付与部12には、処理液を貯留する貯留タンクに繋がる処理液吐出用ヘッド12Sが設けられている。処理液吐出用ヘッド12Sは、記録媒体の記録面と対向配置された吐出ノズルから処理液を吐出し、記録媒体の上に処理液を液滴付与できるようになっている。なお、処理液付与部12は、ノズル状のヘッドから吐出する方式に限らず、塗布ローラを用いた塗布方式を採用することもできる。この塗布方式は、下流側に配置されたインク吐出部14で記録媒体上にインク滴が着弾する画像領域を含むほぼ全面に処理液を容易に付与することができる。記録媒体上の処理液の厚みを一定にするために、例えば、エアナイフを用いたり、あるいは尖鋭な角を有する部材を、処理液の規定量に対応するギャップを記録媒体との間に設けて設置する等の方法を設けてもよい。
処理液付与部12の記録媒体搬送方向の下流側には、処理液乾燥ゾーン13が配置されている。処理液乾燥ゾーン13は、例えば、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段を備えていてもよい。加熱手段は、記録媒体の処理液付与面の反対側(例えば、記録媒体を自動搬送する場合は記録媒体を載せて搬送する搬送機構の下方)にヒータ等の発熱体を設置する方法や、記録媒体の処理液付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
また、記録媒体の種類(材質、厚み等)や環境温度等によって、記録媒体の表面温度は変化するため、記録媒体の表面温度を計測する計測部と該計測部で計測された記録媒体の表面温度の値を加熱制御部にフィードバックする制御機構を設けて温度制御しながら遮断層を形成することが好ましい。記録媒体の表面温度を計測する計測部としては、接触又は非接触の温度計が好ましい。
また、溶媒除去ローラー等を用いて溶媒除去を行なってもよい。他の態様として、エアナイフで余剰な溶媒を記録媒体から取り除く方式も用いられる。
インク吐出部14は、処理液乾燥ゾーン13の記録媒体搬送方向下流側に配置されている。インク吐出部14には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の各色インクを貯留するインク貯留部の各々と繋がる記録用ヘッド(インク吐出用ヘッド)30K、30C、30M、30Yが配置されている。不図示の各インク貯留部には、各色相に対応するインク組成物が貯留されており、画像の記録に際して必要に応じて各インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Yに供給されるようになっている。また、インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、及び30Yの搬送方向下流側には、図1に示すように、必要に応じて特色インクを吐出可能なように、特色インク吐出用の記録ヘッド30A、30Bを更に配設することもできる。
なお、図1では、記録用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、30Bがこの順に配置されているが、インク吐出部14における各色の記録用ヘッドの配置はこの順には限定されず、適宜変更することができる。
インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Yは、記録媒体の記録面と対向配置された吐出ノズルから、それぞれ画像に対応するインクを吐出する。これにより、記録媒体の記録面上に各色インクが付与され、カラー画像が記録される。
処理液吐出用ヘッド12S、並びにインク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bはいずれも、記録媒体上に記録される画像の最大記録幅にわたって多数の吐出口(ノズル)が配列されたフルラインヘッドとなっている。記録媒体の幅方向(記録媒体搬送面において搬送方向と直交する方向)に短尺のシャトルヘッドを往復走査しながら記録を行なうシリアル型のものに比べて、記録媒体に高速に画像記録を行なうことができる。本発明においては、シリアル型での記録、又は比較的高速記録が可能な方式、例えば1回の走査で1ラインを形成するシングルパスで主走査方向に吐出して記録できる方式での記録のいずれを採用してもよい。本発明の画像記録方法によればシングルパスによる方式でも再現性の高い高品位の画像が得られる。
ここでは、処理液吐出用ヘッド12S、並びにインク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bは、全て同一構造になっている。
処理液の付与量とインク組成物の付与量とは、必要に応じて調節することが好ましい。例えば、記録媒体に応じて、処理液とインク組成物とが混合してできる凝集物の粘弾性等の物性を調節する等のために、処理液の付与量を変えてもよい。
インク乾燥ゾーン15は、インク吐出部14の記録媒体搬送方向下流側に配置されている。インク乾燥ゾーン15は、処理液乾燥ゾーン13と同様の構成を有することができる。
紫外線照射部16は、インク乾燥ゾーン15の記録媒体搬送方向のさらに下流側に配置されており、紫外線照射部16に設けられた紫外線照射ランプ16Sにより紫外線を照射し、画像乾燥後の画像中のモノマー成分を重合硬化させるようになっている。紫外線照射ランプ16Sは、記録媒体の記録面と対向配置されたランプにより記録面の全体を照射し、画像全体の硬化が行なえるようになっている。なお、紫外線照射部16は、紫外線照射ランプ16Sに限らず、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー、LED、電子線照射装置などを採用することもできる。
紫外線照射部16は、インク乾燥ゾーン15の前後のいずれに設置されていてもよく、インク乾燥ゾーン15の前後両方に設置してもよい。
また、インクジェット記録装置には、給紙部から集積部までの搬送路に、記録媒体に加熱処理を施す加熱手段を配置することもできる。例えば、処理液乾燥ゾーン13の上流側や、インク吐出部14とインク乾燥ゾーン15との間、などの所望の位置に加熱手段を配置することで、記録媒体を所望の温度に昇温させることにより、乾燥、定着を効果的に行なうようにすることが可能である。
≪インクジェット記録用インクセット≫
本発明のインクジェット記録用インクセット(以下、単に「インクセット」ともいう)は、既述の本発明のインク組成物の少なくとも1種と、インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含有する処理液の少なくとも1種と、を含む。
インク組成物及び処理液については前述したとおりであり、好ましい範囲も同様である。
本発明のインクセットは、本発明のインク組成物を1種単独で含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい(例えば、互いに色相が異なる2種以上のインク組成物を含んでいてもよい)。
また、本発明のインクセットは、上記本発明におけるインク組成物以外のその他のインク組成物を含んでいてもよい。前記その他のインク組成物としては特に限定はないが、処理液により凝集させることができるインク組成物が好ましく、ポリマー分散剤により顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる水分散性顔料及び水を含有するインク組成物がより好ましい。
例えば、本発明のインクセットが、本発明におけるインク組成物を含めた互いに色相が異なる2種以上のインク組成物を含むことにより、多次色の画像を好適に形成できる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
≪水性インクの調製≫
水性インクとして、下記表2に示すシアンインクC−1〜C−27及び下記表3に示すマゼンタインクM−1〜M−27をそれぞれ調製した。
以下、詳細な操作について説明する。
<シアンインクC−1の調製>
(シアン分散液の調製)
反応容器に、スチレン6部、ステアリルメタクリレート11部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成(株)製)4部、プレンマーPP−500(日油(株)製)5部、メタクリル酸5部、2−メルカプトエタノール0.05部、及びメチルエチルケトン24部を加え、混合溶液を調液した。
一方、滴下ロートに、スチレン14部、ステアリルメタクリレート24部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成(株)製)9部、プレンマーPP−500(日油(株)製)9部、メタクリル酸10部、2−メルカプトエタノール0.13部、メチルエチルケトン56部、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部を加え、混合溶液を調液した。
そして、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後これに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部をメチルエチルケトン12部に溶解した溶液を3時間かけて滴下し、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、ポリマー分散剤溶液を得た。
得られたポリマー分散剤溶液の一部について、溶媒を除去することによって単離し、得られた固形分をテトラヒドロフランにて0.1質量%に希釈し、高速GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)HLC−8220GPCにて、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製)を3本直列につなぎ、重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は、ポリスチレン換算で25,000であった。また、酸価は80mgKOH/gであった。
次に、上記のポリマー分散剤溶液を固形分換算で5.0g、シアン顔料としてPigment Blue 15:3(大日精化(株)製)10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1mol/L(リットル;以下同様)の水酸化ナトリウム8.0g 及びイオン交換水82.0gを、0.1mmジルコニアビーズ300gと共にベッセルに供給し、レディーミル分散機(アイメックス社製)で1000rpm、6時間分散した。得られた分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが充分に留去できるまで減圧濃縮し、さらに水分散性顔料の濃度が20質量%になるまで濃縮して、水分散性顔料が分散したシアン分散液を調製した。
得られたシアン分散液の体積平均粒子径(二次粒子)を、Micorotrac粒度分布測定装置(Version 10.1.2−211BH(商品名)、日機装(株)製)で動的光散乱法により測定したところ、77nmであった。
(自己分散性ポリマー粒子P−1の水分散液の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで、窒素雰囲気下に、87℃まで昇温した。反応容器内は還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流)、メチルメタクリレート(表1中、「非極性モノマーA」に相当)522.0g、メタクリル酸(表1中、「極性モノマー」に相当)58.0g、メチルエチルケトン108g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)2.54gからなる混合溶液を、3時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、1時間攪拌後、(1)「V−601」1.27g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加え、2時間攪拌を行った。続いて、(1)の工程を4回繰り返し、さらに「V−601」1.27g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加えて3時間攪拌を続けた。以上により、メチルメタクリレート/メタクリル酸(=90/10[質量比])共重合体を含むポリマー溶液を得た。
得られた共重合体(ポリマー)の重量平均分子量(Mw)は56000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))であった。
−転相工程−
次に、得られたポリマー溶液291.6g(固形分濃度44.0%)を秤量し、イソプロパノール82.5g、20%マレイン酸水溶液2.57g(水溶性電解質、共重合体に対して0.4%相当)、1モル/LのNaOH水溶液90.14gを加え、反応容器内温度を87℃に昇温した。次に蒸留水352gを10ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた(分散工程)。その後、大気圧下にて反応容器内温度87℃で1時間、91℃で1時間、95℃で30分保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で312.0g留去し(溶剤除去工程)、固形分濃度(自己分散ポリマー粒子濃度)25.3質量%の自己分散ポリマーP−1(ポリマー粒子)の水分散液を得た。
−自己分散性ポリマー粒子P−1のガラス転移温度(Tg)の測定−
上記自己分散性ポリマー粒子P−1のガラス転移温度(Tg)を以下の方法で測定したところ、115℃であった。
即ち、固形分で0.5gの自己分散性ポリマー粒子P−1の水分散液を50℃で4時間、減圧乾燥させ、ポリマー固形分を得た。得られたポリマー固形分を用い、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220によりTgを測定した。測定条件は、サンプル量5mgをアルミパンに密閉し、窒素雰囲気下、以下の温度プロファイルで2回目の昇温時の測定データのDSCのピークトップの値をTgとした。
30℃ → −50℃ (50℃/分で冷却)
−50℃ → 120℃(20℃/分で昇温)
120℃ → −50℃(50℃/分で冷却)
−50℃ → 120℃(20℃/分で昇温)
(シアンインクC−1の調製)
下記組成を混合し、ADVANTEC社製ガラスフィルター(GS−25)でろ過した後、ミリポア社製フィルター(PVDF膜、孔径5μm)でろ過を行い、シアンインクC−1を得た。
−シアンインクC−1の組成−
・上記シアン分散液 … 10質量%
・下記重合性化合物J−1(ヒドロキシエチルアクリルアミド)
… 15質量%
・下記重合性化合物J−3(4官能アクリルアミド)
… 10質量%
・イルガキュア2959(BASF社製;光重合開始剤)
… 1.5質量%
・自己分散性ポリマー粒子P−1の水分散液
… 7.1質量%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製;界面活性剤)
… 1質量%
・イオン交換水 … 合計で100質量%となる残量
<シアンインクC−2〜C−27の調製>
(自己分散性ポリマーP−2〜P−19の水分散液の調製)
自己分散性ポリマー粒子P−1の水分散液の調製において、モノマー成分の種類及び共重合比を、下記表1に示すように変更したこと以外は自己分散性ポリマー粒子P−1の水分散液の調製と同様にして、自己分散性ポリマー粒子P−2〜P−19のそれぞれの水分散液(いずれも自己分散性ポリマー粒子濃度25.3質量%)を調製した。

−表1の説明−
・SP値の単位はMPa1/2である。
・Mwは重量平均分子量である。
・モノマーの略号と化合物名との対応は以下のとおりである。
MMA … メチルメタクリレート
PEMA … フェノキシエチルメタクリレート
BzMA … ベンジルメタクリレート
GMA … グリシジルメタクリレート
HEMA … ヒドロキシエチルメタクリレート
EMA … エチルメタクリレート
iPMA … イソプロピルメタクリレート
EHMA … 2−エチルヘキシルメタクリレート
iDMA … イソデシルメタクリレート
PEA … フェノキシエチルアクリレート
MA … メチルアクリレート
MAA … メタクリル酸
AA … アクリル酸
(シアンインクC−2〜C−27の調製)
シアンインクC−1の調製において、組成を下記表2に示すように変更したこと以外はシアンインクC−1の調製と同様にして、シアンインクC−2〜C−27をそれぞれ調製した。
下記表2及び表3中、重合性化合物J−1〜J−4は、下記化合物である。
重合性化合物J−3は、以下のようにして合成した。

(重合性化合物J−3の合成)
−第一工程−
スターラーバーを備えた1L容の三口フラスコに、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(東京化成工業社製)121g(1当量)、50質量%の水酸化カリウム水溶液84ml、トルエン423mlを加えて攪拌し、水浴下、反応系中を20〜25℃で維持し、アクリロニトリル397.5g(7.5当量)を2時間かけて滴下した。滴下後、1.5時間攪拌した。その後、トルエン540mlを反応系中に追加し、その反応混合物を分液漏斗へ移し水層を除いた。残った有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、セライトろ過を行ない、減圧下で溶媒留去することによりアクリロニトリル付加体を得た。得られた物質のH−NMR、MSによる分析結果は既知物と良い一致を示したため、さらに精製することなく次の還元反応に用いた。
−第二工程−
容積1Lのオートクレーブに、得られたアクリロニトリル付加体24g、Ni触媒48g(ラネーニッケル2400、W.R.Grace&Co.社製)、及び25質量%アンモニア水溶液(水:メタノール=1:1)600mlを入れ、懸濁させて反応容器を密閉した。反応容器に10Mpaの水素を導入し、反応温度を25℃で16時間反応させた。
原料の消失をH−NMRにて確認し、反応混合物をセライト濾過し、セライトをメタノールで数回洗浄した。濾液を減圧下溶媒留去することにより、ポリアミン体を得た。得られた物質は、さらに精製することなく次の反応に用いた。
−第三工程−
攪拌機を備えた容積2Lの三口フラスコに、得られたポリアミン体30g、NaHCO120g(14当量)、ジクロロメタン1L、及び水50mlを加えて氷浴下、アクリル酸クロリド92.8g(10当量)を3時間かけて滴下した。その後、室温で3時間攪拌した。原料の消失をH−NMRにて確認した後、反応混合物を減圧下で溶媒留去した。続いて、硫酸マグネシウムで反応混合物を乾燥させ、セライトろ過を行ない、減圧下で溶媒留去した。最後に、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール=4:1)にて精製することで、常温下、4官能アクリルアミドである重合性化合物J−3(前記一般式(2)において、R=H R=C=CH、X=Y=Z=0)の固体を得た。上記3工程を経て得られた重合性化合物J−3の収率は、40質量%であった。
<マゼンタインクM−1の調製>
前述のシアン分散液の調製において、シアン顔料であるPigment Blue 15:3を、同質量のマゼンタ顔料Pigment Red 122(大日精化(株)製)に変更したこと以外は、シアン分散液の調製と同様にしてマゼンタ分散液を調製した。
次に、シアンインクC−1の調製において、組成を下記表3に示すように変更したこと以外はシアンインクC−1の調製と同様にして、マゼンタインクM−1を調製した。
<マゼンタインクM−2〜M−27の調製>
マゼンタインクM−1の調製において、組成を下記表3に示すように変更したこと以外はマゼンタインクM−1の調製と同様にして、マゼンタインクM−2〜M−27をそれぞれ調製した。


−表2及び表3の説明−
・各成分の量(%)は、インク全量を100質量%としたときの含有量(質量%)を示す。
・自己分散性ポリマー粒子の水分散液の量は、自己分散性ポリマー粒子の含有量ではなく、自己分散性ポリマー粒子の水分散液(自己分散性ポリマー粒子濃度25.3質量%の水分散液)の含有量である。
≪処理液の調製≫
下記組成の成分を混合して、処理液を調製した。
〜処理液の組成〜
・マロン酸(和光純薬工業(株)製) … 25質量%
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製)
… 20質量%
・エマルゲンP109(花王(株)製、ノニオン性界面活性剤)
… 1質量%
・イオン交換水 … 合計で100.0質量%となる残量
≪記録媒体の準備≫
画像形成にあたり、下記表4に示す記録媒体を準備した。

〔実施例1〕
≪画像形成(インクジェット記録)≫
まず、図1に示すように、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、処理液を吐出する処理液吐出用ヘッド12Sを備えた処理液付与部12と、付与された処理液を乾燥させる処理液乾燥ゾーン13と、各種インク組成物を吐出するインク吐出部14と、吐出されたインク組成物を乾燥させるインク乾燥ゾーン15と、紫外線(UV)を照射可能なUV照射ランプ16Sを備えたUV照射部16とが配設されたインクジェット装置を準備した。
処理液乾燥ゾーン13は、図示しないが、記録媒体の記録面側には乾燥風を送って乾燥を行なう送風器を備え、記録媒体の非記録面側には赤外線ヒータを備えており、処理液付与部で処理液の付与を開始した後900msecが経過するまでに、温度・風量を調節して処理液中の水の70質量%以上を蒸発(乾燥)できるようにした。また、インク吐出部14には、ブラックインク吐出用ヘッド30K、シアンインク吐出用ヘッド30C、マゼンタインク吐出用ヘッド30M、及びイエローインク吐出用ヘッド30Yが配置されており、各ヘッドは1200dpi/10inch幅フルラインヘッド(駆動周波数:25kHz)であり、各色をシングルパスで主走査方向に吐出して記録できるようにした。
本実施例では、図1におけるシアンインク吐出用ヘッド30Cとマゼンタインク吐出用ヘッド30Mとの配置を入れ替え、記録媒体上に、マゼンタ、シアンの順にインクを吐出できる配置に変更した。
上記処理液吐出用ヘッド12S、マゼンタインク吐出用ヘッド30M、およびシアンインク吐出用ヘッド30Cにそれぞれ繋がる貯留タンク(不図示)に、上記処理液、上記マゼンタインクM−1、および上記シアンインクC−1を順次、それぞれ装填し、上記処理液、上記マゼンタインクM−1、上記シアンインクC−1をこの順に打滴して画像を形成した。
このとき、処理液の記録媒体への付与量は1.5ml/mとした。
記録媒体としては、OKトップコート+を用いた。
画像形成に際し、マゼンタインク及びシアンインクは、それぞれ、ヘッドから解像度1200dpi×1200dpi、インク滴量2.4plで吐出した。
下記の画像の形成では、記録媒体をA5サイズにカットしたサンプルに処理液、マゼンタインク、及びシアンインクを順次付与して画像を形成した。
具体的には、画像の形成は以下のようにして行った。
まず、記録媒体上に処理液吐出用ヘッド12Sから処理液をシングルパスで吐出(付与)した後、処理液の乾燥は処理液乾燥ゾーン13で行ない、処理液乾燥ゾーンを処理液の吐出開始から900msec迄に通過するようにした。処理液乾燥ゾーン13では、着滴した処理液を着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで膜面温度が40〜45℃となるように加熱しながら、送風器により記録面に120℃、5m/secの温風を5秒間あてて乾燥した。
続いて、記録媒体の処理液が付与された側の面(処理液付与面)に、マゼンタインクM−1を吐出用ヘッド30Mからシングルパスで網点率100%でベタ状に付与し、付与されたマゼンタインクM−1上にシアンインクC−1を吐出用ヘッド30Cからシングルパスで網点率100%でベタ状に付与してベタ画像を得た。
画像が形成された記録媒体に対し、インク乾燥ゾーン15で前記同様にインク着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで加熱しながら、送風器により、120℃、5m/secの温風を記録面に5秒間あてて画像を乾燥させた。このとき、シアンインクの液滴が記録媒体に着弾した時点からインク乾燥ゾーン15に搬送されて乾燥が開始されるまでの時間が約1秒間となるように搬送速度を調整した。
乾燥後の画像に対し、UV照射部16において、UV光(アイグラフィックス(株)製 メタルハライドランプ 最大照射波長 365nm)を積算照射量2J/cmになるように照射して、画像をUV硬化した。
以上により、評価用の画像サンプルを得た。
≪評価≫
シアンインクC−1、マゼンタインクM−1、及び評価用の画像サンプルについて、以下の評価を行なった。評価結果を下記表5に示す。
<画像変形>
上記画像サンプルにおけるベタ画像を、光学顕微鏡(倍率300倍)及び目視で観察し、下記評価基準に従って、画像変形を評価した。
−評価基準−
A:光学顕微鏡観察及び目視観察ともに異常は視認されず、均質なベタ画像であった。
B:光学顕微鏡観察では画像の割れが確認されたものの、目視観察では異常は視認されず、均質なベタ画像であった。
C:目視観察でも僅かに画像の割れが視認されるものの、実用上問題の無い範囲であった。
D:目視観察でも顕著な画像の割れが視認された。
<光沢ムラ>
上記画像サンプル(画像の網点率100%)に加え、上記画像サンプルにおける画像の網点率を、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%の各網点率に変更した画像サンプルをそれぞれ作製した(画像サンプル数は、合計で10枚である)。
得られた10枚の画像サンプルにおける画像について、表面の光沢ムラを目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
−評価基準−
A:全ての画像サンプルにおいて光沢ムラは視認されず、画像表面の光沢は良好であった。
B:一部の画像サンプルにおいてわずかな光沢ムラが視認されたが、実用上問題の無い範囲であった。
C:一部の画像サンプルにおいて明確な光沢ムラ(画像の一部の光沢低下)が視認された。
<インクの除去性>
表面に撥液膜を有するテストピースの撥液膜にインクを付着させ、次いでこのテストピースを純水中に浸漬させて洗浄(除去)したときのインクの除去性を評価した。この評価は、上記シアンインクC−1及び上記マゼンタインクM−1のそれぞれについて行なった。上記テストピースに設けられた撥液膜は、インクジェット記録用ヘッドの吐出面に設けられる撥液膜と同様にフッ化アルキル基を有する撥液膜であり、より詳細には、特開2011−111527号公報の段落0152及び段落0154に記載されている、フッ化アルキルシラン化合物(C17SiCl)の単分子膜(SAM膜)である。
詳細には、まず、評価対象のインクを上記テストピースの撥液膜にスプレーによって吹きつけ、この撥液膜表面に滴径50μm以下のインク付着物を形成した。次いでこのテストピースを23℃50%RHの環境下で1時間乾燥させた後、デジタルカメラが設置された光学顕微鏡を用い、インク付着物が形成された面の1mm×1mmの範囲をデジタルカメラで撮影し、浸漬前の撮影像を得た。
次に、撮影後のテストピースを純水中に、インク付着物が形成された面が純水中に浸漬されるようにして1秒間浸漬させて取り出し、風圧によってインク付着物が形成された面の水滴を吹き飛ばした。その後、浸漬前の撮影像と同じ範囲を、浸漬前と同様にしてデジタルカメラで撮影し、浸漬後の撮影像を得た。
浸漬前の撮影像と浸漬後の撮影像とを対比することにより、浸漬後に残留したインク付着物の浸漬前の滴径を測定した。
この測定により、浸漬後に残留したインク付着物のうち、浸漬前の滴径が最も小さいインク付着物におけるこの浸漬前の滴径を、除去不能最低滴径とした、
以上の操作を10回行い、除去不能最低滴径の平均値を算出し、下記評価基準に従って評価した。
−評価基準−
A … 除去不能最低滴径の平均値が20μm以上であり、インクの除去性が非常に良好である。
B … 除去不能最低滴径の平均値が15μm以上20μm未満であり、インクの除去性が良好である。
C … 除去不能最低滴径の平均値が10μm以上15μm未満であり、インクの除去性が実用上問題ないレベルである。
D … 除去不能最低滴径の平均値が10μm未満であり、インクの除去性が実用上問題のあるレベルである。
〔実施例2〜24、比較例1〜9〕
実施例1において、シアンインク、マゼンタインク、及び記録媒体を、下記表5に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして画像形成を行い、実施例1と同様の評価を行なった。
評価結果を下記表5に示す。
表1〜表5に示すように、(メタ)アクリルアミド化合物と、メタクリル酸に由来する構造単位及びSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマーで構成されたポリマー粒子と、を含有する水性インクを用いた実施例1〜24では、形成された画像において画像変形及び光沢ムラが抑制され、インクの除去性に優れていた。
これに対し、(メタ)アクリルアミド化合物を含有しない水性インクを用いた比較例1では、画像変形抑制の効果及び光沢ムラ抑制の効果が低下した。
また、SP値19.0MPa1/2未満のメタクリル酸エステルに由来する構造単位を含むポリマー粒子を含有する水性インクを用いた比較例2〜4では、特にインクの除去性が低下した。
また、アクリル酸に由来する構造単位やアクリル酸エステルに由来する構造単位を含むポリマー粒子を含有する水性インクを用いた比較例5〜8では、特に画像変形抑制の効果が低下した。
また、ポリマー粒子を含有しない水性インクを用いた比較例9では、画像変形抑制の効果及び光沢ムラ抑制の効果が低下した。
以上の実施例ではシアンインク及びマゼンタインクを用いて評価を行なったが、イエローインクなどの他の色のインクを用いる場合にも上記実施例と同様に、(メタ)アクリルアミド化合物と、メタクリル酸に由来する構造単位及びSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマーで構成されたポリマー粒子と、を含有する水性インクを用いることにより、インクの除去性を向上させることができ、かつ、画像変形および光沢ムラを抑制できる。
日本出願第2012−214628の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
<1> 水と、顔料と、(メタ)アクリルアミド化合物と、メタクリル酸に由来する構造単位及び沖津法によって算出されたSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマーで構成されたポリマー粒子と、を含有するインクジェット記録用インク組成物である。
<2> 前記(メタ)アクリルアミド化合物の少なくとも1種が、多官能(メタ)アクリルアミド化合物である<1>に記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<3> 前記メタクリル酸エステルのSP値が、19.4MPa1/2〜22.0MPa1/2である<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<4> 前記メタクリル酸エステルに由来する構造単位が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、及びフェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種である<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<5> 前記ポリマー粒子が、自己分散性ポリマー粒子である<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<6> 前記ポリマー粒子のガラス転移温度が、80℃以上である<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<7> 前記(メタ)アクリルアミド化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
≪インクジェット記録用インク組成物≫
本発明のインクジェット記録用インク組成物(以下、単に「インク組成物」や「インク」ともいう)は、水と、顔料と、(メタ)アクリルアミド化合物と、メタクリル酸に由来する構造単位及び沖津法によって算出されたSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマーで構成されたポリマー粒子と、を含有する。
本発明のインク組成物は、溶媒として水を含む水性インクである。

Claims (13)

  1. 水と、顔料と、(メタ)アクリルアミド化合物と、メタクリル酸に由来する構造単位及びSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマーで構成されたポリマー粒子と、を含有するインクジェット記録用インク組成物。
  2. 前記(メタ)アクリルアミド化合物の少なくとも1種が、多官能(メタ)アクリルアミド化合物である請求項1に記載のインクジェット記録用インク組成物。
  3. 前記メタクリル酸エステルのSP値が、19.4MPa1/2〜22.0MPa1/2である請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録用インク組成物。
  4. 前記メタクリル酸エステルに由来する構造単位が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、及びフェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
  5. 前記ポリマー粒子が、自己分散性ポリマー粒子である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
  6. 前記ポリマー粒子のガラス転移温度が、80℃以上である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
  7. 前記(メタ)アクリルアミド化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。


    〔一般式(1)中、Qは、n価の連結基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。nは、1以上の整数を表す。〕
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物をインクジェット記録用ヘッドから吐出することで、該インクジェット記録用インク組成物を記録媒体に付与して画像を形成するインク付与工程と、
    前記インク付与工程後の画像を乾燥させる乾燥工程と、
    を有する画像形成方法。
  9. 前記乾燥工程の後に、乾燥後の画像に活性エネルギー線を照射して画像を硬化させる硬化工程をさらに有する請求項8に記載の画像形成方法である。
  10. 前記記録媒体が、セルロースパルプを主成分とした支持体上の少なくとも一方の面に、一層もしくは多層の顔料層を有する請求項8又は請求項9に記載の画像形成方法。
  11. 前記インク付与工程の前に、更に、前記インクジェット記録用インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含有する処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有する請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の画像形成方法。
  12. 前記凝集成分が、酸である請求項11に記載の画像形成方法。
  13. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物と、
    前記インクジェット記録用インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含有する処理液と、
    を有するインクジェット記録用インクセット。
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