JPWO2014045970A1 - インク組成物、インクセット、及び画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、インクジェット法による画像形成方法としては、インク組成物と、インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含む処理液と、を用い、記録媒体上でインク組成物中の成分を凝集させることにより画像を形成する技術も知られている。
例えば、耐擦過性等に優れた画像を形成できるインクセットとして、水、顔料、ポリマー粒子、及び水溶性の重合性化合物を含むインク組成物と、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含む処理液と、を含むインクセットが知られている(例えば、特開2010−70693号公報、特開2010−69805号公報、特開2011−46872号公報、特開2011−46871号公報、特開2011−174013号公報、特開2011−195822号公報参照)。
一方、上記成分に加えて更に水溶性の重合性化合物を含有するインク組成物は、記録媒体に付与された後、紫外線等の活性エネルギー線の照射によりこの重合性化合物の重合が行なわれ、重合によって生じたポリマーによって画像の強度が確保されるように構成されている。このため、このような水溶性の重合性化合物を含有するインク組成物は、水溶性の重合性化合物を含有せずポリマー粒子を含有するインク組成物と比較して、インクジェット記録用ヘッドの吐出面に付着して乾燥してもそのままでは固着し難く、比較的容易に除去できるという利点を有している。
また、水、顔料、ポリマー粒子、及び水溶性の重合性化合物を含有するインク組成物は、記録媒体への付与後であって活性エネルギー線の照射前においては比較的流動性が高い状態となっているため、記録媒体上に付与されたインク組成物(画像)を乾燥させたときに、画像が変形することや、画像表面が粗くなって光沢ムラが生じることがある。
即ち、前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
<2> 前記(メタ)アクリルアミド化合物の少なくとも1種が、多官能(メタ)アクリルアミド化合物である<1>に記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<3> 前記メタクリル酸エステルのSP値が、19.4MPa1/2〜22.0MPa1/2である<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<4> 前記メタクリル酸エステルに由来する構造単位が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、及びフェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種である<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<5> 前記ポリマー粒子が、自己分散性ポリマー粒子である<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<6> 前記ポリマー粒子のガラス転移温度が、80℃以上である<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<7> 前記(メタ)アクリルアミド化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<9> 前記乾燥工程の後に、乾燥後の画像に活性エネルギー線を照射して画像を硬化させる硬化工程をさらに有する<8>に記載の画像形成方法である。
<10> 前記記録媒体が、セルロースパルプを主成分とした支持体上の少なくとも一方の面に、一層もしくは多層の顔料層を有する<8>または<9>に記載の画像形成方法である。
<11> 前記インク付与工程の前に、更に、前記インクジェット記録用インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含有する処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有する<8>〜<10>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
<12> 前記凝集成分が、酸である<11>に記載の画像形成方法である。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
本発明のインクジェット記録用インク組成物(以下、単に「インク組成物」や「インク」ともいう)は、水と、顔料と、(メタ)アクリルアミド化合物と、メタクリル酸に由来する構造単位及びSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマーで構成されたポリマー粒子と、を含有する。
本発明のインク組成物は、溶媒として水を含む水性インクである。
また、水、顔料、ポリマー粒子、及び水溶性の重合性化合物を含有するインク組成物は、記録媒体上に付与されて活性エネルギー線が照射されるまでの間、ある程度の流動性を有しているため、記録媒体上に付与されたインク組成物による画像を乾燥させたとき(特に、急速に乾燥させたとき)に、画像変形(例えば画像割れ)が生じることや、画像表面が粗くなって光沢ムラが生じることがある。
一般に、水性インクに含まれるポリマー粒子は(詳細には、このポリマー粒子を構成するポリマーは)、極性モノマーに由来する構造単位と非極性モノマーに由来する構造単位とから構成される。ここで、非極性モノマーに由来する構造単位は、水性インク中におけるポリマー粒子の核となる部位を構成する。また、極性モノマーに由来する構造単位は、水性インク中におけるポリマー粒子の分散安定性に寄与する。
また、水性インクを吐出するためのヘッドの吐出面の性状は、水性インクの付着を抑制する観点から、疎水性となっている。
これらの状況の下、上記非極性モノマーの疎水性が高くなるにつれ、吐出面からの除去性が低下する傾向がある。この理由は、ポリマー粒子中の非極性モノマーに由来する構造単位の部位が、疎水性である吐出面に対し、疎水性−疎水性相互作用によって強く吸着するためと考えられる。
これに対し、本発明におけるポリマー粒子では、非極性モノマーとして、ある程度疎水性が低く親水性が高い(具体的にはSP値19.0MPa1/2以上である)メタクリル酸エステルが用いられるため、吐出面へのポリマー粒子の吸着が抑制され、その結果、吐出面からのインク組成物の除去性が向上すると考えられる。
この問題に関し、本発明におけるポリマー粒子では、非極性モノマーとして、ある程度親水性が低い(具体的にはSP値が25.0MPa1/2以下である)メタクリル酸エステルが用いられるため、ポリマー粒子が水性インク中に安定的に存在することができる。ポリマー粒子が水性インク中に安定的に存在することは、画像の耐擦過性を向上させる観点だけでなく、後述の画像変形を抑制する観点や、後述の光沢ムラを抑制する観点からみても重要な要素である。
画像変形は、記録媒体上に付与されたインク組成物(即ち、画像)を活性エネルギー線による硬化前に乾燥させる際(特に、急激に乾燥させる際)、この乾燥時の熱により画像が変形する現象と考えられる。
この点に関し、本発明のインク組成物は、ポリマー粒子がメタクリル酸に由来する構造単位及びメタクリル酸エステルに由来する構造単位のみからなるポリマーから構成されているため、乾燥時においても高い強度を有している。この理由は、インク組成物に含まれるポリマー粒子がメタクリル酸に由来する構造単位及びメタクリル酸エステルに由来する構造単位のみからなるポリマーから構成されていることにより、ポリマー粒子がアクリル酸又はその誘導体に由来する構造単位を含む構成である場合と比較して、ポリマー粒子のガラス転移温度が高いためと考えられる。
更に、本発明のインク組成物は(メタ)アクリルアミド化合物を含有することにより、(メタ)アクリルアミド化合物を含有しない場合と比較して、記録媒体に付与されて乾燥途中の状態にあるインク組成物の粘度が上昇する。この粘度上昇は、インク組成物が処理液とともに記録媒体に付与される場合において特に顕著である。ここでいう処理液は、インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含有する液である(詳細は後述する)。
以上のように、本発明のインク組成物は乾燥時においても高い強度及び高い粘度を有しているため、本発明のインク組成物を用いることで画像変形が抑制されると考えられる。
光沢ムラの原因としては、記録媒体上にインク組成物を付与し、インク組成物に含まれる顔料等の成分を凝集させて画像を形成するときに、位置により、顔料等の凝集の度合いのバラツキ(ムラ)が生じ、これにより画像の表面が荒れることが考えられる。
この原因に関し、本発明のインク組成物は、(メタ)アクリルアミド化合物を含有することにより、(メタ)アクリルアミド化合物を含有しない場合と比較して、記録媒体に(好ましくは上記処理液とともに)付与されて乾燥途中の状態にあるインク組成物の粘度が上昇するため、顔料等の移動がある程度制限される。更に、本発明のインク組成物は、安定的に存在するポリマー粒子を含むことによっても、記録媒体上に付与されたときの顔料等の移動がある程度制限される。
以上のように、本発明のインク組成物は、乾燥時において顔料等の移動がある程度制限されることにより、顔料等の凝集の度合いのムラが抑制されるので、形成された画像における光沢ムラが抑制されると考えられる。
本発明のインク組成物は、メタクリル酸に由来する構造単位及びSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマー(以下、「特定ポリマー」ともいう)で構成されたポリマー粒子(以下、「特定ポリマー粒子」ともいう)を少なくとも1種含有する。
特定ポリマー粒子は、後述のポリマー分散剤(顔料の少なくとも一部を被覆するポリマー分散剤)とは異なり、顔料とは別に存在している粒子であり、より詳細には上記の特定ポリマーからなる粒子である。
一般に、インク組成物にポリマー粒子を含有させることにより、画像の記録媒体への密着性及び画像の耐傷性が向上する。
例えば、インク組成物を後述する処理液とともに記録媒体上に付与して画像を形成する場合には、ポリマー粒子は、処理液又はこれを乾燥させた領域と接触した際に、インク組成物中において分散不安定化して凝集し、インク組成物を増粘することによりインク組成物を固定化する機能を有する。これにより、インク組成物の記録媒体への密着性及び画像の耐傷性をより向上させることができる。
この特定ポリマーは、メタクリル酸に由来する構造単位及びメタクリル酸エステルに由来する構造単位のみから構成されている。これにより、前述のとおり、アクリル酸又はその誘導体に由来する構造単位を含む場合と比較してポリマー粒子のガラス転移温度が高くなり、その結果、画像変形が抑制される。
特定ポリマーのガラス転移温度は、画像変形をより抑制する観点から、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることがさらに好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。
特定ポリマーのガラス転移温度の上限には特に制限はないが、特定ポリマーのガラス転移温度は、例えば150℃未満とすることができる。
具体的には、測定Tgとしては、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220を用いて通常の測定条件で測定された値を意味する。但し、ポリマーの分解等により測定が困難な場合には、下記の計算式で算出される計算Tgを適用する。計算Tgは下記の式(1)で計算されるものである。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi) ・・・(1)
ここで、計算対象となるポリマーはi=1からnまでのn種のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。但し、Σはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は、Polymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup,E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用する。
ここで、自己分散性ポリマーとは、界面活性剤の不存在下、転相乳化法により分散状態としたとき、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーをいう。
ここで、分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
また、「水不溶性」とは、水100質量部(25℃)に対する溶解量が5.0質量部以下であることを指す。
メタクリル酸に由来する構造単位は、既述のとおり、特定ポリマーにおいて極性モノマーに由来する構造単位としての機能を有し、インク組成物中における特定ポリマー粒子の分散安定性に寄与する構造単位である。
特定ポリマーにおいて、極性モノマーに由来する構造単位としてのメタクリル酸に由来する構造単位をアクリル酸に由来する構造単位に変更した場合には、アクリル酸のSP値(25.5MPa1/2)がメタクリル酸のSP値(24.0MPa1/2)と比較して高いことから、極性モノマーに由来する構造単位(親水的な構造単位)と非極性モノマーに由来する構造単位(疎水的な構造単位)とのSP値の差が大きくなり、その結果、疎水性である吐出面(ヘッドの吐出面)からのインク組成物の除去性が低下することがある。
特定ポリマーにメタクリル酸に由来する構造単位を導入する方法には特に制限はなく、例えば、モノマーとしてのメタクリル酸を重合させる方法等の公知の方法が挙げられる。
特定ポリマー中におけるメタクリル酸に由来する構造単位の含有量(共重合比率)には特に制限はないが、前記特定ポリマーの全量に対し、2質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましく、5質量%〜15質量%が特に好ましい。
メタクリル酸に由来する構造単位の含有量が2質量%以上であると、特定ポリマー粒子の分散安定性がより向上し、本発明の効果がより効果的に奏される。
メタクリル酸に由来する構造単位の含有量が30質量%以下であると、インク組成物中における特定ポリマー粒子の溶解をより抑制でき、本発明の効果がより効果的に奏される。
特定ポリマーは、SP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステル(以下、「特定メタクリル酸エステル」ともいう)に由来する構造単位を少なくとも1種含む。
特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位は、特定ポリマーにおいて非極性モノマーに由来する構造単位として機能し、既述のとおり、特定ポリマー粒子の核となる部位を構成する。
メタクリル酸エステルのSP値が19.0MPa1/2未満であると、非極性モノマーに由来する構造単位の疎水性が高くなりすぎるので、疎水性である吐出面(ヘッドの吐出面)からのインク組成物の除去性が低下する。
メタクリル酸エステルのSP値が25.0MPa1/2を超えると、非極性モノマーに由来する構造単位の親水性、ひいてはポリマー粒子全体の親水性が高くなりすぎるので、ポリマー粒子が、水性インクである本発明のインク組成物中に安定的に存在し難くなる(即ち、ポリマー粒子がインク組成物中に溶解されてしまい、粒子として存在できない場合がある)。
特定メタクリル酸エステルのSP値は、本発明の効果をより効果的に奏する観点より、19.4MPa1/2〜22.0MPa1/2が好ましい。
ここで、沖津法とは、日本接着学会誌Vol.29,No.6(1993)249〜259項に記載された理論式(沖津俊直により提案されている溶解性パラメータ(SP値)の理論式)を用いたSP値の計算方法である。
特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が70質量%以上であると、インク組成物中における特定ポリマー粒子の溶解をより抑制でき、本発明の効果がより効果的に奏される。
特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が98質量%以下であると、特定ポリマー粒子の分散安定性がより向上し、本発明の効果がより効果的に奏される。
ここで、特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、特定ポリマーに特定メタクリル酸エステルに由来する構造単位が2種以上含まれる場合は、総含有量を指す。
なお、ポリマー粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
特定ポリマー粒子(好ましくは自己分散性ポリマー粒子)のインク組成物中における含有量(総含有量)としては、インク組成物全量に対して、0.5〜5.0質量%が好ましく、0.5〜3.0質量%が更に好ましく、0.5〜2.0質量%が特に好ましい。
特定ポリマー粒子の含有量が5.0質量%以下であることにより、吐出面からのインク組成物の除去性がより向上する。
また、一般的には、ポリマー粒子の含有量が5.0質量%以下であるインク組成物では、画像変形および光沢ムラが発生し易い傾向がある。
このため、本発明のインク組成物中における特定ポリマー粒子の(インク組成物全量に対する)含有量が5.0質量%以下である場合において、特定ポリマー粒子および(メタ)アクリルアミド化合物による、画像変形抑制及び光沢ムラ抑制の効果がより顕著に奏される。
本発明のインク組成物は、(メタ)アクリルアミド化合物を少なくとも1種含有する。
この(メタ)アクリルアミド化合物は、一分子内に(メタ)アクリルアミド構造を1つ以上有する化合物である。
また、この(メタ)アクリルアミド化合物は、活性エネルギー線が照射されることで重合する重合性化合物(重合性モノマー)であり、画像を硬化させる際の重合性、重合効率が高い重合性化合物である。これにより、形成された画像の耐擦過性や耐傷性が高められる。
本発明のインク組成物は、この(メタ)アクリルアミド化合物を、前述の特定ポリマー粒子とともに含むことにより、画像変形及び光沢ムラを顕著に抑制できる。
即ち、本発明のインク組成物において、(メタ)アクリルアミド化合物を他の重合性化合物(例えば(メタ)アクリレート化合物)に置き換えた場合には、画像変形及び光沢ムラが悪化する傾向となる。
ここで、「水溶性」とは、水に一定濃度以上溶解できることをいい、水性のインク又は場合により処理液中に溶解し得る性質を有していればよい。具体的には、水に対する溶解度が10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。
ここで、単官能(メタ)アクリルアミド化合物は、一分子内に(メタ)アクリルアミド構造を1つ有する化合物を指し、多官能(メタ)アクリルアミド化合物は、一分子内に(メタ)アクリルアミド構造を2つ以上有する化合物を指す。
この場合、多官能(メタ)アクリルアミド化合物の含有量は、インク組成物の全量に対し、5質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましく、5質量%〜15質量%が特に好ましい。
多官能(メタ)アクリルアミド化合物としては、後述の一般式(1)におけるnが2以上の整数である化合物が好ましく、後述の一般式(2)で表される化合物がより好ましい。
この場合、単官能(メタ)アクリルアミド化合物の含有量は、インク組成物の全量に対し、10質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜25質量%がより好ましく、10質量%〜20質量%が特に好ましい。
単官能(メタ)アクリルアミド化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、などが挙げられ、特に好ましくはヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドであり、最も好ましくはヒドロキシエチルアクリルアミドである。
この場合、単官能(メタ)アクリルアミド化合物の含有量の好ましい範囲、及び、多官能(メタ)アクリルアミド化合物の含有量の好ましい範囲は、それぞれ前述のとおりである。また、総含有量の好ましい範囲は以下のとおりである。
(メタ)アクリルアミド化合物の合計量が前記範囲内であることで、硬化反応性が良好で画像全体における硬化の均一化が図れる。
一般式(1)中のnが1である化合物が単官能(メタ)アクリルアミド化合物であり、一般式(1)中のnが2以上の整数である化合物が多官能(メタ)アクリルアミド化合物である。
前記基Qの価数nは、浸透性、重合効率、吐出安定性を向上させる観点から、1以上であり、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましい。
また、価数nが2以上の整数である場合においては、溶解性と硬化性との両立の観点から、nは、2以上6以下が好ましく、2以上4以下がより好ましい。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール,1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、チオグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらの縮合体、低分子ポリビニルアルコール、又は糖類などのポリオール化合物、並びに、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンジアミンなどのポリアミン化合物。
この化合物は、一分子内に重合性基として4つの(メタ)アクリルアミド構造を有する4官能の(メタ)アクリルアミド化合物である。以下では、(メタ)アクリルアミド構造を「(メタ)アクリルアミド基」ともいう。
また、この化合物は、例えば、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外光線、電子線等の活性エネルギー線や熱等のエネルギーの付与による重合反応に基づく優れた硬化性を示す。下記一般式(2)で表される化合物は、水溶性を示し、水やアルコール等の水溶性有機溶剤に良好に溶解するものである。
複素環基は、さらに置換基を有してもよく、置換基の例としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。
また、x、y、及びzは、各々独立に0〜6の整数を表し、0〜5の整数であることが好ましく、0〜3の整数であることがより好ましい。x+y+zは、0〜18を満たし、0〜15を満たすことが好ましく、0〜9を満たすことがより好ましい。
第二工程は、ポリシアノ化合物を触媒存在下で水素と反応させ、還元反応によりポリアミン化合物を得る工程である。この工程での反応は、20〜60℃で5〜16時間行なわれることが好ましい。
第三工程は、ポリアミン化合物とアクリル酸クロリド又はメタクリル酸クロリドとのアシル化反応により多官能アクリルアミド化合物を得る工程である。この工程での反応は、3〜25℃で1〜5時間行なわれることが好ましい。なお、アシル化剤は、酸クロリドに換えてジアクリル酸無水物又はジメタクリル酸無水物を用いてもよい。なお、アシル化工程で、アクリル酸クロリドとメタクリル酸クロリドの両方を用いることで、最終生成物として同一分子内にアクリルアミド構造とメタクリルアミド構造とを有する化合物を得ることができる。
第二工程は、窒素保護アミノアルコール化合物のOH基に、メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等の脱離基を導入し、スルホニル化合物を得る工程である。この工程での反応は、3〜25℃で2〜5時間行なわれることが好ましい。
第三工程は、スルホニル化合物とトリスヒドロキシメチルニトロメタンとのSN2反応により、アミノアルコール付加化合物を得る工程である。この工程での反応は、3〜70℃で5〜10時間行なわれることが好ましい。
第四工程は、アミノアルコール付加化合物を触媒存在下で水素と反応させ、水素添加反応によりポリアミン化合物を得る工程である。この工程での反応は、20〜60℃で5〜16時間行なわれることが好ましい。
第五工程は、ポリアミン化合物とアクリル酸クロリド又はメタクリル酸クロリドとのアシル化反応により多官能アクリルアミド化合物を得る工程である。この工程での反応は、3〜25℃で1〜5時間行なわれることが好ましい。なお、アシル化剤は、酸クロリドに換えてジアクリル酸無水物又はジメタクリル酸無水物を用いてもよい。なお、アシル化工程で、アクリル酸クロリドとメタクリル酸クロリドの両方を用いることで、最終生成物として同一分子内にアクリルアミド構造とメタクリルアミド構造とを有する化合物を得ることができる。
その他の水溶性の重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物や、カチオン性の重合性化合物が挙げられる。カチオン性の重合性化合物は、カチオン基と不飽和二重結合等の重合性基とを有する化合物であり、例えば、エポキシモノマー類、オキタセンモノマー類などを好適に用いることができる。
本発明のインク組成物は、顔料を少なくとも1種含む。
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。
顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。
顔料のインク組成物中における含有量としては、色濃度、粒状性、インク安定性、吐出信頼性の観点から、インク組成物の全質量に対して、1〜25質量%となる量が好ましく、2〜20質量%となる量がより好ましい。
本発明のインク組成物において、前記顔料は、分散剤によって分散されていることが好ましい。即ち、本発明のインク組成物は、分散剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記顔料の分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
更に、前記親水性高分子化合物の例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラック等の天然高分子化合物等の合成系の親水性高分子化合物が挙げられる。
なお、ポリマー分散剤の重量平均分子量は、前述の特定ポリマー粒子を構成する特定ポリマーの重量平均分子量と同様にして測定される。
染料を保持した担体(水不溶性着色粒子)は、分散剤を用いて水系分散物として用いることができる。分散剤としては上述した分散剤を好適に用いることができる。
ここで、分散状態での顔料の平均粒子径は、インク化した状態での平均粒子径を示すが、インク化する前段階のいわゆる濃縮インク分散物についても同様である。
なお、分散状態での顔料の平均粒子径及び粒径分布は、前述の特定ポリマー粒子の平均粒子径及び粒径分布と同様にして求められるものである。
本発明のインク組成物は水を含む。
即ち、本発明のインク組成物は、水性のインク組成物である。
本発明における水としては、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。
また、インク組成物における水の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、インク組成物の全質量に対し、好ましくは10質量%〜99質量%であり、より好ましくは30質量%〜90質量%であり、更に好ましくは30質量%〜80質量%であり、特に好ましくは50質量%〜70質量%である。
本発明におけるインク組成物は、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含有していてもよい。
前記水溶性有機溶剤の例としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール(多価アルコール類);糖アルコール類;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のインク組成物は重合開始剤を少なくとも1種含有することが好ましい。
これにより、活性エネルギー線により(メタ)アクリルアミド化合物の重合を開始させることができる。
前記重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、前記重合開始剤は、増感剤と併用してもよい。
増感剤は、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
本発明におけるインク組成物は、必要に応じて、界面活性剤の少なくとも1種を含むことができる。界面活性剤は、例えば表面張力調整剤として用いることができる。
前記界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等を有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。更に、上記の水溶性ポリマー(高分子分散剤)を界面活性剤としても用いてもよい。
前記アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物等を挙げることができ、これから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの化合物の市販品としては例えば、日信化学工業社のオルフィンE1010などのEシリーズを挙げることができる。
本発明におけるインク組成物は、上記成分以外にその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、重合禁止剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物の場合はインクに直接添加し、また、油性染料を分散物として用いる場合は染料分散物の調製後に分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
本発明におけるインク組成物の表面張力(25℃)には特に限定はないが、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN/m以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。インク組成物の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、25℃の条件下で測定される。
また、本発明におけるインク組成物の粘度には特に限定はないが、25℃での粘度が、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満であり、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。インク組成物の粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、25℃の条件下で測定される。
また、本発明におけるインク組成物のpHには特に制限はないが、インク安定性と凝集速度の観点から、pH7.5〜10であることが好ましく、pH8〜9であることがより好ましい。尚、インク組成物のpHは25℃で、通常用いられるpH測定装置(例えば、東亜ディーケーケー(株)製、マルチ水質計MM−60R)によって測定される。
またインク組成物のpHは、酸性化合物または塩基性化合物を用いて適宜調整することができる。酸性化合物または塩基性化合物としては、通常用いられる化合物を特に制限なく用いることができる。
本発明の画像形成方法は、既述の本発明のインク組成物をインクジェット記録用ヘッドから吐出することで、インク組成物を記録媒体に付与して画像を形成するインク付与工程と、前記インク付与工程後の画像を乾燥させる乾燥工程と、を有する。本発明の画像形成方法は、必要に応じその他の工程を有していてもよい。
本発明の画像形成方法に用いられる記録媒体には特に限定はなく、インクジェット法において通常用いられる記録媒体を用いることができる。
本発明においては、前記記録媒体として、比較的液体の浸透が緩やかな記録媒体が好適である。
比較的液体の浸透が緩やかな記録媒体に画像を形成する場合には、乾燥時のインク組成物が流動性高い傾向があり、また、インク組成物中の顔料等の成分の凝集ムラが発生し易い傾向があるため、かかる記録媒体を用いたときに、本発明による画像変形抑制の効果及び光沢ムラ抑制の効果がより顕著に得られる。
比較的液体の浸透が緩やかな記録媒体として、具体的には、セルロースパルプを主成分とした支持体上の少なくとも一方の面に、一層もしくは多層の顔料層を有する記録媒体が好適である。
セルロースパルプを主成分とした支持体としては、化学パルプ、機械パルプ及び古紙回収パルプ等を任意の比率で混合して用いられ、必要に応じて内添サイズ剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤等を添加した原料を長網フォーマやギャップタイプのツインワイヤーフォーマ、長網部の後半部をツインワイヤーで構成するハイブリッドフォーマ等で抄紙されたものが使用される。
ここで、「主成分」とは、支持体の質量に対して、50質量%以上含まれる成分をいう。
顔料層に用いられる顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機顔料及び無機顔料を用いることができる。顔料の具体例については、特開2011−42150号公報の段落0029の記載を参照することができ、記録媒体の透明性を保持して画像濃度を高める点で、白色無機顔料が好ましい。
水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
かかる物性を示す記録媒体については、例えば、特開2011−063001号公報や特開2011−042150号公報の記載を適宜参照できる。
前記塗工紙は、一般に上市されているものを入手して使用できる。例えば、一般印刷用塗工紙を用いることができ、具体的には、A2グロス紙では「OKトップコート+」(王子製紙製)、「オーロラコート」(日本製紙製)、「パールコート」(三菱製紙製)、「Sユトリロコート」(大王製紙)、「ミューコートネオス」(北越製紙)、「雷鳥コート」(中越パルプ製)、A2マット紙では「ニューエイジ」(王子製紙製)、「OKトップコートマット」(王子製紙製)、「ユーライト」(日本製紙製)、「ニューVマット」(三菱製紙製)、「雷鳥マットコートN」(中越パルプ製)、A1グロスアート紙では「OK金藤+」(王子製紙製)、「特菱アート」(三菱製紙製)、「雷鳥特アート」(中越パルプ製)、A1ダルアート紙では、「サテン金藤+」(王子製紙製)、「スーパーマットアート」(三菱製紙製)、「雷鳥ダルアート」(中越パルプ製)、A0アート紙では「SA金藤+」(王子製紙製)、「高級アート」(三菱製紙製)、「雷鳥スーパーアートN」(中越パルプ製)、「ウルトラサテン金藤+」(王子製紙製)、「ダイヤプレミアダルアート」(三菱製紙製)などを挙げることができる。
本発明におけるインク付与工程は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用ヘッドから吐出することで、インク組成物を記録媒体に付与して画像を形成する工程である。
本工程では、記録媒体上に選択的にインク組成物を付与でき、所望の可視画像を形成できる。
本工程におけるインクジェット記録用ヘッドとしては特に制限はなく、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。
また、インクジェット記録用ヘッドからのインクの吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、インクジェット記録用ヘッドに設けられる吐出孔(ノズル)等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
本発明の画像形成方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合(即ち、インクジェット記録用ヘッドがラインヘッドである場合)に、吐出性向上の効果が大きい。
ここで、撥水性とは、水の接触角が90°以上(好ましくは120°以上、より好ましくは150°以上)である性質を指す。
本発明におけるインクジェット記録用ヘッドとしては、複数の吐出孔が二次元に配列され該吐出孔形成面にフッ素化合物を含む撥液膜が設けられたノズルプレートを備えたインクジェット記録用ヘッドが好適に用いられる。
このようなインクジェット記録用ヘッドとしては、例えば、特開2011−111527号公報や特開2011−063777号公報に記載された公知のインクジェット記録用ヘッドを用いることができる。
上記撥液膜に含まれるフッ素化合物としては、例えば、フッ化アルキル基を有する化合物を好適に用いることができる。
本発明における撥液膜は、例えば、フッ化アルキルシラン化合物を用いて作製された撥液膜であることが好ましい。
前記フッ化アルキルシラン化合物としては、下記一般式(F)で表されるフッ化アルキルシラン化合物を好適に用いることができる。下記一般式(F)で表されるフッ化アルキルシラン化合物は、シランカップリング化合物である。
CnF2n+1−CmH2m−Si−X3 … 一般式(F)
前記一般式(F)において、nは1以上の整数を表し、mは0又は1以上の整数を表す。Xは、アルコキシ基、アミノ基、又はハロゲン原子を表す。なお、Xの一部がアルキル基で置換されていてもよい。
中でも、C8F17C2H4SiCl3が最も好ましい。
中でも、フッ化アルキルシラン化合物の単分子膜(SAM膜)が好ましい。
インクジェット記録用ヘッドに用いられることがある上記のノズルプレートは、複数の吐出孔が二次元に配列された構成を有するものである。複数の吐出孔の数には特に限定はなく、画像形成の高速化等を考慮し、適宜選択できる。
ノズルプレートとしては、シリコンを含むノズルプレート(以下、「シリコンノズルプレート」ともいう)が好適である。
シリコンとしては、単結晶シリコン又はポリシリコンを用いることができる。
また、前記シリコンノズルプレートとしては、例えば、シリコン基板上に、金属酸化物(酸化シリコン、酸化チタン、酸化クロム、酸化タンタル(好ましくはTa2O5)等)、金属窒化物(窒化チタン、窒化シリコン等)、金属(ジルコニウム、クロム、チタン等)などの膜が設けられたものを用いることもできる。
ここで、酸化シリコンは、シリコン基板の表面の全部又は一部が酸化されて形成されたSiO2膜(例えば、熱酸化膜)であってもよい。
また、前記シリコンノズルプレートは、シリコンの一部をガラス(例:硼珪酸ガラス、感光性ガラス、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス)に置き換えたものであってもよい。
本発明における乾燥工程は、インク付与工程後の画像を乾燥させる工程である。
一般には、かかる乾燥工程を有する画像形成方法では、画像変形や画像の光沢ムラが生じやすい。しかし、本発明の画像形成方法では、既述の本発明のインク組成物が用いられるため、乾燥工程を有する画像形成方法において生じ易い、画像変形や画像の光沢ムラが抑制される。
乾燥工程では、記録媒体に形成された画像(インク組成物)中の水の少なくとも一部を乾燥除去する。乾燥工程を後述の硬化工程の前に設け、インク組成物中の水の含有量を減らすことで、硬化工程での重合性化合物の硬化反応がより良好に進行する。特に、主走査方向にインクを吐出して1回の走査で1ラインを形成するシングルパス方式により画像形成する方法など、高速で画像形成する場合に、画像形成性が成り立つ感度を確保することができる。
乾燥工程を設けずにインクの最大付与量で形成した画像に含まれる水分量W0と、所定の乾燥条件による乾燥工程を設けてインクの最大付与量で形成した画像に含まれる水分量W1とをそれぞれ測定する。次いで、W0とW1との差の、W0に対する比率((W0−W1)/W0×100[質量%])を求めることで、乾燥工程によって除去される水分量としての乾燥量(質量%)が算出される。
なお、画像に含まれる水分量は、カールフィッシャー法により測定される。本発明における水分量としては、カールフィッシャー水分計MKA−520(京都電子工業(株)製)を用い、通常の測定条件で測定した水分量を適用する。
インク滴の着弾が完了した時点から乾燥開始までの時間は、3秒以内がより好ましい。
加熱方法としては、例えば、記録媒体の画像形成面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の画像形成面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられる。加熱は、これらを複数組み合わせて行なってもよい。
本発明の画像形成方法は、本発明のインク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含有する処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有することが好ましい。
本工程を有する場合、記録媒体上で、本発明のインク組成物と上記の処理液とが接触し、インク組成物中の顔料等の成分が凝集されてなる凝集体が形成され、記録媒体上に画像が固定化される。処理液をインク組成物と共に用いて画像を形成することで、インクジェット記録を高速化することができ、また高速記録しても、濃度、解像度の高い描画性(例えば細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。
処理液の詳細については後述する。
具体的には、記録媒体上に、インク組成物を付与する前に、予め前記処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
本工程における処理液は、本発明のインク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を少なくとも1種含有する。
前記凝集成分としては、インク組成物のpHを変化させることができる化合物であっても、多価金属塩であっても、カチオン性ポリマーであってもよい。本発明においては、インク組成物の凝集性の観点から、インク組成物のpHを変化させることができる化合物が好ましく、インク組成物のpHを低下させ得る化合物がより好ましい。
酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。
酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、画像濃度、解像度、及びインクジェット記録の高速化の観点から、インク組成物のpH(25℃)が8.0以上であって、処理液のpH(25℃)が0.5〜4である場合が好ましい。
前記凝集成分の処理液中における含有量としては、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは3〜45質量%であり、更に好ましくは5〜40質量%の範囲である。
本発明の画像形成方法は、上述した乾燥工程(インク付与工程後の画像を乾燥させる工程)の後に、乾燥後の画像に活性エネルギー線を照射して画像を硬化させる硬化工程を有することが好ましい。
ここで使用される活性エネルギー線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光、赤外光などが挙げられる。中でも、紫外線が好ましい。
硬化工程により、画像中のモノマー成分(重合性化合物)を確実に重合硬化させることができる。このとき、活性エネルギー線を照射する光源を記録媒体の記録面に対向配置し、記録面の全体を照射すれば、画像全体の硬化を行うことができる。なお、活性エネルギー線を照射する光源は、紫外線照射ランプ、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー、LED、電子線照射装置などを採用することもできる。
活性エネルギー線の出力としては、5000mJ/cm2以下であることが好ましく、10〜4000mJ/cm2であることがより好ましく、20〜3000mJ/cm2であることがさらに好ましい。
次に、本発明の画像形成方法の実施に好適なインクジェット記録装置の一例を図1を参照して具体的に説明する。図1は、インクジェット記録装置全体の構成例を示す概略構成図である。
また、溶媒除去ローラー等を用いて溶媒除去を行なってもよい。他の態様として、エアナイフで余剰な溶媒を記録媒体から取り除く方式も用いられる。
なお、図1では、記録用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、30Bがこの順に配置されているが、インク吐出部14における各色の記録用ヘッドの配置はこの順には限定されず、適宜変更することができる。
紫外線照射部16は、インク乾燥ゾーン15の前後のいずれに設置されていてもよく、インク乾燥ゾーン15の前後両方に設置してもよい。
本発明のインクジェット記録用インクセット(以下、単に「インクセット」ともいう)は、既述の本発明のインク組成物の少なくとも1種と、インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含有する処理液の少なくとも1種と、を含む。
インク組成物及び処理液については前述したとおりであり、好ましい範囲も同様である。
また、本発明のインクセットは、上記本発明におけるインク組成物以外のその他のインク組成物を含んでいてもよい。前記その他のインク組成物としては特に限定はないが、処理液により凝集させることができるインク組成物が好ましく、ポリマー分散剤により顔料の表面の少なくとも一部が被覆されてなる水分散性顔料及び水を含有するインク組成物がより好ましい。
例えば、本発明のインクセットが、本発明におけるインク組成物を含めた互いに色相が異なる2種以上のインク組成物を含むことにより、多次色の画像を好適に形成できる。
水性インクとして、下記表2に示すシアンインクC−1〜C−27及び下記表3に示すマゼンタインクM−1〜M−27をそれぞれ調製した。
以下、詳細な操作について説明する。
(シアン分散液の調製)
反応容器に、スチレン6部、ステアリルメタクリレート11部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成(株)製)4部、プレンマーPP−500(日油(株)製)5部、メタクリル酸5部、2−メルカプトエタノール0.05部、及びメチルエチルケトン24部を加え、混合溶液を調液した。
得られたシアン分散液の体積平均粒子径(二次粒子)を、Micorotrac粒度分布測定装置(Version 10.1.2−211BH(商品名)、日機装(株)製)で動的光散乱法により測定したところ、77nmであった。
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで、窒素雰囲気下に、87℃まで昇温した。反応容器内は還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流)、メチルメタクリレート(表1中、「非極性モノマーA」に相当)522.0g、メタクリル酸(表1中、「極性モノマー」に相当)58.0g、メチルエチルケトン108g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)2.54gからなる混合溶液を、3時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、1時間攪拌後、(1)「V−601」1.27g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加え、2時間攪拌を行った。続いて、(1)の工程を4回繰り返し、さらに「V−601」1.27g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加えて3時間攪拌を続けた。以上により、メチルメタクリレート/メタクリル酸(=90/10[質量比])共重合体を含むポリマー溶液を得た。
得られた共重合体(ポリマー)の重量平均分子量(Mw)は56000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))であった。
次に、得られたポリマー溶液291.6g(固形分濃度44.0%)を秤量し、イソプロパノール82.5g、20%マレイン酸水溶液2.57g(水溶性電解質、共重合体に対して0.4%相当)、1モル/LのNaOH水溶液90.14gを加え、反応容器内温度を87℃に昇温した。次に蒸留水352gを10ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた(分散工程)。その後、大気圧下にて反応容器内温度87℃で1時間、91℃で1時間、95℃で30分保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で312.0g留去し(溶剤除去工程)、固形分濃度(自己分散ポリマー粒子濃度)25.3質量%の自己分散ポリマーP−1(ポリマー粒子)の水分散液を得た。
上記自己分散性ポリマー粒子P−1のガラス転移温度(Tg)を以下の方法で測定したところ、115℃であった。
即ち、固形分で0.5gの自己分散性ポリマー粒子P−1の水分散液を50℃で4時間、減圧乾燥させ、ポリマー固形分を得た。得られたポリマー固形分を用い、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220によりTgを測定した。測定条件は、サンプル量5mgをアルミパンに密閉し、窒素雰囲気下、以下の温度プロファイルで2回目の昇温時の測定データのDSCのピークトップの値をTgとした。
30℃ → −50℃ (50℃/分で冷却)
−50℃ → 120℃(20℃/分で昇温)
120℃ → −50℃(50℃/分で冷却)
−50℃ → 120℃(20℃/分で昇温)
下記組成を混合し、ADVANTEC社製ガラスフィルター(GS−25)でろ過した後、ミリポア社製フィルター(PVDF膜、孔径5μm)でろ過を行い、シアンインクC−1を得た。
−シアンインクC−1の組成−
・上記シアン分散液 … 10質量%
・下記重合性化合物J−1(ヒドロキシエチルアクリルアミド)
… 15質量%
・下記重合性化合物J−3(4官能アクリルアミド)
… 10質量%
・イルガキュア2959(BASF社製;光重合開始剤)
… 1.5質量%
・自己分散性ポリマー粒子P−1の水分散液
… 7.1質量%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製;界面活性剤)
… 1質量%
・イオン交換水 … 合計で100質量%となる残量
(自己分散性ポリマーP−2〜P−19の水分散液の調製)
自己分散性ポリマー粒子P−1の水分散液の調製において、モノマー成分の種類及び共重合比を、下記表1に示すように変更したこと以外は自己分散性ポリマー粒子P−1の水分散液の調製と同様にして、自己分散性ポリマー粒子P−2〜P−19のそれぞれの水分散液(いずれも自己分散性ポリマー粒子濃度25.3質量%)を調製した。
・SP値の単位はMPa1/2である。
・Mwは重量平均分子量である。
・モノマーの略号と化合物名との対応は以下のとおりである。
MMA … メチルメタクリレート
PEMA … フェノキシエチルメタクリレート
BzMA … ベンジルメタクリレート
GMA … グリシジルメタクリレート
HEMA … ヒドロキシエチルメタクリレート
EMA … エチルメタクリレート
iPMA … イソプロピルメタクリレート
EHMA … 2−エチルヘキシルメタクリレート
iDMA … イソデシルメタクリレート
PEA … フェノキシエチルアクリレート
MA … メチルアクリレート
MAA … メタクリル酸
AA … アクリル酸
シアンインクC−1の調製において、組成を下記表2に示すように変更したこと以外はシアンインクC−1の調製と同様にして、シアンインクC−2〜C−27をそれぞれ調製した。
重合性化合物J−3は、以下のようにして合成した。
−第一工程−
スターラーバーを備えた1L容の三口フラスコに、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(東京化成工業社製)121g(1当量)、50質量%の水酸化カリウム水溶液84ml、トルエン423mlを加えて攪拌し、水浴下、反応系中を20〜25℃で維持し、アクリロニトリル397.5g(7.5当量)を2時間かけて滴下した。滴下後、1.5時間攪拌した。その後、トルエン540mlを反応系中に追加し、その反応混合物を分液漏斗へ移し水層を除いた。残った有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、セライトろ過を行ない、減圧下で溶媒留去することによりアクリロニトリル付加体を得た。得られた物質の1H−NMR、MSによる分析結果は既知物と良い一致を示したため、さらに精製することなく次の還元反応に用いた。
容積1Lのオートクレーブに、得られたアクリロニトリル付加体24g、Ni触媒48g(ラネーニッケル2400、W.R.Grace&Co.社製)、及び25質量%アンモニア水溶液(水:メタノール=1:1)600mlを入れ、懸濁させて反応容器を密閉した。反応容器に10Mpaの水素を導入し、反応温度を25℃で16時間反応させた。
原料の消失を1H−NMRにて確認し、反応混合物をセライト濾過し、セライトをメタノールで数回洗浄した。濾液を減圧下溶媒留去することにより、ポリアミン体を得た。得られた物質は、さらに精製することなく次の反応に用いた。
攪拌機を備えた容積2Lの三口フラスコに、得られたポリアミン体30g、NaHCO3120g(14当量)、ジクロロメタン1L、及び水50mlを加えて氷浴下、アクリル酸クロリド92.8g(10当量)を3時間かけて滴下した。その後、室温で3時間攪拌した。原料の消失を1H−NMRにて確認した後、反応混合物を減圧下で溶媒留去した。続いて、硫酸マグネシウムで反応混合物を乾燥させ、セライトろ過を行ない、減圧下で溶媒留去した。最後に、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール=4:1)にて精製することで、常温下、4官能アクリルアミドである重合性化合物J−3(前記一般式(2)において、R1=H R2=C3H6 R3=CH2、X=Y=Z=0)の固体を得た。上記3工程を経て得られた重合性化合物J−3の収率は、40質量%であった。
前述のシアン分散液の調製において、シアン顔料であるPigment Blue 15:3を、同質量のマゼンタ顔料Pigment Red 122(大日精化(株)製)に変更したこと以外は、シアン分散液の調製と同様にしてマゼンタ分散液を調製した。
次に、シアンインクC−1の調製において、組成を下記表3に示すように変更したこと以外はシアンインクC−1の調製と同様にして、マゼンタインクM−1を調製した。
マゼンタインクM−1の調製において、組成を下記表3に示すように変更したこと以外はマゼンタインクM−1の調製と同様にして、マゼンタインクM−2〜M−27をそれぞれ調製した。
・各成分の量(%)は、インク全量を100質量%としたときの含有量(質量%)を示す。
・自己分散性ポリマー粒子の水分散液の量は、自己分散性ポリマー粒子の含有量ではなく、自己分散性ポリマー粒子の水分散液(自己分散性ポリマー粒子濃度25.3質量%の水分散液)の含有量である。
下記組成の成分を混合して、処理液を調製した。
〜処理液の組成〜
・マロン酸(和光純薬工業(株)製) … 25質量%
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製)
… 20質量%
・エマルゲンP109(花王(株)製、ノニオン性界面活性剤)
… 1質量%
・イオン交換水 … 合計で100.0質量%となる残量
画像形成にあたり、下記表4に示す記録媒体を準備した。
≪画像形成(インクジェット記録)≫
まず、図1に示すように、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、処理液を吐出する処理液吐出用ヘッド12Sを備えた処理液付与部12と、付与された処理液を乾燥させる処理液乾燥ゾーン13と、各種インク組成物を吐出するインク吐出部14と、吐出されたインク組成物を乾燥させるインク乾燥ゾーン15と、紫外線(UV)を照射可能なUV照射ランプ16Sを備えたUV照射部16とが配設されたインクジェット装置を準備した。
処理液乾燥ゾーン13は、図示しないが、記録媒体の記録面側には乾燥風を送って乾燥を行なう送風器を備え、記録媒体の非記録面側には赤外線ヒータを備えており、処理液付与部で処理液の付与を開始した後900msecが経過するまでに、温度・風量を調節して処理液中の水の70質量%以上を蒸発(乾燥)できるようにした。また、インク吐出部14には、ブラックインク吐出用ヘッド30K、シアンインク吐出用ヘッド30C、マゼンタインク吐出用ヘッド30M、及びイエローインク吐出用ヘッド30Yが配置されており、各ヘッドは1200dpi/10inch幅フルラインヘッド(駆動周波数:25kHz)であり、各色をシングルパスで主走査方向に吐出して記録できるようにした。
本実施例では、図1におけるシアンインク吐出用ヘッド30Cとマゼンタインク吐出用ヘッド30Mとの配置を入れ替え、記録媒体上に、マゼンタ、シアンの順にインクを吐出できる配置に変更した。
このとき、処理液の記録媒体への付与量は1.5ml/m2とした。
記録媒体としては、OKトップコート+を用いた。
画像形成に際し、マゼンタインク及びシアンインクは、それぞれ、ヘッドから解像度1200dpi×1200dpi、インク滴量2.4plで吐出した。
下記の画像の形成では、記録媒体をA5サイズにカットしたサンプルに処理液、マゼンタインク、及びシアンインクを順次付与して画像を形成した。
まず、記録媒体上に処理液吐出用ヘッド12Sから処理液をシングルパスで吐出(付与)した後、処理液の乾燥は処理液乾燥ゾーン13で行ない、処理液乾燥ゾーンを処理液の吐出開始から900msec迄に通過するようにした。処理液乾燥ゾーン13では、着滴した処理液を着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで膜面温度が40〜45℃となるように加熱しながら、送風器により記録面に120℃、5m/secの温風を5秒間あてて乾燥した。
続いて、記録媒体の処理液が付与された側の面(処理液付与面)に、マゼンタインクM−1を吐出用ヘッド30Mからシングルパスで網点率100%でベタ状に付与し、付与されたマゼンタインクM−1上にシアンインクC−1を吐出用ヘッド30Cからシングルパスで網点率100%でベタ状に付与してベタ画像を得た。
画像が形成された記録媒体に対し、インク乾燥ゾーン15で前記同様にインク着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで加熱しながら、送風器により、120℃、5m/secの温風を記録面に5秒間あてて画像を乾燥させた。このとき、シアンインクの液滴が記録媒体に着弾した時点からインク乾燥ゾーン15に搬送されて乾燥が開始されるまでの時間が約1秒間となるように搬送速度を調整した。
乾燥後の画像に対し、UV照射部16において、UV光(アイグラフィックス(株)製 メタルハライドランプ 最大照射波長 365nm)を積算照射量2J/cm2になるように照射して、画像をUV硬化した。
以上により、評価用の画像サンプルを得た。
シアンインクC−1、マゼンタインクM−1、及び評価用の画像サンプルについて、以下の評価を行なった。評価結果を下記表5に示す。
上記画像サンプルにおけるベタ画像を、光学顕微鏡(倍率300倍)及び目視で観察し、下記評価基準に従って、画像変形を評価した。
A:光学顕微鏡観察及び目視観察ともに異常は視認されず、均質なベタ画像であった。
B:光学顕微鏡観察では画像の割れが確認されたものの、目視観察では異常は視認されず、均質なベタ画像であった。
C:目視観察でも僅かに画像の割れが視認されるものの、実用上問題の無い範囲であった。
D:目視観察でも顕著な画像の割れが視認された。
上記画像サンプル(画像の網点率100%)に加え、上記画像サンプルにおける画像の網点率を、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%の各網点率に変更した画像サンプルをそれぞれ作製した(画像サンプル数は、合計で10枚である)。
得られた10枚の画像サンプルにおける画像について、表面の光沢ムラを目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
A:全ての画像サンプルにおいて光沢ムラは視認されず、画像表面の光沢は良好であった。
B:一部の画像サンプルにおいてわずかな光沢ムラが視認されたが、実用上問題の無い範囲であった。
C:一部の画像サンプルにおいて明確な光沢ムラ(画像の一部の光沢低下)が視認された。
表面に撥液膜を有するテストピースの撥液膜にインクを付着させ、次いでこのテストピースを純水中に浸漬させて洗浄(除去)したときのインクの除去性を評価した。この評価は、上記シアンインクC−1及び上記マゼンタインクM−1のそれぞれについて行なった。上記テストピースに設けられた撥液膜は、インクジェット記録用ヘッドの吐出面に設けられる撥液膜と同様にフッ化アルキル基を有する撥液膜であり、より詳細には、特開2011−111527号公報の段落0152及び段落0154に記載されている、フッ化アルキルシラン化合物(C8F17C2H4SiCl3)の単分子膜(SAM膜)である。
詳細には、まず、評価対象のインクを上記テストピースの撥液膜にスプレーによって吹きつけ、この撥液膜表面に滴径50μm以下のインク付着物を形成した。次いでこのテストピースを23℃50%RHの環境下で1時間乾燥させた後、デジタルカメラが設置された光学顕微鏡を用い、インク付着物が形成された面の1mm×1mmの範囲をデジタルカメラで撮影し、浸漬前の撮影像を得た。
次に、撮影後のテストピースを純水中に、インク付着物が形成された面が純水中に浸漬されるようにして1秒間浸漬させて取り出し、風圧によってインク付着物が形成された面の水滴を吹き飛ばした。その後、浸漬前の撮影像と同じ範囲を、浸漬前と同様にしてデジタルカメラで撮影し、浸漬後の撮影像を得た。
浸漬前の撮影像と浸漬後の撮影像とを対比することにより、浸漬後に残留したインク付着物の浸漬前の滴径を測定した。
この測定により、浸漬後に残留したインク付着物のうち、浸漬前の滴径が最も小さいインク付着物におけるこの浸漬前の滴径を、除去不能最低滴径とした、
以上の操作を10回行い、除去不能最低滴径の平均値を算出し、下記評価基準に従って評価した。
A … 除去不能最低滴径の平均値が20μm以上であり、インクの除去性が非常に良好である。
B … 除去不能最低滴径の平均値が15μm以上20μm未満であり、インクの除去性が良好である。
C … 除去不能最低滴径の平均値が10μm以上15μm未満であり、インクの除去性が実用上問題ないレベルである。
D … 除去不能最低滴径の平均値が10μm未満であり、インクの除去性が実用上問題のあるレベルである。
実施例1において、シアンインク、マゼンタインク、及び記録媒体を、下記表5に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして画像形成を行い、実施例1と同様の評価を行なった。
評価結果を下記表5に示す。
これに対し、(メタ)アクリルアミド化合物を含有しない水性インクを用いた比較例1では、画像変形抑制の効果及び光沢ムラ抑制の効果が低下した。
また、SP値19.0MPa1/2未満のメタクリル酸エステルに由来する構造単位を含むポリマー粒子を含有する水性インクを用いた比較例2〜4では、特にインクの除去性が低下した。
また、アクリル酸に由来する構造単位やアクリル酸エステルに由来する構造単位を含むポリマー粒子を含有する水性インクを用いた比較例5〜8では、特に画像変形抑制の効果が低下した。
また、ポリマー粒子を含有しない水性インクを用いた比較例9では、画像変形抑制の効果及び光沢ムラ抑制の効果が低下した。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
<2> 前記(メタ)アクリルアミド化合物の少なくとも1種が、多官能(メタ)アクリルアミド化合物である<1>に記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<3> 前記メタクリル酸エステルのSP値が、19.4MPa1/2〜22.0MPa1/2である<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<4> 前記メタクリル酸エステルに由来する構造単位が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、及びフェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種である<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<5> 前記ポリマー粒子が、自己分散性ポリマー粒子である<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<6> 前記ポリマー粒子のガラス転移温度が、80℃以上である<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
<7> 前記(メタ)アクリルアミド化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物である。
本発明のインクジェット記録用インク組成物(以下、単に「インク組成物」や「インク」ともいう)は、水と、顔料と、(メタ)アクリルアミド化合物と、メタクリル酸に由来する構造単位及び沖津法によって算出されたSP値が19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマーで構成されたポリマー粒子と、を含有する。
本発明のインク組成物は、溶媒として水を含む水性インクである。
Claims (13)
- 水と、顔料と、(メタ)アクリルアミド化合物と、メタクリル酸に由来する構造単位及びSP値19.0MPa1/2〜25.0MPa1/2のメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなるポリマーで構成されたポリマー粒子と、を含有するインクジェット記録用インク組成物。
- 前記(メタ)アクリルアミド化合物の少なくとも1種が、多官能(メタ)アクリルアミド化合物である請求項1に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 前記メタクリル酸エステルのSP値が、19.4MPa1/2〜22.0MPa1/2である請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 前記メタクリル酸エステルに由来する構造単位が、メチルメタクリレートに由来する構造単位、ベンジルメタクリレートに由来する構造単位、及びフェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 前記ポリマー粒子が、自己分散性ポリマー粒子である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 前記ポリマー粒子のガラス転移温度が、80℃以上である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 前記(メタ)アクリルアミド化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
〔一般式(1)中、Qは、n価の連結基を表し、R1は、水素原子又はメチル基を表す。nは、1以上の整数を表す。〕 - 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物をインクジェット記録用ヘッドから吐出することで、該インクジェット記録用インク組成物を記録媒体に付与して画像を形成するインク付与工程と、
前記インク付与工程後の画像を乾燥させる乾燥工程と、
を有する画像形成方法。 - 前記乾燥工程の後に、乾燥後の画像に活性エネルギー線を照射して画像を硬化させる硬化工程をさらに有する請求項8に記載の画像形成方法である。
- 前記記録媒体が、セルロースパルプを主成分とした支持体上の少なくとも一方の面に、一層もしくは多層の顔料層を有する請求項8又は請求項9に記載の画像形成方法。
- 前記インク付与工程の前に、更に、前記インクジェット記録用インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含有する処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有する請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の画像形成方法。
- 前記凝集成分が、酸である請求項11に記載の画像形成方法。
- 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物と、
前記インクジェット記録用インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含有する処理液と、
を有するインクジェット記録用インクセット。
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