JPWO2014021240A1 - プロテインgの細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体から成るタンパク質を含む捕捉剤 - Google Patents

プロテインgの細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体から成るタンパク質を含む捕捉剤 Download PDF

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Abstract

本願発明の目的は、中性域での高い抗体結合活性を損なうことなしに、野生型のプロテインGの細胞膜外ドメインを含むタンパク質に比べて、弱酸性域における免疫グロブリンのFc領域との結合性及び/または同Fab領域との結合性がより低下した優れたタンパク質を提供するとともに、このタンパク質を用いた捕捉剤及びカラムによって、抗体を変性させることなく容易に捕捉、回収可能にすること。本願発明は、免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体から成るタンパク質が主にアミノ基を介して水不溶性の固相支持体に固定化されていることを特徴とする、抗体、免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質の捕捉剤、及び、該捕捉剤を充填して成るタンパク質分離精製用クロマトグラフィー用カラム等に関する。

Description

本発明は、免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体から成る(を含む)タンパク質が水不溶性の固相支持体に固定化されていることを特徴とする、抗体、免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質の捕捉剤、及び、該捕捉剤を充填して成るタンパク質分離精製用クロマトグラフィー用カラム等に関する。
連鎖球菌由来のタンパク質であるプロテインGはストレプトコッカス属連鎖球菌の細胞膜に存在する膜タンパク質であり、抗体の一種である免疫グロブリンGのFc領域に対する特異的結合活性を有することが知られている(非特許文献1、特許文献1)。プロテインGは、複数のドメインからなるマルチドメイン型膜タンパク質で、免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性(以下、「抗体結合活性」と呼ぶ)を示すのは、このうちの一部の細胞膜外ドメインである(非特許文献2)。たとえば図1に示すG148株由来のプロテインGの場合、抗体結合活性を示すのは、B1、B2、B3の3つのドメインである(文献によってC1、C2、C3ドメインとも表記される)。また、GX7805株のプロテインGでは3つの、GX7809のプロテインGでは2つの抗体結合ドメインが存在する。これらは、いずれも60アミノ酸弱の小型タンパク質で、そのアミノ酸配列の間には高い同一性が見られることが知られている)。また、プロテインGを切断して各々のドメイン単独を単離しても、抗体結合活性は保たれることが知られている(非特許文献3)。
プロテインGの細胞膜外ドメインは、現在、その選択的な抗体結合活性を利用した多くのプロテインG細胞膜外ドメイン含有製品が上市されている(例えば、抗体精製のためのアフィニティクロマトグラフィー用担体(特許文献3、4)や抗体を検出するための検査試薬、研究試薬など)。プロテインGの細胞膜外ドメインと抗体の結合力は、中性〜弱酸性域で高く、強酸性域で低いことが知られている(非特許文献4)。ゆえに、抗体の単離、回収、精製を目的とした場合、まず、血清等の抗体を含む試料溶液を中性状態にして、プロテインGの細胞膜外ドメインを固定化したビーズ等の水不溶性の固相支持体に接触させ、抗体を選択的に吸着させる。この後、中性〜弱酸溶液(pH5〜8)で洗浄し抗体以外の成分を除去する。最後にpH2.4〜3.5の強酸性溶液を加え抗体を固定化したプロテインGから脱着させ、強酸性溶液と共に溶出させることが一般的である(特許文献3)。これにより、高い純度で抗体を単離、回収、精製することができる。
しかし、抗体はpH2.4〜3.5の強酸性溶液におくと変性凝集等で劣化することがあり、抗体の種類によっては、本来の機能を失う場合もある(非特許文献4)。これを防ぐために、pH2.4〜3.5より高いpHの弱酸性域で処理することが試みられるが、プロテインGの細胞膜外ドメインと抗体の結合力は強いので、弱酸性域では抗体はプロテインGから溶出せず、十分な回収量が得られない。一方、プロテインG細胞膜外ドメインはFabとも結合することが知られており(非特許文献2)、一つの抗体分子はFc領域とFab領域の2つ領域で、プロテインG細胞膜外ドメインと結合可能である。このような結合状態になると、抗体とプロテインGの細胞膜外ドメインは容易に解離できず、抗体の回収は困難になる。
これまでに本発明者等は、熱安定性、変性剤に対する化学的安定性、及びタンパク質分解酵素に対する耐性等(これらの特性を総称して、単に「タンパク質安定性」ともいう)を有するプロテインGの細胞膜外ドメイン変異体からなる改良型タンパク質を開発し(特許文献5及び特許文献6)、更に、弱酸性域における免疫グロブリンのFc領域との結合性及び/または同Fab領域との結合性が低下した改良型タンパク質も開発した(特許文献7)。しかしながら、これらの改良型タンパク質はいずれも抗体結合活性を示す1つのドメインのみを含むものである。
特表平03−501801公報 特許第2764021号公報 特開平03−128400号公報 特開2003−088381号公報 特開2009-95322号公報 特開2009-118749号公報 特開2009-297018号公報
Bjorck L, Kronvall G. (1984) Purification and some properties of streptococcal protein G, a novel IgG-binding reagent. J Immunol. 133, 969-974. Boyle M. D.P., Ed. (1990) Bacterial Immunoglobulin Binding Proteins. Academic Press, Inc., San Diego, CA, USA. Gallagher T, Alexander P, Bryan P, Gilliland GL. (1994) Two crystal structures of the B1 immunoglobulin-binding domain of streptococcal protein G and comparison with NMR. Biochemistry 19, 4721-4729. Gagnon P. (1996) Purification Tools for Monoclonal Antibodies, Validated Biosystems Inc., Tucson, AZ, USA.
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術における問題点を解消し、更に、抗体精製用アフィニティクロマトグラフィー充填剤等として有用な、実用性に優れた新規なタンパク質が固定化されていることを特徴とする、抗体、免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質(抗体等)を含む捕捉剤を提供することである。
より具体的には、本発明が解決しようとする別の課題は、中性域での高い抗体結合活性を損なうことなしに、野生型のプロテインGの細胞膜外ドメインを含むタンパク質に比べて、弱酸性域における免疫グロブリンのFc領域との結合性及び/または同Fab領域との結合性がより低下した優れたタンパク質を用いることによって、抗体を変性させることなく容易に捕捉、回収可能にする抗体等の捕捉剤を提供することである。
更に、本発明が解決しようとする課題は、該捕捉剤を充填して成るタンパク質分離精製用クロマトグラフィー用カラム、特に、抗体精製用のアフィニティクロマトグラフィー用カラムを提供することである。
本発明者は、プロテインGの細胞膜外ドメインを固定化した固相支持体から抗体を酸溶出する際に、抗体が強酸によって劣化するのを防ぐには、弱酸性溶液で固相支持体から溶出できるようにプロテインGの細胞膜外ドメインのアミノ酸配列を改変すれば良いと考え、鋭意研究の結果、抗体結合性タンパク質であるプロテインGの細胞膜外ドメイン変異体をタンデムに連結することによって構成されるタンデム型多量体から成るタンパク質を開発し、該タンパク質は野生型プロテインGと同等の中性域における免疫グロブリンFc領域との結合性を有し、且つ、弱酸性域における免疫グロブリンFc領域との結合性は野生型プロテインG細胞膜外ドメインのタンデム型多量体と比べても大きく低下することを確認した。更に、このタンデム型多量体から成るタンパク質はIgG1及びIgG3という異なるサブクラスのヒト免疫グロブリンFc領域に対しても同様な効果を示すこと、加えて、このタンデム型多量体が同じドメイン変異体からなる単量体にくらべて中性域の抗体結合性が優れていることを確認した。
次に、かかる細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体から成るタンパク質を主にアミノ基を介して水不溶性の固相支持体に固定化させることによって、抗体、免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質の捕捉剤が得られることを見出し、該捕捉剤はカラム充填剤として使用した際に、以下に定義する静的抗体吸着容量(SBC:Static Binding Capacity)が高い、という抗体等のタンパク質の捕捉剤として非常に優れた吸着特性を有することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明の各態様は、以下のとおりである。
[態様1]
免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体から成るタンパク質を主にアミノ基を介して水不溶性の固相支持体に固定化して成る、抗体、免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質の捕捉剤。
[態様2]
免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体から成るタンパク質を水不溶性の固相支持体に固定化して成る、抗体、免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質の捕捉剤であって、静的抗体吸着容量(SBC)が40(mg-ヒトIgG/ml-gel)以上である、態様1記載の捕捉剤。
[態様3]
静的抗体吸着容量(SBC)が44(mg-ヒトIgG/ml-gel)以上である、態様2記載の捕捉剤。
[態様4]
タンデム型多量体がタンデム型三量体である、態様1ないし3のいずれか一項に記載の補足剤。
[態様5]
多量体を構成する細胞膜外ドメイン変異体が互いに同一である、態様1ないし4のいずれか一項に記載の捕捉剤。
[態様6]
各細胞膜外ドメイン変異体がリンカー配列によって連結されている、態様1ないし5のいずれか一項に記載の捕捉剤。
[態様7]
免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメインが、ストレプトコッカス属連鎖球菌のプロテインGのB1、B2、又はB3のいずれかである、態様1ないし6のいずれか一項に記載の捕捉剤。
[態様8]
タンパク質が、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・Bドメインのタンデム型多量体から成るタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した、態様1ないし7のいずれか一項に記載の捕捉剤。
[態様9]
多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(a)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(a)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質:
(a)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGluを、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36がAsp又はGlu、X37がAsnまたはLeu、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
[態様10]
多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(b)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(b)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質:
(b)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGluを、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36が Asp又はGlu、X37がAsn又はHis、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
[態様11]
多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(c)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(c)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質:
(c)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyValTrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGlu、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又は Lys、X36がAsp又はGlu、X37がAsn又はHis、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
[態様12]
多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(d)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(d)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B1メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
(d)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
[態様13]
多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(e)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(e)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B2メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
(e)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
[態様14]
多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(f)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(f)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
(f)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyValTrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
[態様15]
多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(g)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(g)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
(g)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAspであって、かつX42がGluになる場合を除く。)。
[態様16]
多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の各変異体タンパク質であって、以下の(h)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(h)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
(h)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAspであって、かつX42がGluになる場合を除く。)。
[態様17]
多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の各変異体タンパク質であって、以下の(i)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(i)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
(i)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyValTrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGlnであって、かつX40がAspになる場合を除く。)。
[態様18]
多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が配列番号13〜20のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは該アミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる、態様1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤。
[態様19] 三量体を構成する3つの細胞膜外ドメイン変異体が配列番号19で示されるアミノ酸配列、あるいは該アミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる、態様1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤。
[態様20]
態様1ないし19のいずれか一項に記載の捕捉剤を充填して成るタンパク質分離精製用クロマトグラフィー用カラム。
本発明によれば、中性域において本来の抗体結合活性を維持しつつ、例えば、[配列番号1]で表されるアミノ酸配列からなる野生型のプロテインG・B1ドメインのタンデム型多量体に比べて、IgG1及びIgG3という異なるサブクラスのヒト免疫グロブリンGのFc領域との弱酸性域における結合性がより大きく低下する一方で、同じドメイン変異体からなる単量体にくらべて中性域の抗体結合性が優れているタンデム型多量体からなるタンパク質を主にアミノ基を介して水不溶性の固相支持体に固定化して成る捕捉剤が提供される。
更に、本発明の捕捉剤はカラムに充填した際に、以下に定義する静的抗体吸着容量(SBC:Static Binding Capacity)が高い、という抗体等の捕捉剤として非常に優れた抗体吸着特性を有する。
このような捕捉剤を充填したタンパク質分離精製用クロマトグラフィー用カラムにおいては、捕捉した抗体を弱酸性領域において、変性のない状態でより容易に溶出することが可能となる。
尚、本明細書に引用した特許文献7においては、本発明のタンデム型多量体に相当する一般的な概念は開示されているものの、実際には合成された例は記載されておらず、更に、上記のような顕著な効果は何等記載又は示唆すらなされていない。
Streptococcus sp. G148由来のプロテインGの遺伝子の構造を示す図である。 プロテインGの抗体結合ドメインのアミノ酸配列を示す図である(下線部はB1ドメインとの相違部分)。 Streptococcus sp. G148由来のプロテインGの遺伝子の塩基配列(配列番号30)を示す図である(下線部が構造遺伝子、太字部が抗体結合ドメインに対応)。 oxaloacetate decarboxylase alpha-subunit c-terminal domain(OXADac)−プロテインG変異体融合タンパク質のN末配列(配列番号31)を示す図である(下線部がOXADacに対応するアミノ酸配列)。 プロテインG・B2ドメインとヒト免疫グロブリンG1のFc領域の複合体の立体構造を示す図である。 プロテインG・B3ドメインとマウス免疫グロブリンG1のFab領域の複合体の立体構造を示す図である。 固定化カラムを用いた変異体タンパク質の弱酸性域での抗体解離性評価(1)の結果を示すグラフである。 固定化カラムを用いた変異体タンパク質の弱酸性域での抗体解離性評価(2)の結果を示すグラフである。 変異体タンパク質の抗体結合解離活性を表面プラズモン共鳴(SPR)法により評価した結果である。上段より、それぞれM-PG01、M-PG07、M-PG19のセンサーグラムを示す。変異体タンパク質の濃度は、100, 200, 300, 400, 500 nMである。 変異体タンパク質の抗体親和性(1/KD)のpH依存性を示すグラフである。 変異体タンパク質の抗体親和性の相対的変化を示すグラフである。各pHにおける解離定数(KD)を、pH7.4のKDで規格化してある。 変異体タンパク質M-PG19の立体構造(左)を示す図である。比較のため野生型プロテインG・B1ドメインの立体構造(右)をあわせて示す。 3’末端側にシステイン残基、Hisタグを融合した三量体野生型PG(CGB01H-3D, 図13上) 及び本発明のタンパク質である変異型PG(CGB19H-3D, 図13下)のドメイン構造及び変異アミノ酸を示す。 Epoxy-activated CGB01H-3D固定化カラムによるpH勾配アフィニティクロマトグラフィーの結果を示すグラフである。 Epoxy-activated CGB19H-3D固定化カラムによるpH勾配アフィニティクロマトグラフィーの結果を示すグラフである。 CGB19H-3D固定化SulfoLinkカラムによるpH勾配アフィニティクロマトグラフィーの結果を示すグラフである。 Epoxy-activated CGB01H-3D固定化カラムによるpH段階的変化アフィニティクロマトグラフィーの結果を示すグラフである。 Epoxy-activated CGB19H-3D固定化カラムによるpH段階的変化アフィニティクロマトグラフィーの結果を示すグラフである。 Epoxy-activated固定化カラムによるpH段階的変化アフィニティクロマトグラフィーの結果を示すグラフである。 CGB19H-3D固定化SulfoLinkカラムによるpH段階的変化アフィニティクロマトグラフィーの結果を示すグラフである。 プロテインGの細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体と同変異体の単量体との比較を示すグラフである。 DSC-activated CGB19H-3D固定化カラムによるpH勾配アフィニティクロマトグラフィーの結果を示すグラフである。
本発明の捕捉剤は、免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体から成るタンパク質が主にアミノ基を介して水不溶性の固相支持体に固定化されていることを特徴とする。該抗体捕捉剤は常に優れた抗体吸着特性を有しており、タンパク質分離精製用クロマトグラフィー用カラムの充填剤として有用である。従って、かかる捕捉剤を充填して成るタンパク質分離精製用クロマトグラフィー用カラムカラムは、抗体の精製や除去、抗体を利用した診断、治療、検査等に用いることができる。
タンパク質の固定化
本発明の抗体捕捉剤は、本発明の変異体タンパク質を水不溶性の固相支持体に固定化することによって作製される。用いる水不溶性担体としては、ガラスビーズ、シリカゲルなどの無機担体、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレンなどの合成高分子や結晶性セルロース、架橋セルロース、架橋アガロース、架橋デキストランなどの多糖類からなる有機担体、さらにはこれらの組み合わせによって得られる有機-有機、有機-無機などの複合担体などが挙げられるが、中でも親水性担体は非特異吸着が比較的少なく、抗体あるいは免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質の選択性が良好であるため好ましい。ここでいう親水性担体とは、担体を構成する化合物を平板状にしたときの水との接触角が60度以下の担体を示す。この様な担体としてはセルロース、キトサン、デキストラン等の多糖類、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸グラフト化ポリエチレン、ポリアクリルアミドグラフト化ポリエチレン、ガラスなどからなる担体が代表例として挙げられる。
市販品としては多孔質セルロースゲルであるGCL2000、GC700、アリルデキストランとメチレンビスアクリルアミドを共有結合で架橋したSephacryl S-1000、アクリレート系の担体であるToyopearl、アガロース系の架橋担体であるSepharose 4Fast Flow、NHS基で活性化されたNHS-activated Sepharose 4Fast Flow、CNBr-activated Sepharose 4Fast Flow、エポキシ基で活性化されたポリメタクリルアミドであるオイパーギットC250L等を例示することができる。ただし、本発明においてはこれらの担体、活性化担体のみに限定されるものではない。上述の担体はそれぞれ単独で用いてもよいし、任意の2種類以上を混合してもよい。又、本発明に用いる水不溶性担体としては、本抗体捕捉剤の使用目的および方法からみて、表面積が大きことが望ましく、適当な大きさの細孔を多数有する、すなわち、多孔質であることが好ましい。
担体の形態としては、ビーズ状、線維状、膜状(中空糸も含む)など何れも可能であり、任意の形態を選ぶことができる。特定の排除限界分子量を持つ担体作製の容易さからビーズ状が特に好ましく用いられる。ビーズ状の平均粒径は10〜2500μmのものが使いやすく、とりわけ、リガンド固定化反応のしやすさの点から25μmから800μmの範囲が好ましい。
さらに担体表面には、リガンドの固定化反応に用いうる官能基が存在しているとリガンドの固定化に好都合である。これらの官能基の代表例としては、水酸基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、チオール基、シラノール基、アミド基、エポキシ基、サクシニルイミド基、酸無水物基、ヨードアセチル基などが挙げられる。
上記担体への変異体タンパク質の固定化においては、変異体タンパク質の立体障害を小さくすることにより捕捉効率を向上させ、さらに非特異的な結合を抑えるために、親水性スペーサーを介して固定化することが、より好ましい。親水性スペーサーとしては、例えば、両末端をカルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基などで置換したポリアルキレンオキサイドの誘導体を用いるのが好ましい。
本発明の捕捉剤においては、上記細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体から成るタンパク質が主にアミノ基を介して水不溶性の固相支持体に固定化されていることを特徴とする。ここで、「タンパク質が主にアミノ基を介して水不溶性の固相支持体に固定化されている」とは、上記タンパク質(リガンド)に含まれるアミノ基が主に固相支持体上の反応基との結合に主に関わっているということを意味する。従って、該タンパク質を構成するポリペプチドに含まれる遊離アミノ酸残基の中で実質的に-NH2基のみが固相支持体上の反応基と結合している場合の他に、該タンパク質を構成するポリペプチドに含まれる遊離の-NH2基及び-SH基等の複数の種類のアミノ酸残基が固相支持体上の反応基と結合しているが、このように結合していアミノ酸残基の中では-NH2基の量が最も高い場合(主に、-NH2基が固相支持体上の反応基との結合に関与している場合)も含まれる。従って、例えば、エポキシ結合方法によって固定化した場合(pH7-8程度の場合)のように、遊離の-NH2基及び-SH基等の複数の種類のアミノ酸残基が固相支持体上の反応基と結合しているが、結合している-SH基の量が-NH2基の量よりも多い場合は含まれない。
上記の担体(固相支持体)へ導入される変異体タンパク質およびスペーサーとして用いられる有機化合物の固定化方法及び条件は特に限定されるものではなく、一般にタンパク質やペプチドを担体に固定化する場合に採用される当業者に公知の任意の方法で実施することが出来る。
例えば、本願明細書の実施例に記載の方法に示されるように、担体を臭化シアン(CNBr)、N,N’-ジスクシンイミジル炭酸エステル(DSC)、エポキシド及び活性化カルボン酸(NHSエステル)などで活性化し(担体が元々持っている官能基よりリガンドとして固定化する化合物が反応しやすい官能基に変え)、リガンドとして固定化する化合物と反応、固定化する方法、また、担体とリガンドとして固定化する化合物が存在する系にカルボジイミドのような縮合試薬、または、グルタルアルデヒドのように分子中に複数の官能基を持つ試薬を加えて縮合、架橋することによる固定化方法が挙げられるが、捕捉剤の滅菌時または利用時に蛋白類が担体より容易に脱離しない固定化方法を適用することがより好ましい。
このようにして得られる本発明の捕捉剤は、主に-SH基を介して水不溶性の固相支持体に固定化されている捕捉剤に比べて、より大きな静的抗体吸着容量(SBC:Static Binding Capacity)を有する。
即ち、本発明の捕捉剤は、好ましくは40(mg-ヒトIgG/ml-gel)以上、より好ましくは、44(mg-ヒトIgG/ml-gel)以上の静的抗体吸着容量を有することを特徴とし、抗体、免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対して、非常に優れた吸着特性を有する。
「静的抗体吸着容量」は固定化タンパク質(リガンド)である捕捉剤(カラム充填剤)自体の最大抗体結合容量であり、流速等に影響されることのない値である。本発明において捕捉剤(固定化リガンド)の静的抗体吸着容量は、これを以下の条件で測定することにより得られる。
即ち、捕捉剤(結合リガンドを水不溶性の固相支持体に固定化したもの)の25%PBS懸濁液を調製した溶液400μLを円錐プラスチック容器に採取する。次いで1mg/mlの濃度に調製したヒト血清由来γ-globulin(和光純薬)PBS溶液14mlを加え、25℃、3時間ロータリーミキサーで攪拌する。上澄みのγ-globulin濃度を280nmの吸光度を測定し、物質収支を用いてSBCを測定する。
連鎖球菌由来のタンパク質であるプロテインGは、抗体の一種である免疫グロブリンGのFc領域に対する特異的結合活性を有することが知られており(参照文献1)、この抗体結合性を利用した抗体の精製や除去、および抗体を利用した診断、治療、検査等に有用なタンパク質である。プロテインGは、複数のドメインからなるマルチドメイン型膜タンパク質で、免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性(以下。「抗体結合活性」と呼ぶ)を示すのは、このうちの一部の細胞膜外ドメインである(参照文献2)。たとえば、図1、図3、および[配列番号30]に示すG148株由来のプロテインGの場合、抗体結合活性を示すのは、B1、B2、B3の3つのドメインである(文献によってC1、C2、C3ドメインとも表記される)。また、GX7805株のプロテインGでは3つの抗体結合ドメインが、GX7809のプロテインGでは2つの抗体結合ドメインが存在する。これらは、いずれも60アミノ酸弱の小型タンパク質で、そのアミノ酸配列の間には高い同一性が見られる(図2)。また、プロテインGを切断して各々のドメイン単独を単離しても、抗体結合活性は保たれることが知られている(参照文献3)。
本発明の捕捉剤は、このような免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメインの変異体のタンデム型多量体から成る(含む)タンパク質が水不溶性の固相支持体に固定化されている。多量体は上記野生型に準じて、適宜、例えば、二量体又は三量体とすることが出来る。更に、本発明のタンパク質に含まれる多量体を構成する夫々の細胞膜外ドメイン変異体は互いに異なるか、又は、互いに同一である。
更に、各細胞膜外ドメイン変異体がリンカー配列によって連結されていても良い。このようなリンカー配は、各変異体のアミノ酸配列等を考慮して、当業者が適宜設計し調製することが出来る。
又、本発明のタンパク質は、任意の他タンパク質のアミノ酸配列をN末端側もしくはC末端側に連結した融合型アミノ酸配列からなる融合タンパク質としても良い。たとえば、[アミノ酸配列(a)]−リンカー配列E−タンパク質A、あるいは、タンパク質B−リンカー配列F−[アミノ酸配列(a)]−リンカー配列G−タンパク質C−リンカー配列H−[アミノ酸配列(c)] としても良い。このような融合タンパク質に使用する他のアミノ酸配列としては、例えば、図4または[配列番号31]で示すoxaloacetate decarboxylase alpha-subunit c-terminal domain(OXADac)のアミノ酸配列が挙げられる。この場合のOXADac−プロテインG変異体融合タンパク質は、OXADac領域に由来するアビジン結合活性とプロテインG変異体領域に由来する抗体結合活性の複数の機能を単一分子で担うことが、後記実施例で示すように可能である。
例えば、本発明のタンパク質をHisタグ付きあるいは他のタンパク質との融合タンパク質の形態で合成する場合、合成した後にタグと変異体タンパク質の間を、あるいは他のタンパク質と本発明のタンパク質の間を配列特異的タンパク分解酵素で分解しても、本発明のタンパク質のN末端側もしくはC末端側に1乃至数個のアミノ酸残基が残る場合もあり、また、大腸菌等を用いて本発明のタンパク質を生産する際には、N末端側に開始コドン由来のメチオニン等が付加されることがあるが、これらのアミノ酸残基の付加により、以下の示すような本発明のタンパク質の活性は変わらない。また、これらのアミノ酸残基の付加により、設計された変異が及ぼす効果を失うこともない。したがって、本発明のタンパク質は当然これらの変異も含む。なお、このようなアミノ酸残基の付加のない本発明のタンパク質を作成するためには、たとえば、大腸菌等を用いて生産したタンパク質を、さらにメチオニルアミノペプチダーゼ等の酵素を用いて、N末のアミノ酸残基を選択的に切断し(参照文献7)、反応混合物よりクロマトグラフィー等で分離精製することで、得ることができる。
本発明のタンパク質に含まれるタンデム型多量体を構成する変異体の元になる、免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメインの好適例としては、ストレプトコッカス属連鎖球菌のプロテインGのB1、B2、又はB3のいずれかを挙げることが出来る。
本発明のタンパク質は、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・Bドメインのタンデム型多量体から成るタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンG(IgG1及びIgG3)のFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が有意に低下している、という優れた特性を有する。
本発明のタンパク質に含まれるタンデム型多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体の好ましい態様として、以下に変異体タンパク質を列記する。
A.本発明の変異体タンパク質の第1の態様は以下の(1)、(2)で示される。
(1)配列番号1または2で示されるアミノ酸配列からなる野生型プロテインG・B1あるいは同B2ドメインタンパク質における、Asp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asn35、Asp36、Gly38、Asp40、Glu42、Thr44のうちのいずれか1個以上のアミノ酸残基を変異対象部位として他のアミノ酸残基に置換した変異体タンパク質であって、該変異対象部位の各アミノ酸残基が、以下(i)〜(iii)のいずれかに示されるアミノ酸残基に置換されたものであることを特徴とする、免疫グロブリンGのFc領域に結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B1あるいはB2ドメインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFc領域に対する弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(i)変異対象部位のアミノ酸残基が非荷電性アミノ酸残基である場合における、荷電性アミノ酸残基への置換
(ii)変異対象部位のアミノ酸残基が荷電性アミノ酸残基である場合における、反対の電荷を示す荷電性アミノ酸残基への置換
(iii)変異対象部位のアミノ酸残基のヒスチジン残基への置換。
(2)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質における、Asp22、Thr25、Lys28、Lys31、Gln32、Asn35、Asp36、Gly38、Asp40、Thr44のうちのいずれか1個以上のアミノ酸残基を変異対象部位として他のアミノ酸残基に置換した変異体タンパク質であって、該変異対象部位の各アミノ酸残基が、以下(i)〜(iii)のいずれかに示されるアミノ酸残基に置換されたものであることを特徴とする、免疫グロブリンGのFc領域に結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFc領域に対する弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(i)変異対象部位のアミノ酸残基が非荷電性アミノ酸残基である場合における、荷電性アミノ酸残基への置換
(ii)変異対象部位のアミノ酸残基が荷電性アミノ酸残基である場合における、反対の電荷を示す荷電性アミノ酸残基への置換
(iii)変異対象部位のアミノ酸残基のヒスチジン残基への置換。

上記(1)および(2)の変異体タンパク質は以下のように選定された変異対象部位及び該部位を置換するアミノ酸残基に基づき設計され、遺伝子工学的手法により得られる。
〔Fcとの結合表面解析にもとづく変異対象部位の選定と置換するアミノ酸残基の特定〕
本発明の変異体タンパク質のアミノ酸配列を設計するための変異を導入する部位は、プロテインG・B2ドメインと免疫グログリンGのFc領域が結合した複合体の立体構造原子座標データ(参照文献4)を用いて選定したものである。弱酸性域におけるプロテインGの細胞膜外ドメインの抗体結合性を低下させるには、Fc領域との結合に直接関与しているプロテインGの細胞膜外ドメインの結合表面のアミノ酸残基およびその周辺のアミノ酸残基を野生型から非野生型に置換すればよい。したがって、まず、プロテインG・B2ドメインと免疫グログリンGのFc領域が結合した複合体において、Fc領域から一定の距離の範囲内に存在するプロテインG・B2ドメインのアミノ酸残基を特定し、これを変異対象部位の候補とする。ついで、アミノ酸置換に伴うプロテインGの細胞膜外ドメインの構造不安定化を最小限にするために、上記の候補のうち、プロテインG・B2ドメインの分子表面に露出しているアミノ酸残基のみを変異対象部位と決定した。
したがって、具体的には、後記実施例に示されるように、上記の距離範囲を6.5オングストローム以内と設定し、かつ露出表面積比を40%以上することで、プロテインG・B2ドメインの野生型アミノ酸配列(配列番号2)のうちの、Asp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asn35、Asp36、Gly38、Asp40、Glu42、Thr44の13個が変異対象部位として選定された。
また、上記したように、プロテインGの各細胞膜外ドメインは配列同一性が極めて高く、B1、B2、B3ドメインの立体構造の差異もほとんどがないことから、B2ドメイン−Fc複合体の立体構造についての知見は、B1及びB3ドメイン−Fc複合体にも適用できる。したがって、B2ドメイン−Fc複合体の立体構造から導いた13個が変異対象部位は、相当する位置に同じ種類のアミノ酸がある限りにおいて、B2ドメインのみならず、B1およびB2ドメインにおいても変異対象部位として選定することができる。即ち、プロテインG・B1ドメインの野生型アミノ酸配列(配列番号1)のうちの、Asp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asn35、Asp36、Gly38、Asp40、Glu42、Thr44の13個が、また、プロテインG・B3ドメインの野生型アミノ酸配列(配列番号3)のうちの、Asp22、Thr25、Lys28、Lys31、Gln32、Asn35、Asp36、Gly38、Asp40、Thr44の10個が変異対象部位として選定された。
一方、該変異対象部位の元のアミノ酸残基を置換するアミノ酸残基は、以下の(i)〜iii)のいずれかを特定した。
(i)変異対象部位の野生型のアミノ酸残基が非荷電性の側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Asn、Gln、Phe、Tyr、Trp、Met、Cys、Pro)の場合は、荷電性の側鎖を有するアミノ酸(Asp、Glu、Lys、Arg、His)に置換する。荷電性アミノ酸は、pHに依存して化学的状態が大きく変化するので、プロテインG・B2ドメインの抗体結合性を中性域と弱酸性域で変化させることができる。
(ii)変異対象部位の野生型のアミノ酸残基が荷電性アミノ酸の場合は、反対の電荷を示す荷電性アミノ酸に置換する。上記と同様に、荷電性アミノ酸は、pHに依存して化学的状態が大きく変化するので、プロテインG・B2ドメインの抗体結合性を中性域と弱酸性域で変化させることができる。
(iii)変異対象部位の野生型のアミノ酸残基がヒスチジン以外の場合は、ヒスチジンに置換する。ヒスチジンは、中性域と弱酸性域で化学的状態が大きく変化するので、プロテインG・B2ドメインの抗体結合性を中性域と弱酸性域で変化させることができる。
具体的には、後記実施例に示されるように、置換位置のアミノ酸残基として、Asp22についてはLys、Arg、またはHisが、Ala24(B1,B2ドメインのみ)、についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Thr25についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys28についてはAsp、Glu、またはHisが、Val29(B1,B2ドメインのみ)についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys31についてはAsp、Glu、またはHisが、Gln32についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asn35についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asp36についてはLys、Arg、またはHisが、Gly38についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asp40についてはLys、Arg、またはHisが、Glu42(B1,B2ドメインのみ)についてはLys、Arg、またはHisが、Thr44についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが特定された。ただし、これらのアミノ酸残基の特定によるアミノ酸配列が、Asn35がLys及び/又は,Asp36がGluに置換されたものであって、該置換箇所以外のアミノ酸配列が野生型プロテインGの各細胞膜ドメインのアミノ酸配列と同じになる場合は除かれる。これにより、後記する本発明者の出願に係るプロテインG細胞膜ドメインの安定性を向上させた変異体タンパク質とは区別される。
B.本発明の変異体タンパク質の第2の態様は以下の(3)で示される。
(3)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなる野生型プロテインG・B1、B2あるいはB3ドメインタンパク質における、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17、Asn35、Asp36、Gly38のうちのいずれか1個以上のアミノ酸残基を変異対象部位として、システインを除く他の種類のアミノ酸残基に置換したものであることを特徴とする、免疫グロブリンGのFc領域に結合活性を有し、かつ各対応する野生型プロテインG・B1、B2あるいはB3ドメインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合性が低下した変異体タンパク質。上記(3)の変異体タンパク質は以下のように選定された変異対象部位及び該部位を置換するアミノ酸残基に基づき設計され、遺伝子工学的手法により得られる。
〔Fabとの結合表面解析にもとづく変異対象部位の選定と置換するアミノ酸残基の特定〕
本発明の変異体タンパク質のアミノ酸配列を設計するための変異を導入する部位は、プロテインG・B3ドメインと免疫グログリンGのFab領域が結合した複合体の立体構造原子座標データ(参照文献5)を用いて選定したものである。プロテインGの細胞膜外ドメインは、免疫グログリンGのFc領域に対しても、Fab領域に対しても結合することが知られている(参照文献2)。したがって、1つの抗体分子は、同時に複数のプロテインGの細胞膜外ドメインと結合することが可能で、このような状態になると抗体とプロテインGの細胞膜外ドメインとの相互作用は多価となり容易に切断することができなくなる。よって、弱酸性域におけるプロテインGの細胞膜外ドメインの抗体結合性を低下させるには、Fab領域との結合に直接関与しているプロテインGの細胞膜外ドメインの結合表面のアミノ酸残基を野生型から非野生型に置換すればよい。したがって、まず、プロテインG・B3ドメインと免疫グログリンGのFab領域が結合した複合体において、Fab領域から一定の距離の範囲内に存在するプロテインG・各細胞膜B3ドメインのアミノ酸残基を特定し、これを変異対象部位の候補とした。ついで、アミノ酸置換に伴うプロテインGの細胞膜外ドメインの構造不安定化を最小限にするために、上記の候補のうち、プロテインG・B3ドメインの分子表面に露出しているアミノ酸残基のみを変異対象部位と決定した。
具体的には、後記実施例に示されるように、上記の距離範囲を4.0オングストローム以内と設定し、かつ露出表面積比を40%以上することで、[配列番号3]で示されるプロテインG・B3ドメインの野生型アミノ酸配列のうちの、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17、Asn35、Asp36、Gly38の10個が変異対象部位として選定された。また、上記したように、プロテインGの各細胞膜外ドメインは前記したように同一性が極めて高く、これらの変異対象部位は、B1、B2、B3のどのドメインにおいても共通に存在する。よって、これらはB3ドメインのみならず、B1およびB2ドメインにおいても変異対象部位として選定することができる。
一方、該変異対象部位の元のアミノ酸残基を置換するアミノ酸残基は、以下の方法で特定することができる。(iV)野生型のアミノ酸とシステイン以外の他の種類のアミノ酸残基に置換する。これにより、システインの導入に伴う架橋反応の危険性をなくしたうえで、野生型のアミノ酸の変異によるFab領域との結合性の低下を導くことができる。
具体的には、後記実施例に示されるように、野生型プロテインG各細胞外ドメインタンパク質を置換するアミノ酸残基として、Lys10についてはLysとCys以外が、Thr11についてはThrとCys以外が、Lys13についてはLysとCys以外が、Gly14についてはGlyとCys以外が、Glu15についてはGluとCys以外が、Thr16についてはThrとCys以外が、Thr17についてはThrとCys以外が、Asn35についてはAsnとCys以外が、Asp36についてはAspとCys以外が、Gly38についてはGlyとCys以外が特定された。ただし、これらのアミノ酸残基の選定によるアミノ酸配列が、Asn35がLys及び/又はAsp36がGluに置換されたものであって、該置換箇所以外のアミノ酸配列が野生型プロテインGの各細胞膜ドメインのアミノ酸配列と同じになる場合は除かれる。これにより、後記する本発明者の出願に係るプロテインG細胞膜ドメインの安定性を向上させた変異体タンパク質とは区別される。
C.本発明の変異体タンパク質の第3の態様は、上記免疫グロブリンFc領域に対する結合性を改良するためのアミノ酸残基の置換とFab領域への結合性を改良するためのアミノ酸残基の置換を共有するものである。
〔FcおよびFabとの結合表面解析にもとづく変異対象部位の選定と置換するアミノ酸残基の特定〕
上記Fcとの結合表面解析にもとづいて特定した変異対象部位と置換するアミノ酸残基と、上記Fabとの結合表面解析にもとづいて特定した変異対象部位と置換するアミノ酸残基と組み合わせて、変異対象部位の選定と置換するアミノ酸残基の特定を行う。具体的には、変異対象部位として、プロテインG・B1、B2ドメインの野生型アミノ酸配列(配列番号1,2)のうちの、Asp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asp40、Glu42、Thr44、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17、Asn35、Asp36、Gly38の20個が変異対象部位として選定される。このうちAsp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asp40、Glu42 、Thr44はFc領域に対する結合性を改良するためのターゲット部位であり、また、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17は、Fab領域に対する結合性を改良するためのターゲット部位である。ここで、Asn35、Asp36、Gly38は、Fc領域に対する結合性の改良部位であるとともにFab領域に対する結合性の改良部位でもある。したがって、Asn35、Asp36、Gly38に対するFc領域に対する結合性の改良のための上記Aに示すアミノ酸残基に置換は、同時にFab領域に対する結合性の改良のための、システイン残基を除く他のアミノ酸残基への置換でもある。
すなわち、本明細書にいうアミノ酸残基置換の「共有」とは、Fc領域に対する結合性の改良のための変異対象部位とFab領域に対する結合性の改良のための変異対象部位とが異なるように選定した場合において、アミノ酸残基の置換を組み合わせる場合の他に、これら両者の結合性の改良のための変異対象部位として同一の部位を選定し、上記Aに示すアミノ酸残基の置換を行う場合をも意味するものと定義される。
置換するアミノ酸残基として、Asp22についてはLys、Arg、またはHisが、Ala24についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Thr25についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys28についてはAsp、Glu、またはHisが、Val29についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys31についてはAsp、Glu、またはHisが、Gln32についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asp40についてはLys、Arg、またはHisが、Glu42についてはLys、Arg、またはHisが、Thr44についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys10についてはLysとCys以外が、Thr11についてはThrとCys以外が、Lys13についてはLysとCys以外が、Gly14についてはGlyとCys以外が、Glu15についてはGluとCys以外が、Thr16についてはThrとCys以外が、Thr17についてはThrとCys以外が、Asn35についてはAsnとCys以外が、Asp36についてはAspとCys以外が、Gly38についてはGlyとCys以外が選定される。
一方、プロテインG・B3ドメインについては、野生型アミノ酸配列(配列番号3)のうちの、Asp22、Thr25、Lys28、Lys31、Gln32、Asp40、Thr44、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17、Asn35、Asp36、Gly38の17個が変異対象部位として選定される。このうちAsp22、Thr25、Lys28、Lys31、Gln32、Asp40、Thr44はFc領域に対する結合性を改良するための変異対象部位であり、また、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17は、Fab領域に対する結合性を改良するための変異対象部位である。これにおいてもAsn35、Asp36、Gly38は、Fc領域に対する結合性の改良部位であるとともにFab領域に対する結合性の改良部位でもある点で共通しており、Asn35、Asp36、Gly38に対するFc領域に対する結合性の改良のための上記Aに示すアミノ酸残基に置換は、同時にFab領域に対する結合性の改良のためのシステイン残基を除く他のアミノ酸残基への置換でもあることは、上記プロテインG・B1あるいはB2ドメインと同様である。
ただし、上記アミノ酸残基の選定に基づき設定されるアミノ酸配列が、Asn35がLys及び/又は,Asp36がGluに置換されたものであって、該置換箇所以外のアミノ酸配列が野生型プロテインGの各細胞膜ドメインのアミノ酸配列と同じになる場合は除かれる。これにより、後記する本発明者の出願に係るプロテインG細胞膜ドメインの安定性を向上させた変異体タンパク質とは区別される。
本発明の変異体タンパク質の具体例を挙げれば、以下a)〜c)に示される。
a)野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(a)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(a)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質。
(a)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGluを、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36がAsp又はGlu、X37がAsnまたはLeu、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
b)野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(b)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(b)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質。
(b)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGluを、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36がAsp又はGlu、X37がAsnまたはLeu、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
c)野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(c)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(c)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質。
(c)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyValTrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGlu、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36がAsp又はGlu、X37がAsnまたはLeu、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
なお、上記(a)〜(c)のアミノ酸残基の定義中、ただし書きは、野生型プロテインGの各細胞膜ドメインタンパク質及び後記する本発明者の出願に係るプロテインG細胞膜ドメインの安定性を向上させた変異体タンパク質と区別するためのものである。
さらに具体的な本発明の変異体タンパク質は、以下のd)〜i)に示される。
d)野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(d)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(d)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B1メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(d)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
e)野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(e)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(e)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B2メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(e)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
f)野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(f)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(f)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(f)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyValTrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
g)野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(g)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(g)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(g)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAspであって、かつX42がGluになる場合を除く。)
h)野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の各変異体タンパク質であって、以下の(h)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(h)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(h)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAspであって、かつX42がGluになる場合を除く。)
i)野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の各変異体タンパク質であって、以下の(i)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(i)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(i)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyValTrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGlnであって、かつX40がAspになる場合を除く。)なお、上記(d)〜(i)のアミノ酸残基の定義中、ただし書きは、野生型プロテインGの各細胞膜ドメインタンパク質を区別するためのものである。
上記から明らかなように、本発明の変異体タンパク質の設計において、選定される変異対象部位及び該部位を置換するアミノ酸残基は、各一つに限られるものではないので、変異対象部位及び該部位を置換するアミノ酸残基の中から適宜選択して、変異体タンパク質のアミノ酸配列を設計することができる。たとえば、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合性の改良のため、変異対象部位として、野生型プロテインG・B1あるいはB2ドメインのアミノ酸配列中のAsp22、Thr25、Gln32、Asp40、およびGlu42を選択し、これに対応する置換するアミノ酸残基として、Asp22His、Thr25His、Gln32His、Asp40His、およびGlu42Hisを選択し、いずれか1のアミノ酸置換あるいはこれらアミノ酸置換を組み合わせた最大5変異箇所/5置換までの点変異あるいは多重変異をプロテインG・B1あるいはB2ドメインの野生型アミノ酸配列(配列番号1、2)に対して行うことで、複数の変異体タンパク質のアミノ酸配列を設計することができる。上記した、(g)、(h)のアミノ酸配列は、このような最大5変異箇所/5置換までの点変異及び多重変異を示したものであり、本発明の変異体タンパク質の一例である。
また、上記免疫グロブリンGのFc領域に対する結合性の改良に加え、さらにFab領域に対する結合性の改良をも加えた変異体タンパク質の例として、例えば、野生型プロテインG・B1あるいはB2ドメインのThr11およびThr17を選択し、これに対応する置換するアミノ酸残基として、Thr11ArgおよびThr17Ileを選択し、これらを上記最大5変異箇所/5置換までの変異に加えて導入した最大7変異箇所/7置換の変異をプロテインG・B1あるいはB2ドメインの野生型アミノ酸配列に対して行った変異体タンパクを挙げることができる。上記した(d)及び(e)のアミノ酸配列は、このような最大7変異箇所/7置換までの点変異あるいは多重変異の例を示したものであり、これらアミノ酸配列のうち、Thr11Arg及び/またはThr17Ileの変異を有し、かつ上記Asp22His、Thr25His、Gln32His、Asp40His、およびGlu42Hisで示される変異のうちいずれか一以上の変異を有するものは、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合性の改良に加え、さらにFab領域に対する結合性も改良されたものとなる。
一方、上記(i)のアミノ酸配列は、野生型プロテインG・B3の変異体タンパク質のアミノ酸配列の例ではあるが、上記Fc領域に対する結合性改良のための変異であるAsp22His、Thr25His、Gln32His、Asp40Hisのうちいずれか1以上、最大4変異箇所/4置換までの変異となっている他は(g)、(h)のアミノ酸配列と同様に設計されたものである。また、上記(f)のアミノ酸配列は、野生型プロテインG・B3の変異体タンパク質のアミノ酸配列の例ではあるが、上記Fc領域に対する結合性改良のための変異であるAsp22His、Thr25His、Gln32His、Asp40His、上記Fab領域に対する結合性の改良のための変異であるThr11Arg、Thr17Ileのうちいずれか1以上、最大6変異箇所/6置換までの変異となっている他は(d)、(e)のアミノ酸配列と同様に設計されたものである。
本発明においては、このような変異に加えて、さらに、プロテインGの細胞膜外ドメインの性質を好ましいものに変化させることが既に知られている変異をさらに加えることができる。例えば、プロテインGの細胞膜外ドメインの熱安定性、変性剤に対する化学的安定性、および分解酵素に対する耐性を向上させる変異手法が、本発明者らの従前の研究により明らかにされている(特許文献6)。すなわち、Asn35Lys、Asp36Glu、Asn37His、Asn37Leu、Asp47Pro、Ala48Lys、およびAla48Gluのうち一以上の変異の導入は、プロテインG・B1、B2あるいはB3ドメインの上記安定性を向上させる。これらの変異は、本発明における免疫グロブリンGのFc領域に対する結合特性及び/又はFab領域に対する結合特性の改良のための上記変異と組み合わせることにより、本発明の変異体タンパク質はより有用なものとなる。
例えば、これらの変異を上記したような最大7変異箇所/7置換に加えて導入した最大12変異箇所/14置換までの多重変異をプロテインG・B1あるいはB2ドメインの野生型アミノ酸配列(配列番号1,2)に対して行うことで、さらに安定化された、複数の変異体タンパク質のアミノ酸配列を設計することができる。
上記した、(a)、(b)のアミノ酸配列は、このような最大12変異箇所/14置換の点変異及び多重変異を示したものであるが、野生型の配列に加え安定化のためだけの変異は除かれている。
これらの(a)、(b)のアミノ酸配列中、Asn35Lys、Asp36Glu、Asn37His、Asn37Leu、Asp47Pro、Ala48Lys及び Ala48Gluのうち、いずれか一以上の変異の導入は、上記の最大7変異箇所/7置換の効果である免疫グロブリンGのFab領域に対する結合特性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合特性の改良に加え、プロテインG・B1あるいはB2ドメイン変異体タンパク質の安定性を向上させる。
一方、上記(c)は、野生型プロテインG・B3の変異体タンパク質のアミノ酸配列の例を示し、最大11変異箇所/13置換の点変異及び多重置換を示しているが、上記Fc領域に対する結合性改良のための変異のための、Asp22His、Thr25His、Gln32His、Asp40Hisのうちいずれか1以上、最大4変異箇所/4置換までの変異となっている他は(a)、(b)のアミノ酸配列と同様に設計されたものである。したがって、(c)のアミノ酸配列中、Asn35Lys、Asp36Glu、Asn37His、Asn37Leu、Asp47Pro、Ala48Lys及び Ala48Gluのうち、いずれか一以上の変異の導入は、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合特性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合特性の改良に加え、同様にプロテインG・B3ドメイン変異体タンパク質の安定性を向上させる。
本発明における変異対象部位は、上記したようにプロテインGのB2ドメイン−Fc複合体及び同B3ドメイン−Fab複合体の各立体構造原子座標データを用いて選定されたものであるが、B1ドメインは、アミノ酸配列のみならず(図2)、立体構造においてもB2、ドメインと差異はほとんどないから、上記選定された変異の効果は、それぞれのドメインに等しく有効である。また、B3ドメインは、アミノ酸配列のみならず(図2)、立体構造においてもB2ドメインと差異はほとんどないから、B2ドメインにおける上記選定された変異の効果は、各々のドメインに等しく有効である。
例えば、上記選定された12変異箇所の野生型アミノ酸残基は、上記B2ドメインと上記B1ドメインの間ですべて共通である。したがって、上記選定された5変異箇所/5置換、あるいは7変異箇所/7置換、あるいは12変異箇所/14置換を組み合わせた点変異および多重変異は、B2ドメインと同一性の高いB1アミノ酸配列に対して導入して、B1ドメインの変異体タンパク質のアミノ酸配列とすることができる。また、上記選定された12変異箇所の野生型アミノ酸は、42位を除けば上記B2ドメインと上記B3ドメインの間ですべて共通である(42位の野生型アミノ酸残基は、B2ドメインではGlu42、B3ドメインではVal42)。したがって、上記選定された5変異箇所/5置換、あるいは7変異箇所/7置換、あるいは12変異箇所/14置換から、42位の変異箇所のみを除いた4変異箇所/4置換、あるいは6変異箇所/6置換、あるいは11変異箇所/13置換を組み合わせた点変異および多重変異は、B2ドメインと同一性の高いB3ドメインのアミノ酸配列に対して導入して、B3ドメインの変異体タンパク質のアミノ酸配列とすることができる。このことは、後記実施例に示されるように、プロテインGのB2ドメイン−Fc複合体及び同B3ドメイン−Fab複合体の各立体構造原子座標データを用いて選定されたB1ドメインの変異体タンパク質が、意図どおりの性能を有していることからも明らかである。
以上、本発明の変異体タンパク質のアミノ酸配列は、一つに限定されず、複数存在するが、これらのうち、好ましい配列を具体的に示すと、例えば、[配列番号13]、[配列番号14]、[配列番号15]、[配列番号16]、[配列番号17]、[配列番号18]、[配列番号19]、または[配列番号20]で表されるアミノ酸配列が挙げられる。
[配列番号13]で示される変異体タンパク質は、[配列番号1]で示されるプロテインG・B1ドメインの野生型アミノ酸配列に対して、プロテインGの細胞膜外ドメインの熱安定性、変性剤に対する化学的安定性、および分解酵素に対する耐性を向上させることが発明者らの従前の研究により明らかにされている部位に変異を導入したものであり、[配列番号14]、[配列番号15]、[配列番号19]、および[配列番号20]で示される変異体タンパク質は、さら加えて、Fcとの結合表面解析にもとづき選定した部位に変異を導入したものである。
一方、[配列番号16]、[配列番号17]、および[配列番号18]で示される変異体タンパク質は、[配列番号1]で示されるプロテインG・B1ドメインの野生型アミノ酸配列に対して、プロテインGの細胞膜外ドメインの熱安定性、変性剤に対する化学的安定性、および分解酵素に対する耐性を向上させることが発明者らの従前の研究により明らかにされている部位と、Fabとの結合表面解析にもとづき選定した部位とに変異を導入したものである。
本発明の変異体タンパク質は、抗体あるいは免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に結合活性を有し、野生型のプロテインGの各細胞膜外ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下する限り、上記本発明の変異体タンパク質のいずれかで示されるアミノ酸配列において、一個もしくは数個(例えば、2個〜5個)のアミノ酸残基に欠失、置換、挿入、付加などの変異が生じても良く、従って、それらは基準となる各アミノ酸配列に対して、配列同一性が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上である。
本発明のタンパク質の一例として、実施例に記載されている、タンデム型多量体を構成する3つの細胞膜外ドメイン変異体が配列番号19で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質を挙げることが出来る。
タンパク質の製造
(1)遺伝子工学的手法によるタンパク質の製造
a.変異体タンパク質をコードする遺伝子
本発明においては、上記設計されたタンパク質を製造するため、遺伝子工学的方法を使用することできる。
このような方法に使用する遺伝子は、上記A〜Cに示されるタンパク質、より具体的には、上記(a)〜(i)のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードするか、あるいは(a)〜(i)のいずれかで示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であって、かつ抗体あるいは免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に結合活性を有し、かつ中性域に比べて弱酸性域での結合活性が低下するタンパク質をコードする核酸からなるものであって、たとえば、より具体的には、[配列番号22]〜[配列番号29]で示されるいずれかの塩基配列からなる核酸である。
また、本発明において使用する遺伝子としては、以上の核酸の塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、かつ抗体あるいは免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に結合活性を有し、かつ対応する各野生型プロテインG・細胞膜外ドメインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質するタンパク質をコードする核酸もあげられる。ここで、ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。たとえば、例えば、高い同一性(同一性が60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは90%以上)を有する核酸がハイブリダイズする条件をいう。より具体的には、ナトリウム濃度が150〜900mM、好ましくは600〜900mMであり、温度が60〜68℃、好ましくは65℃での条件をいう。例えばハイブリダイゼーション条件が65℃であり、洗浄の条件が0.1%SDSを含む0.1×SSC中で65℃、10分の場合に、慣例的な手法、例えばサザンブロット、ドットブロットハイブリダイゼーションなどによってハイブリダイズすることが確認された場合には、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするといえる。
本発明のタンパク質をコードする遺伝子としては、本発明のタンパク質の所望の構造に応じて、以上の核酸と上記任意のリンカー配列をコードする核酸を含む。タンデム型多量体を構成する各変異体タンパク質をコードする核酸とリンカー配列をコードする核酸がそれぞれ交互に複数連結したものでもよく、または該核酸と任意のタンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸とを連結し、融合型アミノ酸配列をコードするように設計してもよい。
b.遺伝子、組み替えベクターおよび形質転換体
前記した本発明の遺伝子は、化学合成、PCR、カセット変異法、部位特異的変異導入法などにより合成することができる。たとえば、末端に20塩基対程度の相補領域を有する100塩基程度までのオリゴヌクレオチドを複数化学合成し、これらを組み合わせてオーバーラップ伸長法(参照文献8)を行うことにより目的の遺伝子を全合成することができる。
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに上記の塩基配列を含む遺伝子を連結(挿入)することにより得ることができる。本発明で使用するベクターとしては、宿主中で複製可能なもの又は目的の遺伝子を宿主ゲノムに組み込み可能なものであれば特に限定されない。例えば、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどが挙げられる。
プラスミドDNAとしては、放線菌由来のプラスミド(例えばpK4,pRK401,pRF31等)、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322,pBR325,pUC118,pUC119,pUC18等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110,pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13,YEp24,YCp50等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(λgt10、λgt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
ベクターに遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。遺伝子は、本発明の変異体タンパク質が発現されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明のベクターには、プロモーター、遺伝子の塩基配列のほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)、開始コドン、終止コドンなどを連結することができる。 また、製造するタンパク質の精製を容易にするためのタグ配列を連結することもできる。タグ配列としては、Hisタグ、GSTタグ、MBPタグ、BioEaseタグなどの公知のタグをコードする塩基配列を利用することができる。
遺伝子がベクターに挿入されたか否かの確認は、公知の遺伝子工学技術を利用して行うことができる。たとえば、プラスミドベクターなどの場合、コンピテントセルを用いてベクターをサブクローニングし、DNAを抽出後、DNAシーケンサーを用いてその塩基配列を特定することで確認できる。他のベクターについても細菌あるいは他の宿主を用いてサブクローニング可能なものは、同様の手法が利用できる。また、薬剤耐性遺伝子などの選択マーカーを利用したベクター選別も有効である。
形質転換体は、本発明の組換えベクターを、本発明の変異体タンパク質が発現し得るように宿主細胞に導入することにより得ることができる。形質転換に使用する宿主としては、タンパク質又はポリペプチドを発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、細菌(大腸菌、枯草菌等)、酵母、植物細胞、動物細胞(COS細胞、CHO細胞等)、昆虫細胞が挙げられる。
細菌を宿主とする場合は、組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、開始コドン、本発明の変異体タンパク質をコードする核酸、転写終結配列により構成されていることが好ましい。大腸菌としては、例えばエッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)BL21などが挙げられ、枯草菌としては、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などが挙げられる。細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばヒートショック法、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などが用いられる。酵母への組換えベクターの導入方法は、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞等が用いられる。動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞などが用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。
遺伝子が宿主に導入されたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等により行うことができる。例えば、形質転換体からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。ついで、PCRの増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SyberGreen液等により染色し、増幅産物を1本のバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。
c.形質転換体培養によるタンパク質の取得
組替えタンパク質として製造する場合、本発明のタンパク質は、上述の形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。培養物とは、培養上清、培養細胞若しくは培養菌体又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地は、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が挙げられる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、20〜37℃で12時間〜3日間行う。
培養後、本発明のタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、超音波処理、凍結融解の繰り返し、ホモジナイザー処理などを施して菌体又は細胞を破砕することにより該タンパク質を採取する。また、該タンパク質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から本発明のタンパク質を単離精製することができる。
また、タンパク質の生合成反応にかかわる因子(酵素、核酸、ATP、アミノ酸など)のみを混合させた、いわゆる無細胞合成系を利用すると、生細胞を用いることなく、ベクターから本発明の変異体タンパク質を試験管内で合成することができる(参照文献9)。その後、前記と同様の精製法を用いて、反応後の混合溶液から本発明の変異体タンパク質を単離精製することができる。
単離精製した本発明のタンパク質が、目的通りのアミノ酸配列からなるタンパク質であるかを確認するため、該タンパク質を含む試料を分析する。分析方法としては、SDS-PAGE、ウエスタンブロッティング、質量分析、アミノ酸分析、アミノ酸シーケンサーなどを利用することができる(参照文献10)。
(2)他の手法によるタンパク質の製造
本発明のタンパク質は、有機化学的手法、例えば固相ペプチド合成法などによっても製造することができる。このような手法を利用したタンパク質の生産方法は当技術分野で周知であり、以下に簡潔に説明する。
固相ペプチド合成法により化学的にタンパク質を製造する場合、好ましくは自動合成機を利用して、活性化されたアミノ酸誘導体の重縮合反応を繰り返すことにより、本発明のタンパク質のアミノ酸配列を有する保護ポリペプチドを樹脂上で合成する。ついで、この保護ポリペプチドを樹脂上から切断すると共に側鎖の保護基も同時に切断する。この切断反応には、樹脂や保護基の種類、アミノ酸の組成に応じて適切なカクテルがあることが知られている(参照文献11)。この後、有機溶媒層から粗精製タンパク質を水層に移し、目的のタンパク質を精製する。精製法としては、逆相クロマトグラフィーなどを利用することができる(参照文献11)。
タンパク質および抗体捕捉剤の性能確認試験
上記のようにして製造された変異体タンパク質及びタンパク質(以下、単に「タンパク質」ともいう)、及び抗体捕捉剤は、以下の性能確認試験を行い良好なものを選択することができるが、本発明のタンパク質および抗体捕捉材はいずれも良好な性能を有していた。
(1)抗体結合性試験
本発明のタンパク質の抗体結合性は、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、プルダウンアッセイ、ELISA (Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)、表面プラズモン共鳴(SPR)法などを利用して確認・評価することができる。中でもSPR法は、生体間の相互作用をラベルなしでリアルタイムに経時的に観察することが可能であることから、変異体タンパク質の結合反応を速度論的観点から定量的に評価することができる。
また、水不溶性の固相支持体に固定化した変異体タンパク質の抗体結合性は、上記のSPR法や液体クロマトグラフィー法で確認・評価することができる。中でも液体クロマトグラフィー法は、抗体結合性に及ぼすpH依存性を的確に評価することができる。
(2)タンパク質の熱安定性試験
本発明の変異体タンパク質の熱安定性は、円偏光二色性(CD)スペクトル、蛍光スペクトル、赤外分光法、示差走査熱量測定法、加熱後の残留活性などを利用して評価することができる。中でもCDスペクトルは、タンパク質の二次構造の変化を鋭敏に反映する分光学的分析方法であることから、変異体タンパク質の温度に対する立体構造の変化を観測し、構造安定性を熱力学的に定量的に評価することができる。
〔参照文献〕
参照文献1;Bjorck L, Kronvall G. (1984) Purification and some properties of streptococcal protein G, a novel IgG-binding reagent. J Immunol. 133, 69-74.
参照文献2;Boyle M. D.P., Ed. (1990) Bacterial Immunoglobulin Binding Proteins. Academic Press, Inc., San Diego, CA.
参照文献3;Gallagher T, Alexander P, Bryan P, Gilliland GL. (1994) Two crystal structures of the B1 immunoglobulin-binding domain of streptococcal protein G and comparison with NMR. Biochemistry 19, 4721-4729.
参照文献4;Sauer-Eriksson AE, Kleywegt GJ, Uhlen M, Jones TA. (1995) Crystal structure of the C2 fragment of streptococcal protein G in complex with the Fc domain of human IgG. Structure 3, 265-278.
参照文献5;Derrick JP, Wigley DB. (1994) The third IgG-binding domain from streptococcal protein G. An analysis by X-ray crystallography of the structure alone and in a complex with Fab. J Mol Biol. 243, 906-918.
参照文献6;Alexander P, Fahnestock S, Lee T, Orban J, Bryan P. (1992) Thermodynamic analysis of the folding of the streptococcal protein G IgG-binding domains B1 and B2: why small proteins tend to have high denaturation temperatures. Biochemistry 14, 3597-3603.
参照文献7;D'souza VM, Holz RC. (1999) The methionyl aminopeptidase from Escherichia coli can function as an iron(II) enzyme. Biochemistry 38, 11079-11085.
参照文献8;Horton R. M., Hunt H. D., Ho S. N., Pullen J. M. and Pease L. R. (1989). Engineering hybrid genes without the use of restriction enzymes: gene splicing by overlap extension. Gene 77, 61-68.
参照文献9;岡田雅人、宮崎香(2004)タンパク質実験ノート(上)、羊土社
参照文献10;大野茂男、西村善文監修(1997)タンパク質実験プロトコール1−機能解析編、秀潤社
参照文献11;大野茂男、西村善文監修(1997)タンパク質実験プロトコール2−構造解析編、秀潤社
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本明細書においては、各種アミノ酸残基を次の略号で記載する。Ala;L-アラニン残基、Arg;L-アルギニン残基、Asp;L-アスパラギン酸残基、Asn;L-アスパラギン残基、Cys;L-システイン残基、Gln;L-グルタミン残基、Glu;L-グルタミン酸残基、Gly;L-グリシン残基、His;L-ヒスチジン残基、Ile;L-イソロイシン残基、Leu;L-ロイシン残基、Lys;L-リジン残基、Met;L-メチオニン残基、Phe;L-フェニルアラニン残基、Pro;L-プロリン残基、Ser;L-セリン残基、Thr;L-スレオニン残基、Trp;L-トリプトファン残基、Tyr;L-チロシン残基、Val;L-バリン残基。また本明細書においては、ペプチドのアミノ酸配列を、そのアミノ末端(以下N末端という)が左側に位置し、カルボキシル末端(以下C末端という)が右側に位置するように、常法に従って記述する。
実施例1
本実施例においては、プロテインGのB1、B2、あるいはB3ドメインに変異を導入した本発明のもととなる変異体タンパク質(以降、「改良型プロテインG」と呼ぶ)のアミノ酸配列を設計するための変異を導入する部位を選定し、置換するアミノ酸残基を特定する。
1.Fcとの結合表面解析にもとづく変異対象部位の選定と置換するアミノ酸残基の特定
まず、プロテインG・B2ドメインとヒト免疫グロブリンG1のFc領域の複合体の立体構造座標データを、国際的なタンパク質立体構造データベースであるProtein Data Bank(PDB; http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do)よりダウンロードした(PDBコード:1FCC)。ついで、Fc領域から6.5オングストロームの距離の範囲内に存在するプロテインG・B2ドメインのアミノ酸残基であって、かつ、プロテインG・B2ドメイン単独の場合で40%以上の露出表面積比をもつアミノ酸残基を該立体構造座標データを用いて計算し、変異対象部位として選定した。選定した部位のアミノ酸残基は、[配列番号2]で示されるプロテインG・B2ドメインの野生型アミノ酸配列のうちの、Asp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asn35、Asp36、Gly38、Asp40、Glu42、Thr44の13個である。図5に、これらの変異対象部位の位置を表示する。これらの変異対象部位は、B1ドメインにおいても共通に存在する。よって、これらはB2ドメインのみならず、B1ドメインにおいても変異対象部位として選定することができる。即ち、[配列番号1]で示されるプロテインG・B1ドメインの野生型アミノ酸配列のうちの、Asp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asn35、Asp36、Gly38、Asp40、Glu42、Thr44の13個を変異対象部位として選定した。また、これらの変異対象部位の一部は、B3ドメインにおいても共通に存在する。よって、これらはB2ドメインのみならず、B3ドメインにおいても変異対象部位として選定することができる。即ち、[配列番号3]で示されるプロテインG・B3ドメインの野生型アミノ酸配列のうちの、Asp22、Thr25、Lys28、Lys31、Gln32、Asn35、Asp36、Gly38、Asp40、Thr44の10個を変異対象部位として選定した。
一方、選定した変異対象部位の元のアミノ酸残基を置換するアミノ酸残基は、(i)元のアミノ酸残基が非荷電性の側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Asn、Gln、Phe、Tyr、Trp、Met、Cys、Pro)の場合は、荷電性の側鎖を有するアミノ酸(Asp、Glu、Lys、Arg、His)に、(ii)元のアミノ酸残基が荷電性アミノ酸の場合は、反対の電荷を示す荷電性アミノ酸に特定した。あるいは、(iii)元のアミノ酸残基がヒスチジン以外の場合は、ヒスチジンに特定した。即ち、Asp22についてはLys、Arg、またはHisが、Ala24についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Thr25についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys28についてはAsp、Glu、またはHisが、Val29についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys31についてはAsp、Glu、またはHisが、Gln32についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asn35についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asp36についてはLys、Arg、またはHisが、Gly38についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asp40についてはLys、Arg、またはHisが、Glu42についてはLys、Arg、またはHisが、Thr44についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが置換するアミノ酸残基として特定された。
なお、本実施例の計算は、ccp4i 4.0 (Daresbury Laboratory, UK Science and Technology Facilities Council)、Surface Racer 3.0 for Linux(Dr. Oleg Tsodikov, The University of Michigan)、Red Hat Enterprise Linux WS release 3(レッドハット)(以上ソフトウエア)、Dell Precision Workstation370(デル)(以上ハードウエア)を用いて遂行した。
2.Fabとの結合表面解析にもとづく変異対象部位の選定と置換するアミノ酸残基の特定
まず、プロテインG・B3ドメインとマウス免疫グロブリンG1のFab領域の複合体の立体構造座標データを、国際的なタンパク質立体構造データベースであるProtein Data Bank(PDB; http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do)よりダウンロードした(PDBコード:1IGC)。ついで、Fab領域から4.0オングストロームの距離の範囲内に存在するプロテインG・B3ドメインのアミノ酸残基であって、かつ、プロテインG・B3ドメイン単独の場合で40%以上の露出表面積比をもつアミノ酸残基を該立体構造座標データを用いて計算し、変異対象部位として選定した。選定した部位のアミノ酸残基は、[配列番号3]で示されるプロテインG・B3ドメインの野生型アミノ酸配列のうちの、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17、Asn35、Asp36、Gly38の10個である。図6に、これらの変異対象部位の位置を表示する。これらの変異対象部位は、B1、B2、B3のどのドメインにおいても共通に存在する。よって、これらはB3ドメインのみならず、B1およびB2ドメインにおいても変異対象部位として選定することができる。即ち、[配列番号1]および[配列番号2]で示されるプロテインG・B1ドメインおよびB2ドメインの野生型アミノ酸配列のうちの、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17、Asn35、Asp36、Gly38の10個を変異対象部位として選定した。
一方、選定した変異対象部位の元のアミノ酸残基を置換するアミノ酸残基は、(iv)元のアミノ酸とシステイン以外の他の種類のアミノ酸残基に特定した。即ち、Lys10についてはLysとCys以外が、Thr11についてはThrとCys以外が、Lys13についてはLysとCys以外が、Gly14についてはGlyとCys以外が、Glu15についてはGluとCys以外が、Thr16についてはThrとCys以外が、Thr17についてはThrとCys以外が、Asn35についてはAsnとCys以外が、Asp36についてはAspとCys以外が、Gly38についてはGlyとCys以外が置換するアミノ酸残基として特定された。
なお、本実施例の計算は、ccp4i 4.0 (Daresbury Laboratory, UK Science and Technology Facilities Council)、Surface Racer 3.0 for Linux(Dr. Oleg Tsodikov, The University of Michigan)、Red Hat Enterprise Linux WS release 3(レッドハット)(以上ソフトウエア)、Dell Precision Workstation370(デル)(以上ハードウエア)を用いて遂行した。
3.FcおよびFabとの結合表面解析にもとづく変異対象部位の選定と置換するアミノ酸残基の特定
上記Fcとの結合表面解析および上記Fabとの結合表面解析にもとづき選定した変異対象部位と特定した置換するアミノ酸残基を組み合わせた。
即ち、[配列番号1]で示されるプロテインG・B1ドメインの野生型アミノ酸配列のうちの、Asp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asp40、Glu42、Thr44、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17、Asn35、Asp36、Gly38の20個を変異対象部位として選定した。元のアミノ酸残基を置換するアミノ酸残基は、Asp22についてはLys、Arg、またはHisが、Ala24についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Thr25についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys28についてはAsp、Glu、またはHisが、Val29についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys31についてはAsp、Glu、またはHisが、Gln32についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asp40についてはLys、Arg、またはHisが、Glu42についてはLys、Arg、またはHisが、Thr44についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys10についてはLysとCys以外が、Thr11についてはThrとCys以外が、Lys13についてはLysとCys以外が、Gly14についてはGlyとCys以外が、Glu15についてはGluとCys以外が、Thr16についてはThrとCys以外が、Thr17についてはThrとCys以外が、Asn35についてはAsnとCys以外が、Asp36についてはAspとCys以外が、Gly38についてはGlyとCys以外が特定された。
また、[配列番号2]で示されるプロテインG・B2ドメインの野生型アミノ酸配列のうちの、Asp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asp40、Glu42、Thr44、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17、Asn35、Asp36、Gly38の20個を変異対象部位として選定した。元のアミノ酸残基を置換するアミノ酸残基は、Asp22についてはLys、Arg、またはHisが、Ala24についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Thr25についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys28についてはAsp、Glu、またはHisが、Val29についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys31についてはAsp、Glu、またはHisが、Gln32についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asp40についてはLys、Arg、またはHisが、Glu42についてはLys、Arg、またはHisが、Thr44についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys10についてはLysとCys以外が、Thr11についてはThrとCys以外が、Lys13についてはLysとCys以外が、Gly14についてはGlyとCys以外が、Glu15についてはGluとCys以外が、Thr16についてはThrとCys以外が、Thr17についてはThrとCys以外が、Asn35についてはAsnとCys以外が、Asp36についてはAspとCys以外が、Gly38についてはGlyとCys以外が特定された。
また、[配列番号3]で示されるプロテインG・B3ドメインの野生型アミノ酸配列のうちの、Asp22、Thr25、Lys28、Lys31、Gln32、Asp40、Thr44、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17、Asn35、Asp36、Gly38の17個を変異対象部位として選定した。
元のアミノ酸残基を置換するアミノ酸残基は、Asp22についてはLys、Arg、またはHisが、Thr25についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys28についてはAsp、Glu、またはHisが、Lys31についてはAsp、Glu、またはHisが、Gln32についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asp40についてはLys、Arg、またはHisが、Thr44についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys10についてはLysとCys以外が、Thr11についてはThrとCys以外が、Lys13についてはLysとCys以外が、Gly14についてはGlyとCys以外が、Glu15についてはGluとCys以外が、Thr16についてはThrとCys以外が、Thr17についてはThrとCys以外が、Asn35についてはAsnとCys以外が、Asp36についてはAspとCys以外が、Gly38についてはGlyとCys以外が特定された。
実施例2
本実施例においては、上記選定した変異対象部位と上記特定した置換するアミノ酸残基の情報を利用して改良型プロテインGのアミノ酸配列を設計した。
上記から明らかなように、変異対象部位及び該部位を置換するアミノ酸残基は、各一つに限られるものではないので、変異対象部位及び該部位を置換するアミノ酸残基の中から適宜選択して、変異体タンパク質のアミノ酸配列を設計することができる。その選択は、無作為に行ってもよいし、構造活性相関等の他の公知の情報を加味してもよい。また、プロテインGの細胞膜外ドメインの性質を好ましいものに変化させることが既に知られている変異と組みあわせてもよい。本実施例では、実施例1の「1.Fcとの結合表面解析にもとづく変異対象部位の選定と置換するアミノ酸残基の特定」で選定した部位から、Asp22、Thr25、Gln32、Asp40、およびGlu42を選択し、これに対応する置換するアミノ酸残基として、Asp22His、Thr25His、Gln32His、Asp40His、およびGlu42Hisを選択し、この5変異箇所/5置換を組み合わせた点変異あるいは多重変異を[配列番号1]で示されるプロテインG・B1ドメインの野生型アミノ酸配列に対して行うことで、[配列番号10]で示される複数の改良型プロテインGのアミノ酸配列を設計した。
また、実施例1の「2.Fabとの結合表面解析にもとづく変異対象部位の選定と置換するアミノ酸残基の特定」で選定した部位から、Thr11およびThr17を選択し、これに対応する置換するアミノ酸残基として、Thr11ArgおよびThr17Ileを選択し、これらを上記の5変異箇所/5置換に加えて得られる7変異箇所/7置換を組み合わせた点変異あるいは多重変異を[配列番号1]で示されるプロテインG・B1ドメインの野生型アミノ酸配列に対して行うことで、[配列番号7]で示される複数の改良型プロテインGのアミノ酸配列を設計した。
さらに、プロテインGの細胞膜外ドメインの熱安定性、変性剤に対する化学的安定性、および分解酵素に対する耐性を向上させることが発明者らの従前の研究により明らかにされているAsn35Lys、Asp36Glu、Asn37His、Asn37Leu、Asp47Pro、Ala48Lys、およびAla48Gluを選択し、これらを上記の7変異箇所/7置換に加えて得られる12変異箇所/14置換を組み合わせた点変異あるいは多重変異を[配列番号1]で示されるプロテインG・B1ドメインの野生型アミノ酸配列に対して行うことで、[配列番号4]で示される複数の改良型プロテインGのアミノ酸配列を設計した。
本実施例では、上記12変異箇所/14置換に対応する具体的アミノ酸配列として[配列番号13]〜[配列番号20]を最終的に選別し、この配列を示す改良型プロテインGを実際に合成し、その分子特性を評価した。
実施例3
本実施例においては、改良型プロテインGのアミノ酸配列をコードする核酸の塩基配列を設計した。
改良型プロテインGをコードする遺伝子の塩基配列については、設計した改良型プロテインGのアミノ酸配列を基に、Gene Designer (DNA2.0 Inc.) を利用して、大腸菌での発現効率が最適になるよう設計した。なお、変異体タンパク質は、タンパク質合成の実際的観点から以下の2系統に分けて製造されるため、遺伝子の塩基配列はベクターの塩基配列を勘案して系統ごとに微調整された。OXADac-PGタンパク質は、N末端側にOxaloacetate decarboxylase alpha-subunit c-terminal domain (OXADac)の、C末端側に改良型プロテインGの配列を有する融合タンパク質として製造される。即ち、[配列番号31]と[配列番号13]〜[配列番号20]が連結したアミノ酸配列となり合成される。M-PGタンパク質は、タグなし、融合なしの単純タンパク質として大腸菌を用いて製造される。このため設計したアミノ酸配列に開始コドン配列が付加される。即ち、M-PGタンパク質は[配列番号13]〜[配列番号20]のN末端にMetが付加したアミノ酸配列となり合成される。
実施例4
本実施例においては、改良型プロテインGをコードする遺伝子を含むプラスミドベクターを合成し、ついで大腸菌を用いて、表1に示すOxaloacetate decarboxylase alpha-subunit c-terminal domain (OXADac)と変異体タンパク質の融合タンパク質(OXADac-PG01、OXADac-PG07、OXADac-PG13、OXADac-PG14、OXADac-PG15、OXADac-PG16、OXADac-PG17、OXADac-PG19、OXADac-PG20)を製造した。
(1)OXADac-PG発現用プラスミドの合成
[配列番号21]〜[配列番号29]の塩基配列からなるPG遺伝子(pg01、pg07、pg13、pg14、pg15、pg16、pg17、pg19、またはpg20) を組み込んだエントリープラスミドpDONR221-PG (DNA2.0)と発現用プラスミドChampion pET104.1-DEST (Invitrogen) についてGateway LR Clonase Enzyme Mix (Invitrogen) を用いて相同組み換えを行った。反応液を用いて保存用大腸菌DH5a株 (東洋紡, Competent high)を形質転換した。得られた形質転換体をcolony PCR、DNA sequencing (GE Healthcare Bioscience, BigDye Terminator v1.1) により選別し、QIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen) を用いてOXADac-PG発現用プラスミドを抽出した。
(2)OXADac-PG融合タンパク質の発現と固定化
OXADac-PG発現用プラスミドを用いて、発現用大腸菌BL21(DE3) (Novagen) を形質転換した。前培養した形質転換体を、2.5ml / 500mlでLB培地に継代し、O.D.600 = 0.8〜1.0になるまで振とう培養した。OXADac-PG融合タンパク質を発現させるためIPTG(0.5mM)を加え、さらに37℃で2時間振とう培養した。回収した菌体を10mlのPBSに懸濁し、超音波破砕を行った後濾過滅菌し、これを全タンパク質溶液とした。全タンパク質溶液の一部はIgG Sepharose 6 Fast Flow (GE Healthcare Bioscience) microspinを用いて精製を試み、SDS-PAGEによって発現および精製を確認した。残りはHiTrap streptavidin HPカラム(GE Healthcare Bioscience) をセットした液体クロマトグラフィー装置AKTApurifier (GE Healthcare Bioscience) に注入し、0.3ml/minの条件(running buffer: 20mM Na phosphate(pH6.7), 150mM NaCl)で運転することで、OXADac-PG融合タンパク質をカラムに固定化した。OXADacは分子内にビオチン化リジンを1つ有するため、カラム内のストレプトアビジンに選択的かつ非可逆的に結合する。なお、固定化量を最大化するため、HiTrap streptavidin HPカラムの結合許容量に対し、大過剰(10倍以上)のOXADac-PG融合タンパク質を注入した。
実施例5
本実施例においては、改良型プロテインGをコードする遺伝子を含むプラスミドベクターを合成し、ついで大腸菌を用いて、表1に示すMet付加改良型プロテインG(M-PG01、M-PG07、M-PG19、M-PG20)を製造した。
(1)M-PG発現用プラスミドの合成
実施例4で作成したOXADac-PG発現用プラスミドを鋳型に、制限酵素認識配列を含むプライマーを加えPCRを行い(アニール45℃, 15秒 → 55℃, 5秒)、PG遺伝子領域を増幅した。使用したプライマーは、M-PG01およびM-PG07については、センスプライマー (ATAGCTCCATG GACACTTACAAATTAATCC(配列番号32))とアンチセンスプライマー(ATTGGATCC TTATTCAGTAACTGTAAAGGT(配列番号33))、M-PG19およびM-PG20についてはセンスプライマー(ATAGCTCCATG GATACCTACAAACTGATCC(配列番号34))とアンチセンスプライマー(ATTGGATCC TTATTCGGTAACGGTGAAGGT(配列番号35))を用いた。得られた増幅物は、アガロース電気泳動法(3%, 100V)で確認後、QIAquick PCR Purification kit (Qiagen) を用いて精製した。その後、制限酵素Nco IとBamH I (日本ジーン, 37℃, 一昼夜)で消化し脱リン酸化(宝酒造, CIAP, 50℃, 30分)させたプラスミドpET16b (Novagen) と、同じ制限酵素で消化したPG遺伝子(pg01、pg07、pg19、またはpg20)をライゲーション(東洋紡, Ligation High, 16℃, 1時間)し、得られたプラスミドベクターを用いて保存用大腸菌DH5α株(東洋紡, Competent high)を形質転換し、100μg/mLアンピシリンを含むLBプレート培地で選択した。正しい挿入配列をもつ形質転換体をcolony PCR、DNA sequencing (AB, BigDye Terminator v1.1) により選別し、Qiaprep Spin Miniprep kit (Qiagen) を用いてM-PG発現用プラスミドを抽出した。これを用い、さらに発現用大腸菌BL21(DE3) 株(Novagen)を形質転換した。
(2)組換えタンパク質の発現と精製
LB培地で前培養した大腸菌BL21(DE3) 形質転換体を、2.5ml / 500mlでLB培地に継代し、O.D.600 = 0.8〜1.0になるまで振とう培養した。最終濃度0.5mM でIPTGを加え、さらに37℃で2時間振とう培養した。回収した菌体を10mlのPBSに懸濁し、超音波破砕を行った。破砕液は濾過滅菌後、濾液をIgG Sepharose 6 Fast Flowカラム (GEヘルスケアバイオサイエンス)をセットした液体クロマトグラフィー装置AKTApurifier (GEヘルスケアバイオサイエンス)に注入し、アフィニティクロマトグラフィー法(running buffer: 50mM Tris-HCl(pH7.6), 150mM NaCl, 0.05% Tween20;elution buffer: 0.5M 酢酸)および/またはRESOURCE Sカラム (GEヘルスケアバイオサイエンス)をセットした液体クロマトグラフィー装置AKTApurifier (GEヘルスケアバイオサイエンス)に注入し、イオン交換クロマトグラフィー法(running buffer: 20mM クエン酸, pH3.5; elution buffer: 20mM クエン酸, 1M NaCl, pH3.5)によりM-PG組換えタンパク質を精製した。分画したフラクションはNaOHで中和後、遠心濃縮機(RABCONCO, CentriVap concentrator)で濃縮し、50mM リン酸緩衝液(pH6.8)で透析した。各溶液を凍結乾燥し、粉末状の組換えタンパク質(M-PG01、M-PG07、M-PG19、M-PG20)を-20℃で保存した。
実施例6
本実施例においては、改良型プロテインGの純度をポリアクリルアミドゲル電気泳動法で確認した。
精製前後の改良型プロテインGをそれぞれ75μM程度の濃度の水溶液に調製したのち、Tricine-SDS-PAGE(16%T, 2.6%C, 100V, 100min)を行いCBB (G-250) 染色によりバンドを検出し純度を確認した。その結果、改良型プロテインGは、測定したすべての試料のメジャーバンドとして検出され、改良型プロテインG(OXADac-PG19、OXADac-PG20、M-PG01、M-PG07)の合成収率は高く(>10mg/L-培地)、また精製度も充分であることが確認された。
実施例7
本実施例においては、改良型プロテインGの分子量をMALDI-TOF型質量分析計で計測することで、製造したタンパク質を同定した。
まず、単離精製した変異体タンパク質を15〜25μMの濃度の水溶液に調製した。次いで、質量分析用サンプルプレートにマトリックス溶液(50%(v/v)アセトニトリル-0.1%TFA水溶液にα-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸を飽和させた溶液)1μlを滴下し、これに各試料溶液を1μl滴下してサンプルプレート上で混合、乾燥させた。その後、質量分析装置Voyager(Applied Biosystems)にて、強度2500-3000のLaserを照射し質量スペクトルを得た。質量スペクトルにより検出されたピークの分子量と製造した変異体タンパク質のアミノ酸配列より算出された理論分子量を比較した結果、両者は測定誤差内で一致し、目的のタンパク質(OXADac-PG19)が製造されていることが確認された。
実施例8
本実施例においては、OXADac-PG融合タンパク質を固定化したカラムを用いてpH勾配アフィニティクロマトグラフィーを行い、モノクローナル抗体の溶出するpHを調べることで、改良型プロテインGの弱酸性域での抗体解離性を評価した。
OXADac-PG融合タンパク質固定化カラムを液体クロマトグラフィー装置AKTApurifier (GE Healthcare Bioscience) にセットし、TST buffer(50mM Tris-HCl(pH7.6), 150mM NaCl, 0.05% Tween20)を1ml/minの条件で流し平衡化させた後、100μg/200μlに調製したIgG1タイプのヒト化モノクローナル抗体を注入した。次いで、TST bufferを50mM Na3 citrate(pH7.0) に置換し、さらに0.5ml/minの流速で10minかけて連続的に0.5M acetate(pH2.5) へ置換することで、pH勾配(pH7.0→2.5/10min)を実現した。液体クロマトグラフィー装置に付属しているUVメータ(280nm)とpHメータの出力から、モノクローナル抗体が溶出するピークのpHを記録した。
その結果、測定したすべての改良型プロテインG(OXADac-PG13、OXADac-PG17、OXADac-PG19、OXADac-PG20)を固定化したカラムにおいて、野生型のアミノ酸配列を有するコントロールタンパク質(OXADac-PG01)を固定化したカラムに比べて、高いpHでヒト化モノクローナル抗体が溶出することが明らかになった(図7)。たとえば、このうち最も優れた改良型プロテインG (OXADac-PG20)は野生型に比べて1.1ポイントも高いpHで溶出する。(表2)
実施例9
本実施例においては、OXADac-PG融合タンパク質を固定化したカラムを用いてステップワイズpHアフィニティクロマトグラフィーを行い、モノクローナル抗体の溶出を、いくつかのpHで調べることで、改良型プロテインGの弱酸性域での抗体解離性を評価した。
OXADac-PG融合タンパク質固定化カラムを液体クロマトグラフィー装置 AKTA prime plus (GE Healthcare Bioscience)にセットし、リン酸バッファ(50μm Na2HPO4/NaH2PO4 (pH7.0))を0.4ml/minの条件で流し平衡化させた後、100μLの1mg/mlのサンプル(ChromPure Human IgG, Fc Fragment)を添加した。12mlのリン酸バッファで洗浄、10mlの溶出バッファ(100mM CH3COOH/CH3COONa, pH 4)で溶出を行った。その後、pH2.5、500mMのCH3COOHでカラムを洗浄し、最後に12mlのリン酸バッファでカラムを再平衡した。液体クロマトグラフィー装置に付属しているUVメータ(280nm)の出力から、ヒトポリクローナルFc領域のステップワイズpHの溶出するパターンを得られた。
その結果、測定した改良型プロテインG(OXADac-PG19、OXADac-PG20)を固定化したカラムにおいて、野生型のアミノ酸配列を有するコントロールタンパク質(OXADac-PG1)を固定化したカラムにくらべ、高いpHでヒトポリクローナル抗体Fc領域が溶出することが明らかになった(図8)。pH 4領域でのPG1、PG19、PG20の溶出率は各々10%、88%、71%で、改良型プロテインG(OXADac-PG19、OXADac-PG20)が野生型に比べて7倍以上高くなったことが確認された(表2)。
実施例10
本実施例においては、変異体タンパク質(プロテインG変異体)の結合解離性を表面プラズモン共鳴(SPR)法により評価した。SPR法は、生体高分子間の特異的相互作用を経時的に測定し、反応を速度論的観点から定量的に解釈できる優れた方法であることが認識されている。
まず、センサーチップSA (Biacore)の測定セルに、ビオチンを介してOXADac-PG融合タンパク質を固定化した。次いで、ヒト免疫グロブリンIgGを、ランニング緩衝液であるHBS-P (10mM HEPES pH7.4, 150mM NaCl, 0.05% v/v Surfactant P20)に溶解し、1μMの試料溶液を調製した。SPRの測定は、Biacore T100 (Biacore)を用い、反応温度25℃で行った。試料溶液の添加後、解離溶液(10mM 酢酸ナトリウム pH4.0)によるIgGの解離挙動を測定した。観測結果の解析にはBIAevaluation version 4.1を用いた。解離前後のRU変化をIgGの結合RU値で除することでIgGの残存量比を算出し、また、その解離曲線を1:1のラングミュアモデルにフィッティングさせることで解離速度定数koffを決定した。
実験に用いた解離条件下の下、野生型のアミノ酸配列を有するOXADac-PG01は有意な解離を示さなかったのに対し、変異体タンパク質(OXADac-PG13, OXADac-PG14, OXADac-PG19, OXADac-PG20)は顕著な解離挙動を示した (表2)。たとえば、OXADac-PG19は本条件下において吸着IgGの60%以上を解離しており、その解離速度定数は野生型のそれに比較して3オーダー以上の上昇を示した。
実施例11
本実施例では、中性領域、およびヒスチジン残基の95%以上がプロトン化する弱酸性領域において、変異体タンパク質の抗体結合性を表面プラズモン共鳴(SPR)法により評価した。
まず、センサーチップの測定セルにヒト免疫グロブリンのFc領域をアミンカップリング法により固定化した。測定のコントロールとして、カルボキシメチル基をエタノールアミンでブロッキングした対照セルを用いた。センサーチップとして、中性領域の測定にはCM5 (Biacore)、弱酸性領域下での測定にはCM4 (Biacore) を用いた。次いで、単離精製した変異体タンパク質を、中性領域のランニング緩衝液であるHBS-P (10mM HEPES pH7.4, 150mM NaCl, 0.05% v/v Surfactant P20)、または弱酸性領域のランニング緩衝液 (10mM 酢酸ナトリウム pH4.5, 150mM NaCl, 0.05% v/v Surfactant P20)に溶解し、それぞれ500, 400, 300, 200, 100 nM、および1000, 800, 600, 400, 200 nMの5種の濃度の試料溶液を調製した。SPRの測定は、Biacore T100 (Biacore)を用い、反応温度25℃で行った。収集したデータは、Biacore T100 Evaluation Softwareを用いて解析し、1:1のラングミュアモデルにフィッティングさせ、解離平衡定数KDを算出した(図9)。
その結果、変異体タンパク質M-PG19は野生型のアミノ酸配列を有するコントロールタンパク質M-PG01に比較し、中性領域では11倍以上の親和性を示した一方、酸性領域での親和性は0.6倍程度にまで減少していることが明らかとなった(表3、図10)。また、各々のタンパク質において、pH4.0のKDとpH7.0のKDの比を計算すると、変異体タンパク質M-PG19は際立ってのその値が大きい(図11)。これは、pHのシフトによって溶出される抗体の量が大きいことを意味し、即ち、変異体タンパク質M-PG19を用いることでアフィニティクロマトグラフィーにおける抗体の回収率を大きく向上させることが可能であることを示す。
実施例12
本実施例においては、変異体タンパク質の熱安定性を評価した。円偏光二色性(CD)スペクトルは、タンパク質の二次構造の変化を鋭敏に反映する分光学的分析方法であることが知られている。CDスペクトルの強度に相当するモル楕円率を試料の温度を変化させながら観測することで、どの程度の温度で各々の改良型プロテインGが変性するのかを明らかにすることができる。単離精製した変異体タンパク質をそれぞれ15〜25μMの濃度で含む水溶液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.8)に調製した。この試料溶液を円筒型セル(セル長0.1cm)に注入し、J805型円偏光二色性分光光度計(日本分光)を用いて、20℃の温度で測定波長を260nmから195nmに移動させCDスペクトルを得た。同じ試料を98℃に加熱、さらに98℃から20℃に冷却し260nmから195nmの円二色性スペクトルを得た。加熱後再冷却したスペクトルのモル楕円率は60%以上回復し、改良型プロテインGの立体構造が熱変性に対し、ある程度可逆であることが確認された。
次いで、測定波長を222nmに固定し20℃から100℃に1℃/minの速度で昇温させてモル楕円率の経時変化を測定した。得られた熱融解曲線について二状態相転移モデルの理論式(非特許文献:有坂、バイオサイエンスのための蛋白質科学入門)を用いて解析し、変性温度Tm、およびTmにおける変性のエンタルピー変化ΔHmを決定した。その結果、測定した改良型プロテインGのうちM-PG07とM-PG19の熱安定性については、野生型のアミノ酸配列を有するコントロールタンパク質(M-PG01)に比べて、向上していることが明らかになった(表3)。
実施例13
本実施例においては、変異体タンパク質の単結晶を作成し、立体構造をX線回折解析により決定した。
まず、単離精製した変異体タンパク質M-PG19を、以下に示すハンギングドロップ法を用いて結晶化した。空間群P43212に属する結晶を得るには、このタンパク質試料を10mMトリス塩酸緩衝液pH7.4に5〜10mg/mlの濃度になるように溶解したタンパク試料溶液1μlと、等量の結晶化剤溶液(70% MPD、20mM HEPES緩衝液pH7.4)とをピペットマンを用いてカバーガラス(Hampton社製)上で滴下・混合して結晶化溶液とした。上述の結晶化剤溶液をHampton社製24穴プレートに注入し、結晶化溶液を滴下したカバーガラスで蓋をして高真空グリースを用いて密封した。このプレートを20℃に保たれたインキュベーター中で保管した。およそ1〜2週間後に良質の単結晶が結晶化溶液中に得られた。
続いて、得られた単結晶を微量の母液とともに結晶解析用ループですくい、液体窒素ガスを用いて急速凍結させ、X線回折実験に供した。回折測定は、高エネルギー加速器研究機構の放射光科学研究施設のビームラインBL−6Aにて定法に従い行い、分解能1.6Åまでの回折データを収集した。得られた回折像は、プログラムHKL-2000(HKL Research社)を用いて回折点の指数付けおよび積分強度の測定・数値化をおこない68935個の強度データを得た。この段階で、使用した単結晶の結晶パラメータが決定された。すなわち、結晶の空間群は正方晶系P43212、格子定数はa=b=23.26 Å、およびc=178.7Åであった。さらにHKL-2000を用いてマージとスケーリングを行い、8862個のユニークな強度データを得た。これらのRsym値は6.8%であった。
構造決定は、野生型プロテインG B1ドメインの立体構造座標データとプログラムMolrep(Vagin, A., and Teplyakov, A. (1997) Journal of Applied Crystallography 30, 1022-1025)を用いた分子置換法によって行い、引き続きプログラムCNS(Brunger, A. et al.(1998) Acta. Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 54, 905-921)、REFMAC5(Murshudov, G. N., et al. (1997) Acta. Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 53, 240-255)、Coot(Emsley, P., and Cowtan, K. (2004) Acta. Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 60, 2126-2132)を用いて構造精密化をおこなった。その結果、当業者においてパラメータ精度の指標とされているR値は、全強度データに対し23%となった。
このようにして得られた変異体タンパク質M-PG19の3次元構造は野生型プロテインG B1ドメインと極めて相似であった。即ち、決定したM-PG19の主鎖の座標と、Protein Data Bankに登録されている野生型の主鎖の座標(PDBコード:1PGA)を比較すると、その二乗平均平方根残差(RMSD)は0.71Åである。これより、本発明で変異体タンパク質に施したアミノ酸置換が、野生型プロテインG B1ドメインの立体構造をほとんど変化させないことが証明された(図12)。
実施例14
1.本発明のプロテインGの細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体の製造及び該タンパク質を用いるカラムの作成
(1)組換えPG発現プラスミドの作成
カルボキシル末端側にシステイン残基、Hisタグを付加した三量体野生型PG(CGB01H-3D, 図13上、配列番号36) または本発明のタンパク質である変異型PGのタンデム型三量体(CGB19H-3D, 図13下、配列番号37) 遺伝子をコードする2種の人工合成プラスミド(それぞれSYN2608-2-18、SYN2608-1-4, タカラバイオ) から、制限酵素NcoI、BamHIを用いてそれぞれの遺伝子断片を切り出した。目的断片をアガロース電気泳動で分離しQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen) を用いて精製を行った後、同様に制限酵素処理およびウシ小腸由来アルカリ脱リン酸化酵素(CIP, 宝酒造) を用いて脱リン酸化を行った発現用プラスミドpET16b (Invitrogen) とライゲーションを行った。反応液によって保存用大腸菌DH5α株(Competent high、東洋紡) を形質転換した。得られた形質転換体をコロニーPCR法、DNA配列決定法(BigDye Terminator v1.1, GE Healthcare Bioscience) により選別し、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen) を用いて組換えPG発現プラスミドを抽出した。
(2)組換えPGの発現と精製
組換えPG発現プラスミドによって発現用大腸菌BL21(DE3)株 (Novagen) を形質転換した。前培養した形質転換体を、2.5ml / 500mlでLB培地に継代し、O.D.600 = 0.8〜1.0になるまで振とう培養した。目的タンパク質を発現させるため0.5mM IPTGを加え、さらに37℃で2時間振とう培養した。回収した菌体を10mlのPBSに懸濁し、超音波破砕を行った後濾過滅菌し、これを全タンパク質溶液とした。Ni Sepharose(GE Healthcare Bioscience) 2mlカラムに組換えPGを吸着させ、20mMイミダゾールにて洗浄後、500mMイミダゾールにて溶出し、精製タンパク質とした。
(3)Epoxy-activated Sepharose 6Bを用いた組換えPGの固定化とカラム作製
精製した組換えPG2.5mgを50mMリン酸バッファー(pH8.0)に溶解し、同じく平衡化したEpoxy-activated Sepharose 6B(GE Healthcare ) 0.3gと混合し37度で一昼夜反応させ、レジンに結合させた。反応後の未固定上清サンプル量はCGB01H-3Dで1.28mg、CGB19H-3Dで0.97mgであり、そこから固定化率はそれぞれ49%、61%と推測された。50mMリン酸バッファで洗浄後、1Mエタノールアミン(pH7.5)を加え37度で6時間反応させ未反応官能基をマスクした。洗浄液1(0.1M酢酸、0.1M塩化ナトリウム) ついで洗浄液2(0.1Mトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム、pH8.0) で洗浄した。固定化レジン1mlをTricon 5/20 Columnにパッキングした。
(4)SulfoLink Immobilization Kit(Pierce) を用いた組換えPGの固定化とカラム作製
精製したCGB19H-3D2.5mgをサンプル調製緩衝液(0.1M リン酸ナトリウム、5mM EDTA、pH6.0) に溶解し、付属のメルカプトエタノールバイアルに加え、37度で1時間半反応させた。付属の脱塩カラムに反応液を加えメルカプトエタノールを除いた後、カップリング緩衝液(50mMトリス塩酸、5mM EDTA、pH8.5) を用いて調製し、SulfoLink Resinに加えた。室温で15分反応させレジンに結合させた。反応後の未固定サンプル量は0.18mgであり、そこから固定化率は75%と推測された。1M塩化ナトリウムで洗浄後、50mM L-cystein塩酸を加え室温で1時間反応させ未反応官能基をマスクした。PBSで洗浄を行った後、固定化レジン1mlをTricon 5/20 Columnにパッキングした。
2.pH勾配アフィニティクロマトグラフィー
組換えPG固定化カラムを液体クロマトグラフィー装置AKTApurifier (GE Healthcare Bioscience) にセットし、TST緩衝液(50mM トリス塩酸、150mM 塩化ナトリウム、0.05% Tween20、pH7.6)を0.3ml/min (1.-(4)は0.5ml/min) の条件で流し平衡化させた後、100μg/200μlに調製したIgG1タイプのヒト化モノクローナル抗体または50μg/μlに調製したヒトIgG3 を注入した。TST緩衝液を50mM クエン酸ナトリウム(pH7.0) に置換し、0.3ml/min (1.-(4)は0.5ml/min) の流速で10minかけて連続的に0.5M 酢酸(pH2.5) へ置換しIgG1またはIgG3が溶出するpH条件を調べた。CGB01H-3D固定化カラムにおいてIgG1はpH3.9 - 2.9の間で溶出されpH3.3付近でピークを形成し(図14上)、IgG3はpH5.1 - 3.8の間で溶出されpH3.4付近でピークを形成した(図14下)。一方CGB19H-3D固定化カラムにおいて、Epoxy-activatedカラムではIgG1はpH5.4 - 3.8の間で溶出されpH4.3付近でピークを形成し(図15上)、IgG3はpH6.2 - 4.1の間で溶出され、pH4.9付近でピークを形成した(図15下)。SulfoLinkカラム(CGB19H-3Dのみ)ではIgG1はpH5.9 - 3.7の間で溶出されpH4.3付近でピークを形成し(図16上)、IgG3はpH6.2 - 4.2の間で溶出され、pH5.2付近でピークを形成した(図16下)。以上より、いずれの場合においても、CGB19H-3D固定化カラムは、CGB01H-3D固定化カラムに比べてマイルドな酸性条件で溶出可能なこと、IgG1抗体でもIgG3抗体でもCGB19H-3D固定化カラムで精製可能なことが明らかになった。
3.pH段階的変化アフィニティクロマトグラフィー
組換えPG固定化カラムを液体クロマトグラフィー装置AKTApurifier (GE Healthcare Bioscience) にセットし、リン酸緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、pH7.0) を0.3ml/min (1.-(4)は0.5ml/min) の条件で流し平衡化させた後、100μg/200μlに調製したIgG1タイプのヒト化モノクローナル抗体または50μg/μlに調製したヒトIgG3 を注入した。0.3ml/min (1.-(4)は0.5ml/min) の流速で20mM クエン酸ナトリウム(pH4.0またはpH3.75) に置換後、さらに20mMクエン酸(pH2.4) に置換しIgG1またはIgG3が溶出するpH条件を調べた。CGB01H-3D固定化カラムではIgG1(図17上)、IgG3(図17下)ともにpH7.0- pH4.0の変化時には溶出せず、pH4.0 - 2.4への変化時に溶出した。一方CGB19H-3D固定化カラムではIgG1(図18上)、IgG3(図18下)ともにpH7.0 - pH4.0の変化時に溶出し、pH4.0 - 2.4への変化時には溶出しなかった。さらに、より厳しい酸条件であるpH3.75においても同様となり、CGB01H-3D固定化カラムではpH7.0 - pH3.75の変化時には溶出せず、pH3.75 - 2.4への変化時に溶出し(図19上)、CGB19H-3D固定化カラムではpH7.0 - pH3.75の変化時に溶出し、pH3.75 - 2.4への変化時には溶出しなかった(図19下)(ともにIgG1のみ)。SulfoLinkカラム(CGB19H-3Dのみ)でもIgG1(図20上)、IgG3(図20下)ともにも同様の結果になった。以上より、いずれの場合においても、CGB19H-3D固定化カラムは、CGB01H-3D固定化カラムに比べてマイルドな酸性条件で溶出可能なこと、IgG1抗体でもIgG3抗体でもCGB19H-3D固定化カラムで精製可能なことが明らかになった。
実施例15
本実施例では、本発明のプロテインGの細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体と同単量体とを比較した。
プロテインGの細胞膜外ドメイン変異体の単ドメイン型および3ドメイン型分子 (それぞれをM-PG19、CGB19H-3D とする) の中性域の抗体結合解離性を表面プラズモン共鳴 (SPR) 法により評価した。SPR法は、生体高分子間の特異的相互作用を経時的に測定し、反応を速度論的観点から定量的に解釈できる優れた方法であることが認識されている。
まず、センサーチップCM-5 (GE Healthcare)の測定セルに、IgG1タイプのヒト化モノクローナル抗体をアミンカップリング法により固定化した。固定化量は5000RUとした。次いで、M-PG19およびCGB19H-3Dを、ランニング緩衝液 (10 mM HEPES pH7.4, 150 mM NaCl, 1 mM Cystein, 0.05% v/v SurfactantP20) に溶解し、それぞれ25, 50, 100, 200 nM (M-PG19) および6.25, 12.5, 25, 50 nM (CGB19H-3D) の試料溶液を調製した。SPRの測定は、Biacore T100 (GE Healthcare)を用い、反応温度25℃で行った。観測結果の速度論解析にはBIAevaluation version 4.1を用いた。解離曲線を1:1のラングミュアモデルにフィッティングさせることで平衡解離定数KDを決定した。単ドメイン型のM-PG19は19 nMのKDでIgG1に結合した(図21上)。一方、3ドメイン型のCGB19H-3Dは0.10 nMのKDでIgG1に結合した (図21下)。以上の結果は、プロテインG変異体を多ドメイン化することにより、190倍の親和性向上が実現できることを示している。また、この親和性向上は、結合速度よりも主に解離速度の減少に起因していることも明らかになった。解離速度常数のみで比較すると、両者の差は約370倍ある。この原因は、多ドメイン化に伴うアビディティー効果(多価効果)によるものと考えられる。
実施例16
実施例14と同様に、組換えPG発現プラスミドを作成し、組換えPGの発現と精製を行った。その後、以下に記載する各種の固定化方法を用いて、本発明の捕捉剤及びカラムを作製した。
(1)CNBr-activated Sepharose4FastFlow を用いた組換えPGの固定化とカラム作製
CNBr-activated Sepharose4FastFlow(GE Healthcare) 0.375gを秤量し、1mM塩酸で膨潤させ、ガラスフィルター上で洗浄した。次いでカップリング緩衝液(0.1M炭酸水素ナトリウム 0.5M塩化ナトリウム、pH 8.0)で洗浄した。フラスコに担体を移し、カップリング緩衝液1.5mLと組換えPGが17.4mg/mlの組換えPG含有溶液を432μl加え、4℃、130rpmで21時間振とうして担体に固定化した。ガラスフィルターでろ別し、カップリング緩衝液で洗浄した。反応後のろ液をBradFord法で測定した結果、組換えPGが担体1mLあたり4.9mg固定化されていることがわかった。次いでフラスコに担体を移し、1M-エタノールアミン水溶液(pH8.0)3mlを加え25℃,130rpmで2時間振とうして未反応活性基をマスクした。ガラスフィルターでろ別し、洗浄液1(0.1Mトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム、pH8.0) 、ついで洗浄液2(0.1Mトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム、pH8.0) 15mlで交互に3サイクル洗浄した。固定化担体1mlを超純水で洗浄し、Tricon 5/20 Columnにパッキングした。
(2)Epoxy-activated Sepharose4FastFlowを用いた組換えPGの固定化とカラム作製
Sepharose4FastFlow(GE Healthcare)をガラスフィルターでろ別し、超純水で洗浄して担体10mlを得た。フラスコに担体を移液し、4.6M水酸化ナトリウム水溶液3mlとブタンジオールジグリシジルエーテル 4gを加え36℃で2時間振とうして反応させた。ガラスフィルターでろ別して、超純水で洗浄して活性化担体を得た。活性化担体1mLをガラスフィルターに採取してカップリング緩衝液(0.1M炭酸ナトリウム、1mM EDTA、pH 9.0)で洗浄した。活性化担体をフラスコに移し、組換えPGが20mg/mlの組換えPG含有溶液を500μl、カップリング緩衝液1mLを加え、37℃、130rpmで14時間振とうして固定化した。ガラスフィルターでろ別し、カップリング緩衝液で洗浄した。反応後のろ液をBradFord法で測定した結果、組換えPGが担体1mLあたり4.0mg固定化されていることがわかった。次いでフラスコに担体を移し、1Mエタノールアミン、0.1M炭酸ナトリウム、1mM EDTA溶液3mlを加え25℃,130rpmで3時間振とうして未反応活性基をマスクした。ガラスフィルターでろ別し、洗浄液1(0.1Mトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム、pH8.0) 、洗浄液2(0.1M酢酸、0.5M塩化ナトリウム、pH4.0)を15mlで交互に3サイクル洗浄した。固定化担体1mlを超純水で洗浄し、Tricon 5/20 Columnにパッキングした。
(3)N,N’-disuccinimidyl carbonateを用いた組換えPGの固定化とカラム作製
Sepharose4FastFlow(GE Healthcare)をガラスフィルターでろ別し、アセトニトリルで洗浄して担体6.5mlを得た。フラスコに担体を移液し、アセトニトリル5mlとN,N’-disuccinimidyl carbonate 0.11gを含むアセトニトリル溶液20mlを加え4℃、100rpmで振とうした。次いでN,N-ジメチルアミノピリジン 0.08gを含むアセトニトリル溶液2mlを加え19時間振とうして反応させた。ガラスフィルターでろ別して、アセトニトリル50ml、5%酢酸を含むジオキサン50ml、メタノール50ml、2-プロパノールの順に洗浄して活性化担体を得た。活性化担体1mLをガラスフィルターに採取してカップリング緩衝液(0.1Mリン酸カリウム、pH 7.6)で洗浄した。活性化担体をフラスコに移し、組換えPGが17.4mg/mlの組換えPG含有溶液を575μl、カップリング緩衝液1mLを加え、4℃、130rpmで23時間振とうして固定化した。ガラスフィルターでろ別し、カップリング緩衝液で洗浄した。反応後のろ液をBradFord法で測定した結果、組換えPGが担体1mLあたり8.2mg固定化されていることがわかった。次いでフラスコに担体を移し、1Mエタノールアミン3mlを加え4℃,130rpmで5時間振とうして未反応活性基をマスクした。ガラスフィルターでろ別し、カップリング緩衝液で洗浄した。固定化担体1mlを超純水で洗浄し、Tricon 5/20 Columnにパッキングした。
実施例17
1.組換えPG固定化充填剤の静的抗体吸着容量(SBC:Static Binding Capacity)
次に、実施例14及び16で作製した組換えPG固定化充填剤の抗体吸着容量を以下のとおり測定した。即ち、組み換えPG固定化担体の25%PBS懸濁液を調製した溶液400μLを円錐プラスチック容器に採取した。次いで1mg/mlの濃度に調製したヒト血清由来γ-globulin(和光純薬)PBS溶液14mlを加え、25℃、3時間ロータリーミキサーで攪拌した。上澄みのγ-globulin濃度を280nmの吸光度を測定し、物質収支を用いてSBCを測定した。
各固定化充填剤のSBCを表4に示した。本発明の各組換えPG固定化カラムは、主に-SH基を介して水不溶性の固相支持体に固定化されている捕捉剤に比べてよ非常に優れた静的抗体吸着容量を有していることが確認された。
2.組換えPG固定化カラムのpH勾配アフィニティクロマトグラフィー
次に、Protein G Sepharose 4 Fast Flowカラム(GE Healthcare)、又は、実施例16で作製した本発明の組換えPG固定化カラム(N,N’-disuccinimidyl carbonateを用いて作製したDSC-activated CGB19H-3D固定化カラム)を吸着緩衝液(20mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、150mM NaCl)を0.2ml/minの条件で流し平衡化させた後、1mg/mlに調製したヒトγグロブリン(ヒト血清由来γ-globulin(和光純薬))を注入した。吸着緩衝液で洗浄後、1ml/minの流速で130minかけて連続的に20mM クエン酸(pH2.4) へ置換しIgGが溶出するpH条件を調べた。Protein G Sepharose 4 Fast FlowにおいてIgGはpH3.6 - 2.9の間で溶出されpH3.2付近でピークを形成し、組換えPG固定化カラムではIgGはpH4.0 - 3.3の間で溶出されpH3.6付近でピークを形成した(図22)。以上より、本発明の組換えPG固定化カラムは、Protein G Sepharose 4 Fast Flowカラムに比べてマイルドな酸性条件で溶出可能なことが明らかになった。
現在、野生型のプロテインG細胞膜外ドメインは、抗体の精製用のアフィニティクロマトグラフィー担体や抗体検出のための検査試薬として市販され、ライフサイエンスの各分野で広範に利用されている。また、近年の抗体医薬をはじめとする抗体関連産業の発展をうけて、これらの製品の需要が飛躍的に拡大している。
したがって、本発明が提供する、免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体から成るタンパク質を主にアミノ基を介して水不溶性の固相支持体に固定化して成る捕捉剤、及び、該捕捉剤を充填して成るタンパク質分離精製用クロマトグラフィー用カラムは、抗体を扱う広範な技術分野において、その技術発展に大いに資するものである。

Claims (20)

  1. 免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体から成るタンパク質を主にアミノ基を介して水不溶性の固相支持体に固定化して成る、抗体、免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質の捕捉剤。
  2. 免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体から成るタンパク質を水不溶性の固相支持体に固定化して成る、抗体、免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質の捕捉剤であって、静的抗体吸着容量(SBC)が40(mg-ヒトIgG/ml-gel)以上である、請求項1記載の捕捉剤。
  3. 静的抗体吸着容量(SBC)が44(mg-ヒトIgG/ml-gel)以上である、請求項2記載の捕捉剤。
  4. タンデム型多量体がタンデム型三量体である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の補足剤。
  5. 多量体を構成する細胞膜外ドメイン変異体が互いに同一である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の捕捉剤。
  6. 各細胞膜外ドメイン変異体がリンカー配列によって連結されている、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の捕捉剤。
  7. 免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメインが、ストレプトコッカス属連鎖球菌のプロテインGのB1、B2、又はB3のいずれかである、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の捕捉剤。
  8. タンパク質が、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・Bドメインのタンデム型多量体から成るタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の捕捉剤。
  9. 多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
    野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(a)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(a)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質:
    (a)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGluを、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36がAsp又はGlu、X37がAsnまたはLeu、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
  10. 多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
    野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(b)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(b)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質:
    (b)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGluを、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36が Asp又はGlu、X37がAsn又はHis、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
  11. 多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
    野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(c)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(c)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質:
    (c)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyValTrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGlu、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又は Lys、X36がAsp又はGlu、X37がAsn又はHis、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
  12. 多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
    野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(d)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(d)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B1メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
    (d)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
  13. 多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
    野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(e)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(e)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B2メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
    (e)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
  14. 多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
    野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(f)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(f)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
    (f)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyValTrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
  15. 多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
    野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(g)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(g)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
    (g)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAspであって、かつX42がGluになる場合を除く。)。
  16. 多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
    野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の各変異体タンパク質であって、以下の(h)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(h)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
    (h)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAspであって、かつX42がGluになる場合を除く。)。
  17. 多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤:
    野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の各変異体タンパク質であって、以下の(i)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(i)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
    (i)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyValTrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGlnであって、かつX40がAspになる場合を除く。)。
  18. 多量体を構成する少なくとも一つの細胞膜外ドメイン変異体が配列番号13〜20のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは該アミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤。
  19. 三量体を構成する3つの細胞膜外ドメイン変異体が配列番号19で示されるアミノ酸配列、あるいは該アミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の捕捉剤。
  20. 請求項1ないし19のいずれか一項に記載の捕捉剤を充填して成るタンパク質分離精製用クロマトグラフィー用カラム。
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