JP2015003872A - マウスIgGの精製方法 - Google Patents

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昼也 吉田
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豊 磯部
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Momoko Ueda
桃子 上田
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康人 中井
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Abstract

【課題】マウスIgGと中性では一定の親和性を有し、吸着できる一方、僅かに溶出液のpHを下げるだけでマウスIgGが解離・溶出し、結果的に強い酸性条件にすることなしに、中性付近のpH領域でマウスIgGを回収できる方法を提供する。【解決手段】マウス免疫グロブリンG(IgG)のFc部分またはFab部分を有するタンパク質に対するアフィニティを有するドメイン変異体(人工的に変異させたドメイン)を含むタンパク質を用いて、中性付近のpH領域でマウスIgGを精製する方法。【選択図】図7

Description

本発明は、マウスIgGのアフィニティ精製方法に関する。
従来、抗体をはじめとするタンパク質の精製は生化学研究における重要な課題であり、アフィニティクロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィなど様々な技術が知られている。アフィニティクロマトグラフィは、目的タンパク質との特異的な親和性を利用して目的タンパク質を精製する方法である。この方法はでは容易に選択的にタンパク質の回収が可能であるが、その親和性が非常に強いため、クロマト充填剤に吸着させたタンパク質を解離させるために、一般的にはpH2.5程度の酸性緩衝液での溶出が必要となることが多い。そのような強酸性条件では、タンパク質の変性などの活性低下が起こりやすく、より温和な条件での精製が求められている。
連鎖球菌由来のタンパク質であるプロテインGはストレプトコッカス属連鎖球菌の細胞膜に存在する膜タンパク質であり、抗体の一種である免疫グロブリンGのFc領域に対する特異的結合活性を有することが知られている(非特許文献1、特許文献1)。プロテインGは、複数のドメインからなるマルチドメイン型膜タンパク質で、免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性(以下、「抗体結合活性」と呼ぶ)を示すのは、このうちの一部の細胞膜外ドメインである(非特許文献2)。たとえば図1に示すG148株由来のプロテインGの場合、抗体結合活性を示すのは、B1、B2、B3の3つのドメインである(文献によってC1、C2、C3ドメインとも表記される)。また、GX7805株のプロテインGでは3つの、GX7809のプロテインGでは2つの抗体結合ドメインが存在する。これらは、いずれも60アミノ酸弱の小型タンパク質で、そのアミノ酸配列の間には高い同一性が見られることが知られている)。また、プロテインGを切断して各々のドメイン単独を単離しても、抗体結合活性は保たれることが知られている(非特許文献3)。
プロテインGの細胞膜外ドメインは、現在、その選択的な抗体結合活性を利用した多くのプロテインG細胞膜外ドメイン含有製品が上市されている(例えば、抗体精製のためのアフィニティクロマトグラフィー用担体(特許文献3、4)や抗体を検出するための検査試薬、研究試薬など)。プロテインGの細胞膜外ドメインと抗体の結合力は、中性〜弱酸性域で高く、強酸性域で低いことが知られている(非特許文献4)。ゆえに、抗体の単離、回収、精製を目的とした場合、まず、血清等の抗体を含む試料溶液を中性状態にして、プロテインGの細胞膜外ドメインを固定化したビーズ等の水不溶性の固相支持体に接触させ、抗体を選択的に吸着させる。この後、中性〜弱酸溶液(pH5〜8)で洗浄し抗体以外の成分を除去する。最後にpH2.4〜3.5の強酸性溶液を加え抗体を固定化したプロテインGから脱着させ、強酸性溶液と共に溶出させることが一般的である(特許文献3)。これにより、高い純度で抗体を単離、回収、精製することができる。
しかし、抗体はpH2.4〜3.5の強酸性溶液におくと変性凝集等で劣化することがあり、抗体の種類によっては、本来の機能を失う場合もある(非特許文献4)。これを防ぐために、pH2.4〜3.5より高いpHの弱酸性域で処理することが試みられるが、プロテインGの細胞膜外ドメインと抗体の結合力は強いので、弱酸性域では抗体はプロテインGから溶出せず、十分な回収量が得られない。一方、プロテインG細胞膜外ドメインはFabとも結合することが知られており(非特許文献2)、一つの抗体分子はFc領域とFab領域の2つ領域で、プロテインG細胞膜外ドメインと結合可能である。このような結合状態になると、抗体とプロテインGの細胞膜外ドメインは容易に解離できず、抗体の回収は困難になる。
これまでに本発明者等は、熱安定性、変性剤に対する化学的安定性、及びタンパク質分解酵素に対する耐性等(これらの特性を総称して、単に「タンパク質安定性」ともいう)を有するプロテインGの細胞膜外ドメイン変異体からなる改良型タンパク質を開発し(特許文献5及び特許文献6)、更に、弱酸性域における免疫グロブリンのFc領域との結合性及び/または同Fab領域との結合性が低下した改良型タンパク質も開発した(特許文献7)。しかしながら、これらの改良型タンパク質はいずれも抗体結合活性を示す1つのドメインのみを含むものである。
更に、本発明者等は、上記改良型タンパク質のタンデム型多量体から成るタンパク質を開発した(特許文献8)。かかるタンパク質は、野生型のプロテインG・B1ドメインのタンデム型多量体に比べて、IgG1及びIgG3という異なるサブクラスのヒト免疫グロブリンGのFc領域との弱酸性域における結合性がより大きく低下しており、該タンパク質を含む本発明の捕捉剤を充填したタンパク質分離精製用クロマトグラフィー用カラムにおいては、捕捉したヒト免疫グロブリンGを弱酸性領域(pH4〜5程度)において、変性のない状態でより容易に溶出することが可能となった。
一方、マウス免疫グロブリンG(IgG)の精製には、プロテインAやプロテインGを用いて精製が可能であるが、親和性の弱いプロテインAを用いた場合でも、解離ではpH5程度にする必要があり、より中性に近い領域での精製方法の開発が求められている。
特表平03−501801公報 特許第2764021号公報 特開平03−128400号公報 特開2003−088381号公報 特開2009-95322号公報 特開2009-118749号公報 特開2009-297018号公報 国際公開第2013/018880号
Bjorck L, Kronvall G. (1984) Purification and some properties of streptococcal protein G, a novel IgG-binding reagent. J Immunol. 133, 969-974. Boyle M. D.P., Ed. (1990) Bacterial Immunoglobulin Binding Proteins. Academic Press, Inc., San Diego, CA, USA. Gallagher T, Alexander P, Bryan P, Gilliland GL. (1994) Two crystal structures of the B1 immunoglobulin-binding domain of streptococcal protein G and comparison with NMR. Biochemistry 19, 4721-4729. Gagnon P. (1996) Purification Tools for Monoclonal Antibodies, Validated Biosystems Inc., Tucson, AZ, USA.
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術における問題点を解消し、より温和なpH領域でマウスIgGを精製する方法、具体的には、マウスIgGと中性では一定の親和性を有し、吸着できる一方、僅かに溶出液のpHを下げるだけでマウスIgGが解離・溶出し、結果的に強い酸性条件にすることなしに、中性付近のpH領域でマウスIgGを回収できる方法を提供することである。
本発明者は、特許文献7及び特許文献8記載に記載のプロテインGの細胞膜外ドメイン変異体からなるタンパク質が、マウスIgGのFc部分またはFab部分に対し、適度なアフィニティを有し、それを用いることにより、マウスIgGが解離・溶出しやすくなり、中性付近のpHでマウスIgGを回収できるのではないかと考え、鋭意検討の結果、驚くべきことに、かかる変異体タンパクがマウスIgGに対して中性で親和性をもつ一方で、既存のプロテインAやプロテインGよりも穏やかな中性付近のpHでマウスIgGを溶出させる性質を有することを見出し、本発明の精製方法を開発するに至ったものである。
即ち、本発明の各態様は、以下のとおりである。
[態様1]マウス免疫グロブリンG(IgG)のFc部分またはFab部分を有するタンパク質に対するアフィニティを有するドメイン変異体(人工的に変異させたドメイン)を含むタンパク質を用いて、中性付近のpH領域でマウスIgGを精製する方法。
[態様2]ドメイン変異体が免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメイン変異体である、態様1記載の精製方法。
[態様3]
pH6.5〜5.5でマウスIgGを溶出させることを特徴とする、態様1又は2記載の精製方法。
[態様4]
ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(a)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(a)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質:
(a)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGluを、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36がAsp又はGlu、X37がAsnまたはLeu、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
[態様5]
ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(b)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(b)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質:
(b)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGluを、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36が Asp又はGlu、X37がAsn又はHis、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
[態様6]
ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(c)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(c)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質:
(c)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyValTrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGlu、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又は Lys、X36がAsp又はGlu、X37がAsn又はHis、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
[態様7]
ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(d)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(d)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B1メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
(d)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
[態様8]
ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(e)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(e)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B2メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
(e)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
[態様9]
ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(f)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(f)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
(f)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyValTrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
[態様10]
ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(g)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(g)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
(g)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAspであって、かつX42がGluになる場合を除く。)。
[態様11]
ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(h)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(h)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
(h)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAspであって、かつX42がGluになる場合を除く。)。
[態様12]
ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、態様1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(i)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(i)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
(i)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyValTrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGlnであって、かつX40がAspになる場合を除く。)。
[態様13]ドメイン変異体が以下の以下のアミノ酸配列を有する変異体タンパク質である、態様1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
(j)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValAspAlaAlaThrAlaGluLysValPheLysHisTyrAlaAsnGluHisGlyValHisGlyHisTrpThrTyrAspProGluThrLysThrPheThrValThrGlu。
[態様14]タンパク質が態様4ないし態様13のいずれか一項に記載の変異体タンパク質のタンデム型多量体である、態様1ないし13のいずれか一項に記載の精製方法。
[態様15]多量体を構成するドメイン変異体が互いに同一である、態様14に記載の精製方法。
[態様16]四量体が配列番号39で示されるアミノ酸配列からなる、態様15に記載の精製方法。
[態様17]タンパク質が水不溶性の固相支持体に固定化されて成る充填剤を用いることを特徴とする、態様1〜16のいずれかに記載の精製方法。
[態様18]態様17記載の充填剤を充填したカラムを用いる、態様17記載の精製方法。
抗体は低いpHにより高次構造の変化が促進され、構造変化の起こりやすさが変わってくることを知られている(例えば、「Biophysical Journal 78 (2000), 394-404」及び「Biochimica et Biophysica Acta, 1431 (1999) , 120-131」等)。又、pH5での溶出を可能にする方法(Mol. Biotechnol. Vol.10(1998), P.9-16) は、天然型より中性に近いとはいえpHを酸性にすることには代わりがなく、イムノグロブリンの損傷の懸念は残り、溶出スピードが遅すぎて、産業用工程には向かない、旨の指摘がなされている(WO2008/143199)。
本発明によれば、マウス免疫グロブリンG(IgG)のFc部分またはFab部分を有するタンパク質に対するアフィニティを有するドメイン変異体を含むタンパク質を捕捉剤として利用することによって、驚くべきことに、マウスIgGに対して中性での抗体結合性を維持しつつ、僅かにpHを酸性(pH5.5〜6.5)にするだけで、マウスIgGを解離・溶出できるようになり、酸で変性しやすいマウスIgGに対しても、アフィニティ精製で中性付近のpH領域において酸による変性のリスクなしに回収することが可能となった。
Streptococcus sp. G148由来のプロテインGの遺伝子の構造を示す図である。 プロテインGの抗体結合ドメインのアミノ酸配列を示す図である(下線部はB1ドメインとの相違部分)。 Streptococcus sp. G148由来のプロテインGの遺伝子の塩基配列(配列番号30)を示す図である(下線部が構造遺伝子、太字部が抗体結合ドメインに対応)。 プロテインGの細胞膜外ドメイン変異体の単量体(CGB19H-1D)、本発明のタンデム型三量体(CGB19H-3D)、本発明のタンデム型四量体(CGB19H-4D)、及び本発明のタンデム型五量体(CGB19H-5D)のドメイン構造を示す。 マウスIgGをフィードしたアフィニティクロマトグラフィーの結果を示すグラフである。 組換えPG固定化カラムで得られた溶出液をIsoQuickマウスモノクロナール抗体アイソタイプ判定用ストリップで確認した写真である。 マウス血清をフィードしたアフィニティクロマトグラフィーの結果を示すグラフである。
本発明の精製方法は、マウス免疫グロブリンG(IgG)のFc部分またはFab部分を有するタンパク質に対するアフィニティを有するドメイン変異体(人工的に変異させたドメイン)を含むタンパク質を用いて、中性付近のpH領域でマウスIgGを精製する方法に関する。ここで、「アフィニティを有する」、とは例えば、クロマトグラフィにおいてマウスIgGが吸着できることを指す。
尚、本発明方法において精製の対象となる「マウス免疫グロブリンG(IgG)」は、上記のドメイン変異体(人工的に変異させたドメイン)がアフィニティを有する(又は、特異的に結合する)ことができるFc部分またはFab部分を有するものであれば、その構造又は構成要素に特に制限はなく、当業者に公知の任意の様々な型の抗体分子及びそれらのフラグメント分子を包合する。即ち、通常の(完全な)IgG型抗体分子に加えて、例えば、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体の二量体、二重特異性抗体、ダイアボディ型二重特異性抗体、及び多量体化低分子抗体、並びに、Fabフラグメント、F(ab’)及びFab’等の各種の抗体フラグメントを挙げることが出来る。
本発明の精製方法においては、上記のタンパク質を抗体補足剤として利用するために、タンパク質がアガロースビーズに代表させる水不溶性担体(水不溶性の固相支持体)に固定化されて成る充填剤をガラス管等のカラムに充填したアフィニティカラムを使用することが好ましい。即ち、本発明の精製方法では、アフィニティカラムに充填されたアフィニティ充填剤とマウスIgGとの親和性が、吸着緩衝液中と溶出緩衝液中とで異なることを利用して、マウスIgGを精製するものである。
従って、本発明は、上記タンパク質から成るマウスIgGの補足剤、上記タンパク質が水不溶性の固相支持体に固定化されて成るマウスIgG精製用アフィニティカラムの充填剤、及び、該充填剤を充填したマウスIgG精製用カラム等にも係る。
吸着緩衝液としては、pHが中性付近のものを用い、用いる塩種はpHが調製可能であれば、いずれでもよいが、代表的には、リン酸緩衝液、トリス緩衝液に塩化ナトリウムなどの電解質を溶解させたものを使用する。吸着緩衝液のpHとしては、9.0〜6.5で、好ましくはpH8.0〜7.0のものを用いる。また、溶出緩衝液としては、マウスIgGが溶出するpH領域であればよく、pH6.5〜2.0のものを用いるが、特に本発明では、溶出緩衝液が既存の精製法に比べて温和なpH条件で溶出可能な精製方法であり、本目的に従えば、pH6.5〜5.5のpHのものを用いる。溶出緩衝液の種類としては、当業者に公知のいずれのものでもよく、代表例として、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、グリシン緩衝液等を上げることができる。
本発明の精製方法における操作自体は当業者に公知の通常の操作で実施することが可能である。即ち、通常のアフィニティ精製と同様に、まず、吸着緩衝液で安定化したカラムに精製したいマウスIgGを含むサンプル溶液をインジェクションし、上記充填剤にマウスIgGを吸着させる。その後、吸着緩衝液でカラム中に残る非吸着成分を洗い流したあと、溶出緩衝液で吸着しているマウスIgGを溶出させ、溶出液中にマウスIgGを回収する。尚、吸着緩衝液及び溶出緩衝液の流量(流速)及びカラム温度等のその他のアフィニティ精製の条件は当業者が適宜決めることが出来る。
サンプル溶液は血清・腹水培養液などマウスIgGを含むものであれば、その由来・その他の成分に制限はない。更に、本発明の精製方法においては、精製手段として、ドメイン変異体(人工的に変異させたドメイン)を含むタンパク質とマウスIgGとの間のアフィニティを利用するものであればよく、カラムを使用する方法以外にも、免疫沈降法や磁気ビーズに該タンパク質を固定化したもの等の当業者に公知の任意の手段を用いることが出来る。
本発明で用いるタンパク質に含まれるドメイン変異体としては、免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメイン変異体が好適である。
連鎖球菌由来のタンパク質であるプロテインGは、抗体の一種である免疫グロブリンGのFc領域に対する特異的結合活性を有することが知られており(参照文献1)、この抗体結合性を利用した抗体の精製や除去、および抗体を利用した診断、治療、検査等に有用なタンパク質である。プロテインGは、複数のドメインからなるマルチドメイン型膜タンパク質で、免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性(以下。「抗体結合活性」と呼ぶ)を示すのは、このうちの一部の細胞膜外ドメインである(参照文献2)。たとえば、図1、図3、および[配列番号30]に示すG148株由来のプロテインGの場合、抗体結合活性を示すのは、B1、B2、B3の3つのドメインである(文献によってC1、C2、C3ドメインとも表記される)。また、GX7805株のプロテインGでは3つの抗体結合ドメインが、GX7809のプロテインGでは2つの抗体結合ドメインが存在する。これらは、いずれも60アミノ酸弱の小型タンパク質で、そのアミノ酸配列の間には高い同一性が見られる(図2)。また、プロテインGを切断して各々のドメイン単独を単離しても、抗体結合活性は保たれることが知られている(参照文献3)。
本発明のタンパク質に含まれる上記の細胞膜外ドメイン変異体の好ましい態様として、以下に変異体タンパク質を列記する。
A.本発明の変異体タンパク質の第1の態様は以下の(1)、(2)で示される。
(1)配列番号1または2で示されるアミノ酸配列からなる野生型プロテインG・B1あるいは同B2ドメインタンパク質における、Asp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asn35、Asp36、Gly38、Asp40、Glu42、Thr44のうちのいずれか1個以上のアミノ酸残基を変異対象部位として他のアミノ酸残基に置換した変異体タンパク質であって、該変異対象部位の各アミノ酸残基が、以下(i)〜(iii)のいずれかに示されるアミノ酸残基に置換されたものであることを特徴とする、免疫グロブリンGのFc領域に結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B1あるいはB2ドメインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFc領域に対する弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(i)変異対象部位のアミノ酸残基が非荷電性アミノ酸残基である場合における、荷電性アミノ酸残基への置換
(ii)変異対象部位のアミノ酸残基が荷電性アミノ酸残基である場合における、反対の電荷を示す荷電性アミノ酸残基への置換
(iii)変異対象部位のアミノ酸残基のヒスチジン残基への置換。
(2)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質における、Asp22、Thr25、Lys28、Lys31、Gln32、Asn35、Asp36、Gly38、Asp40、Thr44のうちのいずれか1個以上のアミノ酸残基を変異対象部位として他のアミノ酸残基に置換した変異体タンパク質であって、該変異対象部位の各アミノ酸残基が、以下(i)〜(iii)のいずれかに示されるアミノ酸残基に置換されたものであることを特徴とする、免疫グロブリンGのFc領域に結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFc領域に対する弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(i)変異対象部位のアミノ酸残基が非荷電性アミノ酸残基である場合における、荷電性アミノ酸残基への置換
(ii)変異対象部位のアミノ酸残基が荷電性アミノ酸残基である場合における、反対の電荷を示す荷電性アミノ酸残基への置換
(iii)変異対象部位のアミノ酸残基のヒスチジン残基への置換。

上記(1)および(2)の変異体タンパク質は以下のように選定された変異対象部位及び該部位を置換するアミノ酸残基に基づき設計され、遺伝子工学的手法により得られる。
〔Fcとの結合表面解析にもとづく変異対象部位の選定と置換するアミノ酸残基の特定〕
本発明の変異体タンパク質のアミノ酸配列を設計するための変異を導入する部位は、プロテインG・B2ドメインと免疫グログリンGのFc領域が結合した複合体の立体構造原子座標データ(参照文献4)を用いて選定したものである。弱酸性域におけるプロテインGの細胞膜外ドメインの抗体結合性を低下させるには、Fc領域との結合に直接関与しているプロテインGの細胞膜外ドメインの結合表面のアミノ酸残基およびその周辺のアミノ酸残基を野生型から非野生型に置換すればよい。したがって、まず、プロテインG・B2ドメインと免疫グログリンGのFc領域が結合した複合体において、Fc領域から一定の距離の範囲内に存在するプロテインG・B2ドメインのアミノ酸残基を特定し、これを変異対象部位の候補とする。ついで、アミノ酸置換に伴うプロテインGの細胞膜外ドメインの構造不安定化を最小限にするために、上記の候補のうち、プロテインG・B2ドメインの分子表面に露出しているアミノ酸残基のみを変異対象部位と決定した。
したがって、具体的には、後記実施例に示されるように、上記の距離範囲を6.5オングストローム以内と設定し、かつ露出表面積比を40%以上することで、プロテインG・B2ドメインの野生型アミノ酸配列(配列番号2)のうちの、Asp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asn35、Asp36、Gly38、Asp40、Glu42、Thr44の13個が変異対象部位として選定された。
また、上記したように、プロテインGの各細胞膜外ドメインは配列同一性が極めて高く、B1、B2、B3ドメインの立体構造の差異もほとんどがないことから、B2ドメイン−Fc複合体の立体構造についての知見は、B1及びB3ドメイン−Fc複合体にも適用できる。したがって、B2ドメイン−Fc複合体の立体構造から導いた13個が変異対象部位は、相当する位置に同じ種類のアミノ酸がある限りにおいて、B2ドメインのみならず、B1およびB2ドメインにおいても変異対象部位として選定することができる。即ち、プロテインG・B1ドメインの野生型アミノ酸配列(配列番号1)のうちの、Asp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asn35、Asp36、Gly38、Asp40、Glu42、Thr44の13個が、また、プロテインG・B3ドメインの野生型アミノ酸配列(配列番号3)のうちの、Asp22、Thr25、Lys28、Lys31、Gln32、Asn35、Asp36、Gly38、Asp40、Thr44の10個が変異対象部位として選定された。
一方、該変異対象部位の元のアミノ酸残基を置換するアミノ酸残基は、以下の(i)〜iii)のいずれかを特定した。
(i)変異対象部位の野生型のアミノ酸残基が非荷電性の側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Asn、Gln、Phe、Tyr、Trp、Met、Cys、Pro)の場合は、荷電性の側鎖を有するアミノ酸(Asp、Glu、Lys、Arg、His)に置換する。荷電性アミノ酸は、pHに依存して化学的状態が大きく変化するので、プロテインG・B2ドメインの抗体結合性を中性域と弱酸性域で変化させることができる。
(ii)変異対象部位の野生型のアミノ酸残基が荷電性アミノ酸の場合は、反対の電荷を示す荷電性アミノ酸に置換する。上記と同様に、荷電性アミノ酸は、pHに依存して化学的状態が大きく変化するので、プロテインG・B2ドメインの抗体結合性を中性域と弱酸性域で変化させることができる。
(iii)変異対象部位の野生型のアミノ酸残基がヒスチジン以外の場合は、ヒスチジンに置換する。ヒスチジンは、中性域と弱酸性域で化学的状態が大きく変化するので、プロテインG・B2ドメインの抗体結合性を中性域と弱酸性域で変化させることができる。
具体的には、後記実施例に示されるように、置換位置のアミノ酸残基として、Asp22についてはLys、Arg、またはHisが、Ala24(B1,B2ドメインのみ)、についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Thr25についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys28についてはAsp、Glu、またはHisが、Val29(B1,B2ドメインのみ)についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys31についてはAsp、Glu、またはHisが、Gln32についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asn35についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asp36についてはLys、Arg、またはHisが、Gly38についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asp40についてはLys、Arg、またはHisが、Glu42(B1,B2ドメインのみ)についてはLys、Arg、またはHisが、Thr44についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが特定された。ただし、これらのアミノ酸残基の特定によるアミノ酸配列が、Asn35がLys及び/又は,Asp36がGluに置換されたものであって、該置換箇所以外のアミノ酸配列が野生型プロテインGの各細胞膜ドメインのアミノ酸配列と同じになる場合は除かれる。これにより、後記する本発明者の出願に係るプロテインG細胞膜ドメインの安定性を向上させた変異体タンパク質とは区別される。
B.本発明の変異体タンパク質の第2の態様は以下の(3)で示される。
(3)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなる野生型プロテインG・B1、B2あるいはB3ドメインタンパク質における、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17、Asn35、Asp36、Gly38のうちのいずれか1個以上のアミノ酸残基を変異対象部位として、システインを除く他の種類のアミノ酸残基に置換したものであることを特徴とする、免疫グロブリンGのFc領域に結合活性を有し、かつ各対応する野生型プロテインG・B1、B2あるいはB3ドメインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合性が低下した変異体タンパク質。上記(3)の変異体タンパク質は以下のように選定された変異対象部位及び該部位を置換するアミノ酸残基に基づき設計され、遺伝子工学的手法により得られる。
〔Fabとの結合表面解析にもとづく変異対象部位の選定と置換するアミノ酸残基の特定〕
本発明の変異体タンパク質のアミノ酸配列を設計するための変異を導入する部位は、プロテインG・B3ドメインと免疫グログリンGのFab領域が結合した複合体の立体構造原子座標データ(参照文献5)を用いて選定したものである。プロテインGの細胞膜外ドメインは、免疫グログリンGのFc領域に対しても、Fab領域に対しても結合することが知られている(参照文献2)。したがって、1つの抗体分子は、同時に複数のプロテインGの細胞膜外ドメインと結合することが可能で、このような状態になると抗体とプロテインGの細胞膜外ドメインとの相互作用は多価となり容易に切断することができなくなる。よって、弱酸性域におけるプロテインGの細胞膜外ドメインの抗体結合性を低下させるには、Fab領域との結合に直接関与しているプロテインGの細胞膜外ドメインの結合表面のアミノ酸残基を野生型から非野生型に置換すればよい。したがって、まず、プロテインG・B3ドメインと免疫グログリンGのFab領域が結合した複合体において、Fab領域から一定の距離の範囲内に存在するプロテインG・各細胞膜B3ドメインのアミノ酸残基を特定し、これを変異対象部位の候補とした。ついで、アミノ酸置換に伴うプロテインGの細胞膜外ドメインの構造不安定化を最小限にするために、上記の候補のうち、プロテインG・B3ドメインの分子表面に露出しているアミノ酸残基のみを変異対象部位と決定した。
具体的には、後記実施例に示されるように、上記の距離範囲を4.0オングストローム以内と設定し、かつ露出表面積比を40%以上することで、[配列番号3]で示されるプロテインG・B3ドメインの野生型アミノ酸配列のうちの、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17、Asn35、Asp36、Gly38の10個が変異対象部位として選定された。また、上記したように、プロテインGの各細胞膜外ドメインは前記したように同一性が極めて高く、これらの変異対象部位は、B1、B2、B3のどのドメインにおいても共通に存在する。よって、これらはB3ドメインのみならず、B1およびB2ドメインにおいても変異対象部位として選定することができる。
一方、該変異対象部位の元のアミノ酸残基を置換するアミノ酸残基は、以下の方法で特定することができる。(iV)野生型のアミノ酸とシステイン以外の他の種類のアミノ酸残基に置換する。これにより、システインの導入に伴う架橋反応の危険性をなくしたうえで、野生型のアミノ酸の変異によるFab領域との結合性の低下を導くことができる。
具体的には、後記実施例に示されるように、野生型プロテインG各細胞外ドメインタンパク質を置換するアミノ酸残基として、Lys10についてはLysとCys以外が、Thr11についてはThrとCys以外が、Lys13についてはLysとCys以外が、Gly14についてはGlyとCys以外が、Glu15についてはGluとCys以外が、Thr16についてはThrとCys以外が、Thr17についてはThrとCys以外が、Asn35についてはAsnとCys以外が、Asp36についてはAspとCys以外が、Gly38についてはGlyとCys以外が特定された。ただし、これらのアミノ酸残基の選定によるアミノ酸配列が、Asn35がLys及び/又はAsp36がGluに置換されたものであって、該置換箇所以外のアミノ酸配列が野生型プロテインGの各細胞膜ドメインのアミノ酸配列と同じになる場合は除かれる。これにより、後記する本発明者の出願に係るプロテインG細胞膜ドメインの安定性を向上させた変異体タンパク質とは区別される。
C.本発明の変異体タンパク質の第3の態様は、上記免疫グロブリンFc領域に対する結合性を改良するためのアミノ酸残基の置換とFab領域への結合性を改良するためのアミノ酸残基の置換を共有するものである。
〔FcおよびFabとの結合表面解析にもとづく変異対象部位の選定と置換するアミノ酸残基の特定〕
上記Fcとの結合表面解析にもとづいて特定した変異対象部位と置換するアミノ酸残基と、上記Fabとの結合表面解析にもとづいて特定した変異対象部位と置換するアミノ酸残基と組み合わせて、変異対象部位の選定と置換するアミノ酸残基の特定を行う。具体的には、変異対象部位として、プロテインG・B1、B2ドメインの野生型アミノ酸配列(配列番号1,2)のうちの、Asp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asp40、Glu42、Thr44、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17、Asn35、Asp36、Gly38の20個が変異対象部位として選定される。このうちAsp22、Ala24、Thr25、Lys28、Val29、Lys31、Gln32、Asp40、Glu42 、Thr44はFc領域に対する結合性を改良するためのターゲット部位であり、また、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17は、Fab領域に対する結合性を改良するためのターゲット部位である。ここで、Asn35、Asp36、Gly38は、Fc領域に対する結合性の改良部位であるとともにFab領域に対する結合性の改良部位でもある。したがって、Asn35、Asp36、Gly38に対するFc領域に対する結合性の改良のための上記Aに示すアミノ酸残基に置換は、同時にFab領域に対する結合性の改良のための、システイン残基を除く他のアミノ酸残基への置換でもある。
すなわち、本明細書にいうアミノ酸残基置換の「共有」とは、Fc領域に対する結合性の改良のための変異対象部位とFab領域に対する結合性の改良のための変異対象部位とが異なるように選定した場合において、アミノ酸残基の置換を組み合わせる場合の他に、これら両者の結合性の改良のための変異対象部位として同一の部位を選定し、上記Aに示すアミノ酸残基の置換を行う場合をも意味するものと定義される。
置換するアミノ酸残基として、Asp22についてはLys、Arg、またはHisが、Ala24についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Thr25についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys28についてはAsp、Glu、またはHisが、Val29についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys31についてはAsp、Glu、またはHisが、Gln32についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Asp40についてはLys、Arg、またはHisが、Glu42についてはLys、Arg、またはHisが、Thr44についてはAsp、Glu、Lys、Arg、またはHisが、Lys10についてはLysとCys以外が、Thr11についてはThrとCys以外が、Lys13についてはLysとCys以外が、Gly14についてはGlyとCys以外が、Glu15についてはGluとCys以外が、Thr16についてはThrとCys以外が、Thr17についてはThrとCys以外が、Asn35についてはAsnとCys以外が、Asp36についてはAspとCys以外が、Gly38についてはGlyとCys以外が選定される。
一方、プロテインG・B3ドメインについては、野生型アミノ酸配列(配列番号3)のうちの、Asp22、Thr25、Lys28、Lys31、Gln32、Asp40、Thr44、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17、Asn35、Asp36、Gly38の17個が変異対象部位として選定される。このうちAsp22、Thr25、Lys28、Lys31、Gln32、Asp40、Thr44はFc領域に対する結合性を改良するための変異対象部位であり、また、Lys10、Thr11、Lys13、Gly14、Glu15、Thr16、Thr17は、Fab領域に対する結合性を改良するための変異対象部位である。これにおいてもAsn35、Asp36、Gly38は、Fc領域に対する結合性の改良部位であるとともにFab領域に対する結合性の改良部位でもある点で共通しており、Asn35、Asp36、Gly38に対するFc領域に対する結合性の改良のための上記Aに示すアミノ酸残基に置換は、同時にFab領域に対する結合性の改良のためのシステイン残基を除く他のアミノ酸残基への置換でもあることは、上記プロテインG・B1あるいはB2ドメインと同様である。
ただし、上記アミノ酸残基の選定に基づき設定されるアミノ酸配列が、Asn35がLys及び/又は,Asp36がGluに置換されたものであって、該置換箇所以外のアミノ酸配列が野生型プロテインGの各細胞膜ドメインのアミノ酸配列と同じになる場合は除かれる。これにより、後記する本発明者の出願に係るプロテインG細胞膜ドメインの安定性を向上させた変異体タンパク質とは区別される。
本発明の変異体タンパク質の具体例を挙げれば、以下a)〜c)に示される。
a)野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(a)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(a)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質。
(a)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGluを、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36がAsp又はGlu、X37がAsnまたはLeu、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
b)野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(b)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(b)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質。
(b)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGluを、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36がAsp又はGlu、X37がAsnまたはLeu、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
c)野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(c)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(c)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質。
(c)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyValTrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGlu、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36がAsp又はGlu、X37がAsnまたはLeu、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
なお、上記(a)〜(c)のアミノ酸残基の定義中、ただし書きは、野生型プロテインGの各細胞膜ドメインタンパク質及び後記する本発明者の出願に係るプロテインG細胞膜ドメインの安定性を向上させた変異体タンパク質と区別するためのものである。
さらに具体的な本発明の変異体タンパク質は、以下のd)〜i)に示される。
d)野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(d)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(d)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B1メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(d)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
e)野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(e)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(e)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B2メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(e)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
f)野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(f)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(f)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(f)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyValTrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
g)野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(g)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(g)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(g)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAspであって、かつX42がGluになる場合を除く。)
h)野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の各変異体タンパク質であって、以下の(h)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(h)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(h)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAspであって、かつX42がGluになる場合を除く。)
i)野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の各変異体タンパク質であって、以下の(i)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(i)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質。
(i)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyValTrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
(上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGlnであって、かつX40がAspになる場合を除く。)なお、上記(d)〜(i)のアミノ酸残基の定義中、ただし書きは、野生型プロテインGの各細胞膜ドメインタンパク質を区別するためのものである。
上記から明らかなように、本発明の変異体タンパク質の設計において、選定される変異対象部位及び該部位を置換するアミノ酸残基は、各一つに限られるものではないので、変異対象部位及び該部位を置換するアミノ酸残基の中から適宜選択して、変異体タンパク質のアミノ酸配列を設計することができる。たとえば、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合性の改良のため、変異対象部位として、野生型プロテインG・B1あるいはB2ドメインのアミノ酸配列中のAsp22、Thr25、Gln32、Asp40、およびGlu42を選択し、これに対応する置換するアミノ酸残基として、Asp22His、Thr25His、Gln32His、Asp40His、およびGlu42Hisを選択し、いずれか1のアミノ酸置換あるいはこれらアミノ酸置換を組み合わせた最大5変異箇所/5置換までの点変異あるいは多重変異をプロテインG・B1あるいはB2ドメインの野生型アミノ酸配列(配列番号1、2)に対して行うことで、複数の変異体タンパク質のアミノ酸配列を設計することができる。上記した、(g)、(h)のアミノ酸配列は、このような最大5変異箇所/5置換までの点変異及び多重変異を示したものであり、本発明の変異体タンパク質の一例である。
また、上記免疫グロブリンGのFc領域に対する結合性の改良に加え、さらにFab領域に対する結合性の改良をも加えた変異体タンパク質の例として、例えば、野生型プロテインG・B1あるいはB2ドメインのThr11およびThr17を選択し、これに対応する置換するアミノ酸残基として、Thr11ArgおよびThr17Ileを選択し、これらを上記最大5変異箇所/5置換までの変異に加えて導入した最大7変異箇所/7置換の変異をプロテインG・B1あるいはB2ドメインの野生型アミノ酸配列に対して行った変異体タンパクを挙げることができる。上記した(d)及び(e)のアミノ酸配列は、このような最大7変異箇所/7置換までの点変異あるいは多重変異の例を示したものであり、これらアミノ酸配列のうち、Thr11Arg及び/またはThr17Ileの変異を有し、かつ上記Asp22His、Thr25His、Gln32His、Asp40His、およびGlu42Hisで示される変異のうちいずれか一以上の変異を有するものは、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合性の改良に加え、さらにFab領域に対する結合性も改良されたものとなる。
一方、上記(i)のアミノ酸配列は、野生型プロテインG・B3の変異体タンパク質のアミノ酸配列の例ではあるが、上記Fc領域に対する結合性改良のための変異であるAsp22His、Thr25His、Gln32His、Asp40Hisのうちいずれか1以上、最大4変異箇所/4置換までの変異となっている他は(g)、(h)のアミノ酸配列と同様に設計されたものである。また、上記(f)のアミノ酸配列は、野生型プロテインG・B3の変異体タンパク質のアミノ酸配列の例ではあるが、上記Fc領域に対する結合性改良のための変異であるAsp22His、Thr25His、Gln32His、Asp40His、上記Fab領域に対する結合性の改良のための変異であるThr11Arg、Thr17Ileのうちいずれか1以上、最大6変異箇所/6置換までの変異となっている他は(d)、(e)のアミノ酸配列と同様に設計されたものである。
本発明においては、このような変異に加えて、さらに、プロテインGの細胞膜外ドメインの性質を好ましいものに変化させることが既に知られている変異をさらに加えることができる。例えば、プロテインGの細胞膜外ドメインの熱安定性、変性剤に対する化学的安定性、および分解酵素に対する耐性を向上させる変異手法が、本発明者らの従前の研究により明らかにされている(特許文献6)。すなわち、Asn35Lys、Asp36Glu、Asn37His、Asn37Leu、Asp47Pro、Ala48Lys、およびAla48Gluのうち一以上の変異の導入は、プロテインG・B1、B2あるいはB3ドメインの上記安定性を向上させる。これらの変異は、本発明における免疫グロブリンGのFc領域に対する結合特性及び/又はFab領域に対する結合特性の改良のための上記変異と組み合わせることにより、本発明の変異体タンパク質はより有用なものとなる。
例えば、これらの変異を上記したような最大7変異箇所/7置換に加えて導入した最大12変異箇所/14置換までの多重変異をプロテインG・B1あるいはB2ドメインの野生型アミノ酸配列(配列番号1,2)に対して行うことで、さらに安定化された、複数の変異体タンパク質のアミノ酸配列を設計することができる。
上記した、(a)、(b)のアミノ酸配列は、このような最大12変異箇所/14置換の点変異及び多重変異を示したものであるが、野生型の配列に加え安定化のためだけの変異は除かれている。
これらの(a)、(b)のアミノ酸配列中、Asn35Lys、Asp36Glu、Asn37His、Asn37Leu、Asp47Pro、Ala48Lys及び Ala48Gluのうち、いずれか一以上の変異の導入は、上記の最大7変異箇所/7置換の効果である免疫グロブリンGのFab領域に対する結合特性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合特性の改良に加え、プロテインG・B1あるいはB2ドメイン変異体タンパク質の安定性を向上させる。
一方、上記(c)は、野生型プロテインG・B3の変異体タンパク質のアミノ酸配列の例を示し、最大11変異箇所/13置換の点変異及び多重置換を示しているが、上記Fc領域に対する結合性改良のための変異のための、Asp22His、Thr25His、Gln32His、Asp40Hisのうちいずれか1以上、最大4変異箇所/4置換までの変異となっている他は(a)、(b)のアミノ酸配列と同様に設計されたものである。したがって、(c)のアミノ酸配列中、Asn35Lys、Asp36Glu、Asn37His、Asn37Leu、Asp47Pro、Ala48Lys及び Ala48Gluのうち、いずれか一以上の変異の導入は、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合特性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合特性の改良に加え、同様にプロテインG・B3ドメイン変異体タンパク質の安定性を向上させる。
本発明における変異対象部位は、上記したようにプロテインGのB2ドメイン−Fc複合体及び同B3ドメイン−Fab複合体の各立体構造原子座標データを用いて選定されたものであるが、B1ドメインは、アミノ酸配列のみならず(図2)、立体構造においてもB2、ドメインと差異はほとんどないから、上記選定された変異の効果は、それぞれのドメインに等しく有効である。また、B3ドメインは、アミノ酸配列のみならず(図2)、立体構造においてもB2ドメインと差異はほとんどないから、B2ドメインにおける上記選定された変異の効果は、各々のドメインに等しく有効である。
例えば、上記選定された12変異箇所の野生型アミノ酸残基は、上記B2ドメインと上記B1ドメインの間ですべて共通である。したがって、上記選定された5変異箇所/5置換、あるいは7変異箇所/7置換、あるいは12変異箇所/14置換を組み合わせた点変異および多重変異は、B2ドメインと同一性の高いB1アミノ酸配列に対して導入して、B1ドメインの変異体タンパク質のアミノ酸配列とすることができる。また、上記選定された12変異箇所の野生型アミノ酸は、42位を除けば上記B2ドメインと上記B3ドメインの間ですべて共通である(42位の野生型アミノ酸残基は、B2ドメインではGlu42、B3ドメインではVal42)。したがって、上記選定された5変異箇所/5置換、あるいは7変異箇所/7置換、あるいは12変異箇所/14置換から、42位の変異箇所のみを除いた4変異箇所/4置換、あるいは6変異箇所/6置換、あるいは11変異箇所/13置換を組み合わせた点変異および多重変異は、B2ドメインと同一性の高いB3ドメインのアミノ酸配列に対して導入して、B3ドメインの変異体タンパク質のアミノ酸配列とすることができる。このことは、後記実施例に示されるように、プロテインGのB2ドメイン−Fc複合体及び同B3ドメイン−Fab複合体の各立体構造原子座標データを用いて選定されたB1ドメインの変異体タンパク質が、意図どおりの性能を有していることからも明らかである。
以上、本発明の変異体タンパク質のアミノ酸配列は、一つに限定されず、複数存在するが、これらのうち、好ましい配列を具体的に示すと、例えば、[配列番号13]、[配列番号14]、[配列番号15]、[配列番号16]、[配列番号17]、[配列番号18]、[配列番号19]、または[配列番号20]で表されるアミノ酸配列が挙げられる。
[配列番号13]で示される変異体タンパク質は、[配列番号1]で示されるプロテインG・B1ドメインの野生型アミノ酸配列に対して、プロテインGの細胞膜外ドメインの熱安定性、変性剤に対する化学的安定性、および分解酵素に対する耐性を向上させることが発明者らの従前の研究により明らかにされている部位に変異を導入したものであり、[配列番号14]、[配列番号15]、[配列番号19]、および[配列番号20]で示される変異体タンパク質は、さら加えて、Fcとの結合表面解析にもとづき選定した部位に変異を導入したものである。
一方、[配列番号16]、[配列番号17]、および[配列番号18]で示される変異体タンパク質は、[配列番号1]で示されるプロテインG・B1ドメインの野生型アミノ酸配列に対して、プロテインGの細胞膜外ドメインの熱安定性、変性剤に対する化学的安定性、および分解酵素に対する耐性を向上させることが発明者らの従前の研究により明らかにされている部位と、Fabとの結合表面解析にもとづき選定した部位とに変異を導入したものである。
本発明の変異体タンパク質は、抗体あるいは免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に結合活性を有し、野生型のプロテインGの各細胞膜外ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下する限り、上記本発明の変異体タンパク質のいずれかで示されるアミノ酸配列において、一個もしくは数個(例えば、2個〜5個)のアミノ酸残基に欠失、置換、挿入、付加などの変異が生じても良く、従って、それらは基準となる各アミノ酸配列に対して、配列同一性が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上である。
更に、本発明方法で用いるタンパク質に含まれるドメイン変異体として、以下の特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドを挙げることができる。
(j)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValAspAlaAlaThrAlaGluLysValPheLysHisTyrAlaAsnGluHisGlyValHisGlyHisTrpThrTyrAspProGluThrLysThrPheThrValThrGlu。
本発明の精製方法で用いるタンパク質は、このようなドメイン変異体のタンデム型多量体から成るものであることが好ましい。該多量体は上記野生型に準じて、適宜、例えば、二量体、三量体、四量体、又は五量体とすることが出来る。更に、本発明のタンパク質に含まれる多量体を構成する夫々の細胞膜外ドメイン変異体は互いに異なるか、又は、互いに同一である。このような四量体の一例として、例えば、本願明細書の実施例に記載されている、配列番号39で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(CGB19H-4D)を挙げることができる。
尚、各細胞膜外ドメイン変異体がリンカー配列によって連結されていても良い。このようなリンカー配は、各変異体のアミノ酸配列等を考慮して、当業者が適宜設計し調製することが出来る。
又、本発明のタンパク質は、任意の他タンパク質のアミノ酸配列をN末端側もしくはC末端側に連結した融合型アミノ酸配列からなる融合タンパク質としても良い。たとえば、[アミノ酸配列(a)]−リンカー配列E−タンパク質A、あるいは、タンパク質B−リンカー配列F−[アミノ酸配列(a)]−リンカー配列G−タンパク質C−リンカー配列H−[アミノ酸配列(c)] としても良い。このような融合タンパク質に使用する他のアミノ酸配列としては、例えば、図4または[配列番号31]で示すoxaloacetate decarboxylase alpha-subunit c-terminal domain(OXADac)のアミノ酸配列が挙げられる。この場合のOXADac−プロテインG変異体融合タンパク質は、OXADac領域に由来するアビジン結合活性とプロテインG変異体領域に由来する抗体結合活性の複数の機能を単一分子で担うことが、後記実施例で示すように可能である。
例えば、本発明のタンパク質をHisタグ付きあるいは他のタンパク質との融合タンパク質の形態で合成する場合、合成した後にタグと変異体タンパク質の間を、あるいは他のタンパク質と本発明のタンパク質の間を配列特異的タンパク分解酵素で分解しても、本発明のタンパク質のN末端側もしくはC末端側に1乃至数個のアミノ酸残基が残る場合もあり、また、大腸菌等を用いて本発明のタンパク質を生産する際には、N末端側に開始コドン由来のメチオニン等が付加されることがあるが、これらのアミノ酸残基の付加により、以下の示すような本発明のタンパク質の活性は変わらない。また、これらのアミノ酸残基の付加により、設計された変異が及ぼす効果を失うこともない。したがって、本発明のタンパク質は当然これらの変異も含む。なお、このようなアミノ酸残基の付加のない本発明のタンパク質を作成するためには、たとえば、大腸菌等を用いて生産したタンパク質を、さらにメチオニルアミノペプチダーゼ等の酵素を用いて、N末のアミノ酸残基を選択的に切断し(参照文献7)、反応混合物よりクロマトグラフィー等で分離精製することで、得ることができる。
1.タンパク質の製造
(1)遺伝子工学的手法によるタンパク質の製造
a.変異体タンパク質をコードする遺伝子
本発明においては、上記設計されたタンパク質を製造するため、遺伝子工学的方法を使用することできる。
このような方法に使用する遺伝子は、上記A〜Cに示されるタンパク質、より具体的には、上記(a)〜(i)のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードするか、あるいは(a)〜(i)のいずれかで示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であって、かつ抗体あるいは免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に結合活性を有し、かつ中性域に比べて弱酸性域での結合活性が低下するタンパク質をコードする核酸からなるものであって、たとえば、より具体的には、[配列番号22]〜[配列番号29]で示されるいずれかの塩基配列からなる核酸である。
また、本発明において使用する遺伝子としては、以上の核酸の塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、かつ抗体あるいは免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に結合活性を有し、かつ対応する各野生型プロテインG・細胞膜外ドメインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質するタンパク質をコードする核酸もあげられる。ここで、ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、高い同一性(同一性が60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは90%以上)を有する核酸がハイブリダイズする条件をいう。より具体的には、ナトリウム濃度が150〜900mM、好ましくは600〜900mMであり、温度が60〜68℃、好ましくは65℃での条件をいう。例えばハイブリダイゼーション条件が65℃であり、洗浄の条件が0.1%SDSを含む0.1×SSC中で65℃、10分の場合に、慣例的な手法、例えばサザンブロット、ドットブロットハイブリダイゼーションなどによってハイブリダイズすることが確認された場合には、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするといえる。
本発明のタンパク質をコードする遺伝子としては、本発明のタンパク質の所望の構造に応じて、以上の核酸と上記任意のリンカー配列をコードする核酸を含む。タンデム型多量体を構成する各変異体タンパク質をコードする核酸とリンカー配列をコードする核酸がそれぞれ交互に複数連結したものでもよく、または該核酸と任意のタンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸とを連結し、融合型アミノ酸配列をコードするように設計してもよい。
b.遺伝子、組み替えベクターおよび形質転換体
前記した本発明の遺伝子は、化学合成、PCR、カセット変異法、部位特異的変異導入法などにより合成することができる。たとえば、末端に20塩基対程度の相補領域を有する100塩基程度までのオリゴヌクレオチドを複数化学合成し、これらを組み合わせてオーバーラップ伸長法(参照文献8)を行うことにより目的の遺伝子を全合成することができる。
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに上記の塩基配列を含む遺伝子を連結(挿入)することにより得ることができる。本発明で使用するベクターとしては、宿主中で複製可能なもの又は目的の遺伝子を宿主ゲノムに組み込み可能なものであれば特に限定されない。例えば、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどが挙げられる。
プラスミドDNAとしては、放線菌由来のプラスミド(例えばpK4,pRK401,pRF31等)、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322,pBR325,pUC118,pUC119,pUC18等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110,pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13,YEp24,YCp50等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(λgt10、λgt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
ベクターに遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。遺伝子は、本発明の変異体タンパク質が発現されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明のベクターには、プロモーター、遺伝子の塩基配列のほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)、開始コドン、終止コドンなどを連結することができる。 また、製造するタンパク質の精製を容易にするためのタグ配列を連結することもできる。タグ配列としては、Hisタグ、GSTタグ、MBPタグ、BioEaseタグなどの公知のタグをコードする塩基配列を利用することができる。
遺伝子がベクターに挿入されたか否かの確認は、公知の遺伝子工学技術を利用して行うことができる。たとえば、プラスミドベクターなどの場合、コンピテントセルを用いてベクターをサブクローニングし、DNAを抽出後、DNAシーケンサーを用いてその塩基配列を特定することで確認できる。他のベクターについても細菌あるいは他の宿主を用いてサブクローニング可能なものは、同様の手法が利用できる。また、薬剤耐性遺伝子などの選択マーカーを利用したベクター選別も有効である。
形質転換体は、本発明の組換えベクターを、本発明の変異体タンパク質が発現し得るように宿主細胞に導入することにより得ることができる。形質転換に使用する宿主としては、タンパク質又はポリペプチドを発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、細菌(大腸菌、枯草菌等)、酵母、植物細胞、動物細胞(COS細胞、CHO細胞等)、昆虫細胞が挙げられる。
細菌を宿主とする場合は、組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、開始コドン、本発明の変異体タンパク質をコードする核酸、転写終結配列により構成されていることが好ましい。大腸菌としては、例えばエッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)BL21などが挙げられ、枯草菌としては、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などが挙げられる。細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばヒートショック法、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などが用いられる。酵母への組換えベクターの導入方法は、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞等が用いられる。動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞などが用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。
遺伝子が宿主に導入されたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等により行うことができる。例えば、形質転換体からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。ついで、PCRの増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SyberGreen液等により染色し、増幅産物を1本のバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。
c.形質転換体培養によるタンパク質の取得
組替えタンパク質として製造する場合、本発明のタンパク質は、上述の形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。培養物とは、培養上清、培養細胞若しくは培養菌体又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地は、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が挙げられる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、20〜37℃で12時間〜3日間行う。
培養後、本発明のタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、超音波処理、凍結融解の繰り返し、ホモジナイザー処理などを施して菌体又は細胞を破砕することにより該タンパク質を採取する。また、該タンパク質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から本発明のタンパク質を単離精製することができる。
また、タンパク質の生合成反応にかかわる因子(酵素、核酸、ATP、アミノ酸など)のみを混合させた、いわゆる無細胞合成系を利用すると、生細胞を用いることなく、ベクターから本発明の変異体タンパク質を試験管内で合成することができる(参照文献9)。その後、前記と同様の精製法を用いて、反応後の混合溶液から本発明の変異体タンパク質を単離精製することができる。
単離精製した本発明のタンパク質が、目的通りのアミノ酸配列からなるタンパク質であるかを確認するため、該タンパク質を含む試料を分析する。分析方法としては、SDS-PAGE、ウエスタンブロッティング、質量分析、アミノ酸分析、アミノ酸シーケンサーなどを利用することができる(参照文献10)。
(2)他の手法によるタンパク質の製造
本発明のタンパク質は、有機化学的手法、例えば固相ペプチド合成法などによっても製造することができる。このような手法を利用したタンパク質の生産方法は当技術分野で周知であり、以下に簡潔に説明する。
固相ペプチド合成法により化学的にタンパク質を製造する場合、好ましくは自動合成機を利用して、活性化されたアミノ酸誘導体の重縮合反応を繰り返すことにより、本発明のタンパク質のアミノ酸配列を有する保護ポリペプチドを樹脂上で合成する。ついで、この保護ポリペプチドを樹脂上から切断すると共に側鎖の保護基も同時に切断する。この切断反応には、樹脂や保護基の種類、アミノ酸の組成に応じて適切なカクテルがあることが知られている(参照文献11)。この後、有機溶媒層から粗精製タンパク質を水層に移し、目的のタンパク質を精製する。精製法としては、逆相クロマトグラフィーなどを利用することができる(参照文献11)。
2.タンパク質の固定化
本発明の精製方法に使用するタンパク質は、その抗体結合性を利用して、抗体等の捕捉剤として利用する。
本発明の抗体捕捉剤は、本発明のタンパク質を含む限りにおいて、どのような形態であってもよいが、好ましくは、本発明の変異体タンパク質を水不溶性の固相支持体に固定化した形態が適切である。用いる水不溶性担体としては、ガラスビーズ、シリカゲルなどの無機担体、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレンなどの合成高分子や結晶性セルロース、架橋セルロース、架橋アガロース、架橋デキストランなどの多糖類からなる有機担体、さらにはこれらの組み合わせによって得られる有機-有機、有機-無機などの複合担体などが挙げられるが、中でも親水性担体は非特異吸着が比較的少なく、抗体あるいは免疫グロブリンGあるいは免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質の選択性が良好であるため好ましい。ここでいう親水性担体とは、担体を構成する化合物を平板状にしたときの水との接触角が60度以下の担体を示す。この様な担体としてはセルロース、キトサン、デキストラン等の多糖類、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸グラフト化ポリエチレン、ポリアクリルアミドグラフト化ポリエチレン、ガラスなどからなる担体が代表例として挙げられる。
市販品としては多孔質セルロースゲルであるGCL2000、GC700、アリルデキストランとメチレンビスアクリルアミドを共有結合で架橋したSephacryl S-1000、アクリレート系の担体であるToyopearl、アガロース系の架橋担体であるSepharoseCL4B、エポキシ基で活性化されたポリメタクリルアミドであるオイパーギットC250L等を例示することができる。ただし、本発明においてはこれらの担体、活性化担体のみに限定されるものではない。上述の担体はそれぞれ単独で用いてもよいし、任意の2種類以上を混合してもよい。又、本発明に用いる水不溶性担体としては、本抗体捕捉剤の使用目的および方法からみて、表面積が大きことが望ましく、適当な大きさの細孔を多数有する、すなわち、多孔質であることが好ましい。
担体の形態としては、ビーズ状、線維状、膜状(中空糸も含む)など何れも可能であり、任意の形態を選ぶことができる。特定の排除限界分子量を持つ担体作製の容易さからビーズ状が特に好ましく用いられる。ビーズ状の平均粒径は10〜2500μmのものが使いやすく、とりわけ、リガンド固定化反応のしやすさの点から25μmから800μmの範囲が好ましい。
さらに担体表面には、リガンドの固定化反応に用いうる官能基が存在しているとリガンドの固定化に好都合である。これらの官能基の代表例としては、水酸基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、チオール基、シラノール基、アミド基、エポキシ基、サクシニルイミド基、酸無水物基、ヨードアセチル基などが挙げられる。
上記担体への変異体タンパク質の固定化においては、変異体タンパク質の立体障害を小さくすることにより捕捉効率を向上させ、さらに非特異的な結合を抑えるために、親水性スペーサーを介して固定化することが、より好ましい。親水性スペーサーとしては、例えば、両末端をカルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基などで置換したポリアルキレンオキサイドの誘導体を用いるのが好ましい。
上記の担体へ導入される変異体タンパク質およびスペーサーとして用いられる有機化合物の固定化方法及び条件は特に限定されるものではないが、一般にタンパク質やペプチドを担体に固定化する場合に採用される方法を例示する。担体を臭化シアン、エピクロロヒドリン、ジグリシジルエーテル、トシルクロライド、トレシルクロライド、ヒドラジンなどと反応させて担体を活性化し(担体が元々持っている官能基よりリガンドとして固定化する化合物が反応しやすい官能基に変え)、リガンドとして固定化する化合物と反応、固定化する方法、また、担体とリガンドとして固定化する化合物が存在する系にカルボジイミドのような縮合試薬、または、グルタルアルデヒドのように分子中に複数の官能基を持つ試薬を加えて縮合、架橋することによる固定化方法が挙げられるが、捕捉剤の滅菌時または利用時に蛋白類が担体より容易に脱離しない固定化方法を適用することがより好ましい。
3.タンパク質および抗体捕捉剤の性能確認試験
上記のようにして製造された変異体タンパク質及びタンパク質(以下、単に「タンパク質」ともいう)、及び抗体捕捉剤は、以下の性能確認試験を行い良好なものを選択することができるが、本発明のタンパク質および抗体捕捉材はいずれも良好な性能を有していた。
(1)抗体結合性試験
本発明のタンパク質の抗体結合性は、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、プルダウンアッセイ、ELISA (Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)、表面プラズモン共鳴(SPR)法などを利用して確認・評価することができる。中でもSPR法は、生体間の相互作用をラベルなしでリアルタイムに経時的に観察することが可能であることから、変異体タンパク質の結合反応を速度論的観点から定量的に評価することができる。
また、水不溶性の固相支持体に固定化した変異体タンパク質の抗体結合性は、上記のSPR法や液体クロマトグラフィー法で確認・評価することができる。中でも液体クロマトグラフィー法は、抗体結合性に及ぼすpH依存性を的確に評価することができる。
(2)タンパク質の熱安定性試験
本発明の変異体タンパク質の熱安定性は、円偏光二色性(CD)スペクトル、蛍光スペクトル、赤外分光法、示差走査熱量測定法、加熱後の残留活性などを利用して評価することができる。中でもCDスペクトルは、タンパク質の二次構造の変化を鋭敏に反映する分光学的分析方法であることから、変異体タンパク質の温度に対する立体構造の変化を観測し、構造安定性を熱力学的に定量的に評価することができる。
〔参照文献〕
参照文献1;Bjorck L, Kronvall G. (1984) Purification and some properties of streptococcal protein G, a novel IgG-binding reagent. J Immunol. 133, 69-74.
参照文献2;Boyle M. D.P., Ed. (1990) Bacterial Immunoglobulin Binding Proteins. Academic Press, Inc., San Diego, CA.
参照文献3;Gallagher T, Alexander P, Bryan P, Gilliland GL. (1994) Two crystal structures of the B1 immunoglobulin-binding domain of streptococcal protein G and comparison with NMR. Biochemistry 19, 4721-4729.
参照文献4;Sauer-Eriksson AE, Kleywegt GJ, Uhlen M, Jones TA. (1995) Crystal structure of the C2 fragment of streptococcal protein G in complex with the Fc domain of human IgG. Structure 3, 265-278.
参照文献5;Derrick JP, Wigley DB. (1994) The third IgG-binding domain from streptococcal protein G. An analysis by X-ray crystallography of the structure alone and in a complex with Fab. J Mol Biol. 243, 906-918.
参照文献6;Alexander P, Fahnestock S, Lee T, Orban J, Bryan P. (1992) Thermodynamic analysis of the folding of the streptococcal protein G IgG-binding domains B1 and B2: why small proteins tend to have high denaturation temperatures. Biochemistry 14, 3597-3603.
参照文献7;D'souza VM, Holz RC. (1999) The methionyl aminopeptidase from Escherichia coli can function as an iron(II) enzyme. Biochemistry 38, 11079-11085.
参照文献8;Horton R. M., Hunt H. D., Ho S. N., Pullen J. M. and Pease L. R. (1989). Engineering hybrid genes without the use of restriction enzymes: gene splicing by overlap extension. Gene 77, 61-68.
参照文献9;岡田雅人、宮崎香(2004)タンパク質実験ノート(上)、羊土社
参照文献10;大野茂男、西村善文監修(1997)タンパク質実験プロトコール1−機能解析編、秀潤社
参照文献11;大野茂男、西村善文監修(1997)タンパク質実験プロトコール2−構造解析編、秀潤社
なお、本明細書においては、各種アミノ酸残基を次の略号で記載する。Ala;L-アラニン残基、Arg;L-アルギニン残基、Asp;L-アスパラギン酸残基、Asn;L-アスパラギン残基、Cys;L-システイン残基、Gln;L-グルタミン残基、Glu;L-グルタミン酸残基、Gly;L-グリシン残基、His;L-ヒスチジン残基、Ile;L-イソロイシン残基、Leu;L-ロイシン残基、Lys;L-リジン残基、Met;L-メチオニン残基、Phe;L-フェニルアラニン残基、Pro;L-プロリン残基、Ser;L-セリン残基、Thr;L-スレオニン残基、Trp;L-トリプトファン残基、Tyr;L-チロシン残基、Val;L-バリン残基。また本明細書においては、ペプチドのアミノ酸配列を、そのアミノ末端(以下N末端という)が左側に位置し、カルボキシル末端(以下C末端という)が右側に位置するように、常法に従って記述する。
より具体的には、本発明のタンパク質に含まれる上記の各ドメイン変異体及びそれから成るタンデム型多量体は、例えば、特許文献7又は特許文献8に記載の方法に従って調製することが出来る。例えば、特許文献8には以下の内容が具体的に開示されている。
実施例1においては、[配列番号1]で示されるプロテインG・B1ドメインの野生型アミノ酸配列、[配列番号2]で示されるプロテインG・B2ドメインの野生型アミノ酸配列及び[配列番号3]で示されるプロテインG・B3ドメインの野生型アミノ酸配列に基づき、プロテインGのB1、B2、あるいはB3ドメインに変異を導入した本発明に用いるタンパク質に含まれる変異体タンパク質(以降、「改良型プロテインG」と呼ぶ)のアミノ酸配列を設計するための変異を導入する部位を選定し、置換するアミノ酸残基を特定することが記載されている。
実施例2では、選定した変異対象部位と上記特定した置換するアミノ酸残基の情報を利用して、[配列番号4] 〜[配列番号19]で示される複数の改良型プロテインGのアミノ酸配列を設計し、更に、具体的アミノ酸配列として[配列番号13]〜[配列番号20]を最終的に選別し、この配列を示す改良型プロテインGを実際に合成し、その分子特性を評価したことが記載されている。
実施例3では、改良型プロテインGのアミノ酸配列をコードする核酸の塩基配列([配列番号13]〜[配列番号20])及びOxaloacetate decarboxylase alpha-subunit c-terminal domain (OXADac)の塩基配列[配列番号31] を用いた、変異体タンパク質の塩基配列について記載されている。
実施例4では、[配列番号21]〜[配列番号29]の塩基配列からなるPG遺伝子を用いて、改良型プロテインGをコードする遺伝子を含むプラスミドベクターを合成し、ついで大腸菌を用いたOxaloacetate decarboxylase alpha-subunit c-terminal domain (OXADac) [配列番号31]と変異体タンパク質の融合タンパク質の製造について記載されている。
実施例5では、各種プライマー([配列番号32]〜[配列番号35])を用いて、改良型プロテインGをコードする遺伝子を含むプラスミドベクターを合成し、ついで大腸菌を用いたMet付加改良型プロテインGの製造について記載されている。
実施例6では、改良型プロテインGの純度をポリアクリルアミドゲル電気泳動法で確認したこと、実施例7では、改良型プロテインGの分子量をMALDI-TOF型質量分析計で計測することで、製造したタンパク質を同定したこと、実施例8では、OXADac-PG融合タンパク質を固定化したカラムを用いてpH勾配アフィニティクロマトグラフィーを行い、モノクローナル抗体の溶出するpHを調べることで、改良型プロテインGの弱酸性域での抗体解離性を評価したこと、実施例9では、OXADac-PG融合タンパク質を固定化したカラムを用いてステップワイズpHアフィニティクロマトグラフィーを行い、モノクローナル抗体の溶出を、いくつかのpHで調べることで、改良型プロテインGの弱酸性域での抗体解離性を評価したこと、実施例10では、変異体タンパク質(プロテインG変異体)の結合解離性を表面プラズモン共鳴(SPR)法により評価したこと、実施例11では、中性領域、およびヒスチジン残基の95%以上がプロトン化する弱酸性領域において、変異体タンパク質の抗体結合性を表面プラズモン共鳴(SPR)法により評価したこと、実施例12では、変異体タンパク質の熱安定性を評価したこと、実施例13では、変異体タンパク質の単結晶を作成し、立体構造をX線回折解析により決定したことが記載されている。
更に、実施例14では、カルボキシル末端側にシステイン残基、Hisタグを付加した三量体野生型PG(CGB01H-3D,配列番号36) または本発明のタンパク質である変異型PGのタンデム型三量体(CGB19H-3D,配列番号37)をコードする 遺伝子を組み込んだ2種の人工合成プラスミドを用いた、プロテインGの細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体の製造及び該タンパク質を用いるアフィニティクロマトグラフィーカラムの作成及び当該カルムによるヒトIgG1抗体でもIgG3抗体の精製等に関して記載されている。
実施例15では、IgG1タイプのヒト化モノクローナル抗体との抗体結合解離性に関してプロテインGの細胞膜外ドメイン変異体のタンデム型多量体と同単量体との比較が記載されている。
実施例16では、カルボキシル末端にシステイン残基、Hisタグを付加した変異型PGの単量体変異型PG(CGB19H-1D、図4、配列番号38)、変異型PGのタンデム型四量体PG(CGB19H-4D、図4、配列番号39)、および変異型PGのタンデム型五量体PG(CGB19H-5D、図4、配列番号40)をコードする遺伝子を組み込んだ3種の人工合成発現用プラスミドを用いた、プロテインGの細胞膜外ドメイン変異体の単量体及びタンデム型四量体、五量体の製造に関して記載されている。
実施例17では、プロテインGの細胞膜外ドメイン変異体の単量体およびタンデム型多量体をカルボキシル末端のシステイン残基を介して固相に固定化して、IgG1タイプのヒト化モノクローナル抗体に対する各変異タンパク質の抗体結合性をSPR法により比較評価したことが記載されている。
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明のプロテインGの細胞膜外ドメイン変異体の製造及び該タンパク質を用いるカラムの作製
(1)組換えPG発現プラスミドの作製
特許文献7又は8記載の方法によりカルボキシル末端にシステイン残基、Hisタグを付加したタンデム型四量体PG(CGB19H-4D、配列番号39)遺伝子を組み込んだ組換えPG発現プラスミドを合成した。
(2)組換えPGの発現と精製
組換えPG発現プラスミドによって発現用大腸菌BL21(DE3)株 (Novagen) を形質転換した。前培養した形質転換体をLB培地に継代し、O.D.600 = 0.8〜1.0になるまで振とう培養した。目的タンパク質を発現させるため0.5mM IPTGを加え、さらに37℃で3時間振とう培養した。回収した菌体をPBSに懸濁し、超音波破砕を行った後遠心分離し、得られた上清を全タンパク質溶液とした。HisTrap FF (GE Healthcare Bioscience) 1mlカラムに組換えPGを吸着させ、20mMイミダゾールにて洗浄後、500mMイミダゾールにて溶出し、精製タンパク質とした。
(3)組換えPGの固定化とカラム作製
Sepharose4FastFlow(GE Healthcare)をガラスフィルターでろ別し、超純水で洗浄して担体10mlを得た。フラスコに担体を移液し、2M水酸化ナトリウム水溶液3mlとブタンジオールジグリシジルエーテル 4gを加え25℃で4時間振とうして反応させた。ガラスフィルターでろ別し、超純水で洗浄して活性化担体を得た。活性化担体1mLをガラスフィルターに採取してカップリング緩衝液(0.1Mリン酸ナトリウム、1.0M硫酸ナトリウム、1mM EDTA、pH 8.0)で洗浄した。活性化担体をフラスコに移し、組換えPGが6mg/mlの組換えPG含有溶液を1.3ml、カップリング緩衝液2mLを加え、37℃、150rpmで16時間振とうして固定化した。ガラスフィルターでろ別し、カップリング緩衝液で洗浄した。次いでフラスコに担体を移し、1Mチオグリセロール、0.1Mリン酸ナトリウム、1mM EDTA、pH8.0の溶液3mlを加え37℃,150rpmで4時間振とうして未反応活性基をマスクした。ガラスフィルターでろ別し、洗浄液1(0.1Mトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム、pH8.0) 、洗浄液2(0.1M酢酸、0.5M塩化ナトリウム、pH4.0)を15mlで交互に3サイクル洗浄した。固定化担体1mlを超純水で洗浄し、Tricon 5/50 Columnにパッキングした。
組換えPG固定化カラムによるマウスIgGの吸着-溶出確認
組換えPG固定化カラム、もしくはProtein G Sepharose 4 Fast Flow (GE Healthcare Bioscience) 、HiTrap MabSelect Xtra (GE Healthcare Bioscience)を4℃にした液体クロマトグラフィー装置AKTAexplore (GE Healthcare Bioscience) にセットし、吸着緩衝液(20mM りん酸緩衝液、150mM 塩化ナトリウム、pH7.2)を1 ml/min の条件で流し平衡化させた後、0.2mg/mLに調製したマウスIgG (Sigma)を流速0.2mL/minで3mL注入した。さらに、0.2mL/minの吸着緩衝液4mLでカラム中の非吸着成分を洗い流した後、1.0mL/minの流速で、溶出緩衝液1(20mMクエン酸ナトリウム、pH6.0)を10mL流すことで置換し、吸着したマウスIgGを溶出させた。さらに、1.0mL/minの流速で、溶出緩衝液2(20mMクエン酸、pH2.4)に置換した。
280nmのUV吸収のクロマトを比較すると、組換えPG固定化カラムのクロマトグラム(本発明)では溶出緩衝液1(pH6.0)で溶出するピーク(10mL地点)が見られる一方で、Protein G Sepharose 4 Fast Flow、HiTrap MabSelect Xtraのカラムでは溶出緩衝液1(pH6.0)ではピークは見られなかった(図5)。また、得られた溶出液をIsoQuickマウスモノクロナール抗体アイソタイプ判定用ストリップ(Sigma)で確認したところ、陽性を示し、マウスIgGを回収できていることがわかった(図6)。
組換えPG固定化カラムによるマウス血清からの抗体精製
組換えPG固定化カラム、もしくはProtein G Sepharose 4 Fast Flow (GE Healthcare Bioscience) 、HiTrap MabSelect Xtra (GE Healthcare Bioscience)を4℃にした液体クロマトグラフィー装置AKTAexplore (GE Healthcare Bioscience) にセットし、吸着緩衝液(20mM りん酸緩衝液、150mM 塩化ナトリウム、pH7.2)を1 ml/min の条件で流し平衡化させた後、20倍希釈したラット血清(Sigma)を流速0.2mL/minで3mL注入した。さらに、0.2mL/minの吸着緩衝液4mLでカラム中の非吸着成分を洗い流した後、1.0mL/minの流速で、溶出緩衝液1(20mMクエン酸ナトリウム、pH6.0)に置換し、吸着したマウスIgGを溶出させた。さらに、1.0mL/minの流速で、溶出緩衝液2(20mMクエン酸、pH2.4)に置換した。
280nmのUV吸収のクロマトを比較すると、組換えPG固定化カラムのクロマトグラム(本発明)では溶出緩衝液1(pH6.0)で溶出するマウスIgGのピークが見られる一方で、Protein G Sepharose 4 Fast Flow、HiTrap MabSelect Xtraのカラムでは溶出緩衝液1(pH6.0)ではピークは見られなかった(図7)。このことから、組換えPG固定化カラムを用いることにより、pH6.0でマウスIgGを精製可能であることが分かった。
抗体医薬の研究開発において、研究対象となるタンパク質を効率よく得ることは重要なことでありマウスIgGもそのFc部分の融合タンパク質の合成などで、医薬や生命科学の研究発展に広く用いられている。一方で、マウスIgGの精製に用いられる市販のプロテインA/Gはそのアフィニティの強さから、溶出時、pHを酸性にする必要があり、酸耐性のないマウス抗体を用いるとき、高純度の抗体を得ることは難しかった。本特許の精製法は、酸耐性のないマウス抗体を簡便に得る方法を提供するものであり、特に、ラボレベルでの少量サンプルの取得において、スピーディーに抗体を得る手法として有用であると考える。

Claims (18)

  1. マウス免疫グロブリンG(IgG)のFc部分またはFab部分を有するタンパク質に対するアフィニティを有するドメイン変異体を含むタンパク質を用いて、中性付近のpH領域でマウスIgGを精製する方法。
  2. ドメイン変異体が免疫グロブリンGのFc領域を有するタンパク質に対する結合活性を有する細胞膜外ドメイン変異体である、請求項1記載の精製方法。
  3. pH6.5〜5.5でマウスIgGを溶出させることを特徴とする、請求項1又は2記載の精製方法。
  4. ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
    野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(a)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(a)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質:
    (a)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGluを、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36がAsp又はGlu、X37がAsnまたはLeu、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
  5. ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
    野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(b)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(b)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質:
    (b)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGluを、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又はLys、X36が Asp又はGlu、X37がAsn又はHis、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)
  6. ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
    野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(c)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(c)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、少なくとも、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した変異体タンパク質:
    (c)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaX35X36X37GlyValX40GlyValTrpThrTyrAspX47X48ThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X35はAsn又はLysを、X36はAsp又はGluを、X37はAsn、His、又はLeuを、X47はAsp又はProを、X48はAla、Lys又はGlu、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX35がAsn又は Lys、X36がAsp又はGlu、X37がAsn又はHis、X47がAsp又はPro、X48がAla、Lys又はGlu、X22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
  7. ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
    野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(d)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(d)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B1メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
    (d)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
  8. ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
    野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(e)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(e)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B2メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
    (e)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X42がGlu、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
  9. ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
    野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(f)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(f)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3メインタンパク質に比べ、免疫グロブリンGのFab領域に対する結合活性及び/又はFc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
    (f)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysX11LeuLysGlyGluThrX17ThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyValTrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X11はThr又はArgを、X17はThr又はIleをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAsp、X11がThrであって、かつX17がThrになる場合を除く。)。
  10. ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
    野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(g)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(g)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ、野生型プロテインG・B1ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
    (g)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAspであって、かつX42がGluになる場合を除く。)。
  11. ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
    野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(h)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(h)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B2ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
    (h)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValX22AlaAlaX25AlaGluLysValPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyX42TrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisを、X42はGlu又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGln、X40がAspであって、かつX42がGluになる場合を除く。)。
  12. ドメイン変異体が以下の変異体タンパク質である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
    野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質の変異体タンパク質であって、以下の(i)で示されるアミノ酸配列からなるか、あるいは(i)で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、免疫グロブリンGのFc領域に対する結合活性を有し、かつ野生型プロテインG・B3ドメインタンパク質に比べ、Fc領域に対し弱酸性領域での結合活性が低下した上記変異体タンパク質:
    (i)ThrThrTyrLysLeuValIleAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrLysAlaValX22AlaGluX25AlaGluLysAlaPheLysX32TyrAlaAsnAspAsnGlyValX40GlyValTrpThrTyrAspAspAlaThrLysThrPheThrValThrGlu
    (上記アミノ酸配列中、X22はAsp又はHisを、X25はThr又はHisを、X32はGln又はHisを、X40はAsp又はHisをそれぞれ表す。ただし、同時にX22がAsp、X25がThr、X32がGlnであって、かつX40がAspになる場合を除く。)。
  13. ドメイン変異体が以下の以下のアミノ酸配列を有する変異体タンパク質である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の精製方法:
    (j)AspThrTyrLysLeuIleLeuAsnGlyLysThrLeuLysGlyGluThrThrThrGluAlaValAspAlaAlaThrAlaGluLysValPheLysHisTyrAlaAsnGluHisGlyValHisGlyHisTrpThrTyrAspProGluThrLysThrPheThrValThrGlu。
  14. タンパク質が請求項4ないし請求項13のいずれか一項に記載の変異体タンパク質のタンデム型多量体である、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の精製方法。
  15. 多量体を構成するドメイン変異体が互いに同一である、請求項14に記載の精製方法。
  16. 四量体が配列番号39で示されるアミノ酸配列からなる、請求項15に記載の精製方法。
  17. タンパク質が水不溶性の固相支持体に固定化されて成る充填剤を用いることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の精製方法。
  18. 請求項17記載の充填剤を充填したカラムを用いる、請求項17記載の精製方法。
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