JPWO2013179685A1 - 冷却容器 - Google Patents

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Abstract

内側に冷却対象物90及び液体冷媒60を収容する冷媒容器20と、冷媒容器の上部開口を閉塞可能な蓋体30と、蓋体に吊下支持されると共にその下端部に冷却部を備える冷却手段40と、蓋体に吊下支持され、冷媒容器内部の冷却対象物に電流を流すための電流リード91とを備え、電流リードは、冷媒容器内であって液体冷媒の液面よりも上となる位置にその周囲よりも熱抵抗が高くなる熱抵抗部92を備え、熱抵抗部と冷却手段の冷却部との間に、熱抵抗部よりも低位置まで下端部が垂下された、断熱材料からなる隔壁部50を設けている。これにより、侵入熱の影響を抑え、冷媒容器内を効率良く冷却することを可能とする。

Description

容器内で液体の冷媒を介して被冷却物の冷却を行う冷却容器に関する。
SMES(Superconducting Magnetic Energy Storage:超電導磁気エネルギー貯蔵装置)、超電導変圧器、超電導限流器、さらに、NMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)、半導体引上げ装置等に強磁場の発生源となる超電導マグネット等の分野では、イットリウム系やビスマス系に代表される超電導体を用いた超電導線材や超電導薄膜が使用されている。これらの超電導線を超電導化するには極低温温度まで冷却しなければならなかった。
通常、超電導線材は、冷却するためにクライオスタットと呼ばれる真空断熱化された冷却容器に超電導コイルの状態で収納される。
従来のクライオスタットは、内部に超電導コイルと冷媒を収容する冷媒容器と、冷媒容器内の冷媒を冷却する冷凍機と、超電導コイルに電流を注入する対を成す電流リードとを備えている(例えば、特許文献1参照)。
このクライオスタットでは、冷媒容器内の冷媒を極低温に維持することが必須となるが、内部の超電導コイルと外部の電源とを電流リードで接続しなければならず、内外に通じる電流リードからの熱侵入の発生が不可避であった。
そこで、従来のクライオスタットでは、冷媒容器の外側で電流リードの一部をコイル状にして、電流リードによる熱伝達経路を実質的に延長することで伝達熱量の低減による熱侵入の低減を図っていた。
また、特許文献2及び3には、電流リードによる熱侵入を低減するための技術として、電流が流れるリード本体と絶縁部材とを収容する配管とを備え、配管内部に冷媒ガスを流通させる流路を形成したものが開示されている。
特開平07−045420号公報 特開平09−092893号公報 特開平11−121222号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載のクライオスタットでは、電流リードから冷媒への直接の熱侵入を低減することはできるが、ガスによる対流を介した電流リードからの熱侵入の影響を抑えることはできなかった。
また、特許文献2及び3による電流リードの冷却を図る場合には、当該電流リード内の流路に冷媒ガスを送るための装置が必要となり、クライオスタット全体の構成の複雑化、装置コストの上昇、装置の大型化等が生じるという問題があった。また、冷媒容器内の冷媒ガスを電流リードの流路内に送り込むことも考えられるが、その場合には冷媒容器内の冷媒の消費量が増加するため、絶えず冷媒の補充が必要になるという問題もあった。
本発明は、冷媒容器内への侵入熱の影響を低減して効率的な冷却を行う冷却容器の提供を図ることをその目的とする。
本発明は、内側に冷却対象物及び液体冷媒を収容する冷媒容器と、前記冷媒容器の上部開口を閉塞可能な蓋体と、前記蓋体に吊下支持されると共にその下端部に冷却部を備える冷却手段と、前記蓋体に吊下支持され、前記冷媒容器内部の前記冷却対象物に電流を流すための電流リードとを備え、前記電流リードは、前記冷媒容器内であって前記液体冷媒の液面よりも上となる位置に、その上側及び下部の部分よりも熱抵抗が高くなる熱抵抗部を備え、前記熱抵抗部と前記冷却手段の冷却部との間に、前記熱抵抗部よりも低位置まで下端部が延出された、断熱材料からなる隔壁部を設けたことを特徴とする。
上記構成において、前記電流リードの前記熱抵抗部及びそれより上の部位の外周を覆う構造としても良い。
また、上記構成において、前記隔壁部は、前記冷凍機の冷却部の外周を覆う構造としても良い。
また、上記構成において、前記熱抵抗部は、前記電流リードの他の部位よりもその断面積を縮小した構造としても良い。
また或いは、前記熱抵抗部は、分離された導体同士をつなぎ合わせた部位からなる構成としても良い。
また或いは、前記熱抵抗部は、前記電流リードの他の部位よりも熱抵抗値の高い導電材料を介在させた構造としても良い。
本発明は、電流リードの途中に熱抵抗部を設けているので、侵入熱は熱抵抗部より下側には伝わりにくくなる。仮に、電流リードに熱抵抗部が存在しなければ、電流リードの上端部から液体冷媒の液面までの間では下に向かうにつれておおよそ一定の低下率で漸次温度が低くなる分布を示すが、熱抵抗部を設けると、当該熱抵抗部を境界としてその上側と下側では一定の温度差をもって急峻な温度変化が生じる。
従って、冷媒容器の熱抵抗部より上の領域ではより高い温度となり、熱抵抗部より下の領域ではより低い温度となる。そして、熱抵抗部と冷却手段の冷却部の間には、熱抵抗部よりも低位置まで垂下された隔壁部を設けているので、高い温度での冷媒ガスの対流によって生じる、電流リードから冷却手段への熱侵入を抑制することができる。
このため、冷却手段に対する冷媒容器の内側容器内への侵入熱の影響を効果的に低減することができ、冷却手段は、電流リードを通じて冷媒容器の内部に侵入した熱により暖められた冷媒ガスを沸点近くまで冷却するための仕事分の冷却能力が不要となり、電流リードを通じて熱侵入が生じる場合でも効率的な冷却を行うことが可能となる。
また、隔壁部を電流リードの熱抵抗部及びそれより上の部位を覆う構造とした場合には、熱抵抗部及びそれより上の部位により暖められた冷媒ガスを隔離できる。つまり、当該暖められた冷媒ガスから冷却部を遮断することができ、効率的な冷却を行うことが可能となる。
また、隔壁部を冷却手段の冷却部の周囲を覆う構造とした場合には、冷却部を隔壁部の下端部より上側の侵入熱で暖められた冷媒ガスから遮断し、効率的な冷却を行うことが可能となる。なお、隔壁部は、電流リードの熱抵抗部及びそれより上の部位と却手段の冷却部の周囲のそれぞれを覆う構造としても良い。
また、熱抵抗部を、導体同士を連結した構造、電流リードの他の部位よりもその断面積を縮小した構造又は電流リードの他の部位よりも熱抵抗値の高い導電材料を介在させた構造とした場合には、いずれも、熱抵抗部で熱抵抗値を高めることができ、当該熱抵抗部を境界として顕著な温度差を形成することができる。これにより、侵入熱により暖められた冷媒ガスからより効果的に冷却手段の冷却部を遮断することができ、より効率的な冷却を行うことが可能となる。
発明の第一の実施形態に係るクライオスタットの垂直平面に沿った断面図である。 電流リードの上下方向における温度分布を示す線図である。 電流リードの上下方向の各部における熱抵抗と単位長さあたりの熱抵抗を示す図表である。 電流リードに熱抵抗部を設けないクライオスタットを示す概略図である。 電流リードの熱抵抗部を隔壁部の下端部よりも低位置に設けたクライオスタットを示す概略図である。 図1と同じクライオスタットを示し、それぞれの侵入熱の影響を示す概略図である。 発明の第二の実施形態に係るクライオスタットの垂直平面に沿った断面図である。 電流リードに設けた熱抵抗部が冷凍機の隔壁部の下端部よりも低位置であって、電流リードの隔壁部の下端部は熱抵抗部よりも高位置であるクライオスタットを示す概略図である。 図5と同じクライオスタットを示し、それぞれの侵入熱の影響を示す概略図である。 図1と図5と図6Aのクライオスタットについて、電流リードに通電し、その時の電流リードの複数箇所における温度を測定して求めた侵入熱量を示す図表である。 熱抵抗部の他の例であって電流リードを構成する導体間に熱抵抗の大きな素材を挟み込んだ例を示す図である。 熱抵抗部の他の例であって電流リードを構成する導体の一部の断面積を縮小した例を示す図である。
[第一の実施形態]
以下、本発明の第一の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
この第一の実施形態では、冷却対象物となる超電導機器としての超電導コイル90を収容して冷却を図る冷却容器としてのクライオスタット10について説明する。図1はクライオスタット10の垂直平面に沿った断面図である。
このクライオスタット10は、真空断熱された内側容器21と外側容器22とを有し、液体冷媒である液体窒素60と超電導コイル90とを収容する冷媒容器20と、冷媒容器20の上部開口を閉塞可能な蓋体30と、内側容器21内の液体窒素60を冷却する冷却手段としての冷凍機40と、冷凍機40の冷却部(後述)の周囲及び上方からの対流する冷媒ガスを遮蔽する隔壁部50と、超電導コイル90とクライオスタット10の外部との通電を行うための、超電導コイル90の1相あたり一対の電流リード91,91とを備えている。
[冷媒容器]
冷媒容器20は、内側容器21と外側容器22とからなり、これら相互間が真空断熱された二重壁面構造の有底容器である。
内側容器21は、上下方向に沿った円筒状であって、下端部が閉塞されて底部をなし、上端部が開放されている。
外側容器22は、内側容器21と同様に上下方向に沿った円筒状であって、下端部が閉塞されて底部をなし、上端部が開放されている。そして、この外側容器22は、内側容器21よりに一回り大きく形成され、内側容器21を内側に格納している。さらに、内側容器21の外周面及び底部下面と外側容器22の内周面及び底部上面とが相互に隙間空間を形成するように、内側容器21と外側容器22の上端部同士が接合されて一体化されている。また、内側容器21と外側容器22の互いの隙間空間は真空引きが行われ、真空断熱されている。
また、内側容器21と外側容器22との隙間空間には、円筒部及び底部の全域に渡って、アルミニウムを蒸着させたポリエステルフィルムが積層されてなるスーパーインシュレーション材23が介在し、外部からの輻射熱の遮断を図っている。
[蓋体]
内側容器21と外側容器22の接合部(冷媒容器20の上端面)は水平に平滑化されており、このリング状の平滑面(上端面)上に円板状の蓋体30が載置装備されている。
この蓋体30は、保守点検による冷媒容器20内へのアクセスができるように、冷媒容器20からの着脱が可能な状態で取り付けられている。例えば、蓋体30と冷媒容器20の相互間の凹凸形状による嵌合構造或いはボルト止め等周知の方法で蓋体30が冷媒容器20に対して固定される。
なお、この蓋体30は、冷凍機40と各電流リード91,91とを垂下支持するので、これらを支持することが可能な強度を有する材料から形成されていることが好ましい。具体的には、FRP(Fiber Reinforced Plastics)やステンレス鋼等を蓋体30の材料として用いることができる。
[超電導コイル]
また、前述した内側容器21の内部には超電導機器としての超電導コイル90が収容される。そして、蓋体30には、超電導コイル90に接続される二つの電流リード91,91が上下に貫通した状態で固定装備されている。各電流リード91,91は、一端が図示しない超電導コイル90の電源装置に接続され、他端が冷媒容器20内の超電導コイル90から引き出されたケーブルにそれぞれが接続されている。そして、各電流リード91,91は、その表面にエポキシ等により絶縁被膜が形成されており、当該被膜を介して蓋体30に密着装備されていることから、蓋体30を冷媒容器20から取り外すことにより、電流リード91,91を通じて超電導コイル90を冷媒容器20内から取り出すことができ、超電導コイル90に対するメンテナンスを容易に行うことが可能である。
[電流リード]
上記各電流リード91,91は、導体としての金属棒状体(例えば、銅製)であり、いずれも内側容器21内に規定量の液体窒素60が収容された場合における規定液面61よりも上側の位置に他の部位よりも熱抵抗の高い熱抵抗部92,92が形成されている。なお、二本の電流リード91,91は同一構造であり、各々の熱抵抗部92,92はいずれも同じ高さに設けられているので一方のみについて説明する。
電流リード91は、径の等しい二本の金属棒状体の端部と端部とを突き合わせた状態でボルト締めによる圧着等により連結して形成されている。このように、二本の金属棒状体を連結すると、当該連結部は棒状体の他の部位よりも熱抵抗が高くなる性質があり、この性質を利用して、当該連結部を熱抵抗部92として利用している。
また、各電流リード91,91は、二本の金属棒状体の端部と端部とを突き合わせた状態で保持するので、当該二本の金属棒状体の電気的接続状態を確保することができる。
図2は電流リード91の上下方向における各位置の温度分布を示す線図である。この図では電流リード91における液体窒素60の液面高さの温度T1,熱抵抗部92の下側近傍の位置の温度T2,熱抵抗部92の上側近傍の位置の温度T3,熱抵抗部92と蓋体30の中間位置の温度T4,蓋体30の下側近傍の高さの温度T5で測定を行い、これらから温度分布を求めている。なお、図2において、二点鎖線は電流リード91に熱抵抗部92を設けた場合の温度分布を示し、実線L1は電流リード91に熱抵抗部92を設けなかった場合の温度分布を示している。
また、図3には電流リード91の上下方向の各部における熱抵抗と単位長さあたりの熱抵抗を示している。この図において「電流リード上部」とは、電流リード91における熱抵抗部92より上側から蓋体30までの範囲を示し、「熱抵抗部」とは熱抵抗部92の下端から上端までを示し、「電流リード下部」とは、電流リード91における液面61から熱抵抗部92の下側までの範囲を示している。
なお、これらの測定において、電流リード91には通電を行わず、冷媒容器20の外部からの侵入熱のみを熱源としている。
図3に示すように、電流リード91は、熱抵抗部92より上側の部分と熱抵抗部92より下側の部分とで位長さ当たりの熱抵抗がおよそ同程度の値であり、熱抵抗部92の単位長さ当たりの熱抵抗はこれらよりも十分に大きくなっている。
仮に、電流リード91に熱抵抗部92を設けずに、単位長さ当たりの熱抵抗が均一であれば、図2の実線L1に示すように、下に向かうにつれてほぼ比例的に温度が下降して下端部では液体窒素の温度となる温度分布を示すことになる。しかし、熱抵抗部92を設けた場合には図2の二点鎖線に示すように電流リード91の上端部からの侵入熱が熱抵抗部92以下には伝わりにくくなり、熱抵抗部92より上の範囲ではL1に比べて全体的に温度が高くなると共に、熱抵抗部92より下の範囲ではL1に比べて全体的に温度が低くなる。
つまり、電流リード91は、熱抵抗部92を境界として、熱進入源に近い方では全体的に温度が高くなり、熱進入源に遠い方は全体的に温度が低くなるという顕著な温度差を形成することができる。
そして、電流リード91を通じた侵入熱は、内側容器21内の冷媒(窒素)ガスの対流により周囲に伝えられるので、内側容器21内における熱抵抗部92より上側の領域と下側の領域とで雰囲気温度も顕著な温度差を形成することができるようになっている。
[冷凍機]
冷凍機40は、蓄冷式のいわゆるGM冷凍機であり、蓄冷材を内部に保有するディスプレーサ容器を上下に往復させるシリンダ部41と、ディスプレーサ容器に上下の移動動作を付与するモータを駆動源とするクランク機構が格納された駆動部42と、シリンダ部41において最も低温となる低温伝達部43に設けられた熱交換部材としての熱交換器44とを備えている。
また、上記冷凍機40には、図示しないコンプレッサ等が接続され、その内部に対して冷媒ガスの吸排気が行われるようになっている。
上記冷凍機40は、蓋体30の上面に駆動部42が取り付けられ、シリンダ部41は蓋体30を貫通して冷媒容器20の内側に垂下されている。
シリンダ部41ではその内部で冷媒ガスが下方に移動する過程で断熱圧縮と吸熱が行われ、その下端部が最も低温状態となる。
そして、この最も低温となるシリンダ部41の下端部に低温伝達部43が形成されている。この低温伝達部43は、シリンダ部41の下部よりも底面積が大きな円形の平板状に形成されており、周囲との熱伝導性を高めるために設けられている。
熱交換器44は、低温伝達部43と同等又はそれ以上の熱伝導率の高い素材で形成されている。また、熱交換器44の上部は低温伝達部43の底面に密着し、下部は下方に延びる複数のフィンが形成されている。この構造により、熱交換器44は、周囲の窒素ガス(冷媒ガス)との接触面積を拡張し、冷媒ガスとの熱伝導性がより高められており、冷媒ガスに対する高い冷却効果が得られる構造となっている。
そして、上記低温伝達部43と熱交換器44とが、冷凍機40の冷却部として機能する。
[隔壁部]
隔壁部50は、冷媒容器20内において、冷凍機40のシリンダ部41に固定支持され、冷却部である低温伝達部43及び熱交換器44の上側とその周囲とを囲繞して、下方を除く全方向からの冷媒ガスを遮断している。
この隔壁部50は、シリンダ部41が貫通した状態で当該シリンダ部41に固定された天板部51と円筒状の側壁部52とからなり、側壁部52の上端部を塞ぐように天板部51と側壁部52が一体的に接合されている。また、この隔壁部50は、低温伝達部43及び熱交換器44よりも熱伝導率の低い、例えば、ステンレス材、或いは、いわゆる断熱材、例えば、FRP、グラスウール、発泡ウレタン等であって低温耐性のあるものから形成されている。
隔壁部50の天板部51は、外径が低温伝達部43より幾分大きく且つ当該低温伝達部43の上面に接触しないよう隙間を形成するか、接触したとしても最小の接触面積となるようにシリンダ部41に固定されている。隔壁部から低温伝達部への侵入熱を防止するという点から、低温伝達部43とは接触しないように天板部51との間に隙間を形成する方が好ましい。
側壁部52は、冷凍機40の冷却部である低温伝達部43及び熱交換器44を囲繞する円筒状であって、その上端部が天板部51の下面と一体的に接合されており、下端部が開放されている。そして、その内径が低温伝達部43及び熱交換器44の外径よりも幾分大きく、これらに接触しないように内包した状態となっている。
また、側壁部52は、熱交換器44のフィンの下端部とほぼ同じ高さまで下方に延出されている。これにより、隔壁部50は、冷凍機40の冷却部を周囲から囲繞し、周囲の窒素ガスの対流に冷却部が曝されないので、効率良く冷凍機40により液体窒素の冷却を行うことができるようになっている。
[熱抵抗部と隔壁部との関係]
ここで、前述した熱抵抗部92と隔壁部50との関係について説明する。
図1においてAは熱抵抗部92の位置する高さを示し、Bは隔壁部50の側壁部52の下端部の位置する高さを示している。
図示のように、隔壁部50の側壁部52の下端部は、熱抵抗部92よりも低い位置(より液体窒素60の液面61に近い位置)まで下方に延出されている(熱抵抗部92と側壁部52の下端部の位置関係をA>Bと示すものとする)。
なお、熱抵抗部92について上下方向の厚みを考慮するとしたならば、隔壁部50の側壁部52の下端部は、少なくとも熱抵抗部92の上端部よりも低く、より望ましくは、熱抵抗部92の下端部よりも低い位置まで下方に延出されている。
前述したように、電流リード91は、熱抵抗部92が存在しない場合に比べて、熱抵抗部92より上側では全体的に高温となり、熱抵抗部92より下側では全体的に低温となる温度分布を示す。従って、内側容器21の内部において、熱抵抗部92よりも上の領域では窒素ガスの対流で全体的に温度が高くなり、熱抵抗部92よりも下の領域は上の領域よりも大きな温度差をもって温度が低くなる。
隔壁部50は、その側壁部52の下端部が熱抵抗部92よりも低位置まで延出されているので、熱抵抗部92よりも上の領域で生じる対流窒素ガス62から冷凍機40の冷却部を遮蔽することができる。これにより、電流リード91を通じて冷媒容器20の内部に侵入した熱により暖められた冷媒ガスを沸点近くまで冷却するための仕事分の冷却能力が不要となる。
一方、電流リード91の熱抵抗部92より下側の部位では電流リード91が介する侵入熱の伝搬量が少ないので、熱抵抗部92より下側の領域内の窒素ガスは侵入熱による温度上昇が少なくなり低温状態が維持される。そして、この低温の窒素ガスが隔壁部50内で冷凍機40の冷却部により冷却されて再液化するので、クライオスタット10内では冷媒の効率的な冷却と再液化を行うことが可能となる。
図4A〜図4Cを用いて、比較例であるクライオスタット10A,10Bと上記クライオスタット10の冷媒ガスによる熱量の影響を比較して説明する。なお、図4A〜図4Cでは構成を簡略化して図示している。上記図4Aは電流リード91に熱抵抗部92を設けないクライオスタット10Aを示し、図4Bは電流リード91の熱抵抗部92を隔壁部50の下端部よりも低位置に設けたクライオスタット10Bを示し、図4Cは前述したクライオスタット10を示している。なお、図4A〜図4Cのそれぞれの矢印は冷媒(窒素)ガスの対流の様子を示し、矢印の太さは窒素ガスの熱量を表している。
クライオスタット10Aの場合は、電流リード91に熱抵抗部92を設けていないので,電流リード91を介する侵入熱が下端部まで伝わるので、隔壁部50より下側の領域内の窒素ガスに伝わる熱量も多くなり、冷凍機40の冷却部は侵入熱で暖められた窒素ガスを冷却・再液化するので、冷却効率は悪化する。
クライオスタット10Bの場合は、電流リード91の熱抵抗部92までは電流リード91を介する侵入熱が十分に伝わり、対流により隔壁部50より下側の領域内の窒素ガスに伝わる熱量も多いので、冷凍機40の冷却部は侵入熱で暖められた窒素ガスを冷却・再液化することとなり、冷却効率は悪化する。
クライオスタット10の場合は、電流リード91の熱抵抗部92までは電流リード91を介する侵入熱が十分に伝わるが、熱抵抗部92より下側に伝わる侵入熱の量は低減されるので、隔壁部50より下側の領域内の窒素ガスに伝わる熱量も低減され、冷凍機40の冷却部は侵入熱の影響の少ない窒素ガスを冷却・再液化することとなり、冷却効率は向上する。
[第二の実施形態]
以下、本発明の第二の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図5は第二の実施の形態であるクライオスタット10Cの垂直平面に沿った断面図である。
このクライオスタット10Cは、各電流リード91を囲繞する新たな隔壁部93を備える点がクライオスタット10と異なっている。以下、クライオスタット10Cについて、クライオスタット10と異なる点のみについて説明し、同一の構成については同一の符号付して重複する説明は省略するものとする。
上述したように、各電流リード91は当該電流リード91の周囲を囲繞する隔壁部93を備えている。
隔壁部93は、電流リード91を内側に遊挿する断熱素材からなる筒状体であり、その上端部が蓋体30の下面に接着等により取り付けられ、垂下状態で支持されている。
この隔壁部93の形成素材である断熱材としては、例えば、FRP、グラスウール、発泡ウレタン等であって低温耐性のあるものが使用される。
また、隔壁部93の下端部は、電流リード91の熱抵抗部92よりも低位置であって液体窒素60の液面61よりも上方となる位置に設定されている。即ち、図5における熱抵抗部92の位置する高さをA、隔壁部93の下端部の位置する高さをCとした場合、A>Cという位置関係になる。
なお、この場合も、熱抵抗部92について上下方向の厚みを考慮すると、隔壁部93の下端部は、少なくとも熱抵抗部92の上端部よりも低い位置にあり、より望ましくは、熱抵抗部92の下端部よりも低い位置まで下方に延出されている。
前述したように、電流リード91は、熱抵抗部92までの上側は外部からの侵入熱が伝わりやすく温度が高くなり、熱抵抗部92より下側では侵入熱が伝わりにくいので温度が低い状態が維持される。
従って、電流リード91における熱抵抗部92より上の部分の周囲の窒素ガスは侵入熱により暖められて温度が上昇するが、その熱抵抗部92の周囲は隔壁部93により囲繞されているので、対流による隔壁部93の外側の窒素ガスへの熱の伝達は阻止される。
また、電流リード91における隔壁部93の下端部よりも下側の部分は隔壁部93に囲繞されていないが、この部分には熱抵抗部92により侵入熱の伝達量は低減されているので、その隔壁部93の下端部よりも下側の部分の周囲は窒素ガスに対する侵入熱の影響も低減される。
このため、冷凍機40の冷却部は、熱抵抗部92より上の温度の高い窒素ガスの影響は低減され、熱抵抗部92より下側の低温の窒素ガスを冷却して再液化するので、クライオスタット10C内では冷媒の効率的な冷却と再液化を行うことが可能となる。
なお、このクライオスタット10Cでは、各電流リード91の隔壁部93の下端部が熱抵抗部92よりも低位置であるため、図5に示すように、熱抵抗部92を隔壁部50の下端部よりも低位置に設けることも可能である。
また、各電流リード91の隔壁部93を備えているので、冷凍機40の冷却部に設けられた隔壁部50を削減することも可能である。その場合でも、隔壁部50,93のいずれも設けない構成のクライオスタットと比較して、冷媒の効率的な冷却と再液化を行うことが可能である。
図6A及び図6Bを用いて比較例であるクライオスタット10Dと上記クライオスタット10Cの熱量の影響を比較して説明する。なお、図6A及び図6Bでは構成を簡略化して図示している。上記図6Aは電流リード91に設けた熱抵抗部92が冷凍機40の隔壁部50の下端部よりも低位置であって、電流リード91の隔壁部93の下端部は熱抵抗部92よりも高位置であるクライオスタット10Dを示し、図6Bは前述したクライオスタット10Cを示している。
クライオスタット10Dの場合は、電流リード91の熱抵抗部92までの上側は電流リード91を介して侵入熱が伝わり、熱抵抗部92の上部の一部が隔壁部93に囲繞されていないので、対流により隔壁部50より下側の領域内の窒素ガスに伝わる熱量も多くなり、冷凍機40の冷却部は侵入熱で暖められた窒素ガスを冷却・再液化することとなり、冷却効率は悪化する。
クライオスタット10Cの場合は、電流リード91の熱抵抗部92までの上側は電流リード91を介して侵入熱が伝わるが、熱抵抗部92より上の部分は全て隔壁部93に囲繞されているので、暖められた窒素ガスによる対流そのものが抑えられ、隔壁部50より下側の領域内の窒素ガスに伝わる熱量は低減され、冷凍機40の冷却部は侵入熱の影響の少ない窒素ガスを冷却・再液化することとなり、冷却効率は向上する。
[比較試験]
図7は前述したクライオスタット10,10C,10Dについて、六本三組からなる電流リード91に400Aで通電し、その時の電流リード91の複数箇所における温度を測定して求めた侵入熱量を示す図表である。
図7において、「侵入熱」は、電流リード91の蓋体30の下側近傍の位置、蓋体30と熱抵抗部92との中間位置、熱抵抗部92の上側近傍の位置、熱抵抗部92の下側近傍の位置の四箇所で測定した表面温度から算出を行っている。
また、図7における「発熱」は、各電流リード91に400Aで通電を行った時に対を成す電流リード91,91間の電圧を測定し、電流値と電圧値とから算出した熱量の値である。
図7における「総熱量」は前述した「侵入熱」と「発熱」とを加算して求めた値である。
A,B,Cの位置関係におけるAは熱抵抗部92の位置する高さ、Bは冷凍機40の隔壁部50の下端部の位置する高さ、Cは電流リード91の隔壁部93の下端部の位置する高さを示している。
そして、クライオスタット10は、熱抵抗部92の位置する高さAが冷凍機40の隔壁部50の下端部の位置する高さBより上に位置し、電流リード91の隔壁部93は備えていない(図4C参照)。
クライオスタット10Cは、熱抵抗部92の位置する高さAが冷凍機40の隔壁部50の下端部の位置する高さBより下に位置し、電流リード91の隔壁部93の下端部の位置する高さCは熱抵抗部92の位置する高さAより下にある(図6B参照)。
クライオスタット10Dは、熱抵抗部92の位置する高さAが冷凍機40の隔壁部50の下端部の位置する高さBより下に位置し、電流リード91の隔壁部93の下端部の位置する高さCは熱抵抗部92の位置する高さAより上にある(図6A参照)。
これらのクライオスタット10,10C,10Dについて侵入熱を比較したところ、クライオスタット10,10Cは侵入熱を低減し、クライオスタット10Dは侵入熱が他の二つよりも顕著に多くなっていることが観測された。
[熱抵抗部の他の構造]
電流リード91に設ける熱抵抗部の構造は、熱抵抗部の上側と下側との電気的接続が確保されるのであれば、前述した熱抵抗部92に限らず、当該熱抵抗部が少なくともその上側、さらには下側よりも上下方向の単位長さ当たりの熱抵抗が大きくなる他の構造としても良い。
例えば、図8Aでは、電流リード91を構成する金属棒状体(例えば、銅製)と金属棒状体との間に、導電性を有し且つ金属棒状体の金属(銅)よりも熱抵抗の大きな素材を挟み込んで熱抵抗部92Eを形成した場合を示している。
また、図8Bでは、電流リード91の一部において外径を小さくすることで他の部位より断面積が小さい熱抵抗部92Fを形成した場合を示している。
これら熱抵抗部92E,92Fも、熱抵抗部92と同じようにその上側と下側とで一定の温度差を形成することができ、当該熱抵抗部92と同じ作用効果を得ることが可能である。
[その他]
なお、隔壁部50,93は、それぞれ冷凍機40の冷却部又は電流リード91を囲繞する構造としているが、電流リード91の熱抵抗部92から冷凍機40の冷却部への窒素ガスの対流を遮断する仕切り板又は仕切り壁であっても良い。その場合、仕切り板(壁)の上端部及び左右の両側部は蓋体30の下面及び内側容器21の内面と密着して対流の回り込みを防止でき、仕切り板(壁)の下端部は少なくとも熱抵抗部92より低位置とすることが望ましい。
また、図5の例では、熱抵抗部92の高さA、冷凍機40の隔壁部50の下端部の高さB、電流リード91の隔壁部93の下端部の高さCについて、B>A、A>Cとする場合を例示したが、少なくともA>Cについて満たされれば、Bの高さは変更可能である。例えば、A>C>Bとしても良い。
また、二本の電流リード91,91において熱抵抗部92,92を同じ高さとする場合を例示したが、各電流リード91,91についてそれぞれが所定の条件(例えば図1の例ではA>B、図5の例では少なくともA>C、より望ましくはB>A>C)を満たす範囲に熱抵抗部92,92を設けていれば、同じ高さとしなくとも良い。
また、蓋体30は、例えば、中空構造として内部を真空化して断熱を図っても良いし、さらには、その中空内部にスーパーインシュレーション材を収容しても良い。
また、隔壁部50は、天板部51を設けずに円筒状の側壁部52の上端部を上方に延長して蓋体30の下面に直接取り付ける構造としても良い。
超電導線材や超電導薄膜を超電導状態とするために極低温温度で効率よく冷却する分野において利用可能性がある。
10,10C クライオスタット(冷却容器)
20 冷媒容器
21 内側容器
22 外側容器
30 蓋体
40 冷凍機(冷却手段)
43 低温伝達部(冷却部)
44 熱交換部(冷却部)
50 隔壁部
60 液体窒素
90 超電導コイル(冷却対象物)
91 電流リード
92,92E,92F 熱抵抗部
93 隔壁部

Claims (6)

  1. 内側に冷却対象物及び液体冷媒を収容する冷媒容器と、
    前記冷媒容器の上部開口を閉塞可能な蓋体と、
    前記蓋体に吊下支持されると共にその下端部に冷却部を備える冷却手段と、
    前記蓋体に吊下支持され、前記冷媒容器内部の前記冷却対象物に電流を流すための電流リードとを備え、
    前記電流リードは、前記冷媒容器内であって前記液体冷媒の液面よりも上となる位置に、その上側及び下側の部分よりも熱抵抗が高くなる熱抵抗部を備え、
    前記熱抵抗部と前記冷却手段の冷却部との間に、前記熱抵抗部よりも低位置まで下端部が延出された、断熱材料からなる隔壁部を設けたことを特徴とする冷却容器。
  2. 前記隔壁部は、前記電流リードの前記熱抵抗部及びそれより上の部位の外周を覆う構造であることを特徴とする請求項1記載の冷却容器。
  3. 前記隔壁部は、前記冷凍機の冷却部の外周を覆う構造であることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却容器。
  4. 前記熱抵抗部は、前記電流リードの他の部位よりもその断面積を縮小した構造であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の冷却容器。
  5. 前記熱抵抗部は、分離された導体同士をつなぎ合わせた部位からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の冷却容器。
  6. 前記熱抵抗部は、前記電流リードの他の部位よりも熱抵抗値の高い導電材料を介在させた構造であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の冷却容器。
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