JPWO2013165018A1 - 皮膚に対する紫外線の影響を評価するためのプローブ又はプローブセット及び核酸マイクロアレイ - Google Patents

皮膚に対する紫外線の影響を評価するためのプローブ又はプローブセット及び核酸マイクロアレイ Download PDF

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Abstract

皮膚又は皮膚細胞がどのような状態であり、その皮膚又は皮膚細胞に対する外部刺激(特に紫外線)が、ハリ(弾力)やシワ等の皮膚状態にどのような影響を及ぼすかを評価することができる、プローブ又はプローブセット及びそれを搭載した核酸マイクロアレイを提供する。本発明は、下記(a)、(b)又は(c)の核酸若しくはその一部を含む、皮膚に対する紫外線の影響を評価するためのプローブ又はプローブセットに係る発明である。(a)GBA、GLB1、CAT、OLFM1、ASAH1、MMP14、MMP17及びCOL18A1からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸;(b)前記(a)の核酸に対し相補的な塩基配列からなる核酸;(c)前記(a)又は(b)の核酸に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ皮膚構成関連遺伝子を検出することができる核酸。

Description

本発明は、シワやハリ等の皮膚の状態を評価する、具体的には、皮膚に対する紫外線の影響を評価することができるプローブ又はプローブセット及び核酸マイクロアレイ、並びに、これらを用いた皮膚に対する紫外線の影響を評価する方法等に関する。
皮膚は、ヒトを含む動物の身体の最大かつ最も目に見える器官であり、主に上皮及び真皮から構成され、汗腺、脂腺及び毛嚢のようないくつかのアクセサリー構造を有する。
また、皮膚は体中の組織の中で、環境ストレス、ハザード及び病原体に最も頻繁に曝される器官である。そのため多くの機能を有しており、例えば、外部侵襲(例えば、熱、化学薬品、細菌)に対する保護障壁機能、熱調節機能、脱水防止機能、更には感覚機能を有する。従って、皮膚の健康維持及び確立は、動物の健康にとって重要である。
これまでに、皮膚の状態を評価する又は皮膚の状態を改善する成分を評価する方法のひとつとして、遺伝子発現レベルを測定して皮膚の老化状態や炎症状態を評価する方法が知られている(特許文献1及び2)。特に、シワや老化の状態については、皮膚に紫外線を照射し、特定のタンパク質及び遺伝子の発現等を評価する方法が知られている(特許文献3及び4)。
特開2010−115131号公報 特開2010−172240号公報 特開2011−178747号公報 特表2005−520483号公報
しかしながら、これらの評価方法は、それぞれが単一の症状又は状態を計測できることに過ぎないものであり、特に紫外線による皮膚への影響を遺伝子発現レベルで客観的に評価できる方法ではなかった。
従って、本発明の主な目的は、皮膚又は皮膚細胞がどのような状態であり、その皮膚又は皮膚細胞に対する外部刺激(特に紫外線)が、ハリ(弾力)やシワ等の皮膚状態にどのような影響を及ぼすかを評価することができる、プローブ又はプローブセット及びそれを搭載した核酸マイクロアレイを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、皮膚の構成に関連する遺伝子を中心に特定の遺伝子を選択し、当該遺伝子を構成する核酸(又はその一部)をプローブとして使用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)下記(a)、(b)又は(c)の核酸若しくはその一部を含む、皮膚に対する紫外線の影響を評価するためのプローブ又はプローブセット。
(a)GBA、GLB1、CAT、OLFM1、ASAH1、MMP14、MMP17及びCOL18A1からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸
(b)前記(a)の核酸に対し相補的な塩基配列からなる核酸
(c)前記(a)又は(b)の核酸に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ皮膚構成関連遺伝子を検出することができる核酸
上記(1)のプローブセットにおいて、(a)の核酸としては、例えば、下記(i)及び(ii)の核酸からなるものが挙げられる。
(i)GBA、GLB1、CAT、OLFM1及びASAH1からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸
(ii) MMP14、MMP17及びCOL18A1からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸
また同様に、(a)の核酸としては、例えば、GBA、GLB1、CAT、OLFM1及びASAH1の各遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸; MMP14、MMP17及びCOL18A1の各遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸;及び、MMP14、MMP17、COL18A1、GBA、GLB1、CAT、OLFM1及びASAH1の各遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸が挙げられる。
(2)下記(α)、(β)又は(γ)の核酸を含む、皮膚に対する紫外線の影響を評価するためのプローブ又はプローブセット。
(α)配列番号27、30、58、63、70、84、85及び112に示される塩基配列のうちの少なくとも1種の塩基配列からなる核酸
(β)前記(α)の核酸に対し相補的な塩基配列からなる核酸
(γ)前記(α)又は(β)の核酸の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつ皮膚構成関連遺伝子を検出することができる核酸
(δ)前記(α)、(β)又は(γ)の核酸の塩基配列において1から数個の塩基が付加、欠失又は置換された塩基配列からなり、かつ皮膚構成関連遺伝子を検出することができる核酸
上記(2)のプローブセットにおいて、(α)の核酸としては、例えば、配列番号27、30、58、63、70、84、85及び112に示される塩基配列からなる核酸が挙げられる。
(3)下記(i)及び/又は(ii)の核酸からなる、紫外線の皮膚に対する紫外線の影響を評価するためのプローブセット。
(i)配列番号1〜130に示される塩基配列からなる核酸
(ii)配列番号131〜257に示される塩基配列からなる核酸
(4)上記(1)〜(3)のいずれかのプローブ又はプローブセットを含む、皮膚に対する紫外線の影響を評価するための核酸マイクロアレイ。
(5)検査対象に紫外線を照射後、上記(1)〜(3)のいずれかのプローブ又はプローブセットを用いて遺伝子発現量を測定する工程を含む、皮膚に対する紫外線の影響を評価する方法。
(6)検査対象に紫外線を照射後、上記(4)の核酸マイクロアレイを用いて遺伝子発現量を測定する工程を含む、皮膚に対する紫外線の影響を評価する方法。
(7)上記(1)〜(3)のいずれかのプローブ又はプローブセットを用いて、皮膚疾患治療薬又は化粧品に有用な化合物をスクリーニングする方法。
(8)上記(4)の核酸マイクロアレイを用いて、皮膚疾患治療薬又は化粧品に有用な化合物をスクリーニングする方法。
本発明によれば、外部刺激、特に紫外線による皮膚への影響を、遺伝子発現レベルで客観的に評価することができるプローブ又はプローブセット、及びこれを搭載した核酸マイクロアレイを提供することができる。
また、本発明によれば、当該プローブ又はプローブセット及び核酸マイクロアレイを用いた、被験対象の皮膚に対する紫外線の影響の評価方法、及び、皮膚疾患治療薬(経皮吸収剤等)や化粧品の有効成分として有用な物質(化合物等)の効率的なスクリーニング方法を提供することができる。
中空繊維束(中空繊維配列体)製造用の配列固定治具を示す概略図である。 図2(図2A〜H)は、ケラチノサイトへのUVB(紫外線B波)照射に伴う遺伝子発現量の変化を示す図である。図2中のすべてのグラフにおいて、縦軸は蛍光強度(Intensity)、横軸は時間(h)を表し、また、◆(UV-)はUVB照射無し、■(UV+)はUVB照射有り、を表す。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2012-105085号明細書(2012年5月2日出願)の全体を包含する。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。

1.本発明の概要
本発明において、外部刺激、特に紫外線の皮膚への影響を評価することとは、皮膚のハリ(弾力)やシワ等の皮膚状態を、遺伝子の発現の有無又は発現量の変化により判断及び評価することをいう。ここで、遺伝子の発現とは、mRNAの発現のことである。
本発明では、皮膚のハリやシワ等の皮膚の状態を評価するため、セラミド、コラーゲン、セレクチン、エラスチン等をコードする遺伝子、それらの合成酵素をコードする遺伝子、それらの分解酵素をコードする遺伝子、炎症に関連する遺伝子を選択し、プローブとして使用することができる。本明細書等では、これらの遺伝子を皮膚構成関連遺伝子という。特に、紫外線(UV)によるシワ、老化、ハリ等の皮膚状態への影響を評価する場合は、後に詳述する皮膚構成関連遺伝子のうち、GBA、GLB1、CAT、OLFM1、ASAH1、MMP14、MMP17及びCOL18A1からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子を選択し、当該遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸等をプローブとして使用することができる。
ここで、皮膚構成関連遺伝子としては、例えば、以下のものが挙げられる。
<皮膚構成関連遺伝子>
CKB,CKM,EDN1,EDN2,EDN3,GDNF,NPPB,SELE,SELL,SELP,TNNT2,HAPLN1,HAS1,HAS2,HAS3,FN1,LAMA1,MMP1,MMP2,MMP3,MMP7,MMP9,MMP10,MMP11,MMP12,MMP13,MMP14,MMP15,MMP16,MMP17,MMP24,MMP25,TIMP1,TIMP2,TIMP3,TIMP4,MME,F2RL1,ACO1,ACO2,NFATC1,SUMO1,SUMO2,SUMO3,ADM,PTGES,PTGIS,ANG,TEK,TIE1,ICAM1,VCAM1,KDR,COL1A1,COL1A2,COL4A1,COL10A1,COL18A1,POMC,SOD1,SOD2,SOD3,CAT,GPX,GSR,TTPA,ELN,EMILIN1,EMILIN2,GLB1,MMRN2,ELANE,MFAP5,ATP7A,IL1A,IL1B,GM−CSF,PTGS2,TNFA,IL6,IL8,ACER1,ACER2,ASAH1,GBA,SGMS1,CEL,GALC,SPTLC1,LASS1,LASS6,DEGS1,FLG,FLG2,KRT1,KRT2,KRT3,KRT4,FGF7,CHST1,CHST2,CSTA,KLF1,EGF,HBEGF,AREG,SIRT1,SIRT2,SIRT3,SIRT4,SCEL,OLFM1,TERT,TERC,BCL2,DEFA1,DEFB1,ITGA1,ITGA2。
これらの各遺伝子の塩基配列情報等は、NCBI(National Center for Biotechnology Information Search term Search database)から取得することができる。各遺伝子名の表記としては、NCBIのオフィシャルシンボルを大文字で表記しているが、これにより生物種が限定されるものではない。例えば、ヒトのほか、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、モルモット、サル、イヌ、ネコ等の哺乳類の遺伝子を使用することができる。

2.皮膚に対する紫外線の影響を評価するためのプローブ
プローブとは、一般に、検体(被験試料)中の標的とする遺伝子の核酸(mRNA)をハイブリダイゼーションにより捕捉し、当該標的核酸を検出するために使用されるものを言う。当該プローブは、通常、核酸プローブであるが、本発明においてプローブを構成する「核酸」としては、一般に、DNA、RNA、PNAなどを使用することができ、特に限定はされないが、DNAが好ましい。
本発明において、皮膚に対する紫外線の影響を評価するためのプローブ(又はプローブセット)としては、例えば、以下の(a)、(b)及び(c)の核酸を含むものが挙げられる。
(a)GBA、GLB1、CAT、OLFM1、ASAH1、MMP14、MMP17及びCOL18A1からなる群より選択される少なくとも1種(好ましくは複数種)の遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸
(b)前記(a)の核酸に対し相補的な塩基配列からなる核酸
(c)前記(a)又は(b)の核酸に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ皮膚構成関連遺伝子を検出することができる核酸
上記(a)の核酸は、前述の各種皮膚構成関連遺伝子の中から選択された、皮膚に対する紫外線の影響の評価に有用な遺伝子(GBA、GLB1、CAT、OLFM1、ASAH1、MMP14、MMP17及びCOL18A1)から選択される少なくとも1種の遺伝子の塩基配列からなる核酸であるが、例えば、以下の態様で用いることも好ましい。
例えば、上記(a)の核酸が、
[1] 下記(i)及び(ii)の核酸からなる(下記(i)及び(ii)の核酸の組合せからなる)もの:
(i)GBA、GLB1、CAT、OLFM1及びASAH1からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸;並びに
(ii) MMP14、MMP17及びCOL18A1からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸;
[2] GBA、GLB1、CAT、OLFM1及びASAH1の各遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸であるもの;
[3] MMP14、MMP17及びCOL18A1の各遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸であるもの;
[4] MMP14、MMP17、COL18A1、GBA、GLB1、CAT、OLFM1及びASAH1の各遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸であるもの
などが好ましく挙げられる。
なお、本発明においては、コントロールとなる遺伝子の塩基配列からなる核酸(又はその一部)も、上記(a)の核酸と共に使用することができ、同様に、後述する(b)及び(c)の核酸と共に使用することもできる。例えば、ポジティブコントロールとなる遺伝子としては、ACTB、GAPDH、RPLP0等の遺伝子を挙げることができる。
また、上記(b)の核酸も、上記(a)の核酸と同様に、本発明における皮膚に対する紫外線の影響の評価等に用いることができる。上記(b)の核酸については、上記(a)の核酸の相補鎖の塩基配列からなること以外は、上述した(a)の核酸に関する説明を同様に適用することができる。
さらに、上記(c)の核酸も、上記(a)及び(b)の核酸と同様に、本発明における皮膚に対する紫外線の影響の評価等に用いることができる。
ここで、上記(c)の核酸において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸」とは、例えば、前記(a)又は(b)の核酸の塩基配列と相補的な塩基配列からなる核酸の、全部又は一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法又はサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られる核酸をいう。ハイブリダイゼーションの方法としては、例えば、“Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Vol. 3, Cold Spring Harbor, Laboratory Press 2001”、“Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987-1997”などに記載されている方法を利用することができる。

また、「ストリンジェントな条件」とは、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件が挙げられる。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件が挙げられる。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件が挙げられる。なお、本発明においては、具体的には、「ストリンジェントな条件」は、塩基鎖長が65塩基の場合、バッファーの1価陽イオン濃度が97.5〜3200mM、温度が37〜80℃の条件が好ましく、より好ましくは、1価陽イオン濃度が97.5〜800mM、温度が50〜70℃の条件であり、さらに好ましくは、バッファーの1価陽イオン濃度が195mM、温度が65℃等の条件であるが、これらに限定されるわけではない。
このような「ストリンジェントな条件」においては、温度を上げるほど、高い相同性を有する核酸を効率的に得ることができる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、反応時間、イオン強度、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
なお、ハイブリダイゼーションにおいて、市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズした核酸を検出することができる。
上記以外にハイブリダイズ可能な核酸としては、FASTA及びBLASTなどの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルトのパラメーターを用いて計算したときに、前記(a)の核酸の塩基配列と、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上又は99.9%以上の相同性を有する塩基配列からなる核酸を挙げることができる。
なお、塩基配列の相同性は、カーリン及びアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 87, p. 2264-2268, 1990; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 90, p. 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al., J. Mol. Biol., vol. 215, p. 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、word length=12とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。 さらに、上記(c)の核酸において、「皮膚構成関連遺伝子を検出することができる」とは、前記(a)において列挙した皮膚構成関連遺伝子(GBA、GLB1、CAT、OLFM1、ASAH1、MMP14、MMP17及びCOL18A1)の塩基配列やその相補鎖の塩基配列のいずれかをハイブリダイゼーションにより捕捉することができることであることを意味する。
上記(a)、(b)及び(c)の核酸は、当該核酸の全長に限らず、その一部をプローブとして使用することもできる。当該核酸の一部とは、例えば、30〜5000塩基からなる核酸、40〜1000塩基からなる核酸、50〜500塩基からなる核酸、さらには60塩基〜200塩基からなる核酸などが挙げられるが、塩基長については特に限定はされない。
また、本発明においては、皮膚に対する紫外線の影響を評価するためのプローブ(又はプローブセット)としては、例えば、以下の(α)、(β)、(γ)及び(δ)の核酸を含むものも挙げられる。
(α)配列番号27、30、58、63、70、84、85及び112に示される塩基配列のうちの少なくとも1種の塩基配列からなる核酸
(β)前記(α)の核酸に対し相補的な塩基配列からなる核酸
(γ)前記(α)又は(β)の核酸の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつ皮膚構成関連遺伝子を検出することができる核酸
(δ)前記(α)、(β)又は(γ)の核酸の塩基配列において1から数個の塩基が付加、欠失又は置換された塩基配列からなり、かつ皮膚構成関連遺伝子を検出することができる核酸
上記(α)の核酸は、配列番号27、30、58、63、70、84、85及び112に示される塩基配列を有する核酸であり、当該配列番号に示される塩基配列は、前述した(a)の核酸における皮膚構成関連遺伝子(GBA、GLB1、CAT、OLFM1、ASAH1、MMP14、MMP17及びCOL18A1)の塩基配列の一部に相当する塩基配列である。よって、上記(α)の核酸も、本発明における皮膚に対する紫外線の影響の評価等のためのプローブ(又はプローブセット)として有効に用いることができる。
また、上記(α)の核酸としては、例えば、配列番号27、30、58、63、70、84、85及び112に示される各塩基配列からなる核酸を全て含む態様も好ましく挙げられる。
なお、配列表及び下記表1〜4に列挙した、配列番号1〜273に示される塩基配列のうち、配列番号1〜257に示される塩基配列は、皮膚構成関連遺伝子(ヒト又はマウス由来)の塩基配列の一部に相当するものであり、配列番号258〜273に示される塩基配列は、本発明における評価等の際にコントロールとして使用し得る遺伝子(ヒト又はマウス由来)の塩基配列の一部に相当するものである。なお、配列番号258〜271に示される塩基配列は、ポジティブコントロールとなるものであり、配列番号272及び273に示される塩基配列は、ネガティブコントロールとなるものである。ここで、上記(α)の核酸における、配列番号27、30、58、63、70、84、85及び112に示される塩基配列は、それぞれ順に、MMP14、MMP17、COL18A1、CAT、GLB1、ASAH1、GBA及びOLFM1の遺伝子の塩基配列の一部に相当するものである。
本発明においては、上記コントロールとしての塩基配列からなる核酸も、上記(α)の核酸と共に使用することができ、同様に、後述する(β)、(γ)及び(δ)の核酸と共に使用することもできる。
また、上記(β)の核酸も、上記(α)の核酸と同様に、本発明における皮膚に対する紫外線の影響の評価等に用いることができる。上記(β)の核酸については、上記(α)の核酸の相補鎖の塩基配列からなること以外は、上述した(α)の核酸に関する説明を同様に適用することができる。
また、上記(γ)の核酸も、上記(α)及び(β)の核酸と同様に、本発明における皮膚に対する紫外線の影響の評価等に用いることができる。
上記(γ)の核酸は、前記(α)又は(β)の核酸の塩基配列に対して、70%以上の相同性を有する塩基配列からなる核酸であるが、さらに、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上又は99.9%以上の相同性を有する塩基配列からなる核酸であることが好ましい。なお、塩基配列の相同性に関する説明については、前述した(b)の核酸における説明を同様に適用することができる。
なお、上記(γ)の核酸において、「皮膚構成関連遺伝子を検出することができる」とは、前述した(a)において列挙した皮膚構成関連遺伝子(GBA、GLB1、CAT、OLFM1、ASAH1、MMP14、MMP17及びCOL18A1)の塩基配列やその相補鎖の塩基配列のいずれかをハイブリダイゼーションにより捕捉することができることであることを意味する。
さらに、上記(δ)の核酸も、上記(α)、(β)及び(γ)の核酸と同様に、本発明における皮膚に対する紫外線の影響の評価等に用いることができる。
上記(δ)の核酸は、上記(α)、(β)及び(γ)の核酸の塩基配列において1から数個(例えば、1〜15個、1〜10個、又は1〜5個、あるいは1〜2個)の塩基が付加、欠失又は置換された塩基配列である。例えば、上記(α)、(β)及び(γ)の核酸の塩基配列の末端に、リンカーとなる塩基(ポリTなど)を修飾したものや、当該塩基配列の一部に別の塩基を挿入したり、当該塩基配列の一部の塩基を欠失させたり、当該塩基配列の一部の塩基を別の塩基に置換したもの等が挙げられる。
このように、所望の塩基を付加、欠失又は置換した変異配列、特に変異置換型の核酸については、例えば、上記「Moleculer cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.」や「Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)」等に記載の部位特異的変位誘発法に準じて調製することができる。具体的には、Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キットを用いて調製することができ、当該キットとしては、例えば、QuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Prime STAR(登録商標) Mutagenesis Basal kit、Mutan(登録商標)-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等が好ましく挙げられる。
なお、上記(δ)の核酸において、「皮膚構成関連遺伝子を検出することができる」とは、上記(γ)の核酸に関する説明を同様に適用することができる。
上記(α)、(β)、(γ)及び(δ)の核酸は、前述した(a)、(b)及び(c)の核酸と同様に、当該核酸の全長に限らず、その一部をプローブとして使用することができる。
また、本発明においては、皮膚に対する紫外線の影響を評価するためのプローブセットとしては、例えば、下記(i)及び/又は(ii)の核酸からなるものも使用することができる。
(i)配列番号1〜130に示される塩基配列からなる核酸
(ii)配列番号131〜257に示される塩基配列からなる核酸
ここで、上記(i)の核酸は、ヒト由来の皮膚構成関連遺伝子の塩基配列からなる核酸の一部に相当するものであり、上記(ii)の核酸は、マウス由来の皮膚構成関連遺伝子の塩基配列からなる核酸の一部に相当するものである。
本明細書において記載した各種核酸の入手方法は、特に限定はされず、公知の遺伝子工学的手法又は公知の合成手法によって取得することが可能であり、例えば、市販のDNA合成機を用いる等して得ることができる。
また、プローブとして使用し得る各種核酸は、適宜、修飾されたものであってもよく、例えば、末端ビニル化(アクリロイル化、メタクリロイル化)又は末端アミノ化がなされたものや、リンカーとなる塩基(ポリTなど)で修飾されたもの等が挙げられる。また、各種核酸の塩基配列の一部へ別の塩基を挿入したり、当該塩基配列の一部の塩基を欠失させたり、又は別の塩基に置換したり、あるいは塩基以外の物質に置換して、使用することもできる。ここで、塩基以外の物質としては、例えば、色素(蛍光色素、インターカレーター)、消光基、塩基架橋剤が挙げられる。

3.核酸マイクロアレイ
核酸マイクロアレイとは、担体上に多数の核酸プローブを高密度にそれぞれ独立に固定化したものである。核酸マイクロアレイは、複数の核酸塩基配列に関する発現量や、特定の核酸塩基配列の配列自体を解析するために利用されるシステムである。
本発明の核酸マイクロアレイは、上述した本発明のプローブが搭載されたものである。本発明の核酸マイクロアレイは、支持体上に、本発明のプローブが固定されたものであれば、限定はされない。例えば、前述した皮膚構成関連遺伝子に由来する各々のmRNAとハイブリダイズし得るプローブをそれぞれ支持体に固定しておくことにより、複数の皮膚構成関連遺伝子の発現の検出や定量を同時に行うことができる。
核酸マイクロアレイについて、その支持体の形態は特には限定されず、平板、棒状、ビーズ等のいずれの形態も使用できる。支持体として、平板を使用する場合は、その平板上に、所定の間隔をもって、所定のプローブを種類毎に固定することができる(スポッティング法等;Science 270,467−470(1995)等参照)。また、平板上の特定の位置で、所定のプローブを種類毎に逐次合成していくこともできる(フォトリソグラフィー法等;Science 251, 767−773(1991)等参照)。
他の好ましい支持体の形態としては、中空繊維を使用するものが挙げられる。支持体として中空繊維を使用する場合は、プローブを種類毎に各中空繊維に固定し、すべての中空繊維を集束させ固定した後、繊維の長手方向で切断を繰り返すことにより得られる核酸マイクロアレイが好ましく例示できる。この核酸マイクロアレイは、貫通孔基板にプローブを固定化したタイプのものと説明することができ、いわゆる「貫通孔型マイクロアレイ」とも言われる(特許第3510882号公報等、本願図1を参照)。
支持体へのプローブの固定化方法は特には限定されず、どのような結合様式でもよい。また、支持体に直接固定化することに限定はされず、例えば、予め支持体をポリリジン等のポリマーでコーティング処理し、処理後の支持体にプローブを固定することもできる。さらに、支持体として中空繊維等の管状体を使用する場合は、管状体にゲル状物を保持させ、そのゲル状物にプローブを固定化することもできる。
以下、中空繊維による貫通孔型核酸マイクロアレイについて、詳細に説明する。このマイクロアレイは、例えば、下記(i)〜(iv)の工程を経て作製することができる。
(i)複数本の中空繊維を、中空繊維の長手方向が同一方向となるように3次元に配列して配列体を製造する工程
(ii)前記配列体を包埋し、ブロック体を製造する工程
(iii)プローブを含むゲル前駆体重合性溶液を前記ブロック体の各中空繊維の中空部に導入して重合反応を行い、プローブを含むゲル状物を中空部に保持させる工程
(iv)中空繊維の長手方向と交差する方向で切断して、ブロック体を薄片化する工程中空繊維に使用される材料としては、限定はされないが、例えば、特開2004−163211号公報等に記載の材料が好ましく挙げられる。
中空繊維は、その長手方向の長さが同一となるように3次元に配列される(工程(i))。配列方法としては、例えば、粘着シート等のシート状物に複数本の中空繊維を所定の間隔をもって平行に配置し、シート状とした後、このシートを螺旋状に巻き取る方法(特開平11−108928号公報を参照)や、複数の孔が所定の間隔をもって設けられた多孔板2枚を孔部が一致するように重ね合わせ、それらの孔部に中空繊維を通過させ、その後2枚の多孔板の間隔を開いて仮固定し、2枚の多孔板間における中空繊維の周辺に硬化性樹脂原料を充満させて硬化させる方法(特開2001−133453号公報を参照)等が挙げられる。
製造された配列体はその配列が乱れないように包埋される(工程(ii))。包埋の方法としては、ポリウレタン樹脂及びエポキシ樹脂等を繊維間の隙間に流し込む方法のほか、繊維どうしを熱融着により接着する方法等が好ましく挙げられる。
包埋された配列体には、各中空繊維の中空部に、プローブを含むゲル前駆体重合性溶液(ゲル形成溶液)を充填し、中空部内で重合反応を行う(工程(iii))。これにより、各中空繊維の中空部に、プローブが固定されたゲル状物を保持させることができる。
ゲル前駆体重合性溶液とは、ゲル形成重合性モノマー等の反応性物質を含有する溶液であって、該モノマー等を重合、架橋させることにより該溶液がゲル状物となることが可能な溶液をいう。そのようなモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ビニルピロリドン、メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。この場合溶液には重合開始剤等が含まれていてもよい。中空繊維内にプローブを固定した後、中空繊維の長手方向と交差する方向(好ましくは直交する方向)で、ブロック体を切断して薄片化する(工程(iv))。このようにして得られた薄片は、核酸マイクロアレイとして使用できる。当該アレイの厚みは、0.01mm〜1mm程度であることが好ましい。ブロック体の切断は、例えば、ミクロトーム及びレーザー等により行うことができる。当該貫通孔型マイクロアレイとしては、例えば、三菱レイヨン社製の核酸マイクロアレイ(GenopalTM)等が好ましく挙げられる。

4.皮膚の状態の評価
本発明によれば、前述した本発明のプローブ又はプローブセットあるいは核酸マイクロアレイを用いて皮膚構成関連遺伝子の発現量を測定することにより、検査対象(被験対象)の皮膚に対する外部刺激、特に紫外線による、ハリやシワ等の皮膚の状態への影響を、包括的に評価することができる。
皮膚構成関連遺伝子の発現量の測定は、例えば、外部刺激を、検査対象としての動物の皮膚又はその培養細胞に加えた後(特に、紫外線を、動物の皮膚又はその培養細胞に照射した後)、当該皮膚又は培養細胞からmRNAを抽出することにより行うことができる。当該mRNAは、検査対象中に含まれているものをそのまま使用することもでき、また、当該mRNAから逆転写(又は逆転写及び増幅)して得たcDNAや、当該cDNAを転写増幅して得たaRNA(amplified RNA)を使用することもできる。更に、当該増幅産物には、biotinを初めとする蛍光標識剤、インターカレーター、金属粒子、発光反応する酵素等により標識しておくことが好ましい。
皮膚又はその培養細胞の由来動物は限定されないが、例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、モルモット、サル、イヌ、ネコ等を挙げることができる。培養細胞の種類は、皮膚に関連する細胞であれば特には限定されず、例えば、正常上皮細胞、正常メラノサイト、正常ケラチノサイト細胞、上皮繊維芽細胞、メラノーマ細胞等を挙げることができる。
ハイブリダイゼーション反応は、上述のようにして得られたmRNA、cDNA、aRNAがマイクロアレイに搭載されたプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るよう、反応条件(緩衝液の種類、pH、温度等)を適宜設定して行うことができる。なお、ここで言う「ストリンジェントな条件」については、前述したとおりである。
洗浄後は、プローブに結合したmRNA、cDNA、aRNAの標識を検出できる装置により、プローブごとに検出強度を測定する。標識剤等から得られた検出結果(シグナル強度)に基づいて、公知の処理方法により、ターゲットとなる各種遺伝子の発現量の有意性を評価することができる。

5.スクリーニング方法
本発明においては、本発明のプローブ又はプローブセットあるいは核酸マイクロアレイを用いて、皮膚疾患治療薬又は化粧品に有用な化合物をスクリーニングする方法を提供することができる。
当該スクリーニングは、具体的には、例えばUVBといった外部刺激を動物の皮膚又はその培養細胞に加えた後、候補物質を動物又は培養細胞へ接触させ、皮膚構成関連遺伝子の発現量を測定し、対照(候補物質を接触させない場合など)の遺伝子発現量と比較解析することによってスクリーニングをすることができる。または、場合によっては、外部刺激の前に候補物質を接触させることもある。ここでいう接触とは、動物であれば、候補物質を経皮投与(皮膚に塗布、貼付等)、経口投与、腹腔投与、皮下投与、静脈投与すること等を指し、培養細胞であれば、培養液中に候補物質を添加することを指す。
対照としては、候補物質を接触させずに外部刺激を加えた場合、外部刺激を加えずに候補物質を接触させた場合、または外部刺激を加えず候補物質の接触もさせない場合等が挙げられる。
なお、用い得る候補物質としては、任意の各種化合物が挙げられ、天然由来のものであっても人工的に作製したものであってもよく、限定はされない。
対照となる遺伝子の発現量データは、同一の被験対象から取得したものであっても複数の異なる同一種の被験対象から取得したものであってもよく、またデータベースに予め蓄積されたものであってもよい。また、測定された被験対象由来の発現量データを母集団(被験対象)の値に組み込んで発現量レベルを再度データ処理し(平均値化等)、母集団の例数を増やすこともできる。例数を増やすことにより、発現量の臨界値の精度を高め、場合により臨界値を適宜修正することにより、スクリーニングの精度を高めることができる。
遺伝子発現量の比較解析としては、候補物質の接触により、遺伝子発現量が外部刺激を与えない場合の遺伝子発現量に近づくかどうかで評価することができる。その評価の方法としては、遺伝子発現量の経時変化や条件による変化をパターンとして評価することができ、具体的には、多変量解析を用いて行うことができる。多変量解析としては、例えば、主成分分析、因子分析、判別分析、数量化理論(I類,II類,III類,IV類)、クラスター分析、多次元尺度構成法(MDS)、重回帰分析、コンジョイント分析、マハラノビス・タグチシステム(MT法)を用いたパターンの比較及び効果の予測等が挙げられる。
動物や培養細胞に接触させる候補物質の濃度や量は、候補物質や被験対象の種類等に応じて適宜設定及び選択することができるが、核酸抽出に障害となる影響を及ぼさないよう、候補物質による毒性が被験対象に生じない濃度や量で行うのが好ましい。毒性が生じないとは、動物の場合は、少なくとも死亡しない、又は部分的な壊死が観測されないこと、培養細胞では、少なくとも細胞生存率が90%以上であることが挙げられる。
核酸の抽出方法、抽出した核酸の処理方法は限定されず、公知の方法で行うことができるが、使用するマイクロアレイの種類に適した方法で行うことが好ましい。例えば、Total RNAを単離する場合は市販品の試薬キットであるRNeasy mini kit(QIAGEN)などを使用することができ、付属のプロトコールにしたがって抽出を行うことができる。また、場合によりRNAを増幅する場合は、市販品でのキットであるMessage AmpII−Biotin Enhancedキット(アプライドバイオシステムズ社製)を使用して、付属のプロトコールに従って増幅したaRNAを調製し、測定することができる。
測定結果で評価に使用するデータは、判定値以上の値のみを使用する。判定値はネガティブコントロールの平均値Xを用いることができ、さらにはXに標準偏差σを足した値、さらにはX+2σ、さらにはX+3σが望ましい。なお、ネガティブコントロールとは、被験対象から検出されるはずのない遺伝子であり、例えば、被験対象と異なる他種生物の遺伝子などである。
得られたデータの各サンプル間の誤差をハウスキーピング遺伝子(gapdh、actin、arbp等)の値で補正し、補正したデータを用いてmRNA量の変動を判定する(mRNA量の変動は検定により統計的に判定する。各被験対象からサンプル数(n)を3以上取得し、t検定を行う。P値が0.05以下の場合に、さらには0.01以下の場合に有意に変動したと判定する。)。当該判定の結果、有意に変動したと判定されなかった場合に用いた候補物質が、前述のように、遺伝子発現量が外部刺激を与えない場合の遺伝子発現量に近づけることができた候補物質と判断でき、皮膚疾患治療薬又は化粧品に有用な化合物としてスクリーニングされたものと判断できる。
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
(1)中空繊維束の製造
図1に示す配列固定器具を利用して中空繊維束を製造した。なお、図中のx、y、zは直交の3次元軸であり、x軸は繊維の長手方向と一致する。
まず、直径0.32mmの孔が、孔の中心間距離を0.12mmとして、縦横各16列で合計256個設けられた厚さ0.1mmの多孔板2枚を準備した。これらの多孔板を重ね合わせて、そのすべての孔に、外径280μm、内径180μm、長さ150mmのポリカーボネート中空繊維を1本ずつ、通過させた。
X軸方向に各繊維に0.1Nの張力をかけた状態で2枚の多孔板の位置を移動させて、中空繊維の一方の端部から20mmの位置と100mmの位置の2ヶ所に固定した。即ち、2枚の多孔板の間隔を80mmとした。次いで、多孔板間の空間の周囲3面を板状物で囲った。このようにして上部のみが開口状態にある容器を得た。
次に、この容器の上部から容器内に樹脂原料を流し込んだ。樹脂としては、ポリウレタン樹脂接着剤(日本ポリウレタン工業(株)ニッポラン4276、コロネート4403)の総質量に対し、2.5質量%のカーボンブラックを添加したものを使用した。25℃で1週間静置して樹脂を硬化させた。次いで多孔板と板状物を取り除き、中空繊維束を得た。得られた中空繊維束をデシケーター中に入れ内部を窒素置換した後、16時間静置した。
(2)中空糸内へのプローブの固定化とスライス
配列表より選択した遺伝子のプローブ(BEX社よりビニル化核酸を購入)を含む組成のゲル重合前駆体溶液(表5:単位はmL)をマイクロウェルプレートの各ウェルに36μL分注した。該ウェルプレートをデシゲーター内に設置し、端部から各ウェルに分注したゲル前駆体溶液を吸引し、中空繊維の中空部に導入した。
次いで、前記の中空繊維束を前記デシケーター内に設置し、デシケーター内を窒素雰囲気下、55℃まで昇温して、55℃で3時間、重合反応を実施した。
重合反応終了後、ミクロトームを用い、中空繊維束を中空繊維の長手方向に直角方向に厚さ250μmで薄片化した。このようにして、228個のキャプチャープローブを含むゲルスポットを搭載した厚さ250μmの核酸マイクロアレイを300枚作製した。
(3)作製した核酸マイクロアレイを用いたサンプル測定
フィブロサイト(RIKEN BRC CELL BANK)を96wellプレートに2.0×10cells/wellとなるように播種し、10%FBS含有DMEM培地(シグマ アルドリッチ)で24時間培養した。UVB(紫外線B波)照射前を0時間とし、一方には培地を除去してPBS を加えUVB(30 mJ/cm2)を照射した。UVB照射後、PBS を除去し、再び培地を加え3、6、9,12、24、36、48、72時間培養した。
各培養時間の細胞をPBS(−)で洗浄し、核酸マイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。核酸マイクロアレイによる遺伝子発現解析ためのサンプル調製はRneasy Mini Kit(Qiagen社製)のプロトコールの通りに行った。
細胞をPBS(−)で洗浄後、トリプシン処理で回収し、1000rpmで沈殿させ、上清を除去後にPBS(−)175μLを添加した。細胞サンプル溶液175μLにキットに付属のRLT溶液175μLを添加し、1mLシリンジで5回出し入れして、細胞を破砕した。破砕液に70%エタノールを添加し、ピペッティング5回行ったあと、その溶液を添付のカラムに添加して遠心し(13000rpm 1分)、次いで付属のRW1700μL、RPE500μLで洗浄し(各13000rpm、1分)、RNase free Water 30μLで溶出してRNAの精製を行った。
次に、Message Amp II−Biotin Enhancedキット(アプライドバイオシステムズ社製)を用い、添付のプロトコールに従ってTotal RNA
1mgからaRNAの調製を行った。aRNA 5μgをプラスチックチューブに入れ、Message AmpII−Biotin Enhancedキット(アプライドバイオシステムズ社製)付属の5x Array Fragmentation Buffeを4μL添加し、20μLにメスアップしてよく混合した後、94℃で7.5分間加熱してaRNAの断片化を行った。断片化後の溶液20μLに、18μLの1M Tris−HCl溶液(インビトロジェン社製)、18μLの1M NaCl溶液(ナカライテスク社製)及び15μLの0.5% Tween20溶液をそれぞれ混合し、Nuclease−free waterで150μLにメスアップして、検体液を調製した。
調製した検体液に、核酸マイクロアレイ(三菱レイヨン株式会社製 核酸マイクロアレイ(GenopalTM))を浸漬し、65℃で16時間ハイブリダイゼーション反応を行った。当該アレイからハイブリダイゼーションに用いた検体液を除去した後、当該アレイを65℃の0.12M TNT溶液(0.12M Tris−HCl、0.12M NaCl、0.5%、Tween20溶液)中に浸漬し(20分間×2回)、次いで、65℃に温めた0.12M TN溶液(0.12M Tris−HCl、0.12M NaCl)に10分間浸漬して洗浄した。その後、核酸マイクロアレイのシグナルを検出した。
核酸マイクロアレイにおけるシグナルの検出は、核酸マイクロアレイ検出装置(横河電機製:MB−M3A、レーザー波長:633nm)を用い、Cy5の蛍光強度を測定した(露光時間:0.1秒、1秒、4秒、40秒)。なお、結果はバックグランドを減算後、β−Actin、Arbp、Gapdhの値を用いて補正し、そのシグナル値の経時返歌を示した。
その結果を図2(図2A〜H)に示す。図2の結果より、ネガティブコントロールと比べて、38時間後以降でUVB照射の条件の違いで発現差が有意に変動している遺伝子として、GBA、GLB1、CAT、OLFM1、ASAH1、MMP14、MMP17及びCOL18A1(それぞれ順に、図2F: No.85、図2E: No.70、図2D: No.63、図2G: No.112、図2E: No.84、図2B: No.27、図2B: No.30、及び図2D: No.58の各グラフを参照)が挙げられる。これらの遺伝子はUVB照射の影響を反映していると示唆され、これらの遺伝子を用いて皮膚への影響を評価することができる。
これらの結果から、ハリ、シワ、キメといった皮膚構成へ影響を与える条件を定量的に評価することができることが示された。
本発明によれば、外部刺激、特に紫外線による皮膚への影響を、遺伝子発現レベルで客観的に評価することができるプローブ又はプローブセット、及びこれを搭載した核酸マイクロアレイを提供することができる。当該プローブ又はプローブセット、及び核酸マイクロアレイは、被験対象の皮膚に対する紫外線の影響の評価方法、及び、皮膚疾患治療薬(経皮吸収剤等)や化粧品の有効成分として有用な物質(化合物等)の効率的なスクリーニング方法に用いることができる点で、極めて有用なものである。
1 配列固定器具
11 孔部
21 多孔板
31 中空繊維
41 板状物

Claims (13)

  1. 下記(a)、(b)又は(c)の核酸若しくはその一部を含む、皮膚に対する紫外線の影響を評価するためのプローブ又はプローブセット。
    (a)GBA、GLB1、CAT、OLFM1、ASAH1、MMP14、MMP17及びCOL18A1からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸
    (b)前記(a)の核酸に対し相補的な塩基配列からなる核酸
    (c)前記(a)又は(b)の核酸に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ皮膚構成関連遺伝子を検出することができる核酸
  2. 前記(a)の核酸が、下記(i)及び(ii)の核酸からなるものである、請求項1記載のプローブセット。
    (i)GBA、GLB1、CAT、OLFM1及びASAH1からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸
    (ii) MMP14、MMP17及びCOL18A1からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸
  3. 前記(a)の核酸が、GBA、GLB1、CAT、OLFM1及びASAH1の各遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸である、請求項1記載のプローブセット。
  4. 前記(a)の核酸が、MMP14、MMP17及びCOL18A1の各遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸である、請求項1記載のプローブセット。
  5. 前記(a)の核酸が、MMP14、MMP17、COL18A1、GBA、GLB1、CAT、OLFM1及びASAH1の各遺伝子を構成する塩基配列からなる核酸である、請求項1記載のプローブセット。
  6. 下記(α)、(β)又は(γ)の核酸を含む、皮膚に対する紫外線の影響を評価するためのプローブ又はプローブセット。
    (α)配列番号27、30、58、63、70、84、85及び112に示される塩基配列のうちの少なくとも1種の塩基配列からなる核酸
    (β)前記(α)の核酸に対し相補的な塩基配列からなる核酸
    (γ)前記(α)又は(β)の核酸の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつ皮膚構成関連遺伝子を検出することができる核酸
    (δ)前記(α)、(β)又は(γ)の核酸の塩基配列において1から数個の塩基が付加、欠失又は置換された塩基配列からなり、かつ皮膚構成関連遺伝子を検出することができる核酸
  7. 前記(α)の核酸が、配列番号27、30、58、63、70、84、85及び112に示される塩基配列からなる核酸である、請求項6記載のプローブセット。
  8. 下記(i)及び/又は(ii)の核酸からなる、紫外線の皮膚に対する紫外線の影響を評価するためのプローブセット。
    (i)配列番号1〜130に示される塩基配列からなる核酸
    (ii)配列番号131〜257に示される塩基配列からなる核酸
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のプローブ又はプローブセットを含む、皮膚に対する紫外線の影響を評価するための核酸マイクロアレイ。
  10. 検査対象に紫外線を照射後、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプローブ又はプローブセットを用いて遺伝子発現量を測定する工程を含む、皮膚に対する紫外線の影響を評価する方法。
  11. 検査対象に紫外線を照射後、請求項9記載の核酸マイクロアレイを用いて遺伝子発現量を測定する工程を含む、皮膚に対する紫外線の影響を評価する方法。
  12. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のプローブ又はプローブセットを用いて、皮膚疾患治療薬又は化粧品に有用な化合物をスクリーニングする方法。
  13. 請求項9に記載の核酸マイクロアレイを用いて、皮膚疾患治療薬又は化粧品に有用な化合物をスクリーニングする方法。
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