JP2010502177A - 診断方法 - Google Patents

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Abstract

対象とする瘢痕が本来はケロイドであるかケロイドではないかを決定するのに使用する方法、キットおよびアレイが提供される。対象とする瘢痕における遺伝子発現と対照試料における発現の比較に基づいて、これらにより、ケロイドの性質またはケロイドではない性質が決定される。対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する試料における表1に示す遺伝子群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現が、対照試料における同じ遺伝子(単数または複数)の発現と比較して低下している場合、このことは対象とする瘢痕がケロイドを含むことを示している。
【選択図】なし

Description

本発明は、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかを診断する方法に関する。本発明はまた、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかの診断に使用するのに適したキットおよびオリゴヌクレオチドアレイも提供する。
ケロイド(ケロイド瘢痕とも呼ばれる)は、異常で過形成性の創傷治癒反応により生じる病的瘢痕である。ケロイドは、元の創傷の端部を超えて広がり、創傷部位を囲んでいる正常皮膚を侵す盛り上がった瘢痕を含む。ケロイドは長い期間をかけて増殖を続け、自発的に退行することはない。
ケロイドは男女に等しい頻度で生じる。ケロイド形成の罹患率は、10歳から30歳の間の男女において増加している。ケロイドは、ピアッシング、外科手術、ワクチン接種、入れ墨、咬創、鈍的外傷および熱傷を含む広範囲の損傷の結果として生じる恐れがある。
ケロイドは、“ドーム型”、結節型または隆起型の外観をとりうる。ケロイドは、負傷していない周囲の皮膚の色と同様な色を有する場合もあるが、多くは赤、紫または茶色の外観を有し少し黒ずんだ色をしている。このような色のミスマッチにより、ケロイドの視覚的突出が強められる恐れがある。ケロイドにおける色素増加症の傾向は、太陽の紫外線照射への暴露によって強められる。
ケロイド病変は、それぞれが互いにきわめて異なる生物活性を示しうる多くの異なる部分から構成されているとみなすことができる。成熟ケロイド病変の中央部(病変内部分)は主として無細胞性であるのに対し、病変の周辺部(病変周囲部分)は比較的より細胞性であり、血管新生活性が上昇している部位である。新生血管形成の増加は、病変の外側への増殖と関連づけられてきた。
ケロイドは病的瘢痕の例を代表するものであるが、ケロイドは、主として無傷の皮膚および正常皮膚瘢痕において見出されるものと同じ細胞型および細胞外マトリックス成分から構成されている。しかしながら、これらの細胞型および細胞外マトリックス成分の相対的な存在量および配置は、負傷していない皮膚または正常皮膚瘢痕のいずれにおいて見出されるものとも異なっている。
ケロイドの主要成分は細胞外マトリックス成分であるI型コラーゲンである。ケロイド由来の線維芽細胞は、正常皮膚線維芽細胞と比較して、in vitroで最大20倍高いI型コラーゲンの発現を示す。同様に、培養ケロイド線維芽細胞は、エラスチンおよびプロテオグリカンを上昇したレベルで発現し、このような細胞外マトリックス沈着の増加がケロイドの発生および維持に役割を果たしうると考えられる。
ケロイド内に存在するI型コラーゲンは、主として厚い“渦状紋”の形で配置されているが、負傷していない皮膚(いわゆる細繊維の“バスケット織り”)および正常瘢痕(ケロイドで見られるものよりも細いコラーゲン線維を含有し、互いにおおよそ平行に配置されている)に見られる配置とは識別することができる。ケロイド内に多く存在する肥厚性のヒアリン化コラーゲンにより、“ケロイドコラーゲン”と呼ばれるこの形態のコラーゲンが生じた。
ケロイドは、正常瘢痕と比較してマクロファージを少なく含むが、好酸球、マスト細胞、血漿細胞およびリンパ球を多く含む。
ケロイドは、疼痛の原因となることはあまりないが、その形成または増殖中に不快、圧痛、刺激または痒みを引き起こす恐れがある。ケロイドはまた、負傷していない皮膚と比較して、そのサイズにより、あるいはその増加した剛性により機械的機能を損ねる恐れもある。関節の近くにあるケロイドの場合は、特に著しいものとなる恐れがある。さらにまた、ケロイド、特に、大きいかまたは著しく美観を損ねる例では、これらに悩まされる人に心理的苦痛を引き起こす場合があることはよく知られている。
ケロイドのさらに非常に有害な特質は、特に外科的切除後におけるそれらの再発傾向である。このような状況下でのケロイドの再発は、通常、病変のさらなる拡大を伴い、以前の切除に続いてケロイドはさらに激しく拡大する場合がある。
外科的切除が許容され、しばしばより好ましいアプローチであることを除いては、肥厚性瘢痕の治療オプションはケロイドの治療オプションと類似している。
ケロイドの場合は、一般に、可能であれば外科的介入を避けることが好ましいことは明らかであろう。高い再発率と、外科的介入によりその再発に悪影響を及ぼすこととを考慮すれば、適切な療法を用いるためにはケロイドを正確に診断できることが重要である。現行のケロイドの療法は、コルチコステロイド注射、凍結療法、放射線治療、シリコーンゲル包帯法およびケロイド瘢痕のサイズを減少させるための薬剤の病変内注射を含む。
現行の医療においては、瘢痕の外観に基づいてケロイドの診断がなされる。しかしながら、ケロイドの形態は他の病的瘢痕の形態と大変類似しているという事実によりケロイドの正確な診断が妨げられる。ケロイドの外観と肥厚性瘢痕の外観は特に類似している場合がある。肥厚性瘢痕は、それらが皮膚面の上に同様に盛り上がっているという点でケロイド瘢痕と類似している。しかしながら、元の病変の境界内にとどまり最初の損傷の数ヵ月後に自発的に退行しうる点で肥厚性瘢痕はケロイドとは異なる。ケロイドと肥厚性瘢痕とが視覚的に類似しているということは、これら2つの異なる状態間の盛り上がった瘢痕の診断がしばしば紛らわしく、長期モニタリングなしには正確な診断はできないことを意味している。対象とする瘢痕を診断して、それらが本来はケロイドであるのかあるいはそれらが他の病的または過度の瘢痕型、例えば肥厚性瘢痕に属するのかを示すことができる迅速で正確な手段が求められている。
盛り上がった瘢痕は、ケロイド疾患を伴っていると推定されがちであり、黒人患者の場合は、隆起した瘢痕は、多くの医師によりデフォルトでケロイドと診断されがちである(Rosenborough et al, 2004. J.Natl.Med.Assoc. 96, 108)。この傾向は、ケロイドではない瘢痕(たとえば肥厚性瘢痕または大変ひどい非病的瘢痕)をケロイドであるとする誤認の原因となりうる。このような潜在的誤診は、不適切な瘢痕治療方針の決定につながる恐れがあり、このような誤診された瘢痕の場合は、見込みのある治療的アプローチとしての選択的/瘢痕再置換術の使用を妨げかねないことは明らかであろう。
上で述べたように、ケロイドは元の損傷の境界を越えて増殖する唯一の病的皮膚瘢痕であることが知られている。この性質は、ケロイドと肥厚性瘢痕の間の鑑別診断を行う根拠を提供しうるものであるが、診断される瘢痕の長期観察の必要性がある場合は、この診断は大変長い時間を必要とする。
組織がケロイドであるかケロイドではないかを診断する他の試みには、組織学的評価を用いたものがある。ケロイド診断の適切な根拠を提供するとして示唆されている組織学的特徴には、肥厚性のヒアリン化されたコラーゲンであるいわゆる“ケロイドコラーゲン”があるが、これはすべてのケロイド試料において見られるわけではない。ケロイドを他の病的瘢痕(たとえば肥厚性瘢痕)と識別することを可能にするさらなる特徴には、非線維性真皮乳頭層である、ケロイドにおける非扁平表皮の存在、ケロイド病変を取り囲む“舌状”前縁の存在(正常な外見の表皮および真皮乳頭層の詩下に位置する)、真皮網状層上部に位置する水平細胞線維性索状物の存在および顕著な筋膜様策状物の存在がある。
しかしながら、ケロイド診断のためのこれらの組織学的手掛かりもまた不十分である。診断マーカーとして示唆された特徴のすべてがすべてのケロイド組織に見いだされるわけではなく、同様に、示唆されたマーカーにはケロイドではない組織に見いだされるものもある。
さらにまた、ケロイド診断のための組織学的手段の使用には、組織学的試料の調製および分析に消費されるかなりの時間を必要とするばかりでなく、このような分析を実施する人間の側にも技術および判断力の傾注を必要とする。
ケロイド瘢痕の診断のための迅速で正確な方法およびキットにより、より信頼性の高い診断を行うことが可能となる。このことにより、皮膚病変の臨床治療に関する正しい決定を行うことが容易となり、ケロイドおよびケロイドではない病変の両方の治療に有利となる。ケロイドと診断された組織の場合において、そうでなければケロイドの再発および拡大を悪化させる治療を避けることが可能となる一方で、ケロイドではない組織の治療において、このような考察が不適切に適用されることはない。さらにまた、早期の正確な診断は緩和ケア療法の成功に関して大きな利点を有すると推定される。なぜなら、多くの利用可能な治療は成熟度の低い瘢痕に対してより有効であると考えられるからである。
このように、ケロイドを形成する患者とケロイドを形成しない患者とを識別する能力は、ケロイドを発生する傾向のある患者に、外科手術の制限、従ってケロイド形成のリスクの制限に関して大きな利点を提供することができる。なぜなら、ケロイド形成の予防はケロイドを形成する患者の管理において極めて重要であり、これらの個体には必須ではない美容整形を避けることが推奨されると一般に考えられるからである。
上記を考慮すれば、ケロイドの診断のための新規な代替法およびキットの提供が必要であることが十分認識されることは明らかであろう。このような方法およびキットは、好ましくは、安全で信頼性のある、ケロイド診断に適したものであることができる。
ケロイド診断のための新規方法およびマーカーを提供することは、本発明の特定の実施形態の目的である。対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかの診断において、先行技術が達成したものよりもより大きな確実性を可能にする診断方法を提供することは、本発明の特定の実施形態の他の目的である。対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかを決定するための、先行技術の方法よりもより優れた診断速度を可能にする診断方法を提供することは、本発明の特定の実施形態の他の目的である。診断を実施するために大きな生検材料を採取する必要のない、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかを診断するための方法を提供することは、本発明の特定の実施形態のさらに他の目的である。ケロイド形成の再発および/または悪化の原因となると考えられる手順を含まない、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかを診断することを可能にする方法を提供することは、本発明の特定の実施形態のさらに他の目的である。
本発明の第1の側面によれば、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかを診断する方法において、対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する試料における、表1に示す遺伝子群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現と、コンパレータ(comparator)組織における、前記少なくとも1つの遺伝子の発現とを比較することを含む前記方法であって、コンパレータ組織における前記少なくとも1つの遺伝子の発現と比較して、対象とする瘢痕における前記少なくとも1つの遺伝子の発現が低下していることが、対象とする瘢痕がケロイドを含むことを示す前記方法が提供される。
本発明の第2の側面において、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかを診断するためのキットであって、
i)対象とする瘢痕における、表1に示す群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的分子に特異的に結合できる少なくとも1つのプローブ;および
ii)コンパレータ組織における前記少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを示すことができる標準物質
を含む前記キットが提供される。
本発明の方法およびキットは、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかのin vitro診断のために用いられることが好ましい。
本発明の方法およびキットは、ヒト瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかの診断に使用するのに最も適しているが、本発明の方法およびキットはまた、非ヒト動物における同様な状態、たとえばウマにおける“肉芽組織”の診断に有用であることもできる。
本発明は、その発現が低下していることがケロイド組織の特徴である多数の遺伝子の本発明者による同定に基づく。対象とする瘢痕におけるこれらの遺伝子の1以上の発現とコンパレータ組織において生じる発現との比較が、組織がケロイドであるかケロイドではないかに関する正確で迅速な診断を可能にすることを本発明者は見出した。コンパレータ組織サンプルにおける発現と比較して遺伝子発現が低下していることにより対象とする瘢痕がケロイドと一致することが示されるが、コンパレータと比較して対象とする瘢痕における発現が変わらないまたは上昇していることは、対象とする瘢痕がケロイドではない組織であることを示している。
表1に見られる遺伝子(すなわち遺伝子番号1〜遺伝子番号590を含む群)の発現が低下していることが、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかを診断するために使用できるという所見は驚くべきである。なぜなら、特定の遺伝子の発現(たとえばVEGF、IGF1およびPAI1をコードする遺伝子の発現)はケロイド組織に関連づけられているが、表1に示す遺伝子は、ケロイド瘢痕の特徴としては言うまでもなく、ケロイドに関連していることは今までに同定されていないからである。
本発明の実施において(本発明の方法、キットまたはアレイのいずれを使用しても)、対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する試料における選択された遺伝子(単数または複数)の発現は適切なコンパレータ組織における同じ遺伝子(単数または複数)の発現と比較される。このような選択された遺伝子(単数または複数)の発現の比較により、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかを診断することが可能となる。もしコンパレータ試料における場合と比較して対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する試料における選択された遺伝子(単数または複数)の発現が低下していれば、それは対象とする瘢痕がケロイド組織を含むことを示す。他方では、もし対象とする瘢痕における発現を代表する試料において選択された遺伝子(単数または複数)の発現の低下がみられなければ(あるいは、むしろこれらの遺伝子の発現の上昇が見られれば)、それは対象とする瘢痕がケロイド組織を含まないことを示す。
一般に、対象とする瘢痕における選択された遺伝子の発現は、遺伝子発現を代表する標的分子の分析により調査される。適切な調査は、試料中のこのような標的分子の存否の分析(明細書の他の部分でさらに説明する遺伝子発現の定性分析)または試料中の標的分子の相対存在量の分析(明細書の他の部分でさらに詳細に考察されるように、遺伝子発現に関する定性的情報を提供することができる)を含むことができる。
コンパレータ組織における遺伝子発現は、適切な標的分子を含む組織または組織抽出物により示すこともでき、あるいはコンパレータ中の遺伝子発現レベルの詳細を提示するデータにより示すこともできる。適切な標的分子の同定、単離および分析は、コンパレータ組織サンプルにおける情報の提供として明細書の他の部分でさらに詳しく説明する。
本開示のためのコンパレータ組織は、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかを診断することを可能にするための、対象とする瘢痕における遺伝子発現を比較することができる組織である。特に、表1に示す少なくとも1つの遺伝子の、対象とする瘢痕における発現は、コンパレータ組織における同じ遺伝子(単数または複数)の発現と比較される。
本発明記載の使用のために、適切なコンパレータ組織として、多くの異なる組織型を用いることができる。適切なコンパレータ組織は正常皮膚を含む。本目的のために、正常皮膚はケロイド瘢痕以外に存在する皮膚と考えることができ、好ましくは、瘢痕のない負傷していない皮膚と考えることができる。
あるいは、本発明に使用するのに適したコンパレータ組織は、既知のケロイド由来の組織であることができる。例えば本発明による使用のための適切なコンパレータ組織は、既知のケロイドに隣接した皮膚由来の組織(本明細書においては、“ケロイド外(extra-keloid)コンパレータ組織”とも呼ぶ)を含むことができる。また、適切なコンパレータ組織は、既知のケロイドの周辺部位由来の組織(本明細書においては、“ケロイド周囲(peri-keloid)コンパレータ組織”とも呼ぶ)を含むことができる。さらなる代替物において、適切なコンパレータ組織は既知のケロイドの内部由来の組織(ケロイド内(intra-keloid)コンパレータ組織”とも呼ぶ)を含むことができる。
本発明においては、“コンパレータ試料”は、コンパレータ試料が由来するコンパレータ組織における選択された遺伝子の発現に関する情報を提供する任意の試料(例えば、本明細書において他の部分で考察する組織抽出物など)を含む。
本発明に従って、表1に示す遺伝子群により示される任意の遺伝子を使用することができるが、これらの遺伝子の特定のサブセットが特別な診断的価値を有することを本発明者はさらに見出した。これらのサブセットを下記に示しさらに詳細に考察する。
本発明者は、表1に示す特定の遺伝子の発現がケロイド病変の異なる部位の間で変化することに注目した。本発明による診断(本発明の方法、キットまたはアレイのいずれを用いても)をさらに改善するためにこの情報を使用できる。
本発明者はまた、本発明の方法およびキットで調査することができる好ましい遺伝子は、それらの生物学的機能を参照して選択することができることも見出した。
対象とする診断される瘢痕を代表する対象とする試料は、試料が由来する瘢痕中の位置を参照してさらに特徴づけることができる。この根拠に基づいた対象とする試料の特徴づけにより、本発明により行われる診断の有効性が改善されることを本発明者は見出した。対象とする試料は、病変周囲(つまり、対象とする瘢痕を含む病変の周辺から採取した試料)および病変内(対象とする瘢痕を含む病変の内部から採取した試料)として特徴づけることができる。
対象とする病変周囲試料の診断に用いることができる表1からの遺伝子を表2に示す。表2に示す遺伝子の1以上の比較に基づいて本発明による診断(本発明の方法、キットまたはアレイのいずれを用いても)を行うことができることは好ましい実施形態である。
対象とする病変内試料の診断に用いることができる表1からの遺伝子を表20に示す。表20に示す遺伝子の1以上の比較に基づいて本発明による診断(本発明の方法、キットまたはアレイのいずれを用いても)を行うことができることは好ましい実施形態である。
上記のように、本発明による診断に使用するのに適したコンパレータ組織は、それらの供給元を参照して正常皮膚コンパレータ;ケロイド外コンパレータ;ケロイド周囲コンパレータ;またはケロイド内コンパレータと特徴づけることもできる。対象とする瘢痕におけるそれらの位置を参照して特徴づけられる対象とする試料における遺伝子発現と上記のように特徴づけられるコンパレータの遺伝子発現とを比較することにより、本発明による診断を改善することができることを本発明者は見出した。
従って、対象とする病変周囲試料における遺伝子発現と正常皮膚コンパレータにおける遺伝子発現とを比較することが好ましい場合がある。診断を提供するためにこのような試料間で発現を比較することができる適切な遺伝子の例を表3に示す。これらの遺伝子を、それらの生物学的機能を参照してさらに特徴づけることができる。よって、表4に示す遺伝子は細胞運動性と関連する遺伝子を表し、表5に示す遺伝子は細胞接着と関連し、表6に示す遺伝子は炎症と関連し、表7に示す遺伝子は新生血管発生(特に血管新生)と関連する。
これに代えて、あるいはこれに加えて、対象とする病変周囲試料における遺伝子発現とケロイド外コンパレータにおける遺伝子発現とを比較することが好ましい場合がある。診断を提供するためにこのような試料間で発現を比較することができる適切な遺伝子の例を表8に示す。これらの遺伝子を、それらの生物学的機能を参照してさらに特徴づけることができる。よって、表9に示す遺伝子は細胞運動性と関連する遺伝子を表し、表10に示す遺伝子は細胞接着と関連し、表11に示す遺伝子は炎症と関連し、表12に示す遺伝子は新生血管発生(特に血管新生)と関連する。
これに代えて、あるいはこれに加えて、対象とする病変周囲試料における遺伝子発現とケロイド周囲コンパレータにおける遺伝子発現とを比較することが好ましい場合がある。診断を提供するためにこのような試料間で発現を比較することができる適切な遺伝子の例を表13に示す。このような比較に基づく診断は、治癒過程における異なる時点での、対象とする組織およびコンパレータにおける遺伝子発現を含むことは明らかであろう。用いられる時点に関する情報は表13に示される。表13に示す遺伝子を、それらの生物学的機能を参照してさらに特徴づけることもできる。よって、表14に示す遺伝子は細胞接着と関連し、表15に示す遺伝子は炎症と関連し、表16に示す遺伝子は新生血管発生(特に血管新生)と関連する。
これに代えて、あるいはこれに加えて、対象とする病変周囲試料における遺伝子発現とケロイド内コンパレータにおける遺伝子発現とを比較することが好ましい場合がある。診断を提供するためにこのような試料間で発現を比較することができる適切な遺伝子の例を表17に示す。これらの遺伝子を、それらの生物学的機能を参照してさらに特徴づけることができる。よって、表18に示す遺伝子は細胞運動性と関連する遺伝子を表し、表19に示す遺伝子は炎症と関連する。
これに代えて、あるいはこれに加えて、対象とする病変内試料における遺伝子発現と正常皮膚コンパレータにおける遺伝子発現とを比較することが好ましい場合がある。診断を提供するためにこのような試料間で発現を比較することができる適切な遺伝子の例を表21に示す。
これに代えて、あるいはこれに加えて、対象とする病変内試料における遺伝子発現とケロイド外コンパレータにおける遺伝子発現とを比較することが好ましい場合がある。診断を提供するためにこのような試料間で発現を比較することができる適切な遺伝子の例を表22に示す。これらの遺伝子を、それらの生物学的機能を参照してさらに特徴づけることができる。よって、表23に示す遺伝子は細胞運動性と関連する遺伝子を表す。
これに代えて、あるいはこれに加えて、対象とする病変内試料における遺伝子発現とケロイド周囲コンパレータにおける遺伝子発現とを比較することが好ましい場合がある。診断を提供するためにこのような試料間で発現を比較することができる適切な遺伝子の例を表24に示す。これらの遺伝子を、それらの生物学的機能を参照してさらに特徴づけることができる。よって、表25に示す遺伝子は細胞接着と関連する。
これに代えて、あるいはこれに加えて、対象とする病変内試料における遺伝子発現とケロイド内コンパレータにおける遺伝子発現とを比較することが好ましい場合がある。診断を提供するためにこのような試料間で発現を比較することができる適切な遺伝子の例を表26に示す。このような比較に基づく診断は、治癒過程における異なる時点での、対象とする組織およびコンパレータにおける遺伝子発現を含むことは明らかであろう。用いられる時点に関する情報は表26に示される。表26に示す遺伝子を、それらの生物学的機能を参照してさらに特徴づけることもできる。よって、表27に示す遺伝子は炎症と関連し、表28に示す遺伝子は新生血管発生(特に血管新生)と関連する。
本発明による診断は、本発明の方法、キットまたはアレイのいずれを用いても、表2〜28の1以上から独立して選択された1以上の遺伝子の比較を用いることが好ましい場合がある。
本発明による診断を行うことを望む当業者は、対象とする瘢痕から入手できる試料の性質を考察し、利用可能なコンパレータ試料の性質を考察し、それによって、上記の考察を参照して適切な遺伝子発現を選択することができる。
本発明の方法、キットまたはアレイは表2〜28の2以上から選択された遺伝子の比較を含むことができることが特に好ましい。例えば、好ましい方法、キットまたはアレイは表2〜28の2つのそれぞれから選択された少なくとも1つの遺伝子の比較を含むことができ、より好ましい方法、キットまたはアレイは表2〜28の3つのそれぞれから選択された少なくとも1つの遺伝子の比較を含むことができ、よりさらに好ましい方法、キットまたはアレイは表2〜28の4つのそれぞれから選択された少なくとも1つの遺伝子の比較を含むことができ、最も好ましい方法、キットまたはアレイは表2〜28の5以上のそれぞれから選択された少なくとも1つの遺伝子の比較を含むことができる。
表1から選択された1つの遺伝子の、対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する試料における発現とコンパレータ試料における発現とを比較することにより、本発明による、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかの診断を行うことができる。しかしながら、表1からの複数の遺伝子を用いることが好ましい。従って、表1から選択された最大5つまでの遺伝子の発現を比較することにより本発明による診断が行われることが好ましい場合がある。表1から選択された5、6、7、8、9または10遺伝子の発現を比較することにより本発明による診断が行われることが特に好ましい。表1から選択された最大20または最大50までの遺伝子の発現を比較することにより診断を行うことができる。表1から選択された最大100、200、300、400までの、あるいはさらに最大500までの遺伝子の発現を比較することにより本発明による診断を行うことができる。実際、場合によっては、表1から選択された500以上の遺伝子の発現を比較することにより、本発明による、対象とする瘢痕ケロイドであるかケロイドではないかの診断が行われることが好ましい場合がある。必要に応じて、表1に示した590遺伝子の全部または一部を用いて診断を行うことができる。
本発明に関連する対象とする瘢痕は、瘢痕がケロイド組織を含むかケロイドではない組織を含むかを診断することが望ましい任意の瘢痕であることができる。皮膚瘢痕が対象とする適切な瘢痕の好ましい例を構成することは明らかであろう。ケロイドと重症または病的瘢痕の他の形態、たとえば肥厚性瘢痕とを識別する能力は大変価値がある。このような識別により、診断された瘢痕の型に適した臨床治療の選択が可能となる。よって、過度のまたは病的皮膚瘢痕の診断の実施における本発明の方法およびキットの使用は、それらの使用の特に好ましい例を表している。
対象とする瘢痕は、好ましくは、ケロイド形成のリスクが高いと考えられる個体由来であることができる。このような個体の例は、ケロイド形成歴を有する患者、アフリカ大陸系集団(African Continental Ancestry Group)の個体またはアジア大陸系集団(Asian Continental Ancestry Group)の個体を含む。
対象とする適切な瘢痕は、皮膚に損傷を受けた個体由来であることができる。特に、これらは、ケロイド形成の高いリスクが存在する部位に損傷を受けた個体を含むことができる。このような部位の例は、一般的には、胸部、背部、肩または頸部などの高い皮膚張力を有する部位を含むことができる。しかしながら、関連する部位には、高い皮膚張力を受けてはいないがケロイド形成のよく見られる、耳たぶなどの部位を含むことができる。
本発明の方法、キットおよびアレイを用いる診断は、皮膚創傷を経験した患者からの対象とする瘢痕の診断ばかりでなく、皮膚外傷を経験した患者からの対象とする瘢痕の診断にも有用であることができる。
本発明においては、“皮膚創傷”は、皮膚の部分的または全体的貫通が生じている状態または臨床状態ばかりでなく、皮膚の1以上の層の部分的または全体的破壊が生じている状態または臨床状態も含むと考えることができる。例えば、創傷は、穿刺創、切開創、切除創および部分層または全層植皮(ドナー部位およびレシピエント部位の両方を含む)を含むことができる。このような創傷は、外科手術または事故による損傷と関連することができる。創傷はまた、皮膚に損傷を与えるのに十分な高温または低温の物質に皮膚を暴露することにより生じる熱傷または熱湯傷を含むこともできる。化学“熱傷”、例えば酸またはアルカリへの皮膚の暴露により引き起こされるものおよび美容処置、例えば皮膚剥離または剥離(いわゆる“化学剥皮”および“レーザー剥皮”を含む)もまた、本発明による診断を行うことが望まれる組織を生じさせる恐れがある。
本発明においては、“皮膚外傷”は、皮膚を損傷してはいるが貫通していない損傷のことをいうと考えることができる。皮膚外傷と考えることができる損傷の具体例は、皮膚の挫滅傷ばかりでなく、他の“鈍”傷も含む。
前節に、本発明による診断によって特に利益を得ることができる個体または対象とする瘢痕の例が述べられているが、本発明の方法、キットおよびアレイは、対象とする任意の瘢痕、特にケロイド瘢痕と考えられる瘢痕の診断に有利に使用できることは明らかであろう。一般に、ケロイド瘢痕であることが疑われる組織は以下の群:周囲の皮膚と比較して隆起したプロフィール;元の境界を越えて増殖する病変;以前の皮膚創傷または外傷の部位での病変;周囲の皮膚と比較して色素沈着低下または過剰、から選択される1以上の特質を示す。
本発明による、対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する試料は、対象とする瘢痕により発現される遺伝子に関する情報を提供できる任意の試料を含む。
対象とする瘢痕由来の任意の適切な試料を用いることができる。好ましい試料は生検材料を含み、利用可能であれば、創傷組織、創傷液、創傷吸引物または創傷滲出物の試料を含む。好ましくは、このような生検は、患者に加えられる損傷のレベルを抑えるように選択されたものであって、それによって損傷を限定し、(さらなる)ケロイド形成のリスクを抑制することが見出されたものである。生じる損傷レベルを低下させるために、このような技術には、例えば、針生検を利用することができる。当該試料が由来する対象とする瘢痕の、本発明による診断に、上記した試料形態のいずれも使用できる。
適切な試料は、組織学的切片または凍結切片などの組織切片を含むことができる。切片が由来する、対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する情報を提供できるように調製された切片による方法は当業者に公知であり、遺伝子発現を調査するときに使用することを目的とする技術を参照して選択することができる。
対象とする瘢痕の一部を含む試料の使用は考えられるが、遺伝子発現を代表する試料が、対象とする瘢痕から採取された適切な抽出物であって、対象とする瘢痕における遺伝子発現に関する情報を提供するために調査することができる前記抽出物を含むことが一般に好ましい可能性がある。対象とする瘢痕における遺伝子発現に関する情報を提供できる組織抽出物の調製に使用できる適切なプロトコルは当業者に公知である。好ましいプロトコルは、遺伝子発現を調査する方法を参照して選択することができる。対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する組織抽出物を調製するために使用できるプロトコルの具体例を以下に述べる。
どの診断を行うかに関して、対象とする瘢痕を参照して、本発明の方法、キットまたはアレイに使用するための適切なコンパレータ試料を選択することができる。好ましくは、コンパレータ組織は、対象とする瘢痕にできる限り適合したものである(マッチングには、組織型、組織部位などを考慮することができる)。適切なコンパレータ試料の供給元および例は当業者に明らかであり、既知のケロイドに対するそれらの位置を参照して選択された、ケロイド形成者由来の試料ばかりでなく、ケロイド形成の傾向がない個体由来の試料も含む(すなわちケロイドではない組織、ケロイド外組織、病変周囲組織または病変内組織)。皮膚が、コンパレータ試料の好ましい供給元を構成することは明らかであろう。
適切なコンパレータ試料は、遺伝子発現を代表する標的分子を含むケロイドではない組織または臓器の部分を含むことができる(この場合、組織における遺伝子の発現に関する情報を、たとえば標的分子の分析により組織から抽出することができるように組織を保存しなければならない)。また、コンパレータ試料における遺伝子発現を代表する抽出されたおよび/または単離された標的分子(たとえばmRNAまたはcDNA)を組み込んだ組織抽出物を適切なコンパレータ試料は含むことができる。コンパレータ試料における遺伝子発現に関する関連情報は、明細書の他の部分で考察されているように、このような試料由来のデータの形で提供することもできる。
選択された遺伝子の発現に関する情報を引き出すことができるコンパレータ試料は、本明細書において対象とする瘢痕由来の試料を参照して考察された組織サンプルおよび組織抽出物を含む。例えば、このような情報は、コンパレータ試料を構成する組織または臓器試料から、あるいは選択された対照サンプルにおける遺伝子発現に関する情報を提供できる抽出物から直接に引き出すことができる。対象とする瘢痕における遺伝子発現の調査に関連した本明細書記載の方法を用いて、このタイプのコンパレータ試料における選択された遺伝子(単数または複数)(表1に示す遺伝子群から選択される)の発現を調査することができる。
コンパレータ試料を構成する組織もしくは臓器試料またはこのような試料からの抽出物は、(明細書の他の部分で先に述べたように)コンパレータ試料における遺伝子発現に関する情報の供給元として直接に使用することができるが、コンパレータ試料における選択された遺伝子(単数または複数)の発現に関する情報が参照データの形で提供されることが一般に好ましい。選択されたコンパレータ組織における遺伝子発現を示す表の形で、このような参照データを提供することができる。また、選択されたコンパレータ組織における遺伝子発現を示す検索情報を含むコンピュータソフトウェアの形で参照データを供給することもできる。例えば、対象とする瘢痕における少なくとも1つの選択された遺伝子(単数または複数)の発現と、コンパレータ組織サンプルにおける同じ遺伝子(単数または複数)の発現との比較を可能にするアルゴリズムの形で参照データを提供することができる。
本発明の好ましい実施形態において、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかに関する診断は、対象とする瘢痕における選択された遺伝子の発現を示す結果を、適切なコンパレータ試料における遺伝子発現を代表するデータで訓練された予測アルゴリズムに入力することにより自動的に提供することができる。確立され、一般的に用いられる分類システムは、限定するものではないが、例えば、Partek Genomics Suite ソフトウェアパッケージ(Partek Inc.)で利用可能なk近傍法、重心分類法(Centroid Classification)、線形判別分析、ニューラルネットワークおよびサポートベクターマシンを含む。
対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現を代表する適切な試料は、遺伝子発現に関する定性的および/または定量的情報を提供できる。本発明においては、遺伝子発現に関する定性的情報は、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料において発現される遺伝子に関する同定を、発現の相対量に関する情報を(特定の遺伝子が発現されるか発現されないかを除いて)提供せずに提供する情報であると考える。場合によっては、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかに関する診断を可能にする、対象とする瘢痕における発現とコンパレータ試料における発現との十分な比較を定性的情報が可能にすることができることは明らかであろう。
コンパレータ試料において通常発現されるが、ケロイドにおいて全く発現されない表1の遺伝子の発現が低下していることに基づく定性的情報は診断に特に適している可能性がある。このような場合、対象とする瘢痕における遺伝子の発現の欠如は、ケロイド形成の高いリスクを示すのに十分である。例には、遺伝子番号2、3および4で特定される遺伝子が含まれ、これらの遺伝子の発現を調査することは本発明の好ましい実施形態であることができる。これらの遺伝子の発現を対象とする病変内瘢痕と正常皮膚コンパレータとの間で(定量的または定性的に)比較するとき、これらの遺伝子を診断の根拠として使用できることを本発明者は見出した。
しかしながら、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現に関する定量的情報を提供できる試料を使用することが一般に好ましい。このような情報により、対象とする瘢痕における発現レベルとコンパレータ試料における発現レベルとの比較が容易となる。本発明においては、遺伝子発現に関する定量的情報は、絶対または相対定量のいずれかを指すと解釈することができる。絶対または相対定量を達成できる方法については、以下でさらに詳細に説明する。
対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現を代表する試料は、一般に直接または間接に遺伝子発現を代表する標的分子を含む。適切な試料は、このような標的分子を含有する組織サンプルの形で、あるいは好ましくは組織抽出物として提供できる。対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する組織抽出物は、一般に抽出物が入手される組織における遺伝子発現を代表する単離された標的分子を含む。
遺伝子発現としての情報を提供できるような、組織サンプルまたは組織抽出物を入手できる適切な技術は、用いられる標的分子の型を参照して選択することができる。使用できる適切な技術の例は当業者に明らかであると思われるが、本明細書においても、他の部分で適切な技術に関する手引きが示されている。
標的タンパク質分子が、直接検出に特に感受性が高い標的分子を表すことは明らかであろう。このような直接検出は、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料に存在するタンパク質の量に関する定性的または定量的情報を提供し、それによって発現の比較を可能にすることができる。
好ましい例において、試料に存在する特定の標的タンパク質の量は、試料中の標的の生物活性を参照して評価することもできる。このような発現の評価および比較は、酵素活性を有する標的タンパク質の場合に特に適している。酵素活性を有し、それによりこのような調査に特に適した、表1に示す遺伝子の例は、遺伝子番号8、22、24、29、44、46、54、56、60、69、70、75、93、94、97、102、123、133、138、147、148、150、152、159、167、170、186、194、195、209、216、221、228、232、234、239、243、262、268、289、291、293、304、306、323、324、326、357、358、359、361、366、382、385、395、398、400、402、412、419、420、437、440、446、452、456、459、460、466、467、469、472、485、486、502、505、514、516、517、534、540、558、563、569、575、581、582および587で特定される遺伝子を含む。標的タンパク質の酵素活性は、例えば、標識酵素基質の分解を分析することにより調査でき、それによって酵素活性量を対象とする瘢痕またはコンパレータ試料において生じる遺伝子発現と関連づけることができる。一例にすぎないが、遺伝子番号56、366、412および581で特定される酵素はすべてタンパク質分解活性を有し、従って、それらの基質をタンパク質分解活性により分解するそれらの能力を参照してこれらの酵素の存否を評価できるであろう。
組織サンプルまたは抽出物における標的分子の存否は、一般に適切なプローブ分子を用いて検出される(とはいえ、上記のように、プローブを必要とせずに標的分子の存否を直接に測定できる場合もある)。このような検出により遺伝子発現に関する情報が提供され、それによって、対象とする瘢痕に生じる遺伝子発現とコンパレータ試料に生じる発現とを比較することが可能となる。このような比較に基づいて本発明による診断を行うことができる。
プローブは、一般に、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現を直接または間接に代表する標的分子に特異的に結合できる。ついでこのようなプローブの結合を評価し、遺伝子発現と関連づけることによって、対象とする瘢痕における遺伝子発現とコンパレータにおける効果的な診断の比較を可能にすることができる。本発明の方法、キットおよびアレイに使用できる適切なプローブは、本明細書の他の部分で説明されている。
以下により詳細に考察するように、本発明の方法、キットおよびアレイに使用するのに適した標的分子は、直接または間接に遺伝子発現を代表する分子である。標的分子は、mRNA遺伝子転写産物ばかりでなく、このような転写産物の天然および人工の産物(例えばそれぞれタンパク質またはcDNA)を含むことができる。本発明に使用する試料は、用いられる標的分子の性質を参照して選択された方法で処理されるべきであることは明らかであろう。使用できる標的分子を含有する試料を得るために組織を処理する適切なプロトコルを以下にさらに説明する。
適切な標的分子は遺伝子発現の直接産物を含むことができる。このような遺伝子発現の直接産物は、例えば、遺伝子発現を代表する1以上の遺伝子転写産物を含むことができる。対象とする瘢痕における遺伝子発現とコンパレータ試料における発現の比較を可能にする標的分子としてのmRNA遺伝子転写産物の使用は、本発明の好ましい実施形態である。
また、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現を代表する試料は、遺伝子発現を間接的に代表する標的分子を含むことができる。遺伝子発現を間接的に代表するこのような標的の例は、遺伝子転写産物の翻訳により生成される天然物(例えばタンパク質)ばかりでなく、遺伝子転写産物から生成される人工の産物も含むことができる。遺伝子転写産物から生成される人工の標的分子の好ましい例はcDNAおよびcRNAを含み、これらはいずれも公知のプロトコルまたは市販キットもしくは試薬を用いて生成されることができる。
例えば、好ましい実施形態において、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現を代表するRNAは、適切な試料から採取される細胞を溶解し(このことは市販の溶解緩衝液、例えばQiagen Ltd.製のものを用いて達成できる)、ついで市販の核酸分離カラム(例えば、Qiagen Ltd製のRNeasy midi spin column)を用いて溶解物を遠心分離する工程により単離することができる。RNA抽出のための他の方法は、Chomczynski, P. and Sacchi, N. (1987) Analytical Biochemistry 162, 156. "Single Step Method of RNA Isolation by Acid Guanidinium Thiocyanate-Phenol-Chloroform Extraction" のフェノールおよびイソチオシアン酸グアニジンの方法の変法を含む。この方法で得られるRNAは、適切な標的分子自体を構成することもできるし、遺伝子発現を代表する標的分子の産生の鋳型として用いることもできる。
対象とする瘢痕またはコンパレータ試料由来のRNAは、例えばSuperscript System(Invitrogen Corp.)を用いるcDNA合成の基質として使用できることが好ましい場合がある。次いで得られたcDNAをビオチン化cRNAに変換し(例えば、Enzo Life Sciences Inc.製のBioArray RNA Transcript標識キットを用いて)、ついでこのcRNAを反応混合物から精製する(例えばQiagen Ltd製のRNeasy miniキットを用いて)ことができる。
標的タンパク質分子の場合は、存在する標的タンパク質の総量を参照して遺伝子発現を評価することができる。対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現を代表する試料に存在する標的タンパク質の量の測定のための適切な技術は、限定するものではないが、アプタマーおよび抗体ベースの技術、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)およびウェスタンブロット法、イムノPCRおよび多重アプローチ、例えばビーズまたはマイクロスフェアを用いる技術(例えば、Luminex IncのxMap 技術)を含む(Bloom and Dean (2003) Biomarkers in Clinical Drug Development; Crowther (1995) Elisa Theory and Practice (Humana Press); Singh et al (1993) Diagnostics in the year 2000: Antibody, Biosensor and nucleic acid Technologies (Van Nostrand Reinhold, New York); Niemeyer CM, Adler M, Wacker R. Immuno-PCR: high sensitivity detection of proteins by nucleic acid amplification. Trends Biotechnol. 2005 Apr;23(4):208-16; Abreu I, Laroche P, Bastos A, Issert V, Cruz M, Nero P, Fonseca JE, Branco J, Machado Caetano JA. Multiplexed immunoassay for detection of rheumatoid factors by FIDISTM technology. Ann N Y Acad Sci. 2005 Jun;1050:357-63)。
前節に示された文献の開示は、本発明の実施において当業者に有用な方法を記載している範囲で、参照により本願に包含される。
例えば適切な標的分子を単離するために、コンパレータ試料を構成する組織または臓器試料の処理により、あるいはコンパレータ試料における遺伝子発現を代表する組織抽出物の処理により、コンパレータ試料における表1からの1以上の遺伝子の発現が調査される場合、対象とする瘢痕からの試料を処理するために用いられた方法と同じ方法を用いてこのような処理がおこなわれることが好ましい。対象とする瘢痕およびコンパレータ組織の両方からの試料のこのような並列処理により、これらの組織における遺伝子発現の比較が互いに正規化されるより大きな信頼度を与える(組織を処理し、遺伝子発現を調査するための選択された方法と関連する任意のアーチファクトが、対象とする瘢痕およびコンパレータ試料の両方に生成するので)。
さらにまた、この方法におけるコンパレータ試料の並列処理は、処理が首尾よくなされたかどうかを医師が確認できる“内部対照”を備える。発現の比較のために選択された、表1からの選択された1以上の遺伝子は通常はコンパレータ組織により発現されることを医師を認識しているため、これらの内部対照の発現が検出できないことを示すアッセイをもたらす処理(遺伝子発現の調査のため)の事例を医師はいずれも無視することができる(これらの結果は、人為的に低い測定値をもたらす処理エラーの結果として生じたと推定されるため)。そうしないと、このような結果は、対象とする瘢痕がケロイド組織を含むという間違った評価を生じさせる恐れがある(表1からの選択された遺伝子(単数または複数)に関して、評価される発現に同じ人為的低下が記録されることになるため)。
遺伝子発現の比較を行う前に、対象とする瘢痕またはコンパレータ組織における遺伝子発現を代表する試料を処理することができる。このような操作は、例えば、発現の比較を容易にさせたり、比較により利用可能となる情報を増加させるために設計されることができる。このような試料を処理できる適切な方法の例は以下で考察する。
好ましくは、本発明の方法またはキットは、対象とする瘢痕およびコンパレータ組織に関連する発現データが互いに“正規化される”ことができる手段を提供する。正規化により、なされる比較が“同種(like for like)”比較であることが確実にされ、正規化に用いられる適切なパラメータは当業者に公知である。単に例としてであるが、比較する試料における細胞数;および/または比較する試料の総タンパク質量;および/または比較する試料の総核酸量;および/またはケロイドとケロイドではない組織との間で発現が変化しない1以上の遺伝子の発現レベルを参照して正規化を行うことができる。これに代えて、あるいはこれに加えて、適切な対照はケロイドにおいて発現されることが知られている1以上の遺伝子の発現を評価することを含む。このような遺伝子の発現の検出(表1に示す遺伝子の1以上の発現の低下と組み合わせて)により、遺伝子発現を参照できる適切な対照が提供される。本明細書の他の部分で、このような遺伝子の適切な例を考察する。
本発明に使用する遺伝子発現を代表する好ましい試料は、遺伝子発現を代表する標的核酸分子を含む試料であることを本発明者は見出した。本発明においては、標的核酸は、その存否が検出されるかまたは存在するその量が定量される核酸である。このような検出または定量により、発現の診断上の比較が行われることが可能となる。標的核酸は、好ましくは、標的に対する対応するプローブの核酸配列に相補的な配列を有することができる。本発明による標的核酸は、プローブの対象とするより大きな核酸の特定の配列あるいは、発現レベルを検出することが望ましい全配列(例えば全mRNA転写産物)の両方を含むことができる。適切な標的核酸はRNAおよびDNAの両方を含むことができ、天然に存在する核酸および人工核酸の両方を含むことができる。
当然のことながら、本発明に使用するのに適した標的核酸は“完全長”核酸(例えば完全長遺伝子転写産物)を含む必要はなく、単にプローブ分子の特異的結合を可能にする十分な長さを含む必要があるだけである。
当然のことながら、本発明においては、“核酸”または“核酸分子”は、一本鎖または二本鎖形のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。さらにまた、特記しない限り、天然に存在するヌクレオチドと同様に作用できる天然のヌクレオチドの既知のアナログを含むと、これらの用語は理解されるべきである。
mRNAは、本発明の方法およびキットに使用できる標的分子の好ましい種類を構成する。mRNA遺伝子転写産物は、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現を直接に代表する。
遺伝子発現を代表するmRNAは、mRNAの抽出または精製を必要とせずに対象とする瘢痕またはコンパレータ試料中に直接見出すことができることは明らかであろう。例えば、このような組織の適切に固定された切片または生検材料を用いて、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料中に存在し遺伝子発現を代表するmRNAを調査することができる。この種の試料の使用は、発現の比較を迅速に行うことができるという利点ばかりでなく、試料を作成するために比較的安価で簡単な組織処理を用いることができるという利点も提供することができる。in situハイブリダイゼーション技術は、この種の組織試料において遺伝子発現を調査し比較することができる好ましい方法を代表している。対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現を代表するRNAの可用性を維持する対象とする瘢痕の処理技術は当業者に公知である。
しかしながら、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現を代表するmRNAを抽出し回収できる技術は当業者に公知であり、このような技術を本発明に好都合に用いることができることを本発明者は見出した。対象とする瘢痕またはコンパレータ試料由来の抽出されたmRNAを含む試料は、本発明の方法およびキットに好都合に使用することができる。なぜなら、このような抽出物は、元の組織を含む試料における場合よりも、より容易に調査するのに役立つからである。例えば、遺伝子発現の比較を可能にする適切な標的分子は、対象とする瘢痕試料またはコンパレータ組織試料から単離された全RNAを含むことができる。
さらにまた、抽出されたRNAを増幅させて、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現に関する情報を増やすことができる、増やしたmRNA試料を容易に作製することができる。mRNA集団の抽出および増幅のための適切な技術の例は公知であり、以下でさらに詳細に考察する。
例として、本発明に使用するのに適した標的核酸を作製するための核酸の分離精製方法は、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization With Nucleic Acid Probes, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation, P. Tijssen, ed. Elsevier, N.Y. (1993) の第3章に詳細に説明されている。
好ましい方法において、例えば、acid guanidium-phenol-chloroform抽出法を用いて、所定の試料から全核酸を単離することができる。
遺伝子発現の調査および比較の前に標的核酸を増幅することが望ましい場合、試料が由来する対象とする瘢痕または対照組織における増幅された核酸の相対頻度を維持または調節する方法を使用することが好ましい場合がある。
“定量的”増幅の適切な方法は当業者に公知である。公知の例の1つとして、定量PCRは、コンパレータ試料と対象とする瘢痕由来の試料の間で量が不変であることが知られている対照配列を同時に共増幅することを含む。これにより、PCR反応の較正に用いることができる内部標準が提供される。
上記に概説した方法に加えて、遺伝子転写産物特異的産物の増幅とシグナルの生成とを結びつける任意の技術もまた、定量に適したものであることができることは当業者には明らかであろう。好ましい例には、mRNAのcDNAへの最初の逆転写を組み込むことにより特定のmRNA転写産物の正確な定量に適したものにした、ポリメラーゼ連鎖反応への便利な改善(US4683195および4683202)を用いるものがある。さらなる重要な改善には、反応の進行に従って、リアルタイムでPCR産物の蓄積の測定を可能にするものがある。蛍光共鳴エネルギー移動を用いて定量的遺伝子特異的シグナルを生成させる適切な技術の例は、Taqman(US5210015および5487972)、分子ビーコン(WO-95/13399)ならびにスコーピオン(US2005/0164219)を含む。各遺伝子標的に対する異なる蛍光部分を用いることにより、複数の転写産物の並列定量が可能である。
限定するものではないが、他の適切な増幅方法は、核酸配列ベース増幅(NASBA)(Saad F. UPM3: review of a new molecular diagnostic urine test for prostate cancer. Can J Urol. 2005 Feb;12 Suppl 1:40-3); ローリングサークル増幅(Rolling Circle Amplification)(RCA)(Gomez KF, Lane J, Cunnick G, Grimshaw D, Jiang WG, Mansel RE. From PCR to RCA: a surgical trainee's guide to the techniques of genetic amplificationm. Eur J Surg Oncol. 2002 Aug;28(5):554-9); 分岐鎖核酸(Branched Chain Nucleic Acids)(BCNA)(Andras SC, Power JB, Cocking EC, Davey MR. Strategies for signal amplification in nucleic acid detection. Mol Biotechnol. 2001 Sep;19(1):29-44); インベーダーアッセイ(invader assay)(de Arruda M, Lyamichev VI, Eis PS, Iszczyszyn W, Kwiatkowski RW, Law SM, Olson MC, Rasmussen EB. Invader technology for DNA and RNA analysis: principles and applications. Expert Rev Mol Diagn. 2002 Sep;2(5):487-96);リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu and Wallace, Genomics, 4: 560 (1989), Landegren, et al., Science, 241: 1077 (1988)および Barringer, et al., Gene, 89: 117 (1990) 、転写増幅(transcription amplification)(Kwoh, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 1173 (1989))ならびに自律的配列複製(self-sustained sequence replication)(Guatelli, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 87: 1874 (1990))を含む。
特に好ましい実施形態において、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現を代表する組織由来のmRNA転写産物を逆転写酵素ならびにオリゴdTおよびファージT7プロモーターをコードする配列からなるプロモーターで逆転写して一本鎖DNA鋳型を得ることができる。DNAポリメラーゼを用いて第2DNA鎖を重合させる。二本鎖cDNAの合成後、T7RNAポリメラーゼを添加してcDNA鋳型からRNAを転写する。各一本鎖cDNA鋳型からの転写の連続ラウンドによりRNAの増幅がもたらされる。in vitro重合法は当業者に公知であり(例えば、上記のSambrookを参照のこと)、この具体的な方法はVan Gelder, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: 1663-1667 (1990) に詳細に記載されており、この方法によるin vitro増幅は種々のRNA転写産物の相対頻度を保存していることが明らかにされている。さらに、Eberwine et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 3010-3014 (1992)は、in vitro転写による2ラウンドの増幅を用いて元の出発材料の106倍を超える増幅を達成し、それによって少量の対象とする瘢痕の試料しか得られない場合であっても発現モニタリングを可能にするプロトコルを提供している。
前述の直接的転写法はアンチセンスRNA(aRNA)標的の産生をもたらすことは当業者には明らかであろう。このような場合、遺伝子発現の調査および比較に用いられるオリゴヌクレオチドプローブなどのプローブは、アンチセンス核酸の配列または部分配列に相補的なように選択される必要がある。
遺伝子発現の比較に人工核酸分子を用いることができることもまた当業者にさらに明らかであろう。本発明に使用するのに適した人工の標的分子の例は、mRNAの逆転写により作製されるcDNAまたは第2鎖cDNAもしくは二本鎖cDNA中間体から転写されるRNA(cRNA)を含む。cDNAおよびcRNAの産生方法は当該技術分野で文書による十分な裏づけがあり、当業者に公知であり、実際産生に適したこれらのキットおよび試薬は商業的に容易に入手できる。
本発明においては、対象とする瘢痕における遺伝子発現を“代表する”試料は、対象とする瘢痕における遺伝子の発現に関する情報を提供する任意の試料を含むと考えられるべきである。例えば、代表サンプルは対象とする瘢痕において発現されるすべての遺伝子に関する情報を提供でき、好ましくは前記遺伝子の相対的発現レベルに関する情報を提供できる。
好ましい実施形態において、代表サンプルは、対象とする瘢痕における発現がコンパレータと比較される遺伝子(単数または複数)のmRNA遺伝子転写産物の濃度に標的分子の濃度が比例するサンプルである。比例は比較的に厳密であることが好ましいが(例えば、対象とする瘢痕において生じるmRNA遺伝子転写産物数を倍加することにより、試料に存在する対応する標的分子数の倍加がもたらされること)、比例はより緩やかで、非線形でさえあることもできることは当業者には明らかであろう。例えば、対象とする瘢痕におけるmRNA遺伝子転写産物の濃度における5倍の差異が、代表サンプルにおける標的分子の濃度における3〜6倍の差異をもたらすアッセイは、多くの場合十分である。
より正確な定量が求められる場合、当業者に公知の方法に従って検量線を作成するために、“標準”標的分子の連続希釈液を使用することができる。標的分子の定量は、互いにおよび/またはケロイドを形成しない組織と比較してケロイドを形成する組織において発現レベルが増加していない“ハウスキーピング”遺伝子に対して相対的で正規化されていることがより好ましい。このような遺伝子の例は、exportin 7(XPO7)、切断・ポリアデニル化特異的第4因子(Cleavage and Polyadenylation Specific Factor 4)、30kDa(CPSF4)、Fボックス唯一タンパク質7(F-box only protein 7)(FBXO7)、ADPリボシル化因子1(ARF1)、βシグナル配列受容体(SSR2)およびメチオニンtRNA合成酵素(MARS)を含む。
もちろん、定性的試料(単数または複数)(遺伝子発現の存否の簡単な検出が望ましい場合)の場合は、このような手の込んだ対照またはキャリブレーションを必要としないことは明らかであろう。
多くの場合、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料において発現されるすべての遺伝子に関する情報を代表サンプルが提供するのが好ましいが、その代りに、発現を受ける遺伝子の総数のサブセットのみの発現に関する情報を適切な代表サンプルは提供することもできる。
多くの場合、関連する試料における標的分子(表1に示す遺伝子の1以上を代表する)の存在を示すことができるプローブ分子を用いて対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現の程度を評価することが好ましい。
本発明による方法、キットまたはアッセイにおける標的分子およびプローブの使用により、本発明の方法に感度上昇をもたらすことができる。これにより、対象とする瘢痕における発現とコンパレータ試料における発現の間の本来なら小さな差異を識別する能力を高めることができる。このことは、本発明による診断に関する評価できる利点であろう。
一般に、本発明に使用する適切なプローブはそれらの標的分子に結合し、それによって標的分子の検出を可能にする(この検出は、標的分子により代表される表1から選択された遺伝子の発現を示す)。
本発明に使用するプローブが標的分子(プローブ分子と適切に組み合わせて)の複製を可能にすることが好ましい場合がある。このような複製により多数の標的分子が製造され、それにより標識プローブのさらなる結合が可能となる。次には、このように結合した標識プローブの量の増加が遺伝子発現を示す検出可能シグナルを増幅させる。
本発明の方法およびキットに使用するプローブは、調査する遺伝子発現産物(直接または間接)を参照して選択することができる。適切なプローブの例は、オリゴヌクレオチドプローブ、抗体、アプタマーおよび、適切な特異性を有する結合タンパク質または小分子を含む。
オリゴヌクレオチドプローブは、本発明の方法およびキットに使用するのに適した好ましいプローブを構成する。適切なオリゴヌクレオチドプローブの製造は当業者に公知である(Oligonucleotide synthesis: Methods and Applications, Piet Herdewijn (ed) Humana Press (2004).)。オリゴヌクレオチドおよび修飾オリゴヌクレオチドは多数の会社から市販されている。
オリゴヌクレオチドは、長さが2〜約500ヌクレオチド塩基の一本鎖核酸であり、好ましくは長さが約5〜約50ヌクレオチド、より好ましくは約10〜約40ヌクレオチド、最も好ましくは約15〜約40ヌクレオチドである。適切なハイブリダイゼーション法、状態、時間、液量およびオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションを検出できる適切な方法は、本明細書の他の部分で説明されている。
本発明においては、オリゴヌクレオチドプローブは、1以上の種類の化学結合により相補配列の標的核酸に特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを含むと理解することができる。このような結合は、通例、相補的塩基対形成によって生じ、通例、水素結合形成によって生じる。適切なオリゴヌクレオチドプローブは、天然塩基(すなわちA、G、CもしくはT)または修飾塩基(7-デアザグアノシン、イノシンなど)を含むことができる。加えて、ホスホジエステル結合以外の結合を、この変化がオリゴヌクレオチドプローブのその標的へのハイブリダイゼーションを妨害しない限り、オリゴヌクレオチドプローブ内の塩基に結合させることができる。従って、本発明の方法およびキットに使用するのに適したオリゴヌクレオチドプローブは、ホスホジエステル結合以外のペプチド結合により構成塩基が結合されているペプチド核酸であることができる。
本明細書において、用語“特異的にハイブリダイズする”は、複雑な混合物中に標的ヌクレオチド配列が存在する場合、ストリンジェントな条件下で、オリゴヌクレオチドプローブが特定の標的ヌクレオチド配列に特異的に結合、二本鎖形成またはハイブリダイズすることをいうために用いられる(例えば、全細胞DNAまたはRNA)。好ましくは、プローブは、特定の標的分子のみに結合、二本鎖形成またはハイブリダイズすることができる。
用語"ストリンジェントな条件"は、プローブが、その標的サブ配列にハイブリダイズするが、他の配列には最小限にハイブリダイズする条件のことをいう。好ましくは、ストリンジェントな条件下で、プローブは、その標的以外の配列にはハイブリダイズできない。ストリンジェントな条件は配列に依存し、異なる環境下では異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。
一般に、ストリンジェントな条件は、明確にされたイオン強度およびpHで特異的配列の熱融点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択することができる。Tmは、平衡時に、標的核酸に相補的なオリゴヌクレオチドプローブの50%が標的核酸にハイブリダイズする温度である(明確にされたイオン強度、pHおよび核酸濃度で)。標的核酸は、一般に過剰に存在するため、Tmでは、平衡時ではプローブの50%がふさがれている。例として、ストリンジェントな条件には、pH7.0〜8.3で塩濃度が少なくとも約0.01〜1.0M Naイオン濃度(または他の塩)であり、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)に対して温度が少なくとも約30℃である条件がある。ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によっても、ストリンジェントな条件を達成することができる。
アンチセンス標的核酸(aRNA)と共に使用するのに適したプローブの設計および選択に関する考察については前記で述べた。標的核酸がセンス核酸を含む場合、適切なオリゴヌクレオチドプローブは、センス核酸の配列または部分配列に相補的であるように選択することができる。二本鎖である標的核酸の場合は、標的核酸がセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を提供するため、適切なプローブはいずれのセンスであることもできる。
本発明の方法またはキットに使用するのに適した抗体は、対象とする瘢痕における遺伝子発現を表す、タンパク質などの標的分子を検出するために使用することができる。
本発明の方法およびキットに従って、遺伝子発現を調査するために使用できる抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体ばかりでなく、限定するものではないがFabまたはF(ab')hd2およびFvフラグメントを含むこれらの抗体のフラグメントをも含む。
所定の標的に特異的に結合できる抗体の作成および/または同定に適した方法は当業者に公知である。一般に、免疫原として単離された標的を使用して適切な抗体を作成できる。この免疫原は、限定するものではないが、ラット、ウサギ、ヤギまたはマウスなどの哺乳動物に投与され、免疫反応の一部として抗体が誘発される。一般に、抗体は、遺伝子発現のタンパク質産物に結合させるための本発明の方法およびキットに関連して使用される。適切な免疫原は、調査される完全長タンパク質またはそれらの抗原ペプチドフラグメントを含むことができる。
モノクローナル抗体は、特定のモノクローナル抗体を分泌することができる不死化細胞株であるハイブリドーマを用いて作成することができる。不死化細胞株は、2つの異なる細胞型(通例リンパ球であって、そのうちの1つが腫瘍細胞である)を融合させることにより、in vitroで作成することができる。
アプタマーは、特定の配列に依存した形態をとり、アプタマーとリガンドの間の錠前と鍵の適合に基づいて特定の標的リガンドに結合する核酸分子のことをいう。一般的には、アプタマーは、一本鎖もしくは二本鎖DNA分子(ssDNAまたはdsDNA)または一本鎖RNA分子(ssRNA)のいずれかを含むことができる。
アプタマーは、核酸および非核酸標的のいずれにも結合させるために用いることができる。よって、アプタマーは、RNA、DNAおよび小分子またはタンパク質を含む遺伝子発現産物の調査に使用する適切なプローブである。好ましくは、アプタマーは、分子量100〜10,000Daを有する遺伝子発現産物を調査するために使用することができる。ssDNAアプタマーは、DNAを含む遺伝子発現産物の調査に使用するのに好ましい場合がある。
適切なアプタマーは、ランダム配列プールから選択することができ、これらから、選択された標的分子に高親和性で結合する特定のアプタマーを同定できる。望ましい特異性を有するアプタマーの製造および選択の方法は当業者に公知であり、SELEX(systematic evolution of ligand by exponential enrichment)法を含む。簡潔に言えば、オリゴヌクレオチドの巨大なライブラリーを作成し、in vitro選択の反復プロセスにより大量の機能性核酸を単離し、次いで、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅させる。
アプタマーは比較的安定な保存期限を有するため、本発明の方法およびキットによる遺伝子発現の調査のためのアプタマーの使用は有利な場合がある。本発明の方法および/またはキットに使用するのに適したアプタマーは、好ましくは、化学修飾(例えば2´-NH2および2´-F修飾)により安定化させることができる。
フォトアプタマー(photoaptamer)は、チミジン(T)ヌクレオチドの代わりに少なくとも1つのブロモデオキシウリジン(BrdU)を含むアプタマーのサブクラスである。紫外線にさらされたとき、BrdUの存在により、フォトアプタマーがその標的リガンドと特定の共有結合性架橋を形成することが可能となる。架橋には、親和性に基づく結合および、BrdU(フォトアプタマーにおける特定の位置にある)とアミノ酸(標的リガンドにおける特定の位置にある)間の近接近の両方を必要とするため、遺伝子発現産物との高い特異性の結合を必要とする場合に、本発明の方法およびキットにフォトアプタマーを使用することが好ましい。
本発明による、遺伝子発現を比較できる適切な方法は、前記の考察を考慮して選択することができる。
一般に、調査する標的分子の性質に基づいて分析法を選択することができ、適切な選択基準により、標的核酸と標的タンパク質分子を区別することができる。
しかしながら、上記のように、一般に、標的核酸分子に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いて遺伝子発現を調査し比較することが好ましい。
適切な代表サンプルにおける相補的な核酸配列(すなわち標的核酸)を検出するためにオリゴヌクレオチドプローブを用いることができる。このような相補的結合は、特定の遺伝子の発現を検出し、それによって特定の遺伝子の発現を比較することを可能にするためにオリゴヌクレオチドを使用することができる大部分の技術の根拠を形成する。好ましい技術は、複数の遺伝子の発現の並列定量を可能にするが、本明細書に記載の定量的逆転写PCR技術などの、種の増幅および定量がリアルタイムで結合されている技術および、アレイ技術などの、増幅に続いて、増幅された種の定量を行う技術を含む。
アレイ技術は対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現を代表する試料の、各プローブが開示された遺伝子(単数または複数)に選択的にハイブリダイズする複数個のオリゴヌクレオチドプローブを用いるハイブリダイゼーションを含む。アレイ技術は、例えばオリゴヌクレオチド配列の物理的位置(例えば、Affymetrix Inc.から市販されている二次元アレイにおけるグリッド)または他のフィーチャー(例えば、Illumina IncまたはLuminex Incにより市販されている標識ビーズ)との会合により、特定のオリゴヌクレオチド配列の一意的な同定を提供する。オリゴヌクレオチドアレイは、in situで合成することもできるし(例えば、Affymetrix Incにより市販されている光指向合成により)、前もって合成し、接触方式またはインクジェット方式によりスポットすることもできる(AgilentまたはApplied Biosystemsにより市販されている)。全部または一部のcDNA配列もまたアレイ技術のプローブに使用できることは当業者に明らかであろう(Clontechにより市販されている)。
オリゴヌクレオチドプローブは、遺伝子発現を検出し比較する、サザンブロット法またはノーザンブロット法などのブロット法に使用できる(例えば、遺伝子発現を代表するcDNAまたはmRNA標的分子により)。サザンブロット法またはノーザンブロット法に使用するのに適した技術および試薬は当業者に公知である。簡潔に言えば、DNA(サザンブロット法の場合)またはRNA(ノーザンブロット法の場合)標的分子を含む試料は、アクリルアミドまたはアガロースなどの物質のゲルを浸透するそれらの能力に従って分離される。ゲルの浸透は、毛管作用または電場の活性により駆動されることができる。標的分子の分離が達成されたら、これらの分子は薄膜(一般的にはナイロンまたはニトロセルロース)に転写され、ついで膜に固定化される(例えば焼きつけまたは紫外線照射により)。ついで、膜に結合している標的分子へのオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションにより、遺伝子発現を検出し、比較することができる。ハイブリダイゼーションを行う適切な条件のさらなる詳細を以下に示す。これらは、ハイブリダイゼーションを検出できる技術の例である。
特定の状況において、遺伝子発現を比較するための旧来のハイブリダイゼーションプロトコルの使用は疑問であることが明らかとなる場合がある。例えば、ブロット技術は、おおよそ同じ分子量の2以上の遺伝子産物を識別することは困難である。なぜなら、このような同様なサイズの産物はゲルを用いて分離することが困難であるからである。よって、このような状況において、下記に示したような代替技術を用いて遺伝子発現を比較することが好ましい場合がある。
対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する試料における遺伝子発現は、高密度オリゴヌクレオチドアレイ技術による適切な核酸試料内の全体の転写産物レベルを参照して評価できる。この技術は、例えば共有結合によりオリゴヌクレオチドプローブが固体担体につながれているアレイを使用する。固体担体に固定化されたこれらのオリゴヌクレオチドプローブアレイは、遺伝子発現の比較のための本発明の方法およびキットに用いられる好ましい構成要素を代表する。表1に示す遺伝子から選択される多数の遺伝子の発現の比較に適したアレイを提供するために、このように多数のこのようなプローブを結合させることができる。よって、診断を行うために、表1から選択された2以上の遺伝子の発現を比較することが望ましい場合、本発明の方法またはキットの実施形態において、このようなオリゴヌクレオチドアレイは特に好ましいことは明らかであろう。
好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチドアレイを用いる遺伝子発現の調査は、低ストリンジェンシーでのオリゴヌクレオチドプローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションに続いてより高いストリンジェンシーでの少なくとも1回の洗浄により行うことができる。これらの実施形態に使用するのに適した低ストリンジェンシー条件は、約20℃〜約50℃(より好ましくは約30℃〜約40℃、最も好ましくは約37℃)の反応温度および6×SSPE-T緩衝液(またはそれ以下)を含むことができる。適切なハイブリダイゼーションプロトコルは、望ましいレベルのハイブリダイゼーション特異性が達成されるまでストリンジェンシーを漸増させ、それに続く洗浄を含むことができる。例えばNanogen Inc.により提供されている電気的手段によりハイブリダイゼーションストリンジェンシーを変化させることができる(Sosnowski R, Heller MJ, Tu E, Forster AH, Radtkey R. Active microelectronic array system for DNA hybridization, genotyping and pharmacogenomic applications. Psychiatr Genet. 2002 Dec;12(4):181-92)。
オリゴヌクレオチドプローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションの検出のための適切な技術を、以下でさらに考察する。
アレイに組み込まれる選択されたオリゴヌクレオチドプローブの個性を変えて、発現が比較される遺伝子のより詳細な選択を可能にすることができる。例えば、本発明の方法またはキットに使用するのに適したアレイは、前記で考察した表1〜28から選択された遺伝子の示差発現を参照して選択された1以上のオリゴヌクレオチドプローブを含むことができる。
また、対象とする瘢痕またはコンパレータにおける遺伝子発現を代表する試料における核酸配列(例えばmRNAまたはDNA)のレベルに基づいた対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現の評価を、当業者に公知の他の適切な技術を用いて行うことができる。例えば、ノーザンブロット法は、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現を代表するmRNAレベルを評価できる感度のよい方法を提供する。
遺伝子発現を代表する標的核酸の比較に用いることができる他の適切な方法は、限定するものではないが、核酸配列ベース増幅(NASBA);ローリングサークルDNA増幅(RCA);分枝核酸およびインベーダーアッセイ;アプタマー、抗体または抗体誘導体の使用を含む(Singh et al,1993;Boeckh and Boivin1998;Bloom and Dean, 2003; Jain, 2004; Millar and Moore, 2004; Olson, 2004; Yang and Rothman, 2004)。
前述のように、対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現は、もう1つの方法として、遺伝子発現を代表するタンパク質を含む試料を用いて調査することができる。遺伝子発現を評価するためにこのようなタンパク質試料を調査することができる適切な技術は、限定するものではないが、アプタマー検出;質量分析法;核磁気共鳴(NMR);抗体ベースの方法、例えばイムノPCRおよび多重アプローチ、例えばアレイ、ビーズもしくはマイクロスフェアを用いるもの(例えばLuminex IncからのxMap技術)、ELISA、RIAおよびウェスタンブロット法;ならびに当業者に公知の他の方法(Bloom and Dean (2003) Biomarkers in Clinical Drug Development; Crowther (1995) Elisa Theory and Practice (Humana Press); Singh et al (1993) Diagnostics in the year 2000: Antibody, Biosensor and nucleic acid Technologies (Van Nostrand Reinhold, New York); Niemeyer CM, Adler M, Wacker R. Immuno-PCR: high sensitivity detection of proteins by nucleic acid amplification. Trends Biotechnol. 2005 Apr;23(4):208-16; Abreu I, Laroche P, Bastos A, Issert V, Cruz M, Nero P, Fonseca JE, Branco J, Machado Caetano JA. Multiplexed immunoassay for detection of rheumatoid factors by FIDISTM technology. Ann N Y Acad Sci. 2005 Jun;1050:357-63)を含む。
例えば、当該タンパク質の活性に基づくアッセイを用いて酵素活性を有するタンパク質の発現を調査し比較することができる。酵素タンパク質抽出物(対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現を代表する試料を構成する)を、例えば、適切に標識した基質の既知量を含む試料と共にインキュベートすることができる。酵素活性量、従って対象とする瘢痕またはコンパレータ試料における遺伝子発現レベルの徴候は、酵素により変換される基質の量によって測定できる。
プローブまたは標的分子の検出は、このような分子の検出可能部分への結合(すなわち物理的結合)により容易に行うことができる。あるいは、検出可能部分を組み込んだ適切なプローブまたは標的分子を合成することもできる。本発明の方法、キットまたはアレイに使用するのに適したプローブまたは標的分子における検出可能部分の結合または取り込みに使用できる技術を以下で考察する。
本発明に使用するのに適したプローブまたは標的の標識化に使用できる検出可能部分の例は、スペクトル的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段により検出できる任意の組成物を含む。適切な検出可能部分は、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質および比色物質を含む。これらの検出可能部分は、特記しない限り、本発明の方法またはキットに使用できるすべてのタイプのプローブまたは標的への取り込みに適している。
適切な酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼを含み;適切な補欠分子基複合体の例はストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み;適切な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、フィコエリスリン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質などを含み;発光物質の例はルミノールを含み;生物発光物質の例はルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびイクオリンを含み;適切な放射性物質の例は125I、131I、35S、3H、14Cまたは32Pを含み;適切な比色物質の例はコロイド金または有色ガラスもしくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズを含む。
これらの標識を検出する手段は当業者に公知である。例えば、放射性標識は写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを用いて検出でき;蛍光マーカーは放出光を検出するための光検出器を用いて検出できる。酵素ラベルは、一般的には、酵素に基質を供給し、基質に対する酵素の作用により生成される反応生成物を検出することにより検出され、比色標識は、単に着色標識を可視化することにより検出される。
本発明の好ましい実施形態において、蛍光標識プローブまたは標的は、レーザー共焦点スキャナを用いてスキャンし、蛍光を検出できる。
標識核酸プローブまたは標的の場合は、ハイブリダイゼーションの前、最中または後に適切な標識を行うことができる。好ましい実施形態において、本発明の方法またはキットに使用する核酸プローブまたは標的は、ハイブリダイゼーションの前に標識される。蛍光標識は特に好ましく、使用される場合、核酸プローブへの標的核酸のハイブリダイゼーションの定量化は、ハイブリダイズした蛍光標識核酸からの蛍光の定量化による。より好ましくは、定量は核酸に組み込まれるハプテンに結合する蛍光標識試薬からのものであることができる。
本発明の好ましい実施形態において、ハイブリダイゼーションの分析は、適切な分析ソフトウェア、例えばMicroarray Anakysis Suite(Affymetrix Inc.)を用いて行うことができ、診断は分類ソフトウェア(例えばPartek Genomics Suite from Partek Inc)を使用して自動化することができる。
アレイの自動スキャンを可能にする自動ステージを備えることができ、自動の測定、記録およびそれに続く蛍光強度情報の処理のためのデータ収集システムを備えることができる蛍光顕微鏡を用いて有効な定量を行うことができる。このような自動化の適切な配置は確立されており、当業者に公知である。
好ましい実施形態において、ハイブリダイズした核酸は、核酸に結合した1以上の検出可能部分を検出することにより検出される。当業者に公知の多くの手段のいずれかにより検出可能部分を組み込むことができる。しかしながら、好ましい実施形態において、試料核酸(プローブまたは標的)の調製における増幅行程中にこの様な部分が同時に組み込まれる。従って、例えば、プライマーまたは検出可能部分を有するヌクレオチド標識を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は前記部分を有する増幅産物標識を提供する。好ましい実施形態において、蛍光標識ヌクレオチド(例えばフルオレセイン-標識UTPおよび/またはCTP)を用いる転写増幅により、転写された核酸に標識が組み込まれる。
また、元の核酸試料(例えば、対象とする瘢痕由来のmRNA、ポリA mRNA、cDNAなど)または元の核酸の増幅完了後の増幅産物に適切な検出可能部分を直接に付加することができる。蛍光標識などの標識を核酸に結合させる手段は当業者に公知であり、例えばニックトランスレーションまたは、核酸をリン酸化し、それに続いて核酸リンカーを結合(連結反応)させて試料核酸を標識(たとえば適切なフルオロフォア)に結合させる末端標識(例えば標識RNAを用いて)を含む。
前記のように、前述の方法およびキットに加えて、本発明はまた、対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかを診断するためのキットであって、
i)対象とする瘢痕における、表1に示す群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的分子に特異的に結合できる少なくとも1つのプローブ;および
ii)コンパレータ組織における前記少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを示すことができる標準物質
を含む前記キットを提供する。
好ましくは、本発明のこの側面によるキットは、アッセイが正しく行われたことを示すことができるアッセイ対照をさらに含むことができる。適切には、このようなアッセイ対照は、ケロイドとケロイドではない組織との間で発現が変化しない遺伝子の発現を示す標的分子を含むことができる。このようなハウスキーピング遺伝子の適切な例は、本明細書の他の部分で考察され、これらの遺伝子のいずれかの発現を代表する標的分子は本発明のキットに好都合に提供することができる。この種のハウスキーピング遺伝子を既知量を提供することにより、アッセイ結果の正規化に対する“標準”を与えることができる。
本発明のキットが、ケロイド組織において発現が増加している1以上の遺伝子を代表する物質(例えば標的分子)をさらに含むことが好ましい場合がある。このような遺伝子の提供により、投入原料の絶対量の変化または任意のアッセイ法の効率の変化から生物学的に有意な結果を識別する能力を高めることができる。例えば、リジルオキシダーゼは、ケロイドではない組織と比較してケロイド組織において3倍高い発現を示す。リジルオキシダーゼはコラーゲン架橋に関与する重要な酵素であり、線維組織において強く発現されていることが以前に示されている。
本発明のキットは、対象とする瘢痕における(またはコンパレータ組織における)遺伝子発現を代表する標的分子の集団の製造原料をさらに含むことができる。このような物質は、標的核酸分子の集団の製造に適切であることができる。あるいは、このような物質は標的タンパク質分子の集団の製造に適切であることができる。対象とする瘢痕またはコンパレータ組織における遺伝子発現を代表する標識標的分子の集団の製造原料をキットが含むことが好ましい場合がある。
本発明のキットが対象とする瘢痕における表1に示す群から選択された前記少なくとも1つの遺伝子の発現レベルが、対象とする瘢痕がケロイド組織であることの診断を示すことができるアルゴリズムまたは参照データ/物質をさらに含むことができることもまた好ましい。
アルゴリズムは、表1に示す群から選択された前記少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現における、コンパレータデータと対象とする瘢痕からのデータ(例えば既知の患者データ)との差異の数学モデルの形で提供できる。ついで、この数学モデルを、新規な患者試料からの、表1に示す群から選択された前記少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現データに展開することができる。こうして、このように作成されたアウトプットにより、対象とする瘢痕がケロイド組織を含むかケロイドではない組織を含むかに関する診断が得られる。
本発明のこの第2の側面によるキットに含まれるプローブを、本発明の第1の側面と同じ基準を用いて選択することができる。オリゴヌクレオチドプローブ、抗体、アプタマーおよび特異的結合タンパク質を含む群から適切なプローブを選択することができる。
本発明によるキットは、好ましくは、表1に示す群から選択された5つまでの遺伝子の発現を代表する標的分子(すなわち表1から選択された5つまでの遺伝子の発現を代表する標的分子)に特異的に結合できるプローブを含むことができる。本発明のキットが、5、6、7、8、9または10のこのような標的分子に結合できるプローブを含むことが特に好ましい。表1に示す遺伝子から選択された20までの、または50までの遺伝子に結合できるプローブをキットは含むことができる。100、200、300、400または500までのこのような標的分子に結合できるプローブを適切なキットは含むことができる。実際、本発明のキットは、500以上の標的分子に特異的に結合できるプローブを含むことができ、表1に示す遺伝子の590全部の発現を代表する標的に特異的に結合できるプローブを含むことさえできる。
本発明のキットは、表1から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的分子に結合できるプローブおよび/または表2から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的分子に結合できるプローブおよび/または表3から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的分子に結合できるプローブおよび/または表8から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的分子に結合できるプローブおよび/または表13から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的分子に結合できるプローブおよび/または表17から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的分子に結合できるプローブおよび/または表20から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的分子に結合できるプローブおよび/または表22から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的分子に結合できるプローブおよび/または表24から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的分子に結合できるプローブおよび/または表26から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的分子に結合できるプローブを含む。
本発明のキットは、表2〜28のいずれか1つ(またはその任意の組み合わせ)を代表する任意の遺伝子の遺伝子発現を代表するの標的分子に結合できるプローブを含むことができる。
本発明のキットで提供されるプローブは、好ましくは標識プローブであることができる。標識プローブは、本発明の第1の側面に関連して考察した任意の検出可能部分を含むことができる。好ましい標識プローブは、ハプテン、蛍光標識プローブ、放射性標識プローブおよび酵素標識プローブを含む群から選択することができる。
本発明のキットで提供される標準物質は、表1に示す遺伝子群から選択される1以上の遺伝子の適切なコンパレータ試料における発現を代表する標的核酸のライブラリーを含むことができる。
好ましい実施形態において、標準物質は、ケロイドおよびケロイドではない組織における表1に示す遺伝子群から選択される1以上の遺伝子の発現レベルに関する記録された情報を含むことができる。
最も好ましい例において、表1に示す遺伝子群から選択される1以上の遺伝子の発現レベルに基づいて診断を行うことができるアルゴリズムを作成するために参照データを使用することができる。
本発明のキットにより提供されるオリゴヌクレオチドプローブは、好ましくは、本明細書の他の部分で考察されたオリゴヌクレオチドアレイの形で提供することができる。
対象とする瘢痕がケロイド組織であるかケロイドではない組織であるかに関する本発明による診断を行う上でオリゴヌクレオチドアレイの使用が特に有用であることが、今までのページから明らかであろう。
よって、本発明の第3の側面において、アレイに存在するオリゴヌクレオチドプローブの少なくとも7.0%が表1に示す遺伝子群から選択される遺伝子を代表することを特徴とするオリゴヌクレオチドプローブアレイが提供される。
本発明はまた、表1に示す遺伝子群の1以上の発現を代表する分子に特異的に結合できる固定化抗体プローブを含むアレイを提供する。さらにまた、本発明は、表1に示す遺伝子群から選択される遺伝子を代表する核酸プローブが付着したナイロン支持体を含むアレイも提供する。核酸プローブは、好ましくはcDNA分子であることができる。
平面のアレイ表面が好ましいが、事実上任意の形状の表面上あるいは複合的な表面上でさえもアレイを作成することができる。さらなる例において、各ビーズが既知の核酸配列をディスプレイするアドレス可能なビーズのライブラリーの表面上に適切なアレイを作成することができる。また、ナイロン支持体、一般的には編まれたまたは編まれていないナイロン膜の表面上に適切なアレイを作成できる。
本発明のアレイは多数の表1に示す遺伝子の発現を同時に比較する(実際、このような遺伝子の同時発現を比較する)ために使用でき、これにより労力・費用・時間を抑制する顕著な利点がもたらされることは明らかであろう。さらにまた、複数の遺伝子の発現レベルの比較により、本発明により行うことができる診断に大きな信頼が与えられる。
本発明のアレイは、表1に示す群から選択された遺伝子に特異的な5つまでのプローブを含むことができる。好ましくは、アレイは、表1に示す群から選択された遺伝子に特異的な5、6、7、8、9または10のプローブを含むことができる。アレイは、表1に示す群から選択された20までの、または50までの遺伝子に特異的なプローブを含むことができる。適切なアレイは、表1に示す群から選択された100までの、200までの、300までの、400までのまたは500までのプローブの特定の遺伝子を含むことができる。実際、適切なアレイは、表1に示す遺伝子の500以上に特異的なプローブを含むことができ、表1に示す遺伝子590のすべてに特異的なプローブを含むことさえできる。プローブのそれぞれは、異なる選択された遺伝子に特異的であるべきであり、各プローブの2以上のコピーを提供できることは明らかであろう。
本発明のアレイは、表2に示す群から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的に結合できるプローブおよび/または表3に示す群から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的に結合できるプローブおよび/または表8に示す群から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的に結合できるプローブおよび/または表13に示す群から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的に結合できるプローブおよび/または表17に示す群から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的に結合できるプローブおよび/または表20に示す群から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的に結合できるプローブおよび/または表22に示す群から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的に結合できるプローブおよび/または表24に示す群から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的に結合できるプローブおよび/または表26に示す群から選択された少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的に結合できるプローブを含むことができる。
本発明のアレイは、表1〜28のいずれか1つまたはその任意の組み合わせから選択された1以上の遺伝子の発現を代表する標的に結合できるプローブを含むことができる。
本発明のアレイは、ケロイド組織において発現が増加している1以上の遺伝子をさらに含むことが好ましい。このような遺伝子の提供により、投入原料の絶対量の変化または任意のアッセイ法の効率の変化から生物学的に有意な結果を識別する能力を高めることができる。例えば、リジルオキシダーゼは、ケロイドではない組織と比較してケロイド組織において3倍高い発現を示す。リジルオキシダーゼはコラーゲン架橋に関与する重要な酵素であり、線維組織において強く発現されていることが以前に示されている。
任意のアッセイの有効性を評価できる対照を提供するために、本発明の方法、キットおよびアレイは1以上の“ハウスキーピング遺伝子”を使用することができる。本発明のキット中にまたは本発明のアレイ上にこれらのハウスキーピング遺伝子を提供することができる。適切なハウスキーピング遺伝子は、ケロイドとケロイドではない組織との間で不変であるか、あるいはケロイド形成に関連を有さない遺伝子である。ケロイドおよびケロイドではない(コンパレータ)生検試料の両方において不変の発現を示す遺伝子の例は、exportin 7 (XPO7)、切断・ポリアデニル化特異的第4因子(Cleavage and Polyadenylation Specific Factor 4)、30kDa(CPSF4)、Fボックス唯一タンパク質7(F-box only protein 7) (FBXO7)、ADPリボシル化因子1(ARF1)、βシグナル配列受容体(SSR2)およびメチオニンtRNA合成酵素(MARS)を含む。
本発明によるオリゴヌクレオチドアレイは、当該技術分野で公知の任意の適切な技術により合成することができる。このようなアレイの合成に使用できる好ましい技術は、光指向性超大規模固定化ポリマー合成法(VLSIPS)であり、これは多くの出版物において以前に記載されている(Lipshutz RJ, Fodor SP, Gingeras TR, Lockhart DJ. High density synthetic oligonucleotide arrays. Nat Genet. 1999 Jan;21(1 Suppl):20-4; Jacobs JW, Fodor SP. Combinatorial chemistry--applications of light-directed chemical synthesis. Trends Biotechnol. 1994 Jan;12(1):19-26)。
本発明によるオリゴヌクレオチドアレイによりハイブリダイゼーションの比較が可能になり、それによって大変少ない液量で遺伝子発現を行うことができる(例えば250μl以下、より好ましくは100μl以下、最も好ましくは10μl以下)。このことは多くの利点を与える。少ない容量においては、ハイブリダイゼーションは大変迅速に進行する。加えて、ハイブリダイゼーション条件は試料中で極めて均一であり、ハイブリダイゼーションフォーマットは自動処理を受け入れやすい。
本発明による診断(本発明の方法、キットまたはアレイのいずれを使用しても)は、ケロイド瘢痕を緩和または治癒するために用いる処置の有効性を評価するのに有用であることができることは当業者には明らかであろう。処置が有益な効果を生むケロイドは、表1〜28のいずれかに示す遺伝子に関して観察される発現の低下を緩和するその能力により特定できる。
処置されたケロイド内の、表1から選択された1以上の遺伝子の発現を、正常皮膚コンパレータに見られる前記遺伝子(単数または複数)の発現により類似させる処置は、処置されるケロイドに有益な効果を示すとみなすべきである。処置されたケロイドにおける発現が正常皮膚コンパレータに見られる発現により類似していない場合、処置は、当該ケロイド瘢痕に有益でないとみなすことができる。このような場合、代替処置戦略を適用し、場合により続いて、同様に代替戦略の効果を評価することが望まれる。
表の説明
本発明により発現が調査できる遺伝子を付表に示す。これらの表は、各遺伝子に関して、遺伝子番号;公開識別子およびデータソース(これらにより、当業者は当該遺伝子を識別でき、その配列に関する情報をさらに入手することができる);遺伝子名;プローブID(当該遺伝子の発現を調査するために使用できる少なくとも1つのプローブの詳細を示す);当該遺伝子の発現の比較に使用できる組織の詳細;ならびに実験結果セクションに記載されているように行った比較により得た発現における倍率変化およびP値の詳細を提供する。
表1:ケロイド瘢痕を診断するための遺伝子。すべての遺伝子は高度に統計的に有意であり、p値は0.01未満である。
表2:対象とする瘢痕の病変周囲試料がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断するのに使用できる遺伝子。
表3:対象とする瘢痕からの病変周囲試料と正常皮膚コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。
表4:対象とする瘢痕からの病変周囲試料と正常皮膚コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0006928)に基づく細胞運動機能を有するタンパク質をコードする。
表5:対象とする瘢痕からの病変周囲試料と正常皮膚コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0007155)に基づく細胞接着機能を有するタンパク質をコードする。
表6:対象とする瘢痕からの病変周囲試料と正常皮膚コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0006954)に基づく炎症機能を有するタンパク質をコードする。
表7:対象とする瘢痕からの病変周囲試料と正常皮膚コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0001525)に基づく血管新生機能を有するタンパク質をコードする。
表8:対象とする瘢痕からの病変周囲試料とケロイド外コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。
表9:対象とする瘢痕からの病変周囲試料とケロイド外コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0006928)に基づく細胞運動機能を有するタンパク質をコードする。
表10:対象とする瘢痕からの病変周囲試料とケロイド外コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0007155)に基づく細胞接着機能を有するタンパク質をコードする。
表11:対象とする瘢痕からの病変周囲試料とケロイド外コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0006954)に基づく炎症機能を有するタンパク質をコードする。
表12:対象とする瘢痕からの病変周囲試料とケロイド外コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0001525)に基づく血管新生機能を有するタンパク質をコードする。
表13:対象とする瘢痕からの病変周囲試料とケロイド周囲コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。
表14:対象とする瘢痕からの病変周囲試料とケロイド周囲コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0007155)に基づく細胞接着機能を有するタンパク質をコードする。
表15:対象とする瘢痕からの病変周囲試料とケロイド周囲コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0006954)に基づく炎症機能を有するタンパク質をコードする。
表16:対象とする瘢痕からの病変周囲試料とケロイド周囲コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0001525)に基づく血管新生機能を有するタンパク質をコードする。
表17:対象とする瘢痕からの病変周囲試料とケロイド内コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。
表18:対象とする瘢痕からの病変周囲試料とケロイド内コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0006928)に基づく細胞運動機能を有するタンパク質をコードする。
表19:対象とする瘢痕からの病変周囲試料とケロイド内コンパレータとの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0006954)に基づく炎症機能を有するタンパク質をコードする。
表20:対象とする瘢痕の病変内試料がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断するのに使用できる遺伝子。
表21:対象とする瘢痕からの病変内試料と正常皮膚コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。
表22:対象とする瘢痕からの病変内試料とケロイド外コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。
表23:対象とする瘢痕からの病変内試料とケロイド外コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0006928)に基づく細胞運動機能を有するタンパク質をコードする。
表24:対象とする瘢痕からの病変内試料とケロイド周囲コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。
表25:対象とする瘢痕からの病変内試料とケロイド周囲コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0007155)に基づく細胞接着機能を有するタンパク質をコードする。
表26:対象とする瘢痕からの病変内試料とケロイド内コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。
表27:対象とする瘢痕からの病変内試料とケロイド内コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0006954)に基づく炎症機能を有するタンパク質をコードする。
表28:対象とする瘢痕からの病変内試料とケロイド内コンパレータの間で発現を比較して、対象とする瘢痕がケロイド瘢痕であるかケロイドではない瘢痕であるかを診断することができる遺伝子。この表に見られる遺伝子は、遺伝子オントロジー分類(GO:0001525)に基づく血管新生機能を有するタンパク質をコードする。
ここで、以下の実験結果を参照して本発明をさらに詳しく説明する。
実験結果
対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかを診断するために使用する表1に示す遺伝子の適合性を以下の研究で例証する。この研究において、既知のケロイド組織および適切に適合させたコンパレータ組織から採取した試料間で表1に示す遺伝子の発現を比較した。
1.1ケロイド組織の診断
本研究に使用するために、少なくとも1年間ケロイドを発症していたアフリカ大陸系集団の患者20名からケロイド試料の提供を受けた。完全な病歴が確証できるケロイドのみを採用した。瘢痕の年数、瘢痕歴の十分な見直しおよび臨床医による検査により、瘢痕がケロイドであって、肥厚性瘢痕ではないことが正しく診断されたことを確認した。
本明細書に記載の研究に使用するために、ケロイド形成歴のないアフリカ大陸系集団の被験者から対照コンパレータ組織(“正常コンパレータ”)の提供を受けた。
1.2組織採取
ケロイド端部と直角に楕円体切除を用いてケロイドの試料を採取し、得られた生検材料を切断して、ケロイド病変を取り囲む皮膚(ケロイド外組織)、ケロイド病変の周辺部(病変周囲組織)またはケロイド病変の内部(病変内組織)を含む試料を得た。これらの組織は厳密に診断されたケロイド試料から選択されているため、表1に示す遺伝子の診断能を試験するための適切な実験試料が提供される。
これらの手順で採取したケロイド外組織は、以下の研究に使用するコンパレータ組織(ケロイド外コンパレータ)として用いた。ケロイド非形成者からの皮膚組織もまた同様に生検を実施して関連するケロイドではないコンパレータ組織を得た。
採取後に、RNA Later溶液(Ambion)に生検切片を浸し、後の遺伝子発現分析まで-80℃で保存した。
1.3組織における遺伝子発現を代表する試料の調製
ケロイド形成者からの病変周囲、病変内および病変外試料と、ケロイド非形成者からの皮膚試料を、Qiagen(商標)溶解緩衝液の存在下でDiax(G-10)ホモジナイザーを用いて粉砕し、ついで、生成した溶解物をプロテイナーゼKと共に55℃で20分間インキュベートした。
インキュベーションに続いて混合物を遠心分離で分離し、存在するRNAをRNeasy midi spinカラム(Qiagen Ltd)を用いて精製した。
1.4標的核酸の産生
Superscript System(Invitrogen Corp.)を用いるcDNA合成のために、全RNA 10μgを基質として用いた。ついで、BioArray RNA転写産物標識キット(Enzo Life Sciences Inc.)を用いて、得られたcDNAをビオチン化cRNA標的分子に変換した。続いて、RNeasy miniキット(Qiagen Ltd)を用いて反応混合物からcRNA標的分子を精製した。アレイハイブリダイゼーションのために、cRNA 20μgを断片化した。
1.5遺伝子発現の比較
断片化した、病変周囲および病変内ケロイド組織ならびにケロイド外およびケロイドではないコンパレータ組織における遺伝子発現を代表するcRNA標的分子を、表1に示す遺伝子を代表するオリゴヌクレオチドプローブを含むオリゴヌクレオチドアレイにハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションを行うためにAffymetrix標準プロトコル(Affymetrix Inc)を用いた。ハイブリダイズしたアレイをストレプトアビジン-フィコエリスリンで染色し、ついで蛍光強度を生じさせるためにレーザー共焦点スキャナを用いてスキャンした。
すべてのアレイを目標輝度値1000に正規化し、Microarray Analysis Suite version5.0ソフトウェアを用いて信号値および検出P値を算出した。コンパレータ組織における発現と発現を比較するために、品質管理を合格したデータセットをSpotfire analysis suiteにインポートした。
信号値をlog2スケールに変換し、log2変換データに関して、ケロイドを代表する試料における遺伝子発現とコンパレータにおける発現を比較するt検定を行った。各試料群に対して平均信号値を算出し、これらの平均値から倍率変化を算出した。
1.6結果
ケロイド組織(病変周囲および病変内組織)における表1に示す遺伝子の発現とコンパレータ組織における同じ遺伝子の発現とを比較するt検定は、すべて、0.01未満のt検定P値を示した。このことにより、表1に示す遺伝子の発現のそれぞれすべてが、コンパレータとは対照的にケロイド組織において高度に顕著に低下していることが確認される。
対象とする瘢痕からの試料における表1に示す群からの1以上の遺伝子の発現が、コンパレータ試料における同じ遺伝子(単数または複数)の発現と比較して低下していることが、対象とする瘢痕がケロイド組織であることの明確な診断を提供することをこれらの結果は明確に示している。
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Claims (41)

  1. 対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかを診断する方法において、対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する試料における、表1に示す遺伝子群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現と、コンパレータ組織における、前記少なくとも1つの遺伝子の発現とを比較することを含む前記方法であって、コンパレータ組織における前記少なくとも1つの遺伝子の発現と比較して、対象とする瘢痕における前記少なくとも1つの遺伝子の発現が低下していることが、対象とする瘢痕がケロイドを含むことを示す前記方法。
  2. 方法がin vitro法である、請求項1記載の方法。
  3. 表2に示す遺伝子群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を比較することを含む、請求項1または請求項2記載の方法。
  4. 表3に示す遺伝子群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を比較することを含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
  5. 表8に示す遺伝子群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を比較することを含む、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
  6. 表13に示す遺伝子群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を比較することを含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
  7. 表17に示す遺伝子群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を比較することを含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
  8. 表20に示す遺伝子群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を比較することを含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
  9. 表21に示す遺伝子群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を比較することを含む、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
  10. 表22に示す遺伝子群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を比較することを含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
  11. 表24に示す遺伝子群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を比較することを含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
  12. 表26に示す遺伝子群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を比較することを含む、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
  13. 対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する試料が標的核酸分子を含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
  14. 標的核酸分子がRNAオリゴヌクレオチドを含む、請求項13記載の方法。
  15. 標的核酸分子がDNAオリゴヌクレオチドを含む、請求項13記載の方法。
  16. 対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する試料が標的タンパク質分子を含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
  17. 標的分子に特異的に結合できるプローブ分子を用いて遺伝子発現の比較が行われる、請求項13〜16のいずれかに記載の方法。
  18. オリゴヌクレオチドプローブ、抗体およびアプタマーを含む群からプローブ分子が選択される、請求項17記載の方法。
  19. 少なくとも5遺伝子について試料における発現とコンパレータ組織における発現とが比較される、請求項1〜18のいずれか1つに記載の方法。
  20. 5〜10遺伝子について試料における発現とコンパレータ組織における発現とが比較される、請求項1〜19のいずれか1つに記載の方法。
  21. 対象とする瘢痕がケロイドであるかケロイドではないかを診断するためのキットであって、
    i)対象とする瘢痕における、表1に示す群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的分子に特異的に結合できる少なくとも1つのプローブ;および
    ii)コンパレータ組織における前記少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを示すことができる標準物質
    を含む前記キット。
  22. プローブがオリゴヌクレオチドプローブを含む、請求項21記載のキット。
  23. プローブが抗体を含む、請求項21記載のキット。
  24. プローブがアプタマーを含む、請求項21記載のキット。
  25. プローブが標識プローブである、請求項21〜24のいずれかに記載のキット。
  26. プローブが蛍光標識プローブである、請求項25記載のキット。
  27. プローブが酵素標識プローブである、請求項25記載のキット。
  28. プローブが放射性標識プローブである、請求項25記載のキット。
  29. 表1に示す群から選択される少なくとも5遺伝子の発現を代表する標的分子に特異的に結合できるプローブを含む、請求項21〜28のいずれか1つに記載のキット。
  30. 表1に示す群から選択される5〜10遺伝子の発現を代表する標的分子に特異的に結合できるプローブを含む、請求項21〜29のいずれか1つに記載のキット。
  31. 表2に示す遺伝子;および/または表3に示す遺伝子;および/または表8に示す遺伝子;および/または表13に示す遺伝子;および/または表17に示す遺伝子および/または表20に示す遺伝子;および/または表21に示す遺伝子;および/または表22に示す遺伝子;および/または表24に示す遺伝子;および/または表26に示す遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現を代表する標的分子に特異的に結合できるプローブをキットが含む、請求項21〜30のいずれか1つに記載のキット。
  32. 表1に示す遺伝子群から選択される前記少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的核酸のライブラリーを標準物質が含む、請求項21〜30のいずれか1つに記載のキット。
  33. 表1に示す遺伝子群から選択される前記少なくとも1つの遺伝子の発現を代表する標的タンパク質のライブラリーを標準物質が含む、請求項21〜31のいずれか1つに記載のキット。
  34. 表1に示す遺伝子群から選択される前記少なくとも1つの遺伝子の発現に関するデータを標準物質が含む、請求項21〜33のいずれか1つに記載のキット。
  35. 診断アルゴリズムをさらに含む、請求項21〜34のいずれか1つに記載のキット。
  36. アッセイが正しく行われたことを示すことができるアッセイ対照をさらに含む、請求項21〜35のいずれか1つに記載のキット。
  37. 対象とする瘢痕における遺伝子発現を代表する標的分子の集団の製造原料をさらに含む、請求項21〜36のいずれか1つに記載のキット。
  38. アレイに存在するオリゴヌクレオチドプローブの少なくとも7.0%が表1に示す遺伝子群から選択されることを特徴とするオリゴヌクレオチドプローブアレイ。
  39. 表1に示す遺伝子群から選択される遺伝子を代表する核酸プローブが付着したナイロン支持体を含むアレイ。
  40. 表1に示す遺伝子群の1以上の発現を代表する分子に特異的に結合できる固定化抗体プローブを含むアレイ。
  41. 表2に示す遺伝子;および/または表3に示す遺伝子;および/または表8に示す遺伝子;および/または表13に示す遺伝子;および/または表17に示す遺伝子および/または表20に示す遺伝子;および/または表21に示す遺伝子;および/または表22に示す遺伝子;および/または表24に示す遺伝子;および/または表26に示す遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現を代表する標的分子に特異的に結合できるプローブをアレイが含む、請求項38〜40のいずれか1つに記載のアレイ。
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