JPWO2013161441A1 - 光学ガラス、光学素子、光学系および光学装置 - Google Patents

光学ガラス、光学素子、光学系および光学装置 Download PDF

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Abstract

光学ガラスは、重量百分率で、SiO2が15〜36%、B2O3が13〜31%、Al2O3が4〜27%、Ta2O5が0〜19%、ZrO2が0〜10%、Nb2O5が0〜10%、ただし、Ta2O5+Nb2O5+ZrO2≧7.1%、を含み、かつ、屈折率ndが1.54〜1.61未満、アッベ数νdが50〜57の範囲の光学恒数を有し、かつ、異常分散性を示す△Pg,Fが−0.004以下である。

Description

本発明は、光学ガラス、光学素子、光学系および光学装置に関する。
従来から、PbOを含有せずに、屈折率nが1.52〜1.58、アッベ数νが50〜57の所定の光学恒数を有し、かつ負の異常分散性を有する光学ガラスが知られている(たとえば特許文献1)。
日本国特許第4610046号公報
しかしながら、可視域の短波長側の領域から紫外域にかけて負の異常分散性を有し、かつ、化学的耐久性が十分な光学ガラスが無かったため、この領域における色光について、二次スペクトルとして示される残存色収差が十分に除去するような光学設計ができないという問題がある。
本発明の第1の態様によると、光学ガラスは、重量百分率で、SiOが15〜36%、Bが13〜31%、Alが4〜27%、Taが0〜19%、ZrOが0〜10%、Nbが0〜10%、ただし、Ta+Nb+ZrO≧7.1%、を含み、かつ、屈折率nが1.54〜1.61未満、アッベ数νが50〜57の範囲の光学恒数を有し、かつ、異常分散性を示す△Pg,Fが−0.004以下である。
本発明の第2の態様によると、第1の態様の光学ガラスにおいて、LiOが0〜5%、NaOが0〜4%、KOが0〜7%、MgOが0〜5%、CaOが0〜8%、SrOが0〜15%、BaOが0〜27%、ただし、MgO+CaO+SrO+BaO≦29%、ZnOが0〜12%、を含むことが好ましい。
本発明の第3の態様によると、第2の態様の光学ガラスにおいて、酸化物基準の重量百分率で、(B成分の含有量)/(SiO成分の含有量+Al成分の含有量×2+ZrO成分の含有量×2.5)の値が0.25以上、0.62以下であることが好ましい。
本発明の第4の態様によると、第2の態様の光学ガラスにおいて、酸化物基準の重量百分率で、(B成分の含有量)/(SiO成分の含有量+Al成分の含有量×2+ZrO成分の含有量×2.5)の値が0.25以上、0.62以下であり、かつ「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法(粉末法)」(日本光学硝子工業会規格JOGIS06−2008)に基づいて測定される耐水性の等級が3等級以上の化学的耐久性を有することが好ましい。
本発明の第5の態様によると、第3の態様の光学ガラスにおいて、「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法(粉末法)」(日本光学硝子工業会規格JOGIS06−2008)に基づいて測定される耐水性の等級が3等級以上の化学的耐久性を有することが好ましい。
本発明の第6の態様によると、第1乃至5のいずれか一態様の光学ガラスにおいて、厚さを10mmとした場合、内部透過率80%となる光線の波長が380nm以下であることが好ましい。
本発明の第7の態様によると、光学素子は第1乃至6のいずれか一態様の光学ガラスからなる。
本発明の第8の態様によると、光学系は第7の態様の光学素子を含んで構成される。
本発明の第9の態様によると、光学装置は第8の態様の光学系を備えることが好ましい。
本発明によれば、SiO−B−Al−(Ta,ZrO,Nb)系の光学ガラスは、屈折率nが1.54〜1.61未満、アッベ数νが50〜57の範囲の光学恒数と、負の異常分散性を有することができる。
本発明の第1〜第6の実施の形態による光学ガラスの特性を示す図 本発明の第7〜第12の実施の形態による光学ガラスの特性を示す図 本発明の第13〜第18の実施の形態による光学ガラスの特性を示す図 本発明の第19〜第24の実施の形態による光学ガラスの特性を示す図 第1〜第24の実施の形態による光学ガラスの光学恒数を説明する図 第3〜第24の実施の形態による化学的耐久性を示す図 第1〜第6比較例による光学ガラスの特性を示す図 第7〜第11比較例による光学ガラスの特性を示す図 本発明による光学ガラスを有する光学装置の一例を示す図 本発明による光学ガラスを有する光学装置の一例を示す図
図面を参照しながら、本発明の実施の形態による光学ガラスについて説明する。本発明に係る光学ガラスは、環境汚染物質であるPbOおよびAsを実質的に含有しない、SiO−B−Al−(Ta,ZrO,Nb)系の特定組成域の光学ガラスである。ここで実質的に含有しないとは、不純物として不可避的に含有される濃度を越えて、ガラス組成物の特性に影響する実質的な構成成分として含有されないことを意味する。この光学ガラスは、高い化学的耐久性を有し、可視域の短波長側から紫外域にかけて大きな負の異常分散性を示す。以下の説明においては、nは、波長587.562nmの光に対するガラスの屈折率を示す。また、νは以下の式(1)で表される。なお、nは波長486.133nmの光に対するガラスの屈折率を示し、nは波長656.273nmの光に対するガラスの屈折率を示す。屈折率はいずれも22℃における値である。
ν=(n−1)/(n−n) …(1)
部分分散比(Pg,F)は、主分散(n−n)に対する部分分散(n−n)の比を示し、以下の式(2)で表される。なお、nは波長435.835nmの光に対するガラスの屈折率を示す。
(Pg,F)=(n−n)/(n−n) …(2)
異常分散性(△Pg,F)は、正常分散性を有するガラスとしてF2およびK7の2硝種を基準とした部分分散比標準線からの偏りを示す。すなわち、縦軸を部分分散比(Pg,F)、横軸をアッベ数νとする座標上で、2硝種を結ぶ直線と、比較対象のガラスの値との縦座標の差分が、部分分散比の偏り、すなわち異常分散性(△Pg,F)となる。上記の座標系で、部分分散比の値が、基準となる硝種を結ぶ直線よりも上側に位置する場合にはガラスは正の異常分散性(+△Pg,F)を示し、下側に位置する場合にはガラスは負の異常分散性(−△Pg,F)を示す。本発明に係る光学ガラスでは、後述するように負の異常分散性(−△Pg,F)が(△Pg,F)≦−0.004を満たすように形成される。なお、以下の説明においては、異常分散性(△Pg,F)を示す値の絶対値が大きい場合に、異常分散性が大きいと記載する。
厚さが10mmのガラスを内部透過率80%で透過する光線の波長はλ80と呼ばれている。これは、日本光学硝子工業会規格「光学ガラスの内部透過率の測定方法」(JOGIS)に準じて、ガラスの表面の反射損失を含まず内部透過率80%で透過する光線の波長を示したものである。λ80の値が小さいほど、光線波長域の短波長側でのガラスの光線透過率は良好となる。
図1〜4に本発明の第1〜第24の実施の形態による光学ガラスの組成と光学恒数について示す。まず、第1〜第24の実施の形態の各光学ガラスの成分の組成範囲について説明する。
SiOはガラス形成酸化物として不可欠の成分である。SiOの含有量、すなわち重量百分率が光学ガラスの重量に対して15%未満の場合には、光学ガラスの化学的耐久性が不十分となる。また、SiOの含有量が36%以上の場合には、光学ガラスの異常分散性が目標に達しない。したがって、光学ガラスの化学的耐久性と異常分散性とが良好となる範囲として、SiOの含有量が15%〜36%に設定される。上記の観点から、より好ましい態様として、SiOの含有量は、重量百分率で下限値を17%とすることができ、上限値を28%とすることができる。
も、SiOと同様にガラス形成酸化物として不可欠の成分である。Bの含有量が重量百分率で13%未満の場合には、光学ガラスの溶融時粘性が高くなるとともに、光学ガラスの異常分散性が抑制される。また、Bの含有量が31%を超えると、光学ガラスの化学的耐久性が低くなる。したがって、光学ガラスの異常分散性、溶融時粘度および化学的耐久性が良好となる範囲として、Bの含有量が13%〜31%に設定される。上記の観点から、より好ましい態様として、Bの含有量は、重量百分率で上限値を30%とすることができる。
ZrOは、光学ガラスの化学的耐久性を高くするとともに、屈折率を高め、異常分散性を大きくする効果を有する。しかし、ZrOの含有量が重量百分率で10%を超えると、光学ガラスは失透しやすくなる。そのため、光学ガラスが失透せずに、安定的に製造できる範囲として、ZrOの含有量は0〜10%の範囲に設定される。上記の観点から、より好ましい態様として、ZrOの含有量は、重量百分率で下限値を0.5%とすることができ、上限値を6%とすることができる。
Nbは光学ガラスの異常分散性を大きくする効果を有する。さらに、Nbは光学ガラスの屈折率やアッベ数を調整するために有効な成分である。しかし、Nbの含有量が重量百分率で10%を超えると、光学ガラスが失透しやすくなる。このため、光学ガラスが失透せずに、安定的に製造できる範囲として、Nbの含有量は0〜10%に設定される。上記の観点から、より好ましい態様として、Nbの含有量は、重量百分率で下限値を1.5%とすることができ、上限値を6%とすることができる。
LiOは光学ガラスの溶融を促進する成分であるが、LiOの含有量は重量百分率で5%を超えると失透性が増大する傾向にある。そこで、本発明の一態様として、LiOの含有量は、重量百分率で5%を上限とすることができる。また、より好ましい態様として、LiOの含有量は、重量百分率で下限値を1%とすることができ、上限値を3%とすることができる。NaOおよびKOはともに光学ガラスの溶融を促進する成分であるが、光学ガラスの化学的耐久性を低下させる成分でもある。このため、本発明の一態様においては、NaOの含有量は重量百分率で4%まで、KOの含有量は重量百分率で7%までに設定される。上記の観点から、より好ましい態様として、NaOの含有量は、重量百分率で下限値を2%とすることができ、上限値を3%とすることができる。また、KOの含有量は、重量百分率で下限値を2%とすることができ、上限値を6%とすることができる。
なお、ガラスの融解性の観点から、LiO+NaO+KOの含有量の下限値を、重量百分率で2.5%としてもよい。
MgOおよびCaOは光学ガラスの化学的耐久性を向上させ、屈折率およびアッベ数を調整することができる成分である。しかし、MgOおよびCaOは光学ガラスを失透させやすくする性質を有している。したがって、本発明の一態様において、MgOの含有量は重量百分率で5%まで、CaOの含有量は重量百分率で8%までに設定される。より好ましい態様として、MgOの含有量は、重量百分率で下限値を0.5%とすることができ、上限値を4%とすることができる。また、CaOの含有量は、重量百分率で下限値を2%とすることができ、上限値を6%とすることができる。
SrOは光学ガラスの屈折率およびアッベ数を調整することができる成分であるが、光学ガラスの異常分散性を抑制させる。このため、本発明の一態様においては、SrOの含有量は重量百分率で15%までに設定される。より好ましい態様として、SrOの含有量は、重量百分率で下限値を3%とすることができ、上限値を12%とすることができる。
BaOはガラス化範囲(融液法においてガラスとなり得る組成の範囲)を拡大させ、光学ガラスの異常分散性を増大させる成分である。しかし、BaOは、光学ガラスの屈折率を必要以上に増大させる効果を有する成分でもあるので、本発明の一態様においては、BaOの含有量は重量百分率で27%までに設定される。より好ましい態様として、BaOの含有量は、重量百分率で下限値を4%とすることができ、上限値を24%とすることができる。そして、光学ガラスの異常分散性と屈折率とのバランスを考慮すると、上述したMgO、CaO、SrOおよびBaOの合計の含有量は重量百分率で29%以下とすることができる。
ZnOはガラス化範囲を拡大させる成分であるが、光学ガラスの異常分散性を抑制させる。このため、本発明の一態様においては、ZnOの含有量は重量百分率で12%までに設定される。より好ましい態様として、ZnOの含有量は、重量百分率で下限値を2%とすることができ、上限値を12%とすることができる。
Alは、光学ガラスの溶融粘度を低下させるとともに、失透を起こりやすくする成分だが、光学ガラスの化学的耐久性を向上させる効果を有する。このため、Alの含有量が重量百分率で4%未満の場合には光学ガラスの化学的耐久性が低下する傾向にある。また、Alの含有量が27%よりも多い場合には、溶融粘度が大きくなり、また、失透しやすくなる傾向にある。したがって、本発明の一態様においては、光学ガラスの失透を抑えつつ十分な化学的耐久性となるように、Alの含有量は4%〜27%に設定される。より好ましい態様として、Alの含有量は、重量百分率で下限値を6%とすることができ、上限値を26%とすることができる。
Taは光学ガラスの屈折率を高め、異常分散性を増大させる成分である。しかし、Taは溶融ガラス内に未溶融物を生じやすい。したがって、本発明の一態様においては、Taの含有量は重量百分率で19%までとされる。より好ましい態様として、Taの含有量は、重量百分率で下限値を2%とすることができ、上限値を15%とすることができる。そして、光学ガラスの異常分散性が目標値を達成するために、ZrO、Nb、Taの合計の含有量は7.1%以上に設定される。なお、光学ガラスの脱泡を行うために、公知の脱泡剤であるSbを添加することができる。ただし、Sbの含有量は重量百分率で3%までで十分である。本発明に係る光学ガラスの組成物においては、添加量が重量は重量百分率で0.3%以下であっても十分な脱泡効果が得られる。
次に、図5を参照しながら、本発明に係る光学ガラスの光学恒数について説明する。図5は光学ガラスの異常分散性を示す。図5においては、縦軸を部分分散比(Pg,F)、横軸をアッベ数νとする。実線で示す直線L1は、F2およびK2の2硝種を結んだ直線である。なお、F2およびK2のアッベ数νと部分分散比(Pg,F)は以下の通りである。
F2:アッベ数ν=36.33、部分分散比(Pg,F)=0.5834
K2:アッベ数ν=60.47、部分分散比(Pg,F)=0.5429
図5に、各実施の形態による光学ガラスの各々の部分分散性をプロットして示す。図5に示すように、各実施の形態の光学ガラスは、その部分分散性が、直線L1の下部に位置する。すなわち光学ガラスが負の異常分散性を有する。図中の破線で示す直線L2は、異常分散性(△Pg,F)が−0.004を示す。したがって、実施の形態による光学ガラスの異常分散性(△Pg,F)が−0.004を下回る。
図1に、上述した組成範囲の成分を含有するとともに、上記の負の異常分散性および光学恒数を有する第1および第2の実施の形態による光学ガラスを示す。すなわち、第1および第2の実施の形態の光学ガラスは、屈折率nが1.54〜1.61の範囲、アッベ数νが50〜57の範囲となる光学特性を有し、異常分散性(△Pg,F)≦−0.004となっている。さらに、第1および第2の実施の形態の光学ガラスは、λ80が380nm以下なので、可視光線波長領域から紫外線波長領域の光線透過率が良好である。
図7に示す第3および第5比較例による光学ガラスと、第1および第2の実施の形態による光学ガラスとの対比を行う。第3比較例の光学ガラスでは異常分散性(△Pg,F)の値が−0.0036、第5比較例の光学ガラスでは異常分散性(△Pg,F)の値が−0.0026である。すなわち、上記比較例の光学ガラスの異常分散性(△Pg,F)は−0.004以下ではなく、異常分散性は大きいものではない。
上述のような異常分散性が十分ではない光学ガラスを用いて光学系を構成する場合、以下のような問題がある。異なるアッベ数νを有する正、負の異常分散性が十分ではない光学ガラスによって構成された光学系は、2色光についての色収差の除去ができたとしても、2色光以外の他の色光については二次スペクトルとして示される残存色収差を除去し切れない。
これに対して、異常分散性が大きい光学ガラスを用いて光学系を構成すれば、以下の作用効果を有する。正、負の異常分散性が十分に大きい光学ガラスを組み合わせて構成された光学系は、紫外域において上記の2色光の色収差に加えて、2色光以外の他の色光の残存色収差を除去できる。したがって、PbOやAsのような環境に好ましくない化合物を含有することなく、負の異常分散性が大きい第1および第2の実施の形態の光学ガラスの開発は各種光学レンズ系の設計上、極めて有用である。
第3〜第24の実施の形態による光学ガラスの構成を、図1〜4に示す。第3〜第24の各実施の形態の光学ガラスは、第1および第2の実施の形態の光学ガラスが有する特性に加えて、酸化物基準の重量百分率で、以下の式(3)が満たされるように構成されている。その結果、第3〜第24の実施の形態による光学ガラスは、より高い化学的耐久性を有している。なお、以下の説明においては、光学ガラスの化学的耐久性を評価する指標として、「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法(粉末法)」(日本光学硝子工業会規格JOGIS06−2008)に基づいて測定される光学ガラスの耐水性(以下、粉末法耐水性と呼ぶ)を用いるものとする。
0.25≦(B成分の含有率)/(SiO成分の含有率+Al成分の含有率×2+ZrO成分の含有率×2.5)≦0.62 …(3)
本発明者らは、上記の式(3)を導出するにあたり、Bは光学ガラスの化学的耐久性を低下させる成分であり、SiO、AlおよびZrOは光学ガラスの化学的耐久性を向上させる成分であると推論し、以下の考察を行った。
SiO、AlおよびZrOの含有量に対するBの含有量に基づいて求めた何らかの指標と光学ガラスの化学的耐久性および失透との間には相関があるのではないかと考えた。そこで、B、SiO、AlおよびZrOの各含有量に対する重み付け(係数)を種々変更して求めた指標と粉末法耐水性との関係を検討した。その結果、上記の式(3)に示した、(B成分の含有量)/(SiO成分の含有量+Al成分の含有量×2+ZrO成分の含有量×2.5)を指標とすると、指標の値が0.62以下となる場合には、粉末法耐水性は3等級となり、0.62を超える場合には4等級となることを見出した。
第3〜第24の実施の形態による光学ガラスについて、上記指標と粉末法耐水性試験の等級との関係を調べた。その結果を、図6に示す。図6では、横軸を(B成分の含有量)/(SiO成分の含有量+Al成分の含有量×2+ZrO成分の含有量×2.5)、縦軸を粉末法耐水性等級としている。図6に示すように、SiO、AlおよびZrOの合計の含有量に対するBの含有量の比に対して、3等級のプロット(黒色)と4等級のプロット(白色)とが重複せずに階段状に並んでいる。すなわち、(B成分の含有量)/(SiO成分の含有量+Al成分の含有量×2+ZrO成分の含有量×2.5)を0.62以下とすることによって、粉末耐水性等級が3等級となる光学ガラスが得られ、4等級となる光学ガラスとを分離できることが示されている。
一方、(B成分の含有量)/(SiO成分の含有量+Al成分の含有量×2+ZrO成分の含有量×2.5)の値が0.25未満の場合には、生成される光学ガラスは失透しやすくなることがわかった。したがって、生成される光学ガラスの化学的耐久性および失透の抑制を考慮して、(B成分の含有量)/(SiO成分の含有量+Al成分の含有量×2+ZrO成分の含有量×2.5)の値の下限値を0.25とした。すなわち、(B成分の含有量)/(SiO成分の含有量+Al成分の含有量×2+ZrO成分の含有量×2.5)の値が0.25以上0.62以下となる範囲を、光学ガラスの化学的耐久性と失透の抑制とを満足する指標の値の範囲として設定した。
図1〜図4に示した第3〜第24の各実施の形態の光学ガラスは、屈折率nが1.54〜1.61の範囲、アッベ数νが50〜57の範囲となる光学特性を有し、異常分散性(△Pg,F)≦−0.004となっている。さらに、第3〜第24の各実施の形態の光学ガラスは、λ80が380nm以下なので、可視光線波長領域から紫外線波長領域の光線透過率が良好である。
さらに、第3〜第24の各実施の形態の光学ガラスは、粉末法耐水性等級が3等級である。すなわち、第2〜第24の各実施の形態の光学ガラスは、図7、8に示す第1,2,4,6〜11比較例の光学ガラスのように粉末法耐水性等級が4等級であるものと比較して、高い化学的耐久性を有している。したがって、PbOやAsのような環境に好ましくない化合物を含有することなく、従来の光学ガラスと同等もしくはそれ以上の化学的耐久性を有し、負の異常分散性をより増大させた光学ガラスを形成できるので、各種光学レンズ系の設計に有効となる。
上述した本発明に係る光学ガラスの生成方法について説明する。光学ガラスを製造する際に、上述した酸化物、炭酸塩および硝酸塩等の通常の光学ガラス原料が、所定の割合で秤量混合される。ガラス原料の混合物は白金ルツボに投入され、ガラス組成の溶融の難易度に応じて1300度〜1450度の温度で3〜4時間程度溶融される。そして、溶融されたガラス原料が攪拌均質化された後、適当な温度まで冷却されてから金型等に鋳込み徐冷されることによって、光学ガラスが生成される。
本発明に係る光学ガラスを所望の形状に加工して、レンズやプリズム、回折格子、フレネルレンズ、フライアイレンズ等の光学素子を形成できる。また、これらの光学素子の表面には必要に応じて各種のコーティングを施してもよい。光学ガラスは上記のようなλ80を有しているので、可視域の短波長側から紫外域にかけても光線透過率が良好な光学素子の形成が可能となる。
さらに、上記の光学素子を他の光学ガラスと組み合わせて光学系を構成することができる。上記の通り、光学素子は可視域の短波長側から紫外域にかけても大きな負の異常分散性を有しているので、形成される光学系は可視域から紫外域の波長範囲で色収差を低減することができる。
本発明の態様の光学素子を用いた光学系を用いて、可視域から紫外域にかけての広い波長範囲の光を利用する撮像装置、顕微鏡、レーザ装置、露光装置等の光学装置を製造することができる。より具体的には、たとえばh波長線(405nm)の励起光を用いる共焦点蛍光顕微鏡の光学系に利用すれば、色収差が低減された高解像度で高品位な試料画像を取得できる。
図9に、本発明に係る光学ガラスを用いて作製された光学素子としてのレンズを備えた光学装置の一例としての撮像装置1を示す。撮像装置1はいわゆるデジタル一眼レフカメラであって、ボディ2のレンズマウント(不図示)に、撮影レンズ3が着脱可能に取り付けられるように構成されている。撮影レンズ3は複数の光学素子としてのレンズ4と、これらレンズ4を固定するレンズ鏡筒5とからなる。本発明に係る光学ガラスを用いて作製された光学素子としてのレンズは、これら複数の光学素子としてのレンズ4のうちの少なくとも1つとして撮影レンズ3に組み込まれている。
ボディ2の内部には、マルチチップモジュール8が設けられている。マルチチップモジュール8は、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等のセンサチップ(固体撮像素子)6が、ガラス基板7上にベアチップ実装されたCOG(ChipOn Glass)タイプのモジュールである。この撮像装置1は、レンズ鏡筒5に取り付けられたレンズ4を通過した被写体からの光束が、マルチチップモジュール8のセンサチップ6上に結像される。その結果、色収差が軽減された高画質の画像を撮像することができる。なお、撮像装置1は、デジタル一眼レフカメラに限定されず、レンズ交換式カメラやコンパクトカメラ、工業用カメラ、スマートフォン用カメラモジュール等の撮像手段を有する種々の光学装置が含まれる。
図10に、本発明に係る光学ガラスを用いて作製された光学素子としてのレンズを備えた光学装置の一例として、コンフォーカル(共焦点)顕微鏡10の要部構成を示す。なお、説明の都合上、x軸、y軸からなる座標系を図示の通りに設定する。コンフォーカル顕微鏡10は、光源11と、照明光学系12と、ビームスプリッタ13と、ピンホールマスク14と、対物光学系15と、リレー光学系16と、光検出器17とを備えている。照明光学系12と、対物光学系15と、リレー光学系16とは、それぞれ複数の光学素子としてのレンズを備えている。本発明に係る光学レンズを用いて作製された光学素子としてのレンズは、照明光学系12、対物光学系15およびリレー光学系16を構成するレンズのうちの少なくとも1つとして組み込まれる。特に、対物光学系15を構成するレンズの一部に組み込むことが、色収差を低減する点から好ましい。
光源11からは、Arレーザ光や、He−Neレーザ光、Kr−Arレーザ光等のレーザ光が発せられる。このレーザ光は、x軸+方向に進み、照明光学系12を介してビームスプリッタ13に導かれて、y軸−方向に反射される。ビームスプリッタ13で反射されたレーザ光は、ピンホールマスク14に設けられたピンホール14hを通過した後、対物光学系15により被検物18の1点に集光して被検物18を照射する。照射されたレーザ光は、被検物18からの戻り光としてy軸+方向に進み、対物光学系15を介してピンホールマスク14に導かれる。この戻り光には、被検物18からの反射光、蛍光、ラマン散乱光が含まれる。
ピンホール14hは、対物光学系15の焦点位置と共役となるように設けられており、被検物18からの戻り光のうちの蛍光を通過させる働きを有している。ピンホール14hを通過した蛍光は、ビームスプリッタ13を通過してリレー光学系16によって集光されて光検出器17に結像される。光検出器17は、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等によって構成される撮像素子であり、リレー光学系16により結像された像の輝度分布を検出して、画像信号として出力する。上述したように、コンフォーカル顕微鏡10は、本発明に係る光学ガラスを用いて作製された光学素子としてのレンズを備えているので、色収差が低減された高解像度で高品位な被検物の画像を取得できる。なお、図10に示すコンフォーカル顕微鏡10の構成は一例であり、本発明の光学装置は、図示の構成に限定されるものではない。
また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2012年第102615号(2012年4月27日出願)

Claims (9)

  1. 重量百分率で、
    SiOが15〜36%、
    が13〜31%、
    Alが4〜27%、
    Taが0〜19%、
    ZrOが0〜10%、
    Nbが0〜10%、
    ただし、Ta+Nb+ZrO≧7.1%、を含み、かつ、
    屈折率nが1.54〜1.61未満、アッベ数νが50〜57の範囲の光学恒数を有し、かつ、
    異常分散性を示す△Pg,Fが−0.004以下である光学ガラス。
  2. 請求項1に記載の光学ガラスにおいて、
    LiOが0〜5%、
    NaOが0〜4%、
    Oが0〜7%、
    MgOが0〜5%、
    CaOが0〜8%、
    SrOが0〜15%、
    BaOが0〜27%、
    ただし、MgO+CaO+SrO+BaO≦29%、
    ZnOが0〜12%、
    を含む光学ガラス。
  3. 請求項2に記載の光学ガラスにおいて、
    酸化物基準の重量百分率で、
    (B成分の含有量)/(SiO成分の含有量+Al成分の含有量×2+ZrO成分の含有量×2.5)の値が0.25以上、0.62以下である光学ガラス。
  4. 請求項2に記載の光学ガラスにおいて、
    酸化物基準の重量百分率で、
    (B成分の含有量)/(SiO成分の含有量+Al成分の含有量×2+ZrO成分の含有量×2.5)の値が0.25以上、0.62以下であり、かつ「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法(粉末法)」(日本光学硝子工業会規格JOGIS06−2008)に基づいて測定される耐水性の等級が3等級以上の化学的耐久性を有する光学ガラス。
  5. 請求項3に記載の光学ガラスにおいて、
    「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法(粉末法)」(日本光学硝子工業会規格JOGIS06−2008)に基づいて測定される耐水性の等級が3等級以上の化学的耐久性を有する光学ガラス。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学ガラスにおいて、
    厚さを10mmとした場合、内部透過率80%となる光線の波長が380nm以下である光学ガラス。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学ガラスからなる光学素子。
  8. 請求項7に記載の光学素子を含んで構成された光学系。
  9. 請求項8に記載の光学系を備える光学装置。
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