JPWO2013084787A1 - 赤外線検出素子,赤外線検出モジュール及びその製造方法 - Google Patents

赤外線検出素子,赤外線検出モジュール及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

赤外線検出素子15では、焦電基板20の表面側に第1基板36が接着されている。そして、第1基板36が焦電基板20と比べて熱膨張係数が小さいことで、焦電基板20の熱膨張による変形を第1基板36で抑制できる。また、熱膨張係数差Dが8.9ppm/K以下であることで、第1基板36と焦電基板20との熱膨張係数差が大きくなりすぎず、第1基板36と焦電基板20との熱膨張係数差による赤外線検出素子15の変形を抑制できる。

Description

本発明は、赤外線検出素子,赤外線検出モジュール及びその製造方法に関する。
セキュリティー用やガス検知用の赤外線検出モジュールに用いる赤外線検出素子として、焦電素子が用いられている。焦電素子は、焦電基板と、焦電基板の表裏に設けられた一対の表面電極及び裏面電極とを備えている。この焦電素子の表面に赤外線が照射されると、焦電基板の温度が上昇する。すると、その温度変化に応じて自発分極が変化して焦電基板の表面では電荷の平衡状態が崩れ、電荷が発生する。発生した電荷を一対の電極に接続された導線を介して取り出すことで、赤外線を検出する。このような焦電素子を有する赤外線検出モジュールとしては、焦電素子を回路基板上に導電性接着剤で固定して、焦電基板で発生した電荷を導電性接着剤を介して回路基板側に取り出すものが知られている(例えば、特許文献1)。
特開平10−38679号公報
ところで、赤外線検出素子に用いる焦電基板は、熱膨張により反りなどの変形が発生すると、圧電効果により電圧が生じる。これにより、この電圧がノイズとなって現れる場合があった。そのため、赤外線検出素子において、焦電基板の熱膨張による変形を抑制することが望まれている。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、焦電基板の変形をより抑制することを主目的とする。
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の赤外線検出素子は、
焦電基板と、
前記焦電基板の表面に形成された表面電極と、
前記表面電極と対向するように該焦電基板の裏面に形成された裏面電極と、
前記焦電基板の表面側に接着され前記焦電基板と比べて熱膨張係数が小さい第1基板と、
を備え、
前記第1基板は、前記表面電極に対向する空洞が形成されており、前記焦電基板の熱膨張係数から該第1基板の熱膨張係数を引いた熱膨張係数差Dが8.9ppm/K以下である、
ものである。
この赤外線検出素子では、焦電基板の表面側に第1基板が接着されている。そして、第1基板が焦電基板と比べて熱膨張係数が小さいことで、焦電基板の熱膨張による変形を第1基板で抑制できる。また、熱膨張係数差Dが8.9ppm/K以下であることで、第1基板と焦電基板との熱膨張係数差が大きくなりすぎず、第1基板と焦電基板との熱膨張係数差による赤外線検出素子の変形を抑制できる。これらにより、焦電基板の変形をより抑制することができる。この場合において、熱膨張係数差Dは、8.3ppm/K以下とすることが好ましく、8ppm/K以下とすることがより好ましい。熱膨張係数差Dは、5ppm/K以上としてもよい。
本発明の赤外線検出素子において、前記焦電基板は、厚さが10μm以下(例えば1μm以上10μm以下)であるものとしてもよい。最近では、セキュリティーやガス検知応用に関しては、高感度、高速応答を要求され、焦電基板の厚みを薄くする構造が望まれている。しかし、厚さを薄くすると焦電基板の変形による圧電ノイズが発生しやすくなる。本発明の赤外線検出素子は、焦電基板の変形をより抑制することができるため、焦電基板の厚さを薄くした場合に本発明を適用する意義が高い。
本発明の赤外線検出素子において、前記焦電基板は、タンタル酸リチウムの単結晶を、前記電極の面に沿った方向と一致するX軸の回りにY軸からZ軸方向にカット角θ(0°<θ<90°,90°<θ<180°)だけ回転させた角度で切り出したYオフカット板であるものとしてもよい。タンタル酸リチウム(LiTaO3,以下「LT」)は、焦電係数が大きく性能指数が高いため、これを焦電基板に用いることで、赤外線検出素子の高感度化を図ることができる。さらに、LTのYオフカット板を用いることにより、環境温度の変化により発生するポップコーンノイズを抑制できる。また、Zカット板よりも大口径のウエハーを使用することができ、ウエハー当たりのチップ取数を増やすことが可能となる。この場合において、カット角θは、30°以上60°以下、又は120°以上150°以下とすることが好ましい。カット角θが60°以下又は150°以下であれば、赤外線検出素子におけるポップコーンノイズの発生をより抑制できる。カット角θが30°以上又は120°以上であれば、S/N比の低下をより抑制することができる。なお、焦電基板がLTのYオフカット板である場合は、LTのYオフカット板の熱膨張係数が17ppm/K程度であるため、前記第1基板を、熱膨張係数が8ppm/Kより大きく、且つ前記焦電基板と比べて熱膨張係数が小さいものとすれば、第1基板と焦電基板との熱膨張係数差Dが0ppm/K超過9ppm/K未満となる。また、LTのYオフカット板の厚さが10μmを超えて厚くなるにつれて赤外線検出素子のS/N比が低下する傾向を示すため、厚さを10μm以下とすることが好ましい。LTのYオフカット板の厚さが5μm未満の範囲では、厚さが小さくなるにつれて赤外線検出素子の電圧感度は小さくなる傾向を示すため、厚さは5μm以上とすることが好ましい。
本発明の赤外線検出モジュールは、
上述したいずれかの態様の赤外線検出素子と、
前記焦電基板の裏面側に接着され、該焦電基板と比べて熱膨張係数が小さい第2基板と、
を備えたものである。
この赤外線検出モジュールでは、第2基板の熱膨張係数が焦電基板の熱膨張係数よりも小さいことで、焦電基板の熱膨張による変形を第1基板だけでなく第2基板でも抑えることができ、焦電基板の変形をより抑制することができる。
本発明の赤外線検出モジュールは、前記赤外線検出素子と前記第2基板とを接着して前記裏面電極と該第2基板とを電気的に導通し、前記赤外線検出素子を前記第1基板側から仮想的に透過したときに前記第1基板と少なくとも一部が重なるように位置している導電性接着剤を備えたものとしてもよい。こうすることで、導電性接着剤の熱膨張により焦電基板が押し上げられるときに、導電性接着剤の熱膨張による焦電基板の変形をより抑制できる。この場合において、前記第2基板は、前記第1基板と比べて熱膨張係数が小さいものとしてもよい。
本発明の赤外線検出モジュールの製造方法は、
焦電基板と、前記焦電基板の表面に形成された表面電極と、前記表面電極と対向するように該焦電基板の裏面に形成された裏面電極と、前記焦電基板の表面側に接着され前記表面電極に対向する空洞が形成されており、前記焦電基板と比べて熱膨張係数が小さく前記焦電基板の熱膨張係数から該第1基板の熱膨張係数を引いた熱膨張係数差Dが8.9ppm/K以下である第1基板と、を備えた赤外線検出素子を、導電性接着剤を介して第2基板に接着した赤外線検出モジュールの製造方法であって、
(a)前記赤外線検出素子を用意する工程と、
(b)前記赤外線検出素子と前記第2基板とを電気的に導通させるように前記焦電基板の裏面側に前記導電性接着剤を介して該第2基板を貼り合わせる工程と、
(c)前記第1基板と前記第2基板との間に荷重を加えて、該第2基板に前記導電性接着剤を介して前記赤外線検出素子を接着する工程と、
を含み、
前記工程(b)では、前記赤外線検出素子を前記第1基板側から仮想的に透過したときに該第1基板と少なくとも一部が重なる位置に前記導電性接着剤が位置するように前記貼り合わせを行う、
ものである。
この赤外線検出モジュールの製造方法では、焦電基板の裏面側に導電性接着剤を介して第2基板を貼り合わせ、第1基板と第2基板との間に荷重を加えて、第2基板に導電性接着剤を介して赤外線検出素子を接着している。このとき、焦電基板と第2基板との貼り合わせは、赤外線検出素子を第1基板側から仮想的に透過したときに第1基板と少なくとも一部が重なる位置に導電性接着剤が位置するように行っている。そのため、焦電基板のうち導電性接着剤が接着されている部分には荷重がかかるが、この荷重による応力を第1基板で受けることができる。これにより、この応力による焦電基板の変形をより抑制することができる。なお、この赤外線検出モジュールの製造方法により製造された赤外線検出モジュールでは、第1基板が焦電基板と比べて熱膨張係数が小さく、熱膨張係数差Dが8.9ppm/K以下となっている。そのため、上述した本発明の赤外線検出素子や赤外線検出モジュールと同様に、焦電基板の熱膨張による変形をより抑制する効果が得られる。この赤外線検出モジュールの製造方法において、上述した赤外線検出素子や赤外線検出モジュールの種々の態様を採用してもよい。
赤外線検出モジュール10の概略斜視図である。 説明の便宜上、図1における第1基板36,接着層37を除いた赤外線検出モジュール10の概略斜視図である。 図1のA−A断面図である。 図3のB−B断面図である。 Yオフカット板のカット角の説明図である。 受光部61,62の電気的な接続状態を示す回路図である。 赤外線検出素子15の製造工程を模式的に示す断面図である。 赤外線検出素子15の製造工程を模式的に示す説明図である。 赤外線検出素子15の実装工程を模式的に示す断面図である。 シングルタイプの赤外線検出素子215を有する変形例の赤外線検出モジュール210の断面図である。 実験例21の赤外線検出モジュール310の断面図である。 圧電ノイズの測定の際に行ったヒートサイクルの説明図である。
図1は本発明の一実施形態である赤外線検出モジュール10の概略斜視図、図2は説明の便宜上、図1における第1基板36,接着層37を除いた赤外線検出モジュール10の概略斜視図、図3は図1のA−A断面図、図4は図3のB−B断面図、図5はYオフカット板のカット角の説明図である。
赤外線検出モジュール10は、2つの受光部61,62(図3参照)を備えたデュアルタイプの赤外線検出素子(焦電素子)として構成された赤外線検出素子15と、赤外線検出素子15を裏面側から支持する第2基板70と、赤外線検出素子15と第2基板70とを接着して赤外線検出素子15を第2基板70に固定する導電性接着剤81,82と、を備えている。
赤外線検出素子15は、2つの受光部61,62を備えたデュアルタイプの赤外線検出素子として構成されている。この赤外線検出素子15は、焦電基板20と、焦電基板20の表面に形成された表面金属層40と、焦電基板20の裏面に形成された裏面金属層50と、焦電基板20の表面側に接着層37を介して接着された第1基板36と、を備えている。
焦電基板20は、結晶軸としてX軸、Y軸及びZ軸を有するLT単結晶の基板である。この焦電基板20は、図5に示すように、LT単結晶を、基板表面(電極面)に沿った方向と一致するX軸の回りに、Y軸からZ軸方向にカット角θだけ回転させた角度で切り出したYオフカット板である。このYオフカット板は、電極面に沿う方向をX1,電極面の法線方向をX2,X1とX2の両方に直交する軸をX3としたとき、X1はX軸と一致し、X2はX軸の回りにY軸からZ軸方向にカット角θだけ回転させた軸であり、X3はその回転に伴ってZ軸からカット角θだけ回転させた軸である。カット角θは、0°<θ<90°,90°<θ<180°の範囲内で設定されている。LTは、焦電係数が大きく性能指数が高いため、これを焦電基板20に用いることで、赤外線検出素子15の高感度化を図ることができる。LTのYオフカット板を用いることにより、環境温度の変化により発生するポップコーンノイズを抑制できる。また、Zカット板よりも大口径のウエハを使用することができ、ウエハ当たりのチップ取数を増やすことが可能となる。なお、カット角θは、30°以上60°以下、又は120°以上150°以下とすることが好ましい。カット角θが60°以下又は150°以下であれば、赤外線検出素子におけるポップコーンノイズの発生をより抑制できる。カット角θが30°以上又は120°以上であれば、S/N比の低下をより抑制することができる。焦電基板20の厚さは、10μm以下(例えば0.1〜10μm)であり、好ましくは1〜10μm、より好ましくは5〜10μmである。LTのYオフカット板である焦電基板20の厚さを10μm以下とすることで、赤外線検出素子15のS/N比の低下をより抑制することができる。LTのYオフカット板である焦電基板20の厚さを5μm以上とすることで、赤外線検出素子15の電圧感度の低下をより抑制することができる。焦電基板20の大きさは、例えば縦が0.1〜5mm、横が0.1〜5mmである。
表面金属層40は、焦電基板20の表面に形成されており、平面視で縦長の長方形に形成された2つの表面電極41,42と、表面電極41及び表面電極42を導通し平面視で横長の長方形に形成された表電極リード部46とを備えている。この表面金属層40の材料としては、例えばニッケルやクロム,金などの金属が挙げられ、赤外線吸収率が高いほど好ましく、金黒でもよい。表面金属層40の厚さは、特に限定するものではないが、例えば0.01〜0.2μmである。また、表面金属層40は、焦電基板20の表面上にクロムからなる金属層を形成し、さらにその上にニッケルからなる金属層を形成した2層構造であってもよい。
裏面金属層50は、焦電基板20の裏面に形成されており、平面視で縦長の長方形に形成された2つの裏面電極51,52と、裏面電極51と導通し平面視で正方形に形成された裏電極リード部56と、裏面電極52と導通し平面視で正方形に形成された裏電極リード部57とを備えている。この裏面金属層50の材料や厚さとしては、上述した表面金属層40と同様のものを用いることができる。裏面電極51は、表面電極41と対向するように焦電基板20の裏面に形成されており、裏面電極52は、表面電極42と対向するように焦電基板20の裏面に形成されている。裏電極リード部56,57は、赤外線検出素子15を第1基板側36から仮想的に透過したときに第1基板36と少なくとも一部が重なるように位置している(図4参照)。言い換えると、裏電極リード部56,57の少なくとも一部が、図3における第1基板36の真下に形成されている。なお、図4では、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときの裏面金属層50,導電性接着剤81,82の位置を波線で示している。
受光部61は、一対の電極(表面電極41及び裏面電極51)と、焦電基板20のうち表面電極41と裏面電極51とに挟まれた部分である受光領域21とで形成されたものである。同様に、受光部62は、一対の電極(表面電極42及び裏面電極52)と、焦電基板20のうち表面電極42と裏面電極52とに挟まれた部分である受光領域22とで形成されたものである。受光部61,62は、表面電極41,42側が赤外線の照射を受ける受光面として形成されている。この受光部61,62では、赤外線の照射による温度変化が生じると、一対の電極間の電圧が変化する。例えば、受光部61に赤外線が照射されると、表面電極41及び受光領域21が赤外線を吸収して温度変化が生じる。そして、これによる受光領域21の自発分極の変化が、表面電極41と裏面電極51との間の電圧の変化として現れるようになっている。
第1基板36は、表面電極41,42に対向する矩形の空洞38が内部に形成されており、この空洞38を四角く囲う枠形状に形成された部材である。この第1基板36は、この空洞38によって受光部61,62の受光面である表面電極41,42を避けるように形成され、表面電極41,42の周辺を四角く囲っている。この第1基板36の材料としては、例えば、ガラスや酸化マグネシウム,水晶が挙げられる。第1基板36は、特に限定するものではないが、例えば、縦が0.1〜5mm、横が0.1〜5mm、厚さが0.15〜5mmである。接着層37は、第1基板36と焦電基板20とを接着するものである。接着層37の材料としては、例えば、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤を固化させたものが挙げられる。接着層37の厚さは、特に限定するものではないが、例えば、0.1〜1μmである。なお、接着層37を用いず、陽極接合などの直接接合法を用いて焦電基板20と第1基板36とを接着してもよい。第1基板36,接着層37は、いずれも焦電基板20と比べて熱伝導率が低い材料であることが好ましい。
第1基板36は、焦電基板20と比べて熱膨張係数が小さく、焦電基板20の熱膨張係数から第1基板36の熱膨張係数を引いた熱膨張係数差Dが8.9ppm/K以下である。第1基板36が焦電基板20と比べて熱膨張係数が小さいことで、焦電基板20の熱膨張による変形を第1基板36で抑制できる。また、熱膨張係数差Dが8.9ppm/K以下であることで、第1基板36と焦電基板20との熱膨張係数差が大きくなりすぎず、第1基板36と焦電基板20との熱膨張係数差による赤外線検出素子15の変形を抑制できる。この場合において、熱膨張係数差Dは、8.3ppm/K以下とすることが好ましく、8ppm/K以下とすることがより好ましい。熱膨張係数差Dは、5ppm/K以上としてもよい。なお、焦電基板20がLTのYオフカット板である場合は、第1基板36の熱膨張係数は17ppm/K程度であるため、第1基板36を、熱膨張係数が8.1ppm/K以上とすれば、第1基板36と焦電基板20との熱膨張係数差Dが8.9ppm/K以下となる。また、第1基板36の熱膨張係数は、8.7ppm/K以上とすることが好ましく、9ppm/K以上とすることがより好ましい。また、第1基板36の熱膨張係数は12ppm/K以下であるものとしてもよい。
第2基板70は、焦電基板20の裏面側に接着されており、赤外線検出素子15を焦電基板20の裏面側から支持するものである。第2基板70の材料としては、例えば、シリコンやアルミナが挙げられる。第2基板70は、特に限定するものではないが、例えば、縦が1〜20mm、横が1〜20mm、厚さが0.1〜2mmである。この第2基板70には、焦電基板20側の面に図示しない電気配線がなされた回路基板として構成されている。この電気配線は、導電性接着剤81,導電性接着剤82と導通している。なお、第2基板70は、熱膨張係数が焦電基板20及び第1基板36の熱膨張係数よりも小さいものとすることが好ましい。第2基板70の熱膨張係数が焦電基板20の熱膨張係数よりも小さいことで、焦電基板20の熱膨張による変形を第1基板36だけでなく第2基板70でも抑えることができる。また、第2基板70の熱膨張係数が第1基板36の熱膨張係数よりも小さいことで、焦電基板20の変形をより抑制できる。これは、第2基板70が導電性接着剤81,82を介して焦電基板20と接着されている分だけ、第1基板36と比べて第2基板70の方が焦電基板20の変形を抑制する効果が小さくなりやすいためと考えられる。すなわち、第1基板36よりも第2基板70の熱膨張係数を小さくした方が、第1基板36と第2基板70との焦電基板20の変形を抑制する効果のバランスが取りやすくなると考えられる。
導電性接着剤81,82は、焦電基板20の裏面側と第2基板70とを接着して赤外線検出素子15を第2基板70に固定すると共に裏面電極51,52と第2基板70の電気配線とを電気的に導通するものである。具体的には、導電性接着剤81は第2基板70の電気配線と裏電極リード部56とを接着してこれらを電気的に導通しており、導電性接着剤82は第2基板70の電気配線と裏電極リード部57とを接着してこれらを電気的に導通している。導電性接着剤81,82の材料としては、例えば、エポキシ系やウレタン系の樹脂に銀などの金属又は炭素等を添加したものが挙げられる。導電性接着剤81,82は、特に限定するものではないが、例えば直径0.1〜0.5mm,厚さが10〜100μmである。
この導電性接着剤81,82は、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36と重なるように位置している(図4参照)。言い換えると、導電性接着剤81,82の少なくとも一部が、図3において第1基板36の真下に形成されている。さらに、導電性接着剤81,82は、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36からはみ出す部分がないように位置している。また、導電性接着剤81は、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに裏電極リード部56と重なるように位置しており、導電性接着剤82は、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに裏電極リード部57と重なるように位置している。これにより、裏電極リード部56,57及び導電性接着剤81,82を介して、裏面電極51と第2基板70との間や裏面電極52と第2基板70との間をより確実に導通させることができる。
続いて、こうして構成された赤外線検出モジュール10の動作について説明する。図6は、受光部61,62の電気的な接続状態を示す回路図である。図示するように、赤外線検出素子15の受光部61,62は、表面電極41,42が表電極リード部46によって接続されることで、直列に接続されている。そして、この直列接続された回路の両端である裏面電極51,52間の電圧が、裏電極リード部56,57を介して導電性接着剤81,82間の電圧として第2基板70に取り出せるようになっている。なお、本実施形態では、受光領域21,22の自発分極の向きは、図6においては互いに逆方向(図3においては同方向)になっている。この赤外線検出素子15において、焦電基板20は焦電体であるため、平常時であっても受光領域21,22には常に自発分極が起きている。しかし、受光部61,62が空気中の浮遊電荷を吸着して自発分極と電気的に釣り合うため受光領域21,22ともに見かけ上の電荷はゼロとなる。そのため、平常時には表面電極41と裏面電極51との間や表面電極42と裏面電極52との間には電圧が生じず、導電性接着剤81,82間には電圧は生じない。また、赤外線検出素子15を取り囲む雰囲気の赤外線量の変化(例えば周囲の温度の変化)により受光領域21,22の温度が共に同じように変化した場合には、受光領域21,22の自発分極がいずれも変化して電荷の偏りが生じ、表面電極41と裏面電極51との間や表面電極42と裏面電極52との間に同じ大きさの電圧が生じる。しかし、受光領域21,22の自発分極の向きは図6に示すように逆方向になっているため、両者の電圧は打ち消し合い、導電性接着剤81,82間にはやはり電圧が生じない。このように、赤外線検出素子15は自発分極の向きが逆向きに直列接続されるように受光部61,62を接続したデュアルタイプの素子であるため、平常時だけでなく赤外線検出素子15を取り囲む雰囲気の赤外線量の変化時にも導電性接着剤81,82間に電圧は生じず、ノイズで誤動作しにくい構成となっている。一方、例えば人が赤外線検出素子15の付近を横切る場合など、受光部61,62に照射される赤外線の量が均等でなくなる場合には、受光領域21,22の温度変化が異なる大きさとなる。そのため、この温度変化により表面電極41と裏面電極51との間に生じる電圧と表面電極42と裏面電極52との間に生じる電圧とが異なる値となって完全には打ち消し合わず、導電性接着剤81,82間には電圧が生じる。これにより、赤外線検出モジュール10は人体検知や火災検知などを行う赤外線検出装置として用いることができる。なお、赤外線検出素子15を赤外線検出装置として用いる場合には、例えば、裏電極リード部56,57とインピーダンス変換用のFET(電界効果型トランジスタ)とを接続して裏電極リード部56,57間の電圧を取り出しやすくすることができる。また、表面電極41,42を金黒からなる赤外線吸収層で覆って赤外線の吸収効率を高めたり、波長フィルターを設けて特定の波長の光のみが受光部21,22に到達するようにすることでノイズによる誤動作を防止したりすることができる。
次に、こうした赤外線検出モジュール10の製造方法について説明する。まず、赤外線検出素子15の製造方法について説明する。図7は、赤外線検出素子15の製造工程を模式的に示す断面図であり、図8は、赤外線検出素子15の製造工程を模式的に示す説明図である。まず、焦電基板20となる平坦な焦電基板120を用意する(図7(a))。この焦電基板120は、例えばオリエンテーションフラット(OF)を有し、焦電基板20を複数切り出すことができる大きさのウエハーである。焦電基板120の材料としては上述したものを用いることができる。焦電基板120の大きさは、特に限定するものではないが、例えば直径が50〜100mm、厚さが200μm〜1mmとすることができる。
続いて、焦電基板120の表面に表面金属層40となる表面金属層140を形成する(図7(b),図8(a))。表面金属層140は、焦電基板120の表面に表面金属層40となるパターンを複数形成したものである。表面金属層140の材料としては上述したものを用いることができる。表面金属層140の厚さは、特に限定するものではないが、例えば0.01〜0.2μmである。表面金属層140の形成は、例えば焦電基板120のうち表面金属層140を形成する部分以外をメタルマスクでカバーし、真空蒸着により行うことができる。また、他にスパッタリングやフォトリソグラフィ,スクリーン印刷を用いて表面金属層140を形成してもよい。
続いて、第1基板36となる第1基板136を焦電基板120の表面に接着層137を介して接着する(図7(c),図8(b))。この第1基板136は、オリエンテーションフラット(OF)を有し、第1基板36を複数切り出すことができる大きさのウエハーである。第1基板136の材料や厚さは上述したものを用いることができる。第1基板136の大きさは、特に限定するものではないが、例えば直径が50〜100mmとすることができる。この第1基板136には、例えばウォータージェット法により予め多数の矩形穴138を形成しておく(図8(a)参照)。なお、第1基板136は、ダイシング後に第1基板36となるものであり、矩形穴138は、ダイシング後に空洞38となるものである。接着層137は、上述した接着層37となるものであり、接着層137の材料は上述したものを用いることができる。焦電基板120と第1基板136との接着は例えば以下のように行う。まず、焦電基板120の表面金属層140を形成した側の面全体に接着層137を塗布し、接着層137の矩形穴138が表面金属層140上に位置するように位置合わせを行い、焦電基板120と第1基板136とを貼り合わせる。そして、接着層137を硬化させた後、接着層137のうち矩形穴138内に露出した部分を、例えばArイオンを使用したスパッタリングにより除去する。これにより、第1基板136を焦電基板120の表面に接着層137を介して接着した複合体115が得られる。
次に、複合体115のうち焦電基板120が所定の厚さになるまで焦電基板120の裏面を研磨し、その後、焦電基板120の裏面に裏面金属層50となる裏面金属層150を形成する(図7(d))。裏面金属層150は、焦電基板120の裏面に裏面金属層50となるパターンを複数形成したものである。裏面金属層150の形成は、表面金属層140のうち表面電極41,42となる部分がそれぞれ裏面電極51,52となる部分と対をなすように行う。裏面金属層150の材料としては上述したものを用いることができる。裏面金属層150の厚さは、特に限定するものではないが、例えば0.01〜0.2μmである。裏面金属層150の形成は、表面金属層140と同様の方法で行うことができる。これにより、複合体110は、多数の赤外線検出素子15の集合体となる。
そして、裏面金属層150を形成した複合体110から1つ1つの赤外線検出素子15を切り出す(図7(e),図8(c))。これにより、図1〜4に示した赤外線検出素子15が複数得られる。図8(c)の一点鎖線は、ダイシング時のカット線を示す。
続いて、赤外線検出素子15を第2基板70に実装する工程について説明する。図9は、赤外線検出素子15の実装工程を模式的に示す断面図である。上述した工程で赤外線検出素子15を用意すると、まず、裏電極リード部56,57と電気的に導通するように赤外線検出素子15の焦電基板20の裏面側に導電性接着剤181,182を塗布する(図9(a))。導電性接着剤181,182は、上述した導電性接着剤81,82となるものであり、導電性接着剤181,182の材料は上述したものを用いることができる。なお、導電性接着剤181,182は、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36と重なる位置に塗布する。具体的には、導電性接着剤181は、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36及び裏電極リード部56と重なる位置に塗布する。導電性接着剤182は、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36及び裏電極リード部57と重なる位置に塗布する。
続いて、第2基板70を用意し、裏電極リード部56,57と第2基板70とを電気的に導通させるように焦電基板20の裏面側に導電性接着剤181,182を介して第2基板70を貼り合わせる(図9(b))。なお、第2基板70には、あらかじ導電性接着剤181,182と導通するように電気配線を形成しておく。
そして、第1基板36と第2基板70との間に荷重を加え、導電性接着剤181,182を硬化させて導電性接着剤81,82とする(図9(c))。これにより、第2基板70に導電性接着剤81,82を介して赤外線検出素子15が接着され、図1〜4に示した赤外線検出モジュール10が得られる。なお、第1基板36と第2基板70との間に加える荷重により、導電性接着剤81,82は導電性接着剤181,182よりも焦電基板20の表面方向(図9の左右方向)に広がる。そのため、広がった後の状態で赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに導電性接着剤81,82が第1基板36からはみ出すことのないように考慮して、導電性接着剤181,182の塗布を行う。
ここで、第1基板36と第2基板70との間に荷重を加える際には、焦電基板20のうち導電性接着剤181,182が塗布されている部分には荷重による応力がかかる。また、導電性接着剤181,182を硬化させる際には、導電性接着剤181,182が収縮することにより応力がかかる場合がある。本実施形態では、導電性接着剤181,182が、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36と重なるように位置しているため、これらの応力を第1基板36で受けることができる。これにより、製造時の焦電基板20の変形をより抑制することができる。
以上詳述した赤外線検出素子15では、焦電基板20の表面側に第1基板36が接着されている。そして、第1基板36が焦電基板20と比べて熱膨張係数が小さいことで、焦電基板20の熱膨張による変形を第1基板36で抑制できる。また、熱膨張係数差Dが8.9ppm/K以下であることで、第1基板36と焦電基板20との熱膨張係数差が大きくなりすぎず、第1基板36と焦電基板20との熱膨張係数差による赤外線検出素子15の変形を抑制できる。これらにより、焦電基板の変形をより抑制することができる。
また、第1基板36は、表面電極41,42に対向する空洞38が形成されており、表面電極41,42の周辺を囲む枠形状に形成されている。そのため、第1基板が表面電極の周辺を完全には囲んでいないような形状である場合に比べて、第1基板36によって焦電基板20の変形を抑制する効果が高まる。
また、焦電基板20の厚さが10μm以下であり、厚さを薄くすると焦電基板20は変形しやすくなるため、第1基板を焦電基板と比べて熱膨張係数が小さくし且つ熱膨張係数差Dを8.9ppm/K以下として焦電基板20の変形をより抑制する意義が高い。
また、焦電基板20は、焦電係数が大きく性能指数が高いLTからなるものであるため、赤外線検出素子15の高感度化を図ることができる。さらに、焦電基板20は、LTのYオフカット板であるため、環境温度の変化により発生するポップコーンノイズを抑制できる。また、Zカット板よりも大口径のウエハーを焦電基板120として使用することができ、ウエハー1枚あたりのチップ取数(切り出すことのできる焦電基板20の数)を増やすことが可能となる。
また、赤外線検出モジュール10では、赤外線検出素子15と第2基板70とを接着する導電性接着剤81,82が、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36と重なるように位置している。こうすることで、導電性接着剤81,82の熱膨張により焦電基板が押し上げられるときに、導電性接着剤の熱膨張による焦電基板の変形をより抑制できる。
また、赤外線検出モジュール10は、焦電基板20の裏面に形成されて裏面電極51,52と電気的に導通し、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36と重なるように位置している裏電極リード部56,57を備えている。そして、導電性接着剤81,82は、裏電極リード部56,57と第2基板70とを接着して裏電極リード部56,57と第2基板70とを電気的に導通している。そのため、導電性接着剤81,82と裏面電極51,52とをより確実に導通させることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、導電性接着剤81,82は、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36からはみ出す部分がないものとしたが、導電性接着剤81,82の少なくとも一部が、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36と重なるように位置していればよく、導電性接着剤81,82の一部が第1基板36からはみ出しているものとしてもよい。
上述した実施形態では、第1基板36は、内部に矩形の空洞38を有しこの空洞38を四角く囲う枠形状に形成された部材としたが、表面電極41,42に対向する空洞が形成されていれば第1基板36をどのような形状としてもよい。例えば、空洞38が丸い形状であるものとしてもよいし、空洞38が第1基板36に完全には囲われておらず、一部が赤外線検出素子15の外周に面していてもよい。また、空洞38が表面電極41,42の全体と対向している必要はなく、表面電極41,42の一部と対向していればよい。
上述した実施形態では、焦電基板20の裏面側に導電性接着剤181,182を塗布してから焦電基板20と第2基板70とを貼り合わせるものとしたが、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36と重なる位置に導電性接着剤181,182が位置するように貼り合わせを行うものとすれば、これに限られない。例えば、第2基板70のうち焦電基板20と貼り合わせを行う側の面に導電性接着剤181,182を塗布してから、焦電基板20と第2基板70とを貼り合わせてもよい。
上述した実施形態では、焦電基板20の厚さは10μm以下としたが、焦電基板20の厚さが10μmを超えていてもよい。
上述した実施形態では、焦電基板20はLTのYオフカット板であるものとしたが、例えばLTのZ板など、Yオフカット板以外のLTを焦電基板20に用いてもよい。また、焦電基板20はLTに限らず焦電体であればよく、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛などの強誘電体セラミックスであってもよい。
上述した実施形態では、導電性接着剤81は、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに裏電極リード部56と重なるように位置しており、導電性接着剤82は、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに裏電極リード部57と重なるように位置しているものとしたが、これに限られない。例えば、導電性接着剤81と裏電極リード部56とが重ならないように位置していてもよい。また、導電性接着剤82と電極リード部57とが重ならないように位置していてもよい。あるいは、裏電極リード部56,57を備えないものとしてもよい。この場合、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに裏面電極51,52の一部が第1基板と重なるように位置しているものとして、導電性接着剤81と裏面電極51とが直接導通し、導電性接着剤82と裏面電極52とが直接導通していてもよい。
上述した実施形態では、焦電基板120の表面に表面金属層40となる表面金属層140を一体形成するものとしたが、表面金属層41,42と表電極リード部46とを別々に形成しても良い。同様に、上述した実施形態では、焦電基板120の裏面に裏面金属層50となる裏面金属層150を一体形成するものとしたが、裏面金属層51,52と裏電極リード部56,57とを別々に形成しても良い。例えば、裏電極リード部56,57については、1つ1つの赤外線検出素子を切り出したあとに形成してもよい。
上述した実施形態では、赤外線検出素子15はデュアルタイプとしたが、赤外線検出素子15を表面電極及び裏面電極が1つずつ形成されたシングルタイプや表面電極及び裏面電極が4つずつ形成されたクワッドタイプとしてもよい。図10は、シングルタイプの赤外線検出素子215を有する変形例の赤外線検出モジュール210の断面図である。なお、図10において、図3の赤外線検出モジュール10と同じ構成要素については同一の符合を付して、説明を省略する。赤外線検出モジュール210は、赤外線検出素子215を備えている。この赤外線検出素子215は、焦電基板20と、焦電基板20の表面に形成された表面金属層240と、焦電基板20の裏面に形成された裏面金属層250と、焦電基板20の側面に形成された側面金属層290と、焦電基板20の表面側に接着層237を介して接着された第1基板36と、を備えている。表面金属層240は、表面電極241と、表電極リード部246とを有している。表面電極241は空洞38内に形成されており、第1基板36は表面電極241を避けるように形成されている。表電極リード部246は、一部が図10における第1基板36の直下に形成され、表面電極241及び側面金属層290と導通している。裏面金属層250は、表面電極241と対向する裏面電極251と、裏電極リード部256,表電極リード部257と、を有している。裏電極リード部256は、裏面電極251と導通しており、赤外線検出素子215を第1基板側36から仮想的に透過したときに第1基板36と裏電極リード部256の少なくとも一部とが重なるように位置している。表電極リード部257は、裏面電極251とは導通せず、側面金属層290と導通している。表電極リード部257は、赤外線検出素子215を第1基板側36から仮想的に透過したときに第1基板36と少なくとも一部が重なるように位置している。側面金属層290は、表電極リード部246及び表電極リード部257と導通しており、これにより表面電極241と表電極リード部257とが導通している。また、表面電極241と、裏面電極251と、焦電基板20のうち表面電極241と裏面電極251とに挟まれた部分である受光領域221とで受光部261が形成されている。そして、導電性接着剤81は、裏電極リード部256と導通しており、赤外線検出素子215を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36及び裏電極リード部256と重なるように位置している。導電性接着剤82は、表電極リード部257と導通しており、赤外線検出素子215を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36及び表電極リード部257と重なるように位置している。表面電極241及び裏面電極251は、例えば長方形に形成され、表電極リード部246,257、裏電極リード部256は、例えば正方形に形成されている。こうして構成された赤外線検出モジュール210では、表面電極241と裏面電極251との間の電圧を、表電極リード部246,257、裏電極リード部256及び側面金属層290を介して導電性接着剤81,82間の電圧として第2基板70に取り出すことができる。この赤外線検出モジュール210においても、上述した実施形態と同様に焦電基板20の変形をより抑制することができる。なお、赤外線検出モジュール210は、表面金属層240及び裏面金属層250の形成パターンが異なるが、上述した赤外線検出モジュール10と同様の方法で製造することができる。また、側面金属層290の形成は、図7(e)と同様に1つ1つの赤外線検出素子215を切り出したあとで、表面金属層や裏面金属層と同様の方法で行えばよい。なお、シングルタイプやクワッドタイプの赤外線検出素子における表面電極及び裏面電極の形状については、例えば特開平2006−203009号公報に記載されている。また、クワッドタイプでは裏面電極の数に応じて導電性接着剤を4つとするなどとしてもよく、導電性接着剤の数は2つに限られない。
[実験例1]
実験例1として、本実施形態の赤外線検出モジュール10を上述した方法を用いて作製した。
まず、OF部を有し、直径4インチ,厚さが350μmのLT基板である焦電基板120(熱膨張係数は17ppm/K)を用意した(図7(a))。焦電基板120は48°Yオフカット板(カット角θ=48°)を用いた。この焦電基板120は、ダイシング後に焦電基板20となるものである。続いて、この焦電基板120の表面にニッケル及びクロムからなる表面金属層140を多数形成した(図7(b),図8(a))。表面金属層140の形成は、焦電基板120のうち表面金属層140を形成する部分以外をメタルマスクでカバーし、真空蒸着により行った。なお、真空蒸着は、まずクロムを5Å/sの成膜レートで厚さ0.02μmとなるまで行い、続いてニッケルを10Å/sの成膜レートで厚さ0.1μmとなるまで行った。真空蒸着による成膜時の圧力は2.7×10-4Pa,焦電基板120の温度は約100℃であった。これにより、厚さ0.12μmの表面金属層140を形成した。なお、表面金属層140のパターンは、ダイシング後に図1,2,4に示した形状の表面金属層40となるように形成した。具体的には、表面電極41,42となる部分が縦2mm,横0.5mm、表電極リード部46となる部分が縦0.1mm,横0.5mmの大きさとなるように形成した。
続いて、OF部を有し、直径4インチ,厚さが500μmのガラス基板である第1基板136(熱膨張係数は12ppm/K)を用意し、縦2.1mm,横2.1mmの矩形穴138をウォータージェット法により多数形成した(図8(a)参照)。なお、第1基板136は、ダイシング後に第1基板36となるものであり、矩形穴138は、ダイシング後に空洞38となるものである。
次に、焦電基板120の表面にエポキシ接着剤を1μm塗布し、第1基板136の各矩形穴138の中に各表面電極41,42となる部分が入るようにアライメントし、貼り合わせた。そして、プレス圧着によりエポキシ接着剤の厚さを0.1μmとし、第1基板136と貼り合わせた焦電基板120を200℃で1時間放置してエポキシ接着剤を硬化させて接着層137を形成した(図7(c),図8(b))。接着層137は、ダイシング後に接着層37になるものである。その後、Arイオンを使用したスパッタリングにより表面金属層140のうち表面電極41,41となる部分に付着したエポキシ接着剤を含め、矩形穴138内のエポキシ接着剤を除去した。
そして、得られた複合体を上下逆にし、第1基板136を炭化珪素で作成した研磨治具に接着固定し、焦電基板120のうち第1基板136を貼り合わせていない面を固定砥粒の研削機で研削加工し、焦電基板120の厚みを50μmまで薄くした。さらに、その面をダイヤモンド砥粒で研磨加工し、厚みを12μmまで薄くした。その後、その面を遊離砥粒及び不織布系研磨パットを用いて仕上げ研磨を行い、焦電基板120の厚みが10μmとなるまで研磨した。なお、仕上げ研磨は、ダイヤモンド砥粒による研磨加工で焦電基板120に生じた加工変質層を除去するために行った。
このようにして焦電基板120を研磨した後、焦電基板120の裏面(表面金属層140が形成されていない面)に裏面金属層150を多数形成した(図7(d))。この工程は、表面金属層140の形成と同様の材料及び条件で行った。なお、裏面金属層150のパターンは、ダイシング後に図1〜4に示した形状の裏面面金属層50となるように形成した。具体的には、裏面電極51,52となる部分が縦2mm,横0.5mm、裏電極リード部56,57となる部分が縦0.5mm,横0.5mmの大きさとなるように形成した。そして、裏面金属層150を形成した複合体110から縦2.5mm×横2.5mmの赤外線検出素子15をダイシングにより切り出した(図7(e),図8(c))。
続いて、裏面電極40と電気的に導通するように赤外線検出素子15の焦電基板20の裏面側に、エポキシ系接着剤に銀粒子が分散している導電性接着剤181,182を塗布した(図9(a))。この塗布は、導電性接着剤181,182が、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36と重なる位置に行った。具体的には、導電性接着剤181は、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36及び裏電極リード部56と重なる位置に塗布した。導電性接着剤182は、赤外線検出素子15を第1基板36側から仮想的に透過したときに第1基板36及び裏電極リード部57と重なる位置に塗布した。
続いて、第2基板70として、シリコン基板(熱膨張係数は3ppm/K)上に電気配線を施した回路基板を用意し、裏電極リード部56,57と第2基板70とを電気的に導通させるように焦電基板20の裏面側に導電性接着剤181,182を介して第2基板70を貼り合わせた(図9(b))。なお、貼り合わせの際には、第2基板70の電気配線上に導電性接着剤181,182が位置するようにアライメントした。その後、第1基板36と第2基板70との間に1kgf程度の荷重をかけて第2基板70と赤外線検出素子15とを固定し、この状態で100℃で1時間放置して導電性接着剤181,182を硬化させて、第2基板70に導電性接着剤81,82を介して赤外線検出素子15を接着した(図9(c))。これにより、図1〜4に示した形態の赤外線検出モジュール10を得た。
[実験例2〜10]
第1基板36となるガラス基板の熱膨張係数が実験例1と異なる点以外は、実験例1と同様にして、実験例2〜10の赤外線検出モジュール10を作製した。
[実験例11]
第2基板70として、アルミナ基板(熱膨張係数:7ppm/K)上に電気配線を施した回路基板を用いた以外は実験例1と同様にして、実験例11の赤外線検出モジュール10を作製した。
[実験例12〜20]
第1基板36となるガラス基板の熱膨張係数が実験例11と異なる点以外は実験例11と同様にして、実験例12〜20の赤外線検出モジュール10を作製した。
[実験例21]
実験例21として、導電性接着剤が、赤外線検出素子を第1基板側から仮想的に透過したときに第1基板と重ならないように位置している赤外線検出モジュールを作製した。この実験例21の赤外線検出モジュール310の断面図を図11に示す。図11において、上述した赤外線検出モジュール10と同じ構成要素については同じ符号を付し、説明を省略する。この赤外線検出モジュール310の赤外線検出素子315では、焦電基板20の裏面に形成された裏面金属層が裏面電極51,裏面電極52のみであり、裏電極リード部56,57が形成されていない。そして、導電性接着剤381は裏面電極51と第2基板70とを直接導通し、導電性接着剤382は裏面電極52と第2基板70とを直接導通している。そして、赤外線検出素子315を第1基板36側から仮想的に透過したときに、導電性接着剤381は裏面電極51と重なるように位置し、導電性接着剤382は裏面電極52と重なるように位置している。そのため、赤外線検出素子315を第1基板36側から仮想的に透過したときに、導電性接着剤381,382はいずれも第1基板36と重ならないように位置している。
この実験例21の赤外線検出モジュール310を、実験例1と同様の工程により製造した。すなわち、裏面金属層の形成パターンと、導電性接着剤を塗布する位置とが異なる点以外は、実験例1と同様にして赤外線検出モジュール310を製造した。
[実験例22]
第2基板70として、アルミナ基板(熱膨張係数:7ppm/K)上に電気配線を施した回路基板を用いた以外は実験例21と同様にして、実験例22の赤外線検出モジュール310を作製した。
[実験例23]
第1基板36となるガラス基板の熱膨張係数が実験例21と異なる点以外は、実験例21と同様にして、実験例23の赤外線検出モジュール310を作製した。
実験例1〜23における第1基板36の熱膨張係数,熱膨張係数差D,第2基板70の材質,第2基板70の熱膨張係数を表1にまとめて示す。なお、実験例1〜5,11〜15,21〜23が本発明の実施例に相当し、それ以外が比較例に相当する。
[評価試験1]
実験例1〜23の赤外線検出モジュールについて、圧電ノイズの発生有無を測定した。なお、圧電ノイズとは、熱応力によって焦電基板20が変形することによる焦電基板20の圧電効果によって発生する電圧である。測定は、各赤外線検出モジュールに対して、ヒートサイクル試験を行うことにより行った。ヒートサイクル試験は、次のような手順で行った。各赤外線検出モジュールを環境試験器に収容し、環境試験器内の温度を−10〜80℃まで周期的に変化させた。具体的には、図12に示すように温度を変化させ、これを1サイクルとして、計100サイクルの試験を行った。そして、その間に圧電ノイズが発生したか否かを測定した。なお、各実験例について赤外線検出モジュールを10個ずつ用意し、10個のうち圧電ノイズが発生した個数を調べた。
評価試験1の結果を表1に示す。表1からわかるように、第1基板が焦電基板と比べて熱膨張係数が小さく、熱膨張係数差Dが8.9ppm/K以下、より具体的には熱膨張係数差Dが5ppm/K以上8.9ppm/K以下(=第1基板36の熱膨張係数が8.1ppm/K以上12ppm/K以下)である実験例のうち、実験例1〜5,11〜15においては圧電ノイズが発生しておらず、実験例21〜23においては圧電ノイズが発生したのは1個であった。一方、熱膨張係数差Dが8.9ppm/K超過である実験例6〜10,16〜20については、実験例1〜5,11〜15,21〜23と比べて圧電ノイズが発生した個数が多く、熱膨張係数差Dが大きいほど圧電ノイズが発生した個数が多くなる傾向がみられた。これらの結果から、第1基板が焦電基板と比べて熱膨張係数が小さく、熱膨張係数差Dが8.9ppm/K以下であることで、熱膨張による焦電基板20の変形をより抑制できることがわかった。なお、熱膨張係数差Dが8.9ppm/K超過(=第1基板36の熱膨張係数が8.1ppm/K未満)であるときに圧電ノイズが発生しやすいのは、第1基板36と焦電基板20との熱膨張係数差が大きくなりすぎ、第1基板36と焦電基板20との熱膨張係数差によって焦電基板20及び赤外線検出素子15に反りなどの変形が生じるためと考えられる。
また、実験例21〜23に比べて実験例1〜5,11〜15の方が圧電ノイズ発生数が少ないのは、以下のような理由によると考えられる。すなわち、実験例21〜23では、赤外線検出素子315を第1基板36側から仮想的に透過したときに、導電性接着剤381,382はいずれも第1基板36と重ならないように位置している。そのため、導電性接着剤381,382の熱膨張により焦電基板20が押し上げられるときに、実験例1と比べて焦電基板20が変形して圧電ノイズが生じやすいと考えられる。実験例1〜5,11〜15では、導電性接着剤の真上に第1基板36が存在することで、導電性接着剤の熱膨張による焦電基板20の変形をより抑制できると考えられる。
Figure 2013084787
なお、図10に示した変形例の赤外線検出モジュール210の構成において、第1基板36及び第2基板70の材質及び熱膨張係数を実験例1〜20と同様にした赤外線検出モジュールを作製し、上記評価試験と同等の試験を実施したが、結果は表1の実験例1〜20と同じであった。
本出願は、2011年12月5日に出願された日本国特許出願第2011−265832号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
本発明は、例えば人体検知センサーなどのセキュリティー用や、火災検知センサーなどのガス検知用に用いられる、赤外線検出装置に利用可能である。
10,210,310 赤外線検出モジュール、15,215,315 赤外線検出素子,20,120 焦電基板、21,22,221 受光領域、36,136 第1基板、37,137,237 接着層、38 空洞、40,140,240 表面金属層、41,42,241 表面電極、46,246,257 表電極リード部、56,57,256 裏電極リード部、50,150,250 裏面金属層、51,52,251 裏面電極、61,62,261 受光部、70 第2基板、81,82,181,182,381,382 導電性接着剤、110,115 複合体、138 矩形穴、290 側面金属層。

Claims (7)

  1. 焦電基板と、
    前記焦電基板の表面に形成された表面電極と、
    前記表面電極と対向するように該焦電基板の裏面に形成された裏面電極と、
    前記焦電基板の表面側に接着され前記焦電基板と比べて熱膨張係数が小さい第1基板と、
    を備え、
    前記第1基板は、前記表面電極に対向する空洞が形成されており、前記焦電基板の熱膨張係数から該第1基板の熱膨張係数を引いた熱膨張係数差Dが8.9ppm/K以下である、
    赤外線検出素子。
  2. 前記焦電基板は、厚さが10μm以下である、
    請求項1に記載の赤外線検出素子。
  3. 前記焦電基板は、タンタル酸リチウムの単結晶を、前記電極の面に沿った方向と一致するX軸の回りにY軸からZ軸方向にカット角θ(0°<θ<90°,90°<θ<180°)だけ回転させた角度で切り出したYオフカット板である、
    請求項1又は2に記載の赤外線検出素子。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の赤外線検出素子と、
    前記焦電基板の裏面側に接着され、該焦電基板と比べて熱膨張係数が小さい第2基板と、
    を備えた赤外線検出モジュール。
  5. 請求項4に記載の赤外線検出モジュールであって、
    前記赤外線検出素子と前記第2基板とを接着して前記裏面電極と該第2基板とを電気的に導通し、前記赤外線検出素子を前記第1基板側から仮想的に透過したときに前記第1基板と少なくとも一部が重なるように位置している導電性接着剤、
    を備えた赤外線検出モジュール。
  6. 前記第2基板は、熱膨張係数が前記焦電基板及び前記第1基板の熱膨張係数よりも小さい、
    請求項4又は5に記載の赤外線検出モジュール。
  7. 焦電基板と、前記焦電基板の表面に形成された表面電極と、前記表面電極と対向するように該焦電基板の裏面に形成された裏面電極と、前記焦電基板の表面側に接着され前記表面電極に対向する空洞が形成されており、前記焦電基板と比べて熱膨張係数が小さく前記焦電基板の熱膨張係数から該第1基板の熱膨張係数を引いた熱膨張係数差Dが8.9ppm/K以下である第1基板と、を備えた赤外線検出素子を、導電性接着剤を介して第2基板に接着した赤外線検出モジュールの製造方法であって、
    (a)前記赤外線検出素子を用意する工程と、
    (b)前記赤外線検出素子と前記第2基板とを電気的に導通させるように前記焦電基板の裏面側に前記導電性接着剤を介して該第2基板を貼り合わせる工程と、
    (c)前記第1基板と前記第2基板との間に荷重を加えて、該第2基板に前記導電性接着剤を介して前記赤外線検出素子を接着する工程と、
    を含み、
    前記工程(b)では、前記赤外線検出素子を前記第1基板側から仮想的に透過したときに該第1基板と少なくとも一部が重なる位置に前記導電性接着剤が位置するように前記貼り合わせを行う、
    赤外線検出モジュールの製造方法。
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