次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1(a)は本発明の一実施形態である焦電素子10の平面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図、図2(a)は図1(b)のB−B断面図、図2(b)は図1(b)のC−C断面図である。この焦電素子10は、2つの受光部61,62を備えたデュアルタイプの焦電素子として構成されており、焦電基板20と、焦電基板20を支持する支持部材30と、焦電基板20の表裏に形成された表面金属層40及び裏面金属層50と、を備えている。
焦電基板20は、焦電体からなる基板である。この焦電基板20は、図1(a),(b)に示すように中央に空隙28が設けられており、この空隙28によって焦電基板20aと焦電基板20bとに分割されている。空隙28の幅(=焦電基板20aと焦電基板20bとの距離)は、特に限定するものではないが、例えば0.1μm〜0.5μmである。焦電基板20の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛などの強誘電体セラミックスや、タンタル酸リチウムなどの単結晶が挙げられる。なお、タンタル酸リチウムなどの単結晶を用いる場合、カット角は任意の角度を選択できるが、Z板(90°Yカット板)に近い方が焦電性が高いため好ましい。この焦電基板20は、特に限定するものではないが、例えば、縦が0.1〜5mm,横が0.1〜5mm,厚さが0.1〜10μmである。
表面金属層40は、焦電基板20の表面に形成されており、平面視で縦長の長方形に形成された2つの表面電極41,42と、表面電極41と導通し平面視で正方形に形成された導電線46と、表面電極42と導通し平面視で正方形に形成された導電線47とを備えている。この表面金属層40の材料としては、例えばニッケルやクロム,金などの金属が挙げられ、赤外線吸収率が高いほど好ましい。表面金属層40の厚さは、特に限定するものではないが、例えば0.01〜0.2μmである。また、表面金属層40は、焦電基板20の表面上にクロムからなる金属層を形成し、さらにその上にニッケルからなる金属層を形成した2層構造であってもよい。
裏面金属層50は、焦電基板20の裏面に形成されており、平面視で縦長の長方形に形成された2つの裏面電極51,52と、裏面電極51及び裏面電極52を導通し平面視で横長の長方形に形成された導電線56とを備えている。裏面電極51は、表面電極41と同一形状であり、焦電素子10を焦電基板20の表面側から仮想的に透視したときに表面電極41と重複し、位置が一致するように形成されている。同様に、裏面電極52は、表面電極42と同一形状であり、焦電素子10を焦電基板20の表面側から仮想的に透視したときに表面電極42と重複し、位置が一致するように形成されている。導電線56は空隙28を架け渡すように形成されており、図1(a)に示すように導電線56の一部は焦電基板20の表面側に露出している。裏面金属層50の材料としては、上述した表面金属層40と同様のものを用いることができる。表面金属層40の厚さは、特に限定するものではないが、例えば0.01〜0.2μmである。
受光部61は、一対の電極(表面電極41及び裏面電極51)と、焦電基板20aのうち表面電極41と裏面電極51とに挟まれた部分である受光領域21とで形成されたものである。同様に、受光部62は、一対の電極(表面電極42及び裏面電極52)と、焦電基板20bのうち表面電極42と裏面電極52とに挟まれた部分である受光領域22とで形成されたものである。この受光部61,62では、赤外線の照射による温度変化が生じると、一対の電極間の電圧が変化する。例えば、受光部61に赤外線が照射されると、表面電極41及び受光領域21が赤外線を吸収して温度変化が生じる。そして、これによる受光領域21の自発分極の変化が、表面電極41と裏面電極51との間の電圧の変化として現れるようになっている。なお、上述した空隙28は、この受光部61,62の間に位置している。
支持部材30は、焦電基板20の裏面に形成され、受光部61,62との間に空間が形成されるように焦電基板20を支持する部材である。具体的には、支持部材30と受光部61との間に空間38aが形成され、支持部材30と受光部62との間に空間38bが形成されている。この支持部材30は、第1支持部31a,31bと、第2支持部32と、接着層34と、支持基板36とを備えている。第1支持部31a,31bは、焦電基板20のうち受光部61,62よりも外側を支持するものである。具体的には、図1(b)に示すように第1支持部31aが焦電基板20のうち受光部61よりも左外側を支持し、第1支持部31bが焦電基板20のうち受光部61よりも右外側を支持している。なお、第1支持部31a,31bを併せて第1支持部31と表記する場合がある。第2支持部32は、図1(a),(b)に示すように、空隙28を架け渡すようにして焦電基板20を支持している。具体的には、図2(b)に示すように第2支持部32の支持面33が焦電基板20aの裏面と接してこれを支持すると共に、図示は省略したが同様に支持面33が焦電基板20bの裏面と接してこれを支持している。なお、支持面33は略平面状であるが、図2(b)に示すように導電線56の形状に合わせて窪みが設けられており、支持面33と導電線56とは接している。これにより、第2支持部32は、導電線56ごと焦電基板20を支持している。また、第2支持部32は、焦電基板20のうち受光部61,62の間に位置しており、図1(b)に示すように裏面電極51,52の直下には存在しない。このため、支持面33は、焦電素子10を焦電基板20の表面側から仮想的に透視したとき、表面電極41と裏面電極51との重複部分や表面電極42と裏面電極52との重複部分と重ならないようになっている。第1支持部31及び第2支持部32の材料としては、例えば、二酸化珪素が挙げられる。第1支持部31及び第2支持部32の厚さ(図1(b)の上下方向の高さ)は、特に限定するものではないが、例えば、0.1〜1μmである。
接着層34は、第1支持部31及び第2支持部32と支持基板36とを接着するものであり、支持基板36の表面全面に形成されている。接着層34の材料としては、例えば、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤を固化させたものが挙げられる。接着層34の厚さは、特に限定するものではないが、例えば、0.1〜1μmである。なお、接着層34で第1支持部31及び第2支持部32と支持基板36とを接着する代わりに、陽極接合、表面活性化法などの直接接合法を用いても良い。支持基板36は、接着層34を介して第1支持部31及び第2支持部32に接着される平板状の基板である。支持基板36の材料としては、例えば、ガラスやタンタル酸リチウム,ニオブ酸リチウムが挙げられる。支持基板36は、特に限定するものではないが、例えば、縦が0.1〜5mm,横が0.1〜5mm,厚さが0.15〜0.5mmである。第1支持部31及び第2支持部32,接着層34,支持基板36は、いずれも焦電基板20よりも熱伝導率が低い材料であることが好ましい。この理由については後述する。
続いて、こうして構成された焦電素子10の動作について説明する。図3は、焦電素子10の受光部61,62の電気的な接続状態を示す回路図である。図示するように、焦電素子10の受光部61,62は、裏面電極51,52が導電線56によって接続されることで、直列に接続されている。そして、この直列接続された回路の両端である表面電極41,42間の電圧が、導電線46,47間の電圧として取り出せるようになっている。なお、本実施形態では、受光領域21,22の自発分極の向きは、図3においては互いに逆方向(図1(b)においては同方向)になっている。この焦電素子10において、焦電基板20は焦電体であるため、平常時であっても受光領域21,22には常に自発分極が起きている。しかし、受光部61,62が空気中の浮遊電荷を吸着して自発分極と電気的に釣り合うため受光領域21,22ともに見かけ上の電荷はゼロとなる。そのため、平常時には表面電極41と裏面電極51との間や表面電極42と裏面電極52との間には電圧が生じず、導電線46,47間には電圧は生じない。また、焦電素子10を取り囲む雰囲気の赤外線量の変化(例えば周囲の温度の変化)により受光領域21,22の温度が共に同じように変化した場合には、受光領域21,22の自発分極がいずれも変化して電荷の偏りが生じ、表面電極41と裏面電極51との間や表面電極42と裏面電極52との間に同じ大きさの電圧が生じる。しかし、受光領域21,22の自発分極の向きは図3に示すように逆方向になっているため、両者の電圧は打ち消し合い、導電線46,47間にはやはり電圧が生じない。このように、焦電素子10は自発分極の向きが逆向きに直列接続されるように受光部61,62を接続したデュアルタイプの素子であるため、平常時だけでなく焦電素子10を取り囲む雰囲気の赤外線量の変化時にも導電線46,47間に電圧は生じず、ノイズで誤動作しにくい構成となっている。一方、例えば人が焦電素子10の付近を横切る場合など、受光部61,62に照射される赤外線の量が均等でなくなる場合には、受光領域21,22の温度変化が異なる大きさとなる。そのため、この温度変化により表面電極41と裏面電極51との間に生じる電圧と表面電極42と裏面電極52との間に生じる電圧とが異なる値となって完全には打ち消し合わず、導電線46,47間には電圧が生じる。これにより、焦電素子10は人体検知や火災検知などを行う赤外線検出装置として用いることができる。なお、焦電素子10を赤外線検出装置として用いる場合には、例えば、導電線46,47とインピーダンス変換用のFET(電界効果型トランジスタ)とを接続して導電線46,47間の電圧を取り出しやすくすることができる。また、表面電極41,42を金黒からなる赤外線吸収層で覆って赤外線の吸収効率を高めたり、波長フィルターを設けて特定の波長の光のみが受光部41,42に到達するようにすることでノイズによる誤動作を防止したりすることができる。
次に、こうした焦電素子10の製造方法について説明する。図4及び図5は、焦電基板10の製造工程を模式的に示す断面図である。まず、焦電基板20となる平坦な焦電基板120を用意する(図4(a))。この焦電基板120は、例えばオリエンテーションフラット(OF)を有し、焦電基板20を複数切り出すことができる大きさのウエハーである。焦電基板120の材料としては上述したものを用いることができる。焦電基板120の大きさは、特に限定するものではないが、例えば直径が50〜100mm、厚さが200〜500μmとすることができる。
続いて、焦電基板120の裏面に裏面金属層50となる裏面金属層150を形成する(図4(b))。裏面金属層150は、焦電基板120の裏面に裏面金属層50となるパターンを複数形成したものである。裏面金属層150の材料としては上述したものを用いることができる。裏面金属層150の厚さは、特に限定するものではないが、例えば0.01〜0.2μmである。裏面金属層150の形成は、例えば焦電基板120のうち裏面金属層150を形成する部分以外をメタルマスクでカバーし、真空蒸着により行うことができる。また、他にスパッタリングやフォトリソグラフィ,スクリーン印刷を用いて裏面金属層150を形成してもよい。
次に、焦電基板120の裏面に、第1支持部31,第2支持部32となる第1支持部131,第2支持部132を形成する(図4(c))。第1支持部131,第2支持部132は、裏面金属層150との位置関係が図1,2の裏面金属層50と第1支持部31,第2支持部32との位置関係と同じになり空間38a,38bが形成されるよう、焦電基板120の裏面にパターンを複数形成したものである。第1支持部131,第2支持部132の材料としては上述したものを用いることができる。第1支持部131,第2支持部132の厚さは、特に限定するものではないが、例えば0.1〜1μmである。第1支持部131,第2支持部132の形成は、例えば次のように行う。まず、スパッタリングにより焦電基板120の裏面全体に第1支持部131,第2支持部132の材料(例えば二酸化珪素)からなる層を形成する。そして、フォトリソグラフィにより第1支持部131,第2支持部132として残したい部分にのみレジスト膜を形成してエッチングマスクとした後、エッチングによりエッチングマスクがされていない部分(空間38a,38bとなる部分)を除去する。
そして、第2支持部132の裏面を研磨して、第1支持部131の裏面と第2支持部132の裏面とが同一平面上になるようにする(図4(d))。図4(c)からもわかるように、第2支持部132は、一部が裏面金属層150(裏面金属層150のうち導電線56となる部分)に接するように形成されるため、裏面金属層150の厚さ分だけ他より下側に突出する部分が生じることになる。そこで、第2支持部132の裏面を研磨することで、この突出する部分をなくして第2支持部132の裏面を平面とし、第1支持部131の裏面と第2支持部132の裏面とが同一平面上に位置するようにするのである。なお、第2支持部132の裏面のみを研磨する場合に限らず、第1支持部131の裏面と第2支持部132の裏面とをともに研磨してもよい。
次に、支持基板36となる支持基板136を用意し、支持基板136の表面と第1支持部131,第2支持部132の裏面との一方又は両方に接着層34となる接着剤を塗布する。そして、支持基板136の表面と第1支持部131,第2支持部132の裏面とを貼り合わせ、接着剤を硬化させて接着層134とする(図4(e))。これにより、第1支持部131,第2支持部132,接着層134,支持基板136を有する支持部材130と、焦電基板120と,裏面金属層150とからなり、空間38a,38bとなる空間138a,138bが形成された複合体110が得られる。なお、上述したように第1支持部131の裏面と第2支持部132の裏面とは同一平面上に位置しているため、支持基板136と第1支持部131,第2支持部132の裏面との貼り合わせを容易に行うことができる。接着層134の材料としては、上述したものを用いることができる。また、接着層134の厚さは、特に限定するものではないが、例えば0.1〜1μmである。
複合体110を形成すると、複合体110のうち焦電基板120の表面を研磨して厚さを薄くする(図5(a))。研磨後の焦電基板120の厚さは、特に限定するものではないが、例えば0.1〜10μmである。研磨の方法としては、例えばCMP研磨が挙げられる。
焦電基板120を研磨すると、焦電基板120の表面に表面金属層40となる表面金属層140を形成する(図5(b))。表面金属層140は、焦電基板120の表面に表面金属層40となるパターンを複数形成したものである。表面金属層140の形成は、複合体110を焦電基板120の表面側から仮想的に透視したときに、表面電極41,42となる部分がそれぞれ裏面電極51,52となる部分と重複し位置が一致するように行う。表面金属層140の材料としては上述したものを用いることができる。表面金属層140の厚さは、特に限定するものではないが、例えば0.01〜0.2μmである。表面金属層140の形成は、裏面金属層150と同様の方法で行うことができる。
続いて、焦電基板120が空隙28を持つようにこれを分割する(図5(c))。この空隙28は受光部61,62となる部分の間に形成する。なお、空隙28の幅(図5(c))における左右方向の長さ)や空隙28を形成する位置は、第2支持部132が空隙28を架け渡すように焦電基板120を支持することができるように定めておく。空隙28の形成は、例えばダイシング(ハーフダイシング)により焦電基板120を表面側から切削していき、焦電基板120のみを分割することで行う。これにより、複合体110は、多数の焦電素子10の集合体となる。なお、ダイシングは、例えばブレードを用いて行ってもよいし、レーザーダイシングや超音波ダイシングにより行ってもよい。
そして、空隙28を形成した複合体110から1つ1つの焦電素子10を切り出す(図5(d))。これにより、図1〜2に示した焦電素子10が複数得られる。
以上詳述したように、本実施形態の焦電素子10では、受光部61,62よりも焦電基板20の外側を支持する第1支持部31だけでなく、受光部61,62の間を支持する第2支持部32によっても焦電基板20が支持されている。このため、第1支持部31のみで焦電基板20を支持する場合と比べて、焦電素子10の機械的強度を向上させることができる。なお、機械的強度が向上することで、例えば焦電基板20が割れにくいなど焦電素子10の耐久性が向上する効果や、必要な機械的強度を保ちつつ焦電基板20をより薄くして検出感度を向上させることができる効果が得られる。また、焦電素子10に外部から振動が加わった場合に発生するノイズを抑制できる。すなわち、外部から加わった振動により焦電基板20が振動すると、焦電基板20の圧電効果により自発分極が変化して受光部61,62間には電圧が生じ、これがノイズとなる。しかし、第2支持部32が焦電基板を支持していることで、外部からの振動による焦電基板20の振動の振幅が小さく抑制され、ノイズが抑制される。
また、焦電基板20は2つの受光部61,62の間に空隙28を持つように焦電基板20a,20bに分割されており、第2支持部32は空隙28を架け渡すように焦電基板20を支持している。このため、第2支持部32により焦電素子10の機械的強度を向上させつつ、焦電基板20を介した受光部61,62間の熱伝導を抑制できる。ここで、受光部61,62間の熱伝導が起こりやすいと、受光部61,62に照射される赤外線の量が均等でないにもかかわらず受光部61,62の一方から他方へ熱伝導が起こることにより受光領域21,22の温度変化の大きさが同程度となってしまう場合がある。この場合、背景の赤外線量が変化した場合と同様に表面電極41と裏面電極51との間の電圧と表面電極42と裏面電極52との間に生じる電圧とが打ち消しあって導電線46,47間の電圧が小さくなってしまい、焦電素子10が誤不動作となりやすい。本実施形態の焦電素子10では、空隙28が存在することで受光部61,62間の熱伝導が起こりにくくなるため、このような誤不動作を防止でき、検出感度が向上する。
さらに、第2支持部32の支持面33は、焦電素子10を焦電基板20の表面側から仮想的に透視したときに、受光部61,62をなす一対の電極同士の重複部分と重ならないように構成されている。このため、受光部61,62をなす一対の電極同士の重複部分と重なる位置に第2支持部32の支持面33がある場合と比較して、受光部61,62から第2支持部32への熱伝導が抑制される。そして、受光部61,62から第2支持部32への熱伝導が抑制されると、受光領域21,22の熱が第2支持部32に逃げにくくなるため、受光領域21,22の温度が変化しやすくなる。これにより、わずかな赤外線量の変化であっても温度変化により表面電極41と裏面電極51との間や表面電極42と裏面電極52との間に電圧が生じるため、焦電素子10の検出感度が向上する。
さらにまた、支持部材30を、焦電基板20と比べて熱伝導率が低い材料で形成すれば、焦電基板20の熱が支持部材30に逃げにくくなるため、焦電素子10の検出感度をさらに向上させることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、支持部材30は第1支持部131,第2支持部132,接着層34,支持基板36からなるものとしたが、支持部材30は受光部61,62との間に空間38a,38bが形成されるように焦電基板20を支持し、焦電基板20のうち受光部61,62よりも外側を支持する第1支持部と受光部61,62の間を支持する第2支持部とを有するものであればよい。例えば、支持基板36が第1支持部,第2支持部を有していてもよい。この場合の変形例の焦電素子210を図6に示す。なお、図6(a)は、焦電素子210における図1(b)に相当する断面図であり、図6(b)は、図6(a)のD−D断面図である。図6において、図1〜図2に示した焦電素子10と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。図示するように、焦電素子210における支持部材230は、接着層234と、接着層234により焦電基板20の裏面に接合された支持基板236と、を備えている。支持基板236は、第1支持部231a,231bと、第2支持部232とを有している。接着層234は、第1支持部231aと焦電基板20の裏面とを接合する接着層234aと、第1支持部231bと焦電基板20の裏面とを接合する接着層234bと、第2支持部232と焦電基板20の裏面とを接合する接着層234cと、を有している。そして、この第1支持部231aと接着層234aとが、焦電素子10における第1支持部31aに相当する。同様に、第1支持部231bと接着層234bとが焦電素子10における第1支持部31bに相当し、第2支持部232と接着層234cとが焦電素子10における第2支持部32に相当する。このように、この支持部材230と図1に示した支持部材30とは、構成要素は異なるものの形状は同じである。この焦電素子210においても、本実施形態の焦電素子10と同様の効果を得ることができる。この焦電素子210は、例えば次のように製造することができる。まず、図4(a),(b)と同様の工程を行う。そして、図4(c)〜(e)の代わりに、支持基板236となる平坦な支持基板を用意し、フォトリソグラフィにより支持基板236として残したい部分にのみレジスト膜を形成してエッチングマスクとする。その後、エッチングによりエッチングマスクがされていない部分(空間38a,38bとなる部分)を除去する。これにより、支持基板236には第1支持部231a,231b及び第2支持部232が形成される。なお、エッチング以外にも、プレス成形やレーザー加工を用いて支持基板236に第1支持部231a,231b及び第2支持部232を形成してもよい。そして、接着層234a〜234cとなる接着剤により支持基板236(第1支持部231a,231b及び第2支持部232)の上面と焦電基板120の裏面とを貼り合わせて複合体を形成する。そして、図5(a)〜(d)と同様の工程により図6の焦電素子210を形成する。なお、焦電素子210では、図6(b)に示すように接着層234cの厚さが導電線56の厚さよりも厚く、第2支持部232の支持面233は平面状であるものとしたが、接着層234cが導電線の厚さよりも薄くてもよい。この場合、第2支持部232の支持面233に窪みを設けて導電線56がその窪みの中に収まるようにすればよい。そのような窪みは、例えばエッチングにより形成してもよい。
上述した実施形態では、図1(b)及び図2に示すように第1支持部31と第2支持部32とは分離しており、空間38a,38bは焦電素子10の外部空間と通じているものとしたが、第1支持部31が焦電基板20のうち複数の受光部61,62よりも外側を支持しており、第2支持部32が焦電基板20のうち隣接する2つの受光部61,62の間を支持していればよい。例えば、第1支持部31と第2支持部32とが分離しておらず空間38a,38bが閉空間となっていてもよい。この場合の変形例の焦電素子310を図7に示す。なお、図7は、焦電素子210における図2(a)に相当する断面図である。焦電素子310のうち、図1〜図2に示した焦電素子10と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明や一部の図示を省略する。この焦電素子310では、第1支持部331(31a,331b)が第2支持部332と接続しており、空間338a,338bはこれらに囲まれている。そのため、空間338a,338bは焦電基板20,裏面金属層50,第1支持部331,第2支持部332,接着層34に囲まれた閉空間となっている。この焦電素子310でも、本実施形態の焦電素子10と同様の効果を得ることができる。
上述した実施形態では、第1支持部31a,31bや第2支持部32はそれぞれ1つの部材であるものとしたが、例えば、第1支持部31a又は第1支持部31bが分離した複数の部材で構成されていたり、第2支持部32が分離した複数の部材で構成されていたりしてもよい。
上述した実施形態では、受光部61,62をなす一対の電極は同一形状であり、焦電素子10を焦電基板20の表面側から仮想的に透視したときに一対の電極が重複し、位置が一致するように形成されているものとしたが、焦電基板20の表面側から仮想的に透視したときに一対の電極同士の重複部分があればよく、一対の電極の形状や位置が互いに異なっていてもよい。この場合、この重複部分が受光部として機能することになる。また、この場合でも、焦電基板20の表面側から仮想的に透視したときに一対の電極同士の重複部分と重ならないように第2支持部32が形成されていれば、受光部から第2支持部32への熱伝導が抑制されて検出感度が向上する効果が得られる。このような一対の電極の形状や位置が互いに異なる場合の例を図8に示す。図8(a)は、変形例の焦電素子410の平面図であり、図8(b)は、図8(a)のE−E断面図である。なお、焦電素子410のうち、図1〜図2に示した焦電素子10と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。この焦電素子410では、裏面金属層450が平面視で縦長の長方形をしており、焦電素子10における裏面電極51,52の役割を兼ねた1枚の共通導電板として形成されている。また、焦電素子10を焦電基板20の表面側から仮想的に透視したときに、裏面金属層450は表面電極41,42と重複し且つ表面電極41,42より広い範囲を占めるように形成されている。したがって、この焦電素子410では、焦電素子10を焦電基板20の表面側から仮想的に透視したときに裏面金属層450のうち表面電極41と重複する部分が焦電素子10における裏面電極51に相当し、同様に、裏面金属層450のうち表面電極42と重複する部分が、焦電素子10における裏面電極52に相当する。そのため、第2支持部32は裏面金属層450とは重複する位置に形成されているものの、焦電素子10を焦電基板20の表面側から仮想的に透視したときに受光部61,62をなす一対の電極同士の重複部分とは重なっていない。このため、この焦電素子410においても、受光部から第2支持部32への熱伝導が抑制されて検出感度が向上する効果が得られる。
上述した実施形態では、焦電素子10はデュアルタイプの焦電素子であるものとしたが、受光部を複数備えていればよく、例えば受光部を4つ備えたクワッドタイプの焦電素子としてもよい。クワッドタイプの焦電素子とする場合、第1支持部は焦電基板のうち4つの受光部よりも外側を支持していればよく、第2支持部は4つの受光部のうち隣接する2つの受光部の間を支持していればよい。また、空隙28は隣接する2つの受光部の間に形成されいればよく、第2支持部がこの空隙を架け渡すように焦電基板を支持していればよい。また、第2支持部を複数設けて、それぞれ異なる隣接する2つの受光部の間を支持するものとしてもよい。空隙についても同様に、それぞれ異なる隣接する2つの受光部の間に形成されていてもよい。例えば空隙を縦横の十字になるように設けて焦電基板を4つに分割し、分割した4つの焦電基板に1つずつ受光部が配置されるようにしてもよい。なお、クワッドタイプの焦電素子における表面電極及び裏面電極の配置については、例えば特開平2006−203009号公報に記載されている。
上述した実施形態では、導電線56によって裏面電極51,52が導通しているものとしたが、この導電線56を備えないものとしてもよい。この場合、例えば裏面電極51と裏面電極52とを外部配線によって導通してもよい。
上述した実施形態では、焦電基板20には空隙28が設けられているものとしたが、空隙28を備えないものとしてもよい。また、空隙28の深さを焦電基板20の厚さ未満とすることで、焦電基板20が焦電基板20aと焦電基板20bとに分割されないようにしてもよい。ただし、焦電基板20を介した受光部61,62間の熱伝導を抑制でき検出感度が向上する効果が得られるため、空隙28を設ける方が好ましく、焦電基板20が焦電基板20aと焦電基板20bとに分割されている方がより好ましい。なお、ハーフダイシングにより空隙28を形成する際に、導電線56や第2支持部32の上面の一部を切削するまでハーフダイシングを行ってもよい。こうすれば、焦電基板20を確実に分割することができる。
上述した実施形態では、第2支持部32の支持面33は、焦電素子10を焦電基板20の表面側から仮想的に透視したときに、受光部61,62をなす一対の電極同士の重複部分と重ならないように構成されているものとしたが、重なる部分があってもよい。ただし、受光領域21,22の熱が支持部材30に逃げにくくなり検出感度が向上する効果が得られるため、重ならないようにすることが好ましい。
[実施例1]
実施例1として、図4及び図5を用いて説明した製造方法により図1〜23に示した焦電素子10を作製した。まず、焦電基板120として、OF部を有し、直径4インチ,厚さが250μmのタンタル酸リチウム基板(LT基板)を用意した(図4(a))。LT基板は42°Yカット板を用いた。続いて、この焦電基板120の裏面にニッケル及びクロムからなる裏面金属層150を形成した(図4(b))。裏面金属層150の形成は、焦電基板120のうち裏面金属層150を形成する部分以外をメタルマスクでカバーし、真空蒸着により行った。なお、真空蒸着は、まずクロムを5Å/sの成膜レートで厚さ0.02μmとなるまで行い、続いてニッケルを10Å/sの成膜レートで厚さ0.1μmとなるまで行った。真空蒸着による成膜時の圧力は2.7×10-4Pa,焦電基板120の温度は約100℃であった。これにより、厚さ0.12μmの裏面金属層150を形成した。なお、裏面金属層150のパターンは、裏面電極51,52がそれぞれ縦2mm,横0.5mm、リード部56が縦0.1mm,横0.5mmの大きさとなるように形成した。
続いて、焦電基板120の裏面に、二酸化珪素からなる第1支持部131,第2支持部132を形成した(図4(c))。具体的には、まず、スパッタリングにより焦電基板120の裏面全体に厚さ0.5μmの二酸化珪素膜を形成し、この二酸化珪素膜のうち第1支持部131,第2支持部132として残したい部分にのみフォトリソグラフィによりレジスト膜(OFPR−800LB,東京応化製,ポジ型感光性レジスト)を形成してエッチングマスクとした。その後、フッ酸に5分間浸漬して二酸化珪素膜のうち空間38aとなる縦2.1mm,横0.8mmの部分、及び空間38bとなる縦2.1mm,横0.8mmの部分を除去することで第1支持部131,第2支持部132を形成した。
そして、第2支持部132の裏面を研磨して、第1支持部131の裏面と第2支持部1
32の裏面とが同一平面上になるようにした(図4(d))。
次に、支持基板136として、OF部を有し、直径4インチ,厚さが500μmのガラス基板を用意した。続いて、支持基板136の表面及び第1支持部131,第2支持部132の裏面の両方にエポキシ接着剤を1μm塗布し、支持基板136の表面と第1支持部131,第2支持部132の裏面とを貼り合わせた。そして、プレス圧着によりエポキシ接着剤の厚さを0.1μmとし、貼り合わせた焦電基板120,第1支持部131,第2支持部132,支持基板136を200℃の環境下で1時間放置してエポキシ接着剤を硬化させて複合体110とした(図4(e))。これにより、エポキシ接着剤は接着層134となり、縦2.1mm,横0.8mm,深さ0.5μmの空間138a、及び縦2.1mm,横0.8mm,深さ0.5μmの空間138bが形成された。
そして、支持基板136の裏面を炭化珪素で作成した研磨治具に接着固定し、焦電基板120の表面を固定砥粒の研削機で研削加工し、焦電基板120の厚みを50μmまで薄くした。さらに、焦電基板120の表面をダイヤモンド砥粒で研磨加工し、厚みを15μmまで薄くした。その後、ダイヤモンド砥粒による研磨加工で焦電基板120に生じた加工変質層を除去するために、遊離砥粒及び不織布系研磨パッドを用いて仕上げ研磨を行い、焦電基板120の厚みが10μmとなるまで研磨した(図5(a))。
こうして焦電基板120を研磨すると、焦電基板120の表面に表面金属層140を形成した(図5(b))。この工程は、裏面金属層150の形成と同様の材料及び条件で行った。なお、表面金属層140のパターンは、表面電極41,42となる部分がそれぞれ縦2mm,横0.5mm、リード部46,47となる部分がそれぞれ縦0.5mm,横0.5mmの大きさとなるように形成した。また、表面金属層140の形成は、複合体110を焦電基板120の表面側から仮想的に透視したときに、表面電極41,42となる部分がそれぞれ裏面電極51,52となる部分と重複し位置が一致するように行った。
続いて、複合体110をダイシングテープに固定し、第2支持部132の上の焦電基板120の部分にダイシングで溝を形成して空隙28を形成した(図5(c)。ダイシングは、幅100μm、#600のブレードを使用した。加工条件は、送り速度10mm/s、回転数30000rpmで行った。
そして、そのままダイシングテープに固定した状態で、表面金属層140を形成した複合体110から縦2.5mm×横2.5mmの焦電素子10をダイシングにより切り出した(図5(d))。切断後、ダイシングテープから外し、切削クズ、裏面に固着した接着剤を洗浄した。洗浄は、アセトン、IPA(イソプロピルアルコール)、純水の超音波洗浄をそれぞれ10分ずつ行った。これにより、実施例1の焦電素子として、図1〜3に示した焦電素子10を1000個得た。
[実施例2]
ダイシングによる空隙28の形成を行わない点以外は、実施例1と同様にして焦電素子を1000個作製し、実施例2とした。
[比較例1]
比較例1として、実施例1の焦電素子10と比べて第2支持部32及び空隙28を形成しない点が異なる焦電素子を以下のように作製した。まず、実施例1と同様に、用意した焦電基板の裏面に裏面金属層を形成して、図4(b)と同様の状態とした。
続いて、焦電基板120の裏面に、実施例1の第1支持部131と同じ材質及び形状の第1支持部を形成した。具体的には、まず、スパッタリングにより焦電基板の裏面全体に厚さ0.5μmの二酸化珪素膜を形成し、この二酸化珪素膜のうち第1支持部として残したい部分にのみフォトリソグラフィによりレジスト膜(OFPR−800LB,東京応化製,ポジ型感光性レジスト)を形成してエッチングマスクとした。その後、フッ酸に5分間浸漬して二酸化珪素膜のうち縦2.1mm,横2.1mmの部分を除去することで第1支持部を形成した。なお、この工程では実施例1とは異なり第2支持部132は形成せず、その後の第2支持部132の研磨も行わなかった。
次に、実施例1の支持基板136と同様の支持基板を用意し、支持基板の表面及び第1支持部の裏面の両方にエポキシ接着剤を1μm塗布して、支持基板の表面と第1支持部の裏面とを貼り合わせ、エポキシ接着剤を硬化させて複合体を得た。貼り合わせやエポキシ接着剤の硬化の条件は実施例1と同様とした。これにより、エポキシ接着剤は接着層となり、複合体の焦電基板,支持基板,第1支持部に囲まれた縦2.1mm,横2.1mm,深さ0.5μmの空間が形成された。
そして、実施例1と同様に焦電基板の厚さが10μmとなるまで焦電基板の表面を研磨した。その後、実施例1の表面金属層140と同様に、焦電基板の表面に表面金属層を形成し、表面金属層を形成した複合体から縦2.5mm×横2.5mmの焦電素子をダイシングにより切り出した。これにより、比較例1の焦電素子を1000個得た。なお、比較例1の焦電素子は、第2支持部32が形成されていないため、焦電基板は第1支持部のみで支持された状態になっている。
[評価試験1]
実施例1,2及び比較例1の焦電素子について、機械的強度の評価を行った。機械的強度の評価は、上述した方法で作製した実施例1,2及び比較例1の各1000個の焦電素子について、製造プロセス中に破壊(焦電基板の割れや支持基板からの剥がれなど)が生じた個数を測定し、プロセス中破壊率(=破壊個数/1000個×100%)を算出することで行った。このようなプロセス中の破壊は、例えば成膜時の熱ストレス、研磨時の機械的ストレス、超音波洗浄による振動ストレスなどによって生じる。
[評価試験2]
実施例1,2及び比較例1の焦電素子について、図9に示す実験系にて電圧感度Rvを測定した。この実験系では、赤外線は、黒体放射装置702を使用して焦電素子まで平面波ミラー704とコンカーブミラー706を用いてアライメントし、チョッパー708を介して焦電素子の受光部の表面に集光した。入力赤外光は、チョッパー708により周波数10Hzでチョッピングして照射した。焦電素子の電圧感度Rvは、ロックインアンプ710で測定した。なお、ロックインアンプ710内の電圧変換回路の入力インピーダンスは1011Ωとした。
評価試験1,2の結果を、実施例1,2及び比較例1の各焦電素子における焦電基板の材質,空隙28の有無,第2支持部の有無,焦電基板の厚さと併せて表1に示す。
評価試験1の結果から、焦電基板が第1支持部だけでなく第2支持部によっても支持されている実施例1,2の焦電素子は、第2支持部を有さない比較例1の焦電素子と比べてプロセス破壊率が低く、機械的硬度が向上していることが確認できた。
また、評価試験2の結果から、隣接する2つの受光部61,62の間に空隙28が形成されている実施例1は、空隙28が形成されていない実施例2及び比較例1と比べて電圧感度Rvが高く、検出感度が向上していることが確認できた。
なお、実施例1の焦電素子10と比べて第2支持部32を形成しない点が異なる焦電素子、すなわち比較例1の焦電素子と比べて空隙28を形成する点が異なる焦電素子を1000個作製しようとした場合、空隙28となる溝を形成するダイシング工程やその後の焦電素子を切り出すダイシング工程において1000個全ての焦電基板に割れや剥がれが発生し、プロセス中破壊率は100%となった。このことから、実施例1の焦電素子10では、第2支持部32が空隙28を架け渡すように焦電基板20を支持していることで、空隙28を形成しても機械的強度が保たれていると考えられる。