JPWO2013047527A1 - リガンド固定化用基材及びその製造方法、特異的細胞分離材並びに血液処理器 - Google Patents
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Abstract
本発明は、水不溶性担体と、該水不溶性担体の少なくとも表面に結合した下記一般式(1)で表される共重合体と、を備える、リガンド固定化用基材を提供する。【化1】[一般式(1)中、n及びmは正の整数を示し、m/(n+m)の値は0.05以上0.50以下である。また、一般式(1)中、R1はH又はCH3、R2は求電子官能基を有する有機基、R3は下記一般式(2)で表される基を示す。【化2】一般式(2)中、YはO又はNH、pは1又は2、qは2又は3を示す。]
Description
本発明は、リガンド固定化用基材及びその製造方法、アフィニティーリガンドを固定化した特異的細胞分離材、並びに血液処理器に関する。
血液から特定成分を分離する目的で、該特定成分に対して親和性のある物質、すなわち、リガンドを水不溶性担体に共有結合によって固定した分離材が臨床的に広く利用されている。これら分離材は、患者血液を一旦体外に取り出し、血液そのもの、又は血漿分離器で分離した血漿を分離材に流して処理した後、患者に返血するという形で使用される。
このため分離材からリガンドが溶離すると、リガンドが直接患者体内に入り、種々の生理作用を引き起こす危険性がある。よって、リガンドの溶離量が多い分離材は、安全性の点から臨床で利用できない。また医薬製造等のプロセスで使用される分離材においても、リガンドの溶離は、精製される医薬活性物質の品質を損なう重要な汚染物質を一様にもたらし、不十分に精製された医薬品が患者に望ましくない副作用を誘発する危険もある。すなわち、これら分離材を実用化するに当たっては、水不溶性担体とリガンドとの結合を強固にし、溶離するリガンド量を最小限にすることが最も重要な技術課題である。
また分離対象を含む溶液等との接触に伴う分離対象以外の成分との非特異的吸着は、特異的分離性能の低下に繋がる。選択的分離材においては、特定成分を選択的に分離するために、基材そのものに分離対象以外の成分の非特異的吸着が生じにくい特性が望まれている。
非特異的吸着が抑制された基材を形成する材料として、例えば、低汚損、かつ低吸着性の双生イオン性基(ベタイン)を有する材料が提案されており、タンパク質の付着に対して抵抗性のある光透過性ポリマー材料として、双生イオン性基を有する重合性モノマーを用いたポリマーが開示されている(特許文献1)。また、スルホベタイン及びカルボキシベタインの単分子層を含む低汚損性表面を有する基材が開示されている(特許文献2)。さらに、材料の表面と生体成分との相互作用が少なく、タンパク質非吸着性で性能劣化が起こりにくく、生体適合性に優れた材料として、双性イオンを有するビニル重合性単量体と、他のビニル重合性単量体との共重合体が開示されている(特許文献3)。
細胞を分離する目的においては、基材に選択的な細胞吸着性能を付与する方法として、基材表面にカチオン性官能基(例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、及び4級アンモニウム基)及びアニオン性官能基(例えば、硫酸エステル基、スルホン酸基、カルボキシル基、及びリン酸エステル基)をバランスよく固定化して細胞の選択吸着を行う技術が従来から知られているが、このような方法では目標とする高い細胞選択性を発現させることが困難な場合が多い。
これに対し、高い細胞選択分離性を得るために目的細胞の細胞表面に存在するタンパク質又は糖鎖に特異的な親和性を有するアフィニティーリガンドを用いる方法は効果的である。特に細胞表面のタンパク質又は糖鎖に強い親和性のあるアミノ酸配列を有した抗体、抗体の抗原結合部位を含む抗体断片(F(ab)’、Fab、Fab’等)、さらにそのようなアミノ酸配列を有する合成ペプチド、又はそれらの修飾ペプチドが効果的であり、これらを基材に共有結合にて固定化する方法が効果的であると考えられる。
本発明は、タンパク質及び細胞などとの非特異的相互作用が少ないとの優れた性能を有し、かつ、リガンドを共有結合により強固に結合することのできるリガンド固定化用基材及びその製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、タンパク質及び細胞などとの非特異的相互作用が少ないとの優れた性能を有し、かつ、リガンドを共有結合により強固に結合し、固定化したリガンドとの特異的相互作用に基づく高い吸着性能を発揮し得る特異的細胞分離材を提供することを目的とする。
本発明者らは、優れた非特異吸着抑制能を有し、リガンドと共有結合により強固に結合させることができ、リガンドが溶出するリスクが少なく、かつ固定化したリガンドの性能を十分に発揮させ得る基材について鋭意研究を進めた結果、水不溶性担体の表面に重合性スルホベタインモノマーと求電子官能基を有する重合性モノマーとの共重合体が結合してなるリガンド固定化用基材が上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]
水不溶性担体と、該水不溶性担体の少なくとも表面に結合した下記一般式(1)で表される共重合体と、を備える、リガンド固定化用基材。
[一般式(1)中、n及びmは正の整数を示し、m/(n+m)の値は0.05以上0.50以下である。また、一般式(1)中、R1はH又はCH3、R2は求電子官能基を有する有機基、R3は下記一般式(2)で表される基を示す。
一般式(2)中、YはO又はNH、pは1又は2、qは2又は3を示す。]
[2]
前記共重合体が、下記一般式(3)で表されるモノマーと下記一般式(4)で表されるモノマーとの共重合体である、[1]に記載のリガンド固定化用基材。
[一般式(3)中、YはO又はNH、pは1又は2、qは2又は3を示す。]
[一般式(4)中、R1はH又はCH3、R2は求電子官能基を有する有機基を示す。]
[3]
前記共重合体が、エポキシ基を含む、[1]又は[2]に記載のリガンド固定化用基材。
[4]
前記共重合体による前記水不溶性担体の表面の被覆率が25%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載のリガンド固定化用基材。
[5]
前記水不溶性担体が、多孔膜又は粒子である、[1]〜[4]のいずれかに記載のリガンド固定化用基材。
[6]
前記水不溶性担体が、繊維からなる多孔膜であり、かつ平均繊維径が2μm以上20μm以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載のリガンド固定化用基材。
[7]
リガンド固定化用基材の製造における、下記一般式(1)で表される共重合体の使用。
[一般式(1)中、n及びmは正の整数を示し、m/(n+m)の値は0.05以上0.50以下である。また、一般式(1)中、R1はH又はCH3、R2は求電子官能基を有する有機基、R3は下記一般式(2)で表される基を示す。
一般式(2)中、YはO又はNH、pは1又は2、qは2又は3を示す。]
[8]
前記共重合体が、エポキシ基を含む、[7]に記載の使用。
[9]
(i)水不溶性担体に電離性放射線を照射する工程と、
(ii)下記一般式(3)で表されるモノマー及び下記一般式(4)で表されるモノマーを含む溶液に、工程(i)で得られた水不溶性担体を浸漬してグラフト重合させる工程と、を含む、リガンド固定化用基材の製造方法。
[一般式(3)中、YはO又はNH、pは1又は2、qは2又は3を示す。]
[一般式(4)中、R1はH又はCH3、R2は求電子官能基を有する有機基を示す。]
[10]
前記一般式(4)で表されるモノマーが、エポキシ基を有する、[9]に記載の製造方法。
[11]
前記水不溶性担体が、多孔膜又は粒子である、[9]又は[10]に記載の製造方法。
[12]
前記水不溶性担体が、繊維からなる多孔膜であり、かつ平均繊維径が2μm以上20μm以下である、[9]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]
[1]〜[6]のいずれかに記載のリガンド固定化用基材に、抗体、タンパク質、ペプチド及び低分子化合物からなる群より選択される1種以上のリガンドが結合した特異的細胞分離材。
[14]
血液の導入口及び導出口を有する容器の内部に、[13]に記載の特異的細胞分離材が充填された血液処理器。
[1]
水不溶性担体と、該水不溶性担体の少なくとも表面に結合した下記一般式(1)で表される共重合体と、を備える、リガンド固定化用基材。
[2]
前記共重合体が、下記一般式(3)で表されるモノマーと下記一般式(4)で表されるモノマーとの共重合体である、[1]に記載のリガンド固定化用基材。
[3]
前記共重合体が、エポキシ基を含む、[1]又は[2]に記載のリガンド固定化用基材。
[4]
前記共重合体による前記水不溶性担体の表面の被覆率が25%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載のリガンド固定化用基材。
[5]
前記水不溶性担体が、多孔膜又は粒子である、[1]〜[4]のいずれかに記載のリガンド固定化用基材。
[6]
前記水不溶性担体が、繊維からなる多孔膜であり、かつ平均繊維径が2μm以上20μm以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載のリガンド固定化用基材。
[7]
リガンド固定化用基材の製造における、下記一般式(1)で表される共重合体の使用。
[8]
前記共重合体が、エポキシ基を含む、[7]に記載の使用。
[9]
(i)水不溶性担体に電離性放射線を照射する工程と、
(ii)下記一般式(3)で表されるモノマー及び下記一般式(4)で表されるモノマーを含む溶液に、工程(i)で得られた水不溶性担体を浸漬してグラフト重合させる工程と、を含む、リガンド固定化用基材の製造方法。
[10]
前記一般式(4)で表されるモノマーが、エポキシ基を有する、[9]に記載の製造方法。
[11]
前記水不溶性担体が、多孔膜又は粒子である、[9]又は[10]に記載の製造方法。
[12]
前記水不溶性担体が、繊維からなる多孔膜であり、かつ平均繊維径が2μm以上20μm以下である、[9]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]
[1]〜[6]のいずれかに記載のリガンド固定化用基材に、抗体、タンパク質、ペプチド及び低分子化合物からなる群より選択される1種以上のリガンドが結合した特異的細胞分離材。
[14]
血液の導入口及び導出口を有する容器の内部に、[13]に記載の特異的細胞分離材が充填された血液処理器。
本発明によれば、タンパク質及び細胞などとの非特異的相互作用が少ないとの優れた性能を有し、かつ、リガンドを共有結合により強固に結合することのできるリガンド固定化用基材及びその製造方法が提供される。また、本発明によれば、タンパク質及び細胞などとの非特異的相互作用が少ないとの優れた性能を有し、かつ、リガンドを共有結合により強固に結合し、固定化したリガンドとの特異的相互作用に基づく高い吸着性能を発揮し得る特異的細胞分離材が提供される。
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
〔リガンド固定化用基材〕
本実施形態に係るリガンド固定化用基材は、水不溶性担体と、該水不溶性担体の少なくとも表面に結合した下記一般式(1)で表される共重合体とを備える。
ここで、一般式(1)中、n及びmは正の整数を示し、m/(n+m)の値は0.05以上0.50以下である。
また、一般式(1)中、R1はH又はCH3、R2は求電子官能基を有する有機基、R3は下記一般式(2)で表される基を示す。
一般式(2)中、YはO又はNH、pは1又は2、qは2又は3を示す。
本実施形態に係るリガンド固定化用基材は、水不溶性担体と、該水不溶性担体の少なくとも表面に結合した下記一般式(1)で表される共重合体とを備える。
また、一般式(1)中、R1はH又はCH3、R2は求電子官能基を有する有機基、R3は下記一般式(2)で表される基を示す。
一般式(1)で表される共重合体は、繰り返し数がmの繰り返し単位と、繰り返し数がnの繰り返し単位とのランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体及びブロック共重合体のいずれであってもよい。
一般式(1)で表される共重合体は、例えば、一般式(3)で表される重合性スルホベタインモノマーと、一般式(4)で表される求電子性官能基を有する重合性モノマーとを共重合させることによって得ることができる。
ここで、一般式(3)中、YはO又はNH、pは1又は2、qは2又は3を示す。
ここで、一般式(4)中、R1はH又はCH3、R2は求電子官能基を有する有機基を示す。
この場合、一般式(1)中、繰り返し数がmの繰り返し単位は一般式(3)で表されるモノマーに由来する構造単位であり、繰り返し数がnの繰り返し単位は一般式(4)で表されるモノマーに由来する構造単位である。
一般式(3)で表される重合性スルホベタインモノマーは、アニオン性基としてスルホン酸基、カチオン性基として4級アンモニウム基を同一単量体単位中に有する単量体(モノマー)である。一般式(3)で表される重合性スルホベタインモノマーの具体例としては、例えば、N,N−ジメチル−N−(3−アクリルアミドプロピル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(3−アクリルアミドプロピル)−N−(2−スルホエチル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(3−メタクリルアミドプロピル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(3−メタクリルアミドプロピル)−N−(2−スルホエチル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(2−アクリロイルオキシエチル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(2−アクリロイルオキシエチル)−N−(2−スルホエチル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N−(2−スルホエチル)アンモニウム内部塩が挙げられる。
本明細書において、「求電子官能基」とは求電子的に反応する官能基を意味し、一般式(4)で表される求電子性官能基を有する重合性モノマーの具体例としては、エポキシ基、イソシアネート基又はアルデヒド基等の求電子官能基を分子内(一般式(1)中のR2、及び一般式(4)中のR5)に有するモノマーが挙げられる。
上記のエポキシ基を分子内に有する重合性モノマーとしては、特に限定されないが、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリルアミド、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル、グリシジルソルベート、グリシジルメタイタコナート、エチルグリシジルマレアート及びグリシジルビニルスルホナート等を例示でき、イソシアネート基を分子内に有する重合性モノマーとしては、アクリロイルオキシエチルイソシアネート、アクリロイルオキシメチルイソシアネート、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート及びメタクリロイルエチルイソシアネート等を例示でき、さらに、アルデヒド基を分子内に有する重合性モノマーとしては、シンナムアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン及びメタクロレイン等を例示できるが、この中でも入手の容易さ、コスト、取り扱いの容易さから、エポキシ基を分子内に有する重合性モノマーが好ましく、その中でも特にグリシジルメタクリレートが好ましい。
水不溶性担体の少なくとも表面に共重合体がどのような様式で結合しているかは特に限定されず、共有結合、イオン結合及び物理吸着等のいずれの結合様式であってもよい。結合方法としては、グラフト法及び不溶化沈殿法等、あらゆる公知の方法を用いることができる。したがって、高分子化合物又はそのモノマーの少なくとも一方を放射線又はプラズマ等を用いてグラフト重合する、共有結合するなどの公知の方法により表面改質を施す方法(特開平1−249063号公報、特開平3−502094号公報)を好適に用いることができる。
放射線照射グラフト重合法を用いる場合、種々の公知の方法を利用することができる。例えば、水不溶性担体上に活性点を導入するための電離性放射線は、α線、β線、γ線、加速電子線、X線及び紫外線などが挙げられ、実用的であるとの観点から加速電子線又はγ線が好ましい。加速電子線又はγ線の照射量は水不溶性担体の性質、用いるモノマーの性質、及び共重合体の固定化量などにより任意に変えることができるが、10kGyから200kGyが好ましい。水不溶性担体とモノマーをグラフト重合させる方法としては、水不溶性担体とモノマーの共存下で電離性放射線を照射する同時照射法と、水不溶性担体のみに予め電離性放射線を照射した後、モノマーと水不溶性担体とを接触させる前照射法のいずれも使用可能であるが、前照射法が、グラフト重合以外の副反応を生成しにくいため好ましい。水不溶性担体とモノマーとの接触は、例えば、水不溶性担体とモノマーを含む溶液とを接触させることにより行うことができる。モノマーを含む溶液中のモノマー濃度は通常1質量%以上20質量%以下とすることができるが、この範囲に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。また、モノマーと水不溶性担体との反応は、反応温度は5℃以上40℃以下の範囲で行うことができるが、この範囲に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。反応の際の溶媒は、モノマーを含む溶液の溶媒と同じであってもよく、例えば、無溶媒若しくは水、メタノール、エタノール、その他アルコール、アセトン等の溶媒又はそれらの混合溶媒で、モノマーが溶解又は分散するものであれば用いることができる。
放射線照射グラフト重合法を用いる場合、担体へのグラフト率(G)は5%以上300%以下が好ましく、20%以上200%以下がより好ましく、50%以上150%以下が更に好ましい。グラフト率が5%未満であると、担体表面のグラフト鎖による被覆が不十分となりやすく、表面の改質が不十分となるおそれ、及びリガンドの固定化量が不十分となるおそれがある。またグラフト率が300%を超えると、水不溶性担体自体の物理特性が失われるおそれがあり、リガンド固定化用基材の設計上好ましくない。
なお、ここにいうグラフト率(G)は、下記式(4)で表される値である。
G(%)=[(グラフト後担体重量−グラフト前担体重量)/(グラフト前担体重量)]×100 (4)
G(%)=[(グラフト後担体重量−グラフト前担体重量)/(グラフト前担体重量)]×100 (4)
重合反応後は、過剰のモノマー、及び連鎖移動反応によって生成したグラフトされていないポリマーを適当な溶剤にて十分洗浄除去すればよい。
本実施形態に係る共重合体における重合性スルホベタインモノマーのモル組成比は、全モノマーに対して、0.05以上0.50以下であることが好ましい。重合性スルホベタインモノマーのモル組成比が0.05未満であると、生体適合性の性質が発揮されなくなる。また重合性スルホベタインモノマーのモル組成比が0.50を超えると、生体適合性の性質は十分に発揮されるが、必然的に求電子官能基の含有量が低くなり、リガンドの固定化が十分に行われないため好ましくない。共重合体を形成する反応時の各モノマーの混合量は、選択する溶媒等に依存するので、適宜選択すればよい。
共重合体による水不溶性担体の被覆率は25%以上が好ましい。表面における存在率が25%未満であると、担体の表面性質が残存しており、非特異的吸着が増加するとともに、リガンドの固定化が十分に行われない。被覆率の上限に特に制限はなく、例えば、100%であってもよい。
本実施形態に係る水不溶性担体を形成する素材としては、天然高分子、合成高分子及び再生高分子等の有機高分子化合物、ガラス及び金属に代表される無機化合物、並びに有機/無機ハイブリッド化合物などが挙げられるが特に限定されない。
加工性の面からは、有機高分子素材が特に好ましく、例えば、ポリアルキレンテレフタレート類、ポリカーボネート類、ポリウレタン類、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコール共重合体(エバール)、エチレン/ビニルアセテート共重合体、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、ポリスルホン類、セルロース及びセルロース誘導体類、ポリフェニレンエーテル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等、及びこれらを構成するモノマーの共重合体が挙げられる。さらに、上記高分子の2種以上のアロイ及びブレンド等が挙げられる。
水不溶性担体としては、医療用吸着材(又は分離材)の担体として周知のもの全てを使用できるが、多孔膜又は粒子が好ましく、多孔質粒子、不織布又は中空糸膜が体外循環時の体液の流通性より最も好ましく、細胞吸着を目的とする場合は不織布又は粒子が好ましい。
多孔膜としては、例えば、これらの素材から得られる繊維状物(中実繊維及び中空繊維)を用いて製造される不織布、織布、編布及びメッシュが挙げられる。また、有機高分子素材又は無機高分子素材を熱溶融した状態、溶媒によって溶解した溶液状態、又は可塑剤を用いて可塑化した状態等から、発泡法、相分離法(熱誘起相分離法及び湿式相分離法)、延伸法及び焼結法等によって得ることができるシート状膜(平膜)及び空糸膜も使用できる。
多孔膜においては、連通孔を有し、連通孔の少なくとも表面部分に存在するアフィニティーリガンドとの接触によって目的成分が吸着されるのであればどのような構造であっても構わず特に限定されない。連通孔とは、支持多孔膜の一方の膜面から反対側の膜面にかけて連通した孔のことであって、その連通孔を通して液体が通過することができるのであれば、その孔の膜表面の形状、及び膜内部の構造はどのようなものであってもよい。
特に、分離対象成分が細胞である場合に好ましいものとしては、細胞浮遊液の透過性、及び細胞捕捉性の観点から、各種繊維状物から製造される不織布、織布、編布及びメッシュ等が挙げられ、特に不織布は好ましく用いられる多孔膜である。
不織布形状の場合、その平均繊維径(平均繊維直径)は、例えば、0.1μm〜50μmとすることができるが、リガンドを結合した場合に分離対象成分をより特異的に吸着することができるため、2μm〜20μmであることが好ましい。平均繊維径は3μm〜12μmであることがより好ましく、4μm〜7μmであることが更に好ましい。平均繊維径が0.1μm未満であると、機械的強度が低下しやすい。また繊維径が太くなるにつれ、単位体積当たりの表面積が小さくなり、大きな分離材体積が必要となることから、50μm以下が適当である。
本実施形態に係る粒子は分離対象成分によって、無孔質又は多孔質を選択すればよく、また多孔質においては、分離対象成分によって、その孔径を選択すればよい。平均粒径は、25μm以上2500μm以下のものを利用できるが、その比表面積(吸着材としての吸着能力)と体液の流通性を考慮すると、50μm以上1500μm以下のものが好ましい。
図1は、一実施形態に係るリガンド固定化用基材の模式断面図である。リガンド固定化用基材100は、水不溶性担体1と、水不溶性担体1の少なくとも表面に結合した上記一般式(1)で表される共重合体2と、を備える。共重合体2は、結合部分10で水不溶性担体1と結合し、リガンド固定化用基材100の表面にR3基20及びR2基30を有している。ここでR3基20及びR2基30は、上記一般式(1)中のR3基及びR2基と同義である。
〔リガンド固定化用基材の製造方法〕
上記リガンド固定化用基材は、例えば、以下の工程を有する製造方法により製造することができる。
(i)水不溶性担体に電離性放射線を照射する工程。
(ii)上記一般式(3)で表されるモノマー及び上記一般式(4)で表されるモノマーを含む溶液に、工程(i)で得られた水不溶性担体を浸漬してグラフト重合させる工程。
水不溶性担体、電離性放射線、溶液、及びグラフト重合等については、上記で説明したとおりである。
上記リガンド固定化用基材は、例えば、以下の工程を有する製造方法により製造することができる。
(i)水不溶性担体に電離性放射線を照射する工程。
(ii)上記一般式(3)で表されるモノマー及び上記一般式(4)で表されるモノマーを含む溶液に、工程(i)で得られた水不溶性担体を浸漬してグラフト重合させる工程。
水不溶性担体、電離性放射線、溶液、及びグラフト重合等については、上記で説明したとおりである。
〔特異的細胞分離材〕
本実施形態に係る特異的細胞分離材は、上記リガンド固定化用基材にリガンドが結合してなるものである。リガンド固定化用基材とリガンドは、リガンド固定化用基材中の求電子官能基とリガンドの有する官能基との間で、共有結合、配位結合、イオン結合及び水素結合等の化学結合することで結合している。また、共有結合により結合することが好ましい。リガンドとしては、アフィニティーリガンドが好ましく、例えば、抗体、タンパク質、ペプチド及び低分子化合物からなる群より選択されるものとすることができる。
本実施形態に係る特異的細胞分離材は、上記リガンド固定化用基材にリガンドが結合してなるものである。リガンド固定化用基材とリガンドは、リガンド固定化用基材中の求電子官能基とリガンドの有する官能基との間で、共有結合、配位結合、イオン結合及び水素結合等の化学結合することで結合している。また、共有結合により結合することが好ましい。リガンドとしては、アフィニティーリガンドが好ましく、例えば、抗体、タンパク質、ペプチド及び低分子化合物からなる群より選択されるものとすることができる。
特異的細胞分離材に固定化されるアフィニティーリガンドは、特定の細胞に対して選択的アフィニティーを有するもので、求電子官能基と化学結合するものであれば特に制限されず、例えば分子量が500Da以下程度の低分子化合物、タンパク質、また優れた吸着能を発現させるのであれば、ターゲット成分に極めて高いアフィニティーを有する抗体及びキメラ抗体、抗体が有する重鎖又は軽鎖の可変領域の相補性決定領域を形成しうるアミノ酸配列を有するF(ab’)2、Fab、Fab’、並びにその他ペプチド又はその修飾ペプチド型のリガンドの使用が好ましい。
図2は、一実施形態に係る特異的細胞分離材の模式断面図である。特異的細胞分離材110は、リガンド固定化用基材100のR2基30と、リガンド40とが化学結合してなるものである。リガンド40としては上述したものを用いることができる。
〔血液処理器〕
本実施形態に係る血液処理器は、内部に血液を導入するための入口(導入口)と、内部の血液を外部に排出するための出口(導出口)とを有する容器の内部に、上記特異的細胞分離材が充填されたものである。上記特異的細胞分離材が選択的に分離対象成分を吸着することができるため、例えば、血液から特定の成分を除去する目的に好ましく利用することができる。具体的には、直接血液灌流用の血液成分吸着器及び特異的細胞吸着器等が挙げられる。
本実施形態に係る血液処理器は、内部に血液を導入するための入口(導入口)と、内部の血液を外部に排出するための出口(導出口)とを有する容器の内部に、上記特異的細胞分離材が充填されたものである。上記特異的細胞分離材が選択的に分離対象成分を吸着することができるため、例えば、血液から特定の成分を除去する目的に好ましく利用することができる。具体的には、直接血液灌流用の血液成分吸着器及び特異的細胞吸着器等が挙げられる。
図3は、一実施形態に係る血液処理器の模式断面図である。血液処理器200は、容器50と、容器50の内部に充填された複数の特異的細胞分離材110とを有する。容器50の両端部には、ヘッダーキャップ60a、60bが設けられている。ヘッダーキャップ60aは内部に血液を導入するための入口(導入口)となり、ヘッダーキャップ60bは血液を外部に排出するための出口(導出口)となる。ヘッダーキャップ60aの導入口より矢印Fの方向から血液処理器200の内部に流入した血液が、特異的細胞分離材110と接することにより、リガンド40と相互作用する血液中の成分が吸着する。これにより、ヘッダーキャップ60bの導出口から流出した際には血液中から上記成分が除去されている。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
(A)方法
(1)γ線照射
担体としてポリプロピレンからなる不織布(平均繊維径3.8μm 目付80g/m2)0.108m2を脱酸素剤とともに酸素低透過性袋に封入し十分に酸素を除いた後、−78℃にて25kGyのγ線を照射した。
(A)方法
(1)γ線照射
担体としてポリプロピレンからなる不織布(平均繊維径3.8μm 目付80g/m2)0.108m2を脱酸素剤とともに酸素低透過性袋に封入し十分に酸素を除いた後、−78℃にて25kGyのγ線を照射した。
(2)グラフト反応
N−(3−スルホプロピル)−N−(メタクリルオキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン(以下、「SPB」という。)6.5g、及びグリシジルメタクリレート(以下、「GMA」という。)26.3mLを500mLのメタノールに溶解し、反応液を得た。この反応液に40℃にて60分間窒素を通気した。
耐圧ガラス容器に上記の不織布をすばやく入れ、減圧後、上記反応液を引き込み40℃にて1時間反応させた。反応後、取り出した不織布をジメチルホルムアミド及びメタノールにより洗浄し、40℃にて真空乾燥することでリガンド固定化用基材を得た。
N−(3−スルホプロピル)−N−(メタクリルオキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン(以下、「SPB」という。)6.5g、及びグリシジルメタクリレート(以下、「GMA」という。)26.3mLを500mLのメタノールに溶解し、反応液を得た。この反応液に40℃にて60分間窒素を通気した。
耐圧ガラス容器に上記の不織布をすばやく入れ、減圧後、上記反応液を引き込み40℃にて1時間反応させた。反応後、取り出した不織布をジメチルホルムアミド及びメタノールにより洗浄し、40℃にて真空乾燥することでリガンド固定化用基材を得た。
(3)細胞吸着フィルター(特異的細胞分離材)の作製
上記で得られたリガンド固定化用基材を直径0.68cmの円形に切断した(以下「円形不織布状基材」という)。次に、抗ヒトCD4モノクローナル抗体溶液(16μg)及び硫酸アンモニウム(26mg)を溶解したカルシウム及びマグネシウムを含まないリン酸緩衝生理食塩液(以下、「PBS(−)」という。)400μLに、得られた円形不織布状基材4枚を37℃にて16時間浸し、該モノクローナル抗体を円形不織布状基材に固定した。その後、このモノクローナル抗体を固定化した円形不織布状基材(以下、「抗体固定化円形不織布」という。)をPBS(−)2mlで洗浄した。次に、0.2%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート/PBS(−)溶液(以下、「Tween20溶液」という。)に該抗体固定化円形不織布を常温で2.5時間浸し、ブロッキングを行った。その後、該抗体固定化円形不織布をPBS(−)2mlで洗浄することで、細胞吸着フィルターを作製した。
上記で得られたリガンド固定化用基材を直径0.68cmの円形に切断した(以下「円形不織布状基材」という)。次に、抗ヒトCD4モノクローナル抗体溶液(16μg)及び硫酸アンモニウム(26mg)を溶解したカルシウム及びマグネシウムを含まないリン酸緩衝生理食塩液(以下、「PBS(−)」という。)400μLに、得られた円形不織布状基材4枚を37℃にて16時間浸し、該モノクローナル抗体を円形不織布状基材に固定した。その後、このモノクローナル抗体を固定化した円形不織布状基材(以下、「抗体固定化円形不織布」という。)をPBS(−)2mlで洗浄した。次に、0.2%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート/PBS(−)溶液(以下、「Tween20溶液」という。)に該抗体固定化円形不織布を常温で2.5時間浸し、ブロッキングを行った。その後、該抗体固定化円形不織布をPBS(−)2mlで洗浄することで、細胞吸着フィルターを作製した。
(4)物理吸着量測定用の細胞吸着フィルターの洗浄
2%ドデシル硫酸ナトリウム/PBS(−)(以下、「SDS溶液」という。)により細胞吸着フィルター4枚を95℃で10分間浸し、細胞吸着フィルターへ物理的に固定されている抗ヒトCD4モノクローナル抗体を洗浄剥離させた。これを3回繰り返した後、該細胞吸着フィルターをPBS(−)2mlで洗浄した。
2%ドデシル硫酸ナトリウム/PBS(−)(以下、「SDS溶液」という。)により細胞吸着フィルター4枚を95℃で10分間浸し、細胞吸着フィルターへ物理的に固定されている抗ヒトCD4モノクローナル抗体を洗浄剥離させた。これを3回繰り返した後、該細胞吸着フィルターをPBS(−)2mlで洗浄した。
(5)細胞吸着器の作製
入口と出口を有する容量1mlの容器に、細胞吸着フィルター4枚と充填液としてPBS(−)溶液とを充填し、細胞吸着器を作成した。
入口と出口を有する容量1mlの容器に、細胞吸着フィルター4枚と充填液としてPBS(−)溶液とを充填し、細胞吸着器を作成した。
(6)細胞吸着器の細胞吸着性
細胞吸着器の入口から、ACD−A添加ヒト新鮮血液8ml(血液:ACD−A=8:1)をシリンジポンプにて流速0.2ml/分で送液した。細胞吸着器の出口から回収される細胞吸着後溶液のうち、前半4mL分をフラクション1(以下、「F1」という。)、後半4mL分をフラクション2(以下、「F2」という。)となるよう分取した。その後、細胞吸着器の出口から細胞吸着後の溶液を回収した。
細胞吸着器の入口から、ACD−A添加ヒト新鮮血液8ml(血液:ACD−A=8:1)をシリンジポンプにて流速0.2ml/分で送液した。細胞吸着器の出口から回収される細胞吸着後溶液のうち、前半4mL分をフラクション1(以下、「F1」という。)、後半4mL分をフラクション2(以下、「F2」という。)となるよう分取した。その後、細胞吸着器の出口から細胞吸着後の溶液を回収した。
(B)結果
(1)X線光電子分光法(XPS)による表面解析
上記で得られたリガンド固定化用基材の表面をX線光電子分光法(XPS ESCA)により解析した。XPSより得られる炭素、酸素及び窒素の各相対元素濃度をそれぞれC1、C2及びC3とすると、基材表面に存在するSPB相対モル濃度(X)、GMA相対モル濃度(Y)、担体構成ポリマー相対モル濃度(Z)はそれぞれ次式(5)から(7)で表される。
X=x/(x+y+z) (5)
Y=y/(x+y+z) (6)
Z=z/(x+y+z) (7)
ただし、x=C3、y=(C2−4x)/3、z={C1−(10x+7y)}/Aであって、Aは担体構成ポリマーの単位炭素組成であり、ポリエチレンの場合A=2、ポリプロピレンの場合A=3である。
上記で得られる相対モル濃度より共重合ポリマー中のSPBのモル組成比Rは次式(8)で表される。
R=m/(n+m)=X/(X+Y) (8)
また、SPBポリマーの単位分子量MX、GMAポリマー単位分子量MY、担体構成ポリマー単位分子量MZとすると、被覆率S(%)は次式(9)で表される。
S=100{1−ZMZ/(XMX+YMY+ZMZ)} (9)
これらの計算式に基づき、SPBモル組成比R及び被覆率Sを算出した結果、SPBのモル組成比Rは0.05、被覆率Sは85%であった。
(1)X線光電子分光法(XPS)による表面解析
上記で得られたリガンド固定化用基材の表面をX線光電子分光法(XPS ESCA)により解析した。XPSより得られる炭素、酸素及び窒素の各相対元素濃度をそれぞれC1、C2及びC3とすると、基材表面に存在するSPB相対モル濃度(X)、GMA相対モル濃度(Y)、担体構成ポリマー相対モル濃度(Z)はそれぞれ次式(5)から(7)で表される。
X=x/(x+y+z) (5)
Y=y/(x+y+z) (6)
Z=z/(x+y+z) (7)
ただし、x=C3、y=(C2−4x)/3、z={C1−(10x+7y)}/Aであって、Aは担体構成ポリマーの単位炭素組成であり、ポリエチレンの場合A=2、ポリプロピレンの場合A=3である。
上記で得られる相対モル濃度より共重合ポリマー中のSPBのモル組成比Rは次式(8)で表される。
R=m/(n+m)=X/(X+Y) (8)
また、SPBポリマーの単位分子量MX、GMAポリマー単位分子量MY、担体構成ポリマー単位分子量MZとすると、被覆率S(%)は次式(9)で表される。
S=100{1−ZMZ/(XMX+YMY+ZMZ)} (9)
これらの計算式に基づき、SPBモル組成比R及び被覆率Sを算出した結果、SPBのモル組成比Rは0.05、被覆率Sは85%であった。
(2)比表面積測定
上記で得られたリガンド固定化用基材の比表面積を、自動比表面積/細孔分布測定装置(SHIMADZU社製 MICRIMERITICS TRISTAR 3000)を用いてBET法による多点法比表面積を測定することにより求めた。その結果、比表面積は、0.54m2/gであった。
上記で得られたリガンド固定化用基材の比表面積を、自動比表面積/細孔分布測定装置(SHIMADZU社製 MICRIMERITICS TRISTAR 3000)を用いてBET法による多点法比表面積を測定することにより求めた。その結果、比表面積は、0.54m2/gであった。
(3)抗体固定化量の定量
上記で得られた細胞吸着フィルターにおける抗ヒトCD4モノクローナル抗体の固定化量はBCAタンパク質定量試薬(PIERCE社製 Micro BCA(登録商標) Protein Assay Reagent Kit 23235)を用い、マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices社製 SPECTRA MAX340PC、解析ソフトSOFT max PRO)によって吸光度測定を行い、定量した。その結果、洗浄前の細胞吸着フィルター(4枚)には10.3μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには9.8μgの抗体が固定化されていた。
上記で得られた細胞吸着フィルターにおける抗ヒトCD4モノクローナル抗体の固定化量はBCAタンパク質定量試薬(PIERCE社製 Micro BCA(登録商標) Protein Assay Reagent Kit 23235)を用い、マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices社製 SPECTRA MAX340PC、解析ソフトSOFT max PRO)によって吸光度測定を行い、定量した。その結果、洗浄前の細胞吸着フィルター(4枚)には10.3μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには9.8μgの抗体が固定化されていた。
(4)CD4陽性細胞及び血小板の吸着率
フローサイトメーター(BECTON DICKINSON社製 FACSCALIBUR)を用いたフローサイトメトリー法によって、細胞吸着前のACD−A添加ヒト新鮮血液及び細胞吸着後の溶液(F1及びF2)中のCD4陽性細胞数を測定し、細胞吸着器への細胞の吸着率を計算した。その結果、CD4陽性細胞の吸着率は92.3%(F1)及び59.3%(F2)であった。また、血小板の吸着率は38.7%(8mL平均)であった。
フローサイトメーター(BECTON DICKINSON社製 FACSCALIBUR)を用いたフローサイトメトリー法によって、細胞吸着前のACD−A添加ヒト新鮮血液及び細胞吸着後の溶液(F1及びF2)中のCD4陽性細胞数を測定し、細胞吸着器への細胞の吸着率を計算した。その結果、CD4陽性細胞の吸着率は92.3%(F1)及び59.3%(F2)であった。また、血小板の吸着率は38.7%(8mL平均)であった。
[実施例2]
グラフト反応に用いる反応液を、SPB14.0g、及びGMA26.3mLを500mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.12、被覆率Sは87%であった。また比表面積を測定したところ0.56m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.8μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには8.9μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は94.1%(F1)及び65.3%(F2)であった。また、血小板の吸着率は34.0%(8mL平均)であった。
グラフト反応に用いる反応液を、SPB14.0g、及びGMA26.3mLを500mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.12、被覆率Sは87%であった。また比表面積を測定したところ0.56m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.8μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには8.9μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は94.1%(F1)及び65.3%(F2)であった。また、血小板の吸着率は34.0%(8mL平均)であった。
[実施例3]
グラフト反応に用いる反応液を、SPB27.9g、及びGMA26.3mLを500mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.24、被覆率Sは83%であった。また比表面積を測定したところ0.51m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには11.2μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには10.3μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は98.2%(F1)及び87.2%(F2)であった。また、血小板の吸着率は23.1%(8mL平均)であった。
グラフト反応に用いる反応液を、SPB27.9g、及びGMA26.3mLを500mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.24、被覆率Sは83%であった。また比表面積を測定したところ0.51m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには11.2μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには10.3μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は98.2%(F1)及び87.2%(F2)であった。また、血小板の吸着率は23.1%(8mL平均)であった。
[実施例4]
グラフト反応に用いる反応液を、SPB55.9g、及びGMA26.3mLを500mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.38、被覆率Sは84%であった。また比表面積を測定したところ0.50m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには9.8μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには8.9μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は97.1%(F1)及び87.3%(F2)であった。また、血小板の吸着率は17.5%(8mL平均)であった。
グラフト反応に用いる反応液を、SPB55.9g、及びGMA26.3mLを500mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.38、被覆率Sは84%であった。また比表面積を測定したところ0.50m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには9.8μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには8.9μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は97.1%(F1)及び87.3%(F2)であった。また、血小板の吸着率は17.5%(8mL平均)であった。
[実施例5]
グラフト反応に用いる反応液を、SPB89.4g、及びGMA21.1mLを400mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.50、被覆率Sは79%であった。また比表面積を測定したところ0.48m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには9.4μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには8.0μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は92.7%(F1)及び52.6%(F2)であった。また、血小板の吸着率は5.8%(8mL平均)であった。
グラフト反応に用いる反応液を、SPB89.4g、及びGMA21.1mLを400mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.50、被覆率Sは79%であった。また比表面積を測定したところ0.48m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには9.4μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには8.0μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は92.7%(F1)及び52.6%(F2)であった。また、血小板の吸着率は5.8%(8mL平均)であった。
[実施例6]
グラフト反応に用いる反応液を、SPB14.0g、及びGMA13.2mLを500mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.25、被覆率Sは25%であった。また比表面積を測定したところ0.46m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.9μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには9.6μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は97.5%(F1)及び81.3%(F2)であった。また、血小板の吸着率は25.2%(8mL平均)であった。
グラフト反応に用いる反応液を、SPB14.0g、及びGMA13.2mLを500mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.25、被覆率Sは25%であった。また比表面積を測定したところ0.46m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.9μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには9.6μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は97.5%(F1)及び81.3%(F2)であった。また、血小板の吸着率は25.2%(8mL平均)であった。
[比較例1]
グラフト反応に用いる反応液を、GMA26.3mLを500mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0、被覆率Sは75%であった。また比表面積を測定したところ0.51m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.3μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには9.4μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は90.2%(F1)及び37.3%(F2)であった。また、血小板の吸着率は80.3%(8mL平均)であった。
グラフト反応に用いる反応液を、GMA26.3mLを500mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0、被覆率Sは75%であった。また比表面積を測定したところ0.51m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.3μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには9.4μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は90.2%(F1)及び37.3%(F2)であった。また、血小板の吸着率は80.3%(8mL平均)であった。
[比較例2]
グラフト反応に用いる反応液を、SPB134.1g、及びGMA15.8mLを350mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.59、被覆率Sは80%であった。また比表面積を測定したところ0.47m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには0.7μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには0.2μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は21.7%(F1)及び5.2%(F2)であった。また、血小板の吸着率は5.3%(8mL平均)であった。
グラフト反応に用いる反応液を、SPB134.1g、及びGMA15.8mLを350mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.59、被覆率Sは80%であった。また比表面積を測定したところ0.47m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには0.7μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには0.2μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は21.7%(F1)及び5.2%(F2)であった。また、血小板の吸着率は5.3%(8mL平均)であった。
[実施例7]
担体をポリプロピレンからなる不織布(平均繊維径2.9μm 目付80g/m2)に代えたこと以外は実施例3と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.23、被覆率Sは87%であった。また比表面積を測定したところ0.72m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.3μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには8.6μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は99.9%(F1)及び92.1%(F2)であった。また、血小板の吸着率は23.3%(8mL平均)であった。
担体をポリプロピレンからなる不織布(平均繊維径2.9μm 目付80g/m2)に代えたこと以外は実施例3と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.23、被覆率Sは87%であった。また比表面積を測定したところ0.72m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.3μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには8.6μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は99.9%(F1)及び92.1%(F2)であった。また、血小板の吸着率は23.3%(8mL平均)であった。
[実施例8]
担体をポリプロピレンからなる不織布(平均繊維径20.9μm 目付80g/m2)に代えたこと以外は実施例3と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.25、被覆率Sは84%であった。また比表面積を測定したところ0.22m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.6μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには8.1μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は82.1%(F1)及び70.9%(F2)であった。また、血小板の吸着率は5.4%(8mL平均)であった。
担体をポリプロピレンからなる不織布(平均繊維径20.9μm 目付80g/m2)に代えたこと以外は実施例3と同様の方法で、リガンド固定化用基材を作製した。
XPSによるリガンド固定化用基材の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.25、被覆率Sは84%であった。また比表面積を測定したところ0.22m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.6μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには8.1μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は82.1%(F1)及び70.9%(F2)であった。また、血小板の吸着率は5.4%(8mL平均)であった。
[実施例9]
担体をポリエチレンからなる平均粒径320μmの粒子に代えたこと、及びグラフト反応に用いる反応液を、SPB27.9g、及びGMA26.3mLを500mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材(リガンド固定化用粒子)を作製した。
XPSによるリガンド固定化用粒子の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.28、被覆率Sは67%であった。また比表面積を測定したところ0.03m2/gであった。
該リガンド固定化用粒子360μLから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着粒子(吸着材)を作製し、実施例1と表面積が同じになるように粒子量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着粒子には10.8μg、SDS洗浄後の細胞吸着粒子には10.2μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着粒子から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は83.7%(F1)及び74.1%(F2)であった。また、血小板の吸着率は4.8%(8mL平均)であった。
担体をポリエチレンからなる平均粒径320μmの粒子に代えたこと、及びグラフト反応に用いる反応液を、SPB27.9g、及びGMA26.3mLを500mLのメタノールに溶解して得た反応液に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定化用基材(リガンド固定化用粒子)を作製した。
XPSによるリガンド固定化用粒子の表面解析の結果、SPBのモル組成比Rは0.28、被覆率Sは67%であった。また比表面積を測定したところ0.03m2/gであった。
該リガンド固定化用粒子360μLから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着粒子(吸着材)を作製し、実施例1と表面積が同じになるように粒子量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着粒子には10.8μg、SDS洗浄後の細胞吸着粒子には10.2μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着粒子から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は83.7%(F1)及び74.1%(F2)であった。また、血小板の吸着率は4.8%(8mL平均)であった。
[実施例10]
抗体を抗ヒトKLRG1抗体に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには11.0μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには9.1μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作成し、細胞の吸着率を測定した結果、KLRG1陽性細胞の吸着率は90.1%(F1)及び77.6%(F2)であった。また、血小板の吸着率は26.1%(8mL平均)であった。
抗体を抗ヒトKLRG1抗体に代えたこと以外は実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには11.0μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには9.1μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作成し、細胞の吸着率を測定した結果、KLRG1陽性細胞の吸着率は90.1%(F1)及び77.6%(F2)であった。また、血小板の吸着率は26.1%(8mL平均)であった。
[実施例11]
抗体を抗ヒトKLRG1抗体に代えたこと以外は実施例5と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.1μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには8.2μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作成し、細胞の吸着率を測定した結果、KLRG1陽性細胞の吸着率は94.6%(F1)及び84.4%(F2)であった。また、血小板の吸着率は12.5%(8mL平均)であった。
抗体を抗ヒトKLRG1抗体に代えたこと以外は実施例5と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.1μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには8.2μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作成し、細胞の吸着率を測定した結果、KLRG1陽性細胞の吸着率は94.6%(F1)及び84.4%(F2)であった。また、血小板の吸着率は12.5%(8mL平均)であった。
[実施例12]
グラフト反応を下記方法により行ったこと、XPSによる表面解析を下記方法により行ったこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定用基材の作製及び評価を行った。
(グラフト反応)
SPB27.9g、及び2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート(カレンズMOI−BP、昭和電工)44.3mLを500mLのメタノールに溶解して反応液を得た。この反応液に40℃にて60分間窒素を通気した。
耐圧ガラス容器に担体(実施例1に記載の不織布)をすばやく入れ、減圧後、上記反応液を引き込み40℃にて1時間反応させた。反応後、取り出した不織布をジメチルホルムアミド及びメタノールにより洗浄し、120℃にて真空乾燥することでイソシアネート基を脱保護し、リガンド固定化用基材を得た。
(XPSによる表面解析)
重合されたSPBとメタクリロイルオキシエチルイソシアネートのモル組成比及び被覆率を求めるためイソシアネート基の硫黄標識化を行った。
2−メルカプトエタノール2mLの無水THF溶液50mLにリガンド固定化用基材2gを十分に浸漬し、窒素雰囲気下、室温にて3時間反応後、無水THFで洗浄し、40℃にて真空乾燥を行った。上記で得られた硫黄標識化不織布の表面をX線光電子分光法(XPS ESCA)により解析した。XPSより得られる炭素、窒素及び硫黄の各相対元素濃度をそれぞれC1、C2及びC3とすると、基材表面に存在するSPB相対モル濃度(X)、メタクリロイルオキシエチル(2−ヒドロキシエチル)チオカルバメートの相対モル濃度(Y)、及び担体構成ポリマー相対モル濃度(Z)はそれぞれ次式(10)から(12)で表される。
X=x/(x+y+z) (10)
Y=y/(x+y+z) (11)
Z=z/(x+y+z) (12)
ただし、x=(C2−y)、y=C3、z={C1−(10x+9y)}/Aであって、Aは担体構成ポリマーの単位炭素組成であり、ポリエチレンの場合A=2、ポリプロピレンの場合A=3である。
上記で得られる相対モル濃度より共重合ポリマー中のSPBのモル組成比Rは次式(13)で表される。
R=m/(n+m)=X/(X+Y) (13)
また、SPBポリマーの単位分子量MX、メタクリロイルオキシエチル(2−ヒドロキシエチル)チオカルバメートポリマーの単位分子量MY、担体構成ポリマーの単位分子量MZとすると、被覆率S(%)は次式(14)で表される。
S=100{1−ZMZ/(XMX+YMY+ZMZ)} (14)
これらの計算式に基づき、SPBモル組成比R及び被覆率Sを算出した結果、SPBのモル組成比Rは0.19、被覆率Sは82%であった。
またリガンド固定化用基材の比表面積を測定したところ0.48m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.7μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには9.3μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は97.0%(F1)及び72.6%(F2)であった。また、血小板の吸着率は24.8%(8mL平均)であった。
グラフト反応を下記方法により行ったこと、XPSによる表面解析を下記方法により行ったこと以外は実施例1と同様の方法で、リガンド固定用基材の作製及び評価を行った。
(グラフト反応)
SPB27.9g、及び2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート(カレンズMOI−BP、昭和電工)44.3mLを500mLのメタノールに溶解して反応液を得た。この反応液に40℃にて60分間窒素を通気した。
耐圧ガラス容器に担体(実施例1に記載の不織布)をすばやく入れ、減圧後、上記反応液を引き込み40℃にて1時間反応させた。反応後、取り出した不織布をジメチルホルムアミド及びメタノールにより洗浄し、120℃にて真空乾燥することでイソシアネート基を脱保護し、リガンド固定化用基材を得た。
(XPSによる表面解析)
重合されたSPBとメタクリロイルオキシエチルイソシアネートのモル組成比及び被覆率を求めるためイソシアネート基の硫黄標識化を行った。
2−メルカプトエタノール2mLの無水THF溶液50mLにリガンド固定化用基材2gを十分に浸漬し、窒素雰囲気下、室温にて3時間反応後、無水THFで洗浄し、40℃にて真空乾燥を行った。上記で得られた硫黄標識化不織布の表面をX線光電子分光法(XPS ESCA)により解析した。XPSより得られる炭素、窒素及び硫黄の各相対元素濃度をそれぞれC1、C2及びC3とすると、基材表面に存在するSPB相対モル濃度(X)、メタクリロイルオキシエチル(2−ヒドロキシエチル)チオカルバメートの相対モル濃度(Y)、及び担体構成ポリマー相対モル濃度(Z)はそれぞれ次式(10)から(12)で表される。
X=x/(x+y+z) (10)
Y=y/(x+y+z) (11)
Z=z/(x+y+z) (12)
ただし、x=(C2−y)、y=C3、z={C1−(10x+9y)}/Aであって、Aは担体構成ポリマーの単位炭素組成であり、ポリエチレンの場合A=2、ポリプロピレンの場合A=3である。
上記で得られる相対モル濃度より共重合ポリマー中のSPBのモル組成比Rは次式(13)で表される。
R=m/(n+m)=X/(X+Y) (13)
また、SPBポリマーの単位分子量MX、メタクリロイルオキシエチル(2−ヒドロキシエチル)チオカルバメートポリマーの単位分子量MY、担体構成ポリマーの単位分子量MZとすると、被覆率S(%)は次式(14)で表される。
S=100{1−ZMZ/(XMX+YMY+ZMZ)} (14)
これらの計算式に基づき、SPBモル組成比R及び被覆率Sを算出した結果、SPBのモル組成比Rは0.19、被覆率Sは82%であった。
またリガンド固定化用基材の比表面積を測定したところ0.48m2/gであった。
該リガンド固定化用基材から、実施例1と同様の方法で、細胞吸着フィルターを作製し、実施例1と表面積が同じになるように不織布量を調整した。その抗体固定化量を測定した結果、洗浄前の細胞吸着フィルターには10.7μg、SDS洗浄後の細胞吸着フィルターには9.3μgの抗体が固定化されていた。該細胞吸着フィルターから、実施例1と同様の方法で、細胞吸着器を作製し、細胞の吸着率を測定した結果、CD4陽性細胞の吸着率は97.0%(F1)及び72.6%(F2)であった。また、血小板の吸着率は24.8%(8mL平均)であった。
1…水不溶性担体、2…共重合体、10…結合部分、20…R3基、30…R2基(求電子官能基)、40…リガンド、50…容器、60a、60b…ヘッダーキャップ、F…血液の流れ方向、100…リガンド固定化用基材、110…特異的細胞分離材、200…血液処理器。
Claims (14)
- 前記共重合体が、エポキシ基を含む、請求項1又は2に記載のリガンド固定化用基材。
- 前記共重合体による前記水不溶性担体の表面の被覆率が25%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリガンド固定化用基材。
- 前記水不溶性担体が、多孔膜又は粒子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリガンド固定化用基材。
- 前記水不溶性担体が、繊維からなる多孔膜であり、かつ平均繊維径が2μm以上20μm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリガンド固定化用基材。
- 前記共重合体が、エポキシ基を含む、請求項7に記載の使用。
- 前記一般式(4)で表されるモノマーが、エポキシ基を有する、請求項9に記載の製造方法。
- 前記水不溶性担体が、多孔膜又は粒子である、請求項9又は10に記載の製造方法。
- 前記水不溶性担体が、繊維からなる多孔膜であり、かつ平均繊維径が2μm以上20μm以下である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のリガンド固定化用基材に、抗体、タンパク質、ペプチド及び低分子化合物からなる群より選択される1種以上のリガンドが結合した特異的細胞分離材。
- 血液の導入口及び導出口を有する容器の内部に、請求項13に記載の特異的細胞分離材が充填された血液処理器。
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