JPWO2013038685A1 - 溶接構造体 - Google Patents
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Abstract
Description
また、コンテナ船は、近年、大型化し、6,000〜20,000 TEUといった大型船が建造されるようになってきている。なお、TEU(Twenty feet Equivalent Unit)は、長さ20フィートのコンテナに換算した個数を表し、コンテナ船の積載能力の指標を示している。このような船の大型化に伴い、船体外板は、板厚:50mm以上で、降伏強さ:390N/mm2級以上の厚鋼板が使用される傾向となっている。
船体構造においては、従来から安全性という観点から、万一、脆性破壊が発生した場合でも、脆性亀裂の伝播を大規模破壊に至る前に停止させ、船体分離を防止することが必要であると考えられている。
非特許文献1では、溶接部で強制的に発生させた脆性亀裂の伝播経路、伝播挙動が実験的に調査されている。ここには、溶接部の破壊靱性がある程度確保されていれば、溶接残留応力の影響により脆性亀裂は溶接部から母材側に逸れてしまうことが多いという結果が記載されているが、溶接部に沿って脆性亀裂が伝播した例も複数例確認されている。このことは、脆性破壊が溶接部に沿って直進伝播する可能性が無いとは言い切れないことを示唆していることになる。
また、非特許文献2には、とくに発生した脆性亀裂の伝播停止のために、特別な脆性亀裂伝播停止特性を有する厚鋼板を必要とするとの指摘もある。
特許文献1に記載された技術では、この骨材に、表層部および裏層部で3mm以上の厚みにわたり0.5〜5μmの平均円相当粒径を有し、さらに板厚面に平行な面で(100)結晶面のX線面強度比が1.5以上である、ミクロ組織を有する鋼板を用いるとしている。このようなミクロ組織を有する鋼板を補強材として隅肉溶接した構造とすることにより、突合せ溶接継手部に脆性亀裂が発生しても、補強材である骨材で脆性亀裂の伝播を停止でき、溶接構造体が破壊するような致命的な損傷を防止できるとしている。
特許文献2に記載された溶接構造体では、隅肉溶接継手断面におけるウェブの、フランジとの突合せ面に未溶着部を残存させる。そして、その未溶着部の幅と、隅肉溶接部の左右の脚長とウェブ板厚との和との比、Xが、被接合部材(フランジ)の脆性亀裂伝播停止靭性Kcaと特別な関係式を満足するように、未溶着部の幅を調整する。これにより、被接合部材(フランジ)を板厚:50mm以上の厚物材としても、接合部材(ウェブ)で発生した脆性亀裂の伝播を、隅肉溶接部のウェブとフランジの突合せ面で停止させ、被接合部材(フランジ)への脆性亀裂の伝播を阻止することができるとしている。
また、特許文献2に記載された技術は、接合部材(ウェブ)で発生した脆性亀裂の伝播を、構造の不連続性と、被接合部材(フランジ)の脆性亀裂伝播停止特性との組合せで、阻止しようとする技術である。
しかし、日本造船研究協会第169委員会報告(「船体構造の破壊管理制御設計に関する研究―報告書―」、(1979)、p.118〜136、日本造船研究協会第169委員会)に示されるように、一般に、隅肉溶接継手の被接合部材(フランジ)で発生した脆性亀裂を接合部材(ウェブ)で伝播停止させることは、接合部材(ウェブ)で発生した脆性亀裂を被接合部材(フランジ)で伝播停止させることに比べて、難しいことが実験的に確認されている。
この理由は明確には記載されていないが、一因として、T継手部に亀裂が突入するときの破壊駆動力(応力拡大係数)が、被接合部材(フランジ)に突入する場合よりも接合部材(ウェブ)に突入する場合のほうが大きくなることが考えられる。
なお、特許文献2には、接合部材(ウェブ)の脆性亀裂伝播停止特性については何の配慮もなされていない。
すなわち、特許文献2に記載された技術は、例えば、NK船級の「脆性亀裂アレスト設計指針」(2009年9月制定)で想定されている、大型コンテナ船の強力甲板(フランジに相当)で発生した脆性亀裂がハッチサイドコーミング(ウェブに相当)に伝播するようなケースに対して、十分な亀裂伝播停止特性を有しているとはいえない。
なお、本発明が対象とする溶接構造体は、被接合材(フランジ)の表面に接合部材(ウェブ)の端面を突合せて、隅肉溶接により接合してなる隅肉溶接継手を備える溶接構造体とする。
その結果、被接合部材(フランジ)から発生した脆性亀裂の伝播を阻止(停止)するには、被接合部材(フランジ)と接合部材(ウェブ)との突合せ面に不連続部を確保し、脆性亀裂の伝播部を所定値以上の脆性亀裂伝播停止靭性Kcaを有する脆性亀裂伝播停止特性に優れた部材で構成しただけでは十分でないことに、思い至った。
とくに、被接合部材(フランジ)の板厚tf(mm)が大きくなると脆性亀裂先端のエネルギー解放率(亀裂進展駆動力)が増加し、脆性亀裂が停止しにくくなることに鑑みて、被接合部材(フランジ)の板厚tf(mm)に関連した、隅肉溶接部の靭性向上が必須となることに想到した。
また、隅肉溶接部の脚長や溶着幅が長くなると、脆性亀裂の伝播が容易となるため、隅肉溶接部の脚長もしくは溶着幅の少なくとも一方を16mm以下にする必要があることも知見した。
すなわち、本発明者らは、特許文献2に記載の技術では、全く考慮されていない隅肉溶接継手の隅肉溶接金属部に所定値以上の低温靭性を保持させることにより、特許文献2に記載の技術では達成困難であった被接合部材(フランジ)から接合部材(ウェブ)に突入する脆性亀裂の伝播を阻止できることを見出した。
まず、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
種々の板厚を有する鋼板を用いて、種々の未溶着部比率Y(%)(=(隅肉溶接継手断面における未溶着部の幅B)/(接合部材の板厚tw)×100)の未溶着部と、種々の低温靭性、脚長を有する隅肉溶接部からなる、大型隅肉溶接継手を作製した。
なお、被接合部材(フランジ)には、突合せ溶接継手部を有する板厚:50mm以上鋼板を用いた。また、接合部材(ウェブ)には、脆性亀裂伝播停止靭性Kcaに何ら配慮していない通常の造船D〜E級鋼を用いた。
なお、突合せ溶接継手は、1パスの大入熱エレクトロガスアーク溶接(SEGARCまたは2電極SEGARC)若しくは炭酸ガスアーク溶接(多層盛)で作製した。
なお、図4(b)に示す超大型構造モデル試験体は、被接合部材(フランジ)の突合せ溶接継手部11が接合部材(ウェブ)と直交するように作製し、また機械ノッチ7の先端が突合せ溶接継手部11のBOND部となるように、加工した。
なお、応力257N/mm2は、船体に適用されている降伏強度390N/mm2級鋼板の最大許容応力相当の値である。また、温度:−10℃は船舶の設計温度である。
図5(a),(b)から、未溶着部比率Yが95%以上で、かつ隅肉溶接部の靭性と被接合部材(フランジ)の板厚tfが特定の関係を満足する場合には、負荷応力が257N/mm2の場合でも、接合部材(ウェブ)のKcaに何ら配慮を加えずに、被接合部材(フランジ)で発生した脆性亀裂は隅肉溶接金属部で停止でき、脆性亀裂の接合部材(ウェブ)への伝播を阻止(停止)できることが判明した。
なお、未溶着部比率Yは、隅肉溶接継手断面における未溶着部の幅Bと接合部材(ウェブ)板厚twの比、(B/tw)×100(%)で定義される値である。
vTrs(℃) ≦ −1.5tf(mm)+70 ‥‥(1)
が、図5(b)から、
vE-20(J) ≧ 2.75tf(mm)−105 ‥‥(2)
が得られる。
そして、未溶着部の設定に加えて、さらに上記(1)、(2)式を満足するまでに、隅肉溶接金属部の低温靭性を高めれば、板厚50mm以上の厚肉の被接合部材(フランジ)で発生した脆性亀裂を隅肉溶接継手部の溶接金属内で停止させることが可能となることを見出した。
上記したような未溶着部の設定や、隅肉溶接部の低温靭性の著しい向上という対策を施せば、接合部材(ウェブ)に使用する厚鋼板は、特別に脆性亀裂伝播停止特性を考慮することなく、被接合部材(フランジ)で発生した脆性亀裂の伝播を阻止することができるという結論を得た。
1.接合部材の端面を板厚50mm以上の被接合部材の表面に突合わせ、前記接合部材と前記被接合部材とを隅肉溶接により接合してなる溶接脚長もしくは溶着幅の少なくとも一方が16mm以下の隅肉溶接継手を備えた溶接構造体であって、
前記隅肉溶接継手における前記接合部材の端面と前記被接合部材の表面とを突合わせた面に、前記隅肉溶接継手の断面で該接合部材の板厚twの95%以上の未溶着部を有し、
さらに、前記隅肉溶接継手の隅肉溶接金属について、
該隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs(℃)と前記被接合部材の板厚tfとが下記(1)式の関係、および/または、
該隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験の試験温度:−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20(J)と前記被接合部材の板厚tfとが下記(2)式の関係を満足させる、
ことを特徴とする溶接構造体。
記
vTrs ≦ −1.5tf+70 ‥‥(1)
vE-20 ≧ 2.75tf−105 ‥‥(2)
ここで、vTrs:隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度(℃)、
vE-20:試験温度:−20℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギー(J)、
tf:被接合部材の板厚(mm)
3.前記接合部材が突合せ溶接継手部を有してなり、該接合部材を、該接合部材の突合せ溶接継手部が前記被接合部材の突合せ溶接継手部と交差するように配設してなることを特徴とする前記2に記載の溶接構造体。
また、図1(c)に示すように、接合部材(ウェブ)1と被接合部材(フランジ)2の間にすきま14が空いていてもよい。さらに、図1(d)に示すように、接合部材(ウェブ)1と被接合部材(フランジ)2との間にすきま14が空いており、かつそのすきま14の中にスペーサー15が挿入されていてもよい。
図1(c)および図1(d)の場合、溶着幅13は、接合部材(ウェブ)1側の溶着幅とする。この溶着幅13が所定の値(16mm以下)を満足していれば良い。また、図1(d)の場合、隅肉溶接金属5はスペーサー15に溶け込んでいても良い。
なお、たとえ、接合部材(ウェブ)1側に脆性亀裂が伝播したとしても、本発明では、所定以上の靭性を保持する隅肉溶接金属5を形成するため、脆性亀裂は、隅肉溶接金属5で停止することになる。
また、図3は、接合部材(ウェブ)1および被接合部材(フランジ)2がともに、突合せ溶接継手部11、12を有する鋼板である場合で、被接合部材(フランジ)2の突合せ溶接継手部11と接合部材(ウェブ)1の突合せ溶接継手部12とが交差する隅肉溶接継手を示す。図3(a)は隅肉溶接継手の外観を、図3(b)は突合せ溶接継手部11、12における継手断面形状を示す。
また、隅肉溶接継手の製造方法はとくに限定する必要はなく、通常の製造方法がいずれも適用できる。例えば、フランジ用鋼板同士、ウェブ用鋼板同士を突合せ溶接し、得られた突合せ溶接継手を隅肉溶接して隅肉溶接継手を製造してもよい。
また、突合せ溶接前の一組のウェブ用鋼板をフランジに仮付溶接し、ついでウェブ用鋼板同士を突合せ溶接し、得られた突合せ溶接継手をフランジに本溶接(隅肉溶接)して隅肉溶接継手を製造してもよい。
vTrs ≦ −1.5tf+70 ‥‥(1)
vE-20 ≧ 2.75tf−105 ‥‥(2)
(ここで、vTrs:隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度(℃)、vE-20(J):隅肉溶接金属の試験温度:−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギー(J)、tf:被接合部材の板厚(mm))
隅肉溶接金属の靭性が、被接合部材(フランジ)の板厚tfと関連して、上記した(1)式および/または(2)式を満足することにより、図5に示すように、被接合部材(フランジ)の板厚が50mm以上である溶接構造体を、所望の脆性亀裂伝播阻止特性を確保した溶接構造体とすることができる。隅肉溶接金属の靭性が、上記した(1)式および(2)式のいずれも満足しない場合には、隅肉溶接金属の靭性が不足して、被接合部材(フランジ)で発生し伝播してきた脆性亀裂を隅肉溶接金属部で伝播阻止することができない。
なお、本発明溶接構造体は、上記した隅肉溶接継手を備えるものであり、例えば、船舶の船体外板をフランジとし、隔壁をウェブとする船体構造、あるいはデッキをフランジとし、ハッチをウェブとする船体構造などに適用可能である。
なお、作製した隅肉溶接継手では、接合部材1と被接合部材2との突合せ面に、図1(a)、(c)もしくは(d)に示すような未溶着部4を設け、未溶着部の比率Y(=(未溶着部の幅B/接合部材(ウェブ)板厚tw)を種々変化させた。
なお、被接合部材(フランジ)は、厚鋼板(母材のみ)(図4(a))または突合せ溶接継手を有する厚鋼板(図4(b)、(c))とし、接合部材(ウェブ)は、厚鋼板(母材のみ)(図4(a)、(b))、または突合せ溶接継手を有する厚鋼板(図4(c))とした。
突合せ溶接継手は、1パス大入熱エレクトロガスアーク溶接(SEGARCおよび2電極SEGARC)または多層CO2溶接により作製した。
また、隅肉溶接継手は、溶接材料および溶接入熱、シールドガス等の溶接条件を変化させて、種々の靭性、種々の溶接脚長および溶着幅の隅肉溶接金属を有する隅肉溶接継手とした。なお、隅肉溶接金属の靭性は、隅肉溶接金属もしくは隅肉溶接と同じ条件で作製した突合せ溶接継手からシャルピー衝撃試験片(10mm厚)を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して試験温度:−20℃での吸収エネルギーvE-20(J)、破面遷移温度vTrs(℃)を求めた。
なお、一部の隅肉溶接継手では、接合部材(ウェブ)1と被接合部材(フランジ)2との間にすきまを空けた。さらにその一部の隅肉溶接継手では、接合部材(ウェブ)1と被接合部材(フランジ)2との間のすきまにスペーサーを挿入して隅肉溶接継手を作製した。
なお、図4(b)に示す超大型構造モデル試験体では、被接合部材(フランジ)の突合せ溶接継手部11を接合部材(ウェブ)と直交するように作製した。また、図4(c)に示す超大型構造モデル試験体では、被接合部材(フランジ)の突合せ溶接継手部11と接合部材(ウェブ)の突合せ溶接継手部12とを交差させた。そして、機械ノッチ7の先端を突合せ溶接継手部11のBOND部、または溶接金属WMとなるように加工した。
2 フランジ
3 脚長
4 未溶着部
5 隅肉溶接金属
7 機械ノッチ
8 仮付け溶接
9 大型隅肉溶接継手
11 フランジの突合せ溶接継手部
12 ウェブの突合せ溶接継手部
13 溶着幅
14 すきま
15 スペーサー
θ 交差角
Claims (3)
- 接合部材の端面を板厚50mm以上の被接合部材の表面に突合わせ、前記接合部材と前記被接合部材とを隅肉溶接により接合してなる溶接脚長もしくは溶着幅の少なくとも一方が16mm以下の隅肉溶接継手を備えた溶接構造体であって、
前記隅肉溶接継手における前記接合部材の端面と前記被接合部材の表面とを突合わせた面に、前記隅肉溶接継手の断面で該接合部材の板厚twの95%以上の未溶着部を有し、
さらに、前記隅肉溶接継手の隅肉溶接金属について、
該隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs(℃)と前記被接合部材の板厚tfとが下記(1)式の関係、および/または、
該隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験の試験温度:−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20(J)と前記被接合部材の板厚tfとが下記(2)式の関係を満足させる、
ことを特徴とする溶接構造体。
記
vTrs ≦ −1.5tf+70 ‥‥(1)
vE-20 ≧ 2.75tf−105 ‥‥(2)
ここで、vTrs:隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度(℃)、
vE-20:試験温度:−20℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギー(J)、
tf:被接合部材の板厚(mm) - 前記板厚50mm以上の被接合部材が、前記接合部材に交差するように、突合せ溶接継手部を有してなることを特徴とする請求項1に記載の溶接構造体。
- 前記接合部材が突合せ溶接継手部を有してなり、該接合部材を、該接合部材の突合せ溶接継手部が前記被接合部材の突合せ溶接継手部と交差するように配設してなることを特徴とする請求項2に記載の溶接構造体。
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