この発明は、人の覚醒が低下した状態である居眠りを検出する居眠り検出方法と装置に関する。
従来、居眠りを検出する方法として、例えば1秒以内の短時間に、複数回の閉眼が生じる状態である瞬目群発を検出して、覚醒が低下していることを検出する方法が提案されている。例えば特許文献1には、目の瞬きである瞬目の群発を検出してから所定時間以内に閉瞼を伴うゆっくりとした眼球の横移動であるSEM(Slow Eye Movement)を検出した場合に、覚醒度が低下している(居眠りしている)と判定する検出方法が開示されている。瞬目の群発やSEMは、入眠初期に現れる特徴的な現象であり、これらを組み合わせて覚醒度の低下を判定している。
特許文献2には、被検出者の瞬目を検出する瞬目検出手段と、前記瞬目検出手段により検出された瞬目から、該瞬目とその直前の瞬目との瞬目間間隔が所定時間以内で起こった瞬目群発の瞬目、及び所定時間以上の長時間閉眼を伴う瞬目を判定する瞬目判定手段と、前記瞬目群発の瞬目から前記長時間閉眼を伴う瞬目までの時間に基づいて覚醒低下度を判定する覚醒低下判定手段とを備えた覚醒低下検出装置が開示されている。
しかし特許文献2に記載された検出方法の場合、通常の瞬目と群発性瞬目とを分けずに瞬目を抽出しており、抽出方法が群発性瞬目に関して特化されていない。このため、特許文献2に記載された検出方法では、群発性瞬目時に多く見られる閉眼から半眼に折り返して閉眼に戻るような瞬目現象を逃してしまい、群発性瞬目を精度良く検出することができないという問題があった。
そこで、特許文献3は、群発性瞬目を精度良く検出するために、判定対象者の眼を含む領域を連続して撮像する撮像手段と、前記撮像手段により連続して撮像された画像に基づいて、瞼の開度の時系列データを検出する開度検出手段と、前記開度検出手段によって検出された瞼の開度の時系列データに基づいて、前記瞼の開度が持続して所定の閾値未満となる範囲から、極大値及び極小値を抽出し、抽出された極大値及び極小値の間に設定された閾値で検出される瞬目間間隔が所定時間以内となる群発性瞬目を検出する群発性瞬目検出手段と、前記群発性瞬目検出手段による検出結果に基づいて、前記判定対象者の眠気状態を判定する眠気状態判定手段とから成る眠気判定装置を提案している。
一方、非特許文献1,2では、瞬きの特徴のみに基づく居眠り状態を検出するために、瞬目群発中の第1瞬目の閉眼時間と眠気表情値の関係を調査したものである。その結果、覚醒度が低下すると、第1瞬目の閉眼時間が延びることが示されている。
特開2006−136556号公報
特開2008−73335号公報
特開2010−224637号公報
平成22年度電気関係学会北陸支部連合大会講演論文集B-3
平成22年度日本生体医工学会北陸支部大会講演論文集pp.25~26
上記背景技術の特許文献1,2に開示された発明の瞬目群発の検出は、図2(b)、図3(b)に示すように、一般的に閉眼の一つの極小値から次の極小値までの時間を瞬目間間隔TOp(i)として測定していた。そして、判定基準値ThOを例えば1秒とし、瞬目間間隔TOp(i)が判定基準値ThO以下の間隔の場合を瞬目群発と定義していた。この場合の瞬目間間隔TOp(i)は、閉眼状態の極小値から開眼まで及び開眼状態から閉眼の極値までの時間も含めて測定しているため、瞼を閉じる動作の時間や瞼を開く動作の時間が長くなる群発性の瞬目を検出できず、正確に瞬目群発を検出できないものであった。
特許文献3に開示された検出方法は、瞼の開度の時系列データを検出し、検出された瞼の開度の時系列データに基づいて、前記瞼の開度が持続して所定の閾値未満となる範囲から瞬目群発を判断しているため、半閉眼状態の瞼の開度を正確に測定することが困難であり、測定誤差も生じやすいものである。
非特許文献1,2では、瞬目群発中の瞬きの閉眼時間から居眠り状態を検出するための基準や実時間の検出タイミングが示されておらず、精確に居眠り状態を判断できるものではなかった。さらに、瞬目群発中の第1瞬目の閉眼時間のみに基づく居眠り状態の判定では、居眠り検出精度が低く、居眠り検出タイミングに遅延が生じる問題がある。
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、比較的簡単な装置で、正確に瞬目群発を検出することができ、居眠りの検出早さ及び精度を向上させた居眠り検出方法と装置を提供することを目的とする。
この発明は、人の目の閉眼から開眼までの状態のうち、ほぼ開眼した状態を開眼時間とし、それ以外を閉眼時間として測定し、健常成人の覚醒状態における平均瞬目間間隔に比べて相対的に短い時間を第一の閾値時間(瞬目群発の判定基準値ThO)として定義し、健常成人の覚醒状態における平均閉眼時間に比べて相対的に長い時間を第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)として定義し、前記第一の閾値時間以下の開眼を検出した場合(s2)にその前後の瞬きを瞬目群発と定義し、前記瞬目群発中の瞬きのうち、前記第一の閾値時間以下の開眼時間の後に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第二の閾値時間以上に達した場合(s5)に居眠り状態と判断する居眠り検出方法である。
また、前記瞬目群発中の瞬きのうち、前記第一の閾値時間以下の開眼の前に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第二の閾値時間以上の場合(s3)に直ちに居眠り状態と判断する居眠り検出方法である。
前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を第三の閾値時間として設定し、前記瞬目群発中の瞬きのうち、前記第一の閾値時間以下の開眼の後に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第三の閾値時間(居眠り判定基準ThC2)以上に達した場合(s6)に直ちに居眠り状態と判断するものである。
前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を第三の閾値時間として設定し、前記開眼時間の検出に際して前記第一の閾値時間より長い開眼を検出した場合、その直前の瞬きが生じる前の開眼時間が前記第一の閾値時間より長い場合に、前記直前の瞬きを瞬目群発以外の瞬きと判定し、前記瞬目群発以外の瞬きの閉眼時間が前記第三の閾値時間以上の場合(s9)に直ちに居眠り状態と判断するものである。
前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を第三の閾値時間として設定し、前記開眼時間の検出に際して前記第一の閾値時間より長い開眼を検出し、その直後の瞬きの閉眼時間が前記第三の閾値時間以上に達した場合(s11)に直ちに居眠り状態と判断するものである。前記第三の閾値時間は、例えば、健常成人の覚醒状態における前記瞬目群発以外の瞬きの平均閉眼時間より相対的に長い閉眼時間としても良い。
また、前記瞬目群発中の瞬きの前記閉眼時間と前記瞬目群発以外の瞬きの前記閉眼時間の和として得られる合計閉眼時間が、例えば前記第三の閾値時間より相対的に長い場合に居眠り状態としても良い。さらに、前記合計閉眼時間は、前記瞬目群発中の瞬きと前記瞬目群発以外の瞬きの前記閉眼時間にそれぞれ重みをかけて足し合わせることにより求められるものでも良い
またこの発明は、人の目の位置を認識して、目の閉眼から開眼までの状態を検出する閉眼検出手段と、前記閉眼検出手段により人の目がほぼ開眼した状態を開眼時間とし、それ以外を閉眼時間として測定する瞬目時間測定手段とを備え、健常成人の覚醒状態における平均瞬目間間隔に比べて相対的に短い時間を第一の閾値時間(瞬目群発の判定基準値ThO)として定義し、健常成人の覚醒状態における平均閉眼時間に比べて相対的に長い時間を第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)として定義し、前記第一の閾値時間以下の開眼を検出した場合にその前後の瞬きを瞬目群発と定義し、前記瞬目時間測定手段により測定した瞬きの時間を基に前記瞬目群発を判別する瞬目群発判別手段と、前記瞬目群発を検出した場合、前記瞬目群発中の瞬きのうち、前記第一の閾値時間以下の開眼の後に生じた瞬きの閉眼時間が前記第二の閾値時間以上に達した場合に居眠り状態であるとする居眠り判別手段とを備えた居眠り検出装置である。
また、前記居眠り判別手段は、前記瞬目群発中の瞬きのうち、前記瞬目群発中の瞬きのうち、前記第一の閾値時間以下の開眼の前に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第二の閾値時間以上の場合に直ちに居眠り状態であるとする居眠り判別手段とを備えた居眠り検出装置である。
前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を第三の閾値時間として設定し、前記居眠り判別手段は、前記瞬目群発判別手段により検出された前記瞬目群発の瞬きのうち、前記第一の閾値時間以下の開眼の後に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第三の閾値時間(居眠り判定基準ThC2)以上に達した場合に直ちに居眠り状態であるとするものである。
前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を第三の閾値時間として設定し、前記居眠り判別手段は、前記瞬目時間測定手段により、前記第一の閾値時間より長い開眼を検出した場合、その直前の瞬きが生じる前の開眼時間が前記第一の閾値時間より長い場合に、前記直前の瞬きを瞬目群発以外の瞬きと判定し、前記瞬目群発以外の瞬きの閉眼時間が前記第三の閾値時間以上の場合に直ちに居眠り状態とするものである。
前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を第三の閾値時間として設定し、前記居眠り判別手段は、前記瞬目時間測定手段により、前記第一の閾値時間より長い開眼を検出し、その直後の瞬きの閉眼時間が前記第三の閾値時間以上に達した場合に直ちに居眠り状態とするものである。前記第三の閾値時間は、例えば、健常成人の覚醒状態における前記瞬目群発以外の瞬きの平均閉眼時間より相対的に長い閉眼時間としても良い。
前記居眠り判別手段は、前記瞬目群発判別手段により検出された前記瞬目群発中の瞬きの前記閉眼時間と、前記瞬目時間測定手段により検出された前記瞬目群発以外の瞬きの前記閉眼時間の和として得られる合計閉眼時間が、例えば前記第三の閾値時間より相対的に長い場合に居眠り状態とするものである。前記居眠り判別手段は、前記合計閉眼時間を前記瞬目群発中の瞬きと前記瞬目群発以外の瞬きの前記閉眼時間にそれぞれ重みをかけて足し合わせることでも求められる。
また、前記居眠り状態の判断結果に基づき、居眠り警報を発する警報手段を備えた居眠り検出装置としても良い。
さらにこの発明は、前記居眠り検出装置を備えた車両に適用可能なものである。
この発明の居眠り検出方法と装置は、簡単な装置でコストもかからず、正確且つ迅速な居眠り検出が可能となる。これにより、乗り物等の運転手の居眠りを早期に発見し、運転の安全性を高めることが出来る。
この発明の一実施形態の居眠り検出装置の模式図である。
この発明の一実施形態の居眠り検出方法の瞬目の定義(a)と、従来の瞬目の定義(b)を示すタイムチャートである。
閉眼時間が長い場合について、この発明の一実施形態の居眠り検出方法の瞬目の検出(a)と、従来の瞬目の検出(b)を示すタイムチャートである。
この発明の一実施形態の居眠り検出方法を示すフローチャートである。
この発明の一実施形態の居眠り検出装置の目検出方法に用いるテンプレートの模式図である。
この発明の一実施形態の居眠り検出装置の目検出方法の原理を示す図である。
この発明の一実施形態の居眠り検出装置の瞬目検出方法を示す写真と模式図である。
この発明の一実施形態における実施例を示すための実験装置の模式図である。
2名の被験者について、この発明による瞬目群発の定義による第1閉眼時間の分布と、従来の瞬目群発の定義による第1閉眼時間の分布である。
2名の被験者について、この発明による瞬目群発の定義による第2閉眼時間の分布と、従来の瞬目群発の定義による第2閉眼時間の分布である。
この発明の一実施例による実験結果における居眠り検出結果を示すグラフである。
この発明の一実施例による実験結果における居眠り検出結果を示すグラフである。
この発明の一実施例による実験結果における居眠り検出結果を示すグラフである。
この発明の一実施例と従来の技術による居眠り検出の時間を示すグラフである。
この発明の一実施例と従来の技術による居眠り検出の時間を示すグラフである。
この発明の一実施例の居眠り検出を示すグラフ(a)と、従来の技術による居眠り検出を示すグラフ(b)である。
この発明の一実施例の眠気表情値を示すグラフ(a)、瞬目群発中の瞬きの合計閉眼時間を示すグラフ(b)、単独瞬目の平均閉眼時間を示すグラフ(c)、瞬目群発の瞬きと単独瞬目の合計閉眼時間を示すグラフ(d)である。
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図7はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の居眠り検出装置30は、図1に示すように、例えばドライバー31の顔を撮影するCCDカメラ等からなる撮影部32と、撮影部32により生成される画像を処理して瞬目の検出等を行う居眠り検出アルゴリズムが実装されたドライバーモニターECU33を備えている。ドライバーモニターECU33は、覚醒レベルの表示や居眠り状態になった場合に視覚的に警報を促すためのナビゲーションシステム34に接続されている。また、ドライバーモニターECU33は、ドライバー31が居眠り状態になった場合、スピーカ35により音でも警報を促す。さらに、ドライバーモニターECU33は、ドライバー31の居眠り状態が続いた場合、ブレーキ制御装置36により、車両のブレーキ制御を行う。
ドライバーモニターECU33は、CPUと、制御ルーチン等のプログラムを記憶したROM、データ等を記憶するRAM、及びその他のプログラムやデータを記憶したハードディスク等の記憶装置を備えている。
ドライバーモニターECU33に設けられた居眠り検出機能は、撮影部32が撮像した画像を処理して、この発明により定義した瞬きを検出する閉眼検出手段と、閉眼検出手段が検出した瞬きの開眼時間と閉眼時間を計る瞬目時間測定手段と、瞬目時間測定手段により測定した瞬きの時間を基に瞬目群発を判別する瞬目群発判別手段と、これらの測定結果を基に居眠りを判定する居眠り判別手段とから成る居眠り検出アルゴリズムの実行プログラムにより構成されている。
居眠り状態の検出及び判定は、図2(a)に示す瞬目群発時の閉眼時間の定義により、図4のフローチャートに示すように判定する。まず、ドライバーモニターECU33に設けられた瞬目群発判別手段により開眼時間TO(i)(iは自然数)を計測する(s1)。計測中に閉眼検出手段により閉眼状態が検出され、確定した開眼時間TO(i)が、第一の閾値時間である判定基準値ThO以下であるか否かを調べる(s2)。開眼時間TO(i)が瞬目群発の判定基準値ThO以下の時、この開眼状態の前に発生した瞬きと後に発生する瞬きを瞬目群発として判定する。この実施形態では、判定基準値ThO=1秒である。この時、居眠り判別手段により、この開眼状態の前に発生した瞬きの閉眼時間TC(i−1)が、第二の閾値時間である居眠り判定基準ThC1以上であれば居眠り状態であると判定する(s3)。ここでは、人の目の閉眼から開眼までの状態のうち、ほぼ開眼した状態を開眼時間とし、それ以外を閉眼時間とする。そして、健常成人の覚醒状態における平均瞬目間間隔に比べて相対的に短い時間を第一の閾値時間(瞬目群発の判定基準値ThO)と定義する。また、健常成人の覚醒状態における平均閉眼時間に比べて相対的に長い時間を第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)として定義する。
次に、瞬目群発判別手段により閉眼時間TC(i)を計測する(s4)。閉眼時間TC(i)が居眠り判定基準ThC1以上になれば、直ちに居眠り状態であると判定する(s5)。また、閉眼時間TC(i)が、前記第二の閾値時間より長い第三の閾値時間であるもう一つの居眠り判定基準ThC2以上(居眠り判定基準ThC2>居眠り判定基準ThC1)となれば、直ちに居眠り状態であると判定する(s6)。その後、閉眼検出手段により開眼状態が検出された時、瞬きが終了したと判断して、瞬目群発判別手段により閉眼時間TC(i)が確定する(s7)。ここで、第三の閾値時間は、前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間に設定するが、適宜、例えば健常成人の覚醒状態における前記瞬目群発以外の瞬きの平均閉眼時間より相対的に長い閉眼時間としても良い。
一方、開眼時間TO(i)が瞬目群発の判定基準値ThOより長い時、この開眼状態の直前の瞬きの前の開眼時間TO(i−1)が瞬目群発の判定基準値ThOより長い時、この開眼状態の直前の瞬きを瞬目群発以外の瞬きと判定する(s8)。さらに、この開眼状態の直前の瞬きの閉眼時間TC(i−1)が、居眠り判定基準ThC2以上であれば居眠り状態であると判定する(s9)。次に、瞬目群発判別手段により閉眼時間TC(i)を計測する(s10)。閉眼時間TC(i)が居眠り判定基準ThC2以上になれば、直ちに居眠り状態であると判定する(s11)。その後、閉眼検出手段により開眼状態が検出された時、瞬きが終了したと判断して、瞬目群発判別手段により閉眼時間TC(i)が確定する(s12)。
ここで、瞬目検出方法の例を以下に説明する。先ず目の位置検出方法は、撮影部32で取得した顔の濃淡画像を閾値処理により2値化し、2値化画像に対して、図5に示す片目部分テンプレート20によるテンプレートマッチングを行う。このテンプレートマッチングには、例えば残差逐次検出法を用いる。
一般に、図5に示すように成人の目24の角膜の直径は約11mm(縦9.3〜11mm、横10.6〜12mm)である。黒目である虹彩22のサイズは角膜サイズとほぼ一致することから、この実施形態では、虹彩22のサイズを直径11mmと設定している。片目部分テンプレート20は十字形の直線で構成され、例えばモニタ16の画面上で横幅11mm、縦幅6mmに設定されている。1mmあたりのピクセル数は、モニタ16上で一定の長さの直線を引き、そのピクセル数を基に計算する。この実施形態では、1mmは4.2ピクセルとなり、11mmは約46ピクセル、6mmは約25ピクセルに相当する。このような十字形の片目部分テンプレート20を用いることにより、目24の傾きがあっても、円形の虹彩22には影響せず、虹彩22との正確なマッチングを得ることができる。
この実施形態では処理の高速化のため、例えば4画素ずつ片目部分テンプレート20を移動させテンプレートマッチングを行う。片目部分テンプレート20の横幅のマッチング度は、画像の1ピクセルずつ比べ、縦幅のマッチング度は1ピクセル飛ばしに比較し、横幅の90%以上、縦幅の40%以上のマッチング度が同時に満たされた時に、片目部分テンプレート20が重なった部分が目らしいと判定する。
また、片目部分テンプレート20によるテンプレートマッチングは、画像上のいくつかの目らしい領域を間違えて検出する恐れがある。その間違い対策として、目24の周りの特徴をチェック項目として用い、図6に示すように、片目部分テンプレート20の上下において、眉28の有無を判断材料とした。例えば、虹彩22を11mmとした場合、人の顔の個人差による違いを考慮して、眉28の位置のチェックポイントaは片目部分テンプレート20の中心から上25〜50mmの間、眉28と目24との間のチェックポイントbは同じく15〜27mm、目24の下のチェックポイントcは、同じく15〜22mmとし、各2値化されたピクセルの値を基に閾値と比較して判別する。これにより目24の直上では黒い部分が無く、その上方に眉28による黒部分が検知され、目24の下方には黒部分がないということを、2値化された画像データから目検知の判断材料とすることができる。
これらのチェック項目のマッチング度は、目24の上の部分おいて、ピクセルの値を基にした閾値と比較して、眉28の位置でマッチング度が10%以上、眉28と目24の間の位置でマッチング度が20%以上、目24の下の位置ではマッチング度が20%以上のマッチングが得られたとき、目24の周りの条件適合性が満たされると判定する。そして、目24であるとする最終判定は、片目部分テンプレート20によるテンプレートマッチングと目24の回りの特徴チェック項目により判定する。
目24を検出した後、目24の瞬きを検出する。瞬目検出は、図2(a)、図3(a)に示すように、黒目である虹彩22の面積の変化から、瞬目を検出している。瞬目検出は、撮影部12により取得した濃淡画像から、虹彩22の面積を測定する。そして、虹彩22の面積測定結果が所定の閾値Sth以下、例えば虹彩22の面積の最大値を記憶し、その最大値から例えば5〜15%好ましくは10%少ない面積を閾値Sthとして開眼状態か否かを判断する。
虹彩22の面積の測定は、目24の2値画像をスキャンして行う。先ず、虹彩22と片目部分テンプレート20の横幅のマッチング度が例えば85〜95%好ましくは90%以上満たしているときに目らしいと判定し、開眼時の虹彩22の横幅と片目部分テンプレート20の横幅は一致したと考える。また、閉眼時には、図7に示すように、まつげ26によって横方向に長い黒の部分ができるので、面積を多く測定してしまうことを防ぐために、虹彩22の面積の横方向の測定範囲は片目部分テンプレート20の横幅とする。また縦方向の測定範囲は、虹彩22の中に片目部分テンプレート20のマッチする点がいくつも存在することから、マッチポイントが虹彩22の中心からずれることを考慮し、片目部分テンプレート20の中心から上下方向に例えば50ピクセルの範囲とする。
虹彩面積測定の手順は、目24の認識後、虹彩22の面積測定を行う。片目部分テンプレート20の中心位置から左に、ピクセル濃度値が虹彩22の2値化閾値以上になるまで移動し、その移動距離を計算する。次に、右方向にも同様にして距離を計算し、左右の移動距離の和を虹彩22の横幅とする。そして、測定範囲内で片目部分テンプレート20の上側で同様の作業を繰り返し、横幅を合計する。また片目部分テンプレート20の下側でも同様にして、横幅を合計する。この測定は、閉眼時も同様に行われる。閉眼時は、横方向に長くまつげ26による黒い部分が表れる。しかし、横方向の測定範囲は、片目部分テンプレート20の横幅であり、ピクセル濃度値が虹彩22の2値化閾値以下の濃い部分は、縦方向にまつげ26の上下幅となる。従って、開眼時の虹彩22の面積は、測定範囲内で、閉眼時のまつげ26を測定した場合よりも大きい値となる。
これにより、図7の測定範囲内でピクセル濃度値が虹彩22の2値化閾値以下の濃い箇所(前記移動距離内の部分)の合計が、図2、図3に示す所定の閾値Sth以上であれば、虹彩22であるとして開眼状態とする。また、この合計が閾値Sth以下であれば、閉眼状態であるとする。
この実施形態の居眠り検出装置30の使用方法は、自動車や電車、その他の作業機械の運転席の近傍に設け、撮影部32により運転者を撮影し、上記の第一の閾値時間(判定基準値ThO)を基準とした処理により瞬目群発を検出し、その瞬目群発中の瞬きの閉眼時間の何れかが第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)以上である場合に、居眠りと判断し、さらに、瞬目群発以外の瞬きの閉眼時間が第三の閾値時間(居眠り判定基準ThC2)以上の場合も居眠りと判断する。これにより、自動車等の運転の安全性を大幅に向上させることができる。
前記一般的な瞬目群発検出法では、図2(b)、図3(b)に示すように、閉眼の極小値から極小値までの時間を瞬目間間隔TOp(i)として測定していたが、この他に、閉眼の開始から次の閉眼の開始までの時間を瞬目間間隔TOp(i)として測定する変則的な方法や、閉眼の終了から次の閉眼の終了までの時間を瞬目間間隔TOp(i)として測定する変則的な方法がある。しかし、これらの変則的な測定方法では、長時間の閉眼を含む群発性の瞬目を検出できないので、前記の一般的な瞬目群発検出方法が持つ問題を解決しておらず、本発明による瞬目群発検出方法の方が居眠り検出において優れていると言える。
この実施形態の居眠り検出装置は、開眼時間のみを判定基準として第一の閾値時間(判定基準値ThO)により瞬目群発を検出し、瞬目群発中の各々の瞬きの閉眼時間は第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)で、瞬目群発以外の瞬きの閉眼時間は第三の閾値時間(居眠り判定基準ThC2)で判定することにより、居眠り状態の判別が早期に行なわれ、居眠りの確実な防止に貢献する。
次に、この発明の居眠り検出装置の構成を備えた実験装置による実施例について説明する。図8に居眠り検出装置を備えた実験装置の模式図を示す。実験装置には、被験者11の顔を撮影するCCDカメラ等からなる撮影部12と、撮影部12により生成される画像を処理して瞬目の検出等を行う居眠り検出プログラムがインストールされたコンピュータ14で構成されている。コンピュータ14は、撮影画像を表示する液晶ディスプレイ等のモニタ16に接続されている。また、運転中の視界を表示するスクリーン18が設けられ、被験者11が座るシート13と、ハンドル15、計器表示部17、及びアクセル19等を有し、通常の自動車と同様の構成を備えている。また、実験中の被験者11の覚醒度を表す相対的指標である眠気表情値を得るために、実験中の被験者11の顔表情を録画した。ここでは、複数の被験者11について、2名の観察者により眠気の程度を判断し、採点により被験者11の眠気表情値(Rated Sleepiness)を数値化した。さらに、グラフでは、2名の判定値の平均を眠気表情値とし、5秒ごとの30秒移動平均により平滑化を行いグラフに記載した。眠気表情値の数値化は、以下の数値を付して行った。
5.全く眠くなさそう
4.やや眠そう
3.眠そう
2.かなり眠そう
1.眠っている
実施例では、第一の閾値時間として定義される瞬目群発の判定基準値ThOを1秒に設定した。先ず図9に、2名の被験者(Sub.1-1,Sub.2-1)について、本発明による瞬目群発の定義による第1閉眼時間の分布(上段)と、従来の瞬目群発の定義による第1閉眼時間の分布(下段)を示す。縦軸は瞬目群発の第1閉眼時間、横軸は眠気表情値である。図9より、眠気表情値が2〜3のとき、本発明の定義(図2(a))と従来の瞬目の定義(図2(b))の瞬目群発の第1閉眼時間を比べると、本発明の定義による上段のグラフの方が1秒以上の閉眼を伴う瞬目群発が多くなっていることが分かる。また、図10に、別の2名の被験者(Sub.8-1,Sub.6-2)について、本発明による瞬目群発の定義による第2閉眼時間の分布(上段)と、従来の瞬目群発の定義による第2閉眼時間の分布(下段)を示す。縦軸は瞬目群発の第2閉眼時間、横軸は眠気表情値である。図10より、眠気表情値が2〜3のとき、本発明の定義(図2(a))と従来の瞬目の定義(図2(b))の瞬目群発の第2閉眼時間を比べると、本発明の定義による上段のグラフの方が1秒以上の閉眼を伴う瞬目群発が多くなっていることが分かる。これらは本発明の瞬目群発の定義では、開眼時のみを瞬目間間隔としているため、長時間の閉眼を含む瞬目群発を検出できるが、図3(b)に示すように、従来の定義では、開眼時間に加えて閉眼から開眼までの過程や開眼から閉眼までの過程も瞬目間間隔に含まれているため、長時間の閉眼を含む瞬目群発が検出されないからであると考えられる。これにより、本発明の瞬目群発の定義による居眠り検知が、より正確に行われる可能性があることが分かった。よって、上記の第1閉眼時間の分布と第2閉眼時間の分布結果に基づき、実施例では第二の閾値時間として定義される居眠り判定基準ThC1を1秒に設定した。また、第三の閾値時間(居眠り判定基準ThC2)は第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間として2秒に設定した。実施例ではこの第三の閾値時間(居眠り判定基準ThC2)は瞬目群発以外の瞬き(単独瞬目)の居眠り判定基準として用いた。
図11は、本発明の居眠り検出方法による居眠り検出を示したもので、図11によれば、被験者(Sub.1-1)は、実験開始直後から瞬目群発が検出され(●印)、その後最初に第2閉眼(▽印)が1秒以上検出された最初の時点(1086秒)で、居眠りと判断した。この時、被験者の眠気表情値は3を中心に上下しており、被験者が眠気を我慢していることがわかる。さらに、その後眠気表情値が2まで下がっていることから、運転に支障をきたす居眠り状態に入る前を検出できていることが分かり、本発明の検出方法により正確に居眠りを検出していることが確かめられた。
図12は、被験者(Sub.5-1)の場合であり、被験者(Sub.1-1)と同様に実験開始直後から瞬目群発が検出され(●印)ている。その後、最初に第1閉眼(灰色▽印)が1秒以上検出された最初の時点(322秒)で、居眠りと判断した。このときの状態は、眠気表情値で3近くを示しており、その後さらに眠気表情値が下がっていることから、居眠り状態に入る時期であることが分かり、本発明の検出方法により正確に居眠りを検出していることが確かめられた。
図13に示す被験者(Sub.3-2)の場合も、実験開始直後から瞬目群発が検出され(●印)、瞬目群発ではない単独瞬目の閉眼時間が2秒以上検出(灰色△印)された最初の時点(454秒)で、居眠りと判断した。このときの状態は、眠気表情値で2近くを示しており、その後も眠気表情値が3前後で振れていることから、居眠り状態に入る時期であることが分かり、正確に居眠りを検出していることが分かった。
図14は、図13の被験者(Sub.3-2)について、本発明と従来の方法による居眠り検出時間の差を示す。従来法は特許文献2に開示された方法により、図2(b)に示す瞬目群発の定義で瞬目群発発生直後の時間から、長時間閉眼終了時間までの時間間隔が10秒以内となった箇所のうち、最も早く10秒以下となった箇所の時間を記した。これによれば、本発明では単独瞬目の閉眼時間2秒以上の判定により居眠りを検出(灰色△印)したことから、居眠りを早期のタイミング(454秒)で検出できた。これに対して、従来法では、居眠りの検出時期が測定開始から939秒であり、本発明による方法と比較して遅いことが確かめられた。
図15は、他の被験者(Sub.2-2)について、本発明と従来の方法による居眠り検出時間を測定した結果を示す。この被験者の場合も、本発明は単独瞬目の閉眼時間2秒以上の判定により居眠りを検出(灰色△印)し、早期(781秒)に居眠りを検出することができた。これに対して、従来法では、検出時期が測定開始から1129秒後であり、本発明による方法と比較して遅いことが分かった。さらに、本発明の検出方法では、図15に示すように、瞬目群発の第1閉眼が1秒以上(灰色▽印)、及び第2閉眼が1秒以上(▽印)の判定が最初に表れた時点を見ても、共に従来法よりも早期に居眠りを検出していることが分かり、この点からも本発明による方法は、早期に居眠りを検出可能であることが分かる。
図16は、図11の被験者(Sub.1-1)の眠気表情値の時間推移を示すもので、図16(a)が本発明による検出方法による瞬目群発発生位置(●)、図16(b)には従来法による瞬目群発発生位置(○)を図示している。図16(a)では瞬目群発の第1閉眼(灰色▽)、第2閉眼が1秒以上(▽)となった箇所が図示されている。図16(b)は従来法による瞬目群発発生位置(○)と瞬きの閉眼時間が1秒以上となった箇所(灰色△)が図示されている。
図16(b)の従来の方法によるグラフでは、瞬目群発後の長時間閉眼が10秒以下の時点をA〜Eで示す。従来法では、居眠り検出時期の最も速いもので、実験開始後、A点で示す1315秒であった。これに対して、本発明の方法では、図16(a)に示すように、瞬目群発における第2閉眼が1秒以上あった最初の時点(最初の▽)である、実験開始後1086秒で居眠りの検出が行われている。さらに、本発明の場合、瞬目群発における第1閉眼が1秒以上あった最初の時点(最初の灰色▽)をみても、従来の方法による場合と比較して、早期に検出していることが分かる。
次に、本発明の居眠り検出装置の構成を備えた実験装置(図8)による別の実施形態における実施例を図17に示す。図17は被験者(Sub.8-1)の実験結果であり、図17(a)には眠気表情値、図17(b)には瞬目群発中のすべての瞬きの閉眼時間を加算した合計閉眼時間(秒)、図17(c)には単独瞬目の30秒間での平均閉眼時間(秒)、図17(d)には瞬目群発中のすべての瞬きの閉眼時間(秒)と、単独瞬目の30秒間での平均閉眼時間を加算した合計閉眼時間(秒)の時間推移を示している。この結果より、覚醒度が低下するに従い、合計閉眼時間が伸長していることがわかる。また、覚醒度が低下している間は、常に合計閉眼時間が長くなっている。このことから、瞬目群発と単独瞬目の合計閉眼時間を計測することにより居眠り状態を安定して検出できることが分かる。また、式(1)に示すように、瞬目群発中の第j番目の瞬きの閉眼時間をTB(j)、単独瞬目の平均閉眼時間をTIとし、これらの閉眼時間にそれぞれ重み(WB(j),WI)をかけて足し合わせることにより合計閉眼時間Tsumを求めてもよい。図17に示す実施例では、WB(j)=1,WI=1としているが、この他、例えばWB(j)=0.5〜1.5,WI=0.5〜1.5とするなど各々の重みを様々に変えて足し合わせて合計閉眼時間Tsumを求めてもよい。
なお、本発明の居眠り検出装置は前記各実施の形態に限定されるものではなく、瞬目検出は、上記以外の方法によっても良く、短時間に連続する2回以上の瞬目を検出して瞬目群発としても良い。また、この発明の開眼時間及び閉眼時間の定義及び判定基準値は、小数点以下を四捨五入した数値も含むものであり、具体的には、例えば0.5秒以上1.5秒未満までの範囲がこの発明の1秒の定義に含まれるものであり、この範囲を1秒としても良い。
10 居眠り検出実験装置
11 被験者
12,32 撮影部
14 パーソナルコンピュータ
16 モニタ
30 居眠り検出装置
31 ドライバー
33 ドライバーモニターECU
34 ナビゲーションシステム
35 スピーカ
36 ブレーキ制御装置
この発明は、人の覚醒が低下した状態である居眠りを検出する居眠り検出方法と装置に関する。
従来、居眠りを検出する方法として、例えば1秒以内の短時間に、複数回の閉眼が生じる状態である瞬目群発を検出して、覚醒が低下していることを検出する方法が提案されている。例えば特許文献1には、目の瞬きである瞬目の群発を検出してから所定時間以内に閉瞼を伴うゆっくりとした眼球の横移動であるSEM(Slow Eye Movement)を検出した場合に、覚醒度が低下している(居眠りしている)と判定する検出方法が開示されている。瞬目の群発やSEMは、入眠初期に現れる特徴的な現象であり、これらを組み合わせて覚醒度の低下を判定している。
特許文献2には、被検出者の瞬目を検出する瞬目検出手段と、前記瞬目検出手段により検出された瞬目から、該瞬目とその直前の瞬目との瞬目間間隔が所定時間以内で起こった瞬目群発の瞬目、及び所定時間以上の長時間閉眼を伴う瞬目を判定する瞬目判定手段と、前記瞬目群発の瞬目から前記長時間閉眼を伴う瞬目までの時間に基づいて覚醒低下度を判定する覚醒低下判定手段とを備えた覚醒低下検出装置が開示されている。
しかし、特許文献2に記載の検出方法では、瞬目群発の後に生じる瞬目群発以外の瞬きの閉眼時間が、閾値に比べて長い場合に覚醒度が低下するとしており、瞬目群発による2回の瞬きと瞬目群発以外の1回の瞬きを1セットとして、少なくとも3回の瞬きを組み合わせて用いる必要がある。このため、瞬目群発のみによる覚醒度低下の検出や、瞬目群発以外の瞬きのみにより覚醒度低下の検出ができないといった問題があった。さらに、この検出方法の場合、通常の瞬目と群発性瞬目とを分けずに瞬目を抽出しており、抽出方法が群発性瞬目に関して特化されていない。このため、この検出方法では、群発性瞬目時に多く見られる閉眼から半眼に折り返して閉眼に戻るような瞬目現象を逃してしまい、群発性瞬目を精度良く検出することができないという問題があった。その他、この検出方法では、覚醒度低下検出におけるリアルタイム性に欠けるといった問題もあった。
そこで、特許文献3は、群発性瞬目を精度良く検出するために、判定対象者の眼を含む領域を連続して撮像する撮像手段と、前記撮像手段により連続して撮像された画像に基づいて、瞼の開度の時系列データを検出する開度検出手段と、前記開度検出手段によって検出された瞼の開度の時系列データに基づいて、前記瞼の開度が持続して所定の閾値未満となる範囲から、極大値及び極小値を抽出し、抽出された極大値及び極小値の間に設定された閾値で検出される瞬目間間隔が所定時間以内となる群発性瞬目を検出する群発性瞬目検出手段と、前記群発性瞬目検出手段による検出結果に基づいて、前記判定対象者の眠気状態を判定する眠気状態判定手段とから成る眠気判定装置を提案している。
一方、非特許文献1,2では、瞬きの特徴のみに基づく居眠り状態を検出するために、瞬目群発中の第1瞬目の閉眼時間と眠気表情値の関係を調査したものである。その結果、覚醒度が低下すると、第1瞬目の閉眼時間が延びることが示されている。
特開2006−136556号公報
特開2008−73335号公報
特開2010−224637号公報
平成22年度電気関係学会北陸支部連合大会講演論文集B-3
平成22年度日本生体医工学会北陸支部大会講演論文集pp.25~26
上記背景技術の特許文献1,2に開示された発明の瞬目群発の検出は、図2(b)、図3(b)に示すように、一般的に閉眼の一つの極小値から次の極小値までの時間を瞬目間間隔TOp(i)として測定していた。そして、判定基準値ThOを例えば1秒とし、瞬目間間隔TOp(i)が判定基準値ThO以下の間隔の場合を瞬目群発と定義していた。この場合の瞬目間間隔TOp(i)は、閉眼状態の極小値から開眼まで及び開眼状態から閉眼の極値までの時間も含めて測定しているため、瞼を閉じる動作の時間や瞼を開く動作の時間が長くなる群発性の瞬目を検出できず、正確に瞬目群発を検出できないものであった。
特許文献3に開示された検出方法は、瞼の開度の時系列データを検出し、検出された瞼の開度の時系列データに基づいて、前記瞼の開度が持続して所定の閾値未満となる範囲から瞬目群発を判断しているため、半閉眼状態の瞼の開度を正確に測定することが困難であり、測定誤差も生じやすいものである。
非特許文献1,2では、瞬目群発中の瞬きの閉眼時間から居眠り状態を検出するための基準や実時間の検出タイミングが示されておらず、精確に居眠り状態を判断できるものではなかった。さらに、瞬目群発中の第1瞬目の閉眼時間のみに基づく居眠り状態の判定では、居眠り検出精度が低く、居眠り検出タイミングに遅延が生じる問題がある。
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、比較的簡単な装置で、正確に居眠り状態を検出することができ、居眠り検出の早さ及び精度を向上させた居眠り検出方法と装置を提供することを目的とする。
この発明は、人の目の閉眼から開眼までの状態のうち、ほぼ開眼した状態を開眼時間とし、それ以外を閉眼時間として前記開眼時間及び前記閉眼時間を測定し、健常成人の覚醒状態における平均開眼時間に比べて相対的に短い時間を第一の閾値時間(開眼時間による瞬目群発の判定基準値ThO)とし、健常成人の覚醒状態における平均閉眼時間に比べて相対的に長い時間を第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)とし、前記第一の閾値時間以下の開眼を検出した場合(s2)前記第一の閾値時間以下の開眼時間の直後に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第二の閾値時間以上に達すると(s5)、直ちに居眠り状態と判断する第一居眠り判断処理ステップを備える居眠り検出方法である。
また、前記第一の閾値時間以下の開眼の直前に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第二の閾値時間以上であった場合(s3)、前記第一の閾値時間以下の開眼の直後の前記閉眼時間を計測することなく、前記第一の閾値時間以下の開眼の終了により直ちに居眠り状態と判断する早期判断処理ステップを備える居眠り検出方法である。
前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を第三の閾値時間として設定し、前記第一の閾値時間以下の開眼の後に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第三の閾値時間(居眠り判定基準ThC2)以上に達した場合(s6)、再度居眠り状態と判断する第二居眠り判断処理ステップを備えるものである。
前記第二の閾値時間より相対的に長い他の閉眼時間を第四の閾値時間として設定し、前記開眼時間の検出に際して、前記第一の閾値時間より長い開眼を検出した場合、その直前の瞬きのさらに直前の開眼時間も前記第一の閾値時間より長い場合に、前記直前の瞬きを単独の瞬きと判定し、前記単独の瞬きの閉眼時間が前記第四の閾値時間(居眠り判定基準Th C3 )以上であったときは(s9)、前記単独の瞬きの後の前記開眼の終了により直ちに居眠り状態と判断する第三居眠り判断処理ステップを備えるものである。
前記第二の閾値時間より相対的に長い他の閉眼時間を第四の閾値時間として設定し、前記開眼時間の検出に際して、前記第一の閾値時間より長い開眼を検出し、その直後の瞬きの閉眼時間が前記第四の閾値時間以上に達した場合(s11)に直ちに居眠り状態と判断する第四居眠り判断処理ステップを備えるものである。
また、前記第二の閾値時間より相対的に長い他の閉眼時間を第五の閾値時間として設定し、複数の各閉眼時間の和として得られる合計閉眼時間が、前記第五の閾値時間より相対的に長い場合に居眠り状態とする第五居眠り判断処理ステップを備えるものでも良い。前記第五居眠り判断処理ステップは、前記第一の閾値時間以下の開眼を検出した後の複数の各閉眼時間の和として得られる合計閉眼時間が、例えば前記第五の閾値時間より相対的に長い場合に居眠り状態としても良い。さらに、前記合計閉眼時間は、前記各閉眼時間にそれぞれ重みをかけて足し合わせることにより求められるものでも良い
またこの発明は、人の目の位置を認識して、その目の閉眼から開眼までの状態を検出する閉眼検出手段と、前記閉眼検出手段により人の目がほぼ開眼した状態を開眼時間とし、それ以外を閉眼時間として測定する瞬目時間測定手段とを備え、健常成人の覚醒状態における平均開眼時間に比べて相対的に短い時間を第一の閾値時間(開眼時間による瞬目群発の判定基準値ThO)とし、健常成人の覚醒状態における平均閉眼時間に比べて相対的に長い時間を第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)とし、前記瞬目時間測定手段により前記第一の閾値時間以下の開眼を検出した場合、前記第一の閾値時間以下の開眼時間の直後に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第二の閾値時間以上に達すると、直ちに居眠り状態であるとする居眠り判別手段とを備えた居眠り検出装置である。
また、前記居眠り判別手段は、前記第一の閾値時間以下の開眼の前に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第二の閾値時間以上の場合には、前記第一の閾値時間以下の開眼の直後の前記閉眼時間を計測することなく、前記第一の閾値時間以下の開眼の終了により直ちに居眠り状態であるとするものである。
前記居眠り判別手段は、前記第二の閾値時間より相対的に長い他の閉眼時間を第三の閾値時間として設定し、前記第一の閾値時間以下の開眼の後に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第三の閾値時間(居眠り判定基準ThC2)以上に達した場合には、再度居眠り状態であるとするものである。前記第三の閾値時間は、例えば、健常成人の覚醒状態における前記第一の閾値時間以下の開眼の直前と直後に生じた瞬きの閉眼時間の合計時間より相対的に長い閉眼時間としても良い。
前記居眠り判別手段は、前記第二の閾値時間より相対的に長い他の閉眼時間を第四の閾値時間として設定し、前記瞬目時間測定手段により、前記第一の閾値時間より長い開眼を検出した場合、その直前の瞬きのさらに直前の開眼時間も前記第一の閾値時間より長い場合に、前記直前の瞬きを単独の瞬きと判定し、前記単独の瞬きの閉眼時間が前記第四の閾値時間(居眠り判定基準Th C3 )以上であったときは、前記単独の瞬きの後の前記開眼の終了により直ちに居眠り状態とするものである。
前記居眠り判別手段は、前記第二の閾値時間より相対的に長い他の閉眼時間を第四の閾値時間として設定し、前記瞬目時間測定手段により、前記第一の閾値時間より長い開眼を検出し、その直後の瞬きの閉眼時間が前記第四の閾値時間以上に達した場合に直ちに居眠り状態とするものである。前記第四の閾値時間は、例えば、健常成人の覚醒状態における前記単独の瞬きの平均閉眼時間より相対的に長い閉眼時間としても良い。
前記第二の閾値時間より相対的に長い他の閉眼時間を第五の閾値時間として設定し、複数の各閉眼時間の和として得られる合計閉眼時間が、例えば前記第五の閾値時間より相対的に長い場合に居眠り状態とするものである。前記居眠り判別手段は、前記合計閉眼時間を、前記複数の各閉眼時間にそれぞれ重みをかけて足し合わせることでも求められる。前記閉眼検出手段は、前記人の目の虹彩と瞳孔の面積を測定するものである。
また、前記居眠り状態の判断結果に基づき、居眠り警報を発する警報手段を備えた居眠り検出装置としても良い。
さらにこの発明は、前記居眠り検出装置を備えた車両に適用可能なものである。
この発明の居眠り検出方法と装置は、簡単な装置でコストもかからず、正確且つ迅速な居眠り検出が可能となる。これにより、乗り物等の運転手の居眠りを早期に発見し、運転の安全性を高めることが出来る。
この発明の一実施形態の居眠り検出装置の模式図である。
この発明の一実施形態の居眠り検出方法の瞬目の定義(a)と、従来の瞬目の定義(b)を示すタイムチャートである。
閉眼時間が長い場合について、この発明の一実施形態の居眠り検出方法の瞬目の検出(a)と、従来の瞬目の検出(b)を示すタイムチャートである。
この発明の一実施形態の居眠り検出方法を示すフローチャートである。
この発明の一実施形態の居眠り検出装置の目検出方法に用いるテンプレートの模式図である。
この発明の一実施形態の居眠り検出装置の目検出方法の原理を示す図である。
この発明の一実施形態の居眠り検出装置の瞬目検出方法を示す写真と模式図である。
この発明の一実施形態における実施例を示すための実験装置の模式図である。
2名の被験者について、この発明による瞬目群発の定義による第1閉眼時間の分布と、従来の瞬目群発の定義による第1閉眼時間の分布である。
2名の被験者について、この発明による瞬目群発の定義による第2閉眼時間の分布と、従来の瞬目群発の定義による第2閉眼時間の分布である。
この発明の一実施例による実験結果における居眠り検出結果を示すグラフである。
この発明の一実施例による実験結果における居眠り検出結果を示すグラフである。
この発明の一実施例による実験結果における居眠り検出結果を示すグラフである。
この発明の一実施例と従来の技術による居眠り検出の時間を示すグラフである。
この発明の一実施例と従来の技術による居眠り検出の時間を示すグラフである。
この発明の一実施例の居眠り検出を示すグラフ(a)と、従来の技術による居眠り検出を示すグラフ(b)である。
この発明の一実施例の眠気表情値を示すグラフ(a)、瞬目群発中の瞬きの合計閉眼時間を示すグラフ(b)、単独瞬目の平均閉眼時間を示すグラフ(c)、瞬目群発の瞬きと単独瞬目の合計閉眼時間を示すグラフ(d)である。
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図7はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の居眠り検出装置30は、図1に示すように、例えばドライバー31の顔を撮影するCCDカメラ等からなる撮影部32と、撮影部32により生成される画像を処理して瞬目の検出等を行う居眠り検出アルゴリズムが実装されたドライバーモニターECU33を備えている。ドライバーモニターECU33は、覚醒レベルの表示や居眠り状態になった場合に視覚的に警報を促すためのナビゲーションシステム34に接続されている。また、ドライバーモニターECU33は、ドライバー31が居眠り状態になった場合、スピーカ35により音でも警報を促す。さらに、ドライバーモニターECU33は、ドライバー31の居眠り状態が続いた場合、ブレーキ制御装置36により、車両のブレーキ制御を行う。
ドライバーモニターECU33は、CPUと、制御ルーチン等のプログラムを記憶したROM、データ等を記憶するRAM、及びその他のプログラムやデータを記憶したハードディスク等の記憶装置を備えている。
ドライバーモニターECU33に設けられた居眠り検出機能は、撮影部32が撮像した画像を処理して、この発明により定義した瞬きを検出する閉眼検出手段と、閉眼検出手段が検出した瞬きの開眼時間と閉眼時間を計る瞬目時間測定手段と、瞬目時間測定手段により測定した瞬きの時間を基に瞬目群発を判別する瞬目群発判別手段と、これらの測定結果を基に居眠りを判定する居眠り判別手段とから成る居眠り検出アルゴリズムの実行プログラムにより構成されている。
居眠り状態の検出及び判定は、図2(a)及び図3(a)に示す開眼時間TO(i)による瞬目群発の判定により、図4のフローチャートに示すように判定する。まず、ドライバーモニターECU33に設けられた瞬目群発判別手段により開眼時間TO(i)(iは自然数)を計測する(s1)。計測中に閉眼検出手段により閉眼状態が検出され、確定した開眼時間TO(i)が、図3(a)に示すように、第一の閾値時間である判定基準値ThO以下であるか否かを調べる(s2)。開眼時間TO(i)が瞬目群発の判定基準値ThO以下の時、この開眼状態の前に発生した瞬きと後に発生する瞬きを瞬目群発として判定する。この実施形態では、判定基準値ThO=1秒である。この時、居眠り判別手段により、この開眼状態の前に発生した瞬きの閉眼時間TC(i−1)が、第二の閾値時間である居眠り判定基準ThC1以上であれば、早期居眠り判断ステップとして、その時点で居眠り状態であると判定する(s3)。そして、居眠り警報1を音等で発する。ここでは、人の目の閉眼から開眼までの状態のうち、ほぼ開眼した状態を開眼時間とし、それ以外を閉眼時間とする。そして、健常成人の覚醒状態における平均開眼時間に比べて相対的に短い時間を第一の閾値時間(開眼時間による瞬目群発の判定基準値ThO)と定義する。また、健常成人の覚醒状態における平均閉眼時間に比べて相対的に長い時間を第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)として定義する。
次に、瞬目群発判別手段により閉眼時間TC(i)を計測する(s4)。閉眼時間TC(i)が居眠り判定基準ThC1以上になれば、第一居眠り判断ステップとして、直ちに居眠り状態であると判定し(s5)、居眠り警報2を音等で発する。また、閉眼時間TC(i)が、前記第二の閾値時間より長い第三の閾値時間であるもう一つの居眠り判定基準ThC2以上(居眠り判定基準ThC2>居眠り判定基準ThC1)となれば、第二居眠り判断ステップとして、再度居眠り状態であると判定し(s6)、居眠り警報3を音等で発する。その後、閉眼検出手段により開眼状態が検出された時、瞬きが終了したと判断して、瞬目群発判別手段により閉眼時間TC(i)が確定する(s7)。ここで、第三の閾値時間は、前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間に設定するが、適宜、例えば前記第一の閾値時間以下の開眼の前に生じた瞬きの平均閉眼時間と前記第一の閾値時間以下の開眼の後に生じた瞬きの平均閉眼時間の合計時間より相対的に長い閉眼時間であれば良く、健常成人の覚醒状態における前記瞬目群発以外の瞬きの平均閉眼時間より相対的に長い閉眼時間としても良い。
一方、開眼時間TO(i)が瞬目群発の判定基準値ThOより長い時、この開眼状態の直前の瞬きの前の開眼時間TO(i−1)が瞬目群発の判定基準値ThOより長い時、この開眼状態の直前の瞬きを単独の瞬き(瞬目群発以外の瞬き)と判定する(s8)。さらに、この開眼状態の直前の瞬きの閉眼時間TC(i−1)が、前記第二の閾値時間より長い他の値である第四の閾値時間として設定されるもう一つの居眠り判定基準ThC3以上(居眠り判定基準Th C3 >居眠り判定基準Th C1 )であれば、居眠り状態であると判定する(s9)。そして、居眠り警報4を音等で発する。次に、瞬目群発判別手段により閉眼時間TC(i)を計測する(s10)。閉眼時間TC(i)が居眠り判定基準ThC3以上になれば、直ちに居眠り状態であると判定し(s11)、居眠り警報5を音等で発する。その後、閉眼検出手段により開眼状態が検出された時、瞬きが終了したと判断して、瞬目群発判別手段により閉眼時間TC(i)が確定する(s12)。ここで、第四の閾値時間も、前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間に設定するが、適宜、例えば健常成人の覚醒状態における前記単独の瞬き(瞬目群発以外の瞬き)の平均閉眼時間より相対的に長い閉眼時間であれば良い。
ここで、瞬目検出方法の例を以下に説明する。先ず目の位置検出方法は、撮影部32で取得した顔の濃淡画像を閾値処理により2値化し、2値化画像に対して、図5に示す片目部分テンプレート20によるテンプレートマッチングを行う。このテンプレートマッチングには、例えば残差逐次検出法を用いる。
一般に、図5に示すように成人の目24の角膜の直径は約11mm(縦9.3〜11mm、横10.6〜12mm)である。黒目である虹彩22のサイズは角膜サイズとほぼ一致することから、この実施形態では、虹彩22のサイズを直径11mmと設定している。片目部分テンプレート20は十字形の直線で構成され、例えばモニタ16の画面上で横幅11mm、縦幅6mmに設定されている。1mmあたりのピクセル数は、モニタ16上で一定の長さの直線を引き、そのピクセル数を基に計算する。この実施形態では、1mmは4.2ピクセルとなり、11mmは約46ピクセル、6mmは約25ピクセルに相当する。このような十字形の片目部分テンプレート20を用いることにより、目24の傾きがあっても、円形の虹彩22には影響せず、虹彩22との正確なマッチングを得ることができる。
この実施形態では処理の高速化のため、例えば4画素ずつ片目部分テンプレート20を移動させテンプレートマッチングを行う。片目部分テンプレート20の横幅のマッチング度は、画像の1ピクセルずつ比べ、縦幅のマッチング度は1ピクセル飛ばしに比較し、横幅の90%以上、縦幅の40%以上のマッチング度が同時に満たされた時に、片目部分テンプレート20が重なった部分が目らしいと判定する。
また、片目部分テンプレート20によるテンプレートマッチングは、画像上のいくつかの目らしい領域を間違えて検出する恐れがある。その間違い対策として、目24の周りの特徴をチェック項目として用い、図6に示すように、片目部分テンプレート20の上下において、眉28の有無を判断材料とした。例えば、虹彩22を11mmとした場合、人の顔の個人差による違いを考慮して、眉28の位置のチェックポイントaは片目部分テンプレート20の中心から上25〜50mmの間、眉28と目24との間のチェックポイントbは同じく15〜27mm、目24の下のチェックポイントcは、同じく15〜22mmとし、各2値化されたピクセルの値を基に閾値と比較して判別する。これにより目24の直上では黒い部分が無く、その上方に眉28による黒部分が検知され、目24の下方には黒部分がないということを、2値化された画像データから目検知の判断材料とすることができる。
これらのチェック項目のマッチング度は、目24の上の部分おいて、ピクセルの値を基にした閾値と比較して、眉28の位置でマッチング度が10%以上、眉28と目24の間の位置でマッチング度が20%以上、目24の下の位置ではマッチング度が20%以上のマッチングが得られたとき、目24の周りの条件適合性が満たされると判定する。そして、目24であるとする最終判定は、片目部分テンプレート20によるテンプレートマッチングと目24の回りの特徴チェック項目により判定する。
目24を検出した後、目24の瞬きを検出する。瞬目検出は、図2(a)、図3(a)に示すように、黒目である虹彩22の面積の変化から、瞬目を検出している。瞬目検出は、撮影部12により取得した濃淡画像から、虹彩22の面積を測定する。そして、虹彩22の面積測定結果が所定の閾値Sth以下、例えば虹彩22の面積の最大値を記憶し、その最大値から例えば5〜15%好ましくは10%少ない面積を閾値Sthとして開眼状態か否かを判断する。
虹彩22の面積の測定は、目24の2値画像をスキャンして行う。先ず、虹彩22と片目部分テンプレート20の横幅のマッチング度が例えば85〜95%好ましくは90%以上満たしているときに目らしいと判定し、開眼時の虹彩22の横幅と片目部分テンプレート20の横幅は一致したと考える。また、閉眼時には、図7に示すように、まつげ26によって横方向に長い黒の部分ができるので、面積を多く測定してしまうことを防ぐために、虹彩22の面積の横方向の測定範囲は片目部分テンプレート20の横幅とする。また縦方向の測定範囲は、虹彩22の中に片目部分テンプレート20のマッチする点がいくつも存在することから、マッチポイントが虹彩22の中心からずれることを考慮し、片目部分テンプレート20の中心から上下方向に例えば50ピクセルの範囲とする。
虹彩面積測定の手順は、目24の認識後、虹彩22の面積測定を行う。片目部分テンプレート20の中心位置から左に、ピクセル濃度値が虹彩22の2値化閾値以上になるまで移動し、その移動距離を計算する。次に、右方向にも同様にして距離を計算し、左右の移動距離の和を虹彩22の横幅とする。そして、測定範囲内で片目部分テンプレート20の上側で同様の作業を繰り返し、横幅を合計する。また片目部分テンプレート20の下側でも同様にして、横幅を合計する。この測定は、閉眼時も同様に行われる。閉眼時は、横方向に長くまつげ26による黒い部分が表れる。しかし、横方向の測定範囲は、片目部分テンプレート20の横幅であり、ピクセル濃度値が虹彩22の2値化閾値以下の濃い部分は、縦方向にまつげ26の上下幅となる。従って、開眼時の虹彩22の面積は、測定範囲内で、閉眼時のまつげ26を測定した場合よりも大きい値となる。
これにより、図7の測定範囲内でピクセル濃度値が虹彩22の2値化閾値以下の濃い箇所(前記移動距離内の部分)の合計が、図2、図3に示す所定の閾値Sth以上であれば、虹彩22であるとして開眼状態とする。また、この合計が閾値Sth以下であれば、閉眼状態であるとする。
この実施形態の居眠り検出装置30の使用方法は、自動車や電車、その他の作業機械の運転席の近傍に設け、撮影部32により運転者を撮影し、上記の第一の閾値時間(判定基準値ThO)を基準とした処理により瞬目群発を検出し、その瞬目群発中の瞬きの閉眼時間の何れかが第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)以上である場合に、居眠りと判断し、さらに、瞬目群発以外の瞬きの閉眼時間が第四の閾値時間(居眠り判定基準ThC3)以上の場合も居眠りと判断し、居眠り警報1〜5を音等で発するともに、その他の制御を行う。これにより、自動車等の運転の安全性を大幅に向上させることができる。
前記一般的な瞬目群発検出法では、図2(b)、図3(b)に示すように、閉眼の極小値から極小値までの時間を瞬目間間隔TOp(i)として測定していたが、この他に、閉眼の開始から次の閉眼の開始までの時間を瞬目間間隔TOp(i)として測定する変則的な方法や、閉眼の終了から次の閉眼の終了までの時間を瞬目間間隔TOp(i)として測定する変則的な方法がある。しかし、これらの変則的な測定方法では、長時間の閉眼を含む群発性の瞬目を検出できないので、前記の一般的な瞬目群発検出方法が持つ問題を解決しておらず、本発明による瞬目群発検出方法の方が居眠り検出において優れていると言える。
この実施形態の居眠り検出装置は、開眼時間のみを判定基準として第一の閾値時間(判定基準値ThO)により瞬目群発を検出し、瞬目群発中の各々の瞬きの閉眼時間は第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)で、瞬目群発以外の瞬きの閉眼時間は第四の閾値時間(居眠り判定基準ThC3)で判定することにより、居眠り状態の判別が早期に行なわれ、居眠りの確実な防止に貢献する。
次に、この発明の居眠り検出装置の構成を備えた実験装置による実施例について説明する。図8に居眠り検出装置を備えた実験装置の模式図を示す。実験装置には、被験者11の顔を撮影するCCDカメラ等からなる撮影部12と、撮影部12により生成される画像を処理して瞬目の検出等を行う居眠り検出プログラムがインストールされたコンピュータ14で構成されている。コンピュータ14は、撮影画像を表示する液晶ディスプレイ等のモニタ16に接続されている。また、運転中の視界を表示するスクリーン18が設けられ、被験者11が座るシート13と、ハンドル15、計器表示部17、及びアクセル19等を有し、通常の自動車と同様の構成を備えている。また、実験中の被験者11の覚醒度を表す相対的指標である眠気表情値を得るために、実験中の被験者11の顔表情を録画した。ここでは、複数の被験者11について、2名の観察者により眠気の程度を判断し、採点により被験者11の眠気表情値(Rated Sleepiness)を数値化した。さらに、グラフでは、2名の判定値の平均を眠気表情値とし、5秒ごとの30秒移動平均により平滑化を行いグラフに記載した。眠気表情値の数値化は、以下の数値を付して行った。
5.全く眠くなさそう
4.やや眠そう
3.眠そう
2.かなり眠そう
1.眠っている
実施例では、第一の閾値時間として定義される瞬目群発の判定基準値ThOを1秒に設定した。先ず図9に、2名の被験者(Sub.1-1,Sub.2-1)について、本発明による瞬目群発の定義による第1閉眼時間の分布(上段)と、従来の瞬目群発の定義による第1閉眼時間の分布(下段)を示す。縦軸は瞬目群発の第1閉眼時間、横軸は眠気表情値である。図9より、眠気表情値が2〜3のとき、本発明の定義(図2(a))と従来の瞬目の定義(図2(b))の瞬目群発の第1閉眼時間を比べると、本発明の定義による上段のグラフの方が1秒以上の閉眼を伴う瞬目群発が多くなっていることが分かる。また、図10に、別の2名の被験者(Sub.8-1,Sub.6-2)について、本発明による瞬目群発の定義による第2閉眼時間の分布(上段)と、従来の瞬目群発の定義による第2閉眼時間の分布(下段)を示す。縦軸は瞬目群発の第2閉眼時間、横軸は眠気表情値である。図10より、眠気表情値が2〜3のとき、本発明の定義(図2(a))と従来の瞬目の定義(図2(b))の瞬目群発の第2閉眼時間を比べると、本発明の定義による上段のグラフの方が1秒以上の閉眼を伴う瞬目群発が多くなっていることが分かる。これらは本発明の瞬目群発の定義では、開眼時のみを瞬目間間隔としているため、長時間の閉眼を含む瞬目群発を検出できるが、図3(b)に示すように、従来の定義では、開眼時間に加えて閉眼から開眼までの過程や開眼から閉眼までの過程も瞬目間間隔に含まれているため、長時間の閉眼を含む瞬目群発が検出されないからであると考えられる。これにより、本発明の瞬目群発の定義による居眠り検知が、より正確に行われる可能性があることが分かった。よって、上記の第1閉眼時間の分布と第2閉眼時間の分布結果に基づき、実施例では第二の閾値時間として定義される居眠り判定基準ThC1を1秒に設定した。また、第四の閾値時間(居眠り判定基準ThC3)は第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間として2秒に設定した。実施例ではこの第四の閾値時間(居眠り判定基準ThC3)は瞬目群発以外の瞬き(単独瞬目)の居眠り判定基準として用いた。
図11は、本発明の居眠り検出方法による居眠り検出を示したもので、図11によれば、被験者(Sub.1-1)は、実験開始直後から瞬目群発が検出され(●印)、その後最初に第2閉眼(▽印)が1秒以上検出された最初の時点(1086秒)で、居眠りと判断した。この時、被験者の眠気表情値は3を中心に上下しており、被験者が眠気を我慢していることがわかる。さらに、その後眠気表情値が2まで下がっていることから、運転に支障をきたす居眠り状態に入る前を検出できていることが分かり、本発明の検出方法により正確に居眠りを検出していることが確かめられた。
図12は、被験者(Sub.5-1)の場合であり、被験者(Sub.1-1)と同様に実験開始直後から瞬目群発が検出され(●印)ている。その後、最初に第1閉眼(灰色▽印)が1秒以上検出された最初の時点(322秒)で、居眠りと判断した。このときの状態は、眠気表情値で3近くを示しており、その後さらに眠気表情値が下がっていることから、居眠り状態に入る時期であることが分かり、本発明の検出方法により正確に居眠りを検出していることが確かめられた。
図13に示す被験者(Sub.3-2)の場合も、実験開始直後から瞬目群発が検出され(●印)、瞬目群発ではない単独瞬目の閉眼時間が2秒以上検出(灰色△印)された最初の時点(454秒)で、居眠りと判断した。このときの状態は、眠気表情値で2近くを示しており、その後も眠気表情値が3前後で振れていることから、居眠り状態に入る時期であることが分かり、正確に居眠りを検出していることが分かった。
図14は、図13の被験者(Sub.3-2)について、本発明と従来の方法による居眠り検出時間の差を示す。従来法は特許文献2に開示された方法によるもので、初めの瞬きの閉眼終了から2番目の瞬きの閉眼終了までの時間を瞬目間間隔TO p (i)とし、このTO p (i)が1秒以下を瞬目群発と判定し、瞬目群発発生後から3番目の長時間閉眼(1秒以上)の瞬き終了時間までの時間が10秒以内となった箇所のうち、最も早く10秒以下となった箇所の時間を記した。これによれば、本発明では単独瞬目の閉眼時間2秒以上の判定により居眠りを検出(灰色△印)したことから、居眠りを早期のタイミング(454秒)で検出できた。これに対して、従来法では、居眠りの検出時期が測定開始から939秒であり、本発明による方法と比較して遅いことが確かめられた。
図15は、他の被験者(Sub.2-2)について、本発明と従来の方法による居眠り検出時間を測定した結果を示す。この被験者の場合も、本発明は単独瞬目の閉眼時間2秒以上の判定により居眠りを検出(灰色△印)し、早期(781秒)に居眠りを検出することができた。これに対して、従来法では、検出時期が測定開始から1129秒後であり、本発明による方法と比較して遅いことが分かった。さらに、本発明の検出方法では、図15に示すように、瞬目群発の第1閉眼が1秒以上(灰色▽印)、及び第2閉眼が1秒以上(▽印)の判定が最初に表れた時点を見ても、共に従来法よりも早期に居眠りを検出していることが分かり、この点からも本発明による方法は、早期に居眠りを検出可能であることが分かる。
図16は、図11の被験者(Sub.1-1)の眠気表情値の時間推移を示すもので、図16(a)が本発明による検出方法による瞬目群発発生位置(●)、図16(b)には従来法による瞬目群発発生位置(○)を図示している。図16(a)では瞬目群発の第1閉眼(灰色▽)、第2閉眼が1秒以上(▽)となった箇所が図示されている。図16(b)は従来法による瞬目群発発生位置(○)と瞬きの閉眼時間が1秒以上(長時間閉眼)となった箇所(灰色△)が図示されている。
図16(b)の従来の方法によるグラフでは、瞬目群発後の長時間閉眼が10秒以下の時点をA〜Eで示す。従来法では、居眠り検出時期の最も速いもので、実験開始後、A点で示す1315秒であった。これに対して、本発明の方法では、図16(a)に示すように、瞬目群発における第2閉眼が1秒以上あった最初の時点(最初の▽)である、実験開始後1086秒で居眠りの検出が行われている。さらに、本発明の場合、瞬目群発における第1閉眼が1秒以上あった最初の時点(最初の灰色▽)をみても、従来の方法による場合と比較して、早期に検出していることが分かる。
次に、本発明の居眠り検出装置の構成を備えた実験装置(図8)による別の実施形態における実施例を図17に示す。図17は被験者(Sub.8-1)の実験結果であり、図17(a)には眠気表情値、図17(b)には瞬目群発中のすべての瞬きの閉眼時間を加算した合計閉眼時間(秒)、図17(c)には単独瞬目の30秒間での平均閉眼時間(秒)、図17(d)には瞬目群発中のすべての瞬きの閉眼時間(秒)と、単独瞬目の30秒間での平均閉眼時間を加算した合計閉眼時間(秒)の時間推移を示している。この結果より、覚醒度が低下するに従い、合計閉眼時間が伸長していることがわかる。また、覚醒度が低下している間は、常に合計閉眼時間が長くなっている。このことから、瞬目群発と単独瞬目の合計閉眼時間を計測することにより居眠り状態を安定して検出できることが分かる。例えば、第五の閾値時間として、前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間である、健常成人の覚醒状態における前記単独の瞬き(瞬目群発以外の瞬き)の平均閉眼時間より相対的に長い閉眼時間を設定し、複数の各閉眼時間の和として得られる合計閉眼時間が、前記第五の閾値時間より相対的に長い場合に居眠り状態とする第五居眠り判断処理ステップを備えたものとしても良い。また、式(1)に示すように、瞬目群発中の第j番目の瞬きの閉眼時間をTB(j)、単独瞬目の平均閉眼時間をTIとし、これらの閉眼時間にそれぞれ重み(WB(j),WI)をかけて足し合わせることにより合計閉眼時間Tsumを求めてもよい。図17に示す実施例では、WB(j)=1,WI=1としているが、この他、例えばWB(j)=0.5〜1.5,WI=0.5〜1.5とするなど各々の重みを様々に変えて足し合わせて合計閉眼時間Tsumを求めてもよい。
なお、本発明の居眠り検出装置は前記各実施の形態に限定されるものではなく、瞬目検出は、上記以外の方法によっても良く、短時間に連続する2回以上の瞬目を検出して瞬目群発としても良い。また、この発明の開眼時間及び閉眼時間の定義及び判定基準値は、小数点以下を四捨五入した数値も含むものであり、具体的には、例えば0.5秒以上1.5秒未満までの範囲がこの発明の1秒の定義に含まれるものであり、この範囲を1秒としても良い。
10 居眠り検出実験装置
11 被験者
12,32 撮影部
14 パーソナルコンピュータ
16 モニタ
30 居眠り検出装置
31 ドライバー
33 ドライバーモニターECU
34 ナビゲーションシステム
35 スピーカ
36 ブレーキ制御装置
この発明は、人の覚醒が低下した状態である居眠りを検出する居眠り検出方法と装置に関する。
従来、居眠りを検出する方法として、例えば1秒以内の短時間に、複数回の閉眼が生じる状態である瞬目群発を検出して、覚醒が低下していることを検出する方法が提案されている。例えば特許文献1には、目の瞬きである瞬目の群発を検出してから所定時間以内に閉瞼を伴うゆっくりとした眼球の横移動であるSEM(Slow Eye Movement)を検出した場合に、覚醒度が低下している(居眠りしている)と判定する検出方法が開示されている。瞬目の群発やSEMは、入眠初期に現れる特徴的な現象であり、これらを組み合わせて覚醒度の低下を判定している。
特許文献2には、被検出者の瞬目を検出する瞬目検出手段と、前記瞬目検出手段により検出された瞬目から、該瞬目とその直前の瞬目との瞬目間間隔が所定時間以内で起こった瞬目群発の瞬目、及び所定時間以上の長時間閉眼を伴う瞬目を判定する瞬目判定手段と、前記瞬目群発の瞬目から前記長時間閉眼を伴う瞬目までの時間に基づいて覚醒低下度を判定する覚醒低下判定手段とを備えた覚醒低下検出装置が開示されている。
しかし、特許文献2に記載の検出方法では、瞬目群発の後に生じる瞬目群発以外の瞬きの閉眼時間が、閾値に比べて長い場合に覚醒度が低下するとしており、瞬目群発による2回の瞬きと瞬目群発以外の1回の瞬きを1セットとして、少なくとも3回の瞬きを組み合わせて用いる必要がある。このため、瞬目群発のみによる覚醒度低下の検出や、瞬目群発以外の瞬きのみにより覚醒度低下の検出ができないといった問題があった。さらに、この検出方法の場合、通常の瞬目と群発性瞬目とを分けずに瞬目を抽出しており、抽出方法が群発性瞬目に関して特化されていない。このため、この検出方法では、群発性瞬目時に多く見られる閉眼から半眼に折り返して閉眼に戻るような瞬目現象を逃してしまい、群発性瞬目を精度良く検出することができないという問題があった。その他、この検出方法では、覚醒度低下検出におけるリアルタイム性に欠けるといった問題もあった。
そこで、特許文献3は、群発性瞬目を精度良く検出するために、判定対象者の眼を含む領域を連続して撮像する撮像手段と、前記撮像手段により連続して撮像された画像に基づいて、瞼の開度の時系列データを検出する開度検出手段と、前記開度検出手段によって検出された瞼の開度の時系列データに基づいて、前記瞼の開度が持続して所定の閾値未満となる範囲から、極大値及び極小値を抽出し、抽出された極大値及び極小値の間に設定された閾値で検出される瞬目間間隔が所定時間以内となる群発性瞬目を検出する群発性瞬目検出手段と、前記群発性瞬目検出手段による検出結果に基づいて、前記判定対象者の眠気状態を判定する眠気状態判定手段とから成る眠気判定装置を提案している。
一方、非特許文献1,2では、瞬きの特徴のみに基づく居眠り状態を検出するために、瞬目群発中の第1瞬目の閉眼時間と眠気表情値の関係を調査したものである。その結果、覚醒度が低下すると、第1瞬目の閉眼時間が延びることが示されている。
特開2006−136556号公報
特開2008−73335号公報
特開2010−224637号公報
平成22年度電気関係学会北陸支部連合大会講演論文集B-3
平成22年度日本生体医工学会北陸支部大会講演論文集pp.25~26
上記背景技術の特許文献1,2に開示された発明の瞬目群発の検出は、図2(b)、図3(b)に示すように、一般的に閉眼の一つの極小値から次の極小値までの時間を瞬目間間隔TOp(i)として測定していた。そして、判定基準値ThOを例えば1秒とし、瞬目間間隔TOp(i)が判定基準値ThO以下の間隔の場合を瞬目群発と定義していた。この場合の瞬目間間隔TOp(i)は、閉眼状態の極小値から開眼まで及び開眼状態から閉眼の極値までの時間も含めて測定しているため、瞼を閉じる動作の時間や瞼を開く動作の時間が長くなる群発性の瞬目を検出できず、正確に瞬目群発を検出できないものであった。
特許文献3に開示された検出方法は、瞼の開度の時系列データを検出し、検出された瞼の開度の時系列データに基づいて、前記瞼の開度が持続して所定の閾値未満となる範囲から瞬目群発を判断しているため、半閉眼状態の瞼の開度を正確に測定することが困難であり、測定誤差も生じやすいものである。
非特許文献1,2では、瞬目群発中の瞬きの閉眼時間から居眠り状態を検出するための基準や実時間の検出タイミングが示されておらず、精確に居眠り状態を判断できるものではなかった。さらに、瞬目群発中の第1瞬目の閉眼時間のみに基づく居眠り状態の判定では、居眠り検出精度が低く、居眠り検出タイミングに遅延が生じる問題がある。
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、比較的簡単な装置で、正確に居眠り状態を検出することができ、居眠り検出の早さ及び精度を向上させた居眠り検出方法と装置を提供することを目的とする。
この発明は、人の目の閉眼から開眼までの状態のうち、ほぼ開眼した状態を開眼時間とし、それ以外を閉眼時間として前記開眼時間及び前記閉眼時間を測定し、健常成人の覚醒状態における平均開眼時間に比べて相対的に短い時間を第一の閾値時間(開眼時間による瞬目群発の判定基準値ThO)とし、健常成人の覚醒状態における平均閉眼時間に比べて相対的に長い時間を第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)とし、前記第一の閾値時間以下の開眼を検出した場合(s2)前記第一の閾値時間以下の開眼時間の後に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第二の閾値時間以上に達すると(s5)居眠り状態と判断する第一居眠り判断処理ステップを備える居眠り検出方法である。
さらに、前記第一の閾値時間以下の開眼の直前に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第二の閾値時間以上であった場合(s3)、前記第一の閾値時間以下の開眼の後の前記閉眼時間を計測することなく、前記第一の閾値時間以下の開眼の終了により直ちに居眠り状態と判断する早期判断処理ステップを備える居眠り検出方法である。
前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を第三の閾値時間として設定し、前記第一の閾値時間以下の開眼の後に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第三の閾値時間(居眠り判定基準ThC2)以上に達した場合(s6)直ちに居眠り状態と判断する第二居眠り判断処理ステップを備えるものである。
前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を閾値時間として設定し、前記開眼時間の検出に際して、前記第一の閾値時間より長い開眼を検出した場合、その直前の瞬きのさらに直前の開眼時間も前記第一の閾値時間より長い場合に、前記直前の瞬きを単独の瞬きと判定し、前記単独の瞬きの閉眼時間が前記第二の閾値時間より相対的に長い閾値時間(居眠り判定基準ThC3)以上であったときは(s9)、前記単独の瞬きの後の前記開眼の終了により直ちに居眠り状態と判断する第三居眠り判断処理ステップを備えるものである。
前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を閾値時間として設定し、前記開眼時間の検出に際して、前記第一の閾値時間より長い開眼を検出し、その直後の瞬きの閉眼時間が前記第二の閾値時間より相対的に長い閾値時間以上に達した場合(s11)に直ちに居眠り状態と判断する第四居眠り判断処理ステップを備えるものである。
また、前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を閾値時間として設定し、複数の各閉眼時間の和として得られる合計閉眼時間が、前記第二の閾値時間より相対的に長い閾値時間より長い場合に居眠り状態とする第五居眠り判断処理ステップを備えるものでも良い。前記第五居眠り判断処理ステップは、前記第一の閾値時間以下の開眼を検出した後の複数の各閉眼時間の和として得られる合計閉眼時間が、例えば前記第二の閾値時間より相対的に長い閾値時間より長い場合に居眠り状態としても良い。さらに、前記合計閉眼時間は、前記各閉眼時間にそれぞれ重みをかけて足し合わせることにより求められるものでも良い
またこの発明は、人の目の位置を認識して、その目の閉眼から開眼までの状態を検出する閉眼検出手段と、前記閉眼検出手段により人の目がほぼ開眼した状態を開眼時間とし、それ以外を閉眼時間として測定する瞬目時間測定手段とを備え、健常成人の覚醒状態における平均開眼時間に比べて相対的に短い時間を第一の閾値時間(開眼時間による瞬目群発の判定基準値ThO)とし、健常成人の覚醒状態における平均閉眼時間に比べて相対的に長い時間を第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)とし、前記瞬目時間測定手段により前記第一の閾値時間以下の開眼を検出した場合、前記第一の閾値時間以下の開眼時間の後に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第二の閾値時間以上に達すると居眠り状態であるとする居眠り判別手段を備えた居眠り検出装置である。
さらに、前記居眠り判別手段は、前記第一の閾値時間以下の開眼の前に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第二の閾値時間以上の場合には、前記第一の閾値時間以下の開眼の後の前記閉眼時間を計測することなく、前記第一の閾値時間以下の開眼の終了により直ちに居眠り状態であるとするものである。
前記居眠り判別手段は、前記第二の閾値時間より相対的に長い他の閉眼時間を第三の閾値時間として設定し、前記第一の閾値時間以下の開眼の後に生じた瞬きの閉眼時間が、前記第三の閾値時間(居眠り判定基準ThC2)以上に達した場合には直ちに居眠り状態であるとするものである。前記第三の閾値時間は、例えば、健常成人の覚醒状態における前記第一の閾値時間以下の開眼の直前と直後に生じた瞬きの閉眼時間の合計時間より相対的に長い閉眼時間としても良い。
前記居眠り判別手段は、前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を閾値時間として設定し、前記瞬目時間測定手段により、前記第一の閾値時間より長い開眼を検出した場合、その直前の瞬きのさらに直前の開眼時間も前記第一の閾値時間より長い場合に、前記直前の瞬きを単独の瞬きと判定し、前記単独の瞬きの閉眼時間が前記第二の閾値時間より相対的に長い閾値時間(居眠り判定基準ThC3)以上であったときは、前記単独の瞬きの後の前記開眼の終了により直ちに居眠り状態とするものである。
前記居眠り判別手段は、前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を閾値時間として設定し、前記瞬目時間測定手段により、前記第一の閾値時間より長い開眼を検出し、その直後の瞬きの閉眼時間が前記第二の閾値時間より相対的に長い閾値時間以上に達した場合に直ちに居眠り状態とするものである。前記第二の閾値時間より相対的に長い閾値時間は、例えば、健常成人の覚醒状態における前記単独の瞬きの平均閉眼時間より相対的に長い閉眼時間としても良い。
前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間を閾値時間として設定し、複数の各閉眼時間の和として得られる合計閉眼時間が、例えば前記第二の閾値時間より相対的に長い閾値時間より長い場合に居眠り状態とするものである。前記居眠り判別手段は、前記合計閉眼時間を、前記複数の各閉眼時間にそれぞれ重みをかけて足し合わせることでも求められる。前記閉眼検出手段は、前記人の目の虹彩と瞳孔の面積を測定するものである。
また、前記居眠り状態の判断結果に基づき、居眠り警報を発する警報手段を備えた居眠り検出装置としても良い。
さらにこの発明は、前記居眠り検出装置を備えた車両に適用可能なものである。
この発明の居眠り検出方法と装置は、簡単な装置でコストもかからず、正確且つ迅速な居眠り検出が可能となる。これにより、乗り物等の運転手の居眠りを早期に発見し、運転の安全性を高めることが出来る。
この発明の一実施形態の居眠り検出装置の模式図である。
この発明の一実施形態の居眠り検出方法の瞬目の定義(a)と、従来の瞬目の定義(b)を示すタイムチャートである。
閉眼時間が長い場合について、この発明の一実施形態の居眠り検出方法の瞬目の検出(a)と、従来の瞬目の検出(b)を示すタイムチャートである。
この発明の一実施形態の居眠り検出方法を示すフローチャートである。
この発明の一実施形態の居眠り検出装置の目検出方法に用いるテンプレートの模式図である。
この発明の一実施形態の居眠り検出装置の目検出方法の原理を示す図である。
この発明の一実施形態の居眠り検出装置の瞬目検出方法を示す写真と模式図である。
この発明の一実施形態における実施例を示すための実験装置の模式図である。
2名の被験者について、この発明による瞬目群発の定義による第1閉眼時間の分布と、従来の瞬目群発の定義による第1閉眼時間の分布である。
2名の被験者について、この発明による瞬目群発の定義による第2閉眼時間の分布と、従来の瞬目群発の定義による第2閉眼時間の分布である。
この発明の一実施例による実験結果における居眠り検出結果を示すグラフである。
この発明の一実施例による実験結果における居眠り検出結果を示すグラフである。
この発明の一実施例による実験結果における居眠り検出結果を示すグラフである。
この発明の一実施例と従来の技術による居眠り検出の時間を示すグラフである。
この発明の一実施例と従来の技術による居眠り検出の時間を示すグラフである。
この発明の一実施例の居眠り検出を示すグラフ(a)と、従来の技術による居眠り検出を示すグラフ(b)である。
この発明の一実施例の眠気表情値を示すグラフ(a)、瞬目群発中の瞬きの合計閉眼時間を示すグラフ(b)、単独瞬目の平均閉眼時間を示すグラフ(c)、瞬目群発の瞬きと単独瞬目の合計閉眼時間を示すグラフ(d)である。
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図7はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の居眠り検出装置30は、図1に示すように、例えばドライバー31の顔を撮影するCCDカメラ等からなる撮影部32と、撮影部32により生成される画像を処理して瞬目の検出等を行う居眠り検出アルゴリズムが実装されたドライバーモニターECU33を備えている。ドライバーモニターECU33は、覚醒レベルの表示や居眠り状態になった場合に視覚的に警報を促すためのナビゲーションシステム34に接続されている。また、ドライバーモニターECU33は、ドライバー31が居眠り状態になった場合、スピーカ35により音でも警報を促す。さらに、ドライバーモニターECU33は、ドライバー31の居眠り状態が続いた場合、ブレーキ制御装置36により、車両のブレーキ制御を行う。
ドライバーモニターECU33は、CPUと、制御ルーチン等のプログラムを記憶したROM、データ等を記憶するRAM、及びその他のプログラムやデータを記憶したハードディスク等の記憶装置を備えている。
ドライバーモニターECU33に設けられた居眠り検出機能は、撮影部32が撮像した画像を処理して、この発明により定義した瞬きを検出する閉眼検出手段と、閉眼検出手段が検出した瞬きの開眼時間と閉眼時間を計る瞬目時間測定手段と、瞬目時間測定手段により測定した瞬きの時間を基に瞬目群発を判別する瞬目群発判別手段と、これらの測定結果を基に居眠りを判定する居眠り判別手段とから成る居眠り検出アルゴリズムの実行プログラムにより構成されている。
居眠り状態の検出及び判定は、図2(a)及び図3(a)に示す開眼時間TO(i)による瞬目群発の判定により、図4のフローチャートに示すように判定する。まず、ドライバーモニターECU33に設けられた瞬目群発判別手段により開眼時間TO(i)(iは自然数)を計測する(s1)。計測中に閉眼検出手段により閉眼状態が検出され、確定した開眼時間TO(i)が、図3(a)に示すように、第一の閾値時間である判定基準値ThO以下であるか否かを調べる(s2)。開眼時間TO(i)が瞬目群発の判定基準値ThO以下の時、この開眼状態の前に発生した瞬きと後に発生する瞬きを瞬目群発として判定する。この実施形態では、判定基準値ThO=1秒である。この時、居眠り判別手段により、この開眼状態の前に発生した瞬きの閉眼時間TC(i−1)が、第二の閾値時間である居眠り判定基準ThC1以上であれば、早期居眠り判断ステップとして、その時点で居眠り状態であると判定する(s3)。そして、居眠り警報1を音等で発する。ここでは、人の目の閉眼から開眼までの状態のうち、ほぼ開眼した状態を開眼時間とし、それ以外を閉眼時間とする。そして、健常成人の覚醒状態における平均開眼時間に比べて相対的に短い時間を第一の閾値時間(開眼時間による瞬目群発の判定基準値ThO)と定義する。また、健常成人の覚醒状態における平均閉眼時間に比べて相対的に長い時間を第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)として定義する。
次に、瞬目群発判別手段により閉眼時間TC(i)を計測する(s4)。閉眼時間TC(i)が居眠り判定基準ThC1以上になれば、第一居眠り判断ステップとして、直ちに居眠り状態であると判定し(s5)、居眠り警報2を音等で発する。また、閉眼時間TC(i)が、前記第二の閾値時間より長い第三の閾値時間であるもう一つの居眠り判定基準ThC2以上(居眠り判定基準ThC2>居眠り判定基準ThC1)となれば、第二居眠り判断ステップとして、再度居眠り状態であると判定し(s6)、居眠り警報3を音等で発する。その後、閉眼検出手段により開眼状態が検出された時、瞬きが終了したと判断して、瞬目群発判別手段により閉眼時間TC(i)が確定する(s7)。ここで、第三の閾値時間は、前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間に設定するが、適宜、例えば前記第一の閾値時間以下の開眼の前に生じた瞬きの平均閉眼時間と前記第一の閾値時間以下の開眼の後に生じた瞬きの平均閉眼時間の合計時間より相対的に長い閉眼時間であれば良く、健常成人の覚醒状態における前記瞬目群発以外の瞬きの平均閉眼時間より相対的に長い閉眼時間としても良い。
一方、開眼時間TO(i)が瞬目群発の判定基準値ThOより長い時、この開眼状態の直前の瞬きの前の開眼時間TO(i−1)が瞬目群発の判定基準値ThOより長い時、この開眼状態の直前の瞬きを単独の瞬き(瞬目群発以外の瞬き)と判定する(s8)。さらに、この開眼状態の直前の瞬きの閉眼時間TC(i−1)が、前記第二の閾値時間より長い値であり、上記のように適宜設定される第三の閾値時間としてのもう一つの居眠り判定基準ThC3以上(居眠り判定基準ThC3>居眠り判定基準ThC1)であれば、居眠り状態であると判定する(s9)。そして、居眠り警報4を音等で発する。次に、瞬目群発判別手段により閉眼時間TC(i)を計測する(s10)。閉眼時間TC(i)が居眠り判定基準ThC3以上になれば、直ちに居眠り状態であると判定し(s11)、居眠り警報5を音等で発する。その後、閉眼検出手段により開眼状態が検出された時、瞬きが終了したと判断して、瞬目群発判別手段により閉眼時間TC(i)が確定する(s12)。
ここで、瞬目検出方法の例を以下に説明する。先ず目の位置検出方法は、撮影部32で取得した顔の濃淡画像を閾値処理により2値化し、2値化画像に対して、図5に示す片目部分テンプレート20によるテンプレートマッチングを行う。このテンプレートマッチングには、例えば残差逐次検出法を用いる。
一般に、図5に示すように成人の目24の角膜の直径は約11mm(縦9.3〜11mm、横10.6〜12mm)である。黒目である虹彩22のサイズは角膜サイズとほぼ一致することから、この実施形態では、虹彩22のサイズを直径11mmと設定している。片目部分テンプレート20は十字形の直線で構成され、例えばモニタ16の画面上で横幅11mm、縦幅6mmに設定されている。1mmあたりのピクセル数は、モニタ16上で一定の長さの直線を引き、そのピクセル数を基に計算する。この実施形態では、1mmは4.2ピクセルとなり、11mmは約46ピクセル、6mmは約25ピクセルに相当する。このような十字形の片目部分テンプレート20を用いることにより、目24の傾きがあっても、円形の虹彩22には影響せず、虹彩22との正確なマッチングを得ることができる。
この実施形態では処理の高速化のため、例えば4画素ずつ片目部分テンプレート20を移動させテンプレートマッチングを行う。片目部分テンプレート20の横幅のマッチング度は、画像の1ピクセルずつ比べ、縦幅のマッチング度は1ピクセル飛ばしに比較し、横幅の90%以上、縦幅の40%以上のマッチング度が同時に満たされた時に、片目部分テンプレート20が重なった部分が目らしいと判定する。
また、片目部分テンプレート20によるテンプレートマッチングは、画像上のいくつかの目らしい領域を間違えて検出する恐れがある。その間違い対策として、目24の周りの特徴をチェック項目として用い、図6に示すように、片目部分テンプレート20の上下において、眉28の有無を判断材料とした。例えば、虹彩22を11mmとした場合、人の顔の個人差による違いを考慮して、眉28の位置のチェックポイントaは片目部分テンプレート20の中心から上25〜50mmの間、眉28と目24との間のチェックポイントbは同じく15〜27mm、目24の下のチェックポイントcは、同じく15〜22mmとし、各2値化されたピクセルの値を基に閾値と比較して判別する。これにより目24の直上では黒い部分が無く、その上方に眉28による黒部分が検知され、目24の下方には黒部分がないということを、2値化された画像データから目検知の判断材料とすることができる。
これらのチェック項目のマッチング度は、目24の上の部分おいて、ピクセルの値を基にした閾値と比較して、眉28の位置でマッチング度が10%以上、眉28と目24の間の位置でマッチング度が20%以上、目24の下の位置ではマッチング度が20%以上のマッチングが得られたとき、目24の周りの条件適合性が満たされると判定する。そして、目24であるとする最終判定は、片目部分テンプレート20によるテンプレートマッチングと目24の回りの特徴チェック項目により判定する。
目24を検出した後、目24の瞬きを検出する。瞬目検出は、図2(a)、図3(a)に示すように、黒目である虹彩22の面積の変化から、瞬目を検出している。瞬目検出は、撮影部12により取得した濃淡画像から、虹彩22の面積を測定する。そして、虹彩22の面積測定結果が所定の閾値Sth以下、例えば虹彩22の面積の最大値を記憶し、その最大値から例えば5〜15%好ましくは10%少ない面積を閾値Sthとして開眼状態か否かを判断する。
虹彩22の面積の測定は、目24の2値画像をスキャンして行う。先ず、虹彩22と片目部分テンプレート20の横幅のマッチング度が例えば85〜95%好ましくは90%以上満たしているときに目らしいと判定し、開眼時の虹彩22の横幅と片目部分テンプレート20の横幅は一致したと考える。また、閉眼時には、図7に示すように、まつげ26によって横方向に長い黒の部分ができるので、面積を多く測定してしまうことを防ぐために、虹彩22の面積の横方向の測定範囲は片目部分テンプレート20の横幅とする。また縦方向の測定範囲は、虹彩22の中に片目部分テンプレート20のマッチする点がいくつも存在することから、マッチポイントが虹彩22の中心からずれることを考慮し、片目部分テンプレート20の中心から上下方向に例えば50ピクセルの範囲とする。
虹彩面積測定の手順は、目24の認識後、虹彩22の面積測定を行う。片目部分テンプレート20の中心位置から左に、ピクセル濃度値が虹彩22の2値化閾値以上になるまで移動し、その移動距離を計算する。次に、右方向にも同様にして距離を計算し、左右の移動距離の和を虹彩22の横幅とする。そして、測定範囲内で片目部分テンプレート20の上側で同様の作業を繰り返し、横幅を合計する。また片目部分テンプレート20の下側でも同様にして、横幅を合計する。この測定は、閉眼時も同様に行われる。閉眼時は、横方向に長くまつげ26による黒い部分が表れる。しかし、横方向の測定範囲は、片目部分テンプレート20の横幅であり、ピクセル濃度値が虹彩22の2値化閾値以下の濃い部分は、縦方向にまつげ26の上下幅となる。従って、開眼時の虹彩22の面積は、測定範囲内で、閉眼時のまつげ26を測定した場合よりも大きい値となる。
これにより、図7の測定範囲内でピクセル濃度値が虹彩22の2値化閾値以下の濃い箇所(前記移動距離内の部分)の合計が、図2、図3に示す所定の閾値Sth以上であれば、虹彩22であるとして開眼状態とする。また、この合計が閾値Sth以下であれば、閉眼状態であるとする。
この実施形態の居眠り検出装置30の使用方法は、自動車や電車、その他の作業機械の運転席の近傍に設け、撮影部32により運転者を撮影し、上記の第一の閾値時間(判定基準値ThO)を基準とした処理により瞬目群発を検出し、その瞬目群発中の瞬きの閉眼時間の何れかが第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)以上である場合に、居眠りと判断し、さらに、瞬目群発以外の瞬きの閉眼時間が、上記のように設定される第三の閾値時間(居眠り判定基準ThC3)以上の場合も居眠りと判断し、居眠り警報1〜5を音等で発するともに、その他の制御を行う。これにより、自動車等の運転の安全性を大幅に向上させることができる。
前記一般的な瞬目群発検出法では、図2(b)、図3(b)に示すように、閉眼の極小値から極小値までの時間を瞬目間間隔TOp(i)として測定していたが、この他に、閉眼の開始から次の閉眼の開始までの時間を瞬目間間隔TOp(i)として測定する変則的な方法や、閉眼の終了から次の閉眼の終了までの時間を瞬目間間隔TOp(i)として測定する変則的な方法がある。しかし、これらの変則的な測定方法では、長時間の閉眼を含む群発性の瞬目を検出できないので、前記の一般的な瞬目群発検出方法が持つ問題を解決しておらず、本発明による瞬目群発検出方法の方が居眠り検出において優れていると言える。
この実施形態の居眠り検出装置は、開眼時間のみを判定基準として第一の閾値時間(判定基準値ThO)により瞬目群発を検出し、瞬目群発中の各々の瞬きの閉眼時間は第二の閾値時間(居眠り判定基準ThC1)で、瞬目群発以外の瞬きの閉眼時間は上記の第三の閾値時間(居眠り判定基準ThC3)で判定することにより、居眠り状態の判別が早期に行なわれ、居眠りの確実な防止に貢献する。
次に、この発明の居眠り検出装置の構成を備えた実験装置による実施例について説明する。図8に居眠り検出装置を備えた実験装置の模式図を示す。実験装置には、被験者11の顔を撮影するCCDカメラ等からなる撮影部12と、撮影部12により生成される画像を処理して瞬目の検出等を行う居眠り検出プログラムがインストールされたコンピュータ14で構成されている。コンピュータ14は、撮影画像を表示する液晶ディスプレイ等のモニタ16に接続されている。また、運転中の視界を表示するスクリーン18が設けられ、被験者11が座るシート13と、ハンドル15、計器表示部17、及びアクセル19等を有し、通常の自動車と同様の構成を備えている。また、実験中の被験者11の覚醒度を表す相対的指標である眠気表情値を得るために、実験中の被験者11の顔表情を録画した。ここでは、複数の被験者11について、2名の観察者により眠気の程度を判断し、採点により被験者11の眠気表情値(Rated Sleepiness)を数値化した。さらに、グラフでは、2名の判定値の平均を眠気表情値とし、5秒ごとの30秒移動平均により平滑化を行いグラフに記載した。眠気表情値の数値化は、以下の数値を付して行った。
5.全く眠くなさそう
4.やや眠そう
3.眠そう
2.かなり眠そう
1.眠っている
実施例では、第一の閾値時間として定義される瞬目群発の判定基準値ThOを1秒に設定した。先ず図9に、2名の被験者(Sub.1-1,Sub.2-1)について、本発明による瞬目群発の定義による第1閉眼時間の分布(上段)と、従来の瞬目群発の定義による第1閉眼時間の分布(下段)を示す。縦軸は瞬目群発の第1閉眼時間、横軸は眠気表情値である。図9より、眠気表情値が2〜3のとき、本発明の定義(図2(a))と従来の瞬目の定義(図2(b))の瞬目群発の第1閉眼時間を比べると、本発明の定義による上段のグラフの方が1秒以上の閉眼を伴う瞬目群発が多くなっていることが分かる。また、図10に、別の2名の被験者(Sub.8-1,Sub.6-2)について、本発明による瞬目群発の定義による第2閉眼時間の分布(上段)と、従来の瞬目群発の定義による第2閉眼時間の分布(下段)を示す。縦軸は瞬目群発の第2閉眼時間、横軸は眠気表情値である。図10より、眠気表情値が2〜3のとき、本発明の定義(図2(a))と従来の瞬目の定義(図2(b))の瞬目群発の第2閉眼時間を比べると、本発明の定義による上段のグラフの方が1秒以上の閉眼を伴う瞬目群発が多くなっていることが分かる。これらは本発明の瞬目群発の定義では、開眼時のみを瞬目間間隔としているため、長時間の閉眼を含む瞬目群発を検出できるが、図3(b)に示すように、従来の定義では、開眼時間に加えて閉眼から開眼までの過程や開眼から閉眼までの過程も瞬目間間隔に含まれているため、長時間の閉眼を含む瞬目群発が検出されないからであると考えられる。これにより、本発明の瞬目群発の定義による居眠り検知が、より正確に行われる可能性があることが分かった。よって、上記の第1閉眼時間の分布と第2閉眼時間の分布結果に基づき、実施例では第二の閾値時間として定義される居眠り判定基準ThC1を1秒に設定した。また、第三の閾値時間(居眠り判定基準Thc 2 ,ThC3)は、第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間として2秒に設定した。実施例ではこの第三の閾値時間(居眠り判定基準ThC3)は瞬目群発以外の瞬き(単独瞬目)の居眠り判定基準として用いた。
図11は、本発明の居眠り検出方法による居眠り検出を示したもので、図11によれば、被験者(Sub.1-1)は、実験開始直後から瞬目群発が検出され(●印)、その後最初に第2閉眼(▽印)が1秒以上検出された最初の時点(1086秒)で、居眠りと判断した。この時、被験者の眠気表情値は3を中心に上下しており、被験者が眠気を我慢していることがわかる。さらに、その後眠気表情値が2まで下がっていることから、運転に支障をきたす居眠り状態に入る前を検出できていることが分かり、本発明の検出方法により正確に居眠りを検出していることが確かめられた。
図12は、被験者(Sub.5-1)の場合であり、被験者(Sub.1-1)と同様に実験開始直後から瞬目群発が検出され(●印)ている。その後、最初に第1閉眼(灰色▽印)が1秒以上検出された最初の時点(322秒)で、居眠りと判断した。このときの状態は、眠気表情値で3近くを示しており、その後さらに眠気表情値が下がっていることから、居眠り状態に入る時期であることが分かり、本発明の検出方法により正確に居眠りを検出していることが確かめられた。
図13に示す被験者(Sub.3-2)の場合も、実験開始直後から瞬目群発が検出され(●印)、瞬目群発ではない単独瞬目の閉眼時間が2秒以上検出(灰色△印)された最初の時点(454秒)で、居眠りと判断した。このときの状態は、眠気表情値で2近くを示しており、その後も眠気表情値が3前後で振れていることから、居眠り状態に入る時期であることが分かり、正確に居眠りを検出していることが分かった。
図14は、図13の被験者(Sub.3-2)について、本発明と従来の方法による居眠り検出時間の差を示す。従来法は特許文献2に開示された方法によるもので、初めの瞬きの閉眼終了から2番目の瞬きの閉眼終了までの時間を瞬目間間隔TOp(i)とし、このTOp(i)が1秒以下を瞬目群発と判定し、瞬目群発発生後から3番目の長時間閉眼(1秒以上)の瞬き終了時間までの時間が10秒以内となった箇所のうち、最も早く10秒以下となった箇所の時間を記した。これによれば、本発明では単独瞬目の閉眼時間2秒以上の判定により居眠りを検出(灰色△印)したことから、居眠りを早期のタイミング(454秒)で検出できた。これに対して、従来法では、居眠りの検出時期が測定開始から939秒であり、本発明による方法と比較して遅いことが確かめられた。
図15は、他の被験者(Sub.2-2)について、本発明と従来の方法による居眠り検出時間を測定した結果を示す。この被験者の場合も、本発明は単独瞬目の閉眼時間2秒以上の判定により居眠りを検出(灰色△印)し、早期(781秒)に居眠りを検出することができた。これに対して、従来法では、検出時期が測定開始から1129秒後であり、本発明による方法と比較して遅いことが分かった。さらに、本発明の検出方法では、図15に示すように、瞬目群発の第1閉眼が1秒以上(灰色▽印)、及び第2閉眼が1秒以上(▽印)の判定が最初に表れた時点を見ても、共に従来法よりも早期に居眠りを検出していることが分かり、この点からも本発明による方法は、早期に居眠りを検出可能であることが分かる。
図16は、図11の被験者(Sub.1-1)の眠気表情値の時間推移を示すもので、図16(a)が本発明による検出方法による瞬目群発発生位置(●)、図16(b)には従来法による瞬目群発発生位置(○)を図示している。図16(a)では瞬目群発の第1閉眼(灰色▽)、第2閉眼が1秒以上(▽)となった箇所が図示されている。図16(b)は従来法による瞬目群発発生位置(○)と瞬きの閉眼時間が1秒以上(長時間閉眼)となった箇所(灰色△)が図示されている。
図16(b)の従来の方法によるグラフでは、瞬目群発後の長時間閉眼が10秒以下の時点をA〜Eで示す。従来法では、居眠り検出時期の最も速いもので、実験開始後、A点で示す1315秒であった。これに対して、本発明の方法では、図16(a)に示すように、瞬目群発における第2閉眼が1秒以上あった最初の時点(最初の▽)である、実験開始後1086秒で居眠りの検出が行われている。さらに、本発明の場合、瞬目群発における第1閉眼が1秒以上あった最初の時点(最初の灰色▽)をみても、従来の方法による場合と比較して、早期に検出していることが分かる。
次に、本発明の居眠り検出装置の構成を備えた実験装置(図8)による別の実施形態における実施例を図17に示す。図17は被験者(Sub.8-1)の実験結果であり、図17(a)には眠気表情値、図17(b)には瞬目群発中のすべての瞬きの閉眼時間を加算した合計閉眼時間(秒)、図17(c)には単独瞬目の30秒間での平均閉眼時間(秒)、図17(d)には瞬目群発中のすべての瞬きの閉眼時間(秒)と、単独瞬目の30秒間での平均閉眼時間を加算した合計閉眼時間(秒)の時間推移を示している。この結果より、覚醒度が低下するに従い、合計閉眼時間が伸長していることがわかる。また、覚醒度が低下している間は、常に合計閉眼時間が長くなっている。このことから、瞬目群発と単独瞬目の合計閉眼時間を計測することにより居眠り状態を安定して検出できることが分かる。例えば、前記第三の閾値時間として、前記第二の閾値時間より相対的に長い閉眼時間である、健常成人の覚醒状態における前記単独の瞬き(瞬目群発以外の瞬き)の平均閉眼時間より相対的に長い閉眼時間を設定し、複数の各閉眼時間の和として得られる合計閉眼時間が、前記第三の閾値時間より相対的に長い場合に居眠り状態とする第五居眠り判断処理ステップを備えたものとしても良い。また、式(1)に示すように、瞬目群発中の第j番目の瞬きの閉眼時間をTB(j)、単独瞬目の平均閉眼時間をTIとし、これらの閉眼時間にそれぞれ重み(WB(j),WI)をかけて足し合わせることにより合計閉眼時間Tsumを求めてもよい。図17に示す実施例では、WB(j)=1,WI=1としているが、この他、例えばWB(j)=0.5〜1.5,WI=0.5〜1.5とするなど各々の重みを様々に変えて足し合わせて合計閉眼時間Tsumを求めてもよい。
なお、本発明の居眠り検出装置は前記各実施の形態に限定されるものではなく、瞬目検出は、上記以外の方法によっても良く、短時間に連続する2回以上の瞬目を検出して瞬目群発としても良い。また、この発明の開眼時間及び閉眼時間の定義及び判定基準値は、小数点以下を四捨五入した数値も含むものであり、具体的には、例えば0.5秒以上1.5秒未満までの範囲がこの発明の1秒の定義に含まれるものであり、この範囲を1秒としても良い。
10 居眠り検出実験装置
11 被験者
12,32 撮影部
14 パーソナルコンピュータ
16 モニタ
30 居眠り検出装置
31 ドライバー
33 ドライバーモニターECU
34 ナビゲーションシステム
35 スピーカ
36 ブレーキ制御装置