JPWO2013035193A1 - スライドファスナー用ファスナーテープ及びスライドファスナー - Google Patents

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Abstract

本発明によれば、エレメント取付部(101、201、301)及びテープ主体部(102、202、302)を備えた織物製のスライドファスナー用ファスナーテープ(100、200、300)であって、テープ主体部(102、202、302)は3本以上の経糸及び3本以上の緯糸を一組として骨格が形成され、経糸及び緯糸の各組の間に開口(107、207、307)が形成されたメッシュ構造をもつメッシュ部を備え、当該メッシュ部においては、経糸及び緯糸の各組において、最も外側の経糸及び緯糸の交錯密度が、それよりも内側の経糸及び緯糸の交錯密度よりもそれぞれ高いファスナーテープが提供される。本発明に係るファスナーテープは経糸と緯糸の交差部を溶着しなくても目ズレが抑制されたメッシュ構造をもつ。

Description

本発明はスライドファスナー用ファスナーテープに関する。また、本発明は当該ファスナーテープを備えたスライドファスナーに関する。
スライドファスナーは衣料品、鞄類、靴類及び雑貨品といった日用品の他、テントなどの産業用品において、開閉具として多用されている。スライドファスナーは一般に、一対の長尺テープ、各テープの一側縁に沿って縫着されるファスナーの噛合部分である多数のエレメント、及びエレメントを噛合及び分離することによりファスナーの開閉を制御するスライダーの三つの部分から主に構成される。
スライドファスナー用のテープとしては、経糸及び緯糸を織成することにより得られる織物製テープが多用されている。スライドファスナー用の織物製テープの基本構造を図7に示す。これは、実公平5−42731号公報(特許文献1)に記載されている第1図であり、経糸2及び緯糸3で織成されたエレメント取付部A及びテープ主体部Bより構成される。エレメント取付部Aはエレメントを取り付ける部分であり、テープ主体部Bは物品の本体部分に縫着される。エレメント取付部Aには取付糸5によってエレメント1が取り付けられる。また、テープ主体部Bの端部はほつれ防止用の耳糸8を設けることができる。
特許文献1においては、テープ主体部を粗い組織により構成してもパッカリングや目ズレの起こらない、しかも被着物への取付が安定よくできる安価なスライドファスナーテープを提供することを目的としている。そして、この目的を達成するために、エレメント取付部Aは密に編織した組織部とし、テープ主体部Bは経糸又は緯糸の少なくともいずれかにマルチフィラメント糸を芯材としその表面が合成樹脂によりコーティングされた糸を使用し、各糸の交差部を溶着した粗なるメッシュ状の組織部としたことが記載されている。
実公平5−42731号公報
最近のスポーツアパレルなどの分野では、着用時の内部のムレを防止するために、通気性が要求されることが多くなってきており、スライドファスナーにおいてもその要望に応える必要がある。特許文献1に記載のファスナーテープでは、テープ主体部がメッシュ状の粗い組織となっていることから通気性は比較的高いと考えられるが、経糸及び緯糸の少なくとも一方が合成樹脂でコーティングされており、更には経糸と緯糸の交差部を溶着しているためにファスナーテープが硬くなるという問題がある。
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、メッシュ構造を有することにより通気性を確保しながら、経糸と緯糸の交差部を溶着しなくても目ズレが抑制されたスライドファスナー用ファスナーテープを提供することを課題の一つとする。また、本発明はそのようファスナーテープを備えたスライドファスナーを提供することを別の課題の一つとする。
本発明者はテープ主体部の織組織を工夫することにより上記課題を解決できることを見出し、以下によって特定される発明を創作した。
本発明は一側面において、エレメント取付部及びテープ主体部を備えた織物製のスライドファスナー用ファスナーテープであって、テープ主体部は3本以上の経糸及び3本以上の緯糸がそれぞれ一組となって骨格が形成され、経糸及び緯糸の各組の間に開口が形成されたメッシュ構造をもつメッシュ部を備え、当該メッシュ部においては、経糸及び緯糸の各組において、最も外側の経糸及び緯糸の交錯密度が、それよりも内側の経糸及び緯糸の交錯密度よりもそれぞれ高いスライドファスナー用ファスナーテープである。
本発明に係るスライドファスナー用ファスナーテープの一実施形態においては、メッシュ部の各開口の面積が0.36〜6mm2である。
本発明に係るスライドファスナー用ファスナーテープの別の一実施形態においては、メッシュ構造の骨格を形成する経糸及び緯糸の各組は、その各組における経糸を合わせた太さが、その各組における緯糸を合わせた太さよりも太い。
本発明に係るスライドファスナー用ファスナーテープの更に別の一実施形態においては、メッシュ構造の骨格を形成する経糸及び緯糸の各組は、3〜5本の経糸と3〜5本の緯糸とで構成される。
本発明に係るスライドファスナー用ファスナーテープの更に別の一実施形態においては、メッシュ構造の骨格を形成する経糸及び緯糸の各組は、経糸本数に対して緯糸本数が多い。
本発明に係るスライドファスナー用ファスナーテープの更に別の一実施形態においては、経糸及び緯糸の各組を構成する最も外側の経糸及び緯糸が1/1、1/2及び2/1よりなる織組織の群から選択され、それよりも内側の経糸及び緯糸が、3/3及び4/4よりなる織組織の群から選択される。
本発明に係るスライドファスナー用ファスナーテープの更に別の一実施形態においては、テープ主体部はエレメント取付部に近い第1部と、エレメント取付部から遠い第2部に分かれており、第1部が前記メッシュ部であり、第2部が前記メッシュ部よりも織密度の高い織組織を有する。
本発明に係るスライドファスナー用ファスナーテープの更に別の一実施形態においては、第1部を形成する経糸が第2部を形成する経糸よりも撚りのかかった糸である。
本発明に係るスライドファスナー用ファスナーテープの更に別の一実施形態においては、緯糸が、第2部を形成する経糸よりも撚りのかかった糸である。
本発明に係るスライドファスナー用ファスナーテープの更に別の一実施形態においては、メッシュ部を形成する経糸及び緯糸の何れか一方、又はそれらの両方の糸の撚り係数が1デシテックス当たり2.0T/M以上である。
本発明に係るスライドファスナー用ファスナーテープの更に別の一実施形態においては、メッシュ部の前記開口は、ファスナーテープの長手方向よりもファスナーテープの幅方向に長い長方形状である。
本発明に係るスライドファスナー用ファスナーテープの更に別の一実施形態においては、経糸の各組において、最も外側の経糸と最も外側の緯糸との交錯状態は、それよりも内側の経糸と最も外側の緯糸との交錯状態と、反対の関係にあり、且つ、緯糸の各組において、最も外側の緯糸と最も外側の経糸との交錯状態は、それよりも内側の緯糸と最も外側の経糸との交錯状態と、反対の関係にある。
本発明に係るスライドファスナー用ファスナーテープの更に別の一実施形態においては、ファスナーテープの上端及び下端の何れか一方又は両方において、メッシュ部の幅方向全体に亘って補強フィルムがファスナーテープの表裏を挟むようにして貼り付けられている。
本発明は別の一側面において、本発明に係る上記のファスナーテープを備えたスライドファスナーである。
本発明によれば、メッシュ構造を有することにより通気性を確保しながら、経糸と緯糸の交差部を溶着しなくても目ズレが抑制されたスライドファスナー用ファスナーテープを提供することができる。
本発明の第一の実施形態に係るファスナーテープの織構造を示す。 本発明の第二の実施形態に係るファスナーテープの織構造を示す。 本発明の第三の実施形態に係るファスナーテープの織構造を示す。 エレメントを取り付けた一対のファスナーテープを断面からみた模式図である。 本発明に係るファスナーテープを備えたスライドファスナーの一例を示す。 本発明に係るファスナーテープを備えたスライドファスナーの別の一例を示す。 実公平5−42731号公報(特許文献1)の第1図に記載されているスライドファスナー用の織物製テープの構造を示す図である。
<1.ファスナーテープ>
本発明においては、エレメント取付部及びテープ主体部を備えたスライドファスナー用の織物製ファスナーテープを対象としている。エレメント取付部はエレメントを取り付ける部分であり、テープ主体部は物品の本体部分に縫着される部分である。また、ファスナーテープは更にテープ主体部の側縁部にほつれ防止用の耳糸を設ける耳部を備えることもできる。エレメント取付部にはファスナーテープの長手方向に沿って射出エレメントや金属エレメントの取付に利用する際の芯紐部を設けることもできる。
本発明に係るファスナーテープでは、テープ主体部がメッシュ部を備える。メッシュ部は3本以上の経糸及び3本以上の緯糸がそれぞれ一組となって骨格が形成され、経糸及び緯糸の各組の間に開口が形成されたメッシュ構造をもつ。経糸及び緯糸によって形成される骨格はファスナーテープに強度を付与する役割をし、開口は通気性を高める役割をする。そして、当該メッシュ部においては、経糸及び緯糸の各組において、最も外側の経糸及び緯糸の交錯密度が、それよりも内側の経糸及び緯糸の交錯密度よりもそれぞれ高い。換言すれば、各組の経糸のうち左右両側にある2本の経糸はそれよりも内側にある経糸に比べて緯糸との交錯密度が高く、同様に、各組の緯糸のうち上下両側にある2本の緯糸はそれよりも内側にある緯糸に比べて経糸との交錯密度が高い。
経糸及び緯糸の各組における最も外側の経糸及び緯糸というのは各開口を区画する経糸及び緯糸であり、これらの糸の交錯密度が高いことによって、開口の形状を保持して目ズレを防止することができる。また、経糸及び緯糸の各組において、最も外側の経糸及び緯糸よりも内側の経糸及び緯糸の交錯密度が低いことで経糸及び緯糸が各組の内側に寄せられる力が働くので、更に目ズレが生じにくくなる。逆に、最も外側の経糸及び緯糸よりも内側の経糸及び緯糸の交錯密度が高い又は同じだと経糸及び緯糸が各組の外側方向に移動しやすいので、目ズレが生じやすくなる。
ここで、交錯密度とは、経糸の場合、ファスナーテープの長手方向に進んで一定回数だけ緯糸を横切る間に浮き沈みにより緯糸と交錯する回数であり、緯糸の場合、ファスナーテープの幅方向に進んで一定回数だけ経糸を横切る間に浮き沈みにより経糸と交錯する回数である。交錯回数が多いほどその交錯密度は高いといえる。例えば、経糸が緯糸の上を1本乗り、次いで1本沈む1/1(経糸/緯糸)組織よりも、経糸が2本の緯糸の上に乗り、次いで2本沈む2/2組織の方が交錯密度は小さい。
本発明において、メッシュ構造の骨格を形成する経糸及び緯糸の各組は、それぞれ3本以上で構成される。これは織組織によって目ズレ(経糸及び又は緯糸が、ファスナーテープの幅方向やファスナーテープの長手方向にずれること)を抑制したメッシュ構造を形成することや強度確保の理由による。但し、各組を構成する経糸及び緯糸の本数は、過剰に多くなると却って目ズレが起こりやすくなることやファスナーテープに占める開口面積の比率が小さくなって通気性が阻害されるであるため、各組は3〜5本の経糸と3〜5本の緯糸とで構成されることが好ましい。
従って、本発明に係るファスナーテープの好ましい一実施形態においては、経糸及び緯糸の各組を構成する最も外側の経糸及び緯糸が1/1、1/2及び2/1よりなる織組織の群から選択され、それよりも内側の経糸及び緯糸が、3/3及び4/4よりなる織組織の群から選択される。
ここで、経糸が1/1の織組織とは、経糸が緯糸の上を1本乗り、次いで1本沈む織組織であり、経糸が1/2の織組織とは、経糸が緯糸の上を1本乗り、次いで2本沈む織組織であり、経糸が2/1の織組織とは、経糸が緯糸の上を2本乗り、次いで1本沈む織組織であり、経糸が3/3の織組織とは、経糸が緯糸の上を3本乗り、次いで3本沈む織組織であり、経糸が4/4の織組織とは、経糸が緯糸の上を4本乗り、次いで4本沈む織組織である。同様に、緯糸が1/1の織組織とは、緯糸が経糸の上を1本乗り、次いで1本沈む織組織であり、緯糸が1/2の織組織とは、緯糸が経糸の上を1本乗り、次いで2本沈む織組織であり、緯糸が2/1の織組織とは、緯糸が経糸の上を2本乗り、次いで1本沈む織組織であり、緯糸が3/3の織組織とは、緯糸が経糸の上を3本乗り、次いで3本沈む織組織であり、緯糸が4/4の織組織とは、緯糸が経糸の上を4本乗り、次いで4本沈む織組織である。
また、メッシュ構造の骨格を形成する経糸及び緯糸の各組は、経糸によるファスナーテープ幅方向の寸法よりも緯糸によるファスナーテープ長手方向の寸法が大きいことが好ましい。つまり、メッシュ構造の骨格を形成する経糸及び緯糸の各組は、その各組における経糸を合わせた太さが、その各組における緯糸を合わせた太さよりも太いことが好ましい。さらには、経糸本数に対して緯糸本数が多いことが好ましい。ファスナーテープにおいては縦引き強度よりも横引き強度が重要視されるところ、このように経糸全体に対して緯糸全体の太さを太くすることや、経糸本数に対して緯糸本数を多くすることで横引き強度を強化することができる。そこで、本発明に係るファスナーテープの好ましい実施形態においては、メッシュ構造の骨格を形成する経糸及び緯糸の各組において、経糸が3本であり、緯糸が4本であるか、又は経糸が4本であり、緯糸が5本であるか、又は経糸が3本であり、緯糸が5本である。
メッシュ部の開口は、経糸及び緯糸の各組同士の間隔を変化させることで所望の大きさに調整可能である。開口の面積は、大きくなれば通気性が向上する一方で、ファスナーテープの強度は低下しやすいので、通気性及び強度の兼ね合いから適宜設定すれば良く、例示的には、各開口の面積は0.36〜6mm2とすることができ、好ましくは1〜4mm2とすることができる。
経糸と緯糸で形成されるメッシュ部の骨格の隙間が開口となるので、開口は基本的に長方形又は正方形となるが、同じ面積であってもファスナーテープの長手方向よりもファスナーテープの幅方向に長い長方形状であるのが好ましい。これにより緯糸の本数密度が相対的に高くなるので、ファスナーテープの横引き強度を強化することができるからである。例示的には開口は縦横比が1:1.1〜3.0とすることができ、典型的には1:1.2〜2.0とすることができる。
本発明に係るファスナーテープの一実施形態においては、テープ主体部はエレメント取付部に近い第1部と、エレメント取付部から遠い第2部に分けることができ、第1部を前記メッシュ部とし、第2部を前記メッシュ部よりも織密度の高い織組織とすることができる。これにより、例えば第1部については通気性を確保するために物品の本体部分と縫着させずに空けておく一方で、第2部には物品の本体部分を高い縫着強度で縫着することができる。ここで、織密度とはファスナーテープの単位面積当たりの重量を指す。
本発明に係るファスナーテープの好ましい一実施形態においては、第1部を形成する経糸を第2部を形成する経糸よりも撚りのかかった糸とする。第1部はメッシュ部であることから、開口がしっかり確保されていることが通気性の観点で好ましいところ、撚りの大きな経糸を使用することで糸が変形して潰れることを抑えることができるので、開口が塞がれるのを抑制できる。撚りのかかった糸とすることは開口の強度確保、すなわち目ズレ防止にも寄与する。一方、第2部は撚りの少ない糸を使用することでファスナーテープが硬くなりすぎるのを抑え、柔らかな風合いを出すことができる。
同様に、本発明に係るファスナーテープの好ましい一実施形態においては、緯糸を、第2部を形成する経糸よりも撚りのかかった糸とすることができる。織物の構造上、一般に緯糸はファスナーテープを幅方向全体に横断するので、緯糸は第1部と第2部で同一の糸が使用されることが通常である。従って、緯糸は第2部を形成する経糸よりも撚りのかかった糸とすることで、第1部におけるメッシュ構造のための開口を確保しながら、第2部ではファスナーテープが硬くなりすぎるのを抑え、柔らかな風合いを出すことができる。
エレメント取付部についても、テープ主体部の第2部と同様の考え方に立ち、エレメント取付部を前記メッシュ部よりも織密度の高い織組織とすることができる。また、エレメント取付部はメッシュ部よりも撚りの少ない経糸を使用することでファスナーテープが硬くなりすぎるのを抑え、柔らかな風合いを出すことができる。
メッシュ部における開口を確保する上では、メッシュ部を形成する経糸及び緯糸の何れか一方、又はそれらの両方の糸の撚り係数が1デシテックス当たり2.0T/M(ツイスト/メーター)以上であることが好ましく、典型的には2.0〜3.0T/Mとすることができる。別の観点から言えば、糸1メートル当たり400回以上撚られていることが好ましく、500回以上撚られていることがより好ましく、典型的には400〜600回程度撚ることができる。一本の糸はモノフィラメントから構成されることもでき、2本以上のモノフィラメントを束ねてできたマルチフィラメントから構成されることもでき、更には複数のマルチフィラメントから構成されることもできる。
第1部を形成する経糸はエレメント取付部及び第2部を形成する経糸よりも細くすることが好ましい。第1部はメッシュ部であることから、細い糸を使用することで開口を大きくするという利点が得られる。一方、エレメント取付部及び第2部では太い糸を使用することで、テープの厚さが得られ、風合いが良いという利点が得られる。また、エレメント取付部においては、テープの厚さがあることで、ファスナーエレメントの射出成形時に、湯漏れなどが起こりにくくなる。具体的には、メッシュ部に使用する経糸一本当たりの繊度は、例えば84〜560デシテックスとすることが好ましく、110〜330デシテックスとすることがより好ましい。エレメント取付部及び第2部に使用する経糸一本当たりの繊度は、例えば160〜660デシテックスとすることが好ましく、330〜560デシテックスとすることがより好ましい。緯糸はメッシュ部の経糸と同様の範囲の太さとするのが好ましい。
本発明に係るファスナーテープに使用する糸の素材としては、従来使用されてきたポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、アクリル等を使用することができるが縫工性が良く、材料強度が高い等の理由からポリエステルが好ましい。
ここで、図1を参照すると、本発明の第一の実施形態に係るファスナーテープ(100)の織構造が図示されている。このファスナーテープ(100)では、エレメント取付部(101)、テープ主体部(102)及び耳部(103)がこの順に配列されている。エレメント取付部(101)には射出エレメントや金属エレメントの取付時に取付強度を高くするための芯紐部(104)が設けられている。テープ主体部(102)はエレメントの取付部(101)に近い方のメッシュ構造の第1部(105)と、エレメント取付部(101)から遠い方の織密度の高い第2部(106)とから構成されている。
第1部(105)は、経糸も緯糸も210デシテックスの糸を使用しており、撚り係数が2.48T/Mである。従って、1メートル当たり約520回撚られた糸である。また、第1部(105)では、一組3本の経糸と一組3本の緯糸によって第1部のメッシュ構造の骨格を形成している。本発明においては、緯糸は2本を引き揃えて1本として捉えることとし、図1中で一組を構成している6本の緯糸は3本として計上する。一組の経糸を形成する3本の経糸のうち、左右両側(各組における最も外側の経糸)の2本の経糸は1/1の織組織であり、中央の1本の経糸(各組における内側の経糸)は3/3の織組織である。一組の緯糸を形成する3本の緯糸のうち、上下両側の2本の緯糸(各組における最も外側の緯糸)は1/1の織組織であり、中央の1本の緯糸(各組における内側の緯糸)は3/3の織組織である。そして、開口107は、隣り合う二組の経糸(A組、B組)と隣り合う二組の緯糸(C組、D組)との間に形成される。ここで、開口107に隣接する経糸及び緯糸は、A組及びB組のそれぞれの最も外側の経糸と、C組及びD組のそれぞれの最も外側の緯糸である。経糸の各組において、最も外側の経糸と最も外側の緯糸との交錯状態は、それよりも内側の経糸と最も外側の緯糸との交錯状態と、反対の関係にある。例えば、経糸の各組において、内側の経糸が、最も外側の緯糸の表面側を通っている場合は、最も外側の経糸は、最も外側の緯糸の裏面側を通っている。これは、緯糸にも同じことが言える。つまり、緯糸の各組において、最も外側の緯糸と最も外側の経糸との交錯状態は、それよりも内側の緯糸と最も外側の経糸との交錯状態と、反対の関係にある。後述する実施形態においても、糸の本数や組織に相違があるものの、同じように言える。経糸及び緯糸について、このような構造にすることで、目ズレ防止効果を高めることができる。第1部の各開口(107)は横方向に2mm、縦方向に1.2mmの大きさの長方形である。
エレメント取付部(101)及び第2部(106)は経糸及び緯糸が1/1及び2/2組み合わせからなる織組織であり、メッシュ部の位置を固定する役割を持つ。なお、その他の組織を使用することもでき、また、芯紐は1本に限らず、2本織込まれるものであってもよい。エレメント取付部(101)及び第2部(106)では、経糸が330デシテックスの糸を使用しており、その糸は仮撚りされている。仮撚りは、一方向に撚りを行い、その後反対方向に撚りを行っている糸であり、ほぼ撚られていない状態である。従って、第1部(105)の経糸および緯糸の1メートル当たりの撚りの回数よりも小さい。
図2を参照すると、本発明の第二の実施形態に係るファスナーテープ(200)について、エレメント取付部(201)及びテープ主体部(202)のそれぞれ一部が図示されている。テープ主体部(202)はエレメント取付部(201)に近い方のメッシュ構造の第1部(205)と、エレメント取付部(201)から遠い方の織密度の高い第2部(206)とから構成されている。
第1部(205)は、経糸も緯糸も210デシテックスの糸を使用しており、撚り係数が2.48T/Mである。従って、1メートル当たり約520回撚られた糸である。また、第1部(205)では、経糸4本及び緯糸4本を一組として第1部のメッシュ構造の骨格を形成している。先述したように、本発明においては、緯糸は2本を引き揃えて1本として捉えるので、図2中で一組の緯糸を構成している8本の緯糸は4本として計上する。一組の経糸を形成する4本の経糸のうち、左右両側の2本の経糸は1/2及び2/1の組み合わせからなる織組織であり、中央の2本の経糸は4/4の織組織である。一組の緯糸を形成する4本の緯糸のうち、上下両側の2本の緯糸は1/2及び2/1の組み合わせからなる織組織であり、中央の2本の緯糸は4/4の織組織である。第1部の各開口(207)は横方向に1.8mm、縦方向に1mmの大きさの長方形である。
エレメント取付部(201)及び第2部(206)は、経糸及び緯糸が1/1及び2/2の組み合わせからなる織組織であり、メッシュ部の位置を固定する役割を持つ。エレメント取付部(201)及び第2部(206)は、経糸が330デシテックスの糸を使用しており、その糸は仮撚りされている。
図3を参照すると、本発明の第三の実施形態に係るファスナーテープ(300)について、エレメント取付部(301)及びテープ主体部(302)のそれぞれ一部が図示されている。テープ主体部(302)はエレメントの取付部(301)に近い方のメッシュ構造の第1部(305)と、エレメント取付部(301)から遠い方の織密度の高い第2部(306)とから構成されている。
第1部(305)は、経糸も緯糸も210デシテックスの糸を使用しており、撚り係数が2.0T/Mである。従って、1メートル当たり約420回撚られた糸である。また、第1部(305)では、経糸3本及び緯糸4本を一組として第1部のメッシュ構造の骨格を形成している。先述したように、本発明においては、緯糸は2本を引き揃えて1本として捉えるので、図3中で一組の緯糸を構成している8本の緯糸は4本として計上する。一組の経糸を形成する3本の経糸のうち、左右両側の2本の経糸は1/2及び2/1の組み合わせからなる織組織であり、中央の1本の経糸は4/4の織組織である。一組の緯糸を形成する4本の緯糸のうち、上下両側の2本の緯糸は/2及び2/1の組み合わせからなる織組織であり、中央の2本の緯糸は3/3の織組織である。第1部の各開口(307)は横方向に2mm、縦方向に1mmの大きさの長方形である。
エレメント取付部(301)及び第2部(306)は、経糸及び緯糸が1/1及び2/2の組み合わせからなる織組織であり、メッシュ部の位置を固定する役割を持つ。エレメント取付部(301)及び第2部(306)は、経糸が330デシテックスの糸を使用しており、その糸は仮撚りされている。
ここで、図4には、エレメント(401)を取り付けた一対のファスナーテープ(402)を断面からみた模式図が示してある。点線は、ファスナーテープが縫着される物品の本体部分の生地(403)を表している。Xはファスナーテープ全体の幅を示す。Yはメッシュ部の幅を示す。Zはファスナーテープのテープ取付部側の縁部からメッシュ部の終端までの幅を示す。
メッシュ部(404)の幅Yが大きくなり過ぎるとファスナーテープが柔軟になりすぎて、所謂腰が弱い生地となる。一方で、幅Yが小さくなり過ぎると通気性が悪くなる。そこで、ファスナーテープ全体の幅Xに対して、メッシュ部の幅Yを10〜50%とすることが好ましい。また、ファスナーテープのテープ取付部側の縁部からメッシュ部の終端までの幅Zが大きくなり過ぎると縫い付けしろが減る一方で、幅Zが小さくなり過ぎると通気性が悪化する。そこで、幅Zは幅Xに対して30〜60%とすることが好ましい。
<2.スライドファスナー>
ファスナーテープのエレメント取付部にエレメントが取り付けられるとファスナーストリンガーとなり、左右のストリンガーを噛合させるとファスナーチェーンとなる。そして、スライドファスナーチェーンにスライダー及び必要に応じて止具を取り付けると、スライドファスナーが完成する。
本発明において、エレメントの種類に制限はなく、例えば、金属製エレメント及びテープに射出成型された樹脂製エレメントに代表される単独エレメント、並びにコイル状の樹脂製エレメントに代表される連続エレメントが挙げられる。
また、スライドファスナーの種類についても特に制限はなく、下止の付いた止製品、開離嵌挿具の付いた開製品、逆開き、頭合わせ、尻合わせ、及びループなどあらゆる形態のスライドファスナーに適用可能である。
図5には本発明に係るファスナーテープを用いたスライドファスナーの一例が示されている。図5のスライドファスナー(500)では、メッシュ部(504)を有する本発明に係るファスナーテープ(501)に樹脂製エレメント(502)がエレメント取付部(505)の芯紐(509)に沿って射出成形によって取着されており、スライダー(506)が当該エレメント(502)の列に挿通されている。樹脂製エレメント(502)の列の上端には上止め(507)が、下端には開離嵌挿具(508)が設けられている。本実施形態においては、ファスナーテープの幅に対して、メッシュ部の幅が約20%である。また、本実施形態においては、ファスナーテープのテープ取付部側の縁部からメッシュ部の終端までの幅が、ファスナーテープの幅の約53%である。スライダー(506)はエレメント取付部(505)上を摺動しており、メッシュ部(504)はスライダー(506)の摺動する箇所の外側に位置するように有することが好ましい。
ファスナーテープの上端及び下端の何れか一方又は両方において、メッシュ部の横方向全体に亘って補強フィルムがファスナーテープを表裏で挟むようにして貼り付けられていることが好ましい。これにより、補強フィルムがファスナーテープに密着しやすくなる効果が得られ、また、メッシュ部が上端又は下端に露出しないので、端部での強度が向上する。本実施形態においては、上下端にこのような補強フィルム(510)が貼り付けられている。
また、図6には本発明に係るファスナーテープを用いたスライドファスナーの別の一例が示されている。図6のスライドファスナー(600)では、メッシュ部(604)を有する本発明に係るファスナーテープ(601)にコイル状エレメント(602)がエレメント取付部(605)に縫合糸(603)によって縫工されており、スライダー(606)が当該エレメント(602)の列に挿通されている。コイル状エレメント(602)の列の上端には上止め(607)が、下端には下止め(608)が設けられている。本実施形態においては、ファスナーテープの幅に対して、メッシュ部の幅が約15%である。また、本実施形態においては、ファスナーテープのテープ取付部側の縁部からメッシュ部の終端までの幅が、ファスナーテープの幅の約52%である。スライダー(606)はエレメント取付部(605)上を摺動しており、メッシュ部(604)はスライダー(606)の摺動する箇所の外側に位置するように有することが好ましい。
本発明に係るスライドファスナーは各種の物品に縫着することで、物品の開閉具として使用することができ、例えば衣服、ポケット、鞄、靴(例:ブーツ、シューズ)、テント、ベッドのマット、車両用シートなど通気性が要求される物品の開口部に好適に使用することができる。物品の開閉には、ファスナーエレメントの噛合・解除を行うスライダーを備えるが、開く必要が無い場合には、スライドファスナーの閉鎖後にスライダーを取り外しておくこともできる。
以上、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の改変が可能である。
100 ファスナーテープ
101 エレメント取付部
102 テープ主体部
103 耳部
104 芯紐部
105 テープ主体部の第1部
106 テープ主体部の第2部
107 開口
200 ファスナーテープ
201 エレメント取付部
202 テープ主体部
205 テープ主体部の第1部
206 テープ主体部の第2部
207 開口
300 ファスナーテープ
301 エレメント取付部
302 テープ主体部
305 テープ主体部の第1部
306 テープ主体部の第2部
307 開口
401 エレメント
402 ファスナーテープ
403 生地
404 メッシュ部
500 スライドファスナー
501 ファスナーテープ
502 樹脂製エレメント
504 メッシュ部
505 エレメント取付部
506 スライダー
507 上止め
508 開離嵌挿具
509 芯紐
510 補強フィルム
600 スライドファスナー
601 ファスナーテープ
602 コイル状エレメント
603 縫合糸
604 メッシュ部
605 エレメント取付部
606 スライダー
607 上止め
608 下止め

Claims (14)

  1. エレメント取付部(101、201、301)及びテープ主体部(102、202、302)を備えた織物製のスライドファスナー用ファスナーテープ(100、200、300)であって、テープ主体部(102、202、302)は3本以上の経糸及び3本以上の緯糸がそれぞれ一組となって骨格が形成され、経糸及び緯糸の各組の間に開口(107、207、307)が形成されたメッシュ構造をもつメッシュ部を備え、当該メッシュ部においては、経糸及び緯糸の各組において、最も外側の経糸及び緯糸の交錯密度が、それよりも内側の経糸及び緯糸の交錯密度よりもそれぞれ高いスライドファスナー用ファスナーテープ。
  2. メッシュ部の各開口(107、207、307)の面積が0.36〜6mm2である請求項1に記載のスライドファスナー用ファスナーテープ。
  3. メッシュ構造の骨格を形成する経糸及び緯糸の各組は、その各組における経糸を合わせた太さが、その各組における緯糸を合わせた太さよりも太い請求項1又は2に記載のスライドファスナー用ファスナーテープ。
  4. メッシュ構造の骨格を形成する経糸及び緯糸の各組は、3〜5本の経糸と3〜5本の緯糸とで構成される請求項1〜3の何れか一項に記載のスライドファスナー用ファスナーテープ。
  5. メッシュ構造の骨格を形成する経糸及び緯糸の各組は、経糸本数に対して緯糸本数が多い請求項1〜4の何れか一項に記載のスライドファスナー用ファスナーテープ。
  6. 経糸及び緯糸の各組を構成する最も外側の経糸及び緯糸が1/1、1/2及び2/1よりなる織組織の群から選択され、それよりも内側の経糸及び緯糸が、3/3及び4/4よりなる織組織の群から選択される請求項1〜5の何れか一項に記載のスライドファスナー用ファスナーテープ。
  7. テープ主体部(102、202、302)はエレメント取付部(101、201、301)に近い第1部(105、205、305)と、エレメント取付部から遠い第2部(106、206、306)に分かれており、第1部(105、205、305)が前記メッシュ部であり、第2部(106、206、306)が前記メッシュ部よりも織密度の高い織組織を有する請求項1〜6の何れか一項に記載のスライドファスナー用ファスナーテープ。
  8. 第1部を形成する経糸が第2部を形成する経糸よりも撚りのかかった糸である請求項7に記載のスライドファスナー用ファスナーテープ。
  9. 緯糸が、第2部を形成する経糸よりも撚りのかかった糸である請求項7又は8に記載のスライドファスナー用ファスナーテープ。
  10. メッシュ部を形成する経糸及び緯糸の何れか一方、又はそれらの両方の糸の撚り係数が1デシテックス当たり2.0T/M以上である請求項1〜9の何れか一項に記載のスライドファスナー用ファスナーテープ。
  11. メッシュ部の前記開口(107、207、307)は、ファスナーテープの長手方向よりもファスナーテープの幅方向に長い長方形状である請求項1〜10の何れか一項に記載のスライドファスナー用ファスナーテープ。
  12. 経糸の各組において、最も外側の経糸と最も外側の緯糸との交錯状態は、それよりも内側の経糸と最も外側の緯糸との交錯状態と、反対の関係にあり、且つ、緯糸の各組において、最も外側の緯糸と最も外側の経糸との交錯状態は、それよりも内側の緯糸と最も外側の経糸との交錯状態と、反対の関係にある請求項1〜11の何れか一項に記載のスライドファスナー用ファスナーテープ。
  13. ファスナーテープの上端及び下端の何れか一方又は両方において、メッシュ部の幅方向全体に亘って補強フィルム(510)がファスナーテープの表裏を挟むようにして貼り付けられている請求項1〜12の何れか一項に記載のスライドファスナー用ファスナーテープ。
  14. 請求項1〜13の何れか一項記載のスライドファスナー用ファスナーテープを備えたスライドファスナー。
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