JPWO2013021660A1 - アゾセミドを有効成分とするコーティング製剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】包装形態に依らず外的要因に対して安定な、2-クロロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)-4-[(チオフェン-2-イルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド、又はその薬理学的に許容される塩、若しくはそれらの水和物を有効成分とする製剤を提供する。【解決手段】2-クロロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)-4-[(チオフェン-2-イルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド、又はその薬理学的に許容される塩、若しくはそれらの水和物を含有する有効成分含有部と、前記有効成分含有部の表面上に形成されたコーティング層とを有し、前記コーティング層がルチル型の二酸化チタンを含有することを特徴とするコーティング製剤。【選択図】 なし

Description

本発明は、2-クロロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)-4-[(チオフェン-2-イルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド、又はその薬理学的に許容される塩、若しくはそれらの水和物を有効成分とする、コーティング製剤に関するものである。
2-クロロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)-4-[(チオフェン-2-イルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド、又はその薬理学的に許容される塩、若しくはそれらの水和物(以下まとめてアゾセミドという。)は、特許文献1に記載の化合物であり、持続型ループ利尿剤として知られている。その薬理作用は、腎尿細管、主としてヘンレ係蹄上行脚におけるナトリウムイオン及び塩化物イオン等の再吸収を抑制し、利尿作用を発揮すると考えられている。アゾセミドを単独で有効成分とする医薬製剤として、経口剤及び注射剤(特許文献2)が知られており、経口剤は1993年から日本において製造販売されている。
上述のアゾセミドは、光により徐々に分解し、黄色に着色することが知られている。そのため光照射から保護することを目的として、従来、遮光コーティング及び遮光包装等の製剤的工夫が施されてきた。
遮光コーティングの場合、薬物の光に対する安定性を向上させるために、コーティング層中に二酸化チタンを配合することが一般的な技術として利用されている。二酸化チタンには結晶多形が存在するが、その中でもアナターゼ型の二酸化チタンは、遮光能及び白色化能が高いことで知られている。そのため、薬物の光に対する安定性を向上させる場合には、通常、アナターゼ型の二酸化チタンが用いられている。
遮光包装の場合、光の透過を防いで製剤を光の影響から保護できる包装体、又は製剤の着色の原因となる、紫外から可視青色領域にかけての波長の光を通過させない、有色又は半透明の包装シートを用いて内部の製剤の光安定化を図ったPTP包装などが用いられている。しかし、光の透過を防ぐアルミニウム等の金属箔をアルケン重合体等で挟み込む等の工夫で光の透過を防ぐ包装体は、アルケン重合体等のみで構成される包装体よりも高価であり、また、紫外から可視青色領域にかけての波長の光を通過させない包装シートは、紫外から可視青色領域にかけての波長の光を通過させる包装シートよりも高価である。
近年、病院及び調剤薬局では、患者の利便性を考慮し、数種類の医薬製剤を一服用単位ごとに1つにまとめて包装する、一包化というサービスが行われることがある。この際用いられるのは、通常、光や空気中の水分を透過する包装体である。そのため、一包化された医薬製剤は、光の影響や、保管時の気候による温度又は湿度等の影響を受けやすい。一包化に適した医薬製剤とする為には、光のみならず、温度又は湿度に対しても安定であることが求められている。
米国特許第3665002号公報明細書 国際公開第94/05286号パンフレット
本発明者らは、アゾセミドを有効成分とするコーティング製剤を包装体に依らず安定な医薬製剤とすべく検討を行ったところ、アナターゼ型の二酸化チタンでコーティングした、アゾセミドを含有する製剤は、光には安定であるが、温度又は湿度によって外観に変化が生じる場合があることに気がついた。そこで本発明は、温度又は湿度等の外的要因に対して包装体に依らず安定な、アゾセミドを有効成分とする製剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、温度又は湿度によって、アゾセミドを有効成分とするコーティング製剤の外観に変化が生じる原因を鋭意検討した。そして、アゾセミドが、アナターゼ型の二酸化チタンと一定の条件下で反応し、配合変化を起こすことが原因であることを突き止めた。更に、アゾセミドを有効成分とする製剤に遮光コーティングを施す際は、ルチル型の二酸化チタンを用いることにより、光のみならず温度又は湿度に対しても安定な製剤となることを見出し、本願発明を完成させた。
本発明の主な構成は次のとおりである。
(1)2-クロロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)-4-[(チオフェン-2-イルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド、又はその薬理学的に許容される塩、若しくはそれらの水和物を有効成分とする有効成分含有部と、前記有効成分含有部の表面上に形成されたコーティング層とを有し、前記コーティング層がルチル型の二酸化チタンを含有することを特徴とするコーティング製剤。
(2)前記ルチル型の二酸化チタンの含有量が、有効成分含有部に対して0.2質量%以上である、(1)に記載のコーティング製剤。
(3)前記ルチル型の二酸化チタンの含有量が、有効成分含有部に対して0.2〜8質量%である、(2)に記載のコーティング製剤。
(4)前記ルチル型の二酸化チタンの含有量が、有効成分含有部に対して0.4〜4質量%である、(3)に記載のコーティング製剤。
(5)前記ルチル型の二酸化チタンのレーザー回折法による粉体粒度測定をしたときの50%粒子径が0.1〜10μmである、(1)〜(4)のいずれかに記載のコーティング製剤。
(6)前記コーティング層が水溶性高分子を含む、(1)〜(5)のいずれかに記載のコーティング製剤。
(7)タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、カオリン、及び三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上の着色剤をコーティング層に更に含有する、(1)〜(6)のいずれかに記載のコーティング製剤。
(8)前記コーティング層が、いずれもコーティング層全体に対して(i)ルチル型の二酸化チタン8〜50質量%と、(ii)水溶性高分子40〜85質量%と、(iii)タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、カオリン、及び三二酸化鉄から成る群から選択される1種以上の着色剤0〜15質量%と、(iv)医薬製剤として許容され得る上記以外の添加剤0〜20質量%とを含む、(1)〜(7)のいずれかに記載のコーティング製剤。
(9)一部が無色透明で内容物が見える包装体に封入された、(1)〜(8)のいずれかに記載のコーティング製剤。
(10)下記(a)、(b)、(c)、又は(d)の条件のときに色差ΔEが3.0以下を示す、(1)〜(9)のいずれかに記載のコーティング製剤。
(a) 温度60℃、相対湿度75%、遮光、3週間保存
(b) 温度25℃、相対湿度75%、遮光、3ヶ月間保存
(c) 温度25℃、相対湿度30%、照度2000lx/hr、総照度120万lxに達するまで保存
(d) 温度25℃、相対湿度75%、照度2000lx/hr、総照度120万lxに達するまで保存
(11)2-クロロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)-4-[(チオフェン-2-イルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド、又はその薬理学的に許容される塩、若しくはそれらの水和物を有効成分とする有効成分含有部を、少なくともルチル型の二酸化チタンを含む被覆剤でコーティングすることを特徴とする、製剤保存時の変色抑制方法。
本発明によれば、外的要因に対して包装形態に依らず安定な、アゾセミドを有効成分とする製剤を提供することができる。
以下に、本発明の実施形態を更に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。
本発明のコーティング製剤は、2-クロロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)-4-[(チオフェン-2-イルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド、又はその薬理学的に許容される塩、若しくはそれらの水和物を有効成分として含む。2-クロロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)-4-[(チオフェン-2-イルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドは、一般名をアゾセミドというが、本明細書では、前記塩等もまとめてアゾセミドという。アゾセミド含有製剤は、ループ利尿剤であり、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、及び肝性浮腫などに有効な製剤として使用されている。アゾセミドは、米国特許第3665002号公報明細書に記載の合成方法に準じて製造することができる。
前記2-クロロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)-4-[(チオフェン-2-イルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドの薬理学的に許容される塩とは、その用途を考慮すれば医薬として許容され得る塩が好ましい。具体的には、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、アンモニウム、第4級アンモニウム塩、塩酸塩、ジエチルアミン、及びジエタノールアミンのような薬理学的に許容しうる無機及び有機塩基塩を挙げることができる。これらの薬理学的に許容される塩は、公知の方法で得ることができる。また、本発明における水和物は、2-クロロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)-4-[(チオフェン-2-イルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミドの水和物のみならず、その薬理学的に許容される塩の水和物をも含み、公知の方法で得ることができる。
有効成分であるアゾセミドの含有量(割合)は、製剤全体として10〜70質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。尚、アゾセミドの含有量は、実際の使用に適した量で設定することができ、1製剤中10mg〜200mgの範囲で設定することが適当であるが、通常、1錠あたりのアゾセミド含有量は30mg又は60mgであるため、これらに準じた含有量とすることが実用上好ましい。
本発明のコーティング製剤は、アゾセミドを含有する有効成分含有部(以下、アゾセミド含有部という。)の表面を、ルチル型の二酸化チタンを含有するコーティング層で被覆すること等により製造することができる。アゾセミド含有部とは、例えば、アゾセミドを含有する素錠を挙げることができる。また、素錠の代わりに、コーティングされた錠剤を用いても構わない。他にも、国際公開第01/98067号パンフレット等に記載の有核錠の製造技術を使用して、その核部をアゾセミド含有部とすることもできる。
前記素錠とは、通常はコーティングを施す前の錠剤を意味する。素錠の製造方法は特に限定されず、通常用いられる方法により製造することができる。例えば、薬物、結合剤、及び崩壊剤を混練合し、乾燥後整粒し、そのまま又は更に滑沢剤を混合し打錠して製造することができる。
通常、遮光を必要とする医薬製剤の場合、そのコーティング層には主として二酸化チタンが使用されている。二酸化チタンは、その結晶構造及び性質の違いにより、ルチル型(R型)、アナターゼ型(A型)、ブルッカイト型(B型)の3種類の型に分類される。正方晶系のルチル型の二酸化チタン及び斜方晶系のブルッカイト型の二酸化チタンは、遮光及び白色化の効果は低く、正方晶系のアナターゼ型の二酸化チタンは、遮光能及び白色化能が高いことで知られている。そのため、薬物の光に対する安定性を向上させる場合には、アナターゼ型結晶を多く含む二酸化チタンが第一に選択される傾向にある。
しかし、本発明者は、アゾセミドを有効成分とするコーティング製剤においては、コーティング層中の二酸化チタンはルチル型結晶を多く含むものが好ましいことを見出した。これは、アゾセミドを含有する錠剤は、温度又は湿度等の影響を受け、有効成分とアナターゼ型の二酸化チタンとが配合変化を起こし、製剤表面が色変化し、安定性が悪くなるからである。尚、アゾセミドとアナターゼ型の二酸化チタンとが、温度又は湿度の影響で配合変化を起こすことは、本発明者が初めて見出したことである。
ルチル型の二酸化チタンは、市販品として入手することが可能である。また、アナターゼ型結晶を900℃以上に加熱する、又はブルッカイト型結晶を650℃以上に過熱することにより得ることができる。そのため、ルチル型の二酸化チタン中に異なる結晶系が混在する場合がある。その場合には、ルチル型の二酸化チタン:ルチル型以外の二酸化チタン含有量の比が、100:0〜90:10の範囲にあるのが好ましい。すなわち、ルチル型の二酸化チタンを90%以上含有する二酸化チタンが好ましい。更に、ルチル型の二酸化チタンの表面を他の添加剤で化学修飾したルチル型の二酸化チタンも、本発明のルチル型の二酸化チタンに含まれる。
コーティング層中のルチル型の二酸化チタンのX線回折パターンは、Cu−Kα線による粉末X線回折を用い、表1に記載の測定条件において、27.5±0.5°、36.0±0.5°、及び54.3±0.5°に回折角2θの特徴的なピークを有する。更に詳細には、41.4±0.5°、56.7±0.5°、63.1±0.5°、69.3±0.5°、及び140.3±0.5°に回折角2θの特徴的なピークを有する。
Figure 2013021660
ルチル型の二酸化チタンの粒子径は、レーザー回折法による粉体粒度を測定した時の50%粒子径で、0.1〜10μmが好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましい。一般に二酸化チタンのような高い屈折率を有する物質は、入射光の波長の約1/2の粒子径のとき、入射光を乱反射によって透過させない能力が大きくなる(特許第2525192号公報、特公平6-2562号公報)。また、コーティング液中で均一な分散状態を保つ為には、粒子径は小さいほうが良い。そのため、レーザー回折法による粉体粒度を測定した時の50%粒子径が、10μmより大きくなると、光遮断能力が低くなる傾向があり、またコーティング液中で均一な分散状態を保ちにくくなる。逆に、レーザー回折法による粉体粒度を測定した時の50%粒子径が、0.1μmより小さくなると、波長の大きい可視光領域の入射光を透過させない能力が小さくなり、錠剤を白色に着色する為の着色剤としての機能が低下する(特許第2525192号公報、特公平6-2562号公報、特許第4464356号公報)。
また、ルチル型の二酸化チタンの含有量(割合)は、アゾセミド含有部(の総質量)に対して0.2質量%以上が好ましい。アゾセミド含有部に対するルチル型の二酸化チタンの含有量が0.2質量%より少ないと、有効成分の光による変色を防止するのに十分でない。当業者であれば、ルチル型の二酸化チタン含有量の最適範囲を設定して、本発明を実施することができる。参考までに、ルチル型の二酸化チタンの含有量(割合)は、アゾセミド含有部に対して8質量%以下が好ましい。アゾセミド含有部に対するルチル型の二酸化チタンの含有量(割合)は、好ましくは0.2〜8質量%であり、より好ましくは0.3〜6質量%であるが、上限は更に5%以下が好ましい。また、さらに好ましくは0.4〜4質量%である。通常、二酸化チタンの十分量は、コーティングを施す前の錠剤に対して1〜5質量%と言われているが、本発明では、通常の十分量より少ない量でも、アゾセミドを有効成分とする外的要因に対して安定なコーティング製剤を提供することができる。アゾセミド含有部に対するルチル型の二酸化チタンの含有量が多すぎると、コーティング液中の二酸化チタンの分散状態が悪くなったり、コーティングを施した後の被膜の強度が低下したり、あるいは、コーティングに要する時間が長くなったりする。なお、コーティング層に対するルチル型の二酸化チタンの含有量は、コーティング層の厚みにより一概に規定できないが、コーティング層全体に対して8〜50質量%が好ましく、より好ましくは9〜40質量%であり、さらに好ましくは10〜25質量%である。
本発明では、コーティング層には、当該分野の技術常識に従い、様々な賦形剤等を使用することができる。中でも、水溶性高分子を使用するのが一般的である。当該水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートサクシナート、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸フタル酸セルロース、キサンタンガム、トラガントガム、アラビアゴム、寒天、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びマクロゴール等が挙げられる。これらの中では、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びマクロゴールが好ましいものとして挙げられる。水溶性高分子は、これらから選択される1種以上を単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。水溶性高分子の含有量は、コーティング層全体に対し、通常40〜85質量%、好ましくは45〜70質量%である。
コーティング層には、タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、カオリン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、三二酸化鉄、及び食用着色剤からなる群から選択される1種以上の着色剤を更に添加することができる。これら着色剤の含有量は、コーティング層全体に対し、通常0〜15質量%、好ましくは0〜5質量%である。
コーティング層には、ルチル型の二酸化チタン以外の1種以上の遮光剤を更に添加することができる。そのような遮光剤としては、タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、カオリン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び合成ケイ酸アルミニウム等を挙げることができる。尚、着色剤や遮光剤といった添加剤の分類は厳格なものではない。タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、カオリン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び合成ケイ酸アルミニウム等は、着色剤として使用しても遮光剤として使用しても良い。
他にもコーティング層には、一般的に医薬品で用いられる公知の成分を適宜組み合わせて添加することができる。例えば、甘味料、分散剤、賦形剤、可塑剤、香料、光沢化剤、付着防止剤、防腐剤、保存料、及びpH調整剤などを更に添加することができる。
本発明におけるコーティング層とは、温度、湿度等の外的要因からアゾセミドを保護する役割を果たすものを意味し、全体に均一なコーティング状態のみならず、全体に不均一なコーティング状態も含まれる。当業者であれば、コーティング状態を適宜設定することができる。例えば、アゾセミド含有部が素錠の場合、素錠を完全に覆うようにコーティング層が設けられているのが好ましい。アゾセミド含有部がコーティングされた製剤の場合、コーティング層は全体に不均一なコーティング状態でも良い。コーティング層の厚み比率は、公知の方法で適宜設定できるが、例えば素錠に対して、2質量%〜20質量%とするのが好ましく、2質量%〜15質量%とするのがさらに好ましく、3質量%〜8質量%とするのがより好ましい。
アゾセミド含有部をコーティングする方法は、特に制限されないが、一般公知の方法によりコーティングすることができる。例えば、コーティングパン方式、流動層コーティング方式、転動コーティング方式などが挙げられる。ここで、コーティングパン方式とは、回転ドラム(パン)にアゾセミド含有部を投入し、パン内で転動するアゾセミド含有部に、コーティング溶液を噴霧、乾燥して被覆する方法である。流動層コーティング方式とは、空気流によりアゾセミド含有部を浮遊あるいは流動させ、その浮遊懸濁状態にコーティング溶液を噴霧、乾燥して被覆する方式である。転動コーティング方式とは、水平の円盤を回転させ、円盤上面を転動運動するアゾセミド含有部にコーティング液を噴霧、乾燥して被覆する方式である。コーティング層を施すときは、流動造粒機、転動造粒機などの製造装置を使用することができる。また、他にも、国際公開第01/98067号パンフレット等に記載の有核錠の製造技術を使用して、その核部をアゾセミド含有部とし、外層部分をコーティング層とすることもできる。
本発明のコーティング製剤は、例えば、アゾセミドを含有する素錠を製造した後、表2に示した添加剤を水に溶解したコーティング液を使用して、前記素錠にコーティングを行うことにより得ることができる。表2中の各添加剤の質量%は、アゾセミド含有部(素錠)に対する質量%を示す。なお、当業者であれば、表2に示した他にもコーティング層中の各添加剤の含有量を適宜設定することができる。
Figure 2013021660
本発明のアゾセミドを含有するコーティング製剤は、一部が無色透明で内容物が見える包装体に封入することができる。内容物が見える包装体とは、包装体の一部に透明部分を有し、内容物の色変化が確認できる包装体をいう。本発明では、無包装状態であっても、外的環境による医薬製剤の変色を従来製剤より抑えることができるため、包装体自体に遮光機能又は防湿機能等を有さなくても良いという利点を有する。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
<色差測定>
色差は、分光測色計(CM-3500d,コニカミノルタ社製)を用いて評価した。測定時の基準光源にはD65を用い、対象物の色彩をL*a*b*表色系で測定して、開始時と一定期間保存後の二者の色差ΔEを下記数式1により算出した。ΔEが3.0を超えれば目視で色変化が識別可能な数値である。
数式1:ΔE=(Δa2+Δb2+ΔL21/2
<試験1>混合粉体の配合変化試験
方法
アゾセミド単独、アゾセミドとルチル型の二酸化チタンとの混合物、及びアゾセミドとアナターゼ型の二酸化チタンとの混合物、という3種類の混合粉体を作成した。各混合粉体を下記条件(a)下、開放状態又は気密容器入り(ガラス瓶)にて3週間保存した。気密容器入りとは、ガラス瓶にポリプロピレン製のキャップを用いて施栓して保存されている状態を示し、容器内への気体の進入について、日本薬局方に定められる密封容器には至らないものの、湿度等の影響が極めて少ない保存状態を意味している。各混合粉体の1週目、2週目、及び3週目の色差変化を、前記色差測定の方法で測定した。尚、以下の実施例中で使用したルチル型の二酸化チタンは東邦チタニウム株式会社より購入し、アナターゼ型の二酸化チタンは和光純薬工業株式会社から購入した。
条件(a):温度60℃、相対湿度75%、遮光、3週間保存
結果
保存後の各混合粉体の色差(ΔE)を表3に示す。アゾセミド単独では、気密容器入り及び開放状態ともに、温度及び湿度に対して安定であり、1週目乃至3週目の色差ΔEはいずれも3.0以下であった。
アゾセミドとアナターゼ型の二酸化チタンとを混合した場合、1週目乃至3週目の色差ΔEはすべて3.0を大幅に越えており、目視でも粉体表面の色変化が確認できるほどであった。これに対し、アゾセミドとルチル型の二酸化チタンとを混合した場合は、気密容器では、3週間経過後も色差ΔEは3.0以下であり、目視でも色変化を確認できなかった。また開放状態での変色の度合いは、同条件でアゾセミドとアナターゼ型の二酸化チタンを混合した場合のΔEと比較して、約1/2であった。つまり、ルチル型の二酸化チタンを用いれば、アナターゼ型酸化チタンを用いる場合より、変色を約1/2〜1/5に低減する改善効果が見られた。
以上の結果から、温度及び湿度の影響下で一定期間保存した場合、アナターゼ型の二酸化チタンはアゾセミドと配合変化を起こすのに対し、ルチル型の二酸化チタンは、アゾセミドと配合変化を起こし難いことが示され、同じ二酸化チタンであっても、結晶形の違いにより混合粉体の安定性が著しく異なることが明らかになった。
尚、上述の変色に関与する化学反応の活性化エネルギーを22.4kJ/molと仮定した場合、アレニウスの式を用いて反応進行量を計算すると、温度60℃で3週間の保存を行った場合の反応進行量は、温度25℃で36ヶ月間、又は温度40℃で6ヶ月間の反応進行量に相当する。
Figure 2013021660
<試験2>高温度及び高湿度に対する安定性
方法
アゾセミドをヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、ケイ酸マグネシウム及び乳糖水和物を湿式高せん断造粒機に入れて混合した後、エタノールを加えて練合した。この練合品を湿式整粒機に入れ、湿式整粒し、直接加熱流動層乾燥機を用いて乾燥させた。最後にこの乾燥品及びステアリン酸マグネシウムを拡散式混合機を用いて混合し、プレス型打錠機を用いて打錠して180mg/錠の素錠(アゾセミド含有部)とした。表4に示した添加剤を水に溶解してコーティング液とし、流動層造粒機を用いて、前記素錠にコーティングを行い、実施例1及び比較例1の各製剤を得た。表4中の各添加剤の質量%は、アゾセミド含有部(素錠)に対する質量%を示す。各製剤を条件(a)下、開放状態又は気密容器入り(ガラス瓶)にて3週間保存した。それぞれ1週目、2週目、及び3週目の製剤表面の色差変化を、前記色差測定の方法で測定した。
条件(a):温度60℃、相対湿度75%、遮光、3週間保存
結果
保存後の各製剤の色差(ΔE)を表4に示す。二酸化チタンとしてルチル型を添加した場合、遮光状態であれば高温(多湿)環境下で、かつ二酸化チタンを多量に添加しても、1週目乃至3週目の色差ΔEは3.0以下であった。二酸化チタンとしてアナターゼ型を添加した場合、条件(a)下の開放状態での3週目の色差ΔEは3.0を大幅に越えており、目視でも錠剤表面の色変化が確認できるほどであった。
以上の結果から、コーティング層にアナターゼ型の二酸化チタンを添加した製剤は、高温多湿条件下で、色調変化を起こすのに対し、コーティング層にルチル型の二酸化チタンを添加した錠剤は、たとえアナターゼ型の二酸化チタンより多量に添加したとしても、色調変化を起こし難いことが示され、同じ二酸化チタンであっても結晶形の違いにより製剤の安定性が著しく異なることが明らかになった。
Figure 2013021660
<試験3>温度及び湿度に対する長期安定性
方法
実施例1と同様にして、180mg/錠又は125mg/錠のアゾセミド含有の素錠を製造した後、表5に示した添加剤を水に溶解したコーティング液を使用して、前記素錠にコーティングを行い、実施例2とした。表5中の各添加剤の質量%は、アゾセミド含有部に対する質量%を示す。実施例1及び実施例2の各製剤を下記条件(b)で、開放状態又は気密容器入り(ガラス瓶)にて3ヶ月間保存した。保存後、それぞれ1ヶ月目、2ヶ月目、及び3ヶ月目の製剤表面の色差変化を前記色差測定の方法で測定した。
条件(b):温度25℃、相対湿度75%、遮光、3ヶ月間保存
結果
保存後の各製剤の色差(ΔE)を表5に示す。実施例1及び実施例2の色差ΔEは約0.2〜0.7であり、目視で色変化が識別可能とされる3.0を大幅に下回っていた。すなわち、コーティング層にルチル型の二酸化チタンを含有したアゾセミド製剤は、高湿度下で長期間保存しても安定であるという効果が見られた。
Figure 2013021660
<試験4>温度、湿度、及び光に対する安定性
方法
実施例1と同様にして、180mg/錠のアゾセミド含有の素錠を製造した後、表6に示した添加剤を水に溶解したコーティング液を使用して、前記素錠にコーティングを行い、実施例3及び比較例2とした。表6中の各添加剤の質量%は、アゾセミド含有部に対する質量%を示す。実施例3と比較例2とは、二酸化チタンの結晶形が異なること以外は全て同じ処方である。これら各製剤を下記条件(c)で、開放状態又は気密容器入り(ガラス瓶)にて総照度120万lxに達するまで保存後、製剤表面の色差変化を前記色差測定の方法で測定した。尚、総照度120万lxに達するまでの期間は、約25日間である。
条件(c):温度25℃、相対湿度30%、照度2000lx/hr、総照度120万lxに達するまで保存
結果
保存後の各製剤の色差ΔEを表6に示す。ルチル型の二酸化チタンを含むコーティングを施した実施例3は、いずれの条件においても色差ΔEが3.0を大幅に下回っており、光に対しても十分安定であることが示された。一方、コーティング層にアナターゼ型二酸化チタンを含有した比較例2では、湿度等の影響が極めて少ない気密容器に入れて保存していた場合、色差ΔEは3.0を大幅に下回り、実施例3と同様良好な結果だったにもかかわらず、湿度の影響を受ける開放状態での色差ΔEは3.0を超える結果となった。このことは、光及び温度のみならず、湿度に対して安定な製剤とするためには、ルチル型の二酸化チタンを使用してコーティングを施すことが重要であることを示している。
Figure 2013021660
<試験5>高湿度に対する安定性
方法
実施例1と同様にして、180mg/錠のアゾセミド含有素錠を製造した後、表7に示した添加剤を水に溶解したコーティング液を使用して、素錠にコーティングを行い、実施例4及び5とした。表7中の各添加剤の質量%は、アゾセミド含有部に対する質量%を示す。各製剤を条件(c)又は条件(d)で保存後、製剤表面の色差変化を前記色差測定の方法で測定した。尚、総照度120万lxに達するまでの期間は、約25日間である。
条件(c):温度25℃、相対湿度30%、照度2000lx/hr、総照度120万lxに達するまで保存
条件(d):温度25℃、相対湿度75%、照度2000lx/hr、総照度120万lxとなるまで保存
結果
保存後の各製剤の色差ΔE値を表6に示す。実施例4及び実施例5の色差ΔEはいずれも3.0を下回っていた。このことは、ルチル型の二酸化チタンを使用してコーティングを施した本発明の製剤は、高湿度下(75%RH)で保存後も安定であることを示している。
Figure 2013021660
<試験6>二酸化チタンの粒子径
方法
実施例のコーティングに用いたルチル型の二酸化チタンの粒子径を、レーザー回折法により測定した。分散媒に水を用い、ルチル型の二酸化チタンの屈折率を2.7として、レーザー回折式粒度分布測定機(Mastersizer 2000,Malvern Instruments社製)を使用して測定を行った。結果を表8に示す。
Figure 2013021660

Claims (11)

  1. 2-クロロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)-4-[(チオフェン-2-イルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド、又はその薬理学的に許容される塩、若しくはそれらの水和物を有効成分とする有効成分含有部と、前記有効成分含有部の表面上に形成されたコーティング層とを有し、前記コーティング層がルチル型の二酸化チタンを含有することを特徴とするコーティング製剤。
  2. 前記ルチル型の二酸化チタンの含有量が、有効成分含有部に対して0.2質量%以上である、請求項1に記載のコーティング製剤。
  3. 前記ルチル型の二酸化チタンの含有量が、有効成分含有部に対して0.2〜8質量%である、請求項2に記載のコーティング製剤。
  4. 前記ルチル型の二酸化チタンの含有量が、有効成分含有部に対して0.4〜4質量%である、請求項3に記載のコーティング製剤。
  5. 前記ルチル型の二酸化チタンのレーザー回折法による粉体粒度測定をしたときの50%粒子径が0.1〜10μmである、請求項1〜4のいずれかに記載のコーティング製剤。
  6. 前記コーティング層が水溶性高分子を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のコーティング製剤。
  7. タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、カオリン、及び三二酸化鉄からなる群から選択される1種以上の着色剤をコーティング層に更に含有する、請求項1〜6のいずれかに記載のコーティング製剤。
  8. 前記コーティング層が、いずれもコーティング層全体に対して、(i)ルチル型の二酸化チタン8〜50質量%と、(ii)水溶性高分子40〜85質量%と、(iii)タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、カオリン、及び三二酸化鉄から成る群から選択される1種以上の着色剤0〜15質量%と、(iv)医薬製剤として許容され得る上記以外の添加剤0〜20質量%とを含む、請求項1〜7のいずれかに記載のコーティング製剤。
  9. 一部が無色透明で内容物が見える包装体に封入された、請求項1〜8のいずれかに記載のコーティング製剤。
  10. 下記(a)、(b)、(c)、又は(d)の条件のときに色差ΔEが3.0以下を示す、請求項1〜9のいずれかに記載のコーティング製剤。
    (a) 温度60℃、相対湿度75%、遮光、3週間保存
    (b) 温度25℃、相対湿度75%、遮光、3ヶ月間保存
    (c) 温度25℃、相対湿度30%、照度2000lx/hr、総照度120万lxに達するまで保存
    (d) 温度25℃、相対湿度75%、照度2000lx/hr、総照度120万lxに達するまで保存
  11. 2-クロロ-5-(2H-テトラゾール-5-イル)-4-[(チオフェン-2-イルメチル)アミノ]ベンゼンスルホンアミド、又はその薬理学的に許容される塩、若しくはそれらの水和物を有効成分とする有効成分含有部を、少なくともルチル型の二酸化チタンを含む被覆剤でコーティングすることを特徴とする、製剤保存時の変色抑制方法。
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