JP6339800B2 - ミグリトール含有コーティング製剤 - Google Patents

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本発明は、α-グルコシターゼ阻害薬であるミグリトールを含有するコーティング製剤に関する。
ミグリトールは、糖尿病治療薬の一つであるα-グルコシターゼ阻害薬として知られている(特許文献1)。その薬理作用は、小腸粘膜上皮細胞の刷子縁膜において二糖類から単糖への分解を担う二糖類水解酵素(α-グルコシダーゼ)を阻害し、糖質の消化・吸収を遅延させることにより食後の過血糖を改善すると考えられている。
近年、病院及び調剤薬局では、患者の利便性を考慮し、数種類の医薬製剤を一服用単位ごとにまとめて包装する、一包化というサービスが行われることがある。この際用いられるのは、通常、空気中の水分や光を透過する包装体である。そのため、一包化された医薬製剤は、保管時に湿度や光等の影響を受けやすい。
しかしながら、現在販売されているミグリトールを含有するコーティング製剤は、アルミ袋開封後は遮光し湿気を避けて保存するよう注意喚起されており、一包化には適していない。
特許公告昭和62−31703号公報
本発明は、無包装状態で色調変化を起こし難く安定な、ミグリトールを含有するコーティング製剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、ミグリトールを含有するコーティング製剤が、無包装状態で色調変化を起こす原因を鋭意検討した。そして、ミグリトールは、湿度(水分)と光の影響により、二酸化チタンと反応し、配合変化を起こすことを突き止めた。更に、二酸化チタンの代わりに特定の無機賦形剤を用いることにより、無包装状態で色調変化を起こし難く安定であることを見出し、本願発明を完成させた。
本発明の主な構成は次のとおりである。
<1>ミグリトール、又はその薬理学的に許容される塩、若しくはそれらの水和物を含む核部と、前記核部の表面上に形成された無機賦形剤を含むコーティング層とを有し、
前記無機賦形剤が、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、硫酸カルシウム2水和物、無水リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム造粒物、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、リン酸水素カルシウム造粒物からなる群から選択される少なくとも1つである、コーティング製剤。
<2>前記コーティング層は、実質的に二酸化チタンを含まないことを特徴とする、<1>に記載のコーティング製剤。
<3>前記無機賦形剤の含有量が、核部に対して0.05〜2質量%である、<1>又は<2>に記載のコーティング製剤。
<4>ミグリトール、又はその薬理学的に許容される塩、若しくはそれらの水和物を含む核部を、実質的に二酸化チタンを含まない被覆剤でコーティングすることを特徴とする、ミグリトールを含有する製剤を保存する際の色調変化抑制方法。
本発明によれば、無包装形態で湿度(水分)と光により色調変化を起こし難い、ミグリトールを含有するコーティング製剤を提供することができる。
以下に、本発明の実施形態を更に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明のコーティング製剤は、ミグリトール、又はその薬理学的に許容される塩、若しくはそれらの水和物を有効成分として核部に含む。ミグリトールは、α-グルコシターゼ阻害薬であり、特許公告昭62−031703号公報等に記載の合成方法に準じて製造することができる。化学名は、(-)-(2R,3R,4R,5S)-1-(2-ヒドロキシエチル)-2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4,5-トリオールであり、下記式で表される。
〔化1〕
ミグリトールの薬理学的に許容される塩とは、その用途を考慮すれば医薬として許容され得る塩が好ましい。例えば、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性又は酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。また、有機酸との塩の好適な例としては、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、安息香酸、トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、アルギニン等との塩が挙げられる。酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。これらの塩は、公知の方法で容易に得ることができる。水和物は、ミグリトールの水和物のみならず、その薬理学的に許容される塩の水和物をも含み、公知の方法で得ることができる。
有効成分であるミグリトールの含有量は、製剤全体に対して10〜50質量%であることが好ましく、15〜45質量%であることがより好ましい。尚、ミグリトールの含有量は、実際の使用に適した量で設定することができ、1製剤中10mg〜200mgの範囲で設定することが適当であるが、通常、1錠あたりのミグリトールの含有量は25mg、50mg又は75mgであるため、これらに準じた含有量とすることが実用上好ましいものである。
本発明における核部とは、製剤の最表面にコーティングを施す前の錠剤を意味する。有効成分を含む素錠を核部としても良いし、素錠をコーティングした錠剤を核部としても良い。核部の製造方法は特に限定されず、通常用いられる方法により製造することができる。例えば、有効成分、賦形剤、結合剤、及び崩壊剤を混練合し、乾燥後整粒し、そのまま又は更に滑沢剤を混合し打錠して製造することができる。他にも、国際公開第01/98067号パンフレット等に記載の有核錠の製造技術を用いて製造することもできる。
コーティング製剤とは、核部の表面をコーティング層で被覆した製剤であり、核部の表面上にコーティング層が形成されている。一般的に、製剤のコーティングは、見た目を麗しくするため、匂い又は味をマスキングするため、有効成分の放出制御のため、光を遮断する為等に行われる。
コーティング製剤におけるコーティング層は、フィルム基剤及び着色剤を少なくとも含む。通常、白色に着色する場合、白色着色剤としては二酸化チタンが広く使用されている。二酸化チタンは、他の着色剤と比較し、遮光効果に優れ、高い白色度を有する。
しかし、ミグリトールを含有するコーティング錠剤では、コーティング層中に実質的に二酸化チタンを含まないことが好ましい。実質的に二酸化チタンを含まないとは、コーティング層中に二酸化チタンが0.1質量%以下であることが好ましく、二酸化チタンを全く含まないことがより好ましい。これは、水の存在下で光照射すると、ミグリトールと二酸化チタンとが配合変化を起こし、製剤表面が色調変化し、安定性が悪くなるからである。尚、ミグリトールと二酸化チタンとが光及び水の影響下で配合変化を起こすことは、本発明で初めて見出されたことである。
本発明では、二酸化チタンの代わりに、特定の無機賦形剤が白色着色剤として用いられる。本発明で用いられる無機賦形剤は、水に対する溶解度が極めて低いものが好ましく、その溶解度は、20±5℃の水への溶解度が0.1g/L以下の無機賦形剤が特に好適に用いられる。具体的には、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、硫酸カルシウム2水和物、無水リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム造粒物、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、及びリン酸水素カルシウム造粒物等が挙げられる。核部に対する無機賦形剤の含有量は、好ましくは0.05〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1.5質量%である。含有率が、0.05質量%以下の場合、コーティング層により核部の色を完全に隠蔽することが困難であり、2質量%を越えると、製造機器の接薬部の材質が、無機賦形剤により削り取られる等の不具合が発生する可能性がある。
これら無機賦形剤はフィルム基剤とともに用いられる。フィルム基剤としては、水溶性高分子を使用するのが一般的である。水溶性高分子としては、例えば、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートサクシナート、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸フタル酸セルロース、キサンタンガム、トラガントガム、アラビアゴム、寒天、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体及びマクロゴール等が挙げられる。これらの中では、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体及びマクロゴールが好ましいものとして挙げられる。水溶性高分子は、これらから選択される1種以上を単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。水溶性高分子の含有量は、コーティング層全体に対し、通常40〜85質量%、好ましくは45〜70質量%添加する。
本願発明のコーティング層には、一般的なコーティング製剤に用いられる公知の成分をさらに含有しても良い。公知の成分としては、例えば、甘味剤、分散剤、賦形剤、可塑剤、香料、光沢化剤、付着防止剤、防腐剤、保存料、着色剤及びpH調整剤などが挙げられる。
本発明におけるコーティング層の質量比率は、公知の方法で適宜設定できるが、例えば素錠に対して、1質量%〜20質量%とするのが好ましく、2質量%〜10質量%とするのがさらに好ましい。
核部をコーティングする方法は、特に制限されないが、通常一般公知の方法によりコーティングすることができる。例えば、コーティングパン方式、流動層コーティング方式、転動コーティング方式などが挙げられる。ここで、コーティングパン方式とは、回転ドラム(パン)に核部を投入し、パン内で転動する核部に、コーティング溶液を噴霧、乾燥して被覆する方法である。流動層コーティング方式とは、空気流により核部を浮遊あるいは流動させ、その浮遊懸濁状態にコーティング溶液を噴霧、乾燥して被覆する方式である。転動コーティング方式とは、水平の円盤を回転させ、円盤上面を転動運動する核部にコーティング液を噴霧、乾燥して被覆する方式である。コーティング層を施すときは、流動造粒機、転動造粒機などの製造装置を使用することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
<色差測定>
分光測色計(CM-3500d,コニカミノルタ社製)を用いて評価した。測定時の基準光源にはD65を用い、対象物の色彩をL*a*b*表色系で測定して、開始時と一定期間保存後の二者の色差ΔEを下記数式1により算出した。ΔEが3.0を超えれば目視で色変化が識別可能な数値である。
数式1:ΔE=(Δa2+Δb2+ΔL21/2
<試験1>水を加えた練合粉体の光照射に対する安定性
方法
ミグリトールと、下記無機賦形剤又は下記水溶性高分子とを質量比率1:1となるよう混合し、精製水を加え乳鉢にて練合後、80℃にて60分間乾燥し、練合粉体を作成した。また、同様の方法にて、ミグリトール、無機賦形剤及び水溶性高分子のそれぞれの単独練合品を対照品として調整した。各種練合粉体をプラスチックシャーレ(開放状態)にて、温度25℃、照度2000lx/hrの環境下にて72時間保存した後の、各種練合粉体の色差変化を、前記色差測定の方法にて測定した。
無機賦形剤 :水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、硫酸カルシウム2水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、タルク、ケイ酸マグネシウム、カオリン
水溶性高分子:ヒプロメロース(TC-5E)、ヒプロメロース(TC-5S)、マクロゴール4000
結果
保存後の各練合粉体の色差(ΔE)を表1に示す。対照品である単独練合紛体は、いずれも光に対して安定であり、保管後の色差ΔEは3.0以下であった。ミグリトールと二酸化チタンとの練合粉体のみ、保管後の色差ΔEは3.0を上回り、目視でも粉体の色調変化が確認できるほどであった。これに対し、ミグリトールと二酸化チタン以外の無機賦形剤との練合粉体では、保管後の色差ΔEは3.0以下であり、目視では色調変化を確認することが出来なかった。また、ミグリトールと水溶性高分子との練合粉体においても、保管後の色差ΔEは3.0以下であり、目視では色調変化を確認することが出来なかった。
以上の結果から、水の存在下で光照射して一定期間保存した場合、二酸化チタンはミグリトールと配合変化を起こすのに対し、他の無機賦形剤及び水溶性高分子は、ミグリトールと配合変化を起こし難く安定であることが明らかとなった。
<試験2>練合紛体の高湿度環境下における光照射に対する安定性
方法
ミグリトールと二酸化チタン(ルチル型)、ミグリトールと二酸化チタン(アナターゼ型)、ミグリトールと酸化マグネシウム及びミグリトールと沈降炭酸カルシウムをそれぞれ混合し、精製水を加え乳鉢にて練合後、60℃にて12時間乾燥し、練合粉体を作成した。得られた各種練合粉体をプラスチックシャーレ(開放状態)にて、温度25℃、相対湿度75%、照度2000lx/hrの環境下にて12.5日間(総照度60万lx)保存した後の、各種練合粉体の色差変化を、前記色差測定の方法にて測定した。
結果
高湿度環境下に保存後の各練合粉体の色差(ΔE)を表2に示す。ミグリトールと二酸化チタンとの練合粉体は、二酸化チタンの結晶形に関わらず、保管後の色差ΔEは3.0を顕著に上回り、目視でも粉体の色調変化が確認できるほどであった。これに対し、ミグリトールと酸化マグネシウム又は沈降炭酸カルシウムとの練合粉体では、保管後の色差ΔEは3.0以下であり、目視では色調変化を確認することが出来なかった。
以上の結果から、ミグリトールは、二酸化チタンの結晶形に関わらず色調変化を起こすのに対し、酸化マグネシウム又は沈降炭酸カルシウムは、高湿度条件における光照射においても、ミグリトールと配合変化を起こし難く安定であることが明らかとなった。
<試験3>コーティング製剤の高湿度環境下における光照射に対する安定性
方法
ミグリトールを糖類及び水溶性結合剤と共に湿式高せん断造粒機に入れて混合した後、エタノール又は精製水を加えて練合した。この練合品を湿式整粒機に入れ、湿式整粒し、直接加熱流動層乾燥機を用いて乾燥させた。最後にこの乾燥品及び滑沢剤を、拡散式混合機を用いて混合し、プレス型打錠機を用いて打錠して120mg/錠又は125mg/錠の核部とした。表3に示した添加剤を水に溶解してコーティング液とし、コーティングパン方式コーティング機を用いて、核部にコーティングを行い、実施例1〜4及び比較例1の各コーティング製剤を得た。表4中の各添加剤の質量%は、核部に対する質量%を示す。各製剤をプラスチックシャーレ(開放状態)にて、温度25℃、相対湿度75%、照度2000lx/hrの環境下にて25日間(総照度120万lx)保存した後の、各種練合粉体の色差変化を、前記色差測定の方法にて測定した。
結果
保存後の各製剤の色差(ΔE)を表4に示す。二酸化チタンをコーティング層に含む比較例1では、色差ΔEは、3.0を大幅に上回り、目視でも製剤の色調変化が確認できるほどであった。実施例1〜4の色差ΔEは約0.6〜2.7であり、目視で色変化が識別可能とされる3.0を下回っていた。すなわち、コーティング層に酸化マグネシウム又は沈降炭酸カルシウムを含有したミグリトール製剤は、高湿度環境下にて光照射を受けても安定であるという効果が見られた。

Claims (3)

  1. ミグリトール、又はその薬理学的に許容される塩、若しくはそれらの水和物を含む核部と、前記核部の表面上に形成された無機賦形剤及び水溶性高分子を含む水溶性フィルムコーティング層とを有し、
    前記無機賦形剤が、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、硫酸カルシウム2水和物、無水リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム造粒物、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、及びリン酸水素カルシウム造粒物からなる群から選択される少なくとも1つであり、
    前記コーティング層は実質的に二酸化チタンを含まないことを特徴とする、
    コーティング製剤。
  2. 前記無機賦形剤の含有量が、核部に対して0.05〜2質量%である、請求項1に記載のコーティング製剤。
  3. 前記コーティング層中に二酸化チタンが0.1質量%以下である、請求項1又は2に記載のコーティング製剤。
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