本発明は、内燃機関等に使用される点火プラグに関する。
内燃機関等の燃焼装置に使用されるスパークプラグは、例えば、軸孔を有する筒状の絶縁体と、軸孔の先端側に挿設される中心電極と、軸孔の後端側に挿設される端子電極と、絶縁体の外周に設けられる筒状の主体金具とを備えている。また、端子電極は、絶縁体の後端から露出し、電力供給用のプラグキャップ等が取付けられる頭部と、前記軸孔に挿通され、先端部がガラスシール層等により絶縁体に固定される棒状の脚部とを備えている。さらに、絶縁体の後端部には、主体金具の後端から露出し、頭部と主体金具との間の絶縁性を確保する後端側胴部が設けられている。
加えて、一般に絶縁体は、次のようにして製造される。すなわち、アルミナ等を含む原料粉末を圧縮成形し、前記軸孔となる穴部を有してなる成形体を得る。次いで、穴部に支持ピンを挿通した上で、研削用の回転ローラを回転させつつ、前記成形体の外周面に接触させる。そして、回転ローラにより成形体が研削されることで、絶縁体と略同一の形状を有する絶縁体中間体が形成され、さらに絶縁体中間体が焼成されることで絶縁体が得られる(例えば、特許文献1等参照)。
ところで、内燃機関等の動作に伴い、絶縁体に固定された脚部の先端部を基点として端子電極の頭部が振れ動くことで、端子電極の脚部が後端側胴部の内周に衝突してしまうことがある。端子電極が後端側胴部に衝突してしまうと、後端側胴部に折損が生じてしまったり、折損にまでは至らなくても、後端側胴部に微小なひび割れ(クラック)が生じ、後端側胴部の強度が低下してしまったりするおそれがある。ここで、後端側胴部の折損防止や強度維持を図るという点では、後端側胴部の肉厚を大きくし、その強度向上を図ることが効果的ではあるが、近年では、スパークプラグの小径化の要請があり、絶縁体の小径化が要求されている。そこで、絶縁体の小径化を図りつつ、後端側胴部の折損防止等を図るために、軸孔の内径を比較的小さくすることで、後端側胴部の肉厚(断面係数)を大きくすることが考えられる(例えば、特許文献2等参照)。
特開2006−210142号公報
特開2008−100250号公報
しかしながら、軸孔の内径を小径とする場合には、前記穴部に挿通される支持ピンも小径とする必要が生じるが、支持ピンを小径とすると、支持ピンの強度低下を招いてしまう。そのため、成形体の研削時に回転ローラから加えられる負荷により、支持ピンが曲がってしまい、ひいては研削後における絶縁体中間体の寸法にバラツキが生じてしまうおそれがある。従って、この点を考慮すると、軸孔の内径をある程度の大きさ以上確保する必要があり、比較的小径の絶縁体では、肉厚の増大による後端側胴部の折損防止や強度維持にも限度がある。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、絶縁体の小径化を図りつつ、後端側胴部における肉厚の増大によることなく後端側胴部の折損や強度低下を抑制することができる点火プラグを提供することにある。
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
構成1.本構成の点火プラグは、軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
前記軸孔の後端側に挿通される脚部、及び、前記脚部の後端側に形成され、自身の外径が前記脚部の外径よりも大きい頭部を有する端子電極と
を備える点火プラグであって、
前記絶縁体には、前記主体金具の後端から露出する後端側胴部が設けられ、当該後端側胴部の最大外径が9.5mm以下であり、
前記絶縁体は、
前記絶縁体の後端よりも前記軸線方向先端側に位置し、前記頭部の先端側端面と接触する端面受け部と、
前記頭部の少なくとも先端部が挿通され、前記頭部の外周に位置する外周部と
を有することを特徴とする。
上記構成1によれば、後端側胴部の最大外径が9.5mm以下とされているため、振動に伴う後端側胴部における折損や強度低下が懸念される。
この点、上記構成1によれば、絶縁体には、端子電極の頭部のうち少なくとも先端部が挿通され、頭部の外周に位置する外周部が設けられている。従って、内燃機関等の動作に伴い点火プラグに振動が加えられた際に、外径ひいては重量が比較的大きく、かつ、端子電極の先端部(振動の基点)から最も離間した位置に存在する頭部の振動が、外周部により規制される形となる(すなわち、振動に伴い大きなエネルギーが生じやすい頭部の振動が規制される)。そのため、頭部の振幅が小さくなり、頭部にて生じるエネルギーを小さくすることができる。これにより、頭部にて生じるエネルギーにより、端子電極(脚部)から後端側胴部に加えられる力を低減させることができる。その結果、後端側胴部の肉厚を増大させることなく、端子電極の衝突に伴う後端側胴部の折損や強度低下をより確実に防止することができる。
構成2.本構成の点火プラグは、上記構成1において、前記軸線に沿った前記外周部の後端から前記端面受け部までの距離をL1(mm)としたとき、L1≧0.5を満たすことを特徴とする。
尚、端面受け部が軸線と直交する方向に対して傾斜している場合、「距離L1」とあるのは、外周部の後端から端面受け部の最後端までの軸線に沿った距離をいう。
上記構成2によれば、外周部により頭部の振動を効果的に規制することができる。その結果、後端側胴部の折損や強度低下を一層確実に防止することができる。
構成3.本構成の点火プラグは、上記構成1又は2において、前記軸線に沿った前記外周部の後端から前記端面受け部までの距離をL1(mm)とし、前記軸線に沿った前記頭部の長さをL2(mm)としたとき、L1/L2≧1/3を満たすことを特徴とする。
尚、頭部の先端側端面が、軸線と直交する方向に対して傾斜している場合、「長さL2」とあるのは、前記先端側端面のうち最も後端側に位置する部位から頭部の後端までの軸線に沿った長さをいう。
上記構成3によれば、頭部のうちより軸線方向後端側に位置する部位(振動の基点からより離間する部位)の振動が外周部により規制されることとなる。従って、頭部の振幅をより一層小さなものとすることができ、後端側胴部の折損等をより効果的に防止することができる。
構成4.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至3のいずれかにおいて、前記軸線に沿った前記外周部の後端から前記端面受け部までの距離をL1(mm)とし、前記軸線に沿った前記頭部の長さをL2(mm)としたとき、L2≦3.5、及び、L1≧0.8を満たすことを特徴とする。
近年では、良好な着火性を確保すべく、点火プラグ(端子電極)へと印加される電圧がより大きなものとされており、頭部及び主体金具間における後端側胴部の外周面を這った異常放電(いわゆるフラッシュオーバー)の発生がより懸念される。フラッシュオーバーの発生を抑制するという点では、軸線に沿った後端側胴部の長さを大きくすることが有効であるが、規格等により点火プラグの全長を変更することはできないため、後端側胴部を長くした場合には、軸線に沿った頭部の長さを小さくせざるを得ない。しかしながら、頭部の長さを小さくした場合には、電力供給用のプラグキャップ等と端子電極とを接続した際に、頭部の外周に嵌合される嵌合部材と頭部との接触面積が小さくなる。その結果、内燃機関の動作等に伴い端子電極へと加わる振動がより大きなものとなり、後端側胴部の折損や強度低下がより懸念される。すなわち、頭部の長さが小さいほど、後端側胴部の折損等がより生じやすい。尚、嵌合部材に代えて、例えば、ばねによりプラグキャップ等と端子電極とを電気的に接続する手法もあるが、この場合においても、同様に、頭部の長さが小さいほど後端側胴部の折損等がより生じやすくなる。
この点、上記構成4によれば、頭部の長さL2が3.5mm以下とされているため、フラッシュオーバーの発生抑制を図ることができる一方で、後端側胴部の折損等が懸念される。しかしながら、上記構成4によれば、距離L1が0.8mm以上とされているため、外周部により頭部の振動を一層確実に規制することができる。そのため、後端側胴部の折損等がより懸念される場合であっても、後端側胴部の折損等を非常に効果的に防止することができる。
構成5.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至4のいずれかにおいて、前記絶縁体には、前記脚部が挿通される脚部挿通部が形成されており、
前記絶縁体のうち前記脚部挿通部と前記端面受け部との間には、前記軸線側に向けて凸の湾曲状をなす湾曲部が設けられ、
前記軸線を含む断面において、前記湾曲部の外形線の曲率半径をR1(mm)としたとき、R1≧0.1を満たすことを特徴とする。
尚、湾曲部の外形線の曲率半径が一定でない場合、「曲率半径R1」とあるのは、軸線を含む断面において、湾曲部の外形線のうち軸線方向最先端に位置する点と、前記外形線のうち軸線方向最後端に位置する点と、前記外形線上における前記両点の中点との3点を通る仮想円の曲率半径をいう。
上記構成5によれば、脚部挿通部と端面受け部との間には、軸線側に向けて凸の湾曲状をなす湾曲部が設けられている。従って、絶縁体に対する端子電極の挿入時に、湾曲部により脚部がガイドされることとなり、軸線と端子電極の中心軸とを精度よく合わせることができる。そのため、外周部と頭部との間の間隔を周方向において略均等とすることができる。これにより、端子電極が周方向においてどの方向に振動した場合でも、頭部の振幅を比較的小さな範囲内に抑えることができ、その結果、後端側胴部の折損等をより一層確実に防止することができる。
また、周方向の一部において、脚部挿通部と脚部との間の間隔が小さくなっている場合には、振動に伴い前記間隔の小さい箇所において、脚部が絶縁体に接触しやすくなってしまうが、上記構成5によれば、脚部挿通部と脚部との間隔を周方向において略均等にすることができる。そのため、絶縁体に対する脚部の接触を抑制することができ、後端側胴部における折損等の防止効果をさらに向上させることができる。
尚、曲率半径R1を過度に大きくしてしまうと、頭部の先端側端面が湾曲部に接触してしまい、軸線方向における頭部の位置にずれが生じてしまうおそれがある。従って、頭部の位置ずれを抑制するという点では、曲率半径R1を3.0mm以下とすることが好ましい。
構成6.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至5のいずれかにおいて、前記軸線と直交する方向に沿った前記端面受け部の幅をL3(mm)としたとき、0.5≦L3≦2.0を満たすことを特徴とする。
尚、「幅L3」とあるのは、端面受け部の最内周部における内径と端面受け部の最外周部における内径との径差の半分ということができる。
上記構成6によれば、幅L3が0.5mm以上とされているので、端面受け部の面積を十分に大きく確保できる。従って、端面受け部に対して頭部の先端側端面がより確実に接触することとなり、先端側端面の一部が端面受け部に接触せず、頭部が端面受け部よりも先端側に入り込んでしまうといった事態を防止することができる。その結果、頭部の位置ずれをより確実に防止することができる。
加えて、上記構成6によれば、幅L3が2.0mm以下とされているため、端面受け部の外周側に位置する外周部の肉厚を十分に確保することができる。そのため、頭部の接触に伴う外周部の欠損等を効果的に防止することができる。
構成7.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至6のいずれかにおいて、前記軸線を含む断面において、前記端面受け部の外形線は前記軸線と直交する方向に沿って延びることを特徴とする。
尚、「端面受け部の外形線は軸線と直交する方向に沿って延びる」とあるのは、端面受け部の外形線が、厳密に軸線と直交する方向に沿って延びる場合のみならず、端面受け部の外形線が、軸線と直交する方向に対して若干(例えば、5°以下)傾斜している場合も含む。
上記構成7によれば、端子電極の中心軸が軸線に対して傾いてしまうといった事態が生じにくくなる。従って、頭部の位置をより適切に合わせることができる。
構成8.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至7のいずれかにおいて、前記軸線と直交する方向に沿った、前記頭部のうち前記外周部に挿通された部位の外周面と前記外周部の内周面との間の最短距離が、前記軸線と直交する方向に沿った、前記脚部の外周面と前記軸孔の内周面との間の最短距離よりも小さいことを特徴とする。
上記構成8によれば、内燃機関等の動作時において、絶縁体に対する脚部の接触が抑制され、外周部により頭部の振動がより一層確実に規制されることとなる。その結果、上記構成1等の作用効果がより確実に発揮されることとなる。
構成9.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至8のいずれかにおいて、前記外周部には、前記軸線方向先端側に向けて内径が縮径する縮径部が設けられることを特徴とする。
上記構成9によれば、外周部には、軸線方向先端側に向けて内径が縮径する縮径部が設けられている。そのため、軸孔に対する端子電極の挿入時等において、頭部が縮径部に接触することで、軸線に対して端子電極の中心軸を一層精度よく合わせることができる。従って、端子電極の外周面と絶縁体の内周面との間隔を、周方向において略同等とすることができる。これにより、頭部の振幅をより小さな範囲内に抑えることができるとともに、後端側胴部に対する脚部の接触を抑制することができ、その結果、後端側胴部における折損等の防止効果を一層向上させることができる。
構成10.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至9のいずれかにおいて、前記頭部のうち前記外周部に挿通される部位には、前記軸線方向後端側に向けて外径が拡径する拡径部が設けられることを特徴とする。
上記構成10によれば、頭部のうち外周部に挿通される部位には、軸線方向後端側に向けて拡径する拡径部が設けられている。従って、軸孔に対する端子電極の挿入時等において、軸線に対して端子電極の中心軸をより一層精度よく合わせることができる。その結果、後端側胴部における折損等の防止効果をさらに高めることができる。
構成11.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至10のいずれかにおいて、前記後端側胴部の外周には、前記後端側胴部の周方向に沿って延びる環状の溝部が設けられており、
前記端面受け部から前記溝部の底部までの前記軸線に沿った距離をL4(mm)としたとき、L4≧0.5を満たすことを特徴とする。
尚、端面受け部が軸線と直交する方向に対して傾斜している場合、「距離L4」とあるのは、端面受け部の後端から前記溝部の底部までの軸線に沿った距離をいう。
上記構成11によれば、後端側胴部に溝部が設けられているため、後端側胴部の外周面を這った頭部から主体金具の後端までの距離をより大きくすることができる。従って、頭部及び主体金具間における後端側胴部の外周面を這った異常放電(フラッシュオーバー)の発生を抑制することができる。
一方で、後端側胴部のうち溝部が形成された部位は、比較的薄肉となり、その他の部位と比べて強度に劣ることとなる。従って、外周部に対する頭部の接触に伴い、外周部の根元側(外周部と端面受け部との境界部分)で発生した応力が、前記薄肉部位に加わってしまうと、前記薄肉部位において割れ等の破損が生じてしまうおそれがある。
この点を鑑みて、上記構成11によれば、端面受け部から溝部の底部(すなわち、後端側胴部のうち肉厚が薄い部位)までの軸線に沿った距離L4が0.5mm以上とされている。すなわち、応力の発生箇所から薄肉部位までの距離が十分に大きなものとされている。従って、前記薄肉部位に対して応力を加わりにくくすることができ、薄肉部位における破損をより確実に防止することができる。
点火プラグの構成を示す一部破断正面図である。
点火プラグの後端部の構成を示す拡大断面図である。
(a),(b)は、外周部の別例を示す拡大断面図である。
(a),(b)は、頭部の別例を示す拡大断面図である。
湾曲部の曲率半径を説明するための部分拡大断面図である。
絶縁碍子の製造工程の一過程を示す一部破断正面図である。
成形体の構成等を示す一部破断正面図である。
成形体に挿入された支持ピン等を示す一部破断正面図である。
成形体の研削工程を示す一部破断正面図である。
(a)〜(c)は、絶縁碍子に対する端子電極等の封着工程を示す断面図である。
別の実施形態における端面受け部の構成を示す拡大断面図である。
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、点火プラグ1を示す一部破断正面図である。尚、図1では、点火プラグ1の軸線CL1方向を図面における上下方向とし、下側を点火プラグ1の先端側、上側を後端側として説明する。
点火プラグ1は、筒状をなす絶縁体としての絶縁碍子2、これを保持する筒状の主体金具3などから構成されるものである。
絶縁碍子2は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成されており、その外形部において、後端側に形成された後端側胴部10と、当該後端側胴部10よりも先端側において径方向外向きに突出形成された大径部11と、当該大径部11よりも先端側においてこれよりも細径に形成された中胴部12と、当該中胴部12よりも先端側においてこれよりも細径に形成された脚長部13とを備えている。絶縁碍子2のうち、大径部11、中胴部12、及び、大部分の脚長部13は、主体金具3の内部に収容されている一方で、後端側胴部10は、主体金具3の後端から露出している。また、中胴部12と脚長部13との連接部には、先端側に向けて先細るテーパ状の段部14が形成されており、当該段部14にて絶縁碍子2が主体金具3に係止されている。
さらに、後端側胴部10には、その周方向に沿って延びる環状の溝部31が軸線CL1方向に沿って間欠的に複数設けられている。加えて、本実施形態においては、軸線CL1に沿った絶縁碍子2の後端から主体金具3の後端までの距離Xが比較的大きなもの(例えば、30mm以上)とされている。溝部31が設けられるとともに、前記距離Xが比較的大きなものとされることで、後述する端子電極6の頭部6Bと主体金具3の後端との間の絶縁性を高めることができ、ひいては頭部6Bと主体金具3との間における後端側胴部10の外周面を這った異常放電(フラッシュオーバー)の発生を効果的に抑制できるようになっている。
加えて、スパークプラグ1の小径化を図るべく、絶縁碍子2は比較的小径とされており、後端側胴部10の最大外径Dが9.5mm以下とされている。一方で、後端側胴部10の内周側における軸孔4の最小内径はある程度の大きさ(例えば、3mm以上)確保されており、結果として、後端側胴部10の厚さは比較的小さなものとなっている。
さらに、絶縁碍子2には、軸線CL1に沿って軸孔4が貫通形成されており、軸孔4の先端側には中心電極5が挿入、固定されている。中心電極5は、熱伝導性に優れる金属〔例えば、銅や銅合金、純ニッケル(Ni)〕からなる内層5Aと、Niを主成分とするNi合金からなる外層5Bとにより構成されている。さらに、中心電極5は、全体として棒状(円柱状)をなし、その先端部が絶縁碍子2の先端から突出している。加えて、中心電極5の先端部には、耐消耗性に優れる金属(例えば、イリジウム合金や白金合金等)からなるチップ28が設けられている。
また、軸孔4の後端側には、断面円形状をなす中実の端子電極6が挿入、固定されている。端子電極6は、低炭素鋼等により形成されており、脚部6Aと頭部6Bとを備えている。
脚部6Aは、軸線CL1方向に沿って延びる棒状をなし、その全体が軸孔4に挿通されている。また、脚部6Aは、上述の通り、前記距離Xが大きなものとされることに伴い、その軸線CL1方向に沿った長さが比較的大きなもの(例えば、40mm以上50mm以下)とされている。
頭部6Bは、円柱状をなすとともに、脚部6Aの後端側に形成され、自身の外径が脚部6Aの外径よりも大きなものとされている。さらに、頭部6Bの軸線CL1に沿った長さは、比較的小さなもの(例えば、3mm以上5mm以下)とされている。尚、本実施形態において、頭部6Bは、軸線CL1方向に沿って略一定の外径を有し、その一部は絶縁碍子2の後端から軸線CL1方向後端側に突出している。
加えて、軸孔4の中心電極5と端子電極6との間には、円柱状をなす導電性の抵抗体7が配設されている。また、抵抗体7の両端部には、導電性のガラスシール層8,9が設けられており、ガラスシール層8により、中心電極5が絶縁碍子2に固定され、ガラスシール層9により、端子電極6の先端部が絶縁碍子2に固定されている。
さらに、主体金具3は、低炭素鋼等の金属により筒状に形成されており、その外周面には点火プラグ1を燃焼装置(例えば、内燃機関や燃料電池改質器等)の取付孔に取付けるためのねじ部(雄ねじ部)15が形成されている。また、ねじ部15の後端側の外周面には径方向外側に突出する座部16が形成されており、ねじ部15後端のねじ首17にはリング状のガスケット18が嵌め込まれている。さらに、主体金具3の後端側には、主体金具3を燃焼装置に取付ける際にレンチ等の工具を係合させるための断面六角形状の工具係合部19が設けられるとともに、後端部において絶縁碍子2を保持するための加締め部20が設けられている。
また、主体金具3の内周面には、絶縁碍子2を係止するためのテーパ状の段部21が設けられている。そして、絶縁碍子2は、主体金具3に対してその後端側から先端側に向かって挿入され、自身の段部14が主体金具3の段部21に係止された状態で、主体金具3の後端側開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって主体金具3に固定されている。尚、絶縁碍子2の段部14及び主体金具3の段部21間には、円環状の板パッキン22が介在されている。これにより、燃焼室内の気密性を保持し、燃焼室内に晒される絶縁碍子2の脚長部13と主体金具3の内周面との隙間に入り込む燃料ガスが外部に漏れないようになっている。
さらに、加締めによる密閉をより完全なものとするため、主体金具3の後端側においては、主体金具3と絶縁碍子2との間に環状のリング部材23,24が介在され、リング部材23,24間にはタルク(滑石)25の粉末が充填されている。すなわち、主体金具3は、板パッキン22、リング部材23,24及びタルク25を介して絶縁碍子2を保持している。
また、主体金具3の先端部26には、自身の略中間部分が曲げ返されて、先端部側面が中心電極5の先端部(チップ28)と対向する接地電極27が接合されている。接地電極27は、Ni合金〔例えば、インコネル600やインコネル601(いずれも登録商標)〕により形成されており、接地電極27の先端部と中心電極5の先端部(チップ28)の間には、火花放電間隙29が形成されている。そして、当該火花放電間隙29において軸線CL1にほぼ沿った方向で火花放電が行われるようになっている。
次いで、絶縁碍子2のうち端子電極6が挿通される部位の構成について説明する。
図2に示すように、絶縁碍子2は、その後端よりも軸線CL1方向先端側に位置し、前記頭部6Bの先端側端面に接触する端面受け部32と、頭部6Bの少なくとも先端側が挿通され、頭部6Bの外周に位置する外周部33とを備えている。また、端面受け部32よりも軸線CL1方向先端側には、前記脚部6Aが挿通される脚部挿通部34が形成されている。
端面受け部32は、軸線CL1を含む断面において、自身の外形線が軸線CL1と直交する方向に延びており、その最外周部を除いた部位が頭部6Bの先端側端面に接触している。また、軸線CL1と直交する方向に沿った端面受け部32の幅をL3(mm)としたとき、0.5≦L3≦2.0を満たすように構成されている。すなわち、頭部6Bを受ける面の面積が過度に小さなものとされることなく、一方で、端面受け部32の外周から軸線CL1方向後端側に延びる前記外周部33の肉厚が十分に確保されている。
また、端面受け部32から溝部31の底部31Aまでの軸線CL1に沿った距離をL4(mm)としたとき、L4≧0.5を満たすように構成されている。すなわち、端面受け部32(外周部33の根元)に対して、溝部31の底部31A(つまり、後端側胴部10のうち肉厚が薄い部分)が軸線CL1方向に沿って0.5mm以上ずれるように、溝部31と端面受け部32との相対位置関係が設定されている。
外周部33は、円環状をなし、自身の内径が軸線CL1に沿って略一定となるように構成されている。また、外周部33は、軸線CL1と直交する方向に沿った自身の内周面と頭部6Bの外周面との間の間隔が所定値(例えば、1mm)以下とされている。さらに、軸線CL1に沿った外周部33の後端から端面受け部32までの距離をL1(mm)としたとき、L1≧0.5を満たすように構成されている。加えて、軸線CL1に沿った頭部6Bの長さをL2(mm)としたとき、L1/L2≧1/3を満たすように構成されており、頭部6Bの長さL2に対して、外周部33の長さが十分に大きなものとなるように構成されている。尚、L2≦3.5を満たす場合には、L1≧0.8を満たすことが好ましい。また、本実施形態においては、L1/L2≦1を満たすように、距離L1が設定されている。
尚、図3(a),(b)に示すように、外周部33の内径を軸線CL1方向に沿って略一定とすることなく、外周部33に、軸線CL1方向先端側に向けて内径の縮径する縮径部33A,33Bを設けることとしてもよい。また、縮径部33A,33Bを設けるにあたっては、図3(a)に示すように、外周部33の一部に縮径部33Aを設けることとしてもよいし、図3(b)に示すように、外周部33の全域に縮径部33Bを設けることとしてもよい。尚、図3(b)のように、外周部33の内周後端に縮径部33Bを設けた場合には、絶縁碍子2に対して端子電極6を挿入する際に、端子電極6が軸孔4に対して多少ずれた場合であっても、端子電極6は縮径部33Bを滑るようにして軸孔4内へと案内される。そのため、端子電極6の先端部が絶縁碍子2の後端に接触することで、絶縁碍子2に大きな圧力が加わってしまい、絶縁碍子2に欠けが生じてしまうといった事態がより確実に防止されることとなる。
また、図4(a),(b)に示すように、頭部6Bのうち少なくとも外周部33に挿通される部位に、軸線CL1方向後端側に向けて外径が拡径する拡径部6Eを設けることとしてもよい。尚、拡径部6Eを設けるにあたって、図4(a)に示すように、外周部33の内径を軸線CL1方向に沿って略一定としてもよいし、図4(b)に示すように、外周部33に軸線CL1方向先端側に向けて縮径する縮径部33Cを設けてもよい。
図2に戻り、脚部挿通部34は、軸線CL1に沿って略一定の内径を有しており、自身の内周面と前記脚部6Aの外周面との間には隙間が形成されている。ここで、軸線CL1と直交する方向に沿った、頭部6Bのうち外周部33に挿通された部位の外周面と外周部33の内周面との間の最短距離は、軸線CL1と直交する方向に沿った、脚部6Aの外周面と脚部挿通部34(軸孔4)の内周面との間の最短距離よりも小さくなるように設定されている。このため、内燃機関等の動作に伴う振動により端子電極6が振れ動いた際には、脚部6Aよりも頭部6Bの方が絶縁碍子2に対して接触しやすくなっている。
加えて、本実施形態においては、端面受け部32と脚部挿通部34との間に、軸線CL1側に向けて凸の湾曲状をなす湾曲部35が設けられている。そして、図5に示すように、軸線CL1を含む断面において、湾曲部35の外形線の曲率半径をR1(mm)としたとき、R1≧0.1を満たすように構成されている。尚、曲率半径R1を過度に大きくしてしまうと、頭部6Bの先端側端面が湾曲部35に接触してしまい、軸線CL1に沿った端子電極6(頭部6B)の位置にずれが生じてしまうおそれがある。従って、R1≦3.0を満たすように構成することが好ましい。
次に、上記のように構成されてなる点火プラグ1の製造方法について説明する。
まず、主体金具3を予め加工しておく。すなわち、円柱状の金属素材(例えばS17CやS25Cといった鉄系素材やステンレス素材)に対して冷間鍛造加工等を施すことにより貫通孔を形成し、概形を製造する。その後、切削加工を施すことで外形を整え、主体金具中間体を得る。
続いて、主体金具中間体の先端面に、Ni合金等からなる接地電極27が抵抗溶接される。当該溶接に際してはいわゆる「ダレ」が生じるので、その「ダレ」を除去した後、主体金具中間体の所定部位にねじ部15が転造によって形成される。これにより、接地電極27の溶接された主体金具3が得られる。また、接地電極27の溶接された主体金具3には、亜鉛メッキ或いはニッケルメッキが施される。尚、耐食性向上を図るべく、その表面に、さらにクロメート処理を施してもよい。
さらに、前記主体金具3とは別に、中心電極5を製造しておく。すなわち、中央部に放熱性向上を図るための銅合金等を配置したNi合金を鍛造加工して中心電極5を作製する。次に、中心電極5の先端面に対して、レーザー溶接等によりチップ28を接合する。
また、低炭素鋼等の導電性金属に鍛造加工や切削加工等を施すことで端子電極6を製造しておく。
次に、絶縁碍子2を製造する。まず、図6に示すように、アルミナ粉末を主成分とする原料粉末PMを所定のラバープレス成形機41のキャビティ42に充填するとともに、キャビティ42に棒状のプレスピン43を挿入する。尚、プレスピン43としては、前記端面受け部32や外周部33、湾曲部35等に対応する外周形状を有するものが用いられている。
プレスピン43の挿入後、キャビティ42の上側開口部を閉鎖し、キャビティ42を密封状態とした上で、ラバープレス成形機41から原料粉末PMに対して径方向に沿った力を加え、原料粉末PMを圧縮・成形する。次いで、図7に示すように、原料粉末PMが圧縮・成形されてなる成形体CP1をラバープレス成形機41から取外すとともに、成形体CP1からプレスピン43を抜き取る。尚、プレスピン43の抜き取りに伴い形成された成形体CP1の穴部HLが、前記軸孔4を構成することなる。
次いで、図8に示すように、得られた成形体CP1の穴部HLに棒状の支持ピン44を挿入する。尚、上述の通り、後端側胴部10の内周側における軸孔4の内径はある程度の大きさ以上とされるため、支持ピン44のうち少なくとも基端側部位の外径は比較的大きなものとなっており、特に、前記外周部33に対応する、支持ピン44の最基端部の外径は非常に大きなものとなっている。従って、後述する研削加工において特に曲がりの懸念される支持ピン44の基端部が、十分な強度を有するものとなっている。
支持ピン44の挿入された成形体CP1は、図9に示すように、絶縁碍子2の外周形状に対応する外周形状を有する研削用回転ローラ45と、断面円形状をなし、前記研削用回転ローラ45から受ける摩擦力に抗して前記成形体CP1を支える押え部材46との間に挟み込まれる。そして、研削用回転ローラ45が回転することで、成形体CP1に研削加工が施される。研削加工により、前記穴部HLが貫通されてなる軸孔4が形成されるとともに、絶縁碍子2と略同一の形状をなす絶縁体中間体が得られる。その後、得られた絶縁体中間体が焼成炉へ投入され、焼成炉内で焼成されることにより絶縁碍子2が得られる。
次に、上記のようにして得られた絶縁碍子2及び中心電極5と、抵抗体7と、端子電極6とが、ガラスシール層8,9によって封着固定される。より詳しくは、まず、図10(a)に示すように、所定の支持部材(図示せず)により絶縁碍子2を支持した上で、軸孔4に中心電極5を挿入する。
そして、図10(b)に示すように、一般的にホウ珪酸ガラスと金属粉末とが混合されて調製された導電性ガラス粉末GP1を軸孔4内に充填し、充填した導電性ガラス粉末GP1を予備圧縮する。次に、導電性物質(例えば、カーボンブラック等)やセラミックス粒子などを含んでなる粉末状の抵抗体組成物RPを軸孔4に充填して同様に予備圧縮をし、さらに、導電性ガラス粉末GP2を充填し、同じく予備圧縮を行う。
次いで、端子電極6を軸孔4へと挿入するとともに、中心電極5側に向けて端子電極6を押圧しつつ、焼成炉内においてガラス軟化点以上の所定の目標温度(例えば、900℃)で加熱する。尚、軸孔4に対する端子電極6の挿入時には、絶縁碍子2の内周に形成された湾曲部35の存在により、端子電極6が容易に挿入されるとともに、端子電極6の中心軸と軸線CL1との間における軸ずれが抑制される。
焼成炉内における加熱により、図10(c)に示すように、積層状態にある抵抗体組成物RP及び導電性ガラス粉末GP1,GP2が加熱・圧縮されて、抵抗体7及びガラスシール層8,9となり、当該ガラスシール層8,9により、絶縁碍子2に対して中心電極5、端子電極6、及び、抵抗体7が封着固定される。尚、焼成炉内における加熱に際して、後端側胴部10の表面に釉薬層を同時に焼成することとしてもよいし、事前に釉薬層を形成することとしてもよい。
その後、上記のようにそれぞれ作製された中心電極5や抵抗体7等を備える絶縁碍子2と、接地電極27を備える主体金具3とが固定される。より詳しくは、主体金具3に絶縁碍子2を挿通した上で、比較的薄肉に形成された主体金具3の後端側の開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって絶縁碍子2と主体金具3とが固定される。
そして最後に、接地電極27を屈曲させるとともに、中心電極5の先端部(チップ28)と接地電極27との間に形成された火花放電間隙29の大きさを調整する加工が実施されることで、上述した点火プラグ1が得られる。
以上詳述したように、本実施形態によれば、絶縁碍子2には、頭部6Bのうち少なくとも先端部が挿通され、頭部6Bの外周に位置する外周部33が設けられている。従って、内燃機関等の振動に伴い点火プラグ1に振動が加えられた際に、外径ひいては重量が比較的大きく、かつ、端子電極6の先端部から最も離間した位置に存在する頭部6Bの振動が、外周部33により規制される形となる。そのため、頭部6Bの振幅が小さくなり、頭部6Bにて生じるエネルギーを小さくすることができる。これにより、頭部6Bにて生じるエネルギーにより、端子電極6(脚部6A)から後端側胴部10に加えられる力を低減させることができる。その結果、後端側胴部10の肉厚を増大させることなく、端子電極6の衝突に伴う後端側胴部10の折損や強度低下をより確実に防止することができる。
尚、本実施形態のように、後端側胴部10の最大外径Dが9.5mm以下とされ、後端側胴部10が比較的薄肉の場合や、脚部6Aの軸線CL1に沿った長さが比較的大きなものとされ、端子電極6の振動時に、頭部6Bにて生じるエネルギーが比較的大きなものとなりやすい場合であっても、上述の構成とすることで、後端側胴部10の折損等をより確実に防止することができる。
また、本実施形態では、距離L1が0.5mm以上とされるとともに、L1/L2≧1/3を満たすように構成されている。従って、外周部33により頭部6Bの振動をより確実に規制することができ、後端側胴部10の折損等を一層確実に防止することができる。
加えて、頭部の長さL2が3.5mm以下とされ、後端側胴部10の折損等がより懸念される場合であっても、距離L1を0.8mm以上とすることで、外周部33により頭部6Bの振動を一層確実に規制することができ、後端側胴部10の折損等を非常に効果的に防止することができる。
さらに、脚部挿通部34と端面受け部32との間には、軸線CL1側に向けて凸の湾曲状をなす湾曲部35が設けられている。従って、絶縁碍子2に対する端子電極6の挿入時に、湾曲部35により脚部6Aがガイドされることとなり、軸線CL1と端子電極6の中心軸とを精度よく合わせることができる。そのため、外周部33と頭部6Bとの間の間隔を周方向において略均等とすることができる。その結果、端子電極6が周方向においてどの方向に振動した場合でも、頭部6Bの振幅を比較的小さな範囲内に抑えることができ、後端側胴部10の折損等をより一層確実に防止することができる。また、脚部挿通部34と脚部6Aとの間の間隔も周方向において略均等にすることができるため、後端側胴部10に対する脚部6Aの接触を抑制することができる。従って、後端側胴部10における折損等の防止効果をさらに向上させることができる。
併せて、端面受け部32の幅L3が0.5mm以上とされているため、端面受け部32に対して頭部6Bの先端側端面をより確実に接触させることができる。その結果、軸線CL1方向における頭部6Bの位置ずれをより確実に防止することができる。
一方で、幅L3が2.0mm以下とされているため、端面受け部32の外周側に位置する外周部33の肉厚を十分に確保することができる。従って、頭部6Bの接触に伴う外周部33の欠損等を効果的に防止することができる。
また、本実施形態では、軸線CL1を含む断面において、端面受け部32の外形線が軸線CL1と直交する方向に延びている。従って、端子電極6の中心軸が軸線CL1に対して傾いてしまうといった事態が生じにくくなり、頭部6Bの位置をより適切に合わせることができる。
さらに、端面受け部32から溝部31の底部31A(後端側胴部10のうち特に薄肉の部位)までの軸線CL1に沿った距離L4が0.5mm以上とされている。従って、外周部33に対する頭部6Bの接触に伴い外周部33の根元側で発生する応力を、前記薄肉部位に対して加わりにくくすることができる。その結果、前記薄肉部位の破損をより確実に防止することができる。
加えて、外周部33に縮径部33A,33Bを設けた場合や、頭部6Bに拡径部6Eを設けた場合には、軸孔4に対する端子電極6の挿入時等に、軸線CL1に対して端子電極6の中心軸を一層精度よく合わせることができる。これにより、端子電極6の外周面と絶縁碍子2の内周面との間隔を、周方向において略同等とすることができる。従って、頭部6Bの振幅をより小さな範囲内に抑えることができるとともに、後端側胴部10に対する脚部6Bの接触を抑制することができる。その結果、後端側胴部10における折損等の防止効果をより一層向上させることができる。
次いで、上記実施形態によって奏される作用効果を確認すべく、後端側胴部の最大外径、外周部の有無、距離L1、長さL2、幅L3、湾曲部の有無、及び、湾曲部の曲率半径R1を種々変更した絶縁碍子のサンプルを有してなる点火プラグを作製し、各点火プラグについて強度測定試験を行った。
強度測定試験の概要は次の通りである。すなわち、点火プラグに対してJIS B8031に基づく耐衝撃性試験〔サンプルを所定の試験機に取付け、毎分400回の割合で10分間に亘って衝撃(振動)を与える試験〕を行った上で、サンプルの後端側胴部に圧力を加え、後端側胴部に割れが生じた際の荷重を強度として測定した。ここで、測定された荷重(強度)が大きいほど、振動に伴う絶縁碍子の強度低下が生じにくく、絶縁碍子(後端側胴部)における割れや折損が生じにくいといえる。
また、上述した後端側胴部の最大外径等を種々変更した絶縁碍子のサンプルを複数作製するとともに、各サンプルについて位置ずれ確認試験を行った。位置ずれ確認試験の概要は次の通りである。すなわち、各サンプルに端子電極を挿設した後、サンプル(絶縁碍子)の後端に対する頭部の位置を確認するとともに、所定の目標範囲から外れた位置に頭部が位置する割合(位置ずれ率)を算出した。そして、外周部を備えず、頭部の先端側端面が絶縁碍子の後端面に接触する点火プラグにおける位置ずれ率を基準として、前記算出された位置ずれ率が前記基準の+10%以下となった場合には、軸線方向における端子電極の位置ずれが生じにくいとして「○」の評価を下すこととした。一方で、前記算出された位置ずれ率が前記基準の+20%以上となった場合には、軸線方向における端子電極の位置ずれがやや生じやすいとして「△」の評価を下すこととした。
さらに、後端側胴部の最大外径等を種々変更した絶縁碍子を有してなる点火プラグについて、欠損確認試験を行った。欠損確認試験の概要は次の通りである。すなわち、点火プラグに対して上述したJIS B8031に規定する耐衝撃性試験を行い、絶縁碍子の後端部(外周部を設けた場合には、外周部)における欠けの有無を確認するとともに、欠けの発生率を算出した。そして、外周部を備えず、頭部の先端側端面が絶縁碍子の後端面に接触する点火プラグに対して、前記耐衝撃性試験を行った場合における欠けの発生率を基準として、前記算出された欠けの発生率が前記基準の+5%以下となった場合には、絶縁碍子の欠損を十分に抑制できるとして「○」の評価を下すことした。一方で、前記算出された欠けの発生率が前記基準の+10%以上となった場合には、絶縁碍子の欠損がやや生じやすいとして「△」の評価を下すこととした。
表1に、各サンプルにおける上記各試験の試験結果をそれぞれ示す。尚、表1におけるサンプルA〜Dは、絶縁碍子に外周部を設けず、頭部の外周側に絶縁碍子が位置しないように構成した。一方で、表1におけるサンプル1〜16は、絶縁碍子に外周部を設け、頭部の外周側に外周部が位置するように構成した。
加えて、サンプル15は、外周部に軸線方向先端側に向けて内径が縮径する縮径部を設け、サンプル16は、外周部に縮径部を設けるとともに、頭部に軸線方向後端側に向けて外径が拡径する拡径部を設けた。
また、曲率半径R1の欄において「−」とあるのは、湾曲部を設けることなく、端面受け部と脚部挿通部とが略直交するように構成したことを意味する。加えて、端子電極の頭部の外径は、それぞれ同一とし、端面受け部の幅L3は、脚部挿通部の内径を調節することで変更した。
表1に示すように、外周部を設けることなく構成したサンプルA〜Dにおいて、後端側胴部の外径を9.5mm超とした場合(サンプルA,B)には、耐衝撃性試験後の強度が4kNを上回り、振動に伴う強度低下が生じにくかった。一方で、後端側胴部の外径を9.5mm以下とした場合(サンプルC,D)には、耐衝撃性試験後の強度が4kN以下となってしまい、振動に伴う後端側胴部の強度低下が極めて生じやすく、後端側胴部の折損等が特に懸念されることが分かった。
これに対して、外周部を設けたサンプル(サンプル1〜16)は、後端側胴部の外径が9.5mm以下であっても、耐衝撃性試験後の強度が4.5kN以上となり、振動に伴う強度低下が生じにくいことが明らかとなった。これは、点火プラグに振動が加えられた際に、頭部の振動が外周部により規制される形となったため、頭部の振幅が小さくなり、その結果、端子電極から後端側胴部に加えられる力が低減し、端子電極の衝突に伴う微小なひび割れ(クラック)が後端側胴部に生じにくくなったことによると考えられる。
さらに、距離L1を0.5mm以上としたサンプル(サンプル3〜16)は、耐衝撃性試験後の強度が5kNを遥かに上回り、耐衝撃性試験後の強度が顕著に向上することが確認された。これは、距離L1を0.5mm以上としたことで、外周部によって頭部の振動がより確実に規制されたことに起因すると考えられる。
また、サンプルC,Dやサンプル1,2における耐衝撃性試験後の強度の比較から、長さL2を3.5mm以下とすることで、後端側胴部の強度低下がより一層生じやすくなることが確認されたが、サンプル4,5の試験結果に示すように、長さL2を3.5mm以下としたときであっても、距離L1を0.8mm以上とすることで、長さL2を3.5mm超としたときと遜色ない強度を維持できることが分かった。
加えて、L1/L2≧1/3を満たすサンプル(サンプル7〜16)は、耐衝撃性試験後の強度が一層向上することが分かった。これは、頭部のうちより後端側に位置する部位(振動の支点からより離間する部位)の振動が外周部により規制されることとなり、頭部の振幅がより一層小さなものとなったためであると考えられる。
併せて、湾曲部を設けたサンプル(サンプル8〜16)のうち、湾曲部の曲率半径R1を0.1mm以上としたもの(サンプル9〜16)は、耐衝撃性試験後における強度が一層向上することが明らかとなった。これは、絶縁碍子に対する端子電極の挿入時に、湾曲部により脚部がガイドされることとなり、軸線と端子電極の中心軸とが精度よく合ったためであると考えられる。
また、端面受け部の幅L3を0.5mm以上としたサンプル(サンプル1〜11,13〜16)は、軸線方向に沿った端子電極の位置ずれが生じにくいことが分かった。これは、端面受け部の面積が十分に大きなものとされ、端面受け部に対して頭部の先端側端面がより確実に接触したことで、前記先端側端面の一部が端面受け部に接触せず、頭部が端面受け部よりも先端側に入り込んでしまうといった事態が防止されたためであると考えられる。
さらに、幅L3を2.0mm以下とすることで、絶縁碍子(特に外周部)の欠けを抑制できることが分かった。これは、幅L3の過大を抑制したことで、外周部の厚さが十分に確保されたことによると考えられる。
加えて、外周部に縮径部を設けたサンプル(サンプル15)は、耐衝撃性試験後の強度がより一層向上することが分かった。これは、端子電極の頭部が縮径部に接触することで、軸線と端子電極の中心軸とをより精度よく合わせることができ、ひいては端子電極の外周面と絶縁碍子の内周面との間隔が、周方向において略同一となったためであると考えられる。
また、頭部に拡径部を設けたサンプル(サンプル16)は、後端側胴部の強度低下を一層効果的に抑制できることが明らかとなった。これは、軸線と端子電極の中心軸とをより一層精度よく合わせることができたためであると考えられる。
上記試験の結果より、後端側胴部の最大外径が9.5mm以下とされ、振動に伴う後端側胴部の折損や強度低下が特に懸念される点火プラグにおいては、後端側胴部の折損等をより確実に防止すべく、頭部の外周に外周部を設けることが好ましいといえる。
また、後端側胴部の折損等を一層効果的に防止するためには、距離L1を0.5mm以上としたり、L1/L2≧1/3を満たすように構成したり、脚部挿通部と端面受け部との間に湾曲部を設けるとともに、湾曲部の曲率半径R1を0.1mm以上としたりすることがより好ましいといえる。
加えて、長さL2が3.5mm以上とされ、後端側胴部の強度低下等がより懸念される点火プラグにおいて、後端側胴部の強度低下等を効果的に防止するためには、距離L1を0.8mm以上とすることがより好ましいといえる。
さらに、後端側胴部における折損等をより一層確実に防止するためには、外周部に縮径部を設けたり、頭部に拡径部を設けたりすることが一層好ましいといえる。
加えて、軸線方向における端子電極の位置ずれを抑制するという点では、端面受け部の幅L3を0.5mm以上とすることが好ましいといえる。一方で、外周部の欠損を防止するためには、端面受け部の幅L3を2.0mm以下とすることが好ましいといえる。
次に、後端側胴部に溝部を設けることなく、後端側胴部の外周面が軸線と平行に延びるように構成した点火プラグのサンプル(サンプル21)と、後端側胴部に複数の溝部を設けるとともに、端面受け部を基準とし、軸線方向先端側をプラス、軸線方向後端側をマイナスとして、端面受け部から溝部の底部までの軸線に沿った距離L4(mm)を種々変更した点火プラグのサンプル(サンプル22〜28)とについて、フラッシュオーバー電圧測定試験と上述の強度測定試験とを行った。
フラッシュオーバー電圧測定試験の概要は次の通りである。すなわち、火花放電間隙において放電が生じない状態とした上で(例えば、接地電極を取り除いたり、接地電極及び中心電極の先端部を絶縁油に浸漬したりした上で)、頭部に対する印加電圧を徐々に増大させていき、頭部と主体金具との間で後端側胴部の外周面を這った異常放電(フラッシュオーバー)が発生した際の電圧(フラッシュオーバー電圧)を測定した。尚、要求電圧の増大に応えつつ、正常な火花放電をより確実に生じさせるという観点から、フラッシュオーバー電圧は大きいほど好ましい。表2に、各サンプルにおけるフラッシュオーバー電圧、及び、強度測定試験の試験結果を示す。
表2に示すように、溝部を設けたサンプル(サンプル22〜28)は、溝部を設けなかったサンプル(サンプル21)と比較して、フラッシュオーバー電圧が増大していたが、距離L4の絶対値を0.5mm未満とした場合には、後端側胴部の強度がやや低下しやすくなることが分かった。これは、外周部に対する頭部の接触に伴い、外周部の根元側で発生した応力が、後端側胴部のうち比較的薄肉の部位(溝部の底部)に対して加わりやすくなったためであると考えられる。
これに対して、距離L4の絶対値を0.5mm以上としたサンプル(サンプル22〜24,27,28)は、振動に伴う後端側胴部の強度低下が効果的に抑制されることが確認された。
上記試験の試験結果より、後端側胴部の折損等をより一層確実に防止すべく、後端側胴部に溝部を設けた場合においては、端面受け部から溝部の底部までの軸線に沿った距離L4を0.5mm以上とすることが好ましいといえる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態において、頭部6Bは軸線CL1方向に沿って略一定の外径を有するものとされているが、頭部6Bの形状はこれに限定されるものではない。従って、例えば、頭部6Bの先端側外周に、径方向外側に突出する鍔部を設け、当該鍔部の先端側端面が絶縁碍子2の端面受け部32に接触するように構成してもよい。尚、この場合、材料コストや外周部33の強度などの面を考慮して、外周部33の後端から端面受け部32までの距離L1を、前記鍔部の軸線CL1方向に沿った厚さ以下とすることが好ましい。
(b)上記実施形態において、端面受け部32は、軸線CL1を含む断面において、自身の外形線が軸線CL1と直交する方向に延びるように構成されているが、図11に示すように、軸線CL1を含む断面において、端面受け部36の外形線が軸線CL1と直交する方向に対して傾斜するように構成してもよい。この場合には、軸線CL1と端子電極6の中心軸とをさらに精度よく合わせることができる。
(c)上記実施形態では、主体金具3の先端部26に、接地電極27が接合される場合について具体化しているが、主体金具の一部(又は、主体金具に予め溶接してある先端金具の一部)を削り出すようにして接地電極を形成する場合についても適用可能である(例えば、特開2006−236906号公報等)。
(d)上記実施形態では、工具係合部19は断面六角形状とされているが、工具係合部19の形状に関しては、このような形状に限定されるものではない。例えば、Bi−HEX(変形12角)形状〔ISO22977:2005(E)〕等とされていてもよい。
1…点火プラグ
2…絶縁碍子(絶縁体)
3…主体金具
4…軸孔
6…端子電極
6A…脚部
6B…頭部
6E…拡径部
10…後端側胴部
31…溝部
31A…底部
32…端面受け部
33…外周部
33A,33B,33C…縮径部
34…脚部挿通部
35…湾曲部
CL1…軸線
本発明は、内燃機関等に使用される点火プラグに関する。
内燃機関等の燃焼装置に使用されるスパークプラグは、例えば、軸孔を有する筒状の絶縁体と、軸孔の先端側に挿設される中心電極と、軸孔の後端側に挿設される端子電極と、絶縁体の外周に設けられる筒状の主体金具とを備えている。また、端子電極は、絶縁体の後端から露出し、電力供給用のプラグキャップ等が取付けられる頭部と、前記軸孔に挿通され、先端部がガラスシール層等により絶縁体に固定される棒状の脚部とを備えている。さらに、絶縁体の後端部には、主体金具の後端から露出し、頭部と主体金具との間の絶縁性を確保する後端側胴部が設けられている。
加えて、一般に絶縁体は、次のようにして製造される。すなわち、アルミナ等を含む原料粉末を圧縮成形し、前記軸孔となる穴部を有してなる成形体を得る。次いで、穴部に支持ピンを挿通した上で、研削用の回転ローラを回転させつつ、前記成形体の外周面に接触させる。そして、回転ローラにより成形体が研削されることで、絶縁体と略同一の形状を有する絶縁体中間体が形成され、さらに絶縁体中間体が焼成されることで絶縁体が得られる(例えば、特許文献1等参照)。
ところで、内燃機関等の動作に伴い、絶縁体に固定された脚部の先端部を基点として端子電極の頭部が振れ動くことで、端子電極の脚部が後端側胴部の内周に衝突してしまうことがある。端子電極が後端側胴部に衝突してしまうと、後端側胴部に折損が生じてしまったり、折損にまでは至らなくても、後端側胴部に微小なひび割れ(クラック)が生じ、後端側胴部の強度が低下してしまったりするおそれがある。ここで、後端側胴部の折損防止や強度維持を図るという点では、後端側胴部の肉厚を大きくし、その強度向上を図ることが効果的ではあるが、近年では、スパークプラグの小径化の要請があり、絶縁体の小径化が要求されている。そこで、絶縁体の小径化を図りつつ、後端側胴部の折損防止等を図るために、軸孔の内径を比較的小さくすることで、後端側胴部の肉厚(断面係数)を大きくすることが考えられる(例えば、特許文献2等参照)。
特開2006−210142号公報
特開2008−100250号公報
しかしながら、軸孔の内径を小径とする場合には、前記穴部に挿通される支持ピンも小径とする必要が生じるが、支持ピンを小径とすると、支持ピンの強度低下を招いてしまう。そのため、成形体の研削時に回転ローラから加えられる負荷により、支持ピンが曲がってしまい、ひいては研削後における絶縁体中間体の寸法にバラツキが生じてしまうおそれがある。従って、この点を考慮すると、軸孔の内径をある程度の大きさ以上確保する必要があり、比較的小径の絶縁体では、肉厚の増大による後端側胴部の折損防止や強度維持にも限度がある。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、絶縁体の小径化を図りつつ、後端側胴部における肉厚の増大によることなく後端側胴部の折損や強度低下を抑制することができる点火プラグを提供することにある。
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
構成1.本構成の点火プラグは、軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
前記軸孔の後端側に挿通される脚部、及び、前記脚部の後端側に形成され、自身の外径が前記脚部の外径よりも大きい頭部を有する端子電極と
を備える点火プラグであって、
前記絶縁体には、前記主体金具の後端から露出する後端側胴部が設けられ、当該後端側胴部の最大外径が9.5mm以下であり、
前記絶縁体は、
前記絶縁体の後端よりも前記軸線方向先端側に位置し、前記頭部の先端側端面と接触する端面受け部と、
前記頭部の少なくとも先端部が挿通され、前記頭部の外周に位置する外周部とを有し、
前記軸線に沿った前記外周部の後端から前記端面受け部までの距離をL1(mm)とし 、前記軸線に沿った前記頭部の長さをL2(mm)としたとき、L2≦3.5、及び、L 1≧0.8を満たすことを特徴とする。
上記構成1によれば、後端側胴部の最大外径が9.5mm以下とされているため、振動に伴う後端側胴部における折損や強度低下が懸念される。
この点、上記構成1によれば、絶縁体には、端子電極の頭部のうち少なくとも先端部が挿通され、頭部の外周に位置する外周部が設けられている。従って、内燃機関等の動作に伴い点火プラグに振動が加えられた際に、外径ひいては重量が比較的大きく、かつ、端子電極の先端部(振動の基点)から最も離間した位置に存在する頭部の振動が、外周部により規制される形となる(すなわち、振動に伴い大きなエネルギーが生じやすい頭部の振動が規制される)。そのため、頭部の振幅が小さくなり、頭部にて生じるエネルギーを小さくすることができる。これにより、頭部にて生じるエネルギーにより、端子電極(脚部)から後端側胴部に加えられる力を低減させることができる。その結果、後端側胴部の肉厚を増大させることなく、端子電極の衝突に伴う後端側胴部の折損や強度低下をより確実に防止することができる。
また、近年では、良好な着火性を確保すべく、点火プラグ(端子電極)へと印加される
電圧がより大きなものとされており、頭部及び主体金具間における後端側胴部の外周面を
這った異常放電(いわゆるフラッシュオーバー)の発生がより懸念される。フラッシュオ
ーバーの発生を抑制するという点では、軸線に沿った後端側胴部の長さを大きくすること
が有効であるが、規格等により点火プラグの全長を変更することはできないため、後端側
胴部を長くした場合には、軸線に沿った頭部の長さを小さくせざるを得ない。しかしなが
ら、頭部の長さを小さくした場合には、電力供給用のプラグキャップ等と端子電極とを接
続した際に、頭部の外周に嵌合される嵌合部材と頭部との接触面積が小さくなる。その結
果、内燃機関の動作等に伴い端子電極へと加わる振動がより大きなものとなり、後端側胴
部の折損や強度低下がより懸念される。すなわち、頭部の長さが小さいほど、後端側胴部
の折損等がより生じやすい。尚、嵌合部材に代えて、例えば、ばねによりプラグキャップ
等と端子電極とを電気的に接続する手法もあるが、この場合においても、同様に、頭部の
長さが小さいほど後端側胴部の折損等がより生じやすくなる。
この点、上記構成1によれば、頭部の長さL2が3.5mm以下とされているため、フ
ラッシュオーバーの発生抑制を図ることができる一方で、後端側胴部の折損等が懸念され
る。しかしながら、上記構成1によれば、距離L1が0.8mm以上とされているため、
外周部により頭部の振動を一層確実に規制することができる。そのため、後端側胴部の折
損等がより懸念される場合であっても、後端側胴部の折損等を非常に効果的に防止するこ
とができる。
構成2.本構成の点火プラグは、上記構成1において、前記軸線に沿った前記外周部の後端から前記端面受け部までの距離をL1(mm)としたとき、L1≧0.5を満たすことを特徴とする。
尚、端面受け部が軸線と直交する方向に対して傾斜している場合、「距離L1」とあるのは、外周部の後端から端面受け部の最後端までの軸線に沿った距離をいう。
上記構成2によれば、外周部により頭部の振動を効果的に規制することができる。その結果、後端側胴部の折損や強度低下を一層確実に防止することができる。
構成3.本構成の点火プラグは、上記構成1又は2において、前記軸線に沿った前記外周部の後端から前記端面受け部までの距離をL1(mm)とし、前記軸線に沿った前記頭部の長さをL2(mm)としたとき、L1/L2≧1/3を満たすことを特徴とする。
尚、頭部の先端側端面が、軸線と直交する方向に対して傾斜している場合、「長さL2」とあるのは、前記先端側端面のうち最も後端側に位置する部位から頭部の後端までの軸線に沿った長さをいう。
上記構成3によれば、頭部のうちより軸線方向後端側に位置する部位(振動の基点からより離間する部位)の振動が外周部により規制されることとなる。従って、頭部の振幅をより一層小さなものとすることができ、後端側胴部の折損等をより効果的に防止することができる。
構成4.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至3のいずれかにおいて、前記絶縁体には、前記脚部が挿通される脚部挿通部が形成されており、
前記絶縁体のうち前記脚部挿通部と前記端面受け部との間には、前記軸線側に向けて凸の湾曲状をなす湾曲部が設けられ、
前記軸線を含む断面において、前記湾曲部の外形線の曲率半径をR1(mm)としたとき、R1≧0.1を満たすことを特徴とする。
尚、湾曲部の外形線の曲率半径が一定でない場合、「曲率半径R1」とあるのは、軸線を含む断面において、湾曲部の外形線のうち軸線方向最先端に位置する点と、前記外形線のうち軸線方向最後端に位置する点と、前記外形線上における前記両点の中点との3点を通る仮想円の曲率半径をいう。
上記構成4によれば、脚部挿通部と端面受け部との間には、軸線側に向けて凸の湾曲状をなす湾曲部が設けられている。従って、絶縁体に対する端子電極の挿入時に、湾曲部により脚部がガイドされることとなり、軸線と端子電極の中心軸とを精度よく合わせることができる。そのため、外周部と頭部との間の間隔を周方向において略均等とすることができる。これにより、端子電極が周方向においてどの方向に振動した場合でも、頭部の振幅を比較的小さな範囲内に抑えることができ、その結果、後端側胴部の折損等をより一層確実に防止することができる。
また、周方向の一部において、脚部挿通部と脚部との間の間隔が小さくなっている場合には、振動に伴い前記間隔の小さい箇所において、脚部が絶縁体に接触しやすくなってしまうが、上記構成4によれば、脚部挿通部と脚部との間隔を周方向において略均等にすることができる。そのため、絶縁体に対する脚部の接触を抑制することができ、後端側胴部における折損等の防止効果をさらに向上させることができる。
尚、曲率半径R1を過度に大きくしてしまうと、頭部の先端側端面が湾曲部に接触してしまい、軸線方向における頭部の位置にずれが生じてしまうおそれがある。従って、頭部の位置ずれを抑制するという点では、曲率半径R1を3.0mm以下とすることが好ましい。
構成5.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至4いずれかにおいて、前記軸線と直交する方向に沿った前記端面受け部の幅をL3(mm)としたとき、0.5≦L3≦2.0を満たすことを特徴とする。
尚、「幅L3」とあるのは、端面受け部の最内周部における内径と端面受け部の最外周部における内径との径差の半分ということができる。
上記構成5よれば、幅L3が0.5mm以上とされているので、端面受け部の面積を十分に大きく確保できる。従って、端面受け部に対して頭部の先端側端面がより確実に接触することとなり、先端側端面の一部が端面受け部に接触せず、頭部が端面受け部よりも先端側に入り込んでしまうといった事態を防止することができる。その結果、頭部の位置ずれをより確実に防止することができる。
加えて、上記構成5よれば、幅L3が2.0mm以下とされているため、端面受け部の外周側に位置する外周部の肉厚を十分に確保することができる。そのため、頭部の接触に伴う外周部の欠損等を効果的に防止することができる。
構成6.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至5のいずれかにおいて、前記軸線を含む断面において、前記端面受け部の外形線は前記軸線と直交する方向に沿って延びることを特徴とする。
尚、「端面受け部の外形線は軸線と直交する方向に沿って延びる」とあるのは、端面受け部の外形線が、厳密に軸線と直交する方向に沿って延びる場合のみならず、端面受け部の外形線が、軸線と直交する方向に対して若干(例えば、5°以下)傾斜している場合も含む。
上記構成6によれば、端子電極の中心軸が軸線に対して傾いてしまうといった事態が生じにくくなる。従って、頭部の位置をより適切に合わせることができる。
構成7.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至6のいずれかにおいて、前記軸線と直交する方向に沿った、前記頭部のうち前記外周部に挿通された部位の外周面と前記外周部の内周面との間の最短距離が、前記軸線と直交する方向に沿った、前記脚部の外周面と前記軸孔の内周面との間の最短距離よりも小さいことを特徴とする。
上記構成7によれば、内燃機関等の動作時において、絶縁体に対する脚部の接触が抑制され、外周部により頭部の振動がより一層確実に規制されることとなる。その結果、上記構成1等の作用効果がより確実に発揮されることとなる。
構成8.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至7のいずれかにおいて、前記外周部には、前記軸線方向先端側に向けて内径が縮径する縮径部が設けられることを特徴とする。
上記構成8によれば、外周部には、軸線方向先端側に向けて内径が縮径する縮径部が設けられている。そのため、軸孔に対する端子電極の挿入時等において、頭部が縮径部に接触することで、軸線に対して端子電極の中心軸を一層精度よく合わせることができる。従って、端子電極の外周面と絶縁体の内周面との間隔を、周方向において略同等とすることができる。これにより、頭部の振幅をより小さな範囲内に抑えることができるとともに、後端側胴部に対する脚部の接触を抑制することができ、その結果、後端側胴部における折損等の防止効果を一層向上させることができる。
構成9.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至8のいずれかにおいて、前記頭部のうち前記外周部に挿通される部位には、前記軸線方向後端側に向けて外径が拡径する拡径部が設けられることを特徴とする。
上記構成9によれば、頭部のうち外周部に挿通される部位には、軸線方向後端側に向けて拡径する拡径部が設けられている。従って、軸孔に対する端子電極の挿入時等において、軸線に対して端子電極の中心軸をより一層精度よく合わせることができる。その結果、後端側胴部における折損等の防止効果をさらに高めることができる。
構成10.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至9のいずれかにおいて、前記後端側胴部の外周には、前記後端側胴部の周方向に沿って延びる環状の溝部が設けられており、
前記端面受け部から前記溝部の底部までの前記軸線に沿った距離をL4(mm)としたとき、L4≧0.5を満たすことを特徴とする。
尚、端面受け部が軸線と直交する方向に対して傾斜している場合、「距離L4」とあるのは、端面受け部の後端から前記溝部の底部までの軸線に沿った距離をいう。
上記構成10によれば、後端側胴部に溝部が設けられているため、後端側胴部の外周面を這った頭部から主体金具の後端までの距離をより大きくすることができる。従って、頭部及び主体金具間における後端側胴部の外周面を這った異常放電(フラッシュオーバー)の発生を抑制することができる。
一方で、後端側胴部のうち溝部が形成された部位は、比較的薄肉となり、その他の部位と比べて強度に劣ることとなる。従って、外周部に対する頭部の接触に伴い、外周部の根元側(外周部と端面受け部との境界部分)で発生した応力が、前記薄肉部位に加わってしまうと、前記薄肉部位において割れ等の破損が生じてしまうおそれがある。
この点を鑑みて、上記構成10によれば、端面受け部から溝部の底部(すなわち、後端側胴部のうち肉厚が薄い部位)までの軸線に沿った距離L4が0.5mm以上とされている。すなわち、応力の発生箇所から薄肉部位までの距離が十分に大きなものとされている。従って、前記薄肉部位に対して応力を加わりにくくすることができ、薄肉部位における破損をより確実に防止することができる。
構成11.本構成の点火プラグは、軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
前記軸孔の後端側に挿通される脚部、及び、前記脚部の後端側に形成され、自身の外径
が前記脚部の外径よりも大きい頭部を有する端子電極と
を備える点火プラグであって、
前記絶縁体には、前記主体金具の後端から露出する後端側胴部が設けられ、当該後端側
胴部の最大外径が9.5mm以下であり、
前記絶縁体は、
前記絶縁体の後端よりも前記軸線方向先端側に位置し、前記頭部の先端側端面と接触す
る端面受け部と、
前記頭部の少なくとも先端部が挿通され、前記頭部の外周に位置する外周部とを有し、
前記絶縁体には、前記脚部が挿通される脚部挿通部が形成されており、
前記絶縁体のうち前記脚部挿通部と前記端面受け部との間には、前記軸線側に向けて凸
の湾曲状をなす湾曲部が設けられ、
前記軸線を含む断面において、前記湾曲部の外形線の曲率半径をR1(mm)としたと
き、R1≧0.1を満たすことを特徴とする。
構成12.本構成の点火プラグは、軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
前記軸孔の後端側に挿通される脚部、及び、前記脚部の後端側に形成され、自身の外径
が前記脚部の外径よりも大きい頭部を有する端子電極と
を備える点火プラグであって、
前記絶縁体には、前記主体金具の後端から露出する後端側胴部が設けられ、当該後端側
胴部の最大外径が9.5mm以下であり、
前記絶縁体は、
前記絶縁体の後端よりも前記軸線方向先端側に位置し、前記頭部の先端側端面と接触す
る端面受け部と、
前記頭部の少なくとも先端部が挿通され、前記頭部の外周に位置する外周部とを有し、
前記後端側胴部の外周には、前記後端側胴部の周方向に沿って延びる環状の溝部が設け
られており、
前記端面受け部から前記溝部の底部までの前記軸線に沿った距離をL4(mm)とした
とき、L4≧0.5を満たすことを特徴とする。
点火プラグの構成を示す一部破断正面図である。
点火プラグの後端部の構成を示す拡大断面図である。
(a),(b)は、外周部の別例を示す拡大断面図である。
(a),(b)は、頭部の別例を示す拡大断面図である。
湾曲部の曲率半径を説明するための部分拡大断面図である。
絶縁碍子の製造工程の一過程を示す一部破断正面図である。
成形体の構成等を示す一部破断正面図である。
成形体に挿入された支持ピン等を示す一部破断正面図である。
成形体の研削工程を示す一部破断正面図である。
(a)〜(c)は、絶縁碍子に対する端子電極等の封着工程を示す断面図である。
別の実施形態における端面受け部の構成を示す拡大断面図である。
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、点火プラグ1を示す一部破断正面図である。尚、図1では、点火プラグ1の軸線CL1方向を図面における上下方向とし、下側を点火プラグ1の先端側、上側を後端側として説明する。
点火プラグ1は、筒状をなす絶縁体としての絶縁碍子2、これを保持する筒状の主体金具3などから構成されるものである。
絶縁碍子2は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成されており、その外形部において、後端側に形成された後端側胴部10と、当該後端側胴部10よりも先端側において径方向外向きに突出形成された大径部11と、当該大径部11よりも先端側においてこれよりも細径に形成された中胴部12と、当該中胴部12よりも先端側においてこれよりも細径に形成された脚長部13とを備えている。絶縁碍子2のうち、大径部11、中胴部12、及び、大部分の脚長部13は、主体金具3の内部に収容されている一方で、後端側胴部10は、主体金具3の後端から露出している。また、中胴部12と脚長部13との連接部には、先端側に向けて先細るテーパ状の段部14が形成されており、当該段部14にて絶縁碍子2が主体金具3に係止されている。
さらに、後端側胴部10には、その周方向に沿って延びる環状の溝部31が軸線CL1方向に沿って間欠的に複数設けられている。加えて、本実施形態においては、軸線CL1に沿った絶縁碍子2の後端から主体金具3の後端までの距離Xが比較的大きなもの(例えば、30mm以上)とされている。溝部31が設けられるとともに、前記距離Xが比較的大きなものとされることで、後述する端子電極6の頭部6Bと主体金具3の後端との間の絶縁性を高めることができ、ひいては頭部6Bと主体金具3との間における後端側胴部10の外周面を這った異常放電(フラッシュオーバー)の発生を効果的に抑制できるようになっている。
加えて、スパークプラグ1の小径化を図るべく、絶縁碍子2は比較的小径とされており、後端側胴部10の最大外径Dが9.5mm以下とされている。一方で、後端側胴部10の内周側における軸孔4の最小内径はある程度の大きさ(例えば、3mm以上)確保されており、結果として、後端側胴部10の厚さは比較的小さなものとなっている。
さらに、絶縁碍子2には、軸線CL1に沿って軸孔4が貫通形成されており、軸孔4の先端側には中心電極5が挿入、固定されている。中心電極5は、熱伝導性に優れる金属〔例えば、銅や銅合金、純ニッケル(Ni)〕からなる内層5Aと、Niを主成分とするNi合金からなる外層5Bとにより構成されている。さらに、中心電極5は、全体として棒状(円柱状)をなし、その先端部が絶縁碍子2の先端から突出している。加えて、中心電極5の先端部には、耐消耗性に優れる金属(例えば、イリジウム合金や白金合金等)からなるチップ28が設けられている。
また、軸孔4の後端側には、断面円形状をなす中実の端子電極6が挿入、固定されている。端子電極6は、低炭素鋼等により形成されており、脚部6Aと頭部6Bとを備えている。
脚部6Aは、軸線CL1方向に沿って延びる棒状をなし、その全体が軸孔4に挿通されている。また、脚部6Aは、上述の通り、前記距離Xが大きなものとされることに伴い、その軸線CL1方向に沿った長さが比較的大きなもの(例えば、40mm以上50mm以下)とされている。
頭部6Bは、円柱状をなすとともに、脚部6Aの後端側に形成され、自身の外径が脚部6Aの外径よりも大きなものとされている。さらに、頭部6Bの軸線CL1に沿った長さは、比較的小さなもの(例えば、3mm以上5mm以下)とされている。尚、本実施形態において、頭部6Bは、軸線CL1方向に沿って略一定の外径を有し、その一部は絶縁碍子2の後端から軸線CL1方向後端側に突出している。
加えて、軸孔4の中心電極5と端子電極6との間には、円柱状をなす導電性の抵抗体7が配設されている。また、抵抗体7の両端部には、導電性のガラスシール層8,9が設けられており、ガラスシール層8により、中心電極5が絶縁碍子2に固定され、ガラスシール層9により、端子電極6の先端部が絶縁碍子2に固定されている。
さらに、主体金具3は、低炭素鋼等の金属により筒状に形成されており、その外周面には点火プラグ1を燃焼装置(例えば、内燃機関や燃料電池改質器等)の取付孔に取付けるためのねじ部(雄ねじ部)15が形成されている。また、ねじ部15の後端側の外周面には径方向外側に突出する座部16が形成されており、ねじ部15後端のねじ首17にはリング状のガスケット18が嵌め込まれている。さらに、主体金具3の後端側には、主体金具3を燃焼装置に取付ける際にレンチ等の工具を係合させるための断面六角形状の工具係合部19が設けられるとともに、後端部において絶縁碍子2を保持するための加締め部20が設けられている。
また、主体金具3の内周面には、絶縁碍子2を係止するためのテーパ状の段部21が設けられている。そして、絶縁碍子2は、主体金具3に対してその後端側から先端側に向かって挿入され、自身の段部14が主体金具3の段部21に係止された状態で、主体金具3の後端側開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって主体金具3に固定されている。尚、絶縁碍子2の段部14及び主体金具3の段部21間には、円環状の板パッキン22が介在されている。これにより、燃焼室内の気密性を保持し、燃焼室内に晒される絶縁碍子2の脚長部13と主体金具3の内周面との隙間に入り込む燃料ガスが外部に漏れないようになっている。
さらに、加締めによる密閉をより完全なものとするため、主体金具3の後端側においては、主体金具3と絶縁碍子2との間に環状のリング部材23,24が介在され、リング部材23,24間にはタルク(滑石)25の粉末が充填されている。すなわち、主体金具3は、板パッキン22、リング部材23,24及びタルク25を介して絶縁碍子2を保持している。
また、主体金具3の先端部26には、自身の略中間部分が曲げ返されて、先端部側面が中心電極5の先端部(チップ28)と対向する接地電極27が接合されている。接地電極27は、Ni合金〔例えば、インコネル600やインコネル601(いずれも登録商標)〕により形成されており、接地電極27の先端部と中心電極5の先端部(チップ28)の間には、火花放電間隙29が形成されている。そして、当該火花放電間隙29において軸線CL1にほぼ沿った方向で火花放電が行われるようになっている。
次いで、絶縁碍子2のうち端子電極6が挿通される部位の構成について説明する。
図2に示すように、絶縁碍子2は、その後端よりも軸線CL1方向先端側に位置し、前記頭部6Bの先端側端面に接触する端面受け部32と、頭部6Bの少なくとも先端側が挿通され、頭部6Bの外周に位置する外周部33とを備えている。また、端面受け部32よりも軸線CL1方向先端側には、前記脚部6Aが挿通される脚部挿通部34が形成されている。
端面受け部32は、軸線CL1を含む断面において、自身の外形線が軸線CL1と直交する方向に延びており、その最外周部を除いた部位が頭部6Bの先端側端面に接触している。また、軸線CL1と直交する方向に沿った端面受け部32の幅をL3(mm)としたとき、0.5≦L3≦2.0を満たすように構成されている。すなわち、頭部6Bを受ける面の面積が過度に小さなものとされることなく、一方で、端面受け部32の外周から軸線CL1方向後端側に延びる前記外周部33の肉厚が十分に確保されている。
また、端面受け部32から溝部31の底部31Aまでの軸線CL1に沿った距離をL4(mm)としたとき、L4≧0.5を満たすように構成されている。すなわち、端面受け部32(外周部33の根元)に対して、溝部31の底部31A(つまり、後端側胴部10のうち肉厚が薄い部分)が軸線CL1方向に沿って0.5mm以上ずれるように、溝部31と端面受け部32との相対位置関係が設定されている。
外周部33は、円環状をなし、自身の内径が軸線CL1に沿って略一定となるように構成されている。また、外周部33は、軸線CL1と直交する方向に沿った自身の内周面と頭部6Bの外周面との間の間隔が所定値(例えば、1mm)以下とされている。さらに、軸線CL1に沿った外周部33の後端から端面受け部32までの距離をL1(mm)としたとき、L1≧0.5を満たすように構成されている。加えて、軸線CL1に沿った頭部6Bの長さをL2(mm)としたとき、L1/L2≧1/3を満たすように構成されており、頭部6Bの長さL2に対して、外周部33の長さが十分に大きなものとなるように構成されている。尚、L2≦3.5を満たす場合には、L1≧0.8を満たすことが好ましい。また、本実施形態においては、L1/L2≦1を満たすように、距離L1が設定されている。
尚、図3(a),(b)に示すように、外周部33の内径を軸線CL1方向に沿って略一定とすることなく、外周部33に、軸線CL1方向先端側に向けて内径の縮径する縮径部33A,33Bを設けることとしてもよい。また、縮径部33A,33Bを設けるにあたっては、図3(a)に示すように、外周部33の一部に縮径部33Aを設けることとしてもよいし、図3(b)に示すように、外周部33の全域に縮径部33Bを設けることとしてもよい。尚、図3(b)のように、外周部33の内周後端に縮径部33Bを設けた場合には、絶縁碍子2に対して端子電極6を挿入する際に、端子電極6が軸孔4に対して多少ずれた場合であっても、端子電極6は縮径部33Bを滑るようにして軸孔4内へと案内される。そのため、端子電極6の先端部が絶縁碍子2の後端に接触することで、絶縁碍子2に大きな圧力が加わってしまい、絶縁碍子2に欠けが生じてしまうといった事態がより確実に防止されることとなる。
また、図4(a),(b)に示すように、頭部6Bのうち少なくとも外周部33に挿通される部位に、軸線CL1方向後端側に向けて外径が拡径する拡径部6Eを設けることとしてもよい。尚、拡径部6Eを設けるにあたって、図4(a)に示すように、外周部33の内径を軸線CL1方向に沿って略一定としてもよいし、図4(b)に示すように、外周部33に軸線CL1方向先端側に向けて縮径する縮径部33Cを設けてもよい。
図2に戻り、脚部挿通部34は、軸線CL1に沿って略一定の内径を有しており、自身の内周面と前記脚部6Aの外周面との間には隙間が形成されている。ここで、軸線CL1と直交する方向に沿った、頭部6Bのうち外周部33に挿通された部位の外周面と外周部33の内周面との間の最短距離は、軸線CL1と直交する方向に沿った、脚部6Aの外周面と脚部挿通部34(軸孔4)の内周面との間の最短距離よりも小さくなるように設定されている。このため、内燃機関等の動作に伴う振動により端子電極6が振れ動いた際には、脚部6Aよりも頭部6Bの方が絶縁碍子2に対して接触しやすくなっている。
加えて、本実施形態においては、端面受け部32と脚部挿通部34との間に、軸線CL1側に向けて凸の湾曲状をなす湾曲部35が設けられている。そして、図5に示すように、軸線CL1を含む断面において、湾曲部35の外形線の曲率半径をR1(mm)としたとき、R1≧0.1を満たすように構成されている。尚、曲率半径R1を過度に大きくしてしまうと、頭部6Bの先端側端面が湾曲部35に接触してしまい、軸線CL1に沿った端子電極6(頭部6B)の位置にずれが生じてしまうおそれがある。従って、R1≦3.0を満たすように構成することが好ましい。
次に、上記のように構成されてなる点火プラグ1の製造方法について説明する。
まず、主体金具3を予め加工しておく。すなわち、円柱状の金属素材(例えばS17CやS25Cといった鉄系素材やステンレス素材)に対して冷間鍛造加工等を施すことにより貫通孔を形成し、概形を製造する。その後、切削加工を施すことで外形を整え、主体金具中間体を得る。
続いて、主体金具中間体の先端面に、Ni合金等からなる接地電極27が抵抗溶接される。当該溶接に際してはいわゆる「ダレ」が生じるので、その「ダレ」を除去した後、主体金具中間体の所定部位にねじ部15が転造によって形成される。これにより、接地電極27の溶接された主体金具3が得られる。また、接地電極27の溶接された主体金具3には、亜鉛メッキ或いはニッケルメッキが施される。尚、耐食性向上を図るべく、その表面に、さらにクロメート処理を施してもよい。
さらに、前記主体金具3とは別に、中心電極5を製造しておく。すなわち、中央部に放熱性向上を図るための銅合金等を配置したNi合金を鍛造加工して中心電極5を作製する。次に、中心電極5の先端面に対して、レーザー溶接等によりチップ28を接合する。
また、低炭素鋼等の導電性金属に鍛造加工や切削加工等を施すことで端子電極6を製造しておく。
次に、絶縁碍子2を製造する。まず、図6に示すように、アルミナ粉末を主成分とする原料粉末PMを所定のラバープレス成形機41のキャビティ42に充填するとともに、キャビティ42に棒状のプレスピン43を挿入する。尚、プレスピン43としては、前記端面受け部32や外周部33、湾曲部35等に対応する外周形状を有するものが用いられている。
プレスピン43の挿入後、キャビティ42の上側開口部を閉鎖し、キャビティ42を密封状態とした上で、ラバープレス成形機41から原料粉末PMに対して径方向に沿った力を加え、原料粉末PMを圧縮・成形する。次いで、図7に示すように、原料粉末PMが圧縮・成形されてなる成形体CP1をラバープレス成形機41から取外すとともに、成形体CP1からプレスピン43を抜き取る。尚、プレスピン43の抜き取りに伴い形成された成形体CP1の穴部HLが、前記軸孔4を構成することなる。
次いで、図8に示すように、得られた成形体CP1の穴部HLに棒状の支持ピン44を挿入する。尚、上述の通り、後端側胴部10の内周側における軸孔4の内径はある程度の大きさ以上とされるため、支持ピン44のうち少なくとも基端側部位の外径は比較的大きなものとなっており、特に、前記外周部33に対応する、支持ピン44の最基端部の外径は非常に大きなものとなっている。従って、後述する研削加工において特に曲がりの懸念される支持ピン44の基端部が、十分な強度を有するものとなっている。
支持ピン44の挿入された成形体CP1は、図9に示すように、絶縁碍子2の外周形状に対応する外周形状を有する研削用回転ローラ45と、断面円形状をなし、前記研削用回転ローラ45から受ける摩擦力に抗して前記成形体CP1を支える押え部材46との間に挟み込まれる。そして、研削用回転ローラ45が回転することで、成形体CP1に研削加工が施される。研削加工により、前記穴部HLが貫通されてなる軸孔4が形成されるとともに、絶縁碍子2と略同一の形状をなす絶縁体中間体が得られる。その後、得られた絶縁体中間体が焼成炉へ投入され、焼成炉内で焼成されることにより絶縁碍子2が得られる。
次に、上記のようにして得られた絶縁碍子2及び中心電極5と、抵抗体7と、端子電極6とが、ガラスシール層8,9によって封着固定される。より詳しくは、まず、図10(a)に示すように、所定の支持部材(図示せず)により絶縁碍子2を支持した上で、軸孔4に中心電極5を挿入する。
そして、図10(b)に示すように、一般的にホウ珪酸ガラスと金属粉末とが混合されて調製された導電性ガラス粉末GP1を軸孔4内に充填し、充填した導電性ガラス粉末GP1を予備圧縮する。次に、導電性物質(例えば、カーボンブラック等)やセラミックス粒子などを含んでなる粉末状の抵抗体組成物RPを軸孔4に充填して同様に予備圧縮をし、さらに、導電性ガラス粉末GP2を充填し、同じく予備圧縮を行う。
次いで、端子電極6を軸孔4へと挿入するとともに、中心電極5側に向けて端子電極6を押圧しつつ、焼成炉内においてガラス軟化点以上の所定の目標温度(例えば、900℃)で加熱する。尚、軸孔4に対する端子電極6の挿入時には、絶縁碍子2の内周に形成された湾曲部35の存在により、端子電極6が容易に挿入されるとともに、端子電極6の中心軸と軸線CL1との間における軸ずれが抑制される。
焼成炉内における加熱により、図10(c)に示すように、積層状態にある抵抗体組成物RP及び導電性ガラス粉末GP1,GP2が加熱・圧縮されて、抵抗体7及びガラスシール層8,9となり、当該ガラスシール層8,9により、絶縁碍子2に対して中心電極5、端子電極6、及び、抵抗体7が封着固定される。尚、焼成炉内における加熱に際して、後端側胴部10の表面に釉薬層を同時に焼成することとしてもよいし、事前に釉薬層を形成することとしてもよい。
その後、上記のようにそれぞれ作製された中心電極5や抵抗体7等を備える絶縁碍子2と、接地電極27を備える主体金具3とが固定される。より詳しくは、主体金具3に絶縁碍子2を挿通した上で、比較的薄肉に形成された主体金具3の後端側の開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって絶縁碍子2と主体金具3とが固定される。
そして最後に、接地電極27を屈曲させるとともに、中心電極5の先端部(チップ28)と接地電極27との間に形成された火花放電間隙29の大きさを調整する加工が実施されることで、上述した点火プラグ1が得られる。
以上詳述したように、本実施形態によれば、絶縁碍子2には、頭部6Bのうち少なくとも先端部が挿通され、頭部6Bの外周に位置する外周部33が設けられている。従って、内燃機関等の振動に伴い点火プラグ1に振動が加えられた際に、外径ひいては重量が比較的大きく、かつ、端子電極6の先端部から最も離間した位置に存在する頭部6Bの振動が、外周部33により規制される形となる。そのため、頭部6Bの振幅が小さくなり、頭部6Bにて生じるエネルギーを小さくすることができる。これにより、頭部6Bにて生じるエネルギーにより、端子電極6(脚部6A)から後端側胴部10に加えられる力を低減させることができる。その結果、後端側胴部10の肉厚を増大させることなく、端子電極6の衝突に伴う後端側胴部10の折損や強度低下をより確実に防止することができる。
尚、本実施形態のように、後端側胴部10の最大外径Dが9.5mm以下とされ、後端側胴部10が比較的薄肉の場合や、脚部6Aの軸線CL1に沿った長さが比較的大きなものとされ、端子電極6の振動時に、頭部6Bにて生じるエネルギーが比較的大きなものとなりやすい場合であっても、上述の構成とすることで、後端側胴部10の折損等をより確実に防止することができる。
また、本実施形態では、距離L1が0.5mm以上とされるとともに、L1/L2≧1/3を満たすように構成されている。従って、外周部33により頭部6Bの振動をより確実に規制することができ、後端側胴部10の折損等を一層確実に防止することができる。
加えて、頭部の長さL2が3.5mm以下とされ、後端側胴部10の折損等がより懸念される場合であっても、距離L1を0.8mm以上とすることで、外周部33により頭部6Bの振動を一層確実に規制することができ、後端側胴部10の折損等を非常に効果的に防止することができる。
さらに、脚部挿通部34と端面受け部32との間には、軸線CL1側に向けて凸の湾曲状をなす湾曲部35が設けられている。従って、絶縁碍子2に対する端子電極6の挿入時に、湾曲部35により脚部6Aがガイドされることとなり、軸線CL1と端子電極6の中心軸とを精度よく合わせることができる。そのため、外周部33と頭部6Bとの間の間隔を周方向において略均等とすることができる。その結果、端子電極6が周方向においてどの方向に振動した場合でも、頭部6Bの振幅を比較的小さな範囲内に抑えることができ、後端側胴部10の折損等をより一層確実に防止することができる。また、脚部挿通部34と脚部6Aとの間の間隔も周方向において略均等にすることができるため、後端側胴部10に対する脚部6Aの接触を抑制することができる。従って、後端側胴部10における折損等の防止効果をさらに向上させることができる。
併せて、端面受け部32の幅L3が0.5mm以上とされているため、端面受け部32に対して頭部6Bの先端側端面をより確実に接触させることができる。その結果、軸線CL1方向における頭部6Bの位置ずれをより確実に防止することができる。
一方で、幅L3が2.0mm以下とされているため、端面受け部32の外周側に位置する外周部33の肉厚を十分に確保することができる。従って、頭部6Bの接触に伴う外周部33の欠損等を効果的に防止することができる。
また、本実施形態では、軸線CL1を含む断面において、端面受け部32の外形線が軸線CL1と直交する方向に延びている。従って、端子電極6の中心軸が軸線CL1に対して傾いてしまうといった事態が生じにくくなり、頭部6Bの位置をより適切に合わせることができる。
さらに、端面受け部32から溝部31の底部31A(後端側胴部10のうち特に薄肉の部位)までの軸線CL1に沿った距離L4が0.5mm以上とされている。従って、外周部33に対する頭部6Bの接触に伴い外周部33の根元側で発生する応力を、前記薄肉部位に対して加わりにくくすることができる。その結果、前記薄肉部位の破損をより確実に防止することができる。
加えて、外周部33に縮径部33A,33Bを設けた場合や、頭部6Bに拡径部6Eを設けた場合には、軸孔4に対する端子電極6の挿入時等に、軸線CL1に対して端子電極6の中心軸を一層精度よく合わせることができる。これにより、端子電極6の外周面と絶縁碍子2の内周面との間隔を、周方向において略同等とすることができる。従って、頭部6Bの振幅をより小さな範囲内に抑えることができるとともに、後端側胴部10に対する脚部6Bの接触を抑制することができる。その結果、後端側胴部10における折損等の防止効果をより一層向上させることができる。
次いで、上記実施形態によって奏される作用効果を確認すべく、後端側胴部の最大外径、外周部の有無、距離L1、長さL2、幅L3、湾曲部の有無、及び、湾曲部の曲率半径R1を種々変更した絶縁碍子のサンプルを有してなる点火プラグを作製し、各点火プラグについて強度測定試験を行った。
強度測定試験の概要は次の通りである。すなわち、点火プラグに対してJIS B8031に基づく耐衝撃性試験〔サンプルを所定の試験機に取付け、毎分400回の割合で10分間に亘って衝撃(振動)を与える試験〕を行った上で、サンプルの後端側胴部に圧力を加え、後端側胴部に割れが生じた際の荷重を強度として測定した。ここで、測定された荷重(強度)が大きいほど、振動に伴う絶縁碍子の強度低下が生じにくく、絶縁碍子(後端側胴部)における割れや折損が生じにくいといえる。
また、上述した後端側胴部の最大外径等を種々変更した絶縁碍子のサンプルを複数作製するとともに、各サンプルについて位置ずれ確認試験を行った。位置ずれ確認試験の概要は次の通りである。すなわち、各サンプルに端子電極を挿設した後、サンプル(絶縁碍子)の後端に対する頭部の位置を確認するとともに、所定の目標範囲から外れた位置に頭部が位置する割合(位置ずれ率)を算出した。そして、外周部を備えず、頭部の先端側端面が絶縁碍子の後端面に接触する点火プラグにおける位置ずれ率を基準として、前記算出された位置ずれ率が前記基準の+10%以下となった場合には、軸線方向における端子電極の位置ずれが生じにくいとして「○」の評価を下すこととした。一方で、前記算出された位置ずれ率が前記基準の+20%以上となった場合には、軸線方向における端子電極の位置ずれがやや生じやすいとして「△」の評価を下すこととした。
さらに、後端側胴部の最大外径等を種々変更した絶縁碍子を有してなる点火プラグについて、欠損確認試験を行った。欠損確認試験の概要は次の通りである。すなわち、点火プラグに対して上述したJIS B8031に規定する耐衝撃性試験を行い、絶縁碍子の後端部(外周部を設けた場合には、外周部)における欠けの有無を確認するとともに、欠けの発生率を算出した。そして、外周部を備えず、頭部の先端側端面が絶縁碍子の後端面に接触する点火プラグに対して、前記耐衝撃性試験を行った場合における欠けの発生率を基準として、前記算出された欠けの発生率が前記基準の+5%以下となった場合には、絶縁碍子の欠損を十分に抑制できるとして「○」の評価を下すことした。一方で、前記算出された欠けの発生率が前記基準の+10%以上となった場合には、絶縁碍子の欠損がやや生じやすいとして「△」の評価を下すこととした。
表1に、各サンプルにおける上記各試験の試験結果をそれぞれ示す。尚、表1におけるサンプルA〜Dは、絶縁碍子に外周部を設けず、頭部の外周側に絶縁碍子が位置しないように構成した。一方で、表1におけるサンプル1〜16は、絶縁碍子に外周部を設け、頭部の外周側に外周部が位置するように構成した。
加えて、サンプル15は、外周部に軸線方向先端側に向けて内径が縮径する縮径部を設け、サンプル16は、外周部に縮径部を設けるとともに、頭部に軸線方向後端側に向けて外径が拡径する拡径部を設けた。
また、曲率半径R1の欄において「−」とあるのは、湾曲部を設けることなく、端面受け部と脚部挿通部とが略直交するように構成したことを意味する。加えて、端子電極の頭部の外径は、それぞれ同一とし、端面受け部の幅L3は、脚部挿通部の内径を調節することで変更した。
表1に示すように、外周部を設けることなく構成したサンプルA〜Dにおいて、後端側胴部の外径を9.5mm超とした場合(サンプルA,B)には、耐衝撃性試験後の強度が4kNを上回り、振動に伴う強度低下が生じにくかった。一方で、後端側胴部の外径を9.5mm以下とした場合(サンプルC,D)には、耐衝撃性試験後の強度が4kN以下となってしまい、振動に伴う後端側胴部の強度低下が極めて生じやすく、後端側胴部の折損等が特に懸念されることが分かった。
これに対して、外周部を設けたサンプル(サンプル1〜16)は、後端側胴部の外径が9.5mm以下であっても、耐衝撃性試験後の強度が4.5kN以上となり、振動に伴う強度低下が生じにくいことが明らかとなった。これは、点火プラグに振動が加えられた際に、頭部の振動が外周部により規制される形となったため、頭部の振幅が小さくなり、その結果、端子電極から後端側胴部に加えられる力が低減し、端子電極の衝突に伴う微小なひび割れ(クラック)が後端側胴部に生じにくくなったことによると考えられる。
さらに、距離L1を0.5mm以上としたサンプル(サンプル3〜16)は、耐衝撃性試験後の強度が5kNを遥かに上回り、耐衝撃性試験後の強度が顕著に向上することが確認された。これは、距離L1を0.5mm以上としたことで、外周部によって頭部の振動がより確実に規制されたことに起因すると考えられる。
また、サンプルC,Dやサンプル1,2における耐衝撃性試験後の強度の比較から、長さL2を3.5mm以下とすることで、後端側胴部の強度低下がより一層生じやすくなることが確認されたが、サンプル4,5の試験結果に示すように、長さL2を3.5mm以下としたときであっても、距離L1を0.8mm以上とすることで、長さL2を3.5mm超としたときと遜色ない強度を維持できることが分かった。
加えて、L1/L2≧1/3を満たすサンプル(サンプル7〜16)は、耐衝撃性試験後の強度が一層向上することが分かった。これは、頭部のうちより後端側に位置する部位(振動の支点からより離間する部位)の振動が外周部により規制されることとなり、頭部の振幅がより一層小さなものとなったためであると考えられる。
併せて、湾曲部を設けたサンプル(サンプル8〜16)のうち、湾曲部の曲率半径R1を0.1mm以上としたもの(サンプル9〜16)は、耐衝撃性試験後における強度が一層向上することが明らかとなった。これは、絶縁碍子に対する端子電極の挿入時に、湾曲部により脚部がガイドされることとなり、軸線と端子電極の中心軸とが精度よく合ったためであると考えられる。
また、端面受け部の幅L3を0.5mm以上としたサンプル(サンプル1〜11,13〜16)は、軸線方向に沿った端子電極の位置ずれが生じにくいことが分かった。これは、端面受け部の面積が十分に大きなものとされ、端面受け部に対して頭部の先端側端面がより確実に接触したことで、前記先端側端面の一部が端面受け部に接触せず、頭部が端面受け部よりも先端側に入り込んでしまうといった事態が防止されたためであると考えられる。
さらに、幅L3を2.0mm以下とすることで、絶縁碍子(特に外周部)の欠けを抑制できることが分かった。これは、幅L3の過大を抑制したことで、外周部の厚さが十分に確保されたことによると考えられる。
加えて、外周部に縮径部を設けたサンプル(サンプル15)は、耐衝撃性試験後の強度がより一層向上することが分かった。これは、端子電極の頭部が縮径部に接触することで、軸線と端子電極の中心軸とをより精度よく合わせることができ、ひいては端子電極の外周面と絶縁碍子の内周面との間隔が、周方向において略同一となったためであると考えられる。
また、頭部に拡径部を設けたサンプル(サンプル16)は、後端側胴部の強度低下を一層効果的に抑制できることが明らかとなった。これは、軸線と端子電極の中心軸とをより一層精度よく合わせることができたためであると考えられる。
上記試験の結果より、後端側胴部の最大外径が9.5mm以下とされ、振動に伴う後端側胴部の折損や強度低下が特に懸念される点火プラグにおいては、後端側胴部の折損等をより確実に防止すべく、頭部の外周に外周部を設けることが好ましいといえる。
また、後端側胴部の折損等を一層効果的に防止するためには、距離L1を0.5mm以上としたり、L1/L2≧1/3を満たすように構成したり、脚部挿通部と端面受け部との間に湾曲部を設けるとともに、湾曲部の曲率半径R1を0.1mm以上としたりすることがより好ましいといえる。
加えて、長さL2が3.5mm以上とされ、後端側胴部の強度低下等がより懸念される点火プラグにおいて、後端側胴部の強度低下等を効果的に防止するためには、距離L1を0.8mm以上とすることがより好ましいといえる。
さらに、後端側胴部における折損等をより一層確実に防止するためには、外周部に縮径部を設けたり、頭部に拡径部を設けたりすることが一層好ましいといえる。
加えて、軸線方向における端子電極の位置ずれを抑制するという点では、端面受け部の幅L3を0.5mm以上とすることが好ましいといえる。一方で、外周部の欠損を防止するためには、端面受け部の幅L3を2.0mm以下とすることが好ましいといえる。
次に、後端側胴部に溝部を設けることなく、後端側胴部の外周面が軸線と平行に延びるように構成した点火プラグのサンプル(サンプル21)と、後端側胴部に複数の溝部を設けるとともに、端面受け部を基準とし、軸線方向先端側をプラス、軸線方向後端側をマイナスとして、端面受け部から溝部の底部までの軸線に沿った距離L4(mm)を種々変更した点火プラグのサンプル(サンプル22〜28)とについて、フラッシュオーバー電圧測定試験と上述の強度測定試験とを行った。
フラッシュオーバー電圧測定試験の概要は次の通りである。すなわち、火花放電間隙において放電が生じない状態とした上で(例えば、接地電極を取り除いたり、接地電極及び中心電極の先端部を絶縁油に浸漬したりした上で)、頭部に対する印加電圧を徐々に増大させていき、頭部と主体金具との間で後端側胴部の外周面を這った異常放電(フラッシュオーバー)が発生した際の電圧(フラッシュオーバー電圧)を測定した。尚、要求電圧の増大に応えつつ、正常な火花放電をより確実に生じさせるという観点から、フラッシュオーバー電圧は大きいほど好ましい。表2に、各サンプルにおけるフラッシュオーバー電圧、及び、強度測定試験の試験結果を示す。
表2に示すように、溝部を設けたサンプル(サンプル22〜28)は、溝部を設けなかったサンプル(サンプル21)と比較して、フラッシュオーバー電圧が増大していたが、距離L4の絶対値を0.5mm未満とした場合には、後端側胴部の強度がやや低下しやすくなることが分かった。これは、外周部に対する頭部の接触に伴い、外周部の根元側で発生した応力が、後端側胴部のうち比較的薄肉の部位(溝部の底部)に対して加わりやすくなったためであると考えられる。
これに対して、距離L4の絶対値を0.5mm以上としたサンプル(サンプル22〜24,27,28)は、振動に伴う後端側胴部の強度低下が効果的に抑制されることが確認された。
上記試験の試験結果より、後端側胴部の折損等をより一層確実に防止すべく、後端側胴部に溝部を設けた場合においては、端面受け部から溝部の底部までの軸線に沿った距離L4を0.5mm以上とすることが好ましいといえる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態において、頭部6Bは軸線CL1方向に沿って略一定の外径を有するものとされているが、頭部6Bの形状はこれに限定されるものではない。従って、例えば、頭部6Bの先端側外周に、径方向外側に突出する鍔部を設け、当該鍔部の先端側端面が絶縁碍子2の端面受け部32に接触するように構成してもよい。尚、この場合、材料コストや外周部33の強度などの面を考慮して、外周部33の後端から端面受け部32までの距離L1を、前記鍔部の軸線CL1方向に沿った厚さ以下とすることが好ましい。
(b)上記実施形態において、端面受け部32は、軸線CL1を含む断面において、自身の外形線が軸線CL1と直交する方向に延びるように構成されているが、図11に示すように、軸線CL1を含む断面において、端面受け部36の外形線が軸線CL1と直交する方向に対して傾斜するように構成してもよい。この場合には、軸線CL1と端子電極6の中心軸とをさらに精度よく合わせることができる。
(c)上記実施形態では、主体金具3の先端部26に、接地電極27が接合される場合について具体化しているが、主体金具の一部(又は、主体金具に予め溶接してある先端金具の一部)を削り出すようにして接地電極を形成する場合についても適用可能である(例えば、特開2006−236906号公報等)。
(d)上記実施形態では、工具係合部19は断面六角形状とされているが、工具係合部19の形状に関しては、このような形状に限定されるものではない。例えば、Bi−HEX(変形12角)形状〔ISO22977:2005(E)〕等とされていてもよい。
1…点火プラグ
2…絶縁碍子(絶縁体)
3…主体金具
4…軸孔
6…端子電極
6A…脚部
6B…頭部
6E…拡径部
10…後端側胴部
31…溝部
31A…底部
32…端面受け部
33…外周部
33A,33B,33C…縮径部
34…脚部挿通部
35…湾曲部
CL1…軸線
構成2.本構成の点火プラグは、上記構成1において、前記軸線に沿った前記外周部の後端から前記端面受け部までの距離をL1(mm)とし、前記軸線に沿った前記頭部の長さをL2(mm)としたとき、L1/L2≧1/3を満たすことを特徴とする。
上記構成2によれば、頭部のうちより軸線方向後端側に位置する部位(振動の基点からより離間する部位)の振動が外周部により規制されることとなる。従って、頭部の振幅をより一層小さなものとすることができ、後端側胴部の折損等をより効果的に防止することができる。
構成3.本構成の点火プラグは、上記構成1又は2において、前記絶縁体には、前記脚部が挿通される脚部挿通部が形成されており、
前記絶縁体のうち前記脚部挿通部と前記端面受け部との間には、前記軸線側に向けて凸の湾曲状をなす湾曲部が設けられ、
前記軸線を含む断面において、前記湾曲部の外形線の曲率半径をR1(mm)としたとき、R1≧0.1を満たすことを特徴とする。
上記構成3によれば、脚部挿通部と端面受け部との間には、軸線側に向けて凸の湾曲状をなす湾曲部が設けられている。従って、絶縁体に対する端子電極の挿入時に、湾曲部により脚部がガイドされることとなり、軸線と端子電極の中心軸とを精度よく合わせることができる。そのため、外周部と頭部との間の間隔を周方向において略均等とすることができる。これにより、端子電極が周方向においてどの方向に振動した場合でも、頭部の振幅を比較的小さな範囲内に抑えることができ、その結果、後端側胴部の折損等をより一層確実に防止することができる。
また、周方向の一部において、脚部挿通部と脚部との間の間隔が小さくなっている場合には、振動に伴い前記間隔の小さい箇所において、脚部が絶縁体に接触しやすくなってしまうが、上記構成3によれば、脚部挿通部と脚部との間隔を周方向において略均等にすることができる。そのため、絶縁体に対する脚部の接触を抑制することができ、後端側胴部における折損等の防止効果をさらに向上させることができる。
構成4.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至3のいずれかにおいて、前記軸線と直交する方向に沿った前記端面受け部の幅をL3(mm)としたとき、0.5≦L3≦2.0を満たすことを特徴とする。
上記構成4によれば、幅L3が0.5mm以上とされているので、端面受け部の面積を十分に大きく確保できる。従って、端面受け部に対して頭部の先端側端面がより確実に接触することとなり、先端側端面の一部が端面受け部に接触せず、頭部が端面受け部よりも先端側に入り込んでしまうといった事態を防止することができる。その結果、頭部の位置ずれをより確実に防止することができる。
加えて、上記構成4によれば、幅L3が2.0mm以下とされているため、端面受け部の外周側に位置する外周部の肉厚を十分に確保することができる。そのため、頭部の接触に伴う外周部の欠損等を効果的に防止することができる。
構成5.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至4のいずれかにおいて、前記軸線を含む断面において、前記端面受け部の外形線は前記軸線と直交する方向に沿って延びることを特徴とする。
上記構成5によれば、端子電極の中心軸が軸線に対して傾いてしまうといった事態が生じにくくなる。従って、頭部の位置をより適切に合わせることができる。
構成6.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至5のいずれかにおいて、前記軸線と直交する方向に沿った、前記頭部のうち前記外周部に挿通された部位の外周面と前記外周部の内周面との間の最短距離が、前記軸線と直交する方向に沿った、前記脚部の外周面と前記軸孔の内周面との間の最短距離よりも小さいことを特徴とする。
上記構成6によれば、内燃機関等の動作時において、絶縁体に対する脚部の接触が抑制され、外周部により頭部の振動がより一層確実に規制されることとなる。その結果、上記構成1等の作用効果がより確実に発揮されることとなる。
構成7.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至6のいずれかにおいて、前記外周部には、前記軸線方向先端側に向けて内径が縮径する縮径部が設けられることを特徴とする。
上記構成7によれば、外周部には、軸線方向先端側に向けて内径が縮径する縮径部が設けられている。そのため、軸孔に対する端子電極の挿入時等において、頭部が縮径部に接触することで、軸線に対して端子電極の中心軸を一層精度よく合わせることができる。従って、端子電極の外周面と絶縁体の内周面との間隔を、周方向において略同等とすることができる。これにより、頭部の振幅をより小さな範囲内に抑えることができるとともに、後端側胴部に対する脚部の接触を抑制することができ、その結果、後端側胴部における折損等の防止効果を一層向上させることができる。
構成8.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至7のいずれかにおいて、前記頭部のうち前記外周部に挿通される部位には、前記軸線方向後端側に向けて外径が拡径する拡径部が設けられることを特徴とする。
上記構成8によれば、頭部のうち外周部に挿通される部位には、軸線方向後端側に向けて拡径する拡径部が設けられている。従って、軸孔に対する端子電極の挿入時等において、軸線に対して端子電極の中心軸をより一層精度よく合わせることができる。その結果、後端側胴部における折損等の防止効果をさらに高めることができる。
構成9.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至8のいずれかにおいて、前記後端側胴部の外周には、前記後端側胴部の周方向に沿って延びる環状の溝部が設けられており、
前記端面受け部から前記溝部の底部までの前記軸線に沿った距離をL4(mm)としたとき、L4≧0.5を満たすことを特徴とする。
上記構成9によれば、後端側胴部に溝部が設けられているため、後端側胴部の外周面を這った頭部から主体金具の後端までの距離をより大きくすることができる。従って、頭部及び主体金具間における後端側胴部の外周面を這った異常放電(フラッシュオーバー)の発生を抑制することができる。
この点を鑑みて、上記構成9によれば、端面受け部から溝部の底部(すなわち、後端側胴部のうち肉厚が薄い部位)までの軸線に沿った距離L4が0.5mm以上とされている。すなわち、応力の発生箇所から薄肉部位までの距離が十分に大きなものとされている。従って、前記薄肉部位に対して応力を加わりにくくすることができ、薄肉部位における破損をより確実に防止することができる。
構成10.本構成の点火プラグは、軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
前記軸孔の後端側に挿通される脚部、及び、前記脚部の後端側に形成され、自身の外径が前記脚部の外径よりも大きい頭部を有する端子電極と
を備える点火プラグであって、
前記絶縁体には、前記主体金具の後端から露出する後端側胴部が設けられ、当該後端側胴部の最大外径が9.5mm以下であり、
前記絶縁体は、
前記絶縁体の後端よりも前記軸線方向先端側に位置し、前記頭部の先端側端面と接触する端面受け部と、
前記頭部の少なくとも先端部が挿通され、前記頭部の外周に位置する外周部とを有し、
前記絶縁体には、前記脚部が挿通される脚部挿通部が形成されており、
前記絶縁体のうち前記脚部挿通部と前記端面受け部との間には、前記軸線側に向けて凸の湾曲状をなす湾曲部が設けられ、
前記軸線を含む断面において、前記湾曲部の外形線の曲率半径をR1(mm)としたとき、R1≧0.1を満たすことを特徴とする。
構成11.本構成の点火プラグは、軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
前記軸孔の後端側に挿通される脚部、及び、前記脚部の後端側に形成され、自身の外径が前記脚部の外径よりも大きい頭部を有する端子電極と
を備える点火プラグであって、
前記絶縁体には、前記主体金具の後端から露出する後端側胴部が設けられ、当該後端側胴部の最大外径が9.5mm以下であり、
前記絶縁体は、
前記絶縁体の後端よりも前記軸線方向先端側に位置し、前記頭部の先端側端面と接触する端面受け部と、
前記頭部の少なくとも先端部が挿通され、前記頭部の外周に位置する外周部とを有し、
前記後端側胴部の外周には、前記後端側胴部の周方向に沿って延びる環状の溝部が設けられており、
前記端面受け部から前記溝部の底部までの前記軸線に沿った距離をL4(mm)としたとき、L4≧0.5を満たすことを特徴とする。