以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る組積造建物及びその構築方法について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る組積造建物1を外部から見たときの立面図である。図2は、図1に示すII−II線に沿った断面図であり、Aで示す部分を拡大した断面図である。図3は、組積造建物1を室内側から見た斜視図である。ただし、図3では、本実施形態の構成を説明するために、一部のブロック材が省略されると共に、各構成要素は分離された状態で示されている。
図1〜図3に示すように、組積造建物1は、二階建ての組積造の住宅である。組積造建物1は、布基礎2と、布基礎2の上方に向けて立設された縦材5と、布基礎2の上において横方向及び縦方向に連設された複数のブロック材3からなる壁体4と、一階と二階との間の鉄骨臥梁(鋼材で製作された臥梁。以下同じ。)6Aと、二階と屋上との間の鉄骨臥梁6Bと、一階床8Aと、二階床8Bと、屋上床8Cと、を備えて構成されている。組積造建物1は、使用される部材の多くが規格化、工業化された工業化住宅である。組積造建物1は平面モジュールM(例えばM=455mmに設定できる)を有している。組積造建物1の通り芯(建築設計、建築施工上の基準線。以下同じ。)は、直交する二方向について平面モジュールMの整数倍の間隔で複数設定されており、壁体4、鉄骨臥梁6A,6Bの厚さ方向(室内から室外へ向かう方向)における中心線CL1は、当該通り芯に一致している(例えば図2を参照)。
布基礎(連続基礎。以下同じ。)2は、地面GDに設けられた鉄筋コンクリート造の構造物であり、組積造建物1の基礎として機能する。布基礎2は、地中に埋設された部分と、地面GDから立ち上がる部分とを有しており、立ち上がり部分の上端2aは、一階壁体4Aが載置されるように平面状に構成されている。布基礎2は、組積造建物1に設定された通り芯に沿って水平方向に延びるように設けられており、少なくとも一階壁体4Aが設けられる位置の直下に配置されている。布基礎2は、一階壁体4Aに対する下部横架材として機能する。布基礎2の厚さ方向の寸法は、一階床8Aの縁部と一階壁体4Aを載置できるように、一階壁体4Aの厚さ方向の寸法(ブロック材3の厚さ寸法T)より大きく設定されている。布基礎2には、縦補強鉄筋31の下端部が埋設されており、当該縦補強鉄筋31は布基礎2の上端2aから突出して上方へ向かって延びている。この縦補強鉄筋31の詳細な説明は、後述する。
図3に示すように、縦材5は、鉛直方向に延びる長尺の鋼材である。縦材5は、一階用縦材5Aと、鉄骨臥梁6Aの上方に向けて立設された二階用縦材5Bと、鉄骨臥梁6Bの上方に向けて立設された屋上用縦材(図示せず)と、を備えている。縦材5は、壁体4同士の交点、壁体出隅部、壁体4の端部などに複数本配置されている。複数の縦材5同士は、布基礎2、鉄骨臥梁6A、又は鉄骨臥梁6Bの延在方向に離間して配置されている。縦材5の中心線は、前述した通り芯に一致している。縦材5は、複数のブロック材3を積み重ねる際の位置決めの基準となるものであり、ブロック材3のガイドとして機能する。2本の縦材5,5(図8〜図10参照)間において、縦材5,5に沿ってブロック材3を積み、さらに、縦材5,5に沿って積んだブロック材3を基準として他のブロック材3を並べることにより、壁体4の直進性や直立性などといった施工の精度が確保される。このように、縦材5は、施工性や施工精度の向上という機能を有する。なお、縦材5は、鉄骨臥梁6A,6B等と協働して壁体4を補強し、地震時の壁体4の変形を抑制し耐震性を高めるという機能も有している。但し、鉄骨臥梁6A,6Bや鉄骨臥梁6A,6B上部のブロック材3の荷重は縦材5を介することなく、直接下部のブロック材3に伝達されるので、縦材5は、一般的な柱が有する鉛直荷重を下部構造に伝達する機能は有していない。一階用縦材5A、二階用縦材5B、及び屋上用縦材は、一階壁体4A、二階壁体4B、及び屋上壁体4Cにそれぞれ対応している。
一階用縦材5Aおよび二階用縦材5Bの下端には正方形状のベースプレート5bが、上端には正方形状の上部プレート5aが溶接によってそれぞれ固定されている。一階用縦材5Aの下端部のベースプレート5bは、布基礎2上にアンカーボルトにて固定されている。二階用縦材5Bは、そのベースプレート5bが一階用縦材5Aの上部プレート5aにボルト固定されることにより、一階用縦材5A上に立設される。屋上用縦材も、これと同様にして二階用縦材5B上に立設される。縦材5の長尺部分の形状については、後述する。
壁体4は、一階壁体4Aと、二階壁体4Bと、屋上壁体4Cと、を備えている。一階壁体4Aは、組積造建物1の一階部分の壁を構成しており、布基礎2と鉄骨臥梁6Aとの間に設けられる。一階壁体4Aの下端4bが布基礎2の上端2aに載置されると共に固定され、一階壁体4Aの上端4aに鉄骨臥梁6Aが載置されると共に固定される。二階壁体4Bは、組積造建物1の二階部分の壁を構成しており、鉄骨臥梁6Aと鉄骨臥梁6Bとの間に設けられる。二階壁体4Bの下端4bが鉄骨臥梁6Aに載置されると共に固定され、二階壁体4Bの上端4aに鉄骨臥梁6Bが載置されると共に固定される。屋上壁体4Cは、組積造建物1の屋上のパラペットを構成しており、鉄骨臥梁6Bの上方に設けられる。屋上壁体4Cの下端4bが鉄骨臥梁6Bに載置されると共に固定される。
壁体4は、2本の縦材5,5間において、横方向及び縦方向に連設されると共に互いに接合された複数のブロック材3によって構成されている。横方向及び縦方向において隣り合うブロック材3同士は、接着剤によって接合されている。この接着剤によって、隣り合うブロック材3同士が固定される。接着剤は、薄い塗布であっても十分な接着効果があり、圧縮力を受けた際に潰れないものを適用することが好ましい。接着剤としては、例えば樹脂モルタルを適用することができる。このような接着剤を用いることにより、従来の組積式構造に用いられている目地モルタルのように、モルタルが硬化するまで待機する必要がなく、施工の手間を省くことができる。
ここで、図4及び図5を参照してブロック材3の詳細な構成について説明する。本実施形態では、複数種類のブロック材3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G,3Hが用いられる。ブロック材3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G,3Hは、長さ方向の寸法が平面モジュールMに基づいて設定されることによって規格化されたものである。ブロック材3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G,3Hの材料は、例えば、軽量気泡コンクリート(ALC;autoclaved lightweight concrete)や軽量コンクリート、その他の気泡コンクリートである。
図4に示すように、ブロック材3Aは、略直方体形状であり、長さ方向において互いに対向する端面3a,3bと、厚さ方向において互いに対向する側面3c,3dと、高さ方向において互いに対向する上面3e及び下面3fと、を有している。ブロック材3Aの長さ寸法、すなわち端面3aと端面3bとの間の寸法は、平面モジュールMの二倍の寸法である2Mに設定される。ブロック材3Aの厚さ寸法、すなわち側面3cと側面3dとの間の寸法はTに設定される。ブロック材3Aの高さ寸法、すなわち上面3eと下面3fとの間の寸法はどのような寸法を設定してもよいが、例えば厚さ寸法Tの1〜1.5倍程度に設定される。具体的には、ブロック材3Aの高さ寸法は、例えば300mm程度である。
ブロック材3Aには、上面3eから下面3fへ貫通する長孔形状の鉄筋挿入孔13が形成されている。鉄筋挿入孔13は、厚さ方向に対する中心線CL2から側面3c及び側面3dへ向かって延びるような長孔形状をなしている。鉄筋挿入孔13の長孔形状は、中心線CL2に対して線対称をなすような形状及び寸法に設定されている。鉄筋挿入孔13は、端面3aから長さ方向の距離がM/2の位置に形成されると共に、M+M/2の位置に形成される。ブロック材3Aの上面3e及び下面3fには、中心線CL2に沿って長さ方向に延びる溝部が形成されている(図2の溝部14参照)。
ブロック材3Aの長さ方向における両端部には、高さ方向に延びる溝3g,3hが形成されている。溝3g,3hのそれぞれは、端面3a,3bから僅かに窪むと共に厚さ方向に所定の幅を有する長方形状の浅溝3jと、浅溝3jから更に中心線CL2に沿って深く窪んだスリット状の深溝3kと、によって構成されている。溝3g,3hは、互いに左右対称をなしている。これらの溝3g,3hには、縦材5の側面が嵌合される。すなわち、ブロック材3Aは、縦材5の側面形状に対応する溝3g,3hを有している。
ブロック材3B及びブロック材3Cは、長さ寸法が2M−T/2に設定されている。具体的に、ブロック材3Bは、ブロック材3Aの端面3a側の端部の寸法をT/2短くすることによって構成される。ブロック材3Bの端面3b側の端部には、ブロック材3Aと同様にして、溝3hが形成されている。ブロック材3Bの端面3a側の端部には、溝部は形成されていない。その他の部分についてはブロック材3Aと同様の構成を有する。ブロック材3Cは、ブロック材3Aの端面3b側の端部の寸法をT/2短くすることによって構成される。ブロック材3Cの端面3a側の端部には、ブロック材3Aと同様にして、溝3gが形成されている。ブロック材3Cの端面3b側の端部には、溝部は形成されていない。その他の部分についてはブロック材3Aと同様の構成を有する。
図5に示すように、ブロック材3Dは、略直方体形状であり、長さ方向において互いに対向する端面3a,3bと、厚さ方向において互いに対向する側面3c,3dと、高さ方向において互いに対向する上面3e及び下面3fと、を有している。ブロック材3Dの長さ寸法、すなわち端面3aと端面3bとの間の寸法は、平面モジュールMに設定される。ブロック材3Dの厚さ寸法、すなわち側面3cと側面3dとの間の寸法はブロック材3Aと同じくTに設定される。ブロック材3Dの高さ寸法、すなわち上面3eと下面3fとの間の寸法はブロック材3Aの高さ寸法と同じ寸法に設定される。
ブロック材3Dには、上面3eから下面3fへ貫通する長孔形状の鉄筋挿入孔13が形成されている。鉄筋挿入孔13は、厚さ方向に対する中心線CL2から側面3c及び側面3dへ向かって延びるような長孔形状をなしている。鉄筋挿入孔13の長孔形状は、中心線CL2に対して線対称をなすような形状及び寸法に設定されている。鉄筋挿入孔13は、端面3aから長さ方向の距離がM/2の位置に形成される。ブロック材3Dの上面3e及び下面3fには、中心線CL2に沿って長さ方向に延びる溝部が形成されている(図2の溝部14参照)。
ブロック材3Dの長さ方向における両端部には、高さ方向に延びる溝3g,3hが形成されている。溝3g,3hのそれぞれは、端面3a,3bから僅かに窪むと共に厚さ方向に所定の幅を有する長方形状の浅溝3jと、浅溝3jから更に中心線CL2に沿って深く窪んだスリット状の深溝3kと、によって構成されている。これらの溝3g,3hには、縦材5の側面が嵌合される。すなわち、ブロック材3Dは、縦材5の側面形状に対応する溝3g,3hを有している。
ブロック材3E及びブロック材3Fは、長さ寸法がM−T/2に設定されている。具体的に、ブロック材3Eは、ブロック材3Dの端面3a側の端部の寸法をT/2短くすることによって構成される。ブロック材3Eの端面3b側の端部には、ブロック材3Dと同様にして、溝3hが形成されている。ブロック材3Eの端面3a側の端部には、溝部は形成されていない。その他の部分についてはブロック材3Dと同様の構成を有する。ブロック材3Fは、ブロック材3Dの端面3b側の端部の寸法をT/2短くすることによって構成される。ブロック材3Fの端面3a側の端部には、ブロック材3Dと同様にして、溝3gが形成されている。ブロック材3Fの端面3b側の端部には、溝部は形成されていない。その他の部分についてはブロック材3Dと同様の構成を有する。
ブロック材3G及びブロック材3Hは、上記した各ブロック材3A,3B,3C,3D,3E,3Fとは異なり、壁体出隅部(コーナー部)における壁体4の側端部に沿って配置される被覆用ブロック材である。ブロック材3G,3Hは、高さ方向に延びる長尺状をなしている。ブロック材3G,3Hは、長さ寸法がT/2に設定されている。ブロック材3G,3Hの厚さ寸法、すなわち側面3cと側面3dとの間の寸法はブロック材3Aと同じくTに設定される。ブロック材3G,3Hの高さ寸法、すなわち上面3eと下面3fとの間の寸法は、例えばブロック材3Aの高さ寸法の整数倍に設定される。具体的には、ブロック材3Aの高さ寸法を300mm程度とした場合、ブロック材3G,3Hの高さ寸法は、例えばその9倍の2700mm程度である。
ブロック材3Gの長さ方向における端面3b側の端部には、高さ方向に延びる浅溝3mが形成されている。浅溝3mは、端面3bから僅かに窪むと共に厚さ方向に所定の幅を有する長方形状をなしている。ブロック材3Hの長さ方向における端面3a側の端部には、高さ方向に延びる浅溝3nが形成されている。浅溝3nは、端面3aから僅かに窪むと共に厚さ方向に所定の幅を有する長方形状をなしている。
図1〜図3に戻り、壁体4は、上述のような平面モジュールMに基づいた寸法を有するブロック材3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G,3Hを組み合わせることで、壁体一般部のように平面状に広がる部分のみならず、壁体出隅部や壁体入隅部や窓枠部周辺などのように形状が変則的に変わる部分も、規格化されたブロック材のみ(すなわち、ある一部分のみに対して特別な寸法のブロック材を作成することなく)で構成することができる。
例えば、壁体4の壁体一般部は、長さ寸法2Mのブロック材3Aを長手積みすることによって構成される。すなわち、一段下側に積まれているブロック材3Aの上面3eが見えるように、長さ寸法にMだけずらして千鳥状にブロック材3Aを積むことによって壁体4の壁体一般部を構成する(図3参照)。なお、壁体一般部とは、例えば図1においてBで示される領域のように、壁体出隅部や壁体入隅部や窓枠部が形成されていない部分のことである。
次に、縦材5とブロック材3との配置について説明する。図6(a)は壁体一般部におけるブロック材の配置を上方から見た図であり、図6(b)は壁体出隅部におけるブロック材の配置を上方から見た図である。図6(a)及び図6(b)に示すように、縦材5は、長尺部分の断面が十字状の縦材5Pと、長尺部分の断面がT字状の縦材5Qとの2種類の鋼材からなる。断面十字状の縦材5Pは、材軸方向に連続すると共に材軸方向に垂直な方向に突出する突出片50,50を側面に有している。断面T字状の縦材5Qは、材軸方向に連続すると共に材軸方向に垂直な方向に突出する突出片51を側面に有している。
上述したように、ブロック材3A等には溝3g又は溝3hが形成されている。図6(a)に示すように、壁体一般部は、ブロック材3A,3Aが連設されることにより構成される。縦材5Pは、一方のブロック材3Aの溝3gに嵌合されると共に、他方のブロック材3Aの溝3hに嵌合されている。より具体的には、縦材5Pの突出片50は、ブロック材3Aの深溝3kに嵌合されている。言い換えれば、ブロック材3A同士が連設されると、溝3g及び溝3hによって、ブロック材3Aの高さ方向に延びる断面十字状の空間が形成される。縦材5Pは、この断面十字状の空間に配置される。縦材5Pは、ブロック材3A,3Aによって挟まれ、壁体4に内包されている。このように、断面十字状の縦材5Pは、例えば壁体一般部に用いることができる。
また、図6(b)に示すように、壁体出隅部は、ブロック材3Aと、ブロック材3Aに直交するブロック材3Cと、ブロック材3Aの端部に貼設される長尺状のブロック材3Gとによって構成される。縦材5Qは、ブロック材3Aの溝3gに嵌合されると共に、ブロック材3Gの浅溝3mに嵌合されている。より具体的には、縦材5Qの突出片51は、ブロック材3Aの深溝3kに嵌合されている。言い換えれば、ブロック材3Aとブロック材3Gとが連設されると、溝3g及び浅溝3mによって、ブロック材3Aの高さ方向に延びる断面T字状の空間が形成される。縦材5Qは、この断面T字状の空間に配置される。縦材5Qは、ブロック材3A及びブロック材3Gによって挟まれ、壁体4に内包されている。このように、断面T字状の縦材5Qは、例えば壁体出隅部に用いることができる。
各縦材5P,5Qをいずれの箇所に用いるかは、適宜設定することができる。例えば、壁体一般部以外のコーナー部等に断面十字状の縦材5Pを用いてもよいし、壁体一般部に断面T字状の縦材5Qを用いてもよい。縦材5P,5Qは、前述した一階壁体4A、二階壁体4B、及び屋上壁体4Cのいずれに用いてもよい。また、縦材の断面寸法に比べてブロック材の厚みが大きく設定されていたり、コーナー用のブロック材に補強が施されていたりして、コーナー用のブロック材に深溝3kを形成しても強度上の問題が生じない場合には、コーナー部に断面十字状の縦材5Pを用いることもできる。
次に、鉄骨臥梁6A,6Bの構成について説明する。図2、図3、及び図7に示すように、鉄骨臥梁6A,6Bは、2つの溝形鋼を合わせた合わせ梁である。鉄骨臥梁6A,6Bは、ブロック材3と同一の高さ寸法を有している。なお、鉄骨臥梁6A,6Bとして、H形鋼を用いることもできる。
鉄骨臥梁6Aの両端は、一階用縦材5A,5Aに対してボルト接合されている(図10も参照)。鉄骨臥梁6Aの両端部のウェブ(垂直部分)には、一階用縦材5Aとの接合用のボルト孔20aが穿設された長方形状のガセットプレート20が溶接されている。一方、一階用縦材5Aの上端部には、鉄骨臥梁6Aを接合するためのボルト孔5cが穿設されている。これらのボルト孔20a及びボルト孔5cを用いて、鉄骨臥梁6Aが一階用縦材5Aに接合される。一階用縦材5Aの上部プレート5aは、鉄骨臥梁6Aの上端6aと面一となるように配置される。このように、鉄骨臥梁6Aは、一階壁体4Aの上端4aで支持されると共に2本の一階用縦材5A,5Aに両端が接合された乾式の上部横架材である。
鉄骨臥梁6Aの外側には、一階壁体4A及び二階壁体4Bと面一となるようにカバー材21が固定されている。カバー材21は、鉄骨臥梁6Aすなわちブロック材3と同一の高さ寸法を有する長方形板状をなしている。カバー材21は、ブロック材3と同一の材料からなる。カバー材21は、鉄骨臥梁6Aのウェブ上に配置された板状の下地材22に対し、ビス23等によって固定されている。カバー材21は、鉄骨臥梁6Aの延在方向の全体にわたって鉄骨臥梁6Aを被覆しており、その外面が外部に露出している(図1も参照)。このカバー材21により、建物の壁面全体が同一のテクスチャーで仕上げられている。
鉄骨臥梁6Aの内側には、長さ方向(横方向)の複数箇所において、二階床8Bを支持するための床支持部材24が固定されている。床支持部材24は、室内側に向けて突出している。床支持部材24と二階壁体4Bの下端4bとの間には、鉄骨臥梁6Aのフランジ部に等しい厚みを有する長尺状の床載置板26が固定されている。
二階壁体4B及び屋上壁体4Cの間に配置された鉄骨臥梁6Bは、鉄骨臥梁6Aと同様の構成を有している。上述した鉄骨臥梁6A周辺の構成と同様にして、鉄骨臥梁6Bの外側にはカバー材21等が設けられ、鉄骨臥梁6Bの内側には床支持部材24等が設けられている。二階壁体4Bに対しては、鉄骨臥梁6Aが下部横架材として機能し、鉄骨臥梁6Bが上部横架材として機能する。また、屋上壁体4Cに対しては、鉄骨臥梁6Bが下部横架材として機能する。
次に、床8A,8B,8Cの構成について説明する。本実施形態では、床8A,8B,8Cは、それぞれパネル材によって構成されており、乾式化されている。一階床8Aは、複数のパネル材を並べることによって構成される。パネル材として、軽量気泡コンクリート(ALCパネル。以下同じ。)、コンクリートパネル、木質パネル等を適用することができる。一階床8Aの各パネル材は、布基礎2や布基礎2に架け渡された鉄骨小梁等によって支持される。
二階床8Bは、複数のパネル材を並べることによって構成される。パネル材として、ALCパネル、コンクリートパネル、木質パネル等を適用することができる。二階床8Bの各パネル材は、床載置板26を介して床支持部材24によって支持されると共に、鉄骨臥梁6Aに架け渡された鉄骨小梁等によって支持される。
屋上床8Cは、複数のパネル材を並べることによって構成される。パネル材として、ALCパネル等の構造用断熱材を適用することができる。屋上床8Cの各パネル材は、床載置板26を介して床支持部材24によって支持されると共に、鉄骨臥梁6Bに架け渡された鉄骨小梁等によって支持される。
組積造建物1は、縦補強鉄筋31,33によって補強されている。ここで、壁体4には、縦補強鉄筋31を通すことができるように、縦方向に延びる貫通孔が形成されている。また、鉄骨臥梁6A,6Bのフランジ部には、縦補強鉄筋31を通すことができるように、所定のピッチ(ここでは平面モジュールM)で貫通孔が形成されている。具体的に、ブロック材3は、いずれの種類についても平面モジュールMに基づいた寸法が設定されており、鉄筋挿入孔13も平面モジュールMに基づいた寸法にて配置されている。従って、各ブロック材3を千鳥状に配置しても、一のブロック材3に形成されている鉄筋挿入孔13は、一段下のブロック材3の鉄筋挿入孔13及び一段上のブロック材3の鉄筋挿入孔13と連通する。また、縦補強鉄筋31の端部は、鉄骨臥梁6A,6Bの貫通孔に通され、ナット等により緊結される。
なお、ブロック材3の鉄筋挿入孔15及び外枠材の鉄筋挿入孔27によって形成される貫通孔や、ブロック材3の鉄筋挿入孔13及び外枠材の鉄筋挿入孔26によって形成される貫通孔や、ブロック材3の溝部14には、モルタルや樹脂モルタルなどの充填材が充填される。
次に、本実施形態に係る組積造建物1の構築工法の一例について説明する。
まず、図8に示すように、縦補強鉄筋31が立ち上がった布基礎2を形成し、布基礎2の延在方向に所定距離離間した2本の一階用縦材5Aを立設する。ここでは、一階用縦材5Aとして、断面十字状の縦材5Pを立設している。縦材5Pは、材軸方向に連続する突出片50を有している。
次に、図9に示すように、布基礎2の上端2aに一段目のブロック材3を積む。より具体的には、一段目のブロック材3のうち、一階用縦材5Aに最も近接したブロック材3(図9に示す左右の両端に位置するブロック材3P)を一階用縦材5Aに沿って積む。このとき、立ち上がっている縦補強鉄筋31の上端部にブロック材3の鉄筋挿入孔13を通すと共に、ブロック材3に形成された溝3g又は溝3hに突出片50を嵌合させつつ、一階用縦材5Aに沿ってスライドさせるようにしてブロック材3を積む。ここで積まれるブロック材3は、縦材5Aの側面形状に対応する溝3g又は溝3hを有した端部用ブロック材3Pである。端部用ブロック材3Pは、突出片50に対応する長溝を有しており、端部用ブロック材3Pを一階用縦材5Aに沿って積むことにより、当該ブロック材の位置決めが容易になっている。
次に、一階用縦材5Aに沿って積まれたブロック材3を基準として、当該ブロック材3に隣接するブロック材3を積む。ここで積まれるブロック材3は、中間部用ブロック材3Qに相当する。中間部用ブロック材3Qは、その表面が端部用ブロック材3Pの表面と面一になるように積まれる。
一段目のブロック材3を積んだら、同様の方法で二段目以降のブロック材3を積む。このとき、各段のブロック材3が千鳥状となるように積む。また、積む際に接着剤などで各ブロック材3を固定しながら積む。また、所定の段では、横補強鉄筋32を横方向に配置する。いずれの段においても、まず一階用縦材5Aに最も近接したブロック材3を一階用縦材5Aに沿って積み、その後、一階用縦材5Aに沿って積まれたブロック材3を基準として、当該ブロック材3に並設されるブロック材3を積む。このような構築方法により、壁体4の直進性や直立性などといった施工の精度が確保される。また、一階床8Aを設ける。
次に、図10に示すように、ブロック材3を鉄骨臥梁6Aの直下の高さまで積んで一階用縦材5A,5A間に一階壁体4Aを形成した後、一階用縦材5A,5Aの上端部に鉄骨臥梁6Aを掛け渡す。より具体的には、鉄骨臥梁6Aを一階壁体4Aの上端4aに載置すると共に、鉄骨臥梁6Aの両端部に固定されたガセットプレート20を介して、一階用縦材5Aに対し鉄骨臥梁6Aをボルト接合する。また、縦補強鉄筋31を鉄骨臥梁6Aの貫通孔に挿通し、ナットにより緊結する。
次に、カバー材21、床支持部材24、床載置板26等を設けた後、二階床8Bを設ける。次に、一階用縦材5Aの上部プレート5aに二階用縦材5Bのベースプレート5b(図3参照)をボルト接合することにより、二階用縦材5B,5Bを立設する。次に、鉄骨臥梁6Aの上かつ二階用縦材5B,5B間に、一階と同様の手順で二階壁体4B,屋上床8C等を構成する。さらに、一階及び二階と同様の手順で屋上壁体4Cを構成する。
以上説明した本実施形態の組積造建物1によれば、壁体4は、布基礎2又は鉄骨臥梁6A,6Bの上かつ2本の縦材5,5間において横方向および縦方向に連設された複数のブロック材3によって形成され、さらに、乾式の鉄骨臥梁6A,6Bがこの壁体4の上端4aで支持され、鉄骨臥梁6A,6Bの両端は2本の縦材に接合される。このように、乾式の鉄骨臥梁6A,6Bを採用することにより、従来必要とされていた湿式工事は大幅に削減されており、よって、施工時の手間が省かれると共に工期が短縮されている。
従来のように複数のブロック材3同士を目地モルタルで接合する場合、その目地モルタルが硬化するまで待機する必要があったが、組積造建物1によれば、複数のブロック材3同士が接着剤により接合されるため、そのような待機の必要がなくなり、工期がより一層短縮される。
また、従来の組積造建物では、ブロック材の空洞部にモルタルを打設することにより、そのブロック材の位置決めを行っていたが、組積造建物1によれば、縦材5の突出片50,51にブロック材の深溝3kが嵌合されて、ブロック材3が位置決めされるので、従来のようなモルタルの打設を要することなくブロック材3の位置決めが行われ、よって、手間の削減及び工期の短縮が確実かつ容易に実現されている。
また、パネル材によって構成された床8B,8Cを更に備え、床8B,8Cの各パネル材は、鉄骨臥梁6A,6Bに固定された床支持部材24によって支持されているため、床8B,8Cを乾式化することができ、その分、施工時の手間が省かれると共に工期が短縮される。
また、2本の縦材5A,5A(若しくは二階用縦材5B,5B)の上には、2本の二階用縦材5B,5B(若しくは屋上用縦材)が更に立設されており、鉄骨臥梁6A(若しくは鉄骨臥梁6B)の上かつ2本の二階用縦材5B,5B間には、一階壁体4Aと同一の構成を有する二階壁体4B(若しくは屋上壁体4C)が形成されているため、乾式の鉄骨臥梁6A(若しくは鉄骨臥梁6B)の上に上階のブロック材3が積み上げられるので、湿式材料が硬化するまで待機する必要がなく、複数階の建物における工期も短縮されている。
また、鉄骨臥梁6A,6Bの外側には、ブロック材3と同一の材料からなるカバー材21が壁体4と面一となるように設けられるので、建物の壁面全体が同一のテクスチャーで仕上げられる。また、縦材5は複数のブロック材3によって内包されるので、縦材5の露出により外観が損なわれることもない。よって、意匠性が向上されている。
本実施形態の組積造建物1の構築方法によれば、縦材5,5の側面形状に対応する溝3g,3hを有した端部用ブロック材3Pが、縦材5に沿って積まれる。そして、縦材5に沿って積まれた端部用ブロック材3Pを基準として中間部用ブロック材3Qが積まれるため、端部用ブロック材3P及び中間部用ブロック材3Qを2本の縦材5,5間で一直線状に並設することが容易になっている。また、端部用ブロック材3Pを縦材5に沿って積むことにより、端部用ブロック材3Pの縦方向の位置を正確かつ容易に決めることができ、さらには中間部用ブロック材3Qの縦方向の位置をも正確かつ容易に決めることができる。よって、作業者の技量が低い場合であっても、壁体4の直進性や直立性などといった施工の精度が保たれる。
また、2本の縦材5,5は材軸方向に連続する突出片50,51を有しており、この突出片50,51に対応する深溝3kを有した端部用ブロック材3Pが、縦材5に沿って積まれる。この方法により、施工の精度が確実かつ容易に保たれる。
また、端部用ブロック材3P及び中間部用ブロック材3Qを所定の高さまで積んで壁体4を形成した後、2本の縦材5,5の上端部に鉄骨臥梁6Aを架け渡す工程を有するため、鉄骨臥梁6Aの位置を正確かつ容易に決めることができる。
図11は、第2の実施形態に係る組積造建物を室内側から見た斜視図である。図11に示す組積造建物1Aが図3に示した組積造建物1と違う点は、鉄骨臥梁6Aに代えて略直方体形状の木質系材料からなる乾式の臥梁60を備えた点である。このような組積造建物1Aによっても、組積造建物1およびその構築方法と同様の作用・効果が奏される。
また、第1および第2実施形態のように、鋼材からなる縦材5を用いる場合に限られず、他の材質からなる縦材を用いてもよい。たとえば、図12および図13に示す第3の実施形態の組積造建物1Bのように、角柱状の木質系材料からなる縦材55を用いてもよい。この組積造建物1Bでは、端部用ブロック材として、ブロック材3Rを用いている(図12参照)。ブロック材3Rの端部には、縦材55の側面形状に対応する溝56が形成されている。この溝56に、縦材55が嵌合する。縦材55は、ブロック材3R,3Rによって挟まれ、壁体4に内包されている。縦材55の中心線CL3は、組積造建物1Bの通り芯に一致している。
図13に示すように、組積造建物1Bでは、組積造建物1Aと同様、木質系材料からなる乾式の臥梁60を備えている。一階と二階との間の臥梁60は、複数のブロック材3Sからなる一階壁体4Aの上端と二階壁体4Bの下端との間に設けられている。二階と屋上との間の臥梁60は、複数のブロック材3Sからなる二階壁体4Bの上端面に取り付けられている。
臥梁60には、木梁61の端部が臥梁60の上面と木梁61の上面の高さ(垂直方向の位置)を揃えて接合されている。この木梁61は、臥梁60に直交して、室内側に向けて延びている。臥梁60および木梁61の上面に、合板62が直接固定されて敷設されている。このように、組積造建物1Bでは、床支持部材24や床載置板26(図3参照)は用いられず、臥梁60によって、直接、二階の床板としての合板62が支持されている。また、一階の床板としての合板63は、大引き(sleeper)64および根太(joist)65によって支持されている。なお、組積造建物1Bでは、臥梁60は、上記した縦材55の上端に載置される。このような組積造建物1Bによっても、組積造建物1およびその構築方法と同様の作用・効果が奏される。
また、図14に示す第4実施形態の組積造建物のように、縦材55の中心線CL4が、通り芯に一致していなくてもよい。すなわち、縦材の中心線CL4は、通り芯に対して偏心していてもよい。図14に示す例の場合、角柱状の木質系材料からなる縦材55、臥梁60(図示なし。)の中心線CL4は、通り芯よりも室内側(図14において壁体4より右側)に位置している。角柱状の縦材55や臥梁60の一面が室内に露出する位置に配置されることで、木質系材料からなる縦材55や臥梁60の乾燥を促し、適度な保湿状態を確保するものである。端部用ブロック材であるブロック材3Tの端部には、縦材55の側面形状に対応する溝57が形成されている。この場合、溝57はブロック材3Tの角部に形成されている。縦材55は、溝57に嵌合して、ブロック材3T,3T間から露出している。縦材55の側面と、ブロック材3Tの表面とは、面一になっている。このような組積造建物によっても、組積造建物1およびその構築方法と同様の作用・効果が奏される。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、複数のブロック材3同士は、接着剤により接合されている場合に限られず、目地モルタルによって接合されてもよい。また、縦材5が突出片を有し、ブロック材3に溝3g,3hが形成される場合に限られず、縦材5とブロック材3とが他の態様で凹凸嵌合してもよい。縦材は、断面ロの字状であってもよい。縦材の材質および形状は適宜選択することができる。縦材の断面形状は、どのような形状であってもよい。
また、ブロック材3の積み方や、鉄筋の配置などは特に限定されず、適宜変更してもよい。また、ブロック材3の構成も、図4や図5に示すものに限らず、適宜変更してもよい。また、本実施形態では、二階建ての組積造建物を例に説明したが、一階建て、あるいは三階建て以上の組積造建物に本発明を適用してもよい。また、実施例では、ブロック材3が平面モジュールMに基づいた寸法が設定され、規格化された部品として構成されていたが、規格化されていない組積造建物に本発明を適用してもよい。
また、上記実施形態では、乾式の鉄骨臥梁6A,6Bを用いる場合について説明したが、コンクリートの打設による湿式の臥梁であってもよい。また、複数のブロック材3は千鳥状に配置される場合に限られず、格子状に配置されてもよい。この場合、端部用ブロック材3Pを縦材5,5に沿って鉄骨臥梁6Aの直下まで積み、その後、端部用ブロック材3Pを基準として中間部用ブロック材3Qを積み重ねてもよい。
また、鉄筋の配置などは特に限定されず、適宜変更してもよい。また、ブロック材3の構成も、図4や図5に示すものに限らず、適宜変更してもよい。また、本実施形態では、二階建ての組積造建物を例に説明したが、一階建て、あるいは三階建て以上の組積造建物に本発明を適用してもよい。また、実施例では、ブロック材3が平面モジュールMに基づいた寸法が設定され、規格化された部品として構成されていたが、規格化されていない組積造建物に本発明を適用してもよい。
また、本発明の組積造建物の縦材および臥梁の構成は、縦材および臥梁によって門形の軸組が形成されていれば、縦材と臥梁との接合構造は限定されない。すなわち、縦材と臥梁との接合構造は、縦材を上下方向に通して(連続させて)縦材の側面に臥梁の端部を接合した構造(縦材勝ちの構成)、水平方向に臥梁を通して(連続させて)臥梁の上面及び下面に縦材を接合した構造(臥梁勝ちの構成)、何れの接合構造であってもよい。また、縦材と臥梁の材料は、異なったものを混在させても良く、例えば、木製の縦材と鋼製の臥梁とを組み合わせてもよいし、木製の縦材とコンクリート製の臥梁とを組み合わせてもよい。
前記した実施形態では、縦材(断面が十字状の鋼材からなる縦材5P、断面がT字状の鋼材からなる縦材5Q、又は断面が角柱状の木質系材料からなる縦材55等)の上端部の側面が臥梁(断面が溝型鋼、H形鋼等の鉄骨臥梁6A、6Bの両端部のウェブ、又は断面が略直方体形状の木質系材料の臥梁60)の側面に固定された接合構造であったが、縦材の上端部の上端面(縦材の上部ベースプレート、又は角柱状の上端面)が臥梁の下面(断面が溝型鋼、H形鋼等の鉄骨臥梁の下側フランジ、又は断面が略直方体形状の木質系材料の臥梁の下面)に固定された接合構造とされてもよい。