JPWO2013008394A1 - アーク溶接制御方法およびアーク溶接装置 - Google Patents

アーク溶接制御方法およびアーク溶接装置 Download PDF

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Abstract

溶接ワイヤを自動送給しながら短絡とアークとを交互に繰り返して短絡溶接を行う消耗電極式のアーク溶接である。設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度を基準にして所定の周波数と所定の速度振幅とで溶接ワイヤの送給の正送と逆送とを周期的に繰り返して短絡状態とアーク状態とを発生させる。溶接ワイヤの周期的な送給の正送側と逆送側とで送給波形が異なるように溶接ワイヤの送給速度の制御を行う。

Description

本発明は、消耗電極である溶接ワイヤを連続的に送給しながら短絡溶接を行うアーク溶接制御方法およびアーク溶接装置に関する。
図8は、溶接ワイヤの周期的な送給を行い、短絡を伴う従来のアーク溶接の溶接ワイヤ送給制御方法を示す出力の時間波形である。図8は、具体的にはワイヤ送給速度WS、溶接電流Iおよび溶接電圧Vの時間変化を示す。
図8に示すように、時点P1は、短絡を開始した時点を示している。時点P1以降の短絡期間では、アーク溶接装置は、短絡初期電流を所定時間出力した後、溶接電流Iとして短絡電流の第1段目の増加傾きdi/dtを出力し、続けて、短絡電流の第2段目の増加傾きdi/dtを出力する。その後、溶融プールと溶接ワイヤ先端との間に出来た溶滴のくびれを検出すると、アーク溶接装置は溶接電流Iを低電流に瞬時に移行させる。時点P2は、溶滴のくびれが離れ、短絡状態が終了してアークが発生した時点を示している。
時点P2からのアーク期間において、アーク溶接装置はアーク発生直後にピーク電流の溶接電流を出力し、その後、ピーク電流IPからベース電流IBへ移行する。このアーク期間は、電流制御でも電圧制御でもどちらの制御でも可能な期間であり、ベース電流に移行した段階で次の短絡を待つことになる。時点P3は、次の短絡が発生した時点を示している。
また、所定の周波数と所定の速度振幅で、基本波形である正弦波状に正送と逆送とを周期的に繰り返すワイヤ送給制御を行っている。そして、正送側のピーク時では時点P1周辺で短絡が発生し、逆送側のピーク時では時点P2周辺でアークが発生することになる。また、時点P2の後の正送のピーク時に、時点P3周辺で次の短絡が発生する。以上のように、時点P1から時点P3までを制御の1周期WFとし、これを繰り返して溶接が行われる。
このように、短絡状態またはアーク状態の発生は、基本的には、ワイヤ送給速度の正送と逆送とを周期的に繰り返すワイヤ送給制御に依存するものである。
上述の従来の制御は、ワイヤ送給速度が正送と逆送とを正弦波状に周期的に繰り返すことにより、短絡状態とアーク状態とを周期的に発生させて溶接を行う制御方法を用いている。この制御方法は、設定電流毎に適したワイヤ送給速度の平均送給速度を基準にして周波数および速度振幅を設定することにより、低電流から高電流まで対応することができる(例えば、特許文献1参照)。
また、ワイヤ送給速度の正送と逆送は正弦波状であることから、矩形波状とは異なり、ワイヤ送給モータやギヤなどのモータ周辺部品への負担が小さく、矩形波状の場合に比べてこれらの寿命を長くすることができる。
上述の従来の送給制御方法では、図8に示すように、正送側のピーク時では時点P1周辺で短絡が発生し、逆送側のピーク時では時点P2周辺でアークが発生することになる。また、時点P2の後の正送のピーク時に時点P3周辺で次の短絡が発生する。このように、時点P1から時点P3までを制御の1周期WFとし、これを繰り返して溶接を行う。そのため、(時刻t1から時刻t2までの短絡期間):(時刻t2から時刻t3までのアーク期間)=50:50(時間比率が50対50)になる。これに対し、溶接ワイヤの周期的な送給は行わない、これまでの溶接ワイヤの一定送給を行う一般的な短絡溶接では、短絡期間:アーク期間=20:80(20対80)から30:70(30対70)までの範囲の比率である。
このように、従来の正送と逆送を周期的に行うアーク溶接制御方法では、一般的な短絡溶接に比べて短絡期間の占める比率が50%と高く、アーク期間の占める比率が低くなるため、溶接電圧を上げることが困難である。従って、被溶接物への入熱が低く、ビード幅が細く、溶け込み量が浅いという溶接結果になる。従来の正送と逆送を周期的に行うアーク溶接制御方法は、アーク不安定をなくし、ビード欠陥、スパッタ増加、溶け込み不良(溶け込みのバラツキ)等の改善はできる。しかし、溶接電圧を上げることが困難なので、これまでの一般的な短絡溶接と同等の広いビード幅や深い溶け込み量を確保できないという課題があった。
国際公開第2011/013321号
本発明は、溶接ワイヤの周期的な送給制御において、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できるアーク溶接制御方法およびアーク溶接装置を提供する。
上記課題を解決するために、本発明のアーク溶接制御方法は、溶接ワイヤを自動送給しながら短絡とアークを交互に繰り返して短絡溶接を行う消耗電極式のアーク溶接制御方法である。そして、本発明のアーク溶接制御方法は、設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度を基準にして所定の周波数と所定の速度振幅で上記溶接ワイヤの送給の正送と逆送とを周期的に繰り返して短絡状態とアーク状態とを発生させる。そして、本発明のアーク溶接制御方法は、上記溶接ワイヤの周期的な送給の正送側と逆送側とで送給波形が異なるように上記溶接ワイヤの送給速度制御を行う方法である。
この方法により、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できる。
また、本発明のアーク溶接装置は、消耗電極である溶接ワイヤと被溶接物との間でアークの発生と短絡とを繰り返して溶接を行うアーク溶接装置である。そして、本発明のアーク溶接装置は、溶接条件設定部と、ワイヤ送給モータと、スイッチング部と、溶接電圧検出部と、短絡/アーク検出部と、短絡制御部と、アーク制御部と、駆動部と、ワイヤ送給モータ制御部とを備えている。ここで、溶接条件設定部は、少なくとも設定電流を設定する。ワイヤ送給モータは、溶接ワイヤを送給する。スイッチング部は、溶接出力を制御する。溶接電圧検出部は、溶接電圧を検出する。短絡/アーク検出部は、溶接電圧検出部の出力に基づいて短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する。短絡制御部は、短絡状態であるときの溶接出力制御信号を出力する。アーク制御部は、アーク状態であるときの溶接出力制御信号を出力する。駆動部は、短絡制御部またはアーク制御部からの信号に基づいて前記スイッチング部を制御する。ワイヤ送給モータ制御部は、所定の周波数と所定の速度振幅で溶接ワイヤの送給の正送と逆送とを周期的に繰り返すようにワイヤ送給モータを制御する。そして、上記ワイヤ送給モータ制御部は、基本ワイヤ送給速度制御部と、モータ極性切換制御部と、ワイヤ速度振幅制御部と、ワイヤ速度周波数制御部とを有する。ここで、基本ワイヤ送給速度制御部は、溶接ワイヤの周期的な送給の基準であり設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度を出力する。モータ極性切換制御部は、溶接ワイヤの正送あるいは逆送に関するワイヤ送給モータの回転方向を示す信号を出力する。ワイヤ速度振幅制御部は、基本ワイヤ送給速度を基準にした逆送側の速度振幅と逆送側の速度振幅よりも小さい正送側の速度振幅とを出力する。ワイヤ速度周波数制御部は、設定電流に応じたワイヤ送給周波数を出力する。そして、ワイヤ送給モータ制御部が、上記基本ワイヤ送給速度と、上記ワイヤ送給モータの回転方向を示す信号と、上記溶接ワイヤの逆送側の速度振幅と、上記溶接ワイヤの正送側の速度振幅と、上記ワイヤ送給周波数とに基づいて、上記ワイヤ送給モータを制御する。これにより、本発明のアーク溶接装置は、上記溶接ワイヤの周期的な送給の正送側と逆送側とで送給波形が異なるように上記溶接ワイヤの送給速度を制御して溶接を行う構成としている。
この構成により、溶接ワイヤの周期的な送給制御において、適正な溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保することができる。
また、この構成により、短絡溶接と同等のビード幅や溶け込み量といった溶接性を備えたアーク溶接装置を実現することができる。
図1は、溶接ワイヤの送給の正送側の速度振幅と逆送側の速度振幅が等しい時に、従来の周期的なワイヤ送給制御を行った場合のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。 図2は、本発明の実施の形態1におけるワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。 図3は、本発明の実施の形態1における短絡期間とアーク期間の比率に対する正送側の振幅量の関係を示す図である。 図4は、本発明の実施の形態1におけるアーク溶接の施工事例を短絡溶接や従来の制御との比較事例とともに示す図である。 図5は、本発明の実施の形態1および実施の形態2におけるアーク溶接装置の概略構成を示す図である。 図6は、溶接ワイヤの送給の正送側の速度振幅と逆送側の速度振幅が等しい時に、従来の周期的なワイヤ送給制御を行った場合のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。 図7は、本発明の実施の形態2におけるワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。 図8は、溶接ワイヤの送給の正送側の速度振幅と逆送側の速度振幅が等しい時に、従来の周期的なワイヤ送給制御を行った時のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同じ構成要素については同じ符号を付しているので説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
図1は、溶接ワイヤの送給の正送側の速度振幅と逆送側の速度振幅が等しい時に、従来の周期的なワイヤ送給制御を行った場合のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。図2は、本発明の実施の形態1における短絡を伴うアーク溶接装置によるアーク溶接制御方法を示す出力波形図である。図2は、本発明の実施の形態1におけるワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す。従来の制御を示す図1と比較することで、本実施の形態1の制御を示す図2の効果を説明する。
図1と図2は、ワイヤ送給速度WS、溶接電圧Vおよび溶接電流Iの時間変化を示す。
図1に示すワイヤ送給制御は、基本的に以下のように行われている。図1に示す時刻t1から時刻t2までの短絡期間は、平均ワイヤ送給速度WS0を基準に、正送側のワイヤ送給速度WS2から逆送側のワイヤ送給速度WS3へと後退送給する。また、図1に示す時刻t2から時刻t3までのアーク期間では、ワイヤ送給速度WS3からワイヤ送給速度WS2へと前進送給する。
また、図2に示すワイヤ送給制御は、基本的に以下のように行われている。図2に示す時刻t11から時刻t2までの短絡期間は、設定電流に応じて決定される基本ワイヤ送給速度WS1を基準に、正送側のワイヤ送給速度WS4から逆送側のワイヤ送給速度WS3へと後退送給する。また、図2に示す時刻t2から時刻t13までのアーク期間では、ワイヤ送給速度WS3からワイヤ送給速度WS4へと前進送給する。なお、基本ワイヤ送給速度WS1は設定電流に応じて決定される。ここで、溶接開始前に設定される設定電流、ワイヤ送給速度およびワイヤ送給量は、比例の関係にあることは明らかである。従って、設定電流ではなく、設定されたワイヤ送給速度あるいは設定されたワイヤ送給量に応じて基本ワイヤ送給速度WS1を決定するようにしてもよい。
なお、先ず、図1に示す従来の周期的な送給制御について説明し、その後、図2に示す本発明の実施の形態1の周期的な送給制御について説明する。
従来の制御を示す図1の時刻t1から時刻t2までの短絡期間において、時刻t1は、溶接ワイヤと溶融プールが確実に短絡した時である。そして、時刻t2に向けて、短絡開放を円滑に行えるように、送給制御はワイヤ送給速度WS2からワイヤ送給速度WS3へと後退送給へ移行する。
また、短絡期間の溶接制御(電流制御のみ)は、短絡発生時の時刻t1から、電流制御により、溶接電流Iを所定の傾きで上昇させる。なお、短絡期間の終端直前、すなわち、時刻t2の直前においては、従来から知られているように、スパッタの削減のため、溶融した溶接ワイヤのくびれを検知して溶接電流Iを急峻に低減させるように制御している。
時刻t2から時刻t3までのアーク期間において、時刻t2は、アークが発生(短絡が開放)した時である。そして、時刻t3に向けて、短絡が発生しやすいように、送給制御はワイヤ送給速度WS3からワイヤ送給速度WS2へと前進送給へ移行する。
また、アーク期間の溶接制御(電流制御と電圧制御を併用)は、アーク発生時の時刻t2から、電流制御により、溶接電流Iを所定の傾きで上昇させる。その後、電圧制御を行い、基本溶接電圧VPを出力できるように溶接電流Iが出力される。すなわち、電圧制御の結果、溶接電流Iが出力される。そして、電圧制御を行うことによりアーク長を維持できるので、微小短絡が発生し難いアーク状態を維持することができる。その後、アーク開始から所定時間後に電圧制御から電流制御に制御を切り換え、電流制御により溶接電流Iを微小短絡しても大粒スパッタが発生しにくい電流値である100A以下のベース電流IBに低減させる。
このように、アーク開始時から所定時間後に溶接電流Iがベース電流IBとなるように所定の傾きをもって減少させることにより、アーク状態の急激な変化を緩和することができる。なお、ベース電流IBの値は、例えば実験等により溶接対象に適するような値とすればよい。そして、溶接電流Iをベース電流IBの状態に保つことで、短絡が発生しやすい状態を確保すると共に、微小短絡が発生したとしても溶接電流Iが低いため大粒スパッタが発生しにくいという効果がある。
従来のアーク溶接制御方法は、上述した短絡期間とアーク期間とのサイクルを周期的に繰り返すものである。
次に、図2に示す本実施の形態1における制御について、従来の制御を示す図1も用いながら比較して説明する。
図2は、設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度WS1を基準にして、逆送側の速度振幅を速度振幅WV2とし、正送側の速度振幅WV1を逆送側の速度振幅WV2の0.5倍の大きさに小さくした場合におけるワイヤ送給速度WS、溶接電流Iおよび溶接電圧Vの時間波形の一例である。なお、速度振幅WV1は、基本ワイヤ送給速度WS1を基準とした場合の正送側の速度振幅である。また、速度振幅WV2は、基本ワイヤ送給速度WS1を基準とした場合の逆送側の速度振幅である。
溶接制御は、図1を用いて説明した従来の制御と同一であるため説明を省略し、ワイヤ送給制御に関して説明する。
従来のワイヤ送給速度であれば、図1に示すように、短絡期間は時刻t1から時刻t2までとなる。しかし、図2に示す本実施の形態1のワイヤ送給速度であれば、正送側の速度振幅WV1が破線で示す速度振幅より小さく、正送側のワイヤ送給速度WS4が破線で示すワイヤ送給速度WS2より低い。そのため、短絡が発生するタイミングを、時刻t1から時刻t11へと遅らせることができる。従って、短絡期間は、図2に示すように時刻t11から時刻t2までとなり、従来の制御を示す図1の場合の時刻t1から時刻t2までの短絡期間と比べて短くなる。
一方、アーク期間は、正送側の速度振幅WV1を小さくしたことにより、図2に示すように時刻t3から時刻t13へと短絡が発生するタイミングが遅れる。これに伴い、アーク期間は図2に示すように時刻t2から時刻t13までとなり、図1の場合と比べてアーク期間が長くなる。
上述のように、ワイヤ送給送度の速度振幅を制御することにより、図1に示す従来の制御では短絡期間:アーク期間(短絡期間対アーク期間の比)が50:50(50対50=1)であったものを、図2に示す本実施の形態1の制御では、30:70(30対70=3/7)と変更することができる。
このように、基本ワイヤ送給速度WS1に対して、逆送側の速度振幅WV2より正送側の速度振幅WV1を小さく調整することで、短絡期間:アーク期間(短絡期間対アーク期間の比率)を変えることができる。そして、適正な溶接電圧および入熱を高く調整することができる。
ここで、図3に、基本ワイヤ送給速度WS1を基準とする正送側の速度振幅WV1を、逆送側の速度振幅WV2より小さく調整した場合の、短絡期間:アーク期間の比率を示す。すなわち図3において、横軸は、短絡期間とアーク期間との比率である。縦軸は、正送側の振幅量であり、逆送側の速度振幅に対する正送側の速度振幅の倍率(1以下)で表示している。なお、図3は、溶接法がMAG溶接、溶接ワイヤの径がΦ1.2とした場合の、短絡期間とアーク期間との比率に対する正送側の振幅量の関係の一例を示す。
図3に示すように、基本ワイヤ送給速度WS1を基準とした正送側の速度振幅WV1が、逆送側の速度振幅WV2と同じである1.0倍の時は、短絡期間:アーク期間は約50:50となる。速度振幅WV1が速度振幅WV2の0.75倍の時は、短絡期間:アーク期間は約40:60となる。速度振幅WV1が速度振幅WV2の0.5倍の時は、短絡期間:アーク期間は約30:70となる。速度振幅WV1が速度振幅WV2の0.25倍の時は、短絡期間:アーク期間は約25:75となる。
なお、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした逆送側の速度振幅WV2より正送側の速度振幅WV1を小さくする倍率は、設定電流、送給する溶接ワイヤのワイヤ径、ワイヤの種類、ワイヤの突出長および供給するシールドガスのうちの少なくとも一つに基づいて設定される方法としてもよい。この方法により、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できる。
そして、倍率は、このような溶接条件に基づいて実験等により求めた値を、表や数式として予め求めておくようにしても良い。
なお、当然ながら、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした逆送側の速度振幅WV2より正送側の速度振幅WV1が小さい程、すなわち、速度振幅WV1を求めるための倍率が小さい程、正送側のワイヤ送給速度WS4が小さくなる。そのため、正送側のワイヤ送給速度WS4が小さくした場合の平均送給速度を、正送側の速度振幅を小さくしない場合の平均送給速度と同一にするためには、基本ワイヤ送給速度WS1を高くする必要がある。なお、図2からも明らかように、基本ワイヤ送給速度WS1は平均送給速度ではない。
例えば、軟鋼φ1.2の溶接ワイヤを使用したMAG溶接において、設定電流200Aの場合の例として、基本ワイヤ送給速度WS1は、従来の制御では4.8m/minであるのに対して、本実施の形態1の制御では5.4m/minとなる。
また、速度振幅WV1は、従来の制御において10m/min以上、30m/min以下である場合、本実施の形態1の制御においては、逆送側の速度振幅に対する正送側の速度振幅の倍率を0.5倍とすると、5m/min以上、15m/min以下となる。
従って、平均送給速度を同一にするために基本ワイヤ送給速度WS1が高くなってしまっても、正送側の速度振幅WV1を小さくすることによる短絡発生のタイミングを遅らせることの効果は大きい。
なお、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした正送側の速度振幅WV1を1倍とし、この正送側の速度振幅WV1に1より大きい倍率を乗算することにより、逆送側の速度振幅WV2を決定するようにしてもよい。このようにすることでも、正送側の速度振幅WV1を逆送側の速度振幅WV2よりも小さくすることができる。
ここで、本実施の形態1の制御による効果を示す施工事例について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態1におけるアーク溶接の施工事例を短絡溶接や従来の制御との比較事例とともに示す図である。
図4は、軟鋼φ1.2の溶接ワイヤを使用し、MAG溶接で設定電流200Aのビードオンプレートで溶接を行った時のビード外観と断面マクロ写真を示している。
図4に示すように、従来の制御(周期的な送給制御を行い正送側と逆送側との速度振幅が同じ制御)である短絡期間:アーク期間が50:50の場合と比べる。本実施の形態1の制御である逆送側の速度振幅WV2に対して正送側の速度振幅WV1を0.5倍に小さくした場合の短絡期間:アーク期間が30:70の場合では、ビード幅が約1.3倍に広くなり、溶け込み量は約1.5倍に深くすることができる。
そして、本実施の形態1の制御を行った場合、同じく図4に示す周期的な送給制御を行わないこれまでの一定送給の一般的な短絡溶接で行ったビード外観(ここでは、ビート幅)および溶け込み量とほとんど同等の結果を得ることができる。
なお、本実施の形態1の制御では、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にして正送側の速度振幅WV1を調整する例を示した。しかし、これに限らず、逆送側のワイヤ送給速度波形と正送側のワイヤ送給速度波形を異なる波形にすることで、短絡期間とアーク期間との比率を調整することも可能である。例えば、正送側の送給を正弦波状とし、逆送側の送給を台形波状とするようにしてもよい。
すなわち、本実施の形態1のアーク溶接制御方法は、溶接ワイヤを自動送給しながら短絡とアークとを交互に繰り返して短絡溶接を行う消耗電極式のアーク溶接制御方法である。そして、本実施の形態1のアーク溶接制御方法は、設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度を基準にして、所定の周波数と所定の速度振幅で溶接ワイヤの送給の正送と逆送とを周期的に繰り返して短絡状態とアーク状態とを発生させる。そして、本実施の形態1のアーク溶接制御方法は、溶接ワイヤの周期的な送給の正送側と逆送側とで送給波形が異なるように前記溶接ワイヤの送給速度制御を行う方法からなる。
この方法により、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした正送側の速度振幅WV1を逆送側の速度振幅WV2よりも小さくすることにより、短絡期間の比率を小さくしてアーク期間の比率を長くするように調整することができる。そして、適正な溶接電圧を高めることができ、入熱も高めることができる。また、周期的な送給を行わない、これまでの一定送給の一般的な短絡溶接と溶接性を同等以上にできることで、広いビード幅や深い溶け込み量を確保することができる。
また、溶接ワイヤの周期的な送給の正送側と逆送側とで、速度振幅が異なるように溶接ワイヤの送給速度制御を行う方法としてもよい。この方法により、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できる。
また、溶接ワイヤの正送側の速度振幅が、溶接ワイヤの逆送側の速度振幅よりも小さい方法としてもよい。この方法により、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できる。
また、逆送側の速度振幅に1より小さい倍率を乗算したものを正送側の速度振幅とし、正送側の速度振幅を逆送側の速度振幅より小さく設定することにより短絡期間とアーク期間との比率の調整を行って溶接を行う方法としてもよい。この方法により、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できる。
次に、以上のようなアーク溶接制御を行うための本実施の形態1のアーク溶接装置について、図5を用いて説明する。図5は、本発明の実施の形態1におけるアーク溶接装置の概略構成を示す図である。なお、ワイヤ送給制御に関する部分を中心に説明する。
図5に示すように、アーク溶接装置は、入力電源1から入力した電力を整流する1次整流部2と、スイッチング部3と、トランス4と、2次整流部5およびDCL6と、駆動部7と、溶接電圧検出部8と、溶接電流検出部9と、短絡/アーク検出部10と、短絡制御部11と、アーク制御部12と、ワイヤ送給モータ制御部13と、溶接条件設定部18と、を備えている。ここで、スイッチング部3は、1次整流部2の出力を交流に変換する。トランス4は、スイッチング部3の出力を変圧する。2次整流部5およびDCL6は、トランス4の出力を整流する。駆動部7は、スイッチング部3を制御する。溶接電圧検出部8は、溶接電圧を検出する。溶接電流検出部9は、溶接電流を検出する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部8の出力および溶接電流検出部9の出力のうちの少なくともいずれかに基づいて溶接状態が短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する。短絡制御部11は、短絡状態である場合の溶接出力制御を行う。アーク制御部12は、アーク状態である場合の溶接出力制御を行う。ワイヤ送給モータ制御部13は、溶接ワイヤ19の送給制御を行う。溶接条件設定部18は、設定電流や溶接ワイヤ径や溶接ワイヤ材質等の溶接条件を設定する。
なお、ワイヤ送給モータ制御部13は、図5に示すように基本ワイヤ送給速度制御部14と、モータ極性切換制御部15と、ワイヤ速度振幅制御部16と、ワイヤ速度周波数制御部17とから構成される。
また、溶接ワイヤ19は、ワイヤ送給モータ23により送給される。そして、溶接ワイヤ19は、チップ20を介して電力が供給され、被溶接物22との間で溶接アーク21が発生して溶接が行われる。
なお、例えば、チップ20は図示しない溶接トーチに設けられ、この溶接トーチは図示しない産業用ロボットを構成するマニピュレータに取り付けられ、マニピュレータの動作により溶接トーチを移動させるようにしても良い。そして、産業用ロボットを構成しマニピュレータの動作を制御する図示しないロボット制御装置の内部に、1次整流部2から溶接条件設定部18までの各構成要素が設けられるようにしてもよい。
溶接電圧検出部8は、溶接用電源出力端子間に接続され、検出した電圧に対応した信号を出力する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部8からの信号に基づいて、溶接出力電圧が一定値以上であるのか未満であるのかを判定する。そして、短絡/アーク検出部10は、この判定結果により溶接ワイヤ19が被溶接物22に接触短絡しているか、それとも非接触状態で溶接アーク21を発生しているかを判定して判定信号を出力する。
次に、ワイヤ送給モータ制御部13による溶接ワイヤ19の送給制御について説明する。
ワイヤ送給モータ制御部13は、基本ワイヤ送給速度制御部14と、モータ極性切換制御部15と、ワイヤ速度振幅制御部16と、ワイヤ速度周波数制御部17と、から構成されている。
基本ワイヤ送給速度制御部14は、溶接ワイヤの周期的な送給の基準である基本ワイヤ送給速度WS1を出力するものである。この基本ワイヤ送給速度制御部14は、設定電流と基本ワイヤ送給速度WS1とを対応付けた表あるいは計算式を有しており、溶接条件設定部18で設定された設定電流に基づいて基本ワイヤ送給速度WS1を決定するものである。なお、設定電流と基本ワイヤ送給速度WS1との関係は、例えば実験等により予め求めておくようにしても良い。
ワイヤ速度振幅制御部16は、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした逆送側の速度振幅WV2と、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした正送側の速度振幅WV1を出力するものである。このワイヤ速度振幅制御部16は、設定電流と逆送側のワイヤ送給速度WS3すなわち逆送側の速度振幅WV2とを対応付けた表あるいは計算式を有している。ワイヤ速度振幅制御部16は、溶接条件設定部18で設定された設定電流に基づいて、逆送側のワイヤ送給速度WS3すなわち逆送側の速度振幅WV2を決定する。なお、設定電流と逆送側のワイヤ送給速度WS3すなわち逆送側の速度振幅WV2との関係は、例えば実験等により予め求めておくようにしても良い。
また、ワイヤ速度振幅制御部16は、決定した逆送側の速度振幅WV2に1より小さい倍率を乗算することで、正送側の速度振幅WV1を決定する。すなわち、正送側の速度振幅WV1は、逆送側の速度振幅WV2より小さいものとなる。なお、この倍率は、溶接条件設定部18で設定される溶接条件である設定電流、送給する溶接ワイヤのワイヤ径、ワイヤの種類、ワイヤの突出長および供給するシールドガスのうちの少なくとも一つに基づいて決定される。ここで、ワイヤ速度振幅制御部16は、倍率と溶接条件設定部18で設定される溶接条件とを対応付けた表あるいは計算式を有しており、溶接条件設定部18で設定された溶接条件に基づいて倍率を決定するものである。そして、倍率と溶接条件設定部18で設定された溶接条件との関係は、例えば実験等により予め求めておくようにしても良い。
ワイヤ速度周波数制御部17は、正送と逆送との周期的なワイヤ送給の周波数を出力するものである。このワイヤ速度周波数制御部17は、設定電流と周期的な送給の周波数を対応付けた表あるいは計算式を有しており、溶接条件設定部18で設定された設定電流に基づいて周波数を決定するものである。なお、設定電流と周波数との関係は、例えば実験等により予め求めておくようにしても良い。
モータ極性切換制御部15は、計時機能を有しており、ワイヤ速度周波数制御部17で決定した周波数と、経過時間に基づいて、溶接ワイヤ19の正送あるいは逆送に関するワイヤ送給モータ23の回転方向を示す信号を出力するものである。
なお、基本ワイヤ送給速度WS1と、ワイヤ送給モータ23の回転方向を示す信号と、溶接ワイヤ19の逆送側の速度振幅WV2と、溶接ワイヤ19の正送側の速度振幅WV1と、周期的な送給の周波数は、溶接を行う前に溶接条件設定部18で設定された溶接条件に基づいて決定されるものである。
そして、ワイヤ送給モータ制御部13が、基本ワイヤ送給速度WS1と、ワイヤ送給モータ23の回転方向を示す信号と、溶接ワイヤ19の逆送側の速度振幅WV2と、溶接ワイヤ19の正送側の速度振幅WV1と、周期的な送給の周波数とに基づいて、ワイヤ送給モータ23を制御する。これにより、本実施の形態1のアーク溶接装置は、溶接ワイヤ19の正送側と逆送側とで速度振幅が異なるように溶接ワイヤ19の送給速度を制御して周期的な送給制御が行われる構成としている。
この構成により、溶接ワイヤ19の周期的な送給の基本ワイヤ送給速度を基準とした正送側と逆送側とで送給波形が異なるように送給速度の制御を行うことで、溶接ワイヤ19の周期的な送給制御において、溶接の短絡期間とアーク期間の比率を変更することができる。
そして、溶接ワイヤ19の周期的な送給制御において、適正な溶接電圧を高めることができ、入熱も高めることができ、その結果、広いビード幅や深い溶け込み量を確保することができる。
また、溶接ワイヤ19の周期的な送給制御を行わずに溶接ワイヤの一定速度送給を行う短絡溶接と同等のビード幅や溶け込み量といった溶接性を実現することができる。
なお、逆送側の速度振幅に1より小さい倍率を乗算したものを正送側の速度振幅とし、正送側の速度振幅を逆送側の速度振幅より小さく変更することで短絡期間とアーク期間との比率の調整を行って溶接を行う構成としてもよい。この構成により、溶接ワイヤ19の周期的な送給制御において、適正な溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保することができる。
なお、図2に示すように、時刻t11から時刻t2までの短絡期間では、ワイヤ送給モータ制御部13からの信号を受信したワイヤ送給モータ23により、溶接ワイヤ19は、ワイヤ送給速度WS3となるように送給速度が減速されている。
また、図2に示すように、時刻t2から時刻t13までのアーク期間では、ワイヤ送給モータ制御部13からの信号を受信したワイヤ送給モータ23により、溶接ワイヤ19は、ワイヤ送給速度WS4となるように送給速度が加速されている。
本実施の形態1のアーク溶接装置は、上述したワイヤ送給制御により短絡期間とアーク期間とのサイクルを周期的に繰り返すものである。なお、アーク溶接装置を構成する各構成部は、各々単独に構成してもよいし、複数の構成部を複合して構成するようにしてもよい。
以上のように、本実施の形態1のアーク溶接装置およびアーク溶接制御方法によれば、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした正送側の速度振幅WV1を逆送側の速度振幅WV2よりも小さくする。これにより、短絡期間の比率を小さくしてアーク期間の比率を長くするように調整することができる。そして、適正な溶接電圧を高めることができ、入熱も高めることができる。
また、周期的な送給を行わないこれまでの一定送給の一般的な短絡溶接と溶接性を同等以上にできることで、広いビード幅や深い溶け込み量を確保することができる。
(実施の形態2)
図6は、溶接ワイヤ19の送給の正送側の速度振幅と逆送側の速度振幅が等しい時に、従来の周期的なワイヤ送給制御を行った場合のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。図7は、本発明の実施の形態2におけるワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。また、図5は、本発明の実施の形態2におけるアーク溶接装置の概略構成を示す図である。本実施の形態2において、実施の形態1と異なる主な点は、ワイヤ送給の波形が周期的な正弦波状ではなく、周期的な台形波状とした点である。
基本ワイヤ送給速度WS1を基準にして所定の周波数と速度振幅で正送と逆送とを周期的に繰り返す制御であれば、このようにワイヤ送給の波形を台形波状にしても、正弦波状と同様の効果を出すことができる。
図6に、従来の周期的な送給制御においてワイヤ送給の波形を台形波状とした場合の、ワイヤ送給速度WS、溶接電流Iおよび溶接電圧Vの波形を示す。また、図7に、本実施の形態2におけるワイヤ送給速度WS、溶接電流Iおよび溶接電圧Vの時間波形を示す。
図6に示す従来の制御の場合、短絡期間は、時刻t1から時刻t2までとなる。しかし、図7に示す本実施の形態2のワイヤ送給速度の場合、図7に示すように正送側の速度振幅WV1が逆送側の速度振幅WV2よりも小さく、ワイヤ送給速度WS4がワイヤ送給速度WS2よりも低い。そのため、短絡が発生するタイミングが時刻t1から時刻t11へと遅れることになり、短絡期間は時刻t11から時刻t2までとなり、従来の制御の場合に比べて短絡期間が短くなる。
また、本実施の形態2のワイヤ送給制御の場合、アーク期間は、時刻t3から時刻t13へと短絡が発生するタイミングが遅れる。これにより、アーク期間は時刻t2から時刻t13までとなり、従来の制御の場合に比べてアーク期間が長くなる。
これは、従来の制御では短絡期間:アーク期間が50:50(50対50)であったものが、本実施の形態2では、例えば30:70(30対70)にすることができる。このように、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした逆送側の速度振幅WV2より正送側の速度振幅WV1を小さく調整することで、短絡期間:アーク期間の比率を変えることでき、適正な溶接電圧および入熱を調整することができる。
また、基本ワイヤ送給速度を基準にして、溶接ワイヤ19の送給波形を正弦波状に変化させて、または、溶接ワイヤ19の送給波形を台形波状に変化させて、溶接ワイヤ19の送給を行う方法としてもよい。この方法により、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できる。
なお、アーク溶接装置の構成は、実施の形態1と同様に図5で示すもので良い。また、図5に示したアーク溶接装置を構成する各構成部は、各々単独に構成してもよいし、複数の構成部を複合して構成するようにしてもよい。
本発明によれば、溶接ワイヤの周期的な送給の基本ワイヤ送給速度を基準とした正送側と逆送側とで送給波形が異なるように送給速度の制御を行う。これにより、溶接ワイヤの周期的な送給制御において、溶接の短絡期間とアーク期間との比率を変更することができ、溶接ワイヤを周期的に送給することで溶接を行うアーク溶接制御方法およびアーク溶接装置として利用することができ、産業上有用である。
1 入力電源
2 1次整流部
3 スイッチング部
4 トランス
5 2次整流部
6 DCL
7 駆動部
8 溶接電圧検出部
9 溶接電流検出部
10 短絡/アーク検出部
11 短絡制御部
12 アーク制御部
13 ワイヤ送給モータ制御部
14 基本ワイヤ送給速度制御部
15 モータ極性切換制御部
16 ワイヤ速度振幅制御部
17 ワイヤ速度周波数制御部
18 溶接条件設定部
19 溶接ワイヤ
20 チップ
21 溶接アーク
22 被溶接物
23 ワイヤ送給モータ
本発明は、消耗電極である溶接ワイヤを連続的に送給しながら短絡溶接を行うアーク溶接制御方法およびアーク溶接装置に関する。
図8は、溶接ワイヤの周期的な送給を行い、短絡を伴う従来のアーク溶接の溶接ワイヤ送給制御方法を示す出力の時間波形である。図8は、具体的にはワイヤ送給速度WS、溶接電流Iおよび溶接電圧Vの時間変化を示す。
図8に示すように、時点P1は、短絡を開始した時点を示している。時点P1以降の短絡期間では、アーク溶接装置は、短絡初期電流を所定時間出力した後、溶接電流Iとして短絡電流の第1段目の増加傾きdi/dtを出力し、続けて、短絡電流の第2段目の増加傾きdi/dtを出力する。その後、溶融プールと溶接ワイヤ先端との間に出来た溶滴のくびれを検出すると、アーク溶接装置は溶接電流Iを低電流に瞬時に移行させる。時点P2は、溶滴のくびれが離れ、短絡状態が終了してアークが発生した時点を示している。
時点P2からのアーク期間において、アーク溶接装置はアーク発生直後にピーク電流の溶接電流を出力し、その後、ピーク電流IPからベース電流IBへ移行する。このアーク期間は、電流制御でも電圧制御でもどちらの制御でも可能な期間であり、ベース電流に移行した段階で次の短絡を待つことになる。時点P3は、次の短絡が発生した時点を示している。
また、所定の周波数と所定の速度振幅で、基本波形である正弦波状に正送と逆送とを周期的に繰り返すワイヤ送給制御を行っている。そして、正送側のピーク時では時点P1周辺で短絡が発生し、逆送側のピーク時では時点P2周辺でアークが発生することになる。また、時点P2の後の正送のピーク時に、時点P3周辺で次の短絡が発生する。以上のように、時点P1から時点P3までを制御の1周期WFとし、これを繰り返して溶接が行われる。
このように、短絡状態またはアーク状態の発生は、基本的には、ワイヤ送給速度の正送と逆送とを周期的に繰り返すワイヤ送給制御に依存するものである。
上述の従来の制御は、ワイヤ送給速度が正送と逆送とを正弦波状に周期的に繰り返すことにより、短絡状態とアーク状態とを周期的に発生させて溶接を行う制御方法を用いている。この制御方法は、設定電流毎に適したワイヤ送給速度の平均送給速度を基準にして周波数および速度振幅を設定することにより、低電流から高電流まで対応することができる(例えば、特許文献1参照)。
また、ワイヤ送給速度の正送と逆送は正弦波状であることから、矩形波状とは異なり、ワイヤ送給モータやギヤなどのモータ周辺部品への負担が小さく、矩形波状の場合に比べてこれらの寿命を長くすることができる。
上述の従来の送給制御方法では、図8に示すように、正送側のピーク時では時点P1周辺で短絡が発生し、逆送側のピーク時では時点P2周辺でアークが発生することになる。また、時点P2の後の正送のピーク時に時点P3周辺で次の短絡が発生する。このように、時点P1から時点P3までを制御の1周期WFとし、これを繰り返して溶接を行う。そのため、(時刻t1から時刻t2までの短絡期間):(時刻t2から時刻t3までのアーク期間)=50:50(時間比率が50対50)になる。これに対し、溶接ワイヤの周期的な送給は行わない、これまでの溶接ワイヤの一定送給を行う一般的な短絡溶接では、短絡期間:アーク期間=20:80(20対80)から30:70(30対70)までの範囲の比率である。
このように、従来の正送と逆送を周期的に行うアーク溶接制御方法では、一般的な短絡溶接に比べて短絡期間の占める比率が50%と高く、アーク期間の占める比率が低くなるため、溶接電圧を上げることが困難である。従って、被溶接物への入熱が低く、ビード幅が細く、溶け込み量が浅いという溶接結果になる。従来の正送と逆送を周期的に行うアーク溶接制御方法は、アーク不安定をなくし、ビード欠陥、スパッタ増加、溶け込み不良(溶け込みのバラツキ)等の改善はできる。しかし、溶接電圧を上げることが困難なので、これまでの一般的な短絡溶接と同等の広いビード幅や深い溶け込み量を確保できないという課題があった。
国際公開第2011/013321号
本発明は、溶接ワイヤの周期的な送給制御において、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できるアーク溶接制御方法およびアーク溶接装置を提供する。
上記課題を解決するために、本発明のアーク溶接制御方法は、溶接ワイヤを自動送給しながら短絡とアークを交互に繰り返して短絡溶接を行う消耗電極式のアーク溶接制御方法である。そして、本発明のアーク溶接制御方法は、設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度を基準にして所定の周波数と所定の速度振幅で上記溶接ワイヤの送給の正送と逆送とを周期的に繰り返して短絡状態とアーク状態とを発生させる。そして、本発明のアーク溶接制御方法は、上記溶接ワイヤの周期的な送給の正送側と逆送側とで送給波形が異なるように上記溶接ワイヤの送給速度制御を行う方法である。
この方法により、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できる。
また、本発明のアーク溶接装置は、消耗電極である溶接ワイヤと被溶接物との間でアークの発生と短絡とを繰り返して溶接を行うアーク溶接装置である。そして、本発明のアーク溶接装置は、溶接条件設定部と、ワイヤ送給モータと、スイッチング部と、溶接電圧検出部と、短絡/アーク検出部と、短絡制御部と、アーク制御部と、駆動部と、ワイヤ送給モータ制御部とを備えている。ここで、溶接条件設定部は、少なくとも設定電流を設定する。ワイヤ送給モータは、溶接ワイヤを送給する。スイッチング部は、溶接出力を制御する。溶接電圧検出部は、溶接電圧を検出する。短絡/アーク検出部は、溶接電圧検出部の出力に基づいて短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する。短絡制御部は、短絡状態であるときの溶接出力制御信号を出力する。アーク制御部は、アーク状態であるときの溶接出力制御信号を出力する。駆動部は、短絡制御部またはアーク制御部からの信号に基づいて前記スイッチング部を制御する。ワイヤ送給モータ制御部は、所定の周波数と所定の速度振幅で溶接ワイヤの送給の正送と逆送とを周期的に繰り返すようにワイヤ送給モータを制御する。そして、上記ワイヤ送給モータ制御部は、基本ワイヤ送給速度制御部と、モータ極性切換制御部と、ワイヤ速度振幅制御部と、ワイヤ速度周波数制御部とを有する。ここで、基本ワイヤ送給速度制御部は、溶接ワイヤの周期的な送給の基準であり設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度を出力する。モータ極性切換制御部は、溶接ワイヤの正送あるいは逆送に関するワイヤ送給モータの回転方向を示す信号を出力する。ワイヤ速度振幅制御部は、基本ワイヤ送給速度を基準にした逆送側の速度振幅と逆送側の速度振幅よりも小さい正送側の速度振幅とを出力する。ワイヤ速度周波数制御部は、設定電流に応じたワイヤ送給周波数を出力する。そして、ワイヤ送給モータ制御部が、上記基本ワイヤ送給速度と、上記ワイヤ送給モータの回転方向を示す信号と、上記溶接ワイヤの逆送側の速度振幅と、上記溶接ワイヤの正送側の速度振幅と、上記ワイヤ送給周波数とに基づいて、上記ワイヤ送給モータを制御する。これにより、本発明のアーク溶接装置は、上記溶接ワイヤの周期的な送給の正送側と逆送側とで送給波形が異なるように上記溶接ワイヤの送給速度を制御して溶接を行う構成としている。
この構成により、溶接ワイヤの周期的な送給制御において、適正な溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保することができる。
また、この構成により、短絡溶接と同等のビード幅や溶け込み量といった溶接性を備えたアーク溶接装置を実現することができる。
図1は、溶接ワイヤの送給の正送側の速度振幅と逆送側の速度振幅が等しい時に、従来の周期的なワイヤ送給制御を行った場合のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。 図2は、本発明の実施の形態1におけるワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。 図3は、本発明の実施の形態1における短絡期間とアーク期間の比率に対する正送側の振幅量の関係を示す図である。 図4は、本発明の実施の形態1におけるアーク溶接の施工事例を短絡溶接や従来の制御との比較事例とともに示す図である。 図5は、本発明の実施の形態1および実施の形態2におけるアーク溶接装置の概略構成を示す図である。 図6は、溶接ワイヤの送給の正送側の速度振幅と逆送側の速度振幅が等しい時に、従来の周期的なワイヤ送給制御を行った場合のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。 図7は、本発明の実施の形態2におけるワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。 図8は、溶接ワイヤの送給の正送側の速度振幅と逆送側の速度振幅が等しい時に、従来の周期的なワイヤ送給制御を行った時のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同じ構成要素については同じ符号を付しているので説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
図1は、溶接ワイヤの送給の正送側の速度振幅と逆送側の速度振幅が等しい時に、従来の周期的なワイヤ送給制御を行った場合のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。図2は、本発明の実施の形態1における短絡を伴うアーク溶接装置によるアーク溶接制御方法を示す出力波形図である。図2は、本発明の実施の形態1におけるワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す。従来の制御を示す図1と比較することで、本実施の形態1の制御を示す図2の効果を説明する。
図1と図2は、ワイヤ送給速度WS、溶接電圧Vおよび溶接電流Iの時間変化を示す。
図1に示すワイヤ送給制御は、基本的に以下のように行われている。図1に示す時刻t1から時刻t2までの短絡期間は、平均ワイヤ送給速度WS0を基準に、正送側のワイヤ送給速度WS2から逆送側のワイヤ送給速度WS3へと後退送給する。また、図1に示す時刻t2から時刻t3までのアーク期間では、ワイヤ送給速度WS3からワイヤ送給速度WS2へと前進送給する。
また、図2に示すワイヤ送給制御は、基本的に以下のように行われている。図2に示す時刻t11から時刻t2までの短絡期間は、設定電流に応じて決定される基本ワイヤ送給速度WS1を基準に、正送側のワイヤ送給速度WS4から逆送側のワイヤ送給速度WS3へと後退送給する。また、図2に示す時刻t2から時刻t13までのアーク期間では、ワイヤ送給速度WS3からワイヤ送給速度WS4へと前進送給する。なお、基本ワイヤ送給速度WS1は設定電流に応じて決定される。ここで、溶接開始前に設定される設定電流、ワイヤ送給速度およびワイヤ送給量は、比例の関係にあることは明らかである。従って、設定電流ではなく、設定されたワイヤ送給速度あるいは設定されたワイヤ送給量に応じて基本ワイヤ送給速度WS1を決定するようにしてもよい。
なお、先ず、図1に示す従来の周期的な送給制御について説明し、その後、図2に示す本発明の実施の形態1の周期的な送給制御について説明する。
従来の制御を示す図1の時刻t1から時刻t2までの短絡期間において、時刻t1は、溶接ワイヤと溶融プールが確実に短絡した時である。そして、時刻t2に向けて、短絡開放を円滑に行えるように、送給制御はワイヤ送給速度WS2からワイヤ送給速度WS3へと後退送給へ移行する。
また、短絡期間の溶接制御(電流制御のみ)は、短絡発生時の時刻t1から、電流制御により、溶接電流Iを所定の傾きで上昇させる。なお、短絡期間の終端直前、すなわち、時刻t2の直前においては、従来から知られているように、スパッタの削減のため、溶融した溶接ワイヤのくびれを検知して溶接電流Iを急峻に低減させるように制御している。
時刻t2から時刻t3までのアーク期間において、時刻t2は、アークが発生(短絡が開放)した時である。そして、時刻t3に向けて、短絡が発生しやすいように、送給制御はワイヤ送給速度WS3からワイヤ送給速度WS2へと前進送給へ移行する。
また、アーク期間の溶接制御(電流制御と電圧制御を併用)は、アーク発生時の時刻t2から、電流制御により、溶接電流Iを所定の傾きで上昇させる。その後、電圧制御を行い、基本溶接電圧VPを出力できるように溶接電流Iが出力される。すなわち、電圧制御の結果、溶接電流Iが出力される。そして、電圧制御を行うことによりアーク長を維持できるので、微小短絡が発生し難いアーク状態を維持することができる。その後、アーク開始から所定時間後に電圧制御から電流制御に制御を切り換え、電流制御により溶接電流Iを微小短絡しても大粒スパッタが発生しにくい電流値である100A以下のベース電流IBに低減させる。
このように、アーク開始時から所定時間後に溶接電流Iがベース電流IBとなるように所定の傾きをもって減少させることにより、アーク状態の急激な変化を緩和することができる。なお、ベース電流IBの値は、例えば実験等により溶接対象に適するような値とすればよい。そして、溶接電流Iをベース電流IBの状態に保つことで、短絡が発生しやすい状態を確保すると共に、微小短絡が発生したとしても溶接電流Iが低いため大粒スパッタが発生しにくいという効果がある。
従来のアーク溶接制御方法は、上述した短絡期間とアーク期間とのサイクルを周期的に繰り返すものである。
次に、図2に示す本実施の形態1における制御について、従来の制御を示す図1も用いながら比較して説明する。
図2は、設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度WS1を基準にして、逆送側の速度振幅を速度振幅WV2とし、正送側の速度振幅WV1を逆送側の速度振幅WV2の0.5倍の大きさに小さくした場合におけるワイヤ送給速度WS、溶接電流Iおよび溶接電圧Vの時間波形の一例である。なお、速度振幅WV1は、基本ワイヤ送給速度WS1を基準とした場合の正送側の速度振幅である。また、速度振幅WV2は、基本ワイヤ送給速度WS1を基準とした場合の逆送側の速度振幅である。
溶接制御は、図1を用いて説明した従来の制御と同一であるため説明を省略し、ワイヤ送給制御に関して説明する。
従来のワイヤ送給速度であれば、図1に示すように、短絡期間は時刻t1から時刻t2までとなる。しかし、図2に示す本実施の形態1のワイヤ送給速度であれば、正送側の速度振幅WV1が破線で示す速度振幅より小さく、正送側のワイヤ送給速度WS4が破線で示すワイヤ送給速度WS2より低い。そのため、短絡が発生するタイミングを、時刻t1から時刻t11へと遅らせることができる。従って、短絡期間は、図2に示すように時刻t11から時刻t2までとなり、従来の制御を示す図1の場合の時刻t1から時刻t2までの短絡期間と比べて短くなる。
一方、アーク期間は、正送側の速度振幅WV1を小さくしたことにより、図2に示すように時刻t3から時刻t13へと短絡が発生するタイミングが遅れる。これに伴い、アーク期間は図2に示すように時刻t2から時刻t13までとなり、図1の場合と比べてアーク期間が長くなる。
上述のように、ワイヤ送給送度の速度振幅を制御することにより、図1に示す従来の制御では短絡期間:アーク期間(短絡期間対アーク期間の比)が50:50(50対50=1)であったものを、図2に示す本実施の形態1の制御では、30:70(30対70=3/7)と変更することができる。
このように、基本ワイヤ送給速度WS1に対して、逆送側の速度振幅WV2より正送側の速度振幅WV1を小さく調整することで、短絡期間:アーク期間(短絡期間対アーク期間の比率)を変えることができる。そして、適正な溶接電圧および入熱を高く調整することができる。
ここで、図3に、基本ワイヤ送給速度WS1を基準とする正送側の速度振幅WV1を、逆送側の速度振幅WV2より小さく調整した場合の、短絡期間:アーク期間の比率を示す。すなわち図3において、横軸は、短絡期間とアーク期間との比率である。縦軸は、正送側の振幅量であり、逆送側の速度振幅に対する正送側の速度振幅の倍率(1以下)で表示している。なお、図3は、溶接法がMAG溶接、溶接ワイヤの径がΦ1.2とした場合の、短絡期間とアーク期間との比率に対する正送側の振幅量の関係の一例を示す。
図3に示すように、基本ワイヤ送給速度WS1を基準とした正送側の速度振幅WV1が、逆送側の速度振幅WV2と同じである1.0倍の時は、短絡期間:アーク期間は約50:50となる。速度振幅WV1が速度振幅WV2の0.75倍の時は、短絡期間:アーク期間は約40:60となる。速度振幅WV1が速度振幅WV2の0.5倍の時は、短絡期間:アーク期間は約30:70となる。速度振幅WV1が速度振幅WV2の0.25倍の時は、短絡期間:アーク期間は約25:75となる。
なお、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした逆送側の速度振幅WV2より正送側の速度振幅WV1を小さくする倍率は、設定電流、送給する溶接ワイヤのワイヤ径、ワイヤの種類、ワイヤの突出長および供給するシールドガスのうちの少なくとも一つに基づいて設定される方法としてもよい。この方法により、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できる。
そして、倍率は、このような溶接条件に基づいて実験等により求めた値を、表や数式として予め求めておくようにしても良い。
なお、当然ながら、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした逆送側の速度振幅WV2より正送側の速度振幅WV1が小さい程、すなわち、速度振幅WV1を求めるための倍率が小さい程、正送側のワイヤ送給速度WS4が小さくなる。そのため、正送側のワイヤ送給速度WS4が小さくした場合の平均送給速度を、正送側の速度振幅を小さくしない場合の平均送給速度と同一にするためには、基本ワイヤ送給速度WS1を高くする必要がある。なお、図2からも明らかように、基本ワイヤ送給速度WS1は平均送給速度ではない。
例えば、軟鋼φ1.2の溶接ワイヤを使用したMAG溶接において、設定電流200Aの場合の例として、基本ワイヤ送給速度WS1は、従来の制御では4.8m/minであるのに対して、本実施の形態1の制御では5.4m/minとなる。
また、速度振幅WV1は、従来の制御において10m/min以上、30m/min以下である場合、本実施の形態1の制御においては、逆送側の速度振幅に対する正送側の速度振幅の倍率を0.5倍とすると、5m/min以上、15m/min以下となる。
従って、平均送給速度を同一にするために基本ワイヤ送給速度WS1が高くなってしまっても、正送側の速度振幅WV1を小さくすることによる短絡発生のタイミングを遅らせることの効果は大きい。
なお、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした正送側の速度振幅WV1を1倍とし、この正送側の速度振幅WV1に1より大きい倍率を乗算することにより、逆送側の速度振幅WV2を決定するようにしてもよい。このようにすることでも、正送側の速度振幅WV1を逆送側の速度振幅WV2よりも小さくすることができる。
ここで、本実施の形態1の制御による効果を示す施工事例について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態1におけるアーク溶接の施工事例を短絡溶接や従来の制御との比較事例とともに示す図である。
図4は、軟鋼φ1.2の溶接ワイヤを使用し、MAG溶接で設定電流200Aのビードオンプレートで溶接を行った時のビード外観と断面マクロ写真を示している。
図4に示すように、従来の制御(周期的な送給制御を行い正送側と逆送側との速度振幅が同じ制御)である短絡期間:アーク期間が50:50の場合と比べる。本実施の形態1の制御である逆送側の速度振幅WV2に対して正送側の速度振幅WV1を0.5倍に小さくした場合の短絡期間:アーク期間が30:70の場合では、ビード幅が約1.3倍に広くなり、溶け込み量は約1.5倍に深くすることができる。
そして、本実施の形態1の制御を行った場合、同じく図4に示す周期的な送給制御を行わないこれまでの一定送給の一般的な短絡溶接で行ったビード外観(ここでは、ビート幅)および溶け込み量とほとんど同等の結果を得ることができる。
なお、本実施の形態1の制御では、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にして正送側の速度振幅WV1を調整する例を示した。しかし、これに限らず、逆送側のワイヤ送給速度波形と正送側のワイヤ送給速度波形を異なる波形にすることで、短絡期間とアーク期間との比率を調整することも可能である。例えば、正送側の送給を正弦波状とし、逆送側の送給を台形波状とするようにしてもよい。
すなわち、本実施の形態1のアーク溶接制御方法は、溶接ワイヤを自動送給しながら短絡とアークとを交互に繰り返して短絡溶接を行う消耗電極式のアーク溶接制御方法である。そして、本実施の形態1のアーク溶接制御方法は、設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度を基準にして、所定の周波数と所定の速度振幅で溶接ワイヤの送給の正送と逆送とを周期的に繰り返して短絡状態とアーク状態とを発生させる。そして、本実施の形態1のアーク溶接制御方法は、溶接ワイヤの周期的な送給の正送側と逆送側とで送給波形が異なるように前記溶接ワイヤの送給速度制御を行う方法からなる。
この方法により、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした正送側の速度振幅WV1を逆送側の速度振幅WV2よりも小さくすることにより、短絡期間の比率を小さくしてアーク期間の比率を長くするように調整することができる。そして、適正な溶接電圧を高めることができ、入熱も高めることができる。また、周期的な送給を行わない、これまでの一定送給の一般的な短絡溶接と溶接性を同等以上にできることで、広いビード幅や深い溶け込み量を確保することができる。
また、溶接ワイヤの周期的な送給の正送側と逆送側とで、速度振幅が異なるように溶接ワイヤの送給速度制御を行う方法としてもよい。この方法により、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できる。
また、溶接ワイヤの正送側の速度振幅が、溶接ワイヤの逆送側の速度振幅よりも小さい方法としてもよい。この方法により、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できる。
また、逆送側の速度振幅に1より小さい倍率を乗算したものを正送側の速度振幅とし、正送側の速度振幅を逆送側の速度振幅より小さく設定することにより短絡期間とアーク期間との比率の調整を行って溶接を行う方法としてもよい。この方法により、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できる。
次に、以上のようなアーク溶接制御を行うための本実施の形態1のアーク溶接装置について、図5を用いて説明する。図5は、本発明の実施の形態1におけるアーク溶接装置の概略構成を示す図である。なお、ワイヤ送給制御に関する部分を中心に説明する。
図5に示すように、アーク溶接装置は、入力電源1から入力した電力を整流する1次整流部2と、スイッチング部3と、トランス4と、2次整流部5およびDCL6と、駆動部7と、溶接電圧検出部8と、溶接電流検出部9と、短絡/アーク検出部10と、短絡制御部11と、アーク制御部12と、ワイヤ送給モータ制御部13と、溶接条件設定部18と、を備えている。ここで、スイッチング部3は、1次整流部2の出力を交流に変換する。トランス4は、スイッチング部3の出力を変圧する。2次整流部5およびDCL6は、トランス4の出力を整流する。駆動部7は、スイッチング部3を制御する。溶接電圧検出部8は、溶接電圧を検出する。溶接電流検出部9は、溶接電流を検出する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部8の出力および溶接電流検出部9の出力のうちの少なくともいずれかに基づいて溶接状態が短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する。短絡制御部11は、短絡状態である場合の溶接出力制御を行う。アーク制御部12は、アーク状態である場合の溶接出力制御を行う。ワイヤ送給モータ制御部13は、溶接ワイヤ19の送給制御を行う。溶接条件設定部18は、設定電流や溶接ワイヤ径や溶接ワイヤ材質等の溶接条件を設定する。
なお、ワイヤ送給モータ制御部13は、図5に示すように基本ワイヤ送給速度制御部14と、モータ極性切換制御部15と、ワイヤ速度振幅制御部16と、ワイヤ速度周波数制御部17とから構成される。
また、溶接ワイヤ19は、ワイヤ送給モータ23により送給される。そして、溶接ワイヤ19は、チップ20を介して電力が供給され、被溶接物22との間で溶接アーク21が発生して溶接が行われる。
なお、例えば、チップ20は図示しない溶接トーチに設けられ、この溶接トーチは図示しない産業用ロボットを構成するマニピュレータに取り付けられ、マニピュレータの動作により溶接トーチを移動させるようにしても良い。そして、産業用ロボットを構成しマニピュレータの動作を制御する図示しないロボット制御装置の内部に、1次整流部2から溶接条件設定部18までの各構成要素が設けられるようにしてもよい。
溶接電圧検出部8は、溶接用電源出力端子間に接続され、検出した電圧に対応した信号を出力する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部8からの信号に基づいて、溶接出力電圧が一定値以上であるのか未満であるのかを判定する。そして、短絡/アーク検出部10は、この判定結果により溶接ワイヤ19が被溶接物22に接触短絡しているか、それとも非接触状態で溶接アーク21を発生しているかを判定して判定信号を出力する。
次に、ワイヤ送給モータ制御部13による溶接ワイヤ19の送給制御について説明する。
ワイヤ送給モータ制御部13は、基本ワイヤ送給速度制御部14と、モータ極性切換制御部15と、ワイヤ速度振幅制御部16と、ワイヤ速度周波数制御部17と、から構成されている。
基本ワイヤ送給速度制御部14は、溶接ワイヤの周期的な送給の基準である基本ワイヤ送給速度WS1を出力するものである。この基本ワイヤ送給速度制御部14は、設定電流と基本ワイヤ送給速度WS1とを対応付けた表あるいは計算式を有しており、溶接条件設定部18で設定された設定電流に基づいて基本ワイヤ送給速度WS1を決定するものである。なお、設定電流と基本ワイヤ送給速度WS1との関係は、例えば実験等により予め求めておくようにしても良い。
ワイヤ速度振幅制御部16は、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした逆送側の速度振幅WV2と、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした正送側の速度振幅WV1を出力するものである。このワイヤ速度振幅制御部16は、設定電流と逆送側のワイヤ送給速度WS3すなわち逆送側の速度振幅WV2とを対応付けた表あるいは計算式を有している。ワイヤ速度振幅制御部16は、溶接条件設定部18で設定された設定電流に基づいて、逆送側のワイヤ送給速度WS3すなわち逆送側の速度振幅WV2を決定する。なお、設定電流と逆送側のワイヤ送給速度WS3すなわち逆送側の速度振幅WV2との関係は、例えば実験等により予め求めておくようにしても良い。
また、ワイヤ速度振幅制御部16は、決定した逆送側の速度振幅WV2に1より小さい倍率を乗算することで、正送側の速度振幅WV1を決定する。すなわち、正送側の速度振幅WV1は、逆送側の速度振幅WV2より小さいものとなる。なお、この倍率は、溶接条件設定部18で設定される溶接条件である設定電流、送給する溶接ワイヤのワイヤ径、ワイヤの種類、ワイヤの突出長および供給するシールドガスのうちの少なくとも一つに基づいて決定される。ここで、ワイヤ速度振幅制御部16は、倍率と溶接条件設定部18で設定される溶接条件とを対応付けた表あるいは計算式を有しており、溶接条件設定部18で設定された溶接条件に基づいて倍率を決定するものである。そして、倍率と溶接条件設定部18で設定された溶接条件との関係は、例えば実験等により予め求めておくようにしても良い。
ワイヤ速度周波数制御部17は、正送と逆送との周期的なワイヤ送給の周波数を出力するものである。このワイヤ速度周波数制御部17は、設定電流と周期的な送給の周波数を対応付けた表あるいは計算式を有しており、溶接条件設定部18で設定された設定電流に基づいて周波数を決定するものである。なお、設定電流と周波数との関係は、例えば実験等により予め求めておくようにしても良い。
モータ極性切換制御部15は、計時機能を有しており、ワイヤ速度周波数制御部17で決定した周波数と、経過時間に基づいて、溶接ワイヤ19の正送あるいは逆送に関するワイヤ送給モータ23の回転方向を示す信号を出力するものである。
なお、基本ワイヤ送給速度WS1と、ワイヤ送給モータ23の回転方向を示す信号と、溶接ワイヤ19の逆送側の速度振幅WV2と、溶接ワイヤ19の正送側の速度振幅WV1と、周期的な送給の周波数は、溶接を行う前に溶接条件設定部18で設定された溶接条件に基づいて決定されるものである。
そして、ワイヤ送給モータ制御部13が、基本ワイヤ送給速度WS1と、ワイヤ送給モータ23の回転方向を示す信号と、溶接ワイヤ19の逆送側の速度振幅WV2と、溶接ワイヤ19の正送側の速度振幅WV1と、周期的な送給の周波数とに基づいて、ワイヤ送給モータ23を制御する。これにより、本実施の形態1のアーク溶接装置は、溶接ワイヤ19の正送側と逆送側とで速度振幅が異なるように溶接ワイヤ19の送給速度を制御して周期的な送給制御が行われる構成としている。
この構成により、溶接ワイヤ19の周期的な送給の基本ワイヤ送給速度を基準とした正送側と逆送側とで送給波形が異なるように送給速度の制御を行うことで、溶接ワイヤ19の周期的な送給制御において、溶接の短絡期間とアーク期間の比率を変更することができる。
そして、溶接ワイヤ19の周期的な送給制御において、適正な溶接電圧を高めることができ、入熱も高めることができ、その結果、広いビード幅や深い溶け込み量を確保することができる。
また、溶接ワイヤ19の周期的な送給制御を行わずに溶接ワイヤの一定速度送給を行う短絡溶接と同等のビード幅や溶け込み量といった溶接性を実現することができる。
なお、逆送側の速度振幅に1より小さい倍率を乗算したものを正送側の速度振幅とし、正送側の速度振幅を逆送側の速度振幅より小さく変更することで短絡期間とアーク期間との比率の調整を行って溶接を行う構成としてもよい。この構成により、溶接ワイヤ19の周期的な送給制御において、適正な溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保することができる。
なお、図2に示すように、時刻t11から時刻t2までの短絡期間では、ワイヤ送給モータ制御部13からの信号を受信したワイヤ送給モータ23により、溶接ワイヤ19は、ワイヤ送給速度WS3となるように送給速度が減速されている。
また、図2に示すように、時刻t2から時刻t13までのアーク期間では、ワイヤ送給モータ制御部13からの信号を受信したワイヤ送給モータ23により、溶接ワイヤ19は、ワイヤ送給速度WS4となるように送給速度が加速されている。
本実施の形態1のアーク溶接装置は、上述したワイヤ送給制御により短絡期間とアーク期間とのサイクルを周期的に繰り返すものである。なお、アーク溶接装置を構成する各構成部は、各々単独に構成してもよいし、複数の構成部を複合して構成するようにしてもよい。
以上のように、本実施の形態1のアーク溶接装置およびアーク溶接制御方法によれば、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした正送側の速度振幅WV1を逆送側の速度振幅WV2よりも小さくする。これにより、短絡期間の比率を小さくしてアーク期間の比率を長くするように調整することができる。そして、適正な溶接電圧を高めることができ、入熱も高めることができる。
また、周期的な送給を行わないこれまでの一定送給の一般的な短絡溶接と溶接性を同等以上にできることで、広いビード幅や深い溶け込み量を確保することができる。
(実施の形態2)
図6は、溶接ワイヤ19の送給の正送側の速度振幅と逆送側の速度振幅が等しい時に、従来の周期的なワイヤ送給制御を行った場合のワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。図7は、本発明の実施の形態2におけるワイヤ送給速度、溶接電流および溶接電圧の時間波形を示す図である。また、図5は、本発明の実施の形態2におけるアーク溶接装置の概略構成を示す図である。本実施の形態2において、実施の形態1と異なる主な点は、ワイヤ送給の波形が周期的な正弦波状ではなく、周期的な台形波状とした点である。
基本ワイヤ送給速度WS1を基準にして所定の周波数と速度振幅で正送と逆送とを周期的に繰り返す制御であれば、このようにワイヤ送給の波形を台形波状にしても、正弦波状と同様の効果を出すことができる。
図6に、従来の周期的な送給制御においてワイヤ送給の波形を台形波状とした場合の、ワイヤ送給速度WS、溶接電流Iおよび溶接電圧Vの波形を示す。また、図7に、本実施の形態2におけるワイヤ送給速度WS、溶接電流Iおよび溶接電圧Vの時間波形を示す。
図6に示す従来の制御の場合、短絡期間は、時刻t1から時刻t2までとなる。しかし、図7に示す本実施の形態2のワイヤ送給速度の場合、図7に示すように正送側の速度振幅WV1が逆送側の速度振幅WV2よりも小さく、ワイヤ送給速度WS4がワイヤ送給速度WS2よりも低い。そのため、短絡が発生するタイミングが時刻t1から時刻t11へと遅れることになり、短絡期間は時刻t11から時刻t2までとなり、従来の制御の場合に比べて短絡期間が短くなる。
また、本実施の形態2のワイヤ送給制御の場合、アーク期間は、時刻t3から時刻t13へと短絡が発生するタイミングが遅れる。これにより、アーク期間は時刻t2から時刻t13までとなり、従来の制御の場合に比べてアーク期間が長くなる。
これは、従来の制御では短絡期間:アーク期間が50:50(50対50)であったものが、本実施の形態2では、例えば30:70(30対70)にすることができる。このように、基本ワイヤ送給速度WS1を基準にした逆送側の速度振幅WV2より正送側の速度振幅WV1を小さく調整することで、短絡期間:アーク期間の比率を変えることでき、適正な溶接電圧および入熱を調整することができる。
また、基本ワイヤ送給速度を基準にして、溶接ワイヤ19の送給波形を正弦波状に変化させて、または、溶接ワイヤ19の送給波形を台形波状に変化させて、溶接ワイヤ19の送給を行う方法としてもよい。この方法により、適正に溶接電圧を高めることができ、広いビード幅や深い溶け込み量を確保できる。
なお、アーク溶接装置の構成は、実施の形態1と同様に図5で示すもので良い。また、図5に示したアーク溶接装置を構成する各構成部は、各々単独に構成してもよいし、複数の構成部を複合して構成するようにしてもよい。
本発明によれば、溶接ワイヤの周期的な送給の基本ワイヤ送給速度を基準とした正送側と逆送側とで送給波形が異なるように送給速度の制御を行う。これにより、溶接ワイヤの周期的な送給制御において、溶接の短絡期間とアーク期間との比率を変更することができ、溶接ワイヤを周期的に送給することで溶接を行うアーク溶接制御方法およびアーク溶接装置として利用することができ、産業上有用である。
1 入力電源
2 1次整流部
3 スイッチング部
4 トランス
5 2次整流部
6 DCL
7 駆動部
8 溶接電圧検出部
9 溶接電流検出部
10 短絡/アーク検出部
11 短絡制御部
12 アーク制御部
13 ワイヤ送給モータ制御部
14 基本ワイヤ送給速度制御部
15 モータ極性切換制御部
16 ワイヤ速度振幅制御部
17 ワイヤ速度周波数制御部
18 溶接条件設定部
19 溶接ワイヤ
20 チップ
21 溶接アーク
22 被溶接物
23 ワイヤ送給モータ

Claims (9)

  1. 溶接ワイヤを自動送給しながら短絡とアークとを交互に繰り返して短絡溶接を行う消耗電極式のアーク溶接制御方法であって、
    設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度を基準にして、所定の周波数と所定の速度振幅で前記溶接ワイヤの送給の正送と逆送とを周期的に繰り返して短絡状態とアーク状態とを発生させ、
    前記溶接ワイヤの周期的な送給の正送側と逆送側とで送給波形が異なるように前記溶接ワイヤの送給速度制御を行うアーク溶接制御方法。
  2. 前記溶接ワイヤの周期的な送給の正送側と逆送側とで、速度振幅が異なるように前記溶接ワイヤの送給速度制御を行う請求項1記載のアーク溶接制御方法。
  3. 前記溶接ワイヤの正送側の前記速度振幅が、前記溶接ワイヤの逆送側の前記速度振幅よりも小さい請求項2記載のアーク溶接制御方法。
  4. 逆送側の速度振幅に1より小さい倍率を乗算したものを正送側の速度振幅とし、前記正送側の速度振幅を前記逆送側の速度振幅より小さく設定することにより短絡期間とアーク期間との比率の調整を行って溶接を行う請求項2のアーク溶接制御方法。
  5. 前記倍率は、設定電流、溶接ワイヤの径、溶接ワイヤの種類、溶接ワイヤの突出長および供給するシールドガスのうちの少なくとも一つに基づいて決定される請求項4記載のアーク溶接制御方法。
  6. 前記基本ワイヤ送給速度を基準にして、前記溶接ワイヤの前記送給波形を正弦波状に変化させて、または、前記溶接ワイヤの前記送給波形を台形波状に変化させて、前記溶接ワイヤの送給を行う請求項1から5のいずれか1項に記載のアーク溶接制御方法。
  7. 消耗電極である溶接ワイヤと被溶接物との間でアークの発生と短絡とを繰り返して溶接を行うアーク溶接装置であって、
    少なくとも設定電流を設定するための溶接条件設定部と、
    前記溶接ワイヤを送給するためのワイヤ送給モータと、
    溶接出力を制御するスイッチング部と、
    溶接電圧を検出する溶接電圧検出部と、
    前記溶接電圧検出部の出力に基づいて短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する短絡/アーク検出部と、
    短絡状態であるときの溶接出力制御信号を出力する短絡制御部と、
    アーク状態であるときの溶接出力制御信号を出力するアーク制御部と、
    前記短絡制御部または前記アーク制御部からの信号に基づいて前記スイッチング部を制御する駆動部と、
    所定の周波数と所定の速度振幅とで前記溶接ワイヤの送給の正送と逆送とを周期的に繰り返すように前記ワイヤ送給モータを制御するワイヤ送給モータ制御部とを備え、
    前記ワイヤ送給モータ制御部は、
    前記溶接ワイヤの周期的な送給の基準であり前記設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度を出力する基本ワイヤ送給速度制御部と、
    前記溶接ワイヤの正送あるいは逆送に関する前記ワイヤ送給モータの回転方向を示す信号を出力するモータ極性切換制御部と
    前記基本ワイヤ送給速度を基準にした逆送側の速度振幅と前記逆送側の速度振幅よりも小さい正送側の速度振幅とを出力するワイヤ速度振幅制御部と、
    前記設定電流に応じたワイヤ送給周波数を出力するワイヤ速度周波数制御部とを有し、
    前記ワイヤ送給モータ制御部が、前記基本ワイヤ送給速度、前記ワイヤ送給モータの回転方向を示す信号、前記溶接ワイヤの前記逆送側の速度振幅、前記溶接ワイヤの前記正送側の速度振幅および前記ワイヤ送給周波数に基づいて、前記ワイヤ送給モータを制御することにより、前記溶接ワイヤの周期的な送給の正送側と逆送側とで送給波形が異なるように前記溶接ワイヤの送給速度を制御して溶接を行うアーク溶接装置。
  8. 前記逆送側の速度振幅に1より小さい倍率を乗算したものを前記正送側の速度振幅とし、前記正送側の速度振幅を前記逆送側の速度振幅より小さく変更することで短絡期間とアーク期間との比率の調整を行って溶接を行う請求項7記載のアーク溶接装置。
  9. 前記倍率は、設定電流、送給する溶接ワイヤのワイヤ径、ワイヤの種類、ワイヤの突出長および供給するシールドガスのうちの少なくとも一つに基づいて決定される請求項8記載のアーク溶接装置。
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