JPWO2012164753A1 - 強誘電体膜の製造方法、強誘電体膜及び圧電素子 - Google Patents

強誘電体膜の製造方法、強誘電体膜及び圧電素子 Download PDF

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Abstract

強誘電体膜の膜厚が薄くてもヒステリシス曲線が太くて高い圧電特性を得ることを課題とする。本発明の一態様は、Ni1−aWa膜上にPZT材料膜を塗布し、酸素雰囲気で熱処理を行うことにより、前記Ni1−aWa膜中の金属元素をPZT材料膜に熱拡散させ、且つPZT材料膜を結晶化することで、PZT結晶化膜を形成することを特徴とする強誘電体膜2の製造方法である。ただし、aは、下記式(1)を満たすものである。1≧a>0 ・・・(1)

Description

本発明は、強誘電体膜の製造方法、強誘電体膜及び圧電素子に関する。
従来の強誘電体膜としてPb(Zr52Ti48)O膜があり、このPb(Zr52Ti48)O膜は、圧電素子に使用した場合に信頼性が高いため、圧電素子に使用されることが多い。しかし、このPb(Zr52Ti48)O膜のヒステリシス曲線は細いため、十分な圧電特性が得られなかった。
一方、高い圧電特性を得る方法として、Pb(Zr52Ti48)O膜の膜厚を厚くすることが考えられる。膜厚が厚くなれば、厚さに比例してヒステリシス曲線を太くすることができるからである。しかし、Pb(Zr52Ti48)O膜の膜厚を厚くすると、強誘電体膜を動作させる際に厚さに比例して電圧を高くしなければならないため、膜厚を厚くするのにも限界がある。また、膜厚を厚くすると膜中の応力が大きくなるため、膜剥離や膜破壊が起きやすくなる。
そこで、強誘電体膜の膜厚が薄くてもヒステリシス曲線が太くて高い圧電特性が得られる強誘電体膜が求められている。
また、強誘電体膜としてPZTN(登録商標)膜を使用することを考えた場合、強誘電体膜として使用できる程度にPZTN(登録商標)膜を厚膜化する必要がある。PZTN(登録商標)膜を成膜する方法としては粘度の低い溶液でPZTN(登録商標)を合成するのが一般的であるが、厚膜化するには粘度の高い溶液を用いる必要がある。しかし、溶液の粘度を高くすると、NbOが生成されやすくなり、添加材としてのNbがPZTに入りにくくなる。従って、従来は、PZTN(登録商標)膜を厚膜化することができなかったため、薄い膜で使用可能なFeRAMに専用的に用いられている。
特開2005−209722号公報
本発明の一態様は、強誘電体膜の膜厚が薄くてもヒステリシス曲線が太くて高い圧電特性を得ることを課題とする。
本発明の一態様は、NiとWを含む合金膜上にPZT材料膜を塗布し、
酸素雰囲気で熱処理を行うことにより、前記合金膜中の金属元素をPZT材料膜に熱拡散させ、且つPZT材料膜を結晶化することで、PZT結晶化膜を形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法である。
また、本発明の一態様において、前記合金膜はNi1−a膜であり、aは、下記式(1)を満たすことが好ましく、より好ましくは下記式(1’)を満たすことである。
1≧a>0 ・・・(1)
0.95≧a>0.5 ・・・(1’)
また、本発明の一態様において、前記PZT材料膜を塗布する前に、前記Ni1−a膜を電極膜上に形成するとよい。
また、本発明の一態様において、前記電極膜は、Pt膜またはIr膜であるとよい。
また、本発明の一態様において、前記熱処理は、350〜1400℃の温度範囲で行うことが好ましく、より好ましくは450〜900℃の温度範囲、さらに好ましくは600〜900℃の温度範囲である。
また、本発明の一態様において、前記熱処理は、0.0993〜0.98307MPaの圧力範囲(1〜9.9気圧の圧力範囲)で行うことが好ましい。
また、本発明の一態様において、前記熱処理は、1〜60分間の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは1〜45分間の範囲である。
本発明の一態様は、Pb、Zr、Ti、Ni及びWを含む材料が酸化された酸化膜を有することを特徴とする強誘電体膜である。
本発明の一態様は、(Pb1−a,Ni)(Zr,Ti,W)Oを有することを特徴とする強誘電体膜である。
ただし、a,b,c,dは、下記式(2)〜(4)を満たすものである。
0.03≦a≦0.15 ・・・(2)
b+c=1 ・・・(3)
0.01≦d≦0.05 ・・・(4)
本発明の一態様は、電極と、
前記電極上に形成された前述した強誘電体膜と、
を具備することを特徴とする強誘電体素子、又は圧電素子、又は焦電素子、又は高誘電体デバイス、又は高周波デバイスである。
また、本発明の一態様において、前記電極は、Pt電極、Ir電極及びNi1−a電極のいずれか一であるとよい。
ただし、aは、下記式(1)を満たすことが好ましく、より好ましくは下記式(1’)を満たすことである。
1≧a>0 ・・・(1)
0.95≧a>0.5 ・・・(1’)
また、本発明の一態様において、前記電極は、Pt膜またはIr膜と、前記Pt膜またはIr膜の上に形成されたNi1−a膜とを有するとよい。
ただし、aは、下記式(1)を満たすことが好ましく、より好ましくは下記式(1’)を満たすことである。
1≧a>0 ・・・(1)
好ましくは0.95≧a>0.5 ・・・(1’)
本発明の一態様によれば、強誘電体膜の膜厚が薄くてもヒステリシス曲線が太くて高い圧電特性を得ることができる。
図1は、本発明の一態様に係る圧電素子を模式的に示す断面図である。
図2は、本発明の一態様に係る圧電素子を模式的に示す断面図である。
図3(A)は、Ni0.80.2膜の膜厚が50nmのサンプルの評価結果、図3(B)は、Ni0.80.2膜の膜厚が100nmのサンプルの評価結果である。
図4は、図3(A)で用いたサンプルの断面を示すSEM断面写真である。
図5(A)は比較例のサンプルの断面を示すSEM断面写真、図5(B)は図5(A)に示すサンプルの強誘電体膜のヒステリシス評価を行った結果を示す図である。
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
図1は、本発明の一態様に係る圧電素子を模式的に示す断面図である。
この圧電素子は第1の電極1を有しており、この第1の電極1の上には強誘電体膜2が形成されている。この強誘電体膜2の上には第2の電極3が形成されている。
強誘電体膜2は、Pb、Zr、Ti、Ni及びWを含む材料が酸化された酸化膜を有するものであり、詳細には、(Pb1−a,Ni)(Zr,Ti,W)Oを有するものである。ただし、a,b,c,dは、下記式(2)〜(4)を満たすものである。
0.03≦a≦0.15 ・・・(2)
b+c=1 ・・・(3)
0.01≦d≦0.05 ・・・(4)
第1の電極1及び第2の電極3それぞれは、例えばPt電極、Ir電極またはNi1−a電極のいずれかを用いても良く、aは、下記式(1)を満たすことが好ましく、より好ましくは下記式(1’)を満たすことである。
1≧a>0 ・・・(1)
0.95≧a>0.5 ・・・(1’)
図2は、本発明の一態様に係る圧電素子を模式的に示す断面図であり、図1と同一部分には同一符号を付す。
第1の電極1は、Pt膜4またはIr膜と、Pt膜4またはIr膜の上に形成されたNi1−a膜5とを有する積層膜により形成されており、第2の電極3は、Ni1−a膜6と、Ni1−a膜6の上に形成されたPt膜7またはIr膜とを有する積層膜により形成されている。ただし、aは、上記式(1)を満たすことが好ましく、より好ましくは上記式(1’)を満たすことである。
次に、図1に示す圧電素子の製造方法について説明する。
まず、基板(図示せず)の上にPt膜またはIr膜からなる第1の電極1をスパッタリングにより形成する。次いで、第1の電極1の上にNi1−a膜をスパッタリングにより形成し、このNi1−a膜上にPZT材料膜を塗布する。このPZT材料膜の塗布は公知の技術を用いる。なお、aは、前述した範囲と同様である。
この後、PZT材料膜及びNi1−a膜に酸素雰囲気で熱処理を行うことにより、Ni1−a膜中の金属元素をPZT材料膜に熱拡散させ、且つPZT材料膜を結晶化することで、第1の電極1上にPZT結晶化膜である強誘電体膜2が形成される。この際の熱処理条件は、350〜1400℃の温度範囲(好ましくは450〜900℃の温度範囲、より好ましくは600〜900℃の温度範囲)、0.0993〜0.98307MPaの圧力範囲(1〜9.9気圧の圧力範囲に相当)、1〜60分間の範囲(好ましくは1〜45分間の範囲)で行うことが好ましい。
次いで、強誘電体膜2上にPt膜またはIr膜からなる第2の電極3をスパッタリングにより形成する。
図1の圧電素子の製造方法によれば、Ni1−a膜中の金属元素をPZT材料膜に熱拡散させ、且つPZT材料膜を結晶化しているため、膜厚が薄くてもヒステリシス曲線が太くて高い圧電特性が得られる強誘電体膜2を形成することができる。
なお、図1の圧電素子の製造方法では、Pt膜またはIr膜からなる第1の電極1の上にNi1−a膜をスパッタリングにより形成しているが、Ni1−a膜中の金属元素をPZT材料膜に熱拡散させた後にもNi1−a膜が残る程度にNi1−a膜の膜厚を厚く形成し、熱拡散後に残されたNi1−a膜を第1の電極として用いてもよく、この場合は、Pt膜またはIr膜からなる第1電極を形成しなくてもよい。
次に、図2に示す圧電素子の製造方法について説明する。
まず、基板(図示せず)の上にPt膜4またはIr膜をスパッタリングにより形成し、このPt膜4またはIr膜の上にNi1−a膜5をスパッタリングにより形成する。Pt膜4またはIr膜、及びNi1−a膜5は第1の電極1を構成する。次いで、Ni1−a膜5上にPZT材料膜を塗布する。このPZT材料膜の塗布は公知の技術を用いる。なお、aは、前述した範囲と同様である。
次いで、PZT材料膜上にNi1−a膜6をスパッタリングにより形成する。なお、aは、前述した範囲と同様である。次いで、Ni1−a膜5、PZT材料膜及びNi1−a膜6に酸素雰囲気で熱処理を行うことにより、Ni1−a膜5,6中の金属元素をPZT材料膜に熱拡散させ、且つPZT材料膜を結晶化することで、第1の電極1上にPZT結晶化膜である強誘電体膜2が形成される。この際の熱処理条件の温度、圧力及び時間の範囲は、図1の圧電素子の製造方法の場合と同様である。ただし、Ni1−a膜5,6の膜厚は、Ni1−a膜5,6中の金属元素をPZT材料膜に熱拡散させた後にもNi1−a膜が残る程度とする。
この後、Ni1−a膜6上にPt膜7またはIr膜をスパッタリングにより形成する。Ni1−a膜6及びPt膜7またはIr膜は第2の電極3を構成する。
図2の圧電素子の製造方法においても、図1の圧電素子の製造方法と同様の効果を得ることができる。
なお、図2の圧電素子の製造方法では、Pt膜4またはIr膜、及びNi1−a膜5によって第1の電極1を構成し、Ni1−a膜6及びPt膜7またはIr膜によって第2の電極3を構成しているが、Pt膜4またはIr膜及びPt膜7またはIr膜を形成せずに、Ni1−a膜5によって第1の電極1を構成し、Ni1−a膜6によって第2の電極3を構成しても良い。
また、本実施の形態では、本発明の一態様として強誘電体膜及び圧電素子について説明しているが、焦電素子、又は高誘電体デバイス、又は高周波デバイスに本発明の一態様を適用することも可能である。
6インチSiウエハ上に酸化シリコン膜を介して10〜30nmのTi膜をスパッタ法により成膜する。詳細には、RFスパッタリング方法により、形成した。Ti膜は白金と酸化シリコンの密着層の役割をしている。Ti膜の成膜条件はアルゴンガス圧0.2Pa、0.12kWの電源出力で20分の成膜時間で形成した。基板温度は200℃で行った。
次に、RTA(Rapid Thermal Anneal)によりTi膜に650℃の温度で5分間の熱処理を施す。酸素雰囲気で9.9atm、100℃/secで行った。
次に、Ti膜上に100nmの第1のPt膜をスパッタ法により550〜650℃の温度で成膜する。アルゴンガス圧0.4Pa、DCパワー100Wの電源出力で25分の成膜時間で形成した。
次に、第1のPt膜上に100nmの第2のPt膜を蒸着法により常温で成膜する。
3.3×10−3Torr、10kVの電源出力で4分の成膜時間で形成した。
次に、RTAによりSiウエハに650〜750℃の温度で1〜5分間の熱処理を施す。このようにして表面に(111)配向させたPt膜を形成した6インチSiウエハを用意する。
次に、Pt膜上にNi0.80.2膜をスパッタリングにより形成する。Ni0.80.2膜の膜厚を、5nm、10nm、20nm、50nm、100nmに変えたサンプルを作製した。
次に、各々のサンプルのNi0.80.2膜上にゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより、このNi0.80.2膜上に1層目の塗布膜が形成される。詳細には、500μLのゾルゲル溶液を塗布し、0〜500rpmまで3secで上昇させ、500rpmで3sec保持した後、2500rpmで60sec回転後、停止させた。なお、本発明の一態様が有効な強誘電体材料として確認出来たのは、PZTを初めとするABO、SrBiTaを初めとする(Bi2+(Am−13m+12−(式中、AはLi、Na、K、Pb2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Bi3+、La3+からなる群から選択される1種又は2種以上のイオン、BはFe3+、Ti4+、Zr4+、Nb5+、Ta5+、W6+及びMo6+から成る群から選択される1種又は2種以上のイオン、mは1以上の自然数である。)で表されるペロブスカイト構造強誘電体又はビスマス層状構造強誘電体を形成するためのゾルゲル溶液であり、且つ溶質濃度が5〜30重量%からなる。好ましくは、15〜25重量%であることを特徴とする。
次に、ホットプレートにより1層目の塗布膜を175℃の温度で1分間加熱し、その後、450℃の温度で5分間仮焼成する。これにより、Siウエハ上に膜厚100nmの1層目のPZT材料アモルファス膜が形成される。
次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、1層目のPZT材料膜上に2層目の塗布膜を形成する。次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、2層目の塗布膜を加熱し、仮焼成する。これにより、1層目のPZT材料膜上に膜厚100nmの2層目のPZT材料膜が形成される。
次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、2層目のPZT材料膜上に3層目の塗布膜を形成する。次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、3層目の塗布膜を加熱し、仮焼成する。これにより、2層目のPZT材料膜上に膜厚100nmの3層目のPZT材料膜が形成される。
次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、3層目のPZT材料膜上に4層目の塗布膜を形成する。次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、4層目の塗布膜を加熱し、仮焼成する。これにより、3層目のPZT材料膜上に膜厚100nmの4層目のPZT材料膜が形成される。
次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、4層目のPZT材料膜上に5層目の塗布膜を形成する。次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、5層目の塗布膜を加熱し、仮焼成する。これにより、4層目のPZT材料膜上に膜厚100nmの5層目のPZT材料膜が形成される。
次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、5層目のPZT材料膜上に6層目の塗布膜を形成する。次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、6層目の塗布膜を加熱し、仮焼成する。これにより、5層目のPZT材料膜上に膜厚100nmの6層目のPZT材料膜が形成される。
次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、6層目のPZT材料膜上に7層目の塗布膜を形成する。次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、7層目の塗布膜を加熱し、仮焼成する。これにより、6層目のPZT材料膜上に膜厚100nmの7層目のPZT材料膜が形成される。このようにして7層からなる膜厚700nmのPZT材料膜を成膜することができる。
次に、加圧RTAによりPZT材料膜に熱処理を施すことにより、PZT材料膜を結晶化してPZT結晶化膜からなる強誘電体膜を形成する。この際の熱処理条件は、酸素分圧9.9atmで加圧された酸素雰囲気中で、昇温速度120℃/secで、温度が700℃まで瞬時に昇温し、1min保持することにより結晶化を行ったのである。
本実施例によれば、Ni0.80.2膜の膜厚が5nm、10nm、20nm、50nm、100nmと厚くなるのに比例してヒステリシス曲線を太くすることができ、より高い圧電特性を得られることが確認できた(図3及び図4参照)。
図3は、実施例によるサンプルの強誘電体膜のヒステリシス評価を行った結果(縦軸:残留分極,横軸:印加電圧)を示す図であり、(A)は、Ni0.80.2膜の膜厚が50nmのサンプルの評価結果であり、(B)は、Ni0.80.2膜の膜厚が100nmのサンプルの評価結果である。
図4は、図3(A)で用いたサンプルの断面を示すSEM断面写真である。
図5(A)は、比較例のサンプルの断面を示すSEM断面写真であり、図5(B)は、図5(A)に示すサンプルの強誘電体膜のヒステリシス評価を行った結果(縦軸:残留分極,横軸:印加電圧)を示す図である。
比較例のサンプルは、強誘電体膜の膜厚が1.4μmであること、Ni0.80.2膜が無いことを除いて、実施例と同様の方法で作製されたものである。
図3(A),(B)に示すヒステリシス曲線は、図5(B)に示すヒステリシス曲線に比べて太い。詳細には、ヒステリシス曲線の太さは横軸方向の幅によって示され、図3(A)のヒステリシス曲線では25Vであり、図3(B)のヒステリシス曲線では50Vであり、図5(B)のヒステリシス曲線では8Vである。
ヒステリシス曲線の太さは、強誘電体膜の膜厚が厚くなれば厚さに比例して太くなるため、ヒステリシス曲線の太さを比較するには強誘電体膜の膜厚を考慮しなければならない。図3(A),(B)に示すサンプルの強誘電体膜の膜厚は0.7μmであるのに対し、図5(B)に示すサンプルの強誘電体膜の膜厚は1.4μmである。そこで、図5(B)に示すサンプルの強誘電体膜の膜厚が0.7μmであった場合は、図5(B)のヒステリシス曲線の太さは4Vになる。従って、本実施例のサンプルでは、比較例に比べてヒステリシス曲線の太さを飛躍的に太くすることができたことが確認された。従って、Ni0.80.2膜中の金属元素をPZT材料膜に熱拡散させ、且つPZT材料膜を結晶化することにより、膜厚が薄くてもヒステリシス曲線が太くて高い圧電特性が得られる強誘電体膜を実現できることが確認された。
また、図3(A)のサンプルではNi0.80.2膜の膜厚が50nmであること、図3(B)のサンプルでは、Ni0.80.2膜の膜厚が100nmであること、図3(A)のヒステリシス曲線の太さが25Vであること、図3(B)のヒステリシス曲線の太さが50Vであることから、膜厚を厚くするとそれに比例してヒステリシス曲線の太さを太くできるという結果が得られた。
また、図4に示すように、Ni0.80.2膜中の金属元素がPZT材料膜に熱拡散され、PZT結晶化膜に金属元素の拡散層が形成されることが確認された。

Claims (12)

  1. NiとWを含む合金膜上にPZT材料膜を塗布し、
    酸素雰囲気で熱処理を行うことにより、前記合金膜中の金属元素をPZT材料膜に熱拡散させ、且つPZT材料膜を結晶化することで、PZT結晶化膜を形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  2. 請求項1において、
    前記合金膜はNi1−a膜であり、aは、下記式(1)を満たすことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
    1≧a>0 ・・・(1)
  3. 請求項2において、
    前記PZT材料膜を塗布する前に、前記Ni1−a膜を電極膜上に形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  4. 請求項3において、
    前記電極膜は、Pt膜またはIr膜であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項において、
    前記熱処理は、350〜1400℃の温度範囲で行うことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項において、
    前記熱処理は、0.0993〜0.98307MPaの圧力範囲で行うことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項において、
    前記熱処理は、1〜60分間の範囲で行うことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  8. Pb、Zr、Ti、Ni及びWを含む材料が酸化された酸化膜を有することを特徴とする強誘電体膜。
  9. (Pb1−a,Ni)(Zr,Ti,W)Oを有することを特徴とする強誘電体膜。
    ただし、a,b,c,dは、下記式(2)〜(4)を満たすものである。
    0.03≦a≦0.15 ・・・(2)
    b+c=1 ・・・(3)
    0.01≦d≦0.05 ・・・(4)
  10. 電極と、
    前記電極上に形成された請求項8または9に記載の強誘電体膜と、
    を具備することを特徴とする圧電素子。
  11. 請求項10において、
    前記電極は、Pt電極、Ir電極及びNi1−a電極のいずれか一であることを特徴とする圧電素子。
    ただし、aは、下記式(1)を満たすものである。
    1≧a>0 ・・・(1)
  12. 請求項10において、
    前記電極は、Pt膜またはIr膜と、前記Pt膜またはIr膜の上に形成されたNi1−a膜とを有することを特徴とする圧電素子。
    ただし、aは、下記式(1)を満たすものである。
    1≧a>0 ・・・(1)
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