JPWO2012147822A1 - 油劣化の判定方法およびこれを用いる装置 - Google Patents

油劣化の判定方法およびこれを用いる装置 Download PDF

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Abstract

(i)ギ酸を基質とする酵素、酢酸を基質とする酵素、およびプロピオン酸を基質とする酵素の少なくとも1種と、油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料とを反応させる工程、並びに(ii)酵素反応生成物の量を測定して、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸の少なくとも1種の濃度を測定する工程を含む、油の劣化を判定する方法。

Description

本発明は、潤滑油およびバイオディーゼル燃料(BDF)等の油の酸化劣化によって産生される各種有機酸を計測するための高感度、迅速、かつ簡便なバイオセンシングシステムに関する。
潤滑油およびBDFなどの油の劣化の指標として酸化によって生じる各種有機酸の含量が用いられている。一般に油の酸化劣化の指標は酸価が用いられている。これは1g の油を中和するために必要なKOH のmg 数としてあらわされる。すなわち、有機酸の含量が劣化の指標である。潤滑油およびBDFなどの油の劣化の判定は、使用しているその場で油の全酸価を計測し、すぐに対処できることが望ましい。全酸価の測定機としては中和滴定の原理で酸価を自動計測する自動滴定装置が平沼やメトローム社などから市販されているが、一台数十万円から百万円台で高価な据え置き型の機器である。このため現場での計測はできない。一方、簡易型の測定キットも市販されるようになっている。電気絶縁油用の全酸価簡易判定試薬がユニチェックとしてユニケミー社から販売されており、これは試料油をスポイトで試薬の入ったバイヤルに添加し付属のカラーチャートと比較するもので計測範囲によって3 種類のキットが用意され、0.01-0.08、0.10-0.25、0.3-0.5 の酸価を計測できるものである。
しかしながら、現在市販されているいずれの方法においても、各種有機酸の種類ごとの定量は不可能であり、潤滑油およびBDFなどの油の劣化度をセンシングするための、短鎖有機酸を種類別に定量でき、しかも現場で使用できる計測法の開発が望まれている。
バイオセンサとは生体の有する優れた分子認識機能と化学センサあるいは物理センサなどの検出技術とを組み合わせることで、選択的かつ高感度な化学物質の計測技術・装置の総称であり、バイオセンシングとはそのような技術を活用した分析システムをさす。バイオセンサの測定の対象となる分子は、グルコースなどの生体関連の有機化合物をはじめとして、無機化合物、蛋白質、さらには単一の化合物としてではなく、毒性を有する物質あるいは変異原性や環境ホルモンといった特定の生理活性を有する化合物のグループなど、生体の認識機能に依存した様々なカテゴリーの分子が対象となっている。
このようなバイオセンサ技術開発において、既に有機酸計測についても報告がある。有機酸を対象としたバイオセンサは主に80年代のバイオセンサ研究の黎明期に開発された微生物センサ(微生物を分子認識素子に用いており、呼吸活性を指標とするものが多い)である。微生物センサでは高感度な分析が達成できるが、選択性やセンサ作成技術において再現性を確保することが困難であるといった課題も多く、その応用範囲は環境計測における群特異的な分子種の分析などに限定して、現在、実用化されている。有機酸計測微生物センサとしては、酢酸およびギ酸センサが報告されているが、感度・再現性両面において実用性に見合っていなかった。
特許文献1には、脱水素酵素と補酵素と電子メディエータおよびテトラゾリウム塩類からなる反応試薬を用いた基質の定量方法が開示されている。しかしながら、この方法は、油の劣化により生じた有機酸としてのギ酸などを定量する方法ではない。
特許文献2には、ギ酸脱水素酵素と、電子伝達物質であるMethoxy PMS (mPMS)と、酸化還元発色指示薬であるWST1とを加え、波長438nmの吸光度で黄色ホルマザンを測定することにより、ギ酸の定量を行うことが記載されている。しかしながら、この方法は、油の劣化により生じた有機酸としてのギ酸を定量する方法ではない。
特許文献3には、プロピオニルCoAトランスフェラーゼおよびアシルCoAオキシダーゼを用いて、プロピオン酸を定量する方法が記載されている。しかしながら、この方法は、油の劣化により生じた有機酸としてのプロピオン酸を定量する方法ではない。
国際公開WO00/57166号パンフレット 特開2010−41971号公報 特開2006−158297号公報
本出願人である大生工業株式会社のR&Dセンターの調査では、潤滑油の酸化劣化による全酸価上昇の一番重要な原因は短鎖有機酸であること、数十ppm でも短鎖有機酸は金属腐食のおそれがあること、金属腐食に対する影響に関しては酸価とともに特定の酸濃度を組み合わせる必要があることが指摘されている。そして同社の検討結果から、この短鎖有機酸がギ酸、酢酸、プロピオン酸であることが明らかにされ、その比率も計測されている。バイオディーゼル燃料の酸価は、燃料が変質したとき、燃料が適正に製造されていないときに高くなるため、品質管理上、酸価分析が必要となる。
本発明は、潤滑油およびBDFなどの油の酸化劣化の指標であるギ酸、酢酸、プロピオン酸を分析する方法・手順・操作などが煩雑な従来法に代わり、迅速、簡便、かつ高感度な新しい分析方法を開発することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ギ酸とギ酸脱水素酵素との酵素反応生成物を発色検出または電気化学検出に供することによりギ酸濃度を簡便に測定できること、酢酸と酢酸キナーゼとの酵素反応生成物を発色検出または電気化学検出に供することにより酢酸濃度を簡便に測定できること、プロピオン酸とプロピオニルCoAトランスフェラーゼとの酵素反応生成物を発色検出または電気化学検出に供することによりプロピオン酸濃度を簡便に測定できること、そして、これらを組み合せて、ギ酸、酢酸およびプロピオン酸の濃度の少なくとも1つを指標とすることにより油の劣化を測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)(i)ギ酸を基質とする酵素、酢酸を基質とする酵素、およびプロピオン酸を基質とする酵素の少なくとも1種と、油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料とを反応させる工程、並びに(ii)酵素反応生成物の量を測定して、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸の少なくとも1種の濃度を測定する工程を含む、油の劣化を判定する方法。
(2)前記工程(ii)は、酵素反応生成物を発色反応に供し、発色反応を分光学的に測定して、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸の少なくとも1種の濃度を測定する工程である、(1)に記載の方法。
(3)前記工程(ii)において、酵素反応生成物の量を、ジアフォラーゼを用いて間接的に測定することを特徴とする、(2)に記載の方法。
(4)前記ギ酸を基質とする酵素がギ酸脱水素酵素であり、ギ酸脱水素酵素とジアフォラーゼのユニット数の比が、1:40〜1:80であることを特徴とする、(3)に記載の方法。
(5)前記酵素反応の反応物の量を分光学的に測定する工程において、WST−1をメディエータとして使用し、その濃度が1mM〜10mMである、(2)〜(4)に記載の方法。
(6)前記工程(ii)は、酵素反応生成物の量を電気化学的に測定して、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸の少なくとも1種の濃度を測定する工程である、(1)に記載の方法。(7)前記酵素反応の反応物の量を電気化学的に測定する工程において、DCIP、WST−1、フェリシアン化カリウム、テトラチアフルバレン、フェリシアニド、キノン誘導体、フェロセニルボロン酸誘導体、p−アミノフェニルリン酸エステル、ルテニウム錯体、またはプルシアンブルー/ホワイトがメディエータとして使用される、(6)に記載の方法。
(8)前記ギ酸を基質とする酵素として、ギ酸脱水素酵素を用いることを特徴とする、(1)〜(7)に記載の方法。
(9)前記ギ酸脱水素酵素が、BC-FDH、Ps-FDH、Mv-FDHまたはPD-FDHである、(8)に記載の方法。
(10)前記酢酸を基質とする酵素として、酢酸キナーゼを用いることを特徴とする、(1)〜(3)に記載の方法。
(11)前記酢酸キナーゼが、E. coliまたはBacillus stearothermophilus由来である、(10)に記載の方法。
(12)前記工程(ii)において、酵素反応生成物の量を、ピルビン酸キナーゼおよびピルビン酸オキシダーゼを用いて間接的に測定して、酢酸の濃度を測定することを特徴とする、(10)または(11)に記載の方法。
(13)前記プロピオン酸を基質とする酵素として、プロピオニルCoAトランスフェラーゼを用いることを特徴とする、(1)〜(3)に記載の方法。
(14)前記工程(ii)において、酵素反応生成物の量を、短鎖アシルCoAオキシダーゼを用いて間接的に測定して、プロピオン酸の濃度を測定することを特徴とする、(13)に記載の方法。
(15)前記プロピオニルCoAトランスフェラーゼと短鎖アシルCoAオキシダーゼのユニット数の比が、1:1〜1:3であることを特徴とする、(14)に記載の方法。
(16)前記試料は潤滑油またはバイオディーゼルを含む、(1)〜(15)に記載の方法。
(17)(1)〜(16)のいずれか1項に記載の方法に用いられる、ギ酸脱水素酵素、ジアフォラーゼ、WST−1、酢酸キナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、プロピオニルCoAトランスフェラーゼ、および短鎖アシルCoAオキシダーゼからなる群より選択される1つ以上を含む、油劣化を測定するためのキット。
(18)電極系と反応層を有する基板上に試薬層を含み、電極系は測定極と対極とを備え、試薬層はギ酸を基質とする酵素、酢酸を基質とする酵素、およびプロピオン酸を基質とする酵素の少なくとも1種を含み、油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料中の基質と当該酵素との酵素反応生成物の量を測定して、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸の少なくとも1種の濃度を測定して、油劣化を測定するためのバイオセンサ。
(19)(i)ギ酸脱水素酵素とギ酸を含む試料とを反応させる工程、並びに(ii)ジアフォラーゼを用いて酵素反応生成物の量を間接的に測定して、ギ酸の濃度を測定する工程を含み、前記ギ酸脱水素酵素とジアフォラーゼのユニット数の比が、1:40〜1:80である、ギ酸の測定方法。
本発明の方法により、潤滑油およびBDFなどの油の酸化劣化の指標である各種有機酸(ギ酸、酢酸およびプロピオン酸)の濃度を、迅速、簡便、かつ高感度に分析することができる。
(A)pH7(黒丸)、pH8(灰色丸)、またはpH9(白丸)におけるMv-FDHによるNADHの生成を示す。また、pH7(黒四角)、pH8(灰色四角)、またはpH9(白四角)におけるジアフォラーゼによるWST-1の還元を示す。縦軸は吸光度変化速度、横軸はギ酸濃度(mM)を示す。(B)ギ酸ナトリウム2mMまでのS〜Vプロットを示す。(C)pH7(黒)における活性と比較した、pH8(灰)およびpH9(白)における酵素活性を示す。縦軸は相対活性(%)、横軸は添加した酵素の種類およびギ酸ナトリウムの量を示す。(D)Mv-FDHを使用したギ酸測定におけるNaClの影響を示す。縦軸は残留活性(%)、横軸はNaClの濃度(mM)を示す。黒色(丸)の破線は、NADHを使用して40mMのギ酸を測定した場合、黒色(丸)の実線は、NADHを使用して90mMのギ酸を測定した場合、白色(四角)の破線は、ジアフォラーゼおよびWST-1を使用して3mMのギ酸を測定した場合、白色(四角)の実線は、ジアフォラーゼおよびWST-1を使用して10mMのギ酸を測定した場合を示す。 Mv-FDHおよびジアフォラーゼを使用するギ酸測定に対するWST-1濃度の影響を示す。WST-1濃度は、グラフの上から順に、1mM、2.5mM、5mM、および10mMである。 (A)Mv-FDHおよびジアフォラーゼを使用するギ酸測定におけるWST-1の2時間後における発色を示す(写真)。(B)Mv-FDHおよびジアフォラーゼを使用するギ酸測定におけるWST-1の24時間後における発色を示す(写真)。(C)100倍希釈した試料の438nmでの吸光度の、ギ酸濃度に対するプロットを示す。 図4はPD−FDHの精製を示す。(A)左から4つのレーンは、細胞を破砕してNTAカラムにかけるまでのサンプル、すなわち、CE(細胞破砕液cell extract),P(Pellet), S(Soluble), U(unsoluble) のSDSPAGEを示す(写真)。左から6番目〜右端は、PD-FDHのS(Soluble)を2通りの緩衝液でNi-NTAカラムに吸着、脱着させたもののSDSPAGEを示す。W(wash)はカラム素通り画分を示す。10mM PPB(リン酸カリウム緩衝液)を使ってNi-NTAカラムに吸着させ、イミダゾール緩衝液で溶出してきたフラクションが左から6番目〜9番目の1A〜4Aである。10mM SPBの条件下で溶出してきたフラクションが(A)の右半分の1A〜7Aである。Mはマーカーを示す。(B)カラムに吸着、イミダゾール緩衝液で脱着させた各フラクションの酵素活性を示す。(A)の左から6番目〜9番目の1A〜4Aの活性が(B)のP1−1〜P1−4に対応し、(A)の右半分の1A〜7Aの活性が(B)のP2−1〜P2−7に対応する。 図5はPD−FDHの精製を示す。(A)左から4つのレーンは、細胞を破砕してNTAカラムにかけるまでのサンプル、すなわち、CE(細胞破砕液cell extract),P(Pellet), S(Soluble), U(unsoluble) のSDSPAGEを示す(写真)。左から6番目〜右端は、PD-FDHのS(Soluble)を2通りの緩衝液でNi-NTAカラムに吸着、脱着させたもののSDSPAGEを示す。W(wash)はカラム素通り画分を示す。10mM PPB(リン酸カリウム緩衝液)を使ってNi-NTAカラムに吸着させ、イミダゾール緩衝液で溶出してきたフラクションが左から6番目〜10番目の1A〜5Aである。10mM SPBの条件下で溶出してきたフラクションが(A)の右半分の1A〜5Aである。Mはマーカーを示す。(B)カラムに吸着、イミダゾール緩衝液で脱着させた各フラクションの酵素活性を示す。(A)の左から6番目〜10番目の1A〜5Aの活性が(B)のB1−4〜B1−8に対応し、(A)の右半分の1A〜3A、5Aの活性が(B)のB2−4〜B2−7に対応する。(C)(B)におけるB1-4〜B1-8およびB2-3〜B2-8についてのSDS-PAGEを示す(写真)。 (A)NAD(4mM)とBC-FDHまたはNAD(4mM)とWST-1(1mM)とBC-FDHを用いてギ酸濃度を計測した場合の酵素活性を示す。黒色が、NAD(4mM)とWST-1(1mM)とBC-FDHを用いた系であり、WST-1(B1-5)で示され、灰色(B1-6)および白色(B2-5)が、NAD(4mM)とBC-FDHを用いた系であり、NADで示される。(B)WST-1(B1-5)についてのギ酸2mMまでのS-Vプロットを示す。(C)NAD(B1-6)についてのギ酸2mMまでのS-Vプロットを示す。 (A)反応2時間後の発色を示す(写真)。(B)ギ酸濃度に対する吸光度を示す。(C)ギ酸2mMまでのS-Vプロットを示す。 (A)BC-FDHの熱安定性を示す。(B)BC-FDHの基質特異性を示す。 (A) Mv-FDHと比較したPs-FDHの比活性を示す。(B) SDSPAGEによるPs-FDHの精製度の確認を示す(写真)。 (A)NAD(4mM)とWST-1(1.4mM)とジアフォラーゼとPs-FDHを用いてギ酸濃度を計測した場合のS-Vプロット(検量線)の直線性を示す。(B)NAD(4mM) とPs-FDHを用いてギ酸濃度を計測した場合のS-Vプロット(検量線)の直線性を示す。(C)Ps-FDHの基質特異性を示す。(D)Ps-FDHの熱安定性を示す。 Ps-FDH:ジアフォラーゼ(Diaphorase)=1:1,1:5,1:10,1:20:1:40,1:80(ユニット比)と変えた場合のWST-1の発色の大きさを示す。 (A)電気化学的方法によりギ酸濃度を測定した場合のギ酸濃度と電流値の関係を示す。(B)Mv-FDHの基質特異性の確認を示す。(C)応答電流に対する塩濃度の影響を調べた結果を示す。(D)フェリシアン化カリウムを用いた場合のギ酸濃度に対する電流値のプロットを示す。(E)ヘキサアンミンルテニウム錯体を用いた場合のギ酸濃度に対する電流値のプロットを示す。 E. coli由来のAcKの活性を示す(写真)。 (A)Bacillus stearothermophilus由来のAcKを用いて酢酸濃度を目視で判定した結果を示す(写真)。(B)分光光学的方法により酢酸濃度を測定した場合の酢酸濃度に対する吸光度のプロットを示す。(C)電気化学的方法により酢酸濃度を測定した場合の酢酸濃度に対する電流値のプロットを示す。 (A)PCTおよびSCAOxを用いて各種濃度のプロピオン酸を測定した場合の吸光度を示す。(B)プロピオン酸100μMまでのS-Vプロットを示す。 (A)ギ酸標準液(STD)と酵素活性の関係、および100%BDFに添加されたギ酸濃度と酵素活性の関係を示す。(B)100%BDFに添加されたギ酸に対する酵素活性から、ギ酸を添加していない試料で検出された酵素活性を差し引いて表示した結果を示す。 実施例のバイオセンサの構造を示す。 実施例のバイオセンサの各試薬部を示す。 実施例の電極式バイオセンサの構造を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の油の劣化を判定する方法は、(i)ギ酸を基質とする酵素、酢酸を基質とする酵素、およびプロピオン酸を基質とする酵素の少なくとも1種と、油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料とを反応させる工程、並びに(ii)酵素反応生成物の量を測定して、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸の少なくとも1種の濃度を測定する工程を含む。
本発明の判定方法においては、上記工程(i)および(ii)は同時に行われても、別々に行われてもよい。
また、前記工程(i)の前に、油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料を前処理する工程をさらに含んでいてもよい。
上述のように、潤滑油およびバイオディーゼル燃料(BDF)などの油においては、油の劣化により、ギ酸、酢酸、プロピオン酸が生じるため、これらの濃度を管理・分析することが必要である。例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸の濃度が所定の値を超えると油が劣化したと判断される。具体的には、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸の濃度の合計が30ppm以上となると油が劣化したと判定される。また、劣化した潤滑油およびBDFなどの油における短鎖有機酸の割合としては、大きい順に、ギ酸、酢酸、プロピオン酸となっている。
従って、本発明の方法を用いて、ギ酸の濃度を測定することにより、好ましくはギ酸および酢酸の濃度を測定することにより、より好ましくはギ酸、酢酸およびプロピオン酸の濃度を測定することにより、これらの濃度を指標として(すなわち、これらの濃度の合計が30ppm未満であるかにより)、油の劣化を検出することができる。
また、本発明の方法においては、ギ酸を基質とする酵素のみを用いたギ酸濃度測定方法も含まれる。本発明のギ酸濃度測定方法を用いる対象としては、潤滑油およびBDFなどの油以外には、果物、野菜、パン、酢、はちみつ、ワイン、魚、肉などの食品、紙、および尿などの生体試料、並びにホルムアルデヒドの酸化によって生じたギ酸が挙げられる。
1.本発明のギ酸測定法
1.1 本発明のギ酸測定の反応の概略
本発明のギ酸測定に使用される酵素としては、ギ酸を基質とする酵素であり、好ましくは、NADを補酵素とするギ酸脱水素酵素である。
本発明のギ酸測定法における、ギ酸脱水素酵素を用いる場合の反応は、例えば、以下のとおりである。
1.2 本発明のギ酸測定で使用される酵素
本発明において使用されるギ酸脱水素酵素(Formate dehydrogenase; FDH)としては、Mycobacterium vaccae由来のギ酸脱水素酵素(Mv-FDH)、Pseudomonas sp.101由来のギ酸脱水素酵素(Ps-FDH)、Paracoccus denitrificans由来のギ酸脱水素酵素(PD-FDH)、およびBurkholderia cepacia由来のギ酸脱水素酵素(BC-FDH)が挙げられる。Burkholderia cepacia由来のギ酸脱水素酵素としては、Burkholderia cepacia NBRC 5507またはNBRC 5508由来のギ酸脱水素酵素が挙げられる。NBRC 5507およびNBRC 5508は、独立行政法人製品評価技術基盤機構生物遺伝資源部門(NBRC)に保存されている。MvFDHのアミノ酸配列を配列番号2、塩基配列を配列番号1、PD-FDHのアミノ酸配列を配列番号4、塩基配列を配列番号3、Burkholderia cepacia NBRC 5507 BC-FDH のアミノ酸配列を配列番号6、塩基配列を配列番号5、Pseudomonas sp. 101 Ps-FDHのアミノ酸配列を配列番号16、塩基配列を配列番号15に示す。
本発明のギ酸測定においては、上記のようなギ酸脱水素酵素が使用されるが、実施例7のアライメントに示されるようなNAD結合領域およびギ酸結合領域が保存されている限り、例えば、配列番号2,4,6,16のアミノ酸配列において、1〜10個、または1〜5個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。同様に、本発明のギ酸脱水素酵素は、実施例7のアライメントに示されるようなNAD結合領域およびギ酸結合領域が保存されている限り、配列番号2,4,6,16に示すアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%または99%のアミノ酸同一性を有するタンパク質であってもよい。
Mycobacterium vaccae由来のギ酸脱水素酵素(Mv-FDH)は、ユニチカ社より供与されたが、PCR法によりゲノムからクローニングすることもできる。また、Pseudomonas sp.101由来のギ酸脱水素酵素(Ps-FDH)は、大腸菌に最適化した配列で全遺伝子を合成し、Paracoccus denitrificans由来のギ酸脱水素酵素(PD-FDH)は、PCR法によりゲノムからクローニングし、Burkholderia cepacia NBRC 5507由来のギ酸脱水素酵素(BC-FDH)については、PCR法によりゲノムからクローニングした。なお、BC-FDHのクローニングについては、以下の実施例7において具体的に示す。また、Pseudomonas sp.101由来のギ酸脱水素酵素(Ps-FDH)の合成については、以下の実施例9に示す。
本発明の工程(ii)において、酵素反応生成物を間接的に測定するために、メディエータと組み合わせて使用されるジアフォラーゼは、ユニチカ社より市販されている。
1.3 本発明のギ酸測定
本発明においては、ギ酸脱水素酵素と油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料との酵素反応生成物を発色反応に供し、発色反応を分光学的に測定することにより、ギ酸の量を測定する。
本発明においては、補酵素として、NAD+→NADH系が使用される。具体的には、NAD+は、酸化型 (NAD+) および還元型 (NADH) の2つの状態を取り得、ギ酸脱水素酵素により、NAD+はNADHに還元され、ギ酸イオンを二酸化炭素に酸化する。このときのNADH産生に伴う吸光度変化に基づいて、ギ酸濃度を測定してもよい。
また、本発明において、ジアフォラーゼなどのNADHを利用する酵素反応とカップリングさせて、好ましくは、酸化状態または還元状態で色が異なるメディエータを使用して、発色反応により、ギ酸脱水素酵素により酸化されたギ酸の量を測定する。
メディエータとしては、DCIPおよびWST−1などが挙げられる。これらのメディエータは、酸化状態または還元状態で色が異なるので、発色反応により、間接的にギ酸脱水素酵素により酸化されたNADHの量が測定でき、結果として、潤滑油およびバイオディーゼルなどの油の劣化により生じた短鎖有機酸としてのギ酸の量を測定できる。
なお、DCIPまたはWST−1を用いる場合には、その濃度を1mM〜10mM、好ましくは5mM〜10mMとすることが好ましい。また、ギ酸脱水素酵素とジアフォラーゼとのユニット数の比は、1:40〜1:80が好ましい。
発色反応は、分光光度計を用いて、分光学的に計測することができる。酸化状態または還元状態で色が異なるメディエータを使用する場合には、目視によっても反応を確認できる。
ギ酸測定は、pH7〜9、好ましくはpH8〜9の、リン酸カリウム緩衝液およびTris−HClなどの緩衝液中で行うことができる。なお、Mv-FDHを使用する場合には、pH8〜9が好ましく、Ps-FDHを使用する場合には、pH6.5〜7.5が好ましい。
本発明においては、ギ酸脱水素酵素と油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料との酵素反応生成物の量を、ジアフォラーゼによって還元されるメディエータを電気化学的に測定することによってもギ酸の量を測定することができる。この場合、ジアフォラーゼと共に使用されるメディエータとしては、DCIP、WST−1、フェリシアン化カリウム、テトラチアフルバレン、フェリシアニド、フェロセニルボロン酸誘導体、キノン誘導体、p−アミノフェニルリン酸エステル、Ru(II)、Ru(III)、Ru(IV)などのルテニウム錯体、およびプルシアンブルー/ホワイトが挙げられ、これらのメディエータの濃度としては、1mM〜50mMであり、好ましくは5mM〜50mMである。
例えば、ギ酸脱水素酵素及びジアフォラーゼをカーボン電極上に固定し、メディエータのフェリシアン化カリウムおよびNADを含むリン酸カリウム緩衝液中に電極を浸し、銀/塩化銀電極に対して電位を印加することにより、還元されたフェリシアン化カリウムを電気化学的に計測することにより、ギ酸の量を測定することができる。
2.本発明の酢酸測定法
2.1 本発明の酢酸測定の反応の概略
本発明の酢酸測定は、酢酸を基質とする酵素を用いて行うことができ、例えば、酢酸キナーゼを使用することができる。
本発明の酢酸測定法における、酢酸キナーゼを用いる場合の反応は、以下のとおりである。
2.2 本発明の酢酸測定で使用される酵素
本発明において使用される酢酸キナーゼ(Acetate kinase; AcK)としては、B. stearothermophilus由来の酢酸キナーゼおよびE. coli由来の酢酸キナーゼが挙げられる。
B. stearothermophilus由来の酢酸キナーゼは、ユニチカ社より市販され、E. coli由来の酢酸キナーゼはSIGMA社より市販されている。
本発明において使用されるピルビン酸キナーゼ(Pyruvate kinase)は、SIGMA(FLUKA) 83328 / rabbit muscleとして市販され、ピルビン酸オキシダーゼ(Pyruvate oxidase)は、TOYOBO P311 /microorganismとして市販されている。
2.3 本発明の酢酸測定
本発明においては、好ましくは、酢酸キナーゼと油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料との酵素反応生成物を発色反応に供し、発色反応を分光学的に測定することにより、酢酸の量を測定する。
本発明においては、酢酸キナーゼと共に、好ましくは、ADPのリン酸化に関与するピルビン酸キナーゼが使用される。ピルビン酸キナーゼによる、ADPのリン酸化によりATPが生じるとともに、ホスホエノールピルビン酸はピルビン酸へ脱リン酸化される。このピルビン酸を、好ましくは、酸化状態または還元状態で色が異なるメディエータを使用して、発色反応により、酢酸キナーゼによりリン酸化された酢酸の量を間接的に測定することができる。
メディエータとしては、DCIPおよびWST-1など還元型が水溶性である物質が挙げられる。メディエータを使用する場合には、ギ酸測定の場合と同様に、ジアフォラーゼと組み合わせることもできる。ジアフォラーゼと組み合わせるメディエータとしては、ビタミンK、フェナンスロリンキノンなどのキノン系化合物が好ましい。
発色反応は、分光光度計を用いて、分光学的に計測することができる。酸化状態または還元状態で色が異なるメディエータを使用する場合には、目視によっても反応を確認できる。
また、本発明においては、酢酸キナーゼを使用して、以下の反応によっても酢酸の量を計測することができる。ATPの存在下で、酢酸キナーゼを作用させ、その後、ホスホエノールピルビン酸をピルビン酸に脱リン酸化するまでは、先の反応と同一であるが、ピルビン酸酸化酵素(Pyox)によって、ピルビン酸を酸化して、過酸化水素を生じさせ、生成した過酸化水素を、4−アミノアンチピリン(4-AA)およびN,N-ビス(4−スルホブチル)−3−メチルアニリン(TODB)とともにペルオキシダーゼ(POD)により、キノンイミン色素とすることができ、結果として、酢酸濃度としてキノンイミン色素の吸光度を546nmの波長で測定することができる。
本発明においては、酢酸キナーゼと油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料との酵素反応生成物の量を電気化学的に測定することによっても酢酸の量を測定することができる。
例えば、ATPの存在下で、酢酸キナーゼを作用させ、その後、ホスホエノールピルビン酸をピルビン酸に脱リン酸化するまでは、先の反応と同一であるが、ピルビン酸酸化酵素によって、ピルビン酸を酸素と反応させて、生じた過酸化水素を、過酸化水素電極で電気化学的に検出することもできる。
また、ギ酸を測定する場合と同様にして、酢酸キナーゼと油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料との酵素反応生成物の量を、ピルビン酸オキシダーゼによって還元されるメディエータを電気化学的に測定することによっても酢酸の量を測定することができる。使用されるメディエータとしては、フェリシアン化カリウム、テトラチアフルバレン、キノン誘導体、フェナジンメトサルフェート、メトキシフェナジンメトサルフェート、フェロセニルボロン酸誘導体、p−アミノフェニルリン酸エステル、Ru(II)、Ru(III)、Ru(IV)などのルテニウム錯体、およびプルシアンブルー/ホワイト等が挙げられる。
3.本発明のプロピオン酸測定法
3.1 本発明のプロピオン酸測定の反応の概略
本発明のプロピオン酸測定は、プロピオン酸を基質とする酵素を用いて行うことができ、好ましくは、プロピオニルCoAトランスフェラーゼである。
本発明のプロピオン酸測定法における、プロピオニルCoAトランスフェラーゼを用いる反応は、以下のとおりである。
3.2 本発明のプロピオン酸測定で使用される酵素
本発明において使用されるプロピオニルCoAトランスフェラーゼ(Acyl CoA transferase; PCT)としては、Clostridium propionicum由来のプロピオニルCoAトランスフェラーゼが挙げられる。本発明において使用したClostridium propionicum由来のPCTのアミノ酸配列を配列番号12、塩基配列を配列番号11で示す。配列番号12は、登録番号AJ276553としてGenBankに登録されている野生型配列と、2番目および3番目のアミノ酸が異なっており、野生型配列では、2番目および3番目のアミノ酸が、それぞれRおよびKであり、本発明の変異型配列では、AおよびSとなっている。
本発明において使用される短鎖アシルCoAオキシダーゼ(Short chain acyl CoA oxidase; SCAOx)としては、Arabidopsis thaliana由来の短鎖アシルCoAオキシダーゼが挙げられる。本発明において使用したArabidopsis thaliana由来のSCAOxのアミノ酸配列を配列番号14(GenBank accession code NM_115043)、塩基配列を配列番号13で示す。配列番号13は、3'末端がTGA となっている点で、3'末端がTAAである野生型配列(GenBank accession code NM_115043)と異なっている。
本発明のプロピオン酸測定においては、上記のようなプロピオニルCoAトランスフェラーゼおよび短鎖アシルCoAオキシダーゼが使用されるが、例えば、配列番号12,14のアミノ酸配列において、1又は複数、2〜10個、または2〜5個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。
Clostridium propionicum由来のプロピオニルCoAトランスフェラーゼ(PCT)およびArabidopsis thaliana由来の短鎖アシルCoAオキシダーゼは、以下の実施例13に示されるように、大腸菌で組み換え生産し、精製した。
本発明において使用される場合、PCTとSCAOxとのユニット数の比は、1:1〜1:3であり、より好ましくは1:1.5〜1:2.5、最も好ましくは1:2である。
3.3 本発明のプロピオン酸測定
本発明においては、好ましくは、プロピオニルCoAトランスフェラーゼと油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料との酵素反応生成物を発色反応に供し、発色反応を分光学的に測定することにより、プロピオン酸の量を測定する。
本発明において、好ましくは、酸化状態または還元状態で色が異なるメディエータを使用して、発色反応により、プロピオニルCoAトランスフェラーゼにより生成されたエステルの量を測定する。
メディエータとしては、DCIPおよびWST-1などが挙げられる。これらのメディエータは、酸化状態または還元状態で色が異なるので、発色反応により、プロピオニルCoAトランスフェラーゼにより生じたエステルの量を測定し、結果として、潤滑油およびバイオディーゼルなどの油の劣化により生じた短鎖有機酸としてのプロピオン酸の量を測定できる。SCAOxと組み合わせるメディエータとしては、フェナジンメトサルフェート、メトキシフェナジンメトサルフェートが好ましい。
発色反応は、分光光度計を用いて、分光学的に計測することができる。酸化状態または還元状態で色が異なるメディエータを使用する場合には、目視によっても反応を確認できる。
また、本発明においては、プロピオニルCoAトランスフェラーゼを使用して、以下の反応によってもプロピオン酸の量を計測することができる。アセチルCoAの存在下で、プロピオニルCoAトランスフェラーゼを作用させるまでは、先の反応と同一であるが、短鎖アシルCoAオキシダーゼによって、プロピオニルCoAを酸化して、過酸化水素を生じさせ、生成した過酸化水素を、4−アミノアンチピリンおよびN,N-ビス(4−スルホブチル)−3−メチルアニリンとともにペルオキシダーゼ(POD)により、キノンイミン色素とすることができ、結果として、プロピオン酸濃度としてのキノンイミン色素の吸光度を546nmの波長で測定することができる。
本発明において使用される場合、ペルオキシダーゼ(POD)のユニット数は、0.1U以上、より好ましくは0.15U以上であり、最も好ましくは0.15〜0.2Uである。
また、ギ酸を測定する場合と同様にして、プロピオニルCoAトランスフェラーゼ(PCT)と油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料との酵素反応生成物の量を、短鎖アシルCoAオキシダーゼ(SCAOx)によって還元されるメディエータを電気化学的に測定することによってもプロピオン酸の量を測定することができる。使用されるメディエータとしては、フェリシアン化カリウム、テトラチアフルバレン、フェリシアニド、フェナジンメトサルフェート、メトキシフェナジンメトサルフェート、フェロセニルボロン酸誘導体、p−アミノフェニルリン酸エステル、Ru(II)、Ru(III)、Ru(IV)などのルテニウム錯体、およびプルシアンブルー/ホワイトが挙げられる。
本発明においては、プロピオニルCoAトランスフェラーゼと油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料との酵素反応生成物の量を電気化学的に測定することによってもプロピオン酸の量を測定することができる。
例えば、アセチルCoAの存在下で、プロピオニルCoAトランスフェラーゼを作用させるまでは、先の反応と同一であるが、短鎖アシルCoAオキシダーゼによって、プロピニルCoAを酸素と反応させて、生じた過酸化水素を、過酸化水素電極で電気化学的に検出することもできる。
本発明の短鎖有機酸を測定する方法は、上記のようなギ酸、酢酸またはプロピオン酸を基質とする酵素および酵素反応生成物を定量するための酵素およびメディエータを、キットの構成要素として用いることができる。ブルクホルデリア・セパシアの脱水素酵素を用いたセンサ及びアッセイキットは、例えば、国際公開WO2006/137283号公報に記載されている。本発明の各種酵素も、同様にして使用することができる。
本発明のギ酸、酢酸、またはプロピオン酸を基質とする酵素を少なくとも1つ用いるバイオセンサは、具体的には、電気絶縁性の基板上に、スクリーン印刷等の方法によって作用極(測定極)と対極とを有する電極系を形成し、その上に、上記酵素およびメディエータなどを含む試薬層を形成することにより作製できる。このようなバイオセンサの製造方法は、例えば、特開平1−291153号公報、国際公開WO2005/043146号公報に記載されている。
本発明の油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料は、好ましくは、潤滑油またはバイオディーゼルを含む試料であり、より好ましくは、これらの油から抽出された有機酸の抽出物である。劣化油からの有機酸抽出は、水または水系溶媒によって行うことができる。
本発明において、劣化油を含む試料を水で抽出したものを、ギ酸を基質とする酵素、酢酸を基質とする酵素、および/またはプロピオン酸を基質とする酵素と反応させ、それぞれ、ギ酸、酢酸、またはプロピオン酸の濃度を測定する。
なお、以下の実施例で示される通り、有機酸抽出時に塩化ナトリウムを使用すると、ギ酸脱水素酵素およびジアフォラーゼの活性が低下することから、塩化ナトリウムの使用に注意することが好ましい。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕ギ酸濃度測定時のpHの影響
ユニチカ社製のギ酸脱水素酵素(Mv-FDH)を用いて、反応の液量を 160 mLとし、ギ酸ナトリウム濃度を0.1; 0.2; 0.3; 0.4; 0.5; 0.6; 0.8; 1; 2; 3; 4; 5; 6; 8; 10; 12; 14; 16; 18; 20; 30; 40; 60; 80; 100; 150; 200; 300; 400; 600; 900 mMとして分光学的にギ酸を計測した。
FDH (NADH; 340nmの吸光度の上昇を計測する方法)
反応液の組成は、500 mM リン酸カリウム緩衝液 (pH 7.0)、500 mM Tris-HCl (pH 8.0)、または 500 mM Tris-HCl (pH 9.0)を、16 mL (終濃度 50 mM); 40 mM b-NAD+, 16 mL (終濃度4 mM); 10 U/mL Mv-FDH, 10 mL (終濃度0.1 U); Mili-Q, 102 mL; ギ酸ナトリウム 16 mL(濃度は上記0.1〜900mM)とした。
FDH-Diaphorase (1:10) (WST-1を用い438 nmの吸光度の増加を計測する方法)
反応液の組成は、500 mM リン酸カリウム緩衝液 (pH 7.0)、500 mM Tris-HCl (pH 8.0)、または 500 mM Tris-HCl (pH 9.0)を、16 mL (終濃度50 mM); 40 mM b-NAD+, 16 mL (終濃度4 mM); 10 U/mL Mv-FDH, 10 mL (終濃度0.1 U); 50 U/mL Diaphorase I, 20 mL (終濃度1 U); 超純水 66 mL; 14 mM WST-1, 16 mL (終濃度1.4 mM); ギ酸ナトリウム 16 mL(濃度は上記0.1〜900mM)とした。
Mv-FDH単独(すなわちNADHの生成を340nmの吸光度の増加速度で計測する方法)ではpH 7.0 で最大の活性を示し(図1A)、40 mMおよび90 mM ギ酸ナトリウムに対してpH8.0, 9.0で測定するとpH7.0の80 % の活性だった(図1Cの左半分)。 一方、 Mv-FDH-Diaphorase の系での感度はpH 8.0 と 9.0 とで最大を示した(図1A,B)。8 mM および 20 mM ギ酸ナトリウムではMv-FDH-Diaphorase 系での感度はpH7.0 時の180 %であった。この違いは、最適pHがMv-FDHとDiaphoraseとで異なることによると考えられる。
ユニチカ社のプロトコルではMv-FDH の至適pH は6.0 - 8.0、Diaphorase の至適pHは 8.0であると記載されているため、pH8.0 - 9.0で計測すると感度が高くなる可能性が示唆された。
ギ酸ナトリウム2 mMまでの低濃度域のS〜Vプロットを拡大すると良好な直線性がみられた (R2 > 0.9)(図1B)。以上より、劣化油から抽出した有機酸はpH 8〜9で計測するのが最も良いため、劣化油から抽出する際もpH 8〜9が良いと考えられる。
〔実施例2〕pH9.0におけるNaCl濃度の影響
反応液は全量で160 mLとし、ギ酸ナトリウム濃度を 0; 250; 500; 1000; 1500; 2000; 2500; 3000; 4000 mMとした。
FDH (NADH; 340nmの吸光度の上昇を計測する方法)
反応液の組成は、500 mM Tris-HCl pH 9.0を16 mL (終濃度50 mM); 40 mM b-NAD+, 16 mL (終濃度4 mM); 10 U/mL Mv-FDH, 10 mL (終濃度0.1 U); 超純水70 mL; NaCl, 32 mL; ギ酸ナトリウム 16 mL(濃度は上記0〜4000mM)とした。反応液を室温で 20 minインキュベートした後にギ酸ナトリウムを添加して反応を開始した。
FDH-Diaphorase (1:10) (WST-1を用い438 nmの吸光度の増加を計測する方法)
反応液の組成は、500 mM Tris-HCl pH 9.0, 16 mL (終濃度50 mM); 40 mM b-NAD+, 16 mL (終濃度4 mM); 10 U/mL Mv-FDH, 10 mL (終濃度0.1 U); 50 U/mL Diaphorase I, 20 mL (終濃度1 U); 超純水34 mL; NaCl, 16 mL; 14 mM WST-1, 16 mL (終濃度1.4 mM); ギ酸ナトリウム16 mL(濃度は上記0〜4000mM)とした。反応液を室温で 20 minインキュベートした後にWST-1を添加し、その後、ギ酸ナトリウムを添加して反応を開始した。
Mv-FDH単独およびMv-FDH-Diaphorase いずれの場合もNaClとインキュベ−トすると活性は低下した(図1D)。100 mM NaClではMv-FDH-Diaphorase は活性が50%まで低下した。Mv-FDH 単独ではMv-FDH-Diaphorase 系よりも活性を保っていた。ユニチカ社プロトコルにはMv-FDHの塩耐性に関するデータは記載されていないが、Diaphoraseに関しては300 mM NaCl, KCl, MgCl2 において活性が80 %まで低下すること、80 mM CaCl2 では60 %まで低下することが示された。以上より、劣化油からの有機酸抽出時のNaCl等塩の添加には注意が必要である。
〔実施例3〕メディエータの種類の影響
酸化還元色素としてDCIPとWST-1とを比較した(表1)。項目4と7、5と8を比べるとVmaxはDCIPを使用した方が高く、Km値も大きかった。DCIPもこの計測系に使用できること、感度はWST-1より高いことがわかった。しかしながら、DCIPは反応の進行により吸光度が減少していく化合物であるため、バックグラウンドが高くダイナミックレンジが狭いと考えられ、WST-1の方が望ましいことが示唆された。
〔実施例4〕WST-1濃度の影響
反応液は全量で160 mLとし、ギ酸ナトリウム濃度を0.1; 0.2; 0.3; 0.4; 0.5; 0.6; 0.8; 1; 2; 3 mMとした。
FDH-Diaphorase (1:10) (WST-1を用い438 nmの吸光度の増加を計測する方法)
反応液の組成は、500 mM Tris-HCl pH 8.0を16 mL (終濃度50 mM); 40 mM b-NAD+, 16 mL (終濃度4 mM); 10 U/mL Mv-FDH, 10 mL (終濃度0.1 U); 50 U/mL Diaphorase I, 20 mL (終濃度1 U); 超純水, 80.4 mL or 78 mL or 74 mL or 66 mL; 100 mM WST-1, 1.6 mL or 4 mL or 8 mL or 16 mL (終濃度1 mM, 2.5 mM, 5 mMまたは10 mM); ギ酸ナトリウム 16 mL(上記濃度)とした。
WST-1濃度を 1 mM, 2.5 mM, 5 mM, 10 mMと上げていっても、吸光度の増加速度は上昇しなかった(図2)。しかし、ギ酸濃度が低い範囲(2 mM = 93.3 ppm以下)では、直線性が向上していた。なお、pH 8.0で計測したみかけの Km 値は、Mv-FDHの文献値(A.Galkin, L.Kulakova, V.Tishkov, N. Esaki, K. Soda. Cloning of formate dehydrogenase gene from a methanol-utilizing Mycobacterium vaccae N10. Appl. Microbiol. Biotechnol. 44, 479-483 (1995))と近かった。以上より、低濃度のギ酸を計測する際には、WST-1 濃度は 2.5 〜 5 mMが望ましいことが示された。
〔実施例5〕Mv-FDHとジアホラーゼの混合比率
表1の項目4,5,6はMv-FDH : Diaphorase=1:1, 1:5, 1:10(ユニット比)と変えた場合の見かけのKm, Vmaxを示す。これらを比較するとWST-1濃度が一定ならばDiaphorase比が高い方がVmaxが大きく(すなわち感度が高く)、Km値が高い(すなわち直線範囲が広い)ことがわかる。項目7,8でDCIPを用いた場合にも同様であった。このことから、以下の実施例6では、WST-1を2.5または5mM、Ps-FDH:Diaphorase=1:30とした。
〔実施例6〕End-point 法での計測 (pH 8.0)
上記実施例4の試料と同一の試料を用いた。96穴マイクロプレートに試料を入れ、デジタルカメラでマイクロプレートを撮影した(図3A,B)。このとき、並行して10 mLの試料を 990 mLの緩衝液に添加 (1/100 希釈)し、438nmでの吸光度を計測した。
上記実施例4の試料をそのまま長時間インキュベートし、長くした場合の反応液の色調を観察した。アルミホイルで遮光し2時間(図3A)または24時間(図3B)インキュベートした後の色調を写真で示す。2mM以下の濃度では目視でギ酸濃度に応じた明確な色変化がみられた。試料を100倍希釈し438 nm での吸光度をギ酸濃度に対してプロットすると、WST-1濃度2.5 mMの場合、良好な直線性を示した(図3C)。以上より、本方法により低濃度のギ酸が簡便に正確に計測できることが示された。
〔実施例7〕バクテリア由来のギ酸脱水素酵素遺伝子のクローニング
1.FDH遺伝子の候補選定
Ps-FDH (Pseudomonas sp.101) のコドンを、以下の3種類の異なるプログラムを用いて大腸菌発現用に最適化した:OPTIMIZER (genomes.urv.cat/OPTIMZER) (Nucl. Acids Res. 35(Suppl 2): W126-W131 (2007)); Gene Design 3.0 (www.genedesign.org) (Nucl. Acids. Res. 38(8) 2603-2606 (2010));およびGenScript社の OptimumGeneTM サービス (www.genscript.com/codon_opt.html)。
OPTIMIZER と Gene Design 3.0 はコドン頻度のみを考慮するもので、Mv-FDH 遺伝子とは96 %類似の配列であった。一方、GeneOptimumTM はGC含量とmRNA二次構造なども考慮するプログラムで、Mv-FDH のDNA配列と80%の類似性であった。Ps-FDH はアミノ酸配列が公開されているが(Dokl. Akad. Nauk. SSSR 317: 745-748 (1991))、DNA配列はデータバンクには登録されておらず、OPTIMIZER とGene Design 3.0で予測した配列の合成を依頼した。
Mv-FDH 配列のアミノ酸配列をPSI-BLASTで検索した。これはBLASTよりも、より遠い配列を検索できるものである。検索の結果、主としてバクテリア (identity, 99-22%), 真菌(identity, 78-37%) 、植物 (identity, 51-26%) 由来の配列が得られた。
以下のとおり、NAD+ との結合、ギ酸との結合に関与するアミノ酸はほとんどすべての配列で保存されていた。なお、配列アライメントにはCLUSTALを用いた。
Mv−FDH配列における126位のアスパラギン酸、148位のセリン、198位のバリン、202位のアルギニン、203位のイソロイシン、222位のアスパラギン酸、223位のアルギニン、259位のヒスチジン、381位のセリン、および382位のチロシンはNAD結合部位を示す。
Mv−FDH配列における147位のアスパラギン、151位のバリン、283位のトレオニン、285位のアルギニン、309位のアスパラギン酸、333位のヒスチジン、335位のセリン、および336位のグリシンはギ酸結合部位を示す。
従って、バクテリアの FDHは、高い触媒活性 kcat, 至適反応温度が高いこと, Km値(Biochemistry (Moscow) 69: 1252-1267 (2004))などから計測に適していると考えられた。
ここで、Paracoccus denitrificansBurkholderia cepaciaは、Mv-FDHの アミノ酸配列との同一性がそれぞれ80 % と 69 %で適度な相同性があったため、目的配列をPCR法でクローニングすることにした。なお、近縁である Burkholderia stabilis FDHは、NADP+に対する特異性が高いことが知られている(Enzyme Microbiol. Technol. 46: 557-561 (2010))。
2.FDH遺伝子の合成
PCR での FDH 遺伝子の増幅は次のような方法で行った。組成: GoTaq, 25 mL; 10 mM forward または reverse プライマー 2 mL, 滅菌超純水 21 mL; 鋳型DNA , 細胞のペレット (total volume, 50 mL). 鋳型DNAは次のように調製した:
10 mL のParacoccus denitrificansグリセロールストックまたは Burkholderia cepacia IFO 5507を1 mL LB 培地で37 oCで一夜培養した。培地100 mL を10,000 r.p,m, 3 min., 4 oCで遠心分離したペレットをそのままPCRのテンプレートとして用いた。
プライマーの配列: P. denitrificans forward (NdeI), 5'-TTA CAT ATG GCC AAG GTT GTT TGC GTG CTC-3'(配列番号7); reverse (HindIII), 5'-TTA AAG CTT TCA GCC GAC CTT CTC GAA CTT CGC-3' (配列番号8); B. cepacia forward (NdeI), 5'-TTA CAT ATG GCC ACC GTC CTG TGC GTG CTC-3' (配列番号9); reverse (HindIII), 5'-TTA AAG CTT TCA CGT CAG CCG GTA CGA CTG CGC-3' (配列番号10)。
PCR条件: 95 oC, 2 min.; [(95 oC, 30 sec.); (55 oC or 60 oC, 30 sec); (72 oC, 2 min.30 sec)] x 40; 72 oC, 10 min.
PCR産物10 mL を1 %アガロースゲルで電気泳動したところ、FDH遺伝子に相当する大きさのバンドが検出できた。
Paracoccus denitrificans (PD-FDH) および Burkholderia cepacia NBRC 5507 (BC-FDH) FDH遺伝子PCR産物をGeneCleanIIを用いて精製し、NdeI and HindIIIで切断した。電気泳動後にゲルを切り出し、GeneCleanIIで精製後、Takara ligation kitを用いて同制限酵素で切断したpET28a-SCAoxとライゲーションし、E. coli BL21 に形質転換後、50 mg/mL Kanamycinを含むLB培地でセレクションした。
コロニーPCR にてFDH 遺伝子を確認したところ、E. coli BL21 pET28a PD-FDHと E. coli BL21 pET28a BC-FDH のコロニーPCRにおいて、FDHに相当する大きさのバンドが検出でき、クローニングできたことが確認された。
3.Paracoccus denitrificans FDH (PD-FDH) および Burkholderia cepacia FDH (BC-FDH) の精製
Overnight expression法で培養したところPD-FDH は大部分が不溶性画分に発現し、Ni-NTAカラムでの溶出画分に活性はなかった(図4B)。一方、BC-FDHも大部分が不溶性画分に発現したが、Ni-NTAカラムでの溶出画分に活性があり(図5B)、SDS-PAGEでもBC-FDH 41.4kDaに相当するシングルバンドが確認できた(図5C)。なお、図5BにおけるB1-4〜B1-8およびB2-3〜B2-8は、それぞれ図5Cのレーン4〜8およびレーン3〜8に対応する。実施例8において、B1-5をWST-1アッセイに、B1-6およびB2-5をNADアッセイに用いた。
〔実施例8〕BC-FDHを用いたギ酸の計測(発色反応)
ギ酸計測は、NADHの吸光度を計測する方法と、ジアフォラーゼと組み合わせてWST-1の吸光度を計測する方法とで、End point法で基質特異性および熱安定性について測定した。
NAD (4 mM)またはWST-1 (1 mM)およびBC-FDH を用いてギ酸濃度と酵素活性を計測したところ、Michaelis-Menten型の飽和曲線を描いた(図6A)。ここで、上記B1-5は黒丸に、B1-6は灰色丸に、B2-5は白丸に対応する。また、ギ酸濃度 0-2 mM 範囲では良好な直線性を有していた(図6B、C)。
反応2時間後の反応液の吸光度(WST-1のみ)も同様の結果であり(図7B)、0-2 mM 範囲では良好な直線性を有していた(図7C)。また、目視でもギ酸濃度に応じた色調の変化が観察された(図7A)。BC-FDH を用いた測定系の基質特異性および熱安定性は、Mv-FDHと同様で良好であり(図8)、BC-FDH は、ユニチカ社製のMv-FDHと同等に使用可能であると判断された。
〔実施例9〕Ps-FDH遺伝子のクローニングおよび調製
Ps-FDHは、以下のアライメントの通り、Mv-FDHと遺伝子の類似が96%あり、適度な相同性を有するのでクローニングをすることとした(Tishkov V.I., Galkin A.G., Egorov A.M. Dokl. Akad. Nauk SSSR 317:745-748(1991)およびPopov V.O., Shumilin I.A., Ustinnikova T.B., Lamzin V.S., Egorov T.A. Bioorg. Khim. 16:324-335(1990))。
(Ps-FDH遺伝子の調製方法)
Ps-FDHは、既報のアミノ酸配列をもとに、大腸菌での生産のためコドンを最適化した遺伝子をGenScript, US社に依頼し化学合成した。Ps-FDH遺伝子はpET28(a)ベクターに挿入し、pET28aPs-FDHベクターを調製し、これを大腸菌BL21(DE3)株に形質転換した。
(Ps-FDHの調製:培養)
BL21(DE3)/pET28Ps-FDHを500mLフラスコ中、50μg/mL Kanamycinを含む100mLのLB培地に植菌し、37℃で一夜前培養した。次に3Lのファーメンタに50μg/mL Kanamycinを含む2Lのovernight expression用培地を入れ、25℃で600rpmで撹拌し、1v/v minで通気して30時間培養し、4℃7000xg、20分で遠心分離して集菌し、16.8gの湿菌体を得た。
湿菌体を10mM imidazole, 300mM NaClを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7)に懸濁させフレンチプレスで破砕し、cell-free extractを調製した。20,000 x g, 30分、4℃で遠心分離し、可溶性画分を105 mL調製し,そのうち2本を精製した。
(Ps-FDHの調製:精製)
精製はNi-agaroseカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィで行った。Ni-agaroseレジンを詰めたカラムを10mM imidazole, 300mM NaClを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7)で平衡化し、可溶性画分35mLを添加したのち、同緩衝液を流して洗い、次にimidazole濃度を10mMから50,100,150,200,250mMとした緩衝液を順番に添加して流れ出る液体を採取し、1-1,1-2,1-3,1-4,1-5,1-6とした。それぞれのフラクションを50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7)で透析した。
(精製度の確認)
1-1,1-2,1-3,1-4,1-5,1-6の各フラクションの蛋白濃度を測定し、SDS-PAGEで精製度を確認した。Ps-FDH活性は、以下の方法で計測した。
(精製の結果)
各フラクションの比活性を図9Aに示す。各フラクション溶出時のイミダゾール濃度は以下の通りであった。
SDSPAGEによる精製度の確認を図9Bに示す。Ps-FDHは比活性が高く、生産量も良好であり、FDH試料として好ましい性質を有していた。
〔実施例10〕Ps-FDHを用いたギ酸の計測(発色反応)
Ps-FDHの評価として、“NAD(4mM)とWST-1(1.4mM)とPs-FDH”または“NAD(4mM) とPs-FDH”を用いてギ酸濃度を計測し、S-Vプロット(検量線)の直線性を確認した。それらの測定方法と結果を以下に示す(表4、図10A、B)。
図10A、Bに示される通り、ギ酸濃度0−1mMの範囲で良好な直線性を示していた。更に、Ps-FDHの基質特異性と熱安定性も確認した。それらの測定方法と結果を以下に示す(表5、図10C、D)。
基質特異性および熱安定性は共に、Mv-FDHと同様に良好であった。
以上のデータより、Ps-FDHはユニチカ社製のMv-FDHと同等に使用可能であることがわかった。また、Ps-FDHはBC-FDHよりも生産性も高いため、Ps-FDHの方が有用性が高いことが理解される。
〔実施例11〕Ps-FDHとジアホラーゼの混合比率
下の表に示すような比率で試薬を調製し、各濃度のギ酸におけるPs-FDHの活性を測定した。
結果を図11に示す。図11はPs-FDH:diaphorase=1:1,1:5,1:10,1:20:1:40,1:80(ユニット比)と変えた場合の活性を示す。各群の活性を比較すると、diaphorase比が高い方が傾きが大きく(感度が高く)見かけのKmが高い(直線範囲が広い)ことがわかる。計測したいギ酸濃度は0.6mM(30ppm)以下の範囲であるため、以上よりギ酸を計測する際には、Ps-FDH:Dia比が1:40から1:80の範囲が望ましいことが示された。
〔実施例12〕Mv-FDHを用いたギ酸の計測(電気化学的)
β-NAD 4mM, Mv-FDH 0.1U, フェリシアン化カリウム40mM, Diaphorase 0.5U, NaCl を含む50mMリン酸緩衝液(pH7) 9.5μLに対して、ギ酸を0〜4mMまでの様々な濃度になるように添加し、1分または5分おいてから400mV vs(Ag/AgCl)の電位を印加し、20秒後の電流値を計測しギ酸濃度に対してプロットした。結果を図12Aに示す。
反応時間1分でもギ酸濃度が計測できた。反応時間を5分とするとさらに感度が上昇した。以上のように、電気化学法での計測について検討を行ったところ、5分で十分な感度で計測ができることがわかった。
基質単体に対する特異性の確認
β-NAD 4mM, Mv-FDH 0.1U, フェリシアン化カリウム40mM, Diaphorase 0.5U, NaCl を含む50mMリン酸緩衝液(pH7) 9.5μLに対して、ギ酸・酢酸・プロピオン酸・酪酸それぞれを終濃度4mMの濃度になるように添加し、5分おいてから400mV vs(Ag/AgCl)の電位を印加し、120秒間の応答電流値の推移と、20秒後の電流値を計測した。
結果を図12Bに示す。ギ酸を基質とした場合にのみ高い応答電流が得られた。電位を印加後20秒後の電流値は、ギ酸に対する応答電流値を100%とすると、他の基質に対する応答電流値は2%以下と、ほとんど見られなかった。
混合基質に対する反応性確認
β-NAD 4mM, Mv-FDH 0.1U, フェリシアン化カリウム40mM, Diaphorase 0.5U, NaCl を含む50mMリン酸緩衝液(pH7) 9.5μLに対して、それぞれ終濃度でギ酸1.5mM+酢酸4mM / ギ酸1.5mM+プロピオン酸 4mM / ギ酸1.5mM+酪酸 4mMの濃度になるように混合基質を添加し、5分おいてから400mV vs(Ag/AgCl)の電位を印加し、120秒間の応答電流値の推移を計測した。
どの混合基質に対してもギ酸1.5mMに対する応答電流値と同等の電流値しか計測されなかった。
以上のように、基質単体の場合も、複合基質の場合も、ギ酸のみに高い反応性がみられた。
塩濃度の影響検討
検討方法は、上の測定条件と同じとした。ただし反応時間を5分とし、NaCl終濃度を0,400,800mMとした。結果を図12Cに示す。NaCl濃度は低い方が望ましいことが理解された。
メディエータとして、塩化ヘキサアンミンルテニウム(III)またはヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムを用いる場合
β-NAD 4mM, Ps-FDH 0.03U, フェリシアン化カリウムまたはヘキサアンミンルテニウム錯体40mM, Diaphorase 0.5Uを含む50mMリン酸緩衝液(pH7) 9.5μLに対して、ギ酸を0〜4mMまでの様々な濃度になるように添加し、5分おいてから400mV vs(Ag/AgCl)の電位を印加し、20秒後の電流値を計測しギ酸濃度に対してプロットした。結果を図12D、Eに示す。いずれのメディエータを用いた場合でも同程度の直線性が得られた。すなわち、いずれを用いてもギ酸計測が可能である。
〔実施例13〕酢酸の計測
下記のpyruvate kinase-pyruvate oxidase-peroxidase system で E. coli 由来の酢酸キナーゼ(Sigma)を加えて酢酸計測を行った。
(1) ATP + Acetate -(Acetate kinase)-> ADP + Acetylphosphate.
(2) ADP + PEP -(Pyruvate kinase)-> Pyruvate + ATP.
(3) Pyruvate + O2 -(Pyruvate oxidase)-> Acetyl phosphate + H2O2.
(4) H2O2+ TODB +4AA -(peroxidase)-> quinonedye
反応液は 160 mLであり、組成は以下のとおりであった:
25mM HEPES (pH 7.4)または25 mM PPB (pH 7.4)
100 mM ATP, 20 mL (f.c. 12.5 mM);
1,000 U/ml Acetate kinase from E. coli (Sigma), 2 mL (f.c. 2 U);
200 mM MgCl2, 20 mL (f.c. 25 mM); 5 mM PEP, 19 mL (f.c. 0.6 mM);
1,000 U/mL Pyruvate kinase, 16 mL (16 U);
Pyruvate oxidase, 3.2U;
TODB, 1.5mM;
4AA, 1.5mM;
Peroxidase, 0.32U;
3,000 mM acetate, 16 mL (300 mM)。
E. coli由来AcK (Sigma)を反応させたところ、酢酸の有無で違いがみられ、AcK活性があることが示された(図13)。「−」は300 mM酢酸なし、「+」は300 mM酢酸あり、を示す。
〔実施例14〕酢酸の計測
Bacillus stearothermophilus 由来の酢酸キナーゼを用いて測定を行い、検量線データを求めた。
発色反応
0,16U 酢酸キナーゼ,1mM ATP, 0.25mM phosphoenolpyruvate, 3.2U ピルビン酸オキシダーゼ, 1.5mM 4-アミノアンチピリン, 1.5mM TODB 0.32U peroxidase溶液に0-0.8mMとなるように酢酸を混合して96穴マイクロフ゜レートに試料を入れ、90分後にデジタルカメラでマイクロプレートを撮影した。この時並行して各試料を一定の倍率で希釈して546nmの吸光度を計測した。デジタルカメラで撮影した結果を図14Aに示す。A行は0.0-0.09mMの酢酸、B行は0.1-1.0mMの酢酸、C行は2-8mMの酢酸の結果である。1mM以下の酢酸濃度範囲では目視でも濃度の違いが認められた。また検量線を図14Bに示す。1mM以下の濃度範囲で酢酸の定量が可能であることがわかった。
電気化学的測定方法
3.2U 酢酸キナーゼ,1mM ATP, 0.25mM phosphoenolpyruvate, 1.6U ピルビン酸オキシダーゼ, 10mM MgCl2 , 3.5U pyruvate kinase, 0.2mM TPP, 0.01mM FAD, 40mMフェリシアン化カリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.0) 溶液に酢酸を混合して5分おいてから400mV vs(Ag/AgCl)の電位を印加し、20秒後の電流値を計測し酢酸濃度に対してプロットした。結果を図14Cに示す。1mMの酢酸(AA)を測定するために反応時間を5分で出来、ギ酸測定と同程度の時間で測定が可能である。感度も十分であった。
以上のように、1mMの酢酸(AA)を5分で計測出来、ギ酸測定と同程度の時間で測定が可能であった。
〔実施例15〕プロピオン酸の計測
PCT、SCAOxのプラスミド上の配列が正しいことを配列決定により確認したのち、auto induction systemで培養、HisTag精製して酵素反応に用いた。
プロピオン酸の計測に関して計測する波長を500nm (フェノールと4AAを用いた時の波長)を546nm(4AAとTODBを用いた時の波長)とで比較した(Rajashekara et al., 2006)。
反応は、緩衝液100 mM SPB pH 7で行った。反応液は、全量で160 mLとし、組成は以下のとおりである:
0.1 mM Acetyl Coenzyme A (Wako), 0.05 mM FAD (Wako), 0.28 U Peroxidase (Amano), 1.5 mM 4-aminoantipyrine (Wako), 1.5 mM TODB (Dojindo), 16 mg SCAOx enzyme, 8 mg PCT enzyme, および種々の濃度のプロピオン酸(Kanto)。
比活性(U/mg)は、キノンイミン(6.4 mM-1 cm-1)の500 nmにおける吸光係数に基づいて計算した。
546 nm で計測した場合には0.1-1mMまで感度が増大した(図15A)。低い濃度域でも感度が増大した(図15B)。500 nmでのKm値は210 mMであり、360 mM (Rajashekara et al., 2006)と比較可能であった。また、546 nmでのKm値は460 mMであり、1,200 mM (Aoyagi, 非公開データ, 2003)と比較可能であった。古い潤滑油中のプロピオン酸の濃度範囲(5 ppm=67 mM)は、この系で計測可能であることが理解される。
〔実施例16〕バイオディーゼルからのギ酸の計測
98%蟻酸溶液を100%BDFを用いて段階的に希釈し0.01%の蟻酸を含む100%BDF(SA希釈系)を調製し、試料とした。同様にして、98%蟻酸溶液をミリQ水を用いて段階的に希釈した希釈系も作成し、これをスタンダード(STD)試料とした。
ギ酸の活性測定の手順は以下の通りであった。
SA希釈系1.5mLとミリQ 1.5mLを混合(1:1 by vol.)し、1時間静置した。その後、BDF部分(上部)をピペッターで取り除き、残りの水層部(下部)下方より1mLを測定用抽出試料として採取した。これを直ちにPs-FDH-diaphorase系で、分光学的方法で活性を測定した。 結果を図16に示す。
標準サンプルでは100ppmまでのギ酸濃度で酵素反応速度の濃度依存性がみられた。特に0から25ppmまでの直線性がみられた。抽出サンプルでも100ppmまでのギ酸濃度で酵素反応速度の濃度依存性がみられ、0から25ppmまでの直線性がみられたとともに0ppmでも活性が見られた(図16A)。
これはもともとのBDFに含まれていたギ酸と思われ、標準試料と比較するために両系列とも0ppmでの活性値を差し引いて比較すると良好に一致した(図16B)。このことから本発明の方法を用いて、ギ酸濃度が分光学的に計測できることが示された。
〔実施例17〕ギ酸脱水素酵素を用いた比色式バイオセンサの作製
比活性が優れていたBurkholderia cepacia由来ギ酸脱水素酵素を用いてバイオセンサを作製した。
図17に示す基本構成を有するバイオセンサを作製した。すなわち、前記バイオセンサは、透明基板2に対してスペーサー3を介して透明カバー4(材質PET)を積層した形態を有し、各要素2〜4によってキャピラリ5が規定されている。キャピラリ5の寸法は、1.3mm×9mm×50μmである(図17)。透明基板2および透明カバー4は、厚みが250μmであるPETにより形成し、スペーサー3は黒色の両面テープにより構成した。
バイオセンサは、図18に示す第1試薬部〜第3試薬部を有し、それぞれ成分及び塗布量を表2に示す。表中、SWNはLithium Magnesium Sodium Silicateを示す。
上記バイオセンサのキャピラリに測定試料を供給し、その時点から5秒後のエンドポイントの吸光度をプロットした。各回の吸光度の測定においては、第3試薬部に対して、キャピラリの高さ方向に沿って光を照射し、そのときにバイオセンサを透過した光を受光した。光の照射は、発光ダイオードを用いて630nmの光を照射することにより行なった。透過光は、フォトダイオードにおいて受光した。
〔実施例18〕ギ酸脱水素酵素を用いた電極式バイオセンサの作製
比活性が優れていたギ酸酵素を用いて電極式バイオセンサを作製した。
(作製手順)
電極式バイオセンサの作製方法を、図19を参照して以下に示す。絶縁基板1として、PET製基板(長さ28mm、幅7mm、厚み250μm)を準備し、その一方の表面に、カーボンインクのスクリーン印刷により、リード部2および3をそれぞれ有する作用極4および対極5からなるカーボン電極系を形成した。つぎに、絶縁性ペーストを調製し、これを前記電極上にスクリーン印刷して絶縁層6とし、前記絶縁層を形成しない部分を検出部およびリード部とした。次に、合成スメクタイトである商品名「ルーセンタイトSWN」(コープケミカル社製)0.6gを精製水100mLに懸濁し、約8〜24時間攪拌した。この合成スメクタイト懸濁液10mLに、10%(w/v)CHAPS(同仁化学研究所製)水溶液0.1mL、1.0M Tris−HCl緩衝液(pH8.0)5.0mLおよび精製水4.0mLをこの順序で添加し、さらにメディエータとしてNAD+1.0gを混合した。この混合液1.0μLを、検出部に分注した。そして、これを、30℃、相対湿度10%の条件下で10分間乾燥させて、試薬層7を形成した。さらに、前記試薬層7上に酵素試薬層8を形成した。これは、本願発明の種々の酵素水溶液1.0μLを、検出部の試薬層の上に分注して、30℃、相対湿度10%の条件下で10分間乾燥させて形成した。最後に、スリット15を有するスペーサー11を絶縁層上に配置し、さらに、前記スペーサー上に空気孔14となる貫通孔を有するカバー12を配置してバイオセンサを作製した。
本発明の方法は、潤滑油等の油の酸化劣化によって産生される各種有機酸の計測に好適に使用できる。

Claims (19)

  1. (i)ギ酸を基質とする酵素、酢酸を基質とする酵素、およびプロピオン酸を基質とする酵素の少なくとも1種と、油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料とを反応させる工程、並びに(ii)酵素反応生成物の量を測定して、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸の少なくとも1種の濃度を測定する工程を含む、油の劣化を判定する方法。
  2. 前記工程(ii)は、酵素反応生成物を発色反応に供し、発色反応を分光学的に測定して、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸の少なくとも1種の濃度を測定する工程である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(ii)において、酵素反応生成物の量を、ジアフォラーゼを用いて間接的に測定することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. 前記ギ酸を基質とする酵素がギ酸脱水素酵素であり、ギ酸脱水素酵素とジアフォラーゼのユニット数の比が、1:40〜1:80であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
  5. 前記酵素反応の反応物の量を分光学的に測定する工程において、WST−1をメディエータとして使用し、その濃度が1mM〜10mMである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記工程(ii)は、酵素反応生成物の量を電気化学的に測定して、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸の少なくとも1種の濃度を測定する工程である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記酵素反応の反応物の量を電気化学的に測定する工程において、DCIP、WST−1、フェリシアン化カリウム、テトラチアフルバレン、フェリシアニド、キノン誘導体、フェロセニルボロン酸誘導体、p−アミノフェニルリン酸エステル、ルテニウム錯体、またはプルシアンブルー/ホワイトがメディエータとして使用される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記ギ酸を基質とする酵素として、ギ酸脱水素酵素を用いることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記ギ酸脱水素酵素が、BC-FDH、Ps-FDH、Mv-FDHまたはPD-FDHである、請求項8に記載の方法。
  10. 前記酢酸を基質とする酵素として、酢酸キナーゼを用いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記酢酸キナーゼが、E. coliまたはBacillus stearothermophilus由来である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記工程(ii)において、酵素反応生成物の量を、ピルビン酸キナーゼおよびピルビン酸オキシダーゼを用いて間接的に測定して、酢酸の濃度を測定することを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
  13. 前記プロピオン酸を基質とする酵素として、プロピオニルCoAトランスフェラーゼを用いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記工程(ii)において、酵素反応生成物の量を、短鎖アシルCoAオキシダーゼを用いて間接的に測定して、プロピオン酸の濃度を測定することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
  15. 前記プロピオニルCoAトランスフェラーゼと短鎖アシルCoAオキシダーゼのユニット数の比が、1:1〜1:3であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
  16. 前記試料は潤滑油またはバイオディーゼルを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法に用いられる、ギ酸脱水素酵素、ジアフォラーゼ、WST−1、酢酸キナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、プロピオニルCoAトランスフェラーゼ、および短鎖アシルCoAオキシダーゼからなる群より選択される1つ以上を含む、油劣化を測定するためのキット。
  18. 電極系と反応層を有する基板上に試薬層を含み、電極系は測定極と対極とを備え、試薬層はギ酸を基質とする酵素、酢酸を基質とする酵素、およびプロピオン酸を基質とする酵素の少なくとも1種を含み、油を含む試料または油から抽出された有機酸を含む試料中の基質と当該酵素との酵素反応生成物の量を測定して、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸の少なくとも1種の濃度を測定して、油劣化を測定するためのバイオセンサ。
  19. (i)ギ酸脱水素酵素とギ酸を含む試料とを反応させる工程、並びに(ii)ジアフォラーゼを用いて酵素反応生成物の量を間接的に測定して、ギ酸の濃度を測定する工程を含み、前記ギ酸脱水素酵素とジアフォラーゼのユニット数の比が、1:40〜1:80である、ギ酸の測定方法。
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