JP2010041971A - 変異型ギ酸脱水素酵素、これをコードする遺伝子及びnadhの製造方法 - Google Patents

変異型ギ酸脱水素酵素、これをコードする遺伝子及びnadhの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の知見からは予測できないほどに高い比活性を示すギ酸脱水素酵素を利用し、当該ギ酸脱水素酵素の有用な利用用途を提供する。
【解決手段】 アカカビ由来のギ酸脱水素酵素は従来公知のギ酸脱水素酵素のなかでも抜群に高い比活性を示すことを明らかにした。アカカビ由来のギ酸脱水素酵素としては、例えば配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質を挙げることができる。このアカカビ由来のギ酸脱水素酵素を利用してNADHを製造することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、野性型ギ酸脱水素酵素における特定の部位に置換型変異を有する変異型ギ酸脱水素酵素、当該変異型ギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子及びNADHの製造方法に関する。
ギ酸脱水素酵素(EC.1.2.1.2)は、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、ギ酸及び水の存在下で、NAD+を還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)に還元するとともにギ酸を二酸化炭素に酸化する。この酵素反応に基づいてギ酸脱水素酵素は、NAD+からNADHを再生する系に利用されている。従来、ギ酸脱水素酵素としては、例えば特許文献1に記載されるようなカンジダボイジニイ(Candida boidinii)(ATCC32195)由来のギ酸脱水素酵素、特許文献2に開示されるようなバチルス属細菌由来のNAD+依存性ギ酸脱水素酵素、特許文献3に開示されるようなマイコバクテリウム・バッカエ(Mycobacterium vaccae)由来のギ酸脱水素酵素が知られていた。
また、非特許文献1には、これら以外にも種々の微生物や植物由来のギ酸脱水素酵素が開示されている。しかしながら、非特許文献1に記述されているように、ギ酸脱水素酵素は、様々な酵素のなかで、比活性はそれほど高くない。換言すると、ギ酸脱水素酵素によるNADHへの還元反応を利用したNADHの生産方法は、ギ酸脱水素酵素の比活性の低さに起因して生産性が悪いといえる。
ところで、ギ酸脱水素酵素に関しては、現在までに種々の研究結果が蓄積され、部位特異的変異導入による機能改変に関する報告がなされている(非特許文献2)。しかしながら、従来公知のギ酸脱水素酵素は、いずれも比活性や耐久性が低く、ギ酸脱水素酵素を利用したNADHの製造には不十分であると評価せざるを得ない。
特開2003−180383号公報 特開2002−233395号公報 特願平10−023896号公報 BIOCHEMISTRY (Moscow), Vol. 69, No. 11, 2004, pp. 1252-1267.(Biokhimiya, Vol. 69, No. 11, 2004, pp. 1537-1554.の英訳) Biomolecular Engineering, 23, (2006) 98-110
上述した実情に鑑み、本発明者らは先に、従来の知見からは予測できないほどに高い比活性を示すギ酸脱水素酵素、当該ギ酸脱水素酵素を利用したNADHの製造方法に関する特許出願を行った(特願2008−100448号)。そして、本発明は、当該特許出願に係るギ酸脱水素酵素及び従来公知のギ酸脱水素酵素について有用な置換型変異を探索し、従来公知の変異型ギ酸脱水素酵素と比較して、より耐久性及び/又は比活性に優れた変異型ギ酸脱水素酵素、当該変異型ギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子及び当該変異型ギ酸脱水素酵素を利用したNADHの製造方法を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するため本発明者らが鋭意検討した結果、上記特許出願に係るギ酸脱水素酵素及び従来公知のギ酸脱水素酵素における特定の部位におけるアミノ酸置換変異が、ギ酸脱水素酵素の耐久性及び/又は比活性を大幅に向上させることを見いだし本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリン、117番目のトレオニン、153番目のバリン、155番目のヒスチジン、159番目のグルタミン、161番目のフェニルアラニン、183番目のアルギニン、218番目のグルタミン酸、220番目のロイシン、222番目のグルタミン、227番目のトレオニン、239番目のメチオニン及び265番目のリシンからなる群から選ばれる1つのアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を含み、耐久性及び/又は比活性が向上したものである。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における117番目のトレオニンに相当するトレオニンがアラニンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における155番目のヒスチジンに相当するヒスチジンがグルタミンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における159番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における161番目のフェニルアラニンに相当するフェニルアラニンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における183番目のアルギニンに相当するアルギニンがシステインに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における218番目のグルタミン酸に相当するグルタミン酸がグリシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における220番目のロイシンに相当するロイシンがイソロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における222番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における227番目のトレオニンに相当するトレオニンがセリンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における239番目のメチオニンに相当するメチオニンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における265番目のリシンに相当するリシンがアスパラギンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
また、本発明に係るNADHの製造方法は、ギ酸及びNAD+を含む反応系に上述した本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素を作用させるものである。
本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、新規な一点置換型変異を有するための変異前と比較して大幅に耐久性及び/又は比活性が向上するといった特徴を有している。本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素を利用することによって、非常に高価な物質として知られるNADHを優れた生産性で製造することができる。本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素を利用してNADHを製造することによって、NADHの工業的製造が可能となる。
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。
ギ酸脱水素酵素
本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、ギ酸脱水素酵素における特定のアミノ酸残基を置換したアミノ酸配列を有する。ここで、ギ酸脱水素酵素としては、詳細を後述する置換対象アミノ酸残基を有し、ギ酸脱水素酵素活性を有するものであれば特に限定されない。すなわち、ギ酸脱水素酵素とは、酵素分類においてEC1.2.1.2に分類され、ギ酸イオンを二酸化炭素に酸化するとともに、NAD+イオンをNADHに還元する反応を触媒する活性を有する酵素である。
ギ酸脱水素酵素としては、植物由来の酵素であっても良いし、動物由来の酵素であっても良いし、微生物由来の酵素であっても良い。微生物由来のギ酸脱水素酵素としては、例えば、ギ酸脱水素酵素に関する総説(Biomolecular Engineering 23 (2006) 98-110)に開示されている種々のギ酸脱水素酵素を挙げることができる。より具体的に、近年のゲノム解析から明らかとなったStaphylococcus aureus由来のギ酸脱水素酵素(Baba, T.らLancet 359、1819-1827、2002)、Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis str.k10 (LiらProc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102、12344-12349、2005)、Bordetella由来のギ酸脱水素酵素(ParkhillらNat. Genet. 35, 32-40.、2003)、Legionella由来のギ酸脱水素酵素(ChienらScience 305, 1966-1968、2004及びCazaletらNat. Genet. 36, 1165-1173、2004)、Francisella tularensis subsp. tularensis SCHU S4由来のギ酸脱水素酵素(LarssonらNat. Genet. 37, 153-159、2005)、Histoplasma capsulatum由来のギ酸脱水素酵素(HwangらMol. Biol. Cell 14, 2314-2326、2003)及びCryptococcus neoformans var. neoformans JEC21 (LoftusらScience 307, 1321-1324、2005)等に対して本発明を適用することができる。
また、上記総説に開示されているPseudomonas sp.101由来のギ酸脱水素酵素、Mycobacterium vaccae N10.由来のギ酸脱水素酵素、Candida boidini由来のギ酸脱水素酵素、Candida methylica由来のギ酸脱水素酵素Saccharomyces cerevisiae由来のギ酸脱水素酵素及びParacoccus sp.12-A由来のギ酸脱水素酵素に対しても本発明を適用することができる。
特に、先に出願した(特願2008−100448号)Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素に本発明を適用することが好ましい。Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素は、上述した従来公知のギ酸脱水素酵素と比較して著しく優れた比活性を示すものである。Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号1に示し、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号2に示す。ここで、ギ酸脱水素酵素を取得するためには、アカカビ(学名:Gibberella zeae)として保存されている、従来公知の種々の菌株を使用することができる。例えば、American Type Culture Collection (ATCC)にATCC番号10910、20271、20272、20274、24689、28106又は48063として保存されているアカカビを使用することができる。また、ATCCには、登録名がFusarium graminearumとして保存されている場合もあるが、別名としてGibberella zeaeが登録されている場合にはこれらも使用することができる。なお、Gibberella zeaeは、Fusarium graminearumの完全世代(テレオモルフ)のことを示している。また、独立行政法人製品評価技術基盤機構の生物遺伝資源部門(NBRC)に、NBRC番号4474、5269、6608、7160、7520、7772、8850又は9462として保存されているアカカビを使用することができる。さらに、ATCCやNBRCといった機関に保存された菌株ではなく、自然界から独自に単離したアカカビを使用してギ酸脱水素酵素を取得しても良い。
また、Pseudomonas sp.101由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号3に示す。Mycobacterium vaccae N10.由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号4に示す。Candida boidini由来のギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号5に示し、Candida boidini由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号6に示す。Candida methylica由来のギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号7に示し、Candida methylica由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号8に示す。Saccharomyces cerevisiae由来のギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号9に示し、Saccharomyces cerevisiae由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号10に示す。Paracoccus sp.12-A由来のギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号11に示し、Paracoccus sp.12-A由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号12に示す。
本発明において使用可能なギ酸脱水素酵素は、配列番号2、3、4、6、8、10又は12に示したアミノ酸配列からなるものに限定されず、例えば、配列番号2、3、4、6、8、10又は12に示すアミノ酸配列において詳細を後述する置換対象アミノ酸残基を除く1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、ギ酸及びNAD+を基質として二酸化炭素及びNADHを生産物とする反応における触媒活性を有するものであっても良い。ここで、複数個のアミノ酸としては、例えば、1から30個、好ましくは1から20個、より好ましくは1から10個、さらに好ましくは1個から5個、特に好ましくは1個から3個を意味する。なお、アミノ酸の欠失、置換若しくは付加は、上記遺伝子をコードする塩基配列を、当該技術分野で公知の手法によって改変することによって行うことができる。塩基配列に変異を導入するには、Kunkel法またはGapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法により行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-KやMutant-G(何れも商品名、TAKARA社製))等を用いて、あるいはLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキット(商品名、TAKARA社製)を用いて変異が導入される。
また、本発明においては、配列番号2、3、4、6、8、10又は12に示すアミノ酸配列に対して、例えば85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、ギ酸及びNAD+を基質として二酸化炭素及びNADHを生産物とする反応における触媒活性を有するギ酸脱水素酵素を使用することもできる。ここで、相同性の値は、blastアルゴリズムを実装したコンピュータプログラム及び遺伝子配列情報を格納したデータベースを用いてデフォルトの設定で求められる値を意味する。
さらに、本発明においては、配列番号1、5、7、9又は11に示す塩基配列の一部又は全部に対して相補的なポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドにコードされたタンパク質であってギ酸及びNAD+を基質として二酸化炭素及びNADHを生産物とする反応における触媒活性を有するタンパク質をギ酸脱水素酵素として使用することができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとは、60℃で2×SSC洗浄条件下で結合を維持することを意味する。ハイブリダイゼーションは、J. Sambrook et al. Molecular Cloning, A Laboratory Manual,2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。
置換変異
本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、上述したギ酸脱水素酵素における所定のアミノ酸残基を置換し、アミノ酸置換前のギ酸脱水素酵素と比較して耐久性及び/又は比活性が有意に向上したものである。ここで、置換対象のアミノ酸残基は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるGibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素を基準として、N末端から数えた数値として特定することができる。しかしながら、配列番号2に示すアミノ酸配列を基準として具体的数値で特定された置換対象のアミノ酸残基は、ギ酸脱水素酵素の種類によっては異なる数値で表されることとなる。したがって、『配列番号2に示すアミノ酸配列におけるX番目のアミノ酸残基』と表記した場合、配列番号2に示すアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有するギ酸脱水素酵素についてはX番目とはならず、異なる数値として表現されることとなる。
配列番号2に示すアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列において、配列番号2に示すアミノ酸配列における所定のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基は、配列番号2に示すアミノ酸配列を含む複数のアミノ酸配列についてマルチプルアラインメント解析を行うことで特定することができる。マルチプルアラインメント解析は、特に限定されないがCLUSTAL W (1.83) multiple sequence alignmentプログラム(国立遺伝学研究所のDDBJで使用できる(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html))を用いて当業者が容易に実施することができる。なお、ペアワイズアライメント解析法を用いて、配列番号2に示すアミノ酸配列に対して他の異なるアミノ酸配列をアラインメントし、配列番号2に示すアミノ酸配列における所定のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基を当該他の異なるアミノ酸配列において特定することもできる。
Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素(配列番号2)、Pseudomonas sp.101由来のギ酸脱水素酵素(配列番号3)、Mycobacterium vaccae N10.由来のギ酸脱水素酵素(配列番号4)、Candida boidini由来のギ酸脱水素酵素(配列番号6)、Candida methylica由来のギ酸脱水素酵素(配列番号8)、Saccharomyces cerevisiae由来のギ酸脱水素酵素(配列番号10)及びParacoccus sp.12-A由来のギ酸脱水素酵素(配列番号12)についてマルチプルアラインメント解析した結果を図1−1、及び図1−2に示す。なお、これら具体的なギ酸脱水素酵素以外のギ酸脱水素酵素についても、同様にマルチプルアラインメント解析に供することができ、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素(配列番号2)等と比較することができる。なお、図1−1、及び図1−2には、マルチプルアライメント解析の結果のほか、FDHに関する既知の変異箇所及び本発明において新規に同定された変異箇所にマーク(|)を付した。
以下の説明において、置換対象アミノ酸は、配列番号2に示すアミノ酸配列、すなわちGibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素を基準として表記する。しかし、上述したように、アミノ酸の位置を表す数値は、ギ酸脱水素酵素に応じて異なる数値となる点に留意する。本発明において、置換対象アミノ酸は、配列番号2に示すアミノ酸配列、すなわちGibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素を基準として99番目のバリン、117番目のトレオニン、153番目のバリン、155番目のヒスチジン、159番目のグルタミン、161番目のフェニルアラニン、183番目のアルギニン、218番目のグルタミン酸、220番目のロイシン、222番目のグルタミン、227番目のトレオニン、239番目のメチオニン及び265番目のリシンからなる群から選ばれる1つのアミノ酸残基である。
より具体的に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における99番目のバリンがバリンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にイソロイシンに置換されたものであることが好ましい。また、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における117番目のトレオニンがトレオニンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にアラニンに置換されたものであることが好ましい。さらに、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における153番目のバリンがバリンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にイソロイシンに置換されたものであることが好ましい。さらにまた、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における155番目のヒスチジンがヒスチジンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にグルタミンに置換されたものであることが好ましい。さらにまた、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における159番目のグルタミンがグルタミンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にロイシンに置換されたものであることが好ましい。さらにまた、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における161番目のフェニルアラニンがフェニルアラニンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にロイシンに置換されたものであることが好ましい。さらにまた、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における183番目のアルギニンがアルギニンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にシステインに置換されたものであることが好ましい。さらにまた、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における218番目のグルタミン酸がグルタミン酸を除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にグリシンに置換されたものであることが好ましい。さらにまた、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における220番目のロイシンがロイシンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にイソロイシンに置換されたものであることが好ましい。さらにまた、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における222番目のグルタミンがグルタミンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にロイシンに置換されたものであることが好ましい。さらにまた、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における227番目のトレオニンがトレオニンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にセリンに置換されたものであることが好ましい。さらにまた、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における239番目のメチオニンがメチオニンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にロイシンに置換されたものであることが好ましい。さらにまた、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における265番目のリシンがリシンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にアスパラギンに置換されたものであることが好ましい。
なお、上述したように、置換後のアミノ酸として具体的に好ましいアミノ酸を例示したが、置換後のアミノ酸は上記例示に限定されるものではない。参考文献(1)(「マッキー生化学」第3版 5章アミノ酸・ペプチド・タンパク質 5.1アミノ酸、監修:市川厚、監訳:福岡伸一、発行者:曽根良介、発行所:(株)化学同人、ISBN4-7598-0944 -9)でも記載されているように、アミノ酸は同様の性質(化学的性質や物理的大きさ)を持つ側鎖に従って分類される事がよく知られる。また、タンパク質の活性を保持したまま、所定のグループに分類されるアミノ酸残基間における分子進化上の置換が頻度高く起こることがよく知られる。この考えを基に、参考文献(2): Henikoff S., Henikoff J.G., Amino-acid substitution matrices from protein blocks, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 10915-10919 (1992)中の、Fig.2でアミノ酸残基の置換変異のスコアマトリックス(BLOSUM)が提唱され、広く使用されている。参考文献(2)では、側鎖の化学的性質が似たもの同士のアミノ酸置換は、タンパク質全体に与える構造や機能変化が少なくなると言う知見に基づくものである。上記参考文献(1)及び(2)によれば、マルチプルアラインメントで考慮するアミノ酸の側鎖のグループは、化学的性質や物理的大きさなどの指標を基にして考えることができる。これは、参考文献(2)に開示されたスコアマトリックス(BLOSUM)において、スコアの0以上の値を持つアミノ酸、好ましくは1以上の値を持つアミノ酸のグループとして示される。
以上のような知見に基づいて、性質の類似したアミノ酸を下記の8つのグループに分類することができる。したがって、置換後のアミノ酸としては、上記例示したアミノ酸が含まれるグループに分類されるアミノ酸とすることが好ましい。例えば、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における222番目のグルタミンは、ロイシンに置換することが好ましいとしたが、ロイシンが分類されている後記1)脂肪族疎水性アミノ酸グループに分類されるイソロイシン、メチオニン又はバリンに置換されても良い。
1)脂肪族疎水性アミノ酸グループ(ILMVグループ)
このグループは、上記参考文献(1)で示された中性非極性アミノ酸のうち、脂肪属性の疎水性側鎖をもつアミノ酸のグループであり、V(Val、バリン)、L(Leu、ロイシン)、I(Ile、イソロイシン)及びM(Met、メチオニン)から構成される。参考文献(1)による中性非極性アミノ酸と分類されるもののうちFGACWPは以下理由で、この「脂肪族疎水性アミノ酸グループ」には含めない。G(Gly、グリシン)やA(Ala、アラニン)はメチル基以下の大きさで非極性の効果が弱いからである。C(Cys、システイン)はS-S結合に重要な役目を担う場合があり、また、酸素原子や窒素原子と水素結合を形成する特性があるからである。F(Phe、フェニルアラニン)やW(Trp、トリプトファン)は側鎖がとりわけ大きな分子量をもち、かつ、芳香族の効果が強いからである。P(Pro、プロリン)はイミノ酸効果が強く、ポリペプチドの主鎖の角度を固定してしまうからである。
2)ヒドロキシメチレン基をもつグループ(STグループ)
このグループは、中性極性アミノ酸のうちヒドロキシメチレン基を側鎖に持つアミノ酸のグループであり、S(Ser、セリン)とT(Thr、スレオニン)から構成される。SとTの側鎖に存在する水酸基は、糖の結合部位であるため、あるポリペプチド(タンパク質)が特定の活性を持つために重要な部位である場合が多い。
3)酸性アミノ酸(DEグループ)
このグループは、酸性であるカルボキシル基を側鎖に持つアミノ酸のグループであり、D(Asp、アスパラギン酸)とE(Glu、グルタミン酸)から構成される。
4)塩基性アミノ酸(KRグループ)
このグループは、塩基性アミノ酸のグループであり、K(Lys、リジン)とR(Arg、アルギニン)から構成される。これらKとRは、pHの広い範囲で正に帯電し塩基性の性質をもつ。一方、塩基性アミノ酸に分類されるH(His、ヒスチジン)はpH7においてほとんどイオン化されないので、このグループには分類されない。
5)メチレン基=極性基(DHNグループ)
このグループは、全てα位の炭素元素に側鎖としてメチレン基が結合しその先に極性基を有すると言う特徴を持つ。非極性基であるメチレン基の物理的大きさが酷似している特徴を持ち、N(Asn、アスパラギン、極性基はアミド基)、D(Asp、アスパラギン酸、極性基はカルボキシル基)とH(His、ヒスチジン、極性基はイミダゾール基)から成る。
6)ジメチレン基=極性基(EKQRグループ)
このグループは、全てα位の炭素元素に側鎖としてジメチレン基以上の直鎖炭化水素が結合しその先に極性基を有すると言う特徴を持つ。非極性基であるジメチレン基の物理的大きさが酷似している特徴を持つ。E(Glu、グルタミン酸、極性基はカルボキシル基)、K(Lys、リジン、極性基はアミノ基)、Q(Gln、グルタミン、極性基はアミド基)、R(Arg、アルギニン、極性基はイミノ基とアミノ基)から成る。
7)芳香族(FYWグループ)
このグループには、側鎖にベンゼン核を持つ芳香族アミノ酸であり、芳香族特有の化学的性質を特徴とする。F(Phe、フェニルアラニン)、Y(Tyr、チロシン)、W(Trp、トリプトファン)から成る。
8)環状&極性(HYグループ)
このグループには、側鎖に環状構造を持つと同時に極性も持つアミノ酸で、H(H、ヒスチジン、環状構造と極性基は共にイミダゾール基)、Y(Tyr、チロシン、環状構造はベンゼン核で極性基は水酸基)から成る。
上述した置換対象アミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されてなる変異型ギ酸脱水素酵素は、置換変異前のギ酸脱水素酵素と比較して、耐久性及び/又は比活性が向上するといった特徴を備えている。ここで、変異型ギ酸脱水素酵素及び置換変異前のギ酸脱水素酵素の比活性は、従来公知の手法を適宜使用することができる。例えば、下記反応式に従って生成するNADH量や、下記反応式に従って消費される成分の量を直接的又は間接的に測定することで、下記反応式に寄与するギ酸脱水素酵素の比活性を測定することができる。
HCOO- + NAD+ → CO2 + NADH
アカカビ由来のギ酸脱水素酵素の製造
上述した本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素のなかでも、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素に由来する変異型ギ酸脱水素酵素は、置換変異前あっても非常に高い比活性を示す。したがって、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素に由来する変異型ギ酸脱水素酵素は、他の生物由来のギ酸脱水素酵素由来の変異型ギ酸脱水素酵素と比較して耐久性及び/又は比活性が際だって高いため好ましい。
ここで、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素は、従来公知のタンパク質の製造方法では取得することができない。したがって、アカカビ由来の変異型ギ酸脱水素酵素についても、従来公知のタンパク質の製造方法で取得することが困難であり、以下に説明する手法に準じて製造することができる。すなわち、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素の製造方法は、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素遺伝子を誘導型プロモーターの制御下に配置したベクターを導入した宿主を準備する。そして当該宿主を培養し、対数増殖期を過ぎた時にギ酸脱水素酵素遺伝子の発現を誘導する。次に、上記宿主の生育至適温度よりも低く且つ上記宿主が生存可能な温度で培養することでギ酸脱水素酵素を宿主内に発現させる。
アカカビ由来のギ酸脱水素酵素の製造方法において、誘導型プロモーターとしては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。例えば、上記の宿主として大腸菌を使用する場合には、イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)の存在下に転写活性を示す誘導型プロモーターを使用することができる。このようなプロモーターの例としては、Trpプロモーター、Lacプロモーター、Trcプロモーター及びTacプロモーターを挙げることができる。また、IPTG以外の誘導物質の存在下に転写活性を示す他のプロモーターや、培地成分及び温度等の培養条件に応じて転写活性を示す他のプロモーターも、誘導型プロモーターとして使用することができる。
また、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素の製造方法において、ベクターとしては、上記の宿主内で複製可能なものであれば特に限定されず、如何なるベクターをも使用することができる。例えば、上記宿主として大腸菌を使用する場合には、ベクターとしてはプラスミドベクター、ファージベクターのいずれであっても良い。具体的なベクターとしては、pCDFシリーズ、pRSFシリーズ、pETシリーズ等を例示列挙することができる。
さらに宿主としては、発現ベクターに組み込まれたプロモーターから転写可能な宿主であれば特に限定されないが、例えば、発現ベクターがpET(T7プロモーター)系の場合には大腸菌BL21(DE3)を使用することができる。上述したベクターを宿主に導入する手法としては、一般的に形質転換法として知られる各種の手法を適用することができる。具体的な手法としては、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法等を適用することができる。
特にアカカビ由来のギ酸脱水素酵素の製造方法においては、ベクターを導入した宿主を培養し、対数増殖期を過ぎた時に上記ギ酸脱水素酵素遺伝子の発現を誘導する。ギ酸脱水素酵素遺伝子の発現を誘導する前において、宿主の培養条件としては、何ら限定されず、例えば当該宿主の生育至適温度や生育至適pHを勘案して適宜、設定すればよい。しかし、培養を継続しながら宿主の増殖を観察し、いわゆる対数増殖期を過ぎた時点で以下の条件を満足するような培養条件に変更する。すなわち、条件1としてギ酸脱水素酵素遺伝子の発現を誘導し、条件2として宿主の生育至適温度よりも低く且つ宿主が生存可能な温度で培養する。
ここで、対数増殖期を過ぎた時とは、横軸に培養時間及び縦軸に細胞数の対数をとった増殖曲線において、所定の傾きの略直線で表される部分から、接線の傾きが低下し始める時点を意味する。なお、培養曲線は培地中のOD600nmを測定することによって作製することができる。また、ギ酸脱水素酵素遺伝子の発現を誘導する際には、対数増殖期を過ぎて定常期に入ってからが好ましい。ここで定常期とは、上述した増殖曲線の接線の傾きがほぼ0となる期間である。
また、宿主の生育至適温度とは、宿主毎に異なる温度範囲として公知である、例えば、大腸菌B株を宿主とした場合、生育至適温度は37℃である。例えば、大腸菌B株を宿主とした場合、生育可能な温度は15〜37℃である。したがって、大腸菌B株を宿主とした場合、宿主の生育至適温度よりも低く且つ宿主が生存可能な温度としては15〜37℃を意味する。特に、大腸菌B株を宿主とした場合、対数増殖期を過ぎた時に約20℃にして培養を継続することが好ましい。
宿主の対数増殖期を過ぎたときに上記温度範囲に設定することでギ酸脱水素酵素遺伝子が発現し、宿主内に非常に高い比活性を示すギ酸脱水素酵素が生成することとなる。培養後、目的のギ酸脱水素酵素が宿主内に生産されるため菌体又は細胞を破砕し、粗酵素懸濁液を調製する。この粗酵素懸濁液には、非常に高い比活性を示すギ酸脱水素酵素が含まれる。したがって、得られた粗酵素懸濁液をそのまま利用することができる。なお、得られた粗酵素懸濁液からギ酸脱水素酵素を単離精製することもできる。このとき、蛋白質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。単離精製されたギ酸脱水素酵素は、所定のpHの緩衝液等に懸濁された状態で利用することができる。
変異型ギ酸脱水素酵素の利用形態
以上で説明した変異型ギ酸脱水素酵素は、変異導入前のギ酸脱水素酵素と比較して抜群に高い耐久性及び/又は比活性を示すため、従来公知のギ酸脱水素酵素が使用されている反応系のいずれにも優れた代替物として利用することができる。すなわち、従来公知のギ酸脱水素酵素が使用されている反応系において、ギ酸脱水素酵素として上述した変異型ギ酸脱水素酵素を使用することによって、従来の酵素反応と比較して優れた反応効率を達成することができる。
例えば、変異型ギ酸脱水素酵素の利用形態としてはNADHの再生系を挙げることができる。NADHは種々の酵素反応で利用されNAD+へと変換される。NADHは、例えば、化学工業や製薬工業の分野において光学異性体を生物的に合成する際の補酵素として利用される。NADHの再生系とは、反応系に残存するNAD+を還元してNADHとし、NADHを回収して再び上記酵素反応に利用することを意味する。
上述した変異型ギ酸脱水素酵素をギ酸及びNAD+を含む反応系に作用させることによって、当該NAD+を還元してNADHを合成することができる。
以上のように変異型ギ酸脱水素酵素をNADHの再生系に利用することによって、反応系に含まれるNAD+からNADHを効率よく製造することができる。特に、変異型ギ酸脱水素酵素は、従来公知のギ酸脱水素酵素と比較して非常に優れた比活性を示すため、従来公知のギ酸脱水素酵素の使用量と比較して小量でNADHを製造することができる。換言すると、変異型ギ酸脱水素酵素を利用することによって、従来公知のギ酸脱水素酵素の使用した場合と比較してNADHの生産スピードを向上させることができる。さらに、変異型ギ酸脱水素酵素は、耐久性に優れているため、変異導入前のギ酸脱水素酵素と比較して長時間に亘って高い活性を維持することができる。このため、変異型ギ酸脱水素酵素を利用することによって、従来公知のギ酸脱水素酵素の使用した場合と比較してNADHの生産性を大幅に向上させることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
本実施例ではアカカビ由来のギ酸脱水素酵素遺伝子をクローニングし、当該遺伝子に対してランダム変異を導入し、得られた変異遺伝子に由来するギ酸脱水素酵素における耐久性及び比活性を評価した。
(1)試薬
試薬は、特に記載の無い場合ナカライテスク社製のものを使用した。
・リン酸カリウム緩衝液(KPB) pH7.5
<SolutionA>0.5M KH2PO4 13.6g/200ml
<SolutionB>0.5M K2HPO4 26.13g/300ml
0.5M KPB pH7.5はSolutionAとSolutionBを次の割合で混合した。
[SolutionA 16ml]+[SolutionB 84ml]⇒100ml
・EcoPro T7 system(Novagen社製)
Lysate、Methionine
・1.62M ギ酸ナトリウム(ギ酸Na)
5.5g/50ml 0.5M KPB pH7.5、調製後0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で滅菌した。
・16.2mM NAD
581mg/50ml 0.5M KPB pH7.5、調製後0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で滅菌した。
・mPMS(DOJINDO社製)
methoxy PMS 0.5mg/mlとなるよう蒸留水で調製した。
・WST1(DOJINDO社製)
8mg/mlに蒸留水で調製した。
・PD培地
Potato dextrose broth(Difco社製) 24g/L。pH7に調整後オートクレーブして使用した。
・LB培地
LB Broth(Difco社製) 20g/L。オートクレーブして使用した。使用前にアンピシリン(SIGMA社製)を50μg/mlとなるように添加した。
・100mM MgCl2
MgCl2・6H2O 2.03g/100ml。オートクレーブして使用した。
・10mM MnCl2
MnCl2・4H2O(Wako社製) 0.20g/100ml。オートクレーブして使用した。
・ExTaq:ExTaq Polymerase[5U/μl](タカラバイオ社製)
10XBuffer
・KOD-Plus-:KOD-Plus-Polymerase [1U/μl] (TOYOBO社製)
25mM MgSO4、2mM dNTP、10×Buffer
・Pfx Platinum Polymerase [2.5U/μl ](Invitrogen社製)
10Xbuffer、10Xenhancer、2.5mM dNTP、50mM MgSO4
Pyrobest DNA polymerase(タカラバイオ社製)
・Triton X-100
・100mM dATP、dCTP、dGTP、dTTP(タカラバイオ社製)
・RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN社製)
・RNA PCR Kit(タカラバイオ社製)
・MinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)
・MinElute PCR Purification Kit(QIAGEN社製)
・QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)
・QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)
・BigDyeTerminator v3.1(ABI社製)
・dH2O:DNase/RNase Free Distilled Water(Invitrogen社製)
・制限酵素NdeI/EcoRI(タカラバイオ社製)
・DNA Ligation kit ver2.1、solutionI(タカラバイオ社製)
・DNA Blunting Kit(タカラバイオ社製)
・JM109 Competent Cells(タカラバイオ社製)
・pET-23b(+) vector (Novagen社製)
・pT7 Blue T-vector(Novagen製)
・Ligation-Convenience Kit(ニッポンジーン社製)
・KOD-Plus-Mutagenesis Kit (TOYOBO社製)
(2)Gibberella zeae FDH遺伝子のクローニング
(2−1) 微生物株
Gibberella zeaeは独立行政法人製品評価技術基盤機構の関連機関であるNITE Biological Resource Center(以下NBRCと記載)に保存されている株(NBRC No. 4474)を購入し、指定される方法で復元したものをPD(Potato Dextrose)培地を用いて培養した。
(2−2) ギ酸脱水素酵素遺伝子の単離
(2−2−1) ギ酸脱水素酵素遺伝子の増幅
2−1の方法で培養して得た菌体をRNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてTotal RNA(mRNA、rRNA及びtRNA等を含む)を調製した。まず、RNA PCR Kit(タカラバイオ社製)を用いてTotal RNAを鋳型としたcDNA合成をおこなった。表1に反応液組成を示す。
Figure 2010041971
上記組成の反応液を用いて、50℃で2時間、その後99℃で5分間、その後4℃とする反応サイクルでcDNAの合成反応を行った。
次に、合成されたcDNAを鋳型とし、Pyrobest DNA polymeraseを用いてPCRをおこなった。反応液50μl中の成分組成を表2に示す。
Figure 2010041971
上記組成の反応性を用いて、95℃で1分、その後、95℃で30秒、60℃で30秒及び72℃で1分を1サイクルとして25サイクル繰り返し、その後72℃で10分、その後4℃とする反応サイクルでPCRを行った。なお、本PCRにおいては、一対のプライマーとしてGib FDH1-F-NdeI(forward):CGC CAT ATG GTC AAG GTT CTT GCA GTT C(配列番号13)及びGib FDH1-R(reverse):CTA TTT CTT CTC ACG CTG ACC(配列番号14)を使用した。
(2−2−2) ギ酸脱水素酵素遺伝子のクローニング及び構造解析
アガロースゲル電気泳動により得られた各種PCR産物のサイズを確認後、MinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いてアガロースゲルより精製したPCR産物をpT7 Blue T-vector(Novagen製)、JM109 competent cells(タカラバイオ社製)を用いてサブクローニングした(GzFDH/pT7)(図2参照)。単離したギ酸脱水素酵素遺伝子配列はデータベース上に公開されている配列(Genbank No. XP_386303)とアミノ酸レベルで100%の一致を示していた。
(2−2−3) ギ酸脱水素酵素遺伝子発現用ベクターの作製
2−2−2で作製されたプラスミド(FDH/pT7)を制限酵素NdeI/EcoRIで処理した。表3に反応液組成を示す。制限酵素処理の反応条件としては37℃で2時間とした。
Figure 2010041971
反応後の溶液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、NdeI/EcoRI断片としてベクターから切り出されたギ酸脱水素酵素遺伝子(約1.1kb)をMinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて精製した。次にFDH/pT7と同様に制限酵素処理した遺伝子発現用ベクターpET23b(+)(Novagen社製)のNdeI/EcoRI部位にDNA Ligation kit Ver.2.1(タカラバイオ社製)を用いて上記ギ酸脱水素酵素遺伝子断片を導入後、JM109 competent cells(タカラバイオ社製)によるサブクローニングを行った(FDH/pET23b(+))(図2参照)。
(3)高耐久性FDHのスクリーニング
(3―1) ライブラリ作成
(3−1−1) ライブラリ概要
図3に示すようにpET23b(+)に組み込まれたFDH遺伝子を3つの断片に分割してPCRによる増幅を行った。このうち中央の断片(図3中「epPCR」と表記)についてエラープローンPCRを実施し、エラー率約0.5%のランダム変異を導入した。その後、PCRにより3つの断片を増幅したのちNdeI/EcoRIサイトを介して再びpET23b(+)への組み込みを行いライブラリとした。使用するプライマーを表4に示す。
Figure 2010041971
(3−1−2) 1st PCR(エラープローンPCR)
プライマーgzEPCent5F とgzEPCent3R により変異を導入するエラープローンPCRを実施した。表5に反応液組成を示す。
Figure 2010041971
上記組成の反応液を用いて、94℃で2分の後、94℃で1分、52℃で1分及び72℃で30秒を1サイクルとして30サイクル行い、その後72℃で1分、その後4℃とする反応サイクルでエラープローンPCRを行った。PCR断片は、MinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を使って切り出し精製した。さらにDNA Blunting Kit(タカラバイオ社製)を用いてブラント処理を施した上でMinElute PCR Purification Kit(QIAGEN社製)で精製し、2ndPCRの鋳型として用いた。
(3−1−3) 1st PCR(両端断片の増幅)
プライマーpET23B-T7P-FowとgzEPCent5Rとを用いたPCR、及びgzEPCent3FとpET23B-T7T-Revを用いたPCRにより、それぞれFDH遺伝子の5’側と3’側断片を増幅した。表6に5’側断片の反応組成を示す。
Figure 2010041971
上記組成の反応液を用いて、94℃で2分の後、94℃で15秒、55℃で30秒及び68℃で1分を1サイクルとして60サイクル行い、その後68℃で1分、その後4℃とする反応サイクルでPCRを行った。なお、3’側断片を増幅するPCRは、プライマーとしてgzEPCent3FとpET23B-T7T-Revを用いた以外は同様にして行った。得られたPCR断片は、3−1−2と同様に切り出し、精製した。精製したDNAは、3−1−2の増幅断片とともに2ndPCRの鋳型として用いた。
(3−1−4) 2nd PCR(3−1−2断片と3−1−3断片の連結)
次に、3−1−2で増幅した断片と、3−1−3で増幅した5’側断片若しくは3’側断片とをPCRにより連結した。3−1−2で増幅した断片と、3−1−3で増幅した5’側断片とを連結する際には、プライマーとしてpET23B-T7P-Fow及びgzEPCent3Rを使用した。3−1−2で増幅した断片と、3−1−3で増幅した3’側断片とを連結する際には、プライマーとしてgzEPCent5F及びpET23B-T7T-Revを使用した。表7に3−1−2で増幅した断片と3−1−3で増幅した5’側断片とを連結するPCRの反応液組成を示す。
Figure 2010041971
上記組成の反応液を用いて、94℃で2分の後、94℃で15秒、55℃で30秒及び68℃で1分を1サイクルとして30サイクル行い、その後68℃で1分、その後4℃とする反応サイクルでPCRを行った。なお、3−1−2で増幅した断片と、3−1−3で増幅した3’側断片とを連結する際には、鋳型として3−1−3で増幅した3’側断片、プライマーとしてgzEPCent5F及びpET23B-T7T-Revを使用した以外は同様にして行った。各PCRで得られたPCR断片は、3−1−2と同様に切り出し精製後、3rd PCRの鋳型とした。
(3−1−5) 3rd PCR(3−1−4断片の連結)
3−1−4で増幅した2つの断片をプライマーpET23B-T7P-Fow/pET23B-T7T-Revを用いたPCRにより1つの断片に連結した。表8に反応組成を示す。と条件を以下に示す。
Figure 2010041971
上記組成の反応液を用いて、94℃で15秒、68℃で30秒及び68℃で1.5分を1サイクルとして5サイクル行い、その後、94℃で15秒、64℃で30秒及び68℃で1.5分を1サイクルとして5サイクル行い、その後、94℃で15秒、60℃で30秒及び68℃で1.5分を1サイクルとして5サイクル行い、その後、94℃で15秒、55℃で30秒及び68℃で1.5分を1サイクルとして30サイクル行い、その後68℃で2分、その後4℃とする反応サイクルでPCRを行った。
その後、目的サイズのバンドを3−1−2と同様に切り出し精製した後、2箇所の制限酵素部位NdeI/EcoRIで切断してプラスミドライブラリ作製に使用した。
(3−1−6) プラスミドライブラリ構築
プラスミドライブラリ構築の手順を以下に示す。先ずpET23b(+)をNdeI/EcoRIで切断した。表9に反応液組成を示す。反応条件としては、37℃で5時間とした。
Figure 2010041971
次に、反応後の溶液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、NdeI/EcoRI断片として得られる約3.6kbの断片をMinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて精製した。
一方、上記3−1−5で得られた増幅断もNdeI/EcoRIで切断した。表10に反応液組成を示す。反応条件としては、37℃で5時間とした。
Figure 2010041971
次に、反応後の溶液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、NdeI/EcoRI断片として得られる約1.1kbの断片をMinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて精製した。
次に、得られた各断片を連結するためのライゲーション反応を行った。表11に反応液組成を示す。反応条件は16℃で20分とした
Figure 2010041971
ライゲーション反応後の反応液を用いてJM109 Competent Cellsに対する形質転換を行った。すなわち、16μlの反応液と100μlのJM109 Competent Cellsとを混和し、その後、氷上にて10分間放置した後、42℃で60秒処理した。そして、全量を4mlのLB培地に加え、37℃で14時間振とう培養を行った。
培養簿の大腸菌群から、QIAprep Spin Miniprep kit(QIAGEN社製)によりプラスミドDNAを調製した。そして、形質転換からプラスミドDNAの回収を5回実施し、分子種数約33,000、セルフライゲーション等により生じるエラークローン含有率が約1.7%のプラスミドライブラリ溶液(50ng/μl)の作製を完了した。
(3−2) 無細胞タンパク質合成
(3−2−1) 鋳型の調製
3−1で構築したプラスミドライブラリを希釈したものを鋳型としてPCRを行った。この増幅産物を翻訳反応の鋳型として用いた。表12にPCRの反応液組成を示す。
Figure 2010041971
上記組成の反応液を用いて、94℃で2分の後、94℃で20秒及び68℃で1.5分を1サイクルとして75サイクル行い、その後4℃とする反応サイクルでPCRを行った。
(3−2−2) 無細胞翻訳反応
3−2−1で増幅したDNA断片を鋳型としてEcoPro T7 system(Novagen社製)を用い翻訳反応を行った。方法はキットのプロトコールに従った。
(3−3)耐熱性を指標とした選抜
翻訳反応後の反応液に対して47℃で50分の加熱処理を行い、その後、表13に示す組成の反応液で活性測定を行った。なお、反応条件は37℃で30分とした。
Figure 2010041971
反応終了後、プレートリーダー(Spectrafluor Plus:TECAN社製)を用いて吸光度430nmを測定することで、加熱処理後において残存活性のあるクローンを選抜した。
(4)組換え体FDHの性状評価
(4−1) 変異酵素遺伝子のクローニング
上記3−3の選抜結果より、耐久性向上変異酵素を含むことが期待されるポジティブウェルの反応液を鋳型として、以下の条件でPCRを行った。表14にPCRの反応液組成を示す。
Figure 2010041971
上記組成の反応液を用いて、94℃で2分の後、94℃で15秒及び68℃で1分30秒を1サイクルとして30サイクル行い、その後68℃で2分、その後4℃とする反応サイクルでPCRを行った。
PCRにより増幅された約1.4kbpの断片をMinElute PCR Purification Kitで精製した。続いて、制限酵素NdeIとEcoRIで消化後、約1.1kbpの断片を切り出し、MinElute Gel Extraction Kitを用いて精製した。また、pET-23b(+)vectorも同制限酵素で消化後に切り出しQIAquick Gel Extraction Kitを用いて精製した。精製した2種類の断片をLigation-Convenience Kitを用いてライゲーションし、プロトコールに従い大腸菌JM109株を形質転換した。得られた組換え体を4mlのLB培地で培養し、QIAprep Spin Miniprep Kitを用いてベクターを抽出した。ダイターミネーター法によるシークエンスを行い、どの部分に変異が入っているかを確認した。
(4−2)Site-directed mutagenesisによる単一アミノ酸変異体の作製
KOD-Plus-Mutagenesis Kitを用いて、キットのプロトコールに従いFDHに部位特異的に変異を導入した。変異導入に使用したプライマー、変異箇所及びアミノ酸変異を表15に示す。また、概要を図4に示す.
Figure 2010041971
(4−3) 変異体酵素の評価
(4−3−1) 翻訳用鋳型DNAの調製
4−2で取得した変異遺伝子導入ベクターを鋳型としたPCRを行った。表16にPCRの反応液組成を示す。
Figure 2010041971
上記組成の反応液を用いて、94℃で2分の後、94℃で15秒及び68℃で1分30秒を1サイクルとして30サイクル行い、その後68℃で2分、その後4℃とする反応サイクルでPCRを行った。PCRにより増幅された約1.4kbpの断片をMinElute PCR Purification Kitで精製し、後述する翻訳反応に使用した。
(4−3−2) 無細胞転写/翻訳反応
4−3−1で調製したDNAを鋳型とし、3−2−2と同様にして無細胞翻訳反応を実施した。これにより、表15に示した単独のアミノ酸変異を有するFDHを取得した。
(4−3−3)耐久性試験(加速試験)
4−3−2で調整した単独のアミノ酸変異を有するFDHの耐久性を検討した。先ず、4−3−2で調製した翻訳産物を1.8μlずつPCRチューブに分注し、サーマルサイクラーを使用して47℃で加熱した。加熱開始から10、20、40及び60分ごとにチューブを取り出して氷につけて冷却した。そして、表17に示す組成の活性測定用試薬のプレミックスをチューブに98μlずつ添加した。
Figure 2010041971
活性測定の反応は、サーマルサイクラーを用いて約30分程度37℃で加熱する条件とした。その後、サーマルサイクラーからチューブを取り出し、氷につけて反応を停止した。FDH触媒によるギ酸分解反応は次式で示される。
HCOO- + NAD+ → CO2 + NADH
ここに電子伝達物質であるMethoxy PMS(mPMS)と、酸化還元発色指示薬であるWST1(共にDOJINDO社製)を加えることで次式のように反応が進むため、波長438nmの吸光度で黄色ホルマザンを測定することで、ギ酸分解量の定量が可能となる。なお黄色ホルマザンの吸光係数はNADHの約6倍であり、NADHの直接測定よりも高感度での定量が可能となる。
NADH + mPMS → NAD+ + mPMS(還元型)
mPMS(還元型) + WST1 → mPMS + 黄色ホルマザン(37000/M・cm、438nm)
そして、プレートリーダー(Spectrafluor Plus:TECAN社製)で吸光度430nmを測定することで黄色ホルマザンを定量し、4−3−2で調整した単独のアミノ酸変異を有するFDHの活性を評価することができる。4−3−2で調整した単独のアミノ酸変異を有するFDHについて耐久性及び比活性を野性型との比較において評価した結果を表18に示す。
Figure 2010041971
表18に示すように、表18に示したアミノ酸置換を有するFDHは、野性型との比較において耐久性及び比活性のいずれか一方又は両方が優れていることが明らかとなった。耐久性が向上した解析結果例として、V153I(153番目のバリンがイソロイシンに変化)を図5に示した。なお耐久性に効果が無かった比較例としてE57D(57番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に変化)を併記した。また、比活性が向上した変異体の例としてQ222L(222番目のグルタミンがロイシンに変化)を図6に示した。同様に効果が無かった比較例としてE57Dを併記した。
特に、表18に示した結果から、V99I、T117A、V153I、H155Q、Q159L及びM239Lの各変異は、野性型と比較して同等又はそれ以上の比活性を示し、且つ優れた耐久性を付与する変異であることが明らかとなった。また、表18に示した結果から、E218G及びT227S変異は、野性型と比較して同等又はそれ以上の比活性を示し、且つやや優れた耐久性を付与する変異であることが明らかとなった。さらに、表18に示した結果から、R183C及びK265N変異は、比活性は低下するものの、優れた耐久性を付与する変異であることが明らかとなった。さらにまた、F161L、L220I及びQ222L変異は、野性型と比較して同等又はそれ以上の耐久性を示し、且つ優れた比活性を付与する変異であることが明らかとなった。
表18に示した結果からは、Q222L変異は、FDHの比活性を大幅に向上させることができる非常に有用なアミノ酸単独変異であることが判明した。さらに、表18に示した結果からは、L220I変異は、FDHの耐久性及び比活性をバランス良く向上させることができる非常に有用なアミノ酸単独変異であることが判明した。
Gibberella zeae由来のFDH、Pseudomonas sp.101由来のFDH、Mycobacterium vaccae N10.由来のFDH、Candida boidini由来のFDH、Candida methylica由来のFDH、Saccharomyces cerevisiae由来のFDH及びParacoccus sp.12-A由来のFDHについてマルチプルアラインメント解析した結果並びに本発明に係る新規変異及び公知変異を示す特性図である。 Gibberella zeae由来のFDH、Pseudomonas sp.101由来のFDH、Mycobacterium vaccae N10.由来のFDH、Candida boidini由来のFDH、Candida methylica由来のFDH、Saccharomyces cerevisiae由来のFDH及びParacoccus sp.12-A由来のFDHについてマルチプルアラインメント解析した結果並びに本発明に係る新規変異及び公知変異を示す特性図である。 GzFDH/pET23b(+)の構築の工程を示す模式図である。 エラープローンPCRによって変異を導入したFDH遺伝子の構築フローを示す模式図である。 Site-directed mutagenesisによる単一アミノ酸変異体の構築フローを示す模式図である。 V153I変異FDHについて加熱時間と残存活性との関係を示す特性図である。 Q222L変異FDHの比活性を、野性型及びE57D変異FDHと比較した結果を示す特性図である。

Claims (16)

  1. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリン、117番目のトレオニン、153番目のバリン、155番目のヒスチジン、159番目のグルタミン、161番目のフェニルアラニン、183番目のアルギニン、218番目のグルタミン酸、220番目のロイシン、222番目のグルタミン、227番目のトレオニン、239番目のメチオニン及び265番目のリシンからなる群から選ばれる1つのアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を含み、耐久性及び/又は比活性が向上した変異型ギ酸脱水素酵素。
  2. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  3. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における117番目のトレオニンに相当するトレオニンがアラニンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  4. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  5. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における155番目のヒスチジンに相当するヒスチジンがグルタミンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  6. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における159番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  7. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における161番目のフェニルアラニンに相当するフェニルアラニンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  8. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における183番目のアルギニンに相当するアルギニンがシステインに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  9. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における218番目のグルタミン酸に相当するグルタミン酸がグリシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  10. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における220番目のロイシンに相当するロイシンがイソロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  11. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における222番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  12. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における227番目のトレオニンに相当するトレオニンがセリンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  13. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における239番目のメチオニンに相当するメチオニンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  14. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における265番目のリシンに相当するリシンがアスパラギンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  15. 請求項1乃至14いずれか一項記載の変異型ギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子。
  16. ギ酸及びNAD+を含む反応系に請求項1乃至14いずれか一項記載の変異型ギ酸脱水素酵素を作用させる、
    NADHの製造方法。
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