JP2010161983A - 変異型ギ酸脱水素酵素、これをコードする遺伝子及びnadhの製造方法 - Google Patents

変異型ギ酸脱水素酵素、これをコードする遺伝子及びnadhの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐久性及び/又は比活性に優れた変異型ギ酸脱水素酵素を提供する。
【解決手段】特定な配列のアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリン、117番目のトレオニン、153番目のバリン、155番目のヒスチジン、159番目のグルタミン及び227番目のトレオニンからなる群から選ばれる少なくとも2つのアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を含み、耐久性及び/又は比活性が向上した変異型ギ酸脱水素酵素。
【選択図】なし

Description

本発明は、野性型ギ酸脱水素酵素における特定の部位に複数の置換型変異を有する変異型ギ酸脱水素酵素、当該変異型ギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子及びNADHの製造方法に関する。
ギ酸脱水素酵素(EC.1.2.1.2)は、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、ギ酸及び水の存在下で、NAD+を還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)に還元するとともにギ酸を二酸化炭素に酸化する。この酵素反応に基づいてギ酸脱水素酵素は、NAD+からNADHを再生する系に利用されている。従来、ギ酸脱水素酵素としては、例えば特許文献1に記載されるようなカンジダボイジニイ(Candida boidinii)(ATCC32195)由来のギ酸脱水素酵素、特許文献2に開示されるようなバチルス属細菌由来のNAD+依存性ギ酸脱水素酵素、特許文献3に開示されるようなマイコバクテリウム・バッカエ(Mycobacterium vaccae)由来のギ酸脱水素酵素が知られていた。
また、非特許文献1には、これら以外にも種々の微生物や植物由来のギ酸脱水素酵素が開示されている。しかしながら、非特許文献1に記述されているように、ギ酸脱水素酵素は、様々な酵素のなかで、比活性はそれほど高くない。換言すると、ギ酸脱水素酵素によるNADHへの還元反応を利用したNADHの生産方法は、ギ酸脱水素酵素の比活性の低さに起因して生産性が悪いといえる。
ところで、ギ酸脱水素酵素に関しては、現在までに種々の研究結果が蓄積され、部位特異的変異導入による機能改変に関する報告がなされている(非特許文献2)。しかしながら、従来公知のギ酸脱水素酵素は、いずれも比活性や耐久性が低く、ギ酸脱水素酵素を利用したNADHの製造には不十分であると評価せざるを得ない。
特開2003−180383号公報 特開2002−233395号公報 特願平10−023896号公報 BIOCHEMISTRY (Moscow), Vol. 69, No. 11, 2004, pp. 1252-1267.(Biokhimiya, Vol. 69, No. 11, 2004, pp. 1537-1554.の英訳) Biomolecular Engineering, 23, (2006) 98-110
上述した実情に鑑み、本発明者らは先に、従来の知見からは予測できないほどに高い比活性を示すギ酸脱水素酵素、当該ギ酸脱水素酵素を利用したNADHの製造方法に関する特許出願を行った(特願2008−100448号)。そして、本発明は、当該特許出願に係るギ酸脱水素酵素及び従来公知のギ酸脱水素酵素について有用な置換型変異を探索し、従来公知の変異型ギ酸脱水素酵素と比較して、より耐久性及び/又は比活性に優れた変異型ギ酸脱水素酵素、当該変異型ギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子及び当該変異型ギ酸脱水素酵素を利用したNADHの製造方法を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するため本発明者らが鋭意検討した結果、上記特許出願に係るギ酸脱水素酵素及び従来公知のギ酸脱水素酵素における特定の部位における複数のアミノ酸置換変異が、ギ酸脱水素酵素の耐久性及び/又は比活性を大幅に向上させることを見いだし本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリン、117番目のトレオニン、153番目のバリン、155番目のヒスチジン、159番目のグルタミン及び227番目のトレオニンからなる群から選ばれる少なくとも2つのアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を含み、耐久性及び/又は比活性が向上したものである。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における117番目のトレオニンに相当するトレオニンがアラニンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における155番目のヒスチジンに相当するヒスチジンがグルタミンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における159番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における227番目のトレオニンに相当するトレオニンがセリンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、227番目のトレオニンに相当するトレオニンがセリンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における117番目のトレオニンに相当するトレオニンがアラニンに置換するとともに、227番目のトレオニンに相当するトレオニンがセリンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、117番目のトレオニンに相当するトレオニンがアラニンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、155番目のヒスチジンに相当するヒスチジンがグルタミンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、159番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、155番目のヒスチジンに相当するヒスチジンがグルタミンに置換するとともに、159番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、159番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、155番目のヒスチジンに相当するヒスチジンがグルタミンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
特に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、155番目のヒスチジンに相当するヒスチジンがグルタミンに置換するとともに、159番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することが好ましい。
また、本発明に係るNADHの製造方法は、ギ酸及びNAD+を含む反応系に上述した本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素を作用させるものである。
本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、新規な複数の置換型変異を有するための変異前と比較して大幅に耐久性及び/又は比活性が向上するといった特徴を有している。本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素を利用することによって、非常に高価な物質として知られるNADHを優れた生産性で製造することができる。本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素を利用してNADHを製造することによって、NADHの工業的製造が可能となる。
Gibberella zeae由来のFDH、Pseudomonas sp.101由来のFDH、Mycobacterium vaccae N10.由来のFDH、Candida boidini由来のFDH、Candida methylica由来のFDH、Saccharomyces cerevisiae由来のFDH及びParacoccus sp.12-A由来のFDHについてマルチプルアラインメント解析した結果並びに本発明に係る新規変異及び公知変異を示す特性図である。 Gibberella zeae由来のFDH、Pseudomonas sp.101由来のFDH、Mycobacterium vaccae N10.由来のFDH、Candida boidini由来のFDH、Candida methylica由来のFDH、Saccharomyces cerevisiae由来のFDH及びParacoccus sp.12-A由来のFDHについてマルチプルアラインメント解析した結果並びに本発明に係る新規変異及び公知変異を示す特性図である。 GzFDH/pET23b(+)の構築の工程を示す模式図である。 V99I変異及びT227S変異を有する2重変異型ギ酸脱水素酵素、V99I変異を有する変異型ギ酸脱水素酵素、T227S変異を有する変異型ギ酸脱水素酵素及び野性型ギ酸脱水素酵素における耐久性を示す特性図である。 カラム精製後の各フラクションのSDS-PAGE(12.5%ポリアクリルアミドゲル、還元)泳動像を示す写真である。 野性型ギ酸脱水素酵素、V153I変異及びH155Q変異を有する2重変異型ギ酸脱水素酵素(2M-6)、V153I変異及びQ159L変異を有する2重変異型ギ酸脱水素酵素(2M-8)、V153I変異、H155Q変異及びQ159L変異を有する3重変異型ギ酸脱水素酵素(3M-1)、V99I変異、V153I変異及びQ159L変異を有する3重変異型ギ酸脱水素酵素(3M-2)、V99I変異、V153I変異及びH155Q変異を有する3重変異型ギ酸脱水素酵素(3M-4)及びV99I変異、V153I変異、H155Q変異及びQ159L変異を有する4重変異型ギ酸脱水素酵素(4M-2)について、37℃における残存活性を測定した結果を示す特性図である。 野性型ギ酸脱水素酵素、V153I変異及びH155Q変異を有する2重変異型ギ酸脱水素酵素(2M-6)及びV153I変異、H155Q変異及びQ159L変異を有する3重変異型ギ酸脱水素酵素(3M-1)について、比活性を測定した結果を示す特性図である。
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。
ギ酸脱水素酵素
本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、ギ酸脱水素酵素における特定のアミノ酸残基を置換したアミノ酸配列を有する。ここで、ギ酸脱水素酵素としては、詳細を後述する置換対象アミノ酸残基を有し、ギ酸脱水素酵素活性を有するものであれば特に限定されない。すなわち、ギ酸脱水素酵素とは、酵素分類においてEC1.2.1.2に分類され、ギ酸イオンを二酸化炭素に酸化するとともに、NAD+イオンをNADHに還元する反応を触媒する活性を有する酵素である。
ギ酸脱水素酵素としては、植物由来の酵素であっても良いし、動物由来の酵素であっても良いし、微生物由来の酵素であっても良い。微生物由来のギ酸脱水素酵素としては、例えば、ギ酸脱水素酵素に関する総説(Biomolecular Engineering 23 (2006) 98-110)に開示されている種々のギ酸脱水素酵素を挙げることができる。より具体的に、近年のゲノム解析から明らかとなったStaphylococcus aureus由来のギ酸脱水素酵素(Baba, T.らLancet 359、1819-1827、2002)、Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis str.k10 (LiらProc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102、12344-12349、2005)、Bordetella由来のギ酸脱水素酵素(ParkhillらNat. Genet. 35, 32-40.、2003)、Legionella由来のギ酸脱水素酵素(ChienらScience 305, 1966-1968、2004及びCazaletらNat. Genet. 36, 1165-1173、2004)、Francisella tularensis subsp. tularensis SCHU S4由来のギ酸脱水素酵素(LarssonらNat. Genet. 37, 153-159、2005)、Histoplasma capsulatum由来のギ酸脱水素酵素(HwangらMol. Biol. Cell 14, 2314-2326、2003)及びCryptococcus neoformans var. neoformans JEC21 (LoftusらScience 307, 1321-1324、2005)等に対して本発明を適用することができる。
また、上記総説に開示されているPseudomonas sp.101由来のギ酸脱水素酵素、Mycobacterium vaccae N10.由来のギ酸脱水素酵素、Candida boidini由来のギ酸脱水素酵素、Candida methylica由来のギ酸脱水素酵素Saccharomyces cerevisiae由来のギ酸脱水素酵素及びParacoccus sp.12-A由来のギ酸脱水素酵素に対しても本発明を適用することができる。
特に、先に出願した(特願2008−100448号)Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素に本発明を適用することが好ましい。Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素は、上述した従来公知のギ酸脱水素酵素と比較して著しく優れた比活性を示すものである。Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号1に示し、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号2に示す。ここで、ギ酸脱水素酵素を取得するためには、アカカビ(学名:Gibberella zeae)として保存されている、従来公知の種々の菌株を使用することができる。例えば、American Type Culture Collection (ATCC)にATCC番号10910、20271、20272、20274、24689、28106又は48063として保存されているアカカビを使用することができる。また、ATCCには、登録名がFusarium graminearumとして保存されている場合もあるが、別名としてGibberella zeaeが登録されている場合にはこれらも使用することができる。なお、Gibberella zeaeは、Fusarium graminearumの完全世代(テレオモルフ)のことを示している。また、独立行政法人製品評価技術基盤機構の生物遺伝資源部門(NBRC)には、NBRC番号4474、5269、6608、7160、7520、7772、8850又は9462として保存されているアカカビを使用することができる。さらに、ATCCやNBRCといった機関に保存された菌株ではなく、自然界から独自に単離したアカカビを使用してアカカビ由来のギ酸脱水素酵素を取得しても良い。
また、Pseudomonas sp.101由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号3に示す。Mycobacterium vaccae N10.由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号4に示す。Candida boidini由来のギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号5に示し、Candida boidini由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号6に示す。Candida methylica由来のギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号7に示し、Candida methylica由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号8に示す。Saccharomyces cerevisiae由来のギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号9に示し、Saccharomyces cerevisiae由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号10に示す。Paracoccus sp.12-A由来のギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号11に示し、Paracoccus sp.12-A由来のギ酸脱水素酵素のアミノ酸配列を配列番号12に示す。
本発明において使用可能なギ酸脱水素酵素は、配列番号2、3、4、6、8、10又は12に示したアミノ酸配列からなるものに限定されず、例えば、配列番号2、3、4、6、8、10又は12に示すアミノ酸配列において詳細を後述する置換対象アミノ酸残基を除く1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、ギ酸及びNAD+を基質として二酸化炭素及びNADHを生産物とする反応における触媒活性を有するものであっても良い。ここで、複数個のアミノ酸としては、例えば、1から30個、好ましくは1から20個、より好ましくは1から10個、さらに好ましくは1個から5個、特に好ましくは1個から3個を意味する。なお、アミノ酸の欠失、置換若しくは付加は、上記遺伝子をコードする塩基配列を、当該技術分野で公知の手法によって改変することによって行うことができる。塩基配列に変異を導入するには、Kunkel法またはGapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法により行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-KやMutant-G(何れも商品名、TAKARA社製))等を用いて、あるいはLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキット(商品名、TAKARA社製)を用いて変異が導入される。
また、本発明においては、配列番号2、3、4、6、8、10又は12に示すアミノ酸配列に対して、例えば85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、ギ酸及びNAD+を基質として二酸化炭素及びNADHを生産物とする反応における触媒活性を有するギ酸脱水素酵素を使用することもできる。ここで、相同性の値は、blastアルゴリズムを実装したコンピュータプログラム及び遺伝子配列情報を格納したデータベースを用いてデフォルトの設定で求められる値を意味する。
さらに、本発明においては、配列番号1、5、7、9又は11に示す塩基配列の一部又は全部に対して相補的なポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドにコードされたタンパク質であってギ酸及びNAD+を基質として二酸化炭素及びNADHを生産物とする反応における触媒活性を有するタンパク質をギ酸脱水素酵素として使用することができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとは、60℃で2×SSC洗浄条件下で結合を維持することを意味する。ハイブリダイゼーションは、J. Sambrook et al. Molecular Cloning, A Laboratory Manual,2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。
置換変異
本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、上述したギ酸脱水素酵素における所定の複数のアミノ酸残基を置換し、アミノ酸置換前のギ酸脱水素酵素と比較して耐久性及び/又は比活性が有意に向上したものである。ここで、置換対象のアミノ酸残基は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるGibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素を基準として、N末端から数えた数値として特定することができる。しかしながら、配列番号2に示すアミノ酸配列を基準として具体的数値で特定された置換対象のアミノ酸残基は、ギ酸脱水素酵素の種類によっては異なる数値で表されることとなる。したがって、『配列番号2に示すアミノ酸配列におけるX番目のアミノ酸残基』と表記した場合、配列番号2に示すアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有するギ酸脱水素酵素についてはX番目とはならず、異なる数値として表現されることとなる。
配列番号2に示すアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列において、配列番号2に示すアミノ酸配列における所定のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基は、配列番号2に示すアミノ酸配列を含む複数のアミノ酸配列についてマルチプルアラインメント解析を行うことで特定することができる。マルチプルアラインメント解析は、特に限定されないがCLUSTAL W (1.83) multiple sequence alignmentプログラム(国立遺伝学研究所のDDBJで使用できる(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html))を用いて当業者が容易に実施することができる。なお、ペアワイズアライメント解析法を用いて、配列番号2に示すアミノ酸配列に対して他の異なるアミノ酸配列をアラインメントし、配列番号2に示すアミノ酸配列における所定のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基を当該他の異なるアミノ酸配列において特定することもできる。
Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素(配列番号2)、Pseudomonas sp.101由来のギ酸脱水素酵素(配列番号3)、Mycobacterium vaccae N10.由来のギ酸脱水素酵素(配列番号4)、Candida boidini由来のギ酸脱水素酵素(配列番号6)、Candida methylica由来のギ酸脱水素酵素(配列番号8)、Saccharomyces cerevisiae由来のギ酸脱水素酵素(配列番号10)及びParacoccus sp.12-A由来のギ酸脱水素酵素(配列番号12)についてマルチプルアラインメント解析した結果を図1に示す。なお、これら具体的なギ酸脱水素酵素以外のギ酸脱水素酵素についても、同様にマルチプルアラインメント解析に供することができ、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素(配列番号2)等と比較することができる。なお、図1には、マルチプルアライメント解析の結果のほか、FDHに関する既知の変異箇所及び本発明において新規に同定された変異箇所にマーク(|)を付した。
以下の説明において、置換対象アミノ酸は、配列番号2に示すアミノ酸配列、すなわちGibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素を基準として表記する。しかし、上述したように、アミノ酸の位置を表す数値は、ギ酸脱水素酵素に応じて異なる数値となる点に留意する。本発明において、置換対象アミノ酸は、配列番号2に示すアミノ酸配列、すなわちGibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素を基準として99番目のバリン、117番目のトレオニン、153番目のバリン、155番目のヒスチジン、159番目のグルタミン及び227番目のトレオニンからなる群から選ばれる少なくとも2以上のアミノ酸残基である。
特に本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、155番目のヒスチジン及び227番目のトレオニンがそれぞれ他のアミノ酸に置換されたものであることが好ましい。また、特に本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、117番目のトレオニン及び227番目のトレオニンがそれぞれ他のアミノ酸に置換されたものであることが好ましい。さらに、特に本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、99番目のバリン及び117番目のトレオニンがそれぞれ他のアミノ酸に置換されたものであることが好ましい。さらにまた、特に本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、153番目のバリン及び155番目のヒスチジンがそれぞれ他のアミノ酸に置換されたものであることが好ましい。さらにまた、特に本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、153番目のバリン及び159番目のグルタミンがそれぞれ他のアミノ酸に置換されたものであることが好ましい。さらにまた、特に本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、153番目のバリン、155番目のヒスチジン及び159番目のグルタミンがそれぞれ他のアミノ酸に置換されたものであることが好ましい。さらにまた、特に本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、99番目のバリン、153番目のバリン及び159番目のグルタミンがそれぞれ他のアミノ酸に置換されたものであることが好ましい。さらにまた、特に本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、99番目のバリン、153番目のバリン及び155番目のヒスチジンがそれぞれ他のアミノ酸に置換されたものであることが好ましい。さらにまた、特に本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素は、99番目のバリン、153番目のバリン、155番目のヒスチジン及び159番目のグルタミンがそれぞれ他のアミノ酸に置換されたものであることが好ましい。
より具体的に、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素において、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における99番目のバリンがバリンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にイソロイシンに置換されたものであることが好ましい。また、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素において、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における117番目のトレオニンがトレオニンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にアラニンに置換されたものであることが好ましい。さらに、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素において、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における153番目のバリンがバリンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にイソロイシンに置換されたものであることが好ましい。さらにまた、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素において、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における155番目のヒスチジンがヒスチジンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にグルタミンに置換されたものであることが好ましい。さらにまた、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素において、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における159番目のグルタミンがグルタミンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にロイシンに置換されたものであることが好ましい。さらにまた、本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素において、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における227番目のトレオニンがトレオニンを除く他のアミノ酸に置換されたものであればよいが、特にセリンに置換されたものであることが好ましい。
なお、上述したように、置換後のアミノ酸として具体的に好ましいアミノ酸を例示したが、置換後のアミノ酸は上記例示に限定されるものではない。参考文献(1)(「マッキー生化学」第3版 5章アミノ酸・ペプチド・タンパク質 5.1アミノ酸、監修:市川厚、監訳:福岡伸一、発行者:曽根良介、発行所:(株)化学同人、ISBN4-7598-0944 -9)でも記載されているように、アミノ酸は同様の性質(化学的性質や物理的大きさ)を持つ側鎖に従って分類される事がよく知られる。また、タンパク質の活性を保持したまま、所定のグループに分類されるアミノ酸残基間における分子進化上の置換が頻度高く起こることがよく知られる。この考えを基に、参考文献(2): Henikoff S., Henikoff J.G., Amino-acid substitution matrices from protein blocks, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 10915-10919 (1992)中の、Fig.2でアミノ酸残基の置換変異のスコアマトリックス(BLOSUM)が提唱され、広く使用されている。参考文献(2)では、側鎖の化学的性質が似たもの同士のアミノ酸置換は、タンパク質全体に与える構造や機能変化が少なくなると言う知見に基づくものである。上記参考文献(1)及び(2)によれば、マルチプルアラインメントで考慮するアミノ酸の側鎖のグループは、化学的性質や物理的大きさなどの指標を基にして考えることができる。これは、参考文献(2)に開示されたスコアマトリックス(BLOSUM)において、スコアの0以上の値を持つアミノ酸、好ましくは1以上の値を持つアミノ酸のグループとして示される。
以上のような知見に基づいて、性質の類似したアミノ酸を下記の8つのグループに分類することができる。したがって、置換後のアミノ酸としては、上記例示したアミノ酸が含まれるグループに分類されるアミノ酸とすることが好ましい。例えば、Gibberella zeae由来のギ酸脱水素酵素における159番目のグルタミンは、ロイシンに置換することが好ましいとしたが、ロイシンが分類されている後記1)脂肪族疎水性アミノ酸グループに分類されるイソロイシン、メチオニン又はバリンに置換されても良い。
1)脂肪族疎水性アミノ酸グループ(ILMVグループ)
このグループは、上記参考文献(1)で示された中性非極性アミノ酸のうち、脂肪属性の疎水性側鎖をもつアミノ酸のグループであり、V(Val、バリン)、L(Leu、ロイシン)、I(Ile、イソロイシン)及びM(Met、メチオニン)から構成される。参考文献(1)による中性非極性アミノ酸と分類されるもののうちFGACWPは以下理由で、この「脂肪族疎水性アミノ酸グループ」には含めない。G(Gly、グリシン)やA(Ala、アラニン)はメチル基以下の大きさで非極性の効果が弱いからである。C(Cys、システイン)はS-S結合に重要な役目を担う場合があり、また、酸素原子や窒素原子と水素結合を形成する特性があるからである。F(Phe、フェニルアラニン)やW(Trp、トリプトファン)は側鎖がとりわけ大きな分子量をもち、かつ、芳香族の効果が強いからである。P(Pro、プロリン)はイミノ酸効果が強く、ポリペプチドの主鎖の角度を固定してしまうからである。
2)ヒドロキシメチレン基をもつグループ(STグループ)
このグループは、中性極性アミノ酸のうちヒドロキシメチレン基を側鎖に持つアミノ酸のグループであり、S(Ser、セリン)とT(Thr、スレオニン)から構成される。SとTの側鎖に存在する水酸基は、糖の結合部位であるため、あるポリペプチド(タンパク質)が特定の活性を持つために重要な部位である場合が多い。
3)酸性アミノ酸(DEグループ)
このグループは、酸性であるカルボキシル基を側鎖に持つアミノ酸のグループであり、D(Asp、アスパラギン酸)とE(Glu、グルタミン酸)から構成される。
4)塩基性アミノ酸(KRグループ)
このグループは、塩基性アミノ酸のグループであり、K(Lys、リジン)とR(Arg、アルギニン)から構成される。これらKとRは、pHの広い範囲で正に帯電し塩基性の性質をもつ。一方、塩基性アミノ酸に分類されるH(His、ヒスチジン)はpH7においてほとんどイオン化されないので、このグループには分類されない。
5)メチレン基=極性基(DHNグループ)
このグループは、全てα位の炭素元素に側鎖としてメチレン基が結合しその先に極性基を有すると言う特徴を持つ。非極性基であるメチレン基の物理的大きさが酷似している特徴を持ち、N(Asn、アスパラギン、極性基はアミド基)、D(Asp、アスパラギン酸、極性基はカルボキシル基)とH(His、ヒスチジン、極性基はイミダゾール基)から成る。
6)ジメチレン基=極性基(EKQRグループ)
このグループは、全てα位の炭素元素に側鎖としてジメチレン基以上の直鎖炭化水素が結合しその先に極性基を有すると言う特徴を持つ。非極性基であるジメチレン基の物理的大きさが酷似している特徴を持つ。E(Glu、グルタミン酸、極性基はカルボキシル基)、K(Lys、リジン、極性基はアミノ基)、Q(Gln、グルタミン、極性基はアミド基)、R(Arg、アルギニン、極性基はイミノ基とアミノ基)から成る。
7)芳香族(FYWグループ)
このグループには、側鎖にベンゼン核を持つ芳香族アミノ酸であり、芳香族特有の化学的性質を特徴とする。F(Phe、フェニルアラニン)、Y(Tyr、チロシン)、W(Trp、トリプトファン)から成る。
8)環状&極性(HYグループ)
このグループには、側鎖に環状構造を持つと同時に極性も持つアミノ酸で、H(H、ヒスチジン、環状構造と極性基は共にイミダゾール基)、Y(Tyr、チロシン、環状構造はベンゼン核で極性基は水酸基)から成る。
上述した置換対象アミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されてなる変異型ギ酸脱水素酵素は、置換変異前のギ酸脱水素酵素と比較して、耐久性及び/又は比活性が向上するといった特徴を備えている。ここで、変異型ギ酸脱水素酵素及び置換変異前のギ酸脱水素酵素の比活性は、従来公知の手法を適宜使用することができる。例えば、下記反応式に従って生成するNADH量や、下記反応式に従って消費される成分の量を直接的又は間接的に測定することで、下記反応式に寄与するギ酸脱水素酵素の比活性を測定することができる。
HCOO- + NAD+ → CO2 + NADH
アカカビ由来のギ酸脱水素酵素の製造
上述した本発明に係る変異型ギ酸脱水素酵素のなかでも、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素に由来する変異型ギ酸脱水素酵素は、置換変異前であっても非常に高い比活性を示す。したがって、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素に由来する変異型ギ酸脱水素酵素は、他の生物由来のギ酸脱水素酵素由来の変異型ギ酸脱水素酵素と比較して耐久性及び/又は比活性が際だって高いため好ましい。
ここで、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素は、従来公知のタンパク質の製造方法では取得することができない。したがって、アカカビ由来の変異型ギ酸脱水素酵素についても、従来公知のタンパク質の製造方法で取得することが困難であり、以下に説明する手法に準じて製造することができる。すなわち、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素の製造方法は、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素遺伝子を誘導型プロモーターの制御下に配置したベクターを導入した宿主を準備する。そして当該宿主を培養し、対数増殖期を過ぎた時にギ酸脱水素酵素遺伝子の発現を誘導する。次に、上記宿主の生育至適温度よりも低く且つ上記宿主が生存可能な温度で培養することでギ酸脱水素酵素を宿主内に発現させる。
アカカビ由来のギ酸脱水素酵素の製造方法において、誘導型プロモーターとしては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。例えば、上記の宿主として大腸菌を使用する場合には、イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)の存在下に転写活性を示す誘導型プロモーターを使用することができる。このようなプロモーターの例としては、Trpプロモーター、Lacプロモーター、Trcプロモーター及びTacプロモーターを挙げることができる。また、IPTG以外の誘導物質の存在下に転写活性を示す他のプロモーターや、培地成分及び温度等の培養条件に応じて転写活性を示す他のプロモーターも、誘導型プロモーターとして使用することができる。
また、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素の製造方法において、ベクターとしては、上記の宿主内で複製可能なものであれば特に限定されず、如何なるベクターをも使用することができる。例えば、上記宿主として大腸菌を使用する場合には、ベクターとしてはプラスミドベクター、ファージベクターのいずれであっても良い。具体的なベクターとしては、pCDFシリーズ、pRSFシリーズ、pETシリーズ等を例示列挙することができる。
さらに宿主としては、発現ベクターに組み込まれたプロモーターから転写可能な宿主であれば特に限定されないが、例えば、発現ベクターがpET(T7プロモーター)系の場合には大腸菌BL21(DE3)を使用することができる。上述したベクターを宿主に導入する手法としては、一般的に形質転換法として知られる各種の手法を適用することができる。具体的な手法としては、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法等を適用することができる。
特にアカカビ由来のギ酸脱水素酵素の製造方法においては、ベクターを導入した宿主を培養し、対数増殖期を過ぎた時に上記ギ酸脱水素酵素遺伝子の発現を誘導する。ギ酸脱水素酵素遺伝子の発現を誘導する前において、宿主の培養条件としては、何ら限定されず、例えば当該宿主の生育至適温度や生育至適pHを勘案して適宜、設定すればよい。しかし、培養を継続しながら宿主の増殖を観察し、いわゆる対数増殖期を過ぎた時点で以下の条件を満足するような培養条件に変更する。すなわち、条件1としてギ酸脱水素酵素遺伝子の発現を誘導し、条件2として宿主の生育至適温度よりも低く且つ宿主が生存可能な温度で培養する。
ここで、対数増殖期を過ぎた時とは、横軸に培養時間及び縦軸に細胞数の対数をとった増殖曲線において、所定の傾きの略直線で表される部分から、接線の傾きが低下し始める時点を意味する。なお、培養曲線は培地中のOD600nmを測定することによって作製することができる。また、ギ酸脱水素酵素遺伝子の発現を誘導する際には、対数増殖期を過ぎて定常期に入ってからが好ましい。ここで定常期とは、上述した増殖曲線の接線の傾きがほぼ0となる期間である。
また、宿主の生育至適温度とは、宿主毎に異なる温度範囲として公知である、例えば、大腸菌B株を宿主とした場合、生育至適温度は37℃である。例えば、大腸菌B株を宿主とした場合、生育可能な温度は15〜37℃である。したがって、大腸菌B株を宿主とした場合、宿主の生育至適温度よりも低く且つ宿主が生存可能な温度としては15〜37℃を意味する。特に、大腸菌B株を宿主とした場合、対数増殖期を過ぎた時に約20℃にして培養を継続することが好ましい。
宿主の対数増殖期を過ぎたときに上記温度範囲に設定することでギ酸脱水素酵素遺伝子が発現し、宿主内に非常に高い比活性を示すギ酸脱水素酵素が生成することとなる。培養後、目的のギ酸脱水素酵素が宿主内に生産されるため菌体又は細胞を破砕し、粗酵素懸濁液を調製する。この粗酵素懸濁液には、非常に高い比活性を示すギ酸脱水素酵素が含まれる。したがって、得られた粗酵素懸濁液をそのまま利用することができる。なお、得られた粗酵素懸濁液からギ酸脱水素酵素を単離精製することもできる。このとき、蛋白質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。単離精製されたギ酸脱水素酵素は、所定のpHの緩衝液等に懸濁された状態で利用することができる。
変異型ギ酸脱水素酵素の利用形態
以上で説明した変異型ギ酸脱水素酵素は、変異導入前のギ酸脱水素酵素と比較して抜群に高い耐久性及び/又は比活性を示すため、従来公知のギ酸脱水素酵素が使用されている反応系のいずれにも優れた代替物として利用することができる。すなわち、従来公知のギ酸脱水素酵素が使用されている反応系において、ギ酸脱水素酵素として上述した変異型ギ酸脱水素酵素を使用することによって、従来の酵素反応と比較して優れた反応効率を達成することができる。
例えば、変異型ギ酸脱水素酵素の利用形態としてはNADHの再生系を挙げることができる。NADHは種々の酵素反応で利用されNAD+へと変換される。NADHは、例えば、化学工業や製薬工業の分野において光学異性体を生物的に合成する際の補酵素として利用される。NADHの再生系とは、反応系に残存するNAD+を還元してNADHとし、NADHを回収して再び上記酵素反応に利用することを意味する。
上述した変異型ギ酸脱水素酵素をギ酸及びNAD+を含む反応系に作用させることによって、当該NAD+を還元してNADHを合成することができる。
以上のように変異型ギ酸脱水素酵素をNADHの再生系に利用することによって、反応系に含まれるNAD+からNADHを効率よく製造することができる。特に、変異型ギ酸脱水素酵素は、従来公知のギ酸脱水素酵素と比較して非常に優れた比活性を示すため、従来公知のギ酸脱水素酵素の使用量と比較して小量でNADHを製造することができる。換言すると、変異型ギ酸脱水素酵素を利用することによって、従来公知のギ酸脱水素酵素を使用した場合と比較してNADHの生産スピードを向上させることができる。さらに、変異型ギ酸脱水素酵素は、耐久性に優れているため、変異導入前のギ酸脱水素酵素と比較して長時間に亘って高い活性を維持することができる。このため、変異型ギ酸脱水素酵素を利用することによって、従来公知のギ酸脱水素酵素を使用した場合と比較してNADHの生産性を大幅に向上させることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
本実施例ではアカカビ由来のギ酸脱水素酵素遺伝子をクローニングし、当該遺伝子に対して複数のアミノ酸残基が置換するように変異を導入し、得られた変異遺伝子に由来するギ酸脱水素酵素における耐久性及び比活性を評価した。
(1)試薬
試薬は、特に記載の無い場合ナカライテスク社製のものを使用した。
・リン酸カリウム緩衝液(KPB)
<SolutionA>0.5M KH2PO4 13.6g/200ml
<SolutionB>0.5M K2HPO4 26.13g/300ml
0.5M KPB pH7.5はSolutionAとSolutionBを次の割合で混合。
[SolutionA 16ml]+[SolutionB 84ml]⇒100ml
0.5M KPB pH7.2はSolutionAとSolutionBを次の割合で混合。
[SolutionA 28ml]+[SolutionB 72ml]⇒100ml
0.5M KPB pH6.8はSolutionAとSolutionBを次の割合で混合。
[SolutionA 51ml]+[SolutionB 49ml]⇒100ml
・EcoPro T7 system(Novagen社製)
Lysate、Methionine
・1.62M ギ酸ナトリウム
5.5g/50ml 0.5M KPB pH7.5、調製後0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で滅菌した。
・16.2mM NAD
581mg/50ml 0.5M KPB pH7.5、調製後0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で滅菌した。
・mPMS(DOJINDO社製)
methoxy PMS 0.5mg/mlとなるよう蒸留水で調製した。
・WST1(DOJINDO社製)
8mg/mlに蒸留水で調製した。
・LB培地
LB Broth(Difco社製) 20g/L。オートクレーブして使用した。使用前にアンピシリン(SIGMA社製)を50μg/mlとなるように添加した。
・KOD-Plus-:KOD-Plus-Polymerase [1U/μl] (TOYOBO社製)
25mM MgSO4、2mM dNTP、10×Buffer
・MinElute PCR Purification Kit(QIAGEN社製)
・KOD-Plus-Mutagenesis Kit (TOYOBO社製)
・Protein Assay (BIO-RAD社製)
・BL21(DE3) Competent Cells(Novagen社製)
・100mM IPTG(タカラバイオ社製)
238.31mg/10mlに調製後、0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で滅菌した。
・1M MOPS(pH 7.5)
20.927g/100mLで調製後、水酸化ナトリウムでpHを7.5に調製後メスアップした。
(2)Gibberella zeae FDH遺伝子のクローニング
(2−1) 微生物株
Gibberella zeaeは独立行政法人製品評価技術基盤機構の関連機関であるNITE Biological Resource Center(以下NBRCと記載)に保存されている株(NBRC No. 4474)を購入し、指定される方法で復元したものをPD(Potato Dextrose)培地を用いて培養した。
(2−2) ギ酸脱水素酵素遺伝子の単離
(2−2−1) ギ酸脱水素酵素遺伝子の増幅
2−1の方法で培養して得た菌体をRNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてTotal RNA(mRNA、rRNA及びtRNA等を含む)を調製した。まず、RNA PCR Kit(タカラバイオ社製)を用いてTotal RNAを鋳型としたcDNA合成をおこなった。表1に反応液組成を示す。
Figure 2010161983
上記組成の反応液を用いて、50℃で2時間、その後99℃で5分間、その後4℃とする反応サイクルでcDNAの合成反応を行った。
次に、合成されたcDNAを鋳型とし、Pyrobest DNA polymeraseを用いてPCRをおこなった。反応液50μl中の成分組成を表2に示す。
Figure 2010161983
上記組成の反応性を用いて、95℃で1分、その後、(95℃で30秒、60℃で30秒及び72℃で1分を1サイクルとして25サイクル繰り返し、その後72℃で10分、その後4℃とする反応サイクルでPCRを行った。なお、本PCRにおいては、一対のプライマーとしてGib FDH1-F-NdeI(forward):CGC CAT ATG GTC AAG GTT CTT GCA GTT C(配列番号13)及びGib FDH1-R(reverse):CTA TTT CTT CTC ACG CTG ACC(配列番号14)を使用した。
(2−2−2) ギ酸脱水素酵素遺伝子のクローニング及び構造解析
アガロースゲル電気泳動により得られた各種PCR産物のサイズを確認後、MinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いてアガロースゲルより精製したPCR産物をpT7 Blue T-vector(Novagen製)、JM109 competent cells(タカラバイオ社製)を用いてサブクローニングした(GzFDH/pT7)(図2参照)。単離したギ酸脱水素酵素遺伝子配列はデータベース上に公開されている配列(Genbank No. XP_386303)とアミノ酸レベルで100%の一致を示していた。
(2−2−3) ギ酸脱水素酵素遺伝子発現用ベクターの作製
2−2−2で作製されたプラスミド(FDH/pT7)を制限酵素NdeI/EcoRIで処理した。表3に反応液組成を示す。制限酵素処理の反応条件としては37℃で2時間とした。
Figure 2010161983
反応後の溶液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、NdeI/EcoRI断片としてベクターから切り出されたギ酸脱水素酵素遺伝子(約1.1kb)をMinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて精製した。次にFDH/pT7と同様に制限酵素処理した遺伝子発現用ベクターpET23b(+)(Novagen社製)のNdeI/EcoRI部位にDNA Ligation kit Ver.2.1(タカラバイオ社製)を用いて上記ギ酸脱水素酵素遺伝子断片を導入後、JM109 competent cells(タカラバイオ社製)によるサブクローニングを行った(FDH/pET23b(+))(図2参照)。
(3)Site-directed mutagensisによる変異体の作製
KOD-Plus-Mutagenesis Kitを用いて、以下のプロトコールに従いFDHに部位特異的に変異を導入した。作製した変異体、作製に用いた鋳型/プライマーの組み合わせを表4に示す。また使用したプライマーの配列を表5に示す。
Figure 2010161983
Figure 2010161983
なお、表4における鋳型の欄に記載したWTは、野性型のFDHを意味し、V153IはFDHにおける153番目のバリンをイソロイシンに置換した変異型FDHを意味し、T117AはFDHにおける117番目のスレオニンをアラニンに置換した変異型FDHを意味し、V99IはFDHにおける99番目のバリンをイソロイシンに置換した変異型FDHを意味し、T227SはFDHにおける227番目のスレオニンをセリンに置換した変異型FDHを意味する。これら変異型FDHは、野性型FDHをコードする遺伝子の塩基配列から定法に従って準備した。
以上により、V153I変異及びT227S変異を有する2重変異型ギ酸脱水素酵素(プラスミド名:2M-2)、T117A変異及びT227S変異を有する2重変異型ギ酸脱水素酵素(プラスミド名:2M-3)、V99I変異及びT117A変異を有する2重変異型ギ酸脱水素酵素(プラスミド名:2M-4)、V153I変異及びH155Q変異を有する2重変異型ギ酸脱水素酵素(プラスミド名:2M-6)、V153I変異及びQ159L変異を有する2重変異型ギ酸脱水素酵素(プラスミド名:2M-8)、V153I変異、H155Q変異及びQ159L変異を有する3重変異型ギ酸脱水素酵素(プラスミド名:3M-1)、V99I変異、V153I変異及びQ159L変異を有する3重変異型ギ酸脱水素酵素(プラスミド名:3M-2)、V99I変異、V153I変異及びH155Q変異を有する3重変異型ギ酸脱水素酵素(プラスミド名:3M-4)、V153I変異、H155Q変異及びT227S変異を有する3重変異型ギ酸脱水素酵素(プラスミド名:3M-6)並びにV99I変異、V153I変異、H155Q変異及びQ159L変異を有する4重変異型ギ酸脱水素酵素(プラスミド名:4M-2)を取得することができた。
(4)組換え体FDHの性状評価
(4−1)大腸菌S30による組換え体FDHの合成
(4−1−1)鋳型の調製
前項(3)で構築したプラスミドを鋳型としてPCRを行った。この増幅産物を翻訳反応の鋳型として用いた。PCRでは、一対のプライマーとしてSingle-F及びSingle-R1を使用した。PCRの反応液組成を表6に示した。
Single-F 5’-CGA TCC CGC GAA ATT AAT ACG ACT-3’(配列番号23)
Single-R1 5’-TCC GGA TAT AGT TCC TCC TTT CAG-3’ (配列番号24)
Figure 2010161983
上記組成の反応液を用いて、94℃で2分の後、94℃で15秒及び68℃で1分30秒を1サイクルとして30サイクル行い、その後、68℃で2分、その後4℃とする反応サイクルでPCRを行った。PCRにより増幅された約1.4kbpの断片をMinElute PCR Purification Kitで精製し翻訳反応に使用した。
(4−1−2) 無細胞翻訳反応
4−1−1で精製したDNA断片を鋳型としてEcoPro T7 system(Novagen社製)を用い翻訳反応を行った。方法はキットのプロトコールに従った。
(4−2)S30中での耐久性評価(加速試験)
S30(大腸菌粗抽出液)中における変異酵素の耐久性を加速試験により評価した。手順を以下に示す。4−1−2で調製した翻訳産物を1.8μlずつPCRチューブに分注し、サーマルサイクラー47℃で加熱した。加熱開始から10、20、40及び60分ごとにチューブを取り出し氷につけて冷却した。その後、表7に示す組成の活性測定用試薬のチューブに98μlずつ添加した。その後、サーマルサイクラー37℃で加熱(30分程度)し、チューブを取り出し氷につけて反応を停止させた。
Figure 2010161983
なお、FDH触媒によるギ酸分解反応は次式で示される。
HCOO- + NAD+ → CO2 + NADH
ここに電子伝達物質であるMethoxy PMS(mPMS)と、酸化還元発色指示薬であるWST1(共にDOJINDO社製)を加えることで次式のように反応が進むため、波長438nmの吸光度で黄色ホルマザンを測定することで、ギ酸分解量の定量が可能となる。なお黄色ホルマザンの吸光係数はNADHの約6倍であり、NADHの直接測定よりも高感度での定量が可能となる。
NADH + mPMS → NAD+ + mPMS(還元型)
mPMS(還元型) + WST1 → mPMS + 黄色ホルマザン(37000/M・cm、438nm)
そして、プレートリーダー(Spectrafluor Plus:TECAN社製)で吸光度430nmを測定することで黄色ホルマザンを定量し、4−1−2で調整した複数のアミノ酸変異を有するFDHの活性を評価することができる。
耐久性が向上した例としてV99IとT227Sの二重変異を含む変異体の耐久性を図3に示す。なお、図3には、比較例としてV99I変異を有する変異体とT227S変異を有する変異体及び野性型における耐久性も示した。
(4−3)大腸菌での組換え体FDHの過剰発現と精製
(4−3−1)発現誘導
G.zeae由来FDH(野生型および変異体)の発現は以下のように行った。使用菌株としては前項(3)で構築した組換え体プラスミドを導入した大腸菌BL21(DE3)株を使用した。LB培地 5mlを使用して37℃で22時間の前培養を行った。前培養の培養液が1.5%となるように、LB培地 500mlに植菌し、 37℃で4時間(O.D.600:3〜)の本培養を行った。また、タンパク質の発現を誘導する誘導培養として、終濃度1mMとなるようにIPTGを添加し、20℃で16時間(O.D.600:3.5〜4.1)培養した。
培養後、培養液を一旦氷につけて冷やした後に集菌した。培養液を500mlチューブ2本に分けて、5200rpmで10分間、4℃にて遠心分離した。上清を捨てて、菌体にそれぞれ60mlの10mM KPB(pH7.5)を加えて懸濁し、120ml分の懸濁液を50mlマルチビーズショッカー用専用破砕チューブ(安井器械株式会社製)3本に分けて、5600rpmで5分間、4℃にて再度遠心分離を行い、菌体を得た。
(4−3−2) 発現誘導菌体の破砕
(4−3−1)で得た菌体を冷却しながら破砕し、粗抽出液を調製した。集菌後の湿菌体重量を測定し、10mM KPB(pH7.5)を10倍量(湿菌体重量1gに対し10mlの割合)、マルチビーズショッカー専用グラスビーズ0.1mm(安井器械株式会社製)をKPBと等量(KPB10mlに対して10gの割合)を添加した。破砕にはマルチビーズショッカー(安井器械株式会社製)を用いた。
粗抽出液は手順に従って調整した。先ず、6000rpmで120秒間振とうし、インターバル60秒間の後、再び同条件で振とうする工程を3回繰り返した。その後、6000rpmで20分間、4℃にて遠心分離し、上清を回収した。その後、6000rpmで10分間、4℃にて遠心分離し上清を0.45μmのフィルター (ミリポア社製)でろ過することで、粗抽出液を調製した。
(4−3−3)イオン交換カラム
前項4−3−2で調製した粗抽出液をHiTrap Q FFカラム 5ml(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により分画した。手順を以下に示す。先ず、10mM KPB(pH7.5) 25mlを流速1ml/minでカラムに供給して平衡化を行った。次に、粗抽出液を流速1ml/minで供給し、タンパク質成分を結合させた。次に、10mM KPB(pH7.5) 25mlを流速1ml/minでカラムに供給し、洗浄を行った。次に、10mM KPB(pH7.5)をベースとしてNaCl(10ml, 0〜200mM)のグラジエントを流速0.5ml/minでカラムに供給し、溶出を行った。なお、1つのフラクションが0.5mlとなるように分画した。最後に、10mM KPB(pH7.5)及び500mM NaCl 15mlを流速1ml/min でカラムに供給し、洗浄を行った。
溶出ステップで得たフラクションのうちFDH活性のピークが認められたフラクションをハイドロキシアパタイトカラムによる二次精製のサンプルとした。
(4−3−4)ハイドロキシアパタイトカラム
前項3−3−3で得たFDH活性含有フラクションを用いて二次精製を行った。各フラクションを一つにまとめ、Amicon Ultra-15(30kDaカット)(ミリポア社製)を用いて5000rpmで4℃にて30分間遠心分離し、脱塩後10mM KPB(pH7.2)で15ml程度に希釈した。二次精製にはEcono-Pac CHT-IIカラム 5ml(BIO-RAD社製)を使用した。手順を以下に示す。
先ず、1mM KPB(pH7.2) 30mlを流速1ml/minでカラムに供給し、平衡化を行った。次に、脱塩した後のサンプルを流速0.5ml/minでカラムに供給し(2循環させた)、タンパク質成分を結合させた。次に、1mM KPB(pH7.2) 10mlを流速1ml/minでカラムに供給し、洗浄を行った。次に、1mM〜10mM KPB(pH6.8)各10mlを流速0.5ml/minでカラムに供給し、溶出を行った。なお、1つのフラクションが0.5mlとなるように分画(計49フラクション)した。最後に、500mM KPB(pH6.8)5mlを流速1ml/minでカラムに供給し、洗浄を行った。
カラム精製後の各フラクションのSDS-PAGE(12.5%ポリアクリルアミドゲル、還元)泳動像を図4に示す。図4に示すように、34〜40フラクションで高精製度のFDHを回収することができた。
(4−3−5)精製タンパク質の濃度測定
Protein Assay試薬を用いたブラッドフォード法を使って、精製後のタンパク濃度定量を行った。次に、その値をもとに、タンパク濃度が0.07mg/mlとなるように1mM MOPS(pH7.5)で調整した。
(4−4)精製酵素の性能評価
(4−4−1)37℃における耐久時間
4−3−5で得た精製酵素溶液を0.2mlチューブ(BIO-RAD社製)に5μlずつ分注し、サーマルサイクラー(BIO-RAD社製)37℃で0、6、20、24及び30時間後の残存活性を測定した。結果を図5に示す。
(4−4−2)37℃における比活性
4−3−5で得た精製酵素溶液を用いて、FDH活性を測定した。表8に示した組成の反応液を使用した以外は、前記(4−2)と同様にしてFDH活性を測定した。結果の一例を図6に示す。
Figure 2010161983
(5)結果のまとめ
前記(4−2)で行った耐久性評価試験(加速試験)、(4−4−1)で行った耐久性試験及び(4−4−2)で行った比活性試験の結果を表9に纏めて示す。
Figure 2010161983
表9に示すように、アカカビ由来のギ酸脱水素酵素において、99番目のバリン、117番目のトレオニン、153番目のバリン、155番目のヒスチジン、159番目のグルタミン及び227番目のトレオニンからなる群から選ばれる少なくとも2つのアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換させることによって、耐久性及び/又は比活性が有意に向上することが明らかとなった。特に、表9に示すように、V99I変異は、変異型ギ酸脱水素酵素の耐久性を向上させる変異であることがわかった。さらに、表9に示すように、V153I変異及びH155Q変異を有する2重変異型ギ酸脱水素酵素は、最も優れた比活性を示し、且つ優れた耐久性を示すことが判った。また、この2重変異型ギ酸脱水素酵素(V153I及びH155Q)に対して更にQ159L変異を導入した3重変異型ギ酸脱水素酵素についても、優れた比活性及び耐久性を示すことが明らかとなった。

Claims (18)

  1. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリン、117番目のトレオニン、153番目のバリン、155番目のヒスチジン、159番目のグルタミン及び227番目のトレオニンからなる群から選ばれる少なくとも2つのアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を含み、耐久性及び/又は比活性が向上した変異型ギ酸脱水素酵素。
  2. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  3. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における117番目のトレオニンに相当するトレオニンがアラニンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  4. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  5. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における155番目のヒスチジンに相当するヒスチジンがグルタミンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  6. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における159番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  7. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における227番目のトレオニンに相当するトレオニンがセリンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  8. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、227番目のトレオニンに相当するトレオニンがセリンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  9. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における117番目のトレオニンに相当するトレオニンがアラニンに置換するとともに、227番目のトレオニンに相当するトレオニンがセリンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  10. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、117番目のトレオニンに相当するトレオニンがアラニンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  11. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、155番目のヒスチジンに相当するヒスチジンがグルタミンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  12. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、159番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  13. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、155番目のヒスチジンに相当するヒスチジンがグルタミンに置換するとともに、159番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  14. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、159番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  15. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、155番目のヒスチジンに相当するヒスチジンがグルタミンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  16. 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるギ酸脱水素酵素における99番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、153番目のバリンに相当するバリンがイソロイシンに置換するとともに、155番目のヒスチジンに相当するヒスチジンがグルタミンに置換するとともに、159番目のグルタミンに相当するグルタミンがロイシンに置換したアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の変異型ギ酸脱水素酵素。
  17. 請求項1乃至16いずれか一項記載の変異型ギ酸脱水素酵素をコードする遺伝子。
  18. ギ酸及びNAD+を含む反応系に請求項1乃至16いずれか一項記載の変異型ギ酸脱水素酵素を作用させる、
    NADHの製造方法。
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