JP2009089649A - クロストリジウム・クルベリのジアホラーゼ遺伝子およびその利用 - Google Patents

クロストリジウム・クルベリのジアホラーゼ遺伝子およびその利用 Download PDF

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和郎 粟冠
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哲也 木村
Makiko Sakka
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Abstract

【課題】本発明は、新規なジアホラーゼ遺伝子および、該遺伝子を用いてジアホラーゼを大量に製造できる方法を提供する。
【解決手段】以下の(a)又は(b)のタンパク質からなるジアホラーゼ。(a)特定のアミノ酸配列からなるタンパク質(b)上記に表されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつジアホラーゼ活性を有するタンパク質。上記ジアホラーゼの組換えベクターを含む形質転換体を培養する工程と、得られた培養物からジアホラーゼ活性を有するタンパク質を回収する工程とを含む、ジアホラーゼの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規なジアホラーゼ遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターを含む形質転換体、該遺伝子によりコードされるジアホラーゼ、および該ジアホラーゼの製造方法を提供する。
ジアホラーゼは、NADHやNADPHを酸化し、人工色素(ジクロロフェノールインドフェノールや各種テトラゾリウム塩)などを還元する酵素の総称である。この反応を利用して各種脱水素酵素の活性を測定することができる。
ジアホラーゼは試薬として販売されており、クロストリジウム・クルベリ(Clostridium kluyveri)由来のものはWorthington社から販売されている。しかし、市販のジアホラーゼは、野生株の微生物を培養して単離または精製して製造されているため、生産量が少なく、高価格で、低比活性であったり、活性が不安定であるなどの問題点を有している。
ここで、クロストリジウム・クルベリ由来のジアホラーゼ酵素をコードする遺伝子が同定されれば、該遺伝子を発現能力や増殖能力の高い異種宿主に導入し、高発現させることが可能となり、安価で大量にジアホラーゼを生産することが出来るようになる。また、遺伝子の部位特異的変異等の手法により、高比活性で、耐熱性やpH安定性等を向上させた酵素の取得が可能となる。しかし、クロストリジウム・クルベリ由来のジアホラーゼ酵素についての遺伝子情報は、現状では、見出されていない。
本発明は、新規なジアホラーゼ遺伝子および、該遺伝子を用いてジアホラーゼを大量に製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、クロストリジウム・クルベリ由来の新規なジアホラーゼ遺伝子を取得し、ジアホラーゼを大量生産する方法を完成するに至った。
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下の各項の新規なジアホラーゼ遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターを含む形質転換体、該遺伝子によりコードされるジアホラーゼ、および該ジアホラーゼの製造方法を提供する。
項1. 以下の(a)又は(b)のタンパク質からなるジアホラーゼ。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつジアホラーゼ活性を有するタンパク質
項2. 以下の(c)又は(d)のポリヌクレオチドからなるジアホラーゼ遺伝子。
(c)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド
(d)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつジアホラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
項3. 項2に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
項4. 項3に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
項5. 形質転換体がFERM P-21329株である項4に記載の形質転換体。
項6. 項4または項5に記載の形質転換体を培養する工程と、得られた培養物からジアホラーゼ活性を有するタンパク質を回収する工程とを含む、ジアホラーゼの製造方法。
本発明により新規なジアホラーゼ遺伝子が提供された。この遺伝子を異種宿主内で高発現させることにより、ジアホラーゼを安価に大量生産することができるようになった。
また、遺伝子の部位特異的変異等の手法により、耐熱性やpH安定性等を向上させた酵素の取得が可能になる。さらに、ジアホラーゼ遺伝子をプローブとして、新規酵素の検索も可能となる。
また、本発明のジアホラーゼ遺伝子は特定のプロモーター等の転写促進因子をつなげることで、従来の野生株から採取したジアホラーゼ遺伝子と比較して高活性を発現させることもできる。
以下、本発明を詳細に説明する。
ジアホラーゼ遺伝子
本発明のジアホラーゼ遺伝子は、以下の(c)又は(d)のポリヌクレオチドからなる遺伝子である。
(c)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド
(d)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつジアホラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
本発明において、ポリヌクレオチド(オリゴヌクレオチドを含む)には、ある塩基配列を有するポリヌクレオチドおよびそれに相補的なポリヌクレオチドが含まれる。また、ポリヌクレオチドには、特に言及しない限り、DNAおよびRNAの双方が含まれる。また、DNAには、1本鎖DNAの他に、2本鎖DNAが含まれる。DNAには、特に言及しない限り、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAが含まれる。RNAには、特に言及しない限り合成RNAが含まれる。
配列番号1のポリヌクレオチドは、例えばクロストリジウム・クルベリのcDNAライブラリなどから、配列番号1に基づき設計したプローブを用いたハイブリダイゼーションによるスクリーニングにより得ることができる。また、化学合成により得ることもできる。
本発明において、ストリンジェントな条件とは、5×SSC、1.0 %(W/V)核酸ハイブリダイゼーション用ブロッキング試薬(ベーリンガ・マンハイム社製)、0.1 %(W/V) N-ラウロイルサルコシン、0.02 %(W/V)SDSを用いて一晩(8〜16時間)ハイブリダイゼーションさせ、0.1×SSC、0.1%(W/V)SDSを用いて15分間、2 回洗浄する条件をいう。ハイブリダイゼーションと洗浄の温度は、67℃である。
(c)のポリヌクレオチドに基づき(d)のポリヌクレオチドを得る方法について述べれば、生物学的機能を喪失しない改変として、例えば、翻訳後に得られるタンパク質の構造保持の観点から、極性、電荷、可溶性、親水性/疎水性等の点で、置換前のアミノ酸と類似した性質を有するアミノ酸に置換することができる。例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンは非極性アミノ酸に分類され;セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンは極性アミノ酸に分類され;フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンは芳香族側鎖を有するアミノ酸に分類され;リジン、アルギニン、ヒスチジンは塩基性アミノ酸に分類され;アスパラギン酸、グルタミン酸は酸性アミノ酸に分類される。従って、同じ群のアミノ酸から選択して置換することができる。
また、一つのアミノ酸が数個の対応するコドンを有する場合、このコドン内での対応するトリプレットの置換も勿論可能である。例えば、アラニンをコードするコドンにはGCA、GCC、GCG、GCTの4つの対応するトリプレットが存在するため、当該トリプレットの3番目の塩基はATGC間で相互に置換可能である。
ジアホラーゼタンパク質
本発明のジアホラーゼタンパク質は、配列番号1の塩基配列からなるジアホラーゼ遺伝子によりコードされるアミノ酸配列からなるもの、または該アミノ酸配列において1〜数個(数個とは、例えば5個、好ましくは3個;以下同様である。)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるものである。
具体的には以下の(a)または(b)のジアホラーゼタンパク質である。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつジアホラーゼ活性を有するタンパク質
(a)のタンパク質は、クロストリジウム・クルベリの菌体または培養液から公知のタンパク質精製方法により精製する方法、後述する本発明の形質転換体から単離、精製する方法、または化学合成法等により製造することができる。
(b)のタンパク質を得る方法は、ポリヌクレオチドについて説明した通りである。
<ジアホラーゼ活性の判定>
本発明において、ジアホラーゼ活性を示すことは、基質用人工色素としてテトラゾリウムを用い、NADHの存在下で、ジアホラーゼによってテトラゾリウム(黄色)が還元されホルマザン(赤色)になることにより判定する。具体的には実施例に記載の方法で判定する。
組み換えベクター・形質転換体
本発明のベクターは、(c)又は(d)のポリヌクレオチドを、発現できるように組み込んだベクターをいう。
本発明の組換えベクターは、適当なベクターDNAに本発明のポリヌクレオチドを連結することにより得ることができる。
ポリヌクレオチドを導入するベクターとしては、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、公知のベクターを宿主に応じて広い範囲から選択することができる。例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。プラスミドDNAとしては、エシェリヒア・コリ由来のプラスミド(例えばpET-28a、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pCBD-C、pB1uescript等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB11O,pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YEP24、YCp50、YIp30等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ等が挙げられる。さらに、レトロウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルス、トガウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。中でも、プラスミドベクターが好ましく、エシャリヒア・コリ由来のプラスミドが好ましく、pET-28aがより好ましい。
ベクターに本発明のポリヌクレオチドを挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結すればよい。本発明のポリヌクレオチドは、その機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明のベクターには、プロモーター、本発明のポリヌクレオチドのほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などを含有するものを連結することができる。選択マーカーとしては、例えばアンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等が挙げられる。
本発明の形質転換体は、上記の組換えベクターを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。組換えベクターの導入方法としては、特に限定されないが、細菌に導入できる方法としては、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Cohen et a1.: Proc. Nat1. Acad. Sci., USA, 69, 2110, 1972]やエレクトロポレーション法等が挙げられ、また、酵母へ導入する方法としては、例えば、エレクトロポレーション法[Becker,D.M. et a1.: Methods Enzymo1., 194,182, 1990]、スフェロプラスト法[Hinnen, A. et a1.: Proc. Nat1. Acad. Sci., USA, 75, 1929, 1978]、酢酸リチウム法[Itoh, H.: J .Bacterio1.,153, 163, 983]等が挙げられ、また、動物細胞へ導入する方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられ、また、昆虫細胞へ導入する方法としては、例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。
宿主としては、本発明の遺伝子を発現できるものであれば特に限定されない。例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Baci11us subti1is)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロテイ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する各細菌;サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母;COS細胞(サル細胞COS-7,Vero)、CH0細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)、マウスL細胞、ヒトGH3、ヒト肌細胞等の動物細胞;あるいはSf9、Sf21等の昆虫細胞が挙げられる。中でも、細菌が好ましく、エシェリヒア・コリ又はバチルス・ズブチリスがより好ましく、エシェリヒア・コリ(Escherichia co1i) ではBL21(DE3)、K12(DH1)、バチルス・ズブチリス(Baci11uss subti1is)では MI 114、207-21がさらにより好ましく、エシェリヒア・コリBL21(DE3)株が最も好ましい。
本発明のジアホラーゼ遺伝子について、宿主とベクターとの好ましい組み合わせとしてはエシェリヒア・コリ(特にBL21(DE3)株)とpET-28aとの組み合わせが挙げられる。この組み合わせであれば高い発現量が得られる。
プロモーター
プロモーターは、上述のように宿主中で発現できるものであればいずれを用いてもよいが、本発明のジアホラーゼ遺伝子の転写活性をより促進するプロモーターの選択や、他の調節因子と組み合わせて用いることが好ましい。以下、宿主の種類別に説明する。
細菌を宿主とする場合は、プロモーターは細菌中で発現できるものであれば特に限定されず、本発明の組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明の遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
酵母を宿主とする場合は、プロモーターとしては酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えばT7プロモーター、ga11プロモーター、ga110プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等が挙げられる。
他のプロモーターとしてSRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CWプロモーター等を用いることができ、また、ヒトサイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモーター等を用いてもよい。
宿主はベクターに応じて選択すればよいが、特に宿主とプロモーターとの好ましい組み合わせとしてエシェリヒア・コリとT7プロモーターとの組み合わせが挙げられる。中でもエシェリヒア・コリBL21(DE3)とT7プロモーターとの組み合わせがより好ましい。この組み合わせであれば培養が容易で生育が早く、かつ発現量が高いため、ジアホラーゼの大量生産が極めて容易になる。
本発明のタンパク質の製造方法
本発明において「培養物」とは、タンパク質が菌体外に排出される場合は培養後の培地上清を、または菌体内に蓄積される場合は培養により得られた細胞若しくは細胞の破砕物のいずれをも意昧する。また、菌体を含む培養液も培養物に含まれる。
形質転換体を培養する方法は、それらの細胞の培養に用いられる通常の方法に従って行えばよい。以下、形質転換体の種類別に培養方法を説明する。
形質転換体が微生物である場合は、微生物の培養に通常使用される液体培地又は平板培地を用いて培養すればよい。培養温度は微生物の生育可能温度内であればよく、例えば15〜40℃程度が挙げられる。培地のpHも微生物の生育可能範囲であればよく、例えばpH 6〜8程度が挙げられる。培養時間は、その他の培養条件により異なるが、通常1〜5日間程度、特に1〜2日間程度とすればよい。
また、クロストリジウム属などの嫌気性生物を嫌気培養する場合にはシステインなどの還元作用を有する物質を培地に添加し、菌の接種は培養器上部の空間に残存する酸素を窒素パージ等で十分除去した後に行うことが好ましい。そして嫌気性菌の培養は、嫌気ボックス、嫌気ジャー、ブチルゴム栓付き試験管などで行う。さらに、形質転換体を培養する場合には、必要に応じて培地にアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を添加してもよい。
また、培地としては、前記細胞が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該細胞の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。ここで、炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デキストリン、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、グリセロール、工タノール、プロパノール等のアルコール類、動物油、糖蜜などが用いられる。また、窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ぺプトン、肉エキス、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。さらに、無機塩類としては、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、コバルト、亜鉛、鉄、モリブデン等の陽イオン、及び硫酸、リン酸、塩酸、硝酸などの陰イオンの塩が用いられる。
形質転換体が動物細胞である場合にも、当該細胞に応じて適した条件で培養すればよい。例えば牛胎児血清およびアスコルビン酸類を含有する培地で初代培養させた後、培養液を希釈して新しいシャーレに播種し継代を続ければよい。
動物細胞を宿主として、得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI640培地、DMEM培地又はこれらの培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。培養は、通常、5%C0存在下、37℃で1〜30日程度でよい。培養中は必要に応じてカナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
形質転換体が昆虫細胞の場合も、細胞の種類に応じて適した培養条件とすればよい。例えばFBS及びYeastlateを含むGrace's medium等の昆虫細胞用培地を用いて、25〜35℃程度で培養することができる。培養時間は1〜5日間程度、特に2〜3日間程度とすることが好ましい。また、ベクターとしてバキュロウイルス等のウィルスを含む形質転換体の場合は、培養時間は細胞質効果が現れて細胞が死滅する前まで(例えば3〜7日間程度、特に4〜6日間程度)とするのが好ましい。
形質転換体の培養において、その形質転換体が誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換されたものである場合には、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換された微生物を培養するときにはイソプロピルーβ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、インドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
培養後、本発明のジアホラーゼが菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することによりジアホラーゼを抽出する。菌体の破砕は、超音波、フレンチプレス、ガラスビーズを使用するホモジナイザーなどを用いることができるが、リゾチームや凍結融解法との併用によって行うこともできる。
また、本発明のジアホラーゼが菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から本発明のタンパク質を単離精製することができる。
本発明のジアホラーゼを、NADH又はNADPH、各種の人工基質(ジクロロフェノールインドフェノールやテトラゾリウム塩類)、及び脱水素酵素を含む系と反応させることにより脱水素酵素の活性を測定することができる。
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
ジアホラーゼ遺伝子の同定
0.75%(w/v)酢酸ナトリウム、0.26%(w/v)硫酸アンモニウム、1%(w/v)酵母エキス、0.12%(w/v)リン酸1カリウム、0.21%(w/v)リン酸2カリウム、0.05%(w/v)チオグリコール酸ナトリウム、1.5%(w/v)エタノール(pH 7.2)の培地を用いて、嫌気条件下でクロストリジウム・クルベリ(ATCC8527、American Type Culture Collection (ATCC)より購入)を37℃で5日間培養した。培養上清を、1 mMメルカプトエタノールと0.01 mM FMNを含む5 mMリン酸カリウム緩衝液に対して透析した。これを2 mMメルカプトエタノールを含むリン酸緩衝液で平衡化したDEAE-Toyopearlカラム(東ソー社製)に供し酵素を結合させた後、同じ緩衝液で洗浄し、食塩の直線濃度勾配で溶出した。活性画分を集め、限外濾過で濃縮した。これを、TSK-GEL G3000カラム(東ソー社製)で分画し、活性画分を限外濾過で濃縮した。本サンプルをSDS-PAGEで分離した後、PVDF膜にプロットした。目的タンパク質のバンドを切り出し、Applied Biosystems社製のプロテインシーケンサーを用いて、N末端アミノ酸配列を決定した。得られたN末端アミノ酸配列をもとに、クロストリジウム・クルベリのゲノム配列から予想されるタンパク質との相同性検索の結果、ジアホラーゼをコードする遺伝子を同定した。
ベクターの作成
PCR法によって、ベクターに挿入する本発明の遺伝子を得た。具体的には、CCCGGATCCATGATTGATAATAAAGCATTTTATAAAC(配列番号3)およびCCCGTCGACTTAATCCAAAGGTTTAAATTTTGC(配列番号4)をプライマーとして、「植物のPCR実験プロトコール」、細胞工学別冊、秀潤社、1995頁に記載のPCR法によって本発明の遺伝子を得た。
上記、得られた遺伝子をBamHIとSalIで処理した後、pET-28aベクターの同じ部位に連結し、本発明の形質転換体を作成する為のベクターを得た。
形質転換体の作成
宿主にはエシェリヒア・コリ(BL21(DE3)株)を使用し、上記のベクターをHanahan, D. 1983. Studies on transformation of Escherichia coli with plasmids. J. Mol. Biol. 166:557-580の方法によって形質転換導入した。また、挿入DNA断片の塩基配列を決定することにより、ジアホラーゼ遺伝子が目的の場所に導入され、かつジアホラーゼ活性を示すことを確認した。このジアホラーゼ遺伝子は、配列番号1の塩基配列からなるものであった。また、配列番号1のポリヌクレオチドにコードされるジアホラーゼのアミノ酸配列を配列番号2に示す。
上記方法により、本発明の目的とする形質転換体を得た。この形質転換体は、平成19年7月27日に、産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1 つくばセンター 中央第6)に、FERM P-21329株として寄託済みである。
形質転換体の培養条件
上記方法によって得られた形質転換体を、LB培地(1%(w/v)ポリペプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、0.5%(w/v)食塩、pH 7.2)で、37℃で回転振盪培養(振盪条件:振盪速度120 rpm、振盪幅5 cm)し吸光度が約0.6(波長600 nm)に達したとき、1mMとなるようにIPTGを添加し、さらに3時間培養を継続した。
ジアホラーゼの精製
上記培養によって得られた細胞から調製した無細胞抽出液からアマシャム社のプロトコルにより、ジアホラーゼを精製した。すなわち、遠心回収した細胞を10mMイミダゾールを含む100mMリン酸バッファー(pH7.4)に懸濁し、超音波処理により細胞を破砕し、無細胞抽出液を調製した。酵素の精製は、HisTrapキレートカラム(Amersham社製)を用いたニッケルアフィニティークロマトグラフィーによった。吸着タンパク質を、イミダゾール濃度勾配を10、60、100、200、300、500mMに段階的に増加させて溶出させた。SDS-PAGEを行い、精製度を確認したところ、SDS-PAGEゲル上で単一バンドを示した(精製度95%以上と考えられる)。本酵素1分子中には補欠分子属として、フラビンモノヌクレオチド(FMN)と鉄イオンが各1分子含まれていた。
ジアホラーゼの活性確認実験
上記方法により採取したジアホラーゼが目的の活性を示すことを確認した。具体的にはKaplan, F., Setlow, P., and Kaplan, N(1969). Arch Biochem Biophys 132, 91-98に記載の方法によりジアホラーゼ活性を確認した。すなわち、0.1 mM リン酸カリウム緩衝液(2.7 ml)、5 mg/mlのNADH溶液(0.1 ml)、0.35 mlのDCPIP溶液(0.1 ml)、酵素液(0.1 ml)を混合し、600 nmの吸光度の減少を測定した。1分あたり1μmolのDCPIP(2,6-dichlorophenol-indophenol)を還元する酵素活性を1ユニット(U)と定義するとき、本酵素の比活性は3,500 U/mg-proteinであった。活性の至適pHは8.0、至適温度は40℃であった。
本発明のジアホラーゼ遺伝子を利用して、該遺伝子を異種宿主で発現させることが可能となり、安価で大量にジアホラーゼを生産することが出来るようになった。また、遺伝子の部位特異的変異等の手法により、高比活性で、耐熱性やpH安定性等を向上させた酵素の取得が可能となる。

Claims (6)

  1. 以下の(a)又は(b)のタンパク質からなるジアホラーゼ。
    (a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつジアホラーゼ活性を有するタンパク質
  2. 以下の(c)又は(d)のポリヌクレオチドからなるジアホラーゼ遺伝子。
    (c)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド
    (d)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつジアホラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
  3. 請求項2に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
  4. 請求項3に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
  5. 形質転換体がFERM P-21329株である請求項4に記載の形質転換体。
  6. 請求項4または5に記載の形質転換体を培養する工程と、得られた培養物からジアホラーゼ活性を有するタンパク質を回収する工程とを含む、ジアホラーゼの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2012115278A1 (ja) * 2011-02-24 2012-08-30 ソニー株式会社 微生物燃料電池、該電池の燃料と微生物、およびバイオリアクタとバイオセンサ
JP2017122179A (ja) * 2016-01-07 2017-07-13 花王株式会社 洗浄剤組成物
JP2020167964A (ja) * 2019-04-04 2020-10-15 アサヒビール株式会社 ペクチネイタス属菌を検出可能な培地、ビール混濁性有害菌の検出方法

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