JPWO2012118065A1 - 二酸化炭素の還元固定化システム、二酸化炭素の還元固定化方法、及び有用炭素資源の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2011年2月28日に日本に出願された特願2011−042242号、2011年5月13日に日本に出願された特願2011−108756号、2011年8月8日に日本に出願された特願2011−173284号、2011年10月17日に日本に出願された特願2011−228135号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
化学的に固定化する方法の例としては、光電気化学的に還元を行う方法、生物の光合成を利用する方法、及び、水素などとの反応を利用する方法、などが考案されている(特許文献1〜3参照)。
生物を用いる方法、例えば生物の光合成を利用する方法の例としては、生物の持つ高い二酸化炭素固定能を利用して、樹木、植物プランクトンを生育させる方法が挙げられる。
また、アノードを溶液に浸漬させ、外部電圧を印加することで、その溶液から電子をカソードに供給するシステムにより、二酸化炭素を還元固定化できることを見出した。
(1)電解質を間に介して配置されたカソード及びアノードを有する反応部と、前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加する電源部と、を備え、
前記アノードでは酸化反応により電子が生成され、前記カソードでは気相の二酸化炭素が還元反応により固定化され、
前記酸化反応又は前記還元反応に伴う電極間の電荷の偏りを補償するように、前記電解質を通じてカチオン又はアニオンが輸送されることを特徴とする、二酸化炭素の還元固定化システム。
(2)前記アノードでの酸化反応が、動作温度での標準水素電極電位(NHE)に対する酸化還元電位が0Vより大きい物質の酸化反応である、(1)記載の二酸化炭素の還元固定化システム。
(3)前記アノードでの酸化反応が、動作温度での標準水素電極電位(NHE)に対する酸化還元電位が0Vより大きく1.5V以下である物質の酸化反応である、(1)記載の二酸化炭素の還元固定化システム。
(4)前記電解質を介して輸送されるカチオン又はアニオンが、プロトン又は水酸化物イオンである、(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の二酸化炭素の還元固定化システム。
(5)前記アノードにおいて、水、メタノール及びジメチルエーテルのうち少なくとも一種の酸化反応によりプロトン及び電子が生成され、
前記電解質を介して、前記プロトンが前記アノードから前記カソードへ輸送され、
前記カソードにおいて、二酸化炭素と前記プロトンとの反応により二酸化炭素が還元固定化される、(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の二酸化炭素の還元固定化システム。
(6)前記アノードでの酸化反応が水酸化物イオンの酸化反応であり、
前記カソードでの還元反応が二酸化炭素と水を反応させる還元反応であり、
前記電解質を通じて前記アノードと前記カソードの間でプロトン又は水酸化物イオンが授受される、(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の二酸化炭素の還元固定化システム。
(7)前記カソードに対して、濃縮された二酸化炭素を供給する二酸化炭素濃縮装置を備えたことを特徴とする、(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の二酸化炭素の還元固定化システム。
(8)(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の還元固定化システムを用いて二酸化炭素を還元する、二酸化炭素の還元固定化方法。
(9)(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の還元固定化システムを用いて一酸化炭素を製造する、有用炭素資源の製造方法。
(10)二酸化炭素の還元固定化が、二酸化炭素を還元により他の物質に転換させる事である、(1)記載の二酸化炭素の還元固定化システム。
また、二酸化炭素の還元固定化により、有用な炭素資源の材料となる一酸化炭素を生成することができる。
なお、以下の例は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、省略、置換などが可能であり、また量、比率、およびその他の変更も可能である。各実施形態間で、好ましい例等を交換しても良い。
図1は、二酸化炭素の還元固定化システムの一実施の形態を示す概略図である。
本実施形態の二酸化炭素の還元固定化システム1は、反応部1Aと、反応部1Aに接続された外部電源(電源部)17とを備えている。反応部1Aは、電解質13を間に介して互いに対向するカソード11及びアノード12を備えており、カソード11にはカソード反応基質供給部18が接続され、アノード12にはアノード反応基質供給部19が接続されている。
次に、本発明での二酸化炭素の還元固定化の反応機構について説明する。
ここで、本願明細書において、「カソード反応」とは二酸化炭素の還元反応であり、「アノード反応」とは、任意で選択できる酸化反応である。本実施形態では、「アノード反応」が、アノード12における水、水素、又は水酸化物イオンの酸化反応である場合を例にして説明する。
また、「カソード反応系」とは、カソード11、及びカソード11が接する気相を含む系を意味する。「アノード反応系」とは、アノード12、及びアノード12が接する気相、液相又は固相を含む系を意味する。
カソード11では、アノード12から供給される電子を利用し、下記式(1)又は式(2)の反応のうち少なくとも1つを含む、二酸化炭素の還元反応を起こさせる。
CO2 + 2H+ + 2e− → CO + H2O ……(2)
アノード12では、カソード11に電子を供給するために、任意の酸化反応を起こさせる。下記では、任意の酸化反応として、水素、水、水酸化物イオンを用いた反応式を例示する。
2H2O → 4H+ + O2 + 4e− ……(4)
4OH− → 2H2O + O2 + 4e− ……(5)
カチオンを輸送できる固体電解質膜としては、例えばポリパーフルオロスルホン酸膜などのフッ素系高分子電解質膜、スチレングラフト重合膜、ポリアリレンエーテル系膜などの炭化水素系高分子膜や、その他タングストリン酸などの無機系膜、及び、有機修飾ケイ酸塩などの有機―無機系導電材料の膜等が挙げられる。液体の電解質としては、リン酸水溶液等が挙げられる。
アニオンを輸送できる固体電解質膜の例としては、テトラアルキルアンモニウムカチオン基などのカチオン性基を有する炭化水素樹脂、及び芳香族炭化水素樹脂等が挙げられる。
アノード12での酸化反応に供する物質としては、還元固定化システム1の動作温度で、標準水素電極電位(NHE)に対する酸化還元電位が0Vより大きい物質(0V以下では酸化されない物質)を用いることが好ましい。0V以下で酸化される物質は、水に触れたときに腐食されやすく、還元固定化システム1の耐久性を低下させる場合があるからである。
カソード11に印加する電位は、二酸化炭素を還元できる電位であれば、特に限定はない。しかし、二酸化炭素の還元反応と同じ電位域で、二酸化炭素以外の反応基質の還元反応が起こる場合には、カソード11ではこれらの反応が競合する。また、二酸化炭素を反応基質とする還元反応についても、式(1)、式(2)以外の、一酸化炭素ではない生成物を生じる還元反応が起こる場合がある。そのため、二酸化炭素を還元できる電位を印加したとしても、二酸化炭素を還元させるためだけや、有用な炭素資源の生成のみに電子が消費されるとは限らない。
アノード12に印加する電位は、アノード12に供給する反応基質を酸化できる電位であれば特に制限されない。アノード反応基質の種類等に応じて適宜設定すればよい。
アノード反応系が気相の場合の例を説明する。
図2は、第1構成例に係る二酸化炭素の還元固定化システムを示す図である。
図2に示す二酸化炭素の還元固定化システム10は、反応部10Aと、反応部10Aに接続された外部電源(電源部)17とを備えている。
反応部10Aは、カソード11と、アノード12と、電解質13と、カソードガス拡散層14と、アノードガス拡散層15と、絶縁材16と、供給路及び排出路が形成された流路形成部材22、23と、エンドプレート24、25と、を備えている。
カソード11の外面11a上にカソードガス拡散層14が設けられており、アノード12の外面12a上にはアノードガス拡散層15が設けられている。
カソード側の流路形成部材22の内側にカソード11とカソードガス拡散層14とが収容され、アノード側の流路形成部材23の内側にアノード12とアノードガス拡散層15とが収容されている。流路形成部材22と流路形成部材23は、図に示すように、絶縁材16を間に介して突き合わされて配置されている。流路形成部材22、23を挟み込むようにして、2枚のエンドプレート24、25が配設されている。カソード側のエンドプレート24に外部電源17の負極が接続され、アノード側のエンドプレート25には正極が接続されている。
カソード11は、触媒材料により構成される。触媒材料としては、二酸化炭素、又は二酸化炭素の還元によって生じる一酸化炭素への親和性が高い材料を含有することが好ましい。このような触媒材料を用いることにより、カソード11における還元反応を効率的に進行させることができる。このような触媒は必要に応じて選択でき、例えば、白金、金、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、ロジウム、ニッケル、銀、鉄、銅、コバルトからなる群より選ばれる、1種又は2種以上が挙げられる。
導電性を有する材料は特に限定されず、例えば白金、金、銀、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、レニウム、オスミウム、スズ、鉄、クロム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、ジルコニウム、ステンレス、カーボン、スズドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化インジウムからなる群より選択される少なくとも1種、又はこれらの混合物、もしくは金属同士であればこれらの合金を用いることができる。
アノード12は、触媒材料により構成される。触媒材料としては、特に限定されない。しかしながら、アノード反応として選択した反応に対して活性が高い材料を選択すれば、反応効率を高めることができるため好ましい。アノード反応として、本実施形態の説明のように、水素、水、及び水酸化物イオンの酸化を反応として選択した場合を例にとれば、触媒材料としては、白金、金、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、ロジウム、ニッケル、銀、鉄、銅、コバルトからなる群より選ばれる、少なくとも1種が好適に用いられる。上記の触媒材料は単結晶、多結晶のいずれを用いてもよい。
またアノード12に、カチオンを輸送できる固体電解質を含有させてもよい。このような固体電解質を含有させる場合は、電気化学反応の反応点と考えられている電解質と電極との界面(三相界面)を増加させることができるため好ましい。
さらに、アノード12が、触媒材料と、上記導電性材料及び上記固体電解質の少なくとも1種を含む材料とで構成される場合の粒子径、導電性材料の含有量、固体電解質の含有量についても、カソード11と同様の構成を採用することができる。
電解質13は、第1構成例の場合、二酸化炭素の還元を行う温度で、カチオン導電性を有する材料で構成される。
電解質13は、二酸化炭素の還元固定化反応を行う温度領域で、イオン導電性が高い材料が好ましい。また、電解質13は、アノード12において給気及び排気されるガスと、カソード11において給気及び排気されるガスとが混合されないようにするために、ガスバリア性に優れたものが好ましい。さらに、カソード11とアノード12との間に効率的に電圧を印加できるよう、電解質13の材質は電子伝導性が少ないものが好ましい。
カソードガス拡散層14、アノードガス拡散層15は、導電性を有しており、かつ、カソード11及びアノード12のそれぞれに対してガスを供給できるものであれば、特に限定されない。反応効率を高める点で、カソード反応基質供給部18、アノード反応基質供給部19から供給される反応基質を、カソードガス拡散層14、アノードガス拡散層15を通じてカソード11、アノード12に均一に拡散させることができるものが好ましい。このようなものとしては例えば、カーボンペーパーやステンレスメッシュ等を用いることができる。
流路形成部材22、23は、カソード反応基質供給部18、アノード反応基質供給部19を介して供給されるガス(反応基質)を、それぞれカソードガス拡散層14、アノードガス拡散層15に供給する機能とともに、カソード11、アノード12で発生するガス等を排出部20、21を介して外部に排出する機能を有する。
また図2に示す構成では、流路形成部材22、23は集電材料により形成されており、カソードガス拡散層14、アノードガス拡散層15と外部電源17とを電気的に接続する機能を有している。集電材料の例としては、例えばステンレスやカーボンなどが挙げられる。
ただし、流路形成部材22、23の開口端22aと23aを直接密着させて密閉した場合、カソード11又はアノード12で生成されるイオンが、電解質13ではなく、流路形成部材22、23を通じて移動することがある。このようなイオンの移動が生じると、生成したイオンが電極反応に寄与せず、生成ガスの反応効率が悪くなるため好ましくない。
そこで、図2に示すように、流路形成部材22の開口端22aと流路形成部材23の開口端23aとを、絶縁材16を間に介して突き合わせ、密着させるのが好ましい。
なお、絶縁材16が接着剤を含有しない場合には、別途接着剤を用いて、流路形成部材22、23の開口端22a及び23aを接着させればよい。この場合の接着剤としても、系外へのイオンや電子の漏洩を防止するために絶縁性のものを用いることが好ましい。
外部電源17は、二酸化炭素を還元するために必要な電圧を印加させることができる電源装置であれば特に限定されない。外部電源17は電子導電性を向上させる観点より、エンドプレート24、25に接続させるのが好ましい。
カソード反応基質供給部18は、カソード11に対して二酸化炭素を含有するガスを供給する装置である。必要に応じて、カソード11に供給するガスには水蒸気を含ませてもよい。例えば、電解質13を湿潤状態に保持しなければならない場合や、式(1)に示したように水を用いて二酸化炭素を還元する場合などである。電解質13を湿潤状態に保持しなければならない場合とは、電解質13の含水量が、膜のイオン導電率やガス浸透速度、電解質13を固体状態で使用したときの膜強度等に、影響する場合である。
また、水蒸気以外の窒素、ヘリウム、アルゴン等のガスを混合してもよい。これらのガスにより二酸化炭素の濃度を調整することで、カソード11での二酸化炭素の還元固定化の速度に応じて適切なガス流量に調整することができる。
ここで、二酸化炭素を「濃縮する」、とは、カソード11に供給するガスから、二酸化炭素の還元反応を阻害する反応を起こす物質を除去したり、二酸化炭素以外の物質を除去することにより、上記ガス中の二酸化炭素の濃度を増大させることを意味する。
式(1)、(2)の二酸化炭素の還元反応を阻害する反応としては、例えば酸素の還元反応が挙げられる。したがって、カソード11に供給するガスから酸素を除去する操作は、上記の二酸化炭素を濃縮する操作に該当する。
MCFC50は、燃料ガスの酸化を行う燃料極52と、溶融された炭酸塩からなる電解質53と、ガスの還元を行う空気極54と、空気極54のガス供給側に設けられた流路形成部材55と、燃料極52のガス供給側に設けられた流路形成部材56と、負荷装置57とを有する。空気極54、燃料極52、電解質53、流路形成部材55、56には、一般的にMCFCで使用される部材を用いればよく、特定の部材には限定されない。負荷装置57についても特に限定はなく、適宜選択して用いればよい。
1/2O2 + CO2 + 2e− → CO3 2−
H2 + CO3 2− → H2O + CO2 + 2e−
また、窒素等のように、式(1)、(2)の還元反応を阻害しない物質が含有されていてもよい。
カソード11において、式(2)に示した反応を用いる場合には二酸化炭素の還元反応そのものにプロトンが必要であり、式(1)に示した反応を用いる場合には生成した水酸化物イオンの消費が必要である。これに対して、アノード12では、水又は水素が供給され、下記の式(3)、式(4)の酸化反応、及び式(5−1)を経由した式(5−2)の酸化反応によって、電子とプロトンを生成させる。そして、生成させたプロトンをカチオン導電膜を介してカソードへ供給し、式(2)又は式(1)式のカソード反応で生成した水酸化物イオンの中和を行うことにより、水酸化物イオンが消費される。
2H2O → 4H+ + O2 + 4e− ……(4)
H2O → H+ + OH− ……(5−1)
4OH− → 2H2O + O2 + 4e− ……(5−2)
アノード12で反応に関与する水や水素などの供給量は特に制限されない。しかしながら、カソード11へのプロトン供給が滞らないようにアノード12の酸化反応を進行させることができる量以上であることが好ましい。また、アノード反応基質供給部19からガスを供給する場合については、反応に関与する主成分である水や水素などを十分に供給できる範囲で、窒素、ヘリウム、アルゴン等を含有させ、供給ガスの濃度を調節してもよい。窒素、ヘリウム、アルゴン等は、反応により生成される気体等を排出部21に速やかに送出させるために、別途供給させてもよい。
また、反応に寄与することなく排出部20へ排出された二酸化炭素を回収し、再び流路形成部材22に送る機構を設けてもよい。
さらに、カソード11及びアノード12で生成された水を、カソード反応基質供給部18又はアノード反応基質供給部19に送り、反応に再利用する機構を設けてもよい。
二酸化炭素の還元固定化システム10は、0℃以上100℃以下で実施させるのが好ましく、5℃以上かつ80℃以下で実施させるのがより好ましい。
アノード反応系が液相の場合の例を説明する。
図3は、第2構成例に係る二酸化炭素の還元固定化システムを示す図である。
図3において、図1又は図2と共通の構成要素には同一の符号を付すこととし、それらの詳細な説明は省略する。
反応部30Aは、カソード11と、アノード12と、電解質13と、カソードガス拡散層14と、アノードガス拡散層15と、絶縁材16と、流路形成部材22、23と、エンドプレート24、25と、溶液32と、を備えている。
カソード側の流路形成部材22にはカソード反応基質供給部18と排出部20とが接続され、アノード側の流路形成部材23にはアノード反応基質供給部19と排出部21とが接続されている。
溶液32は、アノードの酸化反応の基質となる水、水酸化物イオン、又は水素を含有する液体であればよい。このような溶液としては、水そのもの、水を含有する有機溶媒、水素を溶存させた水、水素を溶存させた有機溶媒等を挙げることができ、アノード反応の種類に応じて適宜選択すればよい。溶液32としては、水、水素、水酸化物イオンの酸化反応を阻害するような物質を含有していないものであることが好ましい。
アノード反応系が液相の場合の別の例を説明する。
図4は、第3構成例に係る二酸化炭素の還元固定化システムを示す図である。
図4において、図1から図3と共通の構成要素には同一の符号を付すこととし、それらの詳細な説明は省略する。
反応部40Aは、カソード11と、アノード12と、電解質13と、カソードガス拡散層14と、アノードガス拡散層15と、絶縁材16と、流路形成部材22、23と、エンドプレート24、25と、アノード集電材33と、溶液34と、を備えている。
カソード側の流路形成部材22にはカソード反応基質供給部18と排出部20とが接続され、アノード側の流路形成部材23にはアノード反応基質供給部19と排出部21とが接続されている。
このような溶液34としては、第2構成例の溶液32に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、六フッ化リン酸リチウム、テトラアルキルアンモニウム過塩素酸塩などの電解質を溶解させた溶液が、例として挙げられる。
二酸化炭素の還元固定化システム30、40は、0℃以上100℃以下で実施させるのが好ましく、5℃以上かつ80℃以下で実施させるのがより好ましい。
さらに、二酸化炭素の還元固定化に必要な装置は、固体高分子形燃料電池やリン酸形燃料電池のセルをそのまま応用できるので、低コストで二酸化炭素を還元固定化することができる。なお、固体高分子形燃料電池等のセルをそのまま応用する場合は、現在最も広く用いられるナフィオン膜を用いた場合、電解質の耐熱温度の制限上100℃程度、リン酸形燃料電池では電極及び電解質の耐久性の観点から200℃が使用の限界であるが、200℃以上に耐えられるセル部材に変更すれば、200℃以上の温度であっても本実施形態のシステムにより二酸化炭素を還元固定化することができる。
また、本実施形態の二酸化炭素の還元固定化を行う際に、アノードに酸化反応させたい有機廃液等を使用することによって、二酸化炭素の還元固定を行いながら、有機廃液等の酸化処理を同時に行うことができる。
本実施例では、二酸化炭素の還元固定化システムの試験装置を作製し、後述する実施例1〜8、比較例1〜4、及び参考例1の各条件で、サイクリックボルタンメトリーの測定を実施した。
後述の実施例1、10、11、比較例1、3、4、6、7、及び参考例1の試験条件では、カソードを作用極、アノードを対極とした。また、アノードが設置された側の電解質膜に取り付けた白金ワイヤーを参照電極として用いた。このアノード側の電解質膜に取り付けられた白金ワイヤーの電極電位は、動的水素電極電位(DHE)と呼ばれ、標準水素電極の電極電位(NHE)と等しいとされる。
下記式(I)において、Rは気体定数、Tは温度、aSO4 2−は硫酸イオンの活量、Fはファラデー定数である。なお、本実施例使用の範囲では、EssはNHEに対して、ほぼ0.65V低い電位であるとみなしてよい。
<還元固定化システムの作製>
白金担持カーボン(田中貴金属社製)0.4gを、5%Nafion分散液(登録商標,和光純薬工業製)1.34g、水2.55g、メタノール2.55g、2−プロパノール2.55gと混合し、ボールミルにかけ、白金担持カーボン−Nafion混合分散液を調製した。
次いで、アノード拡散層及びカソード拡散層として用いる、東レ株式会社製カーボンペーパー(TGP−H−060H)を22mm角の正方形状に2枚切り出した(面積:5cm2)。その切り出したカーボンペーパーの片面上に上記白金担持カーボン分散液を噴霧し、乾燥させ、カソード拡散層上にカソードを、及びアノード拡散層上にアノードをそれぞれ作製した。上記カソード及びアノードそれぞれに含まれる白金担持カーボンの量は0.0127g(単位電極面積あたり1.0mg/cm2)であった。
実施例1では、図5Bに示すようなサーペンタイン流路を内蔵する集電材料を2つ(流路形成部材22、23)用意した。そして、図5Aに示すように、それぞれのサーペンタイン流路が、前記膜電極接合体のカソード拡散層(14)及びアノード拡散層(15)にそれぞれ接するように配置した。具体的には、集電材料により、上記膜電極接合体を、図に示すようにアノード及びカソードが入る形状の開口部を有するテフロン(登録商標)シール(絶縁材16)を間に介して、両側から挟むように取り付けた。また、アノード側及びカソード側の集電材料(流路形成部材22及び23)の外面には、ヒータ(温度制御機構51)をそれぞれ設置した。
作製した還元固定化システムのコンディショニングを次の手順で行った。まず、カソードに純酸素を60℃の水中でバブリングして加湿したガスを50mL/minの流量で供給し、アノードに純水素を60℃の水中でバブリングして加湿したガスを50mL/minの流量で供給した。次いでセル温度をヒーターにより60℃にセットし、アノードとカソード間の電流−電圧測定(KIKUSUI,PLZ−164)を、得られる電流−電圧曲線が一定になるまで行った。次いで、カソード、アノードガスのバブリングに用いる水の温度、セル温度を80℃に上げ、同様に電流−電圧測定を、得られる電流−電圧曲線が一定になるまで行い、コンディショニングを行った。
実施例1と同様にコンディショニングしたセルを用い、次の実験を行った。カソードには純窒素を40℃の水中でバブリングして加湿したガスを50mL/minの流量で供給した。アノードには実験温度で水蒸気含有量を飽和させた水素を25mL/minの流量で供給した。セルの温度はヒータにより40℃に設定した。次いで、サイクリックボルタンメトリーの測定を60サイクル行い、結果が一定となっていることを確認し、その60サイクル目の結果を図6に示した。
実施例1と同様にコンディショニングしたセルを用い、次の実験を行った。カソードに、水蒸気含有量を飽和させた一酸化炭素を5mL/minの流量で5分間供給し、カソードに一酸化炭素を吸着させた。この後、供給するガスを水蒸気含有量を飽和させた窒素に変えて50mL/minの流量で1時間供給し、カソードに吸着していない一酸化炭素を除去した。窒素ガスの供給を行ったまま、測定開始電位を+0.06Vとして、測定開始時の掃引方向は正の電位方向とし、サイクリックボルタンメトリーの測定を行った。図7には、1サイクル目と2サイクル目のボルタモグラムを示した。
実施例1、比較例1において、60回サイクリックボルタンメトリーの測定を行った後にアノードに供給するガスを実験温度での水蒸気含有量を飽和させた窒素ガスにし、更に上記測定方法で述べた方法を使用して、サイクリックボルタンメトリーの測定を行った。結果を図8に示す。
実施例1においての、作用極の電位をDHEに対して+0.10V〜+1.30Vの電位範囲で掃引した以外は、実施例1と同様にしてサイクリックボルタンメトリーの測定を行った。
実施例1においての、作用極の電位をDHEに対して+0.15V〜+1.30Vの電位範囲で掃引した以外は、実施例1と同様にしてサイクリックボルタンメトリーの測定を行った。
作用極の電位をDHEに対して+0.20V〜+1.30Vの電位範囲で掃引した以外は、実施例1と同様にしてサイクリックボルタンメトリーの測定を行った。
作用極の電位をDHEに対して+0.25V〜+1.30Vの電位範囲で掃引した以外は、実施例1と同様にしてサイクリックボルタンメトリーの測定を行った。
作用極の電位をDHEに対して+0.30V〜+1.30Vの電位範囲で掃引した以外は、実施例1と同様にしてサイクリックボルタンメトリーの測定を行った。
作用極の電位をDHEに対して+0.35V〜+1.30Vの電位範囲で掃引した以外は、実施例1と同様にしてサイクリックボルタンメトリーの測定を行った。
実施例1において作用極の電位をDHEに対して+0.375V〜+1.30Vの電位範囲で掃引した以外は同様にしてサイクリックボルタンメトリーの測定を行った。
実施例1において作用極の電位をDHEに対して+0.40Vから+1.30Vの電位範囲で掃引した以外は同様にしてサイクリックボルタンメトリーの測定を行った。
求めた電荷量を折り返し電位Z(正側から負側に掃引した後に、負側から正側に掃引する時の電位値)に対してプロットしたもの(○:白丸)を図9に示す。
一方、一酸化炭素の生成効率は、折り返し電位が+0.2V付近の時に極大値を示した。すなわち、カソードへDHEに対して+0.2V程度の電位を印加すると、カソードにおける一酸化炭素生成反応の選択性が最も高まることを意味している。
<還元固定化システムの作製>
白金ルテニウム担持カーボン(白金とルテニウムの物質量比は1:1)(田中貴金属社製)0.4gを、5%Nafion分散液(登録商標,和光純薬工業製)1.34g、水2.55g、メタノール2.55g、及び2−プロパノール2.55gと混合し、ボールミルにかけ、白金ルテニウム担持カーボン−Nafion混合分散液を調製した。
次いで、アノード拡散層及びカソード拡散層として使用される、東レ株式会社製カーボンペーパー(TGP−H−060H)を22mm角の正方形状に2枚切り出した(面積:5cm2)。その切り出したカーボンペーパーの片面上に上記白金ルテニウム担持カーボン分散液を噴霧し、乾燥させ、カソード拡散層上にカソードを、及びアノード拡散層上にアノードをそれぞれ作製した。上記カソード及びアノードそれぞれに含まれる白金ルテニウム担持カーボンの量は0.0152g(単位電極面積あたり1.0mg/cm2)であった。
得られた白金ルテニウム担持カーボンを含有するカソード及びアノードを用いて、実施例1と同様にして、還元固定化システムを作製した。
実施例1と同様の手順により、白金ルテニウム担持カーボンを用いて作製した本実施例の還元固定化システムのコンディショニングを行った。次いで実施例1と同様に、コンディショニングしたセルを用い、サイクリックボルタンメトリーの結果が一定であることを確認した。
次いで、カソードに40℃の水中でバブンリングして加湿した50mL/minの流量の二酸化炭素を、アノードに実験温度で水蒸気含有量を飽和させた水素を25mL/minの流量で供給した。セルの温度はヒータにより40℃に設定した。10分供給した後に、サイクリックボルタンメトリーの測定を行った。1サイクル目の結果を図11に示した。なお測定条件は上述したとおりである。
実施例9と同様に白金ルテニウム担持カーボンを用いて作製した還元固定化システムのコンディショニングを行った。
次いで、カソードには純窒素を40℃の水中でバブリングして加湿したガスを50mL/minの流量で供給し、アノードには実験温度で水蒸気含有量を飽和させた水素を25mL/minの流量で供給した。セルの温度はヒータにより40℃に設定した。次いで、サイクリックボルタンメトリーの測定を60サイクル行い、結果が一定となっていることを確認し、その60サイクル目の結果を図11に示した。なお測定条件は上述したとおりである。
<還元固定化システムの作製>
金担持カーボンを形成し、金担持カーボン0.4gを、5%Nafion分散液(登録商標,和光純薬工業製)1.34g、水2.55g、メタノール2.55g、2−プロパノール2.55gと混合し、ボールミルにかけ、金担持カーボン−Nafion混合分散液を調製した。
次いで、カソード拡散層として使用される東レ株式会社製カーボンペーパー(TGP−H−060H)を22mm角の正方形状に切り出した(面積:5cm2)。その切り出したカーボンペーパーの片面上に上記金担持カーボン分散液を噴霧し、乾燥させ、カソード拡散層上にカソードを作製した。前記カソードに含まれる金の量は、単位電極面積あたり1.0mg/cm2であったであった。
実施例1と同様の手順により、この還元固定化システムのコンディショニングを行った。
次いで、実施例1と同様の手順により、作用極の電位をDHEに対して+0.06V〜+1.3Vの電位範囲で、サイクリックボルタンメトリーの測定を行い、結果が一定となっていることを確認した。
実施例10と同様にして、金担持カーボンを含有するカソードと白金担持カーボンを含有するアノードを用いて作製した還元固定化システムのコンディショニングを行った。次いで、カソードには純窒素を40℃の水中でバブリングして加湿したガスを50mL/minの流量で供給し、アノードには実験温度で水蒸気含有量を飽和させた水素を25mL/minの流量で供給した。セルの温度はヒータにより40℃に設定した。次いで、サイクリックボルタンメトリーの測定を60サイクル行い、結果が一定となっていることを確認し、その60サイクル目の結果を得た。なお測定条件は上述したとおりである。
<還元固定化システムの作製>
ロジウム担持カーボンを形成し、ロジウム担持カーボン0.4gを、5%Nafion分散液(登録商標,和光純薬工業製)1.34g、水2.55g、メタノール2.55g、及び2−プロパノール2.55gと混合し、ボールミルにかけ、ロジウム担持カーボン−Nafion混合分散液を調製した。
次いで、カソード拡散層として使用される東レ株式会社製カーボンペーパー(TGP−H−060H)を22mm角の正方形状に切り出した(面積:5cm2)。その切り出したカーボンペーパーの片面上に上記ロジウム担持カーボン分散液を噴霧し、乾燥させ、カソード拡散層上にカソードを作製した。カソードに含まれるロジウムの量は、単位電極面積あたり1.0mg/cm2であった。
実施例1と同様の手順により、この還元固定化システムのコンディショニングを行った。
次いで、実施例1と同様の手順により、作用極の電位をDHEに対して+0.1V〜+0.7Vの電位範囲のサイクリックボルタンメトリーの測定を行い、結果が一定となっていることを確認した。
実施例11と同様にして、パラジウム担持カーボンを含有するカソードと白金担持カーボンを含有するアノードを用いて作製した還元固定化システムのコンディショニングを行った。次いで、カソードには純窒素を40℃の水中でバブンリングして加湿したガスを50mL/minの流量で供給し、アノードには実験温度で水蒸気含有量を飽和させた水素を25mL/minの流量で供給した。セルの温度はヒータにより40℃に設定した。次いで、サイクリックボルタンメトリーの測定を60サイクル行い、結果が一定となっていることを確認し、その60サイクル目の結果を得た。なお測定条件は上述したとおりである。
なお、上記同様に、カソードの触媒として、銀、パラジウム、ルテニウムのそれぞれを用いて、サイクリックボルタンメトリーの測定を行った。その結果、還元電流及び酸化電流の増加が確認され、上記同様に二酸化炭素が還元されて一酸化炭素が生成されていることが確認できた。
二酸化炭素の還元により生成されるガスはサイクリックボルタンメトリーでは測定できないため、次の手順により測定を行った。
実施例1、実施例9〜11にて作製したそれぞれの二酸化炭素還元固定化システムに対して、実施例1と同様の手順により、各還元固定化システムのコンディショニングを行った。
次いで、カソードに40℃の水中でバブリングして加湿した50mL/minの流量の二酸化炭素を、アノードに実験温度で水蒸気含有量を飽和させた水素を25mL/minの流量で供給した。セルの温度はヒータにより40℃に設定した。
本発明によれば、ガス態の二酸化炭素を還元固定化できるため、高濃度の二酸化炭素を処理することができる。また、−70℃から200℃程度という低温領域でも二酸化炭素を固定化できるので、固定化に必要なエネルギーを少なく抑えることができる。
さらに、二酸化炭素の還元固定化に必要な装置は、固体高分子形燃料電池やリン酸形燃料電池のセルをそのまま応用できるので、新しい装置を製造する必要なく、低コストで二酸化炭素を還元固定化することができる。 また、二酸化炭素の還元固定化により、有用な炭素資源の材料となる一酸化炭素やメタノール等を生成することができる。
以上のことから、本発明は産業上極めて有用である。
10A 反応部
11 カソード
11a カソードの外面
12 アノード
12a アノードの外面
12b アノードの内面
13 電解質
14 カソードガス拡散層
15 アノードガス拡散層
16 絶縁材
17 外部電源
18 カソード反応基質供給部
19 アノード反応基質供給部
20 カソードの生成物を排出する排出部
21 アノードの生成物を排出する排出部
22、23 流路形成部材
24、25 エンドプレート
30 二酸化炭素の還元固定化システム
30A 反応部
32 溶液
33 アノード集電材
40 二酸化炭素の還元固定化システム
40A 反応部
X 二酸化炭素の還元に使用された電荷量
Y 一酸化炭素の酸化に使用された電荷量
Z 折り返し電位
50 MCFC(溶融炭酸塩形燃料電池)
52 燃料極
53 電解質
54 空気極
55、56 流路形成部材
57 負荷装置
Claims (10)
- 電解質を間に介して配置されたカソード及びアノードを有する反応部と、
前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加する電源部と、を備え、
前記アノードでは酸化反応により電子が生成され、
前記カソードでは気相の二酸化炭素が還元反応により固定化され、
前記酸化反応又は前記還元反応に伴う電極間の電荷の偏りを補償するように、前記電解質を通じてカチオン又はアニオンが輸送されることを特徴とする、二酸化炭素の還元固定化システム。 - 前記アノードでの酸化反応が、動作温度での標準水素電極電位に対する酸化還元電位が0Vより大きい物質の酸化反応である、請求項1記載の二酸化炭素の還元固定化システム。
- 前記アノードでの酸化反応が、動作温度での標準水素電極電位に対する酸化還元電位が0Vより大きく1.5V以下である物質の酸化反応である、請求項1記載の二酸化炭素の還元固定化システム。
- 前記電解質を介して輸送されるカチオン又はアニオンが、プロトン又は水酸化物イオンである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二酸化炭素の還元固定化システム。
- 前記アノードにおいて、水、メタノール及びジメチルエーテルのうち少なくとも一種の酸化反応によりプロトン及び電子が生成され、
前記電解質を介して、前記プロトンが前記アノードから前記カソードへ輸送され、
前記カソードにおいて、二酸化炭素と前記プロトンとの反応により二酸化炭素が還元固定化される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二酸化炭素の還元固定化システム。 - 前記アノードでの酸化反応が水酸化物イオンの酸化反応であり、
前記カソードでの還元反応が二酸化炭素と水を反応させる還元反応であり、
前記電解質を通じて前記アノードと前記カソードの間でプロトン又は水酸化物イオンが授受される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の二酸化炭素の還元固定化システム。 - 前記カソードに対して、濃縮された二酸化炭素を供給する二酸化炭素濃縮装置を備えたことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項記載の二酸化炭素の還元固定化システム。
- 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の還元固定化システムを用いて二酸化炭素を還元する、二酸化炭素の還元固定化方法。
- 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の還元固定化システムを用いて一酸化炭素を製造する、有用炭素資源の製造方法。
- 二酸化炭素の還元固定化が、二酸化炭素を還元により他の物質に転換させる事である、請求項1記載の二酸化炭素の還元固定化システム。
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