JPWO2012023201A1 - 逆止弁及び送液ポンプ - Google Patents

逆止弁及び送液ポンプ Download PDF

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Abstract

互いに対向する位置に液入口と液出口が設けられた弁体の内部に弁室が設けられている。弁室の内部には、ボールが液入口と液出口を結ぶ直線方向に移動可能に配置されている。弁体の液入口部分にはボールシートが嵌設されている。ボールシートは内側に液入口をなす流路を備え、その縁部分でボールを着座させるようになっている。ボールシートは、六方晶の結晶構造をもつ材質からなり、その結晶軸であるC軸が液入口をなす流路の中心軸と同じ方向を向くように結晶軸方向を制御して加工されている。

Description

本発明は、ボールをボールシートに着座させることによって流路を閉じ、ボールをボールシートから浮遊させることによって流路を開放する方式の逆止弁及びその逆止弁を用いた送液ポンプに関するものである。
例えば高速液体クロマトグラフの分析流路に移動相を送液するための送液ポンプとして、ポンプヘッド内に設けられたポンプ室内でプランジャを一直線上で往復動させ、ポンプ室内の容積を増減させることによりポンプ室内への液の吸入とポンプ室からの液の吐出を行なうプランジャ方式のポンプが一般に採用されている。このような送液ポンプは、ポンプ室の吸入口と排出口に繋がる流路上にそれぞれ逆止弁が設けられており、液の吸入時は吸入口側の逆止弁が開いて排出口側の逆止弁が閉じ、逆に液の吐出時は排出口側の逆止弁が開いて吸入口側の逆止弁が閉じるように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
逆止弁は、互いに対向する位置に液入口と液出口をもつ弁体内に弁室を備え、その弁室内にボールが液入口と液出口とを結ぶ直線上に移動可能に配置されている。弁体の液入口部分にボールを着座させるための円筒形状のボールシートが設けられている。ボールシートは例えば円筒形状であり、その内側が液入口をなす流路となっており、ボールがボールシートに着座することによってその流路を封止する構造となっている。このような逆止弁では、ボールの材質として主にルビーが使用され、ボールシートの材質として主にサファイアが使用されることが一般的である。
特開2008−180088号公報
高速液体クロマトグラフなどにおいて送液圧力が例えば50MPaを超えるような高圧の場合、閉じている側の逆止弁のボールがボールシートに強い力で押し付けられるため、ボールシートのボールと接触する部分にはその圧力に耐える強度が必要である。しかし、ボールシートの強度は個体によってばらつきがあり、さらにはボールと接触する円弧状部分の強度も不均一なものが多かった。そのため、ボールが着座したときにボールシートの機械的強度の最も低い部分に応力が集中し、その部分で欠落や亀裂が生じてボールシートが破損してしまうという問題があった。特に送液圧力が例えば50MPaを超えるような高圧の場合に破損してしまうことがあった。
そこで、本発明は、高圧の送液条件下でもボールシートが破損しにくい逆止弁及びそのような逆止弁を備えた送液ポンプを提供することを目的とするものである。
本発明が対象としている逆止弁は、互いに対向する位置に液入口と液出口をもつ弁体と、弁体の内部であって液入口と液出口の間に設けられた弁室と、弁室内において、液入口側が液出口側よりも高圧のときに液出口側へ移動し、液出口側が液入口側よりも高圧のときに液入口側へ移動するボールと、弁体の液入口部分に配置され、ボールよりも小さい径をもって液入口をなす流路を内側にもち、ボールが液入口側へ移動したときに流路の縁部分でボールを着座させて流路を封止するボールシートと、を備えたものである。
通常、ボールシートの形状を加工する場合はサファイアの母材から必要な大きさの加工片を切り出し、必要な形状に加工していく。サファイアは六方晶の結晶構造をもっているが、従来のボールシートの加工ではその六方晶の結晶軸の向きを考慮することなく、単にボールシートの形状に加工しているだけであった。本発明者は、この加工方法がボールシートの強度のばらつきの原因になっていることを見い出し、本発明をするに至った。
すなわち、六方晶の結晶構造は3つの面方位をもち、それぞれC面、A面及びR面と呼ばれる。C面に垂直な軸はC軸であるが、従来のボールシートはこのC軸の向きが個体ごとに異なっていたため、個体によって機械的強度にばらつきが生じ、さらにC軸の向きによってはボールとの接触部分の機械的強度が不均一になっていた。
そこで、本発明の逆止弁では、ボールシートは六方晶の結晶構造をもつ材質からなり、その材質の結晶軸のC軸は流路の中心を通る中心軸と平行な方向を向いているようにした。C軸が中心軸と平行な方向を向くように結晶軸の方向を制御してボールシートを形成することにより、ボールとの接触部分がすべて六方晶のC面上となり、ボールとの接触部分の機械的強度が均一になる。
本発明の送液ポンプは、液を吸入するための吸入口及び液を排出するための排出口を備えたポンプ室と、ポンプ室に挿入され、一直線上を往復動することによりポンプ室内の容積を増減させるプランジャと、プランジャの吸入口に繋がる流路上と排出口に繋がる流路上の少なくとも一方に配置された本発明の逆止弁と、を備えたものである。
本発明の逆止弁では、六方晶の結晶構造をもつ材質のボールシートの結晶軸のC軸がボールシートの内側の流路の中心を通る中心軸と平行な方向を向いているので、ボールとの接触部分をすべて六方晶のC面上に配置することができ、ボールとの接触部分の機械的強度を均一にすることができる。これにより、ボールシートのボールとの接触部分の一部に応力が集中しなくなり、高圧の場合にもボールシートが破損しにくい逆止弁を安定的に供給することができる。
本発明の送液ポンプでは、ポンプ室の吸入口に繋がる流路と排出口に繋がる流路上に設けられている逆止弁として本発明の逆止弁を使用しているので、送液圧力を高圧にしても逆止弁のボールシートの破損が生じにくく、高圧条件下での送液を安定して行なうことができる。
本発明の送液ポンプが用いられる一例は液体クロマトグラフである。液体クロマトグラフは、送液ポンプによって移動相が送液される分析流路上に試料注入部、分析カラム及び検出器が設けられているものである。送液ポンプとして本発明の送液ポンプが用いられると、高圧条件下で移動相を送液しても長寿命となる。
送液ポンプの一実施例を示す断面図である。 同実施例の逆止弁の閉状態を示す断面図である。 同実施例の逆止弁の開状態を示す断面図である。 同実施例の逆止弁のボールシートを示す斜視図である。 六方晶の結晶構造を説明するための概念図である。 C軸方向がボールシートの液入口の中心軸方向を向くように制御されている場合と、C軸方向が制御されていない場合のボールとの接触部分の強度分布を示す図である。 液体クロマトグラフの一例を概略的に示す流路構成図である。
送液ポンプの一実施例について図1を用いて説明する。
この実施例の送液ポンプはポンプボディ2とポンプヘッド8とからなる。ポンプボディ2は、モータ(図示略)によって駆動されるカム(図示略)を備え、プランジャ3の基端側の端面を保持しながらバネ6の弾性力によってカムの周面に追従して往復運動を行なうクロスヘッド4を内部に格納する。ポンプヘッド8はポンプボディ2に取り付けられ、クロスヘッド4に保持されたプランジャ3の先端部分の往復運動によって液体の吸入及び吐出を行なうべくポンプ室8a、液体吸入流路8b及び液体吐出流路8cを備えている。
プランジャ3の先端部はポンプ室8aに挿入され、クロスヘッド4の往復運動に伴なって、ポンプ室8a内の空間を増大させながら液体吸入流路8bからポンプ室8a内に液体を吸入する方向(図では右方向)と、ポンプ室8a内の空間を減少させながらポンプ室8a内の液体を液体吐出流路8cへと押し出す吐出方向(図では左方向)に往復運動を行なう。
ポンプボディ2とポンプヘッド8との間にシールホルダ14が配置されており、ポンプヘッド8とシールホルダ14との間にプランジャシール12が設けられている。プランジャシール12はプランジャ3を摺動可能に保持しながらポンプ室8aのプランジャ3挿入部分を封止してポンプ室8aからの液漏れを防止する。
シールホルダ14は内部に空洞部を有し、その空洞部に洗浄液を供給するための流路と洗浄液を排出するための流路を備えている。ポンプボディ2とシールホルダ14の間には洗浄シール16が挟持されている。洗浄シール16はプランジャ3を摺動可能に保持しながらシールホルダ14内部の空洞部のプランジャ3挿入部分を封止して空洞部からの洗浄液の液漏れを防止する。
液体吸入流路8b及び液体吐出流路8cにはそれぞれポンプ室8a内の圧力変化を利用してこれらの流路8b,8cの開閉を行ない、逆流を防止する逆止弁10a,10bが設けられている。
逆止弁10a,10bの構造の一例を図2Aに示す。逆止弁10aと10bは同じ構造をしている。逆止弁10a,10bは、内部を流路が貫通する円筒形の弁体20の一端に液出口26を有し、他端にはボールシート24が嵌設されている。ボールシート24には液入口24aが開けられている。液出口26と液入口24aは中間の拡径された弁室21を介して連通し、弁体20を貫通する流路を形成している。弁室21にはボール22が円筒の軸方向に移動可能に設けられ、ボール22、ボールシート24及び液出口26は円筒の軸方向に沿い一直線上に配置されている。
ボールシート24の空洞部分により構成された液入口24aの内径はボール22の直径よりも小さく設計されており、ボール22が着座(図2Aを参照。)したときにボール22がボールシート24の空洞部分の縁に接触して液入口24aを封止するようになっている。ボール22の材質は例えばルビーであり、ボールシート24の材質はサファイアである。
弁室21の液出口26はボール22の直径よりも大きい径をもつ壁面に設けられた複数の貫通孔により構成されており、ボール22が浮揚して液出口26側の壁面に接触しても液出口26をボール22が塞ぐことはない(図2Bを参照。)。ボール22は、液入口24a側よりも液出口26側が高圧になったときにボールシート24に着座して液入口24aを封止し、逆に液出口26側よりも液入口24a側が高圧になったときに浮揚して液入口24aを開放する。すなわち、プランジャ3が吐出側(図1において左側)へ駆動されるときはポンプ室8a内が加圧されて高圧になり、逆止弁10aは閉じられ、逆止弁10bは開放される。逆に、プランジャ3が吸入側(図1において右側)へ駆動されるときはポンプ室8a内が減圧され、逆止弁10aは開放され、逆止弁10bは閉じられる。
閉じた状態の逆止弁10a,10bでは、ボール22がボールシート24の液入口24a縁部分に押し付けられている。特に、逆止弁10aのボール22にはポンプ室8a内の送液圧力がかかるため、ボールシート24のボール22との接触部分にはその圧力に耐えることができる機械的強度が必要である。
そこで、図2A、図2Bにおいて矢印で示されているように、ボールシート24は、結晶軸であるC軸がボールシート24の液入口24aの中心軸と同じ方向、すなわち図2A、図2Bにおいて鉛直上側を向くように結晶軸方向を決めて加工したものである。C軸とは、図3に示されているように、六方晶構造のC面、A面及びR面の3つの面方位のうちのC面に垂直な軸である。このようなボールシート24は、例えばキロプロス法によって結晶化されたサファイアのC面インゴットからC面を基準面にして加工したものである。このようにして形成されたボールシート24は、図2Cに示されているように、ボール22が着座したときにボール22と接する液入口24aの縁部分24bを有する面24cが六方晶構造のC面になるので、ボール22との接触部分24bの機械的強度が均一になる。
図4にC軸方向がボールシート24の液入口24aの中心軸の方向を向くように制御されている場合と、C軸方向が制御されていない場合のボール22との接触部分の強度分布の例を示す。横軸は円筒状ボールシートの開口部、すなわちボールのボールが着座する部分を一周にわたって角度で表わしたものである。縦軸は機械的強度である。C軸方向が制御されていない場合(破線)には、ボールシート24のボール22との接触部分の機械的強度が不均一になり、ボール22が押し付けられることにより作用する圧力が大きくなって、その圧力よりも低い機械的強度の部分が存在すると、その機械的強度の低い部分に応力が集中してその部分で欠落やひびが発生しボールシート24の破損の原因となる。これに対し、実線で示された直線のように、C軸方向がボールシート24の液入口24aの中心軸の方向を向くように制御されている場合には、ボールシート24のボール22との接触面が全てC面になり、ボールシート24のボール22との接触部分の機械的強度が均一になる。
C軸の向きを制御して加工したボールシートとC軸の向きを制御せずに(ランダムに)形成したボールシートの強度比較を行なったときの実験データを表1に示す。表1において、C軸制御「あり」とはC軸の向きを中心軸と同じ向きに制御して形成したボールシートを使用した場合、C軸制御「なし」とはC軸の向きを考慮することなく形成したボールシートを使用した場合をそれぞれ示している。この実験では、ボールシートにボールを着座させて両者を押し付け、その圧縮強度を徐々に高めてボールシートが破壊されるに至ったときの圧縮強度を計測した。なお、この計測において用いたボールシートの内径は1.0mm、外形は2.35mmであり、ボールの直径は1.5mmである。
Figure 2012023201
表1からわかるように、C軸制御「なし」では、ボールシートが破壊されるに至ったときの圧縮強度は0.215〜0.344(kN)と低い。これに対し、C軸制御「あり」では、0.775〜1.020(kN)と高い。このことから、C軸制御を行なうことにより、ボールとの接触部の機械的強度が均一なボールシートを安定して形成できることがわかる。
なお、図1の実施例は1つのプランジャポンプにより送液を行なうシングルプランジャ方式の送液ポンプであるが、本発明はダブルプランジャ方式の送液ポンプについても適用することができる。ダブルプランジャ方式の送液ポンプには、2つのプランジャポンプを直列に接続したものと並列に接続したものがある。
2つのプランジャポンプを直列に接続した送液ポンプの場合は、前段側プランジャポンプの排出口と後段側プランジャポンプの吸入部とが直列に接続され、前段側プランジャポンプの排出口と後段側プランジャポンプの吸入部との間及び前段側プランジャポンプの吸入部にそれぞれ逆止弁が設けられている。これらの逆止弁の少なくとも一方、特に高圧がかかりやすい前段側プランジャポンプの吸入口の逆止弁のボールシートはC軸の向きが制御されて形成されたサファイア製のボールシートである。
前段側プランジャポンプのポンプ室容量は後段側プランジャポンプのポンプ室容量よりも大きく、前段側プランジャポンプが液を吐出しているときに後段側プランジャポンプが前段側プランジャポンプにより吐出された液のいくらかを吸引し、逆に前段側プランジャポンプが液を吸引しているときに後段側プランジャポンプが液を吐出するように駆動される。
また、2つのプランジャポンプを並列に接続したダブルプランジャ方式の送液ポンプの場合は、それぞれのポンプ室の吸入口と排出口に逆止弁が設けられており、それぞれのプランジャポンプの少なくとも吸入口の逆止弁のボールシートがC軸の向きが制御されて形成されたサファイア製のボールシートである。
次に、液体クロマトグラフの一例について図5を用いて説明する。
移動相32を送液するための分析流路30上に、上流側から順に、送液ポンプ34、試料注入部36、分析カラム38及び検出器40が配置されている。送液ポンプ34として、図1に示した送液ポンプが用いられている。試料注入部36は分析流路30中に試料を導入するために設けられており、試料注入部36において注入された試料は送液ポンプ34によって送液される移動相32によって分析カラム38に導かれる。分析カラム38は試料を成分ごとに分離するものであり、分析カラム38で分離された各成分は検出器40に導かれて検出される。送液ポンプ34として、ボールシートとしてのボールシートがC軸方向を制御して形成されている逆止弁が用いられた送液ポンプを用いているので、送液圧力が例えば50MPaを超えるような高圧の場合にも、送液する液の逆流を防止する逆止弁の破損が起きにくく、安定した送液を行なうことができる。
2 ポンプボディ
3 プランジャ
4 クロスヘッド
6 バネ
8 ポンプヘッド
10a,10b 逆止弁
12 プランジャシール
14 シールホルダ
16 洗浄シール
20 弁室
22 ボール
24 ボールシート
24a 液入口
26 液出口

Claims (3)

  1. 互いに対向する位置に液入口と液出口をもつ弁体と、前記弁体の内部であって前記液入口と液出口の間に設けられた弁室と、前記弁室内において、前記液入口側が前記液出口側よりも高圧のときに前記液出口側へ移動し、前記液出口側が前記液入口側よりも高圧のときに前記液入口側へ移動するボールと、前記弁体の前記液入口部分に配置され、前記ボールよりも小さい径をもって前記液入口をなす流路を内側にもち、前記ボールが前記液入口側へ移動したときに前記流路の縁部分で前記ボールを着座させて前記流路を封止するボールシートと、を備えた逆止弁において、
    前記ボールシートは六方晶の結晶構造をもつ材質からなり、その材質の結晶軸のC軸は前記流路の中心を通る中心軸と平行な方向を向いている逆止弁。
  2. 前記ボールシートの材質はサファイアである請求項1に記載の逆止弁。
  3. 液を吸入するための吸入口及び液を排出するための排出口を備えたポンプ室と、
    前記ポンプ室に挿入され、一直線上を往復動することにより前記ポンプ室内の容積を増減させるプランジャと、
    前記ポンプ室の吸入口に繋がる流路上と排出口に繋がる流路上の少なくとも一方に配置された請求項1又は2に記載の逆止弁と、を備えた送液ポンプ。
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