JPWO2012002023A1 - 周波数変換器およびそれを用いた受信機 - Google Patents

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Abstract

本発明は,受信機に用いられる周波数変換器に適用される。本発明の周波数変換器は,LO信号を生成して出力するLO信号生成器(11)と,前記受信機で使用される使用帯域内に帯域制限された受信信号を,LO信号との乗算により周波数変換して出力する混合器(10)と,を有し,前記LO信号生成器は,位相分解能が可変であることを特徴とする。

Description

本発明は、周波数変換器およびそれを用いた受信機に関し、特に、局部発振(LO:Local Oscillator)信号の高調波による妨害信号の受信信号への混信を抑圧することができる周波数変換器およびそれを用いた受信機に関する。
近年、汎用のハードウェアを用いることで、ソフトウェアの変更のみで無線通信規格を切り替えることが可能な、ソフトウェア無線の研究開発が盛んに行われている。ソフトウェア無線では、一般的に利用される数10MHzから数GHzにわたる無線周波数(RF:Radio Frequency)に対応する必要がある。
図1Aに、RF信号を受信する受信機の例として、非特許文献1に開示された受信機の構成を示す。この受信機では、受信RF信号は、アンテナを介して、帯域選択フィルタ160、低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)161、RFトラッキングフィルタ162、および周波数変換器163からなるRF回路に入力される。帯域選択フィルタ160では、後段に続く回路が飽和しないよう、受信RF信号から不要な帯域の妨害信号を除去する(ただし、ここでは、所望信号周波数の近傍の周波数に位置する妨害信号を除去することはできない)。帯域選択フィルタ160を通過した受信RF信号は、LNA161において増幅され、RFトラッキングフィルタ162においてさらに妨害信号が抑圧された後、周波数変換器163において、クロック生成器164で生成されたクロックを用いて周波数変換されてから、ベースバンド部においてフィルタリングなどのさらなる信号処理が行われる。
ソフトウェア無線では、コストや回路面積の観点から、特性の異なる部品を実装し、無線通信規格に応じてそれらの部品を切り替えて利用するのは望ましくない。特に、チップ内に集積化するのが困難な帯域選択フィルタの個数削減は、ソフトウェア無線の実現に向けて、大きな技術課題となっている。帯域選択フィルタの個数を削減する方法としては、帯域選択フィルタの通過帯域幅を可変とする方法や、数10MHzから数GHzの信号を全て通過させる方法が考えられる。一方で、LNAの前段に配置される帯域選択フィルタには、高線形性および低雑音特性が要求される。これらの特性に優れたフィルタとして、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタなどの受動フィルタがあるが、受動フィルタの通過帯域幅を調整することは難しい。
したがって、ソフトウェア無線用の受信機においては、広い通過帯域幅を持つSAWフィルタを帯域選択フィルタとして利用する構成が有望な選択肢となる。しかし、この構成の場合、所望信号周波数によっては、最大で所望信号周波数の数10倍の周波数に位置する妨害信号も、LNAや周波数変換器に入力されることになる。周波数変換器は、理想的には、受信RF信号とLO信号とを混合器で乗算し、その差(と和)の周波数の信号を出力する。しかし、実際には、LO信号の高調波成分や、混合器の非線形性により、所望信号以外の妨害信号も、周波数変換してしまう。特に、LO信号のLO周波数が低い場合には、LO信号を正弦波で伝送することが困難であり、むしろ、矩形波で伝送した方が、回路面積や消費電力の観点から利点が大きくなる。ただし、矩形のLO信号には、奇数次高調波成分が多く含まれているため、奇数次高調波による妨害信号の受信RF信号への混信が大きな問題となっている(偶数次については、回路を差動構成にすることにより除去することができる)。
非特許文献1に開示された受信機では、周波数変換器163内の高調波除去混合器と呼ばれる混合器(図1B)と、RFトラッキングフィルタ162と、を用いることで、上述のような問題を解決している。高調波除去混合器では、位相が45度ずつ異なる3相の矩形のLO信号を用いる。例えば、位相が0度のベースバンドI信号は、受信RF信号を、−45度、0度、45度のLO信号とそれぞれ乗算し、それらの乗算結果をそれぞれ1:√2:1の変換利得で重み付けして加算することで得られる。位相が90度のベースバンドQ信号は、受信RF信号を、45度、90度、135度のLO信号とそれぞれ乗算し重み付け加算することで得られる。同様に、ベースバンドI信号およびQ信号の反転信号を得るには、それぞれ、135度・180度・225度のLO信号および225度・270度・315度のLO信号が用いられる。すなわち、ベースバンドI信号およびQ信号を復調するために、45度刻みで計8相のLO信号を用いる。このように、45度刻みのLO信号を重み付け加算することにより、実際には矩形のLO信号を用いながら、擬似的に正弦波を模したLO信号による周波数変換が可能となる(図2)。このときの擬似的な正弦波は、3次および5次高調波成分が0であるため、その周波数に位置する妨害信号の混信をなくすことができる。
その他の受信機の例として、非特許文献2に開示された、RFトラッキングフィルタを用いない受信機の構成を図3に示す。この受信機でも、混合器182では、45度刻みで計8相のLO信号を用いることで、3次および5次の高調波による妨害信号の混信を防いでいる点は、非特許文献1と同様である。非特許文献2に開示された受信機は、非特許文献1に開示された受信機と比較して、RFトラッキングフィルタを用いない代わりに、2種類の帯域選択フィルタ180,184を用い、チャネル選択フィルタ188が所望信号周波数に応じて帯域選択フィルタを切り替えている点が異なる。なお、非特許文献2に開示された受信機では、帯域選択フィルタ180に対応して、LNA181、混合器182、および8相クロック生成器183が設けられ、帯域選択フィルタ184に対応して、LNA185、混合器186、および4相クロック生成器187が設けられている。例えば、帯域選択フィルタ180の帯域が0.4〜2.5GHz、帯域選択フィルタ184の帯域が2.5〜6GHzである場合、所望信号周波数が0.4GHzのときには、帯域選択フィルタ180を用いる。0.4GHzの7倍は、2.8GHzなので、7次の高調波の位置にある妨害信号は、帯域選択フィルタ180によって除去できることになる。
S. Lerstaveesin, et al., "A 48-860 MHz CMOS Low-IF Direct-Conversion DTV Tuner," IEEE J. Solid-State Circuits, vol. 43, no. 9, pp. 2013-2024, Sep. 2008. Z. Ru, et al., "A Software-Defined Radio Receiver Architecture Robust to Out-of-Band Interference," in IEEE ISSCC Dig. Tech. Papers, 2009, pp. 230-231.
しかしながら、非特許文献1に開示された受信機には、いくつかの問題がある。
第1の問題点は、所望信号周波数が低く、LO信号の7次高調波による妨害信号の混信が問題になる場合であっても、これを抑圧することができないということである。そこで、周波数変換器の前段で、中心周波数を所望信号周波数に合わせたRFトラッキングフィルタを用い、7次の周波数に位置する妨害信号を除去していた。しかし、RFトラッキングフィルタとして受動フィルタを用いた場合は、その面積が課題となり、能動フィルタを用いた場合は、その消費電力が課題となっていた。
第2の問題点は、所望信号周波数が比較的高く、その3倍の周波数の位置にある妨害信号が予め前段の帯域選択フィルタで除去されているような状況では、8相のLO信号を用いた高調波除去混合器はむしろ不要であり、多相のLO信号の生成動作やRFトラッキングフィルタの動作によって無駄な電力を消費することになるということである。
また、非特許文献2に開示された受信機には、所望信号周波数が数10MHz程度になる場合は、さらに多くの帯域選択フィルタが必要になってしまうという問題がある。
そこで、本発明の目的は、所望信号周波数に関わらず、LO信号の7次以上も含めた高調波による妨害信号の受信信号への混信を抑圧することのできる周波数変換器を、省面積、低消費電力で実現することにある。
また、本発明の他の目的は、RFトラッキングフィルタを用いることなく、かつ、2個以上の帯域選択フィルタを用いることなく、LO信号の高調波による妨害信号の受信信号への混信を抑圧することのできる受信機を、省面積、低消費電力で実現することにある。
本発明の周波数変換器は、
受信機に用いられる周波数変換器であって、
LO信号を生成して出力するLO信号生成器と、
前記受信機で使用される使用帯域内に帯域制限された受信信号を、LO信号との乗算により周波数変換して出力する混合器と、を有し、
前記LO信号生成器は、位相分解能が可変であることを特徴とする。
本発明の受信機は、
前記周波数変換器と、
前記周波数変換器の前段に設けられ、受信信号を前記使用帯域内に帯域制限する帯域選択フィルタと、を有することを特徴とする。
本発明の周波数変換器は、LO信号生成器と、受信機で使用される使用帯域内に帯域制限された受信信号をLO信号との乗算により周波数変換して出力する混合器と、を有し、LO信号生成器の位相分解能が可変であることを特徴としている。
これにより、LO周波数が低い場合でも、受信機の使用帯域内ではLO信号の高調波成分を零にすることができるため、面積や消費電力の大きなRFトラッキングフィルタを用いることなく、または、複数の帯域選択フィルタを使い分けることなく、LO信号の高調波による妨害信号の受信信号への混信を除去できるという効果が得られる。
また、LO周波数が比較的高く、例えば、その3倍の周波数の位置にある妨害信号が予め除去されている場合には、LO信号の分解能を粗くし、最小限の位相分解能でLO信号を生成することができるため、消費電力を抑えることができるという効果が得られる。
非特許文献1に開示された受信機の構成を示す図である。 非特許文献1に開示された周波数変換器の構成を示す図である。 非特許文献1に開示された周波数変換器の信号波形を示す図である。 非特許文献2に開示された受信機の構成を示す図である。 本発明の第1の実施形態の周波数変換器の構成を示す図である。 本発明の第1の実施形態の周波数変換器の信号波形を示す図である。 本発明の第1の実施形態の混合器の具体的な回路構成の一例を示す図である。 本発明の第1の実施形態のLO信号生成器の具体的な構成の一例を示す図である。 本発明の第1の実施形態の周波数変換器の具体的な構成の一例を示す図である。 本発明の第1の実施形態の可変周波数発振器の具体的な構成の一例を示す図である。 本発明の第1の実施形態のDACおよびLPFの具体的な回路構成の一例を示す図である。 本発明の第2の実施形態の周波数変換器の構成を示す図である。 本発明の第2の実施形態の計数器の具体的な回路構成の一例を示す図である。 本発明の第3の実施形態の周波数変換器の構成を示す図である。 本発明の第3の実施形態のPPFおよび計数器の具体的な回路構成の一例を示す図である。 本発明の第4の実施形態の周波数変換器の構成を示す図である。 本発明の第5の実施形態の周波数変換器の構成を示す図である。 本発明の第5の実施形態の個別混合器の具体的な回路構成の一例を示す図である。 本発明の第5の実施形態の個別混合器の具体的な回路構成の他の例を示す図である。 本発明の第5の実施形態の加算器の具体的な回路構成の一例を示す図である。 本発明の第5の実施形態の個別混合器の具体的な回路構成のさらに他の例を示す図である。 本発明の第5の実施形態の個別混合器の具体的な回路構成の別の例を示す図である。 本発明の第6の実施形態の受信機の構成を示す図である。 本発明の第7の実施形態の受信機の構成を示す図である。 本発明の第8の実施形態の受信機の構成を示す図である。
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下で説明する全ての図面において、同一の構成要素には同一の符号を付加し、適宜説明を省略する。
(1)第1の実施形態
図4に、本発明の第1の実施形態の周波数変換器の構成を示す。本実施形態の周波数変換器は、混合器10と、位相分解能可変LO信号生成器(以下、単に「LO信号生成器」と称す)11と、を有する。
本実施形態の周波数変換器は、一般的な受信機を構成する基本回路である。ここで、混合器10に入力される受信RF信号は、前段に設けられたSAWフィルタなどの帯域選択フィルタ(不図示)によって、受信機で使用される使用帯域内に帯域制限されており、それによって使用帯域外の妨害信号が予め除去されているものとする。
混合器10は、上述のように帯域制限された受信RF信号と、LO信号生成器11が出力する直交LO信号と、の乗算を行うことによって、受信RF信号を直交するベースバンド信号(ベースバンドI信号とベースバンドQ信号)に周波数変換して出力する。
LO信号生成器11は、位相分解能が可変であり、使用帯域内には高調波が存在しないような位相の分解能で、余弦波と正弦波を再現する波形を、直交LO信号として生成し出力する。LO信号生成器11に入力される制御ワードCW(Control Word)は、LO信号生成器11の位相分解能を変えるための制御信号に対応する。
以下の説明では、本発明の周波数変換器を、ダイレクトコンバージョン型受信アーキテクチャの受信機に適用することを想定し、所望信号周波数(受信機の使用帯域内の周波数のうち、所望の情報が含まれている所望信号の周波数。以下、同じ)とLO周波数(LO信号の周波数。以下、同じ)とは等しく、周波数変換後の所望信号は直流を中心とするベースバンド信号であるとする。ただし、本発明の周波数変換器は、所望信号周波数とわずかに異なるLO周波数のLO信号を用いることで、所望信号を十分低い中間周波数信号に周波数変換する低中間周波数型の受信機や、周波数変換を2回行うダブルスーパーヘテロダイン型の受信機など、帯域制限された信号の周波数変換を行う様々なアーキテクチャの受信機にも、まったく同様の方法で適用可能である。
以下、本実施形態の周波数変換器の動作を、具体的な数値例を用いて説明する。
ここでは、数値例として、受信機の使用帯域を40MHzから1000MHzとし、混合器10に入力される受信RF信号は、前段の帯域選択フィルタによって予め使用帯域内に帯域制限されていると仮定する。つまり、LO信号の高調波としては、最大で25次(=1000/40)の高調波まで考慮すればよく、(2N−3)=25となるNは14となる。設計のしやすさを考えると、Nは整数であるのが望ましく、小数になる場合や割り切れない場合は、それよりも大きな整数Nとする。より望ましくは、Nは2のべき乗とすると、回路構成が単純になる。したがって、この数値例では、もっとも高次の高調波を考慮する必要がある場合として、N=16(=2)とする。このとき、LO信号生成器11の位相分解能は、11.25度(=180度/16)となる。
以下、様々な値の所望信号周波数に対する、本実施形態の周波数変換器の動作を説明する。
例えば、所望信号周波数が400MHzの場合、その3倍の周波数は1200MHzである。しかし、1200MHzに位置する妨害信号は、予め除去されているため、たとえLO信号の波形が矩形波であり、3次成分を多く含んでいても、妨害信号が所望信号と重なることはない。このことから、(2N−3)=0とし、N=1.5、N=2(=2)、位相分解能は90度(=180度/2)となる。よって、LO信号波形は、図5(A)に示すように、90度刻みの計4相の波形となる。
また、所望信号周波数が200MHzの場合、その3倍、5倍の周波数である600MHz、1000MHzに位置する妨害信号は除去されていない。したがって、LO信号の3次、5次の高調波による混信は大きな問題となる。そのため、(2N−3)=5とし、N=4、N=4(=2)、位相分解能は45度(=180度/4)となる。よって、LO信号波形は、図5(B)に示すように、45度刻みの計8相の波形となる。
また、所望信号周波数が120MHzの場合、N=8(=2)、位相分解能は22.5度(=180度/8)となる。よって、LO信号波形は、図5(C)に示すように、22.5度刻みの計16相の波形となる。
また、所望信号周波数が40MHzの場合、N=16(=2)、位相分解能は11.25度(=180度/16)となる。よって、LO信号波形は、図5(D)に示すように、11.25度刻みの計32相の波形となる。
上述のように本実施形態の周波数変換器においては、所望信号周波数がいかなる場合においても、LO信号の高調波は常に受信機の使用帯域外となるようになっており、言い換えれば、使用帯域内ではLO信号の高調波成分は零になっている。
そのため、受信機において、7次以上の奇数次の周波数に位置する妨害信号を抑圧するためのRFトラッキングフィルタは不要であり、面積や消費電力を抑えることができる。また、所望信号周波数に応じて、通過帯域幅の異なる帯域選択フィルタを使い分けることも不要である。さらには、LO周波数が比較的高く、その3倍の周波数の位置にある妨害信号が予め除去されているような場合には、LO信号の分解能を粗くし、常に必要最小限の位相分解能でLO信号を生成するので、多相のLO信号を生成する必要がなくなり、LO信号生成器11の消費電力を抑えることができる。
本実施形態における混合器10の具体的な回路例を図6に示す。この混合器10は、ギルバートセルミキサと呼ばれ、一般にRF回路で利用されている。LO信号入力端子には、LO信号生成器11で生成された余弦波または正弦波のLO信号が入力される。LO信号の振幅は、混合器10の線形性が損なわれない範囲で、極力大きく取るのが望ましい。
本実施形態におけるLO信号生成器11の具体的な構成例を図7Aに示す。このLO信号生成器11は、可変周波数発振器40と、可変周波数発振器40の出力信号と制御ワードCWとに応じた位相値を出力する位相計数器46と、位相計数器46から出力された位相値を、その位相値に対応する振幅値に変換し、変換した振幅値をLO信号として混合器10に出力する位相振幅値変換器47と、を有する。位相計数器46は、計数器(Counter)41と、乗算器42と、で構成され、また、位相振幅値変換器47は、ルックアップテーブル(LUT:Look−Up Table)43と、デジタルアナログ変換器(DAC:Digital−to−Analog Convertor)44と、低域通過型フィルタ(LPF:Low−Pass Filter)45と、で構成される。
本実施形態における可変周波数発振器40の具体的な構成例を図8に示す。この可変周波数発振器40は、一般にRF回路で利用される位相同期回路による周波数シンセサイザであり、位相比較器50、フィルタ51、電圧制御発振器52、および分周器53で構成される。発振周波数は、分周器53の分周比を制御することで可変となる。入力信号には、安定して高精度の信号が得られる水晶発振波などが用いられる。本実施形態では、90度刻みの4相のLO信号を得る場合に、可変周波数発振器40をLO周波数の4倍で発振させている。したがって、本実施形態の数値例では、電圧制御発振器52は、最高で4000MHz(4相×1000MHz)の発振周波数となる。一方、最低の発振周波数は、11.25度刻みの32相、40MHzのLO信号が必要な場合で、1280MHz(32相×40MHz)となる。4相の信号を得るために、可変周波数発振器40を4倍の周波数で発振させることによって、可変周波数発振器40の出力信号のデューティ比が50%からずれている場合も、本実施形態では、計数器41が、後述のように、常に可変周波数発振器40の出力信号の立ち上がりのタイミングのみに同期して計数動作を行うため、90度刻みの4相の信号が高精度で得られる、という利点がある。
計数器41は、可変周波数発振器40の出力信号の立ち上がりのタイミングのみに同期して、1ずつカウントアップする計数動作を行い、計数結果を乗算器42に出力する。オーバーフローしたら、再び0からカウントアップする。計数器41のビット数Wは、LO周波数が最も低い場合に、LO信号の何次高調波までが使用帯域内に入るかによって決まり、Wビットで最大(2−3)次高調波までを除去することが可能である。つまり、LO周波数が最低のときの(2−1)次高調波が使用帯域外になるようにWを選ぶ。通常、Wは、5ビットか6ビットあれば十分である。本実施形態の数値例では、W=5ビットで十分であり、これにより29次の高調波まで除去できる。計数器41は、可変周波数発振器40の出力信号1周期(=1/fRef、ここでfRefは可変周波数発振器40の発振周波数)ごとに、0,1,2,3,…,31,0,1,2,…とカウントアップする。
乗算器42は、計数器41の出力と制御ワードCWとを乗算し、乗算結果を位相値としてLUT43に出力する。CWのビット数は、直交復調することを考えると、(W−2)ビットで表される。これは、LO信号の3次高調波が使用帯域外になるときであっても、90度刻みの4相のLO信号が必要であるから、つまり、位相計数器46の出力としては、少なくとも4状態が必要であるからである。上述のNは、(2W−1/CW)に対応する。Nを2のべき乗となるように選ぶことを考慮すると、CWは2W−1よりも小さな2のべき乗の数(1,2,4,8,…)となり、可変周波数発振器40の周波数は、LO周波数の2のべき乗倍(2/CW)となる。CWが2のべき乗である場合は、乗算器42は、単純なビットシフト演算器として実装できる。本実施形態の数値例では、CWは3ビットデジタル値として、1,2,4,8のいずれかとなる。CWは、所望信号周波数に応じて、LO信号の(2/CW−1)次成分が使用帯域外となるように選ぶ。LO周波数が400MHzのときは、CW=8でよい。このとき、乗算器42の出力値は、0,8,16,24,…,248となるが、DAC44に入力される下位5ビットだけに注目すると、計数器41が0から31までカウントアップする間に、0,8,16,24が8回繰り返される。つまり、LO周波数fLOおよび位相分解能ΔΦは、可変周波数発振器40の周波数fRefを用いて、fLO=fRef×8/32=fRef/4、ΔΦ=360×8/32=90度と表される。また、LO周波数が200MHzのときは、CW=4とする。このとき、乗算器42の出力値は、0,4,8,16,…,124となり、下位5ビットだけに注目すると、0,4,8,12,…,28が4回繰り返される。すなわち、fLO=fRef/8、ΔΦ=45度である。また、LO周波数が120MHzのときは、CW=2とし、fLO=fRef/16、ΔΦ=22.5度であり、LO周波数が40MHzのときは、CW=1とし、fLO=fRef/32、ΔΦ=11.25度となる。これらを一般化すると、LO信号の周波数fLOと、位相分解能ΔΦは、次の式(1)で表される。
Figure 2012002023
つまり、CWを2倍にすると、LO周波数は2倍に速くなり、位相分解能は2倍に粗くなる。CW=8,4,2,1のときの位相計数器46の出力を、それぞれ、図5(A),(B),(C),(D)に示した。
なお、本実施形態の位相計数器46は、計数器41のビット数を固定とし、制御ワードCWに応じて乗算器42でビットシフト演算をしているが、CWに応じて、計数器41のビット数自体を変えることによっても、同様の効果が得られる(この場合、乗算器42は不要になる)。例えば、CW=8のときは2ビット計数器、CW=4のときは3ビット計数器、CW=2のときは4ビット計数器、CW=1のときは5ビット計数器とする、という具合である。
ここまで説明したように、可変周波数発振器40の周波数および位相計数器46の位相分解能は、LO周波数に応じて決定される。したがって、本実施形態の周波数変換器を、図7Bに示すように、位相計数器46に対しては制御ワードCWを出力し、可変周波数発振器40に対しては周波数制御信号を出力する周波数位相制御器48を有する構成にすることが可能である。
LUT43は、位相計数器46の出力する位相値を、その位相値に対応するデジタルの振幅値(余弦値または正弦値)に変換してDAC44に出力する。本実施形態の数値例では、W=5ビット、CW=2=8のとき、位相計数器46から位相値として出力される値は、0,8,16,24であり、これは、位相に直すと0,90,180,270度に対応する。したがって、LUT43は、余弦値として、それぞれcos(0o)=1、cos(90o)=0、cos(180o)=−1、cos(270o)=0をデジタル値として出力する。もちろん、これと直交するLO信号が得たければ、位相値に対応する正弦値を出力するようにする。LUT43のビット数Mは、LO信号の高調波をどれくらい抑圧したいかによって決まり、高調波を0.1%以下に抑えたければ10ビットが必要である。
DAC44は、LUT43の出力する振幅値をデジタル値からアナログ値に変換してLPF45に出力する。このDAC44の出力する信号は、階段状のアナログ信号となる。DAC44およびLPF45の具体的な回路例を図9に示す。このDAC44は、入力されたバイナリコードを、温度計コードに変換し、それに応じて、電流源の接続先を、正の出力端子か、負の出力端子かに切り替える構成である。出力信号は、電流信号を、負荷抵抗で電圧に変換することによって得られる。DAC44のビット数は、LUT43のビット数と同じである。本実施形態においては、LO信号は、LO周波数に関わらず、DAC44にてアナログ信号に変換されるまでは、2値の矩形のデジタル信号として伝送される。このようなデジタル信号の伝送は、近年の微細CMOSプロセスを用いることで、省面積、省電力で実現可能である。なお、この他にも、バイナリで重み付けした電流源や抵抗を用いるDACや、抵抗値Rの抵抗と抵抗値2Rの抵抗とをはしご型に接続した、一般的に言われるところのR−2Rはしご型のDACなども、本実施形態の効果を損なうことなく、DAC44として適用することが可能である。
LPF45は、DAC44の出力する階段状のアナログ信号から、高調波を抑圧するための回路である。図9では、出力端子に接続されている容量が、LPF45の役割を果たしている。時定数は、出力端子に接続された抵抗と容量の積で表される。ただし、DAC44の出力信号に含まれる含む高調波の周波数は、使用帯域外であり、この周波数に位置する妨害信号は既に除去されているため、問題にはならない。したがって、必ずしも、LPF45は必要ない。通常、LPF45に用いられる容量は、面積が大きいので、LPF45を用いないことは、チップ面積やコストの面から利点がある。逆に、使用帯域内にLO信号の高調波が存在する場合でも、その高調波の周波数において、十分な減衰特性を有するLPF45を用いることで、その高調波を抑圧することも可能である。その場合、より位相分解能を粗くすることができるので、可変周波数発振器40の発振周波数を低くしたり、位相計数器46のビット数を小さくしたり、LUT43やDAC44のビット数を小さくしたりできる。これは、高速で動作するデジタル回路の数が減らせるので、消費電力の観点から利点がある。
(2)第2の実施形態
図10Aに、本発明の第2の実施形態の周波数変換器の構成を示す。本実施形態の周波数変換器は、第1の実施形態と比較して、位相計数器46において、計数器70を、可変周波数発振器40の出力信号の立ち上がりと立ち下がりの両方のタイミングに同期して計数動作をさせている点が異なる。これにより、計数器70は、可変周波数発振器40の2倍の周波数で動作することになるので、可変周波数発振器40の周波数範囲は、第1の実施形態と比較して半分となり、第1の実施形態の数値例では、640MHzから2000MHzの周波数範囲となる。その結果、可変周波数発振器40および計数器70の駆動回路の消費電流を抑えることができる。
本実施形態における計数器70の具体的な回路例を図10Bに示す。この計数器70は、縦続接続された遅延型フリップフロップ(DFF:D−type Flip−Flop)からなるシフトカウンタと、シフトカウンタの出力信号をバイナリのデジタル信号に変換するデコーダと、で構成される。縦続接続されたDFFの各々のクロック入力端子には、0度と180度のクロックが交互に入力されているため、実効的には入力されるクロックの2倍の周波数で動作する。本シフトカウンタは、入力クロックの半分の周期だけ位相がずれた、デューティ比が50%である、多相のクロックを出力する。デコーダは、これら多相クロックを、これら多相クロックの位相状態に対応するバイナリデジタル信号に変換する。例えば、16個のDFFを並べれば、32相のクロックが得られ、それをデコードすれば5ビットのバイナリ信号が得られる。なお、図中には、反転素子71が図示されているが、可変周波数発振器40が差動出力であれば、この反転素子71は不要である。
(3)第3の実施形態
図11Aに、本発明の第3の実施形態の周波数変換器の構成を示す。本実施形態の周波数変換器は、第1および第2の実施形態と比較して、位相計数器46において、可変周波数発振器40の出力信号を、多相フィルタ(PPF:Poly−Phase Filter)80を用いて90度刻みの4相にし、その4相の信号で計数器81を駆動している点が異なる。これにより、計数器81は、可変周波数発振器40の周波数の4倍で動作するため、可変周波数発振器40の周波数範囲は、第2の実施形態のさらに半分となり、第1の実施形態の数値例では、320MHzから1000GHzの周波数範囲となる。その結果、可変周波数発振器40および計数器81の駆動回路の消費電流を抑えることができる。ただし、PPF80で、高精度に90度刻みの計4相のクロックを得るには、LO周波数に応じてPPF80の時定数を変える必要がある。
本実施形態におけるPPF80および計数器81の具体的な回路例を図11Bに示す。この計数器81は、図10Bと同様、縦続接続されたDFFからなるシフトカウンタと、シフトカウンタの出力信号をバイナリのデジタル信号に変換するデコーダと、で構成される。図10Bのシフトカウンタとの違いは、縦続接続されたDFFの各々のクロック入力端子には、PPF80から0,90,180,270度のクロックが循環的に入力されているため、実効的には入力されるクロックの4倍の周波数で動作する点である。本シフトカウンタは、入力クロックの4分の1の周期分だけ位相がずれた、デューティ比が50%である、多相のクロックを出力する。デコーダは、これら多相クロックを、これら多相クロックの位相状態に対応するバイナリデジタル信号に変換する。必要なDFFの個数は、第2の実施形態と同様である。なお、図中には、反転素子82が図示されているが、可変周波数発振器40が差動出力であれば、この反転素子82は不要である。
(4)第4の実施形態
図12に、本発明の第4の実施形態の周波数変換器の構成を示す。本実施形態の周波数変換器は、第1から第3の実施形態と比較して、位相計数器46として、計数器および乗算器を用いる代わりに、位相計数器46から出力された振幅値と制御ワードCWとを加算する加算器90と、加算器90から出力された加算結果を、可変周波数発振器40の出力信号の信号周期だけ遅延させた上で、位相値としてLUT43に出力する遅延器91と、を用いた点が異なる。本実施形態のLO信号生成器11は、一般的に用いられる直接デジタルシンセサイザ(DDS:Direct Digital Synthesizer)の構成である。加算器90および遅延器91のビット数Wは、第1から第3の実施形態の計数器のビット数と同じであり、5ビットか6ビットあれば十分である。この点が、消費電力の大きな28ビットや32ビットの位相計数器が必要となる、一般のDDSとは大きく異なる点である。なお、本実施形態のように、加算器および遅延器を用いた構成でも、第2または第3の実施形態と同様の方法で、遅延器91を差動で駆動したり、4相で駆動したりすることで、可変周波数発振器40の周波数を、第1の実施形態の半分または4分の1にすることも可能である。
(5)第5の実施形態
図13に、本発明の第5の実施形態の周波数変換器の構成を示す。本実施形態の周波数変換器は、第1から第4の実施形態と比較して、混合器10として、複数の個別混合器100〜107および加算器108を用いる点と、LO信号生成器11として、位相振幅値変換器47を用いる代わりに、一致検出器109を用いる点と、が異なる。ここで、一致検出器109は、それぞれが2値の矩形波である複数の個別LO信号を出力する論理回路である。LO信号の波形が十分な振幅を持った矩形であるため、個別混合器100〜107としては、線形性に優れ、かつ、利得が取りやすく小さな雑音指数が実現しやすいスイッチング混合器を使用することができる。また、DACを用いている第1から第4の実施形態と比較して、LO信号を2値の矩形波として伝送している経路がさらに増えるので、より省面積、より省電力である、という利点がある。
一致検出器109は、位相計数器46から出力された位相値と予め指定された位相値とが一致することを検出した場合、2値の個別LO信号を混合器10に出力する、複数の個別一致検出器(不図示)で構成される。この個別一致検出器は、平易なデジタル回路で構成可能である。
個別混合器100〜107は、複数の個別一致検出器に対応して設けられ、対応する個別一致検出器からの個別LO信号と受信RF信号とを乗算し、その乗算結果を予め指定された変換利得で重み付けする。なお、個別混合器100〜107の各々に予め指定された変換利得は、対応する個別一致検出器からの個別LO信号の位相に対応する余弦値または正弦値に比例した値である。
加算器108は、個別混合器100〜107から出力された、重み付けされた乗算結果を加算して出力する。
以下、本実施形態の周波数変換器の動作を、第1の実施形態の数値例を用いて説明する。すなわち、受信機の使用帯域は40MHzから1000MHzであり、Wは5ビット、CWは3ビットデジタル値である。
個別混合器100〜107の変換利得は、それぞれ、A=cos(0)、A=cos(11.25)、A=cos(22.5)、A=cos(33.75)、A=cos(45)、A=cos(56.25)、A=cos(67.5)、A=cos(78.75)に比例しており、計8種類が必要である。一般には、2W−2個の個別混合器が必要であり、それら各個別混合器の変換利得は、kを0から(2W−2−1)の整数として、A=cos(360×k/2W−2)で表される。
一致検出器109は、個別混合器100に、位相計数器46の出力が0(位相0に対応)のときのみにハイレベルとなり、それ以外の場合はローレベルの2値矩形波を、個別LO信号として供給する。同様に、1または31のとき(位相±11.25に対応)のみハイレベルとなる矩形波を個別混合器101に供給し、2または30のとき(位相±11.25に対応)のみハイレベルとなる矩形波を個別混合器102に供給し、3または29のとき(位相±11.25に対応)のみハイレベルとなる矩形波を個別混合器103に供給し、4または28のとき(位相±11.25に対応)のみハイレベルとなる矩形波を個別混合器104に供給し、5または27のとき(位相±11.25に対応)のみハイレベルとなる矩形波を個別混合器105に供給し、6または26のとき(位相±11.25に対応)のみハイレベルとなる矩形波を個別混合器106に供給し、7または25のとき(位相±11.25に対応)のみハイレベルとなる矩形波を個別混合器107に供給する。個別混合器100〜107の出力を加算器108で加算することにより、矩形の個別LO信号を用いながら、擬似的に余弦波を模したLO信号による周波数変換を実現できる。すなわち、LO信号の高調波成分による妨害信号の混信を抑圧できる。なお、ここでの説明は、ベースバンドI信号を得るための動作説明であり、LO信号の位相を90度ずらして動作させれば、ベースバンドQ信号が、180度ずらして動作させればベースバンドI信号の反転信号が、270度ずらして動作させればベースバンドQ信号の反転信号が、それぞれ得られる。
以下、様々な値の所望信号周波数に対する、本実施形態の周波数変換器の動作を説明する。
まず、所望信号周波数が400MHzの場合を考える。この場合、所望信号周波数の3倍の周波数に位置する妨害信号は、前段の帯域選択フィルタによって予め除去されている。このとき、CW=8であり、位相計数器46の出力は0,8,16,24である。したがって、動作する個別混合器は100のみである。位相計数器46の出力が16の時には、ベースバンドI信号の反転信号が得られることも考慮すると、本実施形態の動作により、擬似的に再現されるLO信号波形は図5(A)に一致する。
次に、所望信号周波数が200MHzの場合を考える。この場合、所望信号周波数の5倍の周波数に位置する妨害信号までが、混合器10に入力される。このとき、CW=4であり、位相計数器46の出力は、0,4,8,…,28である。したがって、動作する個別混合器は、100と104である。やはり、LO信号の位相が180度ずれたときには、ベースバンドI信号の反転信号が得られることも考慮すると、擬似的に再現されるLO信号波形は図5(B)に一致する。
同様に、所望信号周波数が120MHzの場合は、CW=2であり、個別混合器100,102,104,106が動作し、擬似的に再現されるLO信号波形は図5(C)に一致する。また、所望信号周波数が40MHzの場合は、CW=1であり、全ての個別混合器100〜107が動作し、擬似的に再現されるLO信号波形は図5(D)に一致する。
本実施形態における個別混合器100〜107の具体的な回路例を図14Aおよび図14Bに示す。図14Aは、電圧電流変換器110とスイッチングペア111とで構成される個別混合器の例である。この例では、電圧電流変換器110において、RF受信信号(RF電圧信号)に対して電圧電流変換を行い、スイッチングペア111において、RF電流信号をベースバンドの電流信号に変換して出力する。周波数変換利得は、電圧電流変換器110の電圧電流変換利得によって変えられる。図14Bは、スイッチングペア112と電圧電流変換器113とで構成される個別混合器の例である。この例では、スイッチングペア112において、RF受信信号(RF電圧信号)をベースバンドの電圧信号に変換し、電圧電流変換器113において、ベースバンドの電圧信号に対して電圧電流変換を行う。周波数変換利得は、電圧電流変換器113の電圧電流変換利得によって変えられる。すなわち、図14Aは、RF信号に対して電圧電流変換を行うのに対し、図14Bは、ベースバンド信号に対して電圧電流変換を行っており、この点で両者は異なる。
本実施形態における加算器108の具体的な回路例を図14Cに示す。この加算器108は、演算増幅器114と、抵抗素子115,116と、容量素子117,118と、で構成されるトランスインピーダンス増幅器である。演算増幅器114の正の入力端子には、個別混合器100〜107からの電流(電流値をそれぞれI,I,…,Iとする)が流れ込み、その合計の電流が抵抗素子115(抵抗値をRとする)を流れる。その結果、演算増幅器114の上側の出力端子からは、流れ込んだ電流を加算した値に比例する電圧(R×(I+I+...+I))が出力される。一方、演算増幅器114の負の入力端子には、正端子とは逆の電流が流れ込み、その結果、演算増幅器114の下側の出力端子からは、逆の電圧(−R×(I+I+...+I))が出力される。容量素子117,118は、不要な妨害信号を除去するために用いられる。
なお、本実施形態の周波数変換器に入力される受信RF信号がRF電流信号である場合には、個別混合器100〜107を、図15Aまたは図15Bに示す構成にすることも可能である。この場合、個別混合器100〜107を構成するのは、スイッチングペア111または112と、電流信号を電圧信号に変換するための個別負荷抵抗120または122と、電圧信号を再度電流信号に変換するための個別電圧電流変換器121または123と、である。FIR(Finite Impulse Response)フィルタのタップ係数に対応する、個別混合器100〜107の変換利得の可変機能は、図15Aでは個別負荷抵抗120で、図15Bでは個別電圧電流変換器123で、それぞれ実現している。なお、個別負荷抵抗120,122は、図14Cで示したような演算増幅器を用いたトランスインピーダンス増幅器でも構成可能である。逆に、個別混合器100〜107の出力を加算する加算器108(図13)は、通常の負荷抵抗でも構成可能である。
(6)第6の実施形態
図16に、本発明の第6の実施形態の受信機の構成を示す。本実施形態の受信機は、第1から第5の実施形態のいずれかで示した混合器10およびLO信号生成器11と、受信RF信号を受信機の使用帯域内に帯域制限する帯域選択フィルタ130と、LNA131と、混合器10の出力信号から所望信号周波数近傍の周波数に位置する妨害信号を除去するチャネル選択フィルタ132と、で構成される。
本実施形態の受信機は、ただ1つの帯域選択フィルタ130を用い、RFトラッキングフィルタを用いることなく、LO信号の高調波による妨害信号の混信を防ぐことができる。なお、通信に必要とされる信号対雑音比によっては、LNA131は必ずしも必要ない。また、混合器10の後段に、アナログデジタル変換器を設け、チャネル選択フィルタ132の機能をデジタル回路で実現することも可能である。
(7)第7の実施形態
図17に、本発明の第7の実施形態の受信機の構成を示す。本実施形態の受信機は、第6の実施形態と比較して、チャネル選択フィルタ132の出力信号の電力を検出する電力検出器140と、LO信号生成器11に入力する制御ワードCWを制御する制御器141と、を追加した点が異なる。制御器141は、通信開始前に、受信機の使用帯域(帯域選択フィルタ130の通過帯域)内でLO周波数を掃引することで、LO周波数ごとのチャネル選択フィルタ132の出力信号の電力を表す電波強度分布を検知し、検知した電波強度分布に応じて、LO信号生成器11の位相分解能を制御する。
以下、本実施形態の受信機の動作を、第1の実施形態の数値例を用いて説明する。
例えば、LO周波数の3倍、5倍の周波数が、受信機の使用帯域内であったとしても、通信開始前に検知した電波強度分布から、その周波数に位置する妨害信号の電波強度が十分低いことが分かっていれば、CW=8のままでも所望信号を復調できる。つまり、LO信号生成器11に求められる位相分解能は粗くてもよく、その分、可変周波数発振器40の発振周波数などで消費される電流を抑えることができる。CW=4,2の場合も同様であり、LO信号の高調波が使用帯域内に存在する場合でも、妨害信号の周波数と電波強度によっては、CWを大きくし、位相分解能を粗くすることが可能である。制御器141は、LO周波数と使用帯域内の電波強度分布とに基づき、LO信号生成器11に必要な位相分解能を決定し制御する。したがって、制御器141は、図7Bで示した周波数位相制御器48の機能を兼ねる(図17では、可変周波数発振器40を制御するための、周波数制御信号は図示していない)。本実施形態の受信機は、電波強度分布を検知し、使用されていない帯域を使って通信する、コグニティブ無線にも適用可能である。
(8)第8の実施形態
図18に、本発明の第8の実施形態の受信機の構成を示す。本実施形態の受信機は、第7の実施形態と比較して、新たに混合器150、LO信号生成器151、およびチャネル選択フィルタ152を追加した点が異なる。本実施形態の構成では、通信中、LO周波数が固定されたLO信号生成器151とは独立に、LO信号生成器11の周波数を掃引できるので、通信中にも使用帯域内の電波強度分布を検知することが可能である。制御器141から、LO信号生成器151に入力される信号(点線)は、使用帯域内の電波強度分布に応じて、適宜CWが更新されることを意味している(図18では、可変周波数発振器40を制御するための、周波数変換信号は図示していない)。これにより、通信中に時間変化する電波強度分布に応じて、最適な位相分解能を設定することができる。
上記の実施の形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
受信機に用いられる周波数変換器であって、
LO信号を生成して出力するLO信号生成器と、
前記受信機で使用される使用帯域内に帯域制限された受信信号を、LO信号との乗算により周波数変換して出力する混合器と、を有し、
前記LO信号生成器は、位相分解能が可変であることを特徴とする周波数変換器。
(付記2)
前記LO信号生成器の位相分解能は、LO信号のLO周波数に応じて決定されることを特徴とする、付記1に記載の周波数変換器。
(付記3)
LO周波数の(2N−3)次までが前記使用帯域内にある場合、N以上の整数Nに対し、前記LO信号生成器の位相分解能を180/Nとすることを特徴とする、付記2に記載の周波数変換器。
(付記4)
前記Nは2のべき乗であることを特徴とする、付記3に記載の周波数変換器。
(付記5)
前記LO信号生成器は、
可変周波数発振器と、
前記可変周波数発振器の出力信号と、前記LO信号生成器の位相分解能を変えるための制御信号と、に応じた位相値を出力する位相計数器と、
前記位相計数器から出力された位相値を、該位相値に対応する振幅値に変換し、変換した振幅値をLO信号として前記混合器に出力する位相振幅値変換器と、を有することを特徴とする、付記1から4のいずれか1項に記載の周波数変換器。
(付記6)
前記位相計数器は、
前記可変周波数発振器の出力信号に同期して計数動作を行い、該計数結果を出力する計数器と、
前記計数器から出力された計数結果と前記制御信号とを乗算し、該乗算結果を前記位相値として前記位相振幅値変換器に出力する乗算器と、を有することを特徴とする、付記5に記載の周波数変換器。
(付記7)
前記乗算器は、
ビットシフト演算器であることを特徴とする、付記6に記載の周波数変換器。
(付記8)
前記位相計数器は、
前記制御信号に応じてビット数が変わる計数器を有し、
前記計数器は
前記可変周波数発振器の出力信号に同期して計数動作を行い、該計数結果を前記位相値として前記位相振幅値変換器に出力することを特徴とする、付記5に記載の周波数変換器。
(付記9)
前記位相計数器は、
前記位相計数器から出力される位相値と前記制御信号とを加算し、該加算結果を出力する加算器と、
前記加算器から出力された加算結果を、前記可変周波数発振器の出力信号に同期して遅延させた上で前記位相値として前記位相振幅値変換器に出力する遅延器と、を有することを特徴とする、付記5に記載の周波数変換器。
(付記10)
前記位相振幅値変換器は、
前記位相計数器から出力された位相値を、該位相値に対応するデジタルの振幅値に変換して出力するルックアップテーブルと、
前記ルックアップテーブルから出力された振幅値をデジタルからアナログに変換し、変換した振幅値をLO信号として前記混合器に出力するデジタルアナログ変換器と、を有することを特徴とする、付記5から9のいずれか1項に記載の周波数変換器。
(付記11)
前記位相振幅値変換器は、
前記デジタルアナログ変換器の後段に挿入されるフィルタをさらに有することを特徴とする、付記10に記載の周波数変換器。
(付記12)
前記振幅値は、正弦値または余弦値であることを特徴とする、付記5から11のいずれか1項に記載の周波数変換器。
(付記13)
前記LO信号生成器は、
可変周波数発振器と、
前記可変周波数発振器の出力信号と、前記LO信号生成器の位相分解能を変えるための制御信号と、に応じた位相値を出力する位相計数器と、
前記位相計数器から出力される位相値が予め指定された位相値と一致することを検出した場合、2値の個別LO信号を前記混合器に出力する複数の個別一致検出器と、を有し、
前記混合器は、
前記複数の個別一致検出器に対応して設けられ、対応する個別一致検出器からの個別LO信号と受信信号とを乗算し、該乗算結果を予め指定された利得で重み付けして出力する複数の個別混合器と、
前記複数の個別混合器から出力された、重み付けされた乗算結果を加算して出力する加算器と、を有することを特徴とする、付記1から4のいずれか1項に記載の周波数変換器。
(付記14)
前記個別混合器に予め指定された利得は、対応する個別一致検出器からの個別LO信号の位相に対応する余弦値または正弦値に比例した値であることを特徴とする、付記13に記載の周波数変換器。
(付記15)
付記1から14のいずれか1項に記載の周波数変換器と、
前記周波数変換器の前段に設けられ、受信信号を前記使用帯域内に帯域制限する帯域選択フィルタと、を有することを特徴とする受信機。
(付記16)
前記周波数変換器の出力信号から、所望信号周波数近傍の妨害信号を除去するチャネル選択フィルタと、
前記チャネル選択フィルタの出力信号の電力を検出する電力検出器と、
前記LO信号生成器のLO周波数を掃印することによって得られる、LO周波数ごとの前記チャネル選択フィルタの出力信号の電力に応じて、前記LO信号生成器の位相分解能を制御する制御器と、をさらに有することを特徴とする、付記15に記載の受信機。
(付記17)
前記周波数変換器および前記チャネル選択フィルタをそれぞれ2つ以上有することを特徴とする、付記16に記載の受信機。
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
本出願は、2010年6月29日に出願された日本出願特願2010−147496を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。

Claims (10)

  1. 受信機に用いられる周波数変換器であって、
    LO信号を生成して出力するLO信号生成器と、
    前記受信機で使用される使用帯域内に帯域制限された受信信号を、LO信号との乗算により周波数変換して出力する混合器と、を有し、
    前記LO信号生成器は、位相分解能が可変であることを特徴とする周波数変換器。
  2. LO信号のLO周波数の(2N−3)次までが前記使用帯域内にある場合、N以上の整数Nに対し、前記LO信号生成器の位相分解能を180/Nとすることを特徴とする、請求項1に記載の周波数変換器。
  3. 前記Nは2のべき乗であることを特徴とする、請求項2に記載の周波数変換器。
  4. 前記LO信号生成器は、
    可変周波数発振器と、
    前記可変周波数発振器の出力信号と、前記LO信号生成器の位相分解能を変えるための制御信号と、に応じた位相値を出力する位相計数器と、
    前記位相計数器から出力された位相値を、該位相値に対応する振幅値に変換し、変換した振幅値をLO信号として前記混合器に出力する位相振幅値変換器と、を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の周波数変換器。
  5. 前記位相計数器は、
    前記可変周波数発振器の出力信号に同期して計数動作を行い、該計数結果を出力する計数器と、
    前記計数器から出力された計数結果と前記制御信号とを乗算し、該乗算結果を前記位相値として前記位相振幅値変換器に出力する乗算器と、を有することを特徴とする、請求項4に記載の周波数変換器。
  6. 前記位相計数器は、
    前記制御信号に応じてビット数が変わる計数器を有し、
    前記計数器は
    前記可変周波数発振器の出力信号に同期して計数動作を行い、該計数結果を前記位相値として前記位相振幅値変換器に出力することを特徴とする、請求項4に記載の周波数変換器。
  7. 前記位相計数器は、
    前記位相計数器から出力される位相値と前記制御信号とを加算し、該加算結果を出力する加算器と、
    前記加算器から出力された加算結果を、前記可変周波数発振器の出力信号に同期して遅延させた上で前記位相値として前記位相振幅値変換器に出力する遅延器と、を有することを特徴とする、請求項4に記載の周波数変換器。
  8. 前記位相振幅値変換器は、
    前記位相計数器から出力された位相値を、該位相値に対応するデジタルの振幅値に変換して出力するルックアップテーブルと、
    前記ルックアップテーブルから出力された振幅値をデジタルからアナログに変換し、変換した振幅値をLO信号として前記混合器に出力するデジタルアナログ変換器と、を有することを特徴とする、請求項4から7のいずれか1項に記載の周波数変換器。
  9. 前記LO信号生成器は、
    可変周波数発振器と、
    前記可変周波数発振器の出力信号と、前記LO信号生成器の位相分解能を変えるための制御信号と、に応じた位相値を出力する位相計数器と、
    前記位相計数器から出力される位相値が予め指定された位相値と一致することを検出した場合、2値の個別LO信号を前記混合器に出力する複数の個別一致検出器と、を有し、
    前記混合器は、
    前記複数の個別一致検出器に対応して設けられ、対応する個別一致検出器からの個別LO信号と受信信号とを乗算し、該乗算結果を予め指定された利得で重み付けして出力する複数の個別混合器と、
    前記複数の個別混合器から出力された、重み付けされた乗算結果を加算して出力する加算器と、を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の周波数変換器。
  10. 請求項1から9のいずれか1項に記載の周波数変換器と、
    前記周波数変換器の前段に設けられ、受信信号を前記使用帯域内に帯域制限する帯域選択フィルタと、を有することを特徴とする受信機。
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