実施の形態1.
本発明による擬似音制御装置を備えた電動移動体の構成を示す概念図を図1に、本発明の実施の形態1による擬似音制御装置の要部のブロック図を図2に示す。図1および図2において、1は電気自動車やハイブリッド自動車など、駆動力の一部あるいは全部を電動モーターなどにより電気的に発生させる電動移動体、2はこの電動移動体1に備えられた擬似音発生装置である。擬似音発生装置2は、擬似音制御装置3と、スピーカなど擬似音を電動移動体1外部に放射するための発音体4で構成される。擬似音制御装置3は、擬似音の信号を発音体4に出力する擬似音発生部5と、電動移動体の速度領域を判定する速度領域判定部6で構成される。7は電動移動体1に備えられている、運転者が電動移動体を起動するためのキースイッチで、スイッチのオンとオフの信号を出力する。なお、従来のキースイッチのように「ロック」、「ACC」、「オン」、「スタート」等の操作が必要な場合は、ここでのキースイッチ7は「オン」の状態に相当する。即ち、ここで電動移動体のキースイッチがオンの状態というのは、電動移動体のパワーユニット系や電気系統の作動準備が完了した状態であって、例示するならば、電動機に通電することが可能な状態にあることをいう。以下、実施例において、電動移動体のキースイッチがオンの状態というのは、電動移動体のパワーユニット系や電気系統の作動準備が完了した状態であることを意味する。8は電動移動体1に備えられている車速信号である。速度領域判定部6はこれら電動移動体1に備えられているキースイッチ7の信号と車速信号8を入力して電動移動体1の車速領域を判定する。
次に動作を説明する。電気自動車などの電動移動体では、運転者がキースイッチをオンにした状態ではパワーユニット系や電気系統の作動準備が完了するが、モーターなどの駆動回転装置はまだ回転しない。運転者がアクセルなどで電動移動体を走行させる意思を電動移動体に伝えて初めて駆動回転装置が回転し、電動移動体が走行し始める。しかし、本発明においては、電動移動体1が走行状態ではなくても、運転者がキースイッチ7をオン状態にしたとき、すなわち、従来の自動車などにおけるアイドリングに相当する状態のときに、車速領域判定部6は擬似音発生部5に、電動移動体1がアイドリング状態であることを出力する。擬似音発生部5はそのアイドリング状態であることが入力されたら、擬似音の信号を発生し、発音体4において擬似音を発生させる。擬似音とは、電動移動体の状態がエンジンだけから動力を得る車両と同様の状態であることを、歩行者などに知らせるために、電動移動体が発生させる音のことである。音色は、エンジンだけから動力を得る車両が発生させる音と似ている方が望ましいが、そうでなくてもよい。
このように、本発明の実施の形態1による擬似音制御装置3は、電動移動体1が停車しており、運転者が電動移動体1を走行させる準備に入った、すなわち従来の自動車などにおけるアイドリングに相当する状態のときに擬似音を発生させることを特徴としている。従来の電動移動体では、電動移動体が移動しているときに擬似音を発生させることとしていたため、歩行者など電動移動体の周辺の者は電動移動体が動き始めたときに、いきなり電動移動体の存在に気付くため危険回避行動が遅れることにより接触事故発生の危険性があった。これに対し、本発明の実施の形態1の擬似音制御装置3によれば、電動移動体1が停車している状態で、且つ、走行の準備に入った段階から擬似音を発生するようにしたため、歩行者など電動移動体1の周辺の者は電動移動体1が動き始める前に電動移動体1の存在に気付き、電動移動体1が動き始める前に回避行動をとることができ、より安全な電動移動体を提供することができる。
実施の形態2.
図3に本発明の実施の形態2による擬似音制御装置の要部のブロック図を示す。図3において、図2と同一符号は、同一または相当する部分を示す。本実施の形態2による擬似音制御装置の擬似音発生部5は、擬似音源51と、擬似音源51で発生した音の音圧を変化させる音圧調整処理部53を備える。
また、擬似音発生部5の音圧調整処理部53は、車外に取り付けられたマイクロフォン、カメラ、センサ、または制動ブレーキ(フットブレーキ)信号、パーキングブレーキ信号・ギア位置信号、アクセル開度信号等を含む車両機器など外部情報収集装置9からの信号を入力する。外部情報収集装置9は車外環境の騒音情報や、歩行者・自転車・バイク等を含む障害物の有無、距離、存在時間等の情報や、フットブレーキ・パーキングブレーキ・ギア・アクセル等を含む車両機器の状態を取得し、その情報を音圧調整処理部53に出力する。
次に、動作を説明する。擬似音源51が、車両の走行を想起させる音を発生する音源である。キースイッチ7が電動移動体の起動スイッチを表し、スイッチのオンとオフの信号を速度領域判定部6に出力する。車速信号8が車速信号を取得し、速度領域判定部6と音圧調整処理部53に車速信号を出力する。このとき、車速信号の変化量から、加速度を出力しても良い。
速度領域判定部6がキースイッチ7と車速信号8から得られた情報に基づき、停車中の車速0の状態から所定速度に達するまでの速度領域を少なくとも2つ以上に区別し、現在の電動移動体の状態はどの速度領域であるかを判定する。図4は停車中の状態を2つ、および走行領域に区別したときの、速度領域の状態遷移の例である。速度領域判定部6が、電動移動体の速度領域を、停車中の状態としてa:キーオン領域(5B)、b:キーオン停車領域(5C)の2つと、走行領域に分割し、電動移動体の速度領域が現在どの領域であるかを判定する。なお、ここで、a:キーオン領域(5B)とはキーオン直後から停車状態で所定時間(n秒)経過するまでの範囲である。また、a:キーオン領域(5B)で所定時間(n秒)経過の前に電動移動体が走行を開始した場合のa:キーオン領域(5B)とは、キーオン直後から走行開始までの範囲である。また、b:キーオン停車領域とはキーオン領域を経過した直後から電動移動体が走行を開始するまでの範囲である。
本実施の形態2は、上記の速度領域のうち、電動移動体が停車している状態、すなわち、a:キーオン領域、およびb:キーオン停車領域における擬似音発生に関する実施の形態である。a:キーオン領域(5B)は、キースイッチ7がオンされた直後の速度領域である。エンジンで駆動する車両は駐車中でも、キースイッチがオンされるとアイドル音が発生し、この車両に接近する歩行者は自主的に危険を回避するため、アイドル停車中の車両を避けて通る習性がある。しかしモータで駆動する電動移動体は停車中にアイドル音が発生しないため無音である。そのため、電動移動体に接近する歩行者が自主的な回避行動を行えず、走行開始時の接触危険度合いが高くなり非常に危険である。またアイドル音が聞こえないことにより、運転手も電動移動体においてキースイッチ7がオンされたのかが直感的に分かり難い。このことから、a:キーオン領域(5B)では、擬似的に周囲が電動移動体の動作を認知できるアイドル音を発生させる。以上は、実施の形態1で説明した動作と同じである。
アイドル状態が長く続いた場合は、所定時間経過後に音圧レベルを下げる速度領域(b:キーオン停車領域(5C))を設けることにより、報知対象の歩行者に危険を与えず、且つ、その他の周辺歩行者や周辺居住者等に対する騒音公害的な迷惑も排除できる。アイドル時の騒音公害的な迷惑を排除するため、擬似アイドル音は走行開始時の擬似音よりも音圧を低くすることが好ましい。
次に、図3に示した音圧調整処理部53の動作について説明する。図5に音圧調整処理部53の詳細を示す。音圧調整処理部53は車速−音圧テーブル53Aと時間−音圧テーブル53Bと外部情報−音圧テーブル53Cと音圧レベル調整部53Dからなる。音圧調整処理部53は、車速信号8と外部情報収集装置9、及び、速度領域判定部6から得られた情報に基づき、擬似音を速度領域判定部6で判別された速度領域ごとで異なる音圧に調整する。
車速−音圧テーブル53Aは、車速の変化に応じた基準となる音圧Pb[dB]のテーブルを保持している。本実施の形態2における車速−音圧テーブル53Aは、a:キーオン領域やb:キーオン停車領域では入力された擬似音の音圧を一定値で変化させないテーブルとなっている。この一定値をここでは基準音圧と呼ぶことにする。
時間−音圧テーブル53Bは図6に示す表のように、a:キーオン領域やb:キーオン停車領域ごとに時間の変化に応じた音圧変化量Pt[dB]のテーブルを保持している。ここで、音圧変化量とは、基準音圧に対して音圧を変化させる量のことであり、音圧変化量が正の値は基準音圧に対して音圧を増加させる、負の値は基準音圧に対して音圧を減少させることを意味する。時間−音圧テーブル53Bのa:キーオン領域とb:キーオン停車領域の特性例を図7から図9に示す。a:キーオン領域では、キースイッチ7がオンされると、アイドル音が発生する。このアイドル音により、周辺の歩行者、及び、運転手にキースイッチ7がオンされたこと、即ち電動移動体のパワーユニット系や電気系統の作動準備が完了した状態になったことを認識させる必要がある。そのため、図7の特性例のように、擬似音の音圧をa:キーオン領域での基準音圧(0で示している)よりも、少し大きくするのが好ましい。また、突然擬似音が発生することにより、電動移動体周辺の歩行者等が驚く可能性があるため、図8のように徐々に擬似音の音圧を大きくしても良い。もしくは、図9のように初めに音圧の小さい擬似音を発生させ、その後、音圧の大きい擬似音を発生させる特性でも良い。b:キーオン停車領域では、停車時の擬似音の騒音公害を避けるために、音圧を小さくさせる特性を持たせるのが好ましい。
外部情報−音圧テーブル53Cは、外部情報収集装置9によって得られた車外環境の騒音情報や、歩行者・自転車・バイク等を含む障害物の有無、距離、存在時間等の情報ごとに対応した音圧の変化量を保持している。例えば、外部情報−音圧テーブル53Cは図10に示す表のように、障害物存在時間に対する音圧変化量Pext1、障害物までの距離に対する音圧変化量Pext2、周辺騒音レベルに対する音圧変化量Pext3の値を保持しても良い。これらの音圧変化量を用いることにより、歩行者の電動移動体周辺の存在時間が長かったり、歩行者と電動移動体との距離が短かったりした場合に、歩行者が電動移動体の存在に、より気付きやすくなる。逆に、歩行者が気付いていると判断される場合は迷惑とならないように音圧を小さくしても良い。例えば歩行者と目があったような場合には、自車両の存在に気付いているのは明らかなので、例えば手動スイッチにて音圧を下げたり、耳障りでない周波数に変更しても良い。また自動的な歩行者の検知を行うには、外部情報収集装置9に人物検知機能を持たせればよい。この機能は、例えば、カメラ、レーダーあるいは超音波センサなど公知の技術で実現可能である。自動的な歩行者の検知を行う場合には、運転者が気付いていなかった歩行者を検出することが出来るという利点も有る。
また、外部情報−音圧テーブル53Cは、外部情報収集装置9によって得られた制動ブレーキ(フットブレーキ)、パーキングブレーキ、ギアもしくはアクセルの状態を示す情報に対応した音圧変化量を保持しても良い。例えば、速度領域がa:キーオン領域、及び、b:キーオン停車領域の場合、外部情報−音圧テーブル53Cは図11に示す表のように、パーキングブレーキの状態に対する音圧変化量Pext4、フットブレーキの状態に対する音圧変化量Pext5、ギアの状態に対する音圧変化量Pext6、及び、アクセル開度に応じた音圧変化量Pext7の値を保持しても良い。ここで、a:キーオン領域、及び、b:キーオン停車領域において、アクセル操作に応じて音圧変化量Pext7を増加させることで、周辺歩行者へ電動移動体が急発進したことを報知でき、更には坂道発進時のように傾斜路面からの発進時のアクセル踏み込み量をドライバーが感覚的に把握できることから、パーキングブレーキの解除タイミングが掴み易くなるという相乗効果がある。なお、このとき、アクセル操作が緩やかな場合はアクセル操作速度に比例してPext7まで音圧を上昇させても良いし、アクセルが急激に操作された場合を想定してアクセル操作の加速度に比例してPext7まで音圧を上昇させるようにしても良い。更に、外部情報−音圧テーブル53Cが保持する値は、これ以外の外部情報に対する音圧変化量でも良い。また、速度領域ごとに音圧変化量を保持しても良い。Pextで示す各パラメータは相関をつけても良いし、独立したパラメータとして扱っても良い。即ち、各パラエータに関連付ける例としては、車速に応じて音圧を大きくしてゆく場合は、他のパラメータと音圧の関係に1以上の計数を乗じて音圧を大きくする割合を大きくするようにしてもよい。逆に車速に応じて音圧を小さくする場合は、他のパラメータと音圧の関係に1未満の計数を乗じて音圧を大きくする割合を大きくするようにしてもよい。なお、図10と図11の数値は一例であって、これに限定されるものではない。
また、これにより、図7、8の破線のように、パーキングブレーキがオフの状態となったことで走行開始モードに近付いたことを検知し、音圧を上げて注意を促すために、パーキングブレーキをOFFにした時点で音圧を大きくするなどの調整も可能となる。電動移動体が走行開始モードに近づいたことを検知した場合に、発音体3が発する音圧レベルを調整することのほか、所定期間の無音状態を作り出すなど音を調整することにより、電動移動体が走行開始モードに近づいたことを周囲に知らしめて注意喚起するようにしても良い。例えば、キースイッチがオンの状態であり、かつ速度領域判定部が、電動移動体が停車していると判断したときに音を放射するものにおいて、車両が走行開始モードに近づいたことを検知して、所定期間だけ無音状態を作り出し、その後、再度音を放射するようにすれば、周囲に対して車両が走行開始モードに近づいたことを明瞭にアピールすることが出来る。もちろん、このときの音の調整は、無音状態を作り出すことに限らず、音の大きさの調整、あるいは共鳴現象を用いて音を出すなど、色々な手法を採り得る。
なお、走行開始モードに近づいたことは、外部情報収集装置9によって得られた制動ブレーキ(フットブレーキ)、パーキングブレーキ、ギアもしくはアクセルの状態を示す情報により検知することができる。例えば、上記したパーキングブレーキの状態による検知のみならず、ブレーキ(フットブレーキとパーキングブレーキの両方、もしくはいずれか一方)がオンの状態からオフの状態に変化したときをもって検知できる。あるいはキースイッチが、アクセサリ位置からイグニッションオン(モータ駆動可能)位置に切り換えられたこと、ギアの位置が変更されたこと、もしくは、モータ駆動可能状態において、アクセルが踏まれたことに基づいて走行開始モードに近づいたことを検知しても良い。
例えば、ギアの位置が変更されたことに基づいて走行開始モードに近づいたことを検知する例としては、次のような事象により検知することが考えられる。オートマティックトランスミッションの電動移動体においては、パーキングギアであったものがパーキングギアから外れた事象をもって検知することができる。またマニュアルトランスミッションの電動移動体においては、ニュートラルギアであったものがニュートラルギアから外れた事象をもって検知することができる。即ち、電動移動体の動力を伝えないギアであったものが、そこから外れた事象をもって、走行開始モードに近づいたことを検知すればよい。
さらに、オートマティックトランスミッションの電動移動体においては、パーキングギアであったものがドライブあるいはリバースなどの他のギアに変化した事象に基づいて検知することができる。また、マニュアルトランスミッションの電動移動体においては、ニュートラルギアであったものが1速あるいはリバースなどの他のギアに変化した事象に基づいて検知することができる。即ち、電動移動体の動力を伝えないギアであったものが動力を伝えるギアに変化した事象に基づいて走行開始モードに近づいたことを検知すればよい。
また、アクセルが踏まれたことに基づいて走行開始モードに近づいたことを検知することの例としては、アクセルの開き具合、例えばアイドリング位置からアクセルが開かれたことで検知することができる。同様にモータの駆動電流の電流値や変化率が所定値以上か否かによって検知することができる。
音圧レベル調整部53Dは、車速−音圧テーブル53Aから出力された基準音圧Pb[dB]に、時間−音圧テーブル53Bから出力された音圧変化量Pt[dB]と外部情報−音圧テーブル53Cから出力された音圧変化量Pext[dB]を加え、それを出力する擬似音の音圧P[dB]とする。音圧レベル調整部53Dは音圧P[dB]になるように、入力音源のレベル調整を行う。以上の方法を用いて、擬似音の音圧を、停車の状況や外部情報に対応させて調整することができる。ここで走行開始モードに近付いたことを検出して無音状態を作り出すには、音圧P[dB]が0以下になるように音圧変化量Pext[dB]を調整すればよい。
実施の形態3.
図12に本発明の実施の形態3による擬似音制御装置の要部のブロック図を示す。図12において、図3と同一符号は、同一または相当する部分を示す。本実施の形態3による擬似音制御装置の擬似音発生部5は、擬似音源51と、擬似音源51で発生した音質を変化させる音質調整処理部52を備える。
また、擬似音発生部5の音質調整処理部52は、車外に取り付けられたマイクロフォン、カメラ、センサ、または制動ブレーキ(フットブレーキ)信号、パーキングブレーキ信号・ギア位置信号、アクセル開度信号等を含む車両機器など外部情報収集装置9からの信号を入力する。外部情報収集装置9は車外環境の騒音情報や、歩行者・自転車・バイク等を含む障害物の有無、距離、存在時間等の情報や、フットブレーキ・パーキングブレーキ・ギアやアクセル等を含む車両機器の状態を取得し、その情報を音質調整処理部52に出力する。
本実施の形態3は、実施の形態1や実施の形態2と同様、図4の速度領域の、電動移動体が停車している状態、すなわち、a:キーオン領域、およびb:キーオン停車領域における擬似音発生に関する実施の形態である。
図13に音質調整処理部52の詳細構成を示す。音質調整処理部52は車速−音質テーブル52Aと外部情報−音質テーブル52Bと音質調整部52Cからなる。車速−音質テーブル52Aは車速の変化に応じた周波数変化量Fv[Hz]のテーブルを保持している。a:キーオン領域やb:キーオン停車領域では入力された擬似音の音質を変化させない。電動移動体の走行が開始されると車速の上昇に応じて高周波側に変化させる。車速−音質テーブル52Aは、車速信号8から得られた車速情報を用いて、車速の上昇に伴った周波数変化量Fv[Hz]を音質調整部52Cに出力する。また、この車速を加速度に変更し、周波数変化量Fv[Hz]を音質調整部52Cに出力しても良い。
外部情報−音質テーブル52Bは、外部情報収集装置9によって得られた車外環境の騒音情報や、歩行者・自転車・バイク等を含む障害物の有無、距離、存在時間等の情報ごとに対応した周波数の変化量を保持している。例えば、外部情報−音質テーブル52Bは図14に示す表のように障害物存在時間に対する周波数変化量Fext1、周辺騒音レベルに対する周波数変化量Fext2、周辺騒音の周波数帯域に対する周波数変化量Fext3の値を保持しても良い。また、外部情報−音質テーブル52Bは、外部情報収集装置9によって得られた制動ブレーキ(フットブレーキ)、パーキングブレーキ・ギアやアクセルの状態の情報に対応した周波数変化量を保持しても良い。例えば、速度領域がa:キーオン領域、及び、b:キーオン停車領域の場合、外部情報−音質テーブル52Bは図15に示す表のように、パーキングブレーキの状態に対する周波数変化量Fext4、フットブレーキの状態に対する周波数変化量Fext5、ギアの状態に対する周波数変化量Fext6の値を保持しても良い。Fextで示す各パラメータは相関をつけても良いし、独立したパラメータとして扱っても良い。なお、図14と図15の数値は一例であって、これに限定されるものではない。
以上のように、外部情報収集装置9によって得られた制動ブレーキ(フットブレーキ)、パーキングブレーキ、ギアもしくはアクセルの状態を示す情報により、周波数を変化させることができる。特にこれらの情報により電動移動体が走行開始モードに近付いたことを検知し、周波数を変化させて音質を変えることにより、歩行者などに、停車中の電動移動体が走行開始モードに近付いたことを報知でき、注意を促すことができる。
外部情報−音質テーブル52Bは各外部情報の周波数変化量の合計Fext(=Fext1+Fext2+Fext3+…) [Hz]を音質調整部52Cに出力する。外部情報−音質テーブル52Bが保持する値は、これ以外の外部情報に対する周波数変化量でも良い。また、速度領域ごとに周波数変化量を保持しても良い。
音質調整部52Cは、車速−音質テーブル52Aから出力された周波数変化量Fv[Hz]と外部情報−音質テーブル52Bから出力された周波数変化量Fext[Hz]の合計から、入力された擬似音の周波数変化量F[Hz]を求める。音質調整部52Cは、音質調整処理部52に入力された音源の周波数を周波数変化量F[Hz]分だけ変化させる。周波数を変化させる方法にはSRC(サンプリングレートコンバータ)を用いても良いし、FFT処理やピッチ変換を用いても良い。以上の方法を用いて、擬似音の音質を、車速・加速度、外部情報の変化に対応させて変化させることができる。
この実施の形態3により、例えば、速度に応じて周波数を変化させるため、周辺の歩行者等に速度が分かりやすくなる。また他の車両、例えば接近して先行する車両との音質を異ならせることにより、自車両の存在を周囲の歩行者に認識させやすくなる。周囲の騒音の帯域と異なる音質を発生させることが出来るため、車両の認識がしやすい。外部情報収集装置9からの信号に車両の大きさの情報を含めることにより、接近する車両の大きさを周辺の歩行者等が推測しやすくなる。さらにまた、この実施の形態3によれば、周波数を変化させることにより、音圧をあげることなく周囲の歩行者等に認識させやすくなり、騒音公害的な迷惑も防止できる。また走行開始モードに近付いたことを検出して周囲に存在感のアピールを増大するには、例えば放出する擬似音の周波数を耳障りな1〜2kHzにしても良い。具体的には入力音源Fin[Hz]に対して放出される擬似音の周波数が上述の周波数になるよう、車速の変化に応じた周波数変化量Fv[Hz]に対して各外部情報の周波数変化量の合計Fext[Hz]を調整すればよい。なお、このとき車速はほとんど0と考えられるため、車速0に応じた周波数変化量Fv[Hz]に対して調整することでも良い。
実施の形態4.
図16に本発明の実施の形態4による擬似音制御装置の要部のブロック図を示す。図16において、図3および図12と同一符号は、同一または相当する部分を示す。本実施の形態4による擬似音制御装置の擬似音発生部5は、擬似音源51と、擬似音源51で発生した音の音質を変化させる音質調整処理部52と、音圧を変化させる音圧調整処理部53を備える。
また、擬似音発生部5は、車外に取り付けられたマイクロフォン、カメラ、センサ、または制動ブレーキ(フットブレーキ)信号・パーキングブレーキ信号・ギア位置信号、アクセル開度信号等を含む車両機器など外部情報収集装置9からの信号を入力する。外部情報収集装置9は車外環境の騒音情報や、歩行者・自転車・バイク等を含む障害物の有無、距離、存在時間等の情報や、フットブレーキ・パーキングブレーキ・ギアやアクセルを含む車両機器の状態を取得し、その情報を音質調整処理部52と音圧調整処理部53に出力する。
次に、動作を説明する。擬似音源51が、車両の走行を想起させる音を発生する音源である。キースイッチ7が電気自動車の起動スイッチを表し、スイッチのオンとオフの信号を速度領域判定部6に出力する。車速信号8が車速信号を取得し、速度領域判定部6と音質調整処理部52と音圧調整処理部53に車速信号を出力する。このとき、車速信号の変化量から、加速度を出力しても良い。
速度領域判定部6がキースイッチ7と車速信号8から得られた情報に基づき、停車中の車速0の状態から所定速度に達するまでの速度領域を少なくとも2つ以上に区別し、現在の電動移動体の状態はどの速度領域であるかを判定する。図17は停車中の車速0の状態から所定速度に達するまでの速度領域を5つに区別したときの、速度領域の状態遷移の例である。速度領域判定部6が、電動移動体の速度領域を、a:キーオン領域、b:キーオン停車領域、c:スタート領域、d:加速領域、e:飽和領域、に分割し、電動移動体の速度領域が現在どの領域であるかを判定する。
a:キーオン領域(5B)は、キースイッチ7がオンされた直後の速度領域である。エンジンで駆動する車両は駐車中でも、キースイッチ7がオンされるとアイドル音が発生し、この車両に接近する歩行者は自主的に危険を回避するため、アイドル停車中の車両を避けて通る習性がある。しかしモータで駆動する電動移動体は停車中にアイドル音が発生しないため無音である。そのため、電動移動体に接近する歩行者が自主的な回避行動を行えず、走行開始時の接触危険度合いが高くなり非常に危険である。またアイドル音が聞こえないことにより、運転手も電動移動体においてキースイッチ7がオンされたのかが直感的に分かり難い。このことから、a:キーオン領域(5B)では、擬似的に周囲が電動移動体の動作を認知できるアイドル音を発生させる。
アイドル状態が長く続いた場合は、所定時間経過後に音圧レベルを下げる速度領域(b:キーオン停止領域(5C))を設けることにより、報知対象の歩行者に危険を与えず、且つ、その他の周辺歩行者や周辺居住者等に対する騒音公害的な迷惑も排除できる。アイドル時の騒音公害的な迷惑を排除するため、擬似アイドル音は走行開始時よりも音圧や音質を低くすることが好ましい。
c:スタート領域(5D)は走行が開始された直後の速度領域であり、dの加速領域(5E)はスタート領域終了後の、擬似音が必要だと判断される車速内の速度領域である。擬似音は速度・加速度上昇に伴って、音圧や音質を変化させることにより、周辺の歩行者が電動移動体の速度変化を聴覚で把握することが可能となる。これにより安全性も向上する。c:スタート領域とd:加速領域は、速度もしくは加速度の増減に伴って、擬似音の音圧や音質が変化する領域である。エンジンで駆動する車両は通常走行開始直後に加速を行うため、エンジン音が大きくなる。そこでc:スタート領域では走行開始からある任意の一定時間を経過するまで、d:加速領域で発生する同じ車速走行時の擬似音よりも音圧を高くする。
e:飽和領域(5F)は速度もしくは加速度の増減に伴った擬似音の音圧の変化を、一定の音圧に収束、もしくは、減少させる速度領域である。電動移動体は、低速では走行音が非常に静かであるが、ある程度速度が高くなった状態、例えば20[km/h]を超えるような速度では風切り音や路面ノイズ等の音圧上昇により従来の自動車の騒音レベルに近づくため、周囲の歩行者等の電動移動体の認知が可能となる。e:飽和領域では、そういった擬似音が不要となる車速に達する前に、擬似音が不自然に途切れないように、擬似音の音圧と音質を制御する速度領域である。
図17の状態遷移図について説明する。キースイッチ7がオフ(5A)からオンに変化すると、速度領域判定部6が電動移動体の速度領域はa:キーオン領域(5B)であると判定する。電動移動体の速度領域がa:キーオン領域(5B)のときに、電動移動体が走行を開始(車速≠0[km/h])すると、速度領域判定部6が速度領域をc:スタート領域(5D)であると判定する。電動移動体の速度領域がa:キーオン領域(5A)の状態のときに、n[秒]経過しても電動移動体が走行を開始しなかった場合は、電動移動体の速度領域がb:キーオン停車領域(5C)であると判定する。このn[秒]は電動移動体が停車を維持していると考える任意の時間である。電動移動体の速度領域がb:キーオン停車領域(5C)のときに、電動移動体が走行を開始(車速≠0[km/h])すると、速度領域判定部6が電動移動体の速度領域をc:スタート領域(5D)であると判定する。
電動移動体の速度領域がc:スタート領域(5D)と判定されてから(電動移動体の走行が開始されてから)、m[秒]間はc:スタート領域(5D)の判定が維持されるが、m[秒]を超えると、速度領域判定部5が電動移動体の速度領域をd:加速領域(5E)であると判定する。このときのm[秒]は、ガソリン車の走行開始直後の加速を想起させる任意の時間である。電動移動体の速度領域がc:スタート領域(5D)と判定されてから(電動移動体の走行が開始されてから)m[秒]を超える前に車速がX[km/h]を超えた場合は、速度領域判定部6が電動移動体の速度領域をe:飽和領域(5F)であると判定する。このX[km/h]は、電動移動体の走行速度の上昇に伴い、擬似音以外の走行音(風切り音や路面ノイズ)の音圧が大きくなるため、擬似音の音圧上昇をさせる必要がない、もしくは減少させても良いと判断される任意の電動移動体の最低速度を表す。
電動移動体の速度領域がd:加速領域(5E)のときに、車速がX[km/h]を超えた場合は、速度領域判定部6が電動移動体の速度領域をe:飽和領域(5F)であると判定する。
電動移動体の速度領域がe:飽和領域(5F)のときに、車速がX[km/h]よりも大きいY[km/h]を超えた場合は、擬似音を発生させる必要がある低速走行ではないと判断し、擬似音を停止し、電動移動体は中・高速走行(5G)の状態となる。このY[km/h]は、例えば20[km/h]であり、擬似音が必要でないと判断される任意の電動移動体の速度である。
加速時だけでなく、減速時においても同様の判定がされる。この状態遷移は、図17において、右側の遷移矢印で示されている。電動移動体の速度領域がa:キーオン領域(5B)、もしくはb:キーオン停車領域(5C)のときに、キースイッチ7がオフされると、速度領域判定部6が速度領域はどの領域にもあてはまらないと判定し、状態遷移はキースイッチOFF(5A)となる。電動移動体の速度領域がc:スタート領域、もしくはd:加速領域のときに、電動移動体の走行が停止(車速=0)されると、速度領域判定部6が電動移動体の速度領域をb:キーオン停車領域に判定する。電動移動体の速度領域がe:飽和領域(5E)のときに、車速がX[km/h]未満となった場合は、速度領域判定部6が電動移動体の速度領域をd:加速領域(5E)であると判定する。電動移動体が中・高速走行(5G)のときに、車速がY[km/h]未満となった場合は、速度領域判定部6は電動移動体の速度領域をe:飽和領域(5F)であると判定する。
一方、図16の音質調整処理部52が、擬似音源部5の音質を変更する。このとき、音質調整処理部52は、車速信号8と外部情報収集装置9、及び、速度領域判定部6から得られた情報に基づき、擬似音を速度領域判定部6で判別された速度領域ごとで異なる音質に変更する。音質調整処理部52の詳細は実施の形態3で説明した図13と同様である。音質調整処理部52は車速−音質テーブル52Aと外部情報−音質テーブル52Bと音質調整部52Cからなる。
車速−音質テーブル52Aは図18に示す表のように、車速の変化に応じた周波数変化量Fv[Hz]のテーブルを保持している。車速−音質テーブル52Aの特性例を図19に示す。図19の特性例は、入力された擬似音の音質を、a:キーオン領域やb:キーオン停車領域のような停車状態では変化させず、電動移動体の走行が開始されると車速の上昇に応じて高周波側に変化させている。車速−音質テーブル52Aは、車速信号8から得られた車速情報を用いて、車速の増減に伴った周波数変化量Fv[Hz]を音質調整部52Cに出力する。また、この車速を加速度に変更し、周波数変化量Fv[Hz]を音質調整部52Cに出力しても良い。
外部情報−音質テーブル52Bは、外部情報収集装置9によって得られた車外環境の騒音情報や、歩行者・自転車・バイク等を含む障害物の有無、距離、存在時間等の情報ごとに対応した周波数の変化量を保持している。例えば、外部情報−音質テーブル52Bは実施の形態3で説明した図14に示す表のように障害物存在時間に対する周波数変化量Fext1、周辺騒音レベルに対する周波数変化量Fext2、周辺騒音帯域に対する周波数変化量Fext3の値を保持しても良い。また、外部情報−音質テーブル52Bは、外部情報収集装置9によって得られたパーキングブレーキ、フットブレーキやギアの状態の情報に対応した周波数変化量を保持しても良い。例えば、速度領域がa:キーオン領域、及び、b:キーオン停車領域の場合、外部情報−音質テーブル52Bは実施の形態3で説明した図15に示す表のように、パーキングブレーキの状態に対する周波数変化量Fext4、フットブレーキの状態に対する周波数変化量Fext5、ギアの状態に対する周波数変化量Fext6の値を保持しても良い。これに対し、図20に示す表のように、速度領域がc:スタート領域、d:加速領域、e:飽和領域の場合、フットブレーキの踏み込み量に対する周波数変化量Fext4を保持しても良い。Fextで示す各パラメータは相関をつけても良いし、独立したパラメータとして扱っても良い。なお、図14と図15及び図20の数値は一例であって、これに限定されるものではない。
以上のように、外部情報収集装置9によって得られた制動ブレーキ(フットブレーキ)、パーキングブレーキ、ギアもしくはアクセルの状態を示す情報により、周波数を変化させることができる。特にこれらの情報により電動移動体が走行開始モードに近付いたことを検知し、周波数を変化させて音質を変えることにより、歩行者などに、停車中の電動移動体が走行開始モードに近付いたことを報知でき、注意を促すことができる。
外部情報−音質テーブル52Bは各外部情報の周波数変化量の合計Fext(=Fext1+Fext2+Fext3+…) [Hz]を音質調整部52Cに出力する。外部情報−音質テーブル52Bが保持する値は、これ以外の外部情報に対する周波数変化量でも良い。また、速度領域ごとに周波数変化量を保持しても良い。
音質調整部52Cは、車速−音質テーブル52Aから出力された周波数変化量Fv[Hz]と外部情報−音質テーブル52Bから出力された周波数変化量Fext[Hz]の合計から、入力された擬似音の周波数変化量F[Hz]を求める。音質調整部52Cは、音質調整処理部52に入力された音源の周波数を周波数変化量F[Hz]分だけ変化させる。周波数を変化させる方法にはSRC(サンプリングレートコンバータ)を用いても良いし、FFT処理やピッチ変換を用いても良い。以上の方法を用いて、擬似音の音質を、車速・加速度、外部情報の変化に対応させて変化させることができる。
次に、発生する擬似音の音圧を変更する、図16に示した音圧調整処理部53の動作について説明する。音圧調整処理部53の詳細は実施の形態2で説明した図5と同様である。音圧調整処理部53は車速−音圧テーブル53Aと時間−音圧テーブル53Bと外部情報−音圧テーブル53Cと音圧レベル調整部53Dからなる。音圧調整処理部53は、車速信号8と外部情報収集装置9、及び、速度領域判定部6から得られた情報に基づき、擬似音を速度領域判定部6で判別された速度領域ごとで異なる音圧に変更する。
車速−音圧テーブル53Aは図21に示す表のように、車速の変化に応じた基準となる音圧Pb[dB]のテーブルを保持している。車速−音圧テーブル53Aの特性例を図22〜図24に示す。これらの特性例は、入力された擬似音の音圧を、a:キーオン領域やb:キーオン停車領域のような停車状態では一定値で変化させない。c:スタート領域やd:加速領域では、電動移動体の走行が開始されると車速の上昇に応じて音圧も上昇する。このとき、車速が速くなると車両騒音にタイヤ音が加算されるので、図22、図23の破線のように車速の上昇に応じて音圧を下げるような特性でも良い。これによりバッテリーで蓄えた電力を長持ちさせるという効果が期待される。e:飽和領域では図22のように常に一定値N_x[dB]を出力するような特性でも良いし、図23のように徐々にN_y[dB]になるような特性にしても良い。また擬似音が不要と判断される車速に達した際に、擬似音が不自然に消音しないように、図24に示すような徐々に擬似音が不要となる車速Y[km/h]に達する前に徐々に音圧を下げる特性にしても良い。車速-音圧テーブル53Aは、車速信号8から得られた車速情報を用いて、車速の上昇に伴った基準音圧Pb[dB]を音圧レベル調整部53Dに出力する。また、この車速を加速度に変更し、基準音圧Pb[dB]を音圧レベル調整部53Dに出力しても良い。
時間−音圧テーブル53Bは図25に示す表のように、各速度領域における経過時間の変化に応じた音圧変化量Pt[dB]のテーブルを保持している。ここで、音圧変化量とは、基準音圧に対して音圧を変化させる量のことである。時間−音圧テーブル53Bのa:キーオン領域とb:キーオン停車領域の特性例としては、例えば実施の形態2で説明した図7〜図9のようである。a:キーオン領域では、キースイッチ7がオンされると、アイドル音が発生する。このアイドル音により、周辺の歩行者、及び、運転手にキースイッチ7がオンされたことを認識させる必要がある。そのため、図7の特性例のように、擬似音の音圧を通常の基準音圧よりも、少し大きくするのが好ましい。また、突然擬似音が発生することにより、電動移動体周辺の歩行者等が驚く可能性があるため、図8のように徐々に擬似音の音圧を大きくしても良い。もしくは、図9のように初めに音圧の小さい擬似音を発生させ、その後、音圧の大きい擬似音を発生させる特性でも良い。b:キーオン停車領域では、停車時の擬似音の騒音公害を避けるために、音圧を小さくさせる特性を持たせると良い。
時間−音圧テーブル53Bのc:スタート領域と、d:加速領域およびe:飽和領域の特性例を図26から図28に示す。通常のエンジン音は走行開始時に加速するため、走行音が大きくなる。そのため、c:スタート領域では通常の基準音圧よりも音圧を大きくすると良い。例えば、図26のように音圧変化量を常に一定値Bとして音圧をBだけ上げて、音圧を大きくする特性にしても良いし、図27のように初めは音圧変化量を大きくし、時間が経過するごとに音圧変化量を小さくする特性にしても良い。また突然音圧が大きくなると電動移動体周辺の歩行者が驚くため、図28のように徐々に音圧変化量を大きくし、ある程度時間が経過した後は徐々に音圧変化量を小さくする特性にしても良い。さらに、通常のエンジン音に近づけるため、図7〜図9に示すa:キーオン領域の擬似音の最大音圧変化量Aは、図26〜図28に示すc:スタート領域の擬似音の最大音圧変化量Bよりも小さくする。時間−音圧テーブル53Bは、速度領域判別部6から得られた速度領域情報を用いて、速度領域ごとの時間の変化に応じた音圧変化量Pt[dB]を音圧レベル調整部53Dに出力する。
外部情報−音圧テーブル53Cは、外部情報収集装置9によって得られた車外環境の騒音情報や、歩行者・自転車・バイク等を含む障害物の有無、距離、存在時間等の情報ごとに対応した音圧の変化量を保持している。例えば、外部情報−音圧テーブル53Cは実施の形態2で説明した図10に示す表のように、障害物存在時間に対する音圧変化量Pext1、障害物までの距離に対する音圧変化量Pext2、周辺騒音レベルに対する音圧変化量Pext3の値を保持しても良い。これらの音圧変化量を用いることにより、歩行者の電動移動体周辺の存在時間が長かったり、歩行者と電動移動体との距離が短かったりした場合に、歩行者が電動移動体の存在に、より気付きやすくなる。逆に、歩行者が気付いていると判断される場合は迷惑とならないように音圧を小さくしても良い。また、外部情報−音圧テーブル53Cは、外部情報収集装置9によって得られた制動ブレーキ(フットブレーキ)・パーキングブレーキやギアの状態の情報に対応した音圧変化量を保持しても良い。例えば、速度領域がa:キーオン領域、及び、b:キーオン停車領域の場合、外部情報−音圧テーブル53Cは実施の形態2で説明した図11に示す表のように、パーキングブレーキの状態に対する音圧変化量Pext4、フットブレーキの状態に対する音圧変化量Pext5、ギアの状態に対する音圧変化量Pext6、アクセル開度に応じた音圧変化量Pext7の値を保持しても良い。これに対し、速度領域がc:スタート領域、d:加速領域、e:飽和領域の場合、図29に示す表のように、フットブレーキの踏み込み量に対する音圧変化量Pext5を保持しても良い。外部情報−音圧テーブル53Cは各外部情報の音圧変化量の合計Pext(=Pext1+Pext2+Pext3+…)[dB]を音圧調整部53Cに出力する。外部情報−音圧テーブル53Cが保持する値は、これ以外の外部情報に対する音圧変化量でも良い。また、速度領域ごとに音圧変化量を保持しても良い。Pextで示す各パラメータは相関をつけても良いし、独立したパラメータとして扱っても良い。なお、図10と図11及び図29の数値は一例であって、これに限定されるものではない。
また、図16では音圧調整処理部53を備えているので、図7、8の破線のように、外部情報収集装置9によって得られた制動ブレーキ(フットブレーキ)、パーキングブレーキ、ギアもしくはアクセルの状態を示す情報により、走行開始モードに近づいたことを検知し、音圧を上げて注意を促すために、パーキングブレーキをOFFにした時点で音圧を大きくするなどの調整も可能となる。例えば、上記したパーキングブレーキの状態による検知のみならず、ブレーキ(フットブレーキとパーキングブレーキの両方、もしくはいずれか一方)がオンの状態からオフの状態に変化したときをもって検知できる。あるいはキースイッチが、アクセサリ位置からイグニッションオン(モータ駆動可能)位置に切り換えられたこと、ギアの位置が変更されたこと、もしくは、モータ駆動可能状態において、アクセルが踏まれたことに基づいて走行開始モードに近づいたことを検知しても良い。特にこれらの外部情報により、電動移動体が走行開始モードに近付いたことを検知して、音圧を変化させることにより、歩行者などに、停車中の電動移動体が走行開始モードに近付いたことを報知でき、注意を促すことができる。本実施の形態4においては、走行開始モードに近付いたことを検知して、音圧に加えて音質を変化させることができるため、歩行者などに、電動移動体が走行開始モードに近付いたことをより認識し易く報知でき、より注意を促すことができる。
さらに、図16では音質調整処理部52も同時に備えているので、走行開始モードを検出し、音圧だけでなく音質も併せて調整するようにすることも出来る。なお、音質、音圧の両方ではなく、いずれか一方のみを変化させるようにしても良い。この変化には無音状態を作り出すことも含むものである。また、音圧を上げたり、周波数を耳障りな周波数域に調整したりするなどの場合は、急変させると周囲の人を驚かせて、却って恐怖心を抱かせてしまうことも考え得るので徐々に変化させることも考慮してよい。
音圧レベル調整部53Dは、車速−音圧テーブル53Aから出力された基準音圧Pb[dB]に、時間−音圧テーブル53Bから出力された音圧変化量Pt[dB]と外部情報−音圧テーブル53Cから出力された音圧変化量Pext[dB]を加え、それを出力する擬似音の音圧P[dB]とする。音圧レベル調整部53Dは音圧P[dB]になるように、入力音源のレベル調整を行う。以上の方法を用いて、電動移動体外部に放射される擬似音の音圧を、車速・加速度、外部情報の変化に対応させて変化させることができる。
図1に示すスピーカ等の発音体4が音圧調整処理部53から出力された音を電動移動体外部に放射する。この発音体4は、一つでも複数でも良いし、取り付け位置は擬似音が車外に放射される位置であれば、前方後方・左右、その他どのような位置でも良い。
この実施の形態4で用いた車速信号による制御を加速度信号に変更しても良い。車速信号を用いる場合、車速に比例して音圧や音質を変化させたが、加速度信号を用いる場合、図30のように、加速度の二乗比に対して音圧や音質が変化するようにしても良い。また、車速信号と加速度信号を切り替えるようにしても良い。車速信号と加速度信号の切り替えは、ソフト的な制御でも、ユーザのスイッチ等による手動制御のどちらを用いても良い。
図31に本実施の形態4による擬似音制御装置3全体の動作の流れを示す。キースイッチ7がオンされると(S1)、速度領域はa:キーオン領域となり、擬似音を発生させる(S2)。キースイッチ7がオフ状態の場合は、擬似音は発生させずシステムを終了する。
外部情報収集装置9がオンされている場合(S3・yes)、外部情報収集装置9が取得した外部情報により、外部情報−音質テーブル52B、及び、外部情報−音圧テーブル53Cを更新(S4)し、次に車速が0であるかの判別を行う(S5)。外部情報収集装置9がオフされている場合(S3・no)は、外部情報−音質テーブル52Bの周波数変化量、及び、外部情報−音圧テーブル53Cの音圧変化量を、音質調整部52Cと音圧レベル調整部53Dで加算せず、車速が0であるかの判別を行う(S5)。
車速信号が0であった場合(S5・yes)、所定時間n[秒]経過したかを判別する(S6)。所定時間n[秒]が経過していた場合(S6・yes)、速度領域判定部6が速度領域はb:キーオン停止領域だと判別し(S7)、擬似音の音圧レベルを減少させ、再び外部情報収集装置9のオン・オフ判定(S3)に戻る。所定時間n[秒]が経過していなかった場合(S6・no)、そのまま何も処理をせずに、再び外部情報収集装置9のオン・オフ判定(S3)に戻る。このn[秒]は電動移動体が停車を維持していると考える任意の時間である。
車速信号が0でなかった場合(S5・no)、所定時間m[秒]経過したかを判別する(S8)。所定時間m[秒]が経過していなかった場合(S8・no)、速度領域判定部6が速度領域はc:スタート領域だと判別し(S9)、擬似音の音圧レベルを増幅させ、再び外部情報収集装置9のオン・オフ判定(S3)に戻る。所定時間m[秒]が経過していた場合(S8・yes)、車速がX[km/h]以上であるかの判別(S10)を行う。m[秒]は、ガソリン車の走行開始直後の加速を想起させる任意の時間である。
車速がX[km/h]以上でなかった場合(S10・no)、速度領域判定部6が速度領域はd:加速領域だと判別し(S11)、車速や加速度変化対応で擬似音の音圧や音質を可変させ、再び外部情報収集装置のオン・オフ判定(S3)に戻る。車速がX[km/h]以上だった場合(S10・yes)、車速がY[km/h]以上であるかの判別(S12)を行う。このX[km/h]は、電動移動体の走行速度の上昇に伴い、擬似音以外の走行音(風切り音や路面ノイズ)の音圧が大きくなるため、擬似音の音圧上昇をさせる必要がない、もしくは減少させても良いと判断される任意の電動移動体の最低速度を表す。
車速がY[km/h]以上でなかった場合(S12・no)、速度領域判定部5が速度領域はe:飽和領域だと判別し(S13)、擬似音の音圧・音質を一定値に収束させ、再び外部情報収集装置のオン・オフ判定(S3)に戻る。車速がY[km/h]以上だった場合(S12・yes)、擬似音の発生制御をオフし(S14)、再び車速がY[km/h]以上であるか(S12)の判別を行う。このY[km/h]は、例えば20[km/h]であり、擬似音が必要でないと判断される任意の電動移動体の速度である。
なお走行開始モードに近付いたことを検出した場合は、このフローに割り込み処理することにより優先して処理されるものである。
実施の形態5.
図32は、本発明の実施の形態5による擬似音制御装置の要部の構成を示すブロック図である。図32において、図16と同一符号は、同一または相当する部分を示す。実施の形態5は擬似音源51を固定音源51Aと可変音源51Bに分割したものである。可変音源51Bから出力された音は音質調整処理部52で音質調整される。この音質調整された音と固定音源51Aから出力される音を帯域合成54で合成し、音圧を変化させる音圧調整処理部53で音圧が調整される。
固定音源と可変音源は、図33に示すように、基本擬似音源51Cにより出力される音を帯域分割51Dにより、固定音源51Aと可変音源51Bに分割して作製しても良い。
固定音源51Aは、車両の走行を想起させる、車速や加速度、もしくは外部情報によって音質を変更させない基準音源であり、例えばより低域の音を固定音源51Aとする。また固定音源51Aはホワイトノイズのような広域周波数成分を有する音源が好ましい。可変音源51Bは、車両の走行を想起させる、車速や加速度、もしくは外部情報に対応して音質調整処理部52によって音質を調整して変化させる音源である。この可変音源51Bは周波数的に固定音源51Aよりも狭い範囲の一つもしくは複数のピークを有する周波数成分から構成されるのが好ましい。また可変音源51Bは一つの特定周波数の正弦波でも、複数の特定周波数の正弦波でも良い。この特定周波数の音源には、エンジン音の基本周波数や高調波成分なども含まれる。例えば実施の形態4では車速が上昇すると擬似音全体の音質が高くなる。これにより、低域成分がなくなってしまい、エンジン音が軽くなる傾向があった。本実施の形態5では、固定音源51Aと可変音源51Bのように、音質を変化させない音源と音質を変化させる音源とに分割して処理を行うことにより、車速の上昇に応じて擬似音の音質を変化させ、且つ、常に低域成分が含まれることによる高級感のあるエンジン音の再現が可能となる。
本実施の形態5においては、図32や図33で示すように、音質調整処理部52は、可変音源51Bの音質を調整して変化させる。一方、固定音源51Aの音質は変更せずに帯域合成54に入力される。音質調整処理部52は、車速信号8と外部情報収集装置9、及び、速度領域判定部6から得られた情報に基づき、可変音源51Bの音を速度領域判定部6で判別された速度領域ごとで異なる音質に変更する。音質調整処理部52の詳細は、実施の形態3で説明した図13と同様である。音質調整処理部52は車速−音質テーブル52Aと外部情報−音質テーブル52Bと音質調整部52Cからなる。
可変音源51Bの音源が一つの特定周波数音源である場合の音質調整処理部52の動作は、例えば、以下のように実施の形態4で説明した音質調整処理部52の動作と同様にすれば良い。車速−音質テーブル52Aは図18に示す表のように、車速の変化に応じた周波数変化量Fv[Hz]のテーブルを保持している。車速−音質テーブル52Aの特性例を図19に示す。図19の特性例は、入力された擬似音の音質を、a:キーオン領域やb:キーオン停車領域のような停車状態では変化させず、電動移動体の走行が開始されると車速の上昇に応じて高周波側に変化させている。車速−音質テーブル52Aは、車速信号8から得られた車速情報を用いて、車速の上昇に伴った周波数変化量Fv[Hz]を音質調整部52Cに出力する。また、この車速を加速度に変更し、周波数変化量Fv[Hz]を音質調整部52Cに出力しても良い。
また、可変音源51Bが複数の特定周波数音源を保持している場合、車速−音質テーブル52Aは例えば図34に示す表のようになる。車速−音質テーブル52Aは、それぞれの特定周波数音源1、2、3に車速に対応した周波数変化量Fv[Hz]を保持している。可変音源51Bが複数の特定周波数音源を保持している場合の、車速−音質テーブル52Aの特性例を図35に示す。図35の特性例は、入力された擬似音の音質を、a:キーオン領域やb:キーオン停車領域のような停車状態では変化させず、電動移動体の走行が開始されると車速の上昇に応じて高周波側に、特定周波数音源ごとに異なる傾きで変化させている。車速−音質テーブル52Aは、車速信号8から得られた車速情報を用いて、車速の増減に伴って、複数の特定周波数音源の周波数変化量Fv[Hz]を音質調整部52Cに出力する。また、この車速を加速度に変更し、周波数変化量Fv[Hz]を音質調整部52Cに出力しても良い。
外部情報−音質テーブル52Bは、外部情報収集装置9によって得られた車外環境の騒音情報や、歩行者・自転車・バイク等を含む障害物の有無、距離、存在時間等の情報ごとに対応した周波数の変化量を保持している。例えば、外部情報−音質テーブル52Bは実施の形態3で説明した図14に示す表のように障害物存在時間に対する周波数変化量Fext1、周辺騒音レベルに対する周波数変化量Fext2、周辺騒音帯域に対する周波数変化量Fext3の値を保持しても良い。また、外部情報−音質テーブル52Bは、外部情報収集装置9によって得られた制動ブレーキ(フットブレーキ)・パーキングブレーキやギアの状態の情報に対応した周波数変化量を保持しても良い。例えば、速度領域がa:キーオン領域、及び、b:キーオン停車領域の場合、外部情報−音質テーブル52Bは実施の形態3で説明した図15に示す表のように、パーキングブレーキの状態に対する周波数変化量Fext4、フットブレーキの状態に対する周波数変化量Fext5、ギアの状態に対する周波数変化量Fext6の値を保持しても良い。これに対し、実施の形態4で説明した図20に示す表のように、速度領域がc:スタート領域、d:加速領域、e:飽和領域の場合、フットブレーキの踏み込み量に対する周波数変化量Fext4を保持しても良い。Fextで示す各パラメータは相関をつけても良いし、独立したパラメータとして扱っても良い。なお、図14と図15及び図20の数値は一例であって、これに限定されるものではない。
以上のように、外部情報収集装置9によって得られた制動ブレーキ(フットブレーキ)、パーキングブレーキ、ギアもしくはアクセルの状態を示す情報により、周波数を変化させることができる。特にこれらの情報により電動移動体が走行開始モードに近付いたことを検知し、周波数を変化させて音質を変えることにより、歩行者などに、停車中の電動移動体が走行開始モードに近付いたことを報知でき、注意を促すことができる。
外部情報−音質テーブル52Bは各外部情報の周波数変化量の合計Fext(=Fext1+Fext2+Fext3+…) [Hz]を音質調整部52Cに出力する。外部情報−音質テーブル52Bが保持する値は、これ以外の外部情報に対する周波数変化量でも良い。また、速度領域ごとに周波数変化量を保持しても良い。
音質調整部52Cは、車速−音質テーブル52Aから出力された周波数変化量Fv[Hz]と外部情報−音質テーブル52Bから出力された周波数変化量Fext[Hz]の合計から、入力された擬似音の周波数変化量F[Hz]を求める。音質調整部52Cは、音質調整処理部52に入力された音源の周波数を周波数変化量F[Hz]分だけ変化させる。周波数を変化させる方法にはSRC(サンプリングレートコンバータ)を用いても良いし、FFT処理やピッチ変換を用いても良い。以上の方法を用いて、擬似音の音質を、車速や加速度、もしくは外部情報の変化に対応させて変化させることができる。
図32や図33の帯域合成54が固定音源51Aと可変音源51Bの一つ、もしくは複数の特定周波数音源の帯域を合成する。合成後、処理音源は音圧調整処理部53に出力される。音圧調整処理部53が、擬似音の音圧を変更する。音圧調整処理部53の動作については、実施の形態4の音圧調整処理部53の動作と同様にすればよい。音圧調整処理部53は車速−音圧テーブル53Aと時間−音圧テーブル53Bと外部情報−音圧テーブル53Cと音圧レベル調整部53Dからなる。音圧調整処理部53は、車速信号8と外部情報収集装置9、及び、速度領域判定部6から得られた情報に基づき、擬似音を速度領域判定部6で判別された速度領域ごとで異なる音圧に変更する。
車速−音圧テーブル53Aは図21に示す表のように、車速の変化に応じた基準となる音圧Pb[dB]のテーブルを保持している。車速−音圧テーブル53Aの特性例を図22〜図24に示す。これらの特性例は、入力された擬似音の音圧を、a:キーオン領域やb:キーオン停車領域のような停車状態では一定値で変化させない。c:スタート領域やd:加速領域では、電動移動体の走行が開始されると車速の上昇に応じて音圧も上昇する。このとき、車速が速くなると車両騒音にタイヤ音が加算されるので、図22、図23の破線のように車速の上昇に応じて音圧を下げるような特性でも良い。これによりバッテリーで蓄えた電力を長持ちさせるという効果が期待される。e:飽和領域では図22のように常に一定値N_x[dB]を出力するような特性でも良いし、図23のように徐々にN_y[dB]になるような特性にしても良い。また擬似音が不要と判断される車速に達した際に、擬似音が不自然に消音しないように、図24に示すような徐々に擬似音が不要となる車速Y[km/h]に達する前に徐々に音圧を下げる特性にしても良い。車速-音圧テーブル53Aは、車速信号8から得られた車速情報を用いて、車速の上昇に伴った基準音圧Pb[dB]を音圧レベル調整部53Dに出力する。また、この車速を加速度に変更し、基準音圧Pb[dB]を音圧レベル調整部53Dに出力しても良い。
時間−音圧テーブル53Bは図25に示す表のように、速度領域ごとに時間の変化に応じた音圧変化量Pt[dB]のテーブルを保持している。ここで、音圧変化量とは、基準音圧に対して音圧を変化させる量のことである。時間−音圧テーブル53Bのa:キーオン領域とb:キーオン停車領域の特性例としては、例えば実施の形態2で説明した図7〜図9のようである。a:キーオン領域では、キースイッチ7がオンされると、アイドル音が発生する。このアイドル音により、周辺の歩行者、及び、運転手にキースイッチ7がオンされたことを認識させる必要がある。そのため、図7の特性例のように、擬似音の音圧を通常の基準音圧よりも、少し大きくするのが好ましい。また、突然擬似音が発生することにより、電動移動体周辺の歩行者等が驚く可能性があるため、図8のように徐々に擬似音の音圧を大きくしても良い。もしくは、図9のように初めに音圧の小さい擬似音を発生させ、その後、音圧の大きい擬似音を発生させる特性でも良い。b:キーオン停車領域では、停車時の擬似音の騒音公害を避けるために、音圧を小さくさせる特性を持たせると良い。
時間−音圧テーブル53Bのc:スタート領域と、d:加速領域およびe:飽和領域の特性例を図26から図28に示す。通常のエンジン音は走行開始時に加速するため、走行音が大きくなる。そのため、c:スタート領域では通常の基準音圧よりも音圧を大きくすると良い。例えば、図26のように音圧変化量を常に一定値Bとして音圧をBだけ上げて、音圧を大きくする特性にしても良いし、図27のように初めは音圧を大きくし、時間が経過するごとに音圧を小さくする特性にしても良い。また突然音圧が大きくなると電動移動体周辺の歩行者が驚くため、図28のように徐々に音圧を大きくし、ある程度時間が経過した後は徐々に音圧を小さくする特性にしても良い。さらに、通常のエンジン音に近づけるため、図7〜図9に示すa:キーオン領域の擬似音の最大音圧変化量Aは、図26〜図28に示すc:スタート領域の擬似音の最大音圧変化量Bよりも小さくする。時間−音圧テーブル53Bは、速度領域判別部6から得られた速度領域情報を用いて、速度領域ごとの時間の変化に応じた音圧変化量Pt[dB]を音圧レベル調整部53Dに出力する。
外部情報−音圧テーブル53Cは、外部情報収集装置9によって得られた車外環境の騒音情報や、歩行者・自転車・バイク等を含む障害物の有無、距離、存在時間等の情報ごとに対応した音圧の変化量を保持している。例えば、外部情報−音圧テーブル53Cは実施の形態2で説明した図10に示す表のように、障害物存在時間に対する音圧変化量Pext1、障害物までの距離に対する音圧変化量Pext2、周辺騒音レベルに対する音圧変化量Pext3の値を保持しても良い。これらの音圧変化量を用いることにより、歩行者の電動移動体周辺の存在時間が長かったり、歩行者と電動移動体との距離が短かったりした場合に、歩行者が電動移動体の存在により気付きやすくなる。逆に、歩行者が気付いていると判断される場合は迷惑とならないように音圧を小さくしても良い。
また、外部情報−音圧テーブル53Cは、外部情報収集装置9によって得られた制動ブレーキ(フットブレーキ)・パーキングブレーキやギアの状態の情報に対応した音圧変化量を保持しても良い。例えば、速度領域がa:キーオン領域、及び、b:キーオン停車領域の場合、外部情報−音圧テーブル53Cは実施の形態2で説明した図11に示す表のように、パーキングブレーキの状態に対する音圧変化量Pext4、フットブレーキの状態に対する音圧変化量Pext5、ギアの状態に対する音圧変化量Pext6、アクセル開度に応じた音圧変化量Pext7の値を保持しても良い。これに対し、速度領域がc:スタート領域、d:加速領域、e:飽和領域の場合、図29に示す表のように、フットブレーキの踏み込み量に対する音圧変化量Pext5を保持しても良い。外部情報−音圧テーブル53Cは各外部情報の音圧変化量の合計Pext(=Pext1+Pext2+Pext3+…)[dB]を音圧調整部53Cに出力する。外部情報−音圧テーブル53Cが保持する値は、これ以外の外部情報に対する音圧変化量でも良い。また、速度領域ごとに音圧変化量を保持しても良い。Pextで示す各パラメータは相関をつけても良いし、独立したパラメータとして扱っても良い。なお、図10と図11及び図29の数値は一例であって、これに限定されるものではない。
また、図7、図8の破線で示すように、走行開始モードに近づいたことを検知して、周辺の歩行者等に注意を促すために、サイドブレーキをOFFにした時点で音圧を大きくしても良い。走行開始モードに近づいたことは、外部情報収集装置9によって得られた制動ブレーキ(フットブレーキ)、パーキングブレーキ、ギアもしくはアクセルの状態を示す情報により検知することができる。例えば、上記したパーキングブレーキの状態による検知のみならず、ブレーキ(フットブレーキとパーキングブレーキの両方、もしくはいずれか一方)がオンの状態からオフの状態に変化したときをもって検知できる。あるいはキースイッチが、アクセサリ位置からイグニッションオン(モータ駆動可能)位置に切り換えられたこと、ギアの位置が変更されたこと、もしくは、モータ駆動可能状態において、アクセルが踏まれたことに基づいて走行開始モードに近づいたことを検知しても良い。これに基づいて無音状態を含めた音圧処理部53の調整を行っても良い。
音圧レベル調整部53Dは、車速−音圧テーブル53Aから出力された基準音圧Pb[dB]に、時間−音圧テーブル53Bから出力された音圧変化量Pt[dB]と外部情報−音圧テーブル53Cから出力された音圧変化量Pext[dB]を加え、それを出力する擬似音の音圧P[dB]とする。音圧レベル調整部53Dは音圧P[dB]になるように、入力音源のレベル調整を行う。以上の方法を用いて、電動移動体外部に放射される擬似音の音圧を、車速や加速度、もしくは外部情報の変化に対応させて変化させることができる。
特に、外部情報収集装置9によって得られた制動ブレーキ(フットブレーキ)、パーキングブレーキ、ギアもしくはアクセルの状態を示す情報により、電動移動体が走行開始モードに近付いたことを検知して、音圧を変化させることにより、歩行者などに、停車中の電動移動体が走行開始モードに近付いたことを報知でき、注意を促すことができる。本実施の形態5においては、走行開始モードに近付いたことを検知して、音圧に加えて音質を変化させることができるため、歩行者などに、電動移動体が走行開始モードに近付いたことをより認識し易く報知でき、より注意を促すことができる。更に外部情報収集装置9によって得られた情報は音圧調整処理部だけでなく、音質調整処理部にも与えられている。即ち走行モードに近づいたことを検出して擬似音の周波数を耳障りな周波数帯域(例えば1〜2kHz前後)に変化させる、あるいは音圧を大きくする、もしくは音圧を0にして無音状態を作り出すなど、周囲の通行人に違和感を抱かせるようにする。これに際して、音質あるいは音圧だけの調整あるいは、その両方の調整など色々な手法を取りうる。
即ち、本願発明の範囲内において、各実施の形態は自由に組み合わせることができ、また各実施の形態においてそれぞれの構成要件を変更、追加あるいは必要に応じて取捨選択することが可能であると共に、これら変更した実施の携帯を組み合わせることもまた可能である。