JPWO2011148466A1 - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

触媒活性の低減を防止する燃料電池システムを提供する。コア金属材料を含むコア部、及び、当該コア部を被覆し、かつ、シェル金属材料を含むシェル部を備えるコアシェル型触媒微粒子を、アノード触媒層及びカソード触媒層の少なくともいずれか一方に含み、コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、コア金属材料が占める割合の初期値を記憶する記憶手段と、ある所定の段階において、コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、コア金属材料が占める割合が、前記初期値と比べて増えたか否かを判定する判定手段を備えることを特徴とする、燃料電池システム。

Description

本発明は、触媒活性の低減を防止する燃料電池システムに関する。
燃料電池は、燃料と酸化剤を電気的に接続された2つの電極に供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。火力発電とは異なり、燃料電池はカルノーサイクルの制約を受けないので、高いエネルギー変換効率を示す。燃料電池は、通常、電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体を基本構造とする単セルを複数積層して構成されている。中でも、電解質膜として固体高分子電解質膜を用いた固体高分子電解質型燃料電池は、小型化が容易であること、低い温度で作動すること、などの利点があることから、特に携帯用、移動体用電源として注目されている。
固体高分子電解質型燃料電池では、水素を燃料とした場合、アノード(燃料極)では式(I)の反応が進行する。
→2H+2e (I)
式(I)で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、カソード(酸化剤極)に到達する。そして、式(I)で生じたプロトンは、水和した状態で、固体高分子電解質膜内をアノード側からカソード側に、電気浸透により移動する。
また、酸素を酸化剤とした場合、カソードでは式(II)の反応が進行する。
2H+(1/2)O+2e→HO (II)
カソードで生成した水は、主としてガス拡散層を通り、外部へと排出される。このように、燃料電池は、水以外の排出物がなく、クリーンな発電装置である。
燃料電池においては、長期間燃料電池を運転することにより、燃料電池の構成材料である金属材料中に含有されるイオン性不純物や無機不純物の溶出が起こる。このように溶出した不純物に起因する触媒被毒から触媒活性を回復させる技術として、特許文献1には、電解質膜の両面に燃料極の触媒層とガス拡散層及び酸化剤極の触媒層とガス拡散層をそれぞれ配置してなる膜電極接合体からなり、前記燃料極及び前記酸化剤極にそれぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を受けて発電する燃料電池を備える燃料電池システムにおいて、前記燃料電池の前記酸化剤極の前記触媒層の含水量を所定値以上とし、電気化学的処理により触媒活性を回復させる触媒活性回復手段を備え、前記触媒活性回復手段は、酸化剤極電位を所定時間、自然電位より高い電位とすることを特徴とする燃料電池システムが開示されている。
特開2007−207669号公報
特許文献1に開示された燃料電池システムは、請求項4に記載されているように、電極触媒が硫黄被毒した場合に対する回復手段のみに特化している。したがって、このような燃料電池システムは、他の被毒原因による電極触媒の触媒活性の回復を達成できるものではない。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、触媒活性の低減を防止する燃料電池システムを提供することを目的とする。
本発明の燃料電池システムは、高分子電解質膜の一面側にアノード触媒層を備えるアノード電極を備え、他面側にカソード触媒層を備えるカソード電極を備える、膜・電極接合体を備える単セルを備える燃料電池を備える燃料電池システムであって、コア金属材料を含むコア部、及び、当該コア部を被覆し、かつ、シェル金属材料を含むシェル部を備えるコアシェル型触媒微粒子を、前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層の少なくともいずれか一方に含み、前記コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、前記コア金属材料が占める割合の初期値を記憶する記憶手段と、ある所定の段階において、前記コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、前記コア金属材料が占める割合が、前記初期値と比べて増えたか否かを判定する判定手段を備えることを特徴とする。
本発明においては、前記判定手段は、前記コアシェル型触媒微粒子からのガスの脱離を示す検出結果、及び/又は、脱離した当該ガスの検出結果に基づき判定することが好ましい。
本発明においては、前記コアシェル型触媒微粒子の表面の、コア金属材料とシェル金属材料との存在比を比較することにより、より高い精度でコアシェル型触媒微粒子の劣化判定ができるという点から、前記判定手段は、少なくとも前記膜・電極接合体に供給される第1のガス及び/又はその酸化物が前記コア金属材料から脱離する電位における電流ピークと、前記第1のガス及び/又はその酸化物が前記シェル金属材料から脱離する電位における電流ピークとの比較に基づき求められる、前記コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、前記コア金属材料が占める割合に基づき判定してもよい。
本発明においては、前記第1のガスが一酸化炭素であってもよい。
本発明においては、前記コア金属材料が少なくとも前記膜・電極接合体に供給される第2のガスを吸蔵する性質を有する金属材料であり、前記判定手段は、前記第2のガスが前記コア金属材料から放出される際の電位における電流ピークの有無に基づき判定してもよい。
本発明においては、より高い精度でコアシェル型触媒微粒子の劣化判定ができるという点から、前記判定手段は、前記電流ピークの積算値に基づきさらに判定してもよい。
本発明においては、前記第2のガスが水素ガスであってもよい。
本発明においては、前記第2のガスが前記コア金属材料により吸蔵されやすくなるため、前記判定手段により精確な判定が可能となるという点から、酸化剤ガスが前記カソード電極に供給され、前記判定手段が実行される際の前記酸化剤ガスの供給量が、通常運転時の酸化剤ガスの供給量よりも低くてもよい。
本発明においては、コアシェル型触媒微粒子表面に析出したコア金属材料を除去できるという点から、前記判定手段により、前記コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、前記コア金属材料が占める割合が、前記初期値と比べて増えたと判定された場合に、前記コア金属材料の標準電極電位よりも高い電圧が前記燃料電池に付与されてもよい。
本発明においては、シェル金属材料を溶出させることなく、コアシェル型触媒微粒子表面に析出したコア金属材料を除去できるという点から、前記コア金属材料の標準電極電位が、前記シェル金属材料の標準電極電位未満であり、前記燃料電池に付与される電圧が、前記コア金属材料の標準電極電位以上、前記シェル金属材料の標準電極電位未満の範囲内であってもよい。
本発明においては、溶出したコア金属材料を前記固体電解質膜中の所望の厚み方向位置に析出させることができるという点から、前記コア金属材料の標準電極電位よりも高い電圧が前記燃料電池に付与される際に、前記アノード電極及び前記カソード電極のうち一方の電極に供給される気体の濃度を、通常供給される当該気体の濃度よりも高くしてもよいし、若しくは、他方の電極に供給される気体の濃度を、通常供給される当該気体の濃度よりも低くしてもよいし、又は、これらの気体の濃度制御を同時に行ってもよい。
本発明においては、カソード電極から溶出したコア金属材料を、前記固体電解質膜中のアノード電極に近い厚み方向位置に析出させることができるという点から、前記コアシェル型触媒微粒子が、前記カソード触媒層のみに含まれ、前記コア金属材料の標準電極電位よりも高い電圧が前記燃料電池に付与される際に、前記カソード電極に供給される酸化剤ガスの濃度を、通常供給される当該酸化剤ガスの濃度よりも高くしてもよいし、若しくは、前記アノード電極に供給される燃料ガスの濃度を、通常供給される当該燃料ガスの濃度よりも低くしてもよいし、又は、これらの気体の濃度制御を同時に行ってもよい。
本発明においては、特別に所定のガスを供給することなく、コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、コア金属材料が占める割合が初期値と比較して増えたか否かを判定することができるという点から、前記カソード電極において発生した気体を検出する検出手段を備え、前記判定手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて判定してもよい。
本発明においては、前記カソード電極の前記カソード触媒層が、触媒担体としてカーボン担体を含み、前記検出手段が二酸化炭素を検出するものであってもよい。
本発明によれば、初期段階及び/又はある所定の段階における、前記コアシェル型触媒微粒子の表面上に前記コア金属材料が占める割合を、当該割合の初期値と比較することにより、前記コアシェル型触媒微粒子の劣化を検知できる。
本発明に使用される燃料電池の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。 CO供給源を搭載した本発明の燃料電池システムの一実施形態の模式図である。 判定手段(1)を実行するルーチンの一例を示したフローチャートである。 水素ガスを供給した後のパラジウム触媒微粒子のボルタモグラム等を並べて示した図である。 本発明の燃料電池システムの一実施形態の模式図である。 判定手段(2)及びコアシェル型触媒微粒子の劣化を回復させる手段を実行するルーチンの一例を示したフローチャートである。 気体濃度の制御を行った際の、膜・電極接合体中の電解質膜における気体濃度の分布を示す模式図である。 通常の気体濃度制御下における、膜・電極接合体中の電解質膜における気体濃度の分布を示す模式図である。 COセンサを搭載した本発明の燃料電池システムの一実施形態の模式図である。 判定手段(3)を実行するルーチンの一例を示したフローチャートである。
本発明の燃料電池システムは、高分子電解質膜の一面側にアノード触媒層を備えるアノード電極を備え、他面側にカソード触媒層を備えるカソード電極を備える、膜・電極接合体を備える単セルを備える燃料電池を備える燃料電池システムであって、コア金属材料を含むコア部、及び、当該コア部を被覆し、かつ、シェル金属材料を含むシェル部を備えるコアシェル型触媒微粒子を、前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層の少なくともいずれか一方に含み、前記コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、前記コア金属材料が占める割合の初期値を記憶する記憶手段と、ある所定の段階において、前記コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、前記コア金属材料が占める割合が、前記初期値と比べて増えたか否かを判定する判定手段を備えることを特徴とする。
従来、燃料電池用電極触媒として、白金等の高い触媒活性を有する金属が採用されてきた。しかし、白金等は非常に高価であるにも関わらず、触媒反応は白金粒子表面のみで生じ、粒子内部は触媒反応にほとんど関与しない。したがって、白金触媒の、材料コストに対する触媒活性は必ずしも高いものではなかった。
このような課題に対し、発明者らは、コア部と、当該コア部を被覆するシェル部を備えるコアシェル型触媒に着目した。当該コアシェル型触媒は、コア部に比較的材料コストの低い材料を用いることにより、触媒反応にほとんど関与しない粒子内部を、低いコストで形成することができる。
コアシェル型触媒特有の問題として、長時間使用後、コア部を構成するコア金属材料が拡散によりシェル部の上に析出することにより、コアシェル型触媒の触媒活性が低下するという問題がある。単に燃料電池の温度を上昇させるだけではコア金属材料は溶出しないため、このような劣化からの回復は、従来技術では困難であった。
また、一度シェル部の一部が溶出し、シェル部に欠陥が生じると、コア部まで溶出してコアシェル構造が破壊され、その結果、コアシェル型触媒全体の触媒活性が急激に低下する問題がある。この問題は、特に、コア部に用いられた材料の標準電極電位が、シェル部に用いられた材料の標準電極電位よりも低い場合に顕著に生じる。シェル部が厚いコアシェル型触媒を用いれば耐久性の問題は改善できるが、シェル部の厚みが厚いコアシェル型触媒は、高価な白金等の貴金属使用量が増えるためコストが増加する。
発明者らは、鋭意努力の結果、コアシェル型触媒微粒子の表面積に対してコア金属材料が占める割合を、当該割合の初期値と比較することにより、コアシェル型触媒微粒子の劣化が検知でき、かつ、当該検知結果を基に劣化を回復できる方法を見出し、本発明を完成させた。
以下、本発明に使用されるコアシェル型触媒微粒子、及び当該コアシェル型触媒微粒子を含む燃料電池について説明した後、本発明の燃料電池システムについて順に説明する。
1.本発明に使用されるコアシェル型触媒微粒子
本発明に使用されるコアシェル型触媒微粒子は、コア金属材料を含むコア部、及び、当該コア部を被覆し、かつ、シェル金属材料を含むシェル部を備える。シェル金属材料は触媒機能の観点から、コア金属材料は主にコスト面の観点から、それぞれ材料選択がされることが好ましい。
コア部の溶出をより抑制できるという観点から、コア部に対するシェル部の被覆率が、0.9〜1であることが好ましい。仮に、コア部に対するシェル部の被覆率が、0.9未満であるとすると、電気化学反応においてコア部が溶出してしまい、その結果、コアシェル型触媒微粒子が劣化してしまうおそれがある。
なお、ここでいう「コア部に対するシェル部の被覆率」とは、コア部の全表面積を1とした時の、シェル部によって被覆されているコア部の面積の割合のことである。当該被覆率を算出する方法の一例としては、TEMによってコアシェル型触媒微粒子の表面の数か所を観察し、観察された全面積に対する、シェル部によってコア部が被覆されていることが観察によって確認できた面積の割合を算出する方法が挙げられる。
X線光電子分光(XPS:X−ray photoelectron spectroscopy)や、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS:Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)等を用いて、コアシェル型触媒微粒子の最表面に存在する成分を調べることによって、コア部に対するシェル部の被覆率を算出することもできる。
コア部としては、結晶系が立方晶系であり、a=3.60〜4.08Åの格子定数を有する金属結晶を含むコア部を採用することができる。このような金属結晶を形成する材料の例としては、パラジウム、銅、ニッケル、ロジウム、銀、金及びイリジウム、並びにこれらの合金等の金属材料を挙げることができ、この中でも、パラジウムをコア金属材料として用いることが好ましい。
一方、シェル部としては、結晶系が立方晶系であり、a=3.80〜4.08Åの格子定数を有する金属結晶を含むシェル部を採用することができる。このような金属結晶を形成する材料の例としては、白金、金及びイリジウム、並びにこれらの合金等の金属材料を挙げることができ、この中でも、白金をシェル部に含むことが好ましい。
上記格子定数を有するコア金属材料、及び、上記格子定数を有する金属結晶を含むシェル部を共に採用することにより、コア部−シェル部間において格子不整合が生じることがなく、したがって、コア部に対するシェル部の被覆率の高いコアシェル型触媒微粒子を得ることができる。
本発明に使用されるコアシェル型触媒微粒子は、コア部に対して、単原子層のシェル部が被覆していることが好ましい。このような微粒子は、2原子層以上のシェル部を有するコアシェル型触媒と比較して、シェル部における触媒性能が極めて高いという利点、及び、シェル部の被覆量が少ないため材料コストが低いという利点がある。
なお、本発明に使用されるコアシェル型触媒微粒子の平均粒径は、4〜20nmであることが好ましい。
本発明に使用されるコアシェル型金属ナノ微粒子のシェル部は、好ましくは単原子層であるため、シェル部の厚さは、好ましくは0.17〜0.23nmである。したがって、コアシェル型金属ナノ微粒子の平均粒径に対し、シェル部の厚さがほぼ無視でき、コア部の平均粒径と、コアシェル型金属ナノ微粒子の平均粒径とがほぼ等しいことが好ましい。
本発明に使用されるコアシェル型触媒微粒子は、担体に担持されていてもよい。特に、電極触媒層に導電性を付与するという観点から、担体が導電性材料であることが好ましい。
担体として使用できる導電性材料の具体例としては、ケッチェンブラック(商品名:ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製)、バルカン(商品名:Cabot社製)、ノーリット(商品名:Norit社製)、ブラックパール(商品名:Cabot社製)、アセチレンブラック(商品名:Chevron社製)等の炭素粒子や、炭素繊維等の導電性炭素材料;金属粒子や金属繊維等の金属材料;が挙げられる。
次に、本発明に使用されるコアシェル型触媒微粒子の製造方法について説明する。
コアシェル型触媒微粒子の製造方法は、少なくとも、(1)コア微粒子を準備する工程、及び、(2)コア部にシェル部を被覆する工程を有する。本製造方法は、必ずしも上記2工程のみに限定されることはなく、上記2工程以外にも、例えば、後述するようなろ過・洗浄工程、乾燥工程、粉砕工程等を有していてもよい。
以下、上記工程(1)及び(2)並びにその他の工程について、順に説明する。
本明細書においては、金属結晶の所定の結晶面の表記として、当該結晶の化学組成を示す化学式(単体の場合は元素記号)に結晶面を併記したものを用いる。例えば、Pd{100}面とは、パラジウム金属結晶の{100}面を意味する。また、本明細書においては、結晶面の表記について、等価な面群を中カッコで括って表す。例えば、(110)面、(101)面、(011)面、(**0)面、(*0*)面、(0**)面(以上、アスタリスク(*)で示した数字は、「1に上線」を意味する)等は、全て{110}面として表記する。
1−1.コア微粒子を準備する工程
本工程は、上述したコア金属材料を含むコア微粒子を準備する工程である。
コア微粒子として、当該微粒子の表面に、コア金属材料の{100}面を少ない割合で有する微粒子を準備してもよい。コア金属材料の{100}面以外の結晶面を選択的に有するコア微粒子の製造方法には、従来から知られている方法を採用できる。
例えば、コア微粒子がパラジウム微粒子である場合に、パラジウム微粒子表面に、Pd{111}面が選択的に現れたものを製造する方法は、文献(乗松 他,触媒 vol.48(2),129(2006))等に記載されている。
コア微粒子上の結晶面を測定する方法としては、例えば、TEM等によってコア微粒子の表面の数か所を観察する方法が挙げられる。
コア微粒子として、コア部の説明において上述した金属材料を用いることができる。コア微粒子は、担体に担持されていてもよい。担体の例は、上述した例の通りである。
コア微粒子の平均粒径は、上述したコアシェル型触媒微粒子の平均粒径以下であれば、特に限定されない。
ただし、コア微粒子としてパラジウム微粒子を使用する場合には、パラジウム微粒子の平均粒径が大きい程、粒子表面に占めるPd{111}面の面積の割合が高くなる。これは、Pd{111}面、Pd{110}面及びPd{100}面の内、Pd{111}面が最も化学的に安定した結晶面であるためである。したがって、コア微粒子としてパラジウム微粒子を使用する場合には、パラジウム微粒子の平均粒径は、10〜100nmであることが好ましい。なお、パラジウム微粒子1つ当たりのコストに対する、パラジウム微粒子の表面積の割合が高いという観点から、パラジウム微粒子の平均粒径は、10〜20nmであることが特に好ましい。
1−2.コア部にシェル部を被覆する工程
本工程は、上記コア微粒子をコア部として、当該コア部にシェル部を被覆する工程である。
コア部に対するシェル部の被覆は、1段階の反応を経て行われてもよいし、多段階の反応を経て行われてもよい。
以下、2段階の反応を経てシェル部の被覆が行われる例について主に説明する。
2段階の反応を経てコア部に対するシェル部の被覆が行われる工程としては、少なくとも、コア微粒子をコア部として、当該コア部に単原子層を被覆する工程、及び、当該単原子層を、シェル部に置換する工程を有する例が挙げられる。
本例の具体例としては、アンダーポテンシャル析出法によって予めコア部表面に単原子層を形成した後、当該単原子層をシェル部に置換する方法が挙げられる。アンダーポテンシャル析出法としては、Cu−UPD法を用いることが好ましい。
特に、コア微粒子としてパラジウム微粒子を使用し、シェル部に白金を使用する場合には、Cu−UPD法によって、白金の被覆率が高く耐久性に優れるコアシェル型触媒微粒子を製造できる。これは、上述したように、Cu−UPD法によって、Pd{111}面やPd{110}面に銅を被覆率1で析出させることができるためである。
以下、Cu−UPD法の具体例について説明する。
まず、導電性炭素材料に担持されたパラジウム(以下、Pd/Cと称する)粉末を水に分散させ、ろ過して得たPd/Cペーストを電気化学セルの作用極に塗工する。当該作用極としては、白金メッシュや、グラッシーカーボンを用いることができる。
次に、電気化学セルに銅溶液を加え、当該銅溶液中に上記作用極、参照極及び対極を浸し、Cu−UPD法により、パラジウム粒子の表面に銅の単原子層を析出させる。具体的な析出条件の一例を下記に示す。
・銅溶液:0.05mol/L CuSOと0.05mol/L HSOの混合溶液(窒素をバブリングさせる)
・雰囲気:窒素雰囲気下
・掃引速度:0.2〜0.01mV/秒
・電位:0.8V(vsRHE)から0.4V(vsRHE)まで掃引した後、0.4V(vsRHE)で電位を固定する。
・電位固定時間:60〜180分間
上記電位固定時間が終了した後、速やかに作用極を白金溶液に浸漬させ、イオン化傾向の違いを利用して銅と白金とを置換メッキする。置換メッキは、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。白金溶液は特に限定されないが、例えば、0.1mol/L HClO中にKPtClを溶解させた白金溶液が使用できる。白金溶液は十分に攪拌し、当該溶液中には窒素をバブリングさせる。置換メッキ時間は、90分以上確保することが好ましい。
上記置換メッキによって、パラジウム粒子表面に白金の単原子層が析出した、コアシェル型触媒微粒子が得られる。
シェル部を構成する材料としては、シェル部の説明において上述した金属材料を用いることができる。
1−3.その他の工程
上記コア微粒子を準備する工程の前には、コア微粒子の担体への担持が行われてもよい。コア微粒子の担体への担持方法には、従来から用いられている方法を採用することができる。
上記コア部にシェル部を被覆する工程の後には、コアシェル型触媒微粒子のろ過・洗浄、乾燥及び粉砕が行われてもよい。
コアシェル型触媒微粒子のろ過・洗浄は、製造された微粒子のコアシェル構造を損なうことなく、不純物を除去できる方法であれば特に限定されない。当該ろ過・洗浄の例としては、超純水を加えて吸引ろ過する例が挙げられる。超純水を加えて吸引ろ過する操作は、10回程度繰り返すことが好ましい。
コアシェル型触媒微粒子の乾燥は、溶媒等を除去できる方法であれば特に限定されない。当該乾燥の例としては、60℃程度の温度条件下で、真空乾燥機によって12時間程度乾燥する例が挙げられる。
コアシェル型触媒微粒子の粉砕は、固形物を粉砕できる方法であれば特に限定されない。当該粉砕の例としては、乳鉢等を用いた粉砕や、ボールミル、ビーズミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等のメカニカルミリングが挙げられる。
2.コアシェル型触媒微粒子を含む燃料電池
本発明に使用される燃料電池は、上述したコアシェル型触媒微粒子を、アノード触媒層及びカソード触媒層の少なくともいずれか一方に含む。
図1は、本発明に使用される燃料電池の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。燃料電池100は、水素イオン伝導性を有する固体高分子電解質膜(以下、単に電解質膜ということがある)1と、前記電解質膜1を挟んだ一対のカソード電極6及びアノード電極7とでなる膜・電極接合体8を含み、さらに前記膜・電極接合体8を電極の外側から挟んだ一対のセパレータ9及び10とでなる。セパレータと電極の境界にはガス流路11及び12が確保されている。通常は電極として、電解質膜側から順に触媒層とガス拡散層とを積層して構成されたものが用いられる。すなわち、カソード電極6はカソード触媒層2とガス拡散層4とを積層したものからなり、アノード電極7はアノード触媒層3とガス拡散層5とを積層したものからなる。
高分子電解質膜とは、燃料電池において使用される高分子電解質膜であり、ナフィオン(商品名)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂のようなフッ素系高分子電解質を含むフッ素系高分子電解質膜の他、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリパラフェニレン等のエンジニアリングプラスチックや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の汎用プラスチック等の炭化水素系高分子にスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ボロン酸基等のプロトン酸基(プロトン伝導性基)を導入した炭化水素系高分子電解質を含む炭化水素系高分子電解質膜等が挙げられる。
電極は、触媒層とガス拡散層とを有する。
アノード触媒層及びカソード触媒層はいずれも、上述したコアシェル型触媒微粒子、導電性材料及び高分子電解質を含有する触媒インクを用いて形成することができる。
高分子電解質としては、上述した高分子電解質膜同様の材料を用いることができる。
触媒担体である導電性粒子としては、カーボンブラック等の炭素粒子や炭素繊維のような導電性炭素材料、金属粒子や金属繊維等の金属材料も用いることができる。導電性材料は、触媒層に導電性を付与するための導電性材料としての役割も担っている。
触媒層の形成方法は特に限定されず、例えば、触媒インクをガス拡散層シートの表面に塗布、乾燥することによって、ガス拡散層シート表面に触媒層を形成してもよいし、或いは、電解質膜表面に触媒インクを塗布、乾燥することによって、電解質膜表面に触媒層を形成してもよい。或いは、転写用基材表面に触媒インクを塗布、乾燥することによって、転写シートを作製し、該転写シートを、電解質膜又はガス拡散シートと熱圧着等により接合した後、転写シートの基材フィルムを剥離する方法で、電解質膜表面上に触媒層を形成するか、ガス拡散層シート表面に触媒層を形成してもよい。
触媒インクは上記のような触媒及び電極用電解質等を、溶媒に溶解又は分散させて得られる。触媒インクの溶媒は、適宜選択すればよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒、又はこれら有機溶媒の混合物やこれら有機溶媒と水との混合物を用いることができる。触媒インクには、触媒及び電解質以外にも、必要に応じて結着剤や撥水性樹脂等のその他の成分を含有させてもよい。
触媒インクの塗布方法、乾燥方法等は適宜選択することができる。例えば、塗布方法としては、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、ダイコート法などが挙げられる。また、乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥などが挙げられる。減圧乾燥、加熱乾燥における具体的な条件に制限はなく、適宜設定すればよい。また、触媒層の膜厚は、特に限定されないが、1〜50μm程度とすればよい。
ガス拡散層を形成するガス拡散層シートとしては、触媒層に効率良く燃料を供給することができるガス拡散性、導電性、及びガス拡散層を構成する材料として要求される強度を有するもの、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等の炭素質多孔質体や、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、ニッケル−クロム合金、銅及びその合金、銀、アルミ合金、亜鉛合金、鉛合金、チタン、ニオブ、タンタル、鉄、ステンレス、金、白金等の金属から構成される金属メッシュ又は金属多孔質体等の導電性多孔質体からなるものが挙げられる。導電性多孔質体の厚さは、50〜500μm程度であることが好ましい。
ガス拡散層シートは、上記したような導電性多孔質体の単層からなるものであってもよいが、触媒層に面する側に撥水層を設けることもできる。撥水層は、通常、炭素粒子や炭素繊維等の導電性粉粒体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水性樹脂等を含む多孔質構造を有するものである。撥水層は、必ずしも必要なものではないが、触媒層及び電解質膜内の水分量を適度に保持しつつ、ガス拡散層の排水性を高めることができる上に、触媒層とガス拡散層間の電気的接触を改善することができるという利点がある。
上記したような方法によって触媒層を形成した電解質膜及びガス拡散層シートは、適宜、重ね合わせて熱圧着等し、互いに接合することで、膜・電極接合体が得られる。
作製された膜・電極接合体は、好ましくは、反応ガス流路を有するセパレータで狭持され、単セルを形成する。セパレータとしては、導電性及びガスシール性を有し、集電体及びガスシール体として機能しうるもの、例えば、炭素繊維を高濃度に含有し、樹脂との複合材からなるカーボンセパレータや、金属材料を用いた金属セパレータ等を用いることができる。金属セパレータとしては、耐腐食性に優れた金属材料からなるものや、表面をカーボンや耐腐食性に優れた金属材料等で被覆し、耐腐食性を高めるコーティングが施されたもの等が挙げられる。このようなセパレータを、適切に圧縮成形又は切削加工することによって、上述した反応ガス流路を形成することができる。
3.本発明の燃料電池システム
本発明の燃料電池システムは、上述した燃料電池を備え、さらに、燃料電池が含むコアシェル型触媒微粒子の表面の初期状態を記憶する記憶手段と、当該コアシェル型触媒微粒子の劣化状況を判定する判定手段を備える。
本発明の燃料電池システムが備える記憶手段は、コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、コア金属材料が占める割合の初期値を記憶する手段である。
ここでいう「コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、コア金属材料が占める割合」の値とは、上述したコア部に対するシェル部の被覆率と関連する値である。すなわち、当該被覆率が高いコアシェル型触媒微粒子は、通常、コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、コア金属材料が占める割合は低い。
なお、シェル部が溶出しコア部がむき出しになったり、遊離したコア金属材料がシェル部表面に付着したりすることにより、コアシェル型触媒微粒子の表面積に対するコア金属材料が占める割合は、初期値よりも低下する。
ここでいう「割合の初期値」とは、必ずしも未使用のコアシェル型触媒微粒子に関する値であることを意味しない。すなわち、ここでいう初期値とは、所定の基準以上の性能を発揮していた時のコアシェル型触媒微粒子に関する値をいう。
どの段階におけるコアシェル型触媒微粒子に関する値を初期値としてもよい。初期値の例としては、未使用のコアシェル型触媒微粒子に関する値、燃料システム始動時のコアシェル型触媒微粒子に関する値、断続的に燃料電池システムを使用する場合における前回システム終了時のコアシェル型触媒微粒子に関する値等を挙げることができる。
初期値は、記憶手段に予め設定されていてもよい。予め設定された初期値は1点のみでもよいし、2点以上であってもよい。また、1又は2以上の初期値のマップが記憶手段に格納され、燃料電池の運転環境によって最適なマップが記憶手段から選び出されてもよい。
燃料電池システム内又はシステム外の他の機器により測定され、当該測定結果により得られた値を初期値としてもよい。その場合、記憶手段と当該測定機器とは電気的に接続されることが好ましい。
なお、記憶手段は、後述する判定手段からフィードバックされた、所定の段階におけるコアシェル型触媒微粒子の劣化状況を示す物性値を、新たに初期値として読み込むものであってもよい。このように初期値を逐次更新することで、コアシェル型触媒微粒子の劣化状況の経時変化データを取得できる。
初期値を記憶する手段の具体例は、予め指定された初期値を記憶するメモリ等の半導体記憶装置や、ハードディスク等の磁気記憶装置等が挙げられる。
本発明の燃料電池システムが備える判定手段は、ある所定の段階において、コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、コア金属材料が占める割合が、上述した初期値と比べて増えたか否かを判定する手段である。
判定手段は、上記記憶手段と電気的に接続され、連動することが好ましい。
判定手段は、コアシェル型触媒微粒子からのガスの脱離を示す検出結果、及び/又は、脱離した当該ガスの検出結果に基づき判定することが好ましい。
ここで、ガスの脱離を検出するとは、ガス自体を検出することではなく、ガス脱離前後のコアシェル型触媒微粒子の物性を比較したり、ガス脱離前後のコアシェル型触媒微粒子表面の電気化学的な変化を観測したりすることによって、ガスの脱離を検出することを意味する。
ここで、ガス自体の検出とは、必ずしも燃料電池外へ放出されたガスのみを検出することを意味しない。ここでいうガス自体の検出とは、コアシェル型触媒微粒子を含む電極触媒層から燃料電池内の他の部材へ漏れ出したガスの検出や、電極触媒層内において発生したガスの検出も含む。
コアシェル型触媒微粒子からのガスの脱離を利用した判定手段の例は、以下の3つである。
・所定のガスがコア金属材料から脱離する電位における電流ピークと、所定のガスがシェル金属材料から脱離する電位における電流ピークとの比較に基づいて判定する手段(判定手段(1))
・所定のガスがコア金属材料から放出される際の電位における電流ピークに基づいて判定する手段(判定手段(2))
・カソード電極において発生した気体を検出する検出手段が備えられ、当該検出手段により得られた検出結果に基づいて判定する手段(判定手段(3))
なお、これら3つの手段のうち、判定手段(1)及び(2)は、コアシェル型触媒微粒子からのガスの脱離を検出し、検出結果に基づいて判定する手段である。一方、判定手段(3)は、コアシェル型触媒微粒子から脱離したガス自体を検出し、検出結果に基づいて判定する手段である。
以下、上記3つの判定手段について順に説明する。
3−1.判定手段(1)
判定手段(1)は、少なくとも前記膜・電極接合体に供給される所定のガス(以下、第1のガスと称する)及び/又はその酸化物がコア金属材料から脱離する電位における電流ピークと、第1のガス及び/又はその酸化物がシェル金属材料から脱離する電位における電流ピークとの比較に基づき求められる、コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、コア金属材料が占める割合に基づき判定する手段である。
上記2種類の電流ピークの測定及びコア金属材料の割合の算出は、判定手段(1)を実行する機器により行われてもよいし、燃料電池システム内の他の機器により行われてもよい。
判定手段(1)により、コアシェル型触媒微粒子の表面の、コア金属材料の割合及びシェル金属材料の割合を比較でき、高い精度でコアシェル型触媒微粒子の劣化判定ができる。
判定手段(1)において使用される第1のガスは、第1のガス及び/又はその酸化物(以下、第1のガス等と称する)がコア金属材料から脱離する電位と、第1のガス等がシェル金属材料から脱離する電位が異なる気体であれば、特に限定されない。コア金属材料及びシェル金属材料の組み合わせによって、最適な気体を第1のガスとして選択し、使用できる。
判定手段(1)において使用される第1のガスの例は、一酸化炭素が挙げられる。以下、一酸化炭素を使用する場合の例について説明する。
一酸化炭素を利用した判定手段の例としては、COストリッピングサイクリックボルタノメトリ(以下、COストリッピングCVと称する)が挙げられる。具体的なCOストリッピングCVの方法としては、一酸化炭素を低電位でコアシェル型触媒微粒子に吸着させた後、電位を高電位側に掃引し、コアシェル型触媒微粒子表面から一酸化炭素の酸化物である二酸化炭素の脱離する電位を調べる方法がある。
文献(ECS Transactions,25(1)1011−1022(2009))によれば、COストリッピングCV測定によって、パラジウム合金コア部からの一酸化炭素脱離ピークが0.82V(vs RHE)に、白金シェル部からの一酸化炭素脱離ピークが0.62V(vs RHE)に、それぞれ現れる。
このような原理を応用すれば、二酸化炭素が発生した時の酸化電流のピークから、コアシェル型触媒微粒子表面に存在するコア金属材料の量を推定することができる。
以下、一酸化炭素を供給する手段として、一酸化炭素供給源(以下、CO供給源と称する)を搭載する場合における、具体的な燃料電池システムの構成について説明する。図2は、CO供給源を搭載した本発明の燃料電池システムの一実施形態の模式図である。なお、図2中、実線の矢印は電気回路を、白矢印はガス流通経路をそれぞれ示す。また、白矢印の向きは、おおよそのガス流通方向を示す。
図2に示すように、本実施形態は、上述した燃料電池、並びに、酸化剤ガス供給源、燃料ガス供給源及び加湿器等の燃料電池の運転に必要な補機の他に、バッテリ等の電力供給機構、モーター等の動力機構を含む。バッテリ等の電力供給機構、及びモーター等の動力機構には、必要に応じて、DC/DCコンバータ又はインバータ等の電力変換装置を付属させてもよい。
燃料ガスとして水素ガスを使用する場合には、水素ガス供給源として水素ガスボンベが使用できる。
酸化剤ガスとして酸素ガスを使用する場合には、酸素ガス供給源として酸素ガスボンベが使用できる。また、酸化剤ガスとして空気を使用する場合には、空気の供給にエアーコンプレッサが使用できる。
燃料電池のカソード触媒層は、上述したコアシェル型触媒微粒子を含む。燃料電池には、さらに、電流計及び電圧計等の電気計器が付属している。
ガス排出路(主に酸化剤ガス排出路)は、バルブAを介してシステム外部とつながっている。バルブAは、燃料電池のガス排出路と燃料電池システム外部とを遮断する役割を果たす。酸化剤ガス供給源及びバルブAを閉じることにより、スタックを隔離し、CO供給源によりスタックのみに一酸化炭素を導入できる。
酸化剤ガス供給源から燃料電池への酸化剤ガス供給路の途中には、ガス流通路の枝が設けられている。当該枝は、バルブBを介して、CO供給源及びCO吸着材とつながる。バルブBは、CO供給源から所定のスタックへの一酸化炭素の供給、及び当該所定のスタックからCO吸着材への余剰の一酸化炭素の吸着を相互に切り替える役割を果たす。
CO供給源としては、一酸化炭素ボンベが例示できる。CO吸着材としては、従来から一酸化炭素吸着に用いられている材料を使用することができる。
さらに、本実施形態は制御装置を備える。制御装置は、酸化剤ガス供給源、燃料ガス供給源、バッテリ、DC/DCコンバータ、モーター、インバータ、加湿器、各種バルブを制御する。
制御装置は、コアシェル型触媒微粒子の表面積に対するコア金属材料が占める割合の初期値を記憶したメモリと接続され、必要に応じて当該初期値をメモリから呼び出す。さらに、制御装置は、電流計及び電圧計から、燃料電池の放電に係る情報のフィードバックを得る。
制御装置は、ポテンショスタットやガルバノスタット等の電気化学測定装置を備えていてもよい。
図3は、判定手段(1)を実行するルーチンの一例を示したフローチャートである。なお、図3中の機器名等は、図2に対応する。また、燃料電池には、酸化剤ガスとして空気が、燃料ガスとして水素が供給されるとする。また、コアシェル型触媒微粒子のコア部はパラジウムを含み、シェル部は白金を含むものとする。
まず、酸化剤ガス供給源及びバルブAを閉じて、スタックのカソード側を密閉する(S1)。バルブAを閉じた状態で十分に時間が経過すると、アノード側に供給された水素がカソード側に透過し、スタック全体が水素、水、窒素で満たされるとともに、スタック内の温度が室温になる。
次に、バッテリを使用して、燃料電池全体に電位をかける(S2)。これは、コアシェル型触媒微粒子表面の酸化物を除去し、当該表面を予め前処理するためである。このとき、電位は各セルあたり0.05V程度とすることが好ましい。必要に応じて、バッテリと燃料電池の間にDC−DCコンバータを設置して、電力変換を行ってもよい。
続いて、バルブBを開けて、CO供給源からスタックへ一酸化炭素を供給する(S3)。一酸化炭素供給により、カソード触媒層中のコアシェル型触媒微粒子に一酸化炭素が吸着する。
一定時間経過後に、バルブBを切り替えて、CO吸着材とスタックとをつなぐ(S4)。コンプレッサ(図示せず)を運転することにより、スタックに残存する余剰の一酸化炭素がCO吸着材に吸着される。
その後、バッテリを使用して、燃料電池の電位を掃引する(S5)。各セルあたり0.05V〜1.0V(vs RHE)の電位を、一定速度で電位を上昇させながら付与する。
このとき、燃料電池の電流値を測定し、電流値のピークが0.8V(vs RHE)以上に現れたか否かを判定する(S6)。
0.8V以上の当該ピークは、コア金属材料であるパラジウムから脱離した二酸化炭素(一酸化炭素の酸化物)に由来する。したがって、0.8V以上の当該ピークは、コアシェル型触媒微粒子の表面にコア金属材料が現れたことを示す。0.8V(vs RHE)以上に電流ピークが現れた場合には、電流ピークを積分して電荷量Qを算出し、コアシェル型触媒微粒子の表面に現れたコア金属材料の割合を推定する(S7)。電荷量Qと予め設定した値Qとを比較し(S8)、QがQを超えた場合には、警告処理を実行する(S9)。なお、電流値のピークが0.8V(vs RHE)以上に現れなかった場合、及び、電荷量QがQ以下の場合には、いずれも判定手段(1)を終了し、通常のシステム起動処理を行う。
なお、0.8V(vs RHE)付近、及び、0.6V(vs RHE)付近に電流値のピークが1つずつ現れた場合、コアシェル型触媒微粒子表面における、白金の量とパラジウムの量を比較することもできる。すなわち、0.8V(vs RHE)付近に現れた電流値のピークは、コア金属材料であるパラジウムから脱離した二酸化炭素に由来し、0.6V(vs RHE)付近に現れた電流値のピークは、シェル金属材料である白金から脱離した二酸化炭素に由来する。したがって、各ピークを積分して電荷量を算出することにより、コアシェル型触媒微粒子の表面積に対するパラジウムが占める割合を算出できる。
以上の様に、判定手段(1)は、コアシェル型触媒微粒子の劣化を、コア部から脱離した気体の酸化電流の増加として検出し、その検出結果を基に判定する。したがって、判定手段(1)を経た警告処理の実行により、燃料電池システムのユーザーにシステムの寿命を知らせたり、燃料電池システムの修理を促したり、燃料電池の運転モードの変更を推奨したりするといった手段をとることができる。
また、コア部から脱離した気体の酸化電流と、シェル部から脱離した気体の酸化電流とを比較することにより、コアシェル型触媒微粒子の表面積に対するコア金属材料の割合を、定量的に算出できる。
3−2.判定手段(2)
判定手段(2)は、コア金属材料が少なくとも膜・電極接合体に供給される所定のガス(以下、第2のガスと称する)を吸蔵する性質を有する金属材料である場合に実行できる手段であり、第2のガスがコア金属材料から放出される際の電位における電流ピークの有無に基づき判定する手段である。
判定手段(2)の判定基準は、単に電流ピークの有無でもよいし、電流ピークの積算値でもよい。電流ピークの積算値に基づいて判定する方が、より高い精度でコアシェル型触媒微粒子の劣化を判定できる。
上記第2のガスは、当該ガスがコア金属材料から放出される際の電位における電流ピークが測定可能な気体であれば、特に限定されない。コア金属材料の種類によって、最適な気体を第2のガスとして選択し、使用できる。
判定手段(2)において使用する第2のガスの例は、水素ガスが挙げられる。以下、パラジウムをコア部に、白金をシェル部に含むコアシェル型触媒微粒子を使用し、水素ガスを供給する場合について説明する。
図4(a)及び(b)は、それぞれ、水素ガスを供給した後のパラジウム触媒微粒子のボルタモグラム、及び水素ガスを供給した後の白金触媒微粒子のボルタモグラムである。図4(c)は、パラジウムをコア部に、白金をシェル部に含むコアシェル型触媒微粒子の、水素ガスを供給した後の、初期のボルタモグラム31である。図4(d)は、前記ボルタモグラム31(実線)と、コア材料のパラジウムがシェル部表面に析出したと推定される場合の、コアシェル型触媒微粒子のボルタモグラム32(破線)を重ねて示した図である。
図4(a)のボルタモグラムには、矢印で示すように、0.05V(vs RHE)付近に電流値のピークがはっきりと確認できる。このピークは、パラジウムに吸着された水素ガスがプロトンに変化した際に流れる電流によるピークである。このピークを、以下、水素吸蔵ピークと称する。
一方、図4(b)及び図4(c)のボルタモグラム、及び図4(d)のボルタモグラム31には、0.05V(vs RHE)付近に水素吸蔵ピークははっきりとは現れない。
以上より、パラジウムをコア部に、白金をシェル部に含むコアシェル型触媒微粒子を長時間使用した後、コア材料のパラジウムがシェル部表面に析出した場合、図4(d)の破線のボルタモグラム32に示すように、0.05V(vs RHE)付近に明確に電流値のピークが現れることが予想できる。
以上の原理から、メモリに記憶させておいた初期のコアシェル型触媒微粒子のボルタモグラムには無い、パラジウムの水素吸蔵ピークが現れた場合には、コアシェル型触媒微粒子表面にパラジウムが析出し、触媒劣化が生じたか、又は、コアシェル型触媒微粒子のシェル部に欠陥が生じてコア部が露出したと推定できる。また、測定したパラジウムの水素吸蔵ピークが、メモリに記憶させておいたパラジウムの初期の水素吸蔵ピークと比べて大きくなった場合、コアシェル型触媒微粒子表面のパラジウムの析出面積が増大し、触媒劣化がより深刻になったことが推定できる。
このような原理を利用して、第2のガスが脱離したことを示す電流ピークから、コアシェル型触媒微粒子の劣化が生じたことを判定できる。
図4のようなボルタモグラムを得る方法の例としては、ポテンショスタットにより、燃料電池中の特定のセル中のコアシェル型触媒微粒子について、電流−電位曲線の測定を行う例が挙げられる。具体的には、電位を例えば0.05V→1.085V→0.05Vのように走査し、その時流れる電流を測定する。
判定手段(2)を実行する際には、カソード電極への酸化剤ガスの供給を遮断して、代わりに窒素ガス等の不活性ガスを供給しつつ、併せて、燃料電池の出力電位を低電位にしてもよい。これにより、燃料電池スタック中のカソード側に窒素が循環し、アノード側に水素が循環する状態となる。
酸化剤ガスは、酸素及び空気を含む。酸化剤ガス供給源は、酸素ボンベ及びエアーコンプレッサを含む。
判定手段によって得られた判定結果を基に、コアシェル型触媒微粒子の劣化を回復させてもよい。
コアシェル型触媒微粒子の劣化を回復させる例としては、電圧を制御してコアシェル型触媒微粒子の表面のコア金属材料を溶出させ除去する例が挙げられる。具体的には、判定手段により、コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、コア金属材料が占める割合が、前記初期値と比べて増えたと判定された場合に、コア金属材料の標準電極電位よりも高い電圧を燃料電池に付与すればよい。
電圧は、燃料電池を開回路にすることにより、自然に上昇する。他にも、電圧の制御は、燃料電池に付属したバッテリ等の電力供給機構、及び必要であればDC/DCコンバータ等の電力変換装置により実現できる。
この際、コア金属材料の標準電極電位が、シェル金属材料の標準電極電位未満であり、燃料電池に付与される電圧が、コア金属材料の標準電極電位以上、シェル金属材料の標準電極電位未満の範囲内であることが好ましい。このように燃料電池に付与される電圧を設定することで、シェル金属材料を溶出させることなく、コアシェル型触媒微粒子表面に析出したコア金属材料を除去できる。例えば、コア金属材料にパラジウムを、シェル金属材料に白金を使用した場合は、0.915V以上、1.188V未満の範囲内に電圧を制御すればよい。
コア金属材料を溶出させるために一時的に上昇させた電圧は、一定時間保持することが好ましい。一定時間電圧を保持することにより、コアシェル触媒表面に析出したコア金属材料を完全に溶出させることができる他に、電極触媒層に溶出したコア金属材料を電解質膜中に拡散移動・析出させて、コアシェル触媒表面に再度コア金属材料が析出することを防ぐことができる。電解質膜中は、通常スルホン酸基等のプロトン伝導性基が存在するため強酸性雰囲気である。したがって、コア金属材料はイオンで存在できず、電解質膜中において析出する。コア金属材料が電解質膜中へ拡散移動しやすいように、加湿器にて燃料電池を加湿してもよい。
ここでいう一定の時間とは、短くて数秒〜数十秒、長くて数分間の長さの時間を指す。
以下、コア金属材料への水素ガスの吸蔵の原理を判定に利用する場合における、具体的な燃料電池システムの構成について説明する。図5は、本発明の燃料電池システムの一実施形態の模式図である。図5に示した構成は、CO供給源、CO吸着材、バルブA及びバルブBが設置されていない他は、図2に示した構成と同様である。
図6は、判定手段(2)及びコアシェル型触媒微粒子の劣化を回復させる手段を実行するルーチンの一例を示したフローチャートである。なお、図6中の機器名等は、図5に対応する。また、燃料電池には、酸化剤ガスとして空気が、燃料ガスとして水素が供給されるとする。また、コアシェル型触媒微粒子のコア部はパラジウムを含み、シェル部は白金を含むものとする。
まず、燃料電池中の一部又は全部のスタックについて、現時点での動作点を確認する(S21)。動作点の確認には、電流計及び電圧計から得られた情報を用いる。
次に、燃料電池の出力電位を低く制御し、かつ、カソード電極への酸化剤ガスの供給を遮断する(S22)。このとき、燃料電池の出力電位は、各セルあたり0.05V程度とすることが好ましい。
続いて、カソード電極へ窒素ガス等の不活性ガスを供給しながら、スタック中の単セルのサイクリックボルタモグラムを測定する(S23)。当該測定結果に基づいて、コアシェル型触媒微粒子の劣化を判定し、触媒活性を回復させる運転の要否を判断する(S24)。
触媒活性を回復させる運転が必要と判断された場合は、パラジウムの標準電極電位以上の電位である、0.9V以上の適切な動作点にシフトする(S25)。ここで、目標時間が経過するまでその電位を維持する(S26)。目標時間経過後、シフト前の動作点に復帰し、触媒活性を回復させる手段が終了する(S27)。
図6に示した一連のルーチンは、燃料電池システム全体の停止処理及び/又は起動処理と組み合わせてもよい。
上述したような、コア金属材料の標準電極電位よりも高い電圧が燃料電池に付与される際に、アノード電極に供給される気体(燃料ガス)及びカソード電極に供給される気体(酸化剤ガス)の各々の濃度の制御を行ってもよい。具体的には、アノード電極及びカソード電極のうち一方の電極に供給される気体の濃度を、通常供給される当該気体の濃度よりも高くするか、若しくは、他方の電極に供給される気体の濃度を、通常供給される当該気体の濃度よりも低くするか、又は、これらの濃度制御を同時に行う。
ここで、気体の濃度は、主に気体の圧力及び組成比で規定することができる。2種類以上の気体成分からなる系の場合、気体の圧力とは、その気体混合物が呈する圧力、すなわち全圧を指す。また、気体の組成比は、分圧で規定することができる。さらに、気体の濃度は、温度等の他の物理変数によっても規定することができる。
ここで、通常供給される気体の濃度とは、燃料電池の通常の運転環境下において、燃料電池に供給される気体の濃度を指す。
通常供給される濃度を有する燃料ガスの例としては、圧力1気圧且つ組成比100%の水素ガスが挙げられる。
通常供給される濃度を有する酸化剤ガスの例としては、全圧1気圧の空気や、圧力1気圧且つ組成比100%の酸素ガスが挙げられる。
気体の濃度を通常供給される当該気体の濃度よりも高くする方法としては、気体の圧力(全圧)を高くすることや、気体の分圧を高くすることが例示できる。例えば、圧力1気圧且つ組成比100%の水素ガスの濃度を高くするには、当該圧力を1気圧から1.5気圧に上げればよい。また、例えば、全圧1気圧の空気中の酸素ガスの濃度を高くするには、空気に酸素ガスをさらに混合して酸素ガスの分圧を上げてもよいし、当該全圧を1気圧から1.5気圧に上げてもよい。
一方、気体の濃度を通常供給される当該気体の濃度よりも低くする方法としては、気体の圧力(全圧)を低くすることや、気体の分圧を低くすることが例示できる。例えば、圧力1気圧且つ組成比100%の水素ガスの濃度を高くするには、当該圧力を1気圧から0.5気圧に下げてもよいし、水素ガスに窒素ガス等の不活性ガスを混合して、水素ガスの組成比を50%としてもよい。さらに、水素ガスを加湿することによって、水素ガス中に水蒸気を混合し、水素ガスの分圧を下げてもよい。また、例えば、全圧1気圧の空気中の酸素ガスの濃度を低くするには、空気に窒素ガス等の不活性ガスをさらに混合して酸素ガスの分圧を下げてもよいし、当該全圧を1気圧から0.5気圧に下げてもよい。さらに、空気を加湿することによって空気中の水蒸気の分圧を上げ、酸素ガスの分圧を下げてもよい。
気体の濃度を制御することにより、いったん溶出したコア金属材料の析出場所を制御することができる。
図8は、通常の気体濃度制御下における、膜・電極接合体中の電解質膜における気体の濃度の分布を示す模式図である。図8(a)は電解質膜の断面模式図であり、図8(b)は図8(a)に相当する電解質膜厚さ方向における気体の濃度の分布を模式的に示すグラフである。なお、膜・電極接合体には酸化剤ガスとして酸素ガスが、燃料ガスとして水素ガスが供給され、かつ、コアシェル型触媒微粒子のコア部がパラジウムを含み、当該コアシェル型触媒微粒子はカソード電極にのみ含まれるものとする。
水素ガスは、酸素ガスと比較して電解質膜への溶解度及び電解質膜中の拡散係数が高い。したがって、図8(b)に示すように、水素ガスの濃度のグラフ21と酸素ガスの濃度のグラフ22が交わる部位である、水素ガスと酸素ガスが理論空燃比(ストイキオメトリー)となる電解質膜厚さ方向の位置xは、カソード電極側により近い。
電解質膜内においては、位置xからカソード電極側にかけての領域1cでは電解質膜内電位が高く、当該電解質膜内電位はカソード電極電位(〜1.0V付近)に近い。一方、位置xからアノード電極側にかけての領域1bでは電解質膜内電位が低く、当該電解質膜内電位はカソード電極電位(約0V)とほぼ同じ電位となる(以上、Journal of Electroanalytical Chemistry 601(2007)251−259より)。
カソード電極から溶出したパラジウムイオンは、濃度勾配により電解質膜内をアノード電極側へ拡散していくが、領域1bでは電位が常にパラジウムの標準電極電位(0.915V)より低いため、金属パラジウムへと還元され、パラジウムが再析出する。パラジウムイオンは、拡散によって位置xに到達すると即座に還元されるため、位置x近傍の領域1aには、金属パラジウムが多く再析出する。
領域1cにおいては、燃料電池の運転制御によって電位が約0.9V以上となった場合は、パラジウムはパラジウムイオンの状態で存在する。また、電位が約0.9V以下となった場合は、金属パラジウムとして再析出する。このように、領域1cにおいては、運転制御による燃料電池の電位変動により、パラジウムの溶解と析出が繰り返される。
したがって、上述のようにシェル部上に析出したパラジウムを運転制御により溶出させても、通常運転時における理論空燃比で運転し続ける場合、コアシェル型触媒微粒子のシェル上に、パラジウムが再度析出してしまうおそれがある。
図7は、気体の濃度の制御を行った際の、膜・電極接合体中の電解質膜における気体の濃度の分布を示す模式図である。図7(a)は電解質膜の断面模式図であり、図7(b)は図7(a)に相当する電解質膜厚さ方向における気体の濃度の分布を模式的に示すグラフである。なお、膜・電極接合体には酸化剤ガスとして酸素ガスが、燃料ガスとして水素ガスが供給され、かつ、コアシェル型触媒微粒子のコア部がパラジウムを含み、当該コアシェル型触媒微粒子はカソード電極にのみ含まれるものとする。
水素ガスの濃度を低くし、酸素ガスの濃度を高くする制御を行うことにより、図7(b)に示すように、水素ガスの濃度のグラフ21と酸素ガスの濃度のグラフ22が交わる部位である、水素ガスと酸素ガスが理論空燃比(ストイキオメトリー)となる電解質膜厚さ方向の位置xは、アノード電極側により近くなる。
なお、位置xからアノード電極側にかけての領域1eは、図8の領域1bよりも狭くなり、位置xからカソード電極側にかけての領域1fは、図8の領域1cよりも広くなる。
位置xの移動に伴い、パラジウムが多く再析出する領域1dの位置もアノード電極側により近くなる。領域1dは、図8の領域1bに含まれるため、気体の濃度を制御して領域1dでパラジウムを再析出させた後、通常制御に戻れば、析出したパラジウムが再び溶出するおそれはない。
このように、コアシェル型触媒微粒子からコア金属材料が溶出していない場合には、気体の濃度を通常どおり制御する。一方、コアシェル型触媒微粒子からコア金属材料が溶出した後は、気体の濃度を制御して燃料ガスと酸化剤ガスが理論空燃比となる電解質膜厚さ方向の位置を移動させることにより、溶出したコア金属材料を電解質膜中の所望の厚み方向位置に析出させることができ、その結果、いったん析出したコア金属材料の再溶解を防ぐことができる。
なお、文献(Journal of Electroanalytical Chemistry,601(2007)251−259)の253−255頁に記載されているように、アノード電極とカソード電極の距離を1とした時の、アノード電極からの厚さxは下記式(III)によって表される。
Figure 2011148466
(上記式(III)中、HH2は膜中における水素のヘンリー定数、DH2は膜中における水素の拡散係数、c H2はアノードにおける水素濃度、HO2は膜中における酸素のヘンリー定数、DO2は膜中における酸素の拡散係数、c O2はカソードにおける酸素濃度を示す。)
気体濃度の制御を実行する具体例を説明する。なお、以下の具体例においては、膜・電極接合体には酸化剤ガスとして空気が、燃料ガスとして水素が供給され、かつ、コアシェル型触媒微粒子のコア部がパラジウムを含み、当該コアシェル型触媒微粒子はカソード電極にのみ含まれるものとする。
コアシェル型触媒微粒子からパラジウムが溶出していないと判定された場合には、アノード側に1気圧の100%水素ガスを、カソード側に1気圧の空気を、それぞれ供給する。すると、カソード側には1気圧の20%酸素ガスが供給されることになる。このようなガス制御下においてコアシェル型触媒微粒子からパラジウムが溶出した場合には、開回路電圧下におけるパラジウムの析出位置は、カソード電極側により近い位置となると予想される(図8)。
なお、供給されたガスの膜・電極接合体内における利用率が経時的に低下する場合もある。このような場合には、予め算出した気体濃度と各ガスの利用率との積に基づいて、パラジウムの析出位置を計算する。
コアシェル型触媒微粒子からパラジウムが溶出したと判定された場合には、気体濃度の制御を行い、アノード側に1気圧の5%水素ガスを、カソード側に1.5気圧の空気を、それぞれ供給する。すると、カソード側には1.5気圧の20%酸素ガスが供給されることになる。このようなガス制御下においては、開回路電圧下におけるパラジウムの析出位置は、アノード電極側により近い位置となると予想される(図7)。
コアシェル型触媒微粒子の劣化を回復させながら、気体濃度を制御してもよい。その結果、燃料電池のセル電位を0.9V以上に上げ、一定時間保持することにより、コアシェル型触媒微粒子表面に析出したコア金属材料を溶出させると共に、アノード電極側の燃料ガスの気体濃度を低く制御し、及び/又は、カソード電極側の酸化剤ガスの気体濃度を高く制御することで、コア金属材料の析出位置をアノード電極側に近づけ、析出したコア金属材料の再溶出を防ぐことができる。燃料ガス濃度の制御又は酸化剤ガス濃度の制御のいずれか一方のみを実行するよりも、両制御を同時に行った方が、析出位置がよりアノード電極側に近づくので効果的である。
3−3.判定手段(3)
判定手段(3)は、検出手段の検出結果に基づいて判定する手段である。ここで、検出手段とは、カソード電極において発生した気体を検出する手段である。当該検出手段は、酸化剤ガス流路に設けられていてもよいし、燃料電池外に設けられていてもよい。
本発明においては、検出手段が二酸化炭素を検出する手段であってもよい。以下、パラジウムをコア部に、白金をシェル部に含むコアシェル型触媒微粒子を使用し、カソード電極のカソード触媒層が、触媒担体としてカーボン担体を含み、検出手段がカソード電極で発生した二酸化炭素を検出する場合について説明する。
文献(ECS Transactions,25(1)1045−1054(2009))によれば、担体であるカーボン上のヒドロキシル基(−OH)由来の一酸化炭素(CO)が生成し、その一酸化炭素が白金上に移動した後に、0.4〜1.0V付近で電気化学的に酸化され、下記式(IV)の反応が進行して二酸化炭素が発生することが知られている。
Pt−CO+Pt−OH→CO+2Pt+H+e (IV)
二酸化炭素は、発生と同時に白金上から脱離する。
この現象は、判定手段(1)の説明で述べたCOストリッピングCVで起きている現象と同様のものであるといえる。したがって、パラジウム上においても同様に、担体であるカーボン上のヒドロキシル基由来の一酸化炭素が電気化学的に酸化され、二酸化炭素が発生すると考えられる。また、一酸化炭素の酸化がピークとなる電位、すなわち、二酸化炭素の発生がピークとなる電位は、判定手段(1)の説明において述べた一酸化炭素脱離ピークの電位に相当する。したがって、二酸化炭素の発生がピークとなる電位は、上述したように、白金上での一酸化炭素の酸化の場合は約0.62V(vs RHE)、パラジウム上での一酸化炭素の酸化の場合は約0.82V(vs RHE)となると推定される。
発明者らは、このような原理を応用することにより、コアシェル型触媒微粒子表面にコア金属材料のパラジウムが占める割合が、前記初期値と比較して増えたか否かを推測する方法を見出した。
より具体的には、上記原理を応用して、燃料電池に対して電位を一定速度で上昇させながら印加する。このとき二酸化炭素センサにて二酸化炭素の発生を検知できれば、二酸化炭素の発生がピークとなった電位の値によって、コアシェル型触媒微粒子表面にコア金属材料のパラジウムが占める割合が、前記初期値と比較して増えたか否かを推定することができる。
なお、二酸化炭素の発生量は微量であり、したがって、一酸化炭素の酸化電流のピークは非常に小さい。このため判定手段(1)と異なり、一酸化炭素の酸化電流を検出することはできず、二酸化炭素センサによって直接二酸化炭素の量を定量する必要がある。
以下、二酸化炭素を検知する手段として、二酸化炭素センサ(以下、COセンサと称する)を搭載する場合における、具体的な燃料電池システムの構成について説明する。図9は、COセンサを搭載した本発明の燃料電池システムの一実施形態の模式図である。図9に示した構成は、CO供給源、CO吸着材及びバルブBが設置されておらず、COセンサが設置される他は、図2に示した構成と同様である。
バルブAは、燃料電池のガス排出路と燃料電池システム外部とを遮断する役割を果たす。酸化剤ガス供給源及びバルブAを閉じることにより、スタックのカソード側を密閉することができる。
ガス排出路の途中には、COセンサへの枝が1本設けられている。
図10は、判定手段(3)を実行するルーチンの一例を示したフローチャートである。なお、図10中の機器名等は、図9に対応する。また、燃料電池には、酸化剤ガスとして空気が、燃料ガスとして水素が供給されるとする。また、コアシェル型触媒微粒子のコア部はパラジウムを含み、シェル部は白金を含むものとする。
まず、酸化剤ガス供給源及びバルブAを閉じて、スタックのカソード側を密閉する(S41)。カソード側を密閉した状態で十分に時間が経過すると、アノード側に供給された水素がカソード側に透過し、スタック全体が水素、水、窒素で満たされるとともに、スタック内の温度が室温になる。
次に、バッテリを使用して、燃料電池全体に電位をかける(S42)。これは、コアシェル型触媒微粒子表面の酸化物を除去し、当該表面を予め前処理するためである。このとき、各セルあたり0.05V程度とすることが好ましい。必要に応じて、バッテリと燃料電池の間にDC−DCコンバータを設置して、電力変換を行ってもよい。
続いて、バッテリを使用して、燃料電池の電位を掃引する(S43)。各セルあたり0.05V〜1.0V(vs RHE)の電位を、一定速度で電位を上昇させながら付与する。
このとき、COセンサによって二酸化炭素を測定し、二酸化炭素発生量がピークとなる電位Eを検出する。その電位Eが0.8V以上の電位かどうかを判定する(S44)。電位Eが0.8V以上の電位である場合には、警告処理を実行する(S45)。なお、電位Eが0.8V未満の電位である場合には、判定手段(3)を終了し、通常のシステム起動処理を行う。
このように発生した気体を感知するセンサを予め搭載することにより、ガスボンベ等を車載してガスを膜・電極接合体に供給する必要が無い。したがって、このような燃料電池システムを搭載した車両は、総重量が軽いため燃費を向上させることができ、かつ、車の衝突時及び修理時の安全性を向上させることができる。
1 固体高分子電解質膜
1a 固体高分子電解質膜中における、位置x近傍の領域
1b 固体高分子電解質膜中における、位置xからアノード電極側にかけての領域
1c 固体高分子電解質膜中における、位置xからカソード電極側にかけての領域
1d 固体高分子電解質膜中における、位置x近傍の領域
1e 固体高分子電解質膜中における、位置xからアノード電極側にかけての領域
1f 固体高分子電解質膜中における、位置xからカソード電極側にかけての領域
2 カソード触媒層
3 アノード触媒層
4,5 ガス拡散層
6 カソード電極
7 アノード電極
8 膜・電極接合体
9,10 セパレータ
11,12 ガス流路
21 水素ガスの濃度のグラフ
22 酸素ガスの濃度のグラフ
31 パラジウムをコア部に、白金をシェル部に含むコアシェル型触媒微粒子の、水素ガスを供給した後の、初期のボルタモグラム
32 コア材料のパラジウムがシェル部表面に析出したと推定される場合の、コアシェル型触媒微粒子のボルタモグラム
100 単セル
,x 水素ガスと酸素ガスが理論空燃比(ストイキオメトリー)となる電解質膜厚さ方向の位置
本発明においては、溶出したコア金属材料を前記固体高分子電解質膜中の所望の厚み方向位置に析出させることができるという点から、前記コア金属材料の標準電極電位よりも高い電圧が前記燃料電池に付与される際に、前記アノード電極及び前記カソード電極のうち一方の電極に供給される気体の濃度を、通常供給される当該気体の濃度よりも高くしてもよいし、若しくは、他方の電極に供給される気体の濃度を、通常供給される当該気体の濃度よりも低くしてもよいし、又は、これらの気体の濃度制御を同時に行ってもよい。
本発明においては、カソード電極から溶出したコア金属材料を、前記固体高分子電解質膜中のアノード電極に近い厚み方向位置に析出させることができるという点から、前記コアシェル型触媒微粒子が、前記カソード触媒層のみに含まれ、前記コア金属材料の標準電極電位よりも高い電圧が前記燃料電池に付与される際に、前記カソード電極に供給される酸化剤ガスの濃度を、通常供給される当該酸化剤ガスの濃度よりも高くしてもよいし、若しくは、前記アノード電極に供給される燃料ガスの濃度を、通常供給される当該燃料ガスの濃度よりも低くしてもよいし、又は、これらの気体の濃度制御を同時に行ってもよい。
本発明に使用されるコアシェル型触媒微粒子は、コア部に対して、単原子層のシェル部が被覆していることが好ましい。このような微粒子は、2原子層以上のシェル部を有するコアシェル型触媒微粒子と比較して、シェル部における触媒性能が極めて高いという利点、及び、シェル部の被覆量が少ないため材料コストが低いという利点がある。
なお、本発明に使用されるコアシェル型触媒微粒子の平均粒径は、4〜20nmであることが好ましい。
本発明に使用されるコアシェル型触媒微粒子のシェル部は、好ましくは単原子層であるため、シェル部の厚さは、好ましくは0.17〜0.23nmである。したがって、コアシェル型触媒微粒子の平均粒径に対し、シェル部の厚さがほぼ無視でき、コア部の平均粒径と、コアシェル型触媒微粒子の平均粒径とがほぼ等しいことが好ましい。
ガス拡散層を形成するガス拡散層シートとしては、触媒層に効率良く燃料を供給することができるガス拡散性、導電性、及びガス拡散層を構成する材料として要求される強度を有するもの、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等の炭素質多孔質体や、チタン、アルミニウム、ニッケル、ニッケル−クロム合金、銅及びその合金、銀、アルミ合金、亜鉛合金、鉛合金、ニオブ、タンタル、鉄、ステンレス、金、白金等の金属から構成される金属メッシュ又は金属多孔質体等の導電性多孔質体からなるものが挙げられる。導電性多孔質体の厚さは、50〜500μm程度であることが好ましい。
ここでいう「割合の初期値」とは、必ずしも未使用のコアシェル型触媒微粒子に関する値であることを意味しない。すなわち、ここでいう初期値とは、所定の基準以上の性能を発揮していた時のコアシェル型触媒微粒子に関する値をいう。
どの段階におけるコアシェル型触媒微粒子に関する値を初期値としてもよい。初期値の例としては、未使用のコアシェル型触媒微粒子に関する値、燃料電池システム始動時のコアシェル型触媒微粒子に関する値、断続的に燃料電池システムを使用する場合における前回システム終了時のコアシェル型触媒微粒子に関する値等を挙げることができる。
この際、コア金属材料の標準電極電位が、シェル金属材料の標準電極電位未満であり、燃料電池に付与される電圧が、コア金属材料の標準電極電位以上、シェル金属材料の標準電極電位未満の範囲内であることが好ましい。このように燃料電池に付与される電圧を設定することで、シェル金属材料を溶出させることなく、コアシェル型触媒微粒子表面に析出したコア金属材料を除去できる。例えば、コア金属材料にパラジウムを、シェル金属材料に白金を使用した場合は、0.915V以上、1.188V未満の範囲内に電圧を制御すればよい。
コア金属材料を溶出させるために一時的に上昇させた電圧は、一定時間保持することが好ましい。一定時間電圧を保持することにより、コアシェル型触媒微粒子表面に析出したコア金属材料を完全に溶出させることができる他に、電極触媒層に溶出したコア金属材料を電解質膜中に拡散移動・析出させて、コアシェル型触媒微粒子表面に再度コア金属材料が析出することを防ぐことができる。電解質膜中は、通常スルホン酸基等のプロトン伝導性基が存在するため強酸性雰囲気である。したがって、コア金属材料はイオンで存在できず、電解質膜中において析出する。コア金属材料が電解質膜中へ拡散移動しやすいように、加湿器にて燃料電池を加湿してもよい。
ここでいう一定の時間とは、短くて数秒〜数十秒、長くて数分間の長さの時間を指す。
気体の濃度を通常供給される当該気体の濃度よりも高くする方法としては、気体の圧力(全圧)を高くすることや、気体の分圧を高くすることが例示できる。例えば、圧力1気圧且つ組成比100%の水素ガスの濃度を高くするには、当該圧力を1気圧から1.5気圧に上げればよい。また、例えば、全圧1気圧の空気中の酸素ガスの濃度を高くするには、空気に酸素ガスをさらに混合して酸素ガスの分圧を上げてもよいし、当該全圧を1気圧から1.5気圧に上げてもよい。
一方、気体の濃度を通常供給される当該気体の濃度よりも低くする方法としては、気体の圧力(全圧)を低くすることや、気体の分圧を低くすることが例示できる。例えば、圧力1気圧且つ組成比100%の水素ガスの濃度を低くするには、当該圧力を1気圧から0.5気圧に下げてもよいし、水素ガスに窒素ガス等の不活性ガスを混合して、水素ガスの組成比を50%としてもよい。さらに、水素ガスを加湿することによって、水素ガス中に水蒸気を混合し、水素ガスの分圧を下げてもよい。また、例えば、全圧1気圧の空気中の酸素ガスの濃度を低くするには、空気に窒素ガス等の不活性ガスをさらに混合して酸素ガスの分圧を下げてもよいし、当該全圧を1気圧から0.5気圧に下げてもよい。さらに、空気を加湿することによって空気中の水蒸気の分圧を上げ、酸素ガスの分圧を下げてもよい。

Claims (14)

  1. 高分子電解質膜の一面側にアノード触媒層を備えるアノード電極を備え、他面側にカソード触媒層を備えるカソード電極を備える、膜・電極接合体を備える単セルを備える燃料電池を備える燃料電池システムであって、
    コア金属材料を含むコア部、及び、当該コア部を被覆し、かつ、シェル金属材料を含むシェル部を備えるコアシェル型触媒微粒子を、前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層の少なくともいずれか一方に含み、
    前記コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、前記コア金属材料が占める割合の初期値を記憶する記憶手段と、
    ある所定の段階において、前記コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、前記コア金属材料が占める割合が、前記初期値と比べて増えたか否かを判定する判定手段を備えることを特徴とする、燃料電池システム。
  2. 前記判定手段は、前記コアシェル型触媒微粒子からのガスの脱離を示す検出結果、及び/又は、脱離した当該ガスの検出結果に基づき判定する、請求の範囲第1項に記載の燃料電池システム。
  3. 前記判定手段は、少なくとも前記膜・電極接合体に供給される第1のガス及び/又はその酸化物が前記コア金属材料から脱離する電位における電流ピークと、前記第1のガス及び/又はその酸化物が前記シェル金属材料から脱離する電位における電流ピークとの比較に基づき求められる、前記コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、前記コア金属材料が占める割合に基づき判定する、請求の範囲第1項又は第2項に記載の燃料電池システム。
  4. 前記第1のガスが一酸化炭素である、請求の範囲第3項に記載の燃料電池システム。
  5. 前記コア金属材料が少なくとも前記膜・電極接合体に供給される第2のガスを吸蔵する性質を有する金属材料であり、
    前記判定手段は、前記第2のガスが前記コア金属材料から放出される際の電位における電流ピークの有無に基づき判定する、請求の範囲第1項又は第2項に記載の燃料電池システム。
  6. 前記判定手段は、前記電流ピークの積算値に基づきさらに判定する、請求の範囲第5項に記載の燃料電池システム。
  7. 前記第2のガスが水素ガスである、請求の範囲第5項又は第6項に記載の燃料電池システム。
  8. 酸化剤ガスが前記カソード電極に供給され、
    前記判定手段が実行される際の前記酸化剤ガスの供給量が、通常運転時の酸化剤ガスの供給量よりも低い、請求の範囲第5項乃至第7項のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  9. 前記判定手段により、前記コアシェル型触媒微粒子の表面積に対する、前記コア金属材料が占める割合が、前記初期値と比べて増えたと判定された場合に、前記コア金属材料の標準電極電位よりも高い電圧が前記燃料電池に付与される、請求の範囲第5項乃至第8項のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  10. 前記コア金属材料の標準電極電位が、前記シェル金属材料の標準電極電位未満であり、
    前記燃料電池に付与される電圧が、前記コア金属材料の標準電極電位以上、前記シェル金属材料の標準電極電位未満の範囲内である、請求の範囲第9項に記載の燃料電池システム。
  11. 前記コア金属材料の標準電極電位よりも高い電圧が前記燃料電池に付与される際に、
    前記アノード電極及び前記カソード電極のうち一方の電極に供給される気体の濃度を、通常供給される当該気体の濃度よりも高くするか、若しくは、
    他方の電極に供給される気体の濃度を、通常供給される当該気体の濃度よりも低くするか、又は、
    これらの気体の濃度制御を同時に行う、請求の範囲第9項又は第10項に記載の燃料電池システム。
  12. 前記コアシェル型触媒微粒子が、前記カソード触媒層のみに含まれ、
    前記コア金属材料の標準電極電位よりも高い電圧が前記燃料電池に付与される際に、
    前記カソード電極に供給される酸化剤ガスの濃度を、通常供給される当該酸化剤ガスの濃度よりも高くするか、若しくは、
    前記アノード電極に供給される燃料ガスの濃度を、通常供給される当該燃料ガスの濃度よりも低くするか、又は、
    これらの気体の濃度制御を同時に行う、請求の範囲第9項又は第10項に記載の燃料電池システム。
  13. 前記カソード電極において発生した気体を検出する検出手段を備え、
    前記判定手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて判定する、請求の範囲第1項又は第2項に記載の燃料電池システム。
  14. 前記カソード電極の前記カソード触媒層が、触媒担体としてカーボン担体を含み、
    前記検出手段が二酸化炭素を検出する、請求の範囲第13項に記載の燃料電池システム。
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