JPWO2011135872A1 - 渦流計測用センサ - Google Patents

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Abstract

本発明に係る渦流計測用センサは、ワークに対して所定の交流励磁信号を印加するための励磁部、及び、印加された交流励磁信号によって計測対象部品に発生する検出信号を検出するための検出部、を備え、正三角形状に構成されたプローブ100を具備するともに、励磁部はプローブ100の各辺に配置された励磁コイル32a・32b・32cを備え、検出部はプローブ100の各頂点に配置された検出コイル41a・41b・41cを備える。

Description

本発明は、渦流計測用センサに関し、より詳細には、渦流計測の精度を向上させる技術に関する。
例えば自動車やオートバイのエンジン部品や足回り部品等の機械部品には、金属(導電体)を高周波誘導加熱して焼入れを行う、高周波焼入れを施した鋼材(以下、鋼材とする)が使用されている。前記鋼材の高周波焼入れにおいては、表面焼入れの硬化層深さ(以下、焼入れ深さとする)及びその硬度について、有効硬化層深さ及び全硬化層深さが規格されている。このため、鋼材の品質を保証するために、焼入れ深さ及び硬度を測定して評価する必要がある。
従来、前記鋼材の焼入れ深さ及び硬度は、サンプルとして抜き取られた鋼材を部分的に切断し、その断面強度をビッカース硬度計等の各種硬度計にて測定し、その結果から焼入れ深さ及び硬度を評価していた。
しかし、この破壊検査による手法ではサンプルとして使用した鋼材が廃棄されるため、材料コストの上昇に繋がっていた。また、検査に要する時間が長くなる上に、インラインでの全数検査が不可能であるため、単発的に発生する不良を発見できずに次工程に搬出してしまう可能性があった。
そこで、非破壊検査である渦流式検査(渦流計測)を用いて、鋼材の焼入れ深さ及び硬度を測定する技術が知られている(例えば、特許文献1から特許文献6、及び、非特許文献1を参照)。
渦流式検査は、交流電流を流した励磁コイルを前記鋼材の近くに接近させて交流磁場を発生させ、該交流磁場によって鋼材に渦電流を生じさせ、該渦電流により誘起された誘導磁場を検出コイルにより検出するものである。つまり、該渦流式検査により、鋼材を廃棄することなく、短時間で、かつ全数検査によって鋼材の焼入れ深さ及び硬度を定量的に測定することが可能となるのである。
前記渦流式検査は、上記の鋼材の焼入れ深さ及び硬度を測定するための焼入れ深さ/硬度測定試験(以下、焼入れ深さ測定試験とする)のほか、検査対象物の表面に生じた割れ等の傷を検出するための探傷試験や、検査対象物に含まれる異物を検出するための異材判別試験等にも用いられている。
前記鋼材は、母材と硬化層に生じるマルテンサイトとの間での導電率に差が生じる。従って、渦電流センサを用いて鋼材を測定すれば、焼入れ深さの変化に伴って検出コイルが検出する電圧(振幅)が変化する。また、検出コイルが検出する電圧は硬化層深さの増加とともに単調に減少するのである。焼入れ深さ測定試験においては、これらの現象を利用して鋼材の焼入れ深さを算定することができるのである。
例えば、前記特許文献1に記載の技術によれば、貫通コイルを用いて軸物部品の軸部の焼入れ深さを検査する構成としている。貫通コイルは、軸線方向を鋼材に対して垂直に向けたコイルでプローブを構成して焼入れ深さ測定試験を行うプローブ型のコイル(以下、単に「プローブ型コイル」とする)に比較して磁界が強く、鋼材との距離を精密に制御する必要もないため、焼入れ深さ測定試験に適しているのである。
しかし、検査対象物である鋼材は貫通コイルに挿通する必要があるため、外径がほぼ一定である軸物部品に限られていた。つまり、例えば等速ジョイント(CVJ:Constant Velocity Joint)に用いられるアウターレース(以下、CVJアウターレースとする)のように、その内周面が複雑な形状で三次元的に焼入れが入っている鋼材については、貫通コイルに挿通することができないために渦流式検査の対象とすることができなかった。
また、前記特許文献2の他の実施例に記載の技術によれば、プローブ型コイルを用いて鋼材の焼入れ深さを測定する構成としている。
また、前記特許文献3には、複数のコイルを有する磁気センサにおいて、コイルの配置間隔を変える技術が記載されている。
また、前記特許文献4には、4つの検出コイルと励磁コイルとを備えた金属被検出体特性特定装置が記載されている。
また、前記特許文献5には、検出コイルが固定されていることを改善した磁気測定装置が記載されている。
また、前記特許文献6には、3つの検出コイルを備えた磁性体に係るセンサ装置が記載されている。
また、前記非特許文献1には、渦流計測を用いた高周波焼入れ深さインライン全数計測技術の確立と量産導入に関する技術が記載されている。
前記焼入れ深さ測定試験については、他の探傷試験や異材判別試験と比較して、ノイズ成分に対する検出する信号成分の比率が小さいため、より高い検出精度が求められる。即ち、前記CVJアウターレースのように、その内周面に複雑な形状で三次元的に焼入れが入っている鋼材を計測対象部品として渦流計測する場合については、プローブの位置決めに関して高い安定性及び再現性が求められるため、渦流式検査を実用化させることが困難であった。
特開2009−236679号公報 特開2007−40865号公報 特開2006−10440号公報 特開2008−185436号公報 特開2009−2681号公報 特開2003−185758号公報
そこで本発明は上記現状に鑑み、内周面に複雑な形状で三次元的に焼入れが入っている鋼材を計測対象部品として渦流計測する場合であっても、プローブの位置決めに関して高い安定性及び再現性を確保して渦流式検査を行うことができる、渦流計測用センサを提供するものである。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、計測対象部品に対して所定の交流励磁信号を印加するための励磁部、及び、印加された前記交流励磁信号によって計測対象部品に発生する検出信号を検出するための検出部、を備え、正多角形状に構成されたプローブを具備する、渦流計測用センサであって、前記励磁部は、正多角形状の前記プローブの各辺に沿って配置された励磁コイルを備え、前記検出部は、正多角形状の前記プローブの各頂点に配置された検出コイルを備え、前記プローブを前記計測対象部品に近接配置した状態で、前記励磁コイルのうち少なくとも1個に交流励磁信号として交流電圧を加え、計測対象部品における前記検出コイルに対向する部分に磁界を発生させるとともに、該磁界により渦電流を生じさせ、該渦電流により発生した誘起電圧を検出信号として前記検出コイルのうち少なくとも1個で検出し、該検出信号に基づいて計測対象部品における渦流計測を行うものである。
請求項2においては、前記検出部は、正多角形状の前記プローブの中心部に配置され、前記検出コイルと発生する起電力を互いに打ち消しあうバランスコイルをさらに備えるものである。
請求項3においては、前記検出コイルは、正多角形状の前記プローブの各頂点から外側に延出可能に構成されるものである。
請求項4においては、前記検出コイルは、正多角形状の前記プローブの各頂点に弾性部材を介して配置されることにより、前記プローブの各頂点から外側に延出可能に構成されるものである。
請求項5においては、前記検出部は、正多角形状の前記プローブにおける少なくとも1つの辺において、前記励磁コイルよりも外側に配置された平滑部用検出コイルをさらに備え、前記プローブを前記計測対象部品に近接配置した状態で、前記励磁コイルのうち少なくとも1個に交流励磁信号として交流電圧を加え、計測対象部品における前記平滑部用検出コイルに対向する部分に磁界を発生させるとともに、それぞれの磁界により渦電流を生じさせ、該渦電流により発生した誘起電圧を検出信号として前記平滑部用検出コイルで検出し、該検出信号に基づいて計測対象部品における渦流計測を行うものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
本発明により、内周面に複雑な形状で三次元的に焼入れが入っている鋼材を計測対象部品として渦流計測する場合であっても、プローブの位置決めに関して高い安定性及び再現性を確保して渦流式検査を行うことができる。
焼入部材の深さ方向の層状態、硬さ及び透磁率の関係を示す図。 本実施形態に係る渦流計測を行うための装置構成を示す模式図。 渦流計測における交流励磁信号と検出信号との関係を示す図。 (a)は第一実施形態に係る渦流計測用センサを示す正面図、(b)は同じく渦流計測用センサを示す平面図。 (a)は第一実施形態に係る渦流計測用センサの第一実施例で生じる磁界分布を示した図、(b)は同じく第二実施例で生じる磁界分布を示した図。 (a)は渦流計測の計測対象部品であるCVJアウターレースを示した切欠断面図、(b)は図6(a)におけるA−A線断面図。 (a)は第一実施形態に係る渦流計測用センサによる計測状態を示した端面図、(b)は同じく渦流計測用センサによる計測状態を示した平面図。 (a)は第二実施形態に係る渦流計測用センサを示す正面図、(b)は同じく渦流計測用センサを示す平面図。 (a)から(c)はそれぞれ第二実施形態に係る渦流計測用センサによる計測状態を順に示した端面図。 (a)は第二実施形態に係る渦流計測用センサによる計測状態を示した拡大断面図、(b)は同じく渦流計測用センサによる計測結果を示した図。 (a)は第三実施形態に係る渦流計測用センサによる第一実施例での計測状態を示した断面図、(b)は同じく第二実施例での計測状態を示した断面図。
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
本発明は渦流計測用センサが有する、励磁部である励磁コイル、及び、検出部である検出コイルを、それぞれ複数のコイルによって構成するとともに、それらのコイルの配置や連結方法等を工夫することにより、渦流計測の適用範囲の拡大を図ろうとするものである。以下、本発明の実施形態の一例を説明する。なお、本発明の実施の形態では、渦流計測用センサによる渦流計測が高周波焼入等による焼入部品の焼入品質(焼入深さ・焼入硬さ)の検査に用いられる場合を主な例として説明する。つまり、渦流計測用センサを用いた渦流計測が行われることにより、計測対象部品である焼入部品の焼入品質が検査される。
なお、本発明に係る渦流計測用センサは、焼入れ深さ測定試験に限らず、探傷試験や異材判別試験等に用いることが可能である。
図1に、焼入が施された鋼材(S45C等)である焼入部材の深さ(表面からの距離)方向の層状態、硬さ及び透磁率の関係を示す。図1に示すように、焼入部材においては、その概略的な組織構成として、表面側から、焼入が施された部分である硬化層1と、母材の部分である母層2とが、境界層3を介して形成される。硬さ変化曲線4を参照すると、硬化層1と母層2とは異なる硬さとなり、硬化層1の硬さが母層2のそれよりも大きくなる。境界層3においては、硬さは硬化層1側から母層2側にかけて漸減する。硬さの具体例としては、ビッカース硬さ(Hv)で、硬化層1ではHv=600〜700、母層2ではHv=300程度の硬さを示す。
一方、透磁率変化曲線5を参照すると、焼入部材の表面からの距離に対する透磁率の変化は、焼入部材の表面からの距離に対する硬さの変化に対して略逆比例の関係となる。つまり、透磁率については、硬化層1の透磁率が母層2のそれよりも小さくなるとともに、境界層3においては硬化層1側から母層2側にかけて漸増する。本実施形態に係る渦流計測においては、このような焼入部材における、表面からの距離に対する硬さと透磁率との関係が利用される。
本実施形態に係る渦流計測を行うための装置構成の概略(計測原理)について、図2を用いて説明する。図2に示すように、渦流計測においては、計測対象部品であるワーク(磁性体)6の計測部位6aに対して、励磁部である励磁コイル7及び検出部である検出コイル8を有する渦流計測用センサ9が所定の位置にセットされる。このような構成において、励磁コイル7に電流が供給されると、励磁コイル7の周囲に磁界が発生する。すると、電磁誘導によって磁性体であるワーク6の計測部位6aの表面近傍に渦電流が発生する(図2中の矢印C1参照)。計測部位6aの表面における渦電流の発生にともない、検出コイル8を磁束が貫通し、検出コイル8に誘起電圧が発生する。そして、検出コイル8によって誘起電圧が計測されるのである。
励磁コイル7は、その両端(両端子)が、交流電源10に接続される。交流電源10は、励磁コイル7に対して所定の交流励磁信号(励磁用交流電圧信号)V1を印加する。検出コイル8は、その両端(両端子)が、計測装置11に接続される。計測装置11は、励磁コイル7に交流電源10からの交流励磁信号V1が印加されたときの検出コイル8から得られる検出信号(前記誘起電圧についての電圧信号)V2の大きさと、検出信号V2の交流励磁信号V1に対する位相差(位相遅れ)Φ(図3参照)とを検出する。ここで、計測装置11には、位相差Φを検出するため、増幅された位相検波として、交流励磁信号V1(波形)が与えられる。
検出コイル8によって検出される検出信号V2は、計測部位6a(ワーク6)の透磁率を反映する。つまり、計測部位6aの透磁率が高くなると、前述のような渦電流の発生にともなう磁束が増して検出信号V2が大きくなる。逆に、計測部位6aの透磁率が低くなると、渦電流の発生にともなう磁束が減って検出信号V2が小さくなる。この渦電流に基づく検出信号V2を定量化(数値化)するため、図3に示すように、検出信号V2の大きさの値である振幅値Yと、検出信号V2の交流励磁信号V1に対する位相差Φに起因する値である値X(=YcosΦ)とが着目され、次のような知見が得られている。
まず、検出信号V2の振幅値Yは、焼入表面硬さ(焼入された部分の硬さ)との間に相関を有するということがある。すなわち、図1における硬さ変化曲線4と透磁率変化曲線5との比較からわかるように、焼入表面硬さが低いときには透磁率は高いという関係がある。透磁率が高いと、交流励磁信号V1が励磁コイル7に印加されたときに生じる磁束は増し、計測部位6aの表面に誘導される渦電流も増大する。これにともない、検出コイル8によって検出される検出信号V2の振幅値Yも増大する。したがって、逆に、検出コイル8によって検出される検出信号V2の振幅値Yから、渦電流が発生している計測部位6aを貫く磁束、つまり透磁率が導かれる。これにより、図1に示す硬さ変化曲線4と透磁率変化曲線5との関係から焼入表面硬さがわかる。
次に、検出信号V2の交流励磁信号V1に対する位相差Φに起因する値Xは、焼入深さ(焼入硬化層の深さ)との間に相関を有するということがある。すなわち、焼入深さが深くなること、つまり焼入部材において焼入された硬化層1が増大することは、透磁率の低い範囲が深さ方向に増すこととなり、交流励磁信号V1に対して検出信号V2の位相遅れが増すこととなる。これにより、位相差Φに起因する値の大小から、焼入深さの深浅がわかる。
以上のような計測原理によって焼入部品の焼入品質の検査を行うための渦流計測においては、前述したように励磁コイル及び検出コイルを有する渦流計測用センサが用いられる。以下、渦流計測用センサの構成を、本発明の実施形態として説明する。
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態に係る渦流計測用センサについて、図4から図7を用いて説明する。
本実施形態に係る渦流計測用センサはその先端に、図4(a)及び(b)に示す如く励磁部及び検出部を備えて正三角形状に構成されたプローブ100を有する。励磁部は前記の如く、計測対象部品であるワークに対して所定の交流励磁信号(前記交流励磁信号V1参照)を印加する。検出部は、前記交流励磁信号が印加されたワークから渦電流による検出信号(前記検出信号V2参照)を検出するのである。
なお、本明細書ではプローブ100について、図4(a)における上側の面を上面、下側の面を下面とし、同じく右側の面を右側面、左側の面を左側面とし、紙面手前側の面を前面、紙面奥行側の面を後面として説明する。
前記プローブ100は、渦流計測用センサの先端方向(ワークの方向)に延出する図示しないロッドの先端に配設されている。そして、該ロッドは渦流計測用センサの内部において軸心方向に摺動可能に構成されている。即ち、プローブ100はワークに対する相対距離を可変に構成されているのである(図7(a)参照)。また、ワークのプローブ100と対向する面に対して直交する方向の軸を中心として渦流計測用センサを回転させることで、プローブ100のワークに向かう姿勢を変化させることも可能である(図7(b)参照)。
本実施形態においては後述するように、ワークが6個のボール溝を有するCVJアウターレースであるため、プローブ100は図4(b)に示す如く正三角形状に構成することが好適である(図6(b)及び図7(b)参照)。なお、プローブ100の形状は正三角形に限定されず、他の正多角形(例えば正方形等)の形状とすることも可能である。詳細には、計測対象部品であるワークの形状に応じて適切な形状を採用することができる。
前記励磁部は、前記プローブ100の各辺に配置された、ソレノイドコイルである第一励磁コイル32a、第二励磁コイル32b、及び、第三励磁コイル32cを備える。
具体的には図4(b)に示す如く、プローブ100を構成し、角が切り落とされた正三角形状(略六角形状)に形成されたケース21の各辺に沿って、即ちその長手方向がケース21の各辺の方向と平行になるように、フェライトやパーマロイなどの透磁率の高い磁性体からなる円柱状の第一コア31a、第二コア31b、及び、第三コア31cが配設される。そして、それぞれのコア31a〜31cの周囲に周方向に励磁コイル32a〜32cが巻きつけられるのである。また、それぞれ励磁コイル32a〜32cの両端(両端子)は、図示しない交流電源に接続されている。つまり、励磁コイル32a〜32cはワークに対して所定の交流励磁信号を印加するための励磁コイルであり、コア31a〜31cは励磁コイル32a〜32cで発生する磁界を強めるのである。
前記検出部は、前記プローブ100の各頂点に配置された、パンケーキコイルである第一検出コイル41a、第二検出コイル41b、及び、第三検出コイル41cを備える。
具体的には図4(b)に示す如く、ケース21において切り落とされたそれぞれの角の部分に、第一検出コイルケース22a、第三検出コイルケース22b、及び、第三検出コイルケース22c、が配設される。そして、それぞれの検出コイルケース22a〜22cに検出コイル41a〜41cが配設されるのである。また、それぞれの検出コイル41a〜41cは、その両端(両端子)が、図示しない計測装置に接続されている。つまり、検出コイル41a〜41cは交流励磁信号が印加されたワークから渦電流による検出信号を検出するのである。
なお、本実施形態においてはワークに生じる垂直方向磁界と水平方向磁界とを同じ感度で均等に検出・評価するために、検出コイル41a〜41cとしてパンケーキコイルを用いるが、パンケーキコイルに代えて薄膜プレーナコイルを用いる構成にすることも可能である。また、ワークに生じる垂直方向磁界を主に検出・評価する場合は、パンケーキコイルに代えて垂直ソレノイドコイルを用いることも可能である。一方、ワークに生じる水平方向磁界を主に検出・評価する場合は、パンケーキコイルに代えて水平ソレノイドコイルを用いることも可能である。その他、ホール素子等を検出コイルとして採用することもできる。
本実施形態において検出部は、前記プローブ100の中心部に配置されたバランスコイル51をさらに備える。
具体的には図4(b)に示す如く、ケース21においてそれぞれの検出コイル41a〜41cから距離が略均等となる位置にバランスコイル51が配設されるのである。バランスコイル51はその両端(両端子)が前記計測装置に接続されており、検出コイル41a〜41cと発生する起電力が互いに打ち消しあうように結線されている。これにより、検出コイル41a〜41cとバランスコイル51との差動によって、プローブ100における温度などの外乱の影響を低減させることが可能となる。なお、本実施形態においてバランスコイル51を配設しない構成とすることも可能であるが、前記の如く外乱の影響を低減するという観点においては、検出部がバランスコイル51を備える構成の方が望ましい。
上記の如く構成された渦流計測用センサを用いて渦流計測を行う場合は、プローブ100をワークに近接配置した状態で、励磁コイル32a〜32cのうち少なくとも1個に交流励磁信号として交流電圧を加える。そして、ワークにおける検出コイル41a〜41cの何れかに対向する部分に磁界を発生させるとともに、それぞれの磁界により渦電流を生じさせるのである。さらに、該渦電流により発生した誘起電圧を検出信号として検出コイル41a〜41cのうち少なくとも1個で検出することで、該検出信号に基づいてワークにおける渦流計測を行うのである。
本実施形態に係る渦流計測用センサの第一実施例による渦流計測の方法について、図5(a)を用いて説明する。本実施例に係る渦流計測方法は図5(a)に示す如く、ワークにおける、複数の検出コイルのうち、1個に対向する部分に磁界を収束させて強い磁界を生じさせて渦電流を生じさせるものである。
本実施例に係る渦流計測方法においては、まず、交流電源により第一励磁コイル32a及び第二励磁コイル32bに電圧を印加する。詳細には、第一励磁コイル32aの内部に生じる磁界が検出コイル41aに向かって発生するのと同時に、第二励磁コイル32bの内部に生じる磁界も検出コイル41aに向かって発生するように、それぞれの励磁コイル32a・32bに電圧を印加するタイミングを調節するのである。
即ち、第一励磁コイル32aに対して図5(a)に示す矢印α11の如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従って第一励磁コイル32aの内部において図5(a)中の矢印a11の方向に磁界が発生する。また、同時に第二励磁コイル32bに対して図5(a)に示す矢印α12の如く電流が流れた瞬間には、同様に第二励磁コイル32bの内部において図5(a)中の矢印a12の方向に磁界が発生する。つまり、2つの励磁コイル32a・32bにおいてそれぞれの内部に生じる磁界が同時に検出コイル41aに向かって発生するのである。
そして、前記の如く発生した磁界により電磁誘導を起こし、電磁誘導によって磁性体であるワークに渦電流を発生させるのである。さらに、ワークの表面における渦電流の発生にともない、検出コイル41aに磁束を貫通させ、検出コイル41aに誘起電圧を発生させる。そして、検出コイル41aによって誘起電圧を計測するのである。
本実施例は上記のように、励磁コイル32a・32bのそれぞれの内部に生じる磁界を、ワークにおける検出コイル41aに対向する部分に収束させることにより、強い磁界を生じさせて渦電流を生じさせるのである。さらに、交流電流を印加する励磁コイルを順に(例えば、平面視で時計周りに)切替えて、即ち誘起電圧を計測する検出コイル(励磁コイルの内部に生じる磁界を収束させる検出コイル)も同様に順に切替えて渦流計測を行うのである。例えば、[励磁コイル32a・32bに交流電流を印加し、検出コイル41aにて誘起電圧を計測する]→[励磁コイル32b・32cに交流電流を印加し、検出コイル41bにて誘起電圧を計測する]→[励磁コイル32c・32aに交流電流を印加し、検出コイル41cにて誘起電圧を計測する]といったように、励磁コイル32a・32b・32cおよび検出コイル41a・41b・41cを順に切替えて計測を行うのである。
これにより、プローブ100における3個の頂点に配設された検出コイル41a〜41cで同様に渦流計測を行うことが可能となるのである。
本実施形態に係る渦流計測用センサの第二実施例による渦流計測の方法について、図5(b)を用いて説明する。本実施例に係る渦流計測方法は図5(b)に示す如く、全ての検出コイル41a〜41cに対向する部分に磁界を発生させて渦電流を生じさせるものである。
本実施例に係る渦流計測方法においては、まず、交流電源により励磁コイル32a〜32cに電圧を印加する。詳細には、第一励磁コイル32aの内部に生じる磁界が、プローブ100の中央部を中心として、平面視で時計回りの方向に向かって発生するのと同時に、第二励磁コイル32b及び第三励磁コイル32cの内部に生じる磁界も平面視で時計回りの方向に向かって発生するように、それぞれの励磁コイル32a〜32cに電圧を印加するタイミングを調節するのである。
即ち、第一励磁コイル32aに対して図5(b)に示す矢印α21の如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従って第一励磁コイル32aの内部において図5(b)中の矢印a21の方向に磁界が発生する。また、同時に第二励磁コイル32b・第三励磁コイル32cに対して図5(c)に示す矢印α22・α23の如く電流が流れた瞬間には、同様に第二励磁コイル32b・第三励磁コイル32cの内部において図5(b)中の矢印a22・a23の方向に磁界が発生する。つまり、3つの励磁コイル32a〜32cにおいてそれぞれの内部に生じる磁界が平面視で時計回りの方向に向かって同時に発生する。そして、プローブ100の中心部分に、図5(b)中の矢印a20の如く回転磁界が発生するのである。
そして、前記の如く発生した磁界により電磁誘導を起こし、電磁誘導によって磁性体であるワークに渦電流を発生させるのである。さらに、ワークの表面における渦電流の発生にともない、検出コイル41a〜41cに磁束を貫通させ、検出コイル41a〜41cに誘起電圧を発生させる。そして、検出コイル41a〜41cによって誘起電圧を計測するのである。
本実施例は上記のように、励磁コイル32a〜32cのそれぞれの内部に生じる磁界を、ワークの検出コイル41a〜41cに対向する部分に同時に同様に発生させて渦電流を生じさせ、渦流計測を行うのである。これにより、プローブ100における3個の頂点に配設された検出コイル41a〜41cのそれぞれで同時に渦流計測を行うことが可能となるのである。
上記の如く、本実施形態に係る渦流計測用センサは、励磁コイル32a〜32cのそれぞれに印加する電圧を調節することにより、それぞれの励磁コイル32a〜32cの内部に生じる磁界の向きや発生状態を変更することができる。これにより、上記の如く計測状況に応じて検出コイル41a〜41cに対向する部分に発生する渦電流のパターンを変更することが可能となるのである。
本実施形態に係る渦流計測用センサの計測対象部品の一つである、CVJアウターレースWについて、図6(a)及び(b)を用いて説明する。
図6(a)及び(b)に示す如く、CVJアウターレースWはいわゆるボールジョイント型の等速ジョイント(CVJ:Constant Velocity Joint)を構成する部材の一つである。
CVJアウターレースWは、主としてカップ部Wcとジョイント部Wjとを備える。
カップ部Wcは一方(図6(a)においては上方)に開口した略カップ状の形状を有し、その内部に図示せぬCVJインナーレースおよび複数のボールを収容する。カップ部Wcの内周面Wiには開口側から奥側(カップ部Wcの底部側)に向かって延びた6個のボール溝Wb・Wb・・・が成形されている。ボール溝Wb・Wb・・・は、カップ部Wcにおける内周面Wiの周方向に沿って等間隔に配置されており、ボール溝Wb・Wb・・・には、図示せぬ複数のボールがそれぞれ嵌合する。
ジョイント部Wjはカップ部Wcの底部からカップ部Wcの開口方向と逆の方向に突出した略円柱状の部分であり、その先端部には図示せぬ駆動力伝達軸等に固定するための雄ネジ部が形成されている。
CVJアウターレースWは長期間の使用にわたって駆動力を効率良く伝達するために、高い寸法精度と耐摩耗性が要求される。このため、内周面Wiやボール溝Wb・Wb・・・等の表面の耐摩耗性を向上させるための焼入れがなされている。本実施形態では、焼入れ部分(焼入硬化層)WQに網掛けをして示す。
本実施形態に係る渦流計測用センサでCVJアウターレースWを渦流計測する場合について、図7(a)及び(b)を用いて説明する。本実施形態では、形状が複雑であるために特に渦流計測の難度が高いボール溝Wb・Wb・・・の部分の計測を行う場合について説明する。
本実施形態に係る渦流計測用センサでCVJアウターレースWのボール溝Wb・Wb・・・を渦流計測する際は、まず、渦流計測用センサのプローブ100をCVJアウターレースWのカップ部Wcの開口側と対向させて配置する。そして、前記ロッドを先端方向に延出させることにより、図7中の矢印Aに示す如く、プローブ100をカップ部Wcの内部に挿入する。さらに、図7(a)及び(b)に示す如く、一つおきに位置する3個のボール溝Wb・Wb・Wbに対して、それぞれ3個の検出コイルケース22a〜22cを当接させて位置決めを行うのである。即ち、プローブ100をCVJアウターレースWに近接配置し、ボール溝Wb・Wb・Wbに対して検出コイルケース22a〜22cを当接させるのである。
この状態で、前記第一実施例又は第二実施例の如く、励磁コイル32a〜32cのうち少なくとも1個に交流励磁信号として交流電圧を加える。そして、ワークにおける検出コイル41a〜41cの何れかに対向する部分に磁界を発生させるとともに、それぞれの磁界により渦電流を生じさせるのである。さらに、該渦電流により発生した誘起電圧を検出信号として検出コイル41a〜41cのうち少なくとも1個で検出することで、該検出信号に基づいてCVJアウターレースWにおける渦流計測を行うのである。
その後、前記ロッドを基端方向に短縮させてカップ部Wc内から抜き出し、プローブ100をCVJアウターレースW(カップ部Wcの開口面)に対して直交する方向の軸を中心として180度回転させる。さらに、プローブ100をカップ部Wcの内部に挿入し、図7(b)の二点鎖線に示す如く、一つおきに位置する他の3個のボール溝Wb´・Wb´・Wb´に対して、それぞれ3個の検出コイルケース22a〜22cを当接させて位置決めを行うのである。この状態で、前記と同様に渦流計測を行うのである。
本実施形態に係る渦流計測用センサは上記の如く、プローブ100を正三角形状の構成しているため、検出コイルケース22a〜22cをCVJアウターレースWのボール溝Wb・Wb・・・の3個に当接させて、3点で位置決めを行うことができる。即ち、渦流計測におけるプローブ100のワークに対する位置決め精度や再現性を向上させることが可能となるのである。
即ち、本実施形態に係る渦流計測用センサによればその内周面が複雑な形状で三次元的に焼入れが入っている鋼材であっても渦流計測の検査対象とすることができる。例えば、本実施形態の如く検査対象部品がCVJアウターレースWであっても、プローブ100の位置決めに関して高い安定性及び再現性を確保して渦流式検査を行うことができるのである。
また、本実施形態における検査対象部品であるCVJアウターレースWは、6個のボール溝Wb・Wb・・・が成形されているため、1回目の渦流計測の後、正三角形状のプローブ100を180度回転させて2回目の渦流計測を行うことにより、全てのボール溝Wb・Wb・・・について渦流計測を行うことが可能となる。即ち、カップ部Wcに対してプローブ100を2回挿入するだけで、全てのボール溝Wb・Wb・・・について渦流計測を行うことができるため、計測時間を短縮することが可能となるのである。
なお、前記の如く、プローブ100の形状はワークの形状等に応じて、他の正多角形の形状とすることも可能である。例えばCVJアウターレースWに8個のボール溝Wb・Wb・・・が成形されている場合は、プローブ100を正方形状とすることもできるのである。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る渦流計測用センサについて、図8から図10を用いて説明する。なお、本実施形態以降で説明する渦流計測用センサについて、既出の実施形態と共通する部分に関しては同符号を付し、詳細な説明を省略するものとする。
図8(a)に示す如く、本実施形態に係る渦流計測用センサは、前記第一実施形態と同様に励磁部及び検出部を備えたプローブ200を有する。即ち、励磁部として、プローブ200の各辺に配置された、ソレノイドコイルである励磁コイル32a〜32cを備える。また、検出部として、プローブ200の各頂点に配置された、パンケーキコイルである検出コイル41a〜41c、及び、プローブ200の中心部に配置されたバランスコイル51を備える。
本実施形態においては、検出コイル41a〜41cは、プローブ200の各頂点から外側に延出可能に構成される。
具体的には、図8(b)に示す如く、ケース21において切り落とされたそれぞれの角の部分(プローブ200の各頂点となる部分)に、第一検出コイルケース22a、第三検出コイルケース22b、及び、第三検出コイルケース22c、が、それぞれ弾性部材である第一ばね23a、第二ばね23b、及び、第三ばね23cを介して配設される。そして、それぞれの検出コイルケース22a〜22cに検出コイル41a〜41cが配設されるのである。
本実施形態において検出コイル41a〜41cは、プローブ200の各頂点に弾性部材であるばね23a〜23cを介して配設されるが、検出コイル41a〜41cが他の構成により外側に延出する構成とすることも可能である。例えば、電動シリンダ等のアクチュエータをプローブ200の各頂点に配設し、それぞれに検出コイル41a〜41cを配設する構成にすることも可能である。但し、製造コストの低廉化や簡易性の観点からは、本実施形態の如くばね等の弾性部材を用いて検出コイル41a〜41cを配設する構成とすることが望ましい。
本実施形態に係る渦流計測用センサでCVJアウターレースWを渦流計測する場合について、図9(a)から(c)を用いて説明する。
本実施形態に係る渦流計測用センサでCVJアウターレースWのボール溝Wb・Wb・・・を渦流計測する際は、前記第一実施形態の如く、プローブ200をカップ部Wcの内部に挿入する。そして、図9(a)に示す如く、3個のボール溝Wb・Wb・Wbに対してそれぞれ3個の検出コイルケース22a〜22cを当接させて位置決めを行う。この際、ばね23a〜23cはやや圧縮される。即ち、検出コイルケース22a〜22cはばね23a〜23cの弾性力によって外側に付勢されており、その付勢力によってボール溝Wb・Wb・Wbに当接するのである。
この状態で、前記第一実施形態の如く、励磁コイル32a〜32cのうち少なくとも1個に交流励磁信号として交流電圧を加え、CVJアウターレースWにおける渦流計測を開始するのである。
その後、渦流計測を継続しつつ、前記ロッドを先端方向に延出することで、プローブ200をカップ部Wcの奥側(底部側)に向かって移動させる。この際、ばね23a〜23cはカップ部Wcの形状(ボール溝Wb・Wb・Wbの形状)に応じて、徐々に圧縮量が変わっていく。即ち、プローブ200がカップ部Wcの奥側に向かうに従って内周面Wiの径が小さくなるため、検出コイルケース22a〜22cがボール溝Wb・Wb・Wbの内周面により径方向内側へ押圧されてばね23a〜23cの圧縮量が増加する。また、プローブ200がカップ部Wcの奥側に向かうに従って、検出コイルケース22a〜22cはばね23a〜23cの弾性力によって外側により強く付勢されるため、ボール溝Wb・Wb・Wbに当接し続けるのである。
そして、図9(b)及び(c)に示す如く、各計測ポイントでプローブ200を停止させ、渦流計測値を取得するのである。そして、過去の計測結果等を基にして予め作成した検量線データを用いることで、このようにして得られた渦流計測値から焼入れ深さ(表面からの焼入れ部分WQの厚さ)を求めることが可能となる。即ち、それぞれの計測ポイントにおける焼入れ深さを線で結ぶことで、図9(a)から(c)に示すようなCVJアウターレースWにおける3次元的な焼入れ形状を求めることができるのである。
その後、前記第一実施形態と同様に、プローブ200をCVJアウターレースWに対して直交方向の軸を中心として180度回転させ、他の3個のボール溝Wb´・Wb´・Wb´について渦流計測を行うのである。
本実施形態に係る渦流計測用センサは上記の如く、検出コイル41a〜41cをプローブ200の各頂点から外側に延出可能に構成しているため、内径が連続的に変化するような計測対象部品であっても渦流計測を行うことが可能となる。具体的には、CVJアウターレースWのように、ボール溝Wb・Wb・・・の形状が変化する計測対象部品でも、連続的に渦流検査を行うことができるのである。つまり、非破壊でCVJアウターレースWにおける3次元的な焼入れ形状を可視化することが可能となるのである。
また、本実施形態に係る渦流計測用センサを用いることにより、CVJアウターレースWの焼割れ探傷試験を行うこともできる。
具体的には、渦流計測を行いながら、図10(a)中の矢印aに示す如く、プローブ200を前記の如くカップ部Wcの内部で奥側(底部側)に向かって移動させる。つまり、励磁コイル32a〜32cのうち少なくとも1個に交流励磁信号として交流電圧を加えながら、検出コイルケース22a〜22cをボール溝Wb・Wb・Wbに沿って摺動させるのである。その際、図10(a)に示す割れ(欠陥)を横切った場合には、図10(b)に示す如く、計測信号が大きく変化することとなり、欠陥信号を検出することができるのである。即ち、本実施形態に係る渦流計測用センサにより、CVJアウターレースWに発生した焼割れを発見することができるのである。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る渦流計測用センサについて、図11を用いて説明する。
図11(a)及び(b)に示す如く、本実施形態に係る渦流計測用センサは、前記第一実施形態と同様に励磁部及び検出部を備えたプローブ300を有する。即ち、励磁部として、プローブ300の各辺に配置された、ソレノイドコイルである励磁コイル32a〜32cを備える。また、検出部として、プローブ300の各頂点に配置された、パンケーキコイルである検出コイル41a〜41c、及び、プローブ300の中心部に配置されたバランスコイル51を備える。
また、本実施形態における検出部は、プローブ300の一辺に、パンケーキコイルである平滑部用検出コイル43をさらに備える。具体的には図11(a)に示す如く、第二励磁コイル32bが配設された辺の略中央部で、第二励磁コイル32bよりも外側に、平滑部用検出コイル43が配置されるのである。平滑部用検出コイル43は、その両端(両端子)が、図示しない計測装置に接続されており、交流励磁信号が印加されたワークから渦電流による検出信号を検出する。なお、平滑部用検出コイル43はプローブ300の各辺に配設される構成とすることも可能である。また、平滑部用検出コイル43は、パンケーキコイルに代えて、薄膜プレーナコイル、垂直ソレノイドコイル、水平ソレノイドコイル、ホール素子等の他の検出部材を用いる構成にすることもできる。
本実施形態に係る渦流計測用センサの計測対象部品の一つである、クランクシャフトCの焼入れ深さを計測する場合について、図11(a)及び(b)を用いて説明する。本実施形態では、渦流計測対象としてクランクシャフトCにおけるジャーナル部が用いられ、ジャーナル部の中央部Cc及び両端のR部Cr・Crにわたって焼入れ部分(焼入硬化層)CQが形成されているものとする。なお、本実施形態に係る渦流計測用センサは、クランクシャフトCのピン部や、カムシャフト等の渦流計測にも適用することが可能である。
まず、第一実施例として、クランクシャフトCにおけるジャーナル部の中央部Ccの焼入れ深さを計測する場合について、図11(a)を用いて説明する。
本実施例においては図11(a)に示す如く、渦流計測用センサのプローブ300における、平滑部用検出コイル43の側を、ジャーナル部の中央部Ccに対向させて近接配置する。
そして、第二励磁コイル32bに交流励磁信号として交流電圧を加え、平滑部用検出コイル43に対向するジャーナル部の中央部Ccに磁界を発生させるとともに、該磁界により渦電流を生じさせる。具体的には、第二励磁コイル32bに対して図11(a)に示す矢印α31の如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従って第二励磁コイル32bの内部において図11(a)中の矢印a31の方向に磁界が発生するのである。さらに、該渦電流により発生した誘起電圧を検出信号として平滑部用検出コイル43で検出することで、該検出信号に基づいてジャーナル部における焼入れ部分CQのうち中央部Ccにおける渦流計測を行うのである。
次に、第二実施例として、クランクシャフトCにおけるジャーナル部の両端のR部Cr・Crの焼入れ深さを計測する場合について、図11(b)を用いて説明する。
本実施例においては図11(b)に示す如く、渦流計測用センサのプローブ300における、第一検出コイル41a及び第二検出コイル41bを、それぞれジャーナル部の両端のR部Cr・Crに対向させて近接配置する。
そして、第一励磁コイル32a及び第三励磁コイル32cに交流励磁信号として交流電圧を加え、第一検出コイル41a及び第二検出コイル41bに対向するジャーナル部の両端のR部Cr・Crに磁界を発生させるとともに、該磁界により渦電流を生じさせる。具体的には、第一励磁コイル32a及び第三励磁コイル32cに対して図11(b)に示す矢印α41・α42の如く電流が流れた瞬間には、右ネジの法則に従って第一励磁コイル32a及び第三励磁コイル32cの内部において図11(b)中の矢印a41・a42の方向に磁界が発生するのである。さらに、該渦電流により発生した誘起電圧を検出信号として第一検出コイル41a及び第二検出コイル41bで検出することで、該検出信号に基づいてジャーナル部における焼入れ部分CQのうち両端のR部Cr・Crにおける渦流計測を行うのである。
このように、本実施形態においては上記の如く、クランクシャフトCにおけるジャーナル部の形状に応じて、即ち渦流計測を行う部分に応じて、励磁コイル32a〜32cに印加する電圧を調節している。これにより、それぞれの励磁コイル32a〜32cの内部に生じる磁界の向きや発生状態を変更することができる。即ち、上記の如く計測状況に応じてジャーナル部における焼入れ部分CQに発生する渦電流のパターンを変更することが可能となるのである。具体的には、ジャーナル部における焼入れ部分CQのうち、中央部Ccと、両端のR部Cr・Crとのそれぞれについて、適切な渦電流を発生させて渦流計測を行うことができるのである。換言すれば、クランクシャフトCのジャーナル部やピン部における焼入深さ/硬さを、焼入れ部分CQのうち特定部分のみ検出することができるのである。
本発明に係る渦流計測用センサは、内周面に複雑な形状で三次元的に焼入れが入っている鋼材を計測対象部品として渦流計測する場合であっても、プローブの位置決めに関して高い安定性及び再現性を確保して渦流式検査を行うことができることから、産業上有用である。
【0004】
ng Eddy Current−Establishment and Introduction of In−line Hardening Depth Inspection System−”、SAE World Congress、SAE Paper 2009−01−0867、2009年
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0011]
そこで本発明は上記現状に鑑み、内周面に複雑な形状で三次元的に焼入れが入っている鋼材を計測対象部品として渦流計測する場合であっても、プローブの位置決めに関して高い安定性及び再現性を確保して渦流式検査を行うことができる、渦流計測用センサを提供するものである。
課題を解決するための手段
[0012]
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
[0013]
即ち、請求項1においては、計測対象部品に対して所定の交流励磁信号を印加するための励磁部、及び、印加された前記交流励磁信号によって計測対象部品に発生する検出信号を検出するための検出部、を備え、正多角形状に構成されたプローブを具備する、渦流計測用センサであって、前記励磁部は、正多角形状の前記プローブの各辺に沿って配置された励磁コイルを備え、前記検出部は、正多角形状の前記プローブの各頂点に配置された検出コイルと、正多角形状の前記プローブの中心部に配置され、前記検出コイルと発生する起電力を互いに打ち消しあうバランスコイルと、を備え、前記プローブを前記計測対象部品に近接配置した状態で、前記励磁コイルのうち少なくとも1個に交流励磁信号として交流電圧を加え、計測対象部品における前記検出コイルに対向する部分に磁界を発生させるとともに、該磁界により渦電流を生じさせ、該渦電流により発生した誘起電圧を検出信号として前記検出コイルのうち少なくとも1個で検出し、該検出信号に基づいて計測対象部品における渦流計測を行うものである。
【0005】
[0014]
請求項2においては、前記検出コイルは、正多角形状の前記プローブの各頂点から外側に延出可能に構成されるものである。
[0015]
請求項3においては、前記検出コイルは、正多角形状の前記プローブの各頂点に弾性部材を介して配置されることにより、前記プローブの各頂点から外側に延出可能に構成されるものである。
[0016]
請求項4においては、前記検出部は、正多角形状の前記プローブにおける少なくとも1つの辺において、前記励磁コイルよりも外側に配置された平滑部用検出コイルをさらに備え、前記プローブを前記計測対象部品に近接配置した状態で、前記励磁コイルのうち少なくとも1個に交流励磁信号として交流電圧を加え、計測対象部品における前記平滑部用検出コイルに対向する部分に磁界を発生させるとともに、それぞれの磁界により渦電流を生じさせ、該渦電流により発生した誘起電圧を検出信号として前記平滑部用検出コイルで検出し、該検出信号に基づいて計測対象部品における渦流計測を行うものである。
[0017]
発明の効果
[0018]
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
[0019]
本発明により、内周面に複雑な形状で三次元的に焼入れが入っている鋼材を計測対象部品として渦流計測する場合であっても、プローブの位置決めに関して高い安定性及び再現性を確保して渦流式検査を行うことができる。
図面の簡単な説明
[0020]
[図1]焼入部材の深さ方向の層状態、硬さ及び透磁率の関係を示す図。
[図2]本実施形態に係る渦流計測を行うための装置構成を示す模式図。
[図3]渦流計測における交流励磁信号と検出信号との関係を示す図。
[図4](a)は第一実施形態に係る渦流計測用センサを示す正面図、(b)は同じく渦流計測用センサを示す平面図。
[図5](a)は第一実施形態に係る渦流計測用センサの第一実施例で生じる磁界分布を示した図、(b)は同じく第二実施例で生じる磁界分布を示した図

Claims (5)

  1. 計測対象部品に対して所定の交流励磁信号を印加するための励磁部、及び、印加された前記交流励磁信号によって計測対象部品に発生する検出信号を検出するための検出部、を備え、正多角形状に構成されたプローブを具備する、渦流計測用センサであって、
    前記励磁部は、正多角形状の前記プローブの各辺に沿って配置された励磁コイルを備え、
    前記検出部は、正多角形状の前記プローブの各頂点に配置された検出コイルを備え、
    前記プローブを前記計測対象部品に近接配置した状態で、前記励磁コイルのうち少なくとも1個に交流励磁信号として交流電圧を加え、計測対象部品における前記検出コイルに対向する部分に磁界を発生させるとともに、該磁界により渦電流を生じさせ、該渦電流により発生した誘起電圧を検出信号として前記検出コイルのうち少なくとも1個で検出し、該検出信号に基づいて計測対象部品における渦流計測を行う、
    ことを特徴とする、渦流計測用センサ。
  2. 前記検出部は、正多角形状の前記プローブの中心部に配置され、前記検出コイルと発生する起電力を互いに打ち消しあうバランスコイルをさらに備える、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の渦流計測用センサ。
  3. 前記検出コイルは、正多角形状の前記プローブの各頂点から外側に延出可能に構成される、
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の渦流計測用センサ。
  4. 前記検出コイルは、正多角形状の前記プローブの各頂点に弾性部材を介して配置されることにより、前記プローブの各頂点から外側に延出可能に構成される、
    ことを特徴とする、請求項3に記載の渦流計測用センサ。
  5. 前記検出部は、正多角形状の前記プローブにおける少なくとも1つの辺において、前記励磁コイルよりも外側に配置された平滑部用検出コイルをさらに備え、
    前記プローブを前記計測対象部品に近接配置した状態で、前記励磁コイルのうち少なくとも1個に交流励磁信号として交流電圧を加え、計測対象部品における前記平滑部用検出コイルに対向する部分に磁界を発生させるとともに、それぞれの磁界により渦電流を生じさせ、該渦電流により発生した誘起電圧を検出信号として前記平滑部用検出コイルで検出し、該検出信号に基づいて計測対象部品における渦流計測を行う、
    ことを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の渦流計測用センサ。
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