JPWO2011132510A1 - 透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Abstract

透明性の高い難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、(a)粘度平均分子量(Mv)が3×103乃至2.5×104の芳香族ポリカーボネート樹脂−A、99質量%乃至50質量%と、粘度平均分子量(Mv)が5×104乃至9×104の芳香族ポリカーボネート樹脂−B、1質量%乃至50質量%とから成る透明芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部、並びに、(B)有機スルホン酸のアルカリ金属塩から成る難燃剤、5×10-3質量部乃至9×10-2質量部から構成されており、Q値が0.1cm3/秒以下であり、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ2.0mmの成形品がUL−94 V−0規格を満足し、厚さ3.0mmの成形品のヘーズ値が2%以下である。

Description

本発明は、透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、及び、係る透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を原材料として成形された成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性、電気的特性に優れた樹脂であり、例えば自動車材料、電気電子機器材料、家庭用各種電気機器材料、住宅材料、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用されている。特に、難燃化されたポリカーボネート樹脂組成物は、コンピューター、ノートブック型パソコン、携帯電話、プリンター、複写機等のOA・情報機器等の部材として好適に使用されている。
従来、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤をポリカーボネート樹脂に配合することで、ポリカーボネート樹脂に難燃性が付与されている。しかしながら、塩素や臭素を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物は、熱安定性の低下を招いたり、成形加工時における成形機のスクリューや成形金型の腐食を招いたりすることがある。また、リン系難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂の特徴である高い透明性を阻害したり、耐衝撃性、耐熱性の低下を招いたりするため、その用途が制限されることがある。加えて、これらのハロゲン系難燃剤及びリン系難燃剤は、ポリカーボネート樹脂組成物から成形された成形品の廃棄、回収時に環境汚染を生じさせる虞があるので、近年、これらの難燃剤を使用することなく、難燃化することが望まれている。
特開平2−251561号公報 特開平9−59505号公報 特開平11−323118号公報
2種類のポリカーボネート樹脂と難燃剤とから成る難燃性のポリカーボネート樹脂組成物が、例えば、特開平2−251561号公報、特開平9−59505号公報、特開平11−323118号公報等から周知である。しかしながら、これらの特許公開公報に開示された難燃性のポリカーボネート樹脂組成物は、使用されるポリカーボネートの粘度平均分子量が10万以上であったり、難燃剤の添加割合が0.1重量部以上であり、得られた成形品の難燃性、透明性に問題を残している。
従って、本発明の目的は、透明性の高い難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、及び、係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を原材料として成形された成形品を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(以下、『本発明の第1の態様に係るポリカーボネート樹脂組成物』と呼ぶ場合がある)は、
(A)粘度平均分子量(Mv)が3×103乃至2.5×104の芳香族ポリカーボネート樹脂−A、99質量%乃至50質量%と、粘度平均分子量(Mv)が5×104乃至9×104の芳香族ポリカーボネート樹脂−B、1質量%乃至50質量%とから成る透明芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部、並びに、
(B)有機スルホン酸のアルカリ金属塩から成る難燃剤、5×10-3質量部乃至9×10-2質量部、
から構成された透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
高化式フローテスターを用い、280゜C、荷重1.57×107Pa、直径1mm×長さ10mmのオリフィスより流出する溶融樹脂量であるQ値が0.1cm3/秒以下であり、
該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ2.0mmのUL試験用試験片がUL−94 V−0規格を満足し、
該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ3.0mmの平板状成形品のヘーズ値が2%以下であることを特徴とする。
本発明の第1の態様に係るポリカーボネート樹脂組成物において、芳香族ポリカーボネート樹脂−Aの質量百分率をαとしたとき、芳香族ポリカーボネート樹脂−Bの質量百分率βは(100−α)であり、αの値は、上記のとおり、50≦α≦99であるが、好ましくは55≦α≦95、より好ましくは60≦α≦90であることが望ましい。また、難燃剤の添加質量部数は、上記のとおり、5×10-3質量部乃至9×10-2質量部であるが、好ましくは1×10-2質量部乃至9×10-2質量部、より好ましくは3×10-2質量部乃至8.5×10-2質量部であることが望ましい。更には、Q値は,上記のとおり、0.1cm3/秒以下であるが、好ましくは0.001m3/秒以上、0.1cm3/秒以下を満足し、より好ましくは0.01cm3/秒以上、0.09cm3/秒以下を満足することが望ましい。また、上記のとおり、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ3.0mmの平板状成形品のヘーズ値は2%以下であるが、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下であることが望ましい。
本発明の第1の態様に係るポリカーボネート樹脂組成物にあっては、芳香族ポリカーボネート樹脂−Bの粘度平均分子量(Mv)は、5×104乃至7×104であることが望ましい。
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(以下、『本発明の第2の態様に係るポリカーボネート樹脂組成物』と呼ぶ場合がある)は、
(A)粘度平均分子量(Mv)が3×103乃至2.5×104の芳香族ポリカーボネート樹脂−A、99質量%乃至50質量%と、粘度平均分子量(Mv)が5×104乃至9×104の芳香族ポリカーボネート樹脂−B、1質量%乃至50質量%とから成る透明芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部、並びに、
(B)有機スルホン酸のアルカリ金属塩から成る難燃剤、5×10-3質量部乃至9×10-2質量部、
から構成された透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
芳香族ポリカーボネート樹脂−Bは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、99.9質量%乃至90質量%と、以下の式[1]にて示される成分、0.1質量%乃至10質量%との共重合ポリカーボネート樹脂から成り、
該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ2.0mmのUL試験用試験片がUL−94 V−0規格を満足し、
該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ3.0mmの平板状成形品のヘーズ値が2%以下であることを特徴とする。
Figure 2011132510
ここで、式[1]中、R1乃至R4は、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、各々が置換基を有してもよい炭素数1乃至9のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基、炭素数6乃至12のアリール基、炭素数2乃至5のアルケニル基、又は、炭素数7乃至17のアラルキル基であり、これらの基の炭素のいずれもが有してもよい置換基は、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数2乃至5のアルケニル基、又は、炭素数1乃至5のアルコキシ基である。
また、Xは、
Figure 2011132510
であり、ここで、R5及びR6は、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、各々が置換基を有してもよい炭素数1乃至9のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基、炭素数6乃至12のアリール基、炭素数2乃至5のアルケニル基、又は、炭素数7乃至17のアラルキル基であり、あるいは又、R5及びR6が一緒に結合して炭素環又は複素環を形成する基であり、これらの基の炭素のいずれもが有してもよい置換基は、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基、炭素数2乃至5のアルケニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子であり、R7及びR8は、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、各々が置換基を有してもよい炭素数1乃至9のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基、又は、炭素数6乃至12アリール基であり、これらの基の炭素のいずれもが有してもよい置換基は、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基、フッ素、塩素、臭素、又は、ヨウ素であり、R9は、置換基を有してもよい炭素数1乃至9のアルキレン基であり、aは0乃至20の整数を表し、bは1乃至500の整数を表す。
本発明の第2の態様に係るポリカーボネート樹脂組成物において、芳香族ポリカーボネート樹脂−Aの質量百分率をαとしたとき、芳香族ポリカーボネート樹脂−Bの質量百分率βは(100−α)であり、αの値は、上記のとおり、50≦α≦99であるが、好ましくは55≦α≦95、より好ましくは60≦α≦90であることが望ましい。また、上記のとおり、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ3.0mmの平板状成形品のヘーズ値は2%以下であるが、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下であることが望ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂−Bにおいて、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの質量百分率をγとしたとき、式[1]の成分の質量百分率δは(100−γ)であり、γの値は、上述したとおり、90≦γ≦99.9であるが、95≦γ≦99.5であることがより望ましい。
本発明の第2の態様に係るポリカーボネート樹脂組成物にあっても、芳香族ポリカーボネート樹脂−Bの粘度平均分子量(Mv)は、5×104乃至7×104であることが望ましい。
上記の好ましい形態を含む本発明の第2の態様に係るポリカーボネート樹脂組成物にあっては、式[1]にて示される成分は、具体的には、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン[=ビスフェノールC]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[=ビスフェノールZ]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、α,ω−ビス[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、を例示することができるが、これらの中でも、特に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン[=ビスフェノールC]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[=ビスフェノールZ]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンであることが好ましく、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[=ビスフェノールZ]であることがより好ましい。
上記の好ましい形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係るポリカーボネート樹脂組成物にあっては、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤及び着色剤から成る群から選択された少なくとも1種類の添加剤が添加されている構成とすることもできる。また、所望の諸物性を著しく損なわない限り、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等を添加してもよい。
ここで、熱安定剤として、フェノール系やリン系、硫黄系の熱安定剤を挙げることができる。具体的には、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸等のリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウム等の酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛等、第1族または第10族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物等を挙げることができる。あるいは又、分子中の少なくとも1つのエステルがフェノール及び/又は炭素数1〜25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステル化合物(a)、亜リン酸(b)及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト(c)の群から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。亜リン酸エステル化合物(a)の具体例として、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
有機ホスファイト化合物として、具体的には、例えば、ADEKA社製(商品名、以下同じ)「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、チバ・ジャパン社製「イルガフォス168」等を挙げることができる。
また、リン酸エステルとして、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。
熱安定剤の添加割合は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。熱安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤が多すぎると、効果が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能性がある。
また、酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤等を挙げることができる。具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等を挙げることができる。 フェノール系酸化防止剤として、具体的には、例えば、チバ・ジャパン社製「イルガノックス1010」(登録商標、以下同じ)、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げることができる。
酸化防止剤の添加割合は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の添加割合が下限値以下の場合、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の添加割合が上限値を超える場合、効果が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能性がある。
また、紫外線吸収剤として、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機紫外線吸収剤の他、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物、サリチル酸フェニル系化合物等の有機紫外線吸収剤を挙げることができる。これらの中では、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の有機紫外線吸収剤が好ましい。特に、ベンゾトリアゾール化合物の具体例として、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン]、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッド−ジメチルエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール]、[メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール]縮合物等を挙げることができる。これらの2種以上を併用してもよい。上記の中では、好ましくは、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール2−イル)フェノール]である。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例として、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等を挙げることができる。また、サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例として、フェニルサリシレート、4−tert−ブチル−フェニルサリシレート等を挙げることができる。更には、トリアジン系紫外線吸収剤の具体例として、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール等を挙げることができる。また、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例として、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等を挙げることができる。
紫外線吸収剤の添加割合は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、3質量部以下、好ましくは1質量部以下である。紫外線吸収剤の添加割合が下限値以下の場合、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の添加割合が上限値を超える場合、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
また、離型剤として、カルボン酸エステル、ポリシロキサン化合物、パラフィンワックス(ポリオレフィン系)等の離型剤を挙げることができる。具体的には、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルの群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。脂肪族カルボン酸として、飽和又は不飽和の脂肪族1価、2価又は3価カルボン酸を挙げることができる。ここで、脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中でも、好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の1価又は2価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和1価カルボン酸が更に好ましい。脂肪族カルボン酸の具体例として、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸として、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとして、飽和又は不飽和の1価又は多価アルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが更に好ましい。ここで、脂肪族には脂環式化合物も包含される。アルコールの具体例として、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。尚、上記のエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例として、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等を挙げることができる。数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素として、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等を挙げることができる。ここで、脂肪族炭化水素には脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素化合物は部分酸化されていてもよい。これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス又はポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが更に好ましい。数平均分子量は、好ましくは200〜5000である。これらの脂肪族炭化水素は単一物質であっても、構成成分や分子量が様々なものの混合物であってもよく、主成分が上記の範囲内であればよい。ポリシロキサン系シリコーンオイルとして、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等を挙げることができる。これらの2種類以上を併用してもよい。離型剤の添加割合は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。離型剤の添加割合が下限値以下の場合、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の添加割合が上限値を超える場合、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等が生じる可能性がある。
また、着色剤としての染顔料として、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料等を挙げることができる。無機顔料として、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青等の珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青等のフェロシアン系顔料等を挙げることができる。また、着色剤としての有機顔料及び有機染料として、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の縮合多環染顔料;キノリン系、アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料等を挙げることができる。そして、これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系染顔料等が好ましい。尚、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。また、染顔料は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。着色剤の添加割合は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。着色剤の添加割合が多すぎると耐衝撃性が十分で無くなる可能性がある。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂−A及び芳香族ポリカーボネート樹脂−Bは、公知の方法に基づき合成することができ、例えば、界面重合法、ピリジン法、エステル交換法、環状カーボネート化合物の開環重合法をはじめとする各種合成方法を挙げることができる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物と、一般にホスゲンとして知られている塩化カルボニル、又は、ジメチルカーボネートやジフェニルカーボネートに代表される炭酸ジエステル、一酸化炭素や二酸化炭素と云ったカルボニル系化合物とを、反応させることによって得られる、直鎖状、又は、分岐していても良い熱可塑性芳香族ポリカーボネートの重合体又は共重合体である。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物として、例えば、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン[=ビスフェノールC]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[=ビスフェノールZ]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、α,ω−ビス[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール等を挙げることができるが、好ましくはビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類であり、特に好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[ビスフェノールZ]である。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。また、ジヒドロキシ化合物の一部として、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物、又は、シロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマー若しくはオリゴマー等を併用してもよい。
分岐したポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で示されるポリヒドロキシ化合物、あるいは、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノール等を上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよく、使用量は、0.01〜10モル%、好ましくは、0.1〜3モル%である。
界面重合法による反応にあっては、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下で、通常pHを10以上に保ち、芳香族ジヒドロキシ化合物及び分子量調整剤(末端停止剤)、必要に応じて芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のための酸化防止剤を用い、ホスゲンと反応させた後、第三級アミン若しくは第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加し、界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得ることができる。分子量調節剤の添加は、ホスゲン化時から重合反応開始時までの間であれば、特に限定されない。尚、反応温度は0〜35゜Cであり、反応時間は数分〜数時間である。
ここで、反応に不活性な有機溶媒として、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。分子量調節剤あるいは末端停止剤として、一価のフェノール性水酸基を有する化合物を挙げることができ、具体的には、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等を挙げることができる。重合触媒として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、ピリジン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等を挙げることができる。
エステル交換法による反応は、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応である。通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率を調整したり、反応時の減圧度を調整したりすることによって、所望のポリカーボネート樹脂の分子量と末端ヒドロキシル基量が決められる。末端ヒドロキシル基量は、ポリカーボネート樹脂の熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼし、実用的な物性を持たせるためには、好ましくは1000ppm以下であり、700ppm以下が特に好ましい。芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが一般的であり、好ましくは1.01〜1.30モルの量で用いられる。
エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を合成する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒としては、特に制限はないが、主としてアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用され、補助的に塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、あるいは、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。このような原料を用いたエステル交換反応では、100〜320゜Cの温度で反応を行い、最終的には2.7×102Pa(2mmHg)以下の減圧下、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら溶融重縮合反応を行う方法が挙げられる。溶融重縮合は、バッチ式、又は、連続的に行うことができるが、本発明のポリカーボネート樹脂組成物にあっては、安定性等の観点から、連続式で行うことが好ましい。エステル交換法において、ポリカーボネート樹脂中の触媒の失活剤として、触媒を中和する化合物、例えばイオウ含有酸性化合物、又は、それより形成される誘導体を使用することが好ましく、その量は、触媒のアルカリ金属に対して0.5〜10当量、好ましくは1〜5当量の範囲であり、ポリカーボネート樹脂に対して通常1〜100ppm、好ましくは1〜20ppmの範囲で添加する。
ポリカーボネート樹脂組成物フレークは、例えば、界面重合法にて得られたポリカーボネート樹脂組成物を含んだメチレンクロライド溶液を45゜Cに保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去することで得ることができるし、あるいは又、界面重合法にて得られたポリカーボネート樹脂組成物を含んだメチレンクロライド溶液をメタノール中に投入し、析出したポリマーを濾過、乾燥して得ることができるし、あるいは又、界面重合法にて得られたポリカーボネート樹脂組成物を含んだメチレンクロライド溶液をニーダーにて攪拌下、40゜Cに保ちながら攪拌粉砕後、95゜C以上の熱水で脱溶剤して得ることができる。
必要に応じて、得られたポリカーボネート樹脂組成物を周知の方法に基づき単離した後、例えば、周知のストランド方式のコールドカット法(一度溶融させたポリカーボネート樹脂組成物をストランド状に成形、冷却後、所定の形状に切断してペレット化する方法)、空気中ホットカット方式のホットカット法(一度溶融させたポリカーボネート樹脂組成物を、空気中で水に触れぬうちにペレット状に切断する方法)、水中ホットカット方式のホットカット法(一度溶融させたポリカーボネート樹脂組成物を、水中で切断し、同時に冷却してペレット化する方法)によって、ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得ることができる。尚、得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットは、必要に応じて、熱風乾燥炉、真空乾燥炉、脱湿乾燥炉を用いた乾燥といった方法に基づき乾燥させることが好ましい。
有機スルホン酸のアルカリ金属塩から成る難燃剤として、脂肪族スルホン酸金属塩及び芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられ、これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アルカリ金属として、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウムを挙げることができる。脂肪族スルホン酸塩として、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩、より好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩を挙げることができる。フルオロアルカン−スルホン酸金属塩として、アルカリ金属塩を挙げることができ、より好ましくは、炭素数4〜8のフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩を挙げることができる。フルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例として、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸カリウム等を挙げることができる。また、芳香族スルホン酸金属塩として、アルカリ金属塩を挙げることができる。芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩の具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4′−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4′−ジブロモフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジカリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩等を挙げることができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂が含まれていてもよい。ここで、係る樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)等のコア/シェル型のエラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマー;環状シクロオレフィン樹脂(COP樹脂)、環状シクロオレフィン(COP)共重合体樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂(PA樹脂);ポリイミド樹脂(PI樹脂);ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂);ポリウレタン樹脂(PU樹脂);ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂);ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂);ポリスルホン樹脂(PSU樹脂);ポリメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);ポリカプロラクトン等を挙げることができる。
上記の目的を達成するための本発明の成形品は、上述した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された成形品である。成形品の形状、模様、色彩、寸法等に制限はなく、その用途に応じて任意に設定すればよい。成形品として、具体的には、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品、各種家庭用電気製品等の部品、電気器具のハウジング、容器、カバー、収納部、ケース、照明器具のカバーやケース等を挙げることができる。電気電子機器として、例えば、パーソナルコンピュータ、ゲーム機、テレビジョン受像機、液晶表示装置やプラズマ表示装置等のディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、CDプレーヤー、MDプレーヤー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等を挙げることができる。あるいは又、成形品として、電飾看板、液晶バックライト、照明ディスプレイ、交通標識、サインボード、スクリーン、反射板やメーター部品等の自動車部品、玩具、装飾品等を挙げることができる。
成形品の製造方法は、特に限定されず、ポリカーボネート樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用することができる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等が挙げることができる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性の評価は、後述する方法で得られたUL試験用試験片を、温度23゜C、相対湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行う。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V−0、V−1及びV−2の難燃性を有するためには、以下の表1に示す基準を満たすことが必要となる。
[表1]
Figure 2011132510
ここで、残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片の有炎燃焼を続ける時間の長さである。また、ドリップによる綿着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。後述する表2にあっては、『難燃性』と表記する。
粘度平均分子量(Mv)は、0.2グラム/デシリットルのポリカーボネート樹脂のジクロロメタン溶液を、ウベローデ毛管粘度計によって20゜Cの温度で測定し、ハギンズ定数0.45で極限粘度[η]デシリットル/グラムを求め、次式により算出した。
η=1.23×10-4×Mv0.83
流動性評価としてのQ値は、後述する方法で得られたペレットを120゜Cで4時間以上乾燥した後、高化式フローテスター(島津製作所株式会社製)を用い、280゜C、荷重1.57×107Pa(160kgf/cm2)の条件下でポリカーボネート樹脂組成物の単位時間当たりの流出量(単位:×10-2cm3/秒)を測定することで得られる。尚、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用する。後述する表2にあっては、『流動性』と表記する。Q値が高い程、ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が良いと云える。
透明性評価としてのヘーズ値の測定は、JIS K−7136「プラスチック―透明材料のヘーズの求め方」に準拠し、後述する方法で製造したプレート状成形品を試験片とし、日本電色工業社製のNDH−2000型濁度計で測定した。ヘーズは、樹脂の白濁の尺度として用いられ、数値が小さい程、透明性が高いことを示し、好ましい。後述する表2にあっては、『透明性』と表記し、後述する表3にあっては、『透明性(1)』と表記する。更には、130゜Cの熱風オーブンに300時間保持した後のヘーズ値、及び、プレッシャークッカー試験機(株式会社平山製作所製:HASTEST,MODEL PC−SIII)にて、試験片を120゜C、圧力9.8×104Pa(1kg/cm2)、相対湿度100%の水蒸気雰囲気中で100時間処理した後のヘーズ値を測定し、材料の熱安定性、湿熱安定性の指標とした。尚、表3において、前者のヘーズ値を『透明性(2)』で表し、後者のヘーズ値を『透明性(3)』で表す。
本発明の第1の態様に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物にあっては、芳香族ポリカーボネート樹脂−Bの粘度平均分子量(Mv)が1×105を越えることがないので、成形品に優れた難燃性を付与することができるだけでなく、ヘーズ値の低い、透明性に優れた成形品を得ることができる。また、難燃剤の添加割合が1×10-1質量部を越えることがないので、ヘーズ値の低い、透明性に優れた成形品を得ることができる。更には、Q値が0.1cm3/秒以下であるが故に、UL−94 V−0規格を確実に満足することができる。本発明の第2の態様に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物にあっては、特定の組成、配合を有する芳香族ポリカーボネート樹脂−Bを構成要素とするが故に、成形品に優れた難燃性を付与することができるだけでなく、ヘーズ値の低い、透明性に優れた成形品を得ることができる。しかも、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物にあっては、難燃剤として有機スルホン酸のアルカリ金属塩から成る難燃剤を用いるが故に、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤を用いた場合のような、熱安定性の低下を招いたり、成形加工時における成形機のスクリューや成形金型の腐食を招いたり、高い透明性を阻害したり、耐衝撃性、耐熱性の低下を招いたりするといった問題が発生することもない。
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。
実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4、実施例6〜実施例12、比較例5〜比較例8において使用したポリカーボネート樹脂組成物を、以下の方法で調製した。即ち、各成分を表2及び表3に示す含有量(添加割合、質量%)で、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社株式会社製二軸押出機(TEX30XCT)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20キログラム/時間、バレル温度310゜Cの条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂組成物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
そして、透明性の試験においては、得られたペレットを、120゜Cで5時間乾燥した後、射出成形機(名機製作所株式会社製:M150AII−SJ)にて、シリンダー温度290゜C、金型温度80゜C、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、長さ90mm、幅50mm、厚さ3.0mmのプレート状成形品を試験片として成形した。また、燃焼性(難燃性)の試験においては、得られたペレットを、120゜Cで5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所株式会社製:J50−EP)にて、シリンダー温度260゜C、金型温度80゜C、成形サイクル30秒の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚さ2.0mmのUL試験用試験片を成形した。
芳香族ポリカーボネート樹脂−Bを、以下に説明する方法で合成した。尚、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂−Bを、『PC−1』及び『PC−1’』と呼ぶ。
実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4におけるPC−1の合成にあっては、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液40リットルに、新日鐵化学株式会社製の3.697キログラム(16.215モル)のビスフェノールAと、22グラムのハイドロサルファイトを溶解した。そして、これに、17リットルのジクロロメタンを加えて撹拌しつつ、15゜Cに保ちながら、2.1キログラム(21.212モル)のホスゲンを15分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、分子量調節剤として、DIC株式会社製の22.3グラムのp−tert−ブチルフェノールを加え、更に、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液10リットル、ジクロロメタン20リットルを追加し、激しく撹拌して、反応液を乳化させた後、20ミリリットルのトリエチルアミンを加え、20゜C乃至25゜Cにて約1時間撹拌し、重合させた。重合終了後、反応液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗浄液(水相)の導電率が10μS/cm以下になるまで水洗を繰り返した。得られた重合体溶液を、50゜Cに保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去すると同時に固形化物を粉砕して、白色粉末状沈殿物を得た。得られた沈殿物を濾過し、120゜Cで24時間乾燥して、重合体粉末を得た。
また、実施例6〜実施例12、比較例5〜比較例8におけるPC−1’の合成にあっては、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液40リットルに、新日鐵化学株式会社製の3.634キログラム(15.939モル)のビスフェノールAと、田岡化学工業株式会社製の0.074キログラム(0.276モル)の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンと、30グラムのハイドロサルファイトを溶解した。そして、これに、17リットルのジクロロメタンを加えて撹拌しつつ、15゜Cに保ちながら、2.1キログラム(21.212モル)のホスゲンを15分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、分子量調節剤として、DIC株式会社製の22.3グラムのp−tert−ブチルフェノールを加え、更に、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液10リットル、ジクロロメタン20リットルを追加し、激しく撹拌して、反応液を乳化させた後、20ミリリットルのトリエチルアミンを加え、20゜C乃至25゜Cにて約1時間撹拌し、重合させた。重合終了後、反応液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗浄液(水相)の導電率が10μS/cm以下になるまで水洗を繰り返した。得られた重合体溶液を、50゜Cに保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去すると同時に固形化物を粉砕して、白色粉末状沈殿物を得た。得られた沈殿物を濾過し、120゜Cで24時間乾燥して、重合体粉末を得た。
得られた重合体を赤外線吸収スペクトルにより分析した結果、1770cm-1付近の位置にカルボニル基による吸収、1240cm-1付近の位置にエーテル結合による吸収が認められ、カーボネート結合を有するポリカーボネート樹脂(PC−1,PC−1’)であることが確認された。また、このポリカーボネート樹脂PC−1,PC−1’のそれぞれの粘度平均分子量(Mv)は6.4×104及び6.5×104であった。
また、別の芳香族ポリカーボネート樹脂−Bを、以下に説明する方法で合成した。尚、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂−Bを、『PC−2’』、『PC−3’』と呼ぶ。
即ち、p−tert−ブチルフェノールを26.3グラムに変更した以外は、PC−1’合成例と同様の合成を行った。得られた芳香族ポリカーボネート樹脂−B(PC−2’)の粘度平均分子量(Mv)は6.0×104であった。また、ビスフェノールAを3.440キログラム、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを0.270キログラム、p−tert−ブチルフェノールを22.1グラムに変更した以外は、PC−1’合成例と同様の合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(PC−3’)の粘度平均分子量(Mv)は6.5×104であった。
芳香族ポリカーボネート樹脂−Aとして、以下の表2に示す芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−2,PC−3,PC−4)を使用した。また、比較例においては、以下の表2に示す芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−5,PC−6,PC−7)を、芳香族ポリカーボネート樹脂−Bの代替として使用した。尚、これらの樹脂は、全て、三菱ガス化学株式会社製である。PC−7として、上述したPC−1合成例において、p−tert−ブチルフェノールを13.7グラムに変更し、ホスゲン吹き込み終了後のジクロロメタンを30リットルに変更した。それ以外は、上述したPC−1合成例と同様の合成を行った。得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−7)の粘度平均分子量は1.0×105であった。
更には、芳香族ポリカーボネート樹脂−Aとして、以下の表3に示す芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−4’,PC−5’,PC−6’)を使用した。また、比較例においては、以下の表3に示す芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−7’,PC−8’,PC−9’,PC−10’)を、芳香族ポリカーボネート樹脂−Bの代替として使用した。尚、これらの樹脂は、全て、三菱ガス化学株式会社製である。PC−9’として、上述したPC−1’合成例において、p−tert−ブチルフェノールを13.7グラムに変更し、ホスゲン吹き込み終了後のジクロロメタンを30リットルに変更した。それ以外は、上述したPC−1’合成例と同様の合成を行った。得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−9’)の粘度平均分子量は1.0×105であった。
また、実施例1〜実施例12、比較例1〜比較例8にあっては、難燃剤として、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、ランクセス株式会社製「商品名:バイオウェットC4」を使用した。更には、離型剤(1)として、ペンタエリスリトールテトラステアレート、コグニスジャパン株式会社製「商品名:ロキシオールVPG861」、及び、離型剤(2)として、ステアリン酸、日本油脂株式会社製「商品名:NAA180」を使用した。その他、安定剤として、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト[アデカ株式会社製の商品名アデカスタブ2112]を使用し、紫外線吸収剤として、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール[シプロ化成株式会社製の商品名シーソーブ709]を使用し、着色剤として、Solvent Blue 97[バイエル社製の商品名マクロレックスブルーRR]を使用した。
実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4において、得られた各種測定結果を、以下の表2に示し、実施例6〜実施例12、比較例5〜比較例8において、得られた各種測定結果を、以下の表3に示す。
[表2]
Figure 2011132510
[表3]
Figure 2011132510
表2からも明らかなように、実施例1〜実施例5にあっては、Q値は0.1cm3/秒以下であり、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ2.0mmのUL試験用試験片(平板状成形品)はUL−94 V−0規格を満足していた。また、ヘーズ値も2%以下の低い値であり、透明性に優れていた。更には、表3からも明らかなように、実施例6〜実施例12にあっては、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された2.0mm厚のUL試験用試験片(平板状成形品)はUL−94 V−0規格を満足していた。また、ヘーズ値も1%以下の低い値であり、透明性に優れていた。
一方、比較例1〜比較例2にあっては、実施例1〜実施例5における粘度平均分子量が5×104乃至9×104の芳香族ポリカーボネート樹脂−Bの代わりに、粘度平均分子量が5×104未満の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−5,PC−6)を使用し、しかも、これらの芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−5,PC−6)の質量百分率が50質量%を越えているが故に、UL−94 V−0規格を満足していなかった。また、比較例3にあっては、芳香族ポリカーボネート樹脂−Bの代わりに粘度平均分子量が1×105以上の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−7)を使用したので、ヘーズ値が高く、透明性に劣っていた。更には、比較例4にあっては、難燃剤の添加割合が0.1質量部以上であったが故に、ヘーズ値が高く、透明性に劣っていた。尚、Q値が0.1cm3/秒を越えている芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に基づき実施例と同様の方法でUL試験用試験片を成形し、燃焼性(難燃性)の試験を行ったところ、樹脂の流動性が良すぎる結果、UL−94 V−0規格を満足していなかった。
また、比較例5〜比較例7にあっては、実施例6〜実施例12における粘度平均分子量が5×104乃至9×104の芳香族ポリカーボネート樹脂−Bの代わりに、粘度平均分子量が5×104未満の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−7’,PC−8’)を使用し、しかも、比較例5及び比較例6にあっては、これらの芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−7’,PC−8’)の質量百分率が50質量%を越えているが故に、UL−94 V−0規格を満足していなかった。また、比較例8にあっては、芳香族ポリカーボネート樹脂−Bの代わりに粘度平均分子量が1×105以上の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−9’)を使用したので、ヘーズ値が高く、透明性に劣っていた。

Claims (9)

  1. (A)粘度平均分子量が3×103乃至2.5×104の芳香族ポリカーボネート樹脂−A、99質量%乃至50質量%と、粘度平均分子量が5×104乃至9×104の芳香族ポリカーボネート樹脂−B、1質量%乃至50質量%とから成る透明芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部、並びに、
    (B)有機スルホン酸のアルカリ金属塩から成る難燃剤、5×10-3質量部乃至9×10-2質量部、
    から構成された透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
    高化式フローテスターを用い、280゜C、荷重1.57×107Pa、直径1mm×長さ10mmのオリフィスより流出する溶融樹脂量であるQ値が0.1cm3/秒以下であり、
    該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ2.0mmのUL試験用試験片がUL−94 V−0規格を満足し、
    該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ3.0mmの平板状成形品のヘーズ値が2%以下であることを特徴とする透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 芳香族ポリカーボネート樹脂−Bの粘度平均分子量は、5×104乃至7×104であることを特徴とする請求項1に記載の透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤及び着色剤から成る群から選択された少なくとも1種類の添加剤が添加されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. (A)粘度平均分子量が3×103乃至2.5×104の芳香族ポリカーボネート樹脂−A、99質量%乃至50質量%と、粘度平均分子量が5×104乃至9×104の芳香族ポリカーボネート樹脂−B、1質量%乃至50質量%とから成る透明芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部、並びに、
    (B)有機スルホン酸のアルカリ金属塩から成る難燃剤、5×10-3質量部乃至9×10-2質量部、
    から構成された透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
    芳香族ポリカーボネート樹脂−Bは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、99.9質量%乃至90質量%と、以下の式[1]にて示される成分、0.1質量%乃至10質量%との共重合ポリカーボネート樹脂から成り、
    該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ2.0mmのUL試験用試験片がUL−94 V−0規格を満足し、
    該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ3.0mmの平板状成形品のヘーズ値が2%以下であることを特徴とする透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2011132510
    ここで、式[1]中、R1乃至R4は、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、各々が置換基を有してもよい炭素数1乃至9のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基、炭素数6乃至12のアリール基、炭素数2乃至5のアルケニル基、又は、炭素数7乃至17のアラルキル基であり、これらの基の炭素のいずれもが有してもよい置換基は、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数2乃至5のアルケニル基、又は、炭素数1乃至5のアルコキシ基であり、Xは、
    Figure 2011132510
    であり、ここで、R5及びR6は、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、各々が置換基を有してもよい炭素数1乃至9のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基、炭素数6乃至12のアリール基、炭素数2乃至5のアルケニル基、又は、炭素数7乃至17のアラルキル基であり、あるいは又、R5及びR6が一緒に結合して炭素環又は複素環を形成する基であり、これらの基の炭素のいずれもが有してもよい置換基は、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基、炭素数2乃至5のアルケニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子であり、R7及びR8は、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、各々が置換基を有してもよい炭素数1乃至9のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基、又は、炭素数6乃至12アリール基であり、これらの基の炭素のいずれもが有してもよい置換基は、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基、フッ素、塩素、臭素、又は、ヨウ素であり、R9は、置換基を有してもよい炭素数1乃至9のアルキレン基であり、aは0乃至20の整数を表し、bは1乃至500の整数を表す。
  5. 式[1]にて示される成分は、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンから成ることを特徴とする請求項4に記載の透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 式[1]にて示される成分は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンから成ることを特徴とする請求項5に記載の透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 芳香族ポリカーボネート樹脂−Bは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、99.5質量%乃至95質量%と、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、5質量%乃至0.5質量%から成ることを特徴とする請求項6に記載の透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  8. 熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤及び着色剤から成る群から選択された少なくとも1種類の添加剤が添加されていることを特徴とする請求項4乃至請求項7に記載の透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  9. 請求項1乃至請求項8に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された成形品。
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