JPWO2011089988A1 - 膵臓癌の検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】病変ハプトグロビンの検出を精度高く行うために、強い結合力を有しフコースへの特異性の高いレクチンを利用した検出方法を提供する。【解決手段】本発明の膵臓癌の検出方法は、生体から取得した検体に含まれる病変ハプトグロビンを、(1)担子菌から抽出することができ、(2)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量が4,000〜40,000であり、及び、(3)フコースα1→6糖鎖に対して結合定数1.0×104M−1以上(25℃において)で示されるフコースα1→6特異的レクチンを作用させて検出することを特徴とする。

Description

本発明は、膵臓癌の検出方法に関し、より詳細には病変ハプトグロビンを腫瘍マーカーとする膵臓癌の検出方法に関する。
膵臓は身体の中心に位置するため、癌が発生しても発見することが困難である。膵臓癌診断のための腫瘍マーカーとしては、CEA(基準値5.0ng/mL)、CA19−9(基準値37U/mL)等がある。これらの腫瘍マーカーによる結果は偽陽性を含むことがあり、腫瘍マーカーのみでは信頼度の高い結果を得ることができない。膵臓癌を確認するには、コンピュータ断層撮影(CT)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、超音波内視鏡(EUS)、血管造影等の高価な精密検査が必要になる。このうち、ERCP、EUSは侵襲性があり、患者への負担が大でもある。
膵臓癌になると、糖タンパクの一種であるハプトグロビンにフコースが付加されることが最近報告された(非特許文献1及び2、並びに特許文献1)。非特許文献1によれば、この病変ハプトグロビンは、膵臓癌の病期の進展とともに増え、膵臓癌の腫瘍部摘出後には消失する。
ヒトハプトグロビンは、406個のアミノ酸からなる糖タンパク質であり、そのβ鎖(分子量40,000)に4個のN結合型糖鎖結合部位を有する。ヒトハプトグロビンは、健康な成人の血清に0.7〜1.7mg/mLの濃度と多量に存在する。ハプトグロビンの中から病変ハプトグロビンを精度高く検出することができれば、早期癌を含む膵臓癌の腫瘍マーカーとして病変ハプトグロビンを利用することが現実化する。
癌化に伴う細胞表面の糖鎖構造の変化や転移に関わる情報を得るために、糖鎖に結合するレクチンを利用することが考えられる。従来、フコースを検出するレクチンとして、ヒイロチャワンタケレクチン(AAL)、レンズマメレクチン(LCA)、ミヤコグサレクチン(Lotus)、ハリエニシダレクチン(UEA−I)等が知られている。しかし、これらの従来のレクチンを用いた検出方法では、健常者と膵臓癌患者との間で有意差が出にくい。
特開2009−168470
Fucosylated haptoglobin is a novel marker for pancreatic cancer: a detailed analysis of the oligosaccharide structure and a possible mechanism for fucosylation.Okuyama N,et.al., Int J Cancer. 2006 Jun 1;118(11):2803−8. Site−specific analysis of N−glycans on haptoglobin in sera of patients with pancreatic cancer: a novel approach for the development of tumor markers.Nakano M,et.al., Int J Cancer. 2008 May 15;122(10):2301−9
本発明の目的は、病変ハプトグロビンの検出を精度高く行うために、病変ハプトグロビンに特異的に結合するレクチンを利用する検出方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、以下の発明によって解決できることを見いだした。本発明は、生体から取得した検体に含まれる病変ハプトグロビンに、
(1)担子菌から抽出することができ、
(2)ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド電気泳動法(以下、SDSポリアクリルアミド電気泳動法と記載する)による分子量が4,000〜40,000であり、
及び、
(3)フコースα1→6糖鎖に対して結合定数1.0×10−1以上(25℃において)の親和性を有する
で示されるフコースα1→6特異的レクチンを作用させることを特徴とする、膵臓癌の検出方法を提供する。
前記フコースα1→6特異的レクチンは、さらに、(4)フコースα1→6糖鎖を含まないハイマンノース糖鎖及び/又は糖脂質に対して実質的に結合しないことが好ましい。
前記担子菌は、モエギタケ科、キシメジ科、テングタケ科又はタコウキン科に属するものであることが好ましい。前記担子菌は、特にツチスギタケ、スギタケ、ヌメリスギタケモドキ、サケツバタケ、クリタケ、コムラサキシメジ又はベニテングタケである。
前記検体は、例えばヒトから採取した血清又は血漿である。
本発明の膵臓癌の検出方法は、特に、前記フコースα1→6特異的レクチンと抗ハプトグロビン抗体とを用いたアッセイにより、病変ハプトグロビンを検出することが好ましい。
前記フコースα1→6特異的レクチンは、標識されていることが好ましい。
さらに、血清中の腫瘍マーカーCA19−9量が30U/mL以上である生体から取得した検体に含まれる病変ハプトグロビンに前記フコースα1→6特異的レクチンを作用させることを特徴とする、膵臓癌と膵炎との判別方法もまた提供する。血清中の腫瘍マーカーCA19−9量は、32U/mL以上がより好ましく、35U/mL以上がさらに好ましい。こうすることで、健常者と膵臓癌患者と膵炎患者とを明確に区別できる。
本発明は、また、フコースα1→6特異的レクチンであって、
(1)担子菌から抽出することができ、
(2)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量が4,000〜40,000であり、及び、
(3)フコースα1→6糖鎖に対して結合定数1.0×10−1以上(25℃において)の親和性を有する
で示されるフコースα1→6特異的レクチンを含む、膵臓癌及び/又は膵炎の検出用診断薬又はキットを提供する。このキットには、抗ハプトグロビン抗体及び/又は抗CA19−9抗体を含むことが好ましい。
本発明の膵臓癌の検出方法は、膵臓癌の腫瘍マーカーとしての利用が期待される病変ハプトグロビンを、従来のフコース特異的レクチンよりも精度高く検出することができる。その結果、従来、発見が困難であった膵臓癌の検出を容易に行うことができる。特に、本発明の方法は、血清を用いた癌検診に適用可能である点で利便性に優れる。さらに、本発明のフコースα1→6特異的レクチンと抗ハプトグロビン抗体を用いたアッセイによれば、膵臓癌を迅速かつ簡便に検出することが可能である。従来の腫瘍マーカーCA19−9の単独使用では、膵臓癌と膵炎との区別がつきにくかった。一方、本発明の膵臓癌と膵炎との判別方法では、マーカーCA19−9とのフコースα1→6特異的レクチンを併用することにより、膵臓癌と膵炎との判別が容易になる。
調製例1のPTLのイオン交換クロマトグラフィーの溶出図である。 調製例1のPTLのアフィニティクロマトグラフィーの溶出図である。 調製例2のSRLの疎水クロマトグラフィーの溶出図である。 調製例2のSRLの逆相クロマトグラフィーの溶出図である。 ヒト血清由来ハプトグロビン(血清HP)及び、膵臓癌細胞上清由来ハプトグロビン(癌細胞HP)を、それぞれ、本発明に従うPTLと結合させた際の反応値(吸光度)を示す。 図5と同じく、血清HP及び癌細胞HPを、それぞれ、比較例のLCAと結合させた際の反応値を示す。 図5と同じく、血清HP及び癌細胞HPを、それぞれ、比較例のAALと結合させた際の反応値を示す。 健常者、膵臓癌患者及び膵炎患者の血清由来のハプトグロビンと、本発明に従うPTLとの結合試験の反応値(吸光度)を示す。 図8において、PTLを比較例のAALに代えた結合試験の反応値を示す。 マウスモノクローナル抗CA19―9抗体とラビットポリクローナル抗CA19−9抗体によるサンドイッチアッセイで健常者血清、膵臓癌患者血清及び膵炎患者血清中のCA19―9を定量した結果を示す。 抗ハプトグロビン抗体(抗HP抗体)での結合試験により算出した血清中の相対ハプトグロビン量を示す。 図8のPTL反応値を、図11の対応する相対ハプトグロビン量で除した値を示す。 図9のAAL反応値を、図11の対応する相対ハプトグロビン量で除した値を示す。
本発明の膵臓癌の判別方法の一実施の形態を、より詳細に説明する。本発明の方法は、生体から取得した検体に含まれる病変ハプトグロビンを、以下の物性:
(1)担子菌から抽出することができ、
(2)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量が4,000〜40,000であり、及び、
(3)フコースα1→6糖鎖に対して結合定数1.0×10−1以上(25℃において)で示される
を有するフコースα1→6特異的レクチンを作用させて検出することを特徴とする。
本発明の検出方法は、下記化学式に示すようなフコースα1→6結合を特異的に認識するレクチンの使用が必須である。
Figure 2011089988
〔式中、Manはマンノース、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、Fucはフコースを意味する〕
本発明者らが新規に見いだしたフコースα1→6特異的レクチンによれば、膵臓癌の検出が容易である。このレクチンの理化学的性質を以下に詳述する。
(1)レクチンの由来
フコースα1→6特異的レクチンの由来となる原料は、担子菌である。担子菌の中でも、モエギタケ科、キシメジ科、タコウキン科及びテングタケ科に属することが好ましい。モエギタケ科としては、ツチスギタケ、サケツバタケ、クリタケ、スギタケ、ヌメリスギタケモドキ、ヌメリスギタケ等が挙げられる。キシメジ科としては、コムラサキシメジ等が挙げられる。タコウキン科としては、シロハカワラタケ、ツヤウチワタケ等が挙げられる。テングタケ科としては、ベニテングタケ等が挙げられる。これらの担子菌のうち、レクチンのフコースα1→6糖鎖認識特異性とレクチンの回収効率の観点から、モエギタケ科、キシメジ科又はテングタケ科が特に好ましく、さらに好ましくはツチスギタケ、スギタケ、ヌメリスギタケモドキ、サケツバタケ、クリタケ、コムラサキシメジ又はベニテングタケである。
(2)レクチンの分子量
前記フコースα1→6特異的レクチンのSDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量は、4,000〜40,000であり、好ましくは4,000〜20,000である。ここで、SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量は、例えばLaemmiの方法(Nature,227巻,680頁,1976年)に準じて測定されるものである。
(3)レクチンの結合定数
前記フコースα1→6特異的レクチンのフコースα1→6糖鎖に対する結合定数は、1.0×10−1以上であり、好ましくは1.0×10−1以上、さらに好ましくは1.0×10−1以上である。すなわち、フコースα1→6に親和性を有することが従来知られているAAL、麹菌レクチン(AOL)、LCA、ラッパズイセンレクチン(NPA)及びエンドウマメレクチン(PSA)と比べて、結合定数が著しく高い。これは、前記フコースα1→6特異的レクチンが、従来のレクチンと比べて極めて高い選択性をもってフコースα1→6糖鎖と結合することを意味する。
上記結合定数は、例えばフロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)法により測定することができる。FAC法の詳細は、例えばPCT/JP2009/003346に記載されている。PCT/JP2009/003346を参照のために本明細書に編入する。
フコースα1→6糖鎖は、その非還元末端にシアル酸を有していてもよい。従来のフコースα1→6特異的レクチン(例えばLCA、NPA及びPSA)は、非還元末端にシアル酸を有するフコースα1→6糖鎖に対して親和性が低かった。一方、前記フコースα1→6特異的レクチンは、このような糖鎖に対しても高い親和性を有する点でも従来のものより優れている。
(4)レクチンの糖結合特異性
前記フコースα1→6特異的レクチンは、フコースα1→6糖鎖を含まないハイマンノース糖鎖及び/又は糖脂質に対して実質的に結合しないことが好ましい。これにより、前記フコースα1→6特異的レクチンは、より一層高い結合特異性を有する。本明細書において、「実質的に結合しない」とは、結合定数が1.0×10−1以下、好ましくは1.0×10−1以下、特に好ましくは0であることを意味する。
(5)レクチンの分岐鎖への結合
前記フコースα1→6特異的レクチンは、フコースα1→6N結合型の一本、二本、三本及び/又は四本糖鎖に対して結合定数1.0×10−1以上(25℃において)で示される親和性を有することが好ましく、より好ましくは結合定数1.0×10−1以上で示される親和性を有する。
(6)レクチンのアミノ酸配列
フコースα1→6特異的レクチンは、特に、表1の配列番号1に示すような共通のアミノ酸構造を有する。配列番号1の第4、5、6及び7番目のXaaは、それぞれ、Asp/Asn/Glu/Thr、Thr/Ser/Ala、Tyr/Phe及びGln/Lys/Gluを意味し、その斜線は「又は」を意味する。
本発明の方法に使用し得るフコースα1→6特異的レクチンの具体例を、配列番号2〜6に示す。配列番号2に示すレクチンは、ツチスギタケから抽出することのできる、分子量4,500の新規なレクチン(PTL)である。配列番号2の第10及び17番目のXaaは、任意のアミノ酸残基であってよいが、好ましくはCysである。第20、23、27、33、35及び39番目のXaaは、それぞれ、Tyr/Ser、Phe/Tyr、Arg/Lys/Asn、Asp/Gly/Ser、Asn/Ala、及び、Thr/Glnである。
配列番号3に示すレクチンは、サケツバタケから抽出することのできる、分子量4,500の新規なレクチン(SRL)である。配列番号3の第10及び17番目のXaaは、任意のアミノ酸残基であってよいが、好ましくはCysである。第4、7、9、13、20、27、29、33、34及び39番目のXaaは、それぞれ、Pro/Gly、Glu/Lys、Val/Asp、Asn/Asp/Glu、His/Ser、Lys/His、Val/Ile、Gly/Asn/Ser、Ala/Thr、及び、Arg/Thrである。
配列番号4に示すレクチンは、コムラサキシメジから抽出することのできる、分子量4,500の新規なレクチン(LSL)である。配列番号4の第10及び17番目のXaaは、任意のアミノ酸残基であってよいが、好ましくはCysである。第1、4、7、8、9、13、16、20、22、25、27、31及び34番目のXaaは、それぞれ、Ala/Gln、Pro/Lys、Ala/Ser、Met/Ile/Val、Tyr/Thr、Asp/Asn、Lys/Glu、Ala/Asn、Val/Asp/Asn、Asp/Asn、Arg/His/Asn、Gln/Arg、及び、Thr/Valである。
配列番号5に示すレクチンは、クリタケから抽出することのできる新規なレクチン(NSL)である。配列番号5の第10及び17番目のXaaは、任意のアミノ酸残基であってよいが、好ましくはCysである。第13、14及び16番目のXaaは、それぞれ、Asp/Thr、Ser/Ala、及び、Gln/Lysである。
配列番号6に示すレクチンもまた、クリタケから抽出することのできる、分子量4,500の新規なレクチン(NSL)である。配列番号6は、配列番号5のペプチド中に1個のAsnが挿入された変異体である。したがって、配列番号6の第10及び18番目のXaaは、任意のアミノ酸残基であってよいが、好ましくはCysである。第14、15及び17番目のXaaは、それぞれ、Asp/Thr、Ser/Ala及びGln/Lysである。
フコースα1→6特異的レクチンは、配列番号2〜6のレクチンがサブユニットとなって、通常、2〜10個、好ましくは2〜4個結合したものでもよい。
Figure 2011089988
フコースα1→6特異的レクチンは、(a)配列番号2〜5のいずれかに示すアミノ酸配列からなるタンパク質又はペプチドの他に、(b)配列番号2〜5のいずれかに示すアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸が欠失、挿入又は置換され、かつ、配列番号2〜5のいずれかに示すアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチドと機能的に同等なタンパク質又はペプチドであってもよい。ここで、「機能的に同等」とは、フコースα1→6糖鎖に対して結合定数1.0×10−1以上であり、好ましくは1.0×10−1以上、さらに好ましくは1.0×10−1以上で示される親和性を有することを意味する。(b)の変異体の一例が、配列番号6に示すタンパク質又はペプチドである。
前記フコースα1→6特異的レクチンは、特に好ましくはPTL、SRL、NSL、LSL及びベニテングタケレクチン(AML)であり、さらに好ましくはPTL、及び、SRLである。PTL及びSRLは、従来のフコースα1→6親和性レクチンと相違して、フコースα1→6以外のフコースや、フコースを持たない高マンノース糖鎖と結合しない点で、本発明の判別方法に使用するフコースα1→6特異的レクチンとして最適である。
フコースα1→6特異的レクチンは、担子菌から、公知の抽出方法、分離方法、精製方法等を適宜組み合わせることにより、単離することができる。例えば、水系媒体を抽出溶媒として用いて、担子菌の水系媒体抽出物を得る工程を含む。この前記抽出物から、SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量が4,000〜40,000、好ましくは4,000〜20,000、及び、フコースα1→6糖鎖に対する結合定数が1.0×10−1以上、好ましくは1.0×10−1以上、さらに好ましくは1.0×10−1以上(25℃において)で示される親和性を有するレクチンを得る。
前記担子菌は、モエギタケ科、キシメジ科、タコウキン科及びテングタケ科の少なくとも一種から選ばれることが好ましい。特に、ツチスギタケ(Pholiota terrestris Overholts)、スギタケ(Pholiota squarrosa (Fr.) Kummer)、ヌメリスギタケ(Pholiota adiposa (Fr.) Kummer)、ナメコ(Pholiota nameko (T.Ito) S.Ito
& Imai)、サケツバタケ(Stropharia rugosoannulata Farlow in Murr.)、クリタケ(Naematoloma sublateritium (Fr.) Karst又はHypholoma sublateritium(Fr.)Quel)等のモエギタケ科、コムラサキシメジ(Lepista sordida (Schum. : Fr.) Sing.)等のキシメジ科、シロハカワラタケ(Trichaptum elongatum)、ツヤウチワタケ(Microporus vernicipes)等のタコウキン科、ベニテングタケ(Amanita muscaria)等のテングタケ科に属するものが好ましい。これらの担子菌の使用部位は、子実体であることが好ましい。
水系媒体と担子菌の子実体とから、水系媒体抽出物を得る方法については、水系媒体と担子菌の子実体とを接触させることができれば特に制限はない。抽出効率の観点から、水系媒体中で担子菌の子実体を粉砕して懸濁液とする方法が好ましい。また、粉砕する方法としては、ミキサー、ホモジナイザー等を用いた通常の粉砕方法を挙げることができる。
上記水系媒体としては、緩衝液、水と混合し得る有機溶媒と水又は緩衝液との混合物等を挙げることができる。好ましくは、緩衝液又は有機溶媒と緩衝液との混合物である。
上記緩衝液としては、特に制限されることなく公知の緩衝液を用いることができる。中でも、pH3〜10の範囲に緩衝能を有するものが好ましく、pH6〜8の範囲に緩衝能を有するものがより好ましい。具体的には、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス緩衝液等を挙げることができる。中でも、抽出効率の観点から、リン酸緩衝液が好ましい。
前記緩衝液の塩濃度は、特に制限はないが、抽出効率と緩衝能の点から、1〜100mMであることが好ましく、5〜20mMであることがより好ましい。
前記緩衝液は、さらに塩類を含むことができる。例えば、リン酸緩衝液に食塩を更に加えたリン酸緩衝化生理食塩水等は、水系媒体として好ましい。
前記有機溶媒としては、水と混合し得る有機溶媒であれば特に制限なく用いることができる。中でも、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール及びアセトニトリルが好ましい。有機溶媒と水又は緩衝液とを混合する場合の有機溶媒の含有量としては、10〜40質量%であることが好ましい。
前記抽出工程は、水系媒体と担子菌の子実体との混合物から、水系媒体に対する不溶物を除去する工程を更に含むことが好ましい。不溶物の除去方法としては、ろ過、遠心分離等の方法を挙げることができるが、除去効率の観点から遠心分離が好ましい。
前記抽出工程は、リン酸緩衝化生理食塩水中で、担子菌の子実体を粉砕し、遠心分離によって不溶物を除去して水系媒体抽出物を得る工程であることが特に好ましい。
前記フコースα1→6特異的レクチンの製造方法では、以下のいずれかの精製手段を採用すると、一層効率的な精製が可能となる。
(精製方法1)
上記工程によって得られた水系媒体抽出物を、硫酸アンモニウム沈殿法にかけることによってレクチン含有画分を得て、得られたレクチン画分を疎水クロマトグラフィー及び逆相クロマトグラフィーで精製する。
(精製方法2)
上記工程によって得られた水系媒体抽出物を、チログロブリンをアガロース等に固定した担体を用いたアフィニティクロマトグラフィーに供して精製する。
(精製方法3)
上記工程によって得られた水系媒体抽出物を、硫酸アンモニウム沈殿法にかけることによってレクチン含有画分を得て、透析凍結乾燥を行った後、粗レクチン画分をトリス緩衝液に溶解後、イオン交換クロマトグラフィーに供し、得られた活性画分を濃縮後、ゲルろ過クロマトグラフィーで分離する。
フコースα1→6特異的レクチンの製造方法には、前記精製工程で得られたレクチンを含む画分を透析処理する工程と、透析処理後のレクチン溶液を凍結乾燥する工程とを含んでもよい。これにより、レクチンを容易に単離することができる。透析処理する工程及び凍結乾燥する工程は、通常用いられる公知の方法によって行うことができる。
(a)配列番号2〜5のいずれかに示すアミノ酸配列からなるタンパク質又はペプチド、若しくは、(b)配列番号2〜5のいずれかに示すアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸が欠失、挿入又は置換され、かつ、配列番号2〜5のいずれかに示すアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチドと機能的に同等なタンパク質又はペプチドであるフコースα1→6特異的レクチンは、天然植物からの抽出のほかに、天然由来とは異なる宿主内で人工的に発現させ、又は化学合成させてもよい。宿主内での発現や化学合成は、通常用いられる公知の方法によって行うことができる。
前記検出に用いるフコースα1→6特異的レクチンには、予め標識手段が組み込まれていることが好ましい。このようなレクチンを以下、標識レクチンということがある。標識レクチンは、フコースα1→6特異的レクチンと標識手段とを少なくとも含み、検出可能に標識化されている。
前記標識手段としては、特に制限なく公知の標識化方法を適用することができ、例えば、放射性同位元素による標識化、標識化合物の結合等を挙げることができる。
前記標識化合物としては、この用途に通常用いられるものであれば特に制限なく適用することができ、例えば、直接又は間接標識化合物、酵素、蛍光化合物等を挙げることができる。具体的には、ビオチン、ジゴキシゲニン、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ、フルオレセインイソチオシアネート、CyDye等を挙げることができる。これらの標識化合物は、常法によりレクチンと結合することができる。
前記検体は、ヒトを含む動物からなる生体から取得したものであれば特に制限なく、例えば血液、血漿、血清、涙、唾液、体液、乳汁、尿、細胞の培養上清、形質転換動物からの分泌物等が挙げられる。本発明の検出方法を膵臓癌検診に使用する場合、検体にヒトから採取した血清又は血漿を用いることができる。血液からの血清の抽出は常法による。
フコースα1→6特異的レクチンは、フコースα1→6結合を有する糖鎖(例えば、表1に示すイムノグロブリンG、α−フェトプロテイン、前立腺特異抗原等)であれば、高い親和性を有する。これらの糖鎖の検出を排除するために、本発明の膵臓癌の検出方法は、フコースα1→6特異的レクチンと抗ハプトグロビン抗体とを用いたサンドイッチアッセイにより、病変ハプトグロビンを検出することが好ましい。
サンドイッチアッセイでは、まず、細胞培養上清、血清等の検体に抗ハプトグロビン抗体と反応させて、ハプトグロビン又は病変ハプトグロビンと抗ハプトグロビン抗体結合体を得る。これらの結合体を、アフィニティクロマトグラフィー、免役沈降等で単離精製する。次いで、結合体にフコースα1→6特異的レクチンと反応させ、レクチン−病変ハプトグロビン−抗ハプトグロビン抗体結合体を得る。
なお、サンドイッチアッセイは、まず、病変ハプトグロビンを含む検体とフコースα1→6特異的レクチンと反応させて、レクチン−病変ハプトグロビン結合体を得、次いで、レクチン−病変ハプトグロビン結合体に抗ハプトグロビン抗体を反応させて、レクチン−病変ハプトグロビン−抗ハプトグロビン抗体結合体を得てもよい。
ハプトグロビンを特異的に認識することができる抗ハプトグロビン抗体は、常法に基づいて得ることができる。一例として、抗原としてのハプトグロビンを動物に免疫することにより得る方法がある。抗ハプトグロビン抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れでもよい。
フコースα1→6特異的レクチンと病変ハプトグロビンとの結合の検出には、ELISA(サンドイッチELISA等)、レクチンクロマトグラフィー、レクチンブロット、レクチン染色、レクチンチップ、凝集法、Biacore(登録商標)システム等の表面プラズモン共鳴法等が挙げられる。特に、アビジン−ビオチン又はストレプトアビジン−ビオチン系を用いる検出が、感度が高い点で好ましい。
サンドイッチELISA法では、プレートに抗ハプトグロビン抗体を添加し固定化してから、血清等の検体を添加する。次いで、ビオチン標識したフコースα1→6特異的レクチンを添加して、血清に含まれる病変ハプトグロビンとフコースα1→6特異的レクチンとを反応させる。2次標識化合物としてHRP(ホースラディッシュパーオキシダーゼ)標識ストレプトアビジン溶液を添加して、アビジンとストレプトアビジンとを反応させる。次いで、HRP用発色基質を加えて発色させ、発色強度を吸光光度計(HRPの場合波長450nm)で測定する。予め、既知の濃度の病変ハプトグロビンを含む標準試料によって検量線を作成しておけば、病変ハプトグロビンの定量化も可能である。
レクチンクロマトグラフィーは、担体に固定化されたレクチンが糖鎖と特異的に結合する性質を利用したアフィニティクロマトグラフィーである。HPLCと組み合わせることでハイスループットを期待することができる。
フコースα1→6特異的レクチンの固定化担体としては、アガロース、デキストラン、セルロース、スターチ、ポリアクリルアミド等のゲル材が一般的である。これらには、市販のものを特に制限なく使用でき、例えばセファロース4Bやセファロース6B(共にGEヘルスケアバイオサイエンス社製)が挙げられる。レクチンクロマトグラフィーに用いるカラムとしては、マイクロプレートやナノウエルにレクチンを固定化したものも含まれる。
固定化するフコースα1→6特異的レクチンの濃度は、通常、0.001〜100mg/mL、好ましくは0.01〜20mg/mLである。担体がアガロースゲルの場合、それをCNBr等で活性化してからレクチンとカップリングさせる。活性化スペーサーを導入したゲルにレクチンを固定化してもよい。さらには、ホルミル基を導入したゲルにレクチンを固定化してからNaCNBHで還元してもよい。また、NHS−セファロース(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)のような市販の活性化ゲルを使用してもよい。
フコースα1→6糖鎖試料をカラムにかけた後、洗浄の目的で緩衝液を流す。緩衝液の一例は、モル濃度が5〜500mM、好ましくは10〜500mMであり、pHが4.0〜10.0、好ましくは6.0〜9.0であり、NaCl含量が0〜0.5M、好ましくは0.1〜0.2Mであり、CaCl、MgCl、又は、MnCl含量が0〜10mM、好ましくは0〜5mMの緩衝液である。
アフィニティカラムの洗浄後、フコースα1→6糖鎖の溶出は、糖鎖を有効に溶出できる中性の非変性緩衝液中で、塩化ナトリウム、ハプテン糖等の脱着剤を用いて行われる。この緩衝液は、上記と同様であってもよい。脱着剤の濃度は、好ましくは、1〜500mM、特に好ましくは10〜200mM濃度である。
本発明は、また、血清中のCA19−9量が30U/mL以上である生体から取得した検体に含まれる病変ハプトグロビンに、
(1)担子菌から抽出することができ、
(2)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量が4,000〜40,000であり、及び、
(3)フコースα1→6糖鎖に対して結合定数1.0×10−1以上(25℃において)の親和性を有する
で示されるフコースα1→6特異的レクチンを作用させることを特徴とする、膵臓癌と膵炎との判別方法を提供する。本判別方法の操作は、検体として血清中のCA19−9量が30U/mL以上である生体から取得したものを使用する以外は、前記膵臓癌の検出方法と同様である。従来の腫瘍マーカーCA19−9の単独使用では、表3及び図10に示すように、膵臓癌と膵炎との区別がつきにくかった。一方、マーカーCA19−9及びフコースα1→6特異的レクチンを併用する本発明の膵臓癌と膵炎との判別方法によれば、図8に示すように、膵臓癌と膵炎との判別が容易になる。
本発明は、また、フコースα1→6特異的レクチンであって、
(1)担子菌から抽出することができ、
(2)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量が4,000〜40,000であり、及び、
(3)フコースα1→6糖鎖に対して結合定数1.0×10−1以上(25℃において)で示される親和性を有する
フコースα1→6特異的レクチンを含む、膵臓癌及び/又は膵炎の検出用診断薬又はキットを提供する。上記レクチンは、標識されていることが好ましい。
上記診断薬又はキットには、適宜、標識(酵素とその発色基質、放射性同位元素、発光物質、蛍光物質、着色物質)、緩衝液、プレート、反応停止液等の診断薬キットに公知のものを含む。特に、生体から取得した検体からハプトグロビンを抽出するための試薬(例えば抗ハプトグロビン抗体)を含むことが好ましい。
以下に、本発明の実施例を示して、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
〔調製例1〕PTLの製造
以下に示す精製工程に従って、ツチスギタケからツチスギタケレクチン(PTL)を単離精製した。
(抽出)
ツチスギタケ約7.5gを凍結乾燥して得られたツチスギタケ凍結乾燥粉末2.5gに、10mM トリス緩衝液(pH7.2)50mLを加えて、4℃下で2時間抽出した。この液を、遠心分離(15,000rpm、20min、4℃)後、上清をガーゼろ過して1回目の抽出液を得た。この抽出残渣に、10mM トリス緩衝液(pH7.2)を50mL加えて、4℃下で一晩抽出した。この液を遠心分離(15,000rpm、20min、4℃)後、上清をガーゼろ過して2回目の抽出液を得た。これらの抽出液を合わせてろ紙でろ過し、ツチスギタケ抽出液とした。
(イオン交換クロマトグラフィー)
上記抽出液87mLを、10mM トリス緩衝液(pH7.2)で平衡化したDEAE−セファロース(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に供した。同緩衝液でカラムを洗浄後、0.1M NaClを含む10mM トリス緩衝液(pH7.2)で溶出した。赤血球凝集活性を示す画分(図1の←→部)を合一し、限外ろ過で脱塩後凍結乾燥した。
(アフィニティクロマトグラフィー)
上記凍結乾燥粉末を、10mM リン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4、以後、PBSと略す)で溶解し、同緩衝液で平衡化したチログロブリン固定化アガロースに供した。PBSでカラムを洗浄後、0.2M アンモニアで溶出した。赤血球凝集活性を示す画分(図2の←→部)を合一し、限外ろ過で純水に置換後凍結乾燥し、PTLを1.07mg得た。PTLの(2)分子量、(3)結合定数、(4)糖結合特異性、(5)分岐鎖への結合及び(6)アミノ酸配列に関する理化学的性質は、前述のPCT/JP2009/003346に記載されている。
〔調製例2〕SRLの製造
以下に示す精製工程に従って、サケツバタケからサケツバタケレクチン(SRL)を単離精製した。
(抽出)
サケツバタケ約400gを凍結乾燥して得られたサケツバタケ凍結乾燥粉末40gに、1.6LのPBSを加え、4℃下で2時間抽出した。この液を、遠心分離(10,000rpm、20min、4℃)後、上清をガーゼろ過して1回目抽出液を得た。この抽出残渣にPBS 0.8Lを加え、4℃下で一晩抽出した。この液を遠心分離(10,000rpm、20min、4℃)後、上清をガーゼろ過して2回目抽出液を得た。これらの抽出液をあわせてサケツバタケ抽出液とした。
(硫安沈殿)
上記抽出液2.4Lに対して、硫酸アンモニウム濃度が80%飽和になるように硫酸アンモニウム1.3kgを添加して攪拌した。完全に溶解したことを確認した後、7℃下で一晩静置した。この溶液を遠心(10,000rpm、20min、4℃)し、沈殿に純水を少量添加し、懸濁してサケツバタケ80% 硫酸アンモニウム沈殿画分を回収した。
(疎水クロマトグラフィー)
上記サケツバタケ80% 硫酸アンモニウム沈殿画分を、2M 硫酸アンモニウム−PBSで平衡化したブチル−トヨパール650M(東ソー(株)製)に供して、疎水クロマトグラフィー精製を行った。このクロマトグラフィーにおいて、純水溶出画分を合一し、透析及び凍結乾燥を行い、サケツバタケレクチン粗画分を得た(図3の←→部)。
(逆相クロマトグラフィー)
上記サケツバタケレクチン粗画分を、0.05% トリフルオロ酢酸(TFA)−0% アセトニトリルで平衡化したC8カラム(和光純薬(株)製)に供して、逆相クロマトグラフィーで精製した。このクロマトグラフィーにおいて、0.05% TFA−30% アセトニトリル溶出画分(図4の←→部)を合一し、常温、減圧下で溶媒を除去して得られた乾燥粉末を合一して、SRLを7.5mg得た。SRLの(2)分子量、(3)結合定数、(4)糖結合特異性、(5)分岐鎖への結合及び(6)アミノ酸配列に関する理化学的性質は、前述のPCT/JP2009/003346に記載されている。
〔参考例1〕血清中の各種糖タンパク質のレクチンによる検出
表1に示す糖タンパク質と、以下に示すビオチン標識レクチンとの親和性をELISA法で調べた。
PTL(本発明に使用可能なフコースα1→6特異的レクチン)並びに、
従来、フコース特異的といわれている以下の市販のレクチン:
LCA(生化学バイオビジネス(株)−(株)J−オイルミルズ製)、
AAL(生化学バイオビジネス(株)−(株)J−オイルミルズ製)、
Lotus(生化学バイオビジネス(株)−(株)J−オイルミルズ製)、及び
UEA−I(生化学バイオビジネス(株)−(株)J−オイルミルズ製)
血清糖タンパク質(ヒト血清アルブミン(CALBIOCHEM社製)、イムノグロブリンG(Sigma社製)、トランスフェリン(Sigma社製)、フィブリノーゲン(AbD Serotec社製)、イムノグロブリンA(BETYL社製)、α2−マクログロブリン(BMO社製)、イムノグロブリンM(ROCKLAND社製)、補体C3(CALBIOCHEM社製)、ハプトグロビン(BIODESIGN社製)、α1−酸性糖タンパク(Sigma社製)、α―フェトプロテイン(Fitzgerald社製)、α−フェトプロテインL3(和光純薬(株)製)、前立腺特異抗原(Scipac社製))を、PBSで1mg/mLに溶解して、さらに0.1M 炭酸緩衝液(pH 9.5)で10ng/mLに希釈した。希釈液をマイクロタイタープレート(Nunc 439454)に50μL添加した後、37℃で1時間保温した。0.05% Tween 20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)(以下、Tweenと略す)/PBSで1回洗浄後、1% 子牛血清アルブミン(BSA)/PBSをウェルに200μL添加して、37℃で1時間保温した。0.05% Tween/PBSで2回洗浄した。
1% BSA/0.05% Tween/PBSで1μg/mLに調製したビオチン標識化レクチン溶液を、上記ウェルに50μL添加して、室温で1時間放置した。0.05% Tween/PBSで2回洗浄後、1% BSA/0.05% Tween/PBSで希釈したHRP標識ストレプトアビジン溶液(1μg/mL)を、ウェルに50μL添加して室温で30分間放置した。0.05% Tween/PBSで3回洗浄後、HRP用発色基質(製品名:TMB Peroxidase substrate system、KPL社製)を50μL添加し、室温で5分間放置した。
1M リン酸を50μL添加し、反応を停止した。プレートリーダー POWERSCAN(登録商標)HT (DS PHARMA社製)で450nmにおける吸光度を測定した。
450nmにおける吸光度から、糖タンパクをプレートに固相化せず反応させたウェルの吸光度を差し引いた値を、反応値とした。反応値を以下の基準で分類することにより、親和性のランク付けを行った。結果を表2に示す。
◎:0.5以上
○:0.2〜0.5、
△:0.1〜0.2、
×:0〜0.1
Figure 2011089988
PTLは、フコースα1→6を含むα−フェトプロテインL3(AFP−L3)や前立腺特異抗原(PSA)に親和性を有するが、ほぼフコースを含まないハプトグロビンに親和性を示さなかった。LCAは、AFP−L3のみに結合性を示す。AALは、IgA、α2MG等多くのフコシル化タンパク質に結合性を示す。結合様式はPTLと似ているが、非特異的吸着の多さが目立つ。LotusやUEA−Iは、血清中の糖タンパクとは親和性が低い。
以上の結果をまとめると、フコースとの結合性が従来知られているLCA、Lotus及びUEA−Iでは、フコースα1→6糖鎖を有する糖タンパク質も検出できないことがある。また、AALは、フコースα1→6糖鎖を有する糖タンパク質以外も検出してしまう。一方、PTLでは、フコースα1→6糖鎖を有する糖タンパク質のみに結合性を有する。
〔実施例1〕PTLを用いたELISA法による膵臓癌細胞株の培養上清中の病変ハプトグロビンの検出
参考例1により、PTLは、ハプトグロビンに対して親和性を有しないことがわかった。そこで、膵臓癌細胞株(PSN−1、DS PHARMA社より入手)の培養上清から抽出したハプトグロビン、及び陰性対照としてヒト血清由来ハプトグロビン(BIODESIGN社より入手)に対して、それぞれ、PTLによる検出をELISA法で評価した。陽性対照としてLCA及びAALについても、PTLと同様の試験を行った。
(膵臓癌細胞からのハプトグロビンの抽出)
膵臓癌細胞株の培養上清液1000 mLを、限外ろ過フィルター(製品名:VIVA SPIN 20‐10K、ザルトリウス社製)で1mLに濃縮した。予め抗ハプトグロビン抗体(The Binding Site社製)を固定化したゲル(NHS−activated Sepharose 4 Fast Flow(GEヘルスケア社製)に上記濃縮液を添加した。室温で10分毎に混和して1時間後、前記ゲルを含む溶液を0.45μmフィルターチューブ(ミリポア社製)に加え、400×g、温度4℃で5分間遠心し、ろ液を廃棄した。次に、PBS 200μLを加えて400×g、温度4℃で5分間遠心して、ろ液を廃棄した。これを2回繰り返した。次いで、Elution Buffer(100mM グリシン、0.5M NaCl、pH3.0)200μLを加えて、400×g、温度4℃で5分間遠心して、ろ液を回収した。これを2回繰り返した。この液を合わせて得たハプトグロビン(HP)溶液を3NのNaOHで中和した後、PBS 600μLを加えた。
(ELISA法によるハプトグロビンの定量)
HP溶液に含まれるハプトグロビンを以下のELISA法で定量した。標準ハプトグロビン溶液としてヒト血清由来ハプトグロビン(Biodeign社製)を1% BSA/PBSで0〜200ng/mLに溶解したものを使用した。マウスモノクローナル抗ハプトグロビン抗体(日本バイオテスト社製)を、0.1M 炭酸緩衝液(pH 9.5)で10,000倍希釈した。希釈液をマイクロタイタープレート(Nunc社製)に50μL添加し、37℃で1時間保温した。0.05% Tween/PBSで1回洗浄後、1% BSA/PBSをウェルに200μL添加して37℃で1時間保温した。0.05% Tween/PBSで2回洗浄後、標準ハプトグロビン溶液又はHP溶液を50μL添加して37℃で1時間保温した。0.05% Tween/PBSで2回洗浄後、1% BSA/0.05% Tween/PBSで適宜希釈したヒツジポリクローナル抗ハプトグロビン抗体(The Binding Site社製)溶液をウェルに50μL添加して室温で1時間放置した。0.05% Tween/PBSで2回洗浄後、1% BSA/0.05% Tween/PBSで適宜希釈したHRP標識抗ヒツジIgG抗体(ミリポア社製)溶液を50μL添加して室温で30分間放置した。0.05% Tween/PBSで3回洗浄後、HRP用発色基質(製品名:TMB Peroxidase substrate system、KPL社製)を50μL添加し、室温で5分間放置した。1M リン酸を50μL添加し、反応を停止した。プレートリーダー(製品名:POWERSCAN(登録商標)HT、DS PHARMA社製)で450nmにおける吸光度を測定した。
標準ハプトグロビン溶液の吸光度から検量線を作成し、上記膵臓癌細胞由来HP溶液のハプトグロビン濃度を算出した。
(病変ハプトグロビンとPTLとの反応)
HP溶液に含まれる病変ハプトグロビンを以下のELISA法で検出した。上記で得たHP溶液を0.1M 炭酸緩衝液(pH 9.5)でハプトグロビンが10ng/mLになるように希釈した(HP希釈溶液)。陰性対照としてヒト血清由来ハプトグロビン(Biodesign社製)も同様に10ng/mLになるように調製した(ヒト血清由来ハプトグロビン溶液)。HP希釈溶液及びヒト血清由来ハプトグロビン溶液をマイクロタイタープレート(Nunc社製)に50μL添加し、37℃で1時間保温した。0.05% Tween/PBSで1回洗浄後、1% BSA/PBSをウェルに200μL添加して37℃で1時間保温した。
0.05% Tween/PBSで2回洗浄後、1% BSA/0.05% Tween/PBSで適宜希釈したビオチン標識化PTL溶液をウェルに50μL添加して室温で1時間放置した。0.05% Tween/PBSで2回洗浄後、1% BSA/0.05% Tween/PBSで希釈したHRP標識ストレプトアビジン溶液(1μg/mL)を50μL添加して室温で30分間放置した。0.05% Tween/PBSで3回洗浄後、HRP用発色基質(製品名:TMB Peroxidase substrate system、KPL社製)を50μL添加し、室温で5分間放置した。1M リン酸を50μL添加し、反応を停止した。プレートリーダー(製品名:POWERSCAN(登録商標)HT、DS PHARMA社製)で450nmにおける吸光度を測定した。
比較のために、PTLの代わりに、LCA及びAALを用いた試験も同様に行った。
450nmにおける吸光度から、HP希釈溶液等をプレートに固相化せず反応させたウェルの吸光度を差し引いた値を、反応値とした。図5〜7に、ヒト血清と膵臓癌細胞由来のハプトグロビンの反応値を並べて示す。
図5〜7に示すとおり、PTLは、ヒト血清由来のハプトグロビンと親和性を有しない。しかし、膵臓癌細胞の培養上清由来のハプトグロビンとは親和性を有している。LCAでは、膵臓癌細胞由来ハプトグロビンとヒト血清由来ハプトグロビンの両方に対して親和性が低い。AALでも両者の差異を検出できるが、その相対比はPTLより小さい。以上の結果から、膵臓癌細胞由来のハプトグロビンにフコースα1→6特異的レクチンであるPTLを作用させることにより、膵臓癌を検出できることが判明した。
〔実施例2〕PTLを用いたELISA法による膵臓癌患者の血清中の病変ハプトグロビンの検出
実施例1によって、フコースα1→6特異的レクチンであるPTLを用いれば、膵臓癌の腫瘍マーカーとしての病変ハプトグロビンを検出可能であることが判明した。そこで実際に、健常者(n=9,男性6名、女性3名、平均年齢32.8歳)(略号:健常1〜9)、膵臓癌患者(n=8,男性4名、女性4名、平均年齢52.1歳)(略号:膵癌1〜8)及び、膵炎患者(n=4,男性1名、女性3名、平均年齢59.5歳)(略号:膵炎1〜4)から取得した血清に対して、それぞれ、PTLによる病変ハプトグロビンの検出をELISA法で評価した。比較のため、AALについても、PTLと同様の試験を行った。
(血清からのハプトグロビンの抽出)
健常者、膵臓癌患者及び膵炎患者の血清10μLを、PBS 190μLで希釈した。抗ハプトグロビン抗体(The Binding Site社製)固定化ゲルに上記血清希釈液を添加した。10分毎に混和しながら、室温で1時間放置した。前記ゲルを含む溶液を0.45μmフィルターチューブ(ミリポア社製)に加え、400×g、温度4℃で5分間遠心し、ろ液を廃棄した。次に、PBS200μLを加え、400×g、温度4℃で5分間遠心して、ろ液を廃棄した。これを2回繰り返した。Elution Buffer(100mM グリシン、0.5M NaCl、pH3.0)200μLを加え、400×g、温度4℃で5分間遠心して、ろ液を回収した。これを2回繰り返した。得られたろ液を合わせてHP溶液とし、3NのNaOHで中和し、PBS 600μLを加えた。
(ELISA法による病変ハプトグロビンの検出)
HP溶液に含まれる病変ハプトグロビンの検出を以下のELISA法で行った。まず、上記で得たHP溶液を、0.1M 炭酸緩衝液(pH 9.5)で10倍希釈した。希釈液をマイクロタイタープレート(Nunc社製)に50μL添加し、37℃で1時間保温した。0.05% Tween/PBSで1回洗浄後、1% BSA/PBSをウェルに200μL添加して37℃で1時間保温した。0.05% Tween/PBSで2回洗浄後、1% BSA/0.05% Tween/PBSで適宜希釈したビオチン標識化レクチン溶液をウェルに50μL添加して室温で1時間放置した。0.05% Tween/PBSで2回洗浄後、1% BSA/0.05% Tween/PBSで希釈したHRP標識ストレプトアビジン溶液(1μg/mL)を50μL添加して室温で30分間放置した。0.05% Tween/PBSで3回洗浄後、HRP用発色基質(製品名:TMB Peroxidase substrate system、KPL社製)を50μL添加し、室温で5分間放置した。1M リン酸を50μL添加し、反応を停止した。プレートリーダー(製品名:POWERSCAN(登録商標)HT、DS PHARMA社製)で450nmにおける吸光度を測定した。
450nmにおける吸光度から、HP溶液をプレートに固相化せず反応させたウェルの吸光度を差し引いた値を、反応値とした。図8及び9に、その結果を示す。
図8及び9に示すとおり、PTLによる病変ハプトグロビンの反応値は、健常者血清及び膵炎患者血清よりも、膵臓癌患者血清のみにおいて明らかに高い値を示す。AALでは、健常者と膵臓癌患者間の差異を検出できたが、患者によっては、健常者の反応値よりも低い反応値が検出された。
(ELISA法によるCA19―9の定量)
健常者、膵臓癌患者及び膵炎患者の血清に含まれる腫瘍マーカーCA19−9の定量を以下のELISA法で行った。標準試料としてLyphocheck Tumor Maker Control(BIO−RAD社製)を使用した。マウスモノクローナル抗CA19−9抗体(Fitzgerald社製)を、0.1M 炭酸緩衝液(pH 9.5)で1000倍希釈した。希釈液をマイクロタイタープレート(Nunc社製)に50μL添加し、37℃で1時間保温した。0.05% Tween/PBSで1回洗浄後、1% BSA/PBSをウェルに200μL添加して37℃で1時間保温した。0.05% Tween/PBSで2回洗浄後、各血清を50μL添加して37℃で1時間保温した。0.05% Tween/PBSで2回洗浄後、1% BSA/0.05% Tween/PBSで適宜希釈したラビットポリクローナル抗CA19−9抗体(Acris社製)溶液をウェルに50μL添加して37℃で1時間保温した。0.05% Tween/PBSで2回洗浄後、1% BSA/0.05% Tween/PBSで適宜希釈したHRP標識抗ラビットIgG抗体(ケミコン社製)溶液を50μL添加して37℃で30分間保温した。0.05% Tween/PBSで3回洗浄後、HRP用発色基質(製品名:TMB Peroxidase substrate system、KPL社製)を50μL添加し、室温で5分間放置した。1M リン酸を50μL添加し、反応を停止した。プレートリーダー(製品名:POWERSCAN(登録商標)HT、DS PHARMA社製)で450nmにおける吸光度を測定した。
標準試料の反応値から検量線を作成し、各血清中のCA19−9濃度を算出した。表3及び図10にその結果を示す。
Figure 2011089988
図10に示すとおり、健常者、膵臓癌患者、膵炎患者の血清中の腫瘍マーカーCA19−9量は、健常者血清よりも膵炎患者血清及び膵臓癌患者血清のいずれにおいても明らかに高い値を示す。よって、腫瘍マーカーCA19−9を検出するだけでは膵炎と膵臓癌の判別が困難であることが分かる。
一方、図8及び図10に示すように、腫瘍マーカーCA19−9量が健常者よりも多い患者に対して、フコースα1→6特異的レクチンで病変ハプトグロビンを検出することで、膵炎患者と膵臓癌患者を判別することができる。
(ELISA法による病変ハプトグロビンの検出)において、レクチンに代えて抗ハプトグロビン抗体を用いてハプトグロビンの測定を行った。健常1の反応値(吸光度)を1としたときの相対値を相対ハプトグロビン量(相対HP量)として図11に示した。さらに、図8及び9の反応値(吸光度)を相対HP量で除することにより、[吸光度/相対HP量]を求めた。[吸光度/相対HP量]は、各検体のハプトグロビンの相対的なフコシル化度を意味する。結果を図12及び13に示す。
図12及び13に示すとおり、PTLは正常細胞が膵臓癌になる際のハプトグロビンの糖鎖の変化を従来のレクチンよりも精度高く検出できることがわかる。吸光度/相対HP量は、また、ハプトグロビンのフコシル化度を表しているので、膵臓癌の臨床病期の指標になることが予想される。このように、ハプトグロビンあたりのフコースα1→6特異的レクチンにより検出される病変ハプトグロビン量においても膵臓癌の検出ができる。
以上の結果から、PTLで病変ハプトグロビンを検出することにより、膵臓癌患者の血清から膵臓癌を検出できることが判明した。PTLは、正常細胞の膵臓癌への癌化において、腫瘍マーカーとして病変ハプトグロビンを従来知られているフコースα1→6特異的レクチンよりも精度高く検出できる。PTLの特異性の高さから、フコースα1→6糖鎖以外が混在する糖鎖化合物群から目的のフコースα1→6糖鎖化合物を他のレクチンよりも正確に検出できる可能性が高い。さらに、膵臓に疾患のある場合に健常者より高値を示す腫瘍マーカーCA19−9とPTLによる病変ハプトグロビンの検出を組み合わせることで膵炎と膵臓癌の判別も可能である。これは、PTLを糖鎖に作用させることからなる膵臓癌あるいは膵炎の診断薬又は診断薬キットに利用できる。

Claims (19)

  1. 生体から取得した検体に含まれる病変ハプトグロビンに、
    (1)担子菌から抽出することができ、
    (2)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量が4,000〜40,000であり、及び、
    (3)フコースα1→6糖鎖に対して結合定数1.0×10−1以上(25℃において)の親和性を有する
    で示されるフコースα1→6特異的レクチンを作用させることを特徴とする、膵臓癌の検出方法。
  2. 前記フコースα1→6特異的レクチンは、さらに、(4)フコースα1→6糖鎖を含まないハイマンノース糖鎖及び/又は糖脂質に対して実質的に結合しないことを特徴とする、請求項1に記載の膵臓癌の検出方法。
  3. 前記担子菌が、モエギタケ科、キシメジ科、テングタケ科又はタコウキン科に属することを特徴とする、請求項1に記載の膵臓癌の検出方法。
  4. 前記担子菌が、ツチスギタケ、スギタケ、ヌメリスギタケモドキ、サケツバタケ、クリタケ、コムラサキシメジ又はベニテングタケであることを特徴とする、請求項3に記載の膵臓癌の検出方法。
  5. 前記検体は、ヒトから採取した血清又は血漿であることを特徴とする、請求項1に記載の膵臓癌の検出方法。
  6. 前記フコースα1→6特異的レクチンと1種以上のレクチン又は抗体を用いて病変ハプトグロビンを検出することを特徴とする、請求項1に記載の膵臓癌の検出方法。
  7. 前記フコースα1→6特異的レクチンと抗ハプトグロビン抗体とを用いたアッセイにより、病変ハプトグロビンを検出することを特徴とする、請求項1に記載の膵臓癌の検出方法。
  8. 前記フコースα1→6特異的レクチンは、標識されていることを特徴とする、請求項1に記載の膵臓癌の検出方法。
  9. 血清中のCA19−9量が30U/mL以上である生体から取得した検体に含まれる病変ハプトグロビンに、
    (1)担子菌から抽出することができ、
    (2)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量が4,000〜40,000であり、及び、
    (3)フコースα1→6糖鎖に対して結合定数1.0×10−1以上(25℃において)の親和性を有する
    で示されるフコースα1→6特異的レクチンを作用させることを特徴とする、膵臓癌と膵炎との判別方法。
  10. 前記フコースα1→6特異的レクチンは、さらに、(4)フコースα1→6糖鎖を含まないハイマンノース糖鎖及び/又は糖脂質に対して実質的に結合しないことを特徴とする、請求項9に記載の膵臓癌と膵炎との判別方法。
  11. 前記担子菌が、モエギタケ科、キシメジ科、テングタケ科又はタコウキン科に属することを特徴とする、請求項9に記載の膵臓癌と膵炎との判別方法。
  12. 前記担子菌が、ツチスギタケ、スギタケ、ヌメリスギタケモドキ、サケツバタケ、クリタケ、コムラサキシメジ又はベニテングタケであることを特徴とする、請求項11に記載の膵臓癌と膵炎との判別方法。
  13. 前記検体は、ヒトから採取した血清又は血漿であることを特徴とする、請求項9に記載の膵臓癌と膵炎との判別方法。
  14. 前記フコースα1→6特異的レクチンと1種以上のレクチン又は抗体を用いて病変ハプトグロビンを検出することを特徴とする、請求項9に記載の膵臓癌と膵炎との判別方法。
  15. 前記フコースα1→6特異的レクチンと抗ハプトグロビン抗体とを用いたアッセイにより、病変ハプトグロビンを検出することを特徴とする、請求項9に記載の膵臓癌と膵炎との判別方法。
  16. 前記フコースα1→6特異的レクチンは、標識されていることを特徴とする、請求項9に記載の膵臓癌と膵炎との判別方法。
  17. フコースα1→6特異的レクチンであって、
    (1)担子菌から抽出することができ、
    (2)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子量が4,000〜40,000であり、及び、
    (3)フコースα1→6糖鎖に対して結合定数1.0×10−1以上(25℃において)の親和性を有する
    で示される前記フコースα1→6特異的レクチンを含む、膵臓癌及び/又は膵炎の検出用診断薬又はキット。
  18. さらに、抗ハプトグロビン抗体を含む、請求項17に記載の膵臓癌及び/又は膵炎の検出用診断薬又はキット。
  19. さらに、抗CA19−9抗体を含む、請求項17に記載の膵臓癌及び/又は膵炎の検出用診断薬又はキット。
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