JP5109001B2 - α1,6フコース糖鎖の検出および分別方法 - Google Patents

α1,6フコース糖鎖の検出および分別方法 Download PDF

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本発明は、N-結合型糖鎖(アスパラギン結合型糖鎖)の還元末端のN-アセチルグルコサミンにα1,6結合したフコース(以下、「α1,6フコース」という)を検出する方法、該α1,6フコース糖鎖のスクリーニング方法、該α1,6フコースの検出を基準とするα1,6フコース糖鎖と非α1,6フコース糖鎖との分別方法、さらにこの分別方法により得られる純度の向上したα1,6フコース糖鎖または非α1,6フコース糖鎖に関する。
N−結合型糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミンにα1,6フコースを転移させるα1,6フコース転移酵素(α1,6FucT)の遺伝子は、肝細胞の癌化にともなって発現することが知られている。すなわち、肝細胞癌になると、αフェトプロテイン(AFP)という分子量約70,000の糖タンパク質の糖鎖のN-アセチルグルコサミンにα1,6結合でフコースが転移するようになる。このα1,6結合でフコースが転移したAFPは、現在、肝細胞癌の腫瘍マーカーとして使用されている。具体的には、被験者の血清を、フコースに親和性をもつレンズマメレクチン(LCA)を用いたレクチン親和電気泳動にかけると、陽極側よりAFP-L1、AFP-L2、AFP-L3と呼ばれる3本のバンドが出現する。肝硬変等の良性肝疾患ではレクチン非結合型のAFP-L1バンドが主であるが、肝細胞癌になるとレクチン結合型のAFP-L3バンドが増加する。総AFPに対するAFP-L3の割合(AFP-L3%)を求め、その値が10%を越えるようであれば、肝細胞癌が疑われる。α1,6結合でフコースが転移したAFPの割合を正確に識別することができれば、肝細胞癌の診断の確度も一層高まる。
抗体依存性細胞障害活性(Antibody-dependent cellular cytotoxicity、以下、ADCC活性という)は、ヒトが持っている免疫機能のひとつであり、ナチュラルキラー細胞、単球等の白血球が抗体を介して癌細胞等の標的細胞を殺傷する活性である。ADCC活性は、ヒト化抗体であるHerceptin(転移性乳癌の治療薬)、キメラ抗体であるRituxan(非ホジキンリンパ腫の治療薬)等の抗体医薬の抗腫瘍メカニズムと関連している(非特許文献1)。これらの抗体医薬のADCC活性が低いと、抗体医薬の多量投与の必要が生じ、それに起因して、コストアップ、副作用、例えば免疫低下による感染症等の問題を招く。
上記ADCC活性は、α1,6フコースの転移した抗体と転移していない抗体とでは50〜100倍の差があるといわれている(非特許文献2)。α1,6フコースの転移していない抗体を取得できれば、ADCC活性の高い抗体医薬を提供することが可能となる。
従来、α1,6フコースと親和性を有するレクチンとして、レンズマメレクチン(LCA)、エンドウマメレクチン(PSA)、ヒイロチャワンタケレクチン(AAL)、ラッパスイセンレクチン(NPA)、ソラマメレクチン(VFA)、麹菌レクチン(AOL)等が知られている(特許文献1〜4)。
Clynes RA等、Inhibitory Fc receptors modulate in vivo cytoxicity against tumor targets. NATURE MED 2000 APR;6(4):443-446 Toyohide Shinkawa等、The absence of fucose but not the presence of galactose or bisecting N-acetylglucosamine of human IgG1 complex-type oligosaccharides shows the critical role of enhancing antibody-dependent cellular cytotoxicity. J Biol Chem. 2003 Jan 31; 278(5):3466-73. Epub 2002 Nov 8. WO2002/030954 WO2003/084569 特開平02-083337の実施例 特開2002-112786の実施例5
しかし、上記レクチンは、α1,6フコース糖鎖の他に、α1,6結合以外のフコースを持つ糖脂質系糖鎖や、フコースを持たない高マンノース糖鎖にも親和性を示す。つまり、α1,6フコース糖鎖とのみ特異的に結合するレクチンが見つかっていないのが現状である。したがって、α1,6フコース糖鎖の正確な検出や、α1,6フコース糖鎖の検出を基準とするα1,6フコース糖鎖の精製や非α1,6フコース糖鎖の精製も実現できていない。
そこで、本発明の目的は、α1,6フコース糖鎖を従来よりも正確に検出する方法、およびα1,6フコース糖鎖の検出を基準としたα1,6フコース糖鎖と非α1,6フコース糖鎖との分別方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を鋭意検討したところ、α1,6フコースを有する糖鎖との相互作用強度が高いレクチンが存在し、それを用いればα1,6フコースを特異的に検出できることを見出した。そして、この知見を、α1,6フコース糖鎖の検出や精製に活かすことによって本発明に到達した。したがって、本発明は、α1,6フコース糖鎖との相互作用強度が、非α1,6フコース糖鎖との相互作用強度の10倍以上であるα1,6フコース特異的レクチンを、α1,6フコース糖鎖の検出媒体として用いることを特徴とする、α1,6フコース糖鎖の検出方法を提供するものである。前記相互作用強度とは、本明細書において、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC法)を用いることにより測定される値を意味する。
前記α1,6フコース糖鎖とは、本明細書において、α1,6で結合するフコースを持つ糖鎖を意味する。一方、非α1,6フコース糖鎖とは、α1,6フコース糖鎖を分子中に持たない糖鎖を意味する。
前記検出方法に用いるα1,6フコース特異的レクチンは、紅藻レクチンであることが好ましく、特に好ましくはHypnin Aである。
本発明のα1,6フコース糖鎖の検出方法には、例えば固定化された前記α1,6フコース特異的レクチンを用いる。
前記検出方法の対象であるα1,6フコース糖鎖の具体例は、腫瘍マーカーまたは抗体である。前記腫瘍マーカーは、好ましくはαフェトプロテインである。
本発明はまた、α1,6フコース糖鎖との相互作用強度が、非α1,6フコース糖鎖との相互作用強度の10倍以上であるα1,6フコース特異的レクチンを有効成分とする、α1,6フコース糖鎖を検出するための診断薬、および該診断薬を含む診断薬キットを提供する。
本発明はまた、α1,6フコース糖鎖との相互作用強度が、非α1,6フコース糖鎖との相互作用強度の10倍以上であるα1,6フコース特異的レクチンに、糖鎖を含む流体を作用させ、該α1,6フコース特異的レクチンに吸着されたα1,6フコース糖鎖を回収することからなる、前記α1,6フコース糖鎖のスクリーニング方法を提供する。
前記スクリーニング方法に用いるα1,6フコース特異的レクチンは、紅藻レクチンであることが好ましく、特に好ましくはHypnin Aである。
本発明のα1,6フコース糖鎖のスクリーニング方法には、例えば固定化された前記α1,6フコース特異的レクチンを用いる。
本発明はまた、α1,6フコース糖鎖との相互作用強度が、非α1,6フコース糖鎖との相互作用強度の10倍以上であるα1,6フコース特異的レクチンをα1,6フコース糖鎖の結合媒体として用いて、α1,6フコース糖鎖と非α1,6フコース糖鎖とを分別することからなる、α1,6フコース糖鎖の分別方法を提供する。
前記分別方法に用いるα1,6フコース特異的レクチンは、紅藻レクチンであることが好ましく、特に好ましくはHypnin Aである。
本発明のα1,6フコース糖鎖の分別方法は、例えば固定化された前記α1,6フコース特異的レクチンを用いる。
前記検出方法の対象であるα1,6フコース糖鎖の具体例は、抗体である。
本発明はまた、前記分別方法で分別された、純度90〜100%のα1,6フコース糖鎖または非α1,6フコース糖鎖、ならびに該純度90〜100%のα1,6フコース糖鎖または非α1,6フコース糖鎖を有効成分とする医薬を提供する。ここで、前記純度は、α1,6フコース糖鎖の場合、α1,6フコース糖鎖および非α1,6フコース糖鎖の総量に対するα1,6フコース糖鎖の比率を意味し、非α1,6フコース糖鎖の場合、α1,6フコース糖鎖および非α1,6フコース糖鎖の総量に対する非α1,6フコース糖鎖の比率を意味する。該医薬は、抗体医薬であることが好ましい。
本発明のα1,6フコース糖鎖の検出方法は、α1,6フコース糖鎖との親和性を有する従来のレクチンと違って、α1,6フコースの結合した糖鎖をより選択的に検出することができる。これは、例えば腫瘍マーカーであるαフェトプロテインのα1,6フコース転移の正確な測定に応用可能である。そして、肝細胞癌のようなα1,6フコースの結合した糖鎖と関連する疾病を早期かつ正確に診断し、予後を判定し、そして治療効果を判定するのに役立つ。
本発明のα1,6フコース糖鎖のスクリーニング方法によれば、新規なα1,6フコース糖鎖を簡易にスクリーニングすることができる。腫瘍マーカーのスクリーニングに応用すれば、新規な腫瘍マーカーの発見につながる。
本発明のα1,6フコース糖鎖の分別方法は、α1,6フコースの正確な識別を基準として、α1,6フコース糖鎖と非α1,6フコース糖鎖とのより厳密な分別を可能にする。これは、α1,6フコース糖鎖または非α1,6フコース糖鎖の高度の精製をもたらす。特に、本発明の分別方法を用いて、α1,6フコース糖鎖と非α1,6フコース糖鎖との混合物からなる抗体医薬からα1,6フコース糖鎖を取り除くことで、抗体医薬のADCC活性を高める。その結果、抗体医薬をより少ない用量で処方可能とし、コストダウン、副作用の低減等の効果を発揮する。また、症状や副作用に応じた抗体医薬の処方も可能になる。したがって、本発明は、癌医療に大きな進歩をもたらす。
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面を用いて詳細に説明する。まず、α1,6フコース糖鎖を特異的に検出するレクチンを検出媒体として用いることを特徴とする、α1,6フコース糖鎖の検出方法を説明する。
本発明の検出方法の対象であるα1,6フコース糖鎖の例を、以下の式で示す。

〔式中、Manはマンノース、GlcNAcはN-アセチルグルコサミン、Fucはフコースを意味する〕
フコースの結合する糖鎖は、上記以外にも、N結合型糖鎖であれば、遊離のオリゴ糖鎖、Cy3、アミノピリジン等で蛍光標識された糖鎖、糖アミノ酸、糖ペプチド、糖タンパク質、プロテオグリカン、細胞等のすべてを含有する。N結合型糖鎖は、高マンノース型、複合型、混成型等を含む。さらに、シアリダーゼ、ガラクトシターゼ、N-アセチルヘキソサミニダーゼ、フコシダーゼのいずれかを単独もしくは混用して、あるいは段階的に使用して、前記糖鎖を部分的に分解したものであってもよい。
前記糖鎖を含む検体は、特に限定されず、例えば血液、血漿、血清、涙、唾液、体液、乳汁、尿、細胞の培養上清、形質転換動物からの分泌物等が挙げられる。
α1,6フコース特異的レクチンは、フロンタルアフィニティクロマトグラフィーにより測定したα1,6フコース糖鎖との相互作用強度が、非α1,6フコース糖鎖との相互作用強度の10倍以上であり、好ましくは10×10倍より好ましくは10×10倍以上である。
フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC法)は、レクチンを固定化したカラムに、蛍光標識した糖鎖(例えば図2および3に示すもの)の一定濃度の希釈液を流した際、レクチンと糖鎖とが相互作用がなければ糖鎖は短時間でカラムから流れ出、溶出前端(フロント)が即座に観察され、一方、レクチンとの親和性がある場合、糖鎖の溶出が遅れるという原理に基づく。
該装置に使用するレクチンカラムの調製は、以下のようにして行われる。
1. 精製レクチンを0.1〜0.2M NaHCO3緩衝液(pH8.3〜8.5)に溶解する。
2. レクチンの一級アミノ基を介してNHS活性化セファロース等の担体に固定化する。
3. 一級アミンを含むトリス緩衝液やエタノールアミン等でブロッキングする。
4. 0.8% NaClを含む10mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.4、TBS)中にレクチン固定化樹脂を懸濁させ、レクチン固定化樹脂を、ミニチュアカラム(φ2mm x 10mm, 31.4μl)に充填する。
5. レクチン固定化樹脂を充填したミニチュアカラムをホルダーで保護し、レクチンカラムをFAC自動分析装置(FAC-1装置、(株)島津製作所製)に接続する。
平衡化したレクチンカラムに対し、分析用緩衝液(0.8%NaClを含む10mMTris-HCl緩衝液(pH7.4))でレクチンが持つ解離定数(Kd)よりも充分低い濃度(2.5nM)に希釈したピリジルアミノ化糖鎖(PA化糖鎖)を、流速0.125ml/minで300μl注入する。カラムからのPA化糖鎖の溶出を、蛍光検出器(励起波長/蛍光波長:310nm/380nm)を用いて検出する。
検出データから、レクチンと相互作用しない糖鎖(PA化ラムノース)の溶出前端容積(V0)を基準とし、相互作用する糖鎖の溶出前端容積(V)の遅れ(V-V0)(単位μl)を相互作用強度として算出する。相互作用強度(V-V0)が大きいほど、α1,6フコース特異的レクチンとα1,6フコース糖鎖との親和性が高い。
さらに、FACの以下の基準式に基づいて、V-V0およびBtから糖鎖とレクチンとの結合定数(Ka)を求める。

〔式中、Aは溶出に用いる物質、Aは物質Aの初濃度、Bは固定化リガンド、Vは溶出容積、Vは固定化リガンドBと全く相互作用しない物質の溶出前端容積、Btは有効リガンド量、Kdは解離定数(結合定数の逆数)を意味する〕。
本発明のα1,6フコース特異的レクチンは、結合定数で定義することも可能である。すなわち、α1,6フコース特異的レクチンのα1,6フコース糖鎖との結合定数は、上記相互作用強度比と呼応して、非α1,6フコース糖鎖との結合定数の10倍以上であり、好ましくは10×10倍以上、より好ましくは10×10倍以上である。α1,6フコース特異的レクチンのα1,6フコース糖鎖との結合定数は、具体的には、1.0×103-1以上であり、好ましくは1.0×104-1以上、さらに好ましくは1.0×105-1以上である。
上記相互作用強度比および結合定数比に関する特性を示すα1,6フコース特異的レクチンは、従来、α1,6フコースに親和性を有することが知られているヒイロチャワンタケレクチン(AAL)、麹菌レクチン(AOL)、レンズマメレクチン(LCA)、ラッパスイセンレクチン(NPA)、およびエンドウマメレクチン(PSA)と違って、α1,6フコース糖鎖と極めて高い選択性をもって結合する。
本発明の検出方法で使用するレクチンは、相互作用強度比が上記範囲にあれば、その由来に特に制限がない。また、天然のα1,6フコース特異的レクチンと実質的に相同のポリペプチドであって一以上の欠失、挿入または置換によって天然のα1,6フコース特異的レクチンと異なるアミノ酸配列をもつ変異体や、人工物であってもよい。
前記α1,6フコース特異的レクチンは、好ましくは海藻レクチンであり、特に好ましくは紅藻レクチンであり、さらに好ましくは紅藻カギイバラノリ(Hypnea japonica)に由来するHypnin Aレクチンである。Hypnin Aは、実施例に示すように、従来のα1,6フコース親和性レクチンと相違して、α1,6フコース以外のフコースや、フコースを持たない高マンノース糖鎖と結合しない点で、本発明の検出方法に使用するα1,6フコース特異的レクチンとして最適である。
Hypnin Aは、Biochim Biophys Acta. 1474(2000):226-36(Hori K et al. Primary structures of two hemagglutinins from the marine red alga, Hypnea japonica)に記載の方法に従って、以下の手順で精製することができる(図1)。
紅藻カギイバラノリを採取後、蒸留水で十分に水洗し、冷99.9%エタノールを終濃度が約30%となるように加え、4℃下で1週間浸漬する。抽出液をろ紙に通し、得られたろ液を、エバポレーターを用いて40℃以下で濃縮した後、エタノールを除去する。濃縮水溶液に、等容の冷99.9%エタノールを加えてエタノール濃度を50%とし、4℃で1晩静置する。静置後、上清をデカンテーションで回収し、50%エタノール抽出液を得る。50%エタノール抽出液に2倍容の冷99.9%エタノールを加え、エタノール濃度を83%とし、軽く撹拌後、4℃で1晩静置する。これを遠心(10,000 rpm, 5 min, 0℃)し、得られた沈殿を0.15 M NaClを含むリン酸緩衝液(pH 5.5、以下、PBS)に溶解し、同緩衝液に対して透析して、粗抽出液を得る。次いで、ゲルろ過、逆相系HPLCにより精製する。
別法として、以下の手順で精製することもできる(図1中の改良法)。紅藻カギイバラノリを採取後、蒸留水で十分に水洗し、冷99.9%エタノールを終濃度が約50%となるように加え、4℃下で1週間浸漬する。抽出液をろ紙に通し、得られたろ液を、エバポレーターを用いて40℃以下で濃縮する。濃縮液に等容の冷99.9%エタノールを加えて、エタノール濃度を50%とし、4℃で1晩静置する。静置後、上清をデカンテーションで回収し、50%エタノール抽出液を得る。50%エタノール抽出液に2倍容の冷99.9%エタノールを加え、エタノール濃度を83%とし、軽く撹拌後、4℃で1晩静置する。これを遠心(10,000 rpm, 5 min, 0℃)して得た沈殿を超純水に溶解し、超純水に対して透析して粗抽出液を得る。上記の方法で得た粗抽出液を逆相系HPLCにより精製する。
上記逆相系HPLCによって、粗抽出液のHypnin A画分は、Hypnin A-1、Hypnin A-2およびHypnin A-3の三種類に分離される。本発明の検出方法には、上記三種類のHypnin Aを単独に用いてもよく、あるいは混合して用いてもよい。
なお、上記改良方法は、逆相系HPLCに使用する担体およびアセトニトリル濃度勾配により、さらなる収量の向上が期待されるため、本例に限定されるものではない。
本発明のα1,6フコース糖鎖の検出方法は、例えば固定化された前記α1,6フコース特異的レクチンを用いるレクチンクロマトグラフィーによって行うことができる。レクチンクロマトグラフィーは、レクチンが糖鎖と特異的に結合する性質を利用したアフィニティクロマトグラフィーである。HPLCと組み合わせる(HPLAC)と、ハイスループットを期待できる。
前記レクチンを固定化する担体としては、アガロース、デキストラン、セルロース、スターチ、ポリアクリルアミド等のゲル材が一般的である。これらには、市販のものを特に制限なく使用でき、例えばセファロース4Bやセファロース6B(共にGEヘルスケアバイオサイエンス社製)が挙げられる。
また、レクチンクロマトグラフィーに用いるカラムとしては、マイクロプレートやナノウエルにレクチンを固定化したものも含まれる。
固定化するα1,6フコース特異的レクチンの濃度は、通常、0.0001〜100mg/ml、好ましくは0.01〜20mg/mlである。担体がアガロースゲルの場合、それをCNBr等で活性化してからレクチンとカップリングさせる。活性化スペーサーを導入したゲルにレクチンを固定化してもよい。さらには、ホルミル基を導入したゲルにレクチンを固定化してからNaCNBH3で還元してもよい。また、NHS-セファロース(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)のような市販の活性化ゲルを使用してもよい。
α1,6フコース糖鎖試料をカラムにかけた後、洗浄と平衡化の目的で緩衝液を流す。緩衝液の一例は、モル濃度が5〜500mM、好ましくは10〜500mMであり、pHが4.0〜10.0、好ましくは6.0〜9.0であり、NaCl含量が0〜0.5M、好ましくは0.1〜0.2Mであり、CaCl2、MgCl2またはMnCl2含量が0〜10mM、好ましくは0〜5mMの緩衝液である。
アフィニティカラムの洗浄後、α1,6フコース糖鎖の溶出は、該糖鎖を有効に溶出できる中性の非変性緩衝液中で、塩化ナトリウム、ハプテン糖等の脱着剤を用いて行われる。この緩衝液は、上記と同様であってもよい。脱着剤の濃度は、好ましくは、1〜500mM、特に好ましくは10〜200mM濃度である。
糖鎖の検出には、上記以外のクロマトグラフィー、レクチンチップ、酵素免疫測定(ELISA)法、凝集法、Biacore(登録商標)システム等も、当業者に周知の方法で使用することができる。
前記検出方法の対象であるα1,6フコース糖鎖の具体例は、α1,6フコース転移酵素により合成される糖鎖である。該α1,6フコース糖鎖には、αフェトプロテイン、α5β1インテグリン、TGFβ受容体、EGF受容体等が挙げられる。
α1,6フコースの転移したαフェトプロテインの確度の高い検出は、臨床的に肝硬変に合併する肝細胞癌の早期診断、肝細胞癌の緻密な経過観察、治療効果の正確な判定、胎児性腫瘍の早期発見、劇症肝炎の肝再生の指標等として有用である。α1,6フコースの転移したα5β1インテグリンもまた、肝癌診断の指標として期待される。
本発明の検出方法の対象は、肝細胞癌以外に、前立腺癌、乳癌、胃癌、小腸癌、大腸癌、結腸直腸癌、腎細胞癌、膵癌、小細胞肺癌、非小細胞癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、軟部肉腫、骨肉腫、メラノーマ、膠芽腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、急性リンパ腫、悪性リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病等の腫瘍;アレルギー疾患;自己免疫疾患;ならびに肺気腫等の循環器疾患の診断に使用することが期待される。
本発明はまた、前記α1,6フコース特異的レクチンを有効成分とする、α1,6フコース転移酵素により合成されるα1,6フコース糖鎖を検出するための診断薬、および該診断薬を含む診断薬キットを提供する。
本発明はまた、α1,6フコース糖鎖との相互作用強度が、非α1,6フコース糖鎖との相互作用強度の10倍以上である固定化されたα1,6フコース特異的レクチンに、糖鎖を含む流体を作用させ、該固定化α1,6フコース特異的レクチンに吸着されたα1,6フコース糖鎖を回収することからなる、前記α1,6フコース糖鎖のスクリーニング方法を提供する。この方法は、α1,6フコース糖鎖をもつ新規な腫瘍マーカー等の探索に有用である。
本発明はまた、α1,6フコース糖鎖との相互作用強度が、非α1,6フコース糖鎖との相互作用強度の10倍以上であるα1,6フコース特異的レクチンをα1,6フコース糖鎖の結合媒体として用いて、α1,6フコース糖鎖と非α1,6フコース糖鎖とを分別することからなる、α1,6フコース糖鎖の分別方法を提供する。
本発明の分別方法は、例えば固定化された前記α1,6フコース特異的レクチンを用いるレクチンクロマトグラフィーである。その詳細は、前記検出方法で説明したものと同様である。前記α1,6フコース特異的レクチンは、海藻レクチンであることが好ましく、特に好ましくは紅藻レクチンであり、さらに好ましくはHypnin Aである。α1,6フコース糖鎖の精製を行う場合、α1,6フコース特異的レクチンを、アガロースやセルロースからなるカラム担体に官能基を介して共有結合させて親和性カラムを調製し、糖鎖試料を通す。通塔後、吸着したα1,6フコース糖鎖を回収する。非α1,6フコース糖鎖の精製を行う場合には、上記カラムに糖鎖試料を通塔する際、吸着しないで通過する糖鎖試料を回収する。
本発明の分別方法の精製の対象は、α1,6フコース糖鎖、非α1,6フコース糖鎖の二種類があり得る。その具体例は、抗体、好ましくはヒトIgGである。前記分別方法で分別された糖鎖の純度、すなわちα1,6フコース糖鎖の場合にα1,6フコース糖鎖および非α1,6フコース糖鎖の総量に対するα1,6フコース糖鎖の比率、非α1,6フコース糖鎖の場合にα1,6フコース糖鎖および非α1,6フコース糖鎖の総量に対する非α1,6フコース糖鎖の比率は、通常90〜100%であり、好ましくは95〜100%、特に好ましくは99〜100%である。
本発明は、前記純度が通常90〜100%、好ましくは95〜100%、特に好ましくは99〜100%のα1,6フコース糖鎖または非α1,6フコース糖鎖を有効成分とする医薬もまた提供する。特に、α1,6フコースの転移した抗体の除去された抗体からなる抗体医薬は、ADCC活性の向上が期待される。その候補として、Rituxan(キメラ抗体、NHリンパ腫)、Herceptin(ヒト化抗体、乳癌)、Erbitux(キメラ抗体、大腸癌、頭頸部癌)、Zevalin(マウス抗体、NHリンパ腫)、Campath(ヒト化抗体、B細胞慢性リンパ性白血病)、Bexxar(マウス抗体、NHリンパ腫)、Avastin(ヒト化抗体、転移性大腸癌)等が挙げられる。
本発明の分別方法により得られる抗体医薬の使用方法(薬理上許容される担体、助剤・添加剤、投与経路、投与形態等)は、従来のものよりも高い比活性のため用法・用量を抑えてよいこと以外は、常法と同様である。
本発明はまた、本発明の検出方法に使用可能なα1,6フコース特異的レクチンを容易にスクリーニングすることができる。すなわち、固定化された検体レクチンに、複数の糖鎖を含む流体を作用させ、該固定化レクチンに吸着された糖鎖の試験プロファイル(ゲル電気泳動等)と、固定化されたHypnin Aに前記流体を作用させ、該レクチンに吸着される糖鎖の対照プロファイルとを比較して、対照と同じプロファイルになるα1,6フコース特異的レクチンを抽出する。検体レクチンに吸着された糖鎖の同定を区々行う必要がないので、目的のレクチンを非常に簡易な操作でスクリーニングすることができる。こうして抽出されたα1,6フコース特異的レクチンを、次回のスクリーニング方法の対照に用いてもよい。
上記糖鎖は、図2および3に示すようなα1,6フコース糖鎖の少なくとも一種を含み、さらにα1,6結合以外のフコースの転移した非α1,6フコース糖鎖の少なくとも一種、およびフコースをもたない糖鎖(例えば高マンノース糖鎖)の少なくとも一種を含むことが好ましい。
吸着された糖鎖のプロファイル測定には、各種のクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、レクチンチップ、酵素免疫測定(ELISA)法、凝集法、Biacore(登録商標)システム等の当業者に周知の方法を使用することができる。
以下に、実施例と比較例を用いて、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明の技術的範囲は、実施例に限定されるものではない。
〔調製例1〕Hypnin Aレクチンの調製
新鮮な紅藻カギイバラノリ藻体9.6 kgに21 Lの50%冷エタノールを加え、4℃下で1週間浸漬した。抽出液をろ過し、エバポレーターで2 Lに濃縮後、等容の冷99.9%エタノールを加えて4℃で1晩静置した。静置後、上清を回収し、3.9 Lの50%エタノール抽出液を得た。
次に、2倍容の冷99.9%エタノールを加えて終濃度が83%になるようにした。4℃で1晩静置後、遠心(8,000 rpm, 30 min, 0℃)した。遠心で得た沈殿をPBSに溶解し、同緩衝液に対して透析した。透析内液を遠心(10,000 rpm, 30 min, 0℃)して、Hypnin A粗画分200 mlを得た。
図4は、50-83%冷エタノール沈殿画分のSDS-PAGEの結果である。図4のレーン1〜3は、以下のとおりである。
レーン1: 低分子量マーカー(GEヘルスケアバイオサイエンス)
レーン2: 50-83%冷エタノール沈殿画分
レーン3: 高分子量マーカー(GEヘルスケアバイオサイエンス)
上記の16.5%ゲルを用いるSDS-PAGEによって、本粗画分の主成分が紅藻レクチンであることを確認した。
次に、Hypnin A粗画分を、PBSで平衡化したTOYOPEAL-HW55カラムに供し、赤血球凝集活性画分を合一し、濃縮した。さらに、上記の画分(タンパク質量33 mg)を、0.05%TFA-2%アセトニトリル溶液で平衡化したYMC-D-ODSカラム(20×250 mm)に添加した。
カラムを同溶液で10 min洗浄後、0.05%TFA-2%アセトニトリルおよび0.05%TFA-100%アセトニトリルを用いて、2-70%アセトニトリル(50 min)の濃度勾配で溶出し、最後に、0.05%TFA-70%アセトニトリルで洗浄した(10 min)。その結果、溶出順にHypnin A-1、A-2およびA-3を、それぞれ、330、996および294μg得た(図5)。
図5中、SDS-PAGEの電気泳動図のレーン1〜5は、以下のとおりである。
レーン1: 低分子量マーカー
レーン2: Bichim Biophys Acta. 873 (1986):228-236(Hori et.al. Hypnins, lowmolecular weight peptidic agglutinins isolated from a marine red alga, Hypnea japonica)に従う方法で精製されたHypnin A
レーン3: Hypnin A-1
レーン4: Hypnin A-2
レーン5: Hypnin A-3
である。
レーン2の精製方法は、以下のとおりである。まず、60gの粉末海藻に600mlの50%エタノールを混合し、室温で一晩混合した。混合物を遠心し(6,000rpm,30min)、ペレットを前述と同じ方法で抽出した。上清を40℃で65mlになるまで吸引濃縮させ、1.5L冷アセトン(-20℃)を注いだ。混合物は4℃、30min放置し、デカンテーションで上清を除いた。沈殿物を少量の冷アセトンで繰り返し洗浄し、4℃で蒸発させた。沈殿物を50%エタノール300mlで溶解し、溶液を0℃、一晩放置した。遠心で沈殿を除去し、上清に冷99%エタノール(-20℃)を加え、終濃度が83%になるようにした。混合物を4℃、一晩放置する。遠心で得られた沈殿を50%エタノール53mlで溶解し、ゲル濾過クロマトグラフィー(トヨパールHW40S)に供与した。得られた活性画分を40℃で3mlになるまで濃縮し、再度ゲル濾過クロマトグラフィー(トヨパールHW40S)に供与した。得られた5つの活性画分をそれぞれ逆相クロマトグラフィー(TSK ODS120T)に供与し、得られた活性画分を40℃で濃縮し、再度純水で溶解した。これをさらに、ゲル濾過クロマトグラフィー(TSKG2000SW)で精製した。
〔調製例2〕Hypnin Aレクチンの調製
紅藻カギイバラノリの50%冷エタノール2次抽出液10 Lをろ過し、エバポレーターで2.5 Lに濃縮後、等容の冷99.9%エタノールを加えて4℃で1晩静置した。静置後、上清を回収し、3.9 Lの50%エタノール抽出液を得た。次に2倍容の冷99.9%エタノールを加えて4℃で1晩静置後、遠心(8,000 rpm, 30 min, 0℃)した。遠心で得た沈殿を超純水に溶解し、超純水に対して透析した。透析後、透析内液を遠心(10,000 rpm, 30 min, 0℃)してHypnin A粗画分207 ml(タンパク質量374 mg)を得た。
図6に、Hypnin A粗画分のSDS-PAGEを示す。図6のレーン1〜5は、以下のとおりである。
レーン1: 分子量マーカー
レーン2: 同藻体の冷50%エタノール1次抽出液から調製したHypnin A粗画分であって、150 mM NaClを含む20 mM PBSに対して透析後、-30℃で保存されていたもの(還元)
レーン3: レーン2と同じ(ただし、非還元)
レーン4: 2次抽出液から調製したHypnin A粗画分(還元)
レーン5: レーン4と同じ(ただし、非還元)
上記16.5%ゲルを用いるSDS-PAGEによって、本粗画分の主成分が紅藻レクチンであることを確認した。
次に、43.5 mgタンパク相当量の粗抽出画分を、0.05%TFA-20%アセトニトリル溶液で平衡化したYMC-D-ODSカラム(20×250 mm)に添加した。カラムを同溶液で洗浄後(20 min)、0.05%TFA-20%アセトニトリルおよび0.05%TFA-100%アセトニトリルを用いて、20-70%アセトニトリル(25 min)、70%アセトニトリル(10 min)、70-20%アセトニトリル(5 min)の濃度勾配で溶出し、最後に同緩衝液で洗浄した(10 min)。その結果、溶出順にHypnin A-1、A-2およびA-3を、それぞれ1158、635および408μg得た(図7)。
〔実施例1〕α1,6フコース糖鎖への特異的結合性の測定
調製例1で精製したHypnin Aのα1,6フコース糖鎖への特異的結合性を、以下の手順で試験した。
(オリゴ糖の準備)
実施例に使用したピリジルアミノ化(PA-)オリゴ糖を、図2および3にリストする。番号001〜014、103、105、107、108、307、313、314、323、405、410、418〜420、および503のN結合型糖鎖は、タカラバイオ社から購入した。それ以外は、未標識のオリゴ糖を生化学工業株式会社などから購入し、GlycoTAG(登録商標、タカラバイオ社)を用いてピリジルアミノ化した。
(Hypnin Aレクチンカラムの調製)
0.5M NaClを含む0.2M NaHCO3緩衝液(pH8.3)中にHypnin Aを溶解し、NHS-活性化セファロース(GEヘルスケアバイオサイエンス社)へその製造者マニュアルに従って結合させた。0.8%NaClを含む10mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4、TBS緩衝液)中にレクチン-セファロースを懸濁させ、ミニチュアカラム(φ2mm x 10mm, 31.4μl)に充填した。
(フロンタルアフィニティクロマトグラフィー)
FAC自動分析装置(FAC-1装置、(株)島津製作所製)を用いてフロンタルアフィニティクロマトグラフィーを行った。詳細には、上記で調製したレクチンカラムを、ステンレスホルダーに差し込み、FAC-1装置に接続した。流速およびカラム温度を、それぞれ0.125 ml/minおよび25℃に保った。前記TBS緩衝液でミニチュアカラムを平衡後、過剰容積(0.5〜0.8 ml)のPA-糖鎖(2.5または5.0 nM)を、自動サンプリング装置を用いてカラム中へ連続注入した。
PA糖鎖の溶出液の蛍光強度(励起波長310 nmおよび蛍光波長380 nm)をモニターし、相互作用強度〔標準オリゴ糖(PA-ラクトース)に対する前端溶出液の差:V-V0〕を算出した。相互作用強度の算出結果を表1〜3に示す。
表1〜3から、Hypnin A-1レクチンカラムでは、α1,6フコース糖鎖のみを検出し、非α1,6フコース糖鎖を全く検出していないことがわかる。
〔比較例1〕
実施例1で用いたHypnin Aの代わりに、ヒイロチャワンタケレクチン(AAL、生化学工業(株)-(株)J−オイルミルズ(JOM)製)、麹菌レクチン(AOL、東京化成工業(株))、レンズマメレクチン(LCA、生化学工業(株)-JOM製)、ラッパスイセンレクチン(NPA、フナコシ(株))、およびエンドウマメレクチン(PSA、生化学工業(株)-JOM製)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、相互作用強度(V-V0)を求めた。その結果を表1〜3に示す。表1〜3から、AALおよびAOLでは、α1,6フコース糖鎖とともに非α1,6フコース糖鎖も検出してしまう。LCA、NPAおよびPSAでは、α1,6フコース糖鎖とともにフコースを持たない糖鎖も多く検出してしまうことがわかる。しかも、実施例1のHypnin Aの相互作用強度は、比較例1のいずれのものよりも大きいことがわかる。
実施例1のHypnin Aレクチンおよび比較例1の各種レクチンについて、α1,6フコース糖鎖との相互作用強度の非α1,6フコース糖鎖との相互作用強度に対する比率Rを求めた。Rは、以下の数式により求めた。その結果を表4に示す。
〔実施例2、比較例2〜3〕α1,6フコース糖鎖の精製
α1,6フコース糖鎖に特異的に強く結合するHypnin Aを固定化したカラムを用いて、α1,6フコース糖鎖を有する糖タンパク質の高純度の精製が可能であることを検証した。
(4種類の糖タンパク質を含有する試料の調製)
以下の4種類の糖タンパク質を等量混合したモデル溶液を作製し、それを精製用試料とした。
(1)α1,6フコース糖鎖を有する糖タンパク質として、下記式:

を有するラクトフェリン。
(2)ラクトフェリンと似た2本鎖N型糖鎖を有し、フコースを有さない糖タンパク質として、下記式:

を有するトランスフェリン。
(3)下記式:

で示される、高マンノース糖鎖を有するダイズレクチン(SBA)。
(4)下記式:

で示される、高マンノース糖鎖を有するリボヌクレアーゼB。
具体的には、まず、0.1M メチル-D-マンノピラノシド(sigma製、M-6882、Lot. 90K1899)/リン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと略す)の0.5M NaCl溶液を調製した。
次に、ヒト由来ラクトフェリン(sigma製、L0520-25MG、Lot.035K3800)、ヒト由来トランスフェリン(sigma製、T-2252、Lot. 036K114)、ダイズレクチン(生化学工業(株)−JOM製、300179、Lot. 90115)、およびウシ膵臓由来リボヌクレアーゼB(sigma製、R-5875、Lot. 73H7006)を、それぞれ2 mg/mlになるようにPBSで溶解した。最後に、これらを等量混合して、糖タンパク質混合溶液を調製し、試料とした(終濃度:各0.5 mg/ml)。
(カラムの準備)
本発明に従うHypninを0.5 mg/ml固定化させたカラム(実施例2)、ならびに、比較例1で用いたLCAを5mg/ml固定化させたカラム(比較例2)および同じくLCAを15mg/ml固定化させたカラム(比較例3)を作製した。なお、カラムのロットは表5に示した。
(レクチン固定化カラムを用いたアフィニティクロマトグラフィー)
上記で得た三種類の固定化カラムをPBSで平衡化した。次いで、上記試料をカラムに0.5 ml添加し、カラム下部より流出液をチューブに回収した。PBSを2.5 ml添加し、流出液を0.5 mlずつチューブに回収した。
さらに、Hypnin A固定化カラムには、0.5M NaClを2.5 ml添加して流出液を0.5 mlずつチューブに回収した。一方、LCA 5 mg/ml固定化カラムには、0.1M メチル-D-マンノピラノシド/PBSを2.5 ml添加して流出液を0.5 mlずつチューブに回収した。LCA 15 mg/ml固定化カラムには、0.1M メチル-D-マンノピラノシド/PBSを5 ml添加して流出液を0.5 mlずつチューブに回収した。
回収したフラクションの吸光度(280 nm)を、吸光度計(Shimadzu UV-2550)で測定した。なお、送液は、すべて自然落下で行った。各フラクションの溶出液を表6に示す。
アフィニティクロマトグラフィーより得られた各フラクションの吸光度の分布を、図8に示した。図8から、Hypnin A 0.5 mg/ml固定化カラム(実施例2)では、フラクション8に先鋭な吸着画分が現れるのに対して、LCA 5mg/ml固定化カラム(比較例2)およびLCA 15mg/ml固定化カラム(比較例3)では、濃度が低く、しかも吸着画分がブロードに現れることがわかる。
(SDSポリアクリルアミド電気泳動による分析)
アフィニティクロマトグラフィーにより得られたフラクションの非吸着画分および吸着溶出画分を18μlずつチューブに添加した。SDS処理液(Sample Buffer Solution(2ME-)、Wako製、198-13282)を6μl、そして2-メルカプトエタノール(Bio-Rad製、161-0710)を1.25μl添加して、100℃、10分間煮沸し、泳動試料とした。
実施例2、ならびに比較例2および3で得られた各レクチンカラムで分離した非吸着画分と吸着画分を、それぞれ別個のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にかけた。電気泳動は、Phastsystem(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用い、そのマニュアルに従った。ゲルには、Phast gel Gradient 10-15(GEヘルスケアバイオサイエンス製、17-0540-01、Lot. 10003448)を用いた。電気泳動後、銀染色を行った。電気泳動後のゲルをデンシトグラフ(ATTO)で画像処理した。結果を図8に示す。
図8に示すとおり、Hypnin A固定化カラム(実施例2)の吸着画分のSDS-PAGEでは、α1,6フコースを持つラクトトランスフェリンのみが検出された。一方、LCA 5mg/ml固定化カラム(比較例2)の吸着画分のSDS-PAGEでは、α1,6フコースを持つラクトトランスフェリンの他に、高マンノース糖鎖を持つリボヌクレアーゼBも検出された。さらに吸着能を高めたLCA 15mg/ml固定化カラム(比較例3)吸着画分のSDS-PAGEでは、α1,6フコースを持つラクトトランスフェリンの他に、高マンノース糖鎖を持つリボヌクレアーゼB、および、高マンノースを有するダイズレクチンも検出された。各吸着画分におけるヒト由来ラクトフェリンの純度(=ラクトフェリン/糖タンパク質総量)を、デンシトグラフ(ATTO)により求めた。その結果を表7に示す。
本発明の検出方法および分別方法に使用するHypnin Aレクチンの精製工程(改良方法を含む)を示す図である。 本発明の実施例および比較例に使用するα1,6フコースオリゴ糖および非α1,6フコースオリゴ糖の構造図である。 本発明の実施例および比較例に使用するα1,6フコースオリゴ糖および非α1,6フコースオリゴ糖の構造図である。 Hypnin Aの調製方法において、50-83%冷エタノール沈殿画分(レーン2)のSDS-PAGEの結果(図面代用写真)である。 Hypnin Aの調製方法において、逆相系HPLCを用いるHypnin A-1(レーン3)、A-2(レーン4)およびA-3(レーン5)の溶離図と、それらのSDS-PAGEの結果(図面代用写真)である。 Hypnin Aの調製方法において、Hypnin A粗画分(還元または非還元)のSDS-PAGEの結果(図面代用写真)である。 Hypnin Aの調製方法の際にYMC-D-ODSを用いた逆相系HPLCによるHypnin A-1,A-2およびA-3の溶離図である。 実施例2、比較例2および比較例3のレクチンクロマトグラフィーのクロマトグラムとSDS-PAGEの結果(図面代用写真)を示す。

Claims (10)

  1. Hypnin Aからなるα1,6フコース特異的レクチンを、α1,6フコース糖鎖の検出媒体として用いることを特徴とする、α1,6フコース糖鎖の検出方法。
  2. 固定化された前記α1,6フコース特異的レクチンを用いることを特徴とする、請求項1に記載のα1,6フコース糖鎖の検出方法。
  3. 前記α1,6フコース糖鎖が腫瘍マーカーまたは抗体に結合されている、請求項1に記載のα1,6フコース糖鎖の検出方法。
  4. 前記腫瘍マーカーがαフェトプロテインである、請求項3に記載のα1,6フコース糖鎖の検出方法。
  5. Hypnin Aからなるα1,6フコース特異的レクチンを有効成分とする、α1,6フコース糖鎖を検出するための診断薬または診断薬キット。
  6. Hypnin Aからなるα1,6フコース特異的レクチンに、糖鎖を含む流体を作用させ、該α1,6フコース特異的レクチンに吸着されたα1,6フコース糖鎖を回収することからなる、α1,6フコース糖鎖のスクリーニング方法。
  7. 固定化された前記α1,6フコース特異的レクチンを用いることを特徴とする、請求項6に記載のα1,6フコース糖鎖のスクリーニング方法。
  8. Hypnin Aからなるα1,6フコース特異的レクチンをα1,6フコース糖鎖の結合媒体として用いて、α1,6フコース糖鎖と非α1,6フコース糖鎖とを分別することからなる、α1,6フコース糖鎖の分別方法。
  9. 固定化された前記α1,6フコース特異的レクチンを用いることを特徴とする、請求項8に記載のα1,6フコース糖鎖の分別方法。
  10. 前記α1,6フコース糖鎖が抗体に結合されている、請求項9に記載のα1,6フコース糖鎖の分別方法。
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