JPWO2011071049A1 - ピストンリング及びピストン装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高出力のエンジンにおいて、長期にわたり、優れたアルミニウム凝着防止効果を持続できるピストンリングを提供する。【解決手段】ピストンリングの上下側面のうち、少なくとも一方に硬質粒子を分散させたポリイミド皮膜を被覆する。硬質粒子としては、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、立方晶窒化ホウ素、ダイヤモンド等を用いる。硬質粒子の平均粒径は、0.01〜5μmとし、皮膜の厚さは、2〜30μmとする。

Description

本発明は、ピストンリングに関し、さらに詳しくは内燃機関用のピストンリングに関する。
ガソリンエンジンのトップリング付近は、燃料の燃焼により、200℃以上の高温に達する。内燃機関では、このような高温下、燃焼圧力によりピストンリングと、ピストンのピストンリング溝表面(以下「リング溝表面」という。)との間で衝突が繰り返され、同時に、ピストンリング表面とリング溝表面は周方向に摺動している。
図1にリング溝表面の粗さを測定した結果を示す。リング溝表面には、バイトによる旋盤加工で生じた高さ約1μmの突起が0.2mm間隔で存在する。車体軽量化のため、通常、ピストン材料としては、アルミニウム合金が用いられているが、アルミニウム系材料は耐熱性が低く、200℃を越えると硬度が低下する。このような高温下で、ピストンリングと衝突し、摺動することにより、リング溝表面に疲労破壊が生じ、表面の突起が脱落し、リング溝表面に活性なアルミニウム合金の新生表面が現れる。そして、脱落したアルミニウム合金片やリング溝内に現れたアルミニウム合金の新生表面が、ピストンリングとの衝突に伴いピストンリング上面、下面などと接触し、さらに摺動を受ける。これにより、アルミニウム合金片がピストンリング側面に凝着したり、ピストンリング本体がピストンの新生アルミニウム合金表面に固着する「アルミニウム凝着」が起きる。アルミニウム凝着は新生なアルミニウム合金面が出続ける限り生じ続け、アルミニウム凝着が進行すると、ピストンリングがリング溝内でピストンに固着し、ピストンリングのシール性能が損なわれる。シール性能の1つとしてガスシール機能が失われることで、高圧の燃焼ガスが燃焼室からクランク室へ流出するブローバイ現象が生じ、エンジン出力の低下を招く。また、オイルシール機能が失われることで、オイル消費の増大を招く。さらに、アルミニウム凝着により、リング溝摩耗が進行し、ピストンリング上下面とリング溝表面との間のシール性が損なわれ、ブローバイ量の増加を招く。
アルミニウム凝着を防止するためには、従来から、ピストン母材であるアルミニウム合金とピストンリング、特に、トップリングを直接接触させない方法やピストンリングのリング溝に対する攻撃を緩和する方法が数多く提案されている。
ピストン側の対策として、特許文献1には、リング溝表面に陽極酸化処理(アルマイト処理)を施し、さらにその処理により生成する微細孔中に潤滑性物質を充填する方法が記載されている。アルマイト処理により、リング溝表面に酸化アルミニウムを主成分とする硬質皮膜が形成されるため、ピストン母材であるアルミニウム合金の脱落が防止され、ピストンリングへの凝着が抑えられる。しかしながら、ピストンへの陽極酸化処理に要するコストは高く、酸化アルミニウムは、硬質であるため初期なじみ性が悪いという問題がある。
一方、ピストンリング側の対策としては、例えば特許文献2に、耐熱性樹脂であるポリアミド、ポリイミド等に固体潤滑剤である二硫化モリブデン等を分散させた皮膜をピストンリング側面に形成する方法が記載されている。特許文献2の構成では、皮膜中の固体潤滑剤が劈開し摩耗することにより、皮膜の摩擦係数が低下し、リング溝への攻撃性が緩和され、アルミニウム凝着が抑制される。
また、特許文献3には、銅系粉末を含有する耐熱樹脂から構成される表面皮膜をピストンリング側面に形成する方法が記載されている。特許文献3では、銅系粉末の添加により、ピストンリング表面に形成された表面皮膜に耐摩耗性を付与し、耐熱樹脂による潤滑性を長期にわたって機能させることができるとされている。
さらに、特許文献4には、ポリアミドイミド樹脂を主成分として、ポリアミドイミド樹脂の塗膜改質剤とアルミナ等の硬質粒子を含む乾性被膜潤滑剤からなる被覆層を、所定の表面粗さの条痕を有する摺動部材の摺動面に形成することにより、摺動部材の耐摩耗性や密着性を向上させつつ、摩擦係数を低減できることが示されている。そして、耐摩耗性及び相手材摩耗のバランスから硬質粒子としては、所定硬度のアルミナや窒化ケイ素が好ましいと記載されている。
近年、エンジンの高出力化に伴い、トップリング付近の到達温度はさらに上昇している。このような状況では、ピストン強度の低下による疲労破壊がさらに生じやすく、ピストンリングに被覆した樹脂製皮膜を長期にわたって維持することも困難となっている。特許文献2では、固体潤滑剤を必須成分として添加しているが、固体潤滑剤は前述の通り、自らが、劈開し摩耗することにより、皮膜の摩擦係数を低下させ、リング溝への攻撃性を緩和している。そのため、皮膜の耐摩耗性が低く、長期にわたって、皮膜を維持し、アルミニウム凝着防止効果を持続することは困難である。また、このような皮膜の摩耗を抑えるため、固体潤滑剤の添加量には限界があり、皮膜の摩擦係数の低減にも限界がある。そのため、高温下で硬度が低下したピストン材の表面を荒らしてしまい、さらなるアルミニウム凝着の発生を引き起こす可能性もある。
また、特許文献3及び4の皮膜でも、相手材への攻撃性を十分低下させることはできず、高温下では、相手材の表面を荒らし、皮膜自体も摩耗や熱分解により消失する可能性がある。
このように、現状では、高出力のエンジンにおいて、長期にわたって、高いアルミニウム凝着防止効果を維持し得るピストンリングは得られていない。
特開昭63-170546号公報 特開昭62-233458号公報 WO2007/099968 特許第4151379号公報
従って、本発明の目的は、前記問題点を解決し、高出力のエンジンにおいて、長期にわたり、優れたアルミニウム凝着防止効果を持続できるピストンリングを提供することである。
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、ピストンリングの上下側面の少なくとも一方に、硬質粒子を含有するポリイミド皮膜を被覆することで、高出力のエンジンにおいても長期にわたって優れたアルミニウム凝着防止効果を持続できることを見出し、本発明に想到した。すなわち、本発明のピストンリングは、上下側面の少なくとも一方に硬質粒子を含有するポリイミド皮膜を被覆したことを特徴とする。
ポリイミドに、硬質粒子を分散させた本発明の皮膜は、摩擦係数が低く、かつ高硬度である。そのため、相手材であるアルミニウム合金製ピストンの表面を荒らすことなく、短時間で平滑化し、アルミニウム凝着の発生を効果的に防止することができる。また、本発明の皮膜は、耐熱性に優れたポリイミドをマトリックス樹脂(基地)とし、硬質粒子を添加することにより、耐摩耗性にも優れる。さらに、摺動初期に相手材が平滑化され、摩擦力が大幅に低下することにより、高温下における摩耗や熱分解が抑えられ、長期にわたって皮膜が維持される。そして、本発明の皮膜は、マットリックス樹脂であるポリイミドの潤滑特性を利用し、固体潤滑剤の添加を必要としないため、固体潤滑剤の劈開による皮膜の摩耗が生じることはない。このため、本発明のピストンリングでは、高出力のエンジンにおいても、長期にわたり皮膜が維持され、優れたアルミニウム凝着防止効果を持続できる。
ピストンのピストンリング溝表面の表面粗さを測定した結果を示す図である。 単体凝着試験機の概要を示す断面図である。 添加材(アルミナ粒子)の平均粒径とピストンリング下面の皮膜残存量との関係を示すグラフである。 添加材(アルミナ粒子)の平均粒径とトップリング溝下面の溝摩耗量との関係を示すグラフである。 ピストンリングの皮膜硬度とピストンリング下面の皮膜残存量との関係を示すグラフである。 ピストンリングの皮膜硬度とトップリング溝下面の溝摩耗量との関係を示すグラフである。
以下に本発明のピストンリングについて詳細に説明する。
(1)ピストンリング母材
本発明のピストンリングの母材は、特に限定されないが、リング溝との衝突が繰り返されることから、所定の強度を有することが望ましい。好ましい材料としては、鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、高級鋳鉄等が挙げられる。

(2)ピストンリング下地処理
本発明の皮膜のピストンリング母材への密着性を向上させるため、ピストンリング母材表面には、リン酸塩皮膜を形成してもよい。リン酸塩皮膜としてはリン酸亜鉛系、リン酸マンガン系、リン酸カルシウム系の皮膜が挙げられる。また、リン酸塩皮膜以外の化成処理皮膜や酸化膜を形成することもできる。母材表面に硬質クロムめっき皮膜や無電解ニッケルめっき皮膜等が形成されているピストンリングには、化成処理皮膜が形成できないので、皮膜の密着性を確保するために無機質の汚れや有機質の汚れを除去するのが望ましい。また、表面の粗さ調整を兼ねてブラスト処理を行ってもよい。
(3)皮膜
本発明のピストンリングに被覆する皮膜は耐熱性樹脂であるポリイミドと硬質粒子を含有する。潤滑特性の優れたポリイミドに、硬質粒子を分散させることにより、摩擦係数が低く、且つ高硬度の皮膜が得られる。このような皮膜をピストンリングに被覆することにより、相手材であるアルミニウム合金製ピストンのリング溝表面を荒らすことなく、短時間で平滑化させ、アルミニウム凝着の発生を効果的に抑えることができる。また、本発明の皮膜には、硬質粒子が分散しているため、耐摩耗性に優れ、マトリックス樹脂として耐熱性の優れたポリイミドを用いることから、皮膜の耐熱性にも優れる。さらに、摺動初期にピストン材表面が平滑化され、摩擦力が大幅に低下することにより、高温下における摩耗や熱分解が抑えられ、長期にわたって皮膜が維持される。そのため、本発明のピストンリングでは、高出力のエンジンにおいても、長期にわたり皮膜が維持され、優れたアルミニウム凝着防止効果を持続できる。
従来のアルミニウム凝着防止用の皮膜では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤が、必須成分、又は、添加するのが望ましい成分とされてきた。しかしながら、本発明においては、固体潤滑剤は、添加しないのが好ましく、添加するとしても、皮膜全体の体積に対して、1%、好ましくは、0.8%を限度とする。固体潤滑剤を添加した場合、固体潤滑剤自体が、劈開し摩耗することにより、皮膜の摩擦係数を低下させ、リング溝への攻撃性を緩和するため、皮膜の摩耗が進行し、剥離した固体潤滑剤が、相手材表面を荒らすこともある。そのため、高温下において、長期にわたり、皮膜を維持し、優れたアルミニウム凝着防止効果を持続することは難しい。
本発明の皮膜を、ピストンリングの上下側面の少なくとも一方の面に被覆することにより、本発明の効果は得られるが、特に下側面に被覆することにより優れたアルミニウム凝着防止効果が発揮される。ピストンリングの上下側面に被覆することによりさらに優れた効果が得られる。
本発明に用いるポリイミドは、特に限定されないが、通常、液相法により、皮膜を形成することから、溶解性の優れたポリイミドが好ましい。例えば、リカコートSN-20、リカコートPN-20、リカコートEN-20(新日本理化株式会社製)、FC−114 ファイン・ポリイミドワニス(ファインケミカルジャパン株式会社製)、U−ワニス−A、U−ワニス−S(宇部興産株式会社製)、H801D、H850D(荒川化学工業株式会社製)、RC5057、RC5097,RC5019(株式会社I.S.T製)等が挙げられる。
本発明の皮膜では、マトリックス樹脂材料として、ポリイミドを用いるが、皮膜全体の体積に対して、50%未満、好ましくは、20%を限度に、さらに好ましくは、5%を限度に、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリテトラフルオロエチレン等他の耐熱性樹脂を添加することもできる。
本発明のピストンリングに被覆する皮膜に添加する硬質粒子としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化ジルコニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素(立方晶)、ダイヤモンド等が挙げられる。なかでも、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素(立方晶)、ダイヤモンドが好ましい。アルミナを添加する場合には、その種類は特に限定されず、αアルミナ、γアルミナ等が用いられる。硬質粒子として一般的には、αアルミナが用いられるが、γアルミナを用いることにより、オイル吸着作用により、優れたアルミニウム凝着防止効果を得ることもできる。添加する硬質粒子は、1種でもよいが、2種以上を添加することもできる。
硬質粒子の平均粒径は、0.01〜5μmであるのが好ましく、0.01〜0.5μmであるのがより好ましい。平均粒径が、0.01μm未満では粒子の凝集により、均一分散が困難となったり、リング溝表面を平滑化する効果が不十分となる可能性がある。一方、平均粒径が、5μmを越えると粒子のポリイミドに対する保持力が低下したり、皮膜中の粒子によりリング溝表面が荒らされる可能性がある。
硬質粒子の添加量は、最適な皮膜硬度が得られるように調整するのが好ましい。具体的には、皮膜の硬度(室温下)を、250℃におけるピストン硬度に対し、±40%の範囲となるように調整するのが好ましい。皮膜硬度を、この範囲に調整することにより、高温下における皮膜及びピストン双方の相手材に対する攻撃性がさらに低下して、皮膜及びピストンとも表面に荒れや摩耗が生じることなく、長期にわたり、ピストン溝表面をアルミニウム凝着防止効果の優れた平滑面に維持することができる。すなわち、250℃におけるピストン硬度の±40%の範囲となる硬度HVを有する皮膜を被覆したピストンリングを装着したピストン装置では、より優れたアルミニウム凝着防止効果が持続できる。250℃におけるピストン硬度を100%として、皮膜硬度を60%未満に調整すると、皮膜が摩耗しやすくなり、十分なアルミニウム凝着防止効果が得られない可能性がある。一方、250℃におけるピストン硬度を100%として、皮膜硬度が、140%を越えるように調整すると、リング溝への攻撃性が増加して、リング溝摩耗を引き起こす可能性がある。なお、ポリイミドを主成分とする本発明の皮膜では、室温下での硬度と、250℃での硬度に大きな差は認められない。
通常使用されるアルミニウム合金製ピストンの250℃における硬度は、HV50程度であることから、本発明の皮膜硬度HVは、30〜70とするのが好ましい。このような皮膜硬度に調整するには、硬質粒子がアルミナ、炭化ケイ素の場合は、皮膜全体の質量に対して、硬質粒子を5〜30質量%添加するのが好ましい。
本発明の皮膜を有するピストンリングは、Siを8.5〜30質量%含有するアルミニウム合金製ピストンとの組合せにおいて優れた効果を発揮する。ここで、アルミニウム合金が過共晶組織を有する場合でも効果的にアルミニウム凝着防止効果を発揮する。
本発明のピストンリングに被覆する皮膜の厚さは、2〜30μmにするのが好ましく、4〜20μmにするのがさらに好ましい。2μm未満ではリング溝の表面を平滑化するまでに皮膜が摩滅し、アルミニウム凝着防止効果を十分発揮できない可能性がある。また、皮膜の厚さが30μmを越えると、ピストンリングをリング溝に装着するとき不都合が生じる可能性があり、コスト的にも好ましくない。
(4)皮膜の形成方法
本発明の皮膜形成方法は、特に限定されず、スプレーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、印刷法等公知の方法が用いられる。塗布効率に優れ、塗り斑の発生を抑制できる点では、印刷法が好ましい。また、簡便である点では、スプレーコーティングが好ましい。
コーティング液、又はインクの調整方法は、特に限定されないが、市販のポリイミドワニスに硬質粒子を分散させた後、必要に応じて、溶剤を添加して、最適な粘度に調整して用いるのが好ましい。コーティング液、又はインクの粘度、調整に用いる溶剤や添加剤は、コーティング方法、又は印刷方法により、適宜選択される。分散方法は特に限定されず、サンドミル、ビーズミル、ボールミル、ロールミル等公知の方法が用いられる。この時、必要に応じて、分散剤等を適宜添加してもよい。硬質粒子をポリイミドに均一分散することにより、より優れたリング溝表面の平滑化効果が得られ、アルミニウム凝着防止効果がさらに向上する。
コーティング液塗布後、又は印刷後、乾燥し、硬化処理を行う。通常、硬化は250〜400℃で1時間保持して行う。硬化温度が400℃を超えると、ポリイミドの酸化分解が生じ好ましくない。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例の記載における「%」は、特に断わりのない限り、「質量%」を表すものとする。
(実施例1)
低クロム鋼で作製したピストンリングの外周面にイオンプレーティング法により、厚さ約30μmのCrN皮膜を形成した。得られたピストンリングをアルカリ脱脂した後、約80℃に加熱したリン酸マンガン水溶液中に5分間浸漬し、ピストンリングの外周面以外の面に厚さ約2μmのリン酸マンガン皮膜を形成した。
ポリイミド(PI)ワニス(新日本理化株式会社製 リカコートSN-20)に平均粒径(累積高さ50%点の粒径)0.5μmのアルミナ(Al)粉末を添加し、攪拌機を用いて、十分に撹拌した後、ロール間隔を最小にした三本ロールミルに通し、コーティング液を調整した。ここで、アルミナ粉末の添加量は、皮膜全体の質量に対して、10%となるように調整した。リン酸マンガン皮膜を形成したピストンリングの上下側面に、コーティング液をスプレーコーティングした後、100℃で10分間乾燥し、さらに、280℃の電気炉中で1時間加熱した。得られた皮膜の厚さ(片側)は約10μmで、皮膜硬度HVは39であった。
皮膜硬度は、超微小硬度計(株式会社島津製作所製 DUH−211)を用いて、荷重4.9mNで、押し込み硬さ(Hit)を測定し、換算式HV=0.0924Hitからビッカース硬さHVに換算した。なお、押し込み硬さ(Hit)は、10点測定して、その平均値を用いた。
(実施例2)
硬質粒子として、アルミナ粉末に変えて平均粒径0.5μmの炭化ケイ素(SiC)粉末を用いた以外は実施例1と同様に、ピストンリング上下側面に皮膜を形成した。得られた皮膜の厚さ(片側)は、約10μmで、皮膜硬度HVは41であった。
(実施例3〜9)
硬質粒子として、平均粒径が、それぞれ、0.008μm(実施例3)、0.01μm(実施例4)、0.03μm(実施例5)、0.05μm(実施例6)、1μm(実施例7)、5μm(実施例8)及び8μm(実施例9)のアルミナ粉末を用いた以外は実施例1と同様に、ピストンリング上下側面に皮膜を形成した。得られた皮膜の厚さは、約10μmであった。また、それぞれの皮膜の皮膜硬度を測定した結果を表1に示す。
(実施例10〜14)
皮膜全体の質量を100として、アルミナ粉末の添加量を、それぞれ、3質量%(実施例10)、5質量%(実施例11)、20質量%(実施例12)、30質量%(実施例13)、及び40質量%(実施例14)とした以外は実施例1と同様に、ピストンリング上下側面に皮膜を形成した。得られた皮膜の厚さ(片側)は、約10μmであった。また、それぞれの皮膜の皮膜硬度を測定した結果を表1に示す。
(実施例15〜17)
皮膜の厚さ(片側)が、それぞれ、2μm(実施例15)、4μm(実施例16)、及び20μm(実施例17)となるようコーティング液の塗布量を調整した以外は実施例1と同様に、ピストンリング上下側面に皮膜を形成した。それぞれの皮膜の皮膜硬度を測定した結果を表1に示す。
(比較例1)
ポリアミドイミド(PAI)樹脂(東洋紡績株式会社:HR16NN)をN-メチル-2-ピロリドンで希釈した液に、二硫化モリブデン粉末(平均粒径2μm)及びグラファイト粉末(平均粒径2μm)を添加し、攪拌機を用いて、十分に撹拌した後、ロール間隔を最小にした三本ロールミルに通し、コーティング液を調整した。ここで、二硫化モリブデン粉末及びグラファイト粉末の添加量は、皮膜全体の質量を100として、それぞれ、5質量%とした。得られたコーティング液を用いて、実施例1と同様のピストンリングに、実施例1と同様の方法で皮膜を形成した。得られた皮膜の厚さ(片側)は約10μmで、皮膜硬度HVは56であった。
(比較例2)
添加材をアルミナ粉末から二硫化モリブデン粉末(平均粒径2μm)及びグラファイト粉末(平均粒径2μm)に変更した以外は実施例1と同様に、ピストンリング上下側面に皮膜を形成した。二硫化モリブデン粉末及びグラファイト粉末の添加量は、皮膜全体の質量を100として、それぞれ5質量%とした。得られた皮膜の厚さ(片側)は、約10μmで、皮膜硬度HVは25であった。
(比較例3)
ポリアミドイミド樹脂(東洋紡績株式会社:HR16NN)をN-メチル-2-ピロリドンで希釈した液に、平均粒径0.5μmのアルミナ粉末を添加し、攪拌機を用いて、十分に撹拌した後、ロール間隔を最小にした三本ロールミルに通し、コーティング液を調整した。ここで、アルミナ粉末の添加量は、皮膜全体の質量を100として、10質量%となるように調整した。得られたコーティング液を用いて、実施例1と同様のピストンリングに、実施例1と同様の方法で皮膜を形成した。得られた皮膜の厚さ(片側)は約10μmで、皮膜硬度HVは70であった。
(比較例4)
ポリアミドイミド樹脂(東洋紡績株式会社:HR16NN)をN-メチル-2-ピロリドンで希釈した液に、平均粒径(鱗片の長軸の長さ)10μmの鱗片状の銅粉末を添加し、攪拌機を用いて、十分に撹拌した後、ロール間隔を最小にした三本ロールミルに通し、コーティング液を調整した。ここで、銅粉末の添加量は、皮膜全体の質量を100として、20質量%となるように調整した。得られたコーティング液を用いて、実施例1と同様のピストンリングに、実施例1と同様の方法で皮膜を形成した。得られた皮膜の厚さは約10μmで、皮膜硬度HVは60であった。
(比較例5)
添加材をアルミナ粉末から平均粒径(鱗片の長軸の長さ)10μmの鱗片状銅粉末に変更した以外は実施例1と同様に、ピストンリング上下側面に皮膜を形成した。鱗片状銅粉末の添加量は、皮膜全体の質量を100として20質量%添加した。得られた皮膜の厚さは、約10μmで、皮膜硬度HVは29であった。
(単体凝着試験)
実施例1〜17と比較例1〜5のピストンリング3をそれぞれ、図2に示す単体凝着試験機に装着した。ピストンリング3を、3.0mm/sで回転させながら、アルミニウム合金製のピストン材2を上下に往復運動させ、所定間隔で、面圧5MPaの荷重をかける単体凝着試験を3時間行った。ここで、ヒーター1と熱電対5を用いて、ピストン材2の温度が250℃±1℃になるように制御し、ピストンリング3には、所定間隔で一定量の潤滑油を窒素ガスとともに噴霧した。
なお、ピストン材としては、AC8A−T6を用いた。株式会社ニコン製高温顕微硬度計QM型を用いて、ピストン材を250℃±1℃に保持した状態で、硬度を測定した結果、50HVであった。
単体凝着試験後のピストンリングの皮膜残存量と凝着の有無、ピストン材の摩耗量と表面粗さを評価した結果を表1に示す。各評価項目は、以下の判定基準で表した。ピストン材の表面粗さは、JISB0633に基づき、コア部のレベル差Rkで算出した。なお、単体凝着試験前のピストン材の表面粗さRkは約1.0μmであった。
皮膜残存量(ピストンリング)・・・3μm以上:◎、
1μm以上〜3μm未満:○、1μm未満(リン酸マンガン皮膜有り):△、
1μm未満(リン酸マンガン皮膜無し):×
凝着の有無(ピストンリング)・・・無し:○、 有るが軽微:△、
有り:×
摩耗量(ピストン材)・・・0.5μm未満:◎、 0.5μm以上〜1.0μm未満:○、1.0μm以上〜1.5μm未満:△、
1.5μm以上:×
表面粗さ(ピストン材)・・・0.3μm未満:◎、 0.3μm以上〜0.5μm未満:○、0.5μm以上〜0.7μm未満:△、
0.7μm以上:×
総合判定・・・優良:◎、 良好:○、 難あり:△、不可:×
Figure 2011071049
ポリアミドイミドに二硫化モリブデンとグラファイトを分散した皮膜を被覆した比較例1では、単体凝着試験後には、ポリアミドイミド皮膜は、全く残存せず、下地のリン酸マンガン皮膜まで摩耗が進行しており、顕著なアルミニウム凝着が認められた。また、ピストン材の表面は平滑化されておらず、摩耗が進行していることが確認された。ポリイミドに二硫化モリブデンとグラファイトを分散した皮膜を被覆した比較例2では、比較例1よりアルミニウム凝着の発生は抑制されたものの、ポリイミド皮膜の残存量はわずかで、ピストン材は殆ど平滑化されておらず、摩耗の進行が認められた。ポリアミドイミドにアルミナ粉末を分散した皮膜を被覆した比較例3では、比較例1及び2に比べ、ピストン材の平滑化効果は向上したものの、ピストンリングの皮膜は殆ど残存しておらず、凝着が発生し、ピストン材にも摩耗が認められた。
ポリアミドイミドに銅粉末を分散した比較例4、及びポリイミドに銅粉末を分散した皮膜を被覆した比較例5でも、アルミニウム凝着の発生が認められた。比較例4及び5とも、ピストンリングの皮膜は殆ど残存しておらず、ピストン材にも摩耗が進行し、表面は平滑化されていないことが確認された。
一方、ポリイミドにアルミナ粉末を分散した皮膜を被覆した実施例1、及びポリイミドに炭化ケイ素を分散した皮膜を被覆した実施例2では、いずれも、アルミニウム凝着の発生は認められず、皮膜の摩耗及びピストン材の摩耗は少なく、ピストン材の表面は平滑化されていた。ポリイミドに硬質粒子を分散した皮膜は、摩擦係数が低く、高硬度であるため、ピストン材表面を短時間で、平滑化することにより、優れたアルミニウム凝着防止効果が発揮されたものと考えられる。さらに、摺動初期に平滑化されたことにより、ピストン材への攻撃性が低く、ピストン材の摩耗が抑えられ、一方、皮膜自体の耐熱性に優れ、固体潤滑材が添加されていないことから、高温下でも皮膜が維持されたと推測される。なお、実施例1及び2について、さらに、10時間単体凝着試験を行ったが、アルミニウム凝着は認められなかった。摺動初期にピストン材が平滑化されたことにより、高温下でのさらなる衝突及び摺動においても優れたアルミニウム凝着防止効果が持続されたものと考えられる。
アルミナ粒子の平均粒径を変えた実施例1及び3〜9では、いずれもアルミニウム凝着の発生は認められず、皮膜の摩耗は少なかった。特に、アルミナの平均粒径が0.01〜5μmの範囲である実施例1、4、5、6、7及び8では、より優れたピストン材の平滑化効果を示し、ピストン材の摩耗量が0.5μm未満と非常に少なかった。
アルミナ粒子の添加量を変えた実施例1、及び10〜14では、いずれもアルミニウム凝着の発生は認められず、皮膜の摩耗は少なかった。特に、アルミナ粉末の添加量が、5質量%〜30質量%で、皮膜硬度が、30〜70の範囲となる実施例1、及び11〜13では、より優れた皮膜の耐摩耗性とピストン材の平滑化効果を示し、ピストン材の摩耗量が0.5μm未満と非常に少なかった。ここで、実施例1、及び11〜13の皮膜硬度は、試験温度250℃でのピストン材の硬度50 HVに対し±40%の範囲であった。
皮膜の厚さを変えた実施例1、及び15〜17では、いずれもアルミニウム凝着の発生は認められなかった。特に、皮膜の厚さが、4μm〜20μmの範囲となる実施例1、16、及び17では、より優れた皮膜の耐摩耗性とピストン材の平滑化効果を示し、ピストン材の摩耗量が0.5μm未満と非常に少なかった。なお、実施例15では、単体凝着試験後の皮膜厚さは、0.5〜1.0μmであった。
(実機試験)
実施例1、4〜14及び比較例2〜5のピストンリングをアルミニウム合金(AC8A−T6)製ピストンのトップリング溝に装着し、1.5リットル4気筒エンジンに装着した。このエンジンを用いて、回転数6000rpmで、400時間実機試験を行った。試験終了後に、ピストンリング下面の皮膜残存量と、トップリング溝下側の溝摩耗量を測定した。セカンドリング及びオイルリングは以下の仕様のものを用いた。
(1)セカンドリング
材質:SWOSC−V、全面リン酸亜鉛処理
(2)オイルリング
サイドレール
材質:JIS G3502 SWRS82A−K、外周面にイオンプレーティング法によるCrN皮膜形成
スペーサエキスパンダ
材質:SUS304
比較例2の試料を装着したエンジンでは、運転開始10時間後に、ピストンリング下面の樹脂皮膜及び下地のリン酸マンガン皮膜が消失し、母材が露出していることが確認された。この状態で、さらに実機試験を続けたところ、300時間後に、ブローバイ値が運転初期の値の1.3倍を超えたため、運転を中止した。試験後のピストンリングには、アルミニウム凝着が認められた。
比較例3、4、及び5についても同様に実機試験を行ったところ、それぞれ、運転開始から100時間後、30時間後、及び50時間後に、ピストンリング下面の樹脂皮膜及び下地のリン酸マンガン皮膜が消失し、母材が露出していることが確認された。そのため、その時点でそれぞれ実機試験を中止した。
一方、実施例1、及び4〜14については、いずれも運転初期から400時間経過まで、ブローバイ量は殆ど変化せず、運転終了後も樹脂皮膜が維持されており、比較例との有意差が認められた。図3に添加材(アルミナ粒子)の平均粒径とピストンリング下面の皮膜残存量との関係を示す(実施例1及び4〜9)。ここで、縦軸は、アルミナ粒子の平均粒径が0.01μmの試料(実施例4)の皮膜残存量を100として、相対値で表した。また、図4には、アルミナ粒子の平均粒径とトップリング溝下面の溝摩耗量との関係を示す(実施例1及び4〜9)。ここで、縦軸は、アルミナ粒子の平均粒径が0.01μmの試料(実施例4)の溝摩耗量を100として、相対値で表した。
図3より、アルミナ粒子の平均粒径が0.01μm〜5μmの範囲で、皮膜の残存量が多く、0.01μm〜0.5μmの範囲で、さらに皮膜の残存量が多くなることが確認された。アルミナ粒子の平均粒径が、0.01μm〜5μmの範囲では、アルミナ粒子のポリイミドへの保持力が高いため、皮膜の摩耗量が低減し、アルミナ粒子の平均粒径が0.01μm〜0.5μmの範囲では、さらに、微細なアルミナ粒子がポリイミド中に均一に分散され、皮膜中の硬度のバラツキが小さいため、皮膜の摩耗量がより低減したと考えられる。一方、図4より、アルミナ粒子の平均粒径が0.01μm〜5μmで、溝摩耗量が少なく、0.01μm〜0.5μmで、さらに溝摩耗量が少なくなることが確認された。この範囲では、皮膜中のアルミナ粒子によりリング溝表面が効果的に平滑化され、且つリング溝表面への攻撃性は最小限に抑えられたと考えられる。
図5に、ピストンリングの皮膜硬度とピストンリング下面の皮膜残存量との関係を示す(実施例1及び10〜14)。ここで、縦軸は、皮膜硬度HVが28(250℃におけるピストン硬度に対し、−44%の硬度(実施例10))の皮膜残存量を100として、相対値で表した。また、図6には、ピストンリングの皮膜硬度とトップリング溝下面の溝摩耗量との関係を示す(実施例1、及び10〜14)。ここで、縦軸は、皮膜硬度HVが250℃におけるピストン硬度に対し、−44%の試料(実施例10)のトップリング溝下面の溝摩耗量を100として、相対値で表した。
図5より、皮膜硬度HVが30(250℃におけるピストン硬度に対し、−40%)〜70(250℃におけるピストン硬度に対し、40%)で、皮膜の残存量が多くなることが確認された。一方、図6より、皮膜硬度HVが30(250℃におけるピストン硬度に対し、−40%)〜70(250℃におけるピストン硬度に対し、40%)で、溝摩耗量が少なくなることが確認された。この硬度範囲では、リング溝との間の衝突及び摺動に対して皮膜が十分な耐摩耗性を有するとともに、リング溝に対する攻撃性は最小限に抑えられたと考えられる。
1・・・ヒーター
2・・・ピストン材
3・・・ピストンリング
4・・・温度コントローラー
5・・・熱伝対

Claims (5)

  1. 上下側面の少なくとも一方に皮膜を被覆したピストンリングであって、前記皮膜が硬質粒子を含有するポリイミド皮膜であることを特徴とするピストンリング。
  2. 前記硬質粒子が、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、立方晶窒化ホウ素、ダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のピストンリング。
  3. 前記硬質粒子の平均粒径が、0.01〜5μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のピストンリング。
  4. 前記皮膜の厚さが、2〜30μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のピストンリング。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のピストンリングが装着されたピストン装置であって、前記皮膜の硬度HVが250℃におけるピストン硬度に対し、±40%の範囲であることを特徴とするピストン装置。
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