JPWO2011046030A1 - スピーカ装置 - Google Patents

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Abstract

スピーカ装置1は、スピーカユニット1Uと、スピーカユニット1Uを取り付けるキャビネット300とを備え、スピーカユニット1Uは、振動板10と、振動板10を振動方向に沿って振動自在に支持する静止部100と、静止部100に設けられ、音声信号によって振動板10に振動を与える駆動部14とを備え、駆動部14は、振動板10の振動方向とは異なる方向に沿って磁気ギャップを形成する磁気回路20と、磁気ギャップに沿って振動するボイスコイル30と、ボイスコイル30の振動を方向変換して振動板10に伝える振動方向変換部50とを備え、振動方向変換部50は、ボイスコイル30と振動板10との間に形成されたリンク部分51を角度変換させるリンク機構50Lを備え、キャビネット300は、スピーカユニット1Uとの間に、規定の空間Sを形成する。

Description

本発明は、スピーカ装置に関するものである。
一般的なスピーカ装置として、ダイナミック型スピーカ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このダイナミック型スピーカ装置は、例えば図1に示すように、フレーム3Jと、コーン形状の振動板21Jと、振動板21Jをフレーム3Jに支持するエッジ4Jと、振動板21Jの内周部に接合されたボイスコイルボビン610Jと、ボイスコイルボビン610Jをフレーム3Jに支持するダンパ7Jと、ボイスコイルボビン610Jに巻き回されたボイスコイル611Jと、ヨーク51J,磁石52J,プレート53Jを備えると共に、ボイスコイル611Jが配置される磁気ギャップが形成された磁気回路とを有する。このスピーカ装置では、音声信号がボイスコイル611Jに入力されると、磁気ギャップ内のボイスコイル611Jに生じたローレンツ力によりボイスコイルボビン610Jが振動し、その振動によって振動板21Jが駆動される。
特開平8−149596号公報(第1図)
前述した一般的なダイナミック型スピーカ装置は、例えば図1に示すように、振動板21Jの音響放射側に対して反対側にボイスコイル611Jが配設され、ボイスコイル611J及びボイスコイルボビン610Jの振動方向と振動板21Jの振動方向が同じ方向になるように構成されている。そして、このようなスピーカ装置では、振動板21Jが振動するための領域、ボイスコイルボビン610Jが振動するための領域、磁気回路が配置される領域等が振動板21Jの振動方向(音響放射方向)に沿って形成されることになるので、スピーカ装置の全高が比較的大きく成らざるを得ない構造になっている。
詳細には、図1に示すように、スピーカ装置の振動板21Jの振動方向に沿った大きさは、コーン形状の振動板21Jの振動方向に沿った大きさ及び振動板21Jをフレーム3Jに支持するエッジ4Jの全高(a)、振動板21Jとボイスコイルボビン610Jとの接合部からボイスコイル611Jの上端までのボイスコイルボビン高さ(b)、ボイスコイルの全高(c)、ボイスコイル611Jの下端部からヨーク51Jの上面までの高さに相当する、磁気回路の主に磁石高さ(d)、磁気回路の主にヨーク51Jの厚さ(e)等からなる。このようなスピーカ装置においては、充分な振動板21Jの振動ストロークを確保するためには、前述したa,b,c,dの高さを充分に確保する必要があり、また充分な電磁気力を得るためには前述したc,d,eの高さを充分に確保する必要があるので、特に、大音量対応型スピーカ装置では、スピーカ装置の全高が大きく成らざるを得ない。
このように、従来のスピーカ装置では、ボイスコイルボビン610Jの振動方向と振動板21Jの振動方向とが同方向になっているので、振動板21Jの振幅を大きくして大音量を得ようとすると、ボイスコイルボビン610Jの振動ストロークを確保するためにスピーカ装置の全高が大きくなってしまい、装置の薄型化を達成し難い。すなわち、装置の薄型化と大音量化を両立し難い問題がある。
また、従来のスピーカ装置は、スピーカユニットをキャビネット内に配置する場合に、スピーカユニットの背面側空間の容積を充分に確保しようとすると、スピーカユニットの全高の大きさによってスピーカユニットの背面側にキャビネットの奥行きを大きく取らざるを得ない。これによってキャビネットを含めたスピーカ装置全体が大型化して、スピーカ装置の設置スペースに制約が生じやすい問題があった。特に、車載用スピーカ等ではスピーカ装置が設置できるスペースが限られており、充分な容積を有するキャビネット内にスピーカユニットを配置できない問題があった。
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、大音量の再生音を放射することができる薄型のスピーカ装置を提供すること、ボイスコイルの振動を方向変換して効率よく振動板に伝えることができること、キャビネットを含めたスピーカ装置全体の薄型化を可能にし、しかもキャビネット内の容積を充分に確保することで良好なスピーカユニットの音響性能を得ることができること、等が本発明の目的である。
このような目的を達成するために、本発明によるスピーカ装置は、以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
[請求項1]スピーカユニットと、当該スピーカユニットを取り付けるキャビネットとを備え、前記スピーカユニットは、振動板と、該振動板を振動方向に沿って振動自在に支持する静止部と、該静止部に設けられ、音声信号によって前記振動板に振動を与える駆動部とを備え、前記駆動部は、磁気ギャップを形成する磁気回路と、音声信号が入力され、前記振動板の振動方向とは異なる方向に沿って振動するボイスコイルと、前記ボイスコイルの振動を方向変換して前記振動板に伝える剛性の振動方向変換部とを備え、前記振動方向変換部は、一端部が前記ボイスコイルに角度変更自在に直接又は他の部材を介して連結されるとともに、他端部が前記振動板に角度変更自在に直接又は他の部材を介して連結され、前記振動板の振動方向および前記ボイスコイルの振動方向それぞれに対して斜設されて配置されており、前記キャビネットは、前記スピーカユニットとの間に、規定の空間を形成することを特徴とするスピーカ装置。
[請求項2]スピーカユニットと、当該スピーカユニットを取り付けるキャビネットとを備え、前記スピーカユニットは、振動板と、前記振動板を振動方向に沿って振動自在に支持する静止部と、該静止部に設けられ、音声信号によって前記振動板に振動を与える駆動部とを備え、前記駆動部は、前記振動板の振動方向とは異なる方向に沿って磁気ギャップを形成する磁気回路と、前記磁気ギャップに沿って振動するボイスコイルと、前記ボイスコイルの振動を方向変換して前記振動板に伝える振動方向変換部とを備え、前記振動方向変換部は、前記ボイスコイルと前記振動板との間に形成されたリンク部分を角度変換させるリンク機構を備え、前記キャビネットは、前記スピーカユニットとの間に、規定の空間を形成することを特徴とするスピーカ装置。
従来技術の説明図である。 本発明の実施形態におけるスピーカユニットの基本構成を示した説明図である(同図(a)がX軸方向に沿った断面図、同図(b)が駆動部の動作を示した説明図)。 振動方向変換部の構成例と動作を説明する説明図である。 振動方向変換部の構成例と動作を説明する説明図である。 振動方向変換部の形成例を示す説明図である(図5(a)は側面図、図5(b)は斜視図、図5(c)はA部拡大図)。 振動方向変換部の形成例を示す説明図である。 振動方向変換部を採用したスピーカ装置を示した説明図である(同図(a)がX軸方向に沿った断面図、同図(b)が駆動部の動作を示した説明図)。 振動方向変換部を採用したスピーカ装置を示した説明図である(同図(a)がX軸方向に沿った断面図、同図(b)が駆動部の動作を示した説明図)。 具体的な振動方向変換部を示す説明図である。 具体的な振動方向変換部を示す説明図である。 振動方向変換部の他の例を示す説明図である。 振動方向変換部の他の例を示す説明図である。 振動方向変換部の他の例を示す説明図である。 振動方向変換部の他の例を示す説明図である。 本発明の実施形態におけるスピーカユニットの給電構造を説明する説明図である。 本発明の実施形態におけるスピーカユニットの給電構造を説明する説明図である。 本発明の実施形態におけるスピーカユニットの給電構造を説明する説明図である。 本発明の実施形態におけるスピーカユニットの給電構造を説明する説明図である。 本発明の実施形態におけるスピーカユニットの給電構造を説明する説明図である。 本発明の実施形態におけるスピーカユニットの給電構造を説明する説明図である。 本発明の実施形態におけるスピーカユニットのボイスコイルの取付構造を説明する説明図である。 本発明の実施形態におけるスピーカユニットの給電構造を説明する説明図である。 本発明の実施形態のスピーカ装置に適用されるキャビネットの構成例を示した説明図である。 本発明の実施形態のスピーカ装置に適用されるキャビネットの構成例及びスピーカ装置におけるキャビネット内のスピーカユニット配置の形態例を示した説明図である。 本発明の実施形態のスピーカ装置におけるキャビネット内のスピーカユニット配置の形態例を示した説明図である。 本発明の実施形態のスピーカ装置におけるキャビネット内のスピーカユニット配置の形態例を示した説明図である。 本発明の実施形態のスピーカ装置におけるキャビネットを含むスピーカ装置1の形態例を示している。 本発明の実施例に係るスピーカ装置の全体構成を示す説明図である。 本発明の実施例に係るスピーカ装置の変形例を示す説明図である。 本発明の実施例に用いられる中高域再生用のスピーカユニットの一例を示した説明図(断面図)である。 本発明の実施例に係るスピーカ装置の指向特性を示す図である。 本発明の実施例に係るスピーカ装置の音響特性を示す図である。 本発明の実施例に係るスピーカ装置(バッフル板を備える場合と備えない場合)の音響特性を示す図である。 本発明の他の実施例に係るスピーカ装置(又はスピーカユニット)を示す説明図(全体断面図)である。 本発明の他の実施例に係るスピーカ装置(又はスピーカユニット)を示す説明図(全体平面斜視図)である。 本発明の他の実施例に係るスピーカ装置(又はスピーカユニット)を示す説明図(内部構造説明図)である。 本発明の他の実施形態に係るスピーカ装置(又はスピーカユニット)を示す説明図(全体断面図)である。 本発明の他の実施形態に係るスピーカ装置を示した説明図(全体断面図)である。 本発明の他の実施形態に係るスピーカ装置を示した説明図(部分断面図)である。 本発明の他の実施形態に係るスピーカ装置を示した説明図(中高域再生用スピーカユニット(ツイータ)の構成例を示す断面図)である。 本発明の他の実施形態に係るスピーカ装置を示した説明図(付属部品取付図)である。 本発明の他の実施形態に係るスピーカ装置を示した説明図(外観図)である。 本発明の実施形態に係るスピーカ装置の搭載例を示した説明図である。 本発明の実施形態に係るスピーカ装置の搭載例を示した説明図である。 本発明の実施形態に係るスピーカ装置の搭載例を示した説明図である。 本発明の実施形態に係るスピーカ装置の搭載例を示した説明図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態は図示の内容を含むがこれのみに限定されるものではない。なお、以後の各図の説明で、既に説明した部位と共通する部分は同一符号を付して重複説明を一部省略する。
[スピーカ装置全体構造]
本発明の実施形態に係るスピーカ装置は、スピーカユニットと、スピーカユニットに取り付けられるキャビネットを備えている。そして、キャビネットは、スピーカユニットとの間に規定された空間を形成している。
スピーカユニットは、詳細は後述するが、振動板と、該振動板を振動方向に沿って振動自在に支持する静止部と、該静止部に設けられ、音声信号によって前記振動板に振動を与える駆動部とを備え、前記駆動部は、磁気ギャップを形成する磁気回路と、音声信号が入力され、前記振動板の振動方向とは異なる方向に沿って振動するボイスコイルと、前記ボイスコイルの振動を方向変換して前記振動板に伝える剛性の振動方向変換部とを備え、前記振動方向変換部は、一端部が前記ボイスコイルに角度変更自在に直接又は他の部材を介して連結されるとともに、他端部が前記振動板に角度変更自在に直接又は他の部材を介して連結され、前記振動板の振動方向および前記ボイスコイルの振動方向それぞれに対して斜設されて配置されている。
また、スピーカユニットは、振動板と、前記振動板を振動方向に沿って振動自在に支持する静止部と、該静止部に設けられ、音声信号によって前記振動板に振動を与える駆動部とを備え、前記駆動部は、前記振動板の振動方向とは異なる方向に沿って磁気ギャップを形成する磁気回路と、前記磁気ギャップに沿って振動するボイスコイルと、前記ボイスコイルの振動を方向変換して前記振動板に伝える振動方向変換部とを備え、前記振動方向変換部は、前記ボイスコイルと前記振動板との間に形成されたリンク部分を角度変換させるリンク機構を備えている。
このような構成を有するスピーカ装置によると、スピーカユニットは、ボイスコイルの振動を振動方向変換部で方向変換して振動板に伝えるので、ボイスコイルの振幅を大きくすることが直接スピーカユニットの音響放射方向における厚さに影響しない。したがって、スピーカユニットの大音量化を実現しながら、薄型化を実現することが可能になる。そして、このようなスピーカユニットが配備されるキャビネットは、スピーカユニットを薄型に形成できるため、キャビネットの奥行きを浅くしたキャビネットにスピーカユニットを収容する場合でもスピーカユニットとの間の空間は容積を大きくすることが可能になる。これによって、キャビネットを含めたスピーカ装置全体の薄型化が可能になり、スピーカ装置の設置スペース確保の問題が改善でき、しかも、キャビネット内のスピーカユニットの背面側空間を充分な容積にすることで、スピーカユニットは良好な音響性能を発揮することができる。キャビネット内空間の容積が小さいと、スピーカユニットの駆動時にキャビネット内の空気が圧縮・膨張を繰り返し受けて空気にバネ性が生じ、振動板の振動を妨げて音響性能が低下することになるが、本発明の実施形態では、奥行きの少ないキャビネットであっても、充分なキャビネット内の容積を確保できることで、このような音響性能の低下を抑止することができる。
[スピーカユニット]
(基本構成)
図2は本発明の実施形態におけるスピーカユニットの基本構成を示した説明図である(同図(a)がX軸方向に沿った断面図、同図(b)が駆動部の動作を示した説明図)。スピーカユニット1Uは、振動板10と、振動板10を振動方向に沿って振動自在に支持する静止部100と、静止部100に設けられ、音声信号によって振動板10に振動を与える駆動部14とを備え、駆動部14は、磁気ギャップ20Gを形成する磁気回路20と、音声信号が入力され、振動板10の振動方向とは異なる方向に振動するボイスコイル30と、ボイスコイル30の振動を方向変換して振動板10に伝える振動方向変換部50とを備えている。図示においては、ボイスコイル30はボイスコイル支持部40に支持されているが、ボイスコイル30自体が振動方向変換部50と連結されるものであってもよい。ここでは、ボイスコイル30の振動方向をX軸方向とし、それと直交する2方向をそれぞれY軸方向とZ軸方向としている。
振動板10は、平面視が略矩形状であるか、又は円形状や楕円形状、或いはその他の形状のものであってもよい。また、振動板10の断面形状は、例えば、平板形状、ドーム形状、コーン形状などの規定形状に形成することができる。図示の例は、振動板10の断面形状が平面であるが、湾曲形状でも構わない。また、必要に応じて、振動板10の全高を比較的小さくし、スピーカユニット1Uの薄型化を図っても構わない。
静止部100は、振動板10及び駆動部14等の振動を支持する部位の総称であって、ここでは、フレーム12、フレーム12の機能を兼ねた後述するヨーク部、取付ユニット等が静止部100にあたる。静止部100は、それ自体が完全に静止していることを意図するわけではなく、それ全体が駆動部14の振動の影響を受けて、或いは他の力を受けて、振動するものであってもよい。振動板10の外周部はエッジ11を介して静止部100であるフレーム12に支持されている。
駆動部14は、磁気回路20、ボイスコイル30(駆動部材)、振動方向変換部50を備えており、ボイスコイル30が磁気回路20の磁気ギャップ20Gに沿って一軸方向に振動し、その振動を振動方向変換部50が方向変換して振動板10に伝える。図示の例では、X軸方向に沿ってボイスコイル30が振動し、それと直交するZ軸方向に振動板10が振動可能に配置されており、振動方向変換部50は、ボイスコイル30のX軸方向の振動を自身の変化する斜設角度に変換して、振動板10をZ軸方向に振動させている。
磁気回路20は、複数の磁気ギャップ20Gをボイスコイル30の振動方向(例えばX軸方向)に沿って並べるように、磁石21(21A,21B)と磁極部材(ヨーク部)22(22A,22B)を備えている。ここでは、一対の磁気ギャップ20Gの磁場方向が互いに逆方向(±Z軸方向)になるように磁石21(21A,21B)の磁極方向が設定されており、互いに逆方向に磁場を有する磁気ギャップ20Gに対して互いに逆方向(±Y軸方向)の電流が流れるように導電部材が巻き回されたボイスコイル30を配置することによって、ボイスコイル30に磁気ギャップ20Gに沿った方向(±X軸方向)の駆動力(ローレンツ力,電磁気力)を生じさせている。磁石21と磁極部材(ヨーク部)22の配置関係は図示の例に限らない。ボイスコイル支持部40を例えば平板状の絶縁部材で形成することで、ボイスコイル30全体に剛性(曲げ剛性、捩れ剛性も含む)を付加させることができる。
また、ボイスコイル支持部40としての平板状の絶縁部材には、導線の外側に複数の導電層が形成されている。この導電層43(図17参照)は、導線の始点及び終点から引き出される引出線31(図17参照)と電気的に接続される。この引出線31は、例えば、後述する導電部材の一部で構成される。また、後述する保持部15を介して外部と電気的に接続されており、外部からの音声信号をボイスコイル30に入力する中継線として機能している。また、例えば、ボイスコイルに対して遊離する導線を中継線としてスピーカユニット内で引き回す場合には、配線を引き回すスペースを別途必要とする。しかし、中継線としての導電層43(図17参照)をボイスコイル支持部40の表面に形成することで、中継線のためのスペースを確保する必要がなくなり、スピーカユニットを薄型化することができる。図示の例では、ボイスコイル30及びボイスコイル支持部40は平板状に形成されているが、これに限定されず、筒形状に形成しても構わない。また、ボイスコイル30又はボイスコイル30を支持するボイスコイル支持部40が筒形状である場合には、振動方向変換部50側の端部に、振動方向変換部が角度変更自在に連結することを可能にする、平板状の蓋部を取り付けても構わない。
ボイスコイル30は、音声信号が入力される導線(導電部材)を巻き回して形成され、それ自身が静止部100に振動自在に配置されるか、或いはボイスコイル支持部40を介して静止部100に振動自在に配置される。ボイスコイル支持部40は、例えば平板状の絶縁部材で形成することができ、その表面上又は内部にボイスコイル30が支持される。
ボイスコイル支持部40を例えば平板状の絶縁部材で形成することで、ボイスコイル30全体に剛性(曲げ剛性、捩れ剛性も含む)を付加させることができる。
このボイスコイル30は、図示省略の保持部によって静止部100に保持されている。保持部は、ボイスコイル30又はボイスコイル支持部40を静止部100に対し振動方向(例えばX軸方向)に沿って振動自在に保持するとともに、それ以外の方向へは移動しないように規制する構成を有する。例えば、保持部は、ボイスコイル30の振動方向(例えば、X軸方向)に沿って変形可能であり、この振動方向に交差する方向には剛性を有する湾曲板部材によって形成することができる。また、ボイスコイル30は、ボイスコイル30の振動方向における長さに対し、ボイスコイル30の振動方向に対し直交する方向におけるボイスコイルの長さを比較的大きくすることで、スピーカ駆動時に比較的大きな駆動力を得ることができる。
また、駆動部材としてのボイスコイル30限定されず、圧電素子や磁歪型素子であっても構わない。2009年7年29日に国際出願したPCT/JP2009/063527に記載される記載される全ての内容は、本出願に組み込まれる。
振動方向変換部50は、一端部がボイスコイル30に角度変更自在に直接又は他の部材を介して連結されるとともに、他端部が振動板10に角度変更自在に直接又は他の部材を介して連結され、振動板10の振動方向およびボイスコイル30の振動方向それぞれに対して斜設されて配置されている。すなわち、振動方向変換部50は、ボイスコイル30又はボイスコイル支持部40と振動板10との間で角度変更自在に斜設される剛性のリンク部分51と、リンク部分51の両端に形成され、振動方向変換部50の角度変化の支点となる関節部分52とを備えている。振動方向変換部50の連結部分53は、振動板10又はボイスコイル30、若しくは振動板10やボイスコイル30以外の他の部材を含む被取付部材200に対し、例えば接合部材としての接着剤や両面テープ、締結部材としてのネジ等の連結部材で連結されており、被取付部材200に近接するように関節部分52を配置している。図示の例では、振動方向変換部50の一端の連結部分53(53A)が、ボイスコイル30又はボイスコイル支持部40と連結部60を介して連結されるが、連結部60を介することなく直接連結してもよい。連結部60は、振動方向変換部50におけるボイスコイル側の端部と、ボイスコイル30又はボイスコイル支持部40の振動方向変換部側の端部との間に形成され、両端部を振動方向に沿って間隔を開けて連結させるものである。また、連結部60は、磁気回路20の厚さを吸収し、スピーカユニットの薄型化を図っている。
さらに、振動方向変換部50の関節部分52に近接する被取付部材200の面側には、関節部分52との接触を避ける接触回避部70が形成されている。この接触回避部70は、振動方向変換部50と被取付部材200とを接合する接合部材を収容して拘束する接合部材収容部(拘束部)としても機能する。この接触回避部70は、関節部分52に沿って凹状に形成される、例えば凹部や切欠部や溝部等であり、関節部分52と、関節部分52の近傍に配置される被取付部材200の表面との間に所定の空間を形成して、振動方向変換部50と被取付部材200との間に介在する接着部材が関節部分52に拘わるのを抑止している。図示の例では、被取付部材200となる連結部60に接触回避部70として切欠部71を関節部分52(52A)に近接するように形成し、振動板10に接触回避部70として凹部72を関節部分52(52B)に近接するように形成している。それによって、振動方向変換部50の連結部分53と、連結部60又は振動板10の端面とが接着剤や両面テープ等の接合部材で貼り合わされる際、関節部分52に向けてはみ出た接着剤や両面テープの端部が、切欠部71又は凹部72に入り込むことで、関節部分52に接触して付着することないようにしている。
このようなスピーカユニット1Uは、同図(a)に示すように、駆動部14のボイスコイル30に、電気信号として音声信号SSを入力することで、同図(b)に示すように、磁気回路20の磁気ギャップ20Gに沿ってボイスコイル30又はボイスコイル支持部40が例えば図示のX軸方向に振動する。これにより、この振動が振動方向変換部50によって方向変換されて振動板10に伝達されることになって、振動板10を例えば図示のZ軸方向に振動させて音響放射方向SDに音声信号に応じた音が放射される。
このようなスピーカユニット1Uによると、振動方向変換部50によって、ボイスコイル30の振動方向と振動板10の振動方向を異なる方向にしているので、振動板10の振動方向に沿ってボイスコイル30を振動させる場合と比較して、振動板10の背面側を薄型化することが可能になる。これによって、低音域を高音圧で再生できる薄型のスピーカ装置を得ることができる。
さらに、ボイスコイル30の振動を振動方向変換部50によって方向変換して振動板10に伝えるので、ボイスコイル30の振幅を大きくすることで、振動板10の振幅を大きくしても、スピーカユニット1Uの音響放射方向の厚さ(スピーカユニットの全高)は大きくならない。これによって、大音量の再生音を放射することができる薄型のスピーカユニットを得ることができる。
また、振動方向変換部50の連結部分53と被取付部材200を接合部材として接着剤を使用して連結する場合には、その接合に伴い接着剤が拡散伸展して関節部分52に向けはみ出し、関節部分52に接着剤が付着すると、関節部分52が硬化して可動しなくなる可能性がある。また接合部材として両面テープを使用した際にも、この両面テープの端部が関節部分52に向けはみ出して、関節部分52に両面テープが付着すると、関節部分52が硬化して可動しなくなる可能性がある。さらに、接着剤や両面テープの端部等が付着して硬化した関節部分52は、繰り返して屈曲又は屈折或いは回転運動することで、破断するおそれがある。このように関節部分52が破断すると、接着剤や両面テープの端部等が付着した個所は振動板10やボイスコイル30或いはその他の部材等の被取付部材200に接触したり離れたりすることを繰り返し、その度に異音(当たり音)が発生してしまう。一方、接着剤や両面テープの端部等がはみ出して関節部分52に付着しないように、接着剤の塗布量や両面テープによる接合面積を少なくすると、振動方向変換部50と被取付部材200との連結力が低下し、端面から剥がれ等が生じて異音の元になったり、さらには完全に剥がれてしまいスピーカの破壊につながるという問題がある。さらに、関節部分52が被取付部材200の近傍に配置されているので、関節部分52が被取付部材200に接触して、関節部分52が損傷したり、或いは振動方向変換部50が被取付部材200に対し屈曲又は屈折或いは回転運動ができなくなる場合がある。しかし、このスピーカユニット1Uでは、関節部分52に近接する被取付部材200の面側に接触回避部70を形成しているので、関節部材52との接触を抑止すると共に、接触による異音発生などを抑止できる。また、振動方向変換部50の連結部分53と被取付部材200とを連結するために使用した接着剤や両面テープ等の接合部材がはみ出しても、接合部材拘束部としても機能を有する接触回避部70に入り込んで関節部分52に付着して、関節部分52の可動を妨げることを抑止できる。これによって、振動方向変換部50と被取付部材200との連結力を高く保ちながら関節部分52の機能を維持することができる。被取付部材200に対し振動方向変換部50が確実に屈曲又は屈折或いは回転運動するので、破断による関節部分52の被取付部材200への接触や異音の発生等を抑止することができる。
(振動方向変換部)
図3及び図4は、振動方向変換部50の構成例と動作を説明する説明図である。ボイスコイル30の振動を方向変換して振動板10に伝える剛性の振動方向変換部50は、振動板10側とボイスコイル30側のそれぞれに関節部分52を形成してボイスコイル30の振動方向に対して斜設されたリンク部分51を有する。ここで、関節部分52とは、2つの剛性を有する部材を回転自在に接合する部分、又は一体化された剛性を有する2つの部分を屈折又は屈曲自在にする部分であり、リンク部分51とは、関節部分52が端部に形成された剛性を有する部分である。ここで、剛性とはボイスコイル30の振動を振動板10に伝達できる程度に変形しないことを指し、全く変形しないことのみを指しているわけではない。リンク部分51は、板状又は棒状に形成することができる。
図3に示した形態例では、一つのリンク部分51を備え、その両端に関節部分52(52A,52B)が形成され、一方の関節部分52Aがボイスコイル30又はボイスコイル支持部40の端部に形成され、他方の関節部分52Bが振動板10側に形成されている。他方の関節部分52Bは、振動板10に接続されていてもよいし、振動板10に他の部材を介して接続されていてもよい。他の部材としては公知の部材を用いることができ、例えば関節部分52と振動板10との接合強度が向上する金属部材などを選択しても構わない(図3においては振動板10は図示省略している)。
同図(a)は、リンク部分51が振動の中間位置にある場合を示している。リンク部分51は、ボイスコイル30(又はボイスコイル支持部40)と振動板10との間に角度θ0で斜設されている。このとき、ボイスコイル30から振動板10の振動方向に沿って距離H0だけ離れた位置Z0に振動板10側の関節部分52Bが配置されている。ボイスコイル30(又はボイスコイル支持部40)は、一軸方向(例えば、X軸方向)に振動するように振動方向が規制されており、振動板10は、ボイスコイル30の振動方向とは異なる方向(例えばZ軸方向)に振動するように、その振動方向が規制されている。
同図(b)に示すように、ボイスコイル30の端部に形成された関節部分52Aが当初の位置X0から振動方向(X軸方向)にΔX1だけ移動して位置X1に達すると、リンク部分51の傾斜角度がθ1(θ0>θ1)に変換されて、振動板10側の関節部分52Bの位置が振動板10の振動方向(Z軸方向)にΔZ1だけ移動して位置Z1に達する。すなわち、振動板10をΔZ1だけ振動方向に沿って押し上げる。
同図(c)に示すように、ボイスコイル30の端部に形成された関節部分52Aが当初の位置X0から振動方向(−X軸方向)にΔX2だけ移動して位置X2に達すると、リンク部分51の傾斜角度がθ2(θ0<θ2)に変換されて、振動板10側の関節部分52Bの位置が振動板10の振動方向(−Z軸方向)にΔZ2だけ移動して位置Z2に達する。すなわち、振動板10をΔZ2だけ振動方向に沿って押し下げる。
このようにリンク部分51及び関節部分52(52A,52B)からなる振動方向変換部50の機能は、ボイスコイル30の振動をリンク部分51の変化する斜設角度に変換して振動板10に伝え、振動板10をボイスコイル30の振動方向とは異なる方向に振動させることである。
図4は、振動方向変換部50の他の構成例及びその動作を説明するための説明図である。詳細には、同図(b)は振動板10が基準位置に位置した状態の振動方向変換部50の状態、同図(a)は振動板10が基準位置に対して音響放射側に変位している状態の振動方向変換部50の状態、同図(c)は振動板10が基準位置に対して音響放射側に対して反対方向に変位している状態の振動方向変換部50の状態を示している(振動板10は図示省略している)。
この振動方向変換部50は、リンク部分51が振動板側とは逆側に位置するフレーム12等の静止部100からの反力を受けて角度変換する機能を有する。詳しくは、振動方向変換部50は、一端をボイスコイル30側の関節部分52Aとし、他端を振動板10側の関節部分52Bとする第1のリンク部分51Aと、一端を第1のリンク部分51の中間部との関節部分52Cとし、他端を静止部100との関節部分52Dとする第2のリンク部分51Bとを有し、第1のリンク部分51Aと第2のリンク部分51Bをボイスコイル30の振動方向に対して異なる方向に傾斜配置している。更に詳しくは、振動方向変換部50は、一端をボイスコイル30側の第1の関節部分52Aとし、他端を振動板10側の第2の関節部分52Bとする第1のリンク部分51Aと、一端を第1のリンク部分51Aの中間部との第3の関節部分52Cとし、他端を静止部100との第4の関節部分52Dとする第2のリンク部分51Bとを有し、第1の関節部分52Aと、第2の関節部分52Bと、第4の関節部分52Dとが、第3の関節部分52Cを中心とする第1のリンク部分51Aの長さにほぼ等しい直径の円周上にある。
この振動方向変換部50では、関節部分52Dが唯一位置変動しない関節部であり、これが静止部100(或いはフレーム12)に対して支持され、静止部100からの反力をリンク部分51に付与している。これによって、ボイスコイル30(或いはボイスコイル支持部40)が基準位置X0からX軸方向にΔX1だけ移動すると、図4(a)に示すように、異なる方向に傾斜配置している第1のリンク部分51Aと第2のリンク部分51Bの角度がほぼ同角度立ち上がることになり、関節部分52Dで静止部100からの反力を受けて関節部分52Bは確実に振動板10を基準位置Z0からZ軸方向にΔZ1だけ押し上げる。また、ボイスコイル30が基準位置X0からX軸と逆方向にΔX2だけ移動すると、図4(c)に示すように、第1のリンク部分51Aと第2のリンク部分51Bの角度がほぼ同角度下がることになり、関節部分52Dで静止部100からの反力を受けて関節部分52Bは確実に振動板10を基準位置Z0からZ軸とは逆方向にΔZ2だけ押し下げる。
ここで、関節部分52Aから関節部分52Cまでのリンク部分の長さaと関節部分52Cから関節部分52Bまでのリンク部分の長さbと関節部分52Cから関節部分52Dまでのリンク部分の長さcを実質的に等しくして、ボイスコイル30の移動方向と略平行に関節部分52Aと関節部分52Dを配置していることが好ましい。このようなリンク機構はスコットラッセルの機構として知られており、関節部分52A,52B,52Dは関節部分52Cを中心として直径が第1のリンク部分51Aの長さ(a+b=2a)の円周上にある。すなわち、関節部分52Aと関節部分52Dを通る直線と、関節部分52Bと関節部分52Dを通る直線とがなす角は直角になる。これによって、ボイスコイル30をX軸方向に移動させると、第1のリンク部分51Aと振動板10との関節部分52BはX軸と垂直なZ軸に沿って移動することになり、ボイスコイル30の振動方向をそれとは垂直方向に変換して振動板10に伝えることができる。
図5及び図6は、振動方向変換部50の形成例を示す説明図である(図5(a)は側面図、図5(b)は斜視図、図5(c)はA部拡大図)。振動方向変換部50は、前述したようにリンク部分51とその両端に形成される関節部分52(52A,52B)を備える。図示の例では、リンク部分51の両端側には関節部分52を介して連結部分53(第1の連結部分53A,第2の連結部分53B)が形成されている。ここで、第1の連結部分53Aはボイスコイル30又はボイスコイル支持部40に対し直接又は他の部材を介して連結されてボイスコイル30と一体に振動する部分であり、第2の連結部分53Bは振動板10に直接又は他の部材を介して連結されて振動板10と一体に振動する部分である。
この振動方向変換部50は、リンク部分51と関節部分52A,52Bと第1,第2の連結部分53A,53Bが一体に形成されており、関節部分52A,52Bは、関節部分52A,52Bを跨いだ両側の部分で連続する屈折自在な連続部材で形成されている。ここでの連続部材は、リンク部分51と第1,第2の連結部分53A,53Bの全体を形成する部材であっても良いし、リンク部分51と第1,第2の連結部分53A,53Bの一部を形成する部材であってもよい。このような第2の連結部分53Bを設けて、リンク部分51が広範囲で振動板10を支持するようにすることで、振動板10を同位相で振動させることができる。ここでいう屈折とは、概念上屈曲も含む。
振動方向変換部50を板状部材で形成した場合には、関節部分52は図5(b)に示すように幅方向に延びる線状に形成されることになる。また、リンク部分51は変形しない剛性であることが要求され、関節部分52は屈折自在であることが要求されるので、リンク部分51或いは連結部分53の厚さt1に対して関節部分52の厚さt2を薄肉状に形成することで、一体の部材に異なる性質を持たせている。
また、関節部分52とリンク部分51との厚さの変化を傾斜面状に形成し、関節部分52を跨いだ両側の部分の端部に面が対面する傾斜面51t,53tを形成する。これによって、リンク部分51が角度変更される際にリンク部分51の厚みが角度変更に対して干渉するのを抑止することができる。
さらに、関節部分52Aに近接して配置される被取付部材200となる連結部60の端部には、接触回避部70として凹部又は切欠部71、図5(a)に示した例では断面形状が傾斜状の切欠部を形成することで、関節部分52Aと連結部60との間に空間が形成されるようにしている。また、関節部分52Bに近接して配置される被取付部材200の振動板10には、接触回避部70として凹部又は切欠部72、図示の例では断面形状が湾曲状の凹部を形成することで、関節部分52Bと振動板10との間に空間が形成されるようにしている。これによって、関節部分52A,52Bと被取付部材200との接触を抑止できる。また、リンク部分51の第1の連結部分53Aと連結部60の端面及び第2の連結部分53Bと振動板10をそれぞれ接合部材としての接着剤で貼り合わせる場合に、接着剤が関節部分52A,52Bに向けはみ出したとしても、凹部又は切欠部71,72に入り込むので、関節部分52A,52Bに付着せず、付着するとしても関節でない部分(屈折又は屈曲しない剛性を有する部分)だけであるため、関節部分52A,52Bの屈折動作又は屈曲動作の妨げを抑止することができる。
図6に示した例は、屈折自在の連続部材に剛性の部材を一体化してリンク部分或いは連結部分を形成しており、関節部分を連続部材で構成される部分としている。同図(a)に示す例では、屈折自在なシート状部材である連続部材50Pの表面に剛性部材50Qを貼り付けて、リンク部分51或いは連結部分53を形成している。これによると、連続部材50Pは関節部分52を跨いだ両側の部分で連続的に延在しており、関節部分52は実質的に連続部材50Pのみで屈折自在に形成されている。一方、連続部材50Pに剛性部材50Qが貼り付けられたリンク部分51或いは連結部分53は剛性を有する部分に形成されることになる。
同図(b)に示す例では、連続部材50Pを挟持するように剛性部材50Qを貼り付けてリンク部分51或いは連結部分53を形成している。ここでも剛性部材50Qが貼り付けられていない部分が関節部分52になる。同図(c)に示す例では、リンク部分51を形成する剛性部材が剛性部材50Q1,50Q2を積層して多層に形成されている。さらに、同図(c)において、剛性部材50Q1又は剛性部材50Q2を多層構造にしても構わない。このように屈折自在な連続部材50Pに剛性部材50Qを部分的に貼り付けることで、屈折自在な関節部分52と剛性を有するリンク部分51,連結部分53を一体に形成することができる。
連続部材50Pは、スピーカユニットの駆動時に繰り返される関節部分52の屈折に耐え得るだけの強度と耐久性を有し、屈折動作の繰り返し時に音を発しない程度に柔軟性を有するものが好ましい。具体例としては、連続部材50Pは高強度繊維の織物又は不織物によって形成することができる。織物の例としては、均一素材の平織り、縦糸と横糸が異なる材質の平織り、1本交互に糸材質を変えた平織り、交撚糸による平織り、引き揃えの平織り等にすることができ、平織り以外には、三軸,四軸織り、三軸,四軸組布、編み物、一方向引き揃えの繊維等にすることができる。
高強度繊維を全部又は一部に用いる場合には、高強度繊維をボイスコイル支持部40の振動方向に沿って配置することで、ボイスコイル30又はボイスコイル支持部40の振動に対して十分な強度を得ることができる。縦糸と横糸を共に高強度繊維にした場合には、繊維方向をボイスコイル支持部40の振動方向に対して共に約45°傾斜させることで、縦糸と横糸に均等な張力がかかり耐久性を向上させることができる。高強度繊維としては、アラミド繊維,カーボン繊維,ガラス繊維等を用いることができる。また、連続部材の曲げ応力や剛性等の物性を調整するために、ダンプ剤(ダンピング剤、制動材)を塗布(付与)しても構わない。
剛性部材50Qとしては、軽量で成形し易く硬化後に剛性を有するものがよく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属、紙等を用いることができる。剛性部材50Qは板状に成形後、連続部材50Pの関節部分52を除く部分の表面に接合剤としての接着剤で貼り付けることによって、振動方向変換部50を形成することができる。また、剛性部材50Qとして熱硬化性樹脂を用いる場合には、繊維質の連続部材50Pにおけるリンク部分51や連結部分53に部分的に樹脂を含浸させた後硬化させて振動方向変換部50を形成することができる。また、剛性部材50Qとして樹脂や金属を用いる場合には、インサート成形によってリンク部分51と連結部分53において連続部材50Pと剛性部材50Qを一体化することができる。
なお、前述の一体形成に関する技術は、2005年5月12日に米国出願されたUS20050127233(公開番号:US2005/253298)、2005年5月13日に米国出願されたUS20050128232(公開番号:US2005/253299)に記載されており、本願は前記の公報に記載される内容を援用する。
図7及び図8は、前述した振動方向変換部を採用したスピーカユニットを示した説明図である(図7(a)及び図8(a)がX軸方向に沿った断面図、同図(b)が駆動部の動作を示した説明図)。前述の説明と共通する箇所は同一符号を付して重複説明を一部説明する。図7及び図8に示したスピーカユニット1U(1A,1B)では、ボイスコイル支持部40に連結されてボイスコイル支持部40と一体に振動する第1の連結部分53Aと、振動板10に連結されて振動板10と一体に振動する第2の連結部分53Bとを備えると共に、リンク部分を複数備えたリンク機構50Lが形成されている。
図7に示したスピーカユニット1U(1A)では、振動方向変換部50は剛性の第1のリンク部分51Aと第2のリンク部分51Bを備えたリンク機構50Lによって形成されている。第1のリンク部分51Aは、一端側に関節部分52Aを介して第1の連結部分53Aが形成され、他端側に関節部分52Bを介して第2の連結部分53Bが形成されており、第2のリンク部分51Bは、一端側に関節部分52Cを介して第1のリンク部分51Aの中間部が形成され、他端側に関節部分52Dを介してボイスコイル支持部40の振動に対して不動の連結部分53Cが形成されている。
そして、図示の例では、第1の連結部分53Aは連結部60を介して又は直接ボイスコイル支持部40の端部に連結されており、第2の連結部材53Bは直接振動板10に連結されており、不動の連結部分53Cは静止部100となるフレーム12の底部12Aに連結されている。関節部分52Dに近接して配置される被取付部材200のフレーム12の底部12Aには、接触回避部70として凹部又は切欠部73、図示の例では切欠部を形成することで、関節部分52Dとフレーム12の底部12Aとの間に空間が形成されるようにしている。第1のリンク部分51Aと第2のリンク部分51Bはボイスコイル支持部40の振動方向(X軸方向)に対して異なる方向に傾斜配置され、静止部100は、振動方向変換部50に対して振動板10側とは逆側に設けられている。図示の例では、静止部100はフレーム12の底部12Aによって形成しているが、これに換えて磁気回路20のヨーク部22Aを振動方向変換部50の下まで延在させ、このヨーク部22Aを静止部100にしてもよい。
図7(b)に示すように、ボイスコイル支持部40側の関節部分52Aはボイスコイル支持部40の移動に伴ってX軸方向に移動し、静止部100に連結された関節部分52Dは固定された状態になり、静止部100から受ける反力によって、関節部分52Aの移動が第1のリンク部分51Aと第2のリンク部分51Bの変化する角度に変換され、振動板10側の関節部分52Bを振動板10の振動方向(例えばZ軸方向)に移動させる。
図8に示したスピーカユニット1U(1B)は、図7に示した駆動部14を左右対称に互いに対向配置したものであり、駆動部14(R),14(L)を備え、それぞれの駆動部14(R),14(L)にリンク機構50L(R),50L(L)とボイスコイル支持部40(R),40(L)と磁気回路20(R),20(L),連結部60(R),60(L)を設けている。
そして、リンク機構50L(R),(L)は、対向配置される一対の第1のリンク部分51A,一対の第2のリンク部分51B,一対の第1の連結部分53A,第2の連結部分53B,不動の連結部分53Cが一体になって振動方向変換部50を形成している。一対の第1の連結部分53Aはそれぞれボイスコイル支持部40に連結され、第2の連結部分53Bは振動板10に連結され、不動の連結部分53Cはフレーム12の底部12Aに連結されている。
これによると、図8(b)に示すように、ボイスコイル支持部40(R),40(L)の振動方向を同期させた逆向きにすることで、2つの駆動部14(R),14(L)の駆動力を合わせて振動板10を振動させることができる。また、振動板10側の関節部分52Bを複数箇所に設けることができるので、振動板10の支持点が増え、振動板10の振動の位相を合わせることが可能になる。
図9及び図10は、更に具体的な振動方向変換部を示す説明図である(図9(a)は斜視図、図9(b)は同図(a)におけるA部の拡大図、図10(a)は関節部分を引き伸ばして全体を平坦化した状態の平面図、図10(b)は関節部分を引き伸ばして全体を平坦化した状態の側面図)。この例では、振動方向変換部50は一体化された一部品で形成され、前述したように、一対の第1のリンク部分51Aとその両端にそれぞれ関節部分52A,52Bが形成され、一対の第2のリンク部分51Bとその両端にそれぞれ関節部分52C,52Dが形成されている。また、一対の第1のリンク部分51Aの一端側に関節部分52Aを介して第1の連結部分53Aが形成され、一対の第1のリンク部分51Aの他端側に形成される関節部分52B間に第2の連結部分53Bが形成され、第2のリンク部分51Bの他端側に形成された関節部分52D間に不動の連結部分53Cが形成されている。そして、第1のリンク部分51A,51Aと第2の連結部分53Bが凸状に屈折され、第2のリンク部分51B,51Bと不動の連結部分53Cが凹状に屈折されている。
図9(b)に示すように、関節部分52Aは、前述した連続部材50Pによって屈折自在に形成され、第1のリンク部分51Aには前述した剛性部材50Qが貼り付けられ、第1の連結部分53Aにも前述した剛性部材50Qが貼り付けられている。そして、前述した全ての関節部分が同様の構成に形成されている。また、各関節部分では傾斜面51t,53tが対向して形成されている。
図10(a)に示すように、リンク部分51A,51Bと各関節部分と連結部分53A,53B,53Cからなる振動方向変換部50は、一体のシート状部品から形成されている。一体のシート状部品を直線的に横断するように関節部分52Aが形成され、一体のシート状部品を部分的に横断するように関節部分52B,52C,52Dが形成されている。また、一体のシート状部品の長手方向に沿って一対の切り欠き部50Sを形成することで第2のリンク部分51B,51Bと不動の連結部分53Cが切り出されて形成されている。
図10(b)に示すように、このような振動方向変換部50を形成するには、例えば、シート状部材である連続部材50P上全面に剛性部材50Qを形成するための樹脂材料を塗布するなどして積層し、各関節部分とその両側の傾斜面51t,53tを形成すべくV字状の型抜きを行う。その後前述した切り欠き部50Sを形成して、樹脂材を硬化させる。ここで用いる樹脂材料は液状の未硬化の樹脂材料や樹脂フィルムを用いることができる。
また、各関節部分とその両側の傾斜面51t,53tを形成する際、剛性部材50Qを樹脂材で形成すると同時に成形しても構わない。この時、剛性部材50Qを成形する金型に予め断面形状がV字状の溝又は凹部を形成しておくことが好ましい。
図11,図12,図13は、振動方向変換部50の他の例を示す説明図である(図11(a)が側面図、図11(b)が斜視図、図12が動作説明図、図13(a),(b)が形成例の説明図)。この振動方向変換部50(リンク機構50L)は、駆動部を一対設けて、振動方向変換部50を互いに略左右対称に対向配置させる場合であって、複数のリンク部分で平行リンクを形成している。
振動方向変換部50は、一端を第1の連結部分53A(R),53A(L)との関節部分52A(R),52A(L)とし、他端を第2の連結部分53Bとの関節部分52B(R),52B(L)とする一対の第1のリンク部分51A(R),51A(L)を有する。また、一端を第1のリンク部分51A(R),51A(L)の中間部との関節部分52C(R),52C(L)とし、他端を不動の連結部分53Cとの関節部分52D(R),52D(L)とする一対の第2のリンク部分51B(R),51B(L)を有する。前述したように第1の連結部分53Aはボイスコイル30又はボイスコイル支持部40に直接、或いは他の部材としての連結部60を介して連結され、第2の連結部分53Bは振動板10に連結され、不動の連結部分53Cは、静止部100となるフレーム12の底部12Aや磁気回路20を形成するヨーク部22等に連結される。
更に、一端が第1の連結部分53A(R),53A(L)から一体的に延設される一対の連結部分53D(R),53D(L)との関節部分52E(R),52E(L)であって、他端が第2の連結部分53Bと一体の連結部分53Eとの関節部分52F(R),52F(L)である第3のリンク部分51C(R),(L)を有する。
そして、第1のリンク部分51A(R)と第3のリンク部分51C(R)、第1のリンク部分51A(L)と第3のリンク部分51C(L)、第2のリンク部分51B(R)と第3のリンク部分51C(L)、第2のリンク部分51B(L)と第3のリンク部分51C(R)がそれぞれ平行リンクを形成している。
このような振動方向変換部50のリンク機構50Lは、実質的は、図7に示した形態例のリンク機構と平行リンク機構を組み合わせた機能を有し、各リンク部分及び連結部分を連続部材50Pに剛性部材50Qを一体化させて形成し、リンク部分間の各関節部分は屈折自在な連続部材50Pで線状に形成して、リンク部分相互間が関節部分を介して一体的に形成されている。
図示の例では、関節部分52F(R),52F(L)に近接して配置される第2の連結部分53Bと、関節部分52A(R),52A(L)に近接して配置される一対の連結部分53D(R),53D(L)には、接触回避部70として凹部76を形成することで、各関節部分と連結部分との間に空間が形成されるようにしている。
この振動方向変換部50の動作を図12によって説明する。この例ではフレーム12に支持される不動の連結部分53Cが静止部100として機能することになる。このような振動方向変換部50によると、ボイスコイル支持部40の振動によって、関節部分52A(R),(L)がX軸方向の基準位置X0からX1に移動すると、平行リンク機構によって第2の連結部分53Bとそれに一体の連結部分53Eが平行状態を維持して上昇し、平行リンクを形成している第1のリンク部分51A(R),(L)と第3のリンク部分51C(R),(L)が立ち上がるように角度変更する。その際、関節部分52D(L),(R)が静止部となる不動の連結部分53Cの両端で支持されているので、静止部からの反力を受けて第1のリンク部分51A(R),(L)と第3のリンク部分51C(R),(L)の角度変更が確実に行われ、関節部分52A(R),(L)の位置X0から位置X1への変位を振動板10の位置Z0から位置Z1への変位に確実に変換する。
同様に、関節部分52A(R),(L)がX軸方向の基準位置X0からX2に移動すると、平行リンク機構によって第2の連結部分53Bとそれに一体の連結部分53Eは平行状態を維持して下降し、平行リンクを形成している第1のリンク部分51A(R),(L)と第3のリンク部分51C(R),(L)が倒れるように角度変更する。その際、関節部分52D(R),(L)が静止部に支持されているので、静止部からの反力を受けて第1のリンク部分51A(R),(L)と第3のリンク部分51C(R),(L)の角度変更が確実に行われ、関節部分52A(R),(L)の位置X0から位置X2への変位を振動板10の位置Z0から位置Z2への変位に確実に変換する。
このような振動方向変換部50によると、一つのボイスコイル支持部40のX軸方向の振動が略同位相・略同振幅で振動する関節部分52B(R),(L),52F(R),(L)及び第2の連結部分53BにおけるZ軸方向の振動に変換されることになる。これによって、振動板10は、広い範囲で支持されて略同位相・略同振幅の振動が与えられることになるので、面積が広い平面的な振動板10に対してボイスコイル支持部40の振動を略同位相で伝達することができる。
図11(b)に示すように、振動方向変換部50は、連結部分53B,53D(R),(L),第3のリンク部分51C(R),(L)をそれぞれ幅方向一対に平行配置しており、第1のリンク部分51A(R),(L)を二股に形成してその中間部に第2のリンク部分51B(R),(L)との関節部分52C(R),(L)が形成され、第2のリンク部分51B(R),(L)及び連結部分53Cは、幅方向一対に平行配置されている連結部分53B,53D(R),(L),第3のリンク部分51C(R),(L)の間に配備されている。
このようにリンク部分を1つのシート状(板状)部品で形成することで、振動板10を面で支持して振動させることができるので、振動板10全体を略同位相で振動させることができ、分割振動を抑制することが可能になる。
また、図11(b)に示すように、この形態の振動方向変換部50は、リンク部分を形成する一つの板状部材全体を凸台形状に屈折させて第1のリンク部分51A(R),(L)と第2の連結部分53Bを形成し、この板状部材を部分的に切り出して凹台形状に屈折させて第2のリンク部分51B(R),(L)と不動の連結部分53Cを形成している。
図13によって、このような振動方向変換部50の形成方法を説明する。一つの形成方法としては、この振動方向変換部50は、図13(a)に示すように、複数(2枚)のシート状(板状)部品501,502を貼り合わせて形成し、一方のシート状部品501に、第1の連結部分53A(R),(L),第1のリンク部分51A(R),(L),第2のリンク部分51B(R),(L),第2の連結部分53B,不動の連結部分53Cを形成し、他方のシート状部品502に、連結部分53D,第3のリンク部分51C(R),(L)と連結部分53Eを形成している。そして、第1のリンク部分51A(R),(L)と第2の連結部分53Bに沿って連結部分53D(R),(L)と第3のリンク部分51C(R),(L)を形成すると共に、第2のリンク部分51B(R),(L)と不動の連結部分53Cに対応する開口502Aがシート状部品502に形成されている。
この例では、一方のシート状部品501における第2のリンク部分51B(R),(L)と不動の連結部分53Cに対応する他方のシート状部品502に形成される開口502Aの大きさが、他方のシート状部品502の一端から内側に向かって拡大するように形成されている。このようにすることで、第2のリンク部分51B(R),(L)と不動の連結部分53Cが他のシート状部品502に接触するのを抑止して、リンク機構の動きを円滑に行わせることができる。
シート状部品501,502が連続部材50Pと剛性部材50Qによって形成されているものでは、図13(b)に示すように、連続部材50Pを対面させた状態で2つの部品501,502を連結する。これによると、連続部材50Pを一体化して、関節部分52の屈折を円滑に行うことができる。この場合においても、関節部分52に近接する個所には、接触回避部70として凹部又は切欠部76が形成される。
また、各関節部分の近傍において、各リンク部分の端部には図5(c)に示したような傾斜面が形成されている。傾斜面はリンク部分が関節部分において屈折する際に、互いに干渉しないように形成されており、リンク部分が関節部分において効率良く屈折できるようになっている。
他の形成例としては、図13(c)に示すように、前述したシート状部品501の端部に連続して前述したシート状部品502を一体に形成して、折りたたみ線fで矢印方向に折り畳むことで、図11及び図12に示した振動方向変換部50を得ることができる。この例では、図10に示した例と同様に、シート状部材である連続部材50P上全面に剛性部材50Qを形成するための樹脂材を積層させ、各関節部分とその両側の傾斜面を形成すべくV字状の型抜きを行い、その後前述した切り欠き部50Sと開口502Aを形成して、樹脂材を硬化させることで簡易に形成することができる。
また、各関節部分とその両側の傾斜面51t,53tを形成する際、剛性部材50Qを樹脂材で形成すると同時に成形しても構わない。この時、剛性部材50Qを成形する金型に予め断面形状がV字状の溝又は凹部を形成しておくことが好ましい。
図8〜図13に示した振動方向変換部50では、2つの対向するボイスコイル支持部40に対して一つの一体部品を用いることで、振動方向変換部50のリンク機構を形成することができるので、一対の駆動部を備えたスピーカユニットを形成する場合にも組み立て作業を簡易に行うことができる。また、不動の連結部分53Cを設けることで、ボイスコイル支持部40の対向振動(複数のボイスコイル支持部40が互いに逆方向となるように振動すること)に対しては、特に関節部分52D(R),(L)をフレーム12に支持しなくても、この関節部分52D(R),(L)の位置が一定に保持されることになり、これによっても振動方向変換部のスピーカユニットへの組み込みを簡易化することができる。
そして、図11〜図13に示した振動方向変換部50では、リンク機構として、右側の第1のリンク部分51A(R)と第3のリンク部分51C(R)、左側の第1のリンク部分51A(L)と第3のリンク部分51C(L)によって平行リンクが形成されているので、ボイスコイル支持部40の対向振動に対して振動板10に固着される第2の連結部分53BをZ軸方向に沿って安定に平行移動させることができる。これによって、平面状の振動板10に対して安定した振動を加えることが可能になる。
このようなスピーカユニット1U(1A,1B)によると、音声信号SSが入力されると、振動板10の許容される振動方向とは異なる方向に沿って形成された磁気ギャップ20Gに沿ってボイスコイル支持部40が振動することになり、この振動が振動方向変換部50によって方向変換されて振動板10に伝達されることになって、振動板10を振動させて音響放射方向SDに音声信号SSに応じた音が放射される。
この際、磁気ギャップ20Gの方向を振動板10の振動方向及びスピーカユニット1U(1A,1B)の厚さ方向に交差させているので、磁気回路20の駆動力或いはボイスコイル30の振動を大きくすることが直接的にスピーカユニット1U(1A,1B)の厚さ方向(Z軸方向)の大きさに影響を与えない。よって、大音量化を図りながらスピーカユニット1U(1A,1B)の薄型化を実現することが可能になる。
また、振動方向変換部50は、機械的なリンク機構によってボイスコイル支持部40の振動方向を変換して振動板10に伝えているので、振動の伝達効率が高い。特に、図7〜図8に示したスピーカユニット1U(1A,1B)では、第1のリンク部分51Aと第2のリンク部分51Bの角度変更がボイスコイル支持部40の振動と静止部100からの反力によって行われるので、より確実にボイスコイル支持部40からの振動を振動板10に伝えることができる。これによって、スピーカユニット1U(1A,1B)の良好な再生効率を得ることができる。
また、図2、図7及び図8に示したスピーカユニット1U(1A,1B)では、連結部60を設けることで、ボイスコイル30又はボイスコイル支持部40の端部40Aの位置と振動方向変換部50の端部50Aの位置との間に段差(間隔)を形成することができる。これによって、磁気回路20のZ軸方向の幅(高さ)を振動方向変換部50の高さの中に収めることができ、駆動力を確保する上で必要になる磁気回路20の高さを十分に確保しながら、スピーカユニット1U(1A,1B)を薄型化することが可能になる。また、連結部60を設けることでスピーカユニット1U(1A,1B)の薄型化を達成しても十分に振動方向変換部50の必要高さ(リンク部分51の長さ)を確保することができ、振動板10の振幅を比較的大きくすることが可能になる。
更には、連結部60の底部61がフレーム12の底部12A或いは静止部100上を所定の間隙を設けた状態でスライドするように形成することで、ボイスコイル支持部40の振動を安定化することが可能になる。また、振動方向変換部50の端部の移動を直線的に行うことができ、振動板10に連結される振動方向変換部50の端部の動きを、確実且つ安定化することができる。
図14に示す振動方向変換部50は、図11に示した形態の改良例である。図14(a)に示す例では、ボイスコイル支持部40の対向振動によって曲げが生じ易いリンク部分に対して凸部510を設けて剛性を高めている。図示の例では、第1のリンク部分51A(R),(L),第2のリンク部分51B(R),(L),連結部分53D(R),(L),連結部分53Cにそれぞれ凸部510が設けられている。また、同図(b)に示す例では、特に強度を必要としないリンク部分において開口部520を設けて振動方向変換部の軽量化を図っている。図示の例では、連結部分53Bに開口部520が設けられている。振動方向変換部の軽量化は特に再生特性の広域化や、所定の音声電流に対する音波の振幅及び音圧レベルを大きくすることに有効である。
(給電構造)
図15〜図24は、本発明の実施形態に係るスピーカユニットの給電構造を説明する説明図である。本発明の実施形態に係るスピーカユニットは、前述した基本構造を参照して、振動板10と、振動体10を振動自在に支持する静止部100と、静止部100に設けられ、音声信号によって振動板10に振動を与える駆動部14とを備え、駆動部14は、音声信号が入力されて振動板10とは異なる方向に振動する複数のボイスコイル30,30と、ボイスコイル30,30がそれぞれ配置される磁気ギャップ20G,20Gを有する複数の磁気回路20,20と、ボイスコイル30,30及び振動板10の振動方向に対し斜設されて、ボイスコイル30,30の振動を振動板10に伝える剛性の振動方向変換部50を備えている。
そして、複数のボイスコイル30,30に音声信号を入力するために、複数のボイスコイル30,30の一方のボイスコイル30から他方のボイスコイル30に向けて延在し、複数のボイスコイル30,30に対する共通の端子部81,81が静止部100に設けられている。この端子部81は、一対のボイスコイル30,30が設けられる場合には、一対の端子部81が設けられ、一対のボイスコイル30,30のそれぞれの一端が1つの端子部81に接続され、一対のボイスコイル30,30のそれぞれの他端が他の端子部81に接続される。複数のボイスコイル30,30に対して共通の端子部81,81を設けることで、各ボイスコイル30の一端と他端にそれぞれ端子部を設ける場合と比較して端子部の配置を省スペース化できる。端子部に必要なスペースを削減することで、スピーカユニットの小型化或いは薄型化が可能になる。
端子部81,81には、複数のボイスコイル30,30を電気的に接続する配線(第1の配線80A)が形成されている。これによって、端子部81,81に音声信号が入力されると配線を経由して複数のボイスコイル30,30のそれぞれに音声信号を供給することができる。
図15(a),(b)は、本発明の実施形態に係るスピーカユニットの外観斜視図である。スピーカユニット1Uの静止部100は、第1の構成部材100Aと第2の構成部材100Bにて形成されている。第2の構成部材100Bは振動方向変換部50側に配置されたフレームであり、振動方向変換部50の一部を支持している。端子部81,81は、第1の構成部材10Aと第2の構成部材100Bとの間に配置されている。第1の構成部材100Aは振動板10側に配置されたフレームであり、エッジ11を介して振動板10を支持している。また、第1の構成部材100Aと第2の構成部材100Bとで磁気回路20を支持しており、第1の構成部材100Aが磁気回路20の一方の片側磁極部材(ヨーク部22)を支持し、第2の構成部材100Bが磁気回路20の他方の片側磁極部材(ヨーク部22)を支持することで、第1の構成部材100Aと第2の構成部材100Bとを結合した状態で両磁極部材間に規定間隔の磁気ギャップを形成している。
第1の構成部材100Aと第2の構成部材100Bには、対向し合う面内に形成された凹部にて、開口部100Fが構成される。第1の構成部材100Aおよび第2の構成部材100Bには、端子部81,81を支持する突出部109(109A,109B)が形成されており、端子部81,81は、突出部109Aと突出部109とに挟持されている。これによって、第1の構成部材100Aと第2の構成部材100Bを結合させると同時に、端子部81,81が安定に固定される。
また、図15に示すように、静止部100は、磁気回路20を囲む外周枠部101と底面部107とを備え、端子部81,81は、外周枠部101に沿う形状に形成されて、外周枠部101に取り付けられている。これによって、端子部81,81が静止部100の外周枠部101から外側に突出することが無く、装置のコンパクト化が可能になる。また、端子部81,81が外周枠部101に取り付けられることで、端子部81,81が安定的に固定され、ボイスコイル30,30との接続不良を回避できる。
端子部81,81は、一方のボイスコイル30から他方のボイスコイル30に沿う長軸と、当該長軸と交差する短軸とを有する形状に形成されている。このように細長形状にすることで、設置スペースの効率を高めることができる。
端子部81,81は、外周枠部101の内部に配置してもよく、これによると、スピーカユニットの外周縁の形状や大きさに影響を与えることなく、端子部81,81を設けることができる。また、必要に応じて、インサート成形の技術を用いて外周枠部101の内部に配置しても良い。
第1の構成部材100Aと第2の構成部材100Bにおける各外周枠部101,101は、ボイスコイル30と対向する面内において、前述した開口部100Fを有し、開口部100Fに端子部81,81が配置されている。この場合、端子部81,81は、静止部100の開口部100Fを補強する補強部になっている。
端子部81,81には、外部と電気的に接続された配線82,82(第2の配線80A)との接続部81a(図19参照)が形成され、端子部81,81の配線(第1の配線80A)と配線82(第2の配線80B)とが接続部81aで電気的に接続されている。配線82(第2の配線80A)は、静止部100の側面に固定されると共に、端子部81,81に接続される。静止部100の外周枠部101は、配線82(第2の配線80B)が取り付けられる側面を備え、静止部100の側面には、配線82,82を案内する案内部106,106が形成されている。
図16はスピーカユニットの内部構造(第1の構成部材100Aを除いた状態)を示す斜視図、図17はスピーカユニットの内部構造(第2の構成部材100Bを除いた状態)を示す平面図、図18はスピーカユニットの内部構造(第2の構成部材100Bを除いた状態)を示した斜視図、図19はスピーカユニットの内部構造を示す斜視図(配線の接続状態の説明図)、図20はスピーカユニットの内部構造を示す一部拡大図、図21はボイスコイルの取付構造を示した説明図、図22は保持部の部品説明図である。
磁気回路20のヨーク部22には、このヨーク部22を第1の構成部材100A,第2の構成部材100Bに支持するための突出部22pが設けられており、この突出部22pが第1の構成部材100A,第2の構成部材100Bに設けた受け部105に係合される。
第1の構成部材100A又は第2の構成部材100Bの一方には、端子部81,81を位置決めする位置決めピン100Pが形成されており(図17,図18参照)、位置決めピン100Pが端子部81,81の孔部81h(図16参照)に挿入されることで、端子部81は静止部100に対し規定の位置にて配置される。また、図示の例では端子部81,81は側部に凹部81bが形成されており、この凹部81bが第2の構成部材100Bに形成される凸部100B1に係合することで、端子部81,81が第2の構成部材100Bに位置決めされている。
ボイスコイル30は環状の導電部材で平板状に形成されており、この導電部材を剛性の基体(ボイスコイル支持部40)で支持している。ボイスコイル30又はボイスコイル支持部40は取り付けユニット16によってユニット化されて第1の構成部材100Aと第2の構成部材100Bとの間に装着されている。また、ボイスコイル30又はボイスコイル支持部40は保持部15を介して取り付けユニット16に装着され、取り付けユニット16を第1の構成部材100Aと第2の構成部材100Bとの間に装着することで、ボイスコイル30又はボイスコイル支持部40は保持部15を介して静止部100に保持されている。また、取り付けユニット16には連結部60が一体化されており、この連結部60を介してボイスコイル30又はボイスコイル支持部40と振動方向変換部50とが連結されている。
ボイスコイル30を支持するボイスコイル支持部40(基体)の表面には、引出線31に接続されるボイスコイル引出線32(図19参照)が形成されている。ボイスコイル引出線32は、ボイスコイル30の導電部材の外側にこれを囲むようにパターン形成された導電層43であり、この導電層43が一対配備されることで、ボイスコイル引出線32がボイスコイル30の導電部材と保持部15とを電気的に接続して、ボイスコイル30の導電部材に音声信号を入力するための中継線として機能している。
保持部15には、ボイスコイル30と端子部81とを電気的に接続する配線(第3の配線80C)が形成されており、端子部81,81の端部と配線(第3の配線80C)とが電気的に接続され、保持部15の配線(第3の配線80C)とボイスコイル引出線32とが接続され、端子部81,81に配線82(第2の配線80B)が接続することで、ボイスコイル30に外部から音声信号が入力される。この配線(第3の配線80C)は、保持部15を導電部材にすることで形成することができる。また、保持部15に別途配線を形成することもできる。保持部15自体を配線基板を用いて形成することもできる。配線82(第2の配線80B)と端子部81,81との接続は、配線82の端部82aと端子部81,81の接続部81aとが電気的に接続される。
保持部15は、振動板10の振動方向にて剛性を有するとともに、ボイスコイル30の振動方向にて変形可能な形状を備える。図示の例では、保持部15は、振動板10の振動方向(X軸方向)に沿って直線的に延在する側面を有すると共に、ボイスコイル30の振動方向にて湾曲状の断面形状を有する。これによって、保持部15がボイスコイル30の振動を一軸方向(X軸方向)に規制し、ボイスコイル30の他の方向への振動が抑制される。
保持部15は、ボイスコイル30を、静止部100に直接又は他の部材を介して、ボイスコイル30の振動方向に振動自在に保持するものであって、第1の保持部15(15A)と第2の保持部15(15B)を備える。第1の保持部15(15A)はボイスコイル30の振動方向変換部50側に配置され、第2の保持部15(15B)はボイスコイル30の振動方向変換部50とは逆側に配置される。
第1の保持部15(15A)は、連結部60と静止部100との間において、連結部60の左右に配置され、第2の保持部15(15B)は、ボイスコイル30の連結部60と連結される側とは逆側で、前記ボイスコイルに対して左右に配置され、第1の保持部15(15A)及び第2の保持部(15B)はボイスコイル30を略左右対称に静止部に直接又は他の部材を介して保持している。また、詳しくは、第2の保持部15(15B)は、その中央部が直接又は他の部材を介して静止部に保持され、その両端がボイスコイルの左右端に接続されている。
図21は、ボイスコイルの取付構造を示した説明図である。導電部材が巻き回されたボイスコイル30をボイスコイル支持部40で支持して、保持部15を介してボイスコイル支持部40を取り付けユニット16に保持する。ボイスコイル支持部40は、平板状の絶縁材料からなる基体41にボイスコイル取り付け箇所41aが開口しており、その開口の片側を保護フィルム44で覆っており、このボイスコイル取り付け箇所41a内にボイスコイル30が取り付けられる。
取り付けユニット16の一端側には、一対の第1の保持部15(15A)の外端部それぞれが取り付けユニット16に連結されており、一対の第1の保持部15(15A)の内端部は連結部60に連結されている。また、取り付けユニット16の他端側には単一品の第2の保持部15(15B)が取り付けられ、この第2の保持部15(15B)の中央部が取り付けユニット16に連結され、その第2の保持部15(15B)の両端部がボイスコイル支持部40の両端部41B,41Cに取り付けられている。ボイスコイル支持部40の端部41Aは連結部60に連結されている。連結部60はボイスコイル30と振動方向変換部50とを連結するための部材である。接続孔部16dは取り付けユニット16を静止部に接続する際の嵌合孔である。
図22によって保持部15の形成例をより具体的に説明する。図示の例では、2つの構成部材151,152を貼り合わせて保持部15を形成している。同図(a)が構成部材151,152の単品を示した斜視図であり、同図(b)が保持部15の側面図であり、同図(c)がその平面図である。保持部15の構成部材151(152)は、平板部Fで互いに接しており、第1の湾曲部Wと第2の湾曲部Waを備え、両端に平板部F,Fを備えると共に、接続部F1,F2を平板部Fと垂直な方向に備えている。複数の構成部材151,152は導電性の金属部材であり、溶接によって接合されている。図示の例では、平板部Fを対面させて、そこにスポット溶接を施すことで、構成部材151,152を溶接している。ここでは、両端部の平板部F,Fのそれぞれで複数箇所にスポット溶接がなされている(符号sはスポット溶接箇所)。2つの構成部材151,152を貼り合わせて保持部15を形成することで、保持部15が捩れること、又は保持部15に共振が発生することを抑止することができる。
保持部15が有する端子部81,81との接続部F1は、振動板10の振動方向(Z軸方向)と交差する方向に延在し、端子部81,81に当接するように、平板状に形成されている。保持部15が有するボイスコイル引出線32との接続部F2も、振動板10の振動方向(Z軸方向)と交差する方向に延在し、ボイスコイル引出線43の端部に当接するように、平板状に形成されている。
[キャビネット]
(キャビネット構成例)
図23は、本発明の実施形態のスピーカ装置に適用されるキャビネットの構成例を示した説明図である。ここに示した形態は一例であって、特にこれに限定されるものではない。
本発明の実施形態に係るスピーカ装置1におけるキャビネット300は、その前面(スピーカユニット1Uの音響放射方向に向く面)300aと側面(スピーカユニット1Uの音響放射方向に向く面以外の面)300bを有しており、スピーカユニット1Uとの間に規定の空間S(S1,S2)を形成している。この空間Sは、基本的には、スピーカユニット1Uの振動板10の音響放射側とは逆側から放射される音波を取り囲むために形成されるもので、これによってこの逆側に放出される音波と音響放射側に放射される音波との干渉によってスピーカ装置1の音響出力が弱められるのを抑止している。このスピーカユニット1Uとキャビネット300とで囲まれる空間Sは、図23(a),(c)に示すように、密閉されているものであってもよいし、図23(b)に示すようにキャビネット300の前面(スピーカユニット1Uの音響放射方向に向く面)300a又は側面(スピーカユニット1Uの音響放射方向に向く面以外の面)300bに開口部310を設けて、空間Sの一部が外部に開放されているものであってもよい。また、図示省略するが、キャビネット300内には必要に応じて吸音材を配備したものであってもよい。
空間Sを密閉させると、振動板10の音響放射側に対して逆側から放射される音波を確実に閉じ込めることができるが、この形態では、スピーカユニット背面の空気が密封されることで空気のスティフネスによって振動板10の動きが抑えられ、スピーカユニット1Uの最低共振周波数f0を高める(低音域の再生帯域が制限される)ことになる。しかしながら、本発明のスピーカ装置1では、スピーカユニット1Uの薄型化によって、キャビネット300に大きな奥行きを形成しなくても振動板10の動きに影響が生じ難いキャビネット300内の容積を確保することができる。
また、図示の例はスピーカユニット1Uの厚さ(振動板10の振動方向の厚さ)に対して、キャビネット300の奥行き(振動板1の振動方向における奥行き)が比較的大きく形成されるが、これに限定されず、スピーカユニット1Uの厚さに対してキャビネット300の奥行きを比較的小さくしても構わない。この場合には、さらにスピーカ装置1の厚さ(振動板10の振動方向の厚さ)が比較的小さくなり、スピーカ装置1の薄型化を図ると共に小型化を図ることもできる。
一方、空間Sを開放することによって、振動板10の音響放射側とは逆側に放射される音波(背面音波)を積極的に利用して音響特性を改善することができる。このためには、開口部310を筒状開口部(音響ポート)310Aにする。図23(b)に示した例では、キャビネット300の内部と外部とを連通させると共に、振動板10の音響放射側に対して逆側から放射される音波を外部へ導く放音部320が、キャビネット300の前面300a又は側面300bに設けられている。このような放音部320を設けることで、低音域における再生周波数帯域を拡大でき、均一な再生周波数特性を得ることができる。
図23(c)に示した形態例では、キャビネット300には、スピーカユニット1Uの駆動に伴って振動する受動型振動板330が、スピーカユニット1Uに隣接して取り付けられている。これは、前述した筒状開口部(音響ポート)310Aの換わりにキャビネット300の前面300aに受動型振動板330(振動系のみを持ち、駆動系を持たないスピーカユニットによって形成される振動板)が取り付けられている。これによっても前述した形態例と同様に再生周波数特性の改善が可能になる。
図23(d),(e)に示した形態例では、キャビネット300は、その内部における空間を第1の空間S1と第2の空間S2とに区画する壁部331を備え、この壁部331に取り付けられることで、第1の空間S1にスピーカユニット1Uの一部分が配置されている。そして、図23(d)に示す形態例では、キャビネット300の前面300a又は側面300bには、第2の空間S2と外部とを連通させて、スピーカユニット1Uの音波を放射する放音部320が設けられている。図23(d)に示した例では、スピーカユニット1Uの背面側は第1の空間S1によって密閉されており、スピーカユニット1Uの振動板の前面に第2の空間S2と放音部320を設けることで、密閉型の利点を生かしながら前述した再生周波数特性の改善を行うことができる。また、スピーカユニット1Uの背面側が第1の空間S1によって密閉されていることで、規定の再生周波数帯域における再生周波数がバンドパス特性になるため、該帯域における出力音圧周波数特性を向上させることができる。
図23(e)に示した形態例では、キャビネット300は、その内部における空間を第1の空間S1と第2の空間S2とに区画する壁部331を備え、壁部331に取り付けられることで、第1の空間S1にスピーカユニット1Uの一部分が配置されており、第2の空間S2は、スピーカユニット1Uに対して対向配置され、スピーカユニット1Uが第2の空間S2側に放射する音波を外部へ導く第1の放音部320(321)と、スピーカユニット1Uが第1の空間S1側に放射する音波を外部に導く第2の放音部320(322)とが、キャビネット300の前面300a又は側面300bに設けられている。この際、第2の放音部322は、外部から第2の空間S2及び壁部331を貫通して1の空間S1まで延在する筒状の形状を備える。この例は、図23(d)に示した例に背面音波を放音部320(322)で放出することによる利点を付加したものである。
(キャビネット内のスピーカユニット配置例)
図24〜図26は、キャビネット内のスピーカユニット配置の形態例を示した説明図である。ここでは、複数のスピーカユニット1U,1U或いは1つのスピーカユニット1Uによって複数の対向配置した振動板10を駆動させるものである。
図24に示した形態例は、スピーカユニット1Uを複数備え、キャビネット300の外周面に、音響放射面が互いに異なる方向に向く複数のスピーカユニット1Uが対向する位置に取り付けられており、スピーカユニット1Uの音響放射面は外部と対面するように設けられている。図示の例では、2つのスピーカユニット1Uを互いに逆向きに配置して、その音響放射面は互いに逆の向きとなる方向に向いており、互いの静止部100同士を直接又は他の部材を介して接合することで、薄型の両面放射型のスピーカ装置を形成している。この際、2つのスピーカユニット1を1つの音声信号で駆動すると、駆動時に双方のスピーカユニット1U,1Uに伝搬する振動が互いに相殺し合って安定した駆動を実現することができる。前述した薄型化の実現が可能なスピーカユニット1Uでは、2つの振動板を互いに逆向きに配置して接合した状態であってもスピーカ装置の厚さはそれほど大きくならず、キャビネット300内の空間S1,S2をスピーカユニット1U,1Uの側方に形成することで、キャビネット300の奥行き(厚さ)を薄くしたスピーカ装置を得ることができる。キャビネット300の奥行き(厚さ)を薄くしたとしてもスピーカユニット1U,1Uの側方のスペースを利用して空間S1,S2の容積を充分に確保できるので、密閉型のキャビネット300を形成する際にも、キャビネット300内の空気のスティフネスの影響で振動板10の振動が抑制される不具合は生じ難い。
そして、このような形態では、スピーカユニット1U,1Uの間に、制振部材350を設けることができる。これによると、互いのスピーカユニット1Uで影響し合う振動を制振部材350が吸収することになるので、より安定したスピーカ装置の駆動を実現することが可能になる。
また、この形態例では、振動方向変換部50は、前述したように、リンク部分51を第1のリンク部分51Aとして、第1のリンク部分51Aと静止部100との間にリンク機構50Lとしての第2のリンク部分51Bを備え、第2のリンク部分51Bを支持する静止部100の一部分に前述した制振部材350が取り付けられている。このような形態例では、双方のリンク機構50L,50Lを支持する静止部100,100の間に制振部材350が取り付けられているので、スピーカ装置の駆動時に、振動方向変換部50の振動が互いに影響し合ってスピーカ装置の駆動を不安定にしたり異音を発生したりする不具合いが生じることを抑止できる。また、前述の機械インピーダンスが略等しい場合には、振動板10から受ける振動方向変換部50の各リンク部分への反力を相殺することができる。振動方向変換部50の動作自体は、双方の振動方向変換部50,50を支持する静止部100,100を直接又は他の部材を介して当接させることで、静止部100,100の位置変動が起こり難くなり、安定した振動方向変換動作を実現できる。
また、前述した静止部100,100間に取り付けられる制振部材350が、柔軟性又は比較的大きいコンプライアンスを備えると共に、ボイスコイル30が振動方向変換部50を介して振動板10に伝達する振動のうち、高周波数で規定される振動を遮断する高域遮断機能を備えることで、振動方向変換部50の振動で静止部100が共振を起こし、スピーカユニット1Uの再生音圧周波数特性が乱れたり、高調波歪みが発生したりするような不具合を抑止できる。
また、図示の例のように、スピーカユニット1U,1Uが有する連結部分60,60を直接連結するか、又は制振部材350を介在させて連結しても構わない。連結部分60,60が直接又は他の部材を介して連結している場合には、不要な振動の発生を抑止でき、音響特性を改善することができる。
図24に示したスピーカ装置1におけるキャビネット300の幅について以下に説明する。振動板10の振動方向(図示Z軸方向)におけるキャビネット300の幅Tzは、一つには、対向する位置に配置される複数のスピーカユニット1U,1Uの振動方向変換部50,50が有する、振動板10の振動方向(Z軸方向)における幅で規定される。より具体的には、振動板10の振動方向(Z軸方向)におけるキャビネット300の幅Tzは、振動板10の振動方向(Z軸方向)における振動方向変換部50,50の幅と実質的に同じである。
また別の視点では、振動板10の振動方向(Z軸方向)におけるキャビネット300の幅Tzは、対向する位置に配置される複数のスピーカユニット1U,1Uの磁気回路20,20が有する、振動板10の振動方向(Z軸方向)における幅で規定される。より具体的には、振動板10の振動方向(Z軸方向)におけるキャビネット300の幅Tzは、振動板10の振動方向(Z軸方向)における磁気回路20,20の幅に、キャビネット300とスピーカユニット1U,1Uとの間に形成される空間S1,S2の幅を加えたものと実質的に同じである。図示はしていないが、振動板10の振動方向(Z軸方向)におけるキャビネット300の幅Tzは、振動板10の振動方向(Z軸方向)における磁気回路20,20の幅と実質的に同じにしても構わない。
したがって、スピーカ装置1では、振動方向変換部50,50の幅が狭くなって、磁気回路20,20の幅が狭くなり、複数のスピーカユニット1U,1Uが有する振動板10が近接して配置されている場合には、キャビネット300のZ軸方向の幅Tzを狭くすることができる。
また、ボイスコイル30の振動方向(X軸方向)におけるキャビネット300の幅Txは、ボイスコイル30の振動方向(X軸方向)におけるスピーカユニット1U,1Uの幅で規定されることになる。より具体的には、ボイスコイル30の振動方向(X軸方向)におけるキャビネット300の幅Txは、スピーカユニット1Uが有する一対の磁気回路20,20間の距離で規定されることになる。図示のスピーカユニット1Uでは、振動板10の外側に磁気回路20,20を配置することで振動板10を近接して配置してキャビネット300のZ軸方向の幅Tzを狭くしているので、振動板10の大きさによって磁気回路20,20間の距離が決められる。大きな振動板10を用いる場合には磁気回路20,20間の距離が大きくなり、比較的小さな振動板10を用いる場合には磁気回路20,20間の距離が小さくなる。それに応じて、キャビネット300のX軸方向の幅Txが規定される。
また、図示の例では、キャビネット300とスピーカユニット1U,1Uとの間に形成される空間S1,S2が有する、ボイスコイル30の振動方向(X軸方向)における幅は、スピーカユニット1U,1Uが有する、ボイスコイルの振動方向(X軸方向)における幅に対して小さくなっている。
図25及び図26は、各種形態の振動方向変換部50のリンク機構50Lによって、一対の振動板10,10を振動させるスピーカユニット1Uをキャビネット300に取り付けた形態例を示している。図25に示した形態例では、X軸方向に振動自在に保持されたボイスコイル30(301,302)の近接又は離間する振動をリンク部分51(51A,51B,51C,51D)と関節部分52(52A,52B,52C,52D,52E,52F)からなるリンク機構50Lを形成する振動方向変換部50によって方向変換して一対の振動板10,10を駆動している。ボイスコイル30(301,302)は、フレーム12における装着部12Pに装着される磁気回路20の磁気ギャップ20G内に配置されている。そして、フレーム12の側部にキャビネット300内の空間S1,S2が形成されている。同図(a)が図示省略の保持部のみでボイスコイル30が保持されており、同図(b)が保持部に加えてダンパDによってボイスコイルの動きが規制されている。
図26(a)に示した形態例は、リンク部分51が前述した図25(a)に示した例に加えてリンク部分51E,51F,51G,51H,51Iを備えており、振動板10が中央部分の凹んだ形態になっている以外は図25(a)に示した形態と同様である。図26(b),(c)に示した形態例は、略同方向に振動する2つのボイスコイル301,301とそれと近接又は離間するように略同方向に振動する2つのボイスコイル302,302を備えており、振動方向変換部50は、第1のリンク部分51Aと第2のリンク部分51Bからなるリンク機構が矩形の固定枠体50Pの四隅に支持されている。ボイスコイル30(301,301,302,302)はそれに対応した磁気回路20の磁気ギャップ20G内に配置されており、近接配置される磁気回路20は制振部材350を介して接合されている。
図25及び図26に示す形態例は、一対の振動板10,10を振動させる振動方向変換部50が、ボイスコイル30の振動方向に沿った中心軸に対して略軸対称に配置されている。これによって、リンク機構50Lのリンク部分51の振動は、前述した中心軸に対して略対称に行われることになり、各リンク部分51が相互に及ぼし合う影響を相殺することができる。これによって、振動方向変換部50の振動によって起こる共振現象などの不具合を抑制することが可能になる。
また、図25及び図26に示される形態例において、スピーカユニット1U、1Uの間隔、特に振動板10、10の間隔を比較的小さくする場合、波長が比較的大きい(周波数が比較的小さい)周波数帯域で、スピーカユニット1U、1Uは点音源として見なすことができる。そのため、バッフル板の面積(振動板10、10を支持すると共に周囲を囲むキャビネット300の一部分の面積)の影響を低音域における出力音圧特性が受けることなく、スピーカ装置1は良好に低音域の再生音を提供することができる。また、キャビネット300を比較的小さくしても、スピーカ装置1は十分に低音域の再生音を提供することができる。
また、前述の機械インピーダンスが略等しい場合には、振動板10から受ける振動方向変換部50の各リンク部分への反力を相殺することができる。
また、図24と同様に、スピーカユニット1U、1Uが有するボイスコイル30はボイスコイル支持部40を直接連結するか、又は図26(c)に示すように制振部材350を介在させて連結しても構わない。連結部分60、60が直接又は他の部材を介して連結している場合には、不要な振動の発生を抑止でき、音響特性を改善することができる。
前述した図24から図26に係る実施形態において、各スピーカユニット1Uが備える、振動方向変換部50、50、振動板10、10、エッジ11、11、図示省略の保持部15等の機械インピーダンスが互いに略等しい場合には、2つのスピーカユニット1Uをバランス良く駆動させることができる。
例えば、振動方向変換部50、50、振動板10、10、エッジ11、11の重量や、保持部15のコンプライアンス、振動方向変換部が有する各リンク部分の剛性やコンプライアンス(機械抵抗)を、互いに略等しくすることが好ましい。
また、機械インピーダンスが著しく異なっている場合には、各スピーカユニットが良好に駆動することが困難になる場合があり、スピーカユニット1U、1Uに不要な振動が発生する場合がある。
図27は、キャビネット300を含むスピーカ装置1の形態例を示している。この例では、スピーカユニット1Uがキャビネット300に取り付けられた第1のスピーカ装置1を備える第1のパネルP1と、スピーカユニット1Uがキャビネット300に取り付けられた第2のスピーカ装置1を備える第2のパネルP2とが、互いの側部で回動可能に連結されている。ここでは、第1のパネルP1の片側側部が第1のパネルP2の片側側部に回動軸R1を介して連結されており、第2のパネルP2における他方の側部がベース板Bsの端部に回動軸R2を介して回動可能に連結されている。このようなスピーカ装置によると、使用状況に応じてパネルP1,P2の角度を変えて、任意の方向にスピーカユニット1Uの音響放射方向を向けることが可能になる。その際、スピーカユニット1Uはキャビネット300に取り付けられているので、キャビネット300内の空間Sでスピーカユニット1Uの背面音波を囲い込むことができる。また、パネルP1,P2のうち一方のパネルが搭載するスピーカユニット1Uに代えて中高音用スピーカユニットを用いても構わなく、この場合には全帯域において再生音を提供することができる。なお、中高音用スピーカユニットをパネルP1,P2のうちどちらかに搭載する場合には、パネルP1及びパネルP2をベース板Bsに対して略直交する方向に配列させても構わない。このような形態は、スピーカユニット1Uを搭載した各種の電子機器に採用できる。
図28〜図33によって本発明の実施例を説明する。
図28は本発明の実施例に係るスピーカ装置の全体構成を示す説明図(同図(a)が断面図、同図(b)が平面図、同図(c)が斜視図)である。スピーカ装置1は、低域再生用のスピーカユニット1U(1W)、中高域再生用のスピーカユニット1T、スピーカユニット1U,1Tに取り付けられるキャビネット300を備えている。スピーカユニット1Uの詳細は、例えば図24、或いは図25、図26に示される実施形態であり、重複する説明をここでは省略する。スピーカユニット1Uの振動板10とスピーカユニット1Tの振動板10Tがキャビネット300の音響放射側の面(前面300a)で露出されている。
このスピーカ装置1は、複数の低音再生用のスピーカユニット1U(1W)の他に、複数の中高音再生用のスピーカユニット1Tを備えている。そして、図示の例では、複数の低域再生用スピーカユニット1U(1W)及び複数の中高域再生用スピーカユニット1Tは、その音響放射面が互いに異なる方向に向けられて、対向する位置に配置されている。より具体的には、一つの音響放射面に低音再生用スピーカユニット1Uと中高音再生用スピーカユニット1Tが配置され、それとは180°方向が異なる音響放射面にも低音再生用スピーカユニット1Uと中高音再生用スピーカユニット1Tが配置されている。
また、スピーカ装置1のキャビネット300は、スピーカユニット1U,1Tとの間に規定の空間を形成しており、キャビネット300の音響放射側の面(前面300a)は、長軸O1及び短軸O2で規定される平面形状を備えている。より具体的には、キャビネット300の音響放射側の面(前面300a)は長軸O1の方向に長い矩形状を成しており、奥行きが比較的小さい箱形の形状に形成されている。
そして、スピーカ装置1は、同じ音響放射面側に配置される低域再生用スピーカユニット1U及び中高域再生用スピーカユニット1Tが、キャビネット300の長軸O1に沿って並べて取り付けられており、キャビネット300の短軸O2の方向(図示のY方向)におけるキャビネット300の外周部とスピーカユニット1Uとの間の距離L1が当該方向(Y方向)におけるスピーカユニット1Uの幅L2に対して小さいか又は略等しく形成されている。すなわち、スピーカユニット1Uからキャビネット300の外周部までの距離L1を比較的小さくした構成を備えている。スピーカユニット1Uからキャビネット300の外周部までの距離L1を十分に小さくした場合には、短軸O2の方向(Y方向)におけるキャビネット300の幅L0が当該方向(Y方向)におけるスピーカユニット1Uの幅L2に対して略等しい構造になる。
図29に示した例は、前述した本発明の実施例に係るスピーカ装置1の変形例である。前述した例と共通の部分は同一符号を付して重複説明を一部省略する。異なる音響放射面に低音再生用のスピーカユニット1Uと中高音再生用のスピーカユニット1Tがそれぞれ配置されている基本構成は前述した例と同様であるが、ここでは、一つの音響放射面側に複数のスピーカユニット1Uが配置されている。
そして、同じ音響放射面側に配置される複数の低域再生用スピーカユニット1U及び中高域再生用スピーカユニット1Tは、キャビネット300の長軸O1に沿って(X方向に沿って)並べて取り付けられており、複数の低域再生用スピーカユニット1U,1U,…の間に、中高域再生用スピーカユニット1Tが配置されている。同図(a)に示した例では、X方向に並べられた2つのスピーカユニット1Uの間に、スピーカユニット1Tが配置されている。同図(b),(c)に示した例では、X方向に並べられた3つのスピーカユニット1U,1U,1Uの中で2つのスピーカユニット1U,1Uの間に、一つのスピーカユニット1Tが配置されている。
また、このスピーカユニット1Uは、長軸O11及び短軸O12で規定される平面形状(具体的には、長軸O11方向に長い矩形状)を備え、同図(a),(b)に示した例では、キャビネット300の短軸(Y方向)とスピーカユニット1Uの短軸O12が略同じ方向となるように、スピーカユニット1Uがキャビネット300に取り付けられており、同図(c)に示した例では、キャビネット300の短軸O12とスピーカユニットの長軸(X方向)が略同じ方向となるように、スピーカユニット1Uがキャビネット300に取り付けられている。また、同図(c)に示した例では、キャビネット300の短軸の方向(Y方向)におけるキャビネット300の外周部とスピーカユニット1Uの振動板10との間の距離に対して、隣接して配置されるスピーカユニット1U,1Uの振動板10,10間の距離が小さくなっている。
なお、図示の例では、スピーカユニット1Uの長軸方向は、ボイスコイル30の振動方向になっており、振動板10の短軸方向と略同じ方向になっている。また、スピーカユニット1Uの短軸方向は、振動板10の長軸方向と略同じ方向になっている。
また、スピーカ装置1における振動板10の振動方向(図示Z方向)におけるキャビネット300の幅、即ちキャビネット300が有する側面300bの幅は、キャビネット300に取り付けられる一対のスピーカユニット1Uが有する、振動板10の振動方向における振動方向変換部50(図24参照)の幅、即ち2つの振動方向変換部50の厚さで規定されている。具体的には、キャビネット300の側面300bの幅は、2つの振動方向変換部50の厚さに実質的に等しく形成されている。また、キャビネット300の側面300bの幅は、キャビネット300に対向配置される一対のスピーカユニット1Uが有する2つの磁気回路20間の距離(図24参照)に実質的に等しく形成されている。また、キャビネット300の側面300bの幅は、キャビネット300に対向配置される一対のスピーカユニット1Uが有する2つの振動板10間の距離に実質的に等しく形成されている。キャビネット300に対向配置される一対のスピーカユニット1Uが有する2つの振動板10,10は近接して配置されている。このため、キャビネット300が有する側面300bの幅が比較的小さくなる。スピーカ装置1のような全方位スピーカでは、振動板10,10を近接させてキャビネット300の側面300bの幅を比較的小さくすることで指向性が生じることを抑止することができる。
図30は、本発明の実施例に用いられる中高域再生用のスピーカユニット1Tの一例を示した説明図(断面図)である。ここではドーム状の振動板を用いた中高域再生用スピーカユニット1Tを示している。
このスピーカユニット1Tは、磁気回路20Tと、この磁気回路20Tが後部に取り付けられたフレーム40T(静止部)と、振動板10Tと、円筒状のボイスコイル支持部31Tと、ボイスコイル支持部31Tに巻回されたボイスコイル30Tとを備えている。
磁気回路20Tは、平面形状が円形状の底面部21Taと、底面部21Taの上に設けられた柱状のセンターポール21Tbとを有するヨーク21Tと、センターポール21Tbの外側に配置される環状の磁石22Tと、環状の磁石22Tの上に配置される環状のプレート23Tとを備える。プレート23Tの内周側面と、センターポール21Tbの外周側面との間には、ボイスコイル30Tが配置される磁気ギャップGtが設けられている。
振動板10Tは、音響放射方向に凸状であるドーム状の振動部11Tと、振動部11Tに連続して形成されると共に、振動部11Tをフレームに支持するエッジ部12Tとを備える。振動部11Tとエッジ部12Tとの間には、ボイスコイル支持部31Tを支持する連結部13Tが設けられており、磁気回路20Tに向かって凸状に形成されている。この連結部13Tに、ボイスコイル支持部31Tの状端部が、例えば接着剤等の接合部材にて接合されている。なお、振動部11Tとエッジ部12Tとが一体に形成されていることに限定されることなく、振動部11Tとエッジ部12Tとが別部材で形成されて、接合部材等で接合されていても構わない。また、ボイスコイル支持部31Tと振動板10Tとは別部材で形成されているが、これに限定されず、一体に形成されていても構わない。
また、図示はしないが、振動部11Tとボイスコイル支持部31Tが別部材で形成されており、振動部11Tの外周部をボイスコイル支持部31Tの上端部に例えば接合部材等で取り付け、ボイスコイル支持部31Tの外周側面であって、振動部11Tの外周部から離れた位置にエッジ部12Tの内周部を例えば接合部材等で取り付けても構わない。なお、振動部11Tは音響放射方向に向かって凹状であっても構わない。上述した中高域再生用スピーカユニットに関する技術は、2003年2月27日に日本出願された特許第3989856号、及び2004年2月25日に米国出願された米国特許第7088842号に記載されている。本願は前記の公報に記載される内容を援用する。
また、エッジ部12Tは、音響放射方向に向かって凸状の形状に形成されているが、これに限定されずに、凹状の形状にしても構わない。
また、エッジ部12Tを比較的大きくするなどにて有効振動面積を拡大しても構わない。この場合、エッジ部12Tは振動部11Tと同様の機能(振動板としての機能)を備える。
エッジ部12Tの外周部には、フレーム40Tの外周部と接合するフランジ部14Tが形成されている。フランジ部14Tの外周縁にはフレーム40Tの外周部に形成される外縁突起が延設されている。このフランジ部40の外周部に接合されるフランジ部14Tには環状のガスケット15Tが設けられている。
上述した中高域再生用スピーカユニットに関する技術は、2004年5月18日に日本出願された特開2005−333276、及び2005年5月17日に米国出願された米国特許第7577270号に記載されている。本願は前記の公報に記載される内容を援用する。なお、中高域再生用スピーカユニット1Tは、ドーム状の振動板を備えるスピーカユニットに限定されず、コーン状の振動板、平板状の振動板等を備えるスピーカユニット等、公知のスピーカユニットを使用することができる。
図31は、スピーカ装置1の指向特性を示した説明図である。なお、この指向特性は、対向配置したスピーカユニットの正面を0°又は180°として、スピーカユニットの振動板から一定の距離で前述した正面から角度を変えて、全方位の音圧特性を異なる周波数帯域(200Hz,500Hz,1kHz)毎に測定したものである。なお、対向し合うスピーカユニットが有する振動板の振動方向は互いに逆向きであり、一方のスピーカユニットの振動板がキャビネットの内側から外側に向かって振動する際、他方のスピーカユニットの振動板もキャビネットの内側から外側に向かって振動する。
同図(a)は、ボイスコイルの振動方向と振動板の振動方向が同じである従来のスピーカ装置に係る指向特性を示している。この指向特性からわかるように、スピーカユニットが有する2つの振動板の間の距離が比較的大きいために、一方のスピーカユニットが発する音波と他方のスピーカユニットが発する音波間の位相差によって、著しい指向特性が生じている。同図(b)は、本発明に係るスピーカ装置1における指向特性を示している。この指向特性からわかるように、スピーカユニットが有する2つの振動板の間の距離が比較的小さいために、一方のスピーカユニットが発する音波と他方のスピーカユニットが発する音波間の位相差によって、著しい指向特性の発生が抑止されている。
同図(a)、(b)に示される指向特性の比較から明らかなように、スピーカ装置1は、特に200Hzから1kHzの帯域で、全方位で音圧が略等しくなっており、著しい指向性が生じていないことがわかる。よって、本発明の実施例に係るスピーカ装置1は、いわゆる点音源に近い音響特性を備えており、例えば居住空間内或いは自動車の室内で、聴取者はその位置に因らずに良好な視聴が可能になる。
対向配置される1対のスピーカユニット1Uが有する2つの振動板10間の距離を比較的小さくすることで、一対のスピーカユニット1Uから発せられる音波が互いに干渉し合うことによって、指向特性が著しいという不具合を抑止することができる。
図32には、スピーカ装置1における音響特性(横軸が周波数(Hz)、縦軸が音圧)が示されている。同図(a)は、ボイスコイルの振動方向と振動板の振動方向が同じである従来のスピーカ装置に係る音響特性を示している。同図(b)は、本発明の実施例に係るスピーカ装置1に係る音響特性を示している。2つの図を比較してみると、スピーカ装置1の音響特性は、2つのスピーカユニット1Uから発せられる音波の位相差が所定の周波数帯域において180度ずれた逆位相の関係にあり、この干渉効果は高域で発生しており、スピーカユニット1Uの主な再生帯域である低域には生じていない。すなわち、同図(a),(b)の比較は、スピーカ装置1が比較的大きい周波数帯域を有する、良好な音響特性を有することを示している。
図33には、スピーカ装置1のキャビネット300にバッフル板を取り付けた場合におけるスピーカ装置に係る音響特性(横軸が周波数(Hz)、縦軸が音圧)が示されている。バッフル板をキャビネット300に取り付けていない場合の音響特性(線a)に対し、幅が比較的小さいバッフル板をキャビネット300に取り付けた場合(線b)、及び幅が比較的大きいバッフル板をキャビネット300に取り付けた場合(線c)における音響特性に大きな違いは見られない。すなわち、スピーカ装置1はバッフル板を備えていなくても、良好な音響特性を提供することが可能であることを図33は示している。また、スピーカ装置1はバッフル板の大きさ(例えば、外径など)に関わらず、実質的に同じ音響特性を提供することが可能であることを示している。
また、図32及び図33より、振動板10の振動方向におけるキャビネット300の幅を比較的小さくし、複数のスピーカユニット1Uを対向配置させることで、スピーカ装置1を薄型化でき、比較的大きいバッフル板を用いる必要がないことがわかる。よって、スピーカ装置1を小型化することができる。また、例えばピーク・ディップの発生が比較的小さいなどの、音響特性上の乱れを低減でき、良好な音響特性を得ることができることがわかる。
なお、図28及び図29には、キャビネット300は、長軸及び短軸で規定される平面形状を有する前面300aを備えることを示し、このキャビネット300の前面300aには、低域再生用スピーカユニットである複数のスピーカユニット1U(1W)、中高域再生用スピーカユニットである複数のスピーカユニット1Tが取り付けられていることを示したが、スピーカユニット1U(1W)、スピーカユニット1U(1T)のうち、一方を1つ、他方を複数、或いは双方を1つだけキャビネット300に取り付けても構わなく、或いは図示しないが、短軸方向に沿って低域再生用スピーカユニットである複数のスピーカユニット1U(1W)、中高域再生用スピーカユニットである複数のスピーカユニット(1T)を並べて配置しても構わなく、そのような配置形態は適宜変更可能である。
また、キャビネット300の2つの前面300a,300aには、一対のスピーカユニット1U(1W)、又は一対のスピーカユニット1U(1T)が、その音響放射面を外部に向けた状態で、対向する位置にて取り付けられている。キャビネット300に対する、スピーカユニット1U(1W)、スピーカユニット1Tの取付位置は、図示した実施例に特に限定されない。居住空間における聴取者の高さを考慮して、スピーカユニット1Tの取付位置を聴取者の目線、又は聴取者の耳の高さ近傍にすることが、スピーカユニット1Tの指向特性の点で好ましい。特に、図30に示されるような、スピーカユニット1Tを用いる場合、スピーカユニット1Tの指向特性を考慮して、スピーカユニット1Tの取付位置を聴取者の目線、又は聴取者の耳の高さ近傍にすることが好ましい。
また、図29(c)に示すような、スピーカユニット1U(1W)の長軸をキャビネット300の短軸と略同じ方向にして取り付ける場合、スピーカユニット1U、1U間の間隔を比較的小さくすることができるので、キャビネット300の長軸方向における指向特性を改善することができる。
キャビネット300に対して、スピーカユニット1U(1W)及びスピーカユニット1Tの取付位置を所定の高さにしてキャビネット300内の空間の容積を比較的大きくすることで、所望の音響特性を得ることができる。
また、図28(c)には、スピーカユニット1U(1W)が隣接して配置されており、スピーカユニット1U(1W)の振動板10,10間の距離は、キャビネット300の短軸方向(Y方向)における幅に対して小さいことが示されている。また、スピーカユニット1U(1W)の振動板10,10間の距離は、キャビネット300の外周部とスピーカユニット1U(1W)の振動板10との間の距離に対して略同じ又は小さい。このようなスピーカユニット1U,1Uを近接した配置にすることで、所定の方位にて音圧が比較的大きくなること、或いは比較的小さくなることを抑止でき、スピーカ装置の指向特性を良好にすることができる。
また、複数のスピーカユニット1U,1U,…の間にはどのようにスピーカユニット1Tを配置しても構わない。また、キャビネット300の長軸に対して、スピーカユニット1U(1W)の長軸又は短軸方向が沿うように、スピーカユニット1U(1W)をキャビネット300に取り付ける場合には、スピーカユニット1Uは、長軸方向(O11方向)では振動板10の外側にスペースを要するので、図29(b)に示すように、長軸O11をキャビネット300の長軸方向(X方向)に沿わせた方が、キャビネット300の短軸方向(Y軸方向)の幅を狭くできる。
また、図29(a),(b)においては、ボイスコイル30の振動方向(X方向)における、キャビネット300内の空間S1、S2の長さは、ボイスコイル30の振動方向(X方向)におけるスピーカユニット1U(1W)の長さに対して略同じに形成しても構わない。
なお、実施例に限定されない本発明においては、図23に示されるスピーカ装置1を構成するスピーカユニット1Uを、図24に示されるスピーカ装置を構成する2つのスピーカユニット1Uを、単一のスピーカユニットとして置き換えて、スピーカ装置1を構成しても構わない。また、図24に示されるキャビネット300の構成に限定されず、公知のキャビネットの構成を適宜取り入れても構わない。
このような構成を有するスピーカ装置1によると、ボイスコイル30の振動を振動方向変換部50で方向変換して振動板10に伝えるので、ボイスコイル30の振幅を大きくすることが直接スピーカ装置1の音響放射方向における厚さに影響しない。したがって、スピーカ装置1の大音量化を実現しながら、薄型化を実現することが可能になる。また、逆位相の発生音をキャビネット300内の空間で捉えるので、振動板10からの発生音を減衰させず、効率的な音響再生が可能になる。更には、キャビネット300の一部分で振動方向変換部50のリンク機構50Lを強固に支持することができるので、リンク部分51の角度変換をキャビネット300からの反力で効率よく行うことができ、ボイスコイル30の振動を方向変換しながら効率よく振動板10に伝えることができる。
図34,図35,図36は、本発明の他の実施形態に係るスピーカ装置(又はスピーカユニット)を示す説明図である(図34が全体断面図、図35が全体平面斜視図、図36が内部構造説明図である)。以下の説明でも前述した説明と共通する部位には図面に同一符号を付して重複説明を一部省略する。
この実施形態に係るスピーカ装置1(又はスピーカユニット1U)は、図24などに示した実施形態と同様に、一対の振動板10と、一対の振動板10とボイスコイル30とを振動自在に連結する一対の振動方向変換部50を備えている。また、このスピーカ装置1(又はスピーカユニット1U)では、一対の振動方向変換部50が一対の振動板10の間に配置されること、一対の振動方向変換部50が一対の振動板10を連結して互いに近接又は離間するように連動させていること、静止部100近傍に配置される振動方向変換部50の一部が静止部100によって振動自在に支持されていること、駆動部14近傍に配置される振動方向変換部50の一部が駆動部14によって振動自在に支持されること、一対の振動方向変換部50は一体的に形成されていることは、図24などに示した実施形態と同様である。
詳しくは、このスピーカ装置1(又はスピーカユニット1U)は、静止部100と、駆動部14と、振動体を備えている。ここでいう振動体は、静止部100に振動自在に支持される複数の振動板10と、これらの振動板10間に配置される振動方向変換部50を含む。振動方向変換部50は、複数の振動板10のうち、対面する第1の振動板10−1と第2の振動板10−2との間に設けられている。また、振動方向変換部50は第1の振動板10−1と第2の振動板10−2を連結して互いに近接又は離間するように連動させる。駆動部14は、振動方向変換部50の一部を振動自在に支持する。この駆動部14は、図示の例では、振動板10の振動方向(図示Z軸方向)とは異なる方向に沿って磁気ギャップ20Gを有する磁気回路20と、磁気ギャップ20Gに沿って振動するボイスコイル30とを備えている。また、これに限らず、圧電素子、磁歪素子、形状記憶金属(人工筋肉)で構成される素子等のように電気信号を機械的な振動に変換できるものであれば駆動部14になりうる。
図示の例では、単一の駆動部14を備えており、単一の駆動部14で一対の振動方向変換部50を振動させ、この振動方向変換部50を介して第1の振動板10−1と第2の振動板10−2を近接又は離間するように連結して振動させている。
静止部100は、フレーム12と振動方向変換部50の一部と連結する連結部12Bを備えている。連結部12Bは、フレーム12から振動方向変換部50に向かって突出する端部を備える。フレーム12は一つの部材で構成されていてもよいし、複数の部材が連結されたものであってもよい。図示の例では、フレーム12は、第1の振動板10−1を振動自在に支持する第1のフレーム12−1と、第2の振動板10−2を振動自在に支持する第2のフレーム12−2と、連結部12Bを備える第3のフレーム12−3とを備える。連結部12Bは、振動板10の振動方向(図示Z軸方向)にて剛性を備える。連結部12Bが振動板10の振動方向に剛性を備えることで、振動方向変換部50の基準高さを振動時にも一定に維持することができる。また、連結部12Bが振動板10の振動方向に剛性を備えることで、ボイスコイル30のX軸方向の振動を効率よくZ軸方向の振動に変換することができる。
振動方向変換部50は、前述した実施形態と同様にリンク部分51を備えている。振動方向変換部50は、リンク部分50として、ボイスコイル30と振動板10との間に配置される第1のリンク部分51Aと第1のリンク部分51Aを角度変換させる第2のリンク部分51Bを備えている。リンク部分51は必要に応じて補強用の凸部(補強部)510を備えてもよい。また、振動方向変換部50は、ボイスコイル用連結部分(第1の連結部分)53Aと、第1の関節部分52−1と、フレーム用連結部分53Cと、第2の関節部分52−2とを備えている。ボイスコイル用連結部分53A(第1の連結部分)は、第1のリンク部分51Aをボイスコイル30に連結する。第1の関節部分52−1は、第1のリンク部分51Aとボイスコイル用連結部分(第1の連結部分)53Aの間に設けられる。フレーム用連結部分53Cは、第2のリンク部分51Bを連結部12Bに連結する。第2の関節部分52−2は、第2のリンク部分51Bとフレーム用連結部分53Cとの間に設けられる。また、振動方向変換部50は、第1のリンク部分51Aの中間部分と第2のリンク部分51Bとを連結する第3の関節部分52−3を備えている。
連結部12Bは、振動方向変換部50のフレーム用連結部分53Cに連結している。言い換えれば、連結部12Bは、第2のリンク部分51Bと直接又は他の部材を介して連結している。また、第1の関節部分52−1と第2の関節部分52−2は、ボイスコイル30に対して(或いは振動板10の振動方向(図示Z軸方向)に沿って)実質的に同じ高さに配置されている。第1の関節部分52−1と第2の関節部分52−2の高さを実質的に同じ高さにすることで、ボイスコイル30のX軸方向の振動を略垂直に方向変換して振動板10を振動させることができる。また、一対の振動板10を傾くことなく振動させることができる。
振動板10の振動方向(図示Z軸方向)にて、互いに対向して配置される一対の振動方向変換部50,50は、ボイスコイル30と連結している。この時、一対のボイスコイル用連結部分53A,53Aは、ボイスコイル30に連結している。また、一対の振動方向変換部50,50は、連結部12Bと連結している。この時、一対のフレーム用連結部分53C,53Cはフレーム12の連結部12Bに連結している。振動板10の振動方向(図示Z軸方向)における、一対のボイスコイル用連結部分53A,53Aの厚さとボイスコイル30の厚さとを合算した厚さは、一対のフレーム用連結部分53C,53Cの厚さを合算した厚さと実質的に同じにしている。
前述した第1の関節部分52−1と第2の関節部分52−2の高さは、フレーム用連結部分53C,53Cの厚さ調整によって調整できる。図示の例では、フレーム用連結部分53C,53Cのそれぞれの厚さをボイスコイル用連結部分53A,53Aのそれぞれの厚さより厚くしている。このようにフレーム用連結部分53C,53Cのそれぞれ厚さを調整することに換えて、フレーム用連結部分53C,53C間にスペーサ部材を介在させても構わない。スペーサ部材を用いることで、フレーム用連結部分53C、53Cとスペーサ部材の厚さを合算した厚さを調整することも可能である。
振動方向変換部50の第1の関節部分52−1の下方には、前述した実施形態と同様に、ボイスコイル用連結部分53Aの表面を凹状にした、接触回避部70を設けている。この接触回避部70を設けることで、第1の関節部分52−1の近傍で第1のリンク部分51Aが下方のリンク部分に接触して異音を発するような不具合を抑止できる。
図示の例では、一対の振動方向変換部50、50が示されている。これに限定されず、図25、図26に示されるような、単一の振動方向変換部50を、一対の振動方向変換部50、50に代えて用いても構わない。
スピーカ装置1(又はスピーカユニット1U)は、振動板10を静止部200に連結するエッジ11を備えている。エッジ11は、4つの角部を有する環状の平面形状を備える。エッジ11は、複数の角部と、短軸方向に延在する第1の部分と、長軸方向に延在する第2の部分とを備える。また、角部及びその近傍におけるエッジ11の一部分は、断面形状が凸状又は凹状の補強部11Sを備えている。また、エッジ11には、その短軸方向又は長軸に沿って補強部11S1を設けてもよい。補強部11S1は、エッジ11のヤング率や内部損失を他の部分より大きくしたもので、具体的にはエッジ11の表面又は内部にエマルジョン系樹脂などを付与するか、或いはエッジの厚さを部分的に厚くすることで形成できる。補強部11S1はボイスコイル30の振動方向(図示X軸方向)に沿ってエッジ11を補強できる。このため、ボイスコイル30のX軸方向の振動が加わる場合にも振動板10のローリング現象を抑止して、振動板10をZ軸方向に沿って振動させることができる。補強部11S1は、エッジ11が有する第1の部分の一方だけ、又は両方に設けられても良い。また、エッジ11の一部分に補強部11S1を設けることで、エッジ11の柔軟性を維持しつつ、振動板10の振動に対する追従性を向上させることができる。また、必要に応じて、エッジ11に環状に補強部11S1を設けても構わない。
スピーカ装置1(又はスピーカユニット1U)には、振動方向変換部50のフレーム用連結部分53C又はボイスコイル用連結部分53Aに、振動板10に向かって凸状の振動規制部材530を備えてもよい。この例では、ボイスコイル用連結部分53A上であって第2の関節部52−2の近傍に振動規制部材530が配置されている。また、この振動規制部材530は、関節部52−2を介してボイスコイル用連結部分53Aに連結するリンク部分51(51B)に対面するように配置されている。この振動規制部材530は、リンク部分51Bの一部に接触することで、音を発生させる。ボイスコイル30の振幅が過剰に大きくなった場合、リンク部分51Bの振幅も過剰に大きくなる。この時、リンク部分51Bの一部は、振動規制部材530に向かって移動する。この時、リンク部分51Bの一部と、振動規制部材530とが接触する。このように、振動規制部材530は、リンク部分51Bの振幅が過剰に大きくなった場合に、リンク部分51Bの一部との接触により音を発生して、ユーザーに過振幅を知らせる機能を有する。ユーザーは振動規制部材530の接触音が生じない範囲で使用できる。また、ボイスコイル30の過振幅により、振動方向変換部50が損傷するのを抑止できる。
図示の例では、磁気回路20のヨーク22(22A,22B)は2つの平坦状部22S1,22S2とその間に形成される傾斜部22Pを備える。一対の平坦状部22S1,22S1の間には磁石21(21A,21B)が設けられている。これら磁石21(21A、21B)の間に、一つの磁気ギャップ20Gが形成されている。また、傾斜部22Pを設けることで一対の平坦状部22S2,22S2の間の間隔が狭められている。この一対の平坦状部22S2、22S2の間には、もう一つの磁気ギャップ20Gが形成されている。ボイスコイル30は2つの磁気ギャップ20G間を巡回するように導線が巻き回されている。
ボイスコイル30の内周側の端部、外周側の端部は引出線31を介して、ボイスコイル引出パターン32Pに接続している。ボイスコイル引出パターン32Pの端部32P1はリード線33を介してフレーム12の外側に設けた外部端子34に接続している。リード線33にはボイスコイル30の振動を許容するように余長部が形成されている。
スピーカ装置1(又はスピーカユニット1U)の各構成部材は接着剤等の接合部材によって連結することができる。また、以下に記載する構成をスピーカ装置1が備えることで、各構成部材を連結することが可能である。スピーカ装置1の複数の構成部材は、互いに連結又は固定されている。この複数の構成部材のうち、一方の構成部材に突起状部90を設けて、他方の構成部材に突起状部90が挿入される孔部91を設ける。この孔部91に突起状部90が挿入される。孔部91から突出した突起状部の一部(先端部)を熱溶融して、フランジ部90aを構成する。このフランジ部は、突起状部90が孔部91から抜けることを抑止できる。
図16、図17、図18に示されるように、第1の構成部材100A又は第2の構成部材100Bの一方は、端子部81を位置決めする位置決めピン100Pを備える。また、複数の位置決めピン100Pは、ボイスコイル30の振動方向に沿って、配置されている。端子部81は、位置決めピン100Pが挿入される孔部81hを備える。必要に応じて、位置決めピン100Pを突起状部として、孔部81hから突出する位置決めピン100Pの一部(先端部)を溶融し、フランジ部を構成しても構わない。
また、図15、図17、図18、図20に示されるように、取り付けユニット16が接続孔部16d(嵌合孔)を備える。また、第2の構成部材100B(静止部)は、接続孔部16dに挿入される嵌合突起部を備える。また、第1の構成部材100A(静止部)は、嵌合突起部が挿入される孔部を備える。必要に応じて、この嵌合突起部を、突起状部とし、接続孔部16d又は第1の構成部材100Aの孔部から突出した嵌合突起部の一部(先端部)を溶融し、フランジ部を構成しても構わない。
図34〜図39はスピーカ装置1の各構成部材の連結構造を示した説明図である。静止部100と駆動部14と振動板10のそれぞれは一つ又は複数の構成部材によって構成されている。構成部材は、静止部100,駆動部14,振動板10の一部又は全体を構成する部材である。静止部100としては、フレーム12,振動板用フレーム12−1、12−2等になる。駆動部14としては、ボイスコイル30,ボイスコイル支持部40,磁気回路20の構成要素(磁気回路20は静止部100にもなりうる)等になる。複数の振動板10,複数のエッジ11、エッジ11等が構成部材になる。構成部材を2種類に分けるとすると、ボイスコイル30,ボイスコイル支持部40,振動板10、10,エッジ11,振動方向変換部50の各部位等が振動系部材であり、フレーム12,振動板用フレーム12−1、12−2,磁気回路20等が静止系部材である。複数の構成部材は、駆動部材14の振動方向に対して交差する方向にて、所定の間隔を隔てて重ねて配置されても構わない。
図34〜図39に示すように、スピーカ装置1は、前述した構成部材が互いに固定又は接合されて構成されおり、互いに固定される一方の構成部材は突起状部90を備えており、互いに固定される他方の構成部材は突起状部90が挿入される孔部91を備えている。そして、突起状部90は、駆動部材14(ボイスコイル30又はボイスコイル支持部40)の振動方向(図示X軸方向)に対して交差する方向に沿って突出している。
これによると、突起状部90が駆動部材14の振動方向に対して交差する方向に沿って突出している。このため、突起状部90は、駆動部材14の振動を受け止めて、駆動部材14の振動が構成部材の固定状態に悪影響を及ぼすことを抑制することできる。また、孔部91の内径と突起状部90の外径との隙間を実質的に無くしても構わない。この隙間を実質的に無くすことで、構成部材の位置関係が、比較的高い精度で定まる。また、突起状部90は、駆動部材14の振動により、互いに固定し合う構成部材の位置関係がずれることを抑止できる。また、突起状部90は、駆動部材14の振動方向に対し、剛性(曲げ剛性)を備えていても構わない。突起状部90が剛性を備えることで、互いに固定し合う構成部材の位置関係がずれることを抑止することができる。
突起状部90および孔部91が配置される箇所は、複数の振動系部材が連結する連結部、複数の静止系部材が連結する連結部、または振動系部材と静止系部材とが連結する連結部である。
一方の構成部材は、突起状部90が設けられる固定面を備えている。他方の構成部材は、孔部91が設けられる固定面を備えている。一方の構成部材および他方の構成部材の各固定面は、駆動部材14の振動方向(図示X軸方向)に沿って延在している。これら固定面を備えるとともに、駆動部材14の振動方向と振動板10の振動方向が異なるスピーカ装置1では、構成部材が有する突起状部90を構成部材が有する孔部91に挿入することで、駆動部材14の振動方向に対しての固定状態を安定化できる。また、一方の構成部材の固定面と他方の構成部材の固定面とを当接させることで、振動板10の振動方向に対する固定状態を安定化できる。
また、図36に示すように、一方の構成部材は突起状部90を複数備え、他方の構成部材は孔部91を複数備えている場合で、複数の突起状部90の少なくとも一つは、振動板10の振動方向(図示Z軸方向)に対し交差する方向であって駆動部材14の振動方向(図示X軸方向)に沿って突出している。これによると、突起状部90が振動板10の振動方向に対して交差する方向に沿って突出しているので、振動板10の振動を突起状部90が受け止めて、振動板10の振動が互いに固定し合う構成部材の固定状態に悪影響を及ぼすことを抑制することできる。駆動部材14の振動方向と振動板10の振動方向が異なるスピーカ装置1では、駆動部材14の振動方向と振動板10の振動方向の両方で、互いに固定される構成部材の固定状態を安定化することができる。
また、同図に示すように、他方の構成部材は、一方の構成部材に隣接して配置される壁部(例えば、壁部12B1)を備える。駆動部材14の振動方向(図示X軸方向)に沿って、突起状部90と壁部は並べて配置されている。壁部は、一方の構成部材の位置を規制するために設けられる。特に、駆動部材14の振動方向に沿って突起状部90に接して壁部が配置される場合には、壁部は、他方の構成部材に対する一方の構成部材の位置を規制できる。また、一方の構成部材が、突起状部90と壁部を備えても構わない。この場合、壁部は、一方の構成部材に対する他方の構成部材の位置を規制することができる。
突起状部90および孔部91は、振動系部材(ボイスコイル30,ボイスコイル支持部40,振動板10,エッジ11,振動方向変換部50等)のうち実質的に振動する部分の近傍に配置しても構わない。これによると、構成部材のうち、実質的に振動している一部分による外力(振動)を、直接的に突起状部90が受け止める。このため、外力(振動)が互いに固定される複数の構成部材の固定状態に悪影響を及ぼすことを効果的に抑止できる。実質的に振動する部分とは、振動系部材の一部、振動系部材を支持する静止系部材の一部、振動系部材の振動が直接的に伝播される静止系部材の一部などが挙げられる。
また、同図(d)に示すように、突起状部90は、孔部91内に配置される柱状の支柱部と、突起状部90を備える一方の構成部材が有する固定面(例えば、固定面12B1)に対面して配置されるフランジ部90aを備える。また、このフランジ部90aは、孔部91の内側から外側に向かって延在する。フランジ部90aの外径は、フランジ部90a近傍における孔部91の外径に対して大きい。これによると、支柱部が、支柱部に沿う方向に対して交差する方向における、位置を規制し、フランジ部90aが支柱部に沿った方向における、位置を規制できる。
一方の構成部材の固定面とフランジ部90aとの間には、他方の構成部材の固定面が配置されている。また、複数の固定面は、ボイスコイル30の振動方向に沿った面を構成している。互いに接する一方の構成部材の固定面と他方の構成部材の固定面は実質的に平坦であっても構わない。これによると、フランジ部90aが対向する複数の固定面の接触状態を保持している。このため、互いに固定される構成部材は互いの固定面が接触した状態で、駆動部材14の振動方向と振動板10の振動方向における固定状態を維持することができる。特に、互いに固定される構成部材の固定面が接触しているため、振動板10の振動方向において、構成部材がガタつくことなく、良好な固定状態を維持できる。また、互いに固定される構成部材の固定面がボイスコイル30の振動方向に沿う面を備える。このため、ボイスコイル30の振動方向において、固定面を有する一方の構成部材と、固定面を有する他方の構成部材とを実質的に平行に配置することができる。また、必要に応じて、対向する複数の固定面の間に、樹脂部材、弾性部材、緩衝部材、接着剤などを配置することができる。
図示の例では、スピーカ装置1を薄型化すべく、構成部材の各々は、比較的薄く構成されている。即ち、振動板10の振動方向における構成部材の厚さは、ボイスコイル30の振動方向における長さより小さい。また、振動板10の振動方向における構成部材の厚さは、振動板10の振動方向及びボイスコイル30の振動方向に対して交差する方向における長さより、小さい。このため、比較的薄い構成部材は、例えば、断面形状が湾曲状に変化するなど、変形を生じる場合がある。また、製造時の条件などにより、比較的薄い構成部材が、わずかながらに湾曲している場合がある。また、図示されるスピーカ装置1では、各構成部材を、振動板10の振動方向に沿って積み重ねて、構成される。このため、湾曲した構成部材を用いた場合、他の構成部材と良好に連結することが困難になる場合がある。また、湾曲した構成部材と他の構成部材とを連結した際、固定力が低減してしまう場合がある。また、振動板10の振動方向において、他の構成部材を所望の位置に配置できない場合がある。そこで、突起状部90と孔部91を用い、構成部材を他の構成部材に略平行な形状に維持しつつ、他の構成部材に固定させることができる。また、互いに連結し合う構成部材の固定力を向上できる。また、振動板10の振動方向における、構成部材の相対的な位置関係を、所望の位置関係にすることができる。特に、突起状部90又は孔部91の周囲に固定面を設けることで、互いに連結し合う構成部材の連結部分を、互いに略平行な形状に維持しつつ、固定することができる。
また、複数の構成部材は、振動板10の振動方向における所望の位置で、精度良く固定される。また、突起状部90が剛性を備えることで、ボイスコイル30の振動方向にて、位置ズレを生じることを抑止できる。また、突起状部90、孔部91の周囲に設けられる固定面は、ボイスコイル30の振動方向に沿う面を備える。また、固定面は、平坦な面を備えても構わない。このような、突起状部90、孔部91、固定面を用いることで、振動板10の振動方向とボイスコイル30の振動方向における、構成部材の相対的な位置関係を良好にすることができる。
図示の例では、フレーム12にヨーク23A、振動板用フレーム12−1、12−2がボイスコイル30の振動方向に沿って、並べて配置され、固定されている。ヨーク部22は、振動板10の振動方向における、磁気ギャップ20Gの幅を規定する。振動板用フレームは、振動板10の振動方向における、振動板10の位置を規定する。また、規定された磁気ギャップ20G内にボイスコイル30が配置される。このボイスコイル30は、振動方向変換部50を介して、振動板10に連結している。この場合、例えば、ヨーク部22と振動板用フレーム12−1、12−2が、ボイスコイル30の振動方向、振動板10の振動方向において所望の位置にされた場合には、ボイスコイル30と振動板10のうち、少なくとも一方はボイスコイル30の振動方向に対して傾いた状態で配置されることを抑止することができる。
突起状部90を備える一方の構成部材は、例えば樹脂部材で構成される。樹脂部材としては、光照射(赤外線等)、半田ごてなどの加熱手段により、加熱することで溶ける熱可塑性樹脂、半田などの熱溶融型材料が挙げられる。フランジ部90aは、フランジ部90aを支持する支柱部の端部に連続的に設けられる。このフランジ部90aは、例えば、加熱圧接部材で支柱部を圧接することで形成できる。特に、互いに固定される構成部材を固定する際に、突起状部90を孔部91に挿入した状態で、支柱部aの端部が熱溶融されて、フランジ部90aが形成される。また、フランジ部90aは、支柱部aの端部に、フランジ部90aに対応する金型を備える加熱圧接部材を圧接することで、形成されても構わない。これによると、構成部材1A1,1A2を互いに固定・接合することができる。なお、以下に示す図では、加熱する前の支柱部aが突出した突起状部90を「1B(a)」と示し、支柱部aの端部を加熱して溶かしたフランジ部90aを有する突起状部90を「1B(b)」と示す。
金型を備える加熱圧接部材で形成されたフランジ部90aは、フランジ部90aに対面する構成部材の上面に接していても構わない。また、フランジ部90aの下面には、構成部材の上面の表面形状が転写されても構わない。フランジ部90aの下面に、構成部材の表面形状が転写されることで、駆動部材14の振動方向における、互いに固定される構成部材の位置ズレを抑止できる。また、構成部材間でガタツキが生じることを抑止できる。
突起状部90などの被加熱部材を加熱する手段として、外部加熱手段と内部加熱手段とがある。外部加熱手段は、被加熱部材の外部にある熱源から、熱伝導(熱の移動)によって加熱する方法である。
内部加熱手段は、被加熱部材自身を発熱させる方法である。また、被加熱部材の内部の温度を上昇させるので、加熱したくない部材の温度上昇を抑制できる。このため、加熱したくない部材に変形等が発生することを抑止できる。また、薄型化した構成部材1Aを、振動板10の振動方向に沿って積み重ねて、スピーカ装置1を構成する場合がある。この場合、振動板10の振動方向において、複数の構成部材1Aを精度良く配置する必要がある。この時、1つの構成部材が溶着時の加熱で変形等してしまうと、複数の構成部材1A間の相対的な位置関係に悪影響が生じてしまう。具体的には、変形した振動板10(振動系部材)が所望の振動方向に沿って振動できなくなる場合がある。また、変形したボイスコイル30(振動系部材)が後述するヨークに接触し、異音が発生する場合がある。また、フレーム12が変形し、所定の位置に後述するヨークを配置できなくなる場合がある。この時、ボイスコイル30と後述するヨークとの接触を誘発させる場合がある。このため、内部加熱手段を用いることで、複数の構成部材1Aの相対的な位置関係を良好にすることができる。
外部加熱手段の具体例としては、熱風式溶着、熱板式溶着、インパルス式溶着、コテ式溶着などが挙げられる。内部加熱手段の具体例としては、高周波誘電加熱法を用いた超音波溶着、集光させた赤外線やレーザービームを用いる光溶着などが挙げられる。
特に、内部加熱手段のうち、光溶着は加熱したい被加熱部材の一部のみを実質的に加熱できる。このため、被加熱部材に変形等が生じることを抑止できる。
フランジ部90aに対面する、構成部材の表面に、表面処理を施しても構わない。表面処理等を施すことで、フランジ部90aと構成部材との密着力を向上させることができる。また、必要に応じて、フランジ部90aを形成すると同時に、フランジ部90aと構成部材とを一体化させても構わない。また、互いに固定される構成部材との間に、ガタツキが生じない程度に、隙間が形成されても構わない。
図示の例では、一対のフレーム用連結部分53C,53Cは、連結部12Bと連結している。フレーム用連結部分は、前述の一方の構成部材の一例であり、連結部12Bは他方の構成部材の一例である。連結部12Bは、フレーム用連結部分53Cを固定する固定面12B1を備える。連結部12Bの固定面12B1上には、突起状部90が設けられている。フレーム用連結部分53Cは孔部91,91を備える。この孔部91には、突起状部90が挿入されている。この時、一対のフレーム用連結部分53C,53Cは、連結部12Bを挟んだ状態で、固定面12B1に取り付けられる。連結部12Bの固定面12B1は段差状になっている。壁部12B2は、固定面12B1の端部に設けられる。壁部12B2は、フレーム用連結部分53Cの端部に対向して配置される。壁部12B2は、連結部12Bに対する位置決め部となっている。また、壁部12B2は、ボイスコイル30の振動方向において、フレーム用連結部分53Cの移動を規制しても構わない。
図37は、本発明の他の実施形態に係るスピーカ装置(又はスピーカユニット)を示す説明図(全体断面図)である。このスピーカ装置1(又はスピーカユニット1U)は図34〜図36に示した例の変形例である(同一部位は図面に同一符号を付して重複説明を省略する)。スピーカ装置1(又はスピーカユニット1U)は、断面形状(ボイスコイル30の振動方向に交差する断面形状)が環状のボイスコイル30を備えている。
図示の例では、導電部材が環状のボイスコイル支持部40に支持されている。また、ボイスコイル30が実質的に導電部材のみで構成され、環状の剛性を有するものであってもよい。導電部材は、始点および終点を有する導線、筒状の形状を有する金属部材や金属フィルムであっても構わなく、公知の材料を用いることができる。
ボイスコイル30は、1つの導電部材で構成しても構わなく、複数の導電部材で構成しても構わない。ボイスコイル30を複数の導電部材で構成する場合、例えば、巻き回された一方の導線上に、他方の導線を巻き回して、ボイスコイル30を構成しても構わない(デュアルボイスコイル)。ボイスコイル30は、ボイスコイル支持部40を備えていても構わない。このボイスコイル支持部40は、公知の樹脂材料で構成されて構わない。ボイスコイル30の軽量化を図るべく、ボイスコイル支持部40を筒状の樹脂部材で構成し、このボイスコイル支持部40の外周側面に導電部材としての導電層を形成しても構わない。ボイスコイル支持部40は、ボイスコイル30の振動方向にて、剛性を備えていても構わない。
磁気回路20は、図示の例では、ヨーク部22と磁石21とプレート23を備えており、ヨーク部22は外周筒部22aと底面部22bと柱部22cを備える。柱部22cに磁石21が磁気的に接合し、プレート23の外周面とヨーク部22の外周筒部22aとの間に磁気ギャップ20Gが形成される。ヨーク部22と柱部22cは別部材で構成されていても良く、一体に構成されていても構わない。また、柱部22cを磁石にするか、又は磁石21及び柱部22cを一体にした磁石にしても構わない。磁気回路20を構成する構成部材としての、ヨーク部22、磁石21、プレート23は磁性体で構成されている。磁石21は、希土類系磁石、フェライト系磁石であっても構わなく、公知の磁性材料を用いることができる。また、図示の例では単一の磁石21が示されているが、磁気効率等を考慮して複数の磁石を用いても構わない。複数の磁石を用いる場合、希土類系磁石とフェライト系磁石とを組み合わせて用いても構わない。図示の例は、いわゆる内磁型の磁気回路であるが、外磁型磁気回路、内磁型及び外磁型磁気回路を併用した磁気回路、複数の磁石を用いた反発型磁気回路であってもよく、磁気回路の形態は特にこれに限定されるものではない。
振動方向変換部50は、剛性の筒状連結部材92を介してボイスコイル30に連結している。詳しくは、振動方向変換部50のボイスコイル用連結部分53Aが筒状連結部材92を介してボイスコイル30又はボイスコイル支持部40と連結している。
筒状連結部材92は、剛性の取付面部92cと、第1の筒状連結部92aと、第2の筒状連結部92bとを備える。剛性の取付面部92cは、ボイスコイル30の振動方向に対して交差する方向に沿った取付面92c1を有する。第1の筒状連結部92aは、ボイスコイル用連結部分53Aに連結する。詳細には、第1の筒状連結部92aの内周面は、ボイスコイル用連結部分53Aの外周面に接している。これにより、第1の筒状連結部92aは、ボイスコイル用連結部分53Aを、ボイスコイル30に対し規定の位置に配置する。第2の筒状連結部92bは、ボイスコイル30に連結する。詳細には、第2の筒状連結部92bの外周面は、ボイスコイル支持部40の内周面に接している。これにより、第2の筒状連結部92bは、ボイスコイル支持部40を、ボイスコイル用連結部分53Aに対し規定の位置に配置する。
振動方向変換部50の第2のリンク部分51Bは、第3の関節部分52−3の近傍に湾曲部54を備える。湾曲部54を設けることで、振動方向変換部50の振動時に第1のリンク部分51Aと第2のリンク部分51Bとが接触して異音を発するような不具合を抑止できる。湾曲部54は、第1のリンク部分51Aから振動板10に向かう方向に凸状である断面形状を備える。
図38,図39,図40,図41,図42は、本発明の他の実施形態に係るスピーカ装置を示した説明図である(図38が全体断面図、図39が部分断面図、図40が中高域再生用スピーカユニット(ツイータ)の構成例を示す断面図、図41が付属部品取付図、図42が外観図)。ここでも前述する説明と共通する部位は図面に同一符号を付して重複説明を省略する。
スピーカ装置1は、キャビネット300を備えている。このキャビネット300内の空間Sに、前述した第1の振動板10−1と第2の振動板10−2を備えるスピーカユニット1Uが配備されている。キャビネット300は2つの部品300−1,300−2を結合することで内部に気密な空間Sを形成している。キャビネット300の外周縁には導光部材304が配置されている。スピーカ装置1の動作時等に、導光部材304にLED等の自発光素子で構成される光源(図示省略)から光が導入される。これにより、キャビネット300の周囲に導光部材から光を放射させることができる。この光により、スピーカ装置1の意匠性を向上させることができる。また、ユーザーがスピーカ装置1の位置を確認できる。また、このスピーカ装置1を光源としても活用することができる。
また、キャビネット300の表面にはカバー302が取り付けられている。このカバー302は、複数の孔部を備える。スピーカユニット1Uが放射する音波は、この孔部を通過して外部に放出される。カバー302は、パンチングネット等、公知の部材で構成される。キャビネット300の外には音声信号の入力を行うための配線303が引き出されている。
キャビネット300の空間S内で、磁気回路20と振動板10(第1の振動板10−1と第2の振動板10−2)はボイスコイル30の振動方向に並べて配置されている。すなわち、振動板30の振動方向において、磁気回路20と振動板10とが重ならないようにしている。薄型のスピーカ装置1を実現するためには、必然的にキャビネット300の2つの部品300−1,300−2間の距離は短くなるので、磁気回路20はキャビネット300の近傍に配置される。
このように磁気回路20がキャビネット300の近傍に配置されているスピーカ装置で1は、駆動時に、ボイスコイル30にジュール熱が発生する。このジュール熱が、磁気回路20から輻射熱としてキャビネットに放出される。このため、輻射熱がキャビネット300に伝わり、キャビネット300が変形してしまう虞がある。これを解消するためにスピーカ装置1は、キャビネット300に支持される放熱用部材301を備える。放熱用部材301は、金属部材、熱伝導率の高い部材(例えば、アルミ等の金属板)で構成される。また、放熱用部材301は、磁気回路20に対面する表面301aとキャビネット300の外側の空間に対面する表面301bを有する板状の部材で構成することができる。
放熱用部材301は、キャビネット300の開口部300p内に配置されている。また、放熱用部材301は、磁気回路20の近傍に配置されている。これによって、駆動時に磁気回路20から発生した熱が効率的に放熱用部材301に輻射される。放熱用部材30は、輻射された熱をキャビネット300の外に放出する。キャビネット300の開口部300pは放熱用部材301で塞がれるので、キャビネット300内の空間Sの気密性は確保される。また、キャビネット300と放熱用部材30とが連結する連結部分における気密性は維持しながら、キャビネット300は音波を放出するダクト(放音部)を備えていても構わない。
スピーカ装置1は、キャビネット300に第1の振動板10−1と第2の振動板10−2に合わせた2つの音響放射面を有する中高域用スピーカユニット(ツイータ)100Tが配備される。中高域用スピーカユニット100Tは、図40に示すように、同形態の第1ユニット100T−1と第2ユニット100T−2が対向配置されている。中高域用スピーカユニット100Tの第1ユニット100T−1と第2ユニット100T−2には、スピーカユニット1Uと同じ音声信号がハイパスフィルターを介して入力される。また、第1ユニット100T−1と第2ユニット100T−2が有する第1の振動板10−1(110T),第2の振動板10−2(110T)は、互い同期して振動する。
中高域用スピーカユニット100Tは、基本的には、図30に図示される中高域用スピーカユニットを一対組み合わせたスピーカユニットである。また、振動板(図示の例ではドーム型振動板)110Tは、エッジ111Tを介してフレーム112Tに振動自在に支持されている。また、ボイスコイル130Tは、振動板110Tに直接又はボイスコイル支持部140Tを介して連結している。また、ボイスコイル130Tが磁気回路120Tの磁気ギャップ内に振動自在に配置されている。磁気回路120Tは、図示の例では、ヨーク121Tと磁石122Tとプレート(第1プレート122T)と、吸音部材124Tによって構成されている。
中高域用スピーカユニット100Tは、第1ユニット100T−1と第2ユニット100T−2の各フレーム112Tが接合されているか、各フレーム112Tが一体に形成されていてもよい。また、第1ユニット100T−1と第2ユニット100T−2の各フレーム112Tがそれぞれキャビネット300に支持されていれば、両者は間隙を設けて配置されていてもよい。フレーム112T、112Tとの間に間隙を設ける場合、フレーム112T、112T間に緩衝部材を配置しても構わない。緩衝部材を配置することで、フレーム112T、112Tの振動を減衰させることが可能になる。
スピーカ装置1はキャビネット300を被取付部材に回転自在に取り付ける取付部400を備えている。この取付部400はキャビネット300に対して一体に形成してもよい。或いは、取付部400をキャビネット300とは別の構成部材で形成しても構わない。別の構成部材で構成された取付部400は、キャビネット300の外側に連結してもよい。
取付部400は、キャビネット300を被取付部材に回転自在に支持する回転用支持部材401を備えると共に、回転用支持部材401を回転自在に収容する収容部400Aを備えている。収容部400Aに回転用支持部材401は嵌合して取り付けられる。詳しくは、回転支持部材401の軸支嵌合部401Aが取付部400における被嵌合部400Sに回転自在に嵌合している。
収容部400Aはキャビネット300の外周縁から内側に入り込むように形成されており、キャビネット300は、収容部400Aに対して独立した気密空間を有している。キャビネット300に対して取付部400が一体に形成される場合は、スピーカユニット1Uが配備されるキャビネット300内の空間Sと収容部400Aとを仕切り、空気の出入りを遮断する壁枠が設けられる。また、キャビネット300に対して取付部400が別体に連結される場合には、キャビネット300の外周枠に取付部400を連結する連結部が設けられる。
このようなスピーカ装置は各種電子機器や車載用として効果的に用いることができる。図43は、本発明の実施形態に係るスピーカ装置を備える電子機器を示した説明図である。同図(a)に示した携帯電話或いは携帯情報端末のような電子機器2、或いは同図(b)に示したフラットパネルディスプレイのような電子機器3では、電子機器3が備える被取付部材としての筐体内にスピーカ装置1を収納する、又は電子機器の被取付部材としての筐体側面にスピーカ装置1を取り付けても、スピーカ装置1の設置に必要な厚さスペースを小さくできるので、電子機器全体の薄型化が可能になる。また、薄型化された電子機器においても充分な音声出力を得ることができる。
図44は、本発明の実施形態に係るスピーカを備えた自動車を示した説明図である。同図(a)に示した自動車4は、スピーカ装置1の薄型化によって車内スペースの拡大が可能になる。特に、被取付部材として、天井4a、リアトレイ4b、ダッシュボード4c、或いはドアパネルに本発明の実施形態に係るスピーカ装置1を取り付けても、車内空間への出っ張りを比較的小さくでき、運転者の操作スペースの拡大や、室内のスペースを拡大することが可能になる。また、充分な音声出力が得られるので、雑音が多い高速走行時等でも車内で快適に音楽やラジオ放送を楽しむことができる。自動車内で、同図(b)に示すようにダッシュボード4cの上面Dにスピーカ装置1を配置した場合には、スピーカ装置1の上面及び左右に放音部を設けることで、ダッシュボード4cの両サイドのサイドガラスSG,SGやフロントガラスFG、バックガラスBGで音を反射させて、車室内で効果的な聴取音を得ることができる。また、同図(c)に示すような、左右に設けた放音部へ効率良く音波を誘導するべく、振動板30に対向するキャビネット300等の静止部にイコライザ304を設けても構わない。また、図27に示したような形態例の電子機器をダッシュボード等の被取付部材に取り付けても構わなく、自動車に乗車した乗員の人数や乗車位置に応じて、車内に所望の音場を形成することができる。また、図44(c)で図示されるスピーカ装置1では、放音部320が設けられている。これに限定されず、スピーカ装置1の取付スペースや自動車内の形状に応じて、放音部320をフロントガラスSG側と、フロントガラスSGに対して逆側に設けても構わない。
図45、図46は、自動車内に取り付けた、本発明の実施形態に係るスピーカの取り付け例の説明図である。図示の例では、取付部400が自動車内の壁部4dに取り付けられている。また、スピーカ装置1は、取付部400を介して、壁部4dに回転自在に支持されている。また、スピーカ装置1は、壁部4dに対し、取付部400を介して、壁部4dに接近又は離間することができる。詳細には、図45(a)に示されるスピーカ装置1は、壁部4dから座席(内側)に向かう方向にて、突出するように配置されている。図45(b)に示されるスピーカ装置1は、壁部4dの近傍に配置されている。特に、壁部4d側におけるスピーカ装置1の音響放射面は、壁面4d−1に対面している。この時、壁部4d側の音響放射面と壁面4d−1との間には、距離Lだけ間隙が設けられている。この距離Lは比較的小さい。図45(a)、(b)では、スピーカ装置1は、前部座席(運転席)に接近させた状態で、壁部4dに取り付けられている。図46(a)に示されるスピーカ装置1は、図45(a)に示されるスピーカ装置1を運転席側から見た図である。図46(b)は、図45(b)のスピーカ装置1の取り付け例と同様に、壁部4dの近傍にスピーカ装置1を配置した取り付け例を示したものである。図46(a)、(b)では、スピーカユニット1Uを、背面ガラスに接近させた状態で、壁部4dに取り付けられている。また、図45(a)、図46(a)では、スピーカユニット1Uの長軸方向が、前部座席と後部座席(ST)に向かう方向に沿う方向にて、スピーカ装置1が壁部4dに取り付けられている。また、図45(b)、図46(b)では、スピーカユニット1Uの短軸方向が、前部座席と後部座席に向かう方向に沿う方向にて、スピーカ装置1が壁部4dに取り付けられている。
図45、図46に示されるスピーカ装置1は複数のスピーカユニット1U、複数の中高域用スピーカユニット100Tを備えている。また、複数のスピーカユニット1U、複数の中高域用スピーカユニット100Tは、スピーカ装置1の複数の音響放射面を構成する。この音響放射面と、スピーカ装置1の近傍に配置される壁部4dが有する壁面4d−1との間には、所定の距離Lだけ間隙が設けられている。この距離Lが比較的大きい場合には、壁部4dで反射された音波と、スピーカ装置1が放射する音波とが干渉し、スピーカ装置1が提供する無指向性に悪影響が生じる場合がある。よって、スピーカ装置1が提供する無指向性を良好にする点で、距離Lを比較的小さくすることが好ましい。言い換えれば、スピーカ装置1の音響放射面を壁部4dの近傍に配置することが好ましい。
また、図示の例では取付部400を介して壁部4dにスピーカ装置1が取り付けられているが、これに限定はされない。壁部4dに直接にスピーカ装置1を取り付けても構わない。この場合には、スピーカ装置1の一部が壁部4d内に配置される。また、スピーカ装置1の外周部を、壁部4dが支持する。また、スピーカ装置1の一方の音響放射面が壁部4dの外側の空間に対面している。また、スピーカ装置1の他方の音響放射面は壁部4d内の空間に対面している。この時、壁部4dは、スピーカ装置1の他方の音響放射面から放射される音波を壁部4dの外側の空間へ導く音導官もしくはダクトを備えていても構わない。すなわち、壁部4dは、図23に示されるキャビネットとして用いられても構わない。
また、スピーカ装置1を備える建築物として、人の居住を用途とする住宅(建築物)や会議、講演会、パーティー等、多数の人数を収容して催しを行うことができるホテル、旅館や研修施設等(建築物)では、被取付部材としての壁や天井にスピーカ装置1を設置した場合、スピーカ装置1の設置に必要な厚さスペースを小さくできるので、室内における不要なスペースを削除でき、スペースを有効に活用することができる。また、近年、プロジェクターや大画面テレビ等の普及に伴い、音響・映像設備を備える居室を設ける例が見られるようになっており、一方で音響・映像設備を備える居室を設けずに、リビングルーム等をシアタールームとして使用するケースも見られる。このようなケースにおいても、スピーカ装置1を用いることで、簡易にリビングルーム等をシアタールーム化でき、さらにリビングルーム内の空間を有効に活用することが可能である。なお、スピーカ装置1の配置場所は、例えば、居室内の天井や壁等(被取付部材)が挙げられる。
その他、スピーカ装置1の適用例を列挙する。冷蔵庫、洗濯機、浴室給湯器の制御パネル、電子レンジ、エアコン、時計、炊飯器、石油ファンヒータ等の家庭用電気機器において、機器の動作状態をユーザーに知らせるための音声再生手段として、パチンコ、スロットパネル等の遊技機或いは娯楽機器の演出効果を高めるための音響発生手段として、ヘッドホン、イヤホン、補聴器、楽器用スピーカ、拡声用スピーカ、スタジオ用スピーカ、ホール用スピーカ、カラオケ用スピーカ等として、スピーカ装置1を効果的に適用することができる。
また、道路騒音低減用のシステムに用いられる外部の音を遮断する遮断機構として、道路の壁面等の所定の被取付部材にスピーカ装置1を取り付けることもできる。更には、振動発生装置としてスピーカ装置1を活用することもでき、体感用アクチュエータ(ボディーソニック等)としてもスピーカ装置1を効果的に活用できる。
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用することができる。なお、本出願には、2008年1月28に国際出願したPCT/JP2008/051197、2008年10月14日に国際出願したPCT/JP2008/068580、2008年10月27日に国際出願したPCT/JP2008/069480、2008年10月23日に国際出願したPCT/JP2008/069269、2009年2月27日に国際出願したPCT/JP2009/053752、2009年2月26日に国際出願したPCT/JP2009/053592、2009年1月20日に国際出願したPCT/JP2009/050764、2009年03月19日に国際出願したPCT/JP2009/055533、2009年3月19日に国際出願したPCT/JP2009/055496、2009年3月19日に国際出願したPCT/JP2009/055497、2009年3月19日に国際出願したPCT/JP2009/055498、2009年3月19日に国際出願したPCT/JP2009/055534、2009年3月19日に国際出願したPCT/JP2009/055523、2009年3月19日に国際出願したPCT/JP2009/055524、2009年3月19日に国際出願したPCT/JP2009/055525、2009年3月19日に国際出願したPCT/JP2009/055526、2009年3月19日に国際出願したPCT/JP2009/055527、2009年3月19日に国際出願したPCT/JP2009/055528、2009年7月9日に国際出願したPCT/JP2009/62482、2009年7月9日に国際出願したPCT/JP2009/62483、2009年7月9日に国際出願したPCT/JP2009/62484、2009年7月9日に国際出願したPCT/JP2009/62477、2009年7月9日に国際出願したPCT/JP2009/62478、2009年7月9日に国際出願したPCT/JP2009/62479、2009年7月9日に国際出願したPCT/JP2009/62480、2009年7月9日に国際出願したPCT/JP2009/62481、2009年7月29日に国際出願したPCT/JP2009/63525、2009年7月29日に国際出願したPCT/JP2009/63526、2009年7月29日に国際出願したPCT/JP2009/62527に記載される全ての内容は、本出願に組み込まれる。
[請求項1]静止部と、駆動部と、振動体を備え、前記振動体は、前記静止部に支持される複数の振動板と、前記複数の振動板のうち、対面する第1の振動板と第2の振動板との間に設けられ、前記第1の振動板と前記第2の振動板を連結して互いに近接又は離間するように連動させる振動方向変換部とを備え、前記静止部近傍に配置される前記振動方向変換部の一部は、前記静止部によって振動自在に支持され、前記駆動部近傍に配置される前記振動方向変換部の一部は、前記駆動部によって振動自在に支持されることを特徴とするスピーカ装置。
[請求項24]複数のスピーカユニットと、当該スピーカユニットを取り付けるキャビネットとを備え、前記スピーカユニットは、振動板と、前記振動板を支持する静止部と、駆動部とを備え、前記駆動部は、磁気ギャップを有する磁気回路と、前記振動板の振動方向とは異なる方向に沿って振動するボイスコイルと、振動方向変換部とを備え、前記振動方向変換部は、前記ボイスコイルおよび前記振動板に直接又は他の部材を介して連結されており、前記キャビネットは、前記スピーカユニットとの間に、規定の空間を形成し、前記スピーカユニットの音響放射面は互いに異なる方向に向いており、前記スピーカユニットの音響放射面は外部と対面していることを特徴とするスピーカ装置。
また、駆動部材としてボイスコイル30限定されず、圧電素子や磁歪型素子であっても構わない。2009年7年29日に国際出願したPCT/JP2009/063527に記載される全ての内容は、本出願に組み込まれる。
図24に示した形態例は、スピーカユニット1Uを複数備え、キャビネット300の外周面に、音響放射面が互いに異なる方向に向く複数のスピーカユニット1Uが対向する位置に取り付けられており、スピーカユニット1Uの音響放射面は外部と対面するように設けられている。図示の例では、2つのスピーカユニット1Uを互いに逆向きに配置して、その音響放射面は互いに逆の向きとなる方向に向いており、互いの静止部100同士を直接又は他の部材を介して接合することで、薄型の両面放射型のスピーカ装置を形成している。この際、2つのスピーカユニット1Uを1つの音声信号で駆動すると、駆動時に双方のスピーカユニット1U,1Uに伝搬する振動が互いに相殺し合って安定した駆動を実現することができる。前述した薄型化の実現が可能なスピーカユニット1Uでは、2つの振動板を互いに逆向きに配置して接合した状態であってもスピーカ装置の厚さはそれほど大きくならず、キャビネット300内の空間S1,S2をスピーカユニット1U,1Uの側方に形成することで、キャビネット300の奥行き(厚さ)を薄くしたスピーカ装置を得ることができる。キャビネット300の奥行き(厚さ)を薄くしたとしてもスピーカユニット1U,1Uの側方のスペースを利用して空間S1,S2の容積を充分に確保できるので、密閉型のキャビネット300を形成する際にも、キャビネット300内の空気のスティフネスの影響で振動板10の振動が抑制される不具合は生じ難い。
このスピーカ装置1は、複数の低再生用のスピーカユニット1U(1W)の他に、複数の中高再生用のスピーカユニット1Tを備えている。そして、図示の例では、複数の低域再生用スピーカユニット1U(1W)及び複数の中高域再生用スピーカユニット1Tは、その音響放射面が互いに異なる方向に向けられて、対向する位置に配置されている。より具体的には、一つの音響放射面に低再生用スピーカユニット1Uと中高再生用スピーカユニット1Tが配置され、それとは180°方向が異なる音響放射面にも低再生用スピーカユニット1Uと中高再生用スピーカユニット1Tが配置されている。
振動板10Tは、音響放射方向に凸状であるドーム状の振動部11Tと、振動部11Tに連続して形成されると共に、振動部11Tをフレームに支持するエッジ部12Tとを備える。振動部11Tとエッジ部12Tとの間には、ボイスコイル支持部31Tを支持する連結部13Tが設けられており、磁気回路20Tに向かって凸状に形成されている。この連結部13Tに、ボイスコイル支持部31Tの端部が、例えば接着剤等の接合部材にて接合されている。なお、振動部11Tとエッジ部12Tとが一体に形成されていることに限定されることなく、振動部11Tとエッジ部12Tとが別部材で形成されて、接合部材等で接合されていても構わない。また、ボイスコイル支持部31Tと振動板10Tとは別部材で形成されているが、これに限定されず、一体に形成されていても構わない。
エッジ部12Tの外周部には、フレーム40Tの外周部と接合するフランジ部14Tが形成されている。フランジ部14Tの外周縁にはフレーム40Tの外周部に形成される外縁突起が延設されている。このフレーム40Tの外周部に接合されるフランジ部14Tには環状のガスケット15Tが設けられている。
振動方向変換部50は、前述した実施形態と同様にリンク部分51を備えている。振動方向変換部50は、リンク部分51として、ボイスコイル30と振動板10との間に配置される第1のリンク部分51Aと第1のリンク部分51Aを角度変換させる第2のリンク部分51Bを備えている。リンク部分51は必要に応じて補強用の凸部(補強部)510を備えてもよい。また、振動方向変換部50は、ボイスコイル用連結部分(第1の連結部分)53Aと、第1の関節部分52−1と、フレーム用連結部分53Cと、第2の関節部分52−2とを備えている。ボイスコイル用連結部分53A(第1の連結部分)は、第1のリンク部分51Aをボイスコイル30に連結する。第1の関節部分52−1は、第1のリンク部分51Aとボイスコイル用連結部分(第1の連結部分)53Aの間に設けられる。フレーム用連結部分53Cは、第2のリンク部分51Bを連結部12Bに連結する。第2の関節部分52−2は、第2のリンク部分51Bとフレーム用連結部分53Cとの間に設けられる。また、振動方向変換部50は、第1のリンク部分51Aの中間部分と第2のリンク部分51Bとを連結する第3の関節部分52−3を備えている。
スピーカ装置1(又はスピーカユニット1U)には、振動方向変換部50のフレーム用連結部分53C又はボイスコイル用連結部分53Aに、振動板10に向かって凸状の振動規制部材530を備えてもよい。この例では、ボイスコイル用連結部分53A上であって第2の関節部52−2の近傍に振動規制部材530が配置されている。また、この振動規制部材530は、第2の関節部52−2を介してボイスコイル用連結部分53Aに連結するリンク部分51(51B)に対面するように配置されている。この振動規制部材530は、リンク部分51Bの一部に接触することで、音を発生させる。ボイスコイル30の振幅が過剰に大きくなった場合、リンク部分51Bの振幅も過剰に大きくなる。この時、リンク部分51Bの一部は、振動規制部材530に向かって移動する。この時、リンク部分51Bの一部と、振動規制部材530とが接触する。このように、振動規制部材530は、リンク部分51Bの振幅が過剰に大きくなった場合に、リンク部分51Bの一部との接触により音を発生して、ユーザーに過振幅を知らせる機能を有する。ユーザーは振動規制部材530の接触音が生じない範囲で使用できる。また、ボイスコイル30の過振幅により、振動方向変換部50が損傷するのを抑止できる。
図34〜図39はスピーカ装置1の各構成部材の連結構造を示した説明図である。静止部100と駆動部14と振動板10のそれぞれは一つ又は複数の構成部材によって構成されている。構成部材は、静止部100,駆動部14,振動板10の一部又は全体を構成する部材である。静止部100としては、フレーム12,振動板用フレーム12−1、12−2等になる。駆動部14としては、ボイスコイル30,ボイスコイル支持部40,磁気回路20の構成要素(磁気回路20は静止部100にもなりうる)等になる。複数の振動板10,複数のエッジ11、エッジ11等が構成部材になる。構成部材を2種類に分けるとすると、ボイスコイル30,ボイスコイル支持部40,振動板10、10,エッジ11,振動方向変換部50の各部位等が振動系部材であり、フレーム12,振動板用フレーム12−1、12−2,磁気回路20等が静止系部材である。複数の構成部材は、駆動部14の振動方向に対して交差する方向にて、所定の間隔を隔てて重ねて配置されても構わない。
キャビネット300の空間S内で、磁気回路20と振動板10(第1の振動板10−1と第2の振動板10−2)はボイスコイル30の振動方向に並べて配置されている。すなわち、ボイスコイル30の振動方向において、磁気回路20と振動板10とが重ならないようにしている。薄型のスピーカ装置1を実現するためには、必然的にキャビネット300の2つの部品300−1,300−2間の距離は短くなるので、磁気回路20はキャビネット300の近傍に配置される。
放熱用部材301は、キャビネット300の開口部300p内に配置されている。また、放熱用部材301は、磁気回路20の近傍に配置されている。これによって、駆動時に磁気回路20から発生した熱が効率的に放熱用部材301に輻射される。放熱用部材301は、輻射された熱をキャビネット300の外に放出する。キャビネット300の開口部300pは放熱用部材301で塞がれるので、キャビネット300内の空間Sの気密性は確保される。また、キャビネット300と放熱用部材301とが連結する連結部分における気密性は維持しながら、キャビネット300は音波を放出するダクト(放音部)を備えていても構わない。
スピーカ装置1は、キャビネット300に第1の振動板10−1と第2の振動板10−2に合わせた2つの音響放射面を有する中高域再生用スピーカユニット(ツイータ)100Tが配備される。中高域再生用スピーカユニット100Tは、図40に示すように、同形態の第1ユニット100T−1と第2ユニット100T−2が対向配置されている。中高域再生用スピーカユニット100Tの第1ユニット100T−1と第2ユニット100T−2には、スピーカユニット1Uと同じ音声信号がハイパスフィルターを介して入力される。また、第1ユニット100T−1と第2ユニット100T−2が有する第1の振動板10−1(110T),第2の振動板10−2(110T)は、互い同期して振動する。
中高域再生用スピーカユニット100Tは、基本的には、図30に図示される中高域再生用スピーカユニットを一対組み合わせたスピーカユニットである。また、振動板(図示の例ではドーム型振動板)110Tは、エッジ111Tを介してフレーム112Tに振動自在に支持されている。また、ボイスコイル130Tは、振動板110Tに直接又はボイスコイル支持部140Tを介して連結している。また、ボイスコイル130Tが磁気回路120Tの磁気ギャップ内に振動自在に配置されている。磁気回路120Tは、図示の例では、ヨーク121Tと磁石122Tとプレート(第1プレート122T)と、吸音部材124Tによって構成されている。
中高域再生用スピーカユニット100Tは、第1ユニット100T−1と第2ユニット100T−2の各フレーム112Tが接合されているか、各フレーム112Tが一体に形成されていてもよい。また、第1ユニット100T−1と第2ユニット100T−2の各フレーム112Tがそれぞれキャビネット300に支持されていれば、両者は間隙を設けて配置されていてもよい。フレーム112T、112Tとの間に間隙を設ける場合、フレーム112T、112T間に緩衝部材を配置しても構わない。緩衝部材を配置することで、フレーム112T、112Tの振動を減衰させることが可能になる。
図44は、本発明の実施形態に係るスピーカ装置を備えた自動車を示した説明図である。同図(a)に示した自動車4は、スピーカ装置1の薄型化によって車内スペースの拡大が可能になる。特に、被取付部材として、天井4a、リアトレイ4b、ダッシュボード4c、或いはドアパネルに本発明の実施形態に係るスピーカ装置1を取り付けても、車内空間への出っ張りを比較的小さくでき、運転者の操作スペースの拡大や、室内のスペースを拡大することが可能になる。また、充分な音声出力が得られるので、雑音が多い高速走行時等でも車内で快適に音楽やラジオ放送を楽しむことができる。自動車内で、同図(b)に示すようにダッシュボード4cの上面Dにスピーカ装置1を配置した場合には、スピーカ装置1の上面及び左右に放音部を設けることで、ダッシュボード4cの両サイドのサイドガラスSG,SGやフロントガラスFG、バックガラスBGで音を反射させて、車室内で効果的な聴取音を得ることができる。また、同図(c)に示すような、左右に設けた放音部へ効率良く音波を誘導するべく、振動板10に対向するキャビネット300等の静止部にイコライザ304を設けても構わない。また、図27に示したような形態例の電子機器をダッシュボード等の被取付部材に取り付けても構わなく、自動車に乗車した乗員の人数や乗車位置に応じて、車内に所望の音場を形成することができる。また、図44(c)で図示されるスピーカ装置1では、放音部320が設けられている。これに限定されず、スピーカ装置1の取付スペースや自動車内の形状に応じて、放音部320をフロントガラスSG側と、フロントガラスSGに対して逆側に設けても構わない。
図45、図46に示されるスピーカ装置1は複数のスピーカユニット1U、複数の中高域再生用スピーカユニット100Tを備えている。また、複数のスピーカユニット1U、複数の中高域再生用スピーカユニット100Tは、スピーカ装置1の複数の音響放射面を構成する。この音響放射面と、スピーカ装置1の近傍に配置される壁部4dが有する壁面4d−1との間には、所定の距離Lだけ間隙が設けられている。この距離Lが比較的大きい場合には、壁部4dで反射された音波と、スピーカ装置1が放射する音波とが干渉し、スピーカ装置1が提供する無指向性に悪影響が生じる場合がある。よって、スピーカ装置1が提供する無指向性を良好にする点で、距離Lを比較的小さくすることが好ましい。言い換えれば、スピーカ装置1の音響放射面を壁部4dの近傍に配置することが好ましい。

Claims (64)

  1. スピーカユニットと、当該スピーカユニットを取り付けるキャビネットとを備え、
    前記スピーカユニットは、振動板と、前記振動板を振動方向に沿って振動自在に支持する静止部と、該静止部に設けられ、音声信号によって前記振動板に振動を与える駆動部とを備え、
    前記駆動部は、
    前記振動板の振動方向とは異なる方向に沿って磁気ギャップを形成する磁気回路と、
    前記磁気ギャップに沿って振動するボイスコイルと、
    前記ボイスコイルの振動を方向変換して前記振動板に伝える振動方向変換部とを備え、
    前記振動方向変換部は、前記ボイスコイルと前記振動板との間に形成されたリンク部分を角度変換させるリンク機構を備え、
    前記キャビネットは、前記スピーカユニットとの間に、規定の空間を形成することを特徴とするスピーカ装置。
  2. 前記振動方向変換部は、一端部が前記ボイスコイルに角度変更自在に直接又は他の部材を介して連結されるとともに、他端部が前記振動板に角度変更自在に直接又は他の部材を介して連結され、前記振動板の振動方向および前記ボイスコイルの振動方向それぞれに対して斜設されて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
  3. 前記スピーカユニットと前記キャビネットとで囲まれる空間は、密閉されていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
  4. 前記スピーカユニットを複数備え、
    前記キャビネットの外周面に、音響放射面が異なる方向に向く複数の前記スピーカユニットが対向する位置に取り付けられており、
    前記スピーカユニットの音響放射面は外部と対面していることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
  5. 前記スピーカユニットの間には、制振部材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のスピーカ装置。
  6. 前記振動方向変換部は、前記リンク部分を第1のリンク部分として、該第1のリンク部分と前記静止部との間に前記リンク機構としての第2のリンク部分を備え、
    前記第2のリンク部分を支持する前記静止部の一部分に前記制振部材が取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載のスピーカ装置。
  7. 前記制振部材は前記ボイスコイルが前記振動方向変換部を介して前記振動板に伝達する振動のうち、高周波数で規定される前記振動を遮断する高域遮断機能を備えることを特徴とする請求項6に記載のスピーカ装置。
  8. 前記振動板は、コーン形状又はドーム形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
  9. 前記キャビネットは、その内部における空間を第1の空間と第2の空間とに区画する壁部を備え、
    前記壁部に取り付けられることで、前記第1の空間に前記スピーカユニットの一部が配置されており、
    前記第1の空間は前記壁部、前記スピーカユニット及び前記キャビネットで囲まれた実質的に密閉された空間であることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
  10. 前記振動方向変換部における前記ボイスコイル側の端部と前記ボイスコイルの前記振動方向変換部側の端部との間に両端部の位置を前記振動板の振動方向に沿って異ならせて連結する連結部を備えることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
  11. 前記振動方向変換部は、前記振動板および前記ボイスコイルを含む被取付部材と連結しているとともに、該被取付部材に近接する関節部分を備え、
    前記関節部分に近接する前記被取付部材の面側には、前記関節部分と接触することを避ける接触回避部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
  12. 前記振動方向変換部は、前記振動板および前記ボイスコイルを含む被取付部材と連結しているとともに、該被取付部材に近接する関節部分を備え、
    前記関節部分と対向する前記被取付部材の面側には、前記振動方向変換部と前記被取付部材とを接合する接着部材の収容部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
  13. 前記振動方向変換部は、前記ボイスコイルと前記振動板との間で角度変更自在に斜設される剛性のリンク部分と、該リンク部分の両端に形成される関節部分とを備え、
    前記関節部分は、当該関節部分を跨いだ両側の部分で連続する屈折自在な連続部材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
  14. 前記ボイスコイルは、平面状で且つ環状に巻かれた導電部材と、前記導電部材を支持する剛性の基体とを備え、
    前記基体における前記導電部材の外側の表面には、導電層がパターン形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
  15. 前記導電層は、前記導電部材を取り囲むように一対配備され、前記導電部材に音声信号を入力するための中継線として機能することを特徴とする請求項14に記載のスピーカ装置。
  16. 前記ボイスコイルを、前記静止部に直接又は他の部材を介して、前記ボイスコイルの振動方向に振動自在に保持する保持部を備えることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
  17. 前記保持部は第1の保持部と第2の保持部とを備え、
    前記第1の保持は前記ボイスコイルの前記振動方向変換部側に配置され、前記第2の保持部は、前記ボイスコイルの前記振動方向変換部とは逆側に配置されることを特徴とする請求項16に記載のスピーカ装置。
  18. 前記振動方向変換部における前記ボイスコイル側の端部と前記ボイスコイルの前記振動方向変換部側の端部との間に両端部の位置を前記振動板の振動方向に沿って異ならせて連結する連結部を備え、
    前記連結部と前記静止部との間において、前記第1の保持部は該連結部の左右に配置され、
    前記第2の保持部は、前記ボイスコイルの前記連結部と連結される側とは逆側で、前記ボイスコイルに対して左右に配置され、
    前記第1の保持部及び前記第2の保持部は前記ボイスコイルを略左右対称に前記静止部に直接又は他の部材を介して保持することを特徴とする請求項17に記載のスピーカ装置。
  19. 前記第2の保持部は、中央部が直接又は他の部材を介して前記静止部に保持され、その両端が前記ボイスコイルの左右端に接続されていることを特徴とする請求項18記載のスピーカ装置。
  20. 前記第1の保持部及び前記第2の保持部は、取り付けユニットを介して前記連結部及び前記ボイスコイルを前記静止部に保持することを特徴とする請求項18に記載のスピーカ装置。
  21. 前記音響放射面は、互いに逆の向きとなる方向に向いていることを特徴とする請求項4に記載のスピーカ装置。
  22. 前記複数のスピーカユニットが備える前記ボイスコイル又は前記振動板は、互いに逆向きの方向に振動すると共に、実質的に同じ位相で振動することを特徴とする請求項21に記載のスピーカ装置。
  23. 前記振動板の振動方向における前記キャビネットの幅は、前記対向する位置に配置される前記複数のスピーカユニットの前記振動方向変換部が有する、前記振動板の振動方向における幅で規定されることを特徴とする請求項4に記載のスピーカ装置。
  24. 前記振動板の振動方向における前記キャビネットの幅は、当該振動板の振動方向における前記振動方向変換部の幅と実質的に同じであることを特徴とする請求項23に記載のスピーカ装置。
  25. 前記振動板の振動方向における前記キャビネットの幅は、前記対向する位置に配置される前記複数のスピーカユニットの前記磁気回路が有する、前記振動板の振動方向における幅で規定されることを特徴とする請求項4に記載のスピーカ装置。
  26. 前記振動板の振動方向における前記キャビネットの幅は、当該振動板の振動方向における前記磁気回路の幅と実質的に同じであることを特徴とする請求項25に記載のスピーカ装置。
  27. 前記複数のスピーカユニットが有する前記振動板は、近接して配置されていることを特徴とする請求項4に記載のスピーカ装置。
  28. 前記ボイスコイルの振動方向における前記キャビネットの幅は、当該ボイスコイルの振動方向における前記スピーカユニットの幅で規定されることを特徴とする請求項4に記載のスピーカ装置。
  29. 前記ボイスコイルの振動方向における前記キャビネットの幅は、前記スピーカユニットが有する一対の前記磁気回路間の距離で規定されることを特徴とする請求項28に記載のスピーカ装置。
  30. 前記キャビネットと前記スピーカユニットとの間に形成される空間が有する、前記ボイスコイルの振動方向における幅は、当該スピーカユニットが有する、当該ボイスコイルの振動方向における幅に対して小さいことを特徴とする請求項29に記載のスピーカ装置。
  31. スピーカユニットと、当該スピーカユニットを支持するキャビネットとを備え、
    前記キャビネットの外周面に取り付けられる前記スピーカユニットは、当該スピーカユニットの音響放射面が外部と対面しており、
    前記スピーカユニットは、振動板と、該振動板を振動方向に沿って振動自在に支持する静止部と、該静止部に設けられ、音声信号によって前記振動板に振動を与える駆動部とを備え、
    前記駆動部は、磁気ギャップを形成する磁気回路と、音声信号が入力され、前記振動板の振動方向とは異なる方向に沿って振動するボイスコイルと、前記ボイスコイルの振動を方向変換して前記振動板に伝える剛性の振動方向変換部とを備え、
    前記振動方向変換部は、一端部が前記ボイスコイルに角度変更自在に直接又は他の部材を介して連結されるとともに、他端部が前記振動板に角度変更自在に直接又は他の部材を介して連結され、前記振動板の振動方向および前記ボイスコイルの振動方向それぞれに対して斜設されて配置されており、
    前記キャビネットは、前記スピーカユニットとの間に、規定の空間を形成しており、
    前記キャビネットの音響放射側の面は長軸及び短軸で規定される平面形状を備え、
    前記短軸の方向における前記キャビネットの外周部と前記スピーカユニットとの間の距離が当該方向における前記スピーカユニットの幅に対して小さいか又は略等しいことを特徴とするスピーカ装置。
  32. スピーカユニットと、当該スピーカユニットを支持するキャビネットとを備え、
    前記キャビネットの外周面に取り付けられる前記スピーカユニットは、当該スピーカユニットの音響放射面が外部と対面しており、
    前記スピーカユニットは、振動板と、前記振動板を振動方向に沿って振動自在に支持する静止部と、該静止部に設けられ、音声信号によって前記振動板に振動を与える駆動部とを備え、
    前記駆動部は、
    前記振動板の振動方向とは異なる方向に沿って磁気ギャップを形成する磁気回路と、
    前記磁気ギャップに沿って振動するボイスコイルと、
    前記ボイスコイルの振動を方向変換して前記振動板に伝える振動方向変換部とを備え、
    前記振動方向変換部は、前記ボイスコイルと前記振動板との間に形成されたリンク部分を角度変換させるリンク機構を備え、
    前記キャビネットは、前記スピーカユニットとの間に、規定の空間を形成しており、
    前記キャビネットの音響放射側の面は長軸及び短軸で規定される平面形状を備え、
    前記短軸の方向における前記キャビネットの外周部と前記スピーカユニットとの間の距離が当該方向における前記スピーカユニットの幅に対して小さいか又は略等しいことを特徴とするスピーカ装置。
  33. 前記短軸の方向における前記キャビネットの幅が当該方向における前記スピーカユニットの幅に対して略等しいことを特徴とする請求項32に記載のスピーカ装置。
  34. 前記スピーカユニットを複数備え、
    前記キャビネットの前記短軸の方向における前記キャビネットの外周部と前記スピーカユニットの振動板との間の距離に対して、隣接して配置される前記スピーカユニットの振動板間の距離が小さいことを特徴とする請求項32に記載のスピーカ装置。
  35. 前記スピーカユニットを低域再生用スピーカユニットとして備え、
    複数の前記低域再生用スピーカユニットと前記キャビネットの外周面に取り付けられる複数の中高域再生用スピーカユニットを備え、
    前記複数の低域再生用スピーカユニット及び前記複数の中高域再生用スピーカユニットは、その音響放射面が互いに異なる方向に向けられて、対向する位置に配置されており、
    同じ音響放射面側に配置される前記低域再生用スピーカユニット及び前記中高域再生用スピーカユニットは、前記キャビネットの前記長軸に沿って並べて取り付けられていることを特徴とする請求項32に記載のスピーカ装置。
  36. 前記複数の低域再生用スピーカユニットの間に、前記中高域再生用スピーカユニットが配置されていることを特徴とする請求項35に記載のスピーカ装置。
  37. 前記スピーカユニットは、長軸及び短軸で規定される平面形状を備え、
    前記キャビネットの短軸と前記スピーカユニットの長軸が略同じ方向となるように、前記スピーカユニットが前記キャビネットに取り付けられていることを特徴とする請求項32に記載のスピーカ装置。
  38. 前記スピーカユニットは、長軸及び短軸で規定される平面形状を備え、
    前記キャビネットの短軸と前記スピーカユニットの短軸が略同じ方向となるように、前記スピーカユニットが前記キャビネットに取り付けられていることを特徴とする請求項32に記載のスピーカ装置。
  39. 請求項1に記載のスピーカ装置を第1のスピーカ装置として、
    前記第1のスピーカ装置を備える第1のパネルと、
    第2のスピーカ装置を備える第2のパネルとが、
    互いの側部で回動可能に連結していることを特徴とする電子機器。
  40. 前記電子機器が被取付部材に取り付けられていることを特徴とする請求項39に記載の自動車。
  41. 請求項1に記載のスピーカ装置が被取付部材に取り付けられていることを特徴とする自動車。
  42. 前記被取付部材は、ダッシュボードであることを特徴とする請求項40に記載の自動車。
  43. 前記被取付部材は、天井、リアトレイであることを特徴とする請求項40に記載の自動車。
  44. 請求項1に記載のスピーカ装置が被取付部材に取り付けられていることを特徴とする電子機器。
  45. 請求項1に記載のスピーカ装置が被取付部材に取り付けられていることを特徴とする建築物。
  46. 前記振動板を一対備え、当該一対の振動板と前記ボイスコイルとを振動自在に連結する一対の前記振動方向変換部を備え、
    前記一対の振動方向変換部は、前記一対の振動板の間に配置されるとともに、前記一対の振動板を連結して互いに近接又は離間するように連動させ、
    前記静止部近傍に配置される前記振動方向変換部の一部は、前記静止部によって振動自在に支持され、
    前記駆動部近傍に配置される前記振動方向変換部の一部は、前記駆動部によって振動自在に支持されることを特徴とする請求項1記載のスピーカ装置。
  47. 静止部と、駆動部と、振動体を備え、
    前記振動体は、前記静止部に振動自在に支持される複数の振動板と、
    前記複数の振動板のうち、対面する第1の振動板と第2の振動板との間に設けられ、前記第1の振動板と前記第2の振動板を連結して互いに近接又は離間するように連動させる振動方向変換部とを備え、
    前記静止部近傍に配置される前記振動方向変換部の一部は、前記静止部によって振動自在に支持され、
    前記駆動部近傍に配置される前記振動方向変換部の一部は、前記駆動部によって振動自在に支持されることを特徴とするスピーカ装置。
  48. 前記静止部は、フレームと、前記振動方向変換部の一部と連結する連結部を備え、
    前記連結部は、前記フレームから前記振動方向変換部に向かって延在していることを特徴とする請求項47に記載のスピーカ装置。
  49. 前記連結部は、前記振動板の振動方向にて剛性を備えることを特徴とする請求項48に記載のスピーカ装置。
  50. 前記駆動部は、前記振動板の振動方向とは異なる方向に沿って磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップに沿って振動するボイスコイルとを備え、
    前記振動方向変換部は、前記ボイスコイルと前記振動板との間に配置される第1のリンク部分と、当該第1のリンク部分を角度変換させる第2のリンク部分を備え、
    前記連結部は前記第2のリンク部分と直接又は他の部材を介して連結することを特徴とする請求項49に記載のスピーカ装置。
  51. 前記振動方向変換部は、前記第1のリンク部分を前記ボイスコイルに連結するボイスコイル用連結部分と、当該第1のリンク部分と前記ボイスコイル用連結部分の間に設けられる第1の関節部分と、前記第2のリンク部分を前記連結部に連結するフレーム用連結部分と、当該第2のリンク部分と当該フレーム用連結部分との間に設けられる第2の関節部分とを備え、
    前記第1の関節部分と前記第2の関節部分は、前記ボイスコイルに対して実質的に同じ高さに配置されていることを特徴とする請求項50に記載のスピーカ装置。
  52. 前記振動板の振動方向にて、互いに対向して配置される前記振動方向変換部を一対備え、
    一対の前記ボイスコイル用連結部分が前記ボイスコイルに連結し、
    一対の前記フレーム用連結部分が前記フレームの前記連結部に連結しており、
    前記振動板の振動方向における、前記一対のボイスコイル用連結部分と前記ボイスコイルの厚さは、前記一対のフレーム用連結部分の厚さと実質的に同じであることを特徴とする請求項51に記載のスピーカ装置。
  53. 前記振動方向変換部は、前記第1のリンク部分の中間部分と前記第2のリンク部分とを連結する第3の関節部分を備え、
    前記第2のリンク部分は、前記第3の関節部分の近傍に湾曲部を備えることを特徴とする請求項52に記載のスピーカ装置。
  54. 前記湾曲部は、前記第1のリンク部分から前記振動板に向かう方向に凸状である断面形状を備えることを特徴とする請求項53に記載のスピーカ装置。
  55. 前記静止部を支持するキャビネットを備え、
    前記磁気回路と、前記振動板は、前記ボイスコイルの振動方向に沿って並べて配置され、
    前記磁気回路は、前記キャビネットの近傍に配置されており、
    前記キャビネットに支持される放熱用部材を備え、
    前記放熱用部材は、前記磁気回路に対面する表面と前記キャビネットの外側の空間に対面する表面を備え、
    前記キャビネットと前記放熱用部材との連結部分は、前記キャビネット内の空間と前記キャビネット外の空間との間の空気の出入りを実質的に遮断することを特徴とする請求項54に記載のスピーカ装置。
  56. 前記放熱用部材は、前記キャビネットの開口部内に配置されており、
    前記磁気回路の近傍に配置されていることを特徴とする請求項55に記載のスピーカ装置。
  57. 前記キャビネットを被取付部材に回転自在に取り付ける取付部を備えていることを特徴とする請求項56に記載のスピーカ装置。
  58. 前記取付部は、前記キャビネットを被取付部材に回転自在に支持する回転用支持部材を備え、
    前記取付部は、前記回転用支持部材を回転自在に収容する収容部を備え、
    前記収容部に前記回転用支持部材は嵌合していることを特徴とする請求項57に記載のスピーカ装置。
  59. 前記収容部は前記キャビネットの外周部から内側に向かって突出する形状を備え、
    前記キャビネットの外周部は、前記キャビネット内の空間と前記収容部内の空間を区画し、前記キャビネット内の空間は気密な空間であることを特徴とする請求項58に記載のスピーカ装置。
  60. 前記振動板を前記静止部に連結するエッジを備え、
    前記エッジは、4つの角部を有する環状の平面形状を備え、
    前記角部及びその近傍における前記エッジの一部分は、断面形状が凸状又は凹状の補強部を備えることを特徴とする請求項59に記載のスピーカ装置。
  61. 前記フレーム用連結部分又は前記ボイスコイル用連結部分には、前記振動板に向かって凸状の振動規制部材を備えることを特徴とする請求項60に記載のスピーカ装置。
  62. 前記静止部を支持するキャビネットを備え、
    前記キャビネットは、前記振動板の振動方向に沿って延在する、外周側面を備えており、
    前記キャビネットの外周側面には、開口部を有する放音部が設けられていることを特徴とする請求項47に記載のスピーカ装置。
  63. 請求項62に記載のスピーカ装置が被取付部材に取り付けられており、
    前記キャビネットの外周側面は、前記スピーカ装置が取り付けられた前記被取付部材の一部を通過する方向に沿って延在し、
    前記被取付部材の近傍におけるキャビネットの一部には、イコライザが設けられており、
    前記イコライザは、前記被取付部材側に配置される前記振動板に対面することを特徴とする自動車。
  64. 前記振動板と前記静止部と前記駆動部のそれぞれは一つ又は複数のスピーカ用構成部材によって構成され、
    互いに固定される複数のスピーカ用構成部材のうち、一方の前記スピーカ用構成部材は突起状部を備え、他方の前記スピーカ用構成部材は前記突起状部が挿入される孔部を備え、
    前記突起状部は、前記駆動部材の振動方向に対して交差する方向に沿って突出していることを特徴とする請求項47に記載のスピーカ装置。
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