JPWO2011043214A1 - 剥離剤、離型材、及び粘着テープ - Google Patents

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Abstract

本発明は、JIS K7117−1に準拠して測定した38℃における粘度が5〜1500Pa・sである液状炭化水素を含む、ポリオレフィン系剥離剤を提供する。

Description

本発明は、ポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン系剥離剤、及び該剥離剤を有する離型材及び粘着テープに関する。
離型材は、紙、プラスチックフィルム及びプラスチックラミネート紙等の基材の少なくとも片面に剥離剤層を設けたものであって、粘着テープ、粘着シート及びラベル等の粘着剤面を保護する目的や、セラミックグリーンシート等の製造工程に使用されている。
剥離剤の種類としては、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、ポリオレフィン系剥離剤及びフッ素系剥離剤等があるが、電子部品関連等の一部の用途において、シリコーン系剥離剤では問題を生ずるケースがあるため、ポリオレフィン系剥離剤等の非シリコーン系剥離剤が使用されている。
ポリオレフィン系剥離剤を有機溶剤に溶解して、基材に塗布した離型材は、特許文献1〜3等に例示されている。
特許文献1及び2には、ポリオレフィンのみを有機溶剤に溶解し、それを基材に塗布した離型材が記載されている。また、特許文献3には、官能基を有する変性ポリオレフィンとイソシアネート系架橋剤とを使用して架橋したポリオレフィンを含有する剥離剤や、更に官能基を持たない未変性ポリオレフィンを併用した剥離剤が記載され、これらの剥離剤を用いることにより、耐溶剤性、耐熱性及び基材への密着性が改善された離型材が得られるとしている。
しかし、いずれの特許文献にも、剥離力の剥離速度依存性に関しては、明記されていない。
一方、剥離力の小さい離型材を得ようとする場合、剥離剤として使用するポリオレフィンは低密度で低結晶性のものが良いことが一般的に知られており、上記特許文献1〜3においても、そのようなタイプのポリオレフィンが使用されていると考えられる。しかし、そのようなタイプのポリオレフィンを使用した離型材は、剥離力の剥離速度依存性が大きくなり、すなわち、剥離速度が速くなると剥離力が極端に大きくなり、使いづらいものとなる傾向があった。特に、粘着剤と貼り合わされた状態で加湿条件下に保存した場合に、この傾向が顕著に表れた。
特開昭55−152775号公報 特開平6−99551号公報 特開2004−91776号公報
本発明が解決しようとする課題は、剥離力の剥離速度依存性を低減した、すなわち、剥離速度が速くなっても剥離力が極端に大きくなりすぎることがない、ポリオレフィン系剥離剤を得ることである。
また、本発明が解決しようとする課題は、粘着剤と貼り合わされた状態で加湿条件下に保存した場合においても、剥離力の剥離速度依存性が低減した、ポリオレフィン系剥離剤を得ることである。
また、本発明が解決しようとする課題は、該剥離剤により形成された剥離剤層を有する離型材、粘着テープを得ることである。
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、ポリオレフィン系剥離剤に、JIS K7117−1に準拠して測定した38℃における粘度が5〜1500Pa・sである液状炭化水素を含有させることで、剥離力の剥離速度依存性が低減した離型材を得られることを見出した。加えて、該離型材は、粘着剤と貼り合わされた状態で加湿条件下に保存した場合の剥離力の剥離速度依存性の上昇が抑えられることを見出した。これらの知見に基づき、本発明者らは、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] JIS K7117−1に準拠して測定した38℃における粘度が5〜1500Pa・sである液状炭化水素を含む、ポリオレフィン系剥離剤。
[2] 38℃において固体である非反応性ポリオレフィンを含む、上記[1]に記載の剥離剤。
[3] 前記非反応性ポリオレフィンが、エチレン系α−オレフィン共重合体である、上記[2]に記載の剥離剤。
[4] 前記非反応性ポリオレフィン中、23℃における引張弾性率が10MPa以下で、且つ、23℃における引張破壊応力が8MPa以下である非反応性ポリオレフィンの含有量が、90重量%以上である、上記[2]または[3]に記載の剥離剤。
[5] 前記液状炭化水素および前記非反応性ポリオレフィンの合計100重量部に対し、液状炭化水素の含有量が3〜30重量部である、上記[2]〜[4]のいずれか一つに記載の剥離剤。
[6] 前記液状炭化水素および前記非反応性ポリオレフィンを、剥離剤中、合計80重量%以上の量で含有する、上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の剥離剤。
[7] イソシアネート系架橋剤を含む、上記[1]〜[6]のいずれか一つに記載の剥離剤。
[8] 前記イソシアネート系架橋剤が、1分子中にイソシアネート基を3個以上有する芳香族イソシアネートである、上記[7]に記載の剥離剤。
[9] 前記1分子中にイソシアネート基を3個以上有する芳香族イソシアネートが、芳香族ジイソシアネートの多価アルコール付加体である、上記[8]に記載の剥離剤。
[10] 前記イソシアネート系架橋剤が、1分子中にイソシアネート基を3個以上有する脂環式イソシアネートである、上記[7]に記載の剥離剤。
[11] 前記1分子中にイソシアネート基を3個以上有する脂環式イソシアネートが、脂環式ジイソシアネートの多価アルコール付加体である、上記[10]に記載の剥離剤。
[12] ポリオレフィンポリオールをさらに含む、上記[1]〜[11]のいずれか一つに記載の剥離剤。
[13] 前記ポリオレフィンポリオールの数平均分子量が、1500〜50000である、上記[12]に記載の剥離剤。
[14] 前記液状炭化水素および前記非反応性ポリオレフィンの合計100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤の含有量が0.5〜20重量部である、上記[1]〜[13]のいずれか一つに記載の剥離剤。
[15] 基材の少なくとも片面に、上記[1]〜[14]のいずれか一つに記載の剥離剤からなる剥離剤層を有する、離型材。
[16] 粘着剤層の少なくとも片面に、上記[15]に記載の離型材を有し、前記粘着剤層と前記離型材の剥離剤層とが接触している、粘着テープ。
[17] 基材の片面に粘着剤層を有し、基材の他方の面に、上記[1]〜[14]のいずれか一つに記載の剥離剤からなる剥離剤層を有する、粘着テープ。
本発明のポリオレフィン系剥離剤を有機溶剤に溶解して基材に塗布した離型材は、剥離力の剥離速度依存性が低減しているため、剥離する際の作業性に優れている。また、該離型材は、粘着剤と貼り合わされた状態で加湿条件下に保存した場合の剥離力の剥離速度依存性が低減しているため、加湿条件下に保存した後においても、剥離する際の作業性に優れている。
1.剥離剤
本発明は、(1)JIS K7117−1に準拠して測定した38℃における粘度が5〜1500Pa・sである液状炭化水素を含む、ポリオレフィン系剥離剤を提供する。また、かかる剥離剤は、更に(2)38℃において固体である非反応性ポリオレフィン、(3)イソシアネート系架橋剤、(4)ポリオレフィンポリオールを、含有してもよい。
(1)液状炭化水素
本発明において、液状炭化水素とは、JIS K7117−1に準拠して測定した38℃における粘度(以下、38℃における粘度という。)が5〜1500Pa・sである炭化水素である。このような液状炭化水素としては、例えば、オレフィンの重合体等が挙げられるが、相溶性の点から、好ましくは、エチレン及び/又は炭素数3〜5の不飽和炭化水素を重合させて得られる液状炭化水素重合物(例、液状エチレン・オレフィン共重合体、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状水素化ポリブタジエン、液状水素化ポリイソプレン、液状ポリイソブテン等)である。炭素数3〜5の不飽和炭化水素としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、2−ブテン、ブタジエン、1−ペンテン、2−ペンテン、イソペンテン、イソプレン等が挙げられる。重合は公知の方法によればよく、ラジカル重合、カチオン重合等が採用できる。
本発明では、38℃における粘度が、通常、5〜1500Pa・sであり、好ましくは、5〜1300Pa・sである。本発明の剥離剤は、このような液状炭化水素を含有することにより、粘着テープ類の接着力を低下させることなく、離型材の離型力の速度依存性を低減し得る。上記38℃における粘度が、5Pa・s未満である場合、剥離性の速度依存性は十分に低減しない傾向がある。そこで、剥離力の速度依存性を十分に低減するために液状炭化水素の使用量を多くすると、粘着テープ類の接着力が低下する。また、上記38℃における粘度が、1500Pa・sを超える場合、離型材の使用が想定される10〜30℃付近の温度における流動性が低くなるため、剥離力の速度依存性が十分に低減しない傾向がある。
本発明では、液状炭化水素として、38℃における粘度が5〜1500Pa・sであるものであれば、市販品を用いてもよく、そのような市販品としては、例えば、ルーカントHC−600(8.5Pa・s)、HC−2000(34Pa・s)(以上、三井化学(株)製)、クラプレンLIR−30(74Pa・s)、LIR−50(480Pa・s)、LIR−290(1000Pa・s)、LBR−300(280Pa・s)(以上、(株)クラレ製)、日石ポリブテンHV−100、HV−300、HV−1900(以上、新日本石油(株)製)、ニッサンポリブテン10N、30N、200N(以上、日油(株)製)等が、挙げられる。
38℃における粘度が5〜1500Pa・sである液状炭化水素の含有量は、かかる液状炭化水素及び非反応性ポリオレフィン(後述)の合計100重量部に対し、3〜30重量部、好ましくは、4〜20重量部、特に好ましくは、5〜15重量部である。該含有量が、3重量部未満である場合、剥離性の速度依存性は十分に低減せず、逆に、30重量部を超える場合、粘着テープ類の接着力が低下したり、剥離剤層の塗膜強度が低くなったりするため、好ましくない。
(2)非反応性ポリオレフィン
本発明における非反応性ポリオレフィンとは、後述するイソシアネート系架橋剤やポリオレフィンポリオールと反応しないポリオレフィンである。例えば、イソシアネート系架橋剤やポリオレフィンポリオールと反応する官能基(水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基(「イソシアナト基」ともいう)等)を含まないポリオレフィンである。本発明においては、少量の官能基でも粘着剤の種類や粘着剤と接した状態での保存条件により、重剥離になる可能性があるため、前記官能基を全く持たない未変性ポリオレフィンが好ましい。
本発明では、非反応性ポリオレフィンが、38℃において固体である。本発明において「38℃において固体である」とは、例えば、融点が38℃以上(好ましくは、45℃以上、特に好ましくは、50℃以上)であることをいう。融点が、38℃未満の場合、耐熱性が不充分となり、粘着剤と接した状態で50℃以上の温度に保存した場合に重剥離となる傾向がある。また、上限値は、例えば、エチレン系α−オレフィン共重合体の場合、融点の高い樹脂は有機溶剤への溶解性が悪くなることから、好ましくは、80℃以下である。なお、かかる融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク温度であり、試料約5mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、10℃/分で室温まで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求められる値である。
本発明における非反応性ポリオレフィンとしては、前記要件を満たす限り、特に限定されない。但し、例えば、剥離剤中に含有する非反応性ポリオレフィン中の90重量%以上(好ましくは、95重量%以上、特に好ましくは、100重量%)が、23℃における引張弾性率が10MPa以下(より好ましくは8MPa以下、さらに好ましくは7MPa以下、最も好ましくは6MPa以下)、かつ23℃における引張破壊応力が8MPa以下(より好ましくは6MPa以下、最も好ましくは4MPa以下)である非反応性ポリオレフィンであることが好適である。非反応性ポリオレフィン中における、かかる23℃における引張弾性率が10MPa以下、かつ23℃における引張破壊応力が8MPa以下である非反応性ポリオレフィンの含有量が90重量%以上であると、それ以外の非反応ポリオレフィンの影響が抑えられ、低速及び/又は高速で剥離した時の剥離力が大きくなることを防ぎ得る。また、23℃における引張弾性率が10MPa以下であると、低速及び高速で剥離した時の剥離力がどちらも大きくなることを防ぎ得る。さらに、23℃における引張破壊応力が8MPa以下であると、高速で剥離した時の剥離力が大きくなることを防ぎ得る。
また、23℃における引張弾性率の下限値は、特に限定されないが、小さすぎると十分な塗膜強度が得られにくくなることから2MPa以上、より好ましくは3MPa以上であり、23℃における引張破壊応力の下限値も特に限定されないが、小さすぎると十分な塗膜強度が得られにくくなることから1MPa以上、より好ましくは2MPa以上である。
[引張弾性率および引張破壊応力の測定法]
本発明において、23℃における引張弾性率および23℃における引張破壊応力とは、以下の方法で測定した値である。
非反応性ポリオレフィンをトルエンに溶解して5〜10重量%の溶液とし、ベーカー式アプリケーター又はドクターブレード型アプリケーターを使用して、これをPET(ポリエチレンテレフタレート)基材の離型フィルム上に塗布後、熱風乾燥機で加熱乾燥(100℃、3分間)の後、直ちに23℃雰囲気で冷却することにより、乾燥後の厚さが20μmの非反応性ポリオレフィンフィルムを作製する。トルエンへの溶解性が悪い場合は必要に応じて加温して溶解しても良い。得られた非反応性ポリオレフィンフィルムを縦30mm×横100mmの短冊状に切り出し、切り出したフィルムの一方の短辺を軸にして長手方向に非反応性ポリオレフィンフィルムを、離型フィルムより剥がしながら密に巻回して、長さ30mmの棒状サンプルとする。
この棒状サンプルについて、23℃雰囲気下で、チャック間距離10mm、引っ張り速度50mm/minの条件で引張試験機(島津製作所(株)製、オートグラフ AG−IS型)にて引張試験を行い、その時の応力−ひずみ曲線を得る。その応力−ひずみ曲線における引っ張り開始直後の曲線の傾きより引張弾性率を算出する。また、棒状サンプルが破断したときの応力を引張破壊応力として求める。
本発明における非反応性ポリオレフィンとしては、前記要件を満たす限り特に限定されないが、例えば、他の材料とともに有機溶剤に溶解して基材に塗布できるものが好ましく、有機溶剤への溶解性が良好な低密度の非反応性ポリオレフィンが好適に使用される。低密度のポリオレフィンを使用した剥離剤は、一般に軽剥離性が得られる反面、剥離力の剥離速度依存性が大きいものが多いが、本発明では、非反応性ポリオレフィンとして、主として、23℃における引張弾性率が10MPa以下、かつ23℃における引張破壊応力が8MPa以下であるものを使用するため、剥離過程において粘着剤層と剥離剤層の界面付近で破壊が起こっていると仮定すると、引張破壊応力が小さいために小さな力で界面付近を破壊することができ、剥離速度が速くなっても剥離力が大きくなり過ぎず、剥離力の剥離速度依存性を小さくすることができる。
具体的には、密度が0.885g/cm以下であるものが好ましく、0.880g/cm以下であるものがより好ましい。密度が0.885g/cmを超えると有機溶剤への溶解性が低下して基材への塗布が困難な傾向となり、また剥離性も低下する傾向となる。また、下限値は、例えばエチレン系α−オレフィン共重合体では密度が低いと融点も低くなり、耐熱性が悪くなることから、好ましくは0.855g/cm以上である。
このような低密度のポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン及び炭素数が4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも2種以上を単量体単位とするα−オレフィン共重合体が挙げられ、中でも、エチレンを主たる単量体単位とする共重合体(すなわち、エチレン系α−オレフィン共重合体)が好ましい。ここで、炭素数が4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。また、α−オレフィン共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよいが、剥離性が良いことからランダム共重合体が好ましい。
エチレン系α−オレフィン共重合体は、好ましくはエチレン単位が、全単位中、50〜95モル%、より好ましくは70〜95モル%である。また、エチレン以外の単量体単位としては、1−ブテン、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。特に好ましい共重合体は、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。なお、かかるエチレン−1−ブテン共重合体はエチレン及び1−ブテン以外のα−オレフィン由来の単量体単位を10モル%以下の量で含んでいてもよく、エチレン−プロピレン共重合体は、エチレン及びプロピレン以外のα−オレフィン由来の単量体単位を10モル%以下の量で含んでいてもよい。このような共重合体は、例えば、遷移金属触媒成分(例えばバナジウム化合物やジルコニウム化合物)と有機アルミニウム化合物触媒成分とからなる触媒を用いて、共重合体中の前記のエチレン単位含有量となるように、エチレンとα−オレフィンを共重合することによって得ることができる。
また、本発明において、α−オレフィン共重合体は市販品を使用することができ、エチレン系α−オレフィン共重合体としては、例えば、タフマーPシリーズ、タフマーAシリーズ(いずれも三井化学(株)製)、エンゲージ(ダウ・ケミカル(株)製)等が好適に使用される。特に、38℃において固体であるエチレン系α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン系α−オレフィン共重合体としては、例えば、タフマーP−0080K(融点51℃)、タフマーP−0280(融点51℃)、タフマーA−35070S(融点50℃)、タフマーP−0680(融点51℃)、タフマーP−0180(融点51℃)、タフマーP−0480(融点51℃)、タフマーP−0275(融点38℃)、タフマーP−0775(融点38℃)(いずれも三井化学(株)製)等が好適に使用される。
また、本発明では、剥離力の調製のために、非反応性ポリオレフィンは1種又は2種以上を使用することができ、2種以上使用する場合は、上述の引張弾性率および引張破壊応力の条件を満たすポリオレフィンのみを2種以上用いてもよく、上述の引張弾性率および引張破壊応力の条件を満たすポリオレフィンと条件を満たさないポリオレフィンを組み合わせて用いてもよい。なお、かかる上述の引張弾性率および引張破壊応力の条件を満たさないポリオレフィンは、引張弾性率が10MPaを超えるものは、引張弾性率が100MPa以下であるのが好ましく、引張破壊応力が8MPaを超えるものは、引張破壊応力が35MPa以下であるのが好ましい。
本発明において、非反応性ポリオレフィンを一種のみ使用する場合、剥離剤層形成時の塗膜強度の観点等から、非反応性ポリオレフィンは、前記引張弾性率および前記引張破壊応力の条件を満たす他に、230℃におけるMFR(メルトフローレート)が100g/10分以下であるものが好ましく、MFRが70g/10分以下であるものがより好ましく、MFRが50g/10分以下であるものがさらに一層好ましく、MFRが10g/10分以下であるものが特に好ましい。
また、非反応性ポリオレフィンを2種以上使用する場合、前記引張弾性率および前記引張破壊応力の条件を満たす少なくとも1種類の非反応性ポリオレフィンが、230℃におけるMFRが100g/10分以下であるものを用いるのが好ましく、また、全非反応性ポリオレフィン中においてかかるMFRが100g/10分以下の非反応性ポリオレフィンの割合が10重量%以上であるのが好ましく、50重量%以上がより好ましい。この条件を満たせば、他のポリオレフィンとして、前記引張弾性率および前記引張破壊応力の条件を満たすポリオレフィン、もしくは条件を満たさないポリオレフィンであって、かつ230℃におけるMFRが100g/10分を超えるものを使用してもよい。
また、本発明では、剥離剤中の非反応性ポリオレフィンの含有量は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。剥離剤中の非反応性ポリオレフィンの含有量が70重量%未満の場合、非反応性ポリオレフィンの含有量を減らした分、ポリオレフィンポリオールやイソシアネート系架橋剤の含有量を増やすと、剥離性が悪くなり剥離力が大きくなる傾向があり、液状炭化水素の含有量を増やすと、塗膜強度が低下する傾向がある。また、非反応性ポリオレフィンの含有量の上限値は、特に限定されない。液状炭化水素の含有量を最少量の3重量部とした場合でも十分な塗膜強度を得る観点から、剥離剤中の非反応性ポリオレフィンの含有量は、好ましくは96重量%以下、より好ましくは、95重量%以下である。
また、本発明では、上記液状炭化水素及び38℃において固体である非反応性ポリオレフィンの含有量の合計は、剥離剤中、好ましくは、80重量%以上であり、より好ましくは、85重量%以上であり、特に好ましくは、90重量%以上である。液状炭化水素及び38℃において固体である非反応性ポリオレフィンの含有量の合計が80重量%未満の場合、剥離性が悪くなり、剥離力が大きくなる傾向がある。液状炭化水素及び38℃において固体である非反応性ポリオレフィンの含有量の合計の上限値は、特に限定されない。十分な塗膜強度を得るために、前記合計は、剥離剤中、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下である。
(3)イソシアネート系架橋剤
本発明の剥離剤が含有するイソシアネート系架橋剤は、芳香族系及び脂肪族系のいずれであってもよいが、基材との密着性が得られる点で、芳香族イソシアネート及び脂環式イソシアネートが好ましい。芳香族イソシアネート及び脂環式イソシアネートの中でも、剥離剤層の強度、耐熱性などの観点より、1分子中にイソシアネート基を3個以上有するものが特に好ましい。1分子中にイソシアネート基を3個以上有するものとしては、芳香族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートの多価アルコール付加体が最も好ましい。そのような多価アルコール付加体としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートの過剰量に、またはイソホロンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トランス−シクロヘキサンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートの過剰量に、多価アルコールを反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物が挙げられる。これらの中でもトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートの多価アルコール付加体が好ましく、特に反応性、基材への密着性の点でトリレンジイソシアネートの多価アルコール付加体がより好ましい。なお、ここでの多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールなどの脂肪族多価アルコール等が挙げられ、トリメチロールプロパンが好ましい。さらに、芳香族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートの多量体(例えば、イソシアヌレート体)も好適に使用できる。
芳香族イソシアネート及び脂環式イソシアネートは、非反応性ポリオレフィンとの相溶性が低く、剥離剤の架橋成分として使用した場合には、剥離性を損なわない程度にしか非反応性ポリオレフィンとは相溶しない。従って、非反応性ポリオレフィンと相溶していない残りの芳香族イソシアネート及び脂環式イソシアネートは、液状炭化水素及び非反応性ポリオレフィンを主体とする層と基材との間に偏在し、剥離剤層と基材との密着性に大きく寄与する。
イソシアネート系架橋剤の含有量は、非反応性ポリオレフィン100重量部に対し0.5〜20重量部であり、好ましくは1.0〜15重量部、更に好ましくは1.5〜10重量部である。かかる範囲内にあると、ポットライフが短くなるなどの悪影響もなく、より優れた基材密着性が得られる。
(4)ポリオレフィンポリオール
本発明におけるポリオレフィンポリオールは、イソシアネート系架橋剤と反応させるものであるが、非反応性ポリオレフィンとの相溶性が良いことが好ましい。
例えば、数平均分子量(Mn)が1500〜50000、好ましくは1500〜5000、さらに好ましくは1500〜4000、最も好ましくは1500〜3000のポリオレフィンポリオールが好適である。
数平均分子量(Mn)がかかる範囲内にあると、ポリオレフィンポリオールが、剥離剤層における液状炭化水素及び非反応性ポリオレフィンを主体とする層、並びに、イソシアネート系架橋剤を主体とする層(すなわち、非反応性ポリオレフィンが少ない層)の両方に適度に溶解できる。前記分子量を有するポリオレフィンポリオールが液状炭化水素及び非反応性ポリオレフィンを主体とする層に適度に溶解できるため、剥離剤層の強度や耐熱性を向上させることができ、また、白っぽく曇った状態とならず優れた外観の剥離剤層が得られる。また、液状炭化水素及び非反応性ポリオレフィンを主体とする層におけるポリオレフィンポリオールに起因する水酸基が過剰になることもないので軽剥離性の剥離剤層が得られる。さらに、剥離剤層におけるイソシアネート系架橋剤を主体とする層(すなわち、非反応性ポリオレフィンが少ない層)において、イソシアネート系架橋剤とポリオレフィンポリオールが適度に反応することができ、より優れた基材密着性が得られる。
ポリオレフィンポリオールの種類は特に限定されない。例えば、ポリエチレン系ポリオール、ポリプロピレン系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、および水素添加ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。中でも、ポリオレフィンとの相溶性や剥離力への影響の観点から、水素添加ポリイソプレンポリオール、ポリイソプレンポリオールが好ましい。
また、ポリオレフィンポリオールは剥離剤塗膜の強度や硬化性の観点から、水酸基価(mgKOH/g)が、20以上が好ましく、また、剥離力への影響の観点から、水酸基価(mgKOH/g)が、75以下が好ましい。より好ましくは水酸基価(mgKOH/g)が25〜60である。
本発明において、ポリオレフィンポリオールは、市販品を使用することができ、例えば、Poly bdR-45HT(水酸基末端液状ポリブタジエン:Mn=2800、水酸基価=46.6mgKOH/g、出光興産(株)製)、Poly ip(水酸基末端液状ポリイソプレン:Mn=2500、水酸基価=46.6mgKOH/g、出光興産(株)製)、エポール(水酸基末端液状水添ポリイソプレン:Mn=2500、水酸基価=50.5mgKOH/g、出光興産(株)製)、GI-1000(水酸基含有液状水添ポリブタジエン:Mn=1500、水酸基価=60〜75mgKOH/g、日本曹達(株)製)、GI-2000(水酸基含有液状水添ポリブタジエン:Mn=2100、水酸基価=40〜55mgKOH/g、日本曹達(株)製)、GI-3000(水酸基含有液状水添ポリブタジエン:Mn=3000、水酸基価=25〜35mgKOH/g、日本曹達(株)製)などが挙げられる。これらのポリオールはいずれも常温で液状である。また、ユニストールP−801(水酸基含有ポリオレフィンの16%トルエン溶液、トルエン除去物は固体、水酸基価40mgKOH/g、三井化学(株)製)を使用することもできる。
また、本発明において、剥離剤中のポリオレフィンポリオールの含有量は、次式(I)におけるAの値が30〜250、好ましくは40〜200、より好ましくは50〜150となるように設定される。Aの値が30より小さいと剥離剤層の強度が十分ではなくなる傾向があり、250より大きいと重剥離化の原因となりやすい。
[数1]
A=ポリオレフィンポリオールの水酸基価(mgKOH/g)×ポリオレフィン100重量部に対するポリオレフィンポリオールの重量部数 (I)
(5)ウレタン化触媒
本発明では、イソシアネート系架橋剤とポリオレフィンポリオールの反応にウレタン化触媒を用いてもよく、ウレタン化触媒としては、通常のウレタン化反応に用いられる触媒を使用できる。ウレタン化触媒として、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートなどの錫化合物、亜鉛、コバルト、銅、ビスマス等の金属のカルボン酸塩、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどのアミン化合物、チタン、ジルコニウム等の金属のキレート化合物が例示される。また、有機酸ビスマス塩(アビエチン酸、ネオアビエチン酸、d−ピマル酸、イソ−d−ピマル酸、ポドカルプ酸およびこれらの2種以上を主成分とする樹脂酸ビスマスなどの脂環族系有機酸のビスマス塩、安息香酸、ケイ皮酸、p−オキシケイ皮酸などの芳香族系有機酸のビスマス塩等)も使用できる。中でも、剥離剤組成物への相溶性およびウレタン化反応の反応性の点で、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ビスマスのカルボン酸塩、樹脂酸ビスマス塩が好ましい。
ウレタン化触媒の含有量は、非反応性ポリオレフィン100重量部に対し0.05〜2.0重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜1.5重量部、更に好ましくは0.1〜1.0重量部である。0.05重量部未満では触媒としての効果が十分でない場合が多く、2.0重量部を超えると重剥離化の原因となったり、剥離剤の溶液状でのポットライフが短くなるなどの不具合の原因となる可能性が高くなる。
なお、ここでいう触媒の含有量は有効成分の重量部であり、例えば、後述の実施例で使用している「プキャットB7」のような有効成分の化合物を溶剤で溶解させた溶液タイプである場合、有効成分の化合物のみの重量部を意味する。
(6)その他の任意成分
本発明の剥離剤には、その他必要に応じて、前記非反応性ポリオレフィン以外のオレフィン系樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤等の光安定剤や帯電防止剤、カーボンブラック、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤、顔料等を適宜配合してもよい。
2.離型材
また、本発明は、基材の少なくとも片面に、前記剥離剤からなる剥離剤層を有する離型材を提供するものである。
[基材]
本発明における基材としては、特に制限されないが、表面が平滑である点で、プラスチックフィルムが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。また、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙を基材として用いてもよく、その場合、剥離剤の基材への過度の含浸を防ぐためにポリエチレン等のプラスチックがラミネートされたものや、目止め処理されたものを用いることが好ましい。
基材には、必要に応じて、予めコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等の処理をしておいても良い。また、基材の厚さは、特に制限されず、使用目的に応じて適宜設定することができるが、プラスチックフィルムの場合は、通常、12〜250μm程度、好ましくは、16〜200μm、より好ましくは25〜125μmである。
また、基材には、その他必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤等の光安定剤や帯電防止剤、カーボンブラック、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤、顔料等を適宜配合してもよい。
[剥離剤層]
本発明における剥離剤層は、例えば、剥離剤を構成する組成物を希釈溶剤に溶解させ、その溶液を基材に塗布後、乾燥させることにより得られる。溶液濃度は、特に限定されないが、通常、0.1〜5重量%の範囲内で調整される。
希釈溶剤としては、各成分を均一に溶解し得るものであれば、特に制限されないが、本発明の剥離剤は非反応性ポリオレフィンを主成分としていることから、主として炭化水素系溶剤を使用することが、均一に溶解させる観点から好ましい。炭化水素系溶剤としては、例えば、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素が挙げられる。また、更に必要に応じて、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等を併用しても良い。
剥離剤の基材への塗布方法は、キスロールコーター、ビードコーター、ロッドコーター、マイヤーバーコーター、ダイコーター、グラビアコーター等、公知慣用の方法が利用できる。乾燥方法についても、特に制限されないが、最も一般的な乾燥方法は、熱風乾燥であり、基材の耐熱性にもよるが、80〜150℃程度の温度で加熱することにより、剥離剤層を形成し得る。
乾燥後の剥離剤層の厚さは、通常、30〜500nm、好ましくは、45〜400nm、特に好ましくは、60〜300nmである。該剥離剤層の厚さが30nm未満である場合、重剥離となる場合があり、逆に、500nmを超える場合、離型材をロール状に巻き取った時にブロッキングしたり、剥離力が大きくなったりする場合がある。
離型材において、剥離剤層と基材との間に別の層が形成されていてもよい。但し、剥離剤層は最表面に存在することが必要である。なお、剥離剤層は、基材の上に直接形成されていることが好ましい。
3.離型材付き粘着テープ
本発明は、粘着剤層の少なくとも片面に前記離型材を有し、該粘着剤層と該離型材の剥離剤層とが接触している粘着テープを提供するものである。
当該粘着テープの粘着剤層に用いる粘着剤としては、特に制限されないが、ゴム系、アクリル系、ポリエステル系粘着剤等が挙げられ、このうちアクリル系粘着剤やポリエステル系粘着剤は、安定した剥離性が得られる点で、好ましい。
アクリル系粘着剤は、溶液重合法、エマルション重合法、UV重合法などの慣用の重合法により得られるアクリル系ポリマーを主剤とし、これに必要により、架橋剤、粘着付与剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤などの各種の添加剤を加えることにより調製できる。
前記のアクリル系ポリマーとしては、例えばブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、これに必要により共重合可能な改質用モノマーとして2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸などのカルボキシ基含有モノマー、スチレンなどのスチレン系モノマー、酢酸ビニルなどのビニルエステル類等の他のモノマーを加えたモノマー混合物の共重合体が用いられる。
また、ポリエステル系粘着剤としては、脂肪族系カーボネートジオール(例えば、ブタンジオール等のジオール成分とエチレンカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるカーボネートジオールなど)を必須のポリオール成分としたポリエステル系重合体を主剤とする粘着剤が挙げられる。
また、粘着テープは、例えば粘着剤溶液を基材上に塗布し、これを乾燥させることにより得られる。また、粘着剤層の厚みは、粘着性などを考慮して適宜選択することができ、通常3〜100μm、好ましくは5〜90μm、さらに好ましくは10〜80μmである。
4.剥離剤からなる剥離剤層付き粘着テープ
また、本発明は、基材の片面に粘着剤層を有し、他方の面に本発明の剥離剤からなる剥離剤層(以下「背面処理層」と呼ぶ)を有する粘着テープを提供するものである。
本発明の粘着テープは、ロール状に巻回された形態、シートが積層された形態のいずれの形態でもよく、いずれの形態においても粘着剤層を背面処理層により保護することができる。
該粘着テープにおいて、粘着剤層および背面処理層は、いずれも基材の上に直接形成されていてもよく、また、これらの層と基材との間に別の層が形成されていてもよい。但し、粘着剤層および背面処理層はいずれも最表面に存在することが必要である。こうすることによって、該粘着テープがロール状に巻回された場合、またはシート形態の該粘着テープが積層された場合に、背面処理層が、粘着剤層と接触してこれを保護することができる。なお、粘着剤層および背面処理層は、いずれも基材の上に直接形成されていることが好ましい。
本発明の粘着テープに使用する粘着剤は特に限定されないが、ゴム系、アクリル系、ポリエステル系粘着剤等が挙げられ、このうちアクリル系粘着剤やポリエステル系粘着剤は、安定した剥離性が得られるため好ましい。
また、背面処理層は、前記粘着剤層とは反対の基材の表面に、前記剥離剤層と同様の方法で形成することができ、背面処理層の厚みは、剥離力の観点から、30〜500nmが好ましく、更に好ましくは45〜400nm、最も好ましくは60〜300nmである。
5.物性、特性等
本明細書中の物性、特性等は以下の方法での測定値である。
(1)密度
ASTM D1505に準拠して測定した値である。
(2)メルトフローレート(230℃)
ASTM D1238に準拠して測定した値である。
(3)数平均分子量
ASTM D2503に準拠して測定した値である。
(4)水酸基価 JIS K1557に準拠して測定した値である。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例及び比較例は本発明を限定するものではない。なお、以下において、部及び%は、それぞれ重量部及び重量%を示す。
<サンプルの調製>
下記表1〜5の各成分を、下記表6の重量比に従い、それぞれトルエンに溶解し、濃度1.5%の剥離剤溶液を調製した。この剥離剤溶液を、マイヤーバー#6で、厚さ38μmのポリエステルフィルムに塗布した後、熱風乾燥機を用いて130℃で1分間加熱した。得られた離型材の剥離剤層の厚さは、いずれも約150nmであった。
<離型材付き粘着テープの作製>
50mm幅のアクリル系粘着テープNo.31B(日東電工(株)製)の粘着剤層面を実施例1〜13および比較例1〜10の離型材の剥離剤層表面にハンドローラーを用いて貼り合わせることで離型材付の粘着テープを作製した。このようにして作製した粘着テープを用いて、低速剥離力、高速剥離力、加湿保存後高速剥離力および残留接着力の測定を行った。
各サンプルの評価は、それぞれ下記の通りに行った。
[A]低速剥離力
作製した離型材付き粘着テープを23℃で24時間保存した後、引張試験機にて、離型材を180°方向に0.3m/minの速さで引っ張り、23℃雰囲気で測定した剥離力を、低速剥離力とした。本発明では、低速剥離力は、0.10〜0.30N/50mmが好ましく、より好ましくは、0.10〜0.25N/50mmである。
[B]高速剥離力
離型材を引き剥がす速度を3.0m/minに変更した以外は、低速剥離力と同様の条件で測定した剥離力を、高速剥離力とした。本発明では、高速剥離力は、0.4〜1.0N/50mmが好ましく、より好ましくは、0.4〜0.8N/50mmである。
[C]加湿保存後高速剥離力
作製した離型材付き粘着テープを40℃×92%RHの恒温恒湿機内で7日間保存し、その後、23℃雰囲気に2時間放置後、引張試験機にて、離型材を180°方向に3.0m/minの速さで引っ張り、23℃雰囲気で測定した剥離力を、加湿保存後高速剥離力とした。本発明では、加湿保存後高速剥離力は、0.5〜1.5N/50mmが好ましく、より好ましくは、0.5〜1.2N/50mmである。
[D]残留接着力
作製した離型材付き粘着テープを70℃で24時間保存した後、試験片を20mm幅に切断した。JIS Z0237の「180度引きはがし粘着力の測定」に準拠し、360番の耐水研磨紙で研磨したSUS304鋼板を試験板として測定した粘着力を、残留接着力とした。本発明では、残留接着力は、4.8〜7.0N/20mmが好ましく、より好ましくは、5.2〜7.0N/20mmである。
剥離速度依存性([B]/[A])及び加湿保存後剥離速度依存性([C]/[A])
剥離速度依存性は、高速剥離力の値を、低速剥離力の値で割った値である。本発明では、5以下が好ましく、より好ましくは4以下である。
また、加湿保存後剥離速度依存性は、加湿保存後高速剥離力の値を、低速剥離力の値で割った値である。本発明では、7以下が好ましく、より好ましくは6以下、最も好ましくは5以下である。
結果を表7に示す。
実施例1〜13より、剥離速度依存性及び加湿保存後剥離速度依存性が小さく、残留接着力に優れる離型材が得られた。
一方、比較例1〜10の離型材では、実施例1〜13よりも剥離速度依存性が大きいことが確認された。また、比較例1〜10の離型材では、加湿保存後剥離速度依存性が大きいことが確認された。
このように、比較例より、剥離速度依存性及び加湿保存後剥離速度依存性が低減した離型材は得られなかった。
更に、比較例6、8の離型材では、残留接着力が低いことが確認された。
<背面処理層付き粘着テープ>
(粘着剤溶液の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート190部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、アゾビスイソブチロニトリル0.4部、及び重合溶媒として酢酸エチル372.2部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温して10時間反応させ、固形分濃度が35%のアクリル系ポリマーを含む溶液を得た。この溶液中のアクリル系ポリマーの重量平均分子量は100万であった。
次に、前記アクリルポリマー100部に対してイソシアネート系架橋剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)3部、架橋促進剤(エンビライザーOL−1、東京ファインケミカル(株)製)0.02部を添加し、トルエンで希釈することにより濃度25%の粘着剤溶液を調製した。
(剥離剤溶液の調製)
タフマーP−0280/ルーカントHC−2000/エポール/コロネートL/ジブチル錫ジウラレート=90/10/2/0.5/1(固形分の重量比)をトルエンに溶解し、濃度1.0%の剥離剤溶液を調製した。
(粘着テープの作製)
前記剥離剤溶液を、厚さ38μmのポリエステルフィルムの片面にキスコーターで塗工後、130℃×15秒の条件で乾燥させ、乾燥後の厚みが100nmである剥離剤層(背面処理層)を得た。
次に、得られた背面処理層とは反対の面に、前記粘着剤をリバースロールコーターで塗工後、80℃×15秒、続く130℃×15秒の2段階で乾燥させ、乾燥後の厚みが25μmである粘着剤層を得、粘着剤層が内側となるようにロール状に巻き取り、背面処理層付き粘着テープを作製した。
なお、剥離剤層(背面処理層)の形成から粘着剤層の形成後、ロール状に巻き取るまでの一連の工程は、4m/minのライン速度で行った。
作製した粘着テープはスムーズに巻き戻すことができた。
本発明の剥離剤は、剥離性の速度依存性及び加湿保存後の剥離性の速度依存性に優れるので、剥離作業の効率を向上させることができる。
本願は、日本に出願された特願2009−231844および特願2009−289741を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含される。

Claims (17)

  1. JIS K7117−1に準拠して測定した38℃における粘度が5〜1500Pa・sである液状炭化水素を含む、ポリオレフィン系剥離剤。
  2. 38℃において固体である非反応性ポリオレフィンを含む、請求項1に記載の剥離剤。
  3. 前記非反応性ポリオレフィンが、エチレン系α−オレフィン共重合体である、請求項2に記載の剥離剤。
  4. 前記非反応性ポリオレフィン中、23℃における引張弾性率が10MPa以下で、且つ、23℃における引張破壊応力が8MPa以下である非反応性ポリオレフィンの含有量が、90重量%以上である、請求項2または3に記載の剥離剤。
  5. 前記液状炭化水素および前記非反応性ポリオレフィンの合計100重量部に対し、液状炭化水素の含有量が3〜30重量部である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の剥離剤。
  6. 前記液状炭化水素および前記非反応性ポリオレフィンを、剥離剤中、合計80重量%以上の量で含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の剥離剤。
  7. イソシアネート系架橋剤を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の剥離剤。
  8. 前記イソシアネート系架橋剤が、1分子中にイソシアネート基を3個以上有する芳香族イソシアネートである、請求項7に記載の剥離剤。
  9. 前記1分子中にイソシアネート基を3個以上有する芳香族イソシアネートが、芳香族ジイソシアネートの多価アルコール付加体である、請求項8に記載の剥離剤。
  10. 前記イソシアネート系架橋剤が、1分子中にイソシアネート基を3個以上有する脂環式イソシアネートである、請求項7に記載の剥離剤。
  11. 前記1分子中にイソシアネート基を3個以上有する脂環式イソシアネートが、脂環式ジイソシアネートの多価アルコール付加体である、請求項10に記載の剥離剤。
  12. ポリオレフィンポリオールをさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の剥離剤。
  13. 前記ポリオレフィンポリオールの数平均分子量が、1500〜50000である、請求項12に記載の剥離剤。
  14. 前記液状炭化水素および前記非反応性ポリオレフィンの合計100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤の含有量が0.5〜20重量部である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の剥離剤。
  15. 基材の少なくとも片面に、請求項1〜14のいずれか一項に記載の剥離剤からなる剥離剤層を有する、離型材。
  16. 粘着剤層の少なくとも片面に、請求項15に記載の離型材を有し、前記粘着剤層と前記離型材の剥離剤層とが接触している、粘着テープ。
  17. 基材の片面に粘着剤層を有し、基材の他方の面に、請求項1〜14のいずれか一項に記載の剥離剤からなる剥離剤層を有する、粘着テープ。
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