JP3185524U - 積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】用紙に施されたミシン目やカット線に沿って容易に裂ける易裂性を有するラミネート加工用のフィルムを提供する。
【解決手段】フィルム基材2と粘着剤層4とを有する積層フィルム10であって、前記フィルム基材は、樹脂層を有し、前記樹脂層は、環状ポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とするラミネート加工用積層フィルムに関する。積層フィルムをミシン目加工やカット線加工等が施された用紙に貼付した場合であっても、ミシン目やカット線に沿ってカードを容易に切り離すことを可能となり、表面がラミネート加工されたカードを効率的に得ることができる。
【選択図】図1

Description

本考案は、積層フィルムに関する。具体的には、本考案は、易裂性や耐久性に優れた積層フィルムであって、被着物表面をラミネートするための積層フィルムに関する。
従来、名刺などのカードを、普及型プリンタなどを用いて作製するための用紙が各種提案されている。このような用紙には、あらかじめミシン目加工やカット線加工等が施されており、使用者は、用紙に必要情報を印刷した後、ミシン目やカット線に沿って所定部分を切り離すことによって、複数枚のカードを作成することができる(例えば、特許文献1)。このようなミシン目加工やカット線加工等が施された用紙を用いることにより、複数枚のカードを短時間で作成することが可能となる。さらに、使用者は、カードを切り離す際にハサミやカッター等を使用する必要がないため、安全性や利便性を高めることができる。
しかし、このように作成されたカードは、その耐久性や耐水性が十分ではなく、その印刷情報等を長期間に亘って保持することができないという問題があった。また、カード自体の強度も弱く、破れたり、傷がつくという問題があった。このような問題に対処する方法として、カード全体をラミネートフィルムで覆う方法が知られている(例えば、特許文献2)。ここでは、カードや写真を1枚ずつ、ラミネートフィルムの間に挟み込み、感熱接着することによりラミネート加工を行なっている。
特開2004−025891号公報 特開2001−293780号公報
しかしながら、用紙から切り離したカードに各々ラミネート加工を施すことは手間がかかり、コスト面でも不利である。一方で、ミシン目加工やカット線加工等が施された用紙全体に、ラミネートフィルムを貼付することも考えられるが、この場合、ミシン目やカット線に沿って、カードを切り離しにくくなるという問題がある。また、カードを用紙から切り離す際に、ラミネートした樹脂フィルムが意図しない箇所で裂けたり、シワやヨレが生じる可能性もある。
すなわち、従来は、ミシン目加工やカット線加工等が施された用紙全体にラミネートフィルムを貼付することは現実的ではなく、このような用紙から切り離されるカード表面を効率的にラミネート加工する方法は見出されていなかった。
そこで本考案者らは、このような従来技術の課題を解決するために、ラミネートフィルムをミシン目加工やカット線加工等が施された用紙に貼付した場合であっても、ミシン目やカット線に沿ってカードを容易に切り離すことを可能とするラミネートフィルムを提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本考案者らは、樹脂フィルムと粘着剤層を有するラミネート加工用の積層フィルムにおいて、樹脂フィルムに特定のポリオレフィンを用いることにより、ラミネート加工用の積層フィルムをミシン目加工やカット線加工等が施された用紙に貼付した場合であっても、ミシン目やカット線に沿ってカードを容易に切り離すことができることを見出した。また、本考案らは、このようなラミネート加工用の積層フィルムは、用紙のミシン目やカット線に追従し、容易に裂くことはできるが、耐久性も兼ね備えていることを見出し、本考案を完成するに至った。
具体的に、本考案は、以下の構成を有する。
[1]フィルム基材と粘着剤層とを有する積層フィルムであって、前記フィルム基材は、樹脂層を有し、前記樹脂層は、環状ポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とするラミネート加工用積層フィルム。
[2]前記環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は100℃以上であることを特徴とする[1]に記載のラミネート加工用積層フィルム。
[3]前記環状ポリオレフィン系樹脂は、ノルボルネン系重合体であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のラミネート加工用積層フィルム。
[4]前記フィルム基材は、前記樹脂層の上に、さらに、第1の中間層と、第2の中間層と、表面層を順に有し、前記第1の中間層は、メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を含み、前記第2の中間層は、直鎖状ポリエチレンを含み、前記表面層は、前記樹脂層に含まれる環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも10℃以上高い融点を有する樹脂を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のラミネート加工用積層フィルム。
[5]前記ラミネート加工用積層フィルムは、切断型用紙表面をラミネートするために用いられることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のラミネート加工用積層フィルム。
[6]前記フィルム基材の膜厚は10〜50μmであり、前記粘着剤層の膜厚は5〜30μmであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のラミネート加工用積層フィルム。
[7]前記粘着剤層の膜厚は5〜15μmであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のラミネート加工用積層フィルム。
[8]前記樹脂層に含まれる環状ポリオレフィン系樹脂の含有率は、前記樹脂層に含まれる全樹脂成分に対して40質量%以上であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のラミネート加工用積層フィルム。
[9]前記第1の中間層に含まれるポリプロピレン系樹脂の含有率は、前記第1の中間層に含まれる全樹脂成分に対して80質量%以上であることを特徴とする[4]〜[8]のいずれかに記載のラミネート加工用積層フィルム。
[10]前記第2の中間層に含まれる直鎖状ポリエチレンの含有率は、前記第2の中間層に含まれる全樹脂成分に対して80質量%以上であることを特徴とする[4]〜[9]のいずれかに記載のラミネート加工用積層フィルム。
[11]前記表面層は、ポリプロピレン系樹脂を含むことを特徴とする[4]〜[10]のいずれかに記載のラミネート加工用積層フィルム。
[12]前記第1の中間層に含まれるポリプロピレン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて重合されたα−オレフィンランダム重合体であることを特徴とする[4]〜[11]のいずれかに記載のラミネート加工用積層フィルム。
[13]前記第2の中間層に含まれる直鎖状ポリエチレンは、密度が0.900〜0.950g/cm3であることを特徴とする[4]〜[12]のいずれかに記載のラミネート加工用積層フィルム。
[14]前記第2の中間層の上に、さらに第3の中間層を有し、前記第3の中間層は、環状ポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする[4]〜[13]のいずれかに記載のラミネート加工用積層フィルム。
[15][1]〜[14]のいずれかに記載のラミネート加工用積層フィルムの粘着剤層の一方の面側であって、フィルム基材と対向する側に剥離シートをさらに有することを特徴とする剥離シート付き積層フィルム。
[16]前記剥離シートはスリットを有することを特徴とする[15]に記載の剥離シート付き積層フィルム。
[17][1]〜[14]のいずれかに記載のラミネート加工用積層フィルムが切断型用紙の表面にラミネートされ形成されることを特徴とする積層体。
本考案によれば、易裂性と開裂追従性が良好であり、かつ耐久性の高い積層フィルムを得ることができる。すなわち、本考案によれば、積層フィルムをミシン目加工やカット線加工等が施された用紙に貼付した場合であっても、ミシン目やカット線に沿ってカードを容易に切り離すことが可能となり、表面がラミネート加工されたカード等を効率的に得ることができる。
図1は、本考案の積層フィルムの概略断面図である。 図2は、本考案の積層フィルムを切断型用紙に貼付した様子を表した概略図である。
以下において、本考案について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本考案はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
(ラミネート加工用積層フィルム)
本考案は、フィルム基材と粘着剤層とを有するラミネート加工用の積層フィルムに関する。フィルム基材は、樹脂層を有し、樹脂層は、環状ポリオレフィン系樹脂を含む。ここで、樹脂層に含まれる環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上であることが好ましい。図1(a)には、本考案のラミネート加工用の積層フィルム10の概略断面図が示されている。図1(a)に示されているように、積層フィルム10は、フィルム基材2と粘着剤層4を有する。なお、積層フィルム10は、フィルム基材2と粘着剤層4に加えて、他の層を有していてもよい。
本考案では、フィルム基材は、樹脂層の上に、さらに、第1の中間層と、第2の中間層と、表面層を順に有することが好ましい。第1の中間層は、メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を含み、第2の中間層は、直鎖状ポリエチレンを含む。また、表面層は、樹脂層に含まれる環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも10℃以上高い融点を有する樹脂を含む。
本考案では、積層フィルムの構成を上記のようにすることにより、耐久性を有しつつも、易裂性と開裂追従性に優れた積層フィルムを得ることができる。なお、易裂性に優れた積層フィルムとは、手で裂くことができる程度の手切れ性を有する樹脂フィルムをいい、フィルム単体での端裂抵抗が120N以下のフィルムをいう。また、開裂追従性に優れたフィルムとは、被着体のミシン目等の開裂線に沿ってきれいに裂くことができるフィルムをいう。
本考案の積層フィルムは、ラミネート加工用の積層フィルムである。ここで、ラミネート加工とは、プリンタ等で印刷を施した用紙の表面にフィルムを貼る作業を言う。本考案の積層フィルムは、ミシン目加工やカット線加工を施した紙製や樹脂製の用紙(以下、切断型用紙ともいう。)に印刷を施した後に、その表面に貼付される。なお、本考案のラミネート加工用の積層フィルムは、用紙のミシン目やカット線に沿って、その一部分(カード)が切り離される前に貼付されるものであって、用紙の一方の面に貼付されるものである。
ここで、ミシン目とは、切り部と継ぎ部が交互に形成されたものであって、カット線とは、用紙の厚さ未満の深さの溝線(ハーフカット線)のことをいう。
本考案の積層フィルムは、易裂性と開裂追従性に優れているため、ミシン目加工やカット線加工を施した用紙からその一部分(カード)の切り離し等を行う場合に、その切り取り線に追従し開裂されることとなる。すなわち、本考案の積層フィルムは、フィルムの配向に関わらず、被着物である切断型用紙の開裂に追従することができ、表面が積層フィルムによってラミネートされたカードを簡便に切り離すことができる。このように、本考案の積層フィルムは、切断型用紙表面をラミネートする積層フィルムとして好ましく用いられる。
本考案の積層フィルムにおいて、フィルム基材の膜厚は10〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。また、粘着剤層の膜厚は、5〜30μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましく、5〜15μmであることがさらに好ましく、7〜13μmであることが特に好ましい。
易裂性や開裂追従性が高いフィルムにおいては、そのフィルム自体の強度が低下する場合がある。このように、フィルム自体の強度が低下したフィルムをラミネート加工に用いる場合、ラミネート加工処理時にフィルムが破断したり、裂けたりすることがある。しかし、本考案では、フィルム基材の膜厚を上記範囲内とし、さらに、粘着剤層の膜厚を上記範囲内とすることにより、積層フィルムの強度を高めることが可能となっている。このように、特定の膜厚を有するフィルム基材と粘着剤層を積層した積層フィルムを得ることにより、ラミネート加工処理時に、フィルムが破断したり、裂けたりすることを抑制することができる。すなわち、本考案の積層フィルムは、優れた易裂性と開裂追従性を有するだけではなく、高い強度や耐久性も兼ね備えている。
なお、本考案のラミネート加工用積層フィルムは、平面のシート状であってもよいし、ロール状に巻き取ったものであってもよい。
(フィルム基材)
本考案では、フィルム基材は、樹脂層を含み、樹脂層の上に第1の中間層と、第2の中間層と、表面層を順に有することが好ましい。なお、フィルム基材は、樹脂層のみや、樹脂層と、第1の中間層と、第2の中間層と、表面層のみから形成されてもよく、さらに他の層が含まれてもよい。但し、他の層が含まれる場合であっても、樹脂層や表面層は、フィルム基材の最外層となるように構成されることが好ましい。
<樹脂層>
樹脂層には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上の環状ポリオレフィン系樹脂が含まれる。環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上であることが好ましく、105℃以上であることがより好ましい。また、後述する他の層との共押出積層法による製造が可能である点と、工業的原料入手容易性の観点から、Tgは200℃以下であることが好ましい。特に望ましくは105℃〜180℃である。なお、本考案におけるガラス転移温度、融点は示差走査熱量測定(DSC)にて測定することができる。
上記のようなTgを有する環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましく用いられる。ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」という。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」という。)等が挙げられる。さらに、COP及びCOCの水素添加物は、特に好ましく用いられる。
ノルボルネン系重合体の原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ノルボルネン系共重合体は、ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したものであり、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエンなどが挙げられる。これらのオレフィンは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。
樹脂層に含まれる環状ポリオレフィン系樹脂の含有率は、樹脂層に含まれる全樹脂成分に対して、40質量%以上であることが好ましく、40〜90質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることがさらに好ましく、60〜85質量%であることが特に好ましい。樹脂層に含まれる環状ポリオレフィン系樹脂の含有率を上記範囲内とすることにより、積層フィルムの易裂性や開裂追従性を高めることができる。
また、本考案で用いることができる環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
本考案では、積層フィルムの剛性が高すぎて、ラミネート加工処理時等に裂ける等の問題を避けるために、Tgが100℃未満のCOCを配合することとしてもよい。これにより、ラミネート加工処理適性を向上させることができる。また、COCと相溶性の高い、環状構造を含有しないポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂等の、オレフィン系樹脂を配合することも有効である。ただし、このような環状構造を有しないオレフィン系樹脂の配合割合としては、樹脂層に含まれる全樹脂成分に対して30質量%以下であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で上述した環状ポリオレフィン系樹脂と混合して使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのポリプロピレン系樹脂を樹脂層に混合して用いた場合には、フィルムの耐熱性を高めることができる。
また、これらのポリプロピレン系樹脂は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が110〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が115〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、フィルムの成膜性を向上させることができる。
ポリエチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(EEA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して、環状ポリオレフィン系樹脂と使用することができる。
LMDPEとしては、メタロセン触媒を用いた低圧ラジカル重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン等のα−オレフィンを共重合したものである。LMDPE中のコモノマー含有率としては、0.5〜20モル%の範囲であることが好ましく、1〜18モル%の範囲であることがより好ましい。
メタロセン触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せ等による触媒である。この様なメタロセン触媒は活性点が均一なシングルサイト触媒であるため、活性点が不均一なマルチサイト触媒と比較して、得られる樹脂の分子量分布がシャープになるため、フィルムに成膜した際に低分子量成分の析出が少なく、耐ブロッキング適性に優れた物性の樹脂が得られるので好ましい。
<第1の中間層>
本考案の積層フィルムにおいて、第1の中間層は、メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を含み、ポリプロピレン系樹脂の含有率は、第1の中間層に含まれる全樹脂成分に対して80質量%以上であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂は、上述した環状ポリオレフィン系樹脂との密着強度を適度に保つことができる。また、本考案では、メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を用いることにより、ポリプロピレン系樹脂中に低分子量成分が含まれる割合を抑えることができる。
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体や、その他のα−オレフィン(エチレン、ブテン等)との共重合体が挙げられ、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。得られる積層フィルムの剛性と柔軟性とのバランスや耐熱性の観点からはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を用いることが好ましい。
また、ポリプロピレン系樹脂は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が110〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が115〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、フィルムの成膜性を向上させることができる。
また、ポリプロピレン系樹脂の含有率は、第1の中間層に含まれる全樹脂成分に対して80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂の含有率を上記範囲内とすることにより、層間強度を保持することができ、易裂性及び開裂追従性を高めることができる。
<第2の中間層>
本考案の積層フィルムにおいて、上述した第1の中間層に接して積層される第2の中間層は、直鎖状ポリエチレンを含み、直鎖状ポリエチレンの含有率は、第2の中間層に含まれる全樹脂成分に対して80質量%以上であることが好ましい。直鎖状ポリエチレンは、上述したようにメタロセン触媒を用いた低圧ラジカル重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン等のα−オレフィンを共重合したものであることが好ましい。
また、直鎖状ポリエチレンの含有率は、第2の中間層に含まれる全樹脂成分に対して80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。直鎖状ポリエチレンの含有率を上記範囲内とすることにより、積層フィルムの強度を高めることができ、かつ成膜性を高めることができる。
直鎖状ポリエチレンの密度は、0.900〜0.950g/cm3であることが好ましく、0.905〜0.945g/cm3であることがより好ましい。直鎖状ポリエチレンの密度を上記範囲内とすることにより、積層フィルムの強度や耐久性を高めることができる。
また、直鎖状ポリエチレンの融点は、一般的には60〜130℃の範囲であることが好ましく、70〜125℃がより好ましい。融点がこの範囲であれば、加工安定性や環状ポリオレフィン系樹脂との共押出加工性が向上する。また、直鎖状ポリエチレンのMFR(190℃、21.18N)は2〜20g/10分であることが好ましく、3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRがこの範囲であれば、フィルムの押出成形性が向上する。
<第3の中間層>
本考案の積層フィルムにおいては、第2の中間層の上に、さらに第3の中間層を有することとしてもよい。このとき積層する第3の中間層は、環状ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。このように、環状ポリオレフィン系樹脂を含む第3の中間層を設けることにより、積層フィルムの易裂性や開裂追従性をより高めることができる。
<表面層>
本考案の積層フィルムは、上述した中間層の上に表面層を有する。表面層は、第2の中間層の上に積層されるか、または、第3の中間層が含まれる場合は、その上に積層される。表面層には、樹脂層に含まれる環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも10℃以上高い融点を有する樹脂が含まれる。なお、表面層を構成する樹脂成分は、単独の樹脂からなるものであっても、2種以上の樹脂を混合したものであってもよい。
表面層を構成する樹脂としては、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)、易裂性二軸延伸ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリアミド(PA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を中心層とした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートした共押出二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。中でも、ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。これらは、単独あるいは複合化して使用しても良い。
ポリプロピレン系樹脂を用いる場合、ポリプロピレン系樹脂のMFR(230℃)は0.5〜30.0g/10分で、融点は110〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が115〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、フィルムの成膜性を向上させることができる。
上述した樹脂層と、各中間層及び表面層には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本考案の目的を損なわない範囲で添加することとしてもよい。
(粘着剤層)
粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、ゴム系、アクリル系、ウレタン系、ビニルエーテル系等の任意の粘着剤を使用することができる。これらの中でも、耐候性、透明性等に優れ、広範な用途に使用できることから、アクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤としては、エマルジョン型、溶剤型、ホットメルト型等の粘着剤を挙げることができ、本考案では、これらのいずれの粘着剤も使用することができる。但し、これらの中でも、安全面、品質面、コスト面からエマルジョン型アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
本考案に用いる粘着剤としては、一般に強粘性と呼ばれている粘着剤を用いることが好ましい。強粘性以外の中粘性、弱粘性といった粘着剤を用いると貼付した積層フィルムが用紙から剥がれる等の不具合が発生することがあるからである。なお、強粘性の粘着剤とは、フィルム基材の全面に均一に粘着剤層を設けた積層フィルムにおいて、粘着剤層のJIS Z 0237に基づいて測定される23℃、50%RH環境下における180°引き剥がし粘着力は、3N/10mm以上であることが好ましく、5N/10mm以上であることがより好ましく、7N/10mm以上であることがさらに好ましい。180°引き剥がし粘着力を上記下限値以上とすることにより、積層フィルムと用紙の密着性を高めることができる。
粘着剤層は、必要に応じて他の任意成分を含有してもよい。他の任意成分としては、タッキファイヤー、粘着性微球体、増粘剤、pH調整剤、消泡剤、防腐防黴剤、顔料、無機充填剤、安定剤、濡れ剤、湿潤剤等が挙げられる。タッキファイヤーとしては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、水添石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
また、本考案の粘着剤層には、再剥離・再貼着性粘着剤を用いてもよい。再剥離・再貼着性粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系の粘着剤が挙げられる。
<アクリル系再剥離粘着剤>
アクリル系再剥離粘着剤は、アクリル系共重合体を含む水性エマルジョンを主成分として含み、好ましくは、さらに粘着付与剤や架橋剤を含有する。アクリル系共重合体を構成するモノマー成分としては、2−エチルヘキシルアクリレート及びカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーを挙げることができ、これらのモノマーを乳化重合してアクリル系共重合体が得られる。
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が用いられる。中でも、粘着性や再剥離性とのバランスの取り易さ、入手の容易さという観点から、アクリル酸、メタクリル酸を用いることが好ましい。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋化起点をエマルジョン粒子の中心部と外郭部に偏在させることができるという観点からアクリル酸とメタクリル酸を併用することが望ましい。
アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーの含有率は0.1〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜2質量%である。0.1質量%以上とすることにより、凝集力と機械安定性が向上し、5質量%以下とすることによりラベル加工前の粘着剤層での経時安定性を高めることができ、再剥離性と粘着力のバランスが良好となる。
また、2−エチルヘキシルアクリレートの含有率は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の90質量%以上が好ましい。2−エチルヘキシルアクリレートの含有率を90質量%以上とすることで、たとえば、各種被着体への貼付経時後の手剥がしによる再剥離時のしっとり感を付与し、被着体の汚染を防止することができる。さらに、Tgの低い共重合体が得られ、かつ、粘着力と再剥離性とのバランスの取れた性能が得られるという観点から2−エチルヘキシルアクリレートの含有率は好ましくは96質量%以上、より好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。また、粘着剤層の各種特性を制御するために、2−エチルヘキシルアクリレート及びカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー以外のモノマー成分を適宜使用しても良い。他のモノマー成分としては、2−エチルヘキシルアクリレートを除く炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することが好ましい。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のモノマー成分を例示でき、これらの1種または2種以上が用いられる。中でも、好適なモノマー成分は、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートであり、n−ブチルアクリレートが特に好適である。他のモノマー成分の含有率は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中0〜10質量%が好適である。当該範囲内とすることで、再剥離性を損なうことなく、各種被着体に対して強粘着力が発現させることができる。
さらに、上記のモノマーのほかに、粘着剤層の凝集力を向上させるため、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の多官能性モノマーの群より選ばれる1種以上を使用してもよい。これら多官能性モノマーの含有量は、全モノマー100質量部に対して0〜2質量部程度添加するのがよい。その使用量が2質量部を超える場合には、表面基材への密着性及び再剥離性が低下する傾向となる。
上述したようなモノマー成分を用いて、粘着剤層中のアクリル系共重合体を乳化重合法で調製する際、重合開始剤が用いられる。用いられる重合開始剤として、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等のアゾ系、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物が挙げられる。また、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせや過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等からなるレドックス開始剤も使用することができる。これらの重合開始剤は、通常は、乳化重合の各段階ごとに、所定量を添加して、重合反応を行わせるようにすればよい。
粘着剤層中のアクリル系共重合体の水性エマルジョンを乳化重合法で調製する際、重合安定性を確保するため、アニオン系やノニオン系乳化剤が適量用いられる。アニオン系乳化剤としては、具体的にはラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。また、プロペニル基、アクリロイル基等を導入したラジカル重合性の反応性乳化剤も使用することができる。これらの乳化剤を単独又は併用して使用することもできる。乳化重合の条件としては、特に限定されず、通常の乳化重合で適用される条件をそのまま適用することができる。一般的には、反応器内を不活性ガスで置換した後、還流下撹拌しながら昇温を開始し40〜100℃程度の温度範囲、昇温開始後1〜8時間程度重合を行う。
粘着剤層中のアクリル共重合エマルジョン粒子の平均粒子径は、80〜500nm、好ましくは150〜400nmである。平均粒子径が上記範囲内であると、得られる粘着剤の物性バランス、すなわち粘着力や再剥離性、更に機械安定性のバランスに優れた粘着剤が得られる。平均粒子径を80nm以上とすることにより、安定なエマルジョン粒子が得られ、乳化剤の使用量も少量で済むため好ましい。平均粒子径を500nm以下とすることにより、表面基材に対する密着性や得られる粘着剤層の耐水性が低下するのを防止することができる。
粘着剤層に用いられる粘着剤組成物には、被着体への濡れ性および剥離に対するある程度の抵抗を持たせるために、粘着付与剤を配合することが好ましい。使用する粘着付与剤としては、ロジン、ロジンフェノール樹脂、及びそのエステル化合物、水添ロジンエステル等のロジン系樹脂、テルペン低重合体、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂等の粘着付与剤が例示され、水添ロジンエステルおよび/または芳香族変性テルペン樹脂が好ましく用いられる。軟化点については80〜160℃である粘着付与剤が好ましく、又これらの粘着付与剤を2種以上併用しても良い。配合部数は、使用するモノマーによって異なるが、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分の合計量100質量部に対し、通常0.1〜20質量部、好ましくは1〜15質量部添加される。粘着付与剤を0.1質量部以上とすることにより、実質的な効果として、優れた粘着力、基材密着性が得られる。粘着付与剤を20質量部以下とすることにより、粘着剤層の見かけのTgが高くなるのを防止し、粘着力、基材密着性が低下するのを防止する。粘着付与剤は、乳化重合前や乳化重合途中に添加してもよいし、乳化重合後の水分散型アクリル系共重合体の水性エマルジョンにエマルジョン型の粘着付与剤として添加してもよい。表面基材との密着性を考慮した場合、粘着付与剤を乳化重合する際にモノマー成分と共存させることが望ましい。粘着付与剤を単量体成分と共存させて乳化重合すると、粘着付与剤への連鎖移動が起こりやすくなり、粘着剤層のゲル分率が低下するおそれがあるが、後述する架橋剤を用いることにより、粘着剤のゲル分率を40〜80質量%の範囲にすることで目的とする効果が得られる。粘着剤層のゲル分率を40質量%以上とすることにより、粘着剤層のはみ出しが減少し、粘着ラベルの裁断及び抜き打ち等の二次加工性が得られる。また、80質量%以下とすることにより、十分な粘着力が得られる。
ゲル分率の好ましい範囲は40〜80質量%である。粘着剤組成物には、アクリル系共重合体を架橋してゲル分率を40〜80質量%の範囲に調整するために、エポキシ系化合物のような架橋剤を配合することが好ましい。架橋剤としては、主に、アクリル系共重合体中のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーに由来するカルボキシル基と反応して架橋するもので、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、ポリイソシアネート化合物、メラミン系化合物、金属錯体系化合物、アミン系化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン誘導体等が挙げられる。架橋剤は必要に応じて、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。表面基材に対する密着性や再剥離性、被着体に貼付後の経時な粘着力の上昇が少ないこと、耐汚染性に優れる点で、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物が主として用いられる。これらの架橋剤は粘着剤組成物中の主要な樹脂成分であるアクリル系共重合体中に含まれるカルボキシル基1当量に対して0.4〜1当量の割合で添加される。添加量を0.4当量以上とすることにより、ゲル分率が低過ぎて実質的な効果が得られなくなるのを防止し、基材密着性、凝集力が劣るのを防止する。1当量以下とすることにより、ゲル分率が高くなり過ぎて被着体や基材界面へ架橋剤がブリードするのを防止するとともに、被着体汚染や基材密着性が低下するのを防止し、アルカリ可溶性が低下するのを防止する。
(公序良俗違反につき、不掲載)
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また、粘着剤層には、必要に応じて、可塑剤(例えば、安息香酸エステル化合物、液状ポリブテン、鉱油、ラノリン、液状ポリイソプレン、液状ポリアクリレート、グリセリン等)、防腐剤、防錆剤、凍結溶融安定剤、顔料、着色剤、充填剤(亜鉛華、チタン白、炭酸カルシウム、クレー等)、金属粉末、消泡剤、増粘剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を適宜添加することができる。上記添加剤は、重合後の粘着剤組成物に添加されることが多いが、乳化重合前や乳化重合途中で添加することもできる。
粘着剤層における粘着剤組成物は、固形分が30〜65質量%、好ましくは40〜55質量%である。また、粘着剤組成物の粘度は50〜12000mPa・s(BM型粘度計、25℃、60rpm)、好ましくは100〜10000mPa・sである。pHは6〜9の範囲であることが好ましい。粘着剤組成物の固形分、粘度及びpHが上記範囲内であると、乾燥性、塗工性、及び取り扱いの面から好ましい。粘着剤層を形成する方法としては、特に制限されるものではない。例えば、上記水性エマルジョンに架橋剤等を混合(アクリル系共重合体の乳化重合時に粘着付与剤を添加しなかった場合は、エマルジョン型の粘着付与剤も混合)し、必要に応じてポリアクリル酸などの増粘剤を添加混合して25℃で5000〜10000mPa・s程度の粘度に調整した粘着剤組成物からなる粘着剤を調製する。次いで、粘着剤を剥離シートへ塗布し、乾燥した後に、表面基材表面と貼り合わせる転写塗工法、先に表面基材表面へ粘着剤を直接塗布し、乾燥後に剥離シートと貼り合わせる直接塗工法により形成させることもできる。
<ウレタン系再剥離型粘着剤層>
再剥離型粘着剤層を構成するウレタン系粘着剤として好ましいのは、少なくともポリオールを含む活性水素成分と、ポリイソシアネート系架橋剤とを、3級アミン系化合物、有機金属化合物等の触媒を用いて反応させて得られるポリウレタン系樹脂からなる粘着剤(以下、ポリウレタン系粘着剤ということがある)である。また、該ポリウレタン系樹脂を、さらにポリイソシアネート系架橋剤と反応させて得られる二液硬化型ウレタン系粘着剤も好ましく用いられる。ポリオールとポリイソシアネート系架橋剤との組み合わせにおいては、架橋密度のコントロールがしやすいために、該ポリウレタン系樹脂からなる粘着剤の粘着力の調節が容易である。また、架橋密度の経時変化も少ないために、粘着力の経時変化も少ない。
活性水素成分は、少なくともポリオールを含み、好ましくは、その全部が1種又は2種以上のポリオールである。ポリオールとしては、例えば、炭化水素基、好ましくはアルキレン基からなる主鎖に対し、2以上の水酸基が直接結合し、側鎖として、炭素数1〜10の炭化水素基、好ましくはアルキル基が1以上結合しているポリオール(以下、「C1〜10側鎖含有ポリオール」ということがある)を挙げることができる。活性水素成分は、その全部又は一部、好ましくは全部がC1〜10側鎖含有ポリオールであることが好ましい。C1〜10側鎖含有ポリオールとしては、例えば、下記(1)〜(3)が挙げられる。
(1)1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオ−ル、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−4,4−ジメチルヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオ−ル、2−メチル−1,5−ヘプタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等のジオール自体(以下、ジオール(1)という)等を例示することができる。
(2)ジオール(a1)、またはジオール(a1)とそれ以外のジオールとの混合物と、アジピン酸、セバシン酸、3−メチル−1,4−アジピン酸、フェニルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、アリルマロン酸等のジカルボン酸や、そのエステル、酸無水物等の誘導体や、δ−バレロラクトン等とを反応させて得られるポリエステルジオール(以下、ジオール(2)という)等を例示することができる。
(3)前記ジカルボン酸やその誘導体のかわりに、またはその一部として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ナトリウムスルホビス(β−ヒドロキシエチル)イソフタレート、5−ナトリウムスルホジメチルイソフタレート等を使用して得られるスルホン酸金属塩基含有ポリエステルジオール(以下、ジオール(3)という)等を例示することができる。
これらのC1〜10側鎖含有ポリオールの中でも、溶剤に対する溶解性が良く、さらに、低粘度であるため、高濃度の粘着剤が製造可能であるから、ジオール(2)が好ましい。また、ジオール(1)、(2)は、スルホン酸金属塩基を含有するジオール(3)と混合して使用するのが好ましい。
C1〜10側鎖含有ポリオールは、数平均分子量(ゲル濾過クロマトグラフィーによるポリスチレン換算)が500〜5000のものが好ましい。数平均分子量が500未満ではウレタン結合濃度が大きくなり、溶剤への溶解性が低下し、好ましくない。また、数平均分子量が5000を越えると、逆にウレタン結合濃度が低下するため、ポリウレタンポリオール系樹脂の強靱性、耐熱性が低下し、好ましくない。
活性水素成分には、さらに、必要により、ジオール(1)〜(3)以外のポリオール、例えば、ジオール(2)以外のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が含まれてもよい。また、これらのポリオールは、分子内にスルホン酸金属塩基を含有していてもよい。
ジオール(2)以外のポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等のジカルボン酸、該ジカルボン酸の酸エステル又は酸無水物と、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ダイマー酸ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、クオドロール、ビスフェノールA等のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等のポリオール;ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールトリアミン等のジアミン、トリアミン又はアミノアルコール等の単独又はこれらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリエステルポリオール又はポリエステルアミドポリオールが挙げられる。更に、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオール等のポリエステルポリオールも挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、及びこれらを共重合させたポリエーテルグリコールが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との脱アルコール反応で得られるものが挙げられる。
この多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール等が挙げられる。
C1〜10側鎖含有ポリオールに併用することのできるこれらのポリオールの活性水素成分中の配合量は、本考案の特徴である粘着力の耐熱性、耐寒性、及び長期保存性等の性質を保持する範囲に限られ、そのポリオールの性質によって相違はあるが、ウレタン系粘着剤を得るために用いられる活性水素成分の総量に対し、50質量%未満、特に30質量%未満にとどめるのが好ましい。
活性水素成分として、さらに、必要により、鎖延長剤が含まれてもよい。鎖延長剤は、一般に、分子量300以下の分子内に2個以上の活性水素基を有する化合物であり、分子内にスルホン酸金属塩基を含有していてもよい。鎖延長剤として、より具体的には、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ダイマー酸ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、クオドロール、又はビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等のポリオール;ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン、メチレンビス(オルソクロロアニリン)、モノエタノールアミン等のジアミン或いはアミノアルコール等が挙げられ、他に、水や尿素も用いることができる。これらの化合物はいずれも単独で用いてよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
活性水素成分中の鎖延長剤の配合量(モル数)の合計は、鎖延長剤以外の活性水素成分のモル数の合計と同量以下、特にその1/2以下が好ましい。鎖延長剤の配合量の合計が、鎖延長剤以外の活性水素成分のモル数の合計を超えた場合、凝集力の強いウレタン結合量が増し、強靭な機械的強度が得られるが、粘着力が低下してしまうおそれがある。
ポリイソシアネート系架橋剤としては、公知の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、トリイソシアネートトルエン、トリイソシアネートベンゼン、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネートジメチルベンゼン、ジイソシアネートジエチルベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、シクロペンタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ビス(イソシネートメチル)シクロヘキサン、トリメチルシクロヘキシルイソシアネート等を挙げることができる。
ポリイソシアネート系架橋剤の中でも、4、4'−ジフェニルメタンジイソシアネートヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)等の、イソシアヌレート環を有する多官能ポリイソシアネート化合物は、架橋反応が速く、好ましく用いられる。また、このようなイソシアヌレート環を有する多官能ポリイソシアネート化合物の三量体は、ウレタン系粘着剤の架橋密度を適切にコントロールすることができるので、粘着力が変化しにくいので、好ましい。
上記したポリイソシアネート系架橋剤と活性水素成分とのNCO/OHの比率は、反応におけるゲル化を避けるため、固形分質量比で1/100〜1/5が好ましい。より好ましくは、1/50〜1/10である。
また、ポリイソシアネート系架橋剤と活性水素成分とを反応させて得られるポリウレタン系樹脂の重量平均分子量は、10000〜300000が好ましく、20000〜100000がより好ましい。
上記したポリウレタン系粘着剤等のウレタン系粘着剤は、各種形態の粘着剤とすることができ、例えば、溶剤型、エマルジョン型、ホットメルト型、無溶剤型等の粘着剤が挙げられる。中でも、有機溶剤に溶解させた溶剤型ウレタン系粘着剤が好ましい。
有機溶剤としては、ウレタン系粘着剤を溶解できるものであれば特に制限はないが、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン等が挙げられる。好ましくは溶解性の点でトルエンがよい。有機溶剤の量は、ウレタン系粘着剤を溶解できる量であれば特に制限はないが、例えば、ウレタン系粘着剤の固形分濃度が35〜65質量%となる量であることが好ましい。
本考案において使用される粘着剤の温度0〜60℃の範囲、周波数1Hzで測定される貯蔵弾性率は、5×103〜5×106Paであることが好ましく、1×104〜5×105Paであることが好ましい。貯蔵弾性率は、周波数1Hz、0〜60℃の範囲内であれば、どの温度条件で測定した場合でも粘着剤の貯蔵弾性率が上記範囲内であることが好ましい。貯蔵弾性率が上記下限値以上であれば、剥離シートから粘着剤層を剥離することが容易となる。また、貯蔵弾性率が上記上限値以下であれば、十分な粘着力が得られ、被着物から粘着剤層が脱落することを防止することができる。
なお、貯蔵弾性率は、レオロジカ社製の動的粘弾性測定装置(DAR−2000)を用いて、厚さ500μm、直径2cmの円板状の粘着剤フィルムサンプルを使用し、直径2cmのパラレル型プレートにより、オシレーション歪み制御モード、周波数1Hz、歪み0.1%の条件で、測定することができる。例えば、温度0℃、30℃および60℃における粘着剤の貯蔵弾性率を測定することができる(昇温速度:2℃/分)。
本考案の粘着剤層は、外周部の一部分に、前記粘着層のラベル裏面側に糊殺し加工が施された剥がし口領域部を有していてもよい。さらに、このような剥がし口領域部の少なくとも一部分にエンボス加工が施されていることが好ましい。これにより、剥がし口領域部を摘んで粘着剤層を捲って剥がす際、エンボス加工によって剥がし口領域部が滑りにくくなるため、剥がし口領域部が摘みやすくなる。
また、剥がし口領域部にエンボス加工が施されていることで、視覚や触覚で剥がし口領域部の位置を認識することが可能である。なお、上述した「糊殺し加工」とは、粘着層のラベル裏面側の表面に粘着性を低減させる処理を行う加工のことであり、例えば粘着層のラベル裏面側の表面に特殊インクを印刷する方法がある。
(剥離シート)
本考案では、粘着剤層の一方の面側であって、フィルム基材と対向する側に剥離シートを設けることが好ましい。このように、本考案は、剥離シート付き積層フィルムとすることもできる。図1(b)には、剥離シート6を有する剥離シート付き積層フィルム15が開示されている。図1(b)に示されているように、剥離シート6は、粘着剤層4の一方の面側であって、フィルム基材2と対向する側に設けられている。
剥離シートとしては、特に限定されるものではないが、支持体に剥離処理を施したものを用いることができる。
支持基材として、例えば、紙、合成紙、合成樹脂フィルム等が挙げられる。紙としては、例えば、上質紙、グラシン紙、コート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙のような紙基材、及び上質紙、グラシン紙、コート紙等にセルロース、澱粉、ポリビニルアルコール、アクリル−スチレン樹脂などで目止め処理した紙基材等が挙げられ、合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂からなるフィルム、及びこれらの合成樹脂フィルムにコロナ放電処理等の易接着処理を施したフィルムなどが挙げられ、これらの支持基材に剥離処理を施したものであることが望ましい。
剥離処理は、支持体の表面に剥離剤を塗工することにより行われる。剥離剤としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリオレフィン樹脂以外の剥離シートに対して)、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂などのゴム系エラストマー、アルキド樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキル含有樹脂など公知の剥離剤を使用することが可能である。
シリコーン系剥離剤としては、例えば、熱硬化型剥離剤(付加反応型シリコーン系剥離剤、縮合反応型シリコーン系剥離剤等)、電子線硬化型シリコーン系剥離剤、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤(ラジカル重合型シリコーン系剥離剤、カチオン重合型シリコーン系剥離剤、メルカプト−ビニル付加重合型シリコーン系剥離剤等)等が挙げられる。中でも、剥離力の安定性が高いため、熱硬化型シリコーン系剥離剤(付加反応型シリコーン系剥離剤)が好ましく用いられる。
(公序良俗違反につき、不掲載)
剥離剤から形成される層(剥離層)の厚みは0.05〜2.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜1.5μmである。剥離シートの支持基材の厚みは、特に制限はないが、通常、30〜200μmである。
剥離剤には、必要に応じて、他の紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、光重合開始剤、架橋剤、染料、顔料、湿潤剤、消泡剤、分散剤、帯電防止剤、レベリング剤、潤滑剤等の各種助剤を配合してもよい。
剥離シートの剥離を軽くする観点から、剥離シートの表面の平滑度は、10秒以上であることが好ましく、30秒以上であることがより好ましい。また、平滑度は200秒以下であることが好ましく、150秒以下であることがより好ましい。なお、平滑度は、「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.5−2に基づく王研式平滑度」に準じて求めることができる。
剥離シートはスリットを有することが好ましい。剥離シートに形成されるスリットは、カット線、ハーフカット線またはミシン目線であることが好ましく、特にカット線であることが好ましい。ここで、カット線とは、剥離紙を分離するように形成される切り込み線であり、カット線は剥離紙の一端から他端まで連続的に設けられることが好ましい。
本考案では、このようなスリットに沿って、剥離シートを剥離することにより、粘着剤層の一部が露出されることが好ましい。これにより、露出した粘着剤層の一部を切断型用紙表面等の被着体に貼り合わせ、次いで残りの剥離シートを剥離することにより、残りの粘着剤層を被着体に貼り合わせることができる。このような方法で貼付作業を行うことにより、積層フィルムの粘着剤同士が意図しない接着をすることを防ぐことができ、さらに、粘着剤等と被着体の間に気泡等が生じることを防ぐことができる。
また、剥離シートにこのようなスリットを設けることにより、スリットを挟んだ両側を指で摘んでスリット形成部を開くようにラベル用シートを引っ張ることにより、スリットにそって剥離シートを切り開くことができる。これにより、剥離シートが粘着剤層から剥離しにくい場合であっても、剥離シートの剥離開始を簡便にすることができる。
さらに、剥離シートにスリットを設けることにより、剥離シートと粘着剤層の剥離を軽くすることができ、フィルム基材と粘着剤層から形成される積層フィルムを切断型用紙に貼付する際に、積層フィルムに意図しない破断が起こることを防ぐことができる。また、このようなスリットは、積層フィルムをロール状に巻き取った際のカールの安定性を高めることができる。
剥離シートのスリットは、1本のみ設けられていてもよく、複数本設けられていてもよい。例えば、剥離シートの各々の短辺の端部に沿って2本設けられていてもよい。これにより、まず、第1の短辺の端部に設けられたスリットに沿って、端部の剥離シートの一部を剥離し、粘着剤層の一部と被着体を貼り合わせ、次いで、第2の短辺の端部に設けられたスリットまで剥離紙を剥離することで、第2の短辺の端部に剥離シートの一部を残したまま、貼付作業を行うことができる。これにより、粘着剤層に指紋等の汚れが付着することを抑制することができる。
本考案では、スリットは、直線状に設けられてもよく、曲線状や弧を描くように設けられていてもよい。また、スリットにそって、粘着剤層に糊殺し加工や糊抜き加工を施してもよい。
(積層体)
本考案では、積層フィルムを紙製や樹脂製の用紙の表面にラミネートすることにより積層体を形成することができる。積層フィルムを用紙の表面にラミネートする際には、積層フィルムから剥離シートを剥がした後に、用紙の表面に貼付することとしてもよいし、剥離シートを剥がしつつ、用紙の表面に貼付することとしてもよい。なお、積層フィルムは、手貼りで貼付してもよく、ラミネート加工用の機器を用いて貼付することとしてもよい。
図2は、本考案の積層体100の概略図であって、用紙50の表面に積層フィルム10をラミネートした様子を示している。本考案で用いる用紙50としては、ミシン目加工やカット線加工が施されていないものであってもよいが、図2(a)及び(b)のように、ミシン目加工やカット線加工が施された切断型用紙を用いることが好ましい。図2(a)では、用紙50にはミシン目加工(P)が施されており、図2(b)では、カット線加工(Q)が施されている。このように、ミシン目加工(P)やカット線加工(Q)が施されることにより、用紙50から、積層フィルム10で表面が覆われたカードを容易に切り離すことができる。なお、カット線加工(Q)は、ハーフカット線加工であることが好ましい。
本考案の積層フィルムは易裂性と開裂追従性に優れているため、用紙に形成されたミシン目やカット線が複雑な形状の場合であっても、その形状に沿って開裂することができる。なお、本考案の積層フィルムは、ミシン目等が入っていない用紙を用いた場合であっても、用紙を裂いたり、ちぎったりした際には、その開裂線に追従することができる。
(積層フィルムの製造方法)
<フィルム基材の形成方法>
フィルム基材の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、各層を、共押出しによって形成することができる。各層に用いる樹脂混合物をそれぞれ別の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で樹脂層/各中間スオ/表面層を積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出する方法が挙げられる。
<粘着剤層の形成方法>
フィルム基材全面に粘着剤層を設ける方法として、コンマコーター、バーコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、ダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、バリオグラビアコーター、カーテンコーター等を用いることが好ましい。粘着剤層の塗工厚さは、5〜30μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましく、5〜15μmであることがさらに好ましく、7〜13μmであることが特に好ましい。塗工量を上記範囲内とすることにより、用紙と粘着剤層の密着を高めることができ、かつ、易裂性を高めることができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本考案の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本考案の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本考案の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
剥離シート(商品名:「GW64」、王子タック社製)に、アクリル酸アルキルエステル−酢酸ビニル共重合体系溶剤型強粘粘着剤(商品名:「サイビノールOPL−10」、サイデン化学社製)を塗布・乾燥し、膜厚が20μmのフィルム基材(POC基材)を貼り合せて積層フィルムを形成した。なお、粘着剤の膜厚は、12μmであった。なお、実施例1のみ、剥離シートには、短辺に沿ってミシン目(スリット)を形成したものを用いた。
(実施例2)
粘着剤をアクリル系2液硬化溶剤型(商品名:「BPS−1109」、トーヨーケム社製)100質量部、架橋剤(商品名:「BHS−8515」、トーヨーケム社製)2質量部とした以外は実施例1と同様に積層フィルムを作製し、実施例2の積層フィルムとした。
(実施例3)
POC基材の膜厚を40μmにした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の積層フィルムを得た。
(実施例4)
強粘粘着剤をアクリル系溶剤型再剥離粘着剤(商品名:「BPS−5303」、トーヨーケム社製)100質量部、架橋剤(商品名:「BHS−5115」、トーヨーケム社製)1質量部に替えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の積層フィルムを得た。
(実施例5)
POC基材の膜厚を40μmにした以外は、実施例4と同様にして、実施例5の積層フィルムを得た。
(比較例1〜4)
POC基材をOPP基材に変え、膜厚と粘着剤の種類を表1に記載の通りとし、実施例1と同様の方法で、比較例1〜4の積層フィルムを作製した。
(比較例5〜8)
POC基材をPET基材に変え、膜厚と粘着剤の種類を表1に記載の通りとし、実施例1と同様の方法で、比較例5〜8の積層フィルムを作製した。
(比較例9)
POC基材をセロファン基材に変え、膜厚と粘着剤の種類を表1に記載の通りとし、実施例1と同様の方法で、比較例9の積層フィルムを作製した。
(評価)
実施例及び比較例で得た積層フィルムをについて下記の評価を行った。
<手切れ性>
短辺5cm×長辺10cmのサンプルを用意し、短辺、長辺それぞれをひねった際に簡単に切れるか否かを下記基準で確認した。
○:最初に切り込みを入れておかなくても、手でひねるだけで切ることができる。
×:最初に切り込みを入れておかないと、手では簡単に切れない。
<開裂追従性>
実施例及び比較例で得られた積層フィルムを切断型用紙にラミネートした。なお、ラミネート加工は積層フィルムを切断型用紙表面に手貼りすることにより行った。切断型用紙をミシン目に沿ってカットする際に、積層フィルムが台紙のミシン目に沿って切れるか評価を行った。
○:積層フィルムにミシン目をいれなくとも用紙のミシン目に沿ってきれいに切れる。
△:積層フィルムにミシン目をいれないでも切ることはできるが、用紙のミシン目に沿ってきれいには切れない。
×:積層フィルムにミシン目をいれなければ手で切ることはできない。
<耐久性>
積層フィルムをPET板に貼付した後、水に4時間浸漬して、指で擦って積層フィルムが剥がれるか否かを確認した。
○:こすれ、水濡れに強く、大きな変化が見られない。
△:こすれ、水濡れで変化が見られる場合がある。
×:こすれ、水濡れで変化が見られる。
<貼りやすさ>
縦20cm、横20cmのサンプルを切断型用紙表面に自重2kgのロールで貼付けた時の貼付け具合を確認した。
○:オーバーラミ用途として手できれいに貼ることができる。
△:オーバーラミ用途として手で貼る場合、シワ等が入る場合がある。
Figure 0003185524
実施例1〜5で得られた積層フィルムは易裂性と開裂追従性に優れていることがわかる。また、実施例1〜5で得られた積層フィルムは、耐久性にも優れていることわかる。
特に実施例1、3及び5においては、貼りやすさの評価においても高評価が得られており、フィルム基材の膜厚は40μm以上であることが好ましいことがわかる。
一方、比較例1〜8では、フィルム基材にOPPフィルム基材やPETフィルム基材を用いているため、積層フィルムの易裂性と開裂追従性が著しく悪化していることがわかる。また、比較例9では、フィルム基材にセロファンフィルム基材を用いているため、耐久性が劣っており、開裂追従性も悪化していることがわかる。
本考案によれば、易裂性と開裂追従性が良好であり、かつ耐久性の高い積層フィルムを得ることができる。すなわち、本考案によれば、積層フィルムをミシン目加工やカット線加工等が施された用紙に貼付した場合であっても、ミシン目やカット線に沿ってカードを容易に切り離すことを可能となり、表面がラミネート加工されたカードを効率的に得ることができる。このため、本考案の積層フィルムは、ラミネート加工用フィルムとして産業上の利用可能性が高い。
2 フィルム基材
4 粘着剤層
6 剥離シート
10 積層フィルム
15 剥離シート付き積層フィルム
50 用紙
100 積層体
P ミシン目線
Q カット線
エポキシ系化合物としては、分子中に2個以上のエポキシ基又はグリシジル基を有するものであればよく、例えば、ビスフェノールA/エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N′−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。これらの中では、分子中に2個以上のグリシジル基を有するポリグリシジル化合物が密着性、再剥離性、粘着力の経時安定性および耐汚染性の点で特に好ましく用いられる。
オキサゾリン系化合物としては、2位の炭素位置に不飽和炭素−炭素結合をもつ置換基を有する付加重合性2−オキサゾリン(例えば2−イソプロペニル−2−オキサゾリンと他の不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。)カルボジイミド系化合物としては、カルボジイミド基を少なくとも2個以上含有するものであればよい。
シリコーン系剥離剤としては、シリコーン系剥離剤中にSiO2単位と(CH33SiO1/2単位あるいはCH2=CH(CH3)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。

Claims (17)

  1. フィルム基材と粘着剤層とを有する積層フィルムであって、
    前記フィルム基材は、樹脂層を有し、前記樹脂層は、環状ポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とするラミネート加工用積層フィルム。
  2. 前記環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は100℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のラミネート加工用積層フィルム。
  3. 前記環状ポリオレフィン系樹脂は、ノルボルネン系重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のラミネート加工用積層フィルム。
  4. 前記フィルム基材は、前記樹脂層の上に、さらに、第1の中間層と、第2の中間層と、表面層を順に有し、
    前記第1の中間層は、メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を含み、
    前記第2の中間層は、直鎖状ポリエチレンを含み、
    前記表面層は、前記樹脂層に含まれる環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも10℃以上高い融点を有する樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のラミネート加工用積層フィルム。
  5. 前記ラミネート加工用積層フィルムは、切断型用紙表面をラミネートするために用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のラミネート加工用積層フィルム。
  6. 前記フィルム基材の膜厚は10〜50μmであり、前記粘着剤層の膜厚は5〜30μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のラミネート加工用積層フィルム。
  7. 前記粘着剤層の膜厚は5〜15μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のラミネート加工用積層フィルム。
  8. 前記樹脂層に含まれる環状ポリオレフィン系樹脂の含有率は、前記樹脂層に含まれる全樹脂成分に対して40質量%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のラミネート加工用積層フィルム。
  9. 前記第1の中間層に含まれるポリプロピレン系樹脂の含有率は、前記第1の中間層に含まれる全樹脂成分に対して80質量%以上であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載のラミネート加工用積層フィルム。
  10. 前記第2の中間層に含まれる直鎖状ポリエチレンの含有率は、前記第2の中間層に含まれる全樹脂成分に対して80質量%以上であることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載のラミネート加工用積層フィルム。
  11. 前記表面層は、ポリプロピレン系樹脂を含むことを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載のラミネート加工用積層フィルム。
  12. 前記第1の中間層に含まれるポリプロピレン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて重合されたα−オレフィンランダム重合体であることを特徴とする請求項4〜11のいずれか1項に記載のラミネート加工用積層フィルム。
  13. 前記第2の中間層に含まれる直鎖状ポリエチレンは、密度が0.900〜0.950g/cm3であることを特徴とする請求項4〜12のいずれか1項に記載のラミネート加工用積層フィルム。
  14. 前記第2の中間層の上に、さらに第3の中間層を有し、前記第3の中間層は、環状ポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項4〜13のいずれか1項に記載のラミネート加工用積層フィルム。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載のラミネート加工用積層フィルムの粘着剤層の一方の面側であって、フィルム基材と対向する側に剥離シートをさらに有することを特徴とする剥離シート付き積層フィルム。
  16. 前記剥離シートはスリットを有することを特徴とする請求項15に記載の剥離シート付き積層フィルム。
  17. 請求項1〜14のいずれか1項に記載のラミネート加工用積層フィルムが切断型用紙の表面にラミネートされ形成されることを特徴とする積層体。
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