JPWO2011036834A1 - 直接酸化型燃料電池 - Google Patents

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Abstract

本発明は、直接酸化型燃料電池に関する。本発明は、燃料流路から供給された燃料が電解質膜を通過し、カソードで酸化される現象を抑制することにより、燃料の利用効率と、発電電圧、発電効率などの発電性能とに優れた燃料電池を提供することを目的とする。本発明の直接酸化型燃料電池は、アノードと、カソードと、それらの間に配置された電解質膜とを含む膜−電極接合体、アノード側セパレータ、およびカソード側セパレータを備える少なくとも1つの単位セルを有する。アノード側セパレータは、アノードに燃料を供給するための燃料流路を有する。アノードは、アノード触媒粒子と高分子電解質を含むアノード触媒層を備える。前記アノード触媒粒子の充填密度が、前記アノード触媒層の前記燃料流路の下流側よりも上流側で高い。

Description

本発明は、直接メタノール型燃料電池のような直接酸化型燃料電池に関し、詳しくは、直接酸化型燃料電池のセル構造の改良に関する。
燃料電池は、使用される電解質の種類によって、固体高分子型燃料電池、リン酸型燃料電池、アルカリ型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池などに分類される。なかでも固体高分子型燃料電池(PEFC)は、作動温度が低く、出力密度が高いことから、車載用電源、家庭用コージェネレーションシステム用電源などとして実用化されつつある。
また、近年、燃料電池を、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)などの携帯用小型電子機器における電源として用いることが検討されている。燃料電池は燃料の補充によって連続発電が可能であることから、燃料電池を、充電が必要な二次電池の代わりに用いることで、携帯型小型電子機器の利便性をさらに向上させることが期待できる。上記のように、PEFCは作動温度が低いため、携帯用小型電子機器用の電源としても注目されている。
PEFCのなかでも直接酸化型燃料電池は、常温で液体の燃料を使用し、この燃料を水素に改質することなく、直接酸化して電気エネルギーを取り出す。このため、直接酸化型燃料電池は、改質器を備える必要がなく、よって小型化が可能である。また、直接酸化型燃料電池のなかでも、燃料としてメタノールを用いる直接メタノール型燃料電池(DMFC)は、エネルギー効率および出力の観点より、携帯型小型電子機器用の電源として、最も有望視されている。
DMFCのアノードおよびカソードでの反応は、それぞれ、下記反応式(1)および(2)で示される。カソードに導入される酸素は、一般に、大気中から取り入れられる。
アノード: CHOH+HO→CO+6H+6e (1)
カソード: 3/2O+6H+6e→3HO (2)
DMFCなどの固体高分子型燃料電池は、例えば、図1に示すような構成を有する。図1に、固体高分子型燃料電池の従来の一般的な構成を示す。
図1の燃料電池10は、電解質膜11と、電解質膜11を挟み込むように配置されたアノード23およびカソード25を含む。アノード23は、アノード触媒層12およびアノード拡散層16を含む。アノード触媒層12は、電解質膜11に接している。アノード拡散層16は、アノード撥水層14およびアノード多孔質基材15を含む。アノード撥水層14およびアノード多孔質基材15は、この順番で、アノード触媒層12の電解質膜11と接している面とは反対側の面の上に積層されている。アノード拡散層16の外側には、アノード側セパレータ17が積層されている。
カソード25は、カソード触媒層13およびカソード拡散層20を含む。カソード触媒層13は、電解質膜11のアノード触媒層12が接している面とは反対側の面に接している。カソード拡散層20は、カソード撥水層18およびカソード多孔質基材19を含む。カソード撥水層18およびカソード多孔質基材19は、この順番で、カソード触媒層13の電解質膜11と接している面とは反対側の面の上に積層されている。カソード拡散層20の外側には、カソード側セパレータ21が積層されている。
このように、電解質膜11、アノード23、カソード25、アノード側セパレータ17およびカソード側セパレータ21からなる積層体は、セルと呼ばれる基本構成を形成している。なお、電解質膜11および電解質膜11を挟み込むアノード触媒層12とカソード触媒層13からなる積層体は、燃料電池の発電を担っており、CCM(Catalyst Coated Membrane)と呼ばれている。また、CCMと、アノード拡散層16およびカソード拡散層20とからなる積層体は、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;MEA)と呼ばれている。アノード拡散層16およびカソード拡散層20は、供給される燃料および酸化剤の均一な分散および生成物である水および二酸化炭素の円滑な排出を担っている。
また、図1の燃料電池10において、アノード側セパレータ17は、アノード多孔質基材15との接触面に、MEAに燃料を供給するための溝状の燃料流路22を有している。カソード側セパレータ21は、カソード多孔質基材19との接触面に、MEAに例えば空気のような酸化剤を供給するための溝状の酸化剤流路24を有する。
さらに、燃料電池10において、アノード側セパレータ17と電解質膜11との間には、アノード23を密閉するようにガスケット26が配置され、カソード側セパレータ21と電解質膜11との間には、カソード25を密閉するようにガスケット27が配置されている。ガスケット26および27は、それぞれ、燃料および酸化剤が外部に漏れるのを防止している。
なお、MEA、およびその両側に配置されるアノード側セパレータ17とカソード側セパレータ21から構成されるセルは、さらに、各セパレータの外側にそれぞれ端板28を配置した状態で、図示しないボルト、バネなどによって加圧締結される。
現在、DMFCなどの直接酸化型燃料電池において解決すべき技術的課題としては、燃料流路から供給された液体燃料(メタノール水溶液など)が、アノード23と電解質膜11とを透過し、カソード25に到達し、カソード触媒層13で酸化される現象を抑制することが挙げられる。上記現象は、燃料のクロスオーバーと呼ばれており、特にDMFCでは、メタノールクロスオーバー(MCO)と呼ばれている。このような現象が生じるのは、用いられる液体燃料は水溶性であることが多いため、液体燃料が、水を含みやすい性質の電解質膜に浸透しやすいからである。
燃料のクロスオーバーが生じると、つまり、燃料がアノードで消費されずにカソード25に移動すると、燃料の利用効率が低下する。さらに、カソード25での燃料の酸化反応は、カソードで通常起こる酸化剤(酸素ガス)の還元反応と競合し、カソード25の電位を低下させる。このため、燃料のクロスオーバーは、発電電圧の低下、発電効率の低下などを招く。
そこで、例えばDMFCの分野においては、MCOを低減させるため、メタノールの透過量が抑制された電解質膜が盛んに開発されている。現在実用化されている電解質膜は、膜内に存在する水を介してプロトンを伝導するため、電解質膜には水の存在が不可欠である。メタノールは水との親和性が高いために、水とともにメタノールが電解質膜を透過することを十分に防止できない。
電解質膜11中の液体燃料の移動は、主として濃度拡散に起因する。このため、燃料のクロスオーバーの程度は、電解質膜11のアノード23側表面とカソード25側表面とにおける燃料の濃度差に大きく依存することが知られている。そして、電解質膜11のカソード25側表面における燃料濃度は、透過した燃料がカソード25で速やかに酸化されることから、無視できるほど小さいと考えられる。このため、燃料のクロスオーバー量は、電解質膜11のアノード23側表面における燃料濃度に大きく依存することになる。
アノード23において、燃料流路22から供給された燃料の拡散速度は、アノード撥水層14の拡散抵抗により、制御される。さらに、燃料は、アノード触媒層12内での酸化反応によって消費される。このため、一般に、電解質膜11のアノード23側表面における燃料濃度は、燃料流路22における燃料濃度に比べて極めて低いと考えられる。
一方、電解質膜11の主面に対して平行な面内での燃料濃度の分布について考えると、燃料流路22内部に存在する燃料の濃度は、燃料流路22の入口において最も高く、燃料が燃料流路22を流れるにつれて漸次低下し、燃料流路22の出口において最も低くなる。つまり、燃料流路の上流付近においては、電解質膜11のアノード23側表面における燃料濃度が比較的高くなる、その結果、燃料のクロスオーバー量が大きくなる。
反対に下流付近では、燃料流路22内部に存在する燃料の濃度は、燃料流路の上流に比べて非常に低い。このために、アノード触媒層12内部における燃料の拡散性を高めて、アノード触媒周囲の燃料濃度を高くすることにより、濃度過電圧による電圧低下を低減して、出力の低下を抑制する必要がある。
上述の技術的課題に対し、特許文献1には、アノード撥水層の組成および厚みを燃料流路の上流側と下流側で変化させることが提案されている。特許文献1には、前記構成により、燃料流路の上流側での燃料透過性を低下させて、メタノールクロスオーバー量を低減できることが記載されている。
また、DMFCに関する技術ではないが、特許文献2には、水素ガスを燃料ガスとして用いる燃料電池において、触媒層の厚みを、燃料ガスの上流側から下流側に向かって薄くすることが開示されている。
特開2002−110191号公報 特開2009−9724号公報
撥水層の厚みは、一般的に10〜50μm程度と薄いため、撥水層の厚みを変化させることのみにより、アノードにおけるメタノールのような液体燃料の透過性を制御するのは困難である。その理由は、撥水層の厚みが薄いために、撥水層の流路側の面と触媒層側の面との間に生じる燃料濃度の差は小さく、液体燃料の拡散の駆動力が、小さくなるためである。従って、仮に特許文献1のように、燃料流路の上流側と下流側で撥水層の組成などを変化させたとしても、液体燃料の透過性に与える影響は小さい。特に、供給する燃料濃度が高い場合、あるいはセルの作動温度が高い場合には、液体燃料の拡散速度が大きくなるために、撥水層のみで液体燃料の透過性をコントロールすることは非常に困難である。
本発明は、燃料流路の上流側における燃料の消費量を下流側における消費量よりも多くして、燃料のクロスオーバーを抑制することにより、燃料の利用効率と、発電電圧、発電効率などの発電性能とに優れた燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の一局面に係る直接酸化型燃料電池は、アノードと、カソードと、それらの間に配置された電解質膜とを含む膜−電極接合体、前記アノードに接するアノード側セパレータ、および前記カソードに接するカソード側セパレータを備える少なくとも1つの単位セルを有する。前記アノード側セパレータは、前記アノードに燃料を供給するための燃料流路を有し、前記カソード側セパレータは、前記カソードに酸化剤を供給するための酸化剤流路を有する。前記アノードは、前記電解質膜に接するアノード触媒層、および前記アノード側セパレータに接するアノード拡散層を含む。前記アノード触媒層は、アノード触媒粒子と高分子電解質を含んでおり、前記アノード触媒粒子の充填密度が、前記アノード触媒層の前記燃料流路の下流側よりも上流側で高い。
本発明によれば、アノード触媒層において、アノード触媒層の燃料流路の上流側のアノード触媒粒子の充填密度を、下流側のアノード触媒粒子の充填密度よりも高くすることにより、アノード触媒層の燃料流路上流側において下流側と比較してより多くの燃量を消費させることができる。その結果、アノード触媒層の燃料流路上流側では、アノード触媒層と電解質膜の界面における燃料の濃度を従来技術に比べて低下させることができ、よって、燃料のクロスオーバーを低減させることが可能となる。すなわち、アノード触媒層とアノード拡散層との第1界面と、アノード触媒層と電解質膜との第2界面の間の燃料の濃度差を、アノード触媒層の燃料流路上流側では大きくすることができ、アノード触媒層の燃料流路の下流側では小さくすることができる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本願の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
従来の固体高分子型燃料電池の構成の一例を模式的に示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る直接酸化型燃料電池を模式的に示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る直接酸化型燃料電池に含まれるアノード触媒層を模式的に示す正面図である。 触媒層を形成するために用いられるスプレー式塗布装置の構成の一例を示す概略図である。
以下、本実施形態に係る直接酸化型燃料電池を、図面を参照しながら説明する。図2に、本発明の一実施形態に係る燃料電池を模式的に示す縦断面図を示し、図3に、本発明の一実施形態に係る直接酸化型燃料電池に含まれるアノード触媒層を模式的に示す正面図を示す。図2および3において、図1と同じ構成要素には、同じ番号を付している。なお、図3には、アノード触媒層32と、それを担持する電解質膜11を図示している。また、図3には、アノード触媒層32が対向するサーペンタイン型の燃料流路22も点線で示す。
図2の燃料電池30は、アノード31と、カソード25と、それらの間に配置された電解質膜11を備える。電解質膜11は、水素イオン伝導性を有する。アノード31の電解質膜11と接する面とは反対側の面には、アノード側セパレータ17が積層されている。カソード25の電解質膜11と接する面とは反対側の面には、カソード側セパレータ21が積層されている。さらに、アノード側セパレータ17と電解質膜11との間には、アノード31を密閉するように、ガスケット26が配置され、カソード側セパレータ21と電解質膜11との間には、カソード25を密閉するように、ガスケット27が配置されている。ガスケット26および27は、それぞれ、燃料および酸化剤が外部に漏れるのを防止している。
アノード側セパレータ17には、電解質膜11の主面と平行な面方向に燃料を分配させるための燃料流路22が形成されている。燃料流路22には、少なくとも1対の燃料入口と燃料出口が設けられている。以下、説明を簡略化させるため、アノード側セパレータ17は、燃料入口36と燃料出口37を1箇所ずつ有し、燃料が、燃料入口36から燃料出口37に向かって一方向にのみ流れる形態を示す。なお、本発明は、前記形態に限定されない。
アノード31は、電解質膜11と接するアノード触媒層32と、アノード側セパレータ17と接するアノード拡散層16とを有している。アノード触媒層32は、上述の反応式(1)に示す反応を促進するためのアノード触媒粒子と、アノード触媒層32と電解質膜11とのイオン伝導性を確保するための高分子電解質とを含む。
本実施形態において、アノード触媒粒子の充填密度が、前記アノード触媒層の燃料流路の下流側よりも上流側において高い。前記アノード触媒粒子の充填密度は、燃料流路の上流側から下流側に向かって連続的に減少していてもよいし、段階的に減少していてもよい。なかでも、アノード触媒粒子の充填密度は段階的に変化されることが好ましい。この場合、アノード触媒層の製造工程が簡便になり、また、アノード触媒粒子の充填密度を制御しやすくなるからである。アノード触媒粒子の充填密度は、例えば2〜10段階に変化させることが好ましく、2〜5段階に変化させることがより好ましい。
アノード触媒粒子の充填密度を段階的に変化させる場合でも、連続的に変化させる場合でも、燃料流路の下流側よりも上流側で、アノード触媒粒子の充填密度を高くすることにより、燃料濃度が高い燃料流路22の上流側に対向するアノード触媒層32の部分において、燃料を速やかに消費することができる。その結果、アノード触媒層32の燃料流路22の上流側の部分において、アノード触媒層32とアノード拡散層16との第1界面からアノード触媒層32と電解質膜11との第2界面に向かって燃料濃度が大きく低下する。このため、アノード触媒層32の燃料流路22の上流側に対向する部分と電解質膜11との界面における燃料濃度を低下させることができる。よって、アノード触媒層32の燃料流路22の上流側に対向する部分において生じやすい燃料のクロスオーバーを抑制することができる。
アノード触媒粒子としては、白金(Pt)とルテニウム(Ru)との合金、Ptとルテニウム酸化物との混合物、PtとRuと他の金属元素(例えば、イリジウム(Ir)など)との3元合金、白金単体などが挙げられる。PtとRuとの合金において、PtとRuとの原子比は、1:1であることが好ましいが、これに限定されない。
中でも、アノード触媒粒子は、白金単体、および白金とルテニウムとの合金より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
アノード触媒層32に含まれる高分子電解質としては、例えば、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン共重合体(H型)、スルホン化ポリエーテルスルホン
(H型)、アミノ化ポリエーテルスルホン(OH型)などが挙げられる。
アノード触媒層32は、アノード触媒層32の燃料流路22の上流側に対向する部分に、アノード触媒粒子の充填密度が0.5〜2g/cmである高充填密度領域を備えることが好ましい。さらに、アノード触媒層32は、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側に対向する部分に、アノード触媒粒子の充填密度が0.1〜1g/cmである低充填密度領域を備えることが好ましい。このことを、図3を参照しながら、説明する。図3では、アノード触媒粒子の充填密度を段階的に減少させた場合について説明する。
図3のアノード触媒層32は、アノード触媒粒子の充填密度が0.5〜2g/cmである高充填密度領域(第1領域)33と、アノード触媒粒子の充填密度が0.1〜1g/cmである低充填密度領域(第2領域)34とを含む。第1領域33は、アノード触媒層32の燃料流路22の上流側の部分に位置し、第2領域34は、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側の部分に位置する。図3のアノード触媒層32において、第1領域33と、第2領域34との間には、アノード触媒粒子の充填密度が第1領域33と第2領域34との間にある中充填密度領域(第3領域)35が設けられている。なお、図3に示されるアノード触媒層32では、アノード触媒層32を3分割し、各領域におけるアノード触媒粒子の充填密度を変化させているが、アノード触媒層の分割数は2以上の任意の数値を選択することができる。
上記のように、第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.5〜2g/cmであることが好ましい。アノード触媒粒子の充填密度は、例えば、アノード触媒層32中に含まれる高分子電解質の量、アノード触媒層32の空孔度、さらに、アノード触媒粒子が担体に担持されている場合には、アノード触媒粒子の担持率によって決めることができる。アノード触媒層32の燃料流路上流側の部分では、燃料濃度が比較的高く保たれているので、アノード反応を促進させるためには、高分子電解質によるプロトン伝導と電子伝導のネットワークを重視する必要がある。良好なプロトン伝導および電子伝導を獲得するため、第1領域33における適切なアノード触媒粒子の充填密度は0.5〜2g/cmである。
第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.1〜1g/cmであることが好ましい。アノード触媒層32の燃料流路下流側の部分では、燃料濃度が小さくなるため、前記部分における燃料拡散性を可能な限り高く保ちながら、プロトン伝導および電子伝導を維持する必要がある。良好な燃料拡散性を獲得するため、第2領域34における適切なアノード触媒粒子の充填密度は0.1〜1g/cmである。
本発明の効果が十分に得られるため、第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度に対する第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度の比は、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがさらに好ましい。
燃料のクロスオーバーによる発電性能の低下が最も顕著であるのは、燃料流路の全長を1としたときに、燃料流路の上流側に位置する端部から、その上流側の1/6〜1/3の長さに相当する部分までのMEAの領域である。従って、アノード触媒層32の第1領域33は、燃料流路22の上流側の、燃料流路22の全長の1/6〜1/3の長さの部分に対向していることが好ましい。つまり、第1領域33は、燃料流路22の燃料入口36から燃料流路の全長の1/6〜1/3の長さのまでの部分に対向していることが好ましい。例えば、図3に示されるように、一辺の長さがLの正方形のアノード触媒層32の上流側の辺32aに流路入口36が設けられ、それに平行な下流側の辺32bに燃料出口37が設けられており、燃料の全体的な流れ方向(燃料濃度が減少する平均的な方向)が矢印Aで表されるとする。この場合、辺32aから方向Aにおける長さがL/6〜L/3である長方形の領域を、アノード触媒層32の第1領域33とすることができる。
なお、アノード触媒層32が、第1領域33および第2領域34から構成され、第1領域33が前記領域を占める場合、第2領域34は、アノード触媒層32の残りの領域を占める。
第1領域33と第2領域34との間に第3領域35が設けられる場合、第3領域35におけるアノード触媒粒子の充填密度Dmは、第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度Duと、第2領域34におけるアノード触媒粒子の充電密度Ddとに応じて、適宜選択される。例えば、差(Du−Dm)と、差(Dm−Dd)とが、ほぼ同じとなるように、Dmを選択してもよい。あるいは、差(Du−Dm)が差(Dm−Dd)よりも大きくなるように選択してもよいし、差(Dm−Dd)が差(Du−Dm)よりも大きくなるように選択してもよい。また、第3領域35が複数の領域から構成される場合、第3領域35の各領域におけるアノード触媒粒子の充填密度も、適宜選択される。
アノード触媒粒子の充填密度は、上記のように、例えば、アノード触媒層の空孔度、高分子電解質の含有量などに調節することによって、制御することができる。例えば、アノード触媒層の所定の領域の空孔度を大きくすることにより、前記領域のアノード触媒粒子の充填密度を小さくすることができる。アノード触媒層の空孔度は、例えば、アノード触媒層がアノード触媒層形成用インクを用いて作製される場合、前記インクに造孔剤を添加し、その量を調節することにより、制御することができる。
また、アノード触媒粒子の充填密度は、前記インクをスプレー塗布する場合には、インクの吐出量と乾燥速度を調節することにより、制御することもできる。
アノード触媒層32は、導電性炭素材料と導電性炭素粒子に担持された前記アノード触媒粒子とを含む触媒担持体、および導電性炭素材料に担持されていないアノード触媒粒子(以下、非担持触媒粒子と称す)の少なくとも1種を含むことが好ましい。
例えば、アノード触媒粒子は、担体に担持させることなく、そのまま用いてもよい。
アノード触媒層32は、例えば、導電性炭素材料とそれに担持されたアノード触媒粒子とを含む触媒担持体のみを含んでもよい。この場合、前記導電性炭素粒子のアノード触媒粒子の担持率を、燃料流路の下流側よりも上流側で大きくすることにより、アノード触媒粒子の充填密度を、燃料流路の下流側よりも上流側で高くすることが好ましい。例えば、第1領域33は、第1触媒担持体を含み、第2領域34は、第2触媒担持体を含み、第1触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率を、第2触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率よりも高くすることが好ましい。
あるいは、アノード触媒層32は、導電性炭素粒子とそれに担持されたアノード触媒粒子とを含む触媒担持体、および非担持触媒粒子の両方を含んでいてもよい。この場合、触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率が、前記燃料流路の下流側よりも上流側で大きいことが好ましい。
ここで、担持率とは、アノード触媒粒子と導電性炭素粒子との合計質量に対するアノード触媒粒子の質量の割合のことをいう。アノード触媒粒子は、金属元素を含む触媒のことを意味する。例えば、アノード触媒粒子は、金属単体からなる触媒、ならびに金属酸化物、合金等の金属化合物触媒を意味する。
上記のように、アノード触媒粒子には、白金(Pt)とルテニウム(Ru)を含む合金、PtとRuの混合物等が使用される。アノード触媒粒子の活性点を増加させ、反応速度を向上させるために、アノード触媒粒子をできる限り小さくして使用することが好ましい。アノード触媒粒子の平均粒径は、一般に1〜20nmの範囲である。微粒子化された非担持触媒粒子は、粒子同士が凝集して、凝集体を形成する。例えば、触媒粒子の1次粒子は小さくても、凝集体である2次粒子の大きさは、1次粒子の数十倍にもなる。よって、その反応速度に影響する触媒粒子の活性表面積は十分に大きくならない。従って、十分に表面積の大きな導電性炭素粒子の表面に非担持触媒粒子を担持させて、十分な活性表面積を確保することが好ましい。
一方で、導電性炭素粒子にアノード触媒が担持された触媒担持体を用いる場合、導電性炭素粒子は非常に嵩高いために、アノード触媒粒子の充填密度が低下しやすい。このため、触媒担持体を用いる場合、アノード触媒層の厚みを増加させずに、アノード触媒層におけるアノード触媒粒子の充填量を増加させるのは困難である。
このような活性表面積と充填密度の関係は、触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率を変化させることで制御することができる。なぜなら、アノード触媒粒子の担持率を大きくすると、触媒担持体の製造プロセスにおいて、近接するアノード触媒粒子同士が接合して、アノード触媒粒子が粗大化し、導電性炭素粒子表面上でのアノード触媒粒子の分散性が低下するからである。すなわち、高い担持率を有する触媒担持体を使用すると、活性表面積はさほど大きくならないが、アノード触媒粒子の充填密度を大きくすることが可能となる。一方、低い担持率の触媒担持体を使用すると、大きな活性表面積が得られる半面、アノード触媒粒子の充填密度を高めることはできない。なお、このような傾向は、非担持触媒粒子にも適用することができ、非担持触媒粒子は、いわば高担持率の状態、つまり担持率100%の状態にあるとも考えられる。
アノード触媒層32が触媒担持体のみを含む場合でも、第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.5〜2.0mg/cmであることが好ましい。また、第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.1〜1.0mg/cmであることが好ましい。
また、この場合にも、第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度に対する第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度の比は、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがさらに好ましい。
アノード触媒層32が触媒担持体のみを含む場合、例えば、第1領域33には、第1触媒担持体が含まれ、第2領域34には、第2触媒担持体が含まれる。第1触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率は、60〜99%であることが好ましく、60〜80%であることがさらに好ましい。アノード触媒粒子の密度は、一般的な燃料電池用触媒担体であるカーボンのような導電性炭素粒子の密度に比べて著しく大きい。従って、高い担持率を有する触媒担持体を使用するほど、アノード触媒粒子の充填密度を高くすることができる。なお、担体として使用される導電性炭素粒子は直径5〜50nmの一次粒子からなり、表面積が比較的大きい。従って、触媒層作製プロセスにおいて、触媒インク中でプロトン伝導を担う高分子電解質の多くが導電性炭素粒子表面に吸着する傾向がある。よって、導電性炭素粒子の量が多くなるほど、高分子電解質の必要量が多くなる。良好なプロトン伝導と電子伝導を確保し、アノード反応を促進するためには、第1触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率を、60〜99%と高くすることが好ましい。
第2触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率は、20〜80%であることが好ましく、40〜70%であることがさらに好ましい。一般的には、アノード触媒粒子を導電性炭素粒子上に分散させる場合には、担持率を小さくするほど、アノード触媒粒子の大きさを小さくすることが可能である。担持率が大きい場合には、触媒粒子作製工程において、近接する触媒粒子同士が、凝集・結合し、触媒粒子の粒子径が大きくなるためである。また、触媒の活性はその表面積が大きくなるほど高まることから、触媒粒子径の小さな触媒ほど、つまり、低担持率の触媒担持体ほど、単位触媒量あたりの活性は高くなる。従って、アノード触媒粒子の充填密度を高くすることを必要としない、アノード触媒層の燃料下流側の領域では、触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率を小さくして、少ない触媒量で比較的高い活性を得ることが有効である。そのため、第2触媒担持体におけるアノード触媒粒子の適正な担持率の範囲は、20〜80%である。
導電性炭素粒子としては、カーボンブラックなどが挙げられる。導電性炭素粒子の平均粒径は、アノード触媒粒子のサイズとの兼ね合いから、5〜50nmであることが好ましい。
アノード触媒粒子が導電性炭素粒子に担持されている場合、アノード触媒粒子の充填密度は、アノード触媒層の空孔度、高分子電解質の含有量、アノード触媒粒子の担持率などを調節することによって、制御することができる。
以上のように、アノード触媒粒子の担持率が異なる第1触媒担持体および第2触媒担持体を用いることにより、アノード触媒粒子の活性表面積とアノード触媒粒子の充填密度とを、燃料流路の上流側と下流側とでそれぞれに最適化することができる。具体的には、アノード触媒層32の燃料流路上流側の第1領域33に、担持率の大きい第1触媒担持体を含ませて、アノード触媒粒子の充填密度を高めることにより、第1領域33において、燃料を速やかに消費することができる。その結果、アノード触媒層の燃料流路上流側に対向する部分において生じやすい燃料のクロスオーバーを抑制することができる。アノード触媒層32の燃料流路下流側の第2領域34には、第1触媒担持体よりも担持率の小さい第2触媒担持体を含ませることにより、アノード触媒粒子の活性表面積を十分に確保することができる。よって、第2領域34におけるアノード触媒粒子の使用量を低減することができる。以上の結果、燃料電池の発電特性および燃料利用率をさらに向上できるとともに、燃料電池のコストアップをさらに抑制することができる。
アノード触媒層32が、触媒担持体と非担持触媒粒子の両方を含む場合、例えば、第1領域33における触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率が、第2領域34における触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率よりも大きいことが好ましい。
また、この場合にも、第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.5〜2g/cmであることが好ましく、第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度は0.1〜1g/cmであることが好ましい。第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度に対する第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度の比は、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがさらに好ましい。
第1領域33における触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率は、5〜99質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることさらにが好ましい。第2領域34における前記触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率は、1〜90質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがさらに好ましい。
図3に示されるように、アノード触媒層が3つ以上の領域から構成される場合、第1領域33および第2領域34以外の領域における触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率は、第1領域33および第2領域34における触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率に応じて、適宜選択される。
触媒担持体と非担持触媒粒子とが組み合わせて用いられる場合、第1領域33および第2領域34に含まれる触媒担持体は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
例えば、第1領域33および第2領域34に含まれる触媒担持体が異なる場合、前記第1触媒担持体を第1領域33に添加し、前記第2触媒担持体を第2領域34に添加してもよい。
第1領域33および第2領域34に含まれる触媒担持体が同じである場合、前記触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率は、20〜99%であることが好ましく、60〜80%であることがさらに好ましい。上記のように、アノード触媒粒子の担持率を大きくするほど、高い充填密度が得られ、担持率を小さくするほど、触媒量を低減することが可能である。例えばDMFCの場合には、一般的にアノード触媒粒子の担持率が50%以上であることが多い。非担持触媒粒子と触媒担持体とを混合して用いる場合、非担持触媒粒子と触媒担持体との混合比にもよるが、触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率が20%〜99%の範囲にあれば、本発明の効果が得られる。
また、第1領域33に、非担持触媒粒子のみを含ませてもよい。このとき、第2領域34には、触媒担持体のみを含ませてもよいし、触媒担持体と非担持触媒粒子の両方を含ませてもよい。第2領域34に触媒担持体のみが含まれる場合、触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率は、上記と同様に20〜80%であることが好ましい。第2領域34に触媒担持体および非担持触媒粒子の両方が含まれる場合、触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率は、上記と同様に1〜90質量%の範囲にあることが好ましい。また、触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率は、20〜80%であることが好ましい。
アノード触媒粒子の充填密度が、燃料流路の上流側から下流側に向かって(例えば、矢印Aの方向に)、連続的に変化している場合でも、燃料流路22の燃料入口36から燃料流路22の全長の1/6〜1/3の長さまでの部分に対向するアノード触媒層32の領域(前記第1領域33に相当)におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.5〜2g/cmであることが好ましい。アノード触媒層32の残りの領域(前記第2領域34に相当)におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.1〜1g/cmであることが好ましい。ここで、アノード触媒粒子の充填密度が連続的に変化している場合、前記アノード触媒粒子の充填密度は、各領域に含まれるアノード触媒粒子の平均の充填密度のことである。この場合にも、第2領域34におけるアノード触媒粒子の平均の充填密度に対する第1領域33におけるアノード触媒粒子の平均の充填密度の比は、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがさらに好ましい。
なお、燃料流路22の下流側では、燃料濃度が、燃料流路22の上流側と比較して低い。よって、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側に対向する部分においては、燃料濃度低下による濃度過電圧が増加する。その結果、セル全体の発電電圧が低下したり、電流密度が低下したりすることで、発電出力が小さくなる。
例えば、アノード触媒層32が非担持触媒のみを含む場合、または触媒担持体および非担持触媒粒子の両方を含む場合、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側に対向する部分におけるアノード触媒粒子の充填密度を小さくすることができる。このため、前記部分の空孔度を増加させることができる。よって、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側の部分における燃料の拡散性を向上させることができ、その結果、濃度過電圧を低減させることができる。なお、アノード触媒層32が触媒担持体のみを含む場合でも、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側の部分における空孔度は、例えば造孔剤を用いて調節することができる。
また、本実施形態では、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側における、アノード触媒粒子の充填密度を上流側と比較して低くしている。よって、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側における非常に高価なアノード触媒の使用量を低減することができる。
アノード触媒層32に、導電性炭素粒子が含まれる場合、前記導電性炭素粒子の量は、アノード触媒層32全体にわたって均一であることが好ましい。
一般的にアノード触媒層中のプロトン伝導を担うのに必要な高分子電解質の量は、導電性炭素粒子の量に比例するという考え方がある。その観点から、導電性炭素粒子の量をアノード触媒層全体にわたって均一とすることにより、高分子電解質の量も、アノード触媒層全体にわかって均一とすることができる。よって、アノード触媒層全面に渡って良好なプロトン伝導が確保することが可能となる。
アノード触媒層32の厚さは、アノード触媒層32全体にわたって均一であることが好ましい。
上記特許文献2に開示されているように、アノード触媒層の構成材料および/またはアノード触媒層の構造を変化させずに、アノード触媒量を増加させると、アノード触媒層の厚みを変化させなければならない。燃料電池は、一般的に電解質膜の主面に垂直な方向に加圧力を印加することで、各層間の接触抵抗の低減を図っている。例えば、アノード触媒層の面方向において、著しい厚みの変化が生じると、加圧力の不均一が生じ、アノード触媒層の厚みの小さい部分において、アノード触媒層と電解質膜との接触抵抗および/またはアノード触媒層とアノード拡散層との接触抵抗が増加し、その結果、燃料電池の性能低下が生じる。本実施形態では、アノード触媒層の燃料流路上流側において、アノード触媒粒子の充填密度を高め、アノード触媒層の燃料流路下流側において、アノード触媒粒子の充填密度を小さくすることによりアノード触媒量自体は燃料流路の上流側と下流側とで変化させながらも、アノード触媒層の厚みを、その全体にわたって比較的均一に保つことができる。このため、均一な接触抵抗を得ることができ、高い発電性能を得ることができる。
アノード触媒層の厚さは、20〜100μmであることが好ましい。
アノード触媒層の所定の領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、例えば、以下のようにして、測定することができる。まず、アノード触媒層の所定の領域の厚みを、マイクロメータを使用して測定する。このとき、例えば、所定の数箇所の厚みを測定し、得られた値の平均値を、前記所定の領域の厚みとしてもよい。次に、アノード触媒層の所定の領域(例えば、第1領域)を削り取る。削り取った部分の寸法を、光学顕微鏡などを使用して正確に測定して、前記所定の領域の面積を求める。この場合にも、削り取った領域の長さおよび幅を、それぞれ数箇所ずつ測定して、平均長さおよび平均幅を求め、平均長さおよび平均幅から、前記所定の領域の面積を求めてもよい。得られた厚みと面積から、所定の領域の体積を求めることができる。なお、既にCCMの状態となり、マイクロメータによってアノード触媒層単独の厚みを測定することが困難な場合には、削り取った部分の近傍を切断するなどして断面を露出させ、前記断面を、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)などで観察して、前記所定の領域の厚みを測定してもよい。この場合にも、例えば所定の数箇所で厚みを測定し、得られた値を平均してもよい。
次いで、削り取った試料の質量をマイクロ天秤にて測定する。次いで、得られた試料を王水に溶解させ、不溶物を濾過する。得られた濾液に水を加えて、所定の量(例えば、100ml)にする。得られた定量溶液に含まれるアノード触媒粒子の量を、誘導プラズマ原子発光分光分析装置(ICP-AES;例えば、Thermo Fisher Scientific製のiCAP 6300)により測定する。得られた値および前記所定の領域の体積を用いて、アノード触媒層の所定の領域におけるアノード触媒粒子の充填密度を得ることができる。
以下、図2を再度参照しながら、アノード触媒層32以外の構成要素について、説明する。
カソード25は、電解質膜11に接するカソード触媒層13と、カソード側セパレータ21に接するカソード拡散層20とを有している。カソード拡散層20は、カソード触媒層13に接するカソード撥水層18と、カソード側セパレータ21に接するカソード多孔質基材19とを有している。
カソード触媒層13は、上述の反応式(2)に示す反応を促進するためのカソード触媒と、カソード触媒層13と電解質膜11とのイオン伝導性を確保するための高分子電解質と、を含む。
カソード触媒層13に含まれるカソード触媒としては、例えば、Pt単体およびPt合金が挙げられる。Pt合金には、Ptと、コバルト、鉄などの遷移金属との合金が挙げられる。上記Pt単体またはPt合金は、微粉末状のまま用いてもよいし、カーボンブラックなどの導電性炭素粒子に担持させてもよい。
カソード触媒層13に含まれる高分子電解質としては、アノード触媒層32に含まれる高分子電解質として例示した材料を用いることができる。
以下に、アノード触媒層32およびカソード触媒層13の作製方法を説明する。
カソード触媒層13は、例えば、以下のようにして作製することができる。具体的には、カソード触媒と、高分子電解質とを適当な分散媒に分散させる。得られたインクを電解質膜11に塗布し、乾燥させることにより、アノード触媒層13を得ることができる。塗布の手段としては、例えば、スプレー法、スキージ法などが挙げられる。
上記のような構成のアノード触媒層32は、例えば、造孔剤を使用したアノード触媒層作製プロセスにより、作製することができる。具体的には、アノード触媒粒子と高分子電解質を、所定の分散媒に分散させて、アノード触媒層形成用インクを調製する。前記インクに、アノード触媒層に細孔を形成するための造孔剤を混入させる。アノード触媒層の構成領域の数に応じて、造孔剤の添加量が異なるインクを調製する。このとき、造孔剤の量を、第1領域を形成するためのインクにおいて最も少なくし、第2領域を形成するためのインクにおいて最も多くする。次いで、各インクを、電解質膜に塗布して、アノード触媒層前駆体を得る。前記アノード触媒層前駆体から、造孔剤を除去することにより、燃料流路の上流側と下流側とでアノード触媒粒子の充填密度が異なるアノード触媒層を得ることができる。
なお、アノード触媒粒子の代わりに、アノード触媒粒子が導電性炭素粒子に担持された触媒担持体を用いてもよいし、触媒担持体とアノード触媒粒子との混合物を用いてもよい。
造孔剤としては、例えば、酸によって分解される材料を用いることができる。このような材料としては、例えば、ニッケルなどの金属、およびアルカリ金属またはアンモニウムイオンを含む塩が挙げられる。アルカリ金属を含む塩としては、例えば、炭酸リチウムが挙げられる。
または、上記のような構成のアノード触媒層32は、1種類のアノード触媒層形成用インクを用い、前記インクを、塗布条件を変化させて、電解質膜に塗布することにより、形成することもできる。
例えば、スプレー法を用いる場合、インクの吐出量を大きくし、乾燥速度を遅くすることにより、アノード触媒粒子の充填密度が大きい第1領域33を作製することができる。一方で、インクの吐出量を小さくし、乾燥速度を速くすることにより、アノード触媒粒子の充填密度が小さい第2領域34を形成することができる。
以下に、スプレー法に用いるスプレー式塗布装置の一例を示す。図4は、スプレー式塗布装置の構成の一例を概略的に示す側面図である。
図4のスプレー式塗布装置70は、インク72を収容したタンク71およびインク72を吐出するスプレーガン73を備える。
タンク71内において、インク72は、撹拌機74により撹拌されて、常時流動状態にある。インク72は、開閉バルブ75を介して、スプレーガン73に供給され、噴出ガスとともに、スプレーガン73から吐出される。噴出ガスは、ガス圧力調整器76およびガス流量調整器77を介して、スプレーガン73に供給される。噴出ガスとしては、例えば、窒素ガスを用いることができる。塗布装置70では、電解質膜11と接するように配置されたヒータ81により、電解質膜11の表面温度が制御されている。
なお、図4の塗布装置70において、スプレーガン73は、アクチュエータ78により、矢印Xに平行なX軸およびX軸に垂直でかつ紙面に垂直なY軸の2方向に任意の位置から任意の速度で移動することが可能である。
インク72を、電解質膜11の第1領域33が配置される予定箇所に、スプレーガン73を用いてスプレー塗布し、乾燥する。このとき、インクの吐出量を大きくし、乾燥速度を遅くする。乾燥速度は、電解質膜11の表面温度を低くすることにより、遅くすることができる。
アノード触媒層32が形成される電解質膜11の領域以外は、マスキング79を施しておき、さらに、電解質膜11上の第1領域33が配置される部分以外の部分にも、マスキング80を施しておく。こうして、第1領域33を形成することができる。
第2領域34は、インク72を、電解質膜11の第2領域34が配置される予定箇所に、スプレーガン73を用いてスプレー塗布し、乾燥することにより形成することができる。このとき、インクの吐出量を小さくし、乾燥速度を速くする。乾燥速度は、電解質膜11の表面温度を高くすることにより、速くすることができる。
アノード触媒層が、3つ以上の領域から構成される場合、第1領域および第2領域以外の領域も、基本的は、上記と同様にして作製することができる。このとき、インクの吐出量および乾燥速度は、アノード触媒層を構成する領域の数に応じて、適宜選択される。
上記で説明したスプレー法において、スプレーガン73の代わりに、エアーブラシを用いてもよい。
なお、上記のいずれの方法においても、アノード触媒層32は、所定の樹脂シート上に形成してもよい。同様にして、カソード触媒層13も、樹脂シート上に形成してもよい。
この場合、樹脂シート上に形成されたアノード触媒層およびカソード触媒層は、熱プレスにより、電解質膜11に転写される。アノード触媒層32は、電解質膜11の一方の面に転写され、カソード触媒層13は他方の面に転写される。このとき、アノード触媒層32およびカソード触媒層13は、同時に、電解質膜11に転写してもよい。または、一方の触媒層を転写したのちに、他方の触媒層を転写してもよい。このようにしても、CCMを形成することができる。
また、上記のいずれの方法においても、アノード触媒層を構成する各領域は、同時に作製してもよいし、別々に作製してもよい。
電解質膜11の構成材料としては、電解質膜11がイオン伝導性を有していれば、特に限定されない。このような材料としては、たとえば、当該分野で公知の各種高分子電解質材料を用いることができる。なお、現在、流通している電解質膜は、主として、プロトン伝導タイプの電解質膜である。
電解質膜11の具体例としては、フッ素系高分子膜などが挙げられる。前記フッ素系高分子膜の具体例としては、例えば、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン共重合体(H型)などのパーフルオロスルホン酸ポリマーを含有する高分子膜が挙げられる。パーフルオロスルホン酸ポリマーを含有する膜の具体例としては、たとえば、ナフィオン膜(商品名「Nafion(登録商標)」、デュポン社製)などが挙げられる。
なお、電解質膜11は、燃料電池30に用いられる燃料(メタノールなど)のクロスオーバーを低減する効果をさらに有していることが好ましい。このような効果を有する電解質膜としては、上記フッ素系高分子膜のほかに、例えば、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン(S−PEEK)などのフッ素原子を含まない炭化水素系ポリマーならなる膜、無機物・有機物複合膜などが挙げられる。
アノード拡散層16は、撥水処理が施された多孔質基材15と、多孔質基材15の表面に形成された、撥水性の高い材料からなる撥水層14とを備える。同様に、カソード拡散層20は、撥水処理が施された多孔質基材19と、多孔質基材19の表面に形成された、撥水性の高い材料からなる撥水層18とを備える。
アノード多孔質基材15およびカソード多孔質基材19に用いられる多孔質基材としては、例えば、炭素繊維からなるカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布(カーボンフェルト)、耐腐食性を有する金属メッシュ、発泡金属などが挙げられる。
アノード撥水層14およびカソード撥水層18の形成に用いられる高撥水性材料としては、例えば、フッ素系高分子、フッ化黒鉛などが挙げられる。フッ素系高分子としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
アノード拡散層16およびカソード拡散層20は、次のようにして得ることができる。まず、例えばフッ素系高分子などの高撥水性材料と、導電性を有しかつ多孔質の集合体を形成することのできる材料と、適当な分散媒と、を混合し、攪拌する。こうして得られたインクを、撥水処理が施された多孔質基材の表面に塗布して乾燥させる。塗布の手段としては、例えば、スクリーン印刷法、スキージ法などが挙げられる。導電性を有しかつ多孔質の集合体を形成するとのできる材料としては、例えばカーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラックなど)、黒鉛粉末、多孔質金属粉末などが挙げられる。
得られたアノード拡散層16およびカソード拡散層20は、アノード触媒層32と電解質膜11とカソード触媒層13との積層体(CCM)に、熱プレスにより接合される。このとき、アノード拡散層16は、アノード触媒層32に接合され、カソード拡散層20は、カソード触媒層13に接合される。こうして、アノード23と、電解質膜11と、カソード25とが、この順で積層された膜電極接合体(MEA)が得られる。
アノード側セパレータ17およびカソード側セパレータ21は、例えば、黒鉛などのカーボン材料からなる。アノード側セパレータ17には、アノード31と接する面に、アノード31に燃料(メタノール水溶液など)を供給する溝状の燃料流路22が設けられている。カソード側セパレータ21には、カソード25と接する面に、カソード25に酸化剤(空気、酸素ガスなど)を供給するための溝状の酸化剤流路24が設けられている。
アノード側セパレータ17の燃料流路22およびカソード側セパレータ21の酸化剤流路24は、例えば、セパレータの表面を溝状に切削することにより形成することができる。また、燃料流路22および酸化剤流路24は、セパレータ自体を成形(射出成形、圧縮成形など)するときに成形することもできる。
ガスケット26、27の構成材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系高分子、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などの合成ゴム、シリコーンエラストマーなどが挙げられる。
各ガスケット26、27は、前記材料からなるシートの中央部分に、膜電極接合体(MEA)を収容するために、MEAと同じか多少大きいサイズの開口部を備えている。ガスケット26および27は、それぞれアノード触媒層12およびカソード触媒層13の側面と接するようにして、MEAの表面に配置される。
さらに、ガスケット26、27は、セパレータ17、21とともに、電解質膜11をその厚さ方向に加圧している。
MEAと、このMEAの両側に配置されるアノード側セパレータ17およびカソード側セパレータ21とから構成されるセルは、2枚の端板28の間に挟まれた状態で、図示しないボルトやバネなどによって加圧締結される。2枚の端板28は、それぞれ、アノード側セパレータ17およびカソード側セパレータ21に積層されるように配置される。
MEAと一対のセパレータ17、21との界面は、接着性に乏しい。しかしながら、上記のようにして、セルを加圧締結することにより、MEAと一対のセパレータ17、21との接着性を高めることができ、その結果、MEAと一対のセパレータ17、21との間の接触抵抗を低減させることができる。
また、複数個のセルを積層して、セルスタックを形成してもよい。この場合にも、セルスタックは、端板、ボルト、バネなどにより、加圧締結される。
本実施形態の直接酸化型燃料電池に用いられる燃料としては、メタノールの他、エタノール、ジメチルエーテル、蟻酸、エチレングリコールなどの炭化水素系液体を用いることができる。この中でも、1mol/L〜8mol/Lのメタノール濃度を有する水溶液を燃料として用いることが好ましい。メタノール水溶液のメタノール濃度は、3mol/L〜5mol/Lであることがより好ましい。燃料の濃度が高いほど燃料電池システム全体としての小型軽量化につながるが、MCOが多くなるおそれがある。上記で説明したアノード触媒層を用いることにより、MCOを低減することができるため、通常よりもメタノール濃度が高いメタノール水溶液を用いることができる。メタノール濃度が1mol/Lより小さいと、燃料電池システムの小型軽量化が困難となる場合がある。メタノール濃度が8mol/Lを超えると、MCOを十分に低減できない場合がある。上記のメタノール濃度を有する燃料を用いることで、上記アノード触媒層の燃料流路上流側でMCOを低減しつつ、燃料流路下流側でメタノールの供給量をさらに良好に確保することができる。
上記のようなアノード触媒層を用いることにより、燃料の利用効率が向上し、さらに、発電電圧や発電効率などの発電性能が向上した直接酸化型燃料電池を提供することができる。
次に、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
本実施例では、図2および図3に示されるような燃料電池を作製した。
アノード触媒粒子とそれを担持する担体とを含むアノード触媒担持体を用意した。アノード触媒粒子としては、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金(原子比1:1)(平均粒径:5nm)を用いた。担体としては、平均一次粒子径が30nmの導電性カーボン粒子を用いた。PtRu合金と導電性カーボン粒子との合計質量に占めるPtRu合金の質量の割合は、80質量%とした。
カソード触媒粒子とそれを担持する担体とを含むカソード触媒担持体を用意した。カソード触媒粒子としては、白金(平均粒径:3nm)を用いた。担体としては、平均一次粒子径が30nmの導電性カーボン粒子を用いた。白金と導電性カーボン粒子との合計質量に占める白金の質量の割合は、80質量%とした。
電解質膜11には、厚さ50μmのフッ素系高分子膜(パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン共重合体(H型)をベースとするフィルム、商品名「Nafion(登録商標)112」、デュポン社製)を使用した。
上記アノード触媒担持体10gと、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン共重合体(H型)を含有する分散液(商品名:ナフィオン分散液、「Nafion(登録商標)5重量%溶液」、デュポン社製)70gとを、適量の水とともに混合および攪拌した。この後、得られた混合物を脱泡して、アノード触媒層形成用インクを得た。
こうして得られたアノード触媒層形成用インクを、エアーブラシを使用したスプレー法によって、電解質膜11の一方の表面に吹き付けた。アノード触媒層32の形状を一辺が60mmの正方形とした。アノード触媒層32を、大きさが20×60mmの長方形の3つの領域から構成した。前記3つの領域は、上流側から、矢印Aの方向に向かって、第1領域33、第3領域35、および第2領域34とした。アノード触媒層32の形成は、第1領域33から順に行った。各領域の寸法は、マスキングによって、調整した。吹き付け時には、電解質膜11を、その表面温度を調整したヒータ付の金属板に減圧吸着させて固定した。アノード触媒層形成用インクは、塗布中に漸次乾燥させた。
前記3つの領域の形成には、同じアノード触媒層形成用インクを用いた。各領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、インク吐出速度と乾燥温度を制御することにより、変化させた。インク吐出速度は、噴出ガス供給量とノズル開度を調節することにより、変化させた。
アノード触媒層32の第1領域33を形成する際の塗布条件としては、インク吐出速度を0.6ml/minとし、乾燥温度を55℃とした。第1領域33の厚みは63μmであった。第1領域33に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子(PtRu合金)の量は、4mg/cmであり、第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.63g/cmであった。
アノード触媒層32の第3領域35を形成する際の塗布条件としては、インク吐出速度を0.4ml/minとし、乾燥温度を60℃とした。第3領域35の厚みは61μmであった。第3領域35に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、3mg/cmであり、第3領域35におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.49g/cmであった。
アノード触媒層32の第2領域34を形成する際の塗布条件としては、インク吐出速度を0.2ml/minとし、乾燥温度を65℃とした。第2領域34の厚みは60μmであった。第2領域34に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、2mg/cmであり、第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.33g/cmであった。
ここで、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量とは、各領域の投影単位面積あたりの部分に含まれるアノード触媒の量のことをいい、各領域の投影単位面積とは、アノード触媒層の主面に対して法線方向から見たときの各領域の単位面積(cm)のことをいう。
カソード触媒層形成用インクを以下のようにして作製した。
上記カソード触媒担持体10gと、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン共重合体(H型)を含有する分散液(前出の商品名「Nafion(登録商標)5重量%溶液」)100gとを、適量の水とともに混合および攪拌した。この後、得られた混合物を脱泡して、カソード触媒層形成用インクを得た。
得られたカソード触媒層形成用インクを、電解質膜11のアノード触媒層32が形成された面とは反対側の面に吹き付けて、60mm×60mmのサイズのカソード触媒層13を得た。吹き付けは、アノード触媒層の場合と同様にして行った。カソード触媒層形成用インクを吹き付ける領域は、マスキングによって調整した。
なお、アノード触媒層32と、カソード触媒層13とは、それぞれの中心(触媒層の対角線の交点)が電解質膜11の厚さ方向に平行な1つの直線上に位置するように、配置した。
アノード多孔質基材15を以下のようにして作製した。
アノード撥水処理が施されたカーボンペーパー(商品名「TGP−H−090」、厚さ約300μm、東レ株式会社製)を、希釈されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディスパージョン(商品名「D−1」、ダイキン工業株式会社製)に1分間浸漬した。この後、前記カーボンペーパーを、100℃に温度設定された熱風乾燥機中で乾燥させた。次いで、乾燥後のカーボンペーパーを、電気炉中において、270℃で2時間焼成した。こうして、PTFEの含有量が10質量%であるアノード多孔質基材15を得た。
カソード多孔質基材19は、撥水処理が施されたカーボンペーパーに代えて、カーボンクロス(商品名「AvCarb(商標)1071HCB」、バラードマテリアルプロダクツ社製)を使用したこと以外は、アノード多孔質基材15と同様にして作製した。こうして、PTFEの含有量が10質量%であるカソード多孔質基材19を得た。
アノード撥水層14を、以下のようにして形成した。
まず、アセチレンブラックの粉末と、PTFEディスパージョン(前出の商品名「D−1」)とを混合および攪拌することにより、全固形分に占めるPTFEの含有量が10質量%であり、全固形分に占めるアセチレンブラックの含有量が90質量%である撥水層形成用インクを得た。得られた撥水層形成用インクを、エアーブラシを使用したスプレー法によって、アノード多孔質基材15の一方の表面に吹き付け、100℃に温度設定された恒温槽内で乾燥させた。次いで、撥水層形成用インクを塗布したアノード多孔質基材15を、電気炉中、270℃で2時間焼成して、界面活性剤を除去した。こうして、アノード多孔質基材15上にアノード撥水層14を形成した。
カソード多孔質基材19の一方の表面にも、上記と同様にして、カソード撥水層18を形成した。
アノード多孔質基材15とアノード撥水層14とからなるアノード拡散層16、およびカソード多孔質基材19とカソード撥水層18とからなるカソード拡散層20は、いずれも、抜き型を使用して、60mm×60mmの正方形に成形した。
次に、アノード拡散層16とCCMとカソード拡散層20とを、アノード撥水層14がアノード触媒層32に接し、カソード撥水層18がカソード触媒層13に接するように積層した。得られた積層体を、温度を125℃に設定した熱プレス装置に配置した。そして、前記積層体を5MPaの圧力で1分間加圧して、アノード触媒層とアノード拡散層を接合し、カソード触媒層とカソード拡散層とを接合した。こうして、アノード31と、電解質膜11と、カソード25とからなる膜電極接合体(MEA)を得た。
厚み0.25mmのエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)のシートを、120mm×120mmの正方形に切り出した。さらに、前記シートの中心部分を、62mm×62mmの正方形にくり抜いた。このようにして、2枚のガスケット26および27を得た。
ガスケット26を、中心部の開口部にアノード31が配置されるように配置した。同様に、ガスケット27を、中心部の開口部にカソード25が配置されるように配置した。
アノード側セパレータ17を、厚み2mmの黒鉛板の表面を切削して、メタノール水溶液を供給する燃料流路22を形成することにより作製した。同様に、カソード側セパレータ21を、厚み2mmの黒鉛板の表面を切削して、酸化剤を供給する酸化剤流路24を形成することによりを作製した。アノード側セパレータ17を、燃料流路22がアノード拡散層16に接するように、アノード拡散層16上に積層した。カソード側セパレータ21を、酸化剤流路24がカソード拡散層20に接するように、カソード拡散層20上に積層した。
なお、燃料流路22と酸化剤流路24の断面形状は、それぞれ、1mm×1mmとした。また、燃料流路22および酸化剤流路24は、それぞれアノード31表面上およびカソード25表面上を万遍なく蛇行するサーペンタイン型とした。
そして、アノード側セパレータ17およびカソード側セパレータ21に挟持されたMEAを、さらに、厚さ1cmのステンレス鋼板からなる一対の端板28で挟み込んだ。一方の端板28とセパレータ17との間および他方の端板28とセパレータ21との間には、それぞれ、各セパレータから外側に向かって順に、表面に金メッキが施された厚さ2mmの銅板からなる集電板と、絶縁板とを配置した。なお、以下の評価試験において、前記集電板を、電子負荷装置に接続した。一対の端板28を、ボルト、ナットおよびばねを用いて締結し、セパレータ17とMEAとセパレータ21とを加圧した。こうして、直接メタノール型燃料電池(DMFC)の単セルを得た。なお、図2においては、集電板と絶縁板の図示を省略している。このことは、図1においても同様である。
《実施例2》
本実施例では、アノード触媒層形成用インクに造孔剤を添加し、前記造孔剤の量を変化させることにより、アノード触媒層の各領域におけるアノード触媒粒子の充填密度を変化させた。本実施例において、造孔剤としては、炭酸リチウムを用いた。
具体的には、実施例1と同様に、アノード触媒層を、第1領域、第3領域および第2領域の3つの領域から構成した。各領域のサイズは、いずれも、20mm×60mmとした。
第1領域を形成するための第1インクは、実施例1で用いたアノード触媒層形成用インクに、前記インク80gあたり、2gの炭酸リチウムを混合および分散させることにより、調製した。
第3領域を形成するための第3インクは、実施例1で用いたアノード触媒層形成用インクに、前記インク80gあたり、5gの炭酸リチウムを混合および分散させることにより、調製した。
第2領域を形成するための第2インクは、実施例1で用いたアノード触媒層形成用インクに、前記インク80gあたり、10gの炭酸リチウムを混合および分散させることにより、調製した。
前記第1インク、第3インク、および第2インクを用いたこと以外、実施例1の第1領域の作製方法と同様にして、電解質膜の一方の表面上に、アノード触媒層を形成した。
次に、アノード触媒層のみが形成された電解質膜を、1M硫酸水溶液中に12時間浸漬して、炭酸リチウムを中和分解させた。その後、前記アノード触媒層のみが形成された電解質膜11を、6時間イオン交換水に浸漬した。このイオン交換水での洗浄を2回繰り返して、硫酸イオンを除去した。
このようにして、アノード触媒粒子の充填密度が異なる3つの領域からなるアノード触媒層を得た。
第1領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子(PtRu合金)の量は、5mg/cmであり、第1領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.65g/cmであった。第1領域の厚みは77μmであった。
第3領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、3mg/cmであり、第3領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.38g/cmであった。第3領域の厚みは79μmであった。
第2領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、1mg/cmであり、第2領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.13g/cmであった。第2領域の厚みは80μmであった。
このようなアノード触媒層を用いたこと以外、実施例1と同様にして、実施例2の燃料電池(DMFC)を作製した。
《実施例3》
本実施例では、担体に担持されるアノード触媒粒子の担持率を変化させることにより、アノード触媒粒子の充填密度を変化させた。前記担持率は、アノード触媒粒子(PtRu合金)と担体との合計質量に対するアノード触媒粒子の質量の割合として表している。
本実施例においても、実施例1と同様に、アノード触媒粒子としては、PtRu合金(原子比1:1)を用いた。担体としては、平均一次粒子径が30nmの導電性カーボン粒子を用いた。
また、アノード触媒層は、第1領域、第3領域、および第2領域の3つの領域から構成した。各領域のサイズは、それぞれ、20mm×60mmとした。
第1領域に含まれるアノード触媒担持体(第1触媒担持体)におけるアノード触媒粒子の担持率は、80%とした。前記第1触媒担持体を用いたこと以外、実施例1の第1領域の作製方法を同様にして、第1領域を作製した。
第1領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子(PtRu合金)の量は、4mg/cmであり、第1領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.63g/cmであった。第1領域の厚みは63μmであった。
第3領域に含まれるアノード触媒担持体(第3触媒担持体)におけるアノード触媒粒子の担持率は、60%とした。前記第3触媒担持体を用いたこと以外、実施例1の第1領域の作製方法を同様にして、第3領域を作製した。
第3領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、2mg/cmであり、第3領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.32g/cmであった。第3領域の厚みは65μmであった。
第2領域に含まれるアノード触媒担持体(第2触媒担持体)におけるアノード触媒粒子の担持率は、50%とした。前記第2触媒担持体を用いたこと以外、実施例1の第1領域の作製方法を同様にして、第2領域を作製した。
第2領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、1mg/cmであり、第2領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.17g/cmであった。第2領域の厚みは64μmであった。
このようなアノード触媒層を用いたこと以外、実施例1と同様にして、実施例3の燃料電池(DMFC)を作製した。
《実施例4》
本実施例では、アノード触媒担持体と非担持触媒粒子とを用いて、アノード触媒粒子の充填密度を変化させた。本実施例では、アノード触媒担持体としては、実施例3で用いた第2触媒担持体を用いた。非担持触媒粒子としては、PtRu合金(原子比1:1)の微粉末を用いた。
また、アノード触媒層は、第1領域、第3領域、および第2領域の3つの領域から構成した。各領域のサイズは、それぞれ、20mm×60mmとした。
第1領域に含まれるアノード触媒として、非担持触媒粒子のみを用いた。前記以外は、実施例1の第1領域と同様にして、第1領域を作製した。
第1領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子(PtRu合金)の量は、8mg/cmとであり、第1領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、1.21g/cmであった。第1領域の厚みは、65μmであった。
第3領域に含まれるアノード触媒として、第2触媒担持体および非担持触媒粒子の両方を用いた。第2触媒担持体と非担持触媒粒子との質量比は、50:50とした。前記以外は、実施例1の第1領域と同様にして、第3領域を作製した。
第3領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、4.5mg/cmであり、第3領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.69g/cmであった。第3領域の厚みは65μmであった。
第2領域に含まれるアノード触媒として、第2触媒担持体のみを用いた。前記以外、実施例1の第1領域と同様にして、第2領域を作製した。
第2領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、1mg/cmとであり、第2領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.17g/cmであった。第2領域の厚さは、64μmであった。
このようなアノード触媒層を用いたこと以外、実施例1と同様にして、実施例4の燃料電池(DMFC)を作製した。
《比較例1》
本比較例では、図1に示されるような従来構造の燃料電池を作製した。つまり、アノード触媒粒子の充填密度を、アノード触媒層全体にわたって同じとした。
アノード触媒層12は、60mm×60mmの正方形とした。アノード触媒層12に含まれるアノード触媒としては、実施例1で用いたアノード触媒担持体を用いた。前記以外は、実施例1の第3領域と同様にして、アノード触媒層12を作製した。
得られたアノード触媒層に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子(PtRu合金)の量は、3mg/cmであり、アノード触媒層におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.49g/cmであった。アノード触媒層の厚みは61μmであった。
このようなアノード触媒層を用いたこと以外、実施例1と同様にして、比較例1の燃料電池を作製した。
《比較例2》
本比較例においても、アノード触媒粒子の充填密度を、アノード触媒層全体にわたって同じとした。
アノード触媒として、実施例4で用いた非担持触媒粒子を用い、実施例1の第1領域の作製方法と同様にして、アノード触媒層を作製した。
得られたアノード触媒層において、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、8mg/cmであり、アノード触媒粒子の充填密度は、1.21g/cmであった。アノード触媒層の厚みは65μmであった。
このようなアノード触媒層を用いたこと以外、実施例1と同様にして、比較例2の燃料電池(DMFC)を作製した。
《比較例3》
本比較例においても、アノード触媒粒子の充填密度を、アノード触媒層全体にわたって同じとした。
アノード触媒として、実施例3で用いた第2触媒担持体(アノード触媒粒子の担持率:50%)を用い、実施例1の第2領域と同様にして、アノード触媒層を作製した。
得られたアノード触媒層において、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、1mg/cmであり、得られたアノード触媒層におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.17g/cmであった。アノード触媒層の厚みは、64μmであった。
[評価試験]
実施例1の燃料電池および比較例1〜2の燃料電池について、発電中のメタノールクロスオーバー量と発電性能の評価を行い、得られた結果から燃料の利用効率を計算した。
燃料電池の発電条件は以下の通りである。4mol/Lのメタノール水溶液を燃料として用いた。前記燃料を、0.3cm/minの流量でチューブ式ポンプを用いてアノードに供給した。無加湿の空気を、マスフローコントローラーによって、300cm/minの流量に制御しながらカソードに供給した。電熱線ヒータと温度コントローラを用いて、セルの温度を60℃となるように制御した。この後、燃料電池を、電子負荷装置「PLZ164WA」(菊水電子工業株式会社製)に接続し、一定の電流密度(200mA/cm)になるように制御しながら、連続発電を行った。
アノードから排出される、発電に使用されなかったメタノールを含むメタノール水溶液と二酸化炭素からなる気液混合流体を、純水を満たした気体捕集容器に流入させた。こうして、気体と液体のメタノールを、1時間にわたって捕集した。このとき、前記気体捕集容器は、氷水浴で冷却しておいた。
その後、気体捕集容器中のメタノール量をガスクロマトグラフ法によって測定し、アノードの物質収支を計算することで、メタノールクロスオーバー量(MCO量)を求めた。すなわち、アノードに供給したメタノール量から、排出され捕集されたメタノール量と発電電流量から求められるアノードでのメタノール消費量を差し引いて、MCO量を求めた。MCO量としては、MCO量に相当する量のメタノールが酸化された場合に発生し得る電流値を使用した。燃料利用率は下記の計算式(A)によって求めた。
燃料利用率=(発電電流)/(発電電流+MCO量の電流換算値) (A)
以上の結果を表1に示す。なお、表1には、アノード触媒層に含まれる触媒(PtRu合金)の合計量も示す。
Figure 2011036834
表1より明らかなように、実施例1および実施例2の燃料電池は、同じアノード触媒粒子(PtRu)を使用しながらも、比較例1の燃料電池に比べて、高い燃料利用率を得ることができ、しかも高い発電電圧を得ることができた。この結果は、実施例1および実施例2の燃料電池において、MCO量が小さくなったためであると考えられる。
実施例1〜3の燃料電池の結果を比較すると、実施例3の燃料電池は、実施例1の燃料電池と比較して、アノード触媒粒子の使用量が22%程度少ないが、その発電電圧および燃料利用率は、実施例1の燃料電池の発電電圧および燃料利用率と同等またはそれ以上である。
よって、実施例3の燃料電池のように、アノード触媒層の各領域に含まれるアノード触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率を変化させることにより、発電電圧および燃料利用率に優れた燃料電池を、低コストで製造することができる。
実施例4の燃料電池では、アノード触媒粒子の使用量が増加しているものの、実施例1の燃料電池と比較して、発電電圧と燃料利用率のさらなる向上が見られた。
比較例3の燃料電池と、実施例4の燃料電池とを比較すると、比較例3の燃料電池と実施例4の燃料電池とで、明らかに発電性能と燃料利用率に差が見られる。実施例4の燃料電池において、アノード触媒層の第1領域に非担持触媒を含ませ、アノード触媒粒子の充填密度を向上させたことによる効果が顕著に現れている。
比較例2の燃料電池においては、実施例4の燃料電池と同等の燃料利用率が得られているものの、発電電圧は実施例1〜4の燃料電池に比べて低くなっている。このような結果が得られたのは、実施例1〜4の燃料電池では、アノード触媒層の燃料流路の上流側から下流側に向かってアノード触媒粒子の充填密度を低下させることで、アノード触媒層全体における燃料の拡散性が最適化され、よって、濃度過電圧が低減したためであると考えられる。
以上のように、上記アノード触媒層を含む燃料電池は、従来の燃料電池に比べて、高い発電性能と燃料利用率を得ることができ、ひいては高いエネルギー変換効率を得ることができる。
上記直接酸化型燃料電池は、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)などの携帯用小型電子機器における電源として有用である。また、上記直接酸化型燃料電池は、電動スクータ用電源などの用途にも応用することができる。
10 燃料電池
11 電解質膜
12、32 アノード触媒層
13 カソード触媒層
14 アノード撥水層
15 アノード多孔質基材
16 アノード拡散層
17 アノード側セパレータ
18 カソード撥水層
19 カソード多孔質基材
20 カソード拡散層
21 カソード側セパレータ
22 燃料流路
23、31 アノード
24 酸化剤流路
25 カソード
26、27 ガスケット
28 端板
33 第1領域
34 第2領域
35 第3領域
36 燃料入口
37 燃料出口
70 スプレー式塗布装置
71 タンク
72 インク
73 スプレーガン
74 撹拌機
75 開閉バルブ
76 ガス圧力調整器
77 ガス流量調整器
78 アクチュエータ
79、80 マスキング
81 ヒータ
本発明は、直接メタノール型燃料電池のような直接酸化型燃料電池に関し、詳しくは、直接酸化型燃料電池のセル構造の改良に関する。
燃料電池は、使用される電解質の種類によって、固体高分子型燃料電池、リン酸型燃料電池、アルカリ型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池などに分類される。なかでも固体高分子型燃料電池(PEFC)は、作動温度が低く、出力密度が高いことから、車載用電源、家庭用コージェネレーションシステム用電源などとして実用化されつつある。
また、近年、燃料電池を、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)などの携帯用小型電子機器における電源として用いることが検討されている。燃料電池は燃料の補充によって連続発電が可能であることから、燃料電池を、充電が必要な二次電池の代わりに用いることで、携帯型小型電子機器の利便性をさらに向上させることが期待できる。上記のように、PEFCは作動温度が低いため、携帯用小型電子機器用の電源としても注目されている。
PEFCのなかでも直接酸化型燃料電池は、常温で液体の燃料を使用し、この燃料を水素に改質することなく、直接酸化して電気エネルギーを取り出す。このため、直接酸化型燃料電池は、改質器を備える必要がなく、よって小型化が可能である。また、直接酸化型燃料電池のなかでも、燃料としてメタノールを用いる直接メタノール型燃料電池(DMFC)は、エネルギー効率および出力の観点より、携帯型小型電子機器用の電源として、最も有望視されている。
DMFCのアノードおよびカソードでの反応は、それぞれ、下記反応式(1)および(2)で示される。カソードに導入される酸素は、一般に、大気中から取り入れられる。
アノード: CHOH+HO→CO+6H+6e (1)
カソード: 3/2O+6H+6e→3HO (2)
DMFCなどの固体高分子型燃料電池は、例えば、図1に示すような構成を有する。図1に、固体高分子型燃料電池の従来の一般的な構成を示す。
図1の燃料電池10は、電解質膜11と、電解質膜11を挟み込むように配置されたアノード23およびカソード25を含む。アノード23は、アノード触媒層12およびアノード拡散層16を含む。アノード触媒層12は、電解質膜11に接している。アノード拡散層16は、アノード撥水層14およびアノード多孔質基材15を含む。アノード撥水層14およびアノード多孔質基材15は、この順番で、アノード触媒層12の電解質膜11と接している面とは反対側の面の上に積層されている。アノード拡散層16の外側には、アノード側セパレータ17が積層されている。
カソード25は、カソード触媒層13およびカソード拡散層20を含む。カソード触媒層13は、電解質膜11のアノード触媒層12が接している面とは反対側の面に接している。カソード拡散層20は、カソード撥水層18およびカソード多孔質基材19を含む。カソード撥水層18およびカソード多孔質基材19は、この順番で、カソード触媒層13の電解質膜11と接している面とは反対側の面の上に積層されている。カソード拡散層20の外側には、カソード側セパレータ21が積層されている。
このように、電解質膜11、アノード23、カソード25、アノード側セパレータ17およびカソード側セパレータ21からなる積層体は、セルと呼ばれる基本構成を形成している。なお、電解質膜11および電解質膜11を挟み込むアノード触媒層12とカソード触媒層13からなる積層体は、燃料電池の発電を担っており、CCM(Catalyst Coated Membrane)と呼ばれている。また、CCMと、アノード拡散層16およびカソード拡散層20とからなる積層体は、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;MEA)と呼ばれている。アノード拡散層16およびカソード拡散層20は、供給される燃料および酸化剤の均一な分散および生成物である水および二酸化炭素の円滑な排出を担っている。
また、図1の燃料電池10において、アノード側セパレータ17は、アノード多孔質基材15との接触面に、MEAに燃料を供給するための溝状の燃料流路22を有している。カソード側セパレータ21は、カソード多孔質基材19との接触面に、MEAに例えば空気のような酸化剤を供給するための溝状の酸化剤流路24を有する。
さらに、燃料電池10において、アノード側セパレータ17と電解質膜11との間には、アノード23を密閉するようにガスケット26が配置され、カソード側セパレータ21と電解質膜11との間には、カソード25を密閉するようにガスケット27が配置されている。ガスケット26および27は、それぞれ、燃料および酸化剤が外部に漏れるのを防止している。
なお、MEA、およびその両側に配置されるアノード側セパレータ17とカソード側セパレータ21から構成されるセルは、さらに、各セパレータの外側にそれぞれ端板28を配置した状態で、図示しないボルト、バネなどによって加圧締結される。
現在、DMFCなどの直接酸化型燃料電池において解決すべき技術的課題としては、燃料流路から供給された液体燃料(メタノール水溶液など)が、アノード23と電解質膜11とを透過し、カソード25に到達し、カソード触媒層13で酸化される現象を抑制することが挙げられる。上記現象は、燃料のクロスオーバーと呼ばれており、特にDMFCでは、メタノールクロスオーバー(MCO)と呼ばれている。このような現象が生じるのは、用いられる液体燃料は水溶性であることが多いため、液体燃料が、水を含みやすい性質の電解質膜に浸透しやすいからである。
燃料のクロスオーバーが生じると、つまり、燃料がアノードで消費されずにカソード25に移動すると、燃料の利用効率が低下する。さらに、カソード25での燃料の酸化反応は、カソードで通常起こる酸化剤(酸素ガス)の還元反応と競合し、カソード25の電位を低下させる。このため、燃料のクロスオーバーは、発電電圧の低下、発電効率の低下などを招く。
そこで、例えばDMFCの分野においては、MCOを低減させるため、メタノールの透過量が抑制された電解質膜が盛んに開発されている。現在実用化されている電解質膜は、膜内に存在する水を介してプロトンを伝導するため、電解質膜には水の存在が不可欠である。メタノールは水との親和性が高いために、水とともにメタノールが電解質膜を透過することを十分に防止できない。
電解質膜11中の液体燃料の移動は、主として濃度拡散に起因する。このため、燃料のクロスオーバーの程度は、電解質膜11のアノード23側表面とカソード25側表面とにおける燃料の濃度差に大きく依存することが知られている。そして、電解質膜11のカソード25側表面における燃料濃度は、透過した燃料がカソード25で速やかに酸化されることから、無視できるほど小さいと考えられる。このため、燃料のクロスオーバー量は、電解質膜11のアノード23側表面における燃料濃度に大きく依存することになる。
アノード23において、燃料流路22から供給された燃料の拡散速度は、アノード撥水層14の拡散抵抗により、制御される。さらに、燃料は、アノード触媒層12内での酸化反応によって消費される。このため、一般に、電解質膜11のアノード23側表面における燃料濃度は、燃料流路22における燃料濃度に比べて極めて低いと考えられる。
一方、電解質膜11の主面に対して平行な面内での燃料濃度の分布について考えると、燃料流路22内部に存在する燃料の濃度は、燃料流路22の入口において最も高く、燃料が燃料流路22を流れるにつれて漸次低下し、燃料流路22の出口において最も低くなる。つまり、燃料流路の上流付近においては、電解質膜11のアノード23側表面における燃料濃度が比較的高くなる、その結果、燃料のクロスオーバー量が大きくなる。
反対に下流付近では、燃料流路22内部に存在する燃料の濃度は、燃料流路の上流に比べて非常に低い。このために、アノード触媒層12内部における燃料の拡散性を高めて、アノード触媒周囲の燃料濃度を高くすることにより、濃度過電圧による電圧低下を低減して、出力の低下を抑制する必要がある。
上述の技術的課題に対し、特許文献1には、アノード撥水層の組成および厚みを燃料流路の上流側と下流側で変化させることが提案されている。特許文献1には、前記構成により、燃料流路の上流側での燃料透過性を低下させて、メタノールクロスオーバー量を低減できることが記載されている。
また、DMFCに関する技術ではないが、特許文献2には、水素ガスを燃料ガスとして用いる燃料電池において、触媒層の厚みを、燃料ガスの上流側から下流側に向かって薄くすることが開示されている。
特開2002−110191号公報 特開2009−9724号公報
撥水層の厚みは、一般的に10〜50μm程度と薄いため、撥水層の厚みを変化させることのみにより、アノードにおけるメタノールのような液体燃料の透過性を制御するのは困難である。その理由は、撥水層の厚みが薄いために、撥水層の流路側の面と触媒層側の面との間に生じる燃料濃度の差は小さく、液体燃料の拡散の駆動力が、小さくなるためである。従って、仮に特許文献1のように、燃料流路の上流側と下流側で撥水層の組成などを変化させたとしても、液体燃料の透過性に与える影響は小さい。特に、供給する燃料濃度が高い場合、あるいはセルの作動温度が高い場合には、液体燃料の拡散速度が大きくなるために、撥水層のみで液体燃料の透過性をコントロールすることは非常に困難である。
本発明は、燃料流路の上流側における燃料の消費量を下流側における消費量よりも多くして、燃料のクロスオーバーを抑制することにより、燃料の利用効率と、発電電圧、発電効率などの発電性能とに優れた燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の一局面に係る直接酸化型燃料電池は、アノードと、カソードと、それらの間に配置された電解質膜とを含む膜−電極接合体、前記アノードに接するアノード側セパレータ、および前記カソードに接するカソード側セパレータを備える少なくとも1つの単位セルを有する。前記アノード側セパレータは、前記アノードに燃料を供給するための燃料流路を有し、前記カソード側セパレータは、前記カソードに酸化剤を供給するための酸化剤流路を有する。前記アノードは、前記電解質膜に接するアノード触媒層、および前記アノード側セパレータに接するアノード拡散層を含む。前記アノード触媒層は、アノード触媒粒子と高分子電解質を含んでおり、前記アノード触媒粒子の充填密度が、前記アノード触媒層の前記燃料流路の下流側よりも上流側で高い。
本発明によれば、アノード触媒層において、アノード触媒層の燃料流路の上流側のアノード触媒粒子の充填密度を、下流側のアノード触媒粒子の充填密度よりも高くすることにより、アノード触媒層の燃料流路上流側において下流側と比較してより多くの燃量を消費させることができる。その結果、アノード触媒層の燃料流路上流側では、アノード触媒層と電解質膜の界面における燃料の濃度を従来技術に比べて低下させることができ、よって、燃料のクロスオーバーを低減させることが可能となる。すなわち、アノード触媒層とアノード拡散層との第1界面と、アノード触媒層と電解質膜との第2界面の間の燃料の濃度差を、アノード触媒層の燃料流路上流側では大きくすることができ、アノード触媒層の燃料流路の下流側では小さくすることができる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本願の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
従来の固体高分子型燃料電池の構成の一例を模式的に示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る直接酸化型燃料電池を模式的に示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る直接酸化型燃料電池に含まれるアノード触媒層を模式的に示す正面図である。 触媒層を形成するために用いられるスプレー式塗布装置の構成の一例を示す概略図である。
以下、本実施形態に係る直接酸化型燃料電池を、図面を参照しながら説明する。図2に、本発明の一実施形態に係る燃料電池を模式的に示す縦断面図を示し、図3に、本発明の一実施形態に係る直接酸化型燃料電池に含まれるアノード触媒層を模式的に示す正面図を示す。図2および3において、図1と同じ構成要素には、同じ番号を付している。なお、図3には、アノード触媒層32と、それを担持する電解質膜11を図示している。また、図3には、アノード触媒層32が対向するサーペンタイン型の燃料流路22も点線で示す。
図2の燃料電池30は、アノード31と、カソード25と、それらの間に配置された電解質膜11を備える。電解質膜11は、水素イオン伝導性を有する。アノード31の電解質膜11と接する面とは反対側の面には、アノード側セパレータ17が積層されている。カソード25の電解質膜11と接する面とは反対側の面には、カソード側セパレータ21が積層されている。さらに、アノード側セパレータ17と電解質膜11との間には、アノード31を密閉するように、ガスケット26が配置され、カソード側セパレータ21と電解質膜11との間には、カソード25を密閉するように、ガスケット27が配置されている。ガスケット26および27は、それぞれ、燃料および酸化剤が外部に漏れるのを防止している。
アノード側セパレータ17には、電解質膜11の主面と平行な面方向に燃料を分配させるための燃料流路22が形成されている。燃料流路22には、少なくとも1対の燃料入口と燃料出口が設けられている。以下、説明を簡略化させるため、アノード側セパレータ17は、燃料入口36と燃料出口37を1箇所ずつ有し、燃料が、燃料入口36から燃料出口37に向かって一方向にのみ流れる形態を示す。なお、本発明は、前記形態に限定されない。
アノード31は、電解質膜11と接するアノード触媒層32と、アノード側セパレータ17と接するアノード拡散層16とを有している。アノード触媒層32は、上述の反応式(1)に示す反応を促進するためのアノード触媒粒子と、アノード触媒層32と電解質膜11とのイオン伝導性を確保するための高分子電解質とを含む。
本実施形態において、アノード触媒粒子の充填密度が、前記アノード触媒層の燃料流路の下流側よりも上流側において高い。前記アノード触媒粒子の充填密度は、燃料流路の上流側から下流側に向かって連続的に減少していてもよいし、段階的に減少していてもよい。なかでも、アノード触媒粒子の充填密度は段階的に変化されることが好ましい。この場合、アノード触媒層の製造工程が簡便になり、また、アノード触媒粒子の充填密度を制御しやすくなるからである。アノード触媒粒子の充填密度は、例えば2〜10段階に変化させることが好ましく、2〜5段階に変化させることがより好ましい。
アノード触媒粒子の充填密度を段階的に変化させる場合でも、連続的に変化させる場合でも、燃料流路の下流側よりも上流側で、アノード触媒粒子の充填密度を高くすることにより、燃料濃度が高い燃料流路22の上流側に対向するアノード触媒層32の部分において、燃料を速やかに消費することができる。その結果、アノード触媒層32の燃料流路22の上流側の部分において、アノード触媒層32とアノード拡散層16との第1界面からアノード触媒層32と電解質膜11との第2界面に向かって燃料濃度が大きく低下する。このため、アノード触媒層32の燃料流路22の上流側に対向する部分と電解質膜11との界面における燃料濃度を低下させることができる。よって、アノード触媒層32の燃料流路22の上流側に対向する部分において生じやすい燃料のクロスオーバーを抑制することができる。
アノード触媒粒子としては、白金(Pt)とルテニウム(Ru)との合金、Ptとルテニウム酸化物との混合物、PtとRuと他の金属元素(例えば、イリジウム(Ir)など)との3元合金、白金単体などが挙げられる。PtとRuとの合金において、PtとRuとの原子比は、1:1であることが好ましいが、これに限定されない。
中でも、アノード触媒粒子は、白金単体、および白金とルテニウムとの合金より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
アノード触媒層32に含まれる高分子電解質としては、例えば、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン共重合体(H型)、スルホン化ポリエーテルスルホン
(H型)、アミノ化ポリエーテルスルホン(OH型)などが挙げられる。
アノード触媒層32は、アノード触媒層32の燃料流路22の上流側に対向する部分に、アノード触媒粒子の充填密度が0.5〜2g/cmである高充填密度領域を備えることが好ましい。さらに、アノード触媒層32は、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側に対向する部分に、アノード触媒粒子の充填密度が0.1〜1g/cmである低充填密度領域を備えることが好ましい。このことを、図3を参照しながら、説明する。図3では、アノード触媒粒子の充填密度を段階的に減少させた場合について説明する。
図3のアノード触媒層32は、アノード触媒粒子の充填密度が0.5〜2g/cmである高充填密度領域(第1領域)33と、アノード触媒粒子の充填密度が0.1〜1g/cmである低充填密度領域(第2領域)34とを含む。第1領域33は、アノード触媒層32の燃料流路22の上流側の部分に位置し、第2領域34は、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側の部分に位置する。図3のアノード触媒層32において、第1領域33と、第2領域34との間には、アノード触媒粒子の充填密度が第1領域33と第2領域34との間にある中充填密度領域(第3領域)35が設けられている。なお、図3に示されるアノード触媒層32では、アノード触媒層32を3分割し、各領域におけるアノード触媒粒子の充填密度を変化させているが、アノード触媒層の分割数は2以上の任意の数値を選択することができる。
上記のように、第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.5〜2g/cmであることが好ましい。アノード触媒粒子の充填密度は、例えば、アノード触媒層32中に含まれる高分子電解質の量、アノード触媒層32の空孔度、さらに、アノード触媒粒子が担体に担持されている場合には、アノード触媒粒子の担持率によって決めることができる。アノード触媒層32の燃料流路上流側の部分では、燃料濃度が比較的高く保たれているので、アノード反応を促進させるためには、高分子電解質によるプロトン伝導と電子伝導のネットワークを重視する必要がある。良好なプロトン伝導および電子伝導を獲得するため、第1領域33における適切なアノード触媒粒子の充填密度は0.5〜2g/cmである。
第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.1〜1g/cmであることが好ましい。アノード触媒層32の燃料流路下流側の部分では、燃料濃度が小さくなるため、前記部分における燃料拡散性を可能な限り高く保ちながら、プロトン伝導および電子伝導を維持する必要がある。良好な燃料拡散性を獲得するため、第2領域34における適切なアノード触媒粒子の充填密度は0.1〜1g/cmである。
本発明の効果が十分に得られるため、第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度に対する第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度の比は、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがさらに好ましい。
燃料のクロスオーバーによる発電性能の低下が最も顕著であるのは、燃料流路の全長を1としたときに、燃料流路の上流側に位置する端部から、その上流側の1/6〜1/3の長さに相当する部分までのMEAの領域である。従って、アノード触媒層32の第1領域33は、燃料流路22の上流側の、燃料流路22の全長の1/6〜1/3の長さの部分に対向していることが好ましい。つまり、第1領域33は、燃料流路22の燃料入口36から燃料流路の全長の1/6〜1/3の長さのまでの部分に対向していることが好ましい。例えば、図3に示されるように、一辺の長さがLの正方形のアノード触媒層32の上流側の辺32aに流路入口36が設けられ、それに平行な下流側の辺32bに燃料出口37が設けられており、燃料の全体的な流れ方向(燃料濃度が減少する平均的な方向)が矢印Aで表されるとする。この場合、辺32aから方向Aにおける長さがL/6〜L/3である長方形の領域を、アノード触媒層32の第1領域33とすることができる。
なお、アノード触媒層32が、第1領域33および第2領域34から構成され、第1領域33が前記領域を占める場合、第2領域34は、アノード触媒層32の残りの領域を占める。
第1領域33と第2領域34との間に第3領域35が設けられる場合、第3領域35におけるアノード触媒粒子の充填密度Dmは、第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度Duと、第2領域34におけるアノード触媒粒子の充電密度Ddとに応じて、適宜選択される。例えば、差(Du−Dm)と、差(Dm−Dd)とが、ほぼ同じとなるように、Dmを選択してもよい。あるいは、差(Du−Dm)が差(Dm−Dd)よりも大きくなるように選択してもよいし、差(Dm−Dd)が差(Du−Dm)よりも大きくなるように選択してもよい。また、第3領域35が複数の領域から構成される場合、第3領域35の各領域におけるアノード触媒粒子の充填密度も、適宜選択される。
アノード触媒粒子の充填密度は、上記のように、例えば、アノード触媒層の空孔度、高分子電解質の含有量などに調節することによって、制御することができる。例えば、アノード触媒層の所定の領域の空孔度を大きくすることにより、前記領域のアノード触媒粒子の充填密度を小さくすることができる。アノード触媒層の空孔度は、例えば、アノード触媒層がアノード触媒層形成用インクを用いて作製される場合、前記インクに造孔剤を添加し、その量を調節することにより、制御することができる。
また、アノード触媒粒子の充填密度は、前記インクをスプレー塗布する場合には、インクの吐出量と乾燥速度を調節することにより、制御することもできる。
アノード触媒層32は、導電性炭素材料と導電性炭素粒子に担持された前記アノード触媒粒子とを含む触媒担持体、および導電性炭素材料に担持されていないアノード触媒粒子(以下、非担持触媒粒子と称す)の少なくとも1種を含むことが好ましい。
例えば、アノード触媒粒子は、担体に担持させることなく、そのまま用いてもよい。
アノード触媒層32は、例えば、導電性炭素材料とそれに担持されたアノード触媒粒子とを含む触媒担持体のみを含んでもよい。この場合、前記導電性炭素粒子のアノード触媒粒子の担持率を、燃料流路の下流側よりも上流側で大きくすることにより、アノード触媒粒子の充填密度を、燃料流路の下流側よりも上流側で高くすることが好ましい。例えば、第1領域33は、第1触媒担持体を含み、第2領域34は、第2触媒担持体を含み、第1触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率を、第2触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率よりも高くすることが好ましい。
あるいは、アノード触媒層32は、導電性炭素粒子とそれに担持されたアノード触媒粒子とを含む触媒担持体、および非担持触媒粒子の両方を含んでいてもよい。この場合、触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率が、前記燃料流路の下流側よりも上流側で大きいことが好ましい。
ここで、担持率とは、アノード触媒粒子と導電性炭素粒子との合計質量に対するアノード触媒粒子の質量の割合のことをいう。アノード触媒粒子は、金属元素を含む触媒のことを意味する。例えば、アノード触媒粒子は、金属単体からなる触媒、ならびに金属酸化物、合金等の金属化合物触媒を意味する。
上記のように、アノード触媒粒子には、白金(Pt)とルテニウム(Ru)を含む合金、PtとRuの混合物等が使用される。アノード触媒粒子の活性点を増加させ、反応速度を向上させるために、アノード触媒粒子をできる限り小さくして使用することが好ましい。アノード触媒粒子の平均粒径は、一般に1〜20nmの範囲である。微粒子化された非担持触媒粒子は、粒子同士が凝集して、凝集体を形成する。例えば、触媒粒子の1次粒子は小さくても、凝集体である2次粒子の大きさは、1次粒子の数十倍にもなる。よって、その反応速度に影響する触媒粒子の活性表面積は十分に大きくならない。従って、十分に表面積の大きな導電性炭素粒子の表面に非担持触媒粒子を担持させて、十分な活性表面積を確保することが好ましい。
一方で、導電性炭素粒子にアノード触媒が担持された触媒担持体を用いる場合、導電性炭素粒子は非常に嵩高いために、アノード触媒粒子の充填密度が低下しやすい。このため、触媒担持体を用いる場合、アノード触媒層の厚みを増加させずに、アノード触媒層におけるアノード触媒粒子の充填量を増加させるのは困難である。
このような活性表面積と充填密度の関係は、触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率を変化させることで制御することができる。なぜなら、アノード触媒粒子の担持率を大きくすると、触媒担持体の製造プロセスにおいて、近接するアノード触媒粒子同士が接合して、アノード触媒粒子が粗大化し、導電性炭素粒子表面上でのアノード触媒粒子の分散性が低下するからである。すなわち、高い担持率を有する触媒担持体を使用すると、活性表面積はさほど大きくならないが、アノード触媒粒子の充填密度を大きくすることが可能となる。一方、低い担持率の触媒担持体を使用すると、大きな活性表面積が得られる半面、アノード触媒粒子の充填密度を高めることはできない。なお、このような傾向は、非担持触媒粒子にも適用することができ、非担持触媒粒子は、いわば高担持率の状態、つまり担持率100%の状態にあるとも考えられる。
アノード触媒層32が触媒担持体のみを含む場合でも、第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.5〜2.0mg/cmであることが好ましい。また、第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.1〜1.0mg/cmであることが好ましい。
また、この場合にも、第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度に対する第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度の比は、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがさらに好ましい。
アノード触媒層32が触媒担持体のみを含む場合、例えば、第1領域33には、第1触媒担持体が含まれ、第2領域34には、第2触媒担持体が含まれる。第1触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率は、60〜99%であることが好ましく、60〜80%であることがさらに好ましい。アノード触媒粒子の密度は、一般的な燃料電池用触媒担体であるカーボンのような導電性炭素粒子の密度に比べて著しく大きい。従って、高い担持率を有する触媒担持体を使用するほど、アノード触媒粒子の充填密度を高くすることができる。なお、担体として使用される導電性炭素粒子は直径5〜50nmの一次粒子からなり、表面積が比較的大きい。従って、触媒層作製プロセスにおいて、触媒インク中でプロトン伝導を担う高分子電解質の多くが導電性炭素粒子表面に吸着する傾向がある。よって、導電性炭素粒子の量が多くなるほど、高分子電解質の必要量が多くなる。良好なプロトン伝導と電子伝導を確保し、アノード反応を促進するためには、第1触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率を、60〜99%と高くすることが好ましい。
第2触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率は、20〜80%であることが好ましく、40〜70%であることがさらに好ましい。一般的には、アノード触媒粒子を導電性炭素粒子上に分散させる場合には、担持率を小さくするほど、アノード触媒粒子の大きさを小さくすることが可能である。担持率が大きい場合には、触媒粒子作製工程において、近接する触媒粒子同士が、凝集・結合し、触媒粒子の粒子径が大きくなるためである。また、触媒の活性はその表面積が大きくなるほど高まることから、触媒粒子径の小さな触媒ほど、つまり、低担持率の触媒担持体ほど、単位触媒量あたりの活性は高くなる。従って、アノード触媒粒子の充填密度を高くすることを必要としない、アノード触媒層の燃料下流側の領域では、触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率を小さくして、少ない触媒量で比較的高い活性を得ることが有効である。そのため、第2触媒担持体におけるアノード触媒粒子の適正な担持率の範囲は、20〜80%である。
導電性炭素粒子としては、カーボンブラックなどが挙げられる。導電性炭素粒子の平均粒径は、アノード触媒粒子のサイズとの兼ね合いから、5〜50nmであることが好ましい。
アノード触媒粒子が導電性炭素粒子に担持されている場合、アノード触媒粒子の充填密度は、アノード触媒層の空孔度、高分子電解質の含有量、アノード触媒粒子の担持率などを調節することによって、制御することができる。
以上のように、アノード触媒粒子の担持率が異なる第1触媒担持体および第2触媒担持体を用いることにより、アノード触媒粒子の活性表面積とアノード触媒粒子の充填密度とを、燃料流路の上流側と下流側とでそれぞれに最適化することができる。具体的には、アノード触媒層32の燃料流路上流側の第1領域33に、担持率の大きい第1触媒担持体を含ませて、アノード触媒粒子の充填密度を高めることにより、第1領域33において、燃料を速やかに消費することができる。その結果、アノード触媒層の燃料流路上流側に対向する部分において生じやすい燃料のクロスオーバーを抑制することができる。アノード触媒層32の燃料流路下流側の第2領域34には、第1触媒担持体よりも担持率の小さい第2触媒担持体を含ませることにより、アノード触媒粒子の活性表面積を十分に確保することができる。よって、第2領域34におけるアノード触媒粒子の使用量を低減することができる。以上の結果、燃料電池の発電特性および燃料利用率をさらに向上できるとともに、燃料電池のコストアップをさらに抑制することができる。
アノード触媒層32が、触媒担持体と非担持触媒粒子の両方を含む場合、例えば、第1領域33における触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率が、第2領域34における触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率よりも大きいことが好ましい。
また、この場合にも、第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.5〜2g/cmであることが好ましく、第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度は0.1〜1g/cmであることが好ましい。第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度に対する第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度の比は、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがさらに好ましい。
第1領域33における触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率は、5〜99質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることさらにが好ましい。第2領域34における前記触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率は、1〜90質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがさらに好ましい。
図3に示されるように、アノード触媒層が3つ以上の領域から構成される場合、第1領域33および第2領域34以外の領域における触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率は、第1領域33および第2領域34における触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率に応じて、適宜選択される。
触媒担持体と非担持触媒粒子とが組み合わせて用いられる場合、第1領域33および第2領域34に含まれる触媒担持体は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
例えば、第1領域33および第2領域34に含まれる触媒担持体が異なる場合、前記第1触媒担持体を第1領域33に添加し、前記第2触媒担持体を第2領域34に添加してもよい。
第1領域33および第2領域34に含まれる触媒担持体が同じである場合、前記触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率は、20〜99%であることが好ましく、60〜80%であることがさらに好ましい。上記のように、アノード触媒粒子の担持率を大きくするほど、高い充填密度が得られ、担持率を小さくするほど、触媒量を低減することが可能である。例えばDMFCの場合には、一般的にアノード触媒粒子の担持率が50%以上であることが多い。非担持触媒粒子と触媒担持体とを混合して用いる場合、非担持触媒粒子と触媒担持体との混合比にもよるが、触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率が20%〜99%の範囲にあれば、本発明の効果が得られる。
また、第1領域33に、非担持触媒粒子のみを含ませてもよい。このとき、第2領域34には、触媒担持体のみを含ませてもよいし、触媒担持体と非担持触媒粒子の両方を含ませてもよい。第2領域34に触媒担持体のみが含まれる場合、触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率は、上記と同様に20〜80%であることが好ましい。第2領域34に触媒担持体および非担持触媒粒子の両方が含まれる場合、触媒担持体と非担持触媒粒子との合計に占める非担持触媒粒子の質量比率は、上記と同様に1〜90質量%の範囲にあることが好ましい。また、触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率は、20〜80%であることが好ましい。
アノード触媒粒子の充填密度が、燃料流路の上流側から下流側に向かって(例えば、矢印Aの方向に)、連続的に変化している場合でも、燃料流路22の燃料入口36から燃料流路22の全長の1/6〜1/3の長さまでの部分に対向するアノード触媒層32の領域(前記第1領域33に相当)におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.5〜2g/cmであることが好ましい。アノード触媒層32の残りの領域(前記第2領域34に相当)におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.1〜1g/cmであることが好ましい。ここで、アノード触媒粒子の充填密度が連続的に変化している場合、前記アノード触媒粒子の充填密度は、各領域に含まれるアノード触媒粒子の平均の充填密度のことである。この場合にも、第2領域34におけるアノード触媒粒子の平均の充填密度に対する第1領域33におけるアノード触媒粒子の平均の充填密度の比は、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがさらに好ましい。
なお、燃料流路22の下流側では、燃料濃度が、燃料流路22の上流側と比較して低い。よって、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側に対向する部分においては、燃料濃度低下による濃度過電圧が増加する。その結果、セル全体の発電電圧が低下したり、電流密度が低下したりすることで、発電出力が小さくなる。
例えば、アノード触媒層32が非担持触媒のみを含む場合、または触媒担持体および非担持触媒粒子の両方を含む場合、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側に対向する部分におけるアノード触媒粒子の充填密度を小さくすることができる。このため、前記部分の空孔度を増加させることができる。よって、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側の部分における燃料の拡散性を向上させることができ、その結果、濃度過電圧を低減させることができる。なお、アノード触媒層32が触媒担持体のみを含む場合でも、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側の部分における空孔度は、例えば造孔剤を用いて調節することができる。
また、本実施形態では、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側における、アノード触媒粒子の充填密度を上流側と比較して低くしている。よって、アノード触媒層32の燃料流路22の下流側における非常に高価なアノード触媒の使用量を低減することができる。
アノード触媒層32に、導電性炭素粒子が含まれる場合、前記導電性炭素粒子の量は、アノード触媒層32全体にわたって均一であることが好ましい。
一般的にアノード触媒層中のプロトン伝導を担うのに必要な高分子電解質の量は、導電性炭素粒子の量に比例するという考え方がある。その観点から、導電性炭素粒子の量をアノード触媒層全体にわたって均一とすることにより、高分子電解質の量も、アノード触媒層全体にわかって均一とすることができる。よって、アノード触媒層全面に渡って良好なプロトン伝導が確保することが可能となる。
アノード触媒層32の厚さは、アノード触媒層32全体にわたって均一であることが好ましい。
上記特許文献2に開示されているように、アノード触媒層の構成材料および/またはアノード触媒層の構造を変化させずに、アノード触媒量を増加させると、アノード触媒層の厚みを変化させなければならない。燃料電池は、一般的に電解質膜の主面に垂直な方向に加圧力を印加することで、各層間の接触抵抗の低減を図っている。例えば、アノード触媒層の面方向において、著しい厚みの変化が生じると、加圧力の不均一が生じ、アノード触媒層の厚みの小さい部分において、アノード触媒層と電解質膜との接触抵抗および/またはアノード触媒層とアノード拡散層との接触抵抗が増加し、その結果、燃料電池の性能低下が生じる。本実施形態では、アノード触媒層の燃料流路上流側において、アノード触媒粒子の充填密度を高め、アノード触媒層の燃料流路下流側において、アノード触媒粒子の充填密度を小さくすることによりアノード触媒量自体は燃料流路の上流側と下流側とで変化させながらも、アノード触媒層の厚みを、その全体にわたって比較的均一に保つことができる。このため、均一な接触抵抗を得ることができ、高い発電性能を得ることができる。
アノード触媒層の厚さは、20〜100μmであることが好ましい。
アノード触媒層の所定の領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、例えば、以下のようにして、測定することができる。まず、アノード触媒層の所定の領域の厚みを、マイクロメータを使用して測定する。このとき、例えば、所定の数箇所の厚みを測定し、得られた値の平均値を、前記所定の領域の厚みとしてもよい。次に、アノード触媒層の所定の領域(例えば、第1領域)を削り取る。削り取った部分の寸法を、光学顕微鏡などを使用して正確に測定して、前記所定の領域の面積を求める。この場合にも、削り取った領域の長さおよび幅を、それぞれ数箇所ずつ測定して、平均長さおよび平均幅を求め、平均長さおよび平均幅から、前記所定の領域の面積を求めてもよい。得られた厚みと面積から、所定の領域の体積を求めることができる。なお、既にCCMの状態となり、マイクロメータによってアノード触媒層単独の厚みを測定することが困難な場合には、削り取った部分の近傍を切断するなどして断面を露出させ、前記断面を、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)などで観察して、前記所定の領域の厚みを測定してもよい。この場合にも、例えば所定の数箇所で厚みを測定し、得られた値を平均してもよい。
次いで、削り取った試料の質量をマイクロ天秤にて測定する。次いで、得られた試料を王水に溶解させ、不溶物を濾過する。得られた濾液に水を加えて、所定の量(例えば、100ml)にする。得られた定量溶液に含まれるアノード触媒粒子の量を、誘導プラズマ原子発光分光分析装置(ICP-AES;例えば、Thermo Fisher Scientific製のiCAP 6300)により測定する。得られた値および前記所定の領域の体積を用いて、アノード触媒層の所定の領域におけるアノード触媒粒子の充填密度を得ることができる。
以下、図2を再度参照しながら、アノード触媒層32以外の構成要素について、説明する。
カソード25は、電解質膜11に接するカソード触媒層13と、カソード側セパレータ21に接するカソード拡散層20とを有している。カソード拡散層20は、カソード触媒層13に接するカソード撥水層18と、カソード側セパレータ21に接するカソード多孔質基材19とを有している。
カソード触媒層13は、上述の反応式(2)に示す反応を促進するためのカソード触媒と、カソード触媒層13と電解質膜11とのイオン伝導性を確保するための高分子電解質と、を含む。
カソード触媒層13に含まれるカソード触媒としては、例えば、Pt単体およびPt合金が挙げられる。Pt合金には、Ptと、コバルト、鉄などの遷移金属との合金が挙げられる。上記Pt単体またはPt合金は、微粉末状のまま用いてもよいし、カーボンブラックなどの導電性炭素粒子に担持させてもよい。
カソード触媒層13に含まれる高分子電解質としては、アノード触媒層32に含まれる高分子電解質として例示した材料を用いることができる。
以下に、アノード触媒層32およびカソード触媒層13の作製方法を説明する。
カソード触媒層13は、例えば、以下のようにして作製することができる。具体的には、カソード触媒と、高分子電解質とを適当な分散媒に分散させる。得られたインクを電解質膜11に塗布し、乾燥させることにより、アノード触媒層13を得ることができる。塗布の手段としては、例えば、スプレー法、スキージ法などが挙げられる。
上記のような構成のアノード触媒層32は、例えば、造孔剤を使用したアノード触媒層作製プロセスにより、作製することができる。具体的には、アノード触媒粒子と高分子電解質を、所定の分散媒に分散させて、アノード触媒層形成用インクを調製する。前記インクに、アノード触媒層に細孔を形成するための造孔剤を混入させる。アノード触媒層の構成領域の数に応じて、造孔剤の添加量が異なるインクを調製する。このとき、造孔剤の量を、第1領域を形成するためのインクにおいて最も少なくし、第2領域を形成するためのインクにおいて最も多くする。次いで、各インクを、電解質膜に塗布して、アノード触媒層前駆体を得る。前記アノード触媒層前駆体から、造孔剤を除去することにより、燃料流路の上流側と下流側とでアノード触媒粒子の充填密度が異なるアノード触媒層を得ることができる。
なお、アノード触媒粒子の代わりに、アノード触媒粒子が導電性炭素粒子に担持された触媒担持体を用いてもよいし、触媒担持体とアノード触媒粒子との混合物を用いてもよい。
造孔剤としては、例えば、酸によって分解される材料を用いることができる。このような材料としては、例えば、ニッケルなどの金属、およびアルカリ金属またはアンモニウムイオンを含む塩が挙げられる。アルカリ金属を含む塩としては、例えば、炭酸リチウムが挙げられる。
または、上記のような構成のアノード触媒層32は、1種類のアノード触媒層形成用インクを用い、前記インクを、塗布条件を変化させて、電解質膜に塗布することにより、形成することもできる。
例えば、スプレー法を用いる場合、インクの吐出量を大きくし、乾燥速度を遅くすることにより、アノード触媒粒子の充填密度が大きい第1領域33を作製することができる。一方で、インクの吐出量を小さくし、乾燥速度を速くすることにより、アノード触媒粒子の充填密度が小さい第2領域34を形成することができる。
以下に、スプレー法に用いるスプレー式塗布装置の一例を示す。図4は、スプレー式塗布装置の構成の一例を概略的に示す側面図である。
図4のスプレー式塗布装置70は、インク72を収容したタンク71およびインク72を吐出するスプレーガン73を備える。
タンク71内において、インク72は、撹拌機74により撹拌されて、常時流動状態にある。インク72は、開閉バルブ75を介して、スプレーガン73に供給され、噴出ガスとともに、スプレーガン73から吐出される。噴出ガスは、ガス圧力調整器76およびガス流量調整器77を介して、スプレーガン73に供給される。噴出ガスとしては、例えば、窒素ガスを用いることができる。塗布装置70では、電解質膜11と接するように配置されたヒータ81により、電解質膜11の表面温度が制御されている。
なお、図4の塗布装置70において、スプレーガン73は、アクチュエータ78により、矢印Xに平行なX軸およびX軸に垂直でかつ紙面に垂直なY軸の2方向に任意の位置から任意の速度で移動することが可能である。
インク72を、電解質膜11の第1領域33が配置される予定箇所に、スプレーガン73を用いてスプレー塗布し、乾燥する。このとき、インクの吐出量を大きくし、乾燥速度を遅くする。乾燥速度は、電解質膜11の表面温度を低くすることにより、遅くすることができる。
アノード触媒層32が形成される電解質膜11の領域以外は、マスキング79を施しておき、さらに、電解質膜11上の第1領域33が配置される部分以外の部分にも、マスキング80を施しておく。こうして、第1領域33を形成することができる。
第2領域34は、インク72を、電解質膜11の第2領域34が配置される予定箇所に、スプレーガン73を用いてスプレー塗布し、乾燥することにより形成することができる。このとき、インクの吐出量を小さくし、乾燥速度を速くする。乾燥速度は、電解質膜11の表面温度を高くすることにより、速くすることができる。
アノード触媒層が、3つ以上の領域から構成される場合、第1領域および第2領域以外の領域も、基本的は、上記と同様にして作製することができる。このとき、インクの吐出量および乾燥速度は、アノード触媒層を構成する領域の数に応じて、適宜選択される。
上記で説明したスプレー法において、スプレーガン73の代わりに、エアーブラシを用いてもよい。
なお、上記のいずれの方法においても、アノード触媒層32は、所定の樹脂シート上に形成してもよい。同様にして、カソード触媒層13も、樹脂シート上に形成してもよい。
この場合、樹脂シート上に形成されたアノード触媒層およびカソード触媒層は、熱プレスにより、電解質膜11に転写される。アノード触媒層32は、電解質膜11の一方の面に転写され、カソード触媒層13は他方の面に転写される。このとき、アノード触媒層32およびカソード触媒層13は、同時に、電解質膜11に転写してもよい。または、一方の触媒層を転写したのちに、他方の触媒層を転写してもよい。このようにしても、CCMを形成することができる。
また、上記のいずれの方法においても、アノード触媒層を構成する各領域は、同時に作製してもよいし、別々に作製してもよい。
電解質膜11の構成材料としては、電解質膜11がイオン伝導性を有していれば、特に限定されない。このような材料としては、たとえば、当該分野で公知の各種高分子電解質材料を用いることができる。なお、現在、流通している電解質膜は、主として、プロトン伝導タイプの電解質膜である。
電解質膜11の具体例としては、フッ素系高分子膜などが挙げられる。前記フッ素系高分子膜の具体例としては、例えば、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン共重合体(H型)などのパーフルオロスルホン酸ポリマーを含有する高分子膜が挙げられる。パーフルオロスルホン酸ポリマーを含有する膜の具体例としては、たとえば、ナフィオン膜(商品名「Nafion(登録商標)」、デュポン社製)などが挙げられる。
なお、電解質膜11は、燃料電池30に用いられる燃料(メタノールなど)のクロスオーバーを低減する効果をさらに有していることが好ましい。このような効果を有する電解質膜としては、上記フッ素系高分子膜のほかに、例えば、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン(S−PEEK)などのフッ素原子を含まない炭化水素系ポリマーならなる膜、無機物・有機物複合膜などが挙げられる。
アノード拡散層16は、撥水処理が施された多孔質基材15と、多孔質基材15の表面に形成された、撥水性の高い材料からなる撥水層14とを備える。同様に、カソード拡散層20は、撥水処理が施された多孔質基材19と、多孔質基材19の表面に形成された、撥水性の高い材料からなる撥水層18とを備える。
アノード多孔質基材15およびカソード多孔質基材19に用いられる多孔質基材としては、例えば、炭素繊維からなるカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布(カーボンフェルト)、耐腐食性を有する金属メッシュ、発泡金属などが挙げられる。
アノード撥水層14およびカソード撥水層18の形成に用いられる高撥水性材料としては、例えば、フッ素系高分子、フッ化黒鉛などが挙げられる。フッ素系高分子としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
アノード拡散層16およびカソード拡散層20は、次のようにして得ることができる。まず、例えばフッ素系高分子などの高撥水性材料と、導電性を有しかつ多孔質の集合体を形成することのできる材料と、適当な分散媒と、を混合し、攪拌する。こうして得られたインクを、撥水処理が施された多孔質基材の表面に塗布して乾燥させる。塗布の手段としては、例えば、スクリーン印刷法、スキージ法などが挙げられる。導電性を有しかつ多孔質の集合体を形成するとのできる材料としては、例えばカーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラックなど)、黒鉛粉末、多孔質金属粉末などが挙げられる。
得られたアノード拡散層16およびカソード拡散層20は、アノード触媒層32と電解質膜11とカソード触媒層13との積層体(CCM)に、熱プレスにより接合される。このとき、アノード拡散層16は、アノード触媒層32に接合され、カソード拡散層20は、カソード触媒層13に接合される。こうして、アノード23と、電解質膜11と、カソード25とが、この順で積層された膜電極接合体(MEA)が得られる。
アノード側セパレータ17およびカソード側セパレータ21は、例えば、黒鉛などのカーボン材料からなる。アノード側セパレータ17には、アノード31と接する面に、アノード31に燃料(メタノール水溶液など)を供給する溝状の燃料流路22が設けられている。カソード側セパレータ21には、カソード25と接する面に、カソード25に酸化剤(空気、酸素ガスなど)を供給するための溝状の酸化剤流路24が設けられている。
アノード側セパレータ17の燃料流路22およびカソード側セパレータ21の酸化剤流路24は、例えば、セパレータの表面を溝状に切削することにより形成することができる。また、燃料流路22および酸化剤流路24は、セパレータ自体を成形(射出成形、圧縮成形など)するときに成形することもできる。
ガスケット26、27の構成材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系高分子、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などの合成ゴム、シリコーンエラストマーなどが挙げられる。
各ガスケット26、27は、前記材料からなるシートの中央部分に、膜電極接合体(MEA)を収容するために、MEAと同じか多少大きいサイズの開口部を備えている。ガスケット26および27は、それぞれアノード触媒層12およびカソード触媒層13の側面と接するようにして、MEAの表面に配置される。
さらに、ガスケット26、27は、セパレータ17、21とともに、電解質膜11をその厚さ方向に加圧している。
MEAと、このMEAの両側に配置されるアノード側セパレータ17およびカソード側セパレータ21とから構成されるセルは、2枚の端板28の間に挟まれた状態で、図示しないボルトやバネなどによって加圧締結される。2枚の端板28は、それぞれ、アノード側セパレータ17およびカソード側セパレータ21に積層されるように配置される。
MEAと一対のセパレータ17、21との界面は、接着性に乏しい。しかしながら、上記のようにして、セルを加圧締結することにより、MEAと一対のセパレータ17、21との接着性を高めることができ、その結果、MEAと一対のセパレータ17、21との間の接触抵抗を低減させることができる。
また、複数個のセルを積層して、セルスタックを形成してもよい。この場合にも、セルスタックは、端板、ボルト、バネなどにより、加圧締結される。
本実施形態の直接酸化型燃料電池に用いられる燃料としては、メタノールの他、エタノール、ジメチルエーテル、蟻酸、エチレングリコールなどの炭化水素系液体を用いることができる。この中でも、1mol/L〜8mol/Lのメタノール濃度を有する水溶液を燃料として用いることが好ましい。メタノール水溶液のメタノール濃度は、3mol/L〜5mol/Lであることがより好ましい。燃料の濃度が高いほど燃料電池システム全体としての小型軽量化につながるが、MCOが多くなるおそれがある。上記で説明したアノード触媒層を用いることにより、MCOを低減することができるため、通常よりもメタノール濃度が高いメタノール水溶液を用いることができる。メタノール濃度が1mol/Lより小さいと、燃料電池システムの小型軽量化が困難となる場合がある。メタノール濃度が8mol/Lを超えると、MCOを十分に低減できない場合がある。上記のメタノール濃度を有する燃料を用いることで、上記アノード触媒層の燃料流路上流側でMCOを低減しつつ、燃料流路下流側でメタノールの供給量をさらに良好に確保することができる。
上記のようなアノード触媒層を用いることにより、燃料の利用効率が向上し、さらに、発電電圧や発電効率などの発電性能が向上した直接酸化型燃料電池を提供することができる。
次に、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
本実施例では、図2および図3に示されるような燃料電池を作製した。
アノード触媒粒子とそれを担持する担体とを含むアノード触媒担持体を用意した。アノード触媒粒子としては、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金(原子比1:1)(平均粒径:5nm)を用いた。担体としては、平均一次粒子径が30nmの導電性カーボン粒子を用いた。PtRu合金と導電性カーボン粒子との合計質量に占めるPtRu合金の質量の割合は、80質量%とした。
カソード触媒粒子とそれを担持する担体とを含むカソード触媒担持体を用意した。カソード触媒粒子としては、白金(平均粒径:3nm)を用いた。担体としては、平均一次粒子径が30nmの導電性カーボン粒子を用いた。白金と導電性カーボン粒子との合計質量に占める白金の質量の割合は、80質量%とした。
電解質膜11には、厚さ50μmのフッ素系高分子膜(パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン共重合体(H型)をベースとするフィルム、商品名「Nafion(登録商標)112」、デュポン社製)を使用した。
上記アノード触媒担持体10gと、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン共重合体(H型)を含有する分散液(商品名:ナフィオン分散液、「Nafion(登録商標)5重量%溶液」、デュポン社製)70gとを、適量の水とともに混合および攪拌した。この後、得られた混合物を脱泡して、アノード触媒層形成用インクを得た。
こうして得られたアノード触媒層形成用インクを、エアーブラシを使用したスプレー法によって、電解質膜11の一方の表面に吹き付けた。アノード触媒層32の形状を一辺が60mmの正方形とした。アノード触媒層32を、大きさが20×60mmの長方形の3つの領域から構成した。前記3つの領域は、上流側から、矢印Aの方向に向かって、第1領域33、第3領域35、および第2領域34とした。アノード触媒層32の形成は、第1領域33から順に行った。各領域の寸法は、マスキングによって、調整した。吹き付け時には、電解質膜11を、その表面温度を調整したヒータ付の金属板に減圧吸着させて固定した。アノード触媒層形成用インクは、塗布中に漸次乾燥させた。
前記3つの領域の形成には、同じアノード触媒層形成用インクを用いた。各領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、インク吐出速度と乾燥温度を制御することにより、変化させた。インク吐出速度は、噴出ガス供給量とノズル開度を調節することにより、変化させた。
アノード触媒層32の第1領域33を形成する際の塗布条件としては、インク吐出速度を0.6ml/minとし、乾燥温度を55℃とした。第1領域33の厚みは63μmであった。第1領域33に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子(PtRu合金)の量は、4mg/cmであり、第1領域33におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.63g/cmであった。
アノード触媒層32の第3領域35を形成する際の塗布条件としては、インク吐出速度を0.4ml/minとし、乾燥温度を60℃とした。第3領域35の厚みは61μmであった。第3領域35に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、3mg/cmであり、第3領域35におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.49g/cmであった。
アノード触媒層32の第2領域34を形成する際の塗布条件としては、インク吐出速度を0.2ml/minとし、乾燥温度を65℃とした。第2領域34の厚みは60μmであった。第2領域34に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、2mg/cmであり、第2領域34におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.33g/cmであった。
ここで、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量とは、各領域の投影単位面積あたりの部分に含まれるアノード触媒の量のことをいい、各領域の投影単位面積とは、アノード触媒層の主面に対して法線方向から見たときの各領域の単位面積(cm)のことをいう。
カソード触媒層形成用インクを以下のようにして作製した。
上記カソード触媒担持体10gと、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン共重合体(H型)を含有する分散液(前出の商品名「Nafion(登録商標)5重量%溶液」)100gとを、適量の水とともに混合および攪拌した。この後、得られた混合物を脱泡して、カソード触媒層形成用インクを得た。
得られたカソード触媒層形成用インクを、電解質膜11のアノード触媒層32が形成された面とは反対側の面に吹き付けて、60mm×60mmのサイズのカソード触媒層13を得た。吹き付けは、アノード触媒層の場合と同様にして行った。カソード触媒層形成用インクを吹き付ける領域は、マスキングによって調整した。
なお、アノード触媒層32と、カソード触媒層13とは、それぞれの中心(触媒層の対角線の交点)が電解質膜11の厚さ方向に平行な1つの直線上に位置するように、配置した。
アノード多孔質基材15を以下のようにして作製した。
アノード撥水処理が施されたカーボンペーパー(商品名「TGP−H−090」、厚さ約300μm、東レ株式会社製)を、希釈されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディスパージョン(商品名「D−1」、ダイキン工業株式会社製)に1分間浸漬した。この後、前記カーボンペーパーを、100℃に温度設定された熱風乾燥機中で乾燥させた。次いで、乾燥後のカーボンペーパーを、電気炉中において、270℃で2時間焼成した。こうして、PTFEの含有量が10質量%であるアノード多孔質基材15を得た。
カソード多孔質基材19は、撥水処理が施されたカーボンペーパーに代えて、カーボンクロス(商品名「AvCarb(商標)1071HCB」、バラードマテリアルプロダクツ社製)を使用したこと以外は、アノード多孔質基材15と同様にして作製した。こうして、PTFEの含有量が10質量%であるカソード多孔質基材19を得た。
アノード撥水層14を、以下のようにして形成した。
まず、アセチレンブラックの粉末と、PTFEディスパージョン(前出の商品名「D−1」)とを混合および攪拌することにより、全固形分に占めるPTFEの含有量が10質量%であり、全固形分に占めるアセチレンブラックの含有量が90質量%である撥水層形成用インクを得た。得られた撥水層形成用インクを、エアーブラシを使用したスプレー法によって、アノード多孔質基材15の一方の表面に吹き付け、100℃に温度設定された恒温槽内で乾燥させた。次いで、撥水層形成用インクを塗布したアノード多孔質基材15を、電気炉中、270℃で2時間焼成して、界面活性剤を除去した。こうして、アノード多孔質基材15上にアノード撥水層14を形成した。
カソード多孔質基材19の一方の表面にも、上記と同様にして、カソード撥水層18を形成した。
アノード多孔質基材15とアノード撥水層14とからなるアノード拡散層16、およびカソード多孔質基材19とカソード撥水層18とからなるカソード拡散層20は、いずれも、抜き型を使用して、60mm×60mmの正方形に成形した。
次に、アノード拡散層16とCCMとカソード拡散層20とを、アノード撥水層14がアノード触媒層32に接し、カソード撥水層18がカソード触媒層13に接するように積層した。得られた積層体を、温度を125℃に設定した熱プレス装置に配置した。そして、前記積層体を5MPaの圧力で1分間加圧して、アノード触媒層とアノード拡散層を接合し、カソード触媒層とカソード拡散層とを接合した。こうして、アノード31と、電解質膜11と、カソード25とからなる膜電極接合体(MEA)を得た。
厚み0.25mmのエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)のシートを、120mm×120mmの正方形に切り出した。さらに、前記シートの中心部分を、62mm×62mmの正方形にくり抜いた。このようにして、2枚のガスケット26および27を得た。
ガスケット26を、中心部の開口部にアノード31が配置されるように配置した。同様に、ガスケット27を、中心部の開口部にカソード25が配置されるように配置した。
アノード側セパレータ17を、厚み2mmの黒鉛板の表面を切削して、メタノール水溶液を供給する燃料流路22を形成することにより作製した。同様に、カソード側セパレータ21を、厚み2mmの黒鉛板の表面を切削して、酸化剤を供給する酸化剤流路24を形成することによりを作製した。アノード側セパレータ17を、燃料流路22がアノード拡散層16に接するように、アノード拡散層16上に積層した。カソード側セパレータ21を、酸化剤流路24がカソード拡散層20に接するように、カソード拡散層20上に積層した。
なお、燃料流路22と酸化剤流路24の断面形状は、それぞれ、1mm×1mmとした。また、燃料流路22および酸化剤流路24は、それぞれアノード31表面上およびカソード25表面上を万遍なく蛇行するサーペンタイン型とした。
そして、アノード側セパレータ17およびカソード側セパレータ21に挟持されたMEAを、さらに、厚さ1cmのステンレス鋼板からなる一対の端板28で挟み込んだ。一方の端板28とセパレータ17との間および他方の端板28とセパレータ21との間には、それぞれ、各セパレータから外側に向かって順に、表面に金メッキが施された厚さ2mmの銅板からなる集電板と、絶縁板とを配置した。なお、以下の評価試験において、前記集電板を、電子負荷装置に接続した。一対の端板28を、ボルト、ナットおよびばねを用いて締結し、セパレータ17とMEAとセパレータ21とを加圧した。こうして、直接メタノール型燃料電池(DMFC)の単セルを得た。なお、図2においては、集電板と絶縁板の図示を省略している。このことは、図1においても同様である。
《実施例2》
本実施例では、アノード触媒層形成用インクに造孔剤を添加し、前記造孔剤の量を変化させることにより、アノード触媒層の各領域におけるアノード触媒粒子の充填密度を変化させた。本実施例において、造孔剤としては、炭酸リチウムを用いた。
具体的には、実施例1と同様に、アノード触媒層を、第1領域、第3領域および第2領域の3つの領域から構成した。各領域のサイズは、いずれも、20mm×60mmとした。
第1領域を形成するための第1インクは、実施例1で用いたアノード触媒層形成用インクに、前記インク80gあたり、2gの炭酸リチウムを混合および分散させることにより、調製した。
第3領域を形成するための第3インクは、実施例1で用いたアノード触媒層形成用インクに、前記インク80gあたり、5gの炭酸リチウムを混合および分散させることにより、調製した。
第2領域を形成するための第2インクは、実施例1で用いたアノード触媒層形成用インクに、前記インク80gあたり、10gの炭酸リチウムを混合および分散させることにより、調製した。
前記第1インク、第3インク、および第2インクを用いたこと以外、実施例1の第1領域の作製方法と同様にして、電解質膜の一方の表面上に、アノード触媒層を形成した。
次に、アノード触媒層のみが形成された電解質膜を、1M硫酸水溶液中に12時間浸漬して、炭酸リチウムを中和分解させた。その後、前記アノード触媒層のみが形成された電解質膜11を、6時間イオン交換水に浸漬した。このイオン交換水での洗浄を2回繰り返して、硫酸イオンを除去した。
このようにして、アノード触媒粒子の充填密度が異なる3つの領域からなるアノード触媒層を得た。
第1領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子(PtRu合金)の量は、5mg/cmであり、第1領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.65g/cmであった。第1領域の厚みは77μmであった。
第3領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、3mg/cmであり、第3領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.38g/cmであった。第3領域の厚みは79μmであった。
第2領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、1mg/cmであり、第2領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.13g/cmであった。第2領域の厚みは80μmであった。
このようなアノード触媒層を用いたこと以外、実施例1と同様にして、実施例2の燃料電池(DMFC)を作製した。
《実施例3》
本実施例では、担体に担持されるアノード触媒粒子の担持率を変化させることにより、アノード触媒粒子の充填密度を変化させた。前記担持率は、アノード触媒粒子(PtRu合金)と担体との合計質量に対するアノード触媒粒子の質量の割合として表している。
本実施例においても、実施例1と同様に、アノード触媒粒子としては、PtRu合金(原子比1:1)を用いた。担体としては、平均一次粒子径が30nmの導電性カーボン粒子を用いた。
また、アノード触媒層は、第1領域、第3領域、および第2領域の3つの領域から構成した。各領域のサイズは、それぞれ、20mm×60mmとした。
第1領域に含まれるアノード触媒担持体(第1触媒担持体)におけるアノード触媒粒子の担持率は、80%とした。前記第1触媒担持体を用いたこと以外、実施例1の第1領域の作製方法を同様にして、第1領域を作製した。
第1領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子(PtRu合金)の量は、4mg/cmであり、第1領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.63g/cmであった。第1領域の厚みは63μmであった。
第3領域に含まれるアノード触媒担持体(第3触媒担持体)におけるアノード触媒粒子の担持率は、60%とした。前記第3触媒担持体を用いたこと以外、実施例1の第1領域の作製方法を同様にして、第3領域を作製した。
第3領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、2mg/cmであり、第3領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.32g/cmであった。第3領域の厚みは65μmであった。
第2領域に含まれるアノード触媒担持体(第2触媒担持体)におけるアノード触媒粒子の担持率は、50%とした。前記第2触媒担持体を用いたこと以外、実施例1の第1領域の作製方法を同様にして、第2領域を作製した。
第2領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、1mg/cmであり、第2領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.17g/cmであった。第2領域の厚みは64μmであった。
このようなアノード触媒層を用いたこと以外、実施例1と同様にして、実施例3の燃料電池(DMFC)を作製した。
《実施例4》
本実施例では、アノード触媒担持体と非担持触媒粒子とを用いて、アノード触媒粒子の充填密度を変化させた。本実施例では、アノード触媒担持体としては、実施例3で用いた第2触媒担持体を用いた。非担持触媒粒子としては、PtRu合金(原子比1:1)の微粉末を用いた。
また、アノード触媒層は、第1領域、第3領域、および第2領域の3つの領域から構成した。各領域のサイズは、それぞれ、20mm×60mmとした。
第1領域に含まれるアノード触媒として、非担持触媒粒子のみを用いた。前記以外は、実施例1の第1領域と同様にして、第1領域を作製した。
第1領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子(PtRu合金)の量は、8mg/cmとであり、第1領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、1.21g/cmであった。第1領域の厚みは、65μmであった。
第3領域に含まれるアノード触媒として、第2触媒担持体および非担持触媒粒子の両方を用いた。第2触媒担持体と非担持触媒粒子との質量比は、50:50とした。前記以外は、実施例1の第1領域と同様にして、第3領域を作製した。
第3領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、4.5mg/cmであり、第3領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.69g/cmであった。第3領域の厚みは65μmであった。
第2領域に含まれるアノード触媒として、第2触媒担持体のみを用いた。前記以外、実施例1の第1領域と同様にして、第2領域を作製した。
第2領域に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、1mg/cmとであり、第2領域におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.17g/cmであった。第2領域の厚さは、64μmであった。
このようなアノード触媒層を用いたこと以外、実施例1と同様にして、実施例4の燃料電池(DMFC)を作製した。
《比較例1》
本比較例では、図1に示されるような従来構造の燃料電池を作製した。つまり、アノード触媒粒子の充填密度を、アノード触媒層全体にわたって同じとした。
アノード触媒層12は、60mm×60mmの正方形とした。アノード触媒層12に含まれるアノード触媒としては、実施例1で用いたアノード触媒担持体を用いた。前記以外は、実施例1の第3領域と同様にして、アノード触媒層12を作製した。
得られたアノード触媒層に含まれる、単位面積あたりのアノード触媒粒子(PtRu合金)の量は、3mg/cmであり、アノード触媒層におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.49g/cmであった。アノード触媒層の厚みは61μmであった。
このようなアノード触媒層を用いたこと以外、実施例1と同様にして、比較例1の燃料電池を作製した。
《比較例2》
本比較例においても、アノード触媒粒子の充填密度を、アノード触媒層全体にわたって同じとした。
アノード触媒として、実施例4で用いた非担持触媒粒子を用い、実施例1の第1領域の作製方法と同様にして、アノード触媒層を作製した。
得られたアノード触媒層において、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、8mg/cmであり、アノード触媒粒子の充填密度は、1.21g/cmであった。アノード触媒層の厚みは65μmであった。
このようなアノード触媒層を用いたこと以外、実施例1と同様にして、比較例2の燃料電池(DMFC)を作製した。
《比較例3》
本比較例においても、アノード触媒粒子の充填密度を、アノード触媒層全体にわたって同じとした。
アノード触媒として、実施例3で用いた第2触媒担持体(アノード触媒粒子の担持率:50%)を用い、実施例1の第2領域と同様にして、アノード触媒層を作製した。
得られたアノード触媒層において、単位面積あたりのアノード触媒粒子の量は、1mg/cmであり、得られたアノード触媒層におけるアノード触媒粒子の充填密度は、0.17g/cmであった。アノード触媒層の厚みは、64μmであった。
[評価試験]
実施例1の燃料電池および比較例1〜2の燃料電池について、発電中のメタノールクロスオーバー量と発電性能の評価を行い、得られた結果から燃料の利用効率を計算した。
燃料電池の発電条件は以下の通りである。4mol/Lのメタノール水溶液を燃料として用いた。前記燃料を、0.3cm/minの流量でチューブ式ポンプを用いてアノードに供給した。無加湿の空気を、マスフローコントローラーによって、300cm/minの流量に制御しながらカソードに供給した。電熱線ヒータと温度コントローラを用いて、セルの温度を60℃となるように制御した。この後、燃料電池を、電子負荷装置「PLZ164WA」(菊水電子工業株式会社製)に接続し、一定の電流密度(200mA/cm)になるように制御しながら、連続発電を行った。
アノードから排出される、発電に使用されなかったメタノールを含むメタノール水溶液と二酸化炭素からなる気液混合流体を、純水を満たした気体捕集容器に流入させた。こうして、気体と液体のメタノールを、1時間にわたって捕集した。このとき、前記気体捕集容器は、氷水浴で冷却しておいた。
その後、気体捕集容器中のメタノール量をガスクロマトグラフ法によって測定し、アノードの物質収支を計算することで、メタノールクロスオーバー量(MCO量)を求めた。すなわち、アノードに供給したメタノール量から、排出され捕集されたメタノール量と発電電流量から求められるアノードでのメタノール消費量を差し引いて、MCO量を求めた。MCO量としては、MCO量に相当する量のメタノールが酸化された場合に発生し得る電流値を使用した。燃料利用率は下記の計算式(A)によって求めた。
燃料利用率=(発電電流)/(発電電流+MCO量の電流換算値) (A)
以上の結果を表1に示す。なお、表1には、アノード触媒層に含まれる触媒(PtRu合金)の合計量も示す。
Figure 2011036834
表1より明らかなように、実施例1および実施例2の燃料電池は、同じアノード触媒粒子(PtRu)を使用しながらも、比較例1の燃料電池に比べて、高い燃料利用率を得ることができ、しかも高い発電電圧を得ることができた。この結果は、実施例1および実施例2の燃料電池において、MCO量が小さくなったためであると考えられる。
実施例1〜3の燃料電池の結果を比較すると、実施例3の燃料電池は、実施例1の燃料電池と比較して、アノード触媒粒子の使用量が22%程度少ないが、その発電電圧および燃料利用率は、実施例1の燃料電池の発電電圧および燃料利用率と同等またはそれ以上である。
よって、実施例3の燃料電池のように、アノード触媒層の各領域に含まれるアノード触媒担持体におけるアノード触媒粒子の担持率を変化させることにより、発電電圧および燃料利用率に優れた燃料電池を、低コストで製造することができる。
実施例4の燃料電池では、アノード触媒粒子の使用量が増加しているものの、実施例1の燃料電池と比較して、発電電圧と燃料利用率のさらなる向上が見られた。
比較例3の燃料電池と、実施例4の燃料電池とを比較すると、比較例3の燃料電池と実施例4の燃料電池とで、明らかに発電性能と燃料利用率に差が見られる。実施例4の燃料電池において、アノード触媒層の第1領域に非担持触媒を含ませ、アノード触媒粒子の充填密度を向上させたことによる効果が顕著に現れている。
比較例2の燃料電池においては、実施例4の燃料電池と同等の燃料利用率が得られているものの、発電電圧は実施例1〜4の燃料電池に比べて低くなっている。このような結果が得られたのは、実施例1〜4の燃料電池では、アノード触媒層の燃料流路の上流側から下流側に向かってアノード触媒粒子の充填密度を低下させることで、アノード触媒層全体における燃料の拡散性が最適化され、よって、濃度過電圧が低減したためであると考えられる。
以上のように、上記アノード触媒層を含む燃料電池は、従来の燃料電池に比べて、高い発電性能と燃料利用率を得ることができ、ひいては高いエネルギー変換効率を得ることができる。
上記直接酸化型燃料電池は、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)などの携帯用小型電子機器における電源として有用である。また、上記直接酸化型燃料電池は、電動スクータ用電源などの用途にも応用することができる。
10 燃料電池
11 電解質膜
12、32 アノード触媒層
13 カソード触媒層
14 アノード撥水層
15 アノード多孔質基材
16 アノード拡散層
17 アノード側セパレータ
18 カソード撥水層
19 カソード多孔質基材
20 カソード拡散層
21 カソード側セパレータ
22 燃料流路
23、31 アノード
24 酸化剤流路
25 カソード
26、27 ガスケット
28 端板
33 第1領域
34 第2領域
35 第3領域
36 燃料入口
37 燃料出口
70 スプレー式塗布装置
71 タンク
72 インク
73 スプレーガン
74 撹拌機
75 開閉バルブ
76 ガス圧力調整器
77 ガス流量調整器
78 アクチュエータ
79、80 マスキング
81 ヒータ

Claims (17)

  1. アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された電解質膜とを含む膜−電極接合体、前記アノードに接するアノード側セパレータ、および前記カソードに接するカソード側セパレータを備える少なくとも1つの単位セルを有し、
    前記アノード側セパレータは、前記アノードに燃料を供給するための燃料流路を有し、
    前記カソード側セパレータは、前記カソードに酸化剤を供給するための酸化剤流路を有し、
    前記アノードは、前記電解質膜に接するアノード触媒層、および前記アノード側セパレータに接するアノード拡散層を含み、
    前記アノード触媒層は、アノード触媒粒子と高分子電解質を含んでおり、
    前記アノード触媒粒子の充填密度が、前記アノード触媒層の前記燃料流路の下流側よりも上流側で大きい、直接酸化型燃料電池。
  2. 前記アノード触媒粒子の充填密度が、前記燃料流路の上流側から下流側に向かって段階的に減少している請求項1に記載の直接酸化型燃料電池。
  3. 前記アノード触媒粒子の充填密度が、前記燃料流路の上流側から下流側に向かって連続的に減少している請求項1に記載の直接酸化型燃料電池。
  4. 前記アノード触媒層の前記燃料流路の上流側に対向する部分に、前記アノード触媒粒子の充填密度が0.5〜2g/cmである高充填密度領域を備える請求項1に記載の直接酸化型燃料電池。
  5. 前記アノード触媒層の、前記燃料流路の上流側の前記燃料流路の全長の1/6〜1/3の長さの部分に対向している領域に、前記高充填密度領域を備える請求項4に記載の直接酸化型燃料電池。
  6. 前記アノード触媒層の前記燃料流路の下流側に対向する部分に、前記アノード触媒粒子の充填密度が0.1〜1g/cmである低充填密度領域を備える請求項1に記載の直接酸化型燃料電池。
  7. 前記アノード触媒層は、導電性炭素材料と前記導電性炭素粒子に担持された前記アノード触媒粒子とを含む触媒担持体、および前記導電性炭素材料に担持されていない前記アノード触媒粒子の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の直接酸化型燃料電池。
  8. 前記アノード触媒層は、前記触媒担持体を含み、
    前記触媒担持体における前記アノード触媒粒子の担持率が、前記燃料流路の下流側よりも上流側で高い、請求項7に記載の直接酸化型燃料電池。
  9. 前記アノード触媒層の燃料流路の上流側に対向する部分における前記触媒担持体における前記アノード触媒粒子の担持率が、60〜99%であり、前記アノード触媒層の燃料流路の下流側に対向する部分における前記触媒担持体における前記アノード触媒粒子の担持率が、20〜80%である、請求項8記載の直接酸化型燃料電池。
  10. 前記触媒担持体と前記導電性炭素材料に担持されていないアノード触媒粒子との合計に占める前記導電性炭素材料に担持されていないアノード触媒粒子の質量比率が、前記燃料流路の下流側よりも上流側で大きい、請求項7に記載の直接酸化型燃料電池。
  11. 前記アノード触媒層の前記燃料流路の上流側に対向する部分における前記触媒担持体と前記導電性炭素材料に担持されていないアノード触媒粒子との合計に占める前記導電性炭素材料に担持されていないアノード触媒粒子の質量比率が、5〜99質量%であり、
    前記アノード触媒層の前記燃料流路の下流側に対向する部分における前記触媒担持体と前記導電性炭素材料に担持されていないアノード触媒粒子との合計に占める前記導電性炭素材料に担持されていないアノード触媒粒子の質量比率が、1〜90質量%である、請求項10に記載の直接酸化型燃料電池。
  12. 前記アノード触媒層に含まれる前記導電性炭素粒子の量が、前記アノード触媒層全体にわたって均一である、請求項7に記載の直接酸化型燃料電池。
  13. 前記導電性炭素粒子の平均粒径が、5〜50nmである、請求項7に記載の直接酸化型燃料電池。
  14. 前記アノード触媒粒子が、白金単体および白金合金よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の直接酸化型燃料電池。
  15. 前記アノード触媒粒子の平均粒径が、1〜20nmである、請求項1に記載の直接酸化型燃料電池。
  16. 前記アノード触媒層の厚さが、前記アノード触媒層全体にわたって、均一である、請求項1に記載の直接酸化型燃料電池。
  17. 前記アノード触媒層の厚さが、20〜100μmである、請求項16に記載の直接酸化型燃料電池。
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