JP4043451B2 - 燃料電池用拡散層およびそれを用いた燃料電池 - Google Patents

燃料電池用拡散層およびそれを用いた燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、燃料電池の拡散層に関し、特に、ダイレクトメタノール燃料電池の拡散層において、反応流体が正規の流路を通らない現象、所謂、ショートカット現象を抑制する拡散層に関する。
燃料電池は水素と酸素とから電気エネルギを発生させる装置であり、高い発電効率を得ることができる。燃料電池の主な特徴はとしては、従来の発電方式のように熱エネルギや運動エネルギの過程を経ない直接発電であるので、小規模でも高い発電効率が期待できる、窒素化合物等の排出が少なく、騒音や振動も小さいので環境性が良いなどが挙げられる。このように、燃料電池は燃料のもつ化学エネルギを有効に利用でき、環境にやさしい特性をもっているので、21世紀を担うエネルギ供給システムとして期待され、宇宙用から自動車用、携帯機器用まで、大規模発電から小規模発電まで、種々の用途に使用できる将来有望な新しい発電システムとして注目され、実用化に向けて技術開発が本格化している。
中でも、固体高分子形燃料電池は、他の種類の燃料電池に比べて、作動温度が低く、高い出力密度を持つ特徴が有り、特に近年、固体高分子形燃料電池の一形態として、ダイレクトメタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)が注目を集めている。DMFCは、燃料であるメタノール水溶液を改質することなく直接アノードへ供給し、メタノール水溶液と酸素との電気化学反応により電力を得るものであり、この電気化学反応によりアノードからは二酸化炭素が、カソードからは生成水が、反応生成物として排出される。メタノール水溶液は水素に比べ、単位体積当たりのエネルギーが高く、また、貯蔵に適しており、爆発などの危険性も低いため、自動車や携帯機器などの電源への利用が期待されている。
この固体高分子形燃料電池が高い出力密度を得るためには、燃料電池内の拡散層が高い反応ガス透過性と水排出透過性、電子伝導性を維持することが必要であり、例えば特許文献1には、拡散層をガス流路が形成されたセパレータで締め付けることによって、拡散層の炭素繊維が密になる部分と疎になる部分とが形成されるように構成し、拡散層が集電部、ガス透過部及び水・水蒸気透過部に分かれるように構成することが記載されている。
従来のダイレクトメタノール燃料電池でも、メタノール水溶液や空気の拡散性を向上させるために、特許文献1のような構成の拡散層を用いることや、拡散層の気孔率を大きくするなど対策をとっていた。しかし、近年、ダイレクトメタノール燃料電池の小型化に伴うセパレータの薄型化により、流路断面積が小さく、流路にかかる圧力が大きくなったことなどを要因として、メタノール水溶液や空気が正規の流路を通らず、隣り合う流路に拡散層を介して平面方向へ拡散して流通してしまう、所謂、ショートカットと呼ばれる現象が起きていることが明らかになった。
特開2003−142110号公報
このショートカット現象が起こると、正規の流路を通るメタノール水溶液或いは空気が減少し、セルの中でメタノール水溶液或いは空気が供給されず、発電反応に寄与しない領域ができてしまい、メタノール水溶液や空気の利用率が低下し、更には、供給用ポンプの消費電力増加、或いは、燃料電池の出力低下を招いてしまうという問題があった。
本発明では上記の問題を解決するために、メタノール水溶液または空気などの反応流体のショートカットの抑制が可能な拡散層及びそれを用いた燃料電池を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1記載の燃料電池用拡散層は、電解質層の一方の面にアノード、他方の面にカソードが配され、前記アノードと前記カソードのそれぞれに反応流体を供給する反応流体流路が形成されたセパレータが積層された燃料電池に用いる拡散層において、
前記拡散層は、前記セパレータの前記反応流体流路と接触する第1の領域と、前記セパレータに形成され前記反応流体流路に挟まれるリブ部と接触する第2の領域と、を備え、
前記第2の領域に導電性炭素材料と撥水性材料との混合物を充填していることを特徴とする。
本発明の請求項1によれば、燃料電池用拡散層は、電解質層の一方の面にアノード、他方の面にカソードが配され、アノードとカソードのそれぞれに反応流体を供給する反応流体流路が形成されたセパレータが積層された燃料電池に用いる拡散層において、拡散層は、セパレータの反応流体流路と接触する第1の領域と、セパレータに形成され反応流体流路に挟まれるリブ部と接触する第2の領域と、を備え、反応流体流路から第1の領域に流入した反応流体は、第2の領域の導電性炭素材料と撥水性材料との混合物の充填領域に阻まれて平面方向へ拡散することなく、触媒層まで到達することができる。そして、所謂ショートカット現象が生じないので、反応流体は、正規の流路を通って均一に発電反応に寄与し、反応流体の利用率を向上させることができる。また、導電性炭素材料と撥水性材料の混合物であるので、導電性に加え、撥水性も有するので、ショートカットを更に抑制することが可能となる。
本発明の請求項2記載の燃料電池用拡散層は、請求項1記載の燃料電池用拡散層において、前記撥水性材料はPTFEであることを特徴とする。
そして、本発明の請求項3記載の燃料電池用拡散層は、請求項1または2記載の燃料電池用拡散層において、燃料電池のアノードに供給する反応流体は、液体であることを特徴とする。
本発明の請求項3によれば、燃料電池用拡散層は、請求項1または2記載の燃料電池用拡散層において、燃料電池のアノードに供給する反応流体は、液体であるので、気体よりも充填の影響を受け、ショートカットを更に抑制することが可能となる。
また、本発明の請求項4記載の燃料電池は、電解質層の一方の面にアノード、他方の面にカソードが配され、アノードとカソードのそれぞれに反応流体を供給する反応流体流路が形成されたセパレータが積層された燃料電池において、アノード及びカソードを構成する拡散層は、セパレータの反応流体流路と接触する第1の領域と、セパレータに形成され反応流体流路に挟まれるリブ部と接触する第2の領域と、を備え、前記第2の領域に導電性炭素材料と撥水性材料との混合物を充填していることを特徴とする。
本発明の請求項4によれば、燃料電池は、電解質層の一方の面にアノード、他方の面にカソードが配され、アノードとカソードのそれぞれに反応流体を供給する反応流体流路が形成されたセパレータが積層された燃料電池において、アノード及びカソードを構成する拡散層は、セパレータの反応流体流路と接触する第1の領域と、セパレータに形成され反応流体流路に挟まれるリブ部と接触する第2の領域と、を備え、反応流体流路から第1の領域に流入したアノード側の反応流体は、第2の領域の導電性炭素材料と撥水性材料の混合物の充填領域に阻まれて平面方向へ拡散することなく、触媒層まで到達することができる。そして、ショートカット現象が生じないので、反応流体は、正規の流路を通って均一に発電反応に寄与し、反応流体の利用率を向上させることができ、ひいては、供給用ポンプの消費電力の減少、燃料電池の出力向上を図ることが可能となる。また、導電性炭素材料と撥水性材料の混合物であるので、導電性に加え、撥水性も有するので、ショートカットを更に抑制することが可能となる。
本発明の請求項5記載の燃料電池は、請求項4記載の燃料電池において、前記撥水性材料はPTFEであることを特徴とする。
そして、本発明の請求項記載の燃料電池は、請求項4または5記載の燃料電池において、燃料電池のアノードに供給する反応流体は、液体であることを特徴とする。
本発明の請求項によれば、燃料電池は、請求項4または5記載の燃料電池において、燃料電池のアノードに供給する反応流体は、液体であるので、気体よりも充填の影響を受け、ショートカットを更に抑制することが可能となる。
本発明の燃料電池用拡散層によれば、反応流体の流路間のショートカットを抑制し、反応流体の利用率を向上させること、更には、セパレータとの導電性を向上させることが可能となる。
また、本発明の燃料電池よれば、反応流体の流路間のショートカットを抑制し、反応流体の利用率を向上、更には、セパレータとの導電性を向上を図れる燃料電池用拡散層を用いることにより、供給用ポンプの消費電力の減少、燃料電池の出力向上を図ることが可能となる。
ダイレクトメタノール燃料電池は、一般的に図1に示すような構造を有し、固体高分子膜10を挟んで、アノード側ではアノードセパレータ12、アノード拡散層14を介してメタノール水溶液をアノード触媒層16へ供給するとともに、カソード側ではカソードセパレータ18、カソード拡散層20を介して空気をカソード触媒層22へ供給することにより発電を行う。このとき、アノード側では式1に示すようなメタノール酸化反応が起こる。
Figure 0004043451
一方、カソード側では、式1の右辺に示した6つのプロトンが固体高分子膜10を通ってカソード側へ移動し、式2に示すような酸素の還元反応が起こり、両極間から電気が取り出せる仕組みとなっている。
Figure 0004043451
アノードセパレータ12にはメタノール水溶液を通す流路12aが刻まれており、メタノール水溶液はこの流路12aを通り、アノード拡散層14を浸透してアノード触媒層16へ供給される。メタノール水溶液はアノード触媒層16までアノード拡散層14を浸透していく間に均一に拡散し、アノード触媒層16ではメタノール酸化反応が均一に起こる構造をとる必要がある。
同様に、カソードセパレータ18には空気を通す流路18aが刻まれており、空気はこの流路18aを通り、カソード拡散層20を流通してカソード触媒層22へ供給される。空気もまたカソード触媒層22までカソード拡散層20を流通していく間に均一に拡散し、カソード触媒層22では酸素還元反応が均一に起こる構造をとる必要がある。
<アノード拡散層の作製方法>
導電性材料であるカーボンブラック(バルカンXC−72R、キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク社製)24をミキサで粉砕した後、分散用溶媒(テルピネオール純度85%、キシダ化学製)及び界面活性剤(トリトンX−100、キシダ化学製)を混合した。この混合比は重量比でカーボンブラック:分散用溶媒:界面活性剤=11:87:2とした。カーボンブラック、分散用溶媒及び界面活性剤をミキサで混合した後、撥水性材料であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)26の分散液(PTFE30−J、濃度60%分散溶液、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)と重量比で上記混合物:PTFE=20:80の割合で混合することにより、図2に示すようなスラリー状の導電性材料混合物28を作製した。
この導電性材料混合物28をアノードセパレータ12のリブ部12bのみにブレードナイフにて塗布し、これをカーボンペーパ(厚み200μm、東レ社製)30にプレスして転写した。このように導電性材料混合物28を転写したカーボンペーパ30を360℃で焼成し、図3に示すようなアノード拡散層14を作製した。このとき、アノード拡散層14のリブ接触部分のみに導電性材料混合物28が塗布されているが、アノード触媒層16に近い側までは浸透していない状態である。導電性材料混合物28の塗布量は約0.5mg/cm2とした。
<カソード拡散層の作製方法>
四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)の分散液(FEP120−J、濃度55%分散溶液、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)を比重1.14となるように水で希釈し、この希釈した溶液にカーボンペーパ(厚み200μm、東レ社製)30を含浸させた後、380℃で乾燥炉を用いて熱処理を行うことにより、カーボンペーパ30の重量に対して5wt%のFEPを含有する撥水性のカソード拡散層20を作製した。
<触媒層/膜の接合体の作製方法>
アノード用触媒であるPt/Ruブラックとイオン交換体であるNafion5wt%溶液(SE−5142、デュポン社製)とをミキサにて混合し、アノード触媒スラリーを作製した。このとき、Pt/RuブラックとNafionの5wt%溶液との混合比は、Pt/Ruブラックの重量とNafion5wt%溶液中に存在するNafionの重量とが9:1の割合となるようにした。カソード触媒スラリーも、触媒をカソード用触媒としてPtブラックを使用した以外はアノード触媒スラリーと同様の方法、混合比で作製した。
固体高分子膜(Nafion115、デュポン社製)10の一方の面にアノード触媒スラリーを、固体高分子膜10に対向して他方の面にカソード触媒スラリーを4mg/cm2スプレー塗布した後、80℃で乾燥炉にて乾燥させ、アノード触媒層16およびカソード触媒層22を形成した。このように各触媒層16、22を形成した固体高分子膜10を、プリプレス用カーボンペーパ(厚み200μm、東レ社製)で挟み、プレス温度150℃、90秒、50kgf/cm2にてホットプレスし、触媒層/膜の接合体(Catalyst Coated Membrane:CCM)32を作製した。
<セルの組立方法>
CCM32のアノード触媒層16側に上記アノード拡散層の作製方法にて作製したアノード拡散層14を、一方、カソード触媒層22側には上記カソード拡散層の作製方法にて作製したカソード拡散層20を用いてCCM32を挟持し、さらにアノード側にアノードセパレータ12、カソード側にカソードセパレータ18を配置し、実施例1の単セル34を組み立てた。
<アノード拡散層の作製方法>
撥水性材料であるPTFE26の分散液(PTFE30−J、濃度60%分散溶液、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)をアノードセパレータ12のリブ部12bのみにブレードナイフにて塗布し、これをカーボンペーパ(厚み200μm、東レ社製)30にプレスして転写した。このように撥水性材料を転写したカーボンペーパ30を360℃で焼成し、図4に示すようなアノード拡散層14を作製した。このとき、アノード拡散層14のリブ接触部分のみにPTFEが塗布されているが、アノード触媒層16に近い側までは浸透していない状態である。PTFE塗布量は、約0.2mg/cm2とした。
<セルの組立方法>
アノード拡散層14の作製方法を変えた以外は、実施例1のCCM32の作製方法およびセルの組立方法と同様の方法、材料にて、実施例2の単セル34を組み立てた。
<カソード拡散層の作製方法>
実施例1のカソード拡散層20の作製方法と同様に、カーボンペーパ30の重量に対して5wt%のFEPを含有する撥水性カーボンペーパ36を作製した。また、導電性材料混合物28をカソードセパレータ18のリブ部18bのみにブレードナイフにて塗布し、これを撥水性カーボンペーパ36にプレスして転写した。このように導電性材料混合物28を転写した撥水性カーボンペーパ36を360℃で焼成し、図5に示すようなカソード拡散層20を作製した。このとき、カソード拡散層20のリブ接触部分のみに導電性材料混合物28が塗布されているが、カソード触媒層22に近い側までは浸透していない状態である。導電性材料混合物28の塗布量は約0.5mg/cm2とした。
<セルの組立方法>
アノード拡散層14を実施例2のアノード拡散層14と同様のものを用い、カソード拡散層20は上記の作製方法で作製した以外は、実施例1のCCM32の作製方法およびセルの組立方法と同様の方法、材料にて、実施例3の単セル34を組み立てた。
比較例1
アノード拡散層14として未処理のカーボンペーパ(厚み200μm、東レ社製)30を用いた以外は、実施例1のCCM32の作製方法およびセルの組立方法と同様の方法、材料にて、比較例1の単セル32を組み立てた。
比較例2
撥水性材料であるPTFE26の分散液(PTFE30−J、濃度60%分散溶液、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)をアノードセパレータ12の流路部12aのみに充填し、これをカーボンペーパ(厚み200μm、東レ社製)30にプレスして転写した。このように撥水性材料を転写したカーボンペーパ30を360℃で焼成し、アノード拡散層14を作製した。このようにして得られたアノード拡散層14を用いた以外は、実施例1のCCM32の作製方法およびセルの組立方法と同様の方法、材料にて、比較例2の単セル34を組み立てた。
以上のように作製した各単セル34の材料構成を表1にまとめる。
Figure 0004043451
<性能試験>
以上のように作製した実施例1、2、3、比較例1及び2の各単セル34のアノードに水素250ml/min(内部加湿水0.5ml/min)、カソードに空気500ml/minを供給し、各単セル34を温度60℃にて電流値20Aの負荷を印加した後、室温で一晩放置することにより、各単セル34のエージング処理(熟成)を行った。このエージング処理の後、以下の条件にて運転し、電流値の変化に対する電圧変化を測定し、出力密度を算出した。
燃料流量:5ml/min
空気流量:300ml/min
メタノール濃度:1M
セル温度:60℃
<可視化試験>
図6に示すように、透明アクリル材で作製した流路を形成したゴムシール付きプレート38と流路を形成していないアクリルプレート40とで実施例1、2、比較例1及び2の各アノード拡散層14を挟み、締め付け圧20kgf/cm2で密閉することにより、可視化セル42を作製した。この各可視化セル42に室温にて1Mのメタノール水溶液を5ml/min流し、メタノール水溶液の流動状態を観察した。
また、メタノール水溶液供給途中に気泡を注入し、その気泡の排出状態や動きを観察することにより、ショートカット現象(メタノール水溶液或いは気泡が正常な流路を通らず、流路以外の通りやすい道筋を作って流れる現象)の有無や拡散性の状態を判断した。
上記の性能試験及び可視化試験の結果を表2に示す。
Figure 0004043451
可視化試験より、実施例1及び2のようにアノード拡散層14のリブ接触部のみに導電性材料混合物28や撥水性材料26を塗布することにより、メタノール水溶液がアノード拡散層14のリブ接触部を浸透しにくくなるため、メタノール水溶液や気泡のショートカット現象を抑制し、流路をスムーズに流れることが確認された。一方、このような処理を行わなかった比較例1やアノード拡散層14の流路部分に撥水性を付与した比較例2では、気泡の停止や、ショートカットの現象が確認された。性能試験からも明らかなように、実施例1、2及び3では、ショートカット現象を抑制することができるため、燃料の利用率が向上し、出力密度が比較例1及び2と比較して大幅に向上したものと考えられる。
また、実施例3では、カソード拡散層20にもリブ接触部のみに導電性材料混合物28を塗布したことにより、出力密度は増加した。これは、カソード拡散層20にも導電性材料混合物28を塗布することにより、カソード拡散層20のおけるショートカット現象を抑制することができ、空気が正規の流路を流通することによって、カソード触媒層22全体に均一に空気が供給されることで空気の利用率が向上し、出力密度が実施例2と比較して更に向上したものと考えられる。
本実施例では、導電性の多孔質支持体として、カーボンペーパを採用したが、その他、不織布状のカーボンファイバ、織布状のカーボンクロス、さらには白金メッシュ、金を被覆した銅メッシュなど導電性の多孔質材料であればカーボンペーパに限定する必要はない。また、導電性材料として、バルカンXC72を採用したが、その他のカーボンブラック類や気相成長炭素繊維などを使用することができ、耐薬品性導電性粒子混合物、スラリ、ペースト状物質などでもよい。
また、本実施例では、多孔質支持体に充填する導電性粉体に混入する撥水性材料として、ポリテトラフルオロエチレンを採用したが、その他に、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリフッ化ビニル、パーフルオロアルコキシ、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素樹脂を用いることができる。
また、本実施例では燃料の一例としてメタノール水溶液を用いたが、濃度の異なるメタノール水溶液や、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルエーテル、トリメトキシメタン、エチレングリコール、ギ酸など他の有機燃料を使用することができる。また、これらの有機燃料を混合した有機燃料についても有効である。また、水素、炭酸ガスや窒素、一酸化炭素などの不純物を含む改質水素でもよい。
セパレータ材料はカーボン材料だけでなく耐腐食性の導電性材料であればよい。
本実施例の燃料極の触媒金属には、Pt−Ru二元系合金を採用したが、その他の触媒金属としては、Pt−Mo、Pt−Ir、Pt-Sn、Pt−W、Pt−Ti、Pt−Rhなどのニ元系合金や、それらの元素を組み合わせた三元系以上の多元系合金を使用することができる。また、触媒担持カーボンも使用可能である。
固体高分子膜も、Nafionだけでなく炭化水素系膜や、プロトン伝導体と多孔質基材あるいは補強剤ポリマーからなるコンポジット膜などプロトン伝導性電解質であればよい。触媒層中に含まれるイオン交換体も本実施例ではNafionを用いたが、用いる固体高分子膜に応じたプロトン伝導性物質であればよい。CCM作製方法も、膜上へのスプレー塗布だけでなく、膜上或いは拡散層へのスプレー塗布、スクリーン印刷、転写法(デカル法)、スパッタ、バーコータなど限定はしない。
本発明により燃料、空気の流路間のショートカットによるロスを抑制することで、燃料、空気の供給ロスが低減されることで補機サイズや消費電力を低減し、システム全体の体積エネルギー密度の向上、コストの低減が可能である。さらに、セパレータでの流速が維持できるためガスや水の排出性が向上する効果もある。また、セパレータのリブ接触部が拡散層の粗面と接触・或いは導電性混合物塗布部と接触するため、集電性が向上し、接触抵抗が低減され、抵抗発熱の低減にも効果がある。
本発明は、セパレータ流路デザインと合わせた拡散層構成にすることができ、流路を流れる反応物質の拡散性向上を目的とした燃料電池であれば、いずれも適用可能である。
本発明のガス拡散層を備えた燃料電池単セルの断面図である。 実施例1、3に塗布する導電性材料混合物の模式図である。 実施例1におけるアノード拡散層とアノードセパレータとの接触部分を拡大した断面図である。 実施例2におけるアノード拡散層とアノードセパレータとの接触部分を拡大した断面図である。 実施例3におけるアノード拡散層とアノードセパレータとの接触部分を拡大した断面図である。 可視化試験装置の模式図である。
符号の説明
10 固体高分子膜
12 アノードセパレータ
14 アノード拡散層
16 アノード触媒層
18 カソードセパレータ
20 カソード拡散層
22 カソード触媒層
24 導電性材料
26 撥水性材料
28 導電性材料混合物
30 カーボンペーパ
32 触媒層/膜の接合体(CCM)
34 単セル
36 撥水性カーボンペーパ
38 ゴムシール付きプレート
40 アクリルプレート
42 可視化セル


Claims (6)

  1. 電解質層の一方の面にアノード、他方の面にカソードが配され、前記アノードと前記カソードのそれぞれに反応流体を供給する反応流体流路が形成されたセパレータが積層された燃料電池に用いる拡散層において、
    前記拡散層は、前記セパレータの前記反応流体流路と接触する第1の領域と、前記セパレータに形成され前記反応流体流路に挟まれるリブ部と接触する第2の領域と、を備え、
    前記第2の領域に導電性炭素材料と撥水性材料との混合物を充填していることを特徴とする燃料電池用拡散層。
  2. 前記撥水性材料はPTFEであることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用拡散層。
  3. 前記燃料電池のアノードに供給する反応流体は、液体であることを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池用拡散層。
  4. 電解質層の一方の面にアノード、他方の面にカソードが配され、前記アノードと前記カソードのそれぞれに反応流体を供給する反応流体流路が形成されたセパレータが積層された燃料電池において、
    前記アノード及びカソードを構成する拡散層は、前記セパレータの前記反応流体流路と接触する第1の領域と、前記セパレータに形成され前記反応流体流路に挟まれるリブ部と接触する第2の領域と、を備え、
    前記第2の領域に導電性炭素材料と撥水性材料との混合物を充填していることを特徴とする燃料電池。
  5. 前記撥水性材料はPTFEであることを特徴とする請求項4記載の燃料電池。
  6. 前記燃料電池のアノードに供給する反応流体は、液体であることを特徴とする請求項4または5記載の燃料電池。
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