本発明はフィルタ回路に関し、特に、電界効果トランジスタで構成される電流モードフィルタ回路と、これを信号処理経路に設ける光ディスク装置に関する。
フィルタ回路は、様々な信号処理システムを構成する必須ファンクションブロックであり、特に、アナログフィルタ回路はアナログ・デジタル混載LSIにおいて、アナログ―デジタル変換前の信号波形の整形やエイリアス防止のための高周波ノイズ除去という重要な役割を担っている。特に、数十MHzから数百MHzの信号帯域においては、トランスコンダクタンス回路(以下、Gm回路という)と容量素子とにより構成されるGm−Cフィルタを採用することが一般的であった。
しかしながら、Gm−Cフィルタは、非特許文献1や非特許文献2に記載されている通り、
1.フィルタを構成するGm回路が持つ寄生極がフィルタの極に近接するため、特に高周波領域での正確な周波数特性の実現が難しい。
2.近年の微細化された低電圧動作のデジタルCMOSプロセスでは、電圧モードで動作するGm−Cフィルタにおいて広いダイナミックレンジや線形性を確保することが難しいといった課題があった。
これらの問題を解決するために、非特許文献1や非特許文献2では、電流モードで動作するフィルタ回路の提案がされている。非特許文献1では、同文献中のFig2(a)に示されているように、出力電流をフィードバックする方法で実現しているが、非特許文献2では、同文献中の図8に示されているように、ゲート接地ミラー回路に容量素子を付加することによりフィルタ回路を実現しており、非特許文献1と比較してより少ない素子数で回路を実現している。ここでは、本発明の構成に近い非特許文献2に記載されているフィルタ回路について、詳細に説明する。図15に非特許文献2に記載の電流モードフィルタの構成を示す。図15の電流モードフィルタにおいて、NチャネルトランジスタM200、M203は、電流ミラー対を構成し、各々、電流源からのバイアス電流Ib0で駆動されている。また、ゲートが定電圧Vb0で固定されたゲート接地回路として機能し且つバイアス電流Ic0で駆動されるPチャネルトランジスタM201のソースがNチャネルトランジスタM200のドレインに接続され、PチャネルトランジスタM201のドレインがNチャネルトランジスタM200のゲートに接続されることにより、NチャネルトランジスタM200とPチャネルトランジスタM201とは負帰還ループを構成している。更に、NチャネルトランジスタM200のドレインとゲートには、容量素子Ci、Cgが各々接続されている。このとき、NチャネルトランジスタM200、M203及びPチャネルトランジスタM201は飽和領域で動作しているとすると、そのトランスコンダクタンス(以下、gmという)は、次式で近似できる。
ここで、gmnはNチャネルトランジスタM200、M203のgmを、gmpはPチャネルトランジスタM201のgmを表し、βnはNチャネルトランジスタのトランスコンダクタンス・パラメータを、βpはPチャネルトランジスタのトランスコンダクタンス・パラメータを表す。ここで、NチャネルトランジスタM200のドレインを電流入力(Ii)端子とし、NチャネルトランジスタM203のドレインを電流出力(Io)端子としたときの入出力伝達関数は次式で表される。
式3は2次のローパスフィルタ(以下、LPF)の伝達関数であり、図15の回路構成が電流モード 2次LPFとして機能することを示す。また、その周波数特性を示すω0、Q値はgmp、gmn、Ci、Cgで決定されることが判る。
Blu−ray−Discに代表される高密度記録された光ディスクの記録・再生装置において、アナログ信号処理に必要な周波数帯域は高倍速再生で100MHzを超え、従来のDVD記録・再生装置で一般的に使用されているGm−Cフィルタでは、広帯域化と線形性確保、ダイナミックレンジの両立が困難であり、これらの両立が可能な電流モードフィルタが注目されている。
ところで、トランスコンダクタンス・パラメータβn、βpや容量Ci、Cgは、製造プロセスのばらつきに大きく依存するため、周波数特性に厳密な精度が要求されるフィルタ回路では、フィルタ特性の調整が必要となる。この調整は、製品の出荷検査で実施される場合やLSIの起動時に実施される場合など、実施される工程は様々であるが、共通するのは調整は一度しか実施されない点である。このため、調整されるのは製造プロセスのばらつき量のみであって、例えば温度依存のパラメータ変動については、上述の工程調整のみで吸収することはできない。一般に、CMOSプロセスで形成される容量素子は温度依存性が小さいことが知られているが、トランスコンダクタンス・パラメータは温度依存性が大きく、フィルタ特性への影響が無視できないため、トランスコンダクタンス・パラメータの温度変動を自動補償する手段が必要となるが、非特許文献1や非特許文献2には、この手段の実現方法について記載されていない。
電流モードフィルタの実現には、
(1)Nチャネルトランジスタ、Pチャネルトランジスタの各々にトランスコンダクタンス調整回路が必要であり、回路の実装面積が大きい。
(2)ローパスフィルタ以外の例えばバンドパスフィルタやハイパスフィルタの構成例に関して従来技術がなく、応用性に欠ける、という課題がある。
更に、図16記載の従来例のトランスコンダクタンス調整回路は、
(3)電圧比較動作が必要なため、オペアンプが必要となり、低電圧化が難しい。
(4)帰還ループの安定性を確保するためには、比較的大きな容量素子が必要であり、小面積化が困難、という課題がある。
本発明は、上記の実装面積、応用性、低電圧動作化に関する課題を併せて解決するためになされものであり、その目的は、最小構成で実現可能な電流モードフィルタと、低電圧化又は小面積化に適したトランスコンダクタンス調整回路と、従来例では提供されていない電流モード動作するハイパスフィルタ及びバンドパスフィルタを提供することにある。
上述のトランスコンダクタンス・パラメータの温度変動の補償に関する課題は、特許文献1に記載されているトランスコンダクタンス調整回路と、図15に示すフィルタ回路とを組み合わせることにより、解決することができる。図16に特許文献1に記載されているトランスコンダクタンス調整回路を示す。図16のトランスコンダクタンス調整回路は、第9及び第10トランジスタM106、M107のゲートに各々電圧V0a+V1a/2、V0a−V1a/2を印加する電位差発生回路と、トランジスタM107、M106のドレイン電流を引き算し、その結果の電流ΔIaを出力するカレントミラー回路と、前記カレントミラー出力を電流―電圧変換する抵抗Reと、抵抗Reで電流―電圧変換された電圧と基準電圧V2aとを比較し、その比較結果を電流値I1cとして出力する電圧―電流変換回路30と、電流値I1cを電流―電圧変換して出力電圧をV0aとしてトランジスタM106、M107のゲート入力に帰還する手段とを備えており、前記電流値I1cのカレントミラー出力を前記図15記載のバイアス電流Ibとなるように接続する。トランジスタM107、M106は、各々、飽和領域で動作しているとすると、トランジスタM106、M107のドレイン電流I1a、I1bは各々次式で表される。
ここで、βnはNチャネルトランジスタのトランスコンダクタンス・パラメータ、VtnはNチャネルトランジスタの閾値電圧を表す。図16の回路は、電流I1aと電流I1bとの差電流ΔIaを抵抗Reで電圧変換した電圧値と基準電圧V2aとが等しくなるように帰還がかかるため、以下の等式が成り立つ。
トランジスタM108、M204、M107及びトランジスタM106のトランジスタサイズが同一であるとすると、前記式4と式5とから、出力電圧V0aは次式で表される。
更に、トランジスタM204のドレイン電流からトランスコンダクタンス調整回路の出力電流Ibまでのカレントミラー比を1:1とすると、出力電流Ibは次式で表される。
これを前記式1に代入すると、電流モードフィルタ回路に含まれるNチャネルトランジスタのgmは次式に示す通り、トランスコンダクタンス・パラメータを含まない形で得られる。
上式はNチャネルトランジスタのgmを表しているが、図16の回路について、NチャネルトランジスタをPチャネルトランジスタに、PチャネルトランジスタをNチャネルトランジスタに置き換えることにより、同様にして、Pチャネルトランジスタのgmも、式8と同様に得られる。
これにより、式3記載のω0、Qは、トランスコンダクタンス・パラメータに依存せず、且つV2a、V1a、Reを変化させることにより、ω0、Qを任意に制御することが可能になる。
上記の本発明の目的の一つである最小構成で実現可能な電流モードフィルタを実現するための構成として、請求項1の構成を採用する。具体的に、請求項1記載の発明のフィルタ回路は、電界効果トランジスタで構成されるカレントミラー回路であって、チャネル極性が全て同一である第1、第2、第3のトランジスタを含み、前記第1のトランジスタのドレインが、ゲート接地回路として機能する第2のトランジスタのソースに接続され、前記第2のトランジスタのドレインが前記第1のトランジスタと前記第3のトランジスタのゲートに接続され、前記第1のトランジスタのゲート及びドレインに、各々、第1の容量素子と第2の容量素子とが接続された構成であって、前記第1及び第2のトランジスタの各々にバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段を備え、前記第1のトランジスタのドレイン又はゲートの何れか一方又は両方を入力端子とし、出力信号を前記第3のトランジスタのドレイン電流から取り出すことを特徴とする。
更に、請求項2記載の発明のフィルタ回路は、電界効果トランジスタで構成されるカレントミラー回路であって、チャネル極性が全て同一である第1、第2、第3、第4のトランジスタを含み、前記第4のトランジスタは入力電流信号を電圧信号に変換するI/V変換器として動作し、前記第1のトランジスタのドレインが、前記I/V変換器出力を入力とするソースフォロワとして機能する第2のトランジスタのソースに接続され、前記第2のトランジスタのドレインが前記第1のトランジスタのゲートと前記第3のトランジスタのゲートとに接続され、前記第1のトランジスタのゲート及びドレインに、各々、第1の容量素子と第2の容量素子とが接続された構成であって、前記第1及び第2のトランジスタの各々にバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段と、前記第4のトランジスタにバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段とを備え、前記第1のトランジスタのドレイン及び前記第4のトランジスタのドレインの何れか一方又は両方を入力端子とし、出力信号を前記第3のトランジスタのドレイン電流から取り出すことを特徴とする。
また、別の構成として、請求項3記載の発明のフィルタ回路は、電界効果トランジスタで構成されるカレントミラー回路であって、チャネル極性が全て同一である第1、第2、第3のトランジスタを含み、前記第1のトランジスタのドレインが、ソースフォロワとして機能する第2のトランジスタのゲートに接続され、前記第2のトランジスタのソースが前記第1のトランジスタと前記第3のトランジスタのゲートに接続され、前記第1のトランジスタのドレイン及びゲートに、各々、第1の容量素子と第2の容量素子とが接続された構成であって、前記第1及び第2のトランジスタの各々にバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段を備え、前記第1のトランジスタのドレイン又はゲートの何れか一方又は両方を入力端子とし、出力信号を前記第3のトランジスタのドレイン電流から取り出すことを特徴とする。
前記請求項1〜3記載の発明では、フィルタ特性を決定するトランジスタは全てチャネル極性が同じ、即ち、全てNチャネルトランジスタ、又は全てPチャネルトランジスタで回路を構成することが可能となるので、トランスコンダクタンス調整回路は1つで済む。
また、本発明の目的の一つである電流モード動作するバンドパスフィルタを実現するために、請求項4記載の発明では、前記請求項3記載のフィルタ回路において、ドレインからゲートへの帰還ループを有する第4のトランジスタと、前記第4のトランジスタにバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段とを更に備え、前記第1の容量素子は、前記第4のトランジスタのゲートと前記第1のトランジスタのドレインとの間に接続され、前記第4のトランジスタのゲートを入力端子とし、出力信号を前記第3のトランジスタのドレイン電流から取り出すことを特徴とする。
更に、本発明の目的の一つである電流モード動作するハイパスフィルタを実現するために、請求項5記載の発明では、前記請求項3記載のフィルタ回路において、ドレインからゲートへの帰還ループを有する第4のトランジスタと、前記第4のトランジスタにバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段とを更に備え、前記第2の容量素子は、前記第4のトランジスタのゲートと前記第1のトランジスタのゲートとの間に接続され、前記第4のトランジスタのゲートを入力端子とし、出力信号を前記第3のトランジスタのドレイン電流から取り出すことを特徴とする。
また、請求項6記載の発明では、前記請求項1〜5の何れか1項に記載のフィルタ回路において、前記第1、第2、第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタの各々に供給するバイアス電流は、可変であることを特徴とする。
次に、本発明では前記第1、第2、第3のトランジスタ、及び第4のトランジスタの各々に可変バイアス電流を供給するトランスコンダクタンス調整回路の低電圧化に適した構成として、請求項7記載の発明を採用する。具体的に、請求項7記載の発明は、前記請求項6記載のフィルタ回路において、前記可変バイアス電流は、トランスコンダクタンス調整回路から供給され、前記トランスコンダクタンス調整回路は、ソースが共通接続された第9、第10のトランジスタと、前記第9、第10のトランジスタのゲートに電位差を発生させる電位差発生回路と、前記第9、第10のトランジスタのドレイン電流の差を出力する差電流生成回路と、前記差電流生成回路の出力電流値と基準電流源との出力電流値が一致するように制御電圧を生成し、この制御電圧を前記第9、第10のトランジスタのゲートに帰還する帰還手段と、前記帰還電圧を電圧―電流変換する電圧―電流変換器とを備え、前記第1、第2、第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタの各々に供給するバイアス電流は、前記電圧―電流変換器の出力のカレントミラー出力として供給されることを特徴とする。
更に、本発明では、帰還ループを含まず、安定性確保のための大きな容量素子を必要とせず、小面積化が可能なフィードフォワード型トランスコンダクタンス調整回路として、請求項8記載の発明を採用する。具体的に、請求項8記載の発明は、前記請求項6記載のフィルタ回路において、第5、第6、第7及び第8のトランジスタで構成されるトランスリニアループ回路を含み、前記第7のトランジスタと前記第8のトランジスタの各々に流れる電流を数倍して前記第5及び第6のトランジスタに供給する増幅手段と、前記第7のトランジスタのバイアス電流を供給する電流源回路とを備え、前記第8のトランジスタに流れる電流のカレントミラー出力が前記第1、第2、第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタのバイアス電流となるように接続されたことを特徴とする。
また、請求項9記載の発明では、前記請求項8記載のフィルタ回路において、前記第7のトランジスタのバイアス電流を供給する電流源回路は、ソースが共通接続された第9、第10のトランジスタと、前記第9、第10のトランジスタのゲートに電位差を発生させ、前記第9、第10のトランジスタのゲート電圧の平均電圧が第11のトランジスタのゲートに印加されるよう接続された電位差発生回路と、前記第9、第10のトランジスタの各々に流れるドレイン電流を加算する加算手段と、前記第11のトランジスタに流れるドレイン電流を2倍する増幅手段とを備え、前記第9、第10のトランジスタのドレイン電流の加算値から前記第11のトランジスタに流れるドレイン電流を2倍した電流を引き算した電流が、前記第1、第2、第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタのバイアス電流となることを特徴とする。
加えて、請求項10記載の発明の光ディスク装置は、前記請求項1〜9の何れか1項に記載のフィルタ回路を信号処理経路に備えたことを特徴とする。
前記光ディスク装置は、上述のフィルタ回路を信号処理経路に備えるので、低コスト、低消費電力で高倍速、高密度記録ディスクの記録再生が実現できる。その理由は、広帯域化と線形性確保、ダイナミックレンジの両立が可能な電流モードフィルタを小面積で実装でき、低電圧動作が可能であるからである。
以上説明したように、本発明のフィルタ回路によれば、フィルタ特性を決定するトランジスタは全てNチャネル又はPチャネルのチャネル極性が同じトランジスタで回路を構成することが可能となるので、トランスコンダクタンス調整回路は1つで済み、回路の実装面積の縮小化が可能である。
図1は本発明の第1の実施形態のローパスフィルタ回路を示す図である。
図2は同フィルタ回路の構成トランジスタをPチャネルトランジスタに置換したフィルタ回路を示す図である。
図3は同フィルタ回路の入力端子を変更して構成したフィルタ回路を示す図である。
図4は同フィルタ回路の入力端子を変更して構成したバンドパスフィルタ回路を示す図である。
図5は本発明の第2の実施形態のローパスフィルタ回路を示す図である。
図6は同フィルタ回路の構成トランジスタをPチャネルトランジスタに置換したフィルタ回路を示す図である。
図7は同フィルタ回路の入力端子を変更して構成したフィルタ回路を示す図である。
図8は同フィルタ回路の入力端子を変更して構成したバンドパスフィルタ回路を示す図である。
図9は本発明の第3の実施形態のバンドパスフィルタ回路を示す図である。
図10は本発明の第4の実施形態のハイパスフィルタ回路を示す図である。
図11は本発明の第5の実施形態のトランスコンダクタンス調整回路を示す図である。
図12は本発明の第6の実施形態のトランスコンダクタンス調整回路を示す図である。
図13は光ディスク装置の構成例を示す図である。
図14は同光ディスク装置に備えるデータ信号生成回路のアナログ・フロントエンド部の構成例を示す図である。
図15は従来の電流モードフィルタ回路を示す図である。
図16は同電流モードフィルタ回路に備える従来のトランスコンダクタンス調整回路を示す図である。
図17は図1のローパスフィルタ回路の変形例を示す図である。
図18は図1のローパスフィルタ回路の他の変形例を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明の第1の実施形態による電流モードフィルタ回路である。
図1の構成は、電流モードフィルタ回路の構成トランジスタとして、全てNチャネルトランジスタを使用した請求項1記載のフィルタ回路である。
同図において、第1のトランジスタM1と第2のトランジスタM2とはカスコード接続され、更に、トランジスタM2のドレインはトランジスタM1のゲートに接続されており、この両トランジスタM1とM2は、電流源(バイアス電流供給手段)7から供給される電流Icnt7でバイアスされている。トランジスタM2のゲートは、電流源(バイアス電流供給手段)53から出力される電流Icnt53をダイオード接続した第4のトランジスタM52に供給することにより得られる電圧Vbを出力とする電圧生成回路8に接続され、ゲートが交流的に接地されている。更に、電流入力端子9と共通接続されているトランジスタM2のソースと、第3のトランジスタM3のゲートと共通接続されているトランジスタM1のゲートには、各々、容量素子C2、容量素子C1が接地点に対して接続されている。トランジスタM3のドレインには、トランジスタM1とトランジスタM3のドレイン電圧差を小さくするために、トランジスタM51がカスコード接続されており、トランジスタM51のドレイン電流と電流源6から供給されるバイアス電流Icnt6との差を出力として取り出すために、トランジスタM51のドレインを出力端子10と共通接続している。
ここで、トランジスタM1、M2、M3のトランスコンダクタンス・パラメータを、各々、β1、β2、β3としたとき、電流入力Iiが0のときに電流出力Ioが0となるよう、Icnt6/Icnt7=β3/β1となるように設定されているとする。
全てのトランジスタが飽和領域で動作しているとすると、トランジスタM1、M2、M3の各々のトランスコンダクタンスgm1、gm2、gm3は、次式で表される。
gm3=A0・gm1となるようにβ3、Icnt6を選択し、図1の構成における伝達関数Io/Iiを求めると、次式のようになる。
但し、
上式10は、2次のローパスフィルタ(以下、LPF)の伝達関数であり、フィルタパラメータω0、Q値を決定するgm1、gm2は、全てNチャネルトランジスタのトランスコンダクタンスで実現可能であるので、トランスコンダクタンス調整回路は1つで済む。
また、図1の電流モードフィルタは、上式10から明らかなように、ω0、Qだけでなく、A0を変化させると、ω0、Qとは独立して伝達ゲインを変化させることが可能である。A0は上述した通りgm1とgm3の比で決定されるので、式9からIcnt6とβ3、即ち、トランジスタM3のバイアス電流とトランジスタサイズとを切り替えることにより変化させることが可能である。
次に、図1の電流モードフィルタの動作電源電圧について述べる。図1の電流モードフィルタのダイナミックレンジは電流源7及びトランジスタM1で決定される。電流源7がPチャネルトランジスタで構成され、そのオーバードライブ電圧をVodpとし、トランジスタM1の閾値電圧をVtn、オーバードライブ電圧をVodnとすると、図1が動作可能な電源電圧Vddは、式12で表現される。
一般に、近年のデジタルCMOSプロセスでは、最大でもVtn=0.4Vであり、トランジスタのオーバードライブ電圧は0.4V程度に選択すると、式12から、Vdd>0.4+0.4+0.4=1.2Vとなり、デジタル回路と同程度に低い電源電圧でフィルタ回路を実現することが可能である。
図1はNチャネルトランジスタで構成した電流モードフィルタの実施形態であるが、図2に示すように、NチャネルトランジスタをPチャネルトランジスタに置き換えても実現が可能である。
また、図1におけるトランジスタM51は、より正確なトランジスタM1とM3の電流ミラー比を得るために挿入しているものであり、省略しても、フィルタパラメータω0、Qへの影響はない。
図1の構成における入力端子9をトランジスタM2のソースからトランジスタM2のドレインへ接続を変更した構成を図3に示す。図3の構成の伝達関数Io/Iiを求めると、
但し、ω0、Q、A0は式11の通りであり、A1は次式で表される。
式13の右辺第1項は式10と同じ2次LPFの伝達関数を表し、右辺第2項は2次バンドパスフィルタ(以下、BPF)を表す伝達関数を表す。つまり、図3の構成の電流モードフィルタは2次LPFの特性と2次BPF特性とを加算した出力信号を得ることが可能である。式10と式13から明らかなように、トランジスタM2のドレインから信号Iiを入力し、これと位相が180°反転した信号−IiをトランジスタM2のソースから入力することにより、以下の2次BPFの伝達関数Io/Iiを得ることができる。これに対応する構成を図4に示す。
但し、ω0、Q、A0は式11の通りであり、A1は式14の通りである。
2次BPFの別の実施形態として、図1におけるトランジスタM2のソースの代わりにトランジスタM52のドレインを入力端子9として出力端子10から出力電流信号を取り出すことでも、式15の伝達関数を得ることができる。この請求項2記載の構成を図17に示す。また、図18に示すように、トランジスタM2のソースとトランジスタM52のドレインの両方を入力端子12、9として出力端子10から出力電流信号を取り出すと、式13の伝達特性を得ることができる。
(実施形態2)
図5は、本発明の第2の実施形態による電流モードフィルタ回路である。
図5の構成は、電流モードフィルタ回路の構成トランジスタとして、全てNチャネルトランジスタを使用した請求項3記載のフィルタ回路である。
図5において、トランジスタM1はドレイン電圧が、トランジスタM2と電流Icnt11を供給する電流源11とで構成されるソースフォロワを介して、ゲートに帰還がかかる構成であり、トランジスタM1は電流源7から供給される電流Icnt7でバイアスされている。更に、電流入力端子9と接続されているトランジスタM2のソースと、トランジスタM1のドレインには各々容量素子C2、容量素子C1が接地点に対して接続されている。トランジスタM3のドレインには、トランジスタM1とM3とのドレイン電圧差を小さくするために、トランジスタM51がカスコード接続されており、トランジスタM51のドレイン電流と電流源6から供給されるバイアス電流Icnt6との差を出力として取り出すために、トランジスタM51のドレインを出力端子10と共通接続している。トランジスタM51のゲートは、電流源53から出力される電流Icnt53をダイオード接続したトランジスタM52に供給することにより得られる電圧Vbを出力とする電圧生成回路8に接続され、ゲートが交流的に接地されている。ここで、トランジスタM1、M2、M3のトランスコンダクタンス・パラメータを各々β1、β2、β3としたとき、電流入力Iiが0のときに電流出力Ioが0となるよう、Icnt6/Icnt7=β3/β1となるように設定されているとする。
全てのトランジスタが飽和領域で動作しているとすると、トランジスタM1、M2、M3各々のトランジスタのトランスコンダクタンスgm1、gm2、gm3は、次式で表される。
gm3=A0・gm1となるようにβ3、Icnt6を選択し、図5の構成における伝達関数Io/Iiを求めると、式15のように、実施形態1記載のフィルタと同じ2次BPFの伝達特性を得ることができる。
但し、
である。
図5記載の実施形態2では、トランジスタM1のバイアス電流は電流源7から、トランジスタM2のバイアス電流は電流源11から供給されるため、電流源7と電流源11から供給する電流値を独立して調整することにより、gm1、gm2を各々独立に調整することができる。このため、実施形態1と比較して、フィルタパラメータ調整の自由度が高い電流モードフィルタを小面積で実装することができる。
次に、図5の電流モードフィルタの動作電源電圧について述べる。図5の電流モードフィルタのダイナミックレンジは電流源7及びトランジスタM1、M2で決定される。電流源7がPチャネルトランジスタで構成され、そのオーバードライブ電圧をVodpとし、トランジスタM1及びM2の閾値電圧をVtn、オーバードライブ電圧をVodnとすると、図5が動作可能な電源電圧Vddは、
となり、Vtn=Vodn=Vodp=0.4Vとすると、Vdd>2(0.4+0.4)+0.4=2Vとなり、実施形態1の構成と比べて高い電源電圧が必要である。
図5は、Nチャネルトランジスタで構成した電流モードフィルタの実施形態であるが、図6に示すようにNチャネルトランジスタをPチャネルトランジスタに置き換えても実現が可能である。
また、図5におけるトランジスタM51は、より正確なトランジスタM1とM3との電流ミラー比を得るために挿入しているものであり、省略してもフィルタパラメータω0、Qへの影響はない。
図5の構成における入力端子9をトランジスタM2のソースからトランジスタM1のドレインへ接続を変更した構成を図7に示す。図7の構成の伝達関数Io/Iiを求めると、実施形態1と同様に式17の通りとなり、2次LPFの特性が得られる。
また、実施形態1と同様に、トランジスタM1のドレインから信号Iiを入力し、これと位相が180°反転した信号−IiをトランジスタM2のソースから入力することにより、式13に示す伝達特性を得ることができる。この構成を図8に示す。
図1記載の実施形態1の構成を選択するか、図2記載の実施形態2の選択を構成するかは、LSIの電源電圧仕様、フィルタ特性の調整仕様に応じて当業者が選択することができる。
(実施形態3)
図9に請求項4に対応する第3の実施形態を示す。
図9は、前記実施形態2に記載している図7の構成に対して、ドレインとゲートとが共通接続された第4のトランジスタM13とトランジスタM13とにバイアス電流を供給する電流源14を追加し、容量素子C1をトランジスタM13とトランジスタM1間に接続し、トランジスタM13のドレインを入力端子9と接続している。このとき、トランジスタM13は飽和領域で動作しているとすると、トランスコンダクタンスgm13は、式20で表現される。
ここで、β13はトランジスタM13のトランスコンダクタンス・パラメータを表し、Icnt14は電流源14から供給されるバイアス電流を表す。ここで、gm13=gm2となるようにβ13、Icnt14を選択すると、図9の構成の伝達特性Io/Iiを求めると、次式のようになり、2次BPFの伝達特性を得ることができる。
但し、
2次BPFの実現方法については、実施形態2記載の図8で示した。図8の構成では、入力端子9と入力端子12との2つが必要であり、これらに入力される入力信号Ii、−Iiの電流振幅が厳密に一致せず、誤差ΔIiを持つ場合、式15に示すBPF特性が得られず、その伝達特性は式23に示すようになる。
但し、ω0、Q、A0は式11の通りであり、A1は式14の通りである。
式23右辺の分子を見れば明らかなように、誤差ΔIiを含む項が現れる。これは零点が原点からシフトしていることを意味し、その結果、BPFの低周波領域の減衰特性を悪化させる一因となる。本実施形態で示す図9の構成では、トランジスタM13と電流源14とを追加することにより、1つの入力端子で2次BPF特性を実現できる。従って、上述の誤差要因を排除することができ、良好な低周波領域の減衰特性を持つBPFを得ることができる。
(実施形態4)
図10に請求項5に対応する第4の実施形態を示す。
図10は前記実施形態2に記載している図5の構成に対して、ゲートとドレインとが共通接続されたトランジスタM13と、トランジスタM13にバイアス電流を供給する電流源14とを追加し、容量素子C2をトランジスタM13とトランジスタM1との間に接続し、トランジスタM13のドレインを入力端子9と接続している。このとき、トランジスタM13は飽和領域で動作しているとすると、トランスコンダクタンスgm13は式20のようになる。ここで、gm13=gm2となるように選択し、図10の構成の伝達特性Io/Iiを求めると、次式のようになり、2次HPFの伝達特性を得ることができる。
但し、
(実施形態5)
図11に請求項6及び請求項7に対応する第5の実施形態を示す。
図11は、前記実施形態1〜4記載の電流モードフィルタ回路におけるバイアス電流源6、7、53、14の構成例であり、トランスコンダクタンス調整回路29により構成したものである。以下、その回路の構成及び動作について説明する。
図11において、電位差発生回路21で生成された電圧Vga+ΔV/2、Vga−ΔV/2を各々のゲートに印加したトランジスタM106、M107のドレイン電流をカレントミラー回路で構成された差電流生成回路22に入力する。差電流生成回路22の出力には、定電流Idを出力する電流源24と電圧バッファ回路23とが接続され、電圧バッファ回路23の出力は電位差発生回路21の入力Vgaとして帰還されて、帰還回路31を構成する。電圧Vgaは、電圧−電流変換回路25として動作するトランジスタM108のゲートに入力され、トランジスタM108のドレイン電流をカレントミラー回路26に入力し、カレントミラー出力を各々前記実施形態1〜4記載のバイアス電流源6、7、53、14の出力とする。図11に記載した符号Ccは上述の帰還ループの安定性を確保するための安定性補償容量であり、トランジスタM110、M111、M112は各々トランジスタM108、M106、M107のドレイン電圧間の電圧差を小さくするために付加したカスコードトランジスタである。
トランジスタM106とM107は同じトランジスタサイズであるとし、ドレイン電流を各々Ida、Idbとすると、式26で示される。
ここで、βnはNチャネルトランジスタのトランスコンダクタンス・パラメータ、VtnはNチャネルトランジスタの閾値電圧を表す。図11の回路は、ドレイン電流Ida、Idbの差電流ΔIdが定電流源出力電流Idと一致するように、電圧Vgaに帰還がかかるため、以下の等式が成り立つ。
式26と式27から、電圧Vgaは次式で表される。
更に、トランジスタM108はトランジスタM106、M107と同じトランジスタサイズとした場合、ドレイン電流Icnt0は、式28から、次式で表現される。
図11のカレントミラー回路26のミラー比を1:1であるとすると、Icnt6=Icnt0、Icnt7=Icnt0となり、これを例えば式9に代入すると、実施形態1記載の電流モードフィルタ回路に含まれるNチャネルトランジスタのgmは、次式に示す通りトランスコンダクタンス・パラメータを含まない形で得られる。
但し、k1、k2、k3は各々トランジスタM106、M107、M108に対する図1記載のトランジスタM1、M2、M3のトランジスタサイズ比を表す。
よって、式11記載のω0、Q、A0はトランスコンダクタンス・パラメータに依存せず、Id、ΔVを変化させることにより、ω0、Q、A0を任意に制御することが可能になる。
既述したように、図16に示すトランスコンダクタンス調整回路でも、この効果を得ることは可能であるが、図11と図16とを比較すれば明らかであるように、図11はオペアンプ60や抵抗素子Re、電圧源V2a、Vrefが不要であり、より少ない部品数で回路を実現できることと、オペアンプが不要であるため、低電圧動作に適している点で従来例の図16に対して有利である。
図11の構成において、各トランジスタが飽和領域で動作するようなバイアス電圧が確保できれば、電圧バッファ回路23は省略することが可能であり、トランジスタM108のゲートとトランジスタM111のドレインを直接接続しても良い。
また、図11はNチャネルトランジスタで構成されたフィルタ回路のバイアス電流源6、7、53、14の構成例であるが、図2、図6に示したPチャネルトランジスタで構成されたフィルタ回路のバイアス電流源は図11のNチャネルトランジスタをPチャネルトランジスタに置き換えることにより、実現することができる。
(実施形態6)
図12に請求項8及び請求項9に対応する第6の実施形態を示す。
図12は前記実施形態1〜4記載の電流モードフィルタ回路におけるバイアス電流源6、7、53及び14の構成例であって、トランスコンダクタンス調整回路29により構成したものである。以下、その回路構成及び動作について説明する。
図12において、飽和領域で動作する第5のトランジスタM101、第6のトランジスタM102、第7のトランジスタM103、第8のトランジスタM104はトランスリニアループ回路32を構成し、トランジスタM103のドレイン電流とトランジスタM104のドレイン電流とをカレントミラー回路(増幅手段)26で、各々、h1倍、h2倍した出力と、電流源24の出力電流Idとを加算した電流値がM101、M102のバイアス電流となるように接続されている。
また、第7のトランジスタM103のバイアス電流を供給する電流源回路33では、電流源27の出力電流Iaをダイオード接続した第11のトランジスタM105に供給して得られる電圧Vgaを電位差発生回路21に入力し、電位差発生回路21の出力電圧Vga+ΔV/2、Vga−ΔV/2を各々のゲートに印加した第9のトランジスタM106と第10のトランジスタM107のドレイン電流を配線(加算手段)34で加算する。一方、電流源(増幅手段)28は、第11のトランジスタM105に流れるドレイン電流Iaを2倍し、前記第9及び第10のトランジスタM106、M107のドレイン電流の加算値から前記電流源28の出力電流2・Iaを引き算した電流が第7のトランジスタM103のバイアス電流Ibとなるよう構成している。更に、第8のトランジスタM104のドレイン電流のカレントミラー出力が各々前記実施形態1〜4記載のバイアス電流源6、7、53、14の出力となるように構成している。
ここで、トランジスタM101、M102、M103、M104のトランジスタサイズが同一であるとすると、各々に流れる電流には次式の関係がある。
ここで、h1=h2=0.25として、電流Icnt0について式31をまとめると、式32が得られる。
また、トランジスタM106、M107のドレイン電流Ida、Idbは、トランジスタM106、M107のトランジスタサイズが同一でそのトランスコンダクタンス・パラメータをβn、閾値電圧をVtnとすると、次式33で表現される。
前記式33から、トランジスタM106とトランジスタM107とのドレイン電流の加算出力は、式34となる。
Ib=Ida+Idb−2Iaより、式35となり、
式32に式35を代入すると、式36が得られる。
図12の電流Icnt0のカレントミラー出力Icnt6=Icnt0、Icnt7=Icnt0とし、これを例えば式9に代入すると、実施形態1記載の電流モードフィルタ回路に含まれるNチャネルトランジスタのgmは、次式に示す通り、トランスコンダクタンス・パラメータを含まない形で得られる。
但し、k1、k2、k3は各々トランジスタM106、M107に対する図1記載のトランジスタM1、M2、M3のトランジスタサイズ比を表す。
よって、式11記載のω0、Q、A0は、トランスコンダクタンス・パラメータに依存せず、Id、ΔVを変化させることにより、ω0、Q、A0を任意に制御することが可能になる。
図12の構成は、実施形態5記載の図11の構成と比べて、回路に帰還ループを含まないため、設計が容易、且つ安定性補償のための容量素子が不要のため、回路の実装面積が小さくできるという利点がある。
また、図12はNチャネルトランジスタで構成されたフィルタ回路のバイアス電流源6、7、53、14の構成例であるが、図2、図6に示したPチャネルトランジスタで構成されたフィルタ回路のバイアス電流源は、図11のNチャネルトランジスタをPチャネルトランジスタに置き換えることにより、実現することができる。
(実施形態7)
図13は第7の実施形態による光ディスク装置を示している。
同図において、この光ディスク装置は、スピンドルモータ501と、光ピックアップ502と、アドレス信号生成回路503と、アドレスデコーダ504と、サーボコントローラ505と、サーボエラー信号生成回路506と、データ信号生成回路507と、デコーダ508と、CPU509と、レーザーパワー制御回路510とを備えている。
ここでは、本発明の電流モードフィルタ回路の適用例の1つとして、図13におけるデータ信号生成回路507に本発明の電流モードフィルタ回路を適用した例を説明するが、アドレス信号生成回路503、サーボエラー信号生成回路506、レーザーパワー制御回路510にも本発明の電流モードフィルタを適用することができる。
データ信号生成回路507の内部構成、特にアナログ・フロントエンド部の構成を図14に示す。図14において、光ディスク500から得られるデータ信号は、アナログ・フロントエンド部において、A−D変換器514のフルスケール入力Dレンジに合わせた振幅の正規化と、エイリアシング防止のためのノイズ除去を行う必要がある。そのため、信号処理経路には図14のように可変トランスコンダクタンスアンプ511と、本発明のローパスフィルタ512、トランスインピーダンスアンプ513をA−D変換器514の前に設ける。可変トランスコンダクタンスアンプ511は、光ピックアップ502から入力される電圧信号を電流信号に変換する機能を持ち、デジタル信号処理回路519で検出した信号振幅値に応じてD−A変換器516とゲイン制御回路518を介して、そのトランスコンダクタンスが制御され、出力電流振幅を正規化する。また、本発明のローパスフィルタ512は、光ディスク500のメディアや、再生倍速に応じて常に最適なノイズ除去ができるようD−A変換器515と帯域制御回路517を介して、デジタル信号処理回路519から、そのカットオフ周波数が制御される。
本発明のローパスフィルタ512の出力電流信号は、トランスインピーダンスアンプ513により電圧信号に変換されて、A−D変換器514に入力される。D−A変換器515、516をカレント・ステアリング型D−A変換器で構成し、ゲイン制御回路518、帯域制御回路517をカレントミラー回路による電流信号処理で実現することにより、アナログ・フロントエンド部の入力部と出力部の電圧信号の受け渡しが必要な箇所を除く、全てのアナログ信号処理を電流モードで実現することができ、従来3V程度の電源電圧を必要していたアナログ回路が、例えば1.5V程度の低電源電圧で実現することが可能となり、アナログ・フロントエンドで消費する電力を約50%削減することが可能になる。
産業上の利用の可能性
以上説明したように、本発明による電流モードフィルタ回路は、Blu−ray DiscやDVDに代表される光ディスク装置におけるフィルタ回路は勿論のこと、アナログ・フィルタ回路を搭載するあらゆる商品分野への適用が可能である。
M1 第1のトランジスタ
M2 第2のトランジスタ
M3 第3のトランジスタ
M13、M52 第4のトランジスタ
M101 第5のトランジスタ
M102 第6のトランジスタ
M103 第7のトランジスタ
M104 第8のトランジスタ
M106 第9のトランジスタ
M107 第10のトランジスタ
M105 第11のトランジスタ
C1 第1の容量素子
C2 第2の容量素子
6 バイアス電流源
7、14 バイアス電流源(バイアス電流供給手段)
8 電圧生成回路
9、12 信号入力端子1
10 信号出力端子1
11 バイアス電流源
12 信号入力端子2
21 電位差発生回路
22 差電流生成回路
23 電圧バッファ回路(帰還手段)
24 基準電流源
25 電圧−電流変換回路
26 カレントミラー回路(増幅手段)
27 バイアス電流源
28 バイアス電流源(増幅手段)
29 トランスコンダクタンス調整回路
31 帰還回路
32 トランスリニアループ回路
33 電流源回路
34 配線(加算手段)
50 電源端子
53 バイアス電流源(バイアス電流供給手段)
60 オペアンプ
本発明はフィルタ回路に関し、特に、電界効果トランジスタで構成される電流モードフィルタ回路と、これを信号処理経路に設ける光ディスク装置に関する。
フィルタ回路は、様々な信号処理システムを構成する必須ファンクションブロックであり、特に、アナログフィルタ回路はアナログ・デジタル混載LSIにおいて、アナログ―デジタル変換前の信号波形の整形やエイリアス防止のための高周波ノイズ除去という重要な役割を担っている。特に、数十MHzから数百MHzの信号帯域においては、トランスコンダクタンス回路(以下、Gm回路という)と容量素子とにより構成されるGm−Cフィルタを採用することが一般的であった。
しかしながら、Gm−Cフィルタは、非特許文献1や非特許文献2に記載されている通り、
1.フィルタを構成するGm回路が持つ寄生極がフィルタの極に近接するため、特に高周波領域での正確な周波数特性の実現が難しい。
2.近年の微細化された低電圧動作のデジタルCMOSプロセスでは、電圧モードで動作するGm−Cフィルタにおいて広いダイナミックレンジや線形性を確保することが難しいといった課題があった。
これらの問題を解決するために、非特許文献1や非特許文献2では、電流モードで動作するフィルタ回路の提案がされている。非特許文献1では、同文献中のFig2(a)に示されているように、出力電流をフィードバックする方法で実現しているが、非特許文献2では、同文献中の図8に示されているように、ゲート接地ミラー回路に容量素子を付加することによりフィルタ回路を実現しており、非特許文献1と比較してより少ない素子数で回路を実現している。ここでは、本発明の構成に近い非特許文献2に記載されているフィルタ回路について、詳細に説明する。図15に非特許文献2に記載の電流モードフィルタの構成を示す。図15の電流モードフィルタにおいて、NチャネルトランジスタM200、M203は、電流ミラー対を構成し、各々、電流源からのバイアス電流Ib0で駆動されている。また、ゲートが定電圧Vb0で固定されたゲート接地回路として機能し且つバイアス電流Ic0で駆動されるPチャネルトランジスタM201のソースがNチャネルトランジスタM200のドレインに接続され、PチャネルトランジスタM201のドレインがNチャネルトランジスタM200のゲートに接続されることにより、NチャネルトランジスタM200とPチャネルトランジスタM201とは負帰還ループを構成している。更に、NチャネルトランジスタM200のドレインとゲートには、容量素子Ci、Cgが各々接続されている。このとき、NチャネルトランジスタM200、M203及びPチャネルトランジスタM201は飽和領域で動作しているとすると、そのトランスコンダクタンス(以下、gmという)は、次式で近似できる。
ここで、gmnはNチャネルトランジスタM200、M203のgmを、gmpはPチャネルトランジスタM201のgmを表し、βnはNチャネルトランジスタのトランスコンダクタンス・パラメータを、βpはPチャネルトランジスタのトランスコンダクタンス・パラメータを表す。ここで、NチャネルトランジスタM200のドレインを電流入力(Ii)端子とし、NチャネルトランジスタM203のドレインを電流出力(Io)端子としたときの入出力伝達関数は次式で表される。
式3は2次のローパスフィルタ(以下、LPF)の伝達関数であり、図15の回路構成が電流モード 2次LPFとして機能することを示す。また、その周波数特性を示すω0、Q値はgmp、gmn、Ci、Cgで決定されることが判る。
Blu−ray−Discに代表される高密度記録された光ディスクの記録・再生装置において、アナログ信号処理に必要な周波数帯域は高倍速再生で100MHzを超え、従来のDVD記録・再生装置で一般的に使用されているGm−Cフィルタでは、広帯域化と線形性確保、ダイナミックレンジの両立が困難であり、これらの両立が可能な電流モードフィルタが注目されている。
ところで、トランスコンダクタンス・パラメータβn、βpや容量Ci、Cgは、製造プロセスのばらつきに大きく依存するため、周波数特性に厳密な精度が要求されるフィルタ回路では、フィルタ特性の調整が必要となる。この調整は、製品の出荷検査で実施される場合やLSIの起動時に実施される場合など、実施される工程は様々であるが、共通するのは調整は一度しか実施されない点である。このため、調整されるのは製造プロセスのばらつき量のみであって、例えば温度依存のパラメータ変動については、上述の工程調整のみで吸収することはできない。一般に、CMOSプロセスで形成される容量素子は温度依存性が小さいことが知られているが、トランスコンダクタンス・パラメータは温度依存性が大きく、フィルタ特性への影響が無視できないため、トランスコンダクタンス・パラメータの温度変動を自動補償する手段が必要となるが、非特許文献1や非特許文献2には、この手段の実現方法について記載されていない。
電流モードフィルタの実現には、
(1)Nチャネルトランジスタ、Pチャネルトランジスタの各々にトランスコンダクタンス調整回路が必要であり、回路の実装面積が大きい。
(2)ローパスフィルタ以外の例えばバンドパスフィルタやハイパスフィルタの構成例に関して従来技術がなく、応用性に欠ける、という課題がある。
更に、図16記載の従来例のトランスコンダクタンス調整回路は、
(3)電圧比較動作が必要なため、オペアンプが必要となり、低電圧化が難しい。
(4)帰還ループの安定性を確保するためには、比較的大きな容量素子が必要であり、小面積化が困難、という課題がある。
本発明は、上記の実装面積、応用性、低電圧動作化に関する課題を併せて解決するためになされものであり、その目的は、最小構成で実現可能な電流モードフィルタと、低電圧化又は小面積化に適したトランスコンダクタンス調整回路と、従来例では提供されていない電流モード動作するハイパスフィルタ及びバンドパスフィルタを提供することにある。
上述のトランスコンダクタンス・パラメータの温度変動の補償に関する課題は、特許文献1に記載されているトランスコンダクタンス調整回路と、図15に示すフィルタ回路とを組み合わせることにより、解決することができる。図16に特許文献1に記載されているトランスコンダクタンス調整回路を示す。図16のトランスコンダクタンス調整回路は、第9及び第10トランジスタM106、M107のゲートに各々電圧V0a+V1a/2、V0a−V1a/2を印加する電位差発生回路と、トランジスタM107、M106のドレイン電流を引き算し、その結果の電流ΔIaを出力するカレントミラー回路と、前記カレントミラー出力を電流―電圧変換する抵抗Reと、抵抗Reで電流―電圧変換された電圧と基準電圧V2aとを比較し、その比較結果を電流値I1cとして出力する電圧―電流変換回路30と、電流値I1cを電流―電圧変換して出力電圧をV0aとしてトランジスタM106、M107のゲート入力に帰還する手段とを備えており、前記電流値I1cのカレントミラー出力を前記図15記載のバイアス電流Ibとなるように接続する。トランジスタM107、M106は、各々、飽和領域で動作しているとすると、トランジスタM106、M107のドレイン電流I1a、I1bは各々次式で表される。
ここで、βnはNチャネルトランジスタのトランスコンダクタンス・パラメータ、VtnはNチャネルトランジスタの閾値電圧を表す。図16の回路は、電流I1aと電流I1bとの差電流ΔIaを抵抗Reで電圧変換した電圧値と基準電圧V2aとが等しくなるように帰還がかかるため、以下の等式が成り立つ。
トランジスタM108、M204、M107及びトランジスタM106のトランジスタサイズが同一であるとすると、前記式4と式5とから、出力電圧V0aは次式で表される。
更に、トランジスタM204のドレイン電流からトランスコンダクタンス調整回路の出力電流Ibまでのカレントミラー比を1:1とすると、出力電流Ibは次式で表される。
これを前記式1に代入すると、電流モードフィルタ回路に含まれるNチャネルトランジスタのgmは次式に示す通り、トランスコンダクタンス・パラメータを含まない形で得られる。
上式はNチャネルトランジスタのgmを表しているが、図16の回路について、NチャネルトランジスタをPチャネルトランジスタに、PチャネルトランジスタをNチャネルトランジスタに置き換えることにより、同様にして、Pチャネルトランジスタのgmも、式8と同様に得られる。
これにより、式3記載のω0、Qは、トランスコンダクタンス・パラメータに依存せず、且つV2a、V1a、Reを変化させることにより、ω0、Qを任意に制御することが可能になる。
上記の本発明の目的の一つである最小構成で実現可能な電流モードフィルタを実現するための構成として、請求項1の構成を採用する。具体的に、請求項1記載の発明のフィルタ回路は、電界効果トランジスタで構成されるカレントミラー回路を備えたフィルタ回路であって、チャネル極性が全て同一である第1、第2、第3のトランジスタを含み、前記第1のトランジスタのドレインが、ゲート接地回路として機能する第2のトランジスタのソースに接続され、前記第2のトランジスタのドレインが前記第1のトランジスタと前記第3のトランジスタのゲートに接続され、前記第1のトランジスタのゲート及びドレインに、各々、第1の容量素子と第2の容量素子とが接続された構成であって、前記第1及び第2のトランジスタの各々にバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段を備え、前記第1のトランジスタのドレイン又はゲートの何れか一方又は両方を入力端子とし、出力信号を前記第3のトランジスタのドレイン電流から取り出すことを特徴とする。
更に、請求項2記載の発明のフィルタ回路は、電界効果トランジスタで構成されるカレントミラー回路を備えたフィルタ回路であって、チャネル極性が全て同一である第1、第2、第3、第4のトランジスタを含み、前記第4のトランジスタは入力電流信号を電圧信号に変換するI/V変換器として動作し、前記第1のトランジスタのドレインが、前記I/V変換器出力を入力とするソースフォロワとして機能する第2のトランジスタのソースに接続され、前記第2のトランジスタのドレインが前記第1のトランジスタのゲートと前記第3のトランジスタのゲートとに接続され、前記第1のトランジスタのゲート及びドレインに、各々、第1の容量素子と第2の容量素子とが接続された構成であって、前記第1及び第2のトランジスタの各々にバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段と、前記第4のトランジスタにバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段とを備え、前記第1のトランジスタのドレイン及び前記第4のトランジスタのドレインの何れか一方又は両方を入力端子とし、出力信号を前記第3のトランジスタのドレイン電流から取り出すことを特徴とする。
また、別の構成として、請求項3記載の発明のフィルタ回路は、電界効果トランジスタで構成されるカレントミラー回路を備えたフィルタ回路であって、チャネル極性が全て同一である第1、第2、第3のトランジスタを含み、前記第1のトランジスタのドレインが、ソースフォロワとして機能する第2のトランジスタのゲートに接続され、前記第2のトランジスタのソースが前記第1のトランジスタと前記第3のトランジスタのゲートに接続され、前記第1のトランジスタのドレイン及びゲートに、各々、第1の容量素子と第2の容量素子とが接続された構成であって、前記第1及び第2のトランジスタの各々にバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段を備え、前記第1のトランジスタのドレイン又はゲートの何れか一方又は両方を入力端子とし、出力信号を前記第3のトランジスタのドレイン電流から取り出すことを特徴とする。
前記請求項1〜3記載の発明では、フィルタ特性を決定するトランジスタは全てチャネル極性が同じ、即ち、全てNチャネルトランジスタ、又は全てPチャネルトランジスタで回路を構成することが可能となるので、トランスコンダクタンス調整回路は1つで済む。
また、本発明の目的の一つである電流モード動作するバンドパスフィルタを実現するために、請求項4記載の発明では、前記請求項3記載のフィルタ回路において、ドレインからゲートへの帰還ループを有する第4のトランジスタと、前記第4のトランジスタにバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段とを更に備え、前記第1の容量素子は、前記第4のトランジスタのゲートと前記第1のトランジスタのドレインとの間に接続され、前記第4のトランジスタのゲートを入力端子とし、出力信号を前記第3のトランジスタのドレイン電流から取り出すことを特徴とする。
更に、本発明の目的の一つである電流モード動作するハイパスフィルタを実現するために、請求項5記載の発明では、前記請求項3記載のフィルタ回路において、ドレインからゲートへの帰還ループを有する第4のトランジスタと、前記第4のトランジスタにバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段とを更に備え、前記第2の容量素子は、前記第4のトランジスタのゲートと前記第1のトランジスタのゲートとの間に接続され、前記第4のトランジスタのゲートを入力端子とし、出力信号を前記第3のトランジスタのドレイン電流から取り出すことを特徴とする。
また、請求項6記載の発明では、前記請求項1〜3の何れか1項に記載のフィルタ回路において、前記第1、第2、第3のトランジスタの各々に供給するバイアス電流は、可変であることを特徴とする。
次に、本発明では前記第1、第2、第3のトランジスタ、及び第4のトランジスタの各々に可変バイアス電流を供給するトランスコンダクタンス調整回路の低電圧化に適した構成として、請求項7記載の発明を採用する。具体的に、請求項7記載の発明は、前記請求項6記載のフィルタ回路において、前記可変バイアス電流は、トランスコンダクタンス調整回路から供給され、前記トランスコンダクタンス調整回路は、ソースが共通接続された第9、第10のトランジスタと、前記第9、第10のトランジスタのゲートに電位差を発生させる電位差発生回路と、前記第9、第10のトランジスタのドレイン電流の差を出力する差電流生成回路と、前記差電流生成回路の出力電流値と基準電流源との出力電流値が一致するように制御電圧を生成し、この制御電圧を前記第9、第10のトランジスタのゲートに帰還する帰還手段と、前記帰還電圧を電圧―電流変換する電圧―電流変換器とを備え、前記第1、第2、第3のトランジスタの各々に供給するバイアス電流は、前記電圧―電流変換器の出力のカレントミラー出力として供給されることを特徴とする。
更に、本発明では、帰還ループを含まず、安定性確保のための大きな容量素子を必要とせず、小面積化が可能なフィードフォワード型トランスコンダクタンス調整回路として、請求項8記載の発明を採用する。具体的に、請求項8記載の発明は、前記請求項6記載のフィルタ回路において、第5、第6、第7及び第8のトランジスタで構成されるトランスリニアループ回路を含み、前記第7のトランジスタと前記第8のトランジスタの各々に流れる電流を数倍して前記第5及び第6のトランジスタに供給する増幅手段と、前記第7のトランジスタのバイアス電流を供給する電流源回路とを備え、前記第8のトランジスタに流れる電流のカレントミラー出力が前記第1、第2、第3のトランジスタのバイアス電流となるように接続されたことを特徴とする。
また、請求項9記載の発明では、前記請求項8記載のフィルタ回路において、前記第7のトランジスタのバイアス電流を供給する電流源回路は、ソースが共通接続された第9、第10のトランジスタと、前記第9、第10のトランジスタのゲートに電位差を発生させ、前記第9、第10のトランジスタのゲート電圧の平均電圧が第11のトランジスタのゲートに印加されるよう接続された電位差発生回路と、前記第9、第10のトランジスタの各々に流れるドレイン電流を加算する加算手段と、前記第11のトランジスタに流れるドレイン電流を2倍する増幅手段とを備え、前記第9、第10のトランジスタのドレイン電流の加算値から前記第11のトランジスタに流れるドレイン電流を2倍した電流を引き算した電流が、前記第1、第2、第3のトランジスタのバイアス電流となることを特徴とする。
加えて、請求項10記載の発明の光ディスク装置は、前記請求項1〜5の何れか1項に記載のフィルタ回路を信号処理経路に備えたことを特徴とする。
前記光ディスク装置は、上述のフィルタ回路を信号処理経路に備えるので、低コスト、低消費電力で高倍速、高密度記録ディスクの記録再生が実現できる。その理由は、広帯域化と線形性確保、ダイナミックレンジの両立が可能な電流モードフィルタを小面積で実装でき、低電圧動作が可能であるからである。
更に、請求項11記載の発明のランスコンダクタンス調整回路は、ソースが共通接続された第1、第2のトランジスタと、前記第1、第2のトランジスタのゲートに電位差を発生させる電位差発生回路と、前記第1、第2のトランジスタのドレイン電流の差を出力する差電流生成回路と、前記差電流生成回路の出力電流値と基準電流源との出力電流値が一致するように制御電圧を生成し、この制御電圧を前記第1、第2のトランジスタのゲートに帰還する帰還手段と、前記帰還電圧を電圧―電流変換する電圧―電流変換器とを備え、前記電圧―電流変換器の出力電流でトランスコンダクタンスを調整することを特徴とする。
以上説明したように、本発明のフィルタ回路によれば、フィルタ特性を決定するトランジスタは全てNチャネル又はPチャネルのチャネル極性が同じトランジスタで回路を構成することが可能となるので、トランスコンダクタンス調整回路は1つで済み、回路の実装面積の縮小化が可能である。
本発明の第1の実施形態のローパスフィルタ回路を示す図である。
同フィルタ回路の構成トランジスタをPチャネルトランジスタに置換したフィルタ回路を示す図である。
同フィルタ回路の入力端子を変更して構成したフィルタ回路を示す図である。
同フィルタ回路の入力端子を変更して構成したバンドパスフィルタ回路を示す図である。
本発明の第2の実施形態のローパスフィルタ回路を示す図である。
同フィルタ回路の構成トランジスタをPチャネルトランジスタに置換したフィルタ回路を示す図である。
同フィルタ回路の入力端子を変更して構成したフィルタ回路を示す図である。
同フィルタ回路の入力端子を変更して構成したバンドパスフィルタ回路を示す図である。
本発明の第3の実施形態のバンドパスフィルタ回路を示す図である。
本発明の第4の実施形態のハイパスフィルタ回路を示す図である。
本発明の第5の実施形態のトランスコンダクタンス調整回路を示す図である。
本発明の第6の実施形態のトランスコンダクタンス調整回路を示す図である。
光ディスク装置の構成例を示す図である。
同光ディスク装置に備えるデータ信号生成回路のアナログ・フロントエンド部の構成例を示す図である。
従来の電流モードフィルタ回路を示す図である。
同電流モードフィルタ回路に備える従来のトランスコンダクタンス調整回路を示す図である。
図1のローパスフィルタ回路の変形例を示す図である。
図1のローパスフィルタ回路の他の変形例を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明の第1の実施形態による電流モードフィルタ回路である。
図1の構成は、電流モードフィルタ回路の構成トランジスタとして、全てNチャネルトランジスタを使用した請求項1記載のフィルタ回路である。
同図において、第1のトランジスタM1と第2のトランジスタM2とはカスコード接続され、更に、トランジスタM2のドレインはトランジスタM1のゲートに接続されており、この両トランジスタM1とM2は、電流源(バイアス電流供給手段)7から供給される電流Icnt7でバイアスされている。トランジスタM2のゲートは、電流源(バイアス電流供給手段)53から出力される電流Icnt53をダイオード接続した第4のトランジスタM52に供給することにより得られる電圧Vbを出力とする電圧生成回路8に接続され、ゲートが交流的に接地されている。更に、電流入力端子9と共通接続されているトランジスタM2のソースと、第3のトランジスタM3のゲートと共通接続されているトランジスタM1のゲートには、各々、容量素子C2、容量素子C1が接地点に対して接続されている。トランジスタM3のドレインには、トランジスタM1とトランジスタM3のドレイン電圧差を小さくするために、トランジスタM51がカスコード接続されており、トランジスタM51のドレイン電流と電流源6から供給されるバイアス電流Icnt6との差を出力として取り出すために、トランジスタM51のドレインを出力端子10と共通接続している。
ここで、トランジスタM1、M2、M3のトランスコンダクタンス・パラメータを、各々、β1、β2、β3としたとき、電流入力Iiが0のときに電流出力Ioが0となるよう、Icnt6/Icnt7=β3/β1となるように設定されているとする。
全てのトランジスタが飽和領域で動作しているとすると、トランジスタM1、M2、M3の各々のトランスコンダクタンスgm1、gm2、gm3は、次式で表される。
gm3=A0・gm1となるようにβ3、Icnt6を選択し、図1の構成における伝達関数Io/Iiを求めると、次式のようになる。
但し、
上式10は、2次のローパスフィルタ(以下、LPF)の伝達関数であり、フィルタパラメータω0、Q値を決定するgm1、gm2は、全てNチャネルトランジスタのトランスコンダクタンスで実現可能であるので、トランスコンダクタンス調整回路は1つで済む。
また、図1の電流モードフィルタは、上式10から明らかなように、ω0、Qだけでなく、A0を変化させると、ω0、Qとは独立して伝達ゲインを変化させることが可能である。A0は上述した通りgm1とgm3の比で決定されるので、式9からIcnt6とβ3、即ち、トランジスタM3のバイアス電流とトランジスタサイズとを切り替えることにより変化させることが可能である。
次に、図1の電流モードフィルタの動作電源電圧について述べる。図1の電流モードフィルタのダイナミックレンジは電流源7及びトランジスタM1で決定される。電流源7がPチャネルトランジスタで構成され、そのオーバードライブ電圧をVodpとし、トランジスタM1の閾値電圧をVtn、オーバードライブ電圧をVodnとすると、図1が動作可能な電源電圧Vddは、式12で表現される。
一般に、近年のデジタルCMOSプロセスでは、最大でもVtn=0.4Vであり、トランジスタのオーバードライブ電圧は0.4V程度に選択すると、式12から、Vdd>0.4+0.4+0.4=1.2Vとなり、デジタル回路と同程度に低い電源電圧でフィルタ回路を実現することが可能である。
図1はNチャネルトランジスタで構成した電流モードフィルタの実施形態であるが、図2に示すように、NチャネルトランジスタをPチャネルトランジスタに置き換えても実現が可能である。
また、図1におけるトランジスタM51は、より正確なトランジスタM1とM3の電流ミラー比を得るために挿入しているものであり、省略しても、フィルタパラメータω0、Qへの影響はない。
図1の構成における入力端子9をトランジスタM2のソースからトランジスタM2のドレインへ接続を変更した構成を図3に示す。図3の構成の伝達関数Io/Iiを求めると、
但し、ω0、Q、A0は式11の通りであり、A1は次式で表される。
式13の右辺第1項は式10と同じ2次LPFの伝達関数を表し、右辺第2項は2次バンドパスフィルタ(以下、BPF)を表す伝達関数を表す。つまり、図3の構成の電流モードフィルタは2次LPFの特性と2次BPF特性とを加算した出力信号を得ることが可能である。式10と式13から明らかなように、トランジスタM2のドレインから信号Iiを入力し、これと位相が180°反転した信号−IiをトランジスタM2のソースから入力することにより、以下の2次BPFの伝達関数Io/Iiを得ることができる。これに対応する構成を図4に示す。
但し、ω0、Q、A0は式11の通りであり、A1は式14の通りである。
2次BPFの別の実施形態として、図1におけるトランジスタM2のソースの代わりにトランジスタM52のドレインを入力端子9として出力端子10から出力電流信号を取り出すことでも、式15の伝達関数を得ることができる。この請求項2記載の構成を図17に示す。また、図18に示すように、トランジスタM2のソースとトランジスタM52のドレインの両方を入力端子12、9として出力端子10から出力電流信号を取り出すと、式13の伝達特性を得ることができる。
(実施形態2)
図5は、本発明の第2の実施形態による電流モードフィルタ回路である。
図5の構成は、電流モードフィルタ回路の構成トランジスタとして、全てNチャネルトランジスタを使用した請求項3記載のフィルタ回路である。
図5において、トランジスタM1はドレイン電圧が、トランジスタM2と電流Icnt11を供給する電流源11とで構成されるソースフォロワを介して、ゲートに帰還がかかる構成であり、トランジスタM1は電流源7から供給される電流Icnt7でバイアスされている。更に、電流入力端子9と接続されているトランジスタM2のソースと、トランジスタM1のドレインには各々容量素子C2、容量素子C1が接地点に対して接続されている。トランジスタM3のドレインには、トランジスタM1とM3とのドレイン電圧差を小さくするために、トランジスタM51がカスコード接続されており、トランジスタM51のドレイン電流と電流源6から供給されるバイアス電流Icnt6との差を出力として取り出すために、トランジスタM51のドレインを出力端子10と共通接続している。トランジスタM51のゲートは、電流源53から出力される電流Icnt53をダイオード接続したトランジスタM52に供給することにより得られる電圧Vbを出力とする電圧生成回路8に接続され、ゲートが交流的に接地されている。ここで、トランジスタM1、M2、M3のトランスコンダクタンス・パラメータを各々β1、β2、β3としたとき、電流入力Iiが0のときに電流出力Ioが0となるよう、Icnt6/Icnt7=β3/β1となるように設定されているとする。
全てのトランジスタが飽和領域で動作しているとすると、トランジスタM1、M2、M3各々のトランジスタのトランスコンダクタンスgm1、gm2、gm3は、次式で表される。
gm3=A0・gm1となるようにβ3、Icnt6を選択し、図5の構成における伝達関数Io/Iiを求めると、式15のように、実施形態1記載のフィルタと同じ2次BPFの伝達特性を得ることができる。
但し、
である。
図5記載の実施形態2では、トランジスタM1のバイアス電流は電流源7から、トランジスタM2のバイアス電流は電流源11から供給されるため、電流源7と電流源11から供給する電流値を独立して調整することにより、gm1、gm2を各々独立に調整することができる。このため、実施形態1と比較して、フィルタパラメータ調整の自由度が高い電流モードフィルタを小面積で実装することができる。
次に、図5の電流モードフィルタの動作電源電圧について述べる。図5の電流モードフィルタのダイナミックレンジは電流源7及びトランジスタM1、M2で決定される。電流源7がPチャネルトランジスタで構成され、そのオーバードライブ電圧をVodpとし、トランジスタM1及びM2の閾値電圧をVtn、オーバードライブ電圧をVodnとすると、図5が動作可能な電源電圧Vddは、
となり、Vtn=Vodn=Vodp=0.4Vとすると、Vdd>2(0.4+0.4)+0.4=2Vとなり、実施形態1の構成と比べて高い電源電圧が必要である。
図5は、Nチャネルトランジスタで構成した電流モードフィルタの実施形態であるが、図6に示すようにNチャネルトランジスタをPチャネルトランジスタに置き換えても実現が可能である。
また、図5におけるトランジスタM51は、より正確なトランジスタM1とM3との電流ミラー比を得るために挿入しているものであり、省略してもフィルタパラメータω0、Qへの影響はない。
図5の構成における入力端子9をトランジスタM2のソースからトランジスタM1のドレインへ接続を変更した構成を図7に示す。図7の構成の伝達関数Io/Iiを求めると、実施形態1と同様に式17の通りとなり、2次LPFの特性が得られる。
また、実施形態1と同様に、トランジスタM1のドレインから信号Iiを入力し、これと位相が180°反転した信号−IiをトランジスタM2のソースから入力することにより、式13に示す伝達特性を得ることができる。この構成を図8に示す。
図1記載の実施形態1の構成を選択するか、図2記載の実施形態2の選択を構成するかは、LSIの電源電圧仕様、フィルタ特性の調整仕様に応じて当業者が選択することができる。
(実施形態3)
図9に請求項4に対応する第3の実施形態を示す。
図9は、前記実施形態2に記載している図7の構成に対して、ドレインとゲートとが共通接続された第4のトランジスタM13とトランジスタM13とにバイアス電流を供給する電流源14を追加し、容量素子C1をトランジスタM13とトランジスタM1間に接続し、トランジスタM13のドレインを入力端子9と接続している。このとき、トランジスタM13は飽和領域で動作しているとすると、トランスコンダクタンスgm13は、式20で表現される。
ここで、β13はトランジスタM13のトランスコンダクタンス・パラメータを表し、Icnt14は電流源14から供給されるバイアス電流を表す。ここで、gm13=gm2となるようにβ13、Icnt14を選択すると、図9の構成の伝達特性Io/Iiを求めると、次式のようになり、2次BPFの伝達特性を得ることができる。
但し、
2次BPFの実現方法については、実施形態2記載の図8で示した。図8の構成では、入力端子9と入力端子12との2つが必要であり、これらに入力される入力信号Ii、−Iiの電流振幅が厳密に一致せず、誤差ΔIiを持つ場合、式15に示すBPF特性が得られず、その伝達特性は式23に示すようになる。
但し、ω0、Q、A0は式11の通りであり、A1は式14の通りである。
式23右辺の分子を見れば明らかなように、誤差ΔIiを含む項が現れる。これは零点が原点からシフトしていることを意味し、その結果、BPFの低周波領域の減衰特性を悪化させる一因となる。本実施形態で示す図9の構成では、トランジスタM13と電流源14とを追加することにより、1つの入力端子で2次BPF特性を実現できる。従って、上述の誤差要因を排除することができ、良好な低周波領域の減衰特性を持つBPFを得ることができる。
(実施形態4)
図10に請求項5に対応する第4の実施形態を示す。
図10は前記実施形態2に記載している図5の構成に対して、ゲートとドレインとが共通接続されたトランジスタM13と、トランジスタM13にバイアス電流を供給する電流源14とを追加し、容量素子C2をトランジスタM13とトランジスタM1との間に接続し、トランジスタM13のドレインを入力端子9と接続している。このとき、トランジスタM13は飽和領域で動作しているとすると、トランスコンダクタンスgm13は式20のようになる。ここで、gm13=gm2となるように選択し、図10の構成の伝達特性Io/Iiを求めると、次式のようになり、2次HPFの伝達特性を得ることができる。
但し、
(実施形態5)
図11に請求項6及び請求項7に対応する第5の実施形態を示す。
図11は、前記実施形態1〜4記載の電流モードフィルタ回路におけるバイアス電流源6、7、53、14の構成例であり、トランスコンダクタンス調整回路29により構成したものである。以下、その回路の構成及び動作について説明する。
図11において、電位差発生回路21で生成された電圧Vga+ΔV/2、Vga−ΔV/2を各々のゲートに印加したトランジスタM106、M107のドレイン電流をカレントミラー回路で構成された差電流生成回路22に入力する。差電流生成回路22の出力には、定電流Idを出力する電流源24と電圧バッファ回路23とが接続され、電圧バッファ回路23の出力は電位差発生回路21の入力Vgaとして帰還されて、帰還回路31を構成する。電圧Vgaは、電圧−電流変換回路25として動作するトランジスタM108のゲートに入力され、トランジスタM108のドレイン電流をカレントミラー回路26に入力し、カレントミラー出力を各々前記実施形態1〜4記載のバイアス電流源6、7、53、14の出力とする。図11に記載した符号Ccは上述の帰還ループの安定性を確保するための安定性補償容量であり、トランジスタM110、M111、M112は各々トランジスタM108、M106、M107のドレイン電圧間の電圧差を小さくするために付加したカスコードトランジスタである。
トランジスタM106とM107は同じトランジスタサイズであるとし、ドレイン電流を各々Ida、Idbとすると、式26で示される。
ここで、βnはNチャネルトランジスタのトランスコンダクタンス・パラメータ、VtnはNチャネルトランジスタの閾値電圧を表す。図11の回路は、ドレイン電流Ida、Idbの差電流ΔIdが定電流源出力電流Idと一致するように、電圧Vgaに帰還がかかるため、以下の等式が成り立つ。
式26と式27から、電圧Vgaは次式で表される。
更に、トランジスタM108はトランジスタM106、M107と同じトランジスタサイズとした場合、ドレイン電流Icnt0は、式28から、次式で表現される。
図11のカレントミラー回路26のミラー比を1:1であるとすると、Icnt6=Icnt0、Icnt7=Icnt0となり、これを例えば式9に代入すると、実施形態1記載の電流モードフィルタ回路に含まれるNチャネルトランジスタのgmは、次式に示す通りトランスコンダクタンス・パラメータを含まない形で得られる。
但し、k1、k2、k3は各々トランジスタM106、M107、M108に対する図1記載のトランジスタM1、M2、M3のトランジスタサイズ比を表す。
よって、式11記載のω0、Q、A0はトランスコンダクタンス・パラメータに依存せず、Id、ΔVを変化させることにより、ω0、Q、A0を任意に制御することが可能になる。
既述したように、図16に示すトランスコンダクタンス調整回路でも、この効果を得ることは可能であるが、図11と図16とを比較すれば明らかであるように、図11はオペアンプ60や抵抗素子Re、電圧源V2a、Vrefが不要であり、より少ない部品数で回路を実現できることと、オペアンプが不要であるため、低電圧動作に適している点で従来例の図16に対して有利である。
図11の構成において、各トランジスタが飽和領域で動作するようなバイアス電圧が確保できれば、電圧バッファ回路23は省略することが可能であり、トランジスタM108のゲートとトランジスタM111のドレインを直接接続しても良い。
また、図11はNチャネルトランジスタで構成されたフィルタ回路のバイアス電流源6、7、53、14の構成例であるが、図2、図6に示したPチャネルトランジスタで構成されたフィルタ回路のバイアス電流源は図11のNチャネルトランジスタをPチャネルトランジスタに置き換えることにより、実現することができる。
(実施形態6)
図12に請求項8及び請求項9に対応する第6の実施形態を示す。
図12は前記実施形態1〜4記載の電流モードフィルタ回路におけるバイアス電流源6、7、53及び14の構成例であって、トランスコンダクタンス調整回路29により構成したものである。以下、その回路構成及び動作について説明する。
図12において、飽和領域で動作する第5のトランジスタM101、第6のトランジスタM102、第7のトランジスタM103、第8のトランジスタM104はトランスリニアループ回路32を構成し、トランジスタM103のドレイン電流とトランジスタM104のドレイン電流とをカレントミラー回路(増幅手段)26で、各々、h1倍、h2倍した出力と、電流源24の出力電流Idとを加算した電流値がM101、M102のバイアス電流となるように接続されている。
また、第7のトランジスタM103のバイアス電流を供給する電流源回路33では、電流源27の出力電流Iaをダイオード接続した第11のトランジスタM105に供給して得られる電圧Vgaを電位差発生回路21に入力し、電位差発生回路21の出力電圧Vga+ΔV/2、Vga−ΔV/2を各々のゲートに印加した第9のトランジスタM106と第10のトランジスタM107のドレイン電流を配線(加算手段)34で加算する。一方、電流源(増幅手段)28は、第11のトランジスタM105に流れるドレイン電流Iaを2倍し、前記第9及び第10のトランジスタM106、M107のドレイン電流の加算値から前記電流源28の出力電流2・Iaを引き算した電流が第7のトランジスタM103のバイアス電流Ibとなるよう構成している。更に、第8のトランジスタM104のドレイン電流のカレントミラー出力が各々前記実施形態1〜4記載のバイアス電流源6、7、53、14の出力となるように構成している。
ここで、トランジスタM101、M102、M103、M104のトランジスタサイズが同一であるとすると、各々に流れる電流には次式の関係がある。
ここで、h1=h2=0.25として、電流Icnt0について式31をまとめると、式32が得られる。
また、トランジスタM106、M107のドレイン電流Ida、Idbは、トランジスタM106、M107のトランジスタサイズが同一でそのトランスコンダクタンス・パラメータをβn、閾値電圧をVtnとすると、次式33で表現される。
前記式33から、トランジスタM106とトランジスタM107とのドレイン電流の加算出力は、式34となる。
Ib=Ida+Idb−2Iaより、式35となり、
式32に式35を代入すると、式36が得られる。
図12の電流Icnt0のカレントミラー出力Icnt6=Icnt0、Icnt7=Icnt0とし、これを例えば式9に代入すると、実施形態1記載の電流モードフィルタ回路に含まれるNチャネルトランジスタのgmは、次式に示す通り、トランスコンダクタンス・パラメータを含まない形で得られる。
但し、k1、k2、k3は各々トランジスタM106、M107に対する図1記載のトランジスタM1、M2、M3のトランジスタサイズ比を表す。
よって、式11記載のω0、Q、A0は、トランスコンダクタンス・パラメータに依存せず、Id、ΔVを変化させることにより、ω0、Q、A0を任意に制御することが可能になる。
図12の構成は、実施形態5記載の図11の構成と比べて、回路に帰還ループを含まないため、設計が容易、且つ安定性補償のための容量素子が不要のため、回路の実装面積が小さくできるという利点がある。
また、図12はNチャネルトランジスタで構成されたフィルタ回路のバイアス電流源6、7、53、14の構成例であるが、図2、図6に示したPチャネルトランジスタで構成されたフィルタ回路のバイアス電流源は、図11のNチャネルトランジスタをPチャネルトランジスタに置き換えることにより、実現することができる。
(実施形態7)
図13は第7の実施形態による光ディスク装置を示している。
同図において、この光ディスク装置は、スピンドルモータ501と、光ピックアップ502と、アドレス信号生成回路503と、アドレスデコーダ504と、サーボコントローラ505と、サーボエラー信号生成回路506と、データ信号生成回路507と、デコーダ508と、CPU509と、レーザーパワー制御回路510とを備えている。
ここでは、本発明の電流モードフィルタ回路の適用例の1つとして、図13におけるデータ信号生成回路507に本発明の電流モードフィルタ回路を適用した例を説明するが、アドレス信号生成回路503、サーボエラー信号生成回路506、レーザーパワー制御回路510にも本発明の電流モードフィルタを適用することができる。
データ信号生成回路507の内部構成、特にアナログ・フロントエンド部の構成を図14に示す。図14において、光ディスク500から得られるデータ信号は、アナログ・フロントエンド部において、A−D変換器514のフルスケール入力Dレンジに合わせた振幅の正規化と、エイリアシング防止のためのノイズ除去を行う必要がある。そのため、信号処理経路には図14のように可変トランスコンダクタンスアンプ511と、本発明のローパスフィルタ512、トランスインピーダンスアンプ513をA−D変換器514の前に設ける。可変トランスコンダクタンスアンプ511は、光ピックアップ502から入力される電圧信号を電流信号に変換する機能を持ち、デジタル信号処理回路519で検出した信号振幅値に応じてD−A変換器516とゲイン制御回路518を介して、そのトランスコンダクタンスが制御され、出力電流振幅を正規化する。また、本発明のローパスフィルタ512は、光ディスク500のメディアや、再生倍速に応じて常に最適なノイズ除去ができるようD−A変換器515と帯域制御回路517を介して、デジタル信号処理回路519から、そのカットオフ周波数が制御される。
本発明のローパスフィルタ512の出力電流信号は、トランスインピーダンスアンプ513により電圧信号に変換されて、A−D変換器514に入力される。D−A変換器515、516をカレント・ステアリング型D−A変換器で構成し、ゲイン制御回路518、帯域制御回路517をカレントミラー回路による電流信号処理で実現することにより、アナログ・フロントエンド部の入力部と出力部の電圧信号の受け渡しが必要な箇所を除く、全てのアナログ信号処理を電流モードで実現することができ、従来3V程度の電源電圧を必要していたアナログ回路が、例えば1.5V程度の低電源電圧で実現することが可能となり、アナログ・フロントエンドで消費する電力を約50%削減することが可能になる。
以上説明したように、本発明による電流モードフィルタ回路は、Blu−ray DiscやDVDに代表される光ディスク装置におけるフィルタ回路は勿論のこと、アナログ・フィルタ回路を搭載するあらゆる商品分野への適用が可能である。
M1 第1のトランジスタ
M2 第2のトランジスタ
M3 第3のトランジスタ
M13、M52 第4のトランジスタ
M101 第5のトランジスタ
M102 第6のトランジスタ
M103 第7のトランジスタ
M104 第8のトランジスタ
M106 第9のトランジスタ
M107 第10のトランジスタ
M105 第11のトランジスタ
C1 第1の容量素子
C2 第2の容量素子
6 バイアス電流源
7、14 バイアス電流源(バイアス電流供給手段)
8 電圧生成回路
9、12 信号入力端子1
10 信号出力端子1
11 バイアス電流源
12 信号入力端子2
21 電位差発生回路
22 差電流生成回路
23 電圧バッファ回路(帰還手段)
24 基準電流源
25 電圧−電流変換回路
26 カレントミラー回路(増幅手段)
27 バイアス電流源
28 バイアス電流源(増幅手段)
29 トランスコンダクタンス調整回路
31 帰還回路
32 トランスリニアループ回路
33 電流源回路
34 配線(加算手段)
50 電源端子
53 バイアス電流源(バイアス電流供給手段)
60 オペアンプ