JPWO2010119897A1 - 骨補填材用のリン酸カルシウム系セメント組成物及びそのキット - Google Patents
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Abstract
(A) (a) リン酸カルシウム系粉末100質量部と、(b) 炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩とからなる粉末状発泡剤10〜50質量部とを含有する粉剤と、(B) 2.5〜12.5質量%の濃度の粘性付与剤を含有する水系練和液とからなり、前記粉剤に前記水系練和液を練和することにより得られるペースト状混合物が、体内の所定の補填部位に充填された状態で気孔率60%以上のリン酸カルシウム多孔質体を形成するリン酸カルシウム系セメント組成物キット。
Description
本発明は、任意の形状の補填部位にフィットし、適度な連通孔を有する高気孔率で高強度の骨補填材に好適なリン酸カルシウム系セメント組成物、及びそのキットに関する。
リン酸カルシウムは自家骨に対して親和性を有するため、整形外科、脳神経外科、形成外科、口腔外科等で体内の所定部位に埋入する骨や歯の補填材として使用されている。リン酸カルシウム系骨補填材の使用方法として、(1) リン酸カルシウム粉末の焼結体を体内の所定部位に埋入する方法、及び(2) リン酸カルシウムセメントに水系硬化液を混合したペースト状混合物を体内の所定部位に充填し、硬化させる方法がある。(2) の方法では骨補填材の形状自由度が高く、任意の形状の補填部位に骨補填材を容易にフィットさせることができる。
(2) の方法に用いる骨補填材用のリン酸カルシウムセメントとして、種々のものが提案されている。例えば特許第3966539号は、5〜500 ppmの骨形成因子、0.03〜2質量%のリン酸マグネシウム、及び5〜35質量%の第二リン酸カルシウムを含有し、残部が第四リン酸カルシウム及び不可避的に含まれるハイドロキシアパタイトからなり、前記骨形成因子が第二リン酸カルシウムの表面に担持されている速硬性の生体骨補強用リン酸カルシウムセメントを開示している。しかし、このリン酸カルシウムセメントの硬化体は気孔径及び気孔率が小さいだけでなく、連通していない独立気孔を多く有するので、細胞や骨形成因子の進入が不十分であり、新生骨の生成速度が遅い。リン酸カルシウム硬化体が優れた骨誘導能を有するには、細胞又は骨形成因子が進入して定着できる気孔が必要であるので、リン酸カルシウム硬化体は適度な孔径の連通孔を有することが望まれる。
WO 02/36518 A1は、第一の反応成分(燐酸ナトリウム)を含有する液剤と、クエン酸等の酸と、前記第一の反応成分と反応して自己硬化型骨セメントを生成する第二の反応成分(カルシウム源及び燐酸源)を含有する粉剤とを有する自己硬化型骨セメント製造用キットであって、前記粉剤が炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム及びこれらの混合物からなる群から選ばれた炭酸塩を含有し、前記第一及び第二の反応成分に対する前記酸及び前記炭酸塩の重量比が約10〜20%であるキットを開示している。しかし、このキットは粘性付与剤を含有していないので、炭酸塩と酸との反応により発生した炭酸ガスは十分にセメント内に保持されず、約50%以下と小さな気孔率しか有さない。
従って、本発明の目的は、任意の形状の補填部位にフィットし、適度な連通孔を有する高気孔率で高強度の骨補填材に好適なリン酸カルシウム系セメント組成物、及びそのキットを提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、(a) リン酸カルシウム系粉末と、(b) 炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩とからなる粉末状発泡剤とを、粘性付与剤を含有する水系練和液と練和することにより得られるペースト状混合物は、任意の形状の補填部位にフィットするだけでなく、適度な連通孔を有し、かつ高気孔率及び高強度を有する多孔質体となることを発見し、本発明に想到した。
すなわち、本発明のリン酸カルシウム系セメント組成物は、(a) リン酸カルシウム系粉末100質量部と、(b) 炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩とからなる粉末状発泡剤10〜50質量部と、(c) 水系練和液15〜50質量部とを含有し、前記水系練和液が2.5〜12.5質量%の濃度の粘性付与剤を含有し、練和により得られるペースト状混合物が、体内の所定の補填部位に充填された状態で気孔率60%以上のリン酸カルシウム多孔質体を形成することを特徴とする。
本発明のリン酸カルシウム系セメント組成物キットは、(A) (a) リン酸カルシウム系粉末100質量部と、(b) 炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩とからなる粉末状発泡剤10〜50質量部とを含有する粉剤と、(B) 2.5〜12.5質量%の濃度の粘性付与剤を含有する水系練和液とからなり、前記粉剤に前記水系練和液を、前記リン酸カルシウム系粉末100質量部当たり15〜50質量部の割合で練和することにより得られるペースト状混合物が、体内の所定の補填部位に充填された状態で気孔率60%以上のリン酸カルシウム多孔質体を形成することを特徴とする。
ペースト状混合物が適度な硬化時間を有するとともに、リン酸カルシウム多孔質体が優れた骨吸収置換性(自家骨への吸収置換性)を有するために、リン酸カルシウム系粉末は第三リン酸カルシウム粉末を主成分とするのが好ましい。リン酸カルシウム系粉末のより好ましい組成は、第三リン酸カルシウム粉末に加えて、2〜10質量%の第二リン酸カルシウム粉末、10〜25質量%の第四リン酸カルシウム粉末、5質量%以下の第二〜第四リン酸カルシウム以外のリン酸カルシウム系化合物粉末、さらにペースト状混合物の流動性を改善するために0.03〜2質量%のリン酸マグネシウム粉末を含有する。リン酸カルシウム系粉末の最も好ましい組成は、第三リン酸カルシウム粉末に加えて、3〜7質量%の第二リン酸カルシウム粉末、15〜20質量%の第四リン酸カルシウム粉末、及び3質量%以下の第二〜第四リン酸カルシウム以外のリン酸カルシウム系化合物粉末、さらに0.05〜0.5質量%のリン酸マグネシウム粉末を含有する。
前記炭酸塩は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び炭酸アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。前記炭酸水素塩は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。中でも、炭酸水素ナトリウムが最も好ましい。
前記固体有機酸は、固体脂肪族カルボン酸、固体脂肪族ヒドロキシカルボン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。中でも、クエン酸が最も好ましい。
前記粘性付与剤は、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
リン酸カルシウム系セメント組成物はさらに、リン酸カルシウム系粉末100質量部当たり、2〜10質量部の硬化促進剤を含有するのが好ましい。リン酸カルシウム系セメント組成物キットの場合、前記硬化促進剤は水系練和液に添加するのが好ましい。前記硬化促進剤は、乳酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、リン酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
リン酸カルシウム系粉末と、炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩とからなる粉末状発泡剤と、高濃度の粘性付与剤を含有する本発明のリン酸カルシウム系セメント組成物は、水と練和することにより高粘度で泡保持性が良好なペースト状混合物が得られるので、いかなる形状の補填部位にもフィットすることができる。ペースト状混合物から得られるリン酸カルシウム多孔質体は、適度な連通孔を有し、気孔率が高い。さらにリン酸カルシウム系セメント組成物の硬化後は粘性付与剤がバインダ樹脂として機能するので、リン酸カルシウム多孔質体は十分に高い強度(自己支持性)を有する。リン酸カルシウム多孔質体の適度な連通孔内に細胞及び骨形成因子が容易に進入及び定着できるので、リン酸カルシウム多孔質体は優れた骨吸収置換性を有する。
本発明のリン酸カルシウム系セメント組成物キットを用いると、手術現場で粉剤と水系練和液とを練和するだけで所望の流動性のペースト状混合物が得られるので、任意の形状の補填部位にフィットするようにリン酸カルシウム多孔質体を形成するのが容易であり、補填時の生体への負担が少ない。このような特徴を有する本発明のリン酸カルシウム系セメント組成物及びそのキットは、例えば骨の欠損部や空隙部を補修したり、骨折部を補修したり、骨折部の固定を補助したり、骨接合用金属製螺子を固定したり、人工関節と骨との間隙を充填したりする骨補填材として好適である。
[1] リン酸カルシウム系セメント組成物
(1) リン酸カルシウム系粉末
水和反応により硬化して多孔質体を形成するリン酸カルシウム系粉末は、第三リン酸カルシウム(リン酸三カルシウム)粉末を主成分とするのが好ましい。リン酸カルシウム系粉末のより好ましい組成は、リン酸カルシウム系粉末全体を100質量%として、2〜10質量%の第二リン酸カルシウム(リン酸水素カルシウム)粉末、10〜25質量%の第四リン酸カルシウム(リン酸四カルシウム)粉末、及び5質量%以下の前記第二〜第四リン酸カルシウム以外のリン酸カルシウム系化合物粉末を含有し、残部が第三リン酸カルシウム粉末である。リン酸カルシウム系粉末はまた0.03〜2質量%のリン酸マグネシウム粉末を含有するのが好ましい。各成分粉末は無水物でも水和物でも良いが、水和物粉末を用いる場合、その含有量は無水物に換算した含有量で表す。
(1) リン酸カルシウム系粉末
水和反応により硬化して多孔質体を形成するリン酸カルシウム系粉末は、第三リン酸カルシウム(リン酸三カルシウム)粉末を主成分とするのが好ましい。リン酸カルシウム系粉末のより好ましい組成は、リン酸カルシウム系粉末全体を100質量%として、2〜10質量%の第二リン酸カルシウム(リン酸水素カルシウム)粉末、10〜25質量%の第四リン酸カルシウム(リン酸四カルシウム)粉末、及び5質量%以下の前記第二〜第四リン酸カルシウム以外のリン酸カルシウム系化合物粉末を含有し、残部が第三リン酸カルシウム粉末である。リン酸カルシウム系粉末はまた0.03〜2質量%のリン酸マグネシウム粉末を含有するのが好ましい。各成分粉末は無水物でも水和物でも良いが、水和物粉末を用いる場合、その含有量は無水物に換算した含有量で表す。
(a) 第三リン酸カルシウム
主成分である第三リン酸カルシウムはα型であるのが好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、α型とβ型の混合物でも良い。第三リン酸カルシウム粉末の粒径範囲は約0.1〜500μmが好ましく、約1〜100μmがより好ましい。また第三リン酸カルシウム粉末の平均粒径は約1〜50μmが好ましく、約2〜10μmがより好ましい。第三リン酸カルシウム粉末の含有量は、リン酸カルシウム系粉末全体を100質量%として、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上が最も好ましい。
主成分である第三リン酸カルシウムはα型であるのが好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、α型とβ型の混合物でも良い。第三リン酸カルシウム粉末の粒径範囲は約0.1〜500μmが好ましく、約1〜100μmがより好ましい。また第三リン酸カルシウム粉末の平均粒径は約1〜50μmが好ましく、約2〜10μmがより好ましい。第三リン酸カルシウム粉末の含有量は、リン酸カルシウム系粉末全体を100質量%として、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上が最も好ましい。
(b) 第二リン酸カルシウム
第二リン酸カルシウムは硬化を促進する機能を有する。第二リン酸カルシウム粉末の粒径範囲及び平均粒径は第三リン酸カルシウム粉末のものと同じで良い。適度な硬化時間を得るために、第二リン酸カルシウム粉末の含有量は、リン酸カルシウム系粉末全体を100質量%として、2〜10質量%が好ましく、3〜7質量%がより好ましい。
第二リン酸カルシウムは硬化を促進する機能を有する。第二リン酸カルシウム粉末の粒径範囲及び平均粒径は第三リン酸カルシウム粉末のものと同じで良い。適度な硬化時間を得るために、第二リン酸カルシウム粉末の含有量は、リン酸カルシウム系粉末全体を100質量%として、2〜10質量%が好ましく、3〜7質量%がより好ましい。
(c) 第四リン酸カルシウム
第四リン酸カルシウムは、リン酸カルシウム多孔質体の自家骨への吸収置換を促進する機能を有する。第四リン酸カルシウムの粒径範囲及び平均粒径は第三リン酸カルシウム粉末のものと同じで良い。リン酸カルシウム多孔質体が十分な骨吸収置換性及び強度を有するために、第四リン酸カルシウム粉末の含有量は、リン酸カルシウム系粉末全体を100質量%として、10〜25質量%が好ましく、15〜20質量%がより好ましい。
第四リン酸カルシウムは、リン酸カルシウム多孔質体の自家骨への吸収置換を促進する機能を有する。第四リン酸カルシウムの粒径範囲及び平均粒径は第三リン酸カルシウム粉末のものと同じで良い。リン酸カルシウム多孔質体が十分な骨吸収置換性及び強度を有するために、第四リン酸カルシウム粉末の含有量は、リン酸カルシウム系粉末全体を100質量%として、10〜25質量%が好ましく、15〜20質量%がより好ましい。
(d) 第二〜第四リン酸カルシウム以外のリン酸カルシウム系化合物
不可避的に含まれる第二〜第四リン酸カルシウム以外のリン酸カルシウム系化合物粉末として、例えばハイドロキシアパタイト粉末が挙げられる。このリン酸カルシウム系化合物粉末の粒径範囲及び平均粒径は第三リン酸カルシウム粉末のものと同じで良い。このリン酸カルシウム系化合物粉末の含有量は、リン酸カルシウム系粉末全体を100質量%として、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
不可避的に含まれる第二〜第四リン酸カルシウム以外のリン酸カルシウム系化合物粉末として、例えばハイドロキシアパタイト粉末が挙げられる。このリン酸カルシウム系化合物粉末の粒径範囲及び平均粒径は第三リン酸カルシウム粉末のものと同じで良い。このリン酸カルシウム系化合物粉末の含有量は、リン酸カルシウム系粉末全体を100質量%として、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
(e) リン酸マグネシウム
リン酸マグネシウムとしては第三リン酸マグネシウム(リン酸三マグネシウム)が好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、第三リン酸マグネシウムとともに、第一リン酸マグネシウム(リン酸二水素マグネシウム)、第二リン酸マグネシウム(リン酸水素マグネシウム)、ピロリン酸マグネシウム等の他のリン酸マグネシウムを含有しても良い。リン酸マグネシウム粉末の粒径範囲及び平均粒径は第三リン酸カルシウム粉末のものと同じで良い。リン酸カルシウム系粉末のペースト状混合物が良好な流動性を有するために、リン酸マグネシウム粉末の含有量は、リン酸カルシウム系粉末全体を100質量%として、0.03〜2質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましい。
リン酸マグネシウムとしては第三リン酸マグネシウム(リン酸三マグネシウム)が好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、第三リン酸マグネシウムとともに、第一リン酸マグネシウム(リン酸二水素マグネシウム)、第二リン酸マグネシウム(リン酸水素マグネシウム)、ピロリン酸マグネシウム等の他のリン酸マグネシウムを含有しても良い。リン酸マグネシウム粉末の粒径範囲及び平均粒径は第三リン酸カルシウム粉末のものと同じで良い。リン酸カルシウム系粉末のペースト状混合物が良好な流動性を有するために、リン酸マグネシウム粉末の含有量は、リン酸カルシウム系粉末全体を100質量%として、0.03〜2質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましい。
(2) 粉末状発泡剤
粉末状発泡剤は、炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩とからなる。炭酸塩又は炭酸水素塩は固体有機酸又はその塩との中和反応により炭酸ガスを発生する。炭酸塩又は炭酸水素塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩が好ましく、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム等が好ましい。さらに炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムも使用可能である。中でも、炭酸水素ナトリウムが最も好ましい。
粉末状発泡剤は、炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩とからなる。炭酸塩又は炭酸水素塩は固体有機酸又はその塩との中和反応により炭酸ガスを発生する。炭酸塩又は炭酸水素塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩が好ましく、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム等が好ましい。さらに炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムも使用可能である。中でも、炭酸水素ナトリウムが最も好ましい。
固体有機酸としては、固体脂肪族カルボン酸、固体脂肪族ヒドロキシカルボン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。固体有機酸の塩としては、これらのナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
固体脂肪族カルボン酸は飽和及び不飽和のいずれでも良く、固体飽和脂肪族カルボン酸としてはカプリン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられ、固体不飽和脂肪族カルボン酸としてはフマル酸、マレイン酸、アコニット酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。固体脂肪族ヒドロキシカルボン酸は飽和及び不飽和のいずれでも良く、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、カルボキシメチル酒石酸、ヒドロキシカプロン酸、クエン酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸等が挙げられる。中でも、クエン酸が最も好ましい。
例えば炭酸水素ナトリウムとクエン酸の組合せの場合、以下の反応により炭酸ガスを発生する。
3NaHCO3+CH2(COOH)-C(OH)(COOH)-CH2(COOH)→
CH2(COONa)−C(OH)(COONa)-CH2(COONa)+3H2O+3CO2
炭酸水素ナトリウムは1価の塩基で、クエン酸は3価の酸であるので、3:1のモル比で配合すると、両者は過不足なく中和反応に関与する。すなわち、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の化学当量比はほぼ1であるのが好ましい。ただし、炭酸水素ナトリウムが僅かに過剰でも問題はない。このモル比は、一般の炭酸塩と固体有機酸に適用される。
3NaHCO3+CH2(COOH)-C(OH)(COOH)-CH2(COOH)→
CH2(COONa)−C(OH)(COONa)-CH2(COONa)+3H2O+3CO2
炭酸水素ナトリウムは1価の塩基で、クエン酸は3価の酸であるので、3:1のモル比で配合すると、両者は過不足なく中和反応に関与する。すなわち、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の化学当量比はほぼ1であるのが好ましい。ただし、炭酸水素ナトリウムが僅かに過剰でも問題はない。このモル比は、一般の炭酸塩と固体有機酸に適用される。
適度な連通孔を有するリン酸カルシウム多孔質体を得るために、粉末状発泡剤の含有量は、リン酸カルシウム系粉末100質量部当たり、10〜50質量部であり、好ましくは15〜40質量部であり、より好ましくは20〜40質量部である。
(3) 水系練和液
粉末状発泡剤は水と中和反応を起こし、炭酸ガスを発生する。その結果、リン酸カルシウム系粉末は発泡したペースト状混合物となる。ペースト状混合物を高粘度化して気泡をペースト内に保持するために、水系練和液の含有量は、リン酸カルシウム系粉末100質量部当たり、15〜50質量部であり、好ましくは20〜40質量部であり、より好ましくは25〜38質量部である。
粉末状発泡剤は水と中和反応を起こし、炭酸ガスを発生する。その結果、リン酸カルシウム系粉末は発泡したペースト状混合物となる。ペースト状混合物を高粘度化して気泡をペースト内に保持するために、水系練和液の含有量は、リン酸カルシウム系粉末100質量部当たり、15〜50質量部であり、好ましくは20〜40質量部であり、より好ましくは25〜38質量部である。
(4) 水系練和液の成分
(a) 粘性付与剤
粘性付与剤として、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等のムコ多糖類、及びカルボキシメチルセルロース等の高分子化合物が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。粘性付与剤の濃度は、炭酸塩と酸との中和反応により発生した炭酸ガスがペースト内に十分に保持されるとともに、発泡によりペーストが破断しないような粘度を有するように設定する。ペースト状混合物を作製する際の作業性を考慮して、粘性付与剤の濃度は2.5〜12.5質量%であり、好ましくは6〜12質量%であり、より好ましくは7〜11質量%である。水系練和液における粘性付与剤の濃度を高くすることにより、高粘度のペースト状混合物が得られるので、ペースト状混合物内に気泡が良好に保持されるだけでなく、発泡に起因する崩壊を防ぐこともできる。
(a) 粘性付与剤
粘性付与剤として、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等のムコ多糖類、及びカルボキシメチルセルロース等の高分子化合物が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。粘性付与剤の濃度は、炭酸塩と酸との中和反応により発生した炭酸ガスがペースト内に十分に保持されるとともに、発泡によりペーストが破断しないような粘度を有するように設定する。ペースト状混合物を作製する際の作業性を考慮して、粘性付与剤の濃度は2.5〜12.5質量%であり、好ましくは6〜12質量%であり、より好ましくは7〜11質量%である。水系練和液における粘性付与剤の濃度を高くすることにより、高粘度のペースト状混合物が得られるので、ペースト状混合物内に気泡が良好に保持されるだけでなく、発泡に起因する崩壊を防ぐこともできる。
(b) 硬化促進剤
水系練和液はリン酸カルシウム系粉末用の硬化促進剤を含有するのが好ましい。硬化促進剤として、乳酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム等の水溶性ナトリウム塩が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。硬化促進剤の含有量は、リン酸カルシウム系粉末100質量部当たり2〜10質量部が好ましく、3〜7質量部がより好ましく、4〜6質量部が最も好ましい。
水系練和液はリン酸カルシウム系粉末用の硬化促進剤を含有するのが好ましい。硬化促進剤として、乳酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム等の水溶性ナトリウム塩が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。硬化促進剤の含有量は、リン酸カルシウム系粉末100質量部当たり2〜10質量部が好ましく、3〜7質量部がより好ましく、4〜6質量部が最も好ましい。
[2] リン酸カルシウム系セメント組成物キット
リン酸カルシウム系セメント組成物キットは、(A) (a) リン酸カルシウム系粉末100質量部と、(b) 炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩とからなる粉末状発泡剤10〜50質量部とを含有する粉剤と、(B) 2.5〜12.5質量%の濃度の粘性付与剤を含有する水系練和液とからなる。水系練和液はさらにリン酸カルシウム系粉末用の硬化促進剤を含有するのが好ましい。
リン酸カルシウム系セメント組成物キットは、(A) (a) リン酸カルシウム系粉末100質量部と、(b) 炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩とからなる粉末状発泡剤10〜50質量部とを含有する粉剤と、(B) 2.5〜12.5質量%の濃度の粘性付与剤を含有する水系練和液とからなる。水系練和液はさらにリン酸カルシウム系粉末用の硬化促進剤を含有するのが好ましい。
粉剤中に炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩とからなる粉末状発泡剤が存在するので、炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩との比が粉剤と水系練和液との配合比により変動することはなく、従っていかなる粘度のペースト状混合物を調製しても、炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩との中和反応が完全に起こる。
リン酸カルシウム系粉末及び粉末状発泡剤を含有する粉剤に粘性付与剤を含有する水系練和液を練和し、リン酸カルシウム系粉末の水和・硬化反応と、粉末状発泡剤の中和反応とを同時に起こすと、水系練和液中の粘性付与剤により比較的高い粘度を有するペースト状混合物が得られるので、高気孔率でありながら十分な強度を有する多孔質体が得られる。粉剤と水系練和液との配合比は、ペースト状混合物が所望の粘度及び流動性を有するように設定する。
所望の配合比の粉剤及び水系練和液は、例えば乳鉢内でヘラで練ることにより練和することができる。得られたペースト状混合物はシリンジを用いて体内の所定の骨補填部位に注入する。ペースト状混合物は約10分で硬化するので、数分以内に練和及び注入を完了する必要がある。ペースト状混合物の粘度が高い場合は、加圧式のシリンジポンプを利用する。
[3] リン酸カルシウム多孔質体の物性
本発明のリン酸カルシウム系セメント組成物から得られるリン酸カルシウム多孔質体は、リン酸カルシウム系粉末の水和反応により生成したハイドロキシアパタイト[Ca10(PO4)6・(OH)2]の結晶からなる骨格と、粉末状発泡剤の発泡により形成された連通孔とを有する。
本発明のリン酸カルシウム系セメント組成物から得られるリン酸カルシウム多孔質体は、リン酸カルシウム系粉末の水和反応により生成したハイドロキシアパタイト[Ca10(PO4)6・(OH)2]の結晶からなる骨格と、粉末状発泡剤の発泡により形成された連通孔とを有する。
リン酸カルシウム多孔質体は約1000μm以下と広い孔径範囲(孔径分布)の連通孔を有するが、細胞(造血細胞、幹細胞等)及び骨形成因子(骨形成蛋白質、線維芽細胞増殖因子等)が容易に進入及び定着できる約5〜1000μmの孔径範囲、特に約10〜800μmの孔径範囲の連通孔を多く有する。また連通孔の平均孔径は約50〜500μmであり、特に約100〜400μmである。連通孔の孔径分布及び平均孔径は走査型電子顕微鏡写真の画像処理により求めることができる。
リン酸カルシウム多孔質体の気孔率は60%以上であり、好ましくは65〜95%であり、特に70〜90%が好ましい。本発明では粘性付与剤を含有するペースト状混合物が高粘度であるため、リン酸カルシウム多孔質体は95%まで高い気孔率を有しても、十分な自己支持性を有する。気孔率が60%未満であると、リン酸カルシウム多孔質体内に入り込む細胞及び及び骨形成因子が十分でなく、大きな骨形成能が期待できない。ただし、気孔率の増大に応じてリン酸カルシウム多孔質体の機械的強度が低下するので、最適な気孔率を得るように水系練和液の配合比を設定する。
上記孔径分布及び平均孔径を有する連通孔を有するとともに、上記気孔率を有するリン酸カルシウム多孔質体では、細胞及び骨形成因子の進入及び定着が容易であるので、新生骨の生成が早い。
リン酸カルシウムの水和反応によりハイドロキシアパタイトが生成するので、リン酸カルシウム多孔質体はハイドロキシアパタイトを主成分とする。ハイドロキシアパタイトは骨の主成分であるので、リン酸カルシウム多孔質体は周囲の骨組織との親和性が良好である。ただしリン酸カルシウム多孔質体にはα型の第三リン酸カルシウム(α-TCP)が少量残留していても良い。ハイドロキシアパタイトはある程度の間生体内で形状を保つのに対し、α-TCPは生体内で溶解し易く、骨の形成を誘発する。α-TCPが多すぎると、リン酸カルシウム多孔質体の強度が小さすぎたり、生体内で急に溶出しすぎたりするので、α-TCPの残留量は少ない方が好ましい。例えばX線回折パターンにおいて、α-TCPのメインピークはハイドロキシアパタイトのメインピークの0.5〜5%であるのが好ましく、0.5〜3%であるのがより好ましい。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
74.9質量%の第三リン酸カルシウム、5質量%の第二リン酸カルシウム、18質量%の第四リン酸カルシウム、0.1質量%のリン酸マグネシウム、及び2質量%のハイドロキシアパタイトからなるリン酸カルシウム系粉末6.0 gに、1.0 gの炭酸水素ナトリウム粉末及び1.0 gのクエン酸粉末を添加し、粉剤を調製した。また7.0質量%の濃度のコンドロイチン硫酸ナトリウム及び15.0質量%の濃度のコハク酸二ナトリウム無水物を含有する1.7 mlの水系練和液を調製した。
74.9質量%の第三リン酸カルシウム、5質量%の第二リン酸カルシウム、18質量%の第四リン酸カルシウム、0.1質量%のリン酸マグネシウム、及び2質量%のハイドロキシアパタイトからなるリン酸カルシウム系粉末6.0 gに、1.0 gの炭酸水素ナトリウム粉末及び1.0 gのクエン酸粉末を添加し、粉剤を調製した。また7.0質量%の濃度のコンドロイチン硫酸ナトリウム及び15.0質量%の濃度のコハク酸二ナトリウム無水物を含有する1.7 mlの水系練和液を調製した。
上記粉剤及び上記水系練和液を混合することにより得られたペースト状混合物は、シリンジの注射針からスムーズに押し出せた。押出したペースト状混合物は室温で発泡するとともに硬化し、10分後にはリン酸カルシウム多孔質体となった。図1に示すように、リン酸カルシウム多孔質体は多数の連通孔を有しており、気孔率は65%であった。また図1の走査型電子顕微鏡写真から求めた平均気孔径は230μmであった。
実施例2
粉剤中の炭酸水素ナトリウム及びクエン酸の含有量を各々0.5 gとした以外実施例1と同様にして、リン酸カルシウム多孔質体を形成した。図2に示すように、このリン酸カルシウム多孔質体は多数の連通孔を有しており、気孔率は60%であった。図2の走査型電子顕微鏡写真から求めた平均気孔径は110μmであった。
粉剤中の炭酸水素ナトリウム及びクエン酸の含有量を各々0.5 gとした以外実施例1と同様にして、リン酸カルシウム多孔質体を形成した。図2に示すように、このリン酸カルシウム多孔質体は多数の連通孔を有しており、気孔率は60%であった。図2の走査型電子顕微鏡写真から求めた平均気孔径は110μmであった。
実施例3
水系練和液中のコンドロイチン硫酸ナトリウムの濃度を10質量%にした以外実施例1と同様にして、リン酸カルシウム多孔質体を形成した。粉剤及び水系練和液のペースト状混合物は非常に粘度が高く、発泡を伴なう硬化においてもクラックを生じることなく、10分後に硬化してリン酸カルシウム多孔質体となった。このリン酸カルシウム多孔質体は多数の連通孔を有しており、気孔率は70%であった。
比較例1
粉末状発泡剤を添加しなかった以外実施例1と同様にして、リン酸カルシウム多孔質体を形成した。図3に示すようにほとんどの気孔は連通していなかっただけでなく、十分な孔径を有していなかった。
水系練和液中のコンドロイチン硫酸ナトリウムの濃度を10質量%にした以外実施例1と同様にして、リン酸カルシウム多孔質体を形成した。粉剤及び水系練和液のペースト状混合物は非常に粘度が高く、発泡を伴なう硬化においてもクラックを生じることなく、10分後に硬化してリン酸カルシウム多孔質体となった。このリン酸カルシウム多孔質体は多数の連通孔を有しており、気孔率は70%であった。
比較例1
粉末状発泡剤を添加しなかった以外実施例1と同様にして、リン酸カルシウム多孔質体を形成した。図3に示すようにほとんどの気孔は連通していなかっただけでなく、十分な孔径を有していなかった。
Claims (16)
- (a) リン酸カルシウム系粉末100質量部と、(b) 炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩とからなる粉末状発泡剤10〜50質量部と、(c) 水系練和液15〜50質量部とを含有し、前記水系練和液が2.5〜12.5質量%の濃度の粘性付与剤を含有するリン酸カルシウム系セメント組成物であって、練和により得られるペースト状混合物が、体内の所定の補填部位に充填された状態で気孔率60%以上のリン酸カルシウム多孔質体を形成することを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物。
- 請求項1に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物において、さらに前記リン酸カルシウム系粉末100質量部当たり2〜10質量部の硬化促進剤を含有することを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物。
- 請求項1又は2に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物において、前記リン酸カルシウム系粉末が第三リン酸カルシウムを主成分とすることを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物。
- 請求項3に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物において、前記リン酸カルシウム系粉末が、前記第三リン酸カルシウム以外に、2〜10質量%の第二リン酸カルシウム、10〜25質量%の第四リン酸カルシウム、5質量%以下の前記第二〜第四リン酸カルシウム以外のリン酸カルシウム系化合物、及び0.03〜2質量%のリン酸マグネシウムを含有することを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物。
- 請求項1に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物において、前記炭酸塩が炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び炭酸アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、前記炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、前記固体有機酸が、固体脂肪族カルボン酸、固体脂肪族ヒドロキシカルボン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物。
- 請求項1に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物において、前記炭酸塩又は炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウムであり、前記固体有機酸がクエン酸であることを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物。
- 請求項1に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物において、前記粘性付与剤がコンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物。
- 請求項2に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物において、前記硬化促進剤が乳酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、リン酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物。
- (A) (a) リン酸カルシウム系粉末100質量部と、(b) 炭酸塩又は炭酸水素塩と固体有機酸又はその塩とからなる粉末状発泡剤10〜50質量部とを含有する粉剤と、(B) 2.5〜12.5質量%の濃度の粘性付与剤を含有する水系練和液とからなるリン酸カルシウム系セメント組成物キットであって、前記粉剤に前記水系練和液を、前記リン酸カルシウム系粉末100質量部当たり15〜50質量部の割合で練和することにより得られるペースト状混合物は、体内の所定の補填部位に充填された状態で気孔率60%以上のリン酸カルシウム多孔質体を形成することを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物キット。
- 請求項9に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物キットにおいて、前記水系練和液がさらに、リン酸カルシウム系粉末100質量部当たり、2〜10質量部の硬化促進剤を含有することを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物キット。
- 請求項9又は10に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物キットにおいて、前記リン酸カルシウム系粉末が第三リン酸カルシウムを主成分とすることを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物キット。
- 請求項11に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物キットにおいて、前記リン酸カルシウム系粉末が、前記第三リン酸カルシウム以外に、2〜10質量%の第二リン酸カルシウム、10〜25質量%の第四リン酸カルシウム、5質量%以下の前記第二〜第四リン酸カルシウム以外のリン酸カルシウム系化合物、及び0.03〜2質量%のリン酸マグネシウムを含有することを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物キット。
- 請求項9に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物キットにおいて、前記炭酸塩が炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び炭酸アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、前記炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、前記固体有機酸が、固体脂肪族カルボン酸、固体脂肪族ヒドロキシカルボン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物キット。
- 請求項9に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物キットにおいて、前記炭酸塩又は炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウムであり、前記固体有機酸がクエン酸であることを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物キット。
- 請求項9に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物キットにおいて、前記粘性付与剤がコンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物キット。
- 請求項9に記載のリン酸カルシウム系セメント組成物キットにおいて、前記硬化促進剤が乳酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、リン酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とするリン酸カルシウム系セメント組成物キット。
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